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JP2014203595A - 電解質−負極構造体及びそれを備えるリチウムイオン二次電池 - Google Patents

電解質−負極構造体及びそれを備えるリチウムイオン二次電池 Download PDF

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Abstract

【課題】 リチウムイオン二次電池に用いて充放電を繰り返した際に、サイクル性能の低下を抑制することができる構成及び該構成を備えるリチウムイオン二次電池を提供する。【解決手段】 リチウムイオン二次電池1に用いられる電解質−負極構造体7は、集電体3上に負極活物質層4を形成してなる負極5と、リチウムイオン伝導性を有する無機粒子、該無機粒子を結着するとともに高分子ゲルを含浸可能な有機高分子、及びリチウムイオン伝導性を有する電解液を保持するとともに該有機高分子に含浸される高分子ゲルを含む固体電解質6とを備える。負極活物質層4と固体電解質5とが有機高分子を媒体として一体化していて、該無機粒子は、化学式Li7−yLa3−xAxZr2−yMyO12で表される複合金属酸化物と、該複合金属酸化物の表面を被覆しLi、Y、Zrからなる群から選択される1種以上の金属の酸化物を含む被覆膜とを備える。【選択図】図1

Description

本発明は、電解質−負極構造体及びそれを備えるリチウムイオン二次電池に関する。
リチウムイオン二次電池において、近年、電池容量を大きくするために、シリコン、酸化シリコン、酸化スズ等のリチウムイオンと反応して化合物を生成することによりリチウムイオンを吸蔵可能な高容量材料を負極活物質として用いることが検討されている。例えば、集電体としての銅箔上にシリコンからなる負極活物質層を蒸着してなる負極と、該負極に接して配置されたセパレータに、有機溶媒に支持塩を溶解した電解液を含浸させてなる電解質とを備えるリチウムイオン二次電池が提案されている(特許文献1参照)。
国際公開第01/029913号
しかしながら、前記リチウムイオン二次電池は、充放電によるリチウムイオンの吸蔵及び放出に伴い、該負極活物質層が大きく膨張及び収縮する。この結果、充放電を繰り返すと、前記膨張及び収縮によって発生する応力により、前記負極活物質層にクラックが発生し該負極活物質層が前記集電体から剥離して、サイクル性能が低下するという不都合がある。
本発明は、かかる不都合を解消して、リチウムイオン二次電池に用いて充放電を繰り返した際に、サイクル性能の低下を抑制することができる構成を提供することを目的とする。さらに、本発明は、前記構成を備えるリチウムイオン二次電池を提供することも目的とする。
かかる目的を達成するために、本発明は、リチウムイオン二次電池に用いられる電解質−負極構造体であって、集電体上にリチウムイオンを吸蔵可能な材料からなる負極活物質層を形成してなる負極と、リチウムイオン伝導性を有する無機粒子、該無機粒子を結着するとともに高分子ゲルを含浸可能な有機高分子、及びリチウムイオン伝導性を有する電解液を保持するとともに該有機高分子に含浸される高分子ゲルを含む固体電解質とを備え、該負極活物質層と該固体電解質とが該有機高分子を媒体として一体化していて、該無機粒子は、化学式Li7−yLa3−xZr2−y12(式中、AはY、Nd、Sm、Gdからなる群から選択されるいずれか1種の金属であり、xは0≦x<3の範囲であり、MはNb又はTaであり、yは0≦y<2の範囲である)で表され、ガーネット型構造を備える複合金属酸化物と、該複合金属酸化物の表面を被覆する被覆膜とを備え、該被覆膜は、Li、Y、Zrからなる群から選択される1種以上の金属の酸化物を含むことを特徴とする。
本発明の電解質−負極構造体において、前記固体電解質は、前記有機高分子によって前記無機粒子が結着されるとともに、該有機高分子に前記電解液を保持する前記高分子ゲルが含浸されている。そして、前記固体電解質と前記集電体上に形成された負極活物質層とが前記有機高分子により接合されて一体化している。また、前記固体電解質を構成する前記無機粒子が前記複合金属酸化物の表面に前記酸化物からなる被覆膜を備えることにより、該固体電解質と前記負極活物質層とがより密着されている。以上により、前記電解質−負極構造体は、リチウムイオン二次電池に用いるとき、充放電に伴って前記負極活物質層が膨張及び収縮を繰り返しても、該膨張及び収縮により発生する応力を前記固体電解質によって緩和することができる。
また、本発明の電解質−負極構造体において、前記無機粒子は、化学式Li7−yLa3−xZr2−y12(式中、AはY、Nd、Sm、Gdからなる群から選択されるいずれか1種の金属であり、xは0≦x<3の範囲であり、MはNb又はTaであり、yは0≦y<2の範囲である)で表され、ガーネット型構造を備える複合金属酸化物を備えている。
前記複合金属酸化物は、Li/Li電極反応の電位を基準とする還元電位が、リチウムイオンを吸蔵可能な材料からなる負極活物質層として用いられるリチウム、シリコン、スズ等よりも小さい。このため、本発明の電解質−負極構造体は、リチウムイオン二次電池に用いるときに、電池反応とは別に、前記固体電解質と前記負極活物質層との界面において酸化還元反応が生じることを抑制し、該固体電解質が還元されて劣化することを防ぐことができる。
したがって、本発明の電解質−負極構造体によれば、前記応力によって前記負極活物質層が前記集電体から剥離することを防ぐことができるとともに前記固体電解質が劣化することを防ぐことができるので、サイクル性能の低下を抑制することができる。
また、本発明の電解質−負極構造体において、前記無機粒子を構成する前記複合金属酸化物を被覆する被覆膜は、Zr酸化物を含むことが好ましく、サイクル性能の低下を抑制する効果をより得ることができる。
さらに、本発明の電解質−負極構造体は、リチウムイオン二次電池に適用することができる。
本実施形態の電解質−負極構造体を備えるリチウムイオン二次電池の構成を示す説明的断面図。 本実施形態の電解質−負極構造体の接合面を示す断面画像。 本実施形態の電解質−負極構造体を備えるリチウムイオン二次電池のサイクル性能を示すグラフ。
次に、添付の図面を参照しながら本発明の実施形態についてさらに詳しく説明する。
図1に示すように、本実施形態のリチウムイオン二次電池1は、正極活物質を含む正極2と、負極集電体3上に負極活物質層4を形成してなる負極5と、該正極2及び該負極5の間に配設された固体電解質6とを備える。リチウムイオン二次電池1では、負極活物質層4と固体電解質6とが一体化されて電解質−負極構造体7が形成されている。
正極2は、例えば、正極集電体上に正極活物質層を圧着して形成してなるものを用いることができる。
前記正極集電体としては、例えば、アルミニウム、ステンレス等からなる金属箔、金属板を用いることができる。
前記正極活物質層は、例えば、遷移金属酸化物、リチウムと遷移金属酸化物との複合酸化物、遷移金属硫化物、有機化合物等の正極活物質を含んでいる。具体的には、前記遷移金属酸化物としては、例えば、MnO、V、V12、TiO等を用いることができる。また、前記リチウムと遷移金属酸化物との複合酸化物としては、例えば、ニッケル酸リチウム、コバルト酸リチウム等を用いることができる。また、前記遷移金属硫化物としては、例えば、TiS、FeS、MoS等を用いることができる。また、前記有機化合物としては、ポリアニリン、ポリピロール、ポリアセン、ジスルフィド系化合物、ポリスルフィド系化合物、N−フルオロピリジニウム塩等を用いることができる。さらに、前記正極活物質として、オリビン構造を有するリン酸鉄リチウムを用いることもできる。
負極5は、負極集電体3と、該負極集電体3の片面に圧着され負極活物質を含む負極活物質層4とからなる。
負極集電体3は、例えば、銅、SUSからなる金属箔、金属板を用いることができる。
負極活物質層4は、例えば、リチウムを吸蔵可能な高容量材料からなる金属、カーボン等の負極活物質を含んでいる。前記金属としては、例えば、リチウム、シリコン、スズ、及びこれらの金属を含む酸化物及び合金を用いることができる。
固体電解質6は、リチウムイオン伝導性を有する無機粒子、該無機粒子を結着するとともに高分子ゲルを含浸可能な有機高分子、及びリチウムイオン伝導性を有する電解液を保持するとともに該有機高分子に含浸される高分子ゲルを含んでいる。
前記無機粒子は、粉末状の複合金属酸化物と、該複合金属酸化物の表面を被覆する被覆膜とからなる。前記複合金属酸化物は、化学式Li7−yLa3−xZr2−y12(式中、AはY、Nd、Sm、Gdからなる群から選択されるいずれか1種の金属であり、xは0≦x<3の範囲であり、MはNb又はTaであり、yは0≦y<2の範囲である)で表され、ガーネット型構造を備えている。前記被覆膜は、Li、Y、Zrからなる群から選択される1種以上の金属の酸化物を含む。
前記無機粒子は、例えば、次のようにして調製することができる。まず、Li化合物とLa化合物とZr化合物とに加えて、必要に応じて、Y、Nd、Sm、Gdからなる群から選択されるいずれか1種の金属の化合物と、Nb又はTaの化合物とを、ボールミル、ミキサー等の粉砕、混合機器により、粉砕、混合して混合物を得る。
前記Li化合物としては、例えば、LiOH又はその水和物、LiCO、LiNO、CHCOOLi等を挙げることができる。前記La化合物としては、La、La(OH)、La(CO、La(NO、(CHCOO)La等を挙げることができる。前記Zr化合物としては、Zr、ZrO(NO、ZrO(CHCOO)、Zr(OH)CO、ZrO等を挙げることができる。
また、Y化合物としては、Y、Y(CO、Y(NO、(CHCOO)Y等を挙げることができる。Nd化合物としては、Nd、Nd(CO、Nd(NO、(CHCOO)Nd等を挙げることができる。Sm化合物としては、Sm、Sm(CO、Sm(NO、(CHCOO)Sm等を挙げることができる。Gd化合物としては、Gd、Gd(CO、Gd(NO、(CHCOO)Gd等を挙げることができる。
また、Nb化合物としては、Nb、NbO、NbCl、LiNbO等を挙げることができる。Ta化合物としては、Ta、TaCl、LiTaO等を挙げることができる。
次に、得られた混合物を、850〜950℃の範囲の温度で5〜7時間の範囲の時間一次焼成する。次に、前記一次焼成により得られた焼成体を再度ボールミル、ミキサー等の粉砕、混合機器により、粉砕、混合した後、1000〜1200℃の範囲の温度で6〜12時間の範囲の時間保持して二次焼成することにより、前記粉末状の複合金属酸化物を調製する。
前記粉末状の複合金属酸化物は、リチウムイオン伝導性材料として用いるために、20μm以下の粒径を備えることが好ましく、10μm以下が特に好ましい。20μmより大きな粒径の粒子が多く含まれる場合には、前記焼成により得られた前記無機粒子を、例えば、ボールミル、ミキサー等の粉砕、混合機器により粉砕して、20μm以下の粒径を備えるようにする。前記無機粒子の粒径を20μm以下にすることにより、固体電解質6中に存在する該無機粒子の密度を高くすることができるとともに固体電解質6自体を肉薄に形成して抵抗を小さくすることができる。
次に、Li、La、Zrからなる群から選択される1種以上の金属の化合物を溶媒に添加して撹拌することにより混合して、該金属の化合物が溶解又は分散された溶液を調製する。
Liを含む化合物としては、例えば、酸化リチウム、過酸化リチウム、水酸化リチウム、炭酸リチウム、酢酸リチウム、硝酸リチウム、塩化リチウム、フッ化リチウム、リチウムエトキシド等のリチウムアルコキシド化合物等を用いることができる。
Yを含む化合物としては、例えば、酸化イットリウム、水酸化イットリウム、炭酸イットリウム、酢酸イットリウム、硝酸イットリウム、塩化イットリウム、フッ化イットリウム、リン酸イットリウム、イットリウムアセチルアセトナート、イットリウムイソプロポキシド等のイットリウムアルコキシド化合物等を用いることができる。
Zrを含む化合物としては、水酸化ジルコニウム、酸化ジルコニウム、炭酸塩基性ジルコニウム、オキシ酢酸ジルコニウム、オキシ硝酸ジルコニウム、塩化ジルコニウム、オキシ塩化ジルコニウム、フッ化ジルコニウム、ジルコニウムアセチルアセトナート、ジルコニウムエトキシド等のジルコニウムアルコキシド化合物等を用いることができる。
前記溶媒としては、水、メタノール、エタノール、2−プロパノール、ブタノール、エチレングリコール、トルエン、シクロヘキサン等を用いることができ、これらの混合物を用いることもできる。
次に、得られた粉末状の複合金属酸化物を、Li、Y、Zrからなる群から選択される1種以上の金属の化合物が溶解又は分散された溶液に添加して撹拌することにより混合して、該複合金属酸化物の表面に該溶液を付着させる。このとき、前記1種以上の金属の化合物は、前記複合金属酸化物に対してその合計が1〜10mol%であるようにすることにより、該複合金属酸化物の表面に前記溶液を確実に付着させることができる。また、前記撹拌を40〜80℃の温度で1分〜6時間の時間行うことにより、前記複合金属酸化物の表面に前記溶液を確実に付着させるとともに前記被覆膜を適当な厚さに調節することができる。さらに、前記粉末状の複合金属酸化物と前記溶液とを混合する代わりに、該粉末状の複合金属酸化物を前記溶媒に溶解又は分散させた溶液と、前記1種以上の金属の化合物を前記溶媒に溶解または分散させた溶液とを混合してもよく、該複合金属酸化物と該1種以上の金属の化合物とを混合した後に前記溶媒に溶解又は分散させてもよい。
次に、前記1種以上の金属の化合物を含む溶液が表面に付着された前記複合金属酸化物を加熱して該溶液中の前記溶媒を除去することにより、前記1種以上の金属の化合物が表面に付着された前記複合金属酸化物を得る。前記溶媒の除去は、例えば、次のようにして行うことができる。まず、前記複合金属酸化物と前記1種以上の金属の化合物を含む溶液とを混合した混合溶液を濾過して、該1種以上の金属の化合物を含む溶液が表面に付着した前記複合金属酸化物と前記溶媒とを分離する。次に、前記濾過により得られた残渣を加熱することにより、該粉末状の複合金属酸化物の表面に付着した溶液中の溶媒を除去する。或いは、前記複合金属酸化物と前記1種以上の金属の化合物を含む溶液とを混合した混合溶液をロータリーエバポレーターで処理することにより、前記粉末状の複合金属酸化物の表面に付着した溶液中の溶媒を除去してもよい。
次に、前記Li、Y、Zrからなる群から選択される1種以上の金属の化合物が表面に付着された前記複合金属酸化物を、300〜800℃の温度で1〜6時間焼成することにより、該1種以上の金属の化合物を酸化する。以上により、前記複合金属酸化物の表面が、Li、Y、Zrからなる群から選択される1種以上の金属の酸化物を含む被覆膜によって被覆された前記無機粒子を得ることができる。前記Li、Y、Zrからなる群から選択される1種以上の金属の酸化物としては、例えば、LiO、Li、Y、LiYO、ZrO、LiZrO、LiZr、LiZr、Zr1−x2−x/2(0<x<0.6)、La2−xZr(0<x<1)等を挙げることができ、中でもY、LiYO、ZrO、LiZrOを好適に用いることができる。前記1種以上の金属の酸化物を含む被覆膜は、抵抗及び重量の増大を防ぐために、100nm以下の厚さとすることが好ましい。
固体電解質6を構成する前記有機高分子は、前記無機粒子の結着剤として作用し前記高分子ゲルを含浸可能であるとともに、リチウム二次電池の作動電圧において安定であることが求められる。前記有機高分子としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン等のフッ素樹脂、ポリイミド、アクリル樹脂、スチレンブタジエンゴム(SBR)、カルボキシメチルセルロース(CMC)からなる群から選択される1種又は2種以上の樹脂を用いることができる。
固体電解質6を構成する前記高分子ゲルは、支持塩としてのリチウム塩及び該リチウム塩を溶解する有機溶媒からなる電解液と、該電解液を保持する高分子とからなる。前記高分子ゲルは、リチウムイオン伝導性と高分子ゲルとしての機械的強度とを両立するために、30〜95質量%の範囲の前記電解液を保持することが好ましく、50〜95質量%の範囲の該電解液を保持することが特に好ましい。
前記リチウム塩としては、例えば、LiPF、LiBF、LiClO、LiCFSO、LiN(CFSO等を用いることができる。
前記有機溶媒としては、例えば、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、γ-ブチロラクトン(γ−BL)等の環状エステル、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジメチルカーボネート(DMC)等の鎖状エステル等を用いることができる。
前記高分子ゲルを構成する高分子としては、例えば、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)、ポリアクリロニトリル(PAN)等の熱可塑性有機高分子等を用いることができる。
固体電解質6において、前記無機粒子と前記有機高分子とを99:1〜95:5の質量比とし、前記無機粒子と前記高分子ゲルと前記有機高分子とを77:8:15〜38:32:30の範囲の体積比とすることが好ましい。このようにすると、固体電解質6中に前記無機粒子及び前記高分子ゲルが均一に分散して該固体電解質6全体に亘ってリチウムイオンの伝導経路を形成することができ、優れたリチウムイオン伝導性を得ることができる。また、前記有機高分子が前記無機粒子を結着して、固体電解質6としての構造を確実に形成することができる。
電解質−負極構造体7は、固体電解質6と負極活物質層4とが前記有機高分子によって接合されて一体化されている。
電解質−負極構造体7は、例えば、次のようにして形成することができる。まず、前記無機粒子と前記有機高分子とを混合して形成したペーストを、ドクターブレードを用いたキャスティング法により、負極5の負極活物質層4上に成膜した後、乾燥させることにより、負極5と該ペーストの乾燥体6aとからなる積層体を形成する。次に、得られた積層体を加圧することにより、負極5と乾燥体6aとを接合して一体化させて接合体7aを形成する。
次に、リチウムイオン伝導性を有する電解液と、前記高分子ゲルを構成する高分子の粉末とを混合してゾル状液体を調製する。次に、得られたゾル状液体を接合体7aに圧入することにより接合体7aの乾燥体6aに含浸させた後、自然冷却し、該ゾル状液体をゲル化することにより、電解質−負極構造体7を得ることができる。
本実施形態の電解質−負極構造体7において、固体電解質6は、有機高分子によって前記無機粒子が結着されるとともに、該有機高分子に前記電解液を保持する前記高分子ゲルが含浸されている。そして、固体電解質6と負極集電体3上に形成された負極活物質層4とが前記有機高分子により接合されて一体化している。また、固体電解質6を構成する前記無機粒子が前記複合金属酸化物の表面に前記酸化物からなる前記被覆膜を備えることにより、固体電解質6と負極活物質層4とがより密着されている。以上により、電解質−負極構造体7は、リチウムイオン二次電池1に用いるとき、充放電に伴って負極活物質層4が膨張及び収縮を繰り返しても、該膨張及び収縮により発生する応力を固体電解質6によって緩和することができる。
また、本実施形態の電解質−負極構造体7において、固体電解質6を構成する前記無機粒子は、前記化学式で表されガーネット型構造を備える複合金属酸化物を備える。前記複合う金属酸化物は、Li/Li電極反応の電位を基準とするとき、−1.67〜−0.06Vの範囲の還元電位を有する。一方、負極活物質層4を構成するリチウムイオンを吸蔵可能な前記高容量材料は、例えばシリコンが0.5V、酸化シリコンが0.5V、スズが1.0Vの還元電位を有している。すなわち、前記複合金属酸化物は、リチウムイオンを吸蔵可能な前記高容量材料と比較して、還元電位が小さい。したがって、本実施形態の電解質−負極構造体7は、リチウムイオン二次電池1に用いるときに、電池反応とは別に、固体電解質6と負極活物質層4との界面において酸化還元反応が生じることを抑制し、該固体電解質6が還元されて劣化することを防ぐことができる。
したがって、本実施形態の電解質−負極構造体7によれば、前記応力によって負極活物質層4が負極集電体3から剥離することを防ぐことができるとともに固体電解質6が劣化することを防ぐことができるので、サイクル性能の低下を抑制することができる。
また、電解質−負極構造体7は、固体電解質6と負極活物質層4とが一体化していることにより良好に接触しているので、固体電解質6と負極活物質層4との間の接触抵抗を抑制することができる。
また、電解質−負極構造体7は、固体電解質6を、従来技術のように単独で取り扱うのではなく、負極5で支持された状態で取り扱うことができ優れた取り扱い性を得ることができるとともに、固体電解質6について所要の強度を確保して破損を回避することができる。
尚、前記還元電位は、第一原理計算法、具体的には、第一原理電子状態計算プログラムであるVASP(Vienna Ab initio Simulation Package)を用いて、GGA(Generalized Gradient Approximation)/PAW(Projector Augmented Wave)法で、カットオフエネルギー480eV、k点=3×3×3の条件により算出することができる。
次に、本実施形態の実施例及び比較例を示す。
〔実施例1〕
〔1.酸化物で被覆された無機粒子の調製〕
本実施例では、まず、水酸化リチウム一水和物を、真空雰囲気下350℃の温度で6時間加熱し脱水処理することにより、水酸化リチウム無水物を得た。また、酸化ランタンを、大気雰囲気下、950℃の温度で24時間加熱することにより、脱水及び脱炭酸処理した。
次に、得られた水酸化リチウム無水物と、脱水及び脱炭酸された酸化ランタンとに加えて、酸化ジルコニウムを、Li:La:Zr=7.7:3:2のモル比となるように混合して、遊星型ボールミルを用いて、360rpmの回転数で3時間粉砕混合し、混合原料を得た。
得られた混合原料をアルミナ製坩堝に収容し、大気雰囲気下、900℃の温度で6時間保持して一次焼成することにより、粉末状の一次焼成物を得た。
次に、得られた一次焼成物を、遊星型ボールミルを用いて360rpmの回転数で3時間粉砕した後にアルミナ製坩堝に収容し、大気雰囲気下、1050℃の温度で6時間保持して二次焼成することにより、粉末状の複合金属酸化物を得た。前記複合金属酸化物は、化学式LiLaZr12で表され、ガーネット型構造を備える複合金属酸化物からなり、リチウムイオン伝導性を有する。尚、前記化学式LiLaZr12は、前記Li7−yLa3−xZr2−y12においてx=0且つy=0の場合に相当する。得られた粉末状の複合金属酸化物は、平均粒径が8.5μmであった。
次に、得られた粉末状の複合金属酸化物を、該複合金属酸化物に対して5mol%のジルコニウムエトキシドをエタノールに溶解した溶液に添加し、ホットスターラーを用いて50℃の温度で1時間撹拌することにより混合して、該複合金属酸化物の表面にジルコニウムエトキシドを含む溶液を付着させた。
次に、ジルコニウムエトキシドを含む溶液が表面に付着された複合金属酸化物を、吸引濾過して固液分離を行った後、得られた濾物を120℃の温度で12時間減圧乾燥させることにより、該濾物に含まれる2−プロパノールを除去した。次に、2−プロパノールが除去された濾物を5℃/分の速度で600℃の温度に昇温し、600℃の温度で6時間保持することにより、無機粒子を得た。得られた無機粒子は、化学式LiLaZr12で表わされるガーネット型構造を備える複合金属酸化物の表面が、酸化ジルコニウムを含む被覆層により被覆されている。
〔2.無機粒子及び有機高分子を含むペーストの調製〕
次に、有機高分子として、40質量%のスチレンブタジエンゴム(SBR)分散液と、1.5質量%のカルボキシメチルセルロース(CMC)水溶液と用い、得られた無機粒子と、SBRと、CMCとを、98:1:1の質量比で混合し、自転・公転ミキサーを用いて撹拌することにより混合物を得た。次に、得られた混合物を、脱泡した後、薄膜旋回型ミキサーを用いて混合することにより、無機粒子及び有機高分子を含むペーストとして、前記無機粒子とSBRとCMCとが分散した第1のペーストを調製した。
〔3.負極の作製〕
次に、Si粉末(平均粒子径10μm)と、ケッチェンブラック(商品名:EC600JD、ライオン株式会社、以下、KBと略記する)と、フレーク状の銅粉末(三井金属鉱業株式会社)と、固形分を40質量%含有するポリアミック酸溶液(商品名:SKYBOND700、株式会社I.S.T)とを、75:5:5:15の質量比で混合し、自転・公転ミキサーを用いて撹拌することにより混合物を得た。次に、得られた混合物を、脱泡した後、薄膜旋回型ミキサーを用いて混合することにより、前記Si粉末と、KBと、銅粉末と、ポリアミック酸とが分散した第2のペーストを得た。
次に、ドクターブレードを用いるキャスティング法により、厚さ約40μmの電解銅箔(福田金属箔粉工業株式会社)からなる負極集電体3上に、前記第2のペーストからなる薄膜を形成し、その後、200Paの真空下、300℃の温度で3時間加熱することにより、ポリアミック酸を重合させるとともに、イミド化させて、厚さ約50μmの負極活物質層4を形成した。この結果、負極活物質層4が負極集電体3上に形成してなる負極5を得た。
〔4.電解質−負極構造体の作製〕
次に、ドクターブレードを用いるキャスティング法により、得られた負極5の負極活物質層4上に、前記第1のペーストからなる薄膜を形成し、70℃の温度で2時間加熱して乾燥させることにより、負極5と該第1のペーストの乾燥体6aとからなる積層体を形成した。次に、得られた積層体を直径17mmの円形に切断した後、20MPaの圧力で加圧して負極活物質層4と第1のペーストの乾燥体6aとを接合して一体化させ、その後200Paの真空下、150℃の温度で加熱することにより、接合体7aを形成した。
次に、得られた接合体7aについて、SEMにより断面を観察した。図2に接合体7aの断面画像を示す。図2から、前記無機粒子及び前記有機高分子からなる乾燥体6aと負極活物質層4とが一体化していることが明らかである。
次に、エチレンカーボネート(EC)とプロピレンカーボネート(PC)とを1:1の体積比で混合してなる有機溶媒に、支持塩としてのLiPFを0.8mol/Lの濃度で溶解し、リチウムイオン伝導性を有する電解液を調製した。得られた電解液88質量部とポリアクリロニトリル粉末(分子量:150000)とを、アルゴン雰囲気下、120℃の温度で混合してゾル状液体を調製した。
次に、接合体7aに対して前記ゾル状液体を圧入により含浸させて室温で12時間静置することにより、接合体7aに存在する空孔を該ゾル状液体で満たすとともに、該ゾル状液体を自然冷却してゲル化した。以上により、固体電解質6と負極5の負極活物質層4とが一体化した電解質−負極構造体7を形成した。得られた電解質−負極構造体7において、前記無機粒子とSBR及びCMCからなる前記有機高分子との体積比は、81.8:18.2であった。
〔5.正極及びリチウムイオン二次電池の作製〕
次に、カーボンコートされたLiFePO粉末(宝泉株式会社製)と、導電助剤としてのケッチェンブラック(商品名:EC600JD、株式会社ライオン製)と、結着剤としてのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)とを、88:6:6の質量比で、溶媒としてエタノールを用いて混合し、正極混合物を得た。
得られた正極混合物を、直径16mmのダイスでペレット状に成形した後、正極集電体としてのステンレス製メッシュ(SUS316L)に圧着することにより、該正極集電体上に正極活物質としてのLiFePOを含む正極活物質層を形成してなる正極2を得た。
次に、本実施例で得られた電解質−負極構造体7の固体電解質6に正極2を密着させることにより、リチウムイオン二次電池1を作製した。
〔6.リチウムイオン二次電池のサイクル性能の評価〕
本実施例で得られた電解質−負極構造体7を備えるリチウムイオン二次電池を電気化学測定装置(東方技研株式会社製)に装着した。次に、25℃の温度下において、正極2と負極5との間に電流を印加してセル電圧が4.0Vになるまで充電した後に、セル電圧が2.0Vになるまで放電する操作を100サイクル繰り返すことにより、サイクル性能を評価した。前記電流の印加は0.375mA/cmの電流密度で行った。各サイクル終了時における放電容量密度を図3に示し、100サイクル目の放電容量密度を表1に示す。
〔実施例2〕
本実施例では、まず、前記5mol%のジルコニウムエトキシドをエタノールに溶解した溶液に代えて、前記複合金属酸化物に対して5mol%のジルコニウムエトキシド及び5mol%のリチウムエトキシドをエタノールに溶解した溶液を用いた以外は、実施例1と全く同一にして、無機粒子を調製した。得られた無機粒子は、化学式LiLaZr12で表わされるガーネット型構造を備える複合金属酸化物の表面が、酸化ジルコニウム及びジルコニウム酸リチウムを含む被覆層により被覆されている。
次に、本実施例で得られた無機粒子を用いた以外は実施例1と全く同一にして、リチウムイオン二次電池1を作製した。
次に、本実施例で得られたリチウムイオン二次電池1を用いた以外は実施例1と全く同一にして、サイクル性能を評価した。100サイクル目の放電容量密度を表1に示す。
〔実施例3〕
本実施例では、まず、前記5mol%のジルコニウムエトキシドをエタノールに溶解した溶液に代えて、該複合金属酸化物に対して5mol%のイットリウムイソプロポキシド及び5mol%のリチウムイソプロポキシドを2−プロパノール溶液に溶解した溶液を用いた以外は、実施例1と全く同一にして、無機粒子を調製した。得られた無機粒子は、化学式LiLaZr12で表わされるガーネット型構造を備える複合金属酸化物の表面が、酸化イットリウム及びイットリウム酸リチウムを含む被覆層により被覆されている。
次に、本実施例で得られた無機粒子を用いた以外は実施例1と全く同一にして、リチウムイオン二次電池1を作製した。
次に、本実施例で得られたリチウムイオン二次電池1を用いた以外は実施例1と全く同一にして、サイクル性能を評価した。100サイクル目の放電容量密度を表1に示す。
〔実施例4〕
本実施例では、まず、前記5mol%のジルコニウムエトキシドをエタノールに溶解した溶液に代えて、該複合金属酸化物に対して5mol%のイットリウムイソプロポキシド及び10mol%のリチウムイソプロポキシドを2−プロパノール溶液に溶解した溶液を用いた以外は、実施例1と全く同一にして、無機粒子を調製した。得られた無機粒子は、化学式LiLaZr12で表わされるガーネット型構造を備える複合金属酸化物の表面が、酸化イットリウム及びイットリウム酸リチウムを含む被覆層により被覆されている。
次に、本実施例で得られた無機粒子を用いた以外は実施例1と全く同一にして、リチウムイオン二次電池1を作製した。
次に、本実施例で得られたリチウムイオン二次電池1を用いた以外は実施例1と全く同一にして、サイクル性能を評価した。100サイクル目の放電容量密度を表1に示す。
〔比較例1〕
本比較例では、実施例1と全く同一にして前記粉末状の複合金属酸化物を調製し、該複合金属酸化物を無機粒子とした。得られた無機粒子は、前記複合金属酸化物の表面に被覆層を備えていない。
次に、本比較例で得られた無機粒子を用いた以外は実施例1と全く同一にして、リチウムイオン二次電池1を作製した。
次に、本比較例で得られたリチウムイオン二次電池1を用いた以外は実施例1と全く同一にして、サイクル性能を評価した。各サイクル終了時における放電容量密度を図3に示し、100サイクル目の放電容量密度を表1に示す。
図3から、
図3から、電解質−負極構造体7を構成する無機粒子が前記複合金属酸化物の表面に酸化ジルコニウムを含む被覆層を備える実施例1のリチウムイオン二次電池1は、該複合金属酸化物の表面に被覆層を全く備えていない比較例1のリチウムイオン二次電池1と比較して、充放電を繰り返したときに、サイクル性能が優れていることが明らかである。
また、表1から、電解質−負極構造体7を構成する無機粒子が前記複合金属酸化物の表面に、Li、Y、Zrからなる群から選択される1種以上の金属の酸化物を含む被覆層を備える実施例1−4のリチウムイオン二次電池は、該複合金属酸化物の表面に被覆層を全く備えていない比較例1のリチウムイオン二次電池1と比較して、100サイクル目の充放電において優れた放電容量密度を備えることが明らかである。また、前記無機粒子がZr酸化物を含む被覆層を備える実施例1−2のリチウムイオン二次電池1は、100サイクル目の充放電において特に優れた放電容量密度を備えることが明らかである。
1…リチウムイオン二次電池、 3…集電体(負極集電体)、 4…負極活物質層、 5…負極、 6…固体電解質、 7…電解質−負極構造体。

Claims (3)

  1. リチウムイオン二次電池に用いられる電解質−負極構造体であって、
    集電体上にリチウムイオンを吸蔵可能な材料からなる負極活物質層を形成してなる負極と、
    リチウムイオン伝導性を有する無機粒子、該無機粒子を結着するとともに高分子ゲルを含浸可能な有機高分子、及びリチウムイオン伝導性を有する電解液を保持するとともに該有機高分子に含浸される高分子ゲルを含む固体電解質とを備え、
    該負極活物質層と該固体電解質とが該有機高分子を媒体として一体化していて、
    該無機粒子は、化学式Li7−yLa3−xZr2−y12(式中、AはY、Nd、Sm、Gdからなる群から選択されるいずれか1種の金属であり、xは0≦x<3の範囲であり、MはNb又はTaであり、yは0≦y<2の範囲である)で表され、ガーネット型構造を備える複合金属酸化物と、該複合金属酸化物の表面を被覆する被覆膜とを備え、該被覆膜は、Li、Y、Zrからなる群から選択される1種以上の金属の酸化物を含むことを特徴とする電解質−負極構造体。
  2. 請求項1記載の電解質−負極構造体において、
    前記被覆膜は、Zr酸化物を含むことを特徴とする電解質−負極構造体。
  3. 集電体上にリチウムイオンを吸蔵可能な材料からなる負極活物質層を形成してなる負極と、
    リチウムイオン伝導性を有する無機粒子、該無機粒子を結着するとともに高分子ゲルを含浸可能な有機高分子、及びリチウムイオン伝導性を有する電解液を保持するとともに該有機高分子に含浸される高分子ゲルを含む固体電解質とを備え、
    該負極活物質層と該固体電解質とが該有機高分子を媒体として一体化していて、
    該無機粒子は、化学式Li7−yLa3−xZr2−y12(式中、AはY、Nd、Sm、Gdからなる群から選択されるいずれか1種の金属であり、xは0≦x<3の範囲であり、MはNb又はTaであり、yは0≦y<2の範囲である)で表され、ガーネット型構造を備える複合金属酸化物と、該複合金属酸化物の表面を被覆する被覆膜とを備え、該被覆膜は、Li、Y、Zrからなる群から選択される1種以上の金属の酸化物を含む電解質−負極構造体を備えることを特徴とするリチウムイオン二次電池。
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