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JP2016069222A - ブレイク方法並びにブレイク装置 - Google Patents

ブレイク方法並びにブレイク装置 Download PDF

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JP2016069222A
JP2016069222A JP2014200118A JP2014200118A JP2016069222A JP 2016069222 A JP2016069222 A JP 2016069222A JP 2014200118 A JP2014200118 A JP 2014200118A JP 2014200118 A JP2014200118 A JP 2014200118A JP 2016069222 A JP2016069222 A JP 2016069222A
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政二 清水
Seiji Shimizu
政二 清水
孝志 川畑
Takashi Kawabata
孝志 川畑
智史 國生
Tomoji Kokusho
智史 國生
山本 幸司
Koji Yamamoto
山本  幸司
宇航 宮崎
Takahiro Miyazaki
宇航 宮崎
陽一 今泉
Yoichi Imaizumi
陽一 今泉
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Abstract

【課題】レーザ照射による基板への熱的な影響を抑え、貼り合わせ基板をきれいな端面で分断することができるブレイク方法並びにブレイク装置を提供する。
【解決手段】2枚のガラス基板1、2を貼り合わせた貼り合わせ基板Mのブレイク方法および装置であって、ガラス基板1の表面にカッターホイール16を押し付けながら相対移動させることにより有限深さの亀裂Sを形成するメカニカルスクライブ工程と、亀裂Sに沿ってレーザビームを走査することにより生じる熱応力分布によって、メカニカルスクライブ工程で加工した亀裂Sをさらに浸透させてガラス基板1をフルカットするレーザブレイク工程とからなり、メカニカルスクライブ工程では、ガラス基板1の表面に板厚の30〜80%の亀裂を形成し、レーザブレイク工程では、発振波長が5μm帯のレーザを使用する合せガラスの一方のガラス基板1のみをブレイクする方法。
【選択図】図3

Description

本発明は、2枚のガラス基板の貼り合わせ基板を分断するブレイク方法並びにブレイク装置に関する。特に本発明は、液晶ディスプレイパネル用の貼り合わせ基板等のような熱的に弱い物質が基板内部に介在する貼り合わせ基板を分断するのに適したブレイク方法並びにブレイク装置に関する。
なお、液晶ディスプレイパネル用貼り合わせ基板では、2枚のガラス基板の間に薄膜トランジスタ(TFT)やカラーフィルタ(CF)等の薄膜層が形成されるとともに、カラーフィルタを仕切るブラックマトリクス(BM)のような熱に敏感な材料が介在させてある。
従来から、レーザビームを照射しながら走査し、基板上に熱応力分布を発生させてスクライブを行うレーザスクライブ法を用いて、ガラス基板にブレイク予定ラインに沿った分断用の亀裂(クラック)を加工したり(例えば特許文献1参照)、あるいは、板厚が薄いガラス基板を完全分断(フルカット加工)したり(例えば特許文献2参照)する技術が知られている。
これまでのレーザスクライブ法では、主としてガラス基板による吸収係数の大きいCOレーザ等を用いて基板表面近傍を走査加熱するとともに、これに追従して冷却機構のノズルから加熱領域に冷媒を噴射するようにしている。これによって、先行の加熱によって生じる圧縮応力と、次の急冷によって生じる引張応力とによる応力分布により、ガラス基板の表面に分断用の亀裂を生じさせたり、基板の厚み全部に亀裂を浸透させてフルカット加工したりしている。
比較的厚い基板(例えば1mm以上の板厚)に対するレーザスクライブ加工では、深さ方向に熱伝導する緩和時間の影響による上下方向の温度差により、基板表面側が引張応力、基板内部(深部)側が圧縮応力となる応力分布が主に影響するようになり、この上下方向の応力分布により、亀裂(クラック)が加工される。一方、薄い基板(例えば0.2〜0.3mm程度の板厚)の場合は、深さ方向の温度差がほとんど生じないため、上下方向の応力分布の影響もほとんど生じないが、これに代わって走査経路に沿った前後方向の応力分布が影響するようになり、この前後方向の応力分布により強い応力分布が形成されるとフルカット加工が可能になる。
国際公開WO03/008352号公報 特開2001−170786号公報
上述したCOレーザ等による従来のフルカット加工(レーザブレイク加工)は、薄いガラス基板であっても端面強度を保持しつつ分断することができる点で優れており、しかも後工程でメカニカルなブレイク処理を行わずに基板をいきなり分断(ブレイク)できることから工程が簡略化できる点で好ましい。
しかしながら上述したフルカット加工では、レーザビームの走査経路に沿った前後方向の応力分布だけを利用して基板を分断することから、前後方向に大きな応力差を生じさせる必要があり、十分な大きさの単位面積あたりの入熱量が必要になる。そのためには照射するレーザの出力パワーを大きくしたり、走査速度を遅くしたりすることが必要になるが、いずれの場合も基板表面での吸収係数が大きいCOレーザ等によるレーザ照射では、基板表面近傍に与えるダメージが大きく表面に細かい傷が生じてしまう。
これに対し、特許文献2(0055欄)には、波長が10.6μmのCOレーザに代えて、COレーザ、YAGレーザ、エキシマレーザを用いてレーザスクライブすることも記載されている。しかし、当該文献にはCOレーザを使用する際の具体的な説明はない。一般に、ガラス基板に対する吸収係数の小さいレーザを使用すれば、原理的には基板表面近傍での吸収を抑えられることから表面のダメージを抑えた加工が可能になると考えられるが、吸収係数の小さいレーザでスクライブを行った場合には、以下に説明するような別の問題が生じる。
すなわち、例えば液晶ディスプレイパネル用の貼り合わせ基板においては、2枚の基板の貼り合わせ部分(2枚の基板の間隙)に熱的に弱い材料(例えばブラックマトリクス(BM))を用いた層が設けられているため、吸収係数が小さいレーザでフルカット加工を行おうとすると、基板表面のダメージは抑えられる反面、表面側の基板を透過したレーザの影響により貼り合わせ部分に設けられた部材のダメージ(性能や外見の劣化)が問題となるおそれが生じる。
したがって、貼り合わせ基板を対象とする加工の場合、レーザビームを走査して加熱することによるフルカット加工、すなわちレーザブレイク加工では、基板表面または貼り合わせ部分に与える熱ダメージが問題となるおそれがあった。
そのため、本来は分断面の端面品質が優れたレーザによるブレイク処理が可能であるにもかかわらず、熱的に弱い部分が内部に存在する貼り合わせ基板への利用が困難であった。
一方、熱的な影響が全く生じないフルカット加工としては、カッターホイール(スクライビングホイールともいう)をガラス基板に押し付けながら転動することにより亀裂を伴うスクライブラインを形成した後、スクライブラインを押圧して分断するメカニカルな方法もあるが、亀裂を厚み方向全部に浸透させて分断する際に、分断された端面同士が接触して損傷したり、亀裂が厚さ方向に真っ直ぐに進展せずに逸れてしまい、歩留まりが悪くなったりするという問題点がある。
そこで本発明は、レーザ照射での加熱による貼り合わせ基板への熱的な影響を抑え、貼り合わせ基板をきれいな端面で分断することができるブレイク方法並びにブレイク装置を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために本発明では次のような技術的手段を講じた。すなわち、本発明のブレイク方法は、2枚のガラス基板を貼り合わせた貼り合わせ基板の少なくとも一方のガラス基板を分断するブレイク方法であって、分断対象のガラス基板の表面にカッターホイールを押し付けながら相対移動させることにより、ブレイク予定ラインに沿って有限深さの亀裂を形成するメカニカルスクライブ工程と、前記亀裂に沿ってレーザビームを走査することにより生じる熱応力分布によって、前記メカニカルスクライブ工程で加工した亀裂をさらに浸透させて前記ガラス基板をフルカットするレーザブレイク工程とからなり、前記メカニカルスクライブ工程では、前記ガラス基板の表面に板厚の30〜80%の亀裂を形成し、前記レーザブレイク工程では、発振波長が5μm帯のレーザを使用してブレイクするようにしたことをその特徴とする。
ここで、5μm帯のレーザとは具体的には例えばCOレーザが該当する。
また本発明は、2枚のガラス基板を貼り合わせた貼り合わせ基板の少なくとも一方のガラス基板を分断するブレイク装置であって、分断対象のガラス基板の表面にブレイク予定ラインに沿って有限深さの亀裂を形成するメカニカルスクライブ工程を行うためのカッターホイールと、前記カッターホイールで形成される亀裂の深さが前記ガラス基板の板厚の30〜80%となるように前記カッターホイールの押圧荷重を制御する加工制御部と、前記亀裂に沿ってレーザビームを走査することにより生じる熱応力分布によって、前記メカニカルスクライブ工程で加工した亀裂をさらに浸透させて、前記ガラス基板をフルカットするレーザブレイク工程を行うためのレーザ照射部とからなり、前記レーザ照射部から照射されるレーザの発振波長が5μm帯のレーザであるブレイク装置もその特徴とする。
上記発明において、前記したメカニカルスクライブ工程で使用されるカッターホイールは、直径1〜3mmで、刃先となる稜線に沿って溝が形成された溝付きカッターホイールを用いるのがよい。
また、前記貼り合わせ基板の各ガラス基板は、その厚みが0.1〜0.4mmのものが適用される。
本発明によれば、先行するメカニカルスクライブ工程で、カッターホイールを用いてガラス基板の厚みの30〜80%の深い亀裂を容易に加工することができる。なお、カッターホイールは滑りにくい刃先の溝付きカッターホイールを用いてスクライブすることが好ましい。また、溝付きカッターホイールを用いることにより、低荷重であっても亀裂の浸透深さを上記範囲とすることができる。そして、この亀裂は、後続の5μm帯レーザ(COレーザ)を用いたレーザブレイク工程によって、基板厚み方向に浸透させることができ、これによりブレイク加工が行われる。この際、ブレイクされる部分、すなわち、亀裂の残存部分が薄いため、レーザ照射による入熱量を抑えて基板に生じさせる応力分布を小さくしても十分にフルカット状態とすることができる。そのため、入熱量を抑えたレーザ照射での加工が可能になり、基板表面および基板内部でのダメージの小さいレーザブレイクが可能になる。
しかも、レーザブレイク工程では、ガラスに対する吸収係数が比較的小さい波長帯である5μm帯レーザ(COレーザ)が用いられているので、レーザビームのエネルギーは基板表面だけで集中した吸収が抑えられ、ガラス基板内部でも吸収されるようになる。これにより基板内部を効率的かつ瞬時に加熱することができる。本発明によれば、従来から広く使用されているCOレーザに比べて、熱伝導を介さずに直接加熱できるので、この点からも少ない入熱量で効率的に必要な部分を加熱することができる。また、5μm帯よりも吸収係数がさらに小さいレーザ(例えば波長が1064nmのNd:YAGレーザ)を用いる場合は、基板を透過するエネルギーが増加するため、かえって基板内部に熱的ダメージを与えてしまうおそれがあるが、5μm帯の波長を有するレーザであれば、液晶ディスプレイ用に用いられるような薄いガラス基板であっても基板内部の貼り合わせ面に与える熱的影響はほとんど生じない。
よって、ガラス基板の表面および貼り合わせ面に対するレーザビームの熱によるダメージを回避することができ、ガラス基板の分断面における傷などの発生を抑制し、端面強度の高いきれいな分断面でブレイクすることが可能となる。
さらに従来のCOレーザでは、入熱量を確保するためにレーザビームのビームスポットの断面形状を楕円として直線方向に走査していたが、本発明ではブレイクに必要な入熱量を抑えることができるので、ビームスポットの断面形状を小さな丸形とすることができ、これにより、湾曲した線に沿った走査を行う異形分断の際でも、精度よく行うことができるといった効果がある。
本発明のブレイク方法を実施するためのブレイク装置の一実施形態を示す概略正面図。 本発明で用いられるカッターホイールを示す図。 本発明のブレイク方法に係るレーザブレイク工程を説明する斜視図。 本発明におけるガラス基板のブレイク状態を説明する斜視図。 本発明のブレイク装置を制御するコントローラを示すブロック図。
以下、本発明の詳細を図1〜図5に示した一実施形態に基づき説明する。本実施例では、それぞれの厚みが0.1〜0.4mmの薄板からなる2枚のガラス基板1、2が貼り合わされ、これらガラス基板の間に、TFTやカラーフィルタなどの薄膜層3が介在するようにした貼り合わせ基板Mであって、この薄膜層3にブラックマトリクス(BM)のような熱的に弱い層も含まれた構造の基板を扱うこととする。なお、ガラス基板には無アルカリガラスが用いられる。
そして、以下の説明では、上側の基板1の一部をブレイクするようにして端子領域を形成する加工を行う場合を例に説明する。なお、ブレイクされたガラス基板1の分断部分は、端材として取り除かれる。
図1は本発明に用いられるブレイク装置Aを示すものであって、貼り合わせ基板Mを載置するテーブル4を備えている。テーブル4は、貼り合わせ基板Mをテーブル4上の定位置で保持する保持手段を備えている。本実施例では、この保持手段として、テーブル4の表面に開口させた多数の小さなエア吸着孔(図示外)を介して貼り合わせ基板Mを吸着保持するようにしている。また、テーブル4は、水平なレール5に沿ってY方向(図1の前後方向)に移動できるようになっており、モータ(図示外)によって回転するネジ軸6により駆動される。さらにテーブル4は、モータを内蔵する回転駆動部7により水平面内で回動できるようになっている。
テーブル4を挟んで設けてある両側の支持柱8、8と、X方向に水平に延びるビーム(横桟)9とを備えたブリッジ10が、テーブル4上を跨ぐようにして設けられている。
ビーム9には、X方向に水平に延びるガイド11が設けられ、このガイド11にカッターホイール用スクライブヘッド12と、レーザ照射部用スクライブヘッド13とがモータ14を駆動源とする移動機構(図示外)によってガイド11に沿ってX方向に移動できるように取り付けられている。カッターホイール用スクライブヘッド12には、エアシリンダ等の昇降機構18により昇降するホルダ15を介してカッターホイール16が取り付けられており、レーザ照射部用スクライブヘッド13には、レーザビームを基板表面に集光するようにして照射するレーザ照射部17が設けられている。
なお、本実施例では、レーザ照射部17と、カッターホイール16とを個別のスクライブヘッド12、13に取り付けた例を示したが、同じスクライブヘッドに取り付けるようにすることも可能である。
カッターホイール16は、貼り合わせ基板Mの表面に押し付けて転動したときに、基板厚みの30〜80%の高浸透の亀裂Sを加工することができるものが用いられる。本実施例では、図2に示すように、円周稜線に沿って溝(切欠き)16aが形成され、残存した稜線が刃先部16bとなる超硬合金製のディスク体16cで形成された溝付きカッターホイールが用いられている。
なお、このような高浸透の加工用の溝付きカッターホイール16には、三星ダイヤモンド株式会社製のペネット(Penett;登録商標)カッターホイール、アピオ(APIO;登録商標)カッターホイールがある。前者はより深い亀裂Sを形成することができ、後者は前者よりは浅い亀裂Sを形成することができるので、加工対象基板に合わせて適宜選択することができる。
本発明のレーザ照射部17から照射されるレーザは、発振波長が5μm帯のCOレーザが用いられる。レーザの出力パワーおよび走査速度は、加工対象となる貼り合わせ基板Mのガラス基板の厚みや材質、加工される亀裂Sの深さによって異なるが、分断可能である出力パワーおよび走査速度の条件範囲のうち、できるだけダメージが小さくなる条件を選ぶようにする。すなわち、分断可能な範囲の中で、できるだけ出力パワーを小さくするとともに走査速度が遅くなりすぎない条件を選ぶのが望ましい。
さらに本発明のブレイク装置Aは、図5のブロック図に示すように、コントローラ20と、入力操作部21と、表示部22を備えている。コントローラ20は、CPU、RAM、ROM等のコンピュータハードウエアにより実現される機能的構成要素として、加工制御部23を備えている。加工制御部23は、吸着保持手段による貼り合わせ基板Mの吸着保持、ネジ軸6や回転駆動部7によるテーブル4の移動、モータ14によるスクライブヘッド12、13の移動、昇降機構18によるカッターホイール16の昇降動作や貼り合わせ基板Mへの押圧動作、レーザ照射部17からのレーザの出力パワー等、貼り合わせ基板Mに対する加工処理動作全般の制御を行う。入力操作部21はオペレータがブレイク装置Aに対して種々の操作指示やデータを入力するためのインターフェースであり、表示部22は処理メニューや動作状況を表示するためのものである。
次に、上記装置を用いた本発明のブレイク方法について説明する。
まず、図1および図3に示すように、貼り合わせ基板Mをテーブル4に載置し、上側のガラス基板1の表面にカッターホイール16を押し付けながら転動させることにより、ブレイク予定ラインに沿って有限深さの亀裂Sを形成する(メカニカルスクライブ工程)。
このメカニカルスクライブ工程では、溝付きカッターホイール16を用いることにより、ガラス基板1の厚みの30〜80%程度といった深い亀裂Sを低い押圧荷重で容易に加工することができる。なお、溝付きカッターホイールは基板上で滑りにくい(かかりやすい)ので、ガラス端にカッターホイールを衝突させてトリガとなる切欠きを形成し、基板端からスクライブ(外切り)することなく、基板端より少し内側からスクライブを開始(内切り)することができる。そして、本実施例では、ガラス基板1の厚み0.2mmに対し、亀裂Sの深さLが約70%程度となるようにする。この亀裂Sの深さは、コントローラ20における加工制御部23によって、カッターホイール16の押圧荷重を制御することによって行うことができる。
次いで、亀裂Sに沿ってレーザ照射部17からCOレーザビームを照射しながら走査して加熱する。このときに生じる熱応力分布によって、先行するメカニカルスクライブ工程で加工した亀裂Sをさらに厚み方向に浸透させて、ガラス基板1をフルカットする(レーザブレイク工程)。
なお、図4において、P1はレーザビームによる加熱領域を示している。
レーザブレイク工程では、発振波長が5μm帯のCOレーザを使用しており、ガラス基板の表面近傍だけで吸収されるのではなく、一部が基板内部で吸収されるので、基板内部を直接加熱することができる。なお、基板の厚みが0.2mmと薄いため、レーザ照射で加熱領域P1の表面から裏面に渡って瞬時に加熱され、深さ方向における温度差がほとんど生じない。よって加熱領域P1には深さ方向に一様な圧縮応力が発生する。
一方、加熱領域P1の周囲は加熱されておらず、加熱領域P1との周囲に応力分布が形成される。すなわち加熱領域P1には圧縮応力、加熱領域P1の周囲には引張応力が発生するようになり、これにより、図4に矢印で示したように、ガラス基板1を引き裂くように作用する力が働いて確実にガラス基板1をフルカット(ブレイク)することができる。
特に、本発明で使用されるCOレーザは、前述の通り発振波長が5μm帯のレーザであり、ガラス基板の表面近傍だけで吸収されるのではなく、一部が基板内部で吸収されるので、基板内部を直接加熱することができ、効率的かつ瞬時に分断面近傍を加熱することができる。したがって、従来から広く使用されているCOレーザに比べると、表面からの熱分散による熱量移動の際のロスが小さくなり、COレーザよりも小さい入熱量でのレーザブレイク(フルカット)が可能になることから、この点でも薄膜層3へのダメージを回避することができる。
さらに付け加えれば、5μm帯のCOレーザを使用したことにより、ガラス基板1の裏面(基板内部側)まで透過するエネルギーを十分に抑えることができる。すなわちNd:YAGレーザ等の1μm帯のレーザを使用した場合は、90%以上のエネルギーがガラス基板に吸収されずに透過し、薄膜層3で吸収されてダメージを与えるおそれが生じるが、5μm帯のCOレーザであれば大半がガラス基板内で吸収され、20〜30%のエネルギーだけが吸収されずに透過することになる。加えて、メカニカルスクライブ工程との組み合わせによりフルカットに必要となるエネルギーを抑えているので、薄膜層3への熱的な影響を効果的に抑えることができるとともに、基板表面での傷の発生を抑制し、端面強度が高くきれいな分断面でブレイクすることができる。
(実施例)
発明者等は、厚さ0.2mmのガラス基板にカッターホイール16で板厚の70%の深さの亀裂を加工した後、COレーザおよびCOレーザを用いて上記レーザブレイク工程の比較実験を行った。
その結果、COレーザの場合は基板表面におけるレーザの照射位置であるレーザスポットの温度が337℃でフルカット(ブレイク)することができた。なお、同じ条件でCOレーザを用いた場合、基板表面におけるレーザスポットの温度が444℃であった。このことからCOレーザのほうが約100℃も低い表面温度でブレイクできることがわかった。
以上説明したように、本発明では、先行するメカニカルスクライブ工程でカッターホイール16を用いてガラス基板の厚みの30〜80%の亀裂Sを加工し、続いて、後続のCOレーザを用いたレーザブレイク工程によって、亀裂Sを基板厚み方向に浸透させてフルカット(ブレイク)するようにしている。これにより、レーザブレイクで加工される部分の厚さ、すなわち、亀裂Sの残存部分が薄いため、COレーザによるダメージを与えないエネルギーでの加熱による熱応力分布によって、確実にガラス基板1をフルカット(ブレイク)することができる。
さらに、本発明におけるレーザブレイク工程では、COレーザを照射するときのエネルギーは、円形のビームスポットによる走査でも十分な熱量を基板の内部に与えることができる。
ビームスポットを円形とすることにより、直線ではなく曲線形状での加工が容易となる。すなわち、COレーザを用いた従来のレーザスクライブでは、基板表面にダメージを与えることなく、しかも入熱量を確保するために、ガラス基板上に照射されるレーザのビームスポットの形状を楕円とし、この楕円ビームスポットの走査方向と楕円ビームスポットにおける長軸の方向とを一致させるようにして加工するようにしていた。このとき、ビームスポットの形状が楕円であるがゆえに曲線形状の加工は困難であったが、本発明のレーザブレイクでは楕円形状のビームスポットではなく、円形のビームスポットにすることができるので、走査方向とビームスポットの方向を合わせる必要がなくなり、曲線形状の加工も容易になる。
以上、本発明の代表的な実施例について説明したが、本発明は必ずしも上記の実施形態に特定されるものでなく、その目的を達成し、請求の範囲を逸脱しない範囲内で適宜修正、変更することが可能である。
本発明は、2枚のガラス基板を貼り合わせた貼り合わせ基板のブレイクに利用される。
A ブレイク装置
M 貼り合わせ基板
S 亀裂
1、2 ガラス基板
3 薄膜層
4 テーブル
16 カッターホイール
16a 溝
16b 刃先部
16c ディスク体
17 レーザ照射部
18 昇降機構
20 コントローラ
23 加工制御部

Claims (5)

  1. 2枚のガラス基板を貼り合わせた貼り合わせ基板の少なくとも一方のガラス基板を分断するブレイク方法であって、
    分断対象のガラス基板の表面にカッターホイールを押し付けながら相対移動させることによりブレイク予定ラインに沿って有限深さの亀裂を形成するメカニカルスクライブ工程と、
    前記亀裂に沿ってレーザビームを走査することにより生じる熱応力分布によって、前記メカニカルスクライブ工程で加工した亀裂をさらに浸透させて前記ガラス基板をフルカットするレーザブレイク工程とからなり、
    前記メカニカルスクライブ工程では、前記ガラス基板の表面に板厚の30〜80%の亀裂を形成し、
    前記レーザブレイク工程では、発振波長が5μm帯のレーザを使用してブレイクするようにしたことを特徴とするブレイク方法。
  2. 前記カッターホイールは、直径1〜3mmで、刃先となる稜線に沿って溝が形成された溝付きカッターホイールである請求項1に記載のブレイク方法。
  3. 前記貼り合わせ基板の各ガラス基板の厚みが0.1〜0.4mmである請求項1または請求項2に記載のブレイク方法。
  4. 2枚のガラス基板を貼り合わせた貼り合わせ基板の少なくとも一方のガラス基板を分断するブレイク装置であって、
    分断対象のガラス基板の表面にブレイク予定ラインに沿って有限深さの亀裂を形成するメカニカルスクライブ工程を行うためのカッターホイールと、
    前記カッターホイールで形成される亀裂の深さが前記ガラス基板の板厚の30〜80%となるように前記カッターホイールの押圧荷重を制御する加工制御部と、
    前記亀裂に沿ってレーザビームを走査することにより生じる熱応力分布によって、前記メカニカルスクライブ工程で加工した亀裂をさらに浸透させて、前記ガラス基板をフルカットするレーザブレイク工程を行うためのレーザ照射部とからなり、
    前記レーザ照射部から照射されるレーザの発振波長が5μm帯のレーザであるブレイク装置。
  5. 前記カッターホイールは、直径1〜3mmで、刃先となる稜線に沿って溝が形成された溝付きカッターホイールである請求項4に記載のブレイク装置。
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