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JP2016103568A - 有機エレクトロルミネッセンス素子用材料、有機エレクトロルミネッセンス素子、表示装置及び照明装置 - Google Patents

有機エレクトロルミネッセンス素子用材料、有機エレクトロルミネッセンス素子、表示装置及び照明装置 Download PDF

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JP2016103568A JP2014241096A JP2014241096A JP2016103568A JP 2016103568 A JP2016103568 A JP 2016103568A JP 2014241096 A JP2014241096 A JP 2014241096A JP 2014241096 A JP2014241096 A JP 2014241096A JP 2016103568 A JP2016103568 A JP 2016103568A
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Abstract

【課題】発光効率及び耐久性を高めることができる有機EL素子、表示装置及び照明装置を提供する。【解決手段】下記一般式(1)で表される構造を有する化合物を含有することを特徴とする。〔一般式(1)において、R1〜R6は、それぞれ独立に、水素原子又は置換基である。R1〜R6のうちの隣接する二つが置換基である場合、各置換基は互いに異なる置換基である。〕【選択図】なし

Description

本発明は、有機エレクトロルミネッセンス素子の発光効率及び耐久性を高めることができる有機エレクトロルミネッセンス素子用材料と、当該有機エレクトロルミネッセンス素子用材料を用いた有機エレクトロルミネッセンス素子、表示装置及び照明装置に関する。
有機エレクトロルミネッセンス素子は、一対の電極間に発光性の有機化合物を含有する発光層を備えた固体素子である。一対の電極に電圧を印加して発光層に正孔及び電子を注入すると、正孔と電子の再結合により励起子(エキシトン)が生成する。この励起子が失活する際、発光層から光が放出される。
電極間には発光層以外の有機層も形成されることがあるが、いずれの層もサブミクロンオーダーの薄い膜である。また、発光層は数Vから数十V程度の電圧で発光することができるため、有機エレクトロルミネッセンス素子は次世代の薄型ディスプレイ、面発光照明等への利用が期待されている。
実用化に向けた有機エレクトロルミネッセンス素子の開発としては、プリンストン大学より、励起三重項からのリン光発光を用いる有機エレクトロルミネッセンス素子の報告がされて以来、室温でリン光を示す材料の開発が活発になってきている。また、リン光発光を利用する有機エレクトロルミネッセンス素子は、以前の蛍光発光を利用する有機エレクトロルミネッセンス素子に比べて原理的に約4倍の発光効率の実現が可能であることから、その材料開発を初めとし、層構成、電極等の研究開発が世界中で行われている。
研究開発過程において、特に問題となっているのは、発光材料自身が有機化合物であるがゆえの耐久性の低さであり、耐久性を向上させるべく、数多くの発光物質が開発されてきた。
耐久性向上の一つの手段としては縮合環の利用が挙げられ、三つのイミダゾール環を結合して一つの縮合環を形成することにより、広いπ共役構造を有する材料の開発が進められている(例えば、特許文献1及び2参照。)。
しかしながら、広いπ共役構造を有する材料は、芳香環等の置換基の導入によって分子の平面性が高くなりやすい。
分子の平面性が高いと、分子同士のスタックが生じて凝集及び結晶化しやすく、隣接層との界面接合が不十分となって発光効率が低下する。凝集及び結晶化によって、他の材料との相溶性も低くなるため、有機エレクトロルミネッセンス素子に用いたときの耐久性が低かった。
また、分子の平面性が高い材料は、三重項エネルギー準位が低いため、青色発光素子への適用が難しかった。
特開2007−63220号公報 国際公開第2005/037954号
本発明は上記問題及び状況に鑑みてなされ、その解決課題は、有機エレクトロルミネッセンス素子の発光効率及び耐久性を高めることができる有機エレクトロルミネッセンス素子用材料、当該有機エレクトロルミネッセンス素子用材料を用いた有機エレクトロルミネッセンス素子、表示装置及び照明装置を提供することである。
本発明者は、上記課題を解決すべく、上記問題の原因等について検討する過程において、化合物の広いπ共役構造にともなう分子の平面性の向上が、有機エレクトロルミネッセンス素子の発光効率及び耐久性を低下させる要因であると推測した。すなわち、分子の平面性が高い材料を有機エレクトロルミネッセンス素子に用いると、膜中の同じ化合物の分子との間で又は他の化合物の分子との間で相互作用が強くなり、凝集ひいては結晶化することが考えられる。結晶化によって、隣接層との界面接合が不十分となり、発光効率が低下するとともに、膜状態が不安定となるため、耐久性が低下してしまう。また、広いπ共役構造による高い三重項エネルギー準位も低下してしまう。
本発明者らは鋭意検討を重ねた結果、広いπ共役構造の材料を用いた場合においても、適切な置換基を導入して分子間の相互作用を適度に調整することにより、上述した凝集及び結晶化を抑えて、有機エレクトロルミネッセンス素子の発光効率及び耐久性を高めることができることを見いだし、本発明に至った。
すなわち、本発明に係る課題は、以下の手段によって解決される。
1.下記一般式(1)で表される構造を有する化合物を含有することを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子用材料。
Figure 2016103568
〔一般式(1)において、R〜Rは、それぞれ独立に、水素原子又は置換基である。R〜Rのうちの隣接する二つが置換基である場合、各置換基は互いに異なる置換基である。ただし、RとR、RとR、RとRの全ての組み合わせにおいて、いずれか一方の置換基が直鎖アルキル基である場合、他方の置換基は、それぞれ独立に、置換基を有する単環の芳香環、縮合芳香環、ジアリールアミノ基、シリル基又はホスフィノ基である。〕
2.前記一般式(1)において、R〜Rのうち、少なくとも二つ以上が水素原子であることを特徴とする第1項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子用材料。
3.前記一般式(1)において、三つのイミダゾール環が結合して形成された縮合環の中心に位置し、当該縮合環の面に対して垂直な軸を中心に、120°ごとに回転させたときの前記一般式(1)で表される構造がそれぞれ異なっていることを特徴とする第1項又は第2項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子用材料。
4.少なくとも発光層を含む複数の有機層からなる発光ユニットと、前記発光ユニットを挟持する一対の電極と、を備える有機エレクトロルミネッセンス素子であって、
前記複数の有機層のうちの少なくとも1層が、第1項から第3項までのいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子用材料を含有することを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
5.前記発光層が、前記有機エレクトロルミネッセンス素子用材料を含有することを特徴とする第4項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
6.前記発光層が、青色リン光発光性化合物を含有していることを特徴とする第5項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
7.第4項から第6項までのいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子を具備することを特徴とする表示装置。
8.第4項から第6項までのいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子を具備することを特徴とする照明装置。
本発明の上記手段により、有機エレクトロルミネッセンス素子の発光効率及び耐久性を高めることができる有機エレクトロルミネッセンス素子用材料、当該有機エレクトロルミネッセンス素子用材料を用いた有機エレクトロルミネッセンス素子、表示装置及び照明装置を提供できる。
本発明の効果の発現機構又は作用機構は明確になっていないが、以下のように推察される。
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子用材料は、三つのイミダゾール環の縮合環に結合するR〜Rが水素原子か、互いに結合して環を形成することがない独立した置換基であり、隣接するR〜R同士が置換基である場合には互いに異なる置換基を導入している。このようなR〜Rは、分子間の相互作用の強まりを抑えるとともに、隣接するR〜R間に立体障害を生じさせ、縮合環の平面に対して傾斜するため、分子の平面性の広がりを抑えることができる。結果として、π共役系の拡大が抑えられ、分子間の相互作用が減ったことから、分子間の凝集及び結晶化を抑えることができたと推察される。
分子の平面性の広がりを抑えることにより、縮合環による高い三重項エネルギー準位の低下を防いで高い発光性を維持することができる。また、凝集及び結晶化の抑制により隣接層との界面接合が良化するため、キャリアー輸送性ひいては発光性が向上し、高い発光効率が得られたと推察される。さらに、凝集及び結晶化の抑制によって膜中での化合物の安定性が向上し、高い発光効率だけでなく高い耐久性も両立できたと推察される。
式(A)で表される構造を有する化合物の立体的な分子モデルの側面図 式(A)で表される構造を有する化合物の立体的な分子モデルの上面図 例示化合物1の立体的な分子モデルの側面図 例示化合物1の立体的な分子モデルの上面図 本発明の一実施の形態の表示装置の概略構成を示す斜視図 表示装置における有機EL素子の製造過程を示す断面図 表示装置における有機EL素子の製造過程を示す断面図 表示装置における有機EL素子の製造過程を示す断面図 表示装置における有機EL素子の製造過程を示す断面図 表示装置における有機EL素子の製造過程を示す断面図 本発明の一実施の形態の照明装置の概略構成を示す断面図
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子用材料は、上記一般式(1)で表される構造を有する化合物を含有することを特徴とする。この特徴は請求項1から請求項8までの各請求項に係る発明に共通の技術的特徴である。
本発明の実施態様としては、有機エレクトロルミネッセンス素子の発光効率及び耐久性を高める観点から、上記一般式(1)において、R〜Rのうち、少なくとも二つ以上が水素原子であることが好ましい。
同様の観点から、上記一般式(1)において、三つのイミダゾール環が結合して形成された縮合環の中心に位置し、当該縮合環の面に対して垂直な軸を中心に、120°ごとに回転させたときの前記一般式(1)で表される構造がそれぞれ異なっていることが好ましい。
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子は、発光ユニットが備える複数の有機層のうちの少なくとも1層が、上記有機エレクトロルミネッセンス素子用材料を含有する。これにより、有機エレクトロルミネッセンス素子の発光効率及び耐久性を高める効果が得られる。
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子は、表示装置及び照明装置に好適に具備され得る。これにより、発光効率及び耐久性の高い表示装置及び照明装置を提供することができる。
以下、本発明とその構成要素及び本発明を実施するための形態について詳細な説明をする。
なお、本願において、「〜」は、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用する。
〔有機エレクトロルミネッセンス素子用材料〕
本発明の有機エレクトロルミネッセンス(EL:Electro−Luminescence)素子用材料は、下記一般式(1)で表される構造を有する化合物を含有する。
Figure 2016103568
〔一般式(1)において、R〜Rは、それぞれ独立に、水素原子又は置換基である。R〜Rのうちの隣接する二つが置換基である場合、各置換基は互いに異なる置換基である。ただし、RとR、RとR、RとRの全ての組み合わせにおいて、いずれか一方の置換基が直鎖アルキル基である場合、他方の置換基は、それぞれ独立に、置換基を有する単環の芳香環、縮合芳香環、ジアリールアミノ基、シリル基又はホスフィノ基である。〕
上記一般式(1)で表される構造は、三つのイミダゾールの環化縮合によって形成された高次π共役構造を母核としている。高次π共役構造とは、π共役が分子内に高度に広がっている共役構造をいう。一般に、ベンゼン、ナフタレン、アントラセンのようにπ共役系が拡大するほど、三重項エネルギー準位が低下することが知られている。しかしながら、本発明の化合物が母核とする高次π共役構造は、特異的に単環のイミダゾールとほぼ同じ三重項エネルギー準位を示す。これは、高次π共役構造、すなわち三つのイミダゾールの縮合環において、中央のトリアジン環が芳香族の特性を示しながらも、π共役系の拡大に寄与しないためと推測されている。
上記一般式(1)において、それぞれ独立に水素原子又は置換基であり、隣接するR〜R同士が置換基である場合には互いに異なる置換基をR〜Rとして導入することにより、他分子の置換基との相互作用を適度に抑えることができる。隣接するR〜R同士は互いに結合して新たに環を形成することがないため、芳香環によるπ共役系の拡大を抑え、非芳香性の環によって疎水性が高まり、化合物分子の凝集及び配向が生じることを防ぐことができる。このように、分子間の相互作用を適度に調整し、π共役系の拡大を抑制することにより、有機EL素子に化合物を用いたときの発光効率及び耐久性の低下の要因である、同種又は他種の分子とのスタック、多分子の凝集、結晶化等を抑えることができる。
〜Rの置換基としては、アルキル基、シクロアルキル基、アリールアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基(芳香族炭化水素基、芳香族炭化水素環基、芳香族炭素環基等ともいう)、ヘテロアリール基(芳香族複素環基ともいう)、複素環基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基等のカルボニル基、スルファモイル基、アシル基、アミド基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、ヘテロアリールスルホニル基、アミノ基、フッ化炭化水素基、シリル基、ホスフィンオキシド基、フッ素原子等が挙げられ、これらはさらに置換基を有していてもよい。さらに有していてもよい置換基としては、R〜Rの置換基と同じ置換基が挙げられる。
〜Rとして列挙した置換基のなかでも、相互作用の調整がしやすいという観点から、アルキル基、フッ化炭化水素基、カルボニル基、アミノ基、シリル基、ホスフィンオキシド基、アリールアルキル基、アリール基又はヘテロアリール基が好ましく、アルキル基、シリル基、アリール基又はヘテロアリール基がより好ましく、アリール基又はヘテロアリール基がさらに好ましい。
また、R〜Rのうち、少なくとも一つが14個以上のπ電子を有する芳香族複素環を有することが好ましい。14個以上のπ電子を有する芳香族複素環を有する置換基としては、例えばカルバゾリル基、ジベンゾフラニル基、ジベンゾチオフェニル基等が挙げられ、なかでもカルバゾリル基又はジベンゾフラニル基が好ましい。
アルキル基としては、炭素数3以上のアルキル基が好ましく、直鎖、分岐又は環状のいずれであっていてもよいが、分岐のアルキル基であることが好ましい。
アルキル基として、具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、2−エチルエキシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、n−ドデシル基等が挙げられ、なかでもエチル基、n−プロピル基、イソプロピル基又は2−メチルブチル基が好ましく、イソプロピル基又はs−ブチル基がより好ましく、イソプロピル基がさらに好ましい。
上記アルキル基のなかでも、立体的構造のかさ高さによる分子間相互作用の制御のためには、分岐のアルキル基であることが好ましく、具体的には、イソプロピル基、2−メチルプロピル基、t−ブチル基又は2−エチルヘキシル基であることが好ましい。また、アルキル基同士の相互作用による分子間の相互作用を調整する観点から、炭素数5以上のアルキル基であることが好ましく、具体的には、2−エチルヘキシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基又はn−ドデシル基であることが好ましい。
フッ化炭化水素基は、アルキル基の水素原子の少なくとも一つがフッ素原子で置換された置換基である。フッ化炭化水素基としては、トリフルオロメチル基又はテトラフルオロエチル基が好ましく、トリフルオロメチル基がより好ましい。フッ素原子は水素原子に比較して立体的に大きなファンデルワールス半径を有するため、立体障害性が大きく、好ましい。また、電気陰性度が大きいため、フッ化炭化水素基の導入により、同じイミダゾール環に結合する他の置換基又は他の分子との相互作用を適度な範囲に調整することができる。
アリール基としては、単環のアリール基、具体的にはフェニル基、ビフェニレン基、ターフェニレン基等が挙げられ、これらは任意の位置にさらに置換基を有していてもよい。アリール基がさらに置換基を有する場合の置換基としては、アルキル基、ヘテロアリール基等を好適に用いることができる。
ヘテロアリール基としては、例えばピリジン基、ピリミジン基、トリアジン基、カルバゾリル基、カルボリニル基、ジアザカルバゾリル基(カルボリニル基のカルボリン環を構成する炭素原子の一つが窒素原子で置換されたもの)、イミダゾリル基、ピラゾリル基、トリアゾリル基、ベンゾイミダゾリル基、インドリル基、ベンゾピラゾリル基、フラニル基、チエニル基、ベンゾフラニル基、ベンゾチエニル基、ジベンゾフラニル基、ジベンゾチオフェニル基、アザジベンゾフラニル基、アザジベンゾチオフェニル基等が挙げられ、これらは置換基を有していてもよい。なかでも、単環又は3縮環のヘテロアリール基が好ましく、ピリジル基、ピリミジル基、トリアジン基、カルバゾリル基、アザカルバゾリル基、ジアザカルバゾリル基、ジベンゾフラニル基、ジベンゾチオフェニル基、アザジベンゾフラニル基又はアザジベンゾチオフェニル基がより好ましく、トリアジン基、カルバゾリル基、ジベンゾフラニル基又はジベンゾチオフェニル基がより好ましく、トリアジン基又は9−カルバゾリル基がさらに好ましい。
アミノ基としては、ジアリールアミノ基等が挙げられ、さらに置換基を有していてもよく、当該置換基同士が結合してさらに環を形成していてもよい。このようなアミノ基の好ましい例としては、下記一般式(A−1)で表される置換基が挙げられる。
Figure 2016103568
上記一般式(A−1)において、X〜XはCR又は窒素原子であり、Rは水素原子又は上記一般式(1)中のR〜Rと同じ置換基である。YはCR、O、S、NR、SiR又はP(=O)Rであり、Rはアルキル基、アリール基又はヘテロアリール基である。
上記一般式(1)において、RとR、RとR及びRとRの組み合わせとしては、置換位置は限定されないが、分岐アルキル基とアリール基、分岐アルキル基とヘテロアリール基、水素原子とアリール基、水素原子とヘテロアリール基、水素原子とアミノ基、水素原子とシリル基又は水素原子と水素原子の組み合わせが好ましく、水素原子以外の置換基はさらに置換基を有していてもよい。なかでも、RとR、RとR及びRとRの組み合わせのうち、少なくとも一つの組み合わせが水素原子と水素原子であることが好ましい。
とR、RとR及びRとRの好ましい組み合わせに用いることができるアリール基としては、キシリル基、イソプロピルフェニル基、m−ビフェニレン基又はm−ターフェニレン基が好ましく、m−ビフェニレン基又はm−ターフェニレン基がより好ましい。また、好ましく用いることができるヘテロアリール基としては、9−カルバゾリル基、3−カルバゾリル基、ジベンゾフラニル基、ジベンゾチオフェニル基、置換基を有するピリジル基、置換基を有していてもよいトリアジン基、置換基を有していてもよいピリミジン基等が挙げられ、発光性を高める観点では、9−カルバゾリル基、置換基を有するトリアジン基又は置換基を有するピリミジル基が好ましい。
さらに、上記の組み合わせの置換位置において、R、R及びRが、9−カルバゾリル基、ジベンゾフラニル基、ジベンゾチオフェニル基、m−ビフェニレン基及びm−ターフェニレン基のいずれかであることが好ましく、R、R及びRが、m−ビフェニレン基、m−ターフェニレン基、3−カルバゾリル基又は置換基を有するトリアジン基であることが好ましい。
ただし、RとR、RとR、RとRの全ての組み合わせにおいて、いずれか一方の置換基が直鎖アルキル基である場合、他方の置換基は、それぞれ独立に、置換基を有する単環の芳香環、縮合芳香環、ジアリールアミノ基、シリル基又はホスフィノ基である。
同じイミダゾール環に結合された二つの置換基のうち、一方が直鎖アルキル基である場合、他方の置換基に対する立体障害作用が小さいため、分子の平面性が高まり、発光効率及び耐久性が低下する要因となる。しかしながら、他方の置換基が上記のように立体的にかさ高い置換基であれば、化合物の母核である縮合環の平面に対してR〜Rの各置換基が傾斜した立体構造となるため、化合物分子の平面性の広がりを抑えることができる。
図1A及び図1Bは、下記式(A)で表される構造を有する化合物の立体的な分子モデルをそれぞれ側面及び上面から示す図である。
Figure 2016103568
上記式(A)で表される構造は、上記一般式(1)において、R、R及びRがいずれもメチル基であり、R、R及びRがいずれも置換基を有しないフェニル基である構造である。この場合、図1A及び図1Bに示すように、フェニル基と高次π共役構造(三つのイミダゾールの縮合環)のそれぞれの面がなす角度が小さくなり、分子全体の平面性が高くなる。平面性が高いとπ共役系がフェニル基まで拡大し、高次π共役構造が本来有する高い三重項エネルギー準位が低下してしまう。
また、高い平面性は分子間の相互作用を高めるため、二分子のスタック及び多分子の凝集が生じやすくなる。一分子体に比較して、二分子スタック体及び多分子凝集体は、三重項エネルギー準位が低いだけでなく、キャリアー輸送性を低下させる可能性もある。化合物を有機EL素子に用いた場合、スタック及び凝集が進行すると膜中で結晶化が生じる。結晶化により、隣接層との界面接合が不十分となってキャリアー輸送性及び他種の分子との相溶性が低下し、有機EL素子の発光効率及び耐久性を低下させる要因となる。
図2A及び図2Bは、下記式で表される構造を有する例示化合物1の立体的な分子モデルをそれぞれ側面及び上面から示す図である。
Figure 2016103568
上記例示化合物1は、上記一般式(1)において、R、R及びRがいずれもメチル基であり、R、R及びRがいずれも置換基を有するフェニル基(2,6−キシリル基)である化合物である。図2A及び図2Bに示すように、例示化合物1はキシリル基の面が高次π共役構造の面に対して大きくねじれている。このように、一方の置換基の立体障害作用が小さくても、他方の置換基が立体的にかさ高い場合には、分子の平面性の広がりがないため、上述したような二分子スタック及び多分子凝集は生じにくい。また、置換基が芳香環であっても、高次π共役構造と置換基のそれぞれの面がなす角度が大きく保たれているのであれば、π共役系の拡大は生じず、高次π共役構造が本来有する高い三重項エネルギー準位を維持することができる。
以上のように、三つのイミダゾールの縮合環の高次π共役構造を有する化合物は、置換基が膜中における化合物の物性に与える影響が大きい。この化合物を有機EL素子用の材料として用いる場合には、分子間の相互作用を適切に調整できる置換基として、上述のR〜Rを選択することにより、高い発光効率及び耐久性を有機EL素子に与えることができる。
上記一般式(1)においては、R〜Rのうち、少なくとも二つが水素原子であることが、置換基である他のR〜Rの自由度を高めて分子の平面性の広がりを抑える観点から好ましく、三つが水素原子であることがより好ましく、四つが水素原子であることがさらに好ましい。自由度の高まりにより、膜中でのアモルファス性が向上し、結晶化を抑制することができるとともに、熱振動や振動時の分子運動を緩和することができ、耐久性を向上させることができる。合成の容易さの観点からは、R〜Rのうち、三つが水素原子であることが好ましく、耐久性向上の観点からは、RとR、RとR、RとRの各組み合わせにおいて、いずれか一つが水素原子であることが好ましい。
また、上記一般式(1)において、R〜Rのそれぞれが互いに異なると、分子間の置換基同士の相互作用が弱くなり、凝集ひいては結晶化を抑えて、化合物を有機EL素子に用いたときの発光効率及び耐久性の低下を抑えることができ、好ましい。
上記一般式(1)において、三つのイミダゾールの縮合環の中心に位置し、当該縮合環の面に対して垂直な軸を中心に、120°ごとに回転させたときの上記一般式(1)で表される構造がそれぞれ異なっていることが好ましい。このような化合物は、C3回転軸を有しないという。C3回転軸とは、120°ごと回転させたときの各構造が全て同じ構造であるときの回転軸をいう。C3回転軸を有しない化合物は分子の対称性が低く、多分子が集合したときのエントロピーが、C3回転軸を有する化合物と比較して大きい。エントロピーが大きいほど、膜中での化合物分子の安定性が向上するとともに自由度も向上するため、化合物分子の凝集、配向、結晶化等を抑えることができ、化合物を有機EL素子に用いたときの発光効率及び耐久性を向上させることができる。
なお、一般式(1)において、C3回転軸を有するのは、R、R及びRが全て水素原子か同一の置換基であり、かつR、R及びRが全て水素原子か同一の置換基の場合である。
以下に上記一般式(1)で表される化合物を例示するが、本発明はこれら例示化合物1〜43に限定されることはない。
Figure 2016103568
Figure 2016103568
Figure 2016103568
Figure 2016103568
Figure 2016103568
Figure 2016103568
Figure 2016103568
本発明の化合物は、J.Am.Chem.Soc.,1994,116,391−392、J. Org. Chem., vol.44, No24, 1979, p4243、特許第4259236号公報、国際公開第2005/037954号等を参考に合成することができる。
以下、上記一般式(1)で表される化合物の合成例として、例示化合物4及び19の合成方法を説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
<例示化合物4の合成例>
Figure 2016103568
工程(S21):5.0gの中間体a2(2−ブロモ−5−イソプロピル−4−フェニルイミダゾール)を、500mLの0.1M水酸化ナトリウム溶液に加え、さらに3.5gの一塩化ヨウ素を添加して、室温で4時間、さらに50℃で1時間撹拌した。析出した固体を水、ヘキサンで順次洗浄し、3.0gの中間体b2を得た。中間体b2はそのまま次工程(S22)に用いた。
工程(S22):1.5gの中間体b2を容器に入れ、窒素雰囲気下で封管した。この容器にマイクロウェーブ反応装置(200W)を用いてマイクロウェーブを2時間照射し、反応させた。冷却後、得られた固体をGPC(Gel Permeation Chromatography)により精製し、目的の例示化合物4を90mg得た。例示化合物4の構造はNMR及びマススペクトルにより同定した。
<例示化合物19の合成例>
Figure 2016103568
工程(S11): J. Org. Chem., vol.44, No24, 1979, p4243の記載にしたがって得られた2.0gの中間体a1を50mLのクロロベンゼンに溶解し、−20℃に冷却した。この溶液に0℃以下を保ちながら5.5gの臭素を滴下した。50℃で4時間撹拌した後、精製して1.2gの中間体b1を得た。中間体b1の構造はNMRによって確認した。
工程(S12):1.0gの中間体b1を窒素気流下のフラスコに入れ、さらに脱水DMF(DiMethylFuran)を50mL加えて溶解させた。この溶液に2.0gの9H−カルバゾールを加えた後、100mgの酸化銅(I)及び100mgのジピバロイルメタンを加えた。得られた混合溶液を200℃で8時間加熱還流した。放冷後、ジクロロメタンを加え、中性になるまで水洗したのち、カラムクロマトグラフィーにより精製して、目的の例示化合物19を240mg得た。例示化合物19の構造はNMR及びマススペクトルによって同定した。
有機EL素子用材料として用いる場合には、合成によって得られた化合物に対してさらに昇華精製を2回実施することが好ましい。
〔有機エレクトロルミネッセンス素子〕
本発明の有機EL素子は、少なくとも発光層を含む複数の有機層からなる発光ユニットと、当該発光ユニットを挟持する一対の電極と、を備え、複数の有機層の少なくとも1層が、上述した本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子用材料を含有する。
キャリアー輸送性が高く、膜中の分子間の相互作用が適度である本発明の有機EL素子用材料を有機層に用いることにより、有機EL素子の発光効率及び耐久性を高めることができる。
発光ユニットを構成する発光層以外の有機層としては、発光層と陰極との間に電子輸送層、正孔阻止層、電子注入層等を設けることもできるし、発光層と陽極との間に正孔輸送層、電子阻止層、正孔注入層等を設けることもできる。電子を輸送するという役割からは、正孔阻止層、電子注入層も電子輸送層の1種であり、正孔を輸送するという役割から、電子阻止層、正孔注入層も正孔輸送層の1種であるといえる。発光層以外の有機層は、必要に応じて設けることができる。
本発明の有機EL素子の代表的な構成としては、下記構成例(1)に示す基本的な構成の他、下記構成例(2)〜(7)が挙げられる。なかでも、構成例(7)が好ましいが、本発明の有機EL素子の構成はこれらに限定されない。
(1)陽極/発光層/陰極
(2)陽極/発光層/電子輸送層/陰極
(3)陽極/正孔輸送層/発光層/陰極
(4)陽極/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/陰極
(5)陽極/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極
(6)陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/陰極
(7)陽極/正孔注入層/正孔輸送層/電子阻止層/発光層/正孔阻止法/電子輸送層/電子注入層/陰極
〔発光層〕
発光層は、一対の電極のそれぞれから輸送された電子及び正孔が再結合し、発光する層である。発光は、発光層中又は発光層と隣接する層との界面のいずれで起こってもよい。
本発明の有機EL素子は、1層以上の発光層を備えることができる。
発光層の全層厚は、特に制限はないが、膜の均質性を高め、発光時における過剰な高電圧の印加を防ぐとともに駆動電流に対する発光色の安定性を高める観点から、2nm〜5μmの範囲内であることが好ましく、2〜500nmの範囲内であることがより好ましく、5〜200nmの範囲内であることがさらに好ましい。
発光層が複数ある場合、それぞれの発光層の層厚は2nm〜1μmの範囲内であることが好ましく、2〜200nmの範囲内であることがより好ましく、3〜150nmの範囲内であることがさらに好ましい。
発光層は、発光ドーパント(発光性ドーパント化合物、ドーパント化合物、ドーパント等ともいう)と、ホスト化合物(発光ホスト、ホスト、マトリックス材料等ともいう)と、を含有することが好ましい。
〔発光ドーパント〕
発光ドーパントとしては、蛍光発光ドーパント、リン光発光ドーパントを好ましく用いることができ、少なくとも1層の発光層がリン光発光ドーパントを含有することが好ましい。
発光ドーパントは、構造の異なるドーパント同士を組み合わせる、蛍光発光ドーパントとリン光発光ドーパントとを組み合わせる等、複数種を併用して用いることができる。これにより、任意の発光色を得ることができる。
本発明の有機EL素子の発光色は、「新編色材化学ハンドブック」(日本色材学会編、東京大学出版会、1985)の108ページの図4.16に記載されているように、分光放射輝度計CS−2000(コニカミノルタ社製)で測定した結果をCIE色度座標に当てはめることにより、決定される。
本発明においては、1層又は複数層の発光層が発光色の異なる複数の発光ドーパントを含有し、白色発光を示すことも好ましい。白色を示す発光ドーパントの組み合わせについては特定に限定しないが、例えば青と橙、青と緑と赤との組み合わせ等が挙げられる。
発光色の白色は、2度視野角正面輝度を上記分光放射輝度計で測定した際に、1000cd/mでのCIE1931表色系における色度が、x=0.39±0.09、y=0.38±0.08の領域内にあることが好ましい。
発光層中の発光ドーパントの濃度は任意に決定することができる。発光層は、発光層の層厚方向に均一な濃度の発光ドーパントを含有することもできるし、発光層の層厚方向に任意の濃度分布で発光ドーパントを含有することもできる。
〔リン光発光ドーパント〕
リン光発光ドーパントは、励起三重項からの発光が観測される化合物である。具体的には、室温(25℃)にてリン光を発光するリン光発光性化合物であり、リン光量子収率が、25℃において0.01以上の化合物であると定義されるが、好ましいリン光量子収率は0.1以上である。
上記リン光量子収率は、第4版実験化学講座7の分光IIの398頁(1992年版、丸善)に記載の方法により測定できる。溶液中でのリン光量子収率は種々の溶媒を用いて測定できるが、本発明に係るリン光発光ドーパントは、任意の溶媒のいずれかにおいて上記リン光量子収率(0.01以上)が達成されればよい。
リン光発光ドーパントの発光原理としてはエネルギー移動型とキャリアートラップ型の2種が挙げられる。エネルギー移動型の場合、キャリアーが輸送されるホスト化合物上でキャリアーの再結合が起こってホスト化合物の励起状態が生成し、このエネルギーをリン光発光ドーパントに移動させることでリン光発光ドーパントからの発光を得る。キャリアートラップ型の場合、リン光発光ドーパントがキャリアートラップとなり、リン光発光ドーパント上でキャリアーの再結合が起こってリン光発光ドーパントからの発光が得られる。いずれの場合においても、リン光発光ドーパントの励起状態のエネルギーはホスト化合物の励起状態のエネルギーよりも低いことが条件である。
リン光発光ドーパントは、有機EL素子の発光層に使用される公知のものの中から適宜選択して用いることができる。
本発明においては、下記一般式(DP)で表される構造を有するリン光発光性化合物をリン光発光ドーパントとして好適に用いることができる。
Figure 2016103568
〔一般式(DP)中、Mは、Ir、Pt、Rh、Ru、Ag、Cu又はOsである。A、A、B及びBは、それぞれ、炭素原子又は窒素原子である。環Zは、A及びAとともに形成される6員の芳香族炭化水素環又は5員若しくは6員の芳香族複素環である。環Zは、B及びBとともに形成される5員又は6員の芳香族複素環である。環Z及び環Zは置換基を有していてもよく、さらに置換基同士が結合して縮環構造を形成していてもよい。また、各々の配位子の置換基が、互いに結合して、配位子同士が連結していてもよい。L′は、Mに配位したモノアニオン性の二座配位子である。m′は、0〜2のいずれかの整数である。n′は、1〜3のいずれかの整数である。m′+n′は、2又は3である。m′及びn′が2以上のとき、環Z及び環Zの配位子及びL′は、それぞれ同じでも異なっていてもよい。〕
なかでも、Mは、Ir、Pt、Rh、Ru又はOsであることが好ましく、Ir、Pt又はOsであることがより好ましい。
また、環Zは5員の芳香族複素環であることが好ましく、B及びBは少なくとも一方が窒素原子であることが好ましい。
環Z及び環Zが有していてもよい置換基としては、上記一般式(1)のR〜Rと同じ置換基が挙げられる。また、環Z及び環Zが有する置換基は、置換基同士が結合して縮環構造を形成していてもよいし、それぞれの配位子の置換基が互いに結合して、配位子同士が連結していてもよい。
上記一般式(DP)で表される構造は、下記一般式(DP−1)又は(DP−2)で表される構造であると、青色の発光を示す長寿命のリン光発光性化合物が得られ、好ましい。本発明の一般式(1)で表される構造を有する化合物を含有する材料は、高い三重項エネルギー準位を有するため、このような青色リン光発光性化合物を発光ドーパントに対して、ホスト化合物として用いることにより、発光効率及び耐久性が高い青色の有機EL素子が得られる。
Figure 2016103568
上記一般式(DP−1)において、M、A、A、B、B、環Z、L′、m′及びn′は、一般式(DP)におけるM、A、A、B、B、環Z、L′、m′及びn′と同義である。
上記一般式(DP−1)において、B〜Bは、B及びBと芳香族複素環を形成する原子群であり、水素原子又は置換基を有していてもよい炭素原子、窒素原子、酸素原子又は硫黄原子である。B〜Bが有していてもよい置換基としては、上記一般式(DP)における環Z及び環Zが有していてもよい置換基と同義の基が挙げられる。
上記一般式(DP−1)において、B〜Bで形成される芳香族複素環は、下記一般式(DP−1a)、(DP−1b)及び(DP−1c)のいずれかで表される構造を有することが好ましく、一般式(DP−1c)で表される構造を有することがより好ましい。
Figure 2016103568
上記一般式(DP−1a)、(DP−1b)及び(DP−1c)において、*1は一般式(DP−1)のAとの結合部位を表し、*2はMとの結合部位を表す。
上記一般式(DP−1a)、(DP−1b)及び(DP−1c)において、Rb〜Rbは水素原子又は置換基であり、Rb〜Rbとしては、上記一般式(DP)における環Z及び環Zが有していてもよい置換基と同じ置換基が挙げられる。
上記一般式(DP−1a)におけるB及びBは、炭素原子又は窒素原子であり、より好ましくは少なくとも一つが炭素原子である。
上記一般式(DP−1c)におけるB及びBは、炭素原子又は窒素原子であり、より好ましくは少なくとも一つが炭素原子であり、RbとRbがさらに互いに結合して縮環構造を形成していることがより好ましく、このとき新たに形成される縮環構造は芳香族環であることが好ましく、ベンゾイミダゾール環、イミダゾピリジン環、イミダゾピラジン環又はプリン環であることが好ましい。Rbは、アルキル基又はアリール基であることが好ましく、フェニル基であることがより好ましい。
Figure 2016103568
上記一般式(DP−2)において、M、A、A、B、B、環Z、L′、m′及びn′は、一般式(DP)におけるM、A、A、B、B、環Z、L′、m′及びn′と同義である。
上記一般式(DP−2)において、環Zは、B〜Bとともに形成される5員の芳香族複素環である。
上記一般式(DP−2)において、A及びBは、炭素原子又は窒素原子であり、L″は2価の連結基である。L″の2価の連結基としては、例えばアルキレン基、アルケニレン基、アリーレン基、ヘテロアリーレン基、2価の複素環基、O、S、これらを任意に組み合わせた連結基等が挙げられる。
一般式(DP−2)で表される構造は、さらに下記一般式(DP−2a)で表されることが好ましい。
Figure 2016103568
上記一般式(DP−2a)において、M、A、A、B、B、環Z、環Z、L′、m′及びn′は、一般式(DP−2)におけるM、A、A、B、B、環Z、環Z、L′、m′及びn′と同義である。
上記一般式(DP−2a)において、L″及びL″は、C−Rb又は窒素原子であり、Rbは、水素原子又は置換基である。L″及びL″がC−Rbの場合はRb同士が互いに結合し環を形成してもよい。
上記一般式(DP)、(DP−1)、(DP−2)及び(DP−2a)において、Aが炭素原子であることが好ましく、さらにAが炭素原子であることが好ましい。より好ましくは、環Zが、置換若しくは無置換の、ベンゼン環又はピリジン環であり、さらに好ましくはベンゼン環である。
〔蛍光発光ドーパント〕
蛍光発光ドーパントとしては、励起一重項からの発光が可能な化合物を使用でき、励起一重項からの発光が観測される限りは特に限定されない。
蛍光発光ドーパントとしては、例えばアントラセン誘導体、ピレン誘導体、クリセン誘導体、フルオランテン誘導体、ペリレン誘導体、フルオレン誘導体、アリールアセチレン誘導体、スチリルアリーレン誘導体、スチリルアミン誘導体、アリールアミン誘導体、ホウ素錯体、スクアリウム誘導体、オキソベンツアントラセン誘導体、フルオレセイン誘導体、ペリレン誘導体、ポリチオフェン誘導体、希土類錯体系化合物等が挙げられる。
また、遅延蛍光を利用した発光ドーパントも開発されており、これらを用いてもよい。遅延蛍光を利用した発光ドーパントの具体例としては、例えば国際公開第2011/156793号、特開2011−213643号公報、特開2010−93181号公報等に記載の化合物が挙げられるが、これらに限定されない。
〔ホスト化合物〕
ホスト化合物としては、室温(25℃)におけるリン光発光のリン光量子収率が、0.1未満の化合物が好ましく、リン光量子収率が0.01未満の化合物がより好ましい。
また、ホスト化合物の励起状態エネルギーは、同一層内に含有される発光ドーパントの励起状態エネルギーよりも高いことが好ましい。
発光層に含有される複数の化合物のなかで、発光層中でのホスト化合物の質量比は、20%以上であることが好ましい。
ホスト化合物は、単独種で用いても複数種併用してもよい。ホスト化合物を複数種用いることで、電荷移動調整が可能であり有機EL素子の発光効率を高めることができる。
本発明で用いることができるホスト化合物としては、上述のように三重項エネルギー準位が高い本発明の有機EL素子用材料を好適に使用することができるが、特に制限はなく、低分子化合物でも繰り返し単位を有する高分子化合物でもよく、ビニル基やエポキシ基のような反応性基を有する化合物でもよい。
公知のホスト化合物としては、正孔輸送能又は電子輸送能を備えながらも、発光の長波長化を防ぐとともに、有機EL素子を高温駆動時や素子駆動中の発熱に対して安定して動作させる観点から、高いガラス転移温度(Tg)を有することが好ましい。好ましくはTgが90℃以上であり、より好ましくは120℃以上である。ここで、ガラス転移点(Tg)とは、DSC(Differential Scanning Calorimetry:示差走査熱量法)を用いて、JIS−K−7121に準拠した方法により求められる値である。
本発明の有機EL素子に用いることができる公知のホスト化合物の具体例としては、以下の文献に記載の化合物等が挙げられるが、本発明はこれらに限定されない。
特開2002−203683号公報、特開2002−363227号公報、特開2002−234888号公報、特開2002−280183号公報、特開2002−299060号公報、特開2002−302516号公報、特開2002−305083号公報、同2002−305084号公報、米国特許公開第2009/0017330号、米国特許公開第2009/0030202号、米国特許公開第2005/0238919号、国際公開第2001/039234号、国際公開第2009/021126号、国際公開第2008/056746号、国際公開第2007/063796号、国際公開第2007/063754号、国際公開第2004/107822号、国際公開第2006/114966号、国際公開第2009/086028号、国際公開第2009/003898号、国際公開第2012/023947号、特開2008−074939号公報、特開2007−254297号公報、EP2034538等。
〔電子輸送層〕
電子輸送層は、陰極から注入された電子を発光層へ輸送する層である。
電子輸送層の材料としては、電子の注入性、電子の輸送性及び正孔の障壁性のいずれかを有していればよく、上述のように、電子輸送層の材料として、本発明の有機EL素子用材料を用いることができる。
電子輸送層の材料としては、従来公知の化合物の中から任意の化合物を選択して用いることもできる。例えば、含窒素芳香族複素環誘導体(カルバゾール誘導体、アザカルバゾール誘導体(カルバゾール環を構成する炭素原子の一つ以上が窒素原子に置換されたもの)、ピリジン誘導体、ピリミジン誘導体、トリアジン誘導体、キノリン誘導体、キノキサリン誘導体、フェナントロリン誘導体、オキサゾール誘導体、チアゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、トリアゾール誘導体、ベンズイミダゾール誘導体、ベンズオキサゾール誘導体等)、ジベンゾフラン誘導体、ジベンゾチオフェン誘導体、芳香族炭化水素環誘導体(ナフタレン誘導体、アントラセン誘導体、トリフェニレン等)等が挙げられる。
また、配位子にキノリノール骨格やジベンゾキノリノール骨格を有する金属錯体、例えばトリス(8−キノリノール)アルミニウム(Alq)、トリス(5,7−ジクロロ−8−キノリノール)アルミニウム、トリス(5,7−ジブロモ−8−キノリノール)アルミニウム、トリス(2−メチル−8−キノリノール)アルミニウム、トリス(5−メチル−8−キノリノール)アルミニウム、ビス(8−キノリノール)亜鉛(Znq)等の他、これらの金属錯体の中心金属がIn、Mg、Cu、Ca、Sn、Ga又はPbに置き替わった金属錯体も、電子輸送材料として用いることができる。
その他、フタロシアニン誘導体、ジスチリルピラジン誘導体も電子輸送材料として用いることができるし、正孔注入層、正孔輸送層と同様、無機半導体も電子輸送材料として用いることができる。また、これらの材料を高分子鎖に導入した、又はこれらの材料を高分子の主鎖とした高分子材料を用いることもできる。
なお、ドープ材をゲスト材料としてドープして、n性の高い(電子リッチ)電子輸送層を形成してもよい。ドープ材としては、金属錯体やハロゲン化金属のような金属化合物等のn型ドーパントが挙げられる。このような構成の電子輸送層の具体例としては、例えば特開平4−297076号公報、同10−270172号公報、特開2000−196140号公報、同2001−102175号公報、J.Appl.Phys.,95,5773(2004)等の文献に記載されたものが挙げられる。
本発明の有機EL素子に用いられる、公知の好ましい電子輸送材料の具体例としては、以下の文献に記載の化合物等が挙げられるが、本発明はこれらに限定されない。
米国特許公開第2009/0115316号、米国特許公開第2009/0179554号、国際公開第2003/060956号、国際公開第2008/132085号、Appl.Phys.Lett.75,4(1999)、Appl.Phys.Lett.81,162(2002)、Appl.Phys.Lett.81,162(2002)、Appl.Phys.Lett.79,156(2001)、米国特許公開第2009/030202号、国際公開第2004/080975号、国際公開第2005/085387号、国際公開第2006/067931号、国際公開第2007/086552号、国際公開第2008/114690号、国際公開第2009/069442号、国際公開第2009/066779号、国際公開第2009/054253号、国際公開第2011/086935号、国際公開第2010/150593号、国際公開第2010/047707号、特開2010−251675号公報、特開2009−209133号公報、特開2009−124114号公報、特開2008−277810号公報、特開2006−156445号公報、特開2003−31367号公報、国際公開第2012/115034号等。
本発明におけるより好ましい電子輸送材料としては、ピリジン誘導体、ピリミジン誘導体、ピラジン誘導体、トリアジン誘導体、ジベンゾフラン誘導体、ジベンゾチオフェン誘導体、カルバゾール誘導体、アザカルバゾール誘導体、ベンズイミダゾール誘導体等が挙げられる。
電子輸送材料は単独で用いてもよく、また複数種を併用して用いてもよい。
本発明の電子輸送層の層厚については特に制限はないが、通常は2nm〜5μmの範囲であり、より好ましくは2〜500nmの範囲であり、さらに好ましくは5〜200nmの範囲である。
有機EL素子においては発光層で生じた光を電極から取り出す際、発光層から直接取り出される光と、光を取り出す電極と対極に位置する電極によって反射されてから取り出される光とが干渉を起こすことが知られている。光が陰極で反射される場合は、電子輸送層の総層厚を数nm〜数μmの間で適宜調整することにより、この干渉効果を効率的に利用することが可能である。一方で、電子輸送層を厚くすると電圧が上昇しやすくなるため、特に層厚が厚い場合においては、電子輸送層の電子移動度が10−5cm/Vs以上であることが好ましい。
〔正孔阻止層〕
正孔阻止層は、電子を輸送しつつ正孔を阻止することで電子と正孔の再結合確率を向上させるため、発光層の陰極側に隣接して設けられることが好ましい。
正孔阻止層に用いられる材料としては、上述のように本発明の有機EL素子用材料を用いることができるが、上記電子輸送層に用いられる材料も好ましく用いられる。また、前述のホスト化合物として用いられる材料も正孔阻止層に好ましく用いられる。
正孔阻止層の層厚は、好ましくは3〜100nmの範囲であり、さらに好ましくは5〜30nmの範囲である。
〔電子注入層〕
電子注入層は、駆動電圧低下や発光輝度向上のため、設けることができる。
電子注入層については、特開平6−325871号公報、同9−17574号公報、同10−74586号公報等にもその詳細が記載されている。
電子注入層の材料として、上述のように、本発明の有機EL素子用材料を用いることができる。その他の電子注入層に好ましく用いられる材料の具体例としては、金属(ストロンチウムやアルミニウム等)、アルカリ金属化合物(フッ化リチウム、フッ化ナトリウム等)、アルカリ土類金属化合物(フッ化マグネシウム、フッ化カルシウム等)、金属酸化物(酸化アルミニウム等)、金属錯体(リチウム8−ヒドロキシキノレート(Liq)等)等が挙げられる。また、前述の電子輸送材料を用いることも可能である。これら材料は単独で用いてもよく、複数種を併用して用いてもよい。
電子注入層はごく薄い層であることが好ましく、素材にもよるがその層厚は0.1〜5nmの範囲が好ましい。また、構成材料が断続的に存在する不均一な膜であってもよい。
〔正孔輸送層〕
正孔輸送層の材料としては、正孔の注入性、正孔の輸送性及び電子の障壁性のいずれかを有していればよく、従来公知の化合物の中から任意のものを選択して用いることができる。
正孔輸送層の材料としては、例えばポルフィリン誘導体、フタロシアニン誘導体、オキサゾール誘導体、フェニレンジアミン誘導体、スチルベン誘導体、トリアリールアミン誘導体、カルバゾール誘導体、インドロカルバゾール誘導体、アントラセンやナフタレン等のアセン系誘導体、フルオレン誘導体、フルオレノン誘導体、ポリビニルカルバゾール、芳香族アミンを主鎖又は側鎖に導入した高分子材料又はオリゴマー、ポリシラン、導電性ポリマー又はオリゴマー(例えば、(キシチオフェン)−ポリスチレンスルホネート(以下、PEDOT:PSSと略す)、アニリン系共重合体、ポリアニリン、ポリチオフェン等)等が挙げられる。上述のように、正孔輸送層の材料として、本発明の有機EL素子用材料を用いることもできる。
トリアリールアミン誘導体としては、(4,4′−ビス〔N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ〕ビフェニル)(以下、α−NPDと略す)に代表されるベンジジン型や、MTDATAに代表されるスターバースト型、トリアリールアミン連結コア部にフルオレンやアントラセンを有する化合物等が挙げられる。
他に、特表2003−519432号公報や特開2006−135145号公報等に記載されているようなヘキサアザトリフェニレン誘導体も正孔輸送層の材料として用いることができる。また、不純物をドープしたp性の高い正孔輸送層としてもよい。その例としては、特開平4−297076号公報、特開2000−196140号公報、同2001−102175号公報の各公報、J.Appl.Phys.,95,5773(2004)等に記載されたものが挙げられる。
また、特開平11−251067号公報、J.Huang et.al.著文献(Appl.Phys.Lett.80(2002),p.139)に記載されているような、いわゆるp型の正孔輸送層の材料として、p型−Si、p型−SiC等の無機化合物を用いることもできる。さらに、Ir(ppy)に代表されるような中心金属にIrやPtを有するオルトメタル化有機金属錯体も好ましく用いられる。
上述した正孔輸送層の材料のなかでも、トリアリールアミン誘導体、カルバゾール誘導体、インドロカルバゾール誘導体、有機金属錯体、芳香族アミンを主鎖若しくは側鎖に導入した高分子材料又はオリゴマー等が好ましく用いられる。
上述した材料は単独種で用いてもよく、また複数種を併用してもよい。
正孔輸送層の層厚については特に制限はないが、通常は2nm〜5μmの範囲であり、より好ましくは5〜500nmの範囲であり、より好ましくは5〜200nmの範囲である。
〔電子阻止層〕
電子阻止層は、正孔を輸送しつつ電子を阻止することで電子と正孔の再結合確率を向上させるため、発光層の陽極側に隣接して設けられることが好ましい。
電子阻止層の材料としては、上述のように、本発明の有機EL素子用材料を用いることができる他、上記正孔輸送層に用いられる材料又は上記発光層に用いられるホスト化合物を好ましく用いることができる。
電子阻止層の層厚としては、好ましくは3〜100nmの範囲であり、さらに好ましくは5〜30nmの範囲である。
〔正孔注入層〕
正孔注入層は、駆動電圧低下及び発光輝度向上のため、陽極と発光層又は陽極と正孔輸送層との間に設けることができる。
正孔注入層の材料としては、上述のように、本発明の有機EL素子用材料を用いることができる他、上記正孔輸送層に用いられる材料等が挙げられる。なかでも、銅フタロシアニンに代表されるフタロシアニン誘導体、特表2003−519432号公報、特開2006−135145号公報等に記載されているようなヘキサアザトリフェニレン誘導体、酸化バナジウムに代表される金属酸化物、アモルファスカーボン、ポリアニリン(エメラルディン)、ポリチオフェン等の導電性高分子、トリス(2−フェニルピリジン)イリジウム錯体等に代表されるオルトメタル化錯体、トリアリールアミン誘導体等が好ましい。上記正孔注入層の材料は単独種で用いてもよく、また複数種を併用して用いてもよい。
〔表示装置〕
本発明の表示装置は、上述した本発明の有機EL素子を具備する。
図3は、本発明の一実施の形態として、アクティブマトリクス型の表示装置10の概略構成を示している。
図3に示すように、表示装置10は、マトリクス状に配列された複数の画素21と、各画素21間において互いに直交するように設けられた複数のX線22及びY線23と、X線22とY線23の交点に設けられた複数のアクティブ素子24と、を備えている。
各画素21は、赤、緑及び青のいずれかの色の発光を示す有機EL素子を備えている。各色の画素21を配列して発光させることにより、フルカラーの表示が可能である。
一つの画素21には一つのアクティブ素子24が対応しており、各アクティブ素子24は対応する各画素21が備える有機EL素子の電極に接続されている。アクティブ素子24は、X線22から電流が供給され、かつY線23からも電流が供給されると、対応する画素21に電流を供給する。アクティブ素子24は、例えばコンデンサー、TFT(Thin Film Transistor)等により構成することができる。
画像の表示時には、X線22にラインごとに画像の有効領域を示す水平領域信号を出力し、当該水平領域信号と同期してY線23に画像信号を出力する。水平領域信号の出力によりX線22から電流が供給され、画像信号の出力によりY線23から電流が供給されたアクティブ素子24は、対応する画素21に電流を供給する。電流の供給によって各画素21の有機EL素子が発光すると、図3に示す矢印の方向に赤、緑及び青の各色の光が出射し、フルカラーの画像を再現することができる。
複数の画素21は、図4A〜図4Eに示すようにして製造することができる。
図4Aに示すように、基板11上に、酸化インジウムスズ(ITO;Indium Tin Oxide)等の陽極材料の膜を形成した後にエッチングする、マスクを用いて所定のパターンのITO膜を形成する等して、各画素21の陽極1Aを所定のパターンで形成する。
次に、図4Bに示すように、基板11上であって各陽極1Aの間に、隔壁12(幅20μm、厚さ2.0μm)をフォトリソグラフィー法により形成する。隔壁12の材料としては、例えば非感光性ポリイミド等を用いることができる。
図4Cに示すように、陽極1A上であって各隔壁12間に、インクジェットヘッド法等により、正孔注入層1Bを形成する。
図4Dに示すように、各画素21の正孔注入層1B上に、インクジェット法等により、青色の発光層1C、緑色の発光層1C及び赤色の発光層1Cをそれぞれ形成する。
さらに、図4Eに示すように、形成した各画素21の発光層1C、1C及び1C全体を覆うように、アルミニウム等を蒸着して陰極1Dを形成する。
本発明の表示装置は、上述したアクティブマトリクス型に限らず、パッシブマトリクス型の表示装置であってもよい。
〔照明装置〕
本発明の照明装置は、上述した本発明の有機EL素子を具備する。
図5は、本発明の一実施の形態の照明装置30の概略構成を示している。
照明装置30は、図5に示すように、基板31上に陽極1A、発光層1C及び陰極1Dからなる有機EL素子1が設けられている。基板31上には接着剤33を介して封止材32が接着され、基板31上の有機EL素子1は封止材32によって封止されている。酸素ガス、水蒸気等による有機EL素子1の劣化を防ぐため、封止材32の内部には不活性ガス34が充填され、捕水剤35が設けられている。
照明装置30では、一対の電極1A及び1Eに電圧を印加することにより、発光層1Cが発光し、図5において矢印で示す方向に光が出射する。
以下、実施例をあげて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例において「部」又は「%」の表示が用いられるが、特に断りがない限り「質量部」又は「質量%」を表す。
〔実施例I〕
〔有機EL素子101〕
100mm×100mm×1.1mmのガラス基板上に、厚さ100nmの陽極をITOにより所定のパターンで形成した。この基板をイソプロピルアルコールで超音波洗浄し、乾燥窒素ガスで乾燥した後、UVオゾン洗浄を5分間行った。
得られた透明の基板上に、正孔注入層の組成物からなる塗布液をスピンコート法により塗布し、200℃で乾燥して、膜厚20nmの正孔注入層を形成した。塗布液としては、PEDOT/PSS(Bayer社製のBaytron P Al 4083)を純水で65%に希釈した溶液を用いた。
次に、正孔注入層を有する基板を、市販の真空蒸着装置の基板ホルダーに固定した。200mgのα−NPD、200mgの化合物H−1、200mgの比較化合物1、100mgの化合物D−37、250mgのAlqを、それぞれ別のモリブデン製抵抗加熱ボートに入れて真空蒸着装置に取り付けた。
上記化合物H−1、比較化合物1及び化合物D−37は、それぞれ下記式で表される構造を有する。
Figure 2016103568
真空蒸着装置の真空槽を4×10−4Paまで減圧した後、α−NPDの入った加熱ボートを通電して加熱し、0.1nm/秒の蒸着速度で正孔注入層上に蒸着して、厚さ30nmの正孔輸送層を設けた。続いて、化合物H−1の入った加熱ボートを通電して加熱し、0.1nm/秒の蒸着速度で正孔輸送層上に蒸着して、厚さ10nmの電子阻止層を設けた。
次に、比較化合物1及び化合物D−37の各加熱ボートを通電して加熱し、それぞれ0.1nm/秒及び0.010nm/秒の蒸着速度で電子阻止層上に共蒸着して、厚さ40nmの発光層を設けた。発光層中の比較化合物1はホスト化合物であり、化合物D−37はリン光発光ドーパントである。
さらに、Alqの入った加熱ボートを通電して加熱し、0.1nm/秒の蒸着速度で発光層上に蒸着し、厚さ30nmの電子輸送層を設けた。
引き続き、フッ化リチウムを蒸着して厚さ0.5nmの電子注入層を形成し、さらにアルミニウムを蒸着して厚さ110nmの陰極を形成して、有機EL素子101を作製した。
〔有機EL素子102〜115〕
上記有機EL素子101の作製において、ホスト化合物と発光ドーパントの組み合わせを下記表1に示すように変えたこと以外は、有機EL素子101と同様にして各有機EL素子102〜115を作製した。
なお、表1中の例示化合物は、本発明の有機EL素子用材料として列挙した例示化合物である。
また、表1中に記載の比較化合物2及び化合物D−54は、下記式で表される構造を有する。なお、比較化合物1及び2は、特開2007−63220号公報に記載されている化合物である。
Figure 2016103568
〔評価〕
各有機EL素子101〜115の発光効率及び耐久性を評価した。
〔発光効率〕
各有機EL素子101〜115を用いて、図5に示す照明装置と同様の構成の照明装置を次のようにして製造した。
ガラスカバーを封止材として、封止材の周囲にエポキシ系光硬化型の接着剤(東亞合成社製のラクストラックLC0629B)を塗布し、封止材を有機EL素子上に被せて接着剤の塗布部分を有機EL素子のガラス基板に密着させた。ガラス基板側から有機EL素子の周囲にUV光を照射することにより接着剤を硬化させて、有機EL素子を封止し、照明装置を製造した。
有機EL素子の通電を、室温(25℃)、2.5mA/cmの定電流の条件下で行って、有機EL素子を発光させ、発光開始直後の発光輝度(L0)[cd/m]を測定することにより、外部取り出し量子効率(η)を算出した。発光輝度の測定には、CS−2000(コニカミノルタ社製)を用いた。
各有機EL素子101〜115の外部取り出し量子効率を、有機EL素子102の外部取り出し量子効率を100としたときの相対値で表し、これを発光効率として評価した。発光効率の値は、大きいほど有機EL素子102に比較して発光効率が高いことを示す。
〔半減寿命〕
各有機EL素子101〜115の半減寿命を耐久性の一つとして、次のように評価した。
室温(温度25℃)下で、有機EL素子を初期輝度4000cd/mを与える電流で定電流駆動し、駆動開始から輝度が初期輝度の半分になるまでの時間を測定した。
各有機EL素子101〜115の測定時間を、半減寿命として評価した。半減寿命の値は、大きいほど有機EL素子102に比較して寿命が長く、耐久性が高いことを示す。
〔熱安定性〕
各有機EL素子101〜115の熱安定性を耐久性の評価項目の一つとして、次のようにして評価した。
有機EL素子の通電を2.5mA/cmの定電流条件下で行って、有機EL素子の発光効率を測定し、初期輝度4000cd/mを与えるときの電流値を求めた。その後、有機EL素子を60℃の恒温槽に入れ、当該恒温槽内で先に求めた電流値で低電流駆動し、輝度が初期輝度の半分になるまでの時間、すなわち半減寿命を測定した。測定した半減寿命から、熱安定性を下記式によって算出した。なお、室温での半減寿命は、上記半減寿命の評価において測定された半減寿命を用いた。
熱安定性(%)=60℃での半減寿命/室温での半減寿命×100
熱安定性の値は、100に近いほど熱安定性に優れ、耐久性が高いことを示す。
下記表1は、評価結果を示している。
下記表1において、各有機EL素子101〜109の評価値を、有機EL素子102の測定時間を100としたときの相対値で表し、各有機EL素子110〜115の評価値を、有機EL素子111の測定時間を100としたときの相対値で表している。
また、下記表1の熱安定性の項目中の「ND」は、熱安定性の評価において測定した60℃での半減寿命が著しく短く、測定時の駆動電圧も顕著に上昇したため、測定不能であったことを示している。測定不能の原因については明確ではないが、有機EL素子中のいずれかの層が結晶化したか、隣接層との界面接合の不備が生じて配向化し、ダークスポットが生成したため、駆動電圧が上昇したと推定される。
Figure 2016103568
上記表1に示すように、発光ドーパントとして化合物D−37を用いた場合、本発明の実施例である有機EL素子103〜110は、比較例の有機EL素子101及び102に比較して、発光効率が高く半減寿命も長い。熱安定性も2倍以上に良化していることから、本発明によれば、発光効率及び耐久性に優れた有機EL素子が得られることが分かる。
また、比較例の有機EL素子102及び111によれば、発光ドーパントを化合物D−37から化合物D−54に変更すると、発光効率が約半分に低下し、半減寿命も大きく低下していることが分かる。これに対し、本発明の実施例である有機EL素子112〜115は、発光ドーパントを化合物D−54に変更しても発光効率の低下が少なく、良好な半減寿命を示すとともに、熱安定性にも優れていることがわかる。
〔実施例II〕
上記実施例Iの有機EL素子101の製造において、電子輸送層の材料を化合物E−1に変更し、発光ドーパントとホスト化合物の組み合わせを下記表2に示すように変更したこと以外は、有機EL素子101と同様にして、各有機EL素子201〜210を製造した。なお、表2中の例示化合物は、本発明の有機EL素子用材料として列挙した例示化合物である。
上記化合物E−1、下記表2に記載の化合物D−20及びD−32は、それぞれ下記構造を有する。
Figure 2016103568
製造した各有機EL素子201〜210の発光効率及び耐久性を、実施例Iと同様にして評価した。
下記表2は、評価結果を示している。なお、表2において、各有機EL素子201〜210の発光効率、半減寿命及び熱安定性を示す値は、有機EL素子201の値を基準とする相対値としている。
Figure 2016103568
表2に示すように、発光ドーパントが化合物D−20及びD−32のいずれの場合も、本発明の実施例である有機EL素子202〜205及び207〜210は、発光効率及び耐久性に優れていることが分かる。
〔実施例III〕
上記実施例IIの有機EL素子201の製造において、発光ドーパントとホスト化合物の組み合わせを下記表3に示すように変更したこと以外は、有機EL素子201と同様にして各有機EL素子301〜310を製造した。なお、表3中の例示化合物は、本発明の有機EL素子用材料として列挙した例示化合物である。
下記表3に記載の化合物D−3及びD−14は、それぞれ下記構造を有する。
Figure 2016103568
製造した各有機EL素子301〜310の発光効率及び耐久性を、実施例Iと同様にして評価した。
下記表3は、評価結果を示している。なお、表3において、各有機EL素子301〜310の発光効率、半減寿命及び熱安定性を示す値は、有機EL素子301の値を基準とする相対値としている。
Figure 2016103568
表3に示すように、発光ドーパントが化合物D−3及びD−14のいずれの場合も、本発明の実施例である有機EL素子302〜305及び307〜310は、発光効率及び耐久性に優れていることが分かる。
〔実施例IV〕
上記実施例Iの有機EL素子101の製造において、正孔輸送層、電子阻止層、発光ホスト及び電子輸送層の材料を、下記表4に示すように変更したこと以外は、有機EL素子101と同様にして、各有機EL素子401〜405を製造した。
製造した各有機EL素子401〜405の発光効率及び耐久性を、実施例Iと同様にして評価した。
下記表4は、評価結果を示している。なお、表4において、各有機EL素子401〜405の発光効率、半減寿命及び熱安定性を示す値は、有機EL素子401の値を基準とする相対値としている。
Figure 2016103568
表4に示すように、本発明の実施例である有機EL素子402〜405は、比較例の有機EL素子401より、発光効率が高く半減寿命も長い。また、熱安定性が約2倍に良化していることが、共通した特徴である。
表4に示す評価結果から、本発明に係る化合物は、発光層以外の正孔輸送層、電子阻止層、電子輸送層等に適用することができ、適用することにより発光効率及び耐久性に優れた有機EL素子が得られ、特に熱安定性が向上することが分かる。
〔実施例V〕
図3に示す構成の表示装置に用いられる有機EL素子を、図4A〜図4Eに示す製造過程と同様にして製造し、フルカラーの画像を表示可能かどうか確認した。
ガラス基板(NHテクノグラス社製のNA45)上にITO膜を形成した後、エッチングして各画素の領域にそれぞれの陽極1Aを形成した。各陽極1Aのパターンを、厚さ100nm、100μm×100μmのサイズの正方形とした。次に、ガラス基板上であって各陽極の間に、各画素を隔てる厚さ2.0μm、幅20μmの隔壁をフォトリソグラフィー法により形成した。隔壁の材料としては非感光性ポリイミドを用いた。
さらに、各画素の陽極上であって各隔壁12間に下記正孔注入層の組成物を、インクジェットヘッド(エプソン社製のMJ800C)を用いて吐出注入した。その後、紫外光を200秒間照射し、60℃、10分間の乾燥処理を行って、厚さ40nmの正孔注入層を設けた。
(正孔注入層の組成物)
化合物HT−1:20質量部
シクロヘキシルベンゼン:50質量部
イソプロピルビフェニル:50質量部
各画素の正孔注入層上に、下記青色発光層、緑色発光層及び赤色発光層の各組成物を、青、緑及び赤の順に画素が並ぶように、それぞれインクジェットヘッドにより吐出注入した。その後、60℃で10分間の乾燥処理を行って、青、緑及び赤の各色の発光層を設けた。
(青色発光層の組成物)
化合物D−63:0.04質量部
本発明の例示化合物35:0.8質量部
シクロヘキシルベンゼン:60質量部
イソプロピルビフェニル:40質量部
(緑色発光層の組成物)
上記化合物D−20:0.04質量部
本発明の例示化合物35:0.7質量部
シクロヘキシルベンゼン:50質量部
イソプロピルビフェニル:50質量部
(赤色発光層の組成物)
上記化合物D−14:0.04質量部
本発明の例示化合物41:0.7質量部
シクロヘキシルベンゼン:50質量部
イソプロピルビフェニル:50質量部
上記化合物HT−1及びD−63は、下記式で表される構造を有する。
Figure 2016103568
次に、各画素の発光層上に上記化合物E−1を蒸着して、厚さ45nmの電子輸送層を設け、電子輸送層上にフッ化リチウムを蒸着して、厚さ0.5nmの電子注入層を設けた。さらに、各画素全体を覆うように、アルミニウムを蒸着して、厚さ130nmの陰極を設けることにより、各画素が備える有機EL素子を製造した。
各画素の有機EL素子の一対の電極に電圧を印加したところ、各有機EL素子からの青色、緑色及び赤色の発光が観測され、フルカラーの画像の表示が可能であることが確認できた。
10 表示装置
21 画素
10 有機EL素子
11 基板
12 隔壁
1A 陽極
1C、1C、1C、1C 発光層
1D 陰極
30 照明装置
31 基板
32 封止材

Claims (8)

  1. 下記一般式(1)で表される構造を有する化合物を含有することを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子用材料。
    Figure 2016103568
    〔一般式(1)において、R〜Rは、それぞれ独立に、水素原子又は置換基である。R〜Rのうちの隣接する二つが置換基である場合、各置換基は互いに異なる置換基である。ただし、RとR、RとR、RとRの全ての組み合わせにおいて、いずれか一方の置換基が直鎖アルキル基である場合、他方の置換基は、それぞれ独立に、置換基を有する単環の芳香環、縮合芳香環、ジアリールアミノ基、シリル基又はホスフィノ基である。〕
  2. 前記一般式(1)において、R〜Rのうち、少なくとも二つ以上が水素原子であることを特徴とする請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子用材料。
  3. 前記一般式(1)において、三つのイミダゾール環が結合して形成された縮合環の中心に位置し、当該縮合環の面に対して垂直な軸を中心に、120°ごとに回転させたときの前記一般式(1)で表される構造がそれぞれ異なっていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子用材料。
  4. 少なくとも発光層を含む複数の有機層からなる発光ユニットと、前記発光ユニットを挟持する一対の電極と、を備える有機エレクトロルミネッセンス素子であって、
    前記複数の有機層のうちの少なくとも1層が、請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子用材料を含有することを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
  5. 前記発光層が、前記有機エレクトロルミネッセンス素子用材料を含有することを特徴とする請求項4に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
  6. 前記発光層が、青色リン光発光性化合物を含有していることを特徴とする請求項5に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
  7. 請求項4から請求項6までのいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子を具備することを特徴とする表示装置。
  8. 請求項4から請求項6までのいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子を具備することを特徴とする照明装置。
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