以下、本発明の例示的な実施形態が開示される。以下に示される実施形態の構成、ならびに当該構成によってもたらされる作用および結果(効果)は、あくまで一例である。本発明は、以下の実施形態に開示される構成以外によっても実現可能であるとともに、基本的な構成によって得られる種々の効果(派生的な効果も含む)を得ることが可能である。
図1は、実施形態に係る車高調整装置10を搭載する車両12の構成図である。なお、図1の場合、車高調整装置10の動作説明に関連しない車両12の構成の図示及び説明は省略している。
車両12の各車輪14FR,14FL,14RR,14RL(以下、各車輪を区別しない場合は単に「車輪14」と示す場合もある)には、それぞれ車高調整部として機能する例えば、空気ばね16FR,16FL,16RR,16RL(以下、各空気ばねを区別しない場合は単に「空気ばね16」と示す場合もある)が接続されている。各空気ばね16は、車両12の車体12aに対して車輪14の懸架状態を変化させると共に、車両12の振動を吸収する機能を有する。なお、空気ばね16FR,16FLは、前輪車高調整部という場合もある。また、空気ばね16RR,16RLは、後輪車高調整部という場合もある。空気ばね16は、公知の構造が利用可能である。空気ばね16は空気の弾性を利用するため金属ばねに比べて細かい振動を吸収しやすい。また、空気圧を制御することにより車高を一定に保つ、または所望の車高に調整したり、ばね定数を所望の値に変更することができる。
前輪車高調整部である空気ばね16FR,16FLは、前輪側切替部18aを介して、前輪用タンク20に接続されている。同様に、後輪車高調整部である空気ばね16RR,16RLは、後輪側切替部18bを介して、後輪用タンク22に接続されている。前輪用タンク20は、車体12aの前輪側の車高を調整するために空気ばね16FR,16FLに供給する圧力流体(圧縮空気)を貯留する。後輪用タンク22は、車体12aの後輪側の車高を調整するために空気ばね16RR,16RLに供給する圧力流体(圧縮空気)を貯留する。前輪側切替部18aは、例えば、複数のバルブで構成されている。後輪側切替部18bは、例えば、複数のバルブで構成されている。前輪側切替部18aは、前輪用タンク20に貯留された圧縮空気の流入出を切り替える電磁制御弁24aと、空気ばね16FRに対する圧縮空気の流入出を切り替える電磁制御弁24b、空気ばね16FLに対する圧縮空気の流入出を切り替える電磁制御弁24cとで構成されている。同様に、後輪側切替部18bは後輪用タンク22に貯留された圧縮空気の流入出を切り替える電磁制御弁26aと、空気ばね16RRに対する圧縮空気の流入出を切り替える電磁制御弁26b、空気ばね16RLに対する圧縮空気の流入出を切り替える電磁制御弁26cとで構成されている。電磁制御弁24a〜24c及び電磁制御弁26a〜26cは、ON/OFF制御されるソレノイドおよびスプリングをそれぞれ有しており、何れもソレノイドが非通電状態にある場合に閉弁状態とされる常閉型電磁制御弁とすることができる。
前輪側切替部18aと後輪側切替部18bとは、連通路28によって連通されている。この連通路28の経路中には、当該連通路28を遮断する非連通状態と、連通路28を連通させると共に圧縮空気の流動方向を定める連通状態と、を切り替える流動切替部30が配置されている。図1の例の場合、流動切替部30は前輪側または後輪側のいずれかを選択して圧縮空気の流動方向を決めることができる流動方向切替えが自在なポンプ30aと、当該ポンプ30aを駆動させるモータ30bで構成されている。例えば、モータ30bを順方向に回転駆動させればポンプ30aは、圧縮空気を前輪側から後輪側に移動させる。逆にモータ30bを逆方向に回転駆動させればポンプ30aは、圧縮空気を後輪側から前輪側に移動させる。従って、モータ30bが停止状態の場合は、圧縮空気の流動は生じない。つまり、流動切替部30は連通路28を遮断する非連通状態を形成する。一方、モータ30bが駆動状態の場合、その駆動方向に従って圧縮空気の流動方向を定めると共に、連通路28を連通させる連通状態を形成する。なお、モータ30bの回転方向は一定で、ポンプ30a自体の切り替えにより流動方向を変化させる構成でもよい。
電磁制御弁24a〜24c及び電磁制御弁26a〜26cの開閉制御及びモータ30bの駆動制御は、制御部32によって実行される。なお、各空気ばね16FR,16FL,16RR,16RLには、それぞれの車高を検出するための車高センサ34FR,34FL,34RR,34RLが装着されて所定の検出周期で車高を検出して、その検出結果を制御部32に提供している。制御部32は、車高センサ34FR,34FL,34RR,34RLから取得した各車輪14の車高に基づいて、各電磁制御弁24a〜24c,26a〜26c及びモータ30bを制御して、各空気ばね16に対する圧縮空気の給排状態を制御して車高調整を実行する。
制御部32には、車高切替スイッチ36や車速センサ38、圧力センサ40,42等からの情報が入力されている。車高切替スイッチ36の操作により、制御部32は車高上昇制御または車高下降制御を実行する。例えば、車高切替スイッチ36の上昇スイッチの操作状態(操作回数、操作角度等)により車高上昇量が決定できる。同様に、車高切替スイッチ36の下降スイッチの操作状態(操作回数、操作角度等)により車高下降量が決定できる。また、制御部32は、車速センサ38から提供される情報により、例えば車速「0」の場合、つまり、車両12が停止していることを条件に車高制御が実行できるようにして安全性を向上させるようにしてもよい。また、制御部32は、圧力センサ40,42からの圧力情報に基づき、後述するように前輪用タンク20と後輪用タンク22の圧力調整を実行することができる。なお、図1に示す例の場合、車高調整装置10は、圧縮空気が当該車高調整装置10内で循環する閉鎖型システムとし、循環する圧縮空気は温度等外部からの影響を受けないものとする。
このように構成される車高調整装置10の車高調整処理をモードごとに説明する。なお、図2〜図5は、車高調整装置10における車高調整処理のモードごとの電磁制御弁の状態や圧縮空気の流れを説明するもので、車両12、車輪14、制御部32、車高センサ34、車高切替スイッチ36、車速センサ38、圧力センサ40等は図示を省略している。
図2は、車高調整装置10において、前輪上昇処理及び後輪上昇処理を実行する場合の電磁制御弁の状態及び圧縮空気の流れを示す図である。この場合、前輪上昇処理及び後輪上昇処理は同時に実行されるものとする。なお、前輪車高調整部である空気ばね16FR,16FLに作用する荷重及び後輪車高調整部である空気ばね16RR,16RLに作用する荷重は、車両12の搭乗状態や積荷状態によって変動するが、本実施形態の場合、説明を簡略化するために、荷重の変動はない、または無視できる程度であるとして説明する。また、前輪用タンク20、後輪用タンク22には、前輪側の空気ばね16FR,16FL及び後輪側の空気ばね16RR,16RLを同じ速度で車高上昇させるのに十分な圧縮空気が貯留されているものとする。
車高を上昇させる場合、制御部32(図1参照)は、モータ30bの駆動を停止して、ポンプ30aの流通状態を遮蔽状態とする。つまり、連通路28を非連通状態にする。そして、制御部32は前輪上昇処理として、電磁制御弁24a,24b,24cを通電して「開」状態にする。その結果、前輪用タンク20に貯留されていた圧縮空気は、空気ばね16FR,16FLに供給され、空気ばね16FR,16FLを電磁制御弁24a,24b,24cの開弁期間に応じ伸長させて車高を上昇させる。同様に、制御部32は、後輪上昇処理として、電磁制御弁26a,26b,26cを通電して「開」状態にする。その結果、後輪用タンク22に貯留されていた圧縮空気は、空気ばね16RR,16RLに供給され、空気ばね16RR,16RLを電磁制御弁26a,26b,26cの開弁期間に応じ伸長させて車高を上昇させる。
このように、前輪用タンク20を用いた前輪上昇処理と後輪用タンク22を用いた後輪上昇処理を同時に実行することで、車両12の車高を所望の高さまで短時間で上昇させることができる。前輪上昇処理と後輪上昇処理を同時に行うことができるので、車高調整時に車体12aが傾くことが抑制され、車高調整のときに搭乗者に違和感を与え難くすることができる。また、前輪側の空気ばね16FR,16FLと後輪側の空気ばね16RR,16RLを前後独立して調整できるので、車両重量配分の関係で前後の空気ばね16の容量やばね定数が異なる場合でも、それぞれの空気ばね16に適した制御量や制御圧の設定が可能で、車高上昇速度を同等とする車高調整制御が実行できる。また、制御部32は、前輪側切替部18a及び後輪側切替部18bの制御タイミングを各車高センサ34からの車高情報に基づいて決定可能である。例えば、車両12が不整地に傾いて存在していた場合でも、各空気ばね16を独立的に制御することにより、車両12の傾き増加の防止または軽減を行いつつ車高の上昇制御が実現できる。
ところで、従前のように単一のタンクで前輪側と後輪側の空気ばねの上昇制御を行う場合、タンクは、例えば前輪側と後輪側の空気ばね16の中間位置またはいずれかに偏った位置に配置することになる。いずれの場合も空気ばね16とタンクを結ぶ流路の総距離が長くなる。その結果、流路圧損が大きくなり、車高調整速度が低下したり不安定になったりする場合がある。一方、本実施形態のように、前輪用タンク20と後輪用タンク22を分離配置することにより、前輪用タンク20を前輪側の空気ばね16FR,16FLの近傍に配置することができる。同様に、後輪用タンク22を後輪側の空気ばね16RR,16RLの近傍に配置することができる。つまり、前輪用タンク20および後輪用タンク22からそれぞれの空気ばね16までの流路長を短くすることが可能になり、流路圧損が軽減できる。その結果、車高調整速度の低下や不安定化を抑制できる。
なお、図2に示すように、前輪上昇処理及び後輪上昇処理を実行する場合、流動切替部30で連通路28を遮断する必要がある。前述したように、モータ30bの駆動を停止することでポンプ30aを実質的に遮蔽状態にすることができる。別の実施例においては、連通路28内に流路遮蔽用の制御弁を1個配置するか、ポンプ30aの前後位置に1個ずつ制御弁を配置するようにしてもよい。この場合、連通路28の遮蔽をより確実に行うことが可能になり、前輪上昇処理及び後輪上昇処理の信頼性をさらに向上できる。
図3は、実施形態に係る車高調整装置において、前輪下降処理を実行する場合の圧縮空気の流れを示す図である。また、図4は、後輪下降処理を実行する場合の圧縮空気の流れを示す図である。車高を下降させる場合、空気ばね16に封入されている圧縮空気をポンプ30aによって掻き出して空気ばね16の内部を減圧する必要がある。そのため、本実施形態の車高調整装置10の制御部32は、流動切替部30を制御して連通路28を連通状態にすると共に、圧縮空気の流動方向を一方に定めてる。例えば、ポンプ30aによる圧縮空気の掻き出し方向を連通路28の前輪側から後輪側にして、前輪側の空気ばね16FR,16FLから後輪用タンク22に圧縮空気を排出する前輪下降処理を実行する。また、ポンプ30aによる圧縮空気の掻き出し方向を連通路28の後輪側から前輪側にして、後輪側の空気ばね16RR,16RLから前輪用タンク20に圧縮空気を排出する後輪下降処理を実行する。この前輪下降処理と後輪下降処理は交互に実行される。
前輪下降処理を示す図3の場合、制御部32(図1参照)は、前輪下降処理のために電磁制御弁24aを非通電として「閉」状態にすると共に、電磁制御弁24b,24cに通電して「開」状態にする。また、電磁制御弁26aに通電して「開」状態にすると共に電磁制御弁26b,26cを非通電として「閉」状態にする。そして、制御部32は、モータ30bを例えば順方向に回転させて、ポンプ30aを介した圧縮空気の流動方向を前輪側から後輪側にする。つまり、連通路28を連通状態にする。その結果、前輪側の空気ばね16FR,16FLに封入されていた圧縮空気はポンプ30aの掻き出し動作により連通路28を後輪用タンク22に向かって移動し、後輪用タンク22内部に貯留されることになる。つまり、前輪側の空気ばね16FR,16FLは、ポンプ30aにより圧縮空気の掻き出し量に応じて縮長して車高を下降させる。制御部32は、前輪側の空気ばね16FR,16FLが所望の車高まで下降したらポンプ30aを停止するとともに、電磁制御弁24a,24b,24c及び電磁制御弁26a,26b,26cを非通電として「閉」状態にして、後輪用タンク22の貯留状態を維持するようにして、前輪下降処理を終了する。
続いて、制御部32(図1参照)は、図4に示すように、後輪下降処理のために、電磁制御弁26aを非通電として「閉」状態にすると共に、電磁制御弁26b,26cに通電して「開」状態にする。また、電磁制御弁24aに通電して「開」状態にすると共に電磁制御弁24b,24cを非通電として「閉」状態にする。そして、制御部32は、モータ30bを例えば逆方向に回転させて、ポンプ30aを介した圧縮空気の流動方向を後輪側から前輪側にする。つまり、連通路28を連通状態にする。その結果、後輪側の空気ばね16RR,16RLに封入されていた圧縮空気はポンプ30aの掻き出し動作により連通路28を前輪用タンク20に向かって移動し、前輪用タンク20内部に貯留されることになる。つまり、後輪側の空気ばね16RR,16RLは、ポンプ30aにより圧縮空気の掻き出し量に応じて縮長して車高を下降させる。制御部32は、後輪側の空気ばね16RR,16RLが所望の車高まで下降したらポンプ30aを停止するとともに、電磁制御弁26a,26b,26c及び電磁制御弁24a,24b,24cを非通電として「閉」状態にして、前輪用タンク20の貯留状態を維持するようにして、後輪下降処理を終了する。
このように、前輪側の空気ばね16FR,16FLから後輪用タンク22に圧縮空気を排出する前輪下降処理と、後輪側の空気ばね16RR,16RLから前輪用タンク20に圧縮空気を排出する後輪下降処理とを交互に実行する。その結果、1本の連通路28内に配置した1つの流動切替部30によって、前輪下降処理と後輪下降処理が実行可能となり、車高調整装置10の構造のシンプル化及びコスト軽減に寄与できる。なお、前輪下降処理と後輪下降処理は、それぞれ1回ずつ実行して完了させてもよいし、交互に複数回実行してもよい。前輪下降処理と後輪下降処理をそれぞれ1回で済ませる場合は、制御が容易であると共に、下降処理の実行を運転者(搭乗者)に認識させやすい。一方、前輪下降処理と後輪下降処理を交互に複数回実行する場合は、下降過程における車両12の傾きが大きくなることが抑制可能になり、運転者(搭乗者)に違和感を与え難くすることができる。
ところで、車両重量配分の関係から前輪側と後輪側の空気ばね16の容量やばね定数が異なる場合、上述したような前輪下降処理と後輪下降処理を実行すると、前輪用タンク20と後輪用タンク22が貯留圧力が入れ替わってしまう。つまり、次回車高を上昇させようとした場合に、必要空気圧が不足したり過剰に余ってしまう場合がある。そこで、本実施形態の車高調整装置10の制御部32(図1参照)は、図5に示すように、前輪下降処理と後輪下降処理の完了後、流動切替部30を制御し前輪用タンク20と後輪用タンク22との間で圧縮空気を移動させて前輪用タンク20と後輪用タンク22の貯留圧力を調整する。
図5には、後輪用タンク22に封入された圧縮空気を前輪用タンク20に移動させる例が示されている。制御部32は、電磁制御弁24b,24c及び電磁制御弁26b,26cを非通電として「閉」状態にすると共に、電磁制御弁24a、電磁制御弁26aに通電し「開」状態にする。そして、モータ30bを例えば逆方向に回転させて、ポンプ30aを介した圧縮空気の流動方向を後輪側から前輪側にする。つまり、連通路28を連通状態にする。そして、圧力センサ40,42(図1参照)からの圧力情報に基づき、前輪用タンク20及び後輪用タンク22が予め設定された初期値に復帰した場合に、モータ30bを停止すると共に、前輪用タンク20及び後輪用タンク22の圧力状態を維持して、次のタイミングにおける車高調整処理に備える。なお、後輪用タンク22の貯留圧力を上昇調整する場合は、モータ30bの回転方向を逆にすればよい。
このように、前輪下降処理と後輪下降処理の完了後に、前輪用タンク20と後輪用タンク22の貯留圧力を調整することで、図5に示すように車高調整装置10をシンプル化して連通路28や流動切替部30を単一構成としても以降の前輪上昇処理や後輪上昇処理をスムーズに行うことができる。また、車両12の搭乗人数や積荷量の変動により車両12の前輪側と後輪側で重量バランスが変化して、前輪用タンク20や後輪用タンク22に初期設定された貯留圧力を修正する必要が生じた場合でも容易に貯留圧力の調整が可能になる。
ところで、前輪用タンク20及び後輪用タンク22の貯留圧力は、前輪側の車高及び後輪側の車高を所望の高さまで上昇させるのに十分な値に設定されている。しかし、上述したように車両12の搭乗人数や積荷量の変動により車両12の前輪側と後輪側で重量バランスが変化して、前輪用タンク20または後輪用タンク22の貯留圧力を使い切っても空気ばね16が所望の車高まで上がらない場合も考えられる。また、車両12が不整地等に存在し傾いている場合は、前輪側または後輪側のいずれか一方を標準的な車高上昇量よりさらに上昇させたい場合がある。本実施形態の車高調整装置10の制御部32は、前輪上昇処理と後輪上昇処理の実行後に、後輪用タンク22から前輪側の空気ばね16FR,16FLに圧縮空気を供給する前輪圧補充処理または、前輪用タンク20から後輪側の空気ばね16RR,16RLに圧力流体を供給する後輪圧補充処理を実行することができる。つまり、前輪用タンク20の貯留圧力を使い切り前輪上昇処理を実行した後に、後輪用タンク22に貯留残圧があり、前輪上昇処理をさらに実行したい場合には、後輪用タンク22の貯留残圧を用いて前輪上昇処理を継続実行する。逆に、後輪用タンク22の貯留圧力を使い切り後輪上昇処理を実行した後に、前輪用タンク20に貯留残圧があり、後輪上昇処理をさらに実行したい場合には、前輪用タンク20の貯留残圧を用いて後輪上昇処理を継続実行する。
例えば、後輪側は、搭乗人数の増加や積荷量の増加により、所望の高さまで車高を上昇させるのに想定以上の圧縮空気を必要とする場合がある。図6は、そのような場合に前輪用タンク20の貯留残圧を用いて後輪側の空気ばね16RR,16RLについて、後輪圧補充処理を実行する場合の圧縮空気の流れを説明する図である。
制御部32は、電磁制御弁26aを非通電として「閉」状態にすると共に、電磁制御弁26b,26cに通電して「開」状態にする。また、電磁制御弁24b,24cを非通電として「閉」状態にすると共に、電磁制御弁24aに通電して「開」状態にする。この状態で、モータ30bを例えば順方向に回転させてポンプ30aにより圧縮空気の流れを前輪側から後輪側にする。その結果、前輪用タンク20の貯留残圧が後輪側の空気ばね16RR,16RLに供給され、後輪圧補充処理が実行できる。なお、前輪圧補充処理を行う場合は、モータ30bの回転方向及び各電磁制御弁24,26の開閉状態を逆にすればよい。このように、前輪圧補充処理や後輪圧補充処理を行うことにより、空気ばね16FR,16FL,16RR,16RLの最終車高を所望の高さに容易に調整できる。
図7は、他の構成の車高調整装置100を説明する図である。車高調整装置100は、流動切替部102を1WAYポンプ104a、モータ104b、切替弁106a〜106dで構成している点、及び外部空気給排機構を備える点以外は、基本的には図1に示す構成と同様である。従って、図1と実質的に同じ機能を有する構成部材については、同じ符号を付して適宜その説明を省略する。
図7に示す変形例の場合、前輪上昇処理、後輪上昇処理、前輪下降処理、後輪下降処理、貯留圧力の調整、前輪圧補充処理、後輪圧補充処理等における電磁制御弁24,26の開閉動作は同じである。一方、流動切替部102は、制御部32によりリレー104cによりON/OFF制御されるモータ104b及び1WAYポンプ104aの採用により、切替弁106a〜106dの開閉制御が必要になる。切替弁106a〜106dは、例えば常閉型電磁制御弁である。なお、前述したように、流動切替部102は外部空気給排機構として、排気制御弁108、吸気モード付き1WAYポンプ104a、ドライヤ110、オリフィス112、逆止弁114,116等を備える。排気制御弁108は、常閉型電磁制御弁である。
以下、各制御モードにおける流動切替部102の動作を説明する。なお、上述した各制御モード、すなわち前輪上昇処理、後輪上昇処理、前輪下降処理、後輪下降処理、貯留圧力の調整、前輪圧補充処理、後輪圧補充処理では、1WAYポンプ104aは、非吸気モードである。
前輪上昇処理及び後輪上昇処理の場合は、連通路28を非連通状態にする必要がある。そのため、制御部32は、切替弁106a〜106dを非通電として「閉」状態にする。この状態で、図2の例と同様に前輪上昇処理及び後輪上昇処理が実行できる。なお、この場合、流動切替部102における圧縮空気の流れはないので、1WAYポンプ104a及びモータ104bは停止状態となる。また、排気制御弁108は「開」状態でも「閉」状態でもよいが、流動切替部102内部が外気と接触する機会を低減することが好ましいので、「閉」状態にすることが望ましい。
次に、前輪下降処理の場合は、空気ばね16FR,16FLに封入されていた圧縮空気を1WAYポンプ104aによって掻き出すための流路を形成するために、切替弁106aは「開」状態、切替弁106bは「閉」状態、切替弁106cは「閉」状態、切替弁106dは「開」状態、排気制御弁108は「閉」状態にする。その結果、空気ばね16FR,16FLに封入されていた圧縮空気は、切替弁106a、1WAYポンプ104a、逆止弁116、ドライヤ110、オリフィス112、切替弁106dの順に通過し後輪用タンク22に送り込まれる。その結果、図3に示す前輪下降処理と同様な処理が実行できる。なお、この場合、空気ばね16FR,16FLに封入されていた圧縮空気は、後輪用タンク22に移動する過程でドライヤ110を通過するので、後輪用タンク22に送られる圧縮空気は所定の乾燥状態が維持され、構成部品の湿気による腐食や氷結を抑制できる。
同様に、後輪下降処理の場合は、空気ばね16RR,16RLに封入されていた圧縮空気を1WAYポンプ104aによって掻き出すための流路を形成するために、切替弁106cは「開」状態、切替弁106dは「閉」状態、切替弁106aは「閉」状態、切替弁106bは「開」状態、排気制御弁108は「閉」状態にする。その結果、空気ばね16RR,16RLに封入されていた圧縮空気は、切替弁106c、1WAYポンプ104a、逆止弁116、ドライヤ110、オリフィス112、切替弁106bの順に通過し前輪用タンク20に送り込まれる。その結果、図4に示す後輪下降処理と同様な処理が実行できる。なお、この場合も圧縮空気は、ドライヤ110を通過するので、前輪用タンク20に送られる圧縮空気は所定の乾燥状態が維持できる。
次に、前輪下降処理と後輪下降処理の完了後、前輪用タンク20と後輪用タンク22との間で貯留圧力を調整する場合の流動切替部102の状態を示す。例えば、後輪用タンク22から前輪用タンク20に圧縮空気を移動させる場合は、後輪下降処理の場合と同様に切替弁106cは「開」状態、切替弁106dは「閉」状態、切替弁106aは「閉」状態、切替弁106bは「開」状態、排気制御弁108は「閉」状態にする。その結果、後輪用タンク22に貯留されていた圧縮空気は、切替弁106c、1WAYポンプ104a、逆止弁116、ドライヤ110、オリフィス112、切替弁106bの順に通過して前輪用タンク20に送り込まれ、貯留圧力の調整が実行できる。この場合も圧縮空気は、ドライヤ110を通過するので、前輪用タンク20に送られる圧縮空気は所定の乾燥状態が維持できる。なお、前輪用タンク20から後輪用タンク22に圧縮空気を移動させる場合は、前輪下降処理の場合と同様に、切替弁106aは「開」状態、切替弁106bは「閉」状態、切替弁106cは「閉」状態、切替弁106dは「開」状態、排気制御弁108は「閉」状態にする。その結果、前輪用タンク20に貯留されていた圧縮空気は、切替弁106a、1WAYポンプ104a、逆止弁116、ドライヤ110、オリフィス112、切替弁106dの順に通過し後輪用タンク22に送り込まれ、貯留圧力の調整が実行できる。この場合も圧縮空気は、ドライヤ110を通過するので、前輪用タンク20に送られる圧縮空気は所定の乾燥状態が維持できる。
また、流動切替部102は、前輪圧補充処理または後輪圧補充処理も図6同様に実行することができる。この場合、2通りの実行形態がある。1つは、補充する側のタンクの貯留残圧が、補充される側の空気ばね16の封入圧力より高い場合で、1WAYポンプ104aを経由させない場合である。この場合、切替弁106a,106cを「開」状態にする、または切替弁106b,16dを「開」状態にする、または切替弁106a〜106dの全てを「開」状態にする。この場合、圧力差によって前輪圧補充処理または後輪圧補充処理が可能になる。
もう1つの方法は、補充する側のタンクの貯留残圧が、補充される側の空気ばね16の封入圧力以下の場合で、1WAYポンプ104aを経由させて圧縮空気を圧送する場合である。例えば、前輪圧補充処理の場合は、切替弁106cは「開」状態、切替弁106dは「閉」状態、切替弁106aは「閉」状態、切替弁106bは「開」状態、排気制御弁108は「閉」状態にする。この場合、1WAYポンプ104aによる圧送動作により、前輪側の空気ばね16FR,16FLに後輪用タンク22の貯留残圧を供給する前輪圧補充処理が実行できる。同様に、後輪圧補充処理の場合は、切替弁106aは「開」状態、切替弁106bは「閉」状態、切替弁106cは「閉」状態、切替弁106dは「開」状態、排気制御弁108は「閉」状態にする。この場合、1WAYポンプ104aによる圧送動作により、後輪側の空気ばね16RR,16RLに前輪用タンク20の貯留残圧を供給する後輪圧補充処理が実行できる。
ところで、車高調整装置100の前輪用タンク20や後輪用タンク22は周囲温度の影響により貯留圧力が変動してしまう場合がある。例えば、周囲温度が標準設定温度(例えば20℃)以上になり、前輪用タンク20や後輪用タンク22の貯留圧力が設定許容圧力を超えて高くなってしまう場合が考えられる。この場合、車高の上昇処理のときに、その上昇速度が設定速度より速くなり上昇制御が不自然になったり、搭乗者に違和感を与えてしまう場合があり減圧した方が望ましい場合がある。例えば、前輪用タンク20内の圧力が所定上限値に達して減圧する場合、制御部32は、電磁制御弁24aを「開」状態にし、電磁制御弁24b,24cを「閉」状態にする。また、切替弁106a,106c,106dを「閉」状態にして、切替弁106b及び排気制御弁108を「開」状態にする。その結果、前輪用タンク20から圧縮空気が排気制御弁108を介して排気されて減圧ができる。なお、この場合、前輪用タンク20に貯留された乾燥状態の圧縮空気がドライヤ110を通過するので、後述する外気の吸気により湿気を吸収したドライヤ110を乾燥再生することができる。
同様に、後輪用タンク22内の圧力が所定上限値に達して減圧する場合、制御部32は、電磁制御弁26aを「開」状態にし、電磁制御弁26b,26cを「閉」状態にする。また、切替弁106c,106a,106bを「閉」状態にして、切替弁106d及び排気制御弁108を「開」状態にする。その結果、後輪用タンク22から圧縮空気が排気制御弁108を介して排気され減圧ができと共に、ドライヤ110の乾燥再生ができる。
一方、周囲温度が標準設定温度(例えば20℃)より低くなり、例えば氷点下になった場合、前輪用タンク20や後輪用タンク22の貯留圧力が設定許容圧力より低くなってしまう場合が考えられる。この場合、車高の上昇処理のときに、所望の車高まで上昇できなかったり、上昇速度が設定速度より遅くなり上昇制御が不自然になったり、搭乗者に違和感を与えてしまう場合があり、増圧した方が望ましい場合がある。例えば、前輪用タンク20内の圧力が所定下限値を下回り増圧する場合、制御部32は、電磁制御弁24aを「開」状態、電磁制御弁24b,24cを「閉」状態にする。また、切替弁106a,106c,106dを「閉」状態、切替弁106bを「開」状態、排気制御弁108を「閉」状態にする。そして、1WAYポンプ104aを吸気モードに切り替えて外気取り入れ可能にして、モータ104bを駆動する。その結果、1WAYポンプ104aから取り入れられた外気は、逆止弁116、ドライヤ110、オリフィス112、切替弁106b、電磁制御弁24aを通過して、前輪用タンク20に圧送され、当該前輪用タンク20を増圧する。
同様に、後輪用タンク22内の圧力が所定下限値を下回り増圧する場合、制御部32は、電磁制御弁26aを「開」状態、電磁制御弁26b,26cを「閉」状態にする。また、切替弁106c,106a,106bを「閉」状態、切替弁106dを「開」状態、排気制御弁108を「閉」状態にする。そして、1WAYポンプ104aを吸気モードに切り替えて外気取り入れ可能にして、モータ104bを駆動する。その結果、1WAYポンプ104aから取り入れられた外気は、逆止弁116、ドライヤ110、オリフィス112、切替弁106d、電磁制御弁26aを通過して、後輪用タンク22に圧送され、当該後輪用タンク22を増圧する。なお、これらの場合、外気はドライヤ110を通過して乾燥させられるので、車高調整装置100内を循環する空気は所定の乾燥状態を維持できる。また、ドライヤ110は、前述したように減圧(排気)時に乾燥機能を再生することも可能なので、ドライヤ110の機能を維持できる。
また、制御部32は、前輪圧補充処理または後輪圧補充処理を実行する場合に、外気を取り入れて空気ばね16に直接圧縮空気を供給して増圧(圧力補充)するようにしてもよい。
なお、流動切替部102は、連通路28における圧縮空気の流動方向及び流動範囲を定めることができる構成であればよく、同様の効果を得ることができる。また、流動切替部102は、ドライヤ110や排気制御弁108等を備えると共に、1WAYポンプ104aが吸気モードを備える例を説明した。他の実施形態では、車高調整装置100が図1に示す車高調整装置10と同様に圧縮空気が車高調整装置100内で循環する閉鎖型システムであり、また周囲温度等の周囲環境の変化による圧力変動が無視できる場合は、ドライヤ110、排気制御弁108、1WAYポンプ104aの吸気モード等を省略してもよく、1WAYポンプ104aと各切替弁106a〜106dの制御により、図1の車高調整装置10と同様の制御が可能で、同様の効果を得ることができる。
また、上述した実施形態や変形例において、圧力流体として圧縮空気を用いる例を説明したが、圧力流体として、油圧等の液体圧を用いてもよい。液体圧を用いる場合も上述した実施形態及び変形例と同様の構成を採用可能であり、同様の効果を得ることができる。なお、周囲環境により液体圧が変動する場合は、前輪用タンク20や後輪用タンク22の他にリザーバタンクを設けて、液体圧の調整を可能にすればよい。
本発明において実施形態及び変形例を説明したが、これらは、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。