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JP2017152122A - リチウムイオン二次電池用負極活物質、リチウムイオン二次電池用負極およびリチウムイオン二次電池 - Google Patents

リチウムイオン二次電池用負極活物質、リチウムイオン二次電池用負極およびリチウムイオン二次電池 Download PDF

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JP2017152122A JP2016031823A JP2016031823A JP2017152122A JP 2017152122 A JP2017152122 A JP 2017152122A JP 2016031823 A JP2016031823 A JP 2016031823A JP 2016031823 A JP2016031823 A JP 2016031823A JP 2017152122 A JP2017152122 A JP 2017152122A
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浩 笹川
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Atsushi Sano
篤史 佐野
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Kazumasa Tanaka
一正 田中
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Abstract

【課題】充放電サイクル中の負極活物質と電解液との反応およびガス発生を抑制し、高温サイクル特性に優れるリチウム二次電池用負極活物質、リチウムイオン二次電池用負極およびこれを用いたリチウムイオン二次電池の提供。【解決手段】負極活物質表面を、カルボキシ基および酸無水物基を含有するポリアクリル酸が被覆されているリチウムイオン二次電池用負極活物質。好ましくは、前記ポリアクリル酸は、前記リチウムイオン二次電池用負極活物質に対して、0.1〜5重量%含まれており、負極活物質粒子の粒径に対する、前記ポリアクリル酸の被覆厚さの比率が0.0005〜0.02である、リチウムイオン二次電池用負極活物質。【選択図】図1

Description

本発明は、リチウムイオン二次電池用負極活物質、リチウムイオン二次電池用負極およびリチウムイオン二次電池に関する。
リチウムイオン二次電池は、ニッケルカドミウム電池、ニッケル水素電池等と比べ、軽量、高容量であるため、携帯電子機器用電源として広く応用されている。また、ハイブリッド自動車や、電気自動車用に搭載される車載用電源として有力な候補ともなっている。近年は、携帯電子機器の小型化、高機能化に伴い、これらの電源となるリチウムイオン二次電池への更なる高容量化が期待されている。
負極活物質は充電時に電位が低くなり、電解液を還元分解する副反応が一般に起きる。その際、二酸化炭素や水素などのガスや電解液の分解物による被膜を負極活物質表面上に形成する。発生したガスはリチウムイオン二次電池の内部抵抗を増大させ、またこの被膜は充放電に関与しなくなるため、放電容量が減少し、ひいてはサイクル特性が劣化すると考えられる。一方、この被膜を形成することにより、充電時の負極活物質と電解液との反応が緩和される。しかし、この電解液の分解物による被膜が過度に成長することは、内部抵抗を増大させるため好ましくない。
負極活物質と電解液の副反応を抑制し、サイクル特性を向上することを目的として、カーボン材料を用いたリチウムイオン二次電池の負極活物質表面にアルカリ金属塩を含む高分子膜によって被覆すること(たとえば特許文献1)や、シリコン材料を高分子膜などで被覆する(たとえば、特許文献2)ことなどが提案されている。
特開平8−306353号公報 特開2005−197258号公報
しかしながら、サイクル特性を向上させることは従来の方法では十分ではなかった。ましてや、60℃以上の高温サイクル時においては電解液の反応性が非常に高くなるため、充放電サイクル時に起こる副反応は非常に活性となり、リチウムイオン二次電池に対してより大きな悪影響を及ぼす傾向がある。
車載用電源としての利用する場合には、リチウムイオン二次電池は高温に晒される可能性があるため、高温サイクル特性の向上は必要不可欠である。
このように、高分子膜で負極活物質を被覆する技術を用いても、外部からの加熱などによってリチウムイオン二次電池が高温になったときには、リチウムを吸蔵した負極活物質と電解液との副反応が非常に活性となる環境下で、十分な高温サイクル特性を得る必要がある。
本発明は、上記問題を考慮し、高温サイクル特性に優れるリチウムイオン二次電池用負極活物質、リチウムイオン二次電池用負極およびこれを用いたリチウムイオン二次電池を提供することを目的とする。
上記課題を解決するため、本発明の負極活物質は負極活物質粒子表面に、カルボン酸基および酸無水物基を含有するポリアクリル酸が被覆されていることを特徴とする。
本発明にかかるリチウムイオン二次電池用負極活物質によれば、負極活物質の表面がカルボキシ基と酸無水物が存在するポリアクリル酸で被覆されることにより、充放電サイクル中の負極活物質と電解液との反応およびガス発生を抑制し、充放電サイクルによる劣化を抑制することができる。
これは、カルボキシ基が脱水縮合した酸無水物が化学的に安定であるために、電解液が活性になりやすい高温サイクル下においても、電解液と負極活物質の反応を抑制し、電解液の分解やガスの発生を抑制することができるものと考えられる。その結果として、優れた高温サイクル特性を有する。
また、カルボキシ基は負極活物質表面と良好な接着性を保持し、負極活物質の膨張収縮に追従することが可能であり負極活物質の表面に被覆された高分子化合物が剥がれることを抑制することができると考えられる。
本発明にかかる前記ポリアクリル酸は、負極活物質に対して、0.1〜5重量%含まれていることが好ましい。
この範囲であれば負極活物質の表面を被覆し、活物質と電解液の反応をより十分に抑制する効果があり、かつ充放電時のLiイオンの挿入/脱離の疎外にもならないため、負極活物質と電解液との反応を抑制するために好適である。
本発明にかかるリチウムイオン二次電池用負極活物質は、負極活物質粒子の粒径に対する、前記ポリアクリル酸の被覆厚さの比率が0.0005〜0.02であることが好ましい。
これによれば、充電時に負極活物質の膨張に起因して発生する負極活物質層中の応力を緩衝する効果が増大し、さらに高温サイクル特性が向上することができる。
本発明によれば、高温サイクル特性に優れるリチウムイオン二次電池用負極活物質、リチウムイオン二次電池用負極およびリチウムイオン二次電池を提供することができる。
リチウムイオン二次電池の模式断面図である。
以下、図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明する。なお、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。また以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに以下に記載した構成要素は、適宜組み合わせることができる。
(リチウムイオン二次電池)
図1は、本実施形態とするリチウムイオン二次電池を示す模式断面図である。図1に示すように、リチウムイオン二次電池100は、主として、積層体30、積層体30を密閉した状態で収容するケース50、及び積層体30に接続された一対のリード60、62を備えている。
積層体30は、一対の正極10、負極20が、セパレータ18を挟んで対向配置されたものである。正極10は、板状(膜状)の正極集電体12上に正極活物質層14が設けられたものである。負極20は、板状(膜状)の負極集電体22上に負極活物質層24が設けられたものである。正極活物質層14の主面及び負極活物質層24の主面が、セパレータ18の主面にそれぞれ接触している。正極集電体12及び負極集電体22の端部には、それぞれリード60、62が接続されており、リード60、62の端部はケース50の外部にまで延びている。
以下、正極10及び負極20を総称して、電極10、20といい、正極集電体12及び負極集電体22を総称して集電体12、22といい、正極活物質層14及び負極活物質層24を総称して活物質層14、24ということがある。まず、電極10、20について具体的に説明する。
(正極集電体)
正極集電体12は、導電性の板材であればよく、例えば、アルミニウム又はそれらの合金、ステンレス等の金属薄板(金属箔)を用いることができる。
(正極活物質層)
正極活物質層14は、正極活物質、正極バインダー、及び、必要に応じた量の導電助剤から主に構成されるものである。
(正極活物質)
正極活物質としては、リチウムイオンの吸蔵及び放出、リチウムイオンの脱離及び挿入(インターカレーション)、又は、リチウムイオンと該リチウムイオンのカウンターアニオン(例えば、PF )とのドープ及び脱ドープを可逆的に進行させることが可能であれば特に限定されず、公知の電極活物質を使用できる。例えば、コバルト酸リチウム(LiCoO)、ニッケル酸リチウム(LiNiO)、リチウムマンガンスピネル(LiMn)、及び、一般式:LiNiCoMnMaO(x+y+z+a=1、0≦x≦1、0≦y≦1、0≦z≦1、0≦a≦1、MはAl、Mg、Nb、Ti、Cu、Zn、Crより選ばれる1種類以上の元素)で表される複合金属酸化物、リチウムバナジウム化合物(LiV、LiVOPO)、オリビン型LiMPO(ただし、Mは、Co、Ni、Mn、Fe、Mg、Nb、Ti、Al、Zrより選ばれる1種類以上の元素)、チタン酸リチウム(LiTi12)、LiNiCoAl(0.9<x+y+z<1.1)、LiMnO−LiMO(ただしMはMn、Co,Niより選ばれる1種類以上の元素)で表されるLi過剰系固溶体等の複合金属酸化物が挙げられる。
(正極バインダー)
バインダーは、正極活物質同士を結合すると共に、正極活物質と集電体12とを結合している。バインダーは、上述の結合が可能なものであればよく、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のフッ素樹脂が挙げられる。更に、上記の他に、バインダーとして、例えば、セルロース、スチレン・ブタジエンゴム、エチレン・プロピレンゴム、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂等を用いてもよい。また、バインダーとして電子伝導性の導電性高分子やイオン伝導性の導電性高分子を用いてもよい。電子伝導性の導電性高分子としては、例えば、ポリアセチレン等が挙げられる。この場合は、バインダーが導電助剤粒子の機能も発揮するので導電助剤を添加しなくてもよい。イオン伝導性の導電性高分子としては、例えば、リチウムイオン等のイオンの伝導性を有するものを使用することができ、例えば、高分子化合物(ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド等のポリエーテル系高分子化合物、ポリフォスファゼン等)のモノマーと、LiClO、LiBF、LiPF等のリチウム塩又はリチウムを主体とするアルカリ金属塩と、を複合化させたもの等が挙げられる。複合化に使用する重合開始剤としては、例えば、上記のモノマーに適合する光重合開始剤または熱重合開始剤が挙げられる。
正極活物質層14中のバインダーの含有量は特に限定されないが、正極活物質、導電助剤及びバインダーの質量の和を基準にして、1〜10質量%であることが好ましい。正極活物質とバインダーの含有量を上記範囲とすることにより、得られた正極活物質層14において、バインダーの量が少なすぎて強固な正極活物質層を形成できなくなる傾向を抑制できる。また、電気容量に寄与しないバインダーの量が多くなり、十分な体積エネルギー密度を得ることが困難となる傾向も抑制できる。
(正極導電助剤)
導電助剤も、正極活物質層14の導電性を良好にするものであれば特に限定されず、公知の導電助剤を使用できる。例えば、黒鉛、カーボンブラック等の炭素系材料や、銅、ニッケル、ステンレス、鉄等の金属微粉、炭素材料及び金属微粉の混合物、ITO等の導電性酸化物が挙げられる。
正極活物質層14中の導電助剤の含有量も特に限定されないが、添加する場合には正極活物質の質量に対して0.5〜5質量%であることが好ましい。
(負極集電体)
負極集電体22は、導電性の板材であればよく、例えば、銅、ニッケル、ステンレス又はそれらの合金の金属薄板(金属箔)を用いることができる。
(負極活物質層)
負極活物質層24は、負極活物質、負極バインダー、及び、必要に応じた量の導電助剤から主に構成されるものである。
(負極活物質)
負極活物質としては、例えば、リチウムイオンを吸蔵・放出(インターカレート・デインターカレート、或いはドーピング・脱ドーピング)可能な黒鉛、難黒鉛化炭素、易黒鉛化炭素、低温度焼成炭素等の炭素材料、Al、Si、SiO、Sn等のリチウムと化合することのできる金属、TiO、SnO、Fe等の酸化物を主体とする結晶質・非晶質の化合物、チタン酸リチウム(LiTi12)等を含む粒子が挙げられる。
本実施形態の負極活物質は負極活物質粒子表面にカルボキシ基および酸無水物基を含有するポリアクリル酸が被覆されていることを特徴とする。
本実施形態の負極活物質には、カルボキシ基の一部を脱水縮合させ酸無水物基にしたポリアクリル酸で被覆されている。酸無水物基は化学的に安定であるため、電解液が活性になりやすい高温サイクル下においても、電解液と活物質の反応を抑制し、電解液の還元分解や、ガスの発生を抑制することができる。これにより、負極活物質表面と電解液が直接接触するのをさけることにより、副反応を抑制することができ、高温サイクル特性を向上することができる。
また、ポリアクリル酸のカルボキシ基は活物質表面に対する接着性が強いことが特徴である。これにより、充放電時の負極活物質粒子の膨張収縮に追随し、良いと考えられる。
一方でポリアクリル酸中のカルボキシ基の一部が重合して酸無水物が形成されているので、それにより3次元的な結合ネットワークが強化され、負極活物質の膨張による負極活物質粒子の崩壊を抑える効果が得られると考えられる。
負極活物質粒子表面をカルボキシ基と酸無水物が同時に存在するポリアクリル酸で被覆することで、負極活物質と電解液の接触による副反応を抑制する効果および、負極活物質粒子の崩壊を抑制する効果により、高温サイクル特性の改善が可能となる。
負極活物質の表面にポリアクリル酸を被覆する方法としては、特に限定することはなく、例えば、負極活物質とポリアクリル酸が均一に分散されたスラリーを、スプレードライアー装置などで噴霧乾燥する方法や、負極活物質とポリアクリル酸が均一に分散されたスラリーを、架橋剤を溶かした溶液中に滴下して被覆させる方法などがあるが、以下に示すような方法で簡便に負極活物質表面にポリアクリル酸樹脂層を被覆することができる。
負極活物質とポリアクリル酸を任意の被覆量になるように秤量し、純水を加えながら混錬し、負極活物質とポリアクリル酸が均一に分散されたスラリーを作製する。そしてスラリーを乾燥させ分を十分揮発させた後、乾燥物を解砕および粉砕させ、所定の目開きの篩に通し、ポリアクリル酸樹脂層が表面に被覆された負極活物質が得られる。
また、被覆したポリアクリル酸中のカルボキシ基の一部に酸無水物基を導入する方法として、熱処理することが挙げられる。それにより、ポリアクリル酸の側鎖のカルボキシ基が脱水縮合し酸無水物基が生成されると考えられる。熱処理の方法としては、バッチ式乾燥炉や赤外線乾燥炉などを使うことができる。特に赤外線乾燥炉は高分子に対して効率的に、かつ短時間で熱処理することができるので、有用である。酸無水物基の量は熱処理温度によってコントロールすることができる。熱処理温度は180℃〜300℃、より好ましくは200℃〜250℃であるとさらに良い。熱処理時間は1時間〜24時間、より好ましくは2時間〜12時間であるとさらに良い。熱処理のタイミングは、負極活物質とポリアクリル酸が均一に分散されたスラリーを乾燥するときでも、スラリーを乾燥させた後でも、どちらでも構わない。
なお、カルボキシ基と酸無水物基の量は、FT−IR測定機を用いればよい。測定したIR吸収スペクトルにおいて、カルボキシ基を示す1235cm−1付近のピーク強度と、酸無水物を示す1800cm−1付近のピーク強度の比率を比較すればよい。その際、IR吸収スペクトルの強度比は、測定したIR吸収スペクトルのバックグラウンドを差し引き、カルボキシ基を示す1235cm−1付近のピーク強度と、酸無水物を示す1800cm−1付近のピーク強度を比率で表すことで得られる。
また、被覆量は、ポリアクリル酸は負極活物質に対して、0.05〜6.5重量%が好ましい。負極活物質の表面を一部でも高分子化合物によって被覆されていれば電解液との接触面積を低減することができるため、副反応を抑制することができるが、最良の被覆形態としては活物質表面を均一に万遍なく被覆することが好ましい。この範囲の被覆量であれば、負極活物質の表面全体を被覆しやすい傾向があり、より負極活物質と電解液との反応を抑制するために好適である。さらに被覆量は、上述した効果が向上するため0.1〜5重量%であることが好ましい。
さらに、この範囲の被覆量であれば、より高温サイクル特性を向上することができる。
また、負極活物質粒子の粒径に対する、前記ポリアクリル酸の被覆厚さの比率(被覆厚/粒径)が0.0005〜0.02であることが好ましい。この範囲であれば負極活物質の表面を被覆し、活物質と電解液の反応を抑制する効果があり、かつ充放電時のLiイオンの挿入/脱離の疎外にもならないため、より負極活物質と電解液との反応を抑制するために好適である。なお、負極活物質粒子の直径をR (μm)、ポリアクリル酸の被膜厚さをT(μm)とし、負極活物質粒子の粒径に対する前記ポリアクリル酸の被覆厚さの比率=T/Rと定義する。
また、本実施形態における負極活物質粒子上の前記ポリアクリル酸の被覆の状態は、おおよそ半分以上が覆われた状態であることが好ましい。
(負極バインダー)
負極バインダーは、負極活物質層24中の構成する部材同士または、負極活物質層24と負極集電体22とを密着させて電極構造を維持する目的で添加される。リチウムイオン二次電池用負極20に含まれるバインダーとしては、公知の材料を用いることができるが、例えばポリイミド、ポリアミドイミド、ポリアクリロニトリル、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)、カルボキシメチルセルロース(CMC)などが好適に用いることができる。SBR/CMC混合樹脂がより好ましい。
(負極導電助剤)
導電助剤も、負極活物質層24の導電性を良好にするものであれば特に限定されず、公知の導電助剤を使用できる。例えば、黒鉛、カーボンブラック等の炭素系材料や、銅、ニッケル、ステンレス、鉄等の金属微粉、炭素材料及び金属微粉の混合物、ITO等の導電性酸化物が挙げられる。
また導電助剤の含有量も、負極活物質の体積変化の大きさや箔との密着性を加味しなければならない場合は適宜調整し、上述した正極10における含有量と同様の含有量を採用すればよい。導電助剤の添加量は、負極活物質の質量に対して0.5〜5質量%であることが好ましい。
上述した構成要素により、電極10、20は、通常用いられる方法により作製できる。例えば、活物質(正極活物質または負極活物質)、バインダー(正極バインダーまたは負極バインダー)、溶媒、及び、導電助剤(正極導電助剤または負極導電助剤)を含む塗料を集電体上に塗布し、集電体上に塗布された塗料中の溶媒を除去することにより製造することができる。
溶媒としては、例えば、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、水等を用いることができる。
塗布方法としては、特に制限はなく、通常電極を作製する場合に採用される方法を用いることができる。例えば、スリットダイコート法、ドクターブレード法が挙げられる。
集電体12、22上に塗布された塗料中の溶媒を除去する方法は特に限定されず、塗料が塗布された集電体12、22を、溶媒が揮発する温度で乾燥させればよい。さらに、ポリアクリル酸に酸無水物基を導入するための熱処理する方法は特に限定されず、塗料が塗布された集電体12,22を、例えば赤外線乾燥機を用いて180℃〜300℃の範囲で熱処理すればよい。
そして、このようにして活物質層14、24が形成された電極を、その後、必要に応じて例えば、ロールプレス装置等によりプレス処理すればよい。ロールプレスの線圧は例えば、10〜50kgf/cmとすることができる。
次に、リチウムイオン二次電池100の他の構成要素を説明する。
(セパレータ)
セパレータは、電解液に対して安定であり、保液性に優れていれば特に制限はないが、一般的にはポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィンの多孔質シート、又は不織布が挙げられる。
(電解質)
電解質は、正極活物質層14、負極活物質層24、及び、セパレータ18の内部に含有させるものである。電解質としては、特に限定されず、例えば、本実施形態では、リチウム塩を含む電解液(電解質水溶液、有機溶媒を使用する電解質溶液)を使用することができる。ただし、電解質水溶液は電気化学的に分解電圧が低いことにより、充電時の耐用電圧が低く制限されるので、有機溶媒を使用する電解液(非水電解質溶液)であることが好ましい。電解液としては、リチウム塩を非水溶媒(有機溶媒)に溶解したものが好適に使用される。リチウム塩としては特に限定されず、リチウムイオン二次電池の電解質として用いられるリチウム塩を用いることができる。例えば、リチウム塩としては、LiPF、LiBF、LiBETI、LiFSI、LiBOB等の無機酸陰イオン塩、LiCFSO、(CFSONLi等の有機酸陰イオン塩等を用いることができる。
また、有機溶媒としては、例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、等の非プロトン性高誘電率溶媒や、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、等の酢酸エステル類あるいはプロピオン酸エステル類等の非プロトン性低粘度溶媒が挙げられる。これらの非プロトン性高誘電率溶媒と非プロトン性低粘度溶媒を適当な混合比で併用することが望ましい。更には、イミダゾリウム、アンモニウム、及びピリジニウム型のカチオンを用いたイオン性液体を使用することができる。対アニオンは特に限定されるものではないが、BF 、PF 、(CFSO等が挙げられる。イオン性液体は前述の有機溶媒と混合して使用することが可能である。
電解液のリチウム塩の濃度は、電気伝導性の点から、0.5〜2.0Mが好ましい。なお、この電解質の温度25℃における導電率は0.01S/m以上であることが好ましく、電解質塩の種類あるいはその濃度により調整される。
電解質を固体電解質やゲル電解質とする場合には、ポリビニリデンフルオライド等を高分子材料として含有することが可能である。
更に、本実施形態の電解液中には、必要に応じて各種添加剤を添加してもよい。添加剤としては、例えば、サイクル寿命向上を目的としたビニレンカーボネート、メチルビニレンカーボネート等や、過充電防止を目的としたビフェニル、アルキルビフェニル等や、脱酸や脱水を目的とした各種カーボネート化合物、各種カルボン酸無水物、各種含窒素及び含硫黄化合物が挙げられる。
(ケース)
ケース50は、その内部に積層体30及び電解液を密封するものである。ケース50は、電解液の外部への漏出や、外部からのリチウムイオン二次電池100内部への水分等の侵入等を抑止できる物であれば特に限定されない。例えば、ケース50として、図1に示すように、金属箔52を高分子膜54で両側からコーティングした金属ラミネートフィルムを利用できる。金属箔52としては例えばアルミ箔を、高分子膜54としてはポリプロピレン等の膜を利用できる。例えば、外側の高分子膜54の材料としては融点の高い高分子、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリアミド等が好ましく、内側の高分子膜54の材料としてはポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等が好ましい。
(リード)
リード60、62は、アルミ等の導電材料から形成されている。
そして、公知の方法により、リード60、62を正極集電体12、負極集電体22にそれぞれ溶接し、正極10の正極活物質層14と負極20の負極活物質層24との間にセパレータ18を挟んだ状態で、電解液と共にケース50内に挿入し、ケース50の入り口をシールすればよい。
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、リチウムイオン二次電池は図1に示した形状のものに限定されず、コイン形状に打ち抜いた電極とセパレータとを積層したコインタイプや、電極シートとセパレータとをスパイラル状に巻回したシリンダータイプ等であってもよい。
(実施例1)
<リチウムイオン二次電池用負極の作製>
まず、負極活物質として減圧下において1000℃の熱処理で不均化反応させたSiOと黒鉛を1:1の重量比で含む負極活物質を用意した。負極活物質重量に対して0.055重量%のポリアクリル酸を含む水溶液に、この負極活物質を分散させた水溶液を作製した。次いで、この分散液をスプレードライヤーを用いる噴霧乾燥法によって、ポリアクリル酸を被覆した負極活物質を作製した。次に得られたポリアクリル酸を被覆した負極活物質を赤外線乾燥炉にて225℃で2時間熱処理を行った。熱処理後の負極活物質をFT−IRにて計測したところ、カルボキシ基と酸無水物基の存在比は72:28であることが確認された。上記で得られた負極活物質粒子の断面を、走査型電子顕微鏡(SEM)で観察した結果、表面上の粒子界面が明確に区別できなくなり、粒子全体が均一にコートされていた。1つの負極活物質粒子において、表面に形成された樹脂層の厚みを任意で測定し、粒子径に対する樹脂層の厚みの比率を以下の式より算出した結果、0.0002であった。
負極活物質粒子の粒径に対するポリアクリル酸の被覆厚さの比=T/R
ただし、負極活物質粒子の直径をR (μm)、ポリアクリル酸の被膜厚さをT(μm)とする。
<リチウムイオン二次電池用負極の作製>
上記のリチウムイオン二次電池用負極活物質を90重量%と、導電助剤としてアセチレンブラックを5重量%と、バインダーとしてSBR/CMC混合樹脂を5重量%と、水とを混合分散させてペースト状の負極スラリーを作製した。そして、コンマロールコーターを用いて、この負極スラリーを厚さ10μmの銅箔の両面に所定の厚みとなるように、均一に負極活物質層を塗布した。次いで、乾燥炉内にて90℃の大気雰囲気下で上記負極活物質層を乾燥させた。なお、銅箔の両面に塗布された負極活物質層の塗膜の厚みは、ほぼ同じ膜厚に調整した。上記負極活物質が形成された負極をロールプレス機によって、負極活物質層を負極集電体の両面に圧着させ、所定の密度を有する負極シートを得た。
上記負極シートは、電極金型を用いて21×31mmの電極サイズに打ち抜き、実施例1に係るリチウムイオン二次電池用負極を作製した。
<リチウムイオン二次電池用正極の作製>
正極活物質としてコバルト酸リチウム(LiCoO)を96重量%と、導電助剤としてケッチェンブラックを2重量%と、バインダーとしてPVDFを2重量%と、溶媒としてN−メチル−2−ピロリドンとを混合分散させて、ペースト状の正極スラリーを作製した。そして、コンマロールコーターを用いて、この正極スラリーを厚さ20μmのアルミニウム箔の両面に所定の厚みとなるように、均一に正極活物質層を塗布した。次いで、乾燥炉内にて、110℃の大気雰囲気下でN−メチル−2−ピロリドン溶媒を乾燥させた。なお、アルミニウム箔の両面に塗布された正極活物質層の塗膜の厚みは、ほぼ同じ膜厚に調整した。正極活物質が形成された正極をロールプレス機によって、正極活物質層を正極集電体の両面に圧着させ、所定の密度を有する正極シートを得た。
上記正極シートは、電極金型を用いて20×30mmの電極サイズに打ち抜き、リチウムイオン二次電池用正極を作製した。
<リチウムイオン二次電池の作製>
上記作製した負極と正極とを、厚さ16μmの22×33mmサイズのポリプロピレン製のセパレーターを介して積層し、電極体を作製した。負極3枚と正極2枚とを負極と正極が交互に積層されるようセパレーター4枚を介して積層した。さらに、上記電極体の負極において、負極活物質層を設けていない銅箔の突起端部にニッケル製の負極リードを取り付け、一方、電極体の正極においては、正極活物質層を設けていないアルミニウム箔の突起端部にアルミニウム製の正極リードを超音波溶接機によって取り付けた。そしてこの電極体を、アルミニウムのラミネートフィルムの外装体内に挿入して周囲の1箇所を除いてヒートシールすることにより閉口部を形成し、上記外装体内にFEC/DECが3:7の割合で配合された溶媒中に、リチウム塩として1M(mol/L)のLiPFが添加された電解液を注入した後に、残りの1箇所を真空シール機によって減圧しながらヒートシールで密封し、実施例1に係るリチウムイオン二次電池を作製した。
(実施例2)
実施例2に係るリチウムイオン二次電池用負極およびリチウムイオン二次電池は、負極活物質重量に対して0.11重量%のポリアクリル酸を含む水溶液に、この負極活物質を分散させた水溶液を作製し、この分散液をスプレードライヤーを用いる噴霧乾燥法によって、ポリアクリル酸を被覆した負極活物質を作製した以外は、実施例1と同様にしてリチウムイオン二次電池用負極およびリチウムイオン二次電池を作製した。なお、得られた負極活物質粒子の断面を、走査型電子顕微鏡(SEM)で観察した結果、表面上の粒子界面が明確に区別できなくなり、粒子全体が均一にコートされていた。1つの負極活物質粒子において、表面に形成された樹脂層の厚みを任意で測定し、粒子径に対する樹脂層の厚みの比率を実施例1の式より算出した結果、0.0005であった。
(実施例3)
実施例3に係るリチウムイオン二次電池用負極およびリチウムイオン二次電池は、負極活物質重量に対して0.55重量%のポリアクリル酸を含む水溶液に、この負極活物質を分散させた水溶液を作製し、この分散液をスプレードライヤーを用いる噴霧乾燥法によって、ポリアクリル酸を被覆した負極活物質を作製した以外は、実施例1と同様にしてリチウムイオン二次電池用負極およびリチウムイオン二次電池を作製した。なお、得られた負極活物質粒子の断面を、走査型電子顕微鏡(SEM)で観察した結果、表面上の粒子界面が明確に区別できなくなり、粒子全体が均一にコートされていた。1つの負極活物質粒子において、表面に形成された樹脂層の厚みを任意で測定し、粒子径に対する樹脂層の厚みの比率を実施例1の式より算出した結果、0.002であった。
(実施例4)
実施例4に係るリチウムイオン二次電池用負極およびリチウムイオン二次電池は、負極活物質重量に対して1.1重量%のポリアクリル酸を含む水溶液に、この負極活物質を分散させた水溶液を作製し、この分散液をスプレードライヤーを用いる噴霧乾燥法によって、ポリアクリル酸を被覆した負極活物質を作製した以外は、実施例1と同様にしてリチウムイオン二次電池用負極およびリチウムイオン二次電池を作製した。なお、得られた負極活物質粒子の断面を、走査型電子顕微鏡(SEM)で観察した結果、表面上の粒子界面が明確に区別できなくなり、粒子全体が均一にコートされていた。負1つの負極活物質粒子において、表面に形成された樹脂層の厚みを任意で測定し、粒子径に対する樹脂層の厚みの比率を実施例1の式より算出した結果、0.004であった。
(実施例5)
実施例5に係るリチウムイオン二次電池用負極およびリチウムイオン二次電池は、負極活物質重量に対して3.3重量%のポリアクリル酸を含む水溶液に、この負極活物質を分散させた水溶液を作製し、この分散液をスプレードライヤーを用いる噴霧乾燥法によって、ポリアクリル酸を被覆した負極活物質を作製し、得られた以外は、実施例1と同様にしてリチウムイオン二次電池用負極およびリチウムイオン二次電池を作製した。なお、得られた負極活物質粒子の断面を、走査型電子顕微鏡(SEM)で観察した結果、表面上の粒子界面が明確に区別できなくなり、粒子全体が均一にコートされていた。1つの負極活物質粒子において、表面に形成された樹脂層の厚みを任意で測定し、粒子径に対する樹脂層の厚みの比率を実施例1の式より算出した結果、0.013であった。
(実施例6)
実施例6に係るリチウムイオン二次電池用負極およびリチウムイオン二次電池は、負極活物質重量に対して4.4重量%のポリアクリル酸を含む水溶液に、この負極活物質を分散させた水溶液を作製し、この分散液をスプレードライヤーを用いる噴霧乾燥法によって、ポリアクリル酸を被覆した負極活物質を作製した以外は、実施例1と同様にしてリチウムイオン二次電池用負極およびリチウムイオン二次電池を作製した。なお、得られた負極活物質粒子の断面を、走査型電子顕微鏡(SEM)で観察した結果、表面上の粒子界面が明確に区別できなくなり、粒子全体が均一にコートされていた。負1つの負極活物質粒子において、表面に形成された樹脂層の厚みを任意で測定し、粒子径に対する樹脂層の厚みの比率を実施例1の式より算出した結果、0.018であった。
(実施例7)
実施例7に係るリチウムイオン二次電池用負極およびリチウムイオン二次電池は、負極活物質重量に対して5.5重量%のポリアクリル酸を含む水溶液に、この負極活物質を分散させた水溶液を作製し、この分散液をスプレードライヤーを用いる噴霧乾燥法によって、ポリアクリル酸を被覆した負極活物質を作製した以外は、実施例1と同様にしてリチウムイオン二次電池用負極およびリチウムイオン二次電池を作製した。なお、得られた負極活物質粒子の断面を、走査型電子顕微鏡(SEM)で観察した結果、表面上の粒子界面が明確に区別できなくなり、粒子全体が均一にコートされていた。1つの負極活物質粒子において、表面に形成された樹脂層の厚みを任意で測定し、粒子径に対する樹脂層の厚みの比率を実施例1の式より算出した結果、0.02であった。
(実施例8)
実施例8に係るリチウムイオン二次電池用負極およびリチウムイオン二次電池は、負極活物質重量に対して6.6重量%のポリアクリル酸を含む水溶液に、この負極活物質を分散させた水溶液を作製し、この分散液をスプレードライヤーを用いる噴霧乾燥法によって、ポリアクリル酸を被覆した負極活物質を作製した以外は、実施例1と同様にしてリチウムイオン二次電池用負極およびリチウムイオン二次電池を作製した。なお、得られた負極活物質粒子の断面を、走査型電子顕微鏡(SEM)で観察した結果、表面上の粒子界面が明確に区別できなくなり、粒子全体が均一にコートされていた。1つの負極活物質粒子において、表面に形成された樹脂層の厚みを任意で測定し、粒子径に対する樹脂層の厚みの比率を実施例1の式より算出した結果、0.027であった。
(実施例9)
実施例9に係るリチウムイオン二次電池用負極およびリチウムイオン二次電池は、負極活物質重量に対して7.15重量%のポリアクリル酸を含む水溶液に、この負極活物質を分散させた水溶液を作製し、この分散液をスプレードライヤーを用いる噴霧乾燥法によって、ポリアクリル酸を被覆した負極活物質を作製した以外は、実施例1と同様にしてリチウムイオン二次電池用負極およびリチウムイオン二次電池を作製した。なお、得られた負極活物質粒子の断面を、走査型電子顕微鏡(SEM)で観察した結果、表面上の粒子界面が明確に区別できなくなり、粒子全体が均一にコートされていた。1つの負極活物質粒子において、表面に形成された樹脂層の厚みを任意で測定し、粒子径に対する樹脂層の厚みの比率を実施例1の式より算出した結果、0.029であった。
(比較例1)
比較例1に係るリチウムイオン二次電池用負極およびリチウムイオン二次電池は、負極活物質重量に対して3重量%のポリアクリル酸を含む水溶液に、この負極活物質を分散させた水溶液を作製し、この分散液をスプレードライヤーを用いる噴霧乾燥法によって、ポリアクリル酸を被覆した負極活物質を作製し、得られたポリアクリル酸を被覆した負極活物質に熱処理を行わなかった以外は、実施例1と同様にしてリチウムイオン二次電池用負極およびリチウムイオン二次電池を作製した。なお、熱処理後の負極活物質をFT−IRにて計測したところ、カルボキシ基の存在は確認できたが酸無水物基の存在比は確認できなかった。また、得られた負極活物質粒子の断面を、走査型電子顕微鏡(SEM)で観察した結果、負極活物質の各粒子の表面には。1つの負極活物質粒子において、表面に形成された樹脂層の厚みを任意で測定し、粒子径に対する樹脂層の厚みの比率を実施例1の式より算出した結果、0.013であった。
(比較例2)
比較例2に係るリチウムイオン二次電池用負極およびリチウムイオン二次電池は、負極活物質重量に対して3重量%のポリアクリル酸を含む水溶液に、この負極活物質を分散させた水溶液を作製し、この分散液をスプレードライヤーを用いる噴霧乾燥法によって、ポリアクリル酸を被覆した負極活物質を作製し、得られたポリアクリル酸を被覆した負極活物質を赤外線乾燥炉にて350℃2時間で熱処理を行った以外は、実施例1と同様にしてリチウムイオン二次電池用負極およびリチウムイオン二次電池を作製した。なお、熱処理後の負極活物質をFT−IRにて計測したところ、酸無水物基の存在は確認できたが、カルボキシ基の存在は確認できなかった。また、得られた負極活物質粒子の断面を、走査型電子顕微鏡(SEM)で観察した結果、表面上の粒子界面が明確に区別できなくなり、粒子全体が均一にコートされていた。1つの負極活物質粒子において、表面に形成された樹脂層の厚みを任意で測定し、粒子径に対する樹脂層の厚みの比率を以下の式より算出した結果、0.013であった。
(比較例3)
比較例3に係るリチウムイオン二次電池用負極およびリチウムイオン二次電池は、ポリアクリル酸が被覆されていない負極活物質を用いて、実施例1と同様にしてリチウムイオン二次電池用負極およびリチウムイオン二次電池を作製した。
また、実施例1〜6および比較例1〜4で作製したリチウムイオン二次電池用負極、およびリチウムイオン二次電池について、60℃における充放電サイクルにおいて容量維持率が70%となる時のサイクル数、およびガス発生の有無について評価した。
(高温充放電サイクル試験)
実施例および比較例で作製したリチウムイオン二次電池は、下記に示す充放電試験条件によって充放電を繰り返し、高温充放電サイクル特性について評価した。なお、充放電は60℃にて、実施した。充放電試験条件は、1.0Cの定電流で4.2Vになるまで定電流充電を行い、その後は1.0Cの定電流で電池電圧が2.5Vとなるまで放電し、上記を1サイクルとし、充放電サイクル後の放電容量維持率が70%を下回った時の充放電サイクル数を高温サイクル寿命と定義し、評価した。なお、1Cとは公称容量値の容量を有する電池セルを定電流充電、または定電流放電して、ちょうど1時間で充放電が終了となる電流値のことである。
(ガスの発生量)
また、ガスの発生量は、実施例および比較例で作製したリチウムイオン二次電池において、60℃充放電サイクルを100サイクル行った後、アルキメデスの原理により体積の測定を行い、体積の増加分をガス発生量とした。
本発明内のリチウムイオン二次電池用負極、およびリチウムイオン二次電池について、実施例1〜9および比較例1〜3の高温サイクル試験およびガス発生の有無の結果について表1に示す。
なお、表中の被覆量については、電池の負極シートより負極活物質を抽出し、TG−DTAにて被覆量を測定した。
Figure 2017152122
上記表1より明らかなように、カルボキシ基と酸無水物基を含有するポリアクリル酸で被覆され、被覆量が0.1重量%から5重量%でポリアクリル酸と活物質粒径の比が0.0005から0.02の範囲にあると、さらに高温サイクル特性が向上していることが明らかとなった。
実施例1〜9、および比較例3より、負極活物質粒子がカルボキシ基と酸無水物基を含有するポリアクリル酸に被覆されることで、サイクル特性が向上し、ガスの発生量も抑えられることが明らかとなった。これは、活物質粒子と電解液との副反応を抑制しているものと考えられる。
また実施例5および比較例1、比較例2より、被覆しているポリアクリル酸にはカルボキシ基と酸無水物基の両方が存在することでサイクル特性が向上し、ガスの発生量も抑えられることが明らかとなった。
比較例1はポリアクリル酸が被覆された負極活物質に熱処理を加えておらず、ポリアクリル酸に酸無水物が導入されていない。これはポリアクリル酸中のカルボキシ基の一部が重合して酸無水物が形成されていないので、3次元的な結合ネットワークが強化されず、負極活物質の膨張による負極活物質粒子の崩壊を抑えられず、負極活物質粒子の新生面と電解液との副反応により、ガス発生、サイクル劣化が起こっていると考えられる。
比較例2は熱処理により、ポリアクリル酸中のカルボキシ基の全てが重合して酸無水物基になっているため、ポリアクリル酸被膜と負極活物質表面の接着性が低下し、ポリアクリル酸被膜と負極活物質の剥離が生じ、電解液と負極活物質の接触により、ガス発生、サイクル劣化が生じていると考えれられる。
実施例5は被覆しているポリアクリル酸にカルボキシ基と酸無水物基が両方存在しており、カルボキシ基による強い密着と、酸無水物基による強固な被膜形成の効果により、サイクル特性が向上し、ガス発生も抑えられたと考えられる。
また実施例1〜実施例9から、カルボキシ基と酸無水物基を含有するポリアクリル酸で被覆され、被覆量が0.1重量%から5重量%でポリアクリル酸と活物質粒径の比が0.0005から0.02の範囲にあると、さらに高温サイクル特性が向上していることが明らかとなった。これは、ポリアクリル酸被膜の被覆量がこの範囲にあれば負極活物質の表面をよく被覆し、活物質と電解液の反応を抑制する効果があり、かつ充放電時のリチウムイオンの挿入/脱離の疎外にもならないため、より負極活物質と電解液との反応を抑制するためであると考えられる。

Claims (5)

  1. 負極活物質粒子表面を、カルボキシ基および酸無水物基を含有するポリアクリル酸が被覆していることを特徴とするリチウムイオン二次電池用負極活物質。
  2. 前記ポリアクリル酸は、前記リチウムイオン二次電池用負極活物質に対して、0.1〜5重量%含まれていることを特徴とする請求項1に記載のリチウムイオン二次電池用負極活物質。
  3. 負極活物質粒子の粒径に対する、前記ポリアクリル酸の被覆厚さの比率が0.0005〜0.02であることを特徴とする請求項1または2に記載のリチウムイオン二次電池用負極活物質。
  4. 請求項1から3のいずれか一項に記載のリチウムイオン二次電池用負極活物質とバインダーとの混合物が負極集電体上に形成されているリチウムイオン二次電池用負極。
  5. 請求項4に記載のリチウムイオン二次電池用負極と、正極と、電解質とを備えたリチウムイオン二次電池。



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