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JP2014076195A - 生体組織刺激装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】 生体組織を刺激する刺激電流を精度良く出力できる生体組織刺激装置を提供する。
【解決手段】 生体組織刺激装置は、複数の電極を備える刺激ユニットと、電極から出力させる刺激電流を供給する電力供給ユニットと、刺激ユニットと電力供給ユニットを電気的に接続するケーブルであって、刺激電流を電力供給ユニットから刺激ユニットへ供給するケーブルとを備える。更に刺激ユニットは、複数の電極のうち刺激電流を出力させる電極を指定するデマルチプレクサであって、電源電位と基準電位との間の許容電位で駆動されるデマルチプレクサと、ケーブルに供給される刺激電流の情報を得るデコーダ又は電流検出手段と、デマルチプレクサの電位を、デコーダ又は電流検出手段で検出された刺激電流の情報に応じて、電源電位側又は前記基準電位側に変更する電位変更手段と、を備える。

【選択図】 図3

Description

本発明は、生体組織の一部に電気刺激を与えて、生体の機能を調節する生体組織刺激装置に関する。
生体内に埋植された刺激電極(以下、電極)で、生体組織の一部を電気刺激して、生体の機能を調節する生体組織刺激装置が研究されている。例えば、患者の耳小骨へ音の振動を伝達する人工内耳、患者の胸部に埋植されて心臓に電気刺激を与え不整脈の発生を抑制する心臓ペースメーカ、網膜を構成する細胞を電気刺激して視覚の再生を試みる視覚再生補助装置などが生体組織刺激装置として知られている。
生体組織刺激装置を用いた生体組織の電気刺激では、電極から生体へと所要量の電荷が注入されることで、細胞に必要な刺激が与えられる。この時、電極から出力される1刺激分の刺激電流は、電気刺激部位の電荷の偏りを抑えるために、正負に振幅を持つ双極性の刺激電流(以下、双極性パルスと記す)とされることが好ましい。
また生体組織刺激装置は、生体内の限られたスペースに埋植される。例えば視覚再生補助装置では、電極以外の電力供給源等は受信部として眼外に取り付け、複数の電極を備える刺激部を眼球に取り付ける。受信部と刺激部は、柔軟性を持つ樹脂などで絶縁されたケーブルで接続する。この時、ケーブルから漏れ出す電流で体液の電気分解等の影響を発生させないため、ケーブルには交流電流が流される。また生体内の微小領域に設置される受信部と刺激部が持つ回路は小型であることが好ましく、IC(集積回路)が用いられている(特許文献1参照)。
特表2008‐538980号公報
ところで、生体組織刺激装置の受信部と刺激部が、交流電流のみを流すために結合コンデンサを介して接続されることで、互いに独立した電位を持つ場合には、受信部の電位変動の影響で刺激部の電位が変動しうる。一方、IC(集積回路)は内部に固有のPN接続を持っており、通常は逆バイアスされている。しかし電位変動の影響でPN接続が順バイアスされると、意図しない不正電流が電極から出力され、上述の双極性パルスの電荷バランスを崩す原因になる。これを防ぐために、ICの電圧の許容範囲を広くとることも考えられるが消費電力の増加につながる。なお生体内に長期間置かれる装置では不要な消費電力が出来るだけ少ないことが求められる。
本発明は上記従来技術の問題点に鑑み、生体組織を刺激する刺激電流を安定して出力できる生体組織刺激装置を提供することを技術課題とする。
上記課題を解決するために、本発明は以下のような構成を備えることを特徴とする。
(1) 生体組織に埋植される複数の電極を備える刺激ユニットと、前記電極から出力させる刺激電流を供給する電力供給ユニットと、前記刺激ユニットと前記電力供給ユニットを電気的に接続するケーブルであって、前記刺激電流を前記電力供給ユニットから前記刺激ユニットへ供給するケーブルと、を備える生体組織刺激装置において、前記刺激ユニットは、前記複数の電極のうち刺激電流を出力させる電極を指定するデマルチプレクサであって、電源電位と基準電位との間の許容電位で駆動されるデマルチプレクサと、前記ケーブルに供給される刺激電流の情報を得るデコーダ又は電流検出手段と、前記デマルチプレクサの電位を、前記デコーダ又は前記電流検出手段で検出された前記刺激電流の情報に応じて、前記電源電位側又は前記基準電位側に変更する電位変更手段と、を備えることを特徴とする。
(2) 前記電位変更手段は、前記デマルチプレクサを前記電源電位側又は前記基準電位側に接続するスイッチ手段と、前記刺激電流の方向に応じて前記スイッチ手段の開閉動作を制御する制御手段と、を備える(1)の生体組織刺激装置。
(3) 前記刺激電流は正負の極性に振幅を持つ双極性のパルスであり、前記スイッチ手段は、前記デマルチプレクサを前記電源電位側に接続する第1スイッチと,前記デマルチプレクサを前記基準電位側に接続する第2スイッチとを持ち、前記制御手段は、前記刺激電流の正負の極性に応じて前記第1スイッチ及び前記第2スイッチのうち、一方を開状態とし他方を閉状態とする制御をする(2)の生体組織刺激装置。
(4) 前記制御手段は、前記電極から電流を流出させるアノーディックの場合に、前記第1スイッチを閉状態とし前記第2スイッチを開状態とする制御をし、前記電極から電流を流入させるカソーディックの場合に、前記第1スイッチを開状態とし前記第2スイッチを閉状態にする制御をする(3)の生体組織刺激装置。
(5) 前記刺激電流の設定値の情報は、シリアルデータで伝送される(4)の生体組織刺激装置。
(6) 前記電力は、交流電力である(1)〜(5)のいずれかの生体組織刺激装置。
(7) 前記制御手段は、前記デマルチプレクサによる電極指定の動作よりも前記スイッチ手段の開閉動作を優先させる制御をする(1)〜(6)のいずれかの生体組織刺激装置。
(8) 前記制御手段は、前記電流検出手段で検出された前記刺激電流の測定値に基づき前記デマルチプレクサの直流電位の偏位量を制御する(1)〜(7)のいずれかの生体組織刺激装置。
本発明によれば、生体組織を刺激する刺激電流を安定して出力できる生体組織刺激装置を提供できる。
本開示について図面を用いて説明する。なお以下では生体組織刺激装置として視覚再生補助装置の例を挙げて説明する。図1は視覚再生補助装置の外観図である。図2は視覚再生補助装置の体内装置の説明図であり、図2(a)は体内装置20の外観図、図2(b)は刺激ユニット100の断面図である。
視覚再生補助装置1は、外界を撮影する体外装置10と、網膜を構成する細胞に電気刺激を与え視覚の再生を促す体内装置20からなる。体外装置10は、患者が掛ける眼鏡11と、眼鏡11に取り付けられるCCDカメラ等からなる撮影装置12と、外部デバイス13、送信手段14等で構成される。
外部デバイス13は、CPU等の演算処理回路を持つデータ変調手段13a、視覚再生補助装置1(体外装置10及び体内装置20)に電力供給をするバッテリー13bを備える。データ変調手段13aは、撮影装置12で撮影した被写体像を画像処理して、視覚再生のための電気刺激パルス用データを生成する。またデータ変調手段13aは、振幅変調等によって、電気刺激パルス用データを電力に重畳して電磁波を生成する。電磁波は送信手段14の1次コイルで体内装置20側に伝送(無線送信)される。送信手段14の中心には体内装置20の受信部31との位置を固定するための磁石(図示を略す)がある。
眼鏡11は患者の眼前に装着される。撮影装置12は眼鏡11の前面に取り付けられ、患者に視認させる被写体を撮影する。
体内装置20は、体外装置10から送信された電磁波を受信する受信ユニット30と、網膜を構成する細胞を電気刺激する刺激ユニット100を持つ。
受信ユニット30は、受信部31、制御部32、対向電極34を持つ。受信部31と制御部32は基板33に組み込まれる。受信部31は体外装置10からの電磁波を受信する2次コイルを持つ。制御部32は、受信部31で受信された電磁波から、電気刺激パルス用データと電力を抽出する。抽出された電力は刺激ユニット100を駆動する電源Vacと、電極101に電流を供給する電流源Iacに用いられる。つまり受信ユニット30は、刺激ユニット100及び体内装置20全体に電力供給をする電力供給ユニットになる。なお制御部32は、刺激ユニット100(後述するデマルチプレクサ120)を制御するための各種制御信号を、信号源Pである電気刺激パルス用データから抽出する。抽出された各種制御信号は刺激ユニット100に送信される。
例えば制御部32は、電気刺激パルス用データから、刺激電流を出力する電極101を指定する電極指定信号を生成する。なお電極101から出力される刺激電流は、正方向(プラス方向)と負方向(マイナス方向)に振幅を持つ矩形波を組み合せた二相性のパルス(双極性パルス)である。双極性パルスの強度や持続時間等が変更されることで、網膜を構成する細胞に様々なパターンの電気刺激が与えられる。また1刺激で正負両方の極性の電荷が与えられるので、生体内の電荷の偏りを相殺できる。
例えば制御部32は、電気刺激パルス用データから双極性パルスの印加パターンを決定する制御信号を生成する。双極性パルスの印加パターンは、最初に(1stパルスで)電極101から正電流を出力し、次に(2ndパルスで)電極101から負電流が出力されるアノーディックファーストと、1stパルスで電極101から負電流を出力し2ndパルスで電極101から正電流を出力するカソーディックファースト等がある。
また制御部32は、電気刺激パルス用データから、双極性パルスの印加パターン(刺激電流の設定値)に合わせて、後述するデマルチプレクサ20の電位を調節するための電位信号等を生成する。
対向電極34は網膜を介して各電極101に対向する位置に置かれる。なお受信ユニット30にも送信手段14との位置固定用の磁石が設けられる。
刺激ユニット100は、複数の電極101、眼球に沿って配置される基板103、どの電極101から刺激電流を出力するかを制御する刺激制御部110を持つ。電極101と刺激制御部110は基板103に組み込まれる。
電極101は生体適合性が高い導体で形成される。例えば金や白金等の貴金属で形成される。基板103は、眼球(層状の眼組織内)に設置されるため、眼球の形状に沿って、層間(層内)に長期埋植されても患者の負担が少ないことが好ましい。例えば基板103は、生体適合性が高く、所要の厚さで湾曲可能な材料で長板状に加工される。基板内部に配線される複数のリード線103aは、各電極101と刺激制御部110を電気的に接続する。
刺激制御部110は、制御部32から送信された電極指定信号等に基づき、双極性パルスを各電極101に振り分けるデマルチプレクサ120を持つ。デマルチプレクサ120は複数の回路が実装された周知のモノリシックIC(集積回路)で構成される。モノリシックICは所要の許容電圧範囲内で駆動されることが安定動作の為に必要となる。デマルチプレクサ120の構成及び動作制御の詳細な説明は後述する。
刺激制御部110は、蓋部材105と設置台106でハーメチックシール(密封)され、設置台106を介して基板103上に実装される。刺激制御部110は、半導体基板上に集積回路を機能させるパターン配線が形成された面が設置台106に接合される。設置台106は、絶縁性、気密性及び生体適合性を持つ素材で形成される。例えば設置台106は、セラミックスで平板状に形作られる。また設置台106には、刺激制御部110が持つパターン配線の端子部分と電気的に接続するための配線が、設置台106を貫通するように形成されている。
蓋部材105は、生体適合性と、高気密性を持つ金属等の素材で形成され、刺激制御部110が収まる空間を持つ。なお蓋部材105と設置台106は、刺激制御部110を密封するために、設置台106の接合箇所にメタライズ処理で金属層を形成して、蓋部材105と設置台106の金属同士を接合する。
受信ユニット30と刺激ユニット100はケーブル51で電気的に接続される。ケーブル51は絶縁性と生体適合性を持つ樹脂の内側に複数の導線50を内包する。樹脂にはシリコーン、ポリイミド、パリレン等が用いられる。またケーブル51内の導線50も生体適合性が高いものが使用されることが好ましく、白金、金等が材料に用いられる。
ケーブル51に内包された複数の導線50は、刺激ユニット100に電力を供給するために電源Vacに接続される導線(電力線)50aと、電極101に双極性パルス(電流)を供給するために電流源Iacに接続される導線50bを持つ。また信号源Pからは刺激電流の向き(方向)に応じてデマルチプレクサ120の電位を制御する電位信号等の制御信号が生成され、変調により電源Vacの交流電圧に重畳されて変調波として、刺激ユニット100(デマルチプレクサ120)側に伝送される(図3参照)。なお交流電圧に制御信号を重畳するための変調には、周知の変調方式(AM変調、FM変調、周波数変調等)が用いられる。なお一つの導線50aで複数の情報等が伝達されると消費電力や装置構成の簡略化に有利である。
次に体内装置20の回路構成について説明する。図3は体内装置20の制御回路の説明図、図4はデマルチプレクサ120の回路構成の説明図である。
図3において、電力・制御信号供給回路(図番号を略す)は、電源Vacと、電源Vacに接続された信号源Pと、電源Vacの出力端に接続されるコンデンサC1、C2と、各コンデンサC1,C2に接続される導線50aと、導線50aに接続される整流回路111と、導線50aに並列接続される復調回路(デコーダ)112と、電位調整回路113を備える。なお電源Vac、信号源P、コンデンサC1,C2は、受信ユニット30側に設けられ、整流回路111、デコーダ112、電位調整回路113は刺激ユニット100側に設けられている。
電源Vacは、受信ユニット30で抽出された電力を刺激ユニット100に供給する。コンデンサC1,C2は電源Vacから出力された電力の直流成分をカットする。これにより交流電力のみが導線50aに伝達され、電力伝送に直流電圧が用いられることによる生体へのリスクが抑えられる。整流回路111は交流電力を直流電力に整流する。整流回路111にはダイオード等の周知の非線形素子が使用される。整流回路111で変換された直流電圧で刺激制御部110が駆動される。
デコーダ112はケーブル50を介して供給された変調波を復調して、各種制御信号を抽出する。デコーダ112は、入力側が導線50aに接続され、出力側がデマルチプレクサ120と電位調整回路113に接続される。なおデコーダ112、デマルチプレクサ120、電位調整回路113等、刺激ユニット100に搭載される回路や素子は、刺激制御部110によって駆動制御される。
以上の構成により、デコーダ112で抽出された制御信号によって、デマルチプレクサ120の一対の入力端子121と出力端子122のONとOFFが制御され、対応する電極101からの刺激電流の出力の有無が制御される。またデコーダ112で抽出された制御信号(電位信号)に基づき電位調節回路113によって、デマルチプレクサ120の電位が調節される。なお各種制御信号は、ON(Highレベルの電位)とOFF(Lowレベルの電位)のシリアルデータとして、デマルチプレクサ120、電位調節回路113に伝送される。電位調節回路113の詳細な説明は後述する。
刺激パルス信号供給回路(図番号を略す)は、刺激パルス信号を出力する電流源Iacと、電流源Iacの各出力端に接続されるコンデンサC3,C4と、各コンデンサC3,C4に接続される導線50bと、デマルチプレクサ120を介して導線50bに接続される電極101を備える。なお電流源IacとコンデンサC3,C4は受信ユニット30側に設けられる。デマルチプレクサ120と電極101は刺激ユニット100側に設けられる。
電流源Iacからは正負に極性を持つ刺激電流が出力される。コンデンサC3,C4は刺激電流に含まれる直流成分をカットする。刺激制御部110側に入力された刺激電流は、デマルチプレクサ120に入力される。デマルチプレクサ120は、複数の入力端子121と出力端子122を持つ。一対の入力端子121と出力端子122の導通状態と非導通状態の切り換えによって、正負の両方に極性を持つ双極性パルスを出力する電極101が指定される。なお図3では入力端子121aと出力端子122aが電気的に接続された例が示されている。
図4において、デマルチプレクサ120は、P型半導体基板130の所要領域に形成されるNチャネルトランジスタ領域(NMOS領域)130aと、Pチャネルトランジスタ領域(PMOS領域)130bの組み合わせを複数個持つ。一対のNMOS領域130aとPMOS領域130bのONとOFFの切り換えによって、対応する電極101からの刺激電流の出力の有無が切り換えられる。
NMOS領域130aは、半導体基板130の表面の所要領域に形成されるN型不純物拡散領域(ソースS)131と、N型不純物拡散領域(ドレインD)132と、N型不純物拡散領域131、132の間のP型半導体基板130表面上に絶縁膜(図示を略す)を介在させて形成されるゲート電極133を備える。またNMOS領域130aには、P型半導体基板130に電気的接続を与える為のP型不純物拡散領域138が設けられる。
PMOS領域130bは、P型半導体基板130の表面に形成されたN型ウェル134内に形成される。PMOS領域130bは、N型ウェル134表面に形成されたP型不純物拡散領域(ソースS)135と、P型不純物拡散領域(ドレインD)136と、P型不純物拡散領域135、136の間のN型ウェル134表面上に絶縁膜(図示を略す)を介在させて形成されるゲート電極137から形成される。またPMOS領域130bのN型ウェル134内には電気的接続を与えるN型不純物拡散領域139が設けられる。
N型不純物拡散領域139は電源ラインVccに接続され、P型不純物拡散領域138は基準電位VGNDに接続される。これにより基板130と、N型ウェル134間に逆バイアスが与えられる。
P型不純物拡散領域(ソースS)135とN型不純物拡散領域(ソースS)131は入力端子121aに接続される。N型不純物拡散領域(ドレインD)132とP型不純物拡散領域136は出力端子122aに接続される。ゲート電極133、137は、図示を略す制御回路を介してデコーダ112の出力端に接続される。なおゲート電極133とゲート電極137の間には、電位を反転させる周知の反転素子115が設けられる。
以上の構成により、基板130とN型ウェル134が逆バイアスされた状態で、デコーダ112からHighレベルの信号が入力されると、NMOS領域130aのゲート(G)133にスレッシュホールドよりも高い電位が加えられる。これによりNMOS領域130aのソース(S)131とドレイン(D)132間にNチャネルNchが形成され、電流が導通可能になる。一方、PMOS領域130bのゲート(G)137には、反転素子115を介してLowレベルの電位が加えられる。これによりソース(S)135とドレイン(D)136間にPチャネルPchが形成され、電流が導通可能になる。
一方、デコーダ112にLowレベルの信号が入力されると、NMOS領域130aのゲート(G)133にスレッシュホールドよりも低い電位が加えられ、NMOS領域130aのソース(S)131とドレイン(D)132間が開放される。また反転素子115を介して、PMOS領域130bのゲート(G)137にスレッシュホールドよりも高い電位が加えられ、PMOS領域130bのソース(S)135とドレイン(D)136間が開放される。
以上のようにして、一対のPMOS領域130bとNMOS領域130aが導通状態になると、デマルチプレクサ120の対応する出力端子122を介して、対応する電極101から刺激電流(双極性パルス)が出力される。
ところで図4に示されるように、PMOS領域130bのソース(S)135とドレイン(D)136間には内部抵抗R2が存在する。NMOS領域130aのソース(S)131とドレイン(D)132間には内部抵抗R1が存在する。この内部抵抗R1、R2の値は、デマルチプレクサ120の電位によって変化する。図5にデマルチプレクサ120の内部抵抗Rの変化特性を示す。ここで縦軸は抵抗値、横軸はデマルチプレクサ120の入力端子121の電位Vsである。またPMOS領域130bの内部抵抗R2の変化特性のグラフをr2、NMOS領域130aの内部抵抗R1の変化特性のグラフをr1、デマルチプレクサ120全体の内部抵抗の変化特性のグラフをRとする。このように内部抵抗R1,R2の抵抗値の変化特性r1、r2は、NMOS領域130aとPMOS領域130bとで逆となる。つまり電流の方向に関わらずデマルチプレクサ120には所定値以上の内部抵抗Rによる電圧降下が生じることになる。
一方、同一の基板130にNMOS領域130aとPMOS領域130bの両方が形成されていると、各P領域と各N領域の間に寄生ダイオードが形成される。例えば、P型の基板130とN型のソース131又はドレイン132間に寄生ダイオードD1が形成される。N型ウェル134とP型のソース139又はドレイン136の間に寄生ダイオードD2が形成される。これらの寄生ダイオードD1,D2は、デマルチプレクサ120が、基準電位VGNDと電源ラインVccの間の許容電圧範囲内で駆動されている状態では、逆バイアス状態が保たれる。
しかし交流電流が供給されるケーブル51を介して、受信ユニット30と刺激ユニット100の電位(直流電位)が独立している場合には、生体内での受信ユニット30の電位変動の影響で、デマルチプレクサ120(入力端子121と出力端子122)の基準電位が変動する場合がある。基準電位が高くなる(低くなる)と、内部抵抗Rで生じる電圧降下で、デマルチプレクサ120の電位が基準電位以下、又は電源ラインVccの電位以上となり、通常は逆バイアスされるべき寄生ダイオード等が、順バイアスされてしまうおそれがある。寄生ダイオード等が順バイアスされると、意図しない不正電流Idが発生し、電極101から出力された不正電流Idが双極性パルスの電荷バランスを崩す原因となる。
そこで本実施形態では、電位調節回路113によって、デマルチプレクサ120の電位が電源電位Vccと基準電位VGNDとの間に収められるようにする。電位調節回路113は、入力端子121と電源ラインVccを接続するスイッチSW1と、入力端子121と基準電位VGNDとを接続するスイッチSW2を持つ。
電位調節回路113に、デコーダ112からの電位信号が入力されると、刺激ユニット100側で、電流源Iacから出力される双極性パルスの電流の向きが認識される。刺激制御部110は、電位調節回路113のスイッチSW1とSW2を、双極性パルスの電流の向きに応じて切り換える。
例えば、図4の電流源Iacから、アノーディックの電流Iが出力されると、デマルチプレクサ120の内部抵抗Rによる電圧降下の影響で、NMOS領域130aのドレイン(D)132の電位が基準電位VGNDよりも下がり、寄生ダイオードD1が順バイアスされるおそれがある。この場合、電位調節回路113の電源ラインVccに接続されるスイッチSW1がONにされ、基準電位VGNDに接続されるスイッチSW2がOFFにされる。これによりデマルチプレクサ120の電位が上昇する(持ち上げられる)。これにより内部抵抗Rによる電圧降下の影響で、出力端子122aの電位が下がっても、基準電位VGND以下に下がる可能性はほとんどないので、ダイオードD1の逆バイアス状態が保たれる。
一方、電流源Iacから出力される電流Iの極性が反転され、カソーディックとなると、PMOS領域130bのドレイン136の電位が、電源ラインVccの電位よりも上昇して、寄生ダイオードD2が順バイアスされるおそれがある。このとき、電位調節回路113のスイッチSW1がOFFされ、スイッチSW2がONにされる。これにより出力端子122aの電位が上昇しても、デマルチプレクサ120の電位が電源ラインVccの電圧を超える可能性はほとんどないので、ダイオードD2の逆バイアス状態が保たれる。
以上のように、双極性パルスの刺激電流の向きに応じて、電位調節回路113のスイッチSW1とスイッチSW2のONとOFFを交互に切り換えることで、デマルチプレクサ120の電位変動を許容電圧範囲内に抑えられる。そして寄生ダイオードが順バイアスされないことで、不正電流Idの発生が抑えられ、電極101から出力される双極性パルスの電荷バランスが保たれる。
次に以上の構成を備える生体組織刺激装置の動作を説明する。撮影装置12で撮影された画像データは、データ変調手段13aで電気刺激パルス用データに変換されると共に、データ変調手段13aの変調で、バッテリー13aから供給される電力に重畳されて、送信手段14を介して体内装置20側に送信される。体内装置20では、制御部32が、受信された電磁波から電力と電気刺激パルス用データを復調する。電力は刺激ユニット100を駆動させる交流電力を供給する電源Vacと、電極101から双極性パルス(電流)を出力させる電流源Iacに用いられる。制御部32は電気刺激パルス用データから電極指定信号、電位信号等の制御信号を抽出し、信号源Pから出力させる。信号源Pから出力された制御信号は、変調により電源Vacから供給された電力に重畳され、変調波としてケーブル51を介して刺激ユニット100に送信される。
刺激ユニット100では、デコーダ112で変調波が復調されて、制御信号が抽出される。刺激ユニット100の整流回路111は、受信ユニット30から送信された交流電圧を直流電圧に整流する。デコーダ112で抽出された制御信号は、デマルチプレクサ120と電位調節回路113に入力される。デマルチプレクサ120は制御信号に基づき、一対のPMOS領域130bとNMOS領域130aの導通状態と非導通状態を切り換えて、対応する電極101から刺激電流が出力されるようにする。
一方、電位調節回路113は、制御信号(電位信号)に基づき、双極性パルスの刺激電流の極性(方向)に応じて、スイッチSW1とSW2のONとOFFが切り換えられる。例えば、電極101から刺激電流が流れ出るアノーディックの場合、電位調節回路113は、スイッチSW1をONとし、スイッチSW2をOFFとする。アノーディックの場合に、デマルチプレクサ120の電位を予め引き上げておくことで、内部抵抗Rによる電圧降下が生じたとしても、出力端子122の電位を基準電位VGNDよりも高くできる。
一方、電極101から刺激電流が流入されるカソーディックの場合、電位調節回路113は、スイッチSW1をOFFとし、スイッチSW2をONとする。刺激電流が電極101から流入される方向に流れるときに、デマルチプレクサ120の電位を予め引き下げておくことで、内部抵抗Rによる電圧降下が生じたとしても、出力端子122の電位を電源電位Vccよりも低くできる。以上のような制御によって、デマルチプレクサ120が許容電圧範囲で駆動されることで、寄生ダイオード等が順バイアスされ、流れ出た不正電流Idで双極性パルスの電荷バランスが崩れることが防止される。
なお上記の構成では、信号源Pから複数の制御信号が同時に送信されている。このような場合に、電位信号の処理が優先されるようにすると良い。このようにすると、電位調節回路113によるスイッチSW1、SW2のONとOFFの切り換えによって、電位調節が完了した状態で、より安定して双極性パルスが出力されるようになる。
また上記では、電位調節回路113を用いて、デマルチプレクサ120(入力端子121)の電位を、電源側と接地側とに切り換え接続することで、デマルチプレクサ120の電位を調節している。これ以外にも、刺激パルスの電流の設定値に応じて、スイッチSW1、SW2のONとOFFを切り換えることで、デマルチプレクサ120(入力端子121)の電位が調節されても良い。この場合、電流値に応じて入力端子121に加えられる電位Vsがリニアに可変されても良い。
またデマルチプレクサ120に流れる電流の測定値に基づいて、入力端子121の電位が調節されても良い。この場合には、図6の変用例に示されるように、導線50bに流れる刺激電流の電流量及び方向を検出する電流検出部113aを設ける。電流検出部113aは、抵抗R5と、抵抗R5で生じた電圧降下から電流値を検出する検出回路130と、デマルチプレクサ120の入力端子121に電圧を加える電源Vdを備える。
以上の構成により導線50bに刺激電流が流れると、電流検出部113aの抵抗R5で生じる電圧降下によって、検出回路130は、刺激電流の電流量を検知する。また抵抗R5で生じた電圧降下の極性によって電流の方向を検知する。そして刺激電流の電流量と方向の検知結果に基づき、電源Vdの電位とその極性を調節する。なお電源Vdの電位は入力端子121に加えられる。このようにするとより精度良くデマルチプレクサ120の電位調節を行えるようになる。
なお上記では正負に極性を持つ双極性パルスを電極から出力させる例を示した。これ以外にも、1度の電気刺激で電極から正(負)方向の電流を出力させた後、2回目の電気刺激で電極から反対極性の負(正)方向の電流を出力させても良い。更には、電極から正負一方向のみの電流が出力される場合にも、上記の構成によってスイッチ部のONとOFFとが切り換えられることで、デマルチプレクサ120の電位を許容電圧範囲に収めることができ、安定動作を維持できるようになる。
また上記では生体組織刺激装置として、視覚再生補助装置を例に挙げて説明した。これ以外にも、本発明の構成は、生体内に埋植されて患者の生体組織の一部に電気刺激を与える電極を備え、生体の機能を調節する周知の生体組織刺激装置に適用可能である。例えば、患者の耳小骨に音の信号を伝達する人工内耳、患者の胸部に埋植されて心臓に電気刺激を与えて不整脈の発生を抑制するペースメーカ等に、本発明の構成が適用されることで、電極から刺激電流がより安定して出力されるようになる。
生体組織刺激装置の外観図である。 生体組織刺激装置の体内装置の説明図である。 体内装置の制御回路の説明図である。 デマルチプレクサの回路構成の説明図である。 デマルチプレクサの内部抵抗の変化特性の説明図である。 生体組織刺激装置の変用例の回路構成の説明図である。
P 信号源
SW1,SW2 スイッチ
1 視覚再生補助装置
10 体外装置
20 体内装置
30 受信ユニット
51 ケーブル
100 刺激ユニット
101 電極
112 復調回路(デコーダ)
113、113a 電位調整回路
110 刺激制御部110
120 デマルチプレクサ
121 入力端子
122 出力端子

Claims (8)

  1. 生体組織に埋植される複数の電極を備える刺激ユニットと、
    前記電極から出力させる刺激電流を供給する電力供給ユニットと、
    前記刺激ユニットと前記電力供給ユニットを電気的に接続するケーブルであって、前記刺激電流を前記電力供給ユニットから前記刺激ユニットへ供給するケーブルと、
    を備える生体組織刺激装置において、
    前記刺激ユニットは、前記複数の電極のうち刺激電流を出力させる電極を指定するデマルチプレクサであって、電源電位と基準電位との間の許容電位で駆動されるデマルチプレクサと、
    前記ケーブルに供給される刺激電流の情報を得るデコーダ又は電流検出手段と、
    前記デマルチプレクサの電位を、前記デコーダ又は前記電流検出手段で検出された前記刺激電流の情報に応じて、前記電源電位側又は前記基準電位側に変更する電位変更手段と、
    を備えることを特徴とする生体組織刺激装置。
  2. 前記電位変更手段は、
    前記デマルチプレクサを前記電源電位側又は前記基準電位側に接続するスイッチ手段と、
    前記刺激電流の方向に応じて前記スイッチ手段の開閉動作を制御する制御手段と、
    を備える請求項1の生体組織刺激装置。
  3. 前記刺激電流は正負の極性に振幅を持つ双極性のパルスであり、
    前記スイッチ手段は、前記デマルチプレクサを前記電源電位側に接続する第1スイッチと,前記デマルチプレクサを前記基準電位側に接続する第2スイッチとを持ち、
    前記制御手段は、前記刺激電流の正負の極性に応じて前記第1スイッチ及び前記第2スイッチのうち、一方を開状態とし他方を閉状態とする制御をする請求項2の生体組織刺激装置。
  4. 前記制御手段は、前記電極から電流を流出させるアノーディックの場合に、前記第1スイッチを閉状態とし前記第2スイッチを開状態とする制御をし、前記電極から電流を流入させるカソーディックの場合に、前記第1スイッチを開状態とし前記第2スイッチを閉状態にする制御をする請求項3の生体組織刺激装置。
  5. 前記刺激電流の設定値の情報は、シリアルデータで伝送される請求項4の生体組織刺激装置。
  6. 前記電力は、交流電力である請求項1〜5のいずれかの生体組織刺激装置。
  7. 前記制御手段は、前記デマルチプレクサによる電極指定の動作よりも前記スイッチ手段の開閉動作を優先させる制御をする請求項1〜6のいずれかの生体組織刺激装置。
  8. 前記制御手段は、前記電流検出手段で検出された前記刺激電流の測定値に基づき前記デマルチプレクサの直流電位の偏位量を制御する請求項1〜7のいずれかの生体組織刺激装置。
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