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JP2013202005A - クルクミン類含有油脂およびその製造方法 - Google Patents

クルクミン類含有油脂およびその製造方法 Download PDF

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JP2013202005A JP2012076144A JP2012076144A JP2013202005A JP 2013202005 A JP2013202005 A JP 2013202005A JP 2012076144 A JP2012076144 A JP 2012076144A JP 2012076144 A JP2012076144 A JP 2012076144A JP 2013202005 A JP2013202005 A JP 2013202005A
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Seiichiro Isobe
誠一郎 五十部
Makiko Takenaka
真紀子 竹中
Takeshi Okubo
剛 大久保
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Abstract

【課題】 安全性高く、工業的に効率良くクルクミン類含有油脂を製造する方法を提供すること、ならびにクルクミン類を高濃度に含有し、安全性に優れたクルクミン類含有油脂を提供することを目的とする。
【解決手段】 クルクミン類を中鎖脂肪酸トリグリセライドに溶解してなるクルクミン類含有油脂を提供すると共に、ウコンと中鎖脂肪酸トリグリセライドとの混合物を、湿式磨砕機を用いて磨砕し、次いで搾油することを特徴とする、請求項1に記載のクルクミン類含有油脂の製造方法を提供する。
【選択図】 なし

Description

本発明は、クルクミン類含有油脂とその製造方法に関する。より詳しくは、本発明は、クルクミンとその類縁体2種との総称であるクルクミン類を高濃度に含有する、クルクミン類含有油脂と、その効率的な製造方法とに関する。
本発明においてクルクミン類とは、クルクミン[(1E,6E)-1,7-bis(4-hydroxy-3-methoxyphenyl)-1,6-heptadiene-3,5-dione ]と、この類縁体である、デメトキシクルクミン[(1E,6E)-1-(4-hydroxyphenyl)-7-(3-methoxy-4-hydroxyphenyl)-1,6-heptadiene-3,5-dione ]、ビスデメトキシクルクミン[(1E,6E)-1,7-bis(4-hydroxyphenyl)-1,6-heptadiene-3,5-dione ]の総称である。
クルクミン類は、主としてウコンから抽出され、生薬として広く使用されている。
クルクミン類にはいろいろな生理機能が知られている。例えば、抗がん機構は、培養ラット乳腺細胞で過剰に産生される一酸化窒素ラジカルの捕捉、血管新生の阻害、カスパーゼ−3、カスパーゼ−8の活性化、転移抑制効果などが報告されている。
クルクミン類は、腸の吸収で強力な抗酸化性物質テトラヒドロクルクミンに変化して強力な抗酸化能を示す。このためアルツハイマー痴呆症の原因物質であるアミロイド障害を防止し、痴呆症の予防効果を発揮し、中大脳動脈閉塞誘発した局所脳虚血モデルのラットにて神経保護作用があることが示されている。また、アルコール摂取で増加するAST(アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ)の増加抑制よりアルコールの毒性を軽減する効果が知られており、二日酔いの軽減効果で汎用されている。
このように、クルクミン類は非常に有用な物質であるため、これを有効に抽出する方法が種々検討されている。
しかし、クルクミン類は、水に難溶性の物質であるために、ウコンを水で抽出してもほとんど抽出されない。また、クルクミン類は、水にて服用しても体内においてほとんど利用されないことが知られている(非特許文献1)。
このため、抽出されたクルクミン類を植物油等の油脂に一旦溶解してエマルジョン化して、体内に吸収されやすい形として利用することが試みられている。
このように、クルクミン類は油溶化により、体内に吸収されやすい形として利用することが可能であるが、凝集性の高い物質であるために、ウコン等の原料からの抽出には困難が伴う。
オリーブ油、ゴマ油、大豆油、コーン油、菜種油などの植物油脂への浸漬(例えば、特許文献1)では、クルクミン類はこれら植物油脂に難溶であるため、抽出効率の点から十分ではない。
また、一旦有機溶剤によって抽出したものを脱溶剤し油脂に溶解する方法(特許文献2)や、抽出溶剤としてジアシルグリセロールを使用する方法(特許文献3)といった方法が知られているが、残留するエタノールなどの溶剤等の安全性やエネルギーコスト等の点から実用的とは言い難い。
このため安全性高く、しかも工業的に効率良くクルクミン類の油脂溶解物を得る方法が望まれているのである。
特開2001−086931号公報 特開2000−236843号公報 特開2003−137799号公報
Ireson, C. R. et al, Cancer Res., 2001, 41:1058-64
本発明は、上記の問題点を解消し、安全性高く、工業的に効率良くクルクミン類含有油脂を製造する方法を提供すること、ならびにクルクミン類を高濃度に含有し、安全性に優れたクルクミン類含有油脂を提供することを目的とするものである。
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意研究を重ねた結果、特定の植物性油脂を用いることにより、上記の課題を解決しうることを見出し、この知見に基づいて、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は次の(1)〜(8)である。
(1)クルクミン類を中鎖脂肪酸トリグリセライドに溶解してなるクルクミン類含有油脂。
(2)クルクミン類を0.1〜10質量%含有する、前記の(1)に記載のクルクミン類含有油脂。
(3)中鎖脂肪酸トリグリセライドとして、これを構成する脂肪酸が、炭素数8〜10のものを用いる、前記の(1)又は(2)に記載のクルクミン類含有油脂。
(4)中鎖脂肪酸トリグリセライドとして、これを構成する脂肪酸が、カプリル酸とカプリン酸を、前者:後者が95:5〜5:95(質量比)の割合で含むものを用いる、前記の(1)又は(2)に記載のクルクミン類含有油脂。
(5)ウコンと中鎖脂肪酸トリグリセライドとの混合物を、湿式磨砕機を用いて磨砕し、次いで搾油することを特徴とする、前記の(1)に記載のクルクミン類含有油脂の製造方法。
本発明のクルクミン類含有油脂は、クルクミン類を高濃度に含有するものである。また、本発明のクルクミン類含有油脂は、安全性にも優れたものである。
また、本発明の方法によれば、クルクミン類を高濃度に含有するクルクミン類含有油脂を効率良く製造することができるばかりか、安全性にも優れたものである。
本発明のクルクミン類含有油脂は、クルクミンが脂質に溶解しているため、消化管への吸収性が高くなる。また、本発明のクルクミン類含有油脂は、中鎖脂肪酸トリグリセライド(以下、MCTと略記することがある。)がキャリアーとなってクルクミンを効率良く肝臓に運ぶことが可能になった。さらに、従来はクルクミンを分散させて液体に投入していたが、脂質に溶かしたことによって乳化技術を使って安定した溶液を提供することが可能になった。
マスコロイダーでの処理後の濾過液の状態を示す写真像図であり、クルクミン類含有油脂の清澄状態を示している。左側の写真像図は濾過液採取直後、中央の写真像図は遠心分離後、右側の写真像図は遠心分離、加温後、のそれぞれ濾過液の状態を表している。なお、各写真像図における3本のチューブは、左から順に、マスコロイダー1回処理、2回処理、3回処理のものである。
本発明は、クルクミン類を中鎖脂肪酸トリグリセライドに溶解してなるクルクミン類含有油脂である。
ここでクルクミン類とは、クルクミン[(1E,6E)-1,7-Bis(4-hydroxy-3-methoxyphenyl)-1,6-heptadiene-3,5-dione ]と、この類縁体である、デメトキシクルクミン[(1E,6E)-1- (4-hydroxyphenyl)-7-(3-methoxy-4-hydroxyphenyl)-1,6-heptadiene-3,5-dione ]、ビスデメトキシクルクミン[(1E,6E)-1,7-Bis(4-hydroxyphenyl)-1,6-heptadiene-3,5-dione ]を総称したものである。
本願発明においては、中鎖脂肪酸トリグリセライドを用いることによって、クルクミン類を総体的に取り出すことを可能としている。
本発明に用いる中鎖脂肪酸トリグリセライドは、グリセリン骨格に、中鎖脂肪酸がエステル結合した化合物(植物性油脂)であって、食用油脂として認められているものである。
構成する中鎖脂肪酸としては、炭素数6〜12の脂肪酸であり、好ましくは炭素数6〜10の脂肪酸であり、より好ましくは炭素数8〜10の脂肪酸である。この中鎖脂肪酸分子部分は、直鎖、分岐、環状、あるいはこれらの組み合わせであってよい。
中鎖脂肪酸トリグリセライドとして具体的には、カプリル酸トリグリセライド、カプリン酸トリグリセライド、ラウリン酸トリグリセライド等を挙げることができ、これらの混合物であってもよい。
中鎖脂肪酸トリグリセライドとしては、これを構成する脂肪酸が、カプリル酸とカプリン酸を含むものが好ましく、その中でも特にカプリル酸とカプリン酸を、前者:後者が95:5〜5:95(質量比)の割合、好ましくは85:15〜50:50(質量比)の割合で含むものを用いるとよい。
この中鎖脂肪酸トリグリセライドの市販品としては、具体的には例えば脂肪酸組成が、カプリル酸80%とカプリン酸20%である、パナセート810(登録商標;日油株式会社製)を挙げることができる。この他にも、脂肪酸組成が、カプリル酸とカプリン酸とからなるものとしては、カプリル酸70%とカプリン酸30%のものや、さらにはカプリル酸とカプリン酸とラウリン酸とからなるものなど、様々な組成のものを用いることができる。
本発明のクルクミン類含有油脂は、クルクミン類を中鎖脂肪酸トリグリセライドに溶解してなるものである。
本発明のクルクミン類含有油脂においては、クルクミン類を0.1〜10質量%、好ましくは0.5〜8質量%、より好ましくは1〜5質量%含有する。
このようなクルクミン類含有油脂は、本発明の方法により、好適に製造される。
すなわち、ウコンと中鎖脂肪酸トリグリセライドとの混合物を、湿式磨砕機を用いて磨砕し、次いで搾油することにより製造することができる。
ウコン(学名:Curcuma longa;英語名:turmeric)は、ショウガ科ウコン属の多年草である。
ウコンは種類によってクルクミン類が殆ど含有されていないものから豊富に含まれている物まである。その中でも熱帯ウコンはクルクミン類を豊富に含有している種類であることが知られている。本発明に用いるウコンは、特に限定されるものではないが、クルクミン類の含有量が豊富な熱帯ウコンが好ましい。
ウコンと中鎖脂肪酸トリグリセライドとの混合割合は、特に制限はないが、通常、質量比で、前者1に対し、後者0.1〜10の割合、好ましくは前者1に対し、後者1〜2の割合で用いられる。
本発明では、ウコンと中鎖脂肪酸トリグリセライドとの混合物を、湿式磨砕機を用いて磨砕する。これにより、クルクミン類の抽出操作を行う。このように、湿式磨砕機(好ましくは、後述するようにマスコロイダー(登録商標))を用いて抽出操作を行うことが、本発明の最大の特徴である。
なお、磨砕に先駆けて、ウコンは、予め適宜サイズに裁断しておくとよい。裁断は、フードカッターなどを用いて行えばよい。
湿式磨砕機としては、マスコロイダー(登録商標)を用いることが好ましい。
マスコロイダーとは、挽き臼の原理を用いた湿式磨砕機であって、回転する砥石と、固定砥石とを、同心円的に対向させ、両砥石の間に粉砕する原料を供給しながら、磨砕する装置である。回転する砥石と固定砥石との間を適宜間隔に調整しながら行う。
回転する砥石の回転速度は、500〜3000rpmの範囲である。平均処理速度は、通常、300〜400g/秒程度であるが、これに制限されるものではない。
上記のようにして、ウコンと中鎖脂肪酸トリグリセライドとの混合物を、湿式磨砕機を用いて磨砕した後、搾油し、クルクミン類含有油脂の形でクルクミン類を抽出する。
搾油は、搾油機を用いて圧搾濾過などにより、行えばよい。
一度湿式磨砕処理したものを繰り返し磨砕処理することで、磨砕物の粒度を小さくしクルクミン類の抽出効率を上げることができる。磨砕処理の回数は2回が適当である。
全ての磨砕処理物について、圧搾濾過し得られた液状部を搾油液(クルクミン類含有油脂)とする。
得られた搾油液(クルクミン類含有油脂)を遠心分離した後、加温すると、清澄化した搾油液が得られる。後記実施例に示すように、1回、2回、3回磨砕処理して得られた搾油液はいずれも、遠心分離、加温後放置して室温に戻した後も清澄状態を維持していた。
抽出率の向上は、2回目の湿式磨砕機による処理と3回目の湿式磨砕機による処理とで、ほとんど認められなかった。
従って、湿式磨砕機による処理は、2回行えば充分であることが分かった。
本発明に用いるMCTは、液状の油脂のうちでも低い粘度を有しているので、湿式磨砕器の杵臼部分や器壁に固着することないだけでなく、被磨砕物に対して均一な剪断力をかけることができるので、抽出効率を高めることができる。
粉砕を過度に行うとクルクミン類の抽出効率は高まるが、得られる油脂は混濁し、固液の分離が非常に困難になり経時的におりを生じる。食品としておりを生じることは商品価値を落とす一因になる。本発明においては、おりを発生させずに清澄したクルクミン類含有油脂を得ることができる。
このようにして目的とする、クルクミン類を高濃度に含有し、安全性に優れたクルクミン類含有油脂を得ることができる。
本発明のクルクミン類含有油脂は、常法にしたがって製剤化することができる。
製剤としては、固体でも、液体でもよく、例えば錠剤、丸剤、顆粒剤、糖衣剤、カプセル、乳剤、液剤、ゲル、シロップ、スラリー、懸濁物が挙げられる。
また、製剤化においては、賦形剤を加えることができる。賦形剤としては、目的によって、充填剤、結合剤、凝固剤、滑たく剤、崩壊剤、色素、甘味料、香料、コーティング剤等を単独もしくは、これらを組み合わせて使用することができる。
本発明のクルクミン類含有油脂は、これを含ませて食品として加工してもよい。
食品は、食品の形態に特に制限はなく、一般の加工食品のほかに、健康食品、機能性食品、濃厚流動食、栄養補助食品、飲料および食品を含む飲食物、または、これらの添加物とすることができる。
具体的には、サプリメント、清涼飲料に配合することができるが、特に限定をされるものではない。
また態様としては、本発明のクルクミン類含有油脂をそのまま食材に混合したり、または、液状、ゲル状、粉末状あるいは固形状の食品、例えば、飲料、茶、スープ、ゼリー、ヨーグルト、アイスクリーム、シャーベット、フローズンヨーグルト、プリン、ドレッシング、マヨネーズ、ふりかけ、味噌、醤油、焼肉のたれ等の調味料、麺類、ハムやソーセージ等の畜肉魚肉加工食品、ジャム、牛乳、クリーム、バターやチーズ等の粉末状、固形状または液状の乳製品、マーガリン、パン、菓子類の原材料として加工して用いたりすることが挙げられる。
本発明の食品は、極めて多種類の形態にわたり、前記の例示に限定されるものではない。
本発明のクルクミン類含有油脂を含む食品は、食品の形態に応じて他の添加物を含むものであってもよい。
このような添加物として、賦形剤、増量剤、結合剤、防湿剤、防腐剤、強化剤、増粘剤、乳化剤、甘味料、酸味料、食品添加物、調味料等を挙げることができる。食品添加物としてはビタミン類、ミネラル、キチン、キトサン、レシチン、ローヤルゼリーなどが挙げられる。調味料としては、グラニュー糖、蜂蜜、ソルビットなどの甘味料、アルコール、クエン酸、リンゴ酸、洒石酸などの酸味料、香料、色素などが挙げられ、本発明の食品を好みの味や色に調整するために用いることができる。
また、本発明の目的と関連する公知の素材を併用してもよい。
常法により本発明のクルクミン類含有油脂を用いて、機能性食品を製造することができる。
例えば、粉末状の食品を得るには、本発明のクルクミン類含有油脂に、デキストリン、シクロデキストリン、デンプン、マルトースなどの賦形剤を必要に応じて添加して、凍結乾燥、噴霧乾燥などの乾燥方法により粉末とすることにより得ることができる。
また、必要に応じてデキストリン、乳糖、澱粉またはその加工素材、セルロース末等の賦形剤、ビタミン、ミネラル、動植物や魚介類の油脂、タンパク質、糖質、色素、香料、その他の食用添加剤等と共に、当業者が通常行う方法により、粉末、顆粒、ペレット、丸剤、錠剤等に加工したり、ゼラチン等で被覆して、ハードカプセル、ソフトカプセルなどのカプセルに成形したり、あるいはドリンク類にして、栄養補助食品や健康食品として利用できる。
本発明のクルクミン類含有油脂は、他の生理活性物質または健康食品素材と組み合わせても構わない。そのような生理活性物質または健康食品素材としては、例えば、青汁、健康酢、健康茶、ローヤルゼリー、アロエ、ブルーベリー、プロポリス、イソフラボン、ノニ、核酸、にんにく、酵素、高麗ニンジン、雑穀、納豆、イチョウ葉、発芽玄米、マカ、メシマコブ、ブドウ種子、スピルリナ、明日葉、フコイダン、牡蠣、馬油、桑葉、サラシア、ハナビラタケ、田七ニンジン、カシス、シジミ、キクイモ、コラーゲン、クロレラ、グルコサミン、キトサン、カルニチン、CoQ10、セラミド、オクタコサノールなどが挙げられる。
本発明のクルクミン類含有油脂は、クルクミン類と中鎖脂肪酸トリグリセライドとからなるものであり食経験も充分ある極めて安全な物質である。
この点から、本発明のクルクミン類含有油脂の服用量は厳しく制限されるものではないと考えられるが、概ね、下限は予防または治療という目的に応じた効果を発揮しうる最低量を、上限は服用のしやすさ、経済性等の観点から実際的な量を基準とし、通常、成人1日あたり約5mg〜約10g、好ましくは約10mg〜約1gを服用すればよい。もちろん、服用する者の年齢、体重、症状、服用期間、治療経過等に応じて変化させることもできる。1日あたりの量を数回に分けて投与することもできる。また、他の脂溶性物質と組み合わせて服用することもできる。
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
実施例1
(1)MCTによるクルクミンの抽出
マスコロイダーを用いて、MCTによるクルクミン類の抽出を行った。
<材料>
ウコン:沖縄産の熱帯ウコンを用いた。
MCT(中鎖脂肪酸トリグリセライド):日油(株)製パナセート810(登録商標;カプリル酸80%、カプリン酸20%の脂肪酸組成比のトリグリライド)を用いた。
<手順>
1)2400gのウコンを卓上フードカッターFC−27D(愛豊鉄工(株)製)で2分間裁断した。
2)裁断したウコンに同量のMCTを加え、撹拌した(この段階で粗いペースト状になった)。
3)ウコンとMCTの混合物を湿式磨砕機(スーパーマスコロイダーMKZA10−15、増幸産業(株)製)で連続的に処理した(平均処理速度:300〜400g/秒)。
4)処理物のうち1kgを搾油機(KT23−100、(株)サン精機製)で圧搾濾過し(最大圧力30MPa)、液状部および固形部を採取した。
5)残りの処理物をマスコロイダーで2回目の処理に供した.(平均処理速度:300〜400g/秒)
6)処理物のうち1kgを搾油機で圧搾濾過し、液状部および固形部を採取した。
7)残りの処理物マスコロイダーで3回目の処理に供した(平均処理速度:300〜400g/秒)。
8)処理物を搾油機で圧搾濾過し、液状部および固形部を採取した。
全ての固形部について2日後以降に再度圧搾濾過し、液状部および固形部を採取し、以前に圧搾して得られた液状部と再圧搾液を合わせた。上記行った都合3回の処理について各回の条件を表1に示す。

<濾過液の清澄化>
圧搾濾過した液を遠心分離後、加温(約50℃)すると清澄化した。これを放置して室温に戻したところ、いずれのクルクミン類含有油脂においても清澄状態を維持していた。
この結果を図1に示す。図1は、マスコロイダーでの処理後の濾過液の状態を示す写真像図であり、クルクミン類含有油脂の清澄状態を示している。左側の写真像図は濾過液採取直後、中央の写真像図は遠心分離後、右側の写真像図は遠心分離、加温後、のそれぞれ濾過液の状態を表している。なお、各写真像図における3本のチューブは、左から順に、マスコロイダー1回処理、2回処理、3回処理のものである。
いずれのクルクミン類含有油脂においても、遠心分離、加温後には油脂を通して背景が確認出来るまでに清澄した。3回処理したサンプルでは、ビスデメトキシクルクミンは1.28mg/mL、デメトキシクルクミンは1.06mg/mL、クルクミンは2.08mg/mLとなり、クルクミン類として4.42mg/mL(0.442%含有)の油脂となった。また、いずれの清澄液についても、継時的に室温で観察しても、おりの発生は認められなかった。
マスコロイダー処理に関しては、各回の処理において固液分離比が固体20重量%、液体80重量%で一定であるため、ウコンの損失は認められず、破砕が行われていると思われた。
しかし、1回処理から2回処理を行った場合、抽出効率としておよそ10%増加したのに対して、2回目処理から3回目処理を行った場合は、抽出効率の向上が認められなかった。
この結果から、抽出物を得るには2回処理で十分に効果を得ることが確認された。
(2)クルクミンの種々の油脂に対する飽和溶解度の測定
前記の中鎖脂肪酸トリグリセライドによるクルクミンの抽出実験の結果の確認のために、クルクミンの種々の油脂に対する飽和溶解度の測定を行った。
<飽和溶解度の測定方法>
ネジ口試験管に、表2に示す被験油脂を5gずつ入れ、沈殿が出るまでクルクミン(試薬:和光純薬工業株式会社製)を添加し、クルクミン溶解油脂を得た。
回収したクルクミン溶解油脂100μLを分光光度計にて423nmにおける吸光度を測定した。事前にクルクミンで検量線を作成して、得られた吸光度から各脂質を溶媒にした時のクルクミン濃度を算出した。(吸光度=0.0072×溶解量(μg)−0.0716)
<クルクミンの種々の油脂に対する飽和溶解度>
クルクミンの種々の油脂に対する飽和溶解度を表2に示す。
表2によれば、MCTは他の植物油に比べて約3倍量のクルクミンを溶解させることができることが分かる。
このことから、クルクミンを抽出する場合には、MCTを使用することが種々の植物油の中で最も効果的であることが明らかになった。
クルクミンの抽出には、従来、オレイン酸、リノール酸、α−リノレン酸などの不飽和脂肪酸に基づく植物油が用いられることがあるが、有効な抽出効率が得られないため、ほとんど実用に供されていない。これは、用いられている植物油の分子が不飽和脂肪酸に基づく折れ曲がった分子鎖の構造を有しており、分子間の水素結合性が高いクルクミンのベンゼン環の間に入りにくいためであると推察される。
これに対して、MCTは他の植物油に比べて約3倍量のクルクミンを溶解させることができた理由は、必ずしも定かではないが、本発明に用いるMCTの分子がカプリル酸、カプリン酸の飽和脂肪酸に基づく真っ直ぐな分子鎖の構造を有しており、クルクミンのベンゼン環の間に入りやすく、溶解性を助けるためであると推察することができる。
(3)MCTによるクルクミン類の抽出効率
さらに、前記のMCTによるクルクミンの抽出実験の結果の確認のために、MCTによるクルクミンの抽出効率の測定を行った。
<抽出効率の測定方法>
前項の飽和溶解度の測定方法と同じ方法で、クルクミン類の各成分について吸光度で定量を行い、成分毎のMCTへの抽出効率を算出した。
<MCTによるクルクミン類の抽出効率>
MCTによるクルクミン類の抽出効率の測定結果を表3に示す。表中の抽出効率の値(%)は、原料中のクルクミン量に対して抽出されたクルクミン量の割合を示すものである。
2400gのウコンと2400gのMCTで実験を実施した。実験に使用したウコンは2400g中にクルクミン類が事前の分析によって46.08g含有されていることが分かっていた。(成分ごとの含有割合としては、クルクミン0.77g/100g、デメトキシクルクミン0.43g/100g、ビスデメトキシクルクミン0.72g/100g、この3種類の合計としてクルクミン類1.92g/100gであった。)ウコンからクルクミンを100%抽出することが出来れば、2400gのMCT(比重を0.9とすると2667mL)中に理論上46.08gのクルクミン類が溶けることになる。
実験結果から、3回磨砕抽出液のクルクミン類の濃度は、ビスデメトキシクルクミンが1.28mg/mL、デメトキシクルクミンが1.06mg/mL、クルクミンが2.08mg/mLであったため、理論上2667mLのMCTに溶解したことになり、従って、ビスデメトキシクルクミンが3413.76mg(1.28×2667)、デメトキシクルクミンが2827.02mg(1.06×2667)、クルクミンが5547.36(2.08×2667)となることから、合計で11788.14mg、つまり約11.8gとなる。従って、クルクミン類として約11.8g回収したことになる。
このため、理論上、抽出率(MCTによるウコンからのクルクミン類の抽出率)は、クルクミン類として25.6%(11.8×100/46.08)になった。
クルクミン類はそれぞれ、次の化学構造を有しており、ベンゼン環上のメトキシ置換基の存在の違いによって、クルクミン類の間でも溶媒に対する親和性の差違があると考えられる。本願発明においては、MCTを用いることによって、このように溶解性の異なるクルクミン類を総体的に取り出すことを可能としているのである。

Claims (5)

  1. クルクミン類を中鎖脂肪酸トリグリセライドに溶解してなるクルクミン類含有油脂。
  2. クルクミン類を0.1〜10質量%含有する、請求項1に記載のクルクミン類含有油脂。
  3. 中鎖脂肪酸トリグリセライドとして、これを構成する脂肪酸が、炭素数8〜10のものを用いる、請求項1又は2に記載のクルクミン類含有油脂。
  4. 中鎖脂肪酸トリグリセライドとして、これを構成する脂肪酸が、カプリル酸とカプリン酸を含み、かつ、前者:後者が95:5〜5:95(質量比)の割合で含むものを用いる、請求項1又は2に記載のクルクミン類含有油脂。
  5. ウコンと中鎖脂肪酸トリグリセライドとの混合物を、湿式磨砕機を用いて磨砕し、次いで搾油することを特徴とする、請求項1に記載のクルクミン類含有油脂の製造方法。
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