以下、本発明について詳細に説明する。
本発明のブロック共重合体は、イオン性基を含有するセグメント(A1)、イオン性基を含有しないセグメント(A2)、および前記セグメント間を連結するリンカー部位を含有するブロック共重合体であって、イオン性基を含有するセグメント(A1)が、下記一般式(S1)〜(S3)のいずれかで表される構成単位を含有し、リンカー部位が下記一般式(L1)〜(L7)のいずれかで表される構成単位を含有するものである。
(一般式(S1)〜(S3)中、mは1または2を表す。Ar1、Ar2、Ar3a、Ar3bは互いに独立に2価の芳香族基を表し、ここでこれらの2 価の芳香族基は、置換基を有していてもよい炭素数1〜20の炭化水素基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルコキシ基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアシル基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリールオキシ基または置換基を有していてもよい炭素数7〜20のアリールカルボニル基で置換されていてもよい。Ar1、Ar2のいずれか少なくとも一つはイオン性基を有し、Ar3a、Ar3bはイオン性基を有していても有していなくてもよい。Vは酸素原子、炭素数1〜6のアルキレン基または炭素数1〜6のフッ素置換アルキレン基を表し、Vはいが複数個ある場合、それらは互いに同一でも異なっていてもよい。*は一般式(S1)〜(S3)または他の構成単位との結合部位を表す。)
(一般式(L1)中、Xは、H、あるいはNO2、CN、CF3、Cl、Br、Iから選ばれた電子吸引性基、一般式(L2)中、Yは、NO2、CN、CF3、Cl、Br、Iから選ばれた電子吸引性基、一般式(L3)中、Zは、NO2、CN、CF3、Cl、Br、Iから選ばれた電子吸引性基、一般式(L5)中、Rは任意の有機基、一般式(L6)中、Arは任意のアリーレン基、一般式(L7)中、Eは酸素または硫黄を表す。一般式(L1)〜(L7)は、電子吸引性基でさらに置換されていても良く、複数個あるXとZは互いに同一でも異なっていてもよい。*は一般式(L1)〜(L7)と他のセグメントとの結合部位を表す。) 本発明のブロック共重合体は、反応性が高くて、セグメント切断なくブロック共重合することができるリンカー化合物を使用することにより、ブロック共重合体の相分離構造を厳密に制御し、優れた低加湿プロトン伝導性を実現できる。さらに、本発明のリンカー化合物を用いた場合には、架橋反応や分岐反応が進行しないので、分子量分布の小さいブロック共重合体を合成することができ、製膜性が良好で、分子間相互作用が強く、強靱で物理的耐久性を同時に実現することができる。
また、本発明において、リンカー部位とは、イオン性基を含有するセグメントと、イオン性基を含有しないセグメントとの間を連結する部位であり、反応性が高いため、140℃以下の低温で反応させる事が可能であるため、エーテル交換反応によるランダム化、セグメント切断、副反応を抑制しながら、異なるセグメントを連結することができるので、本発明のブロック共重合体を得るために必要である。リンカー部位がない場合には、高温での反応が必要となり、ランダム化等のセグメント切断が起こる場合があるために、本発明の効果が十分に得られない。
次に、本発明で使用するリンカー化合物について説明する。本発明のリンカー化合物は、上記一般式(L1)〜(L7)のいずれかで表される構成単位を含有するものである。本発明において、リンカー化合物とは、反応後にリンカー部位となるジハライド化合物のことを意味する。 本発明に好適なリンカー化合物の具体例としては、下記式(M1−1)〜(M1−8)で表されるジフェニルスルホン系リンカー化合物、下記式(M2−1)〜(M2−12)で表されるベンゾニトリル系リンカー化合物、下記式(M3−1)〜(M3−12)で表されるニトロベンゼン系リンカー化合物、下記式(M4−1)〜(M4−12)で表されるトリフルオロメチルベンゼン系リンカー化合物、下記式(M5−1)〜(M5−6)で表されるベンゾフェノン系リンカー化合物、その他、(M6−1)〜(M9−4)等が挙げられる。ただし、本発明で使用するリンカー化合物は、これらに限定されるものではなく、これらの位置異性体や化合物中に異なる複数の電子吸引性基を含有するものも好適な具体例である。
なかでも、原料コストの点では、上記式(M1−1)〜(M1−8)で表されるジフェニルスルホン系リンカー化合物、上記式(M2−1)〜(M2−12)で表されるベンゾニトリル系リンカー化合物、上記式(M5−1)〜(M5−6)で表されるベンゾフェノン系リンカー化合物が好ましく、より好ましくは、上記式(M1−1)〜(M1−8)で表されるジフェニルスルホン系リンカー化合物、上記式(M2−1)〜(M2−12)で表されるベンゾニトリル系リンカー化合物である。
また、反応性の点では、側鎖に電子吸引性基であるニトロ基、シアノ基、ブロモ基、ヨード基、メトキシ基を導入した、(M1−2)、(M1−3)、(M1−5)、(M1−6)、(M1−8)、(M1−9)、(M1−11)、(M1−12)、(M2−1)〜(M2−12)、(M3−1)〜(M3−12)、(M5−1)(M5−2)、(M5−4)、(M5−5)、(M7−1)、(M7−2)で表される化合物が好ましく、副反応の少なさの点で、ニトロ基、シアノ基、メトキシ基を導入した(M1−2)、(M1−3)、(M1−8)、(M1−9)、(M2−1)〜(M2−12)、(M3−1)〜(M3−12)、(M5−1)(M5−2)、(M5−4)、(M5−5)、(M7−1)、(M7−2)で表される化合物がより好ましく、原料コストの点で、ニトロ基を導入した(M1−2)、(M1−8)、(M3−1)〜(M3−12)、(M5−1)、(M5−4)が好ましい。
なかでも、原料コスト、反応性、安定性のバランスで、上記式(M1−1)、(M1−2)、(M1−6)、(M2−1)、(M2−2)、(M2−3)、(M5−1)、(M5−4)、(M7−2)で表される化合物がより好ましく、さらに好ましくは上記式(M1−1)、(M1−2)、(M1−6)、(M2−1)、(M5−1)で表される化合物、最も好ましくは(M1−1)、(M2−1)で表される化合物である。
本発明において、セグメントとは、ブロック共重合体中の部分構造であって、1種類の繰り返し単位または複数種類の繰り返し単位の組合せからなるものであり、数平均分子量が2000以上のものを表す。本発明のブロック共重合体は、イオン性基を含有するセグメント(A1)とともに、イオン性基を含有しないセグメント(A2)を含有し、本発明においては、「イオン性基を含有しないセグメント」と記載するが、当該セグメント(A2)は本発明の効果に悪影響を及ぼさない範囲でイオン性基を少量含んでいても構わない。以下「イオン性基を含有しない」は同様の意味で用いる場合がある。
本発明のブロック共重合体は、2種類以上の互いに不相溶なセグメント鎖、すなわち、イオン性基を含有する親水性セグメントと、イオン性基を含有しない疎水性セグメントがリンカー部位により連結され、1つのポリマー鎖を形成したものである。ブロック共重合体においては、化学的に異なるセグメント鎖間の反発から生じる短距離相互作用により、それぞれのセグメント鎖からなるナノまたはミクロドメインに相分離し、セグメント鎖がお互いに共有結合していることから生じる長距離相互作用の効果により、各ドメインが特定の秩序を持って配置せしめられる。
各セグメント鎖からなるドメインが集合して作り出す高次構造は、ナノまたはミクロ相分離構造と呼ばれ、高分子電解質膜のイオン伝導については、膜中におけるイオン伝導セグメントの空間配置、すなわち、ナノまたはミクロ相分離構造が重要になる。ここで、ドメインとは、1本または複数のポリマー鎖において、類似するセグメントが凝集してできた塊のことを意味する。
本発明のブロック共重合体は、化学構造として、イオン性基を含有するセグメント(A1)が、上記一般式(S1)〜(S3)のいずれかで表される構成単位を含有するものである。そして、イオン性基を含有しないセグメント(A2)中に、上記一般式(S4)〜(S6)のいずれかで表される構成単位を含有させることが好ましい。そうすることによって、化学的耐久性や物理的耐久性と優れたイオン伝導性、特に、低加湿条件下においても高いプロトン伝導性を実現することができる。
本発明のブロック共重合体の化学構造、セグメント鎖長、分子量、イオン交換容量などを適宜選択することにより、高分子電解質材料の加工性、ドメインサイズ、結晶性/非晶性、機械強度、プロトン伝導性、寸法安定性等の諸特性を制御することが可能である。
本発明のブロック共重合体に使用する、イオン交換基を含有するセグメントに関して説明する。
前記一般式(S1)、一般式(S2)、一般式(S3)におけるAr1、Ar2、Ar3a、Ar3bは互いに独立に2価の芳香族基を表すが、該2価の芳香族基としては、フェニレン基、ナフチレン基、ビフェニリレン基、フルオレンジイル基などの炭化水素系芳香族基、ピリジンジイル基、キノキサリンジイル基、チオフェンジイル基などの複素芳香族基などが挙げられる。好ましくは、2価の炭化水素系芳香族基である。
ここで、該イオン性基はAr1、Ar2のいずれか少なくとも一つに有する。また、Ar3a、Ar3bはイオン交性基を有していても有していなくてもよい。
前記2価の芳香族基は、置換基を有していてもよい炭素数1〜20の炭化水素基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルコキシ基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアシル基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリールオキシ基または置換基を有していてもよい炭素数7〜20のアリールカルボニル基で置換されていてもよい。
置換基を有することもある炭素数1〜20の炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、イソブチル基、n−ペンチル基、2,2− ジメチルプロピル基、シクロペンチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、2−メチルペンチル基、2−エチルヘキシル基、オクチル基、デシル基、アダマンチル基、ドデシル基、オクタデシル基、イコシル基等のアルキル基や、該アルキル基から水素原子を取り去ってなる炭素− 炭素二重結合を有するアルケニル基や炭素− 炭素三重結合を有するアルキニル基、あるいは炭素− 炭素二重結合と炭素− 炭素三重結合を共に有する基であるか、フェニル基、ナフチル基等のアリール基が挙げられる。さらにはこれらの基にフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子、ヒドロキシル基、ニトリル基、アミノ基、メトキシ基、エトキシ基、イソプロピルオキシ基、フェニル基、ナフチル基、フェノキシ基、ナフチルオキシ基等が置換され、その総炭素数が1〜20である炭化水素基が挙げられる。
置換基を有することもある炭素数1〜20のアルコキシ基としては、例えばメトキシ基、エトキシ基、n−プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、n−ブチルオキシ基、sec−ブチルオキシ基、tert−ブチルオキシ基、イソブチルオキシ基、n−ペンチルオキシ基、2,2−ジメチルプロピルオキシ基、シクロペンチルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、2−メチルペンチルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、デシルオキシ基、アダマンチルオキシ基、ドデシルオキシ基、オクタデシルオキシ基、イコシルオキシ基等の炭素数1〜20のアルコキシ基、及びこれらの基にフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子、ヒドロキシル基、ニトリル基、アミノ基、メトキシ基、エトキシ基、イソプロピルオキシ基、フェニル基、ナフチル基、フェノキシ基、ナフチルオキシ基等が置換され、その総炭素数が1〜20のアルコキシ基等が挙げられる。
置換基を有する炭素数1〜20のアシル基としては、例えばホルミル基、アセチル基、n−プロピオニル基、イソブチリル基、ブチリル基、tert−ブチルカルボニル基、n−ペンチルカルボニル基、シクロペンチルカルボニル基、n−ヘキシルカルボニル基、シクロヘキシルカルボニル基、2−メチルペンチルカルボニル基、2−エチルヘキシルカルボニル基、デシルカルボニル基、アダマンチルカルボニル基、ドデシルカルボニル基、オクタデシルカルボニル基等のアシル基、及びこれらの基にフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子、ヒドロキシル基、ニトリル基、アミノ基、メトキシ基、エトキシ基、イソプロピルオキシ基、フェニル基、ナフチル基、フェノキシ基、ナフチルオキシ基等が置換され、その総炭素数が1〜20のアシル基等が挙げられる。
置換基を有することもある炭素数6〜20のアリールオキシ基としては、例えばフェノキシ基、ナフチルオキシ基等のアリールオキシ基、及びこれらの基にフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子、ヒドロキシル基、ニトリル基、アミノ基、メトキシ基、エトキシ基、イソプロピルオキシ基、フェニル基、ナフチル基、フェノキシ基等が置換され、その総炭素数が6〜20のアリールオキシ基等が挙げられる。
置換基を有することもある炭素数7〜20のアリールカルボニル基としては、例えばベンゾイル基、ナフトイル基等のアリールカルボニル基、及びこれらの基にフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子、ヒドロキシル基、ニトリル基、アミノ基、メトキシ基、エトキシ基、イソプロピルオキシ基、フェニル基、ナフチル基、フェノキシ基等が置換され、その総炭素数が7〜20のアリールカルボニル基等が挙げられる。
前記一般式(S1)、一般式(S2)、一般式(S3)におけるAr1、Ar2、Ar3a、Ar3bは、上記のような置換基を有することもある2 価の芳香族基を表すが、なかでもAr1、Ar2としてはフェニレン基がより好ましく、Ar3a、Ar3bとしてはフェニレン基、ビフェニリレン基、ナフチレン基がより好ましい。
上記のように、Ar1、Ar2、Ar3a、Ar3bのうち、Ar1、Ar2のいずれか少なくとも一つはイオン性基を有し、Ar3a、Ar3bはイオン性基を有していても有していなくても良いが、有していることが好ましい。さらに、イオン性基が導入されたセグメントを構成する、2 価の芳香族基の全て前記一般式(S1)で表されるセグメントの場合は、Ar1、Ar2およびAr3a、前記一般式(S2)又は前記一般式(S3)で表されるセグメントの場合は、Ar1、Ar2、Ar3a、Ar3bにイオン性基を有していると、より好ましい。
本発明のブロック共重合体に使用されるイオン性基は、カルボン酸基、ホスホン酸基等の弱酸基、スルホン酸基、スルホン酸イミド基、硫酸基等の強酸基、パーフルオロアルキレンスルホン酸、パーフルオロフェニレンスルホン酸、パフルオロアルキレンスルホニルイミド等の超強酸基などが挙げられる。中でも強酸の基、超強酸の基が好ましく、例えば、スルホン酸、パーフルオロアルキレンスルホン酸、パーフルオロフェニレンスルホン酸などが好適に用いられる。ここで、スルホン酸基は下記一般式(f1)で表される基、スルホンイミド基は下記一般式(f2)で表される基[一般式(f2)中、Rは任意の有機基を表す。]、硫酸基は下記一般式(f3)で表される基、ホスホン酸基は下記一般式(f4)で表される基、リン酸基は下記一般式(f5)または(f6)で表される基、カルボン酸基は下記一般式(f7)で表される基を意味する。
かかるイオン性基は、前記官能基(f1)〜(f7)が塩となっている場合を含むものとする。前記塩を形成するカチオンとしては、任意の金属カチオン、NR4+(Rは任意の有機基)等を例として挙げることができる。金属カチオンの場合、その価数等特に限定されるものではなく、使用することができる。好ましい金属イオンの具体例を挙げるとすれば、Li、Na、K、Rh、Mg、Ca、Sr、Ti、Al、Fe、Pt、Rh、Ru、Ir、Pd等が挙げられる。中でも、本発明に用いるブロック共重合体としては、安価で、容易にプロトン置換可能なNa、K、Liがより好ましく使用される。
これらのイオン性基は高分子電解質材料中に2種類以上含むことができ、組み合わせはポリマーの構造などにより適宜決められる。中でも、高プロトン伝導度の点から少なくともスルホン酸基、スルホンイミド基、硫酸基を有することがより好ましく、原料コストの点から少なくともスルホン酸基を有することが最も好ましい。
前記一般式(S1) 、(S2) または(S3)で表されるイオン性基を含有するセグメントの好ましい例として、芳香族求核置換反応による芳香族ポリエーテル系重合体の重合に用いることができる各種2価フェノール化合物を使用することができ、特に限定されるものではない。
本発明に使用する、好ましい2価フェノール化合物の具体例としては、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス(4−メチル−2−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)メタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−メチルペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘプタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロオクタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロデカン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロドデカン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2−エチルヘキサン、2,2−ビス(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)メタン、4,4’−ビフェノール、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2−メチルプロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルメタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)オクタン、1,1−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、2,2−ビス(3−アリル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−イソプロピル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−secブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビスフェノールフローレン、1,1−ビス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)−2−メチルプロパン、4,4’−〔1,4−フェニレン−ビス(2−プロピリデン)〕−ビス(2−メチルフェノール)、1,1−ビス(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、4,4’−ジヒドロキシフェニルエーテル、1,1−ビス(2−ヒドロキシフェニル)メタン、2,4’−メチレンビスフェノール、1,1−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)エタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3−メチル−ブタン、1,1−ビス(2−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、3,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、3,3−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、3,3−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、2,2−ビス(2−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ノナン、1,1−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、1,1−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)デカン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)デカン、1,1−ビス(2−ヒドロキシ−3−tert−ブチル−5−メチルフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、テルペンジフェノール、1,1−ビス(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)−2−メチルプロパン、2,2−ビス(3−シクロヘキシル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(3,5−ジtert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(3,5−ジsecブチル−4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(3−シクロヘキシル−4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(2−ヒドロキシ−3,5−ジtert−ブチルフェニル)エタン、1,1−ビス(3−ノニル−4−ヒドロキシフェニル)メタン、2,2−ビス(3,5−ジtert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(2−ヒドロキシ−3,5−ジtert−ブチル−6−メチルフェニル)メタン、1,1−ビス(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、4,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン酸、ビス(4−ヒドロキシフェニル)酢酸ブチルエステル、1,1−ビス(3−フルオロ−4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(2−ヒドロキシ−5−フルオロフェニル)メタン、2,2−ビス(4ーヒドロキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(3−フルオロ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(3−フルオロ−4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルメタン、1,1−ビス(3−フルオロ−4−ヒドロキシフェニル)−1−(p−フルオロフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−(p−フルオロフェニル)メタン、2,2−ビス(3−クロロ−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジクロロ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−クロロ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)メタン、2,2−ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−ニトロ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、3,3’−ジメチル−4,4’−ビフェノール、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ビフェノール、3,3’,5,5’−テトラtert−ブチル−4,4’−ビフェノール、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ケトン、3,3’−ジフルオロ−4,4’−ビフェノール、3,3’,5,5’−テトラフルオロ−4,4’−ビフェノール、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ジメチルシラン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)チオエーテル、ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)チオエーテル、ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)チオエーテル、1,1−ビス(2,3,5−トリメチル−4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルメタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ドデカン、2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)ドデカン、2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)ドデカン、1,1−ビス(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、1,1−ビス(3,5−ジtert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、1,1−ビス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−シクロヘキシルフェニル)−2−メチルプロパン、1,1−ビス(2−ヒドロキシ−3,5−ジtert−ブチルフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン酸メチルエステル、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン酸エチルエステル、イサチンビスフェノール、イサチンビスクレゾール、2,2’,3,3’,5,5’−ヘキサメチル−4,4’−ビフェノール、ビス(2−ヒドロキシフェニル)メタン、2,4’−メチレンビスフェノール、1,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−(2−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(2−ヒドロキシ−3−アリルフェニル)メタン、1,1−ビス(2−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)−2−メチルプロパン、1,1−ビス(2−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)エタン、ビス(2−ヒドロキシ−5−フェニルフェニル)メタン、1,1−ビス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)ブタン、ビス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−シクロヘキシルフェニル)メタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタデカン、2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)ペンタデカン、2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)ペンタデカン、1,2−ビス(3,5−ジtert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)エタン、ビス(2−ヒドロキシ−3,5−ジtert−ブチルフェニル)メタン、2,2−ビス(3−スチリル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−(p−ニトロフェニル)エタン、ビス(3,5−ジフルオロ−4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(3,5−ジフルオロ−4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルメタン、ビス(3,5−ジフルオロ−4−ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、ビス(3−フルオロ−4−ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、2,2−ビス(3−クロロ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、3,3’,5,5’−テトラtert−ブチル−2,2’−ビフェノール、2,2’−ジアリル−4,4’−ビフェノール、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチル−シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5,5−テトラメチル−シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,4−トリメチル−シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3−ジメチル−5−エチル−シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチル−シクロペンタン、1,1−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチル−シクロヘキサン、1,1−ビス(3,5−ジフェニル−4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチル−シクロヘキサン、1,1−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチル−シクロヘキサン、1,1−ビス(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチル−シクロヘキサン、1,1−ビス(3,5−ジクロロ−4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチル−シクロヘキサン、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、1,1−ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチル−シクロヘキサン、α、α−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,4−ジイソプロピルベンゼン等が挙げられ、これらは1種類でも、複数種併用することもできる。これら2価フェノールは得られるポリマーの性能に応じて用いることができる。
また、ジヒドロキシベンゼンを本発明の効果が損なわれない範囲で用いることができ、これらジヒドロキシベンゼンとしては、レゾルシノール、ハイドロキノン、1,2−ジヒドロキシベンゼン等が挙げられ、これらは1種類でも、複数種併用することもできる
前記一般式(S1) 、(S2) または(S3)で表されるイオン性基を含有するセグメントの好ましい例としては、好ましいイオン性基であるスルホン酸基で表して、例えば、以下の式(S1)−1〜(S1)−3 、(S2)−1〜(S2)−4が挙げられる。より好ましくは式(S1)−1、(S1)−2で表されるセグメントであり、特に式(S1)−1が好ましい。
(一般式(S1)−1〜(S1)−3 、(S2)−1〜(S2)−4中、Mは水素、金属カチオン、アンモニウムカチオンを表し、2種類以上の基を表してもよい。mは前記と同じ意味を表す。x、yはそれぞれ独立に0または1を表すが、x+yは1または2である。zは0、1または2を表す。*は一般式(S1)−1〜(S1)−3 、(S2)−1〜(S2)−4または他の構成単位との結合部位を表す。)
上記のとおり、好ましいイオン性基を含有するセグメントである式(S1)−1及び式(S1)−2の代表例としては、例えば以下の式(S1)−4 〜(S1)−17のものが挙げられる。
(一般式(S1)−4 〜(S1)−17中、Mは水素、金属カチオン、アンモニウムカチオンを表し、2種類以上の基を表してもよい。*は一般式(S1)−4 〜(S1)−17または他の構成単位との結合部位を表す。)
かかる例示の中でも、セグメントを構成する構造単位にある、全ての2価の芳香族基にイオン性基を有するものが好ましく、この観点から、(S1)−4〜(S1)−12が好ましい。
また、このようにイオン性基として、スルホン酸基を有する繰返し構造を有するセグメントであると、燃料電池用イオン伝導膜として、特に好適であることは上述のとおりである。
本発明に使用するイオン性基を含有するセグメント(A1)の合成方法については、実質的に十分な分子量が得られる方法であれば特に限定されるものではないが、例えば芳香族活性ジハライド化合物と2価フェノール化合物の芳香族求核置換反応、またはハロゲン化芳香族フェノール化合物の芳香族求核置換反応を利用して合成することができる。
イオン性基を含有するセグメント(A1)中に用いる芳香族活性ジハライド化合物として、芳香族活性ジハライド化合物にイオン酸基を導入した化合物をモノマーとして用いることは、化学的安定性、製造コスト、イオン性基の量を精密制御が可能な点から好ましい。イオン性基としてスルホン酸基を有するモノマーの好適な具体例としては、3,3’−ジスルホネート−4,4’−ジクロロジフェニルスルホン、3,3’−ジスルホネート−4,4’−ジフルオロジフェニルスルホン、3,3’−ジスルホネート−4,4’−ジクロロジフェニルケトン、3,3’−ジスルホネート−4,4’−ジフルオロジフェニルケトン、3,3’−ジスルホネート−4,4’−ジクロロジフェニルフェニルホスフィンオキシド、3,3’−ジスルホネート−4,4’−ジフルオロジフェニルフェニルホスフィンオキシド、等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
プロトン伝導度および耐加水分解性の点からイオン性基としてはスルホン酸基が最も好ましいが、本発明に使用されるイオン性基を有するモノマーは他のイオン性基を有していても構わない。なかでも化学的安定性と物理的耐久性の点から、3,3’−ジスルホネート−4,4’−ジクロロジフェニルケトン、3,3’−ジスルホネート−4,4’−ジフルオロジフェニルケトンがより好ましく、重合活性の点から3,3’−ジスルホネート−4,4’−ジフルオロジフェニルケトンが最も好ましい。
イオン性基を有するモノマーとして、3,3’−ジスルホネート−4,4’−ジクロロジフェニルケトン、3,3’−ジスルホネート−4,4’−ジフルオロジフェニルケトンを用いて合成したイオン性基を含有するセグメント(A1)としては、下記一般式(p1)で表される構成単位をさらに含むものとなり、好ましく用いられる。該芳香族ポリエーテル系重合体は、ケトン基の有する高い結晶性の特性に加え、スルホン基よりも耐熱水性に優れる成分となり、高温高湿度条件での寸法安定性、機械強度、物理的耐久性に優れた材料に有効な成分となるのでさらに好ましく用いられる。これらのスルホン酸基は重合の際には、スルホン酸基が1価カチオン種との塩になっていることが好ましい。1価カチオン種としては、ナトリウム、カリウムや他の金属種や各種アミン類等でも良く、これらに制限される訳ではない。これら芳香族活性ジハライド化合物は、単独で使用することができるが、複数の芳香族活性ジハライド化合物を併用することも可能である。
(一般式(p1)中、M1およびM2は水素、金属カチオン、アンモニウムカチオン、a1およびa2は1〜4の整数を表す。一般式(p1)で表される構成単位は任意に置換されていてもよい。)
また、芳香族活性ジハライド化合物としては、イオン性基を有するものと持たないものを共重合することで、イオン性基密度を制御することも可能である。しかしながら、本発明のイオン性基を含有するブロック(B1)としては、プロトン伝導パスの連続性確保の観点から、イオン性基を持たない芳香族活性ジハライド化合物を共重合しないことがより好ましい。
イオン性基を持たない芳香族活性ジハライド化合物のより好適な具体例としては、4,4’−ジクロロジフェニルスルホン、4,4’−ジフルオロジフェニルスルホン、4,4’−ジクロロジフェニルケトン、4,4’−ジフルオロジフェニルケトン、4,4’−ジクロロジフェニルフェニルホスフィンオキシド、4,4’−ジフルオロジフェニルフェニルホスフィンオキシド、2,6−ジクロロベンゾニトリル、2,6−ジフルオロベンゾニトリル、等を挙げることができる。中でも4,4’−ジクロロジフェニルケトン、4,4’−ジフルオロジフェニルケトンが結晶性付与、機械強度や物理的耐久性、耐熱水性の点からより好ましく、重合活性の点から4,4’−ジフルオロジフェニルケトンが最も好ましい。これら芳香族活性ジハライド化合物は、単独で使用することができるが、複数の芳香族活性ジハライド化合物を併用することも可能である。
芳香族活性ジハライド化合物として、4,4’−ジクロロジフェニルケトン、4,4’−ジフルオロジフェニルケトンを用いて合成した高分子電解質材料としては、下記一般式(p2)で表される構成部位をさらに含むものとなり、好ましく用いられる。該構成単位は分子間凝集力や結晶性を付与する成分となり、高温高湿度条件での寸法安定性、機械強度、物理的耐久性に優れた材料となるので好ましく用いられる。
(一般式(p2)で表される構成単位は任意に置換されていてもよいが、イオン性基は含有しない。)
また、ハロゲン化芳香族ヒドロキシ化合物としても特に制限されることはないが、4−ヒドロキシ−4’−クロロベンゾフェノン、4−ヒドロキシ−4’−フルオロベンゾフェノン、4−ヒドロキシ−4’−クロロジフェニルスルホン、4−ヒドロキシ−4’−フルオロジフェニルスルホン、4−(4’−ヒドロキシビフェニル)(4−クロロフェニル)スルホン、4−(4’−ヒドロキシビフェニル)(4−フルオロフェニル)スルホン、4−(4’−ヒドロキシビフェニル)(4−クロロフェニル)ケトン、4−(4’−ヒドロキシビフェニル)(4−フルオロフェニル)ケトン、等を例として挙げることができる。これらは、単独で使用することができるほか、2種以上の混合物として使用することもできる。さらに、活性化ジハロゲン化芳香族化合物と芳香族ジヒドロキシ化合物の反応においてこれらのハロゲン化芳香族ヒドロキシ化合物を共に反応させて芳香族ポリエーテル系化合物を合成しても良い。
イオン性基を含有するセグメント(A1)として、前記一般式(S1)〜(S3)で表される構成単位以外に共重合せしめる構成単位の好ましい例としては、前記一般式(p1)および(p2)で表される構成単位を含有する下記一般式(T1)および(T2)で表される構成単位からなる芳香族ポリエーテルケトン系共重合体が特に好ましい。
(一般式(T1)および(T2)中、Aは芳香環を含む2価の有機基、M5およびM6は水素、金属カチオン、アンモニウムカチオンを表し、Aは2種類以上の基を表しても良い。)
一般式(T1)と(T2)で表される構成単位の組成比を変えることで、イオン交換容量を制御することが可能であるが、T1とT2の合計モル量を基準として、P1の導入量としては、好ましくは75モル%以上、より好ましくは90モル%以上、最も好ましくは100モル%である。P1の導入量が75モル%未満である場合には、プロトン伝導バスの構築が不十分となる場合があり好ましくない。
ここで、前記一般式(T1)および(T2)中の芳香環を含む2価の有機基Aとしては、芳香族求核置換反応による芳香族ポリエーテル系重合体の重合に用いることができる各種2価フェノール化合物を使用することができ、特に限定されるものではない。また、これらの芳香族ジヒドロキシ化合物にスルホン酸基が導入されたものをモノマーとして用いることもできる。
本発明のブロック共重合体がスルホン酸基を有する場合、そのイオン交換容量は、プロトン伝導性と耐水性のバランスの点から、0.1〜5meq/gが好ましく、より好ましくは1.5meq/g以上、さらに好ましくは1.8meq/g以上、最も好ましくは2.1meq/g以上である。また、3.5meq/g以下がより好ましく、より好ましくは2.9meq/g以下、さらに好ましくは2.6meq/g以下、最も好ましくは2.3meq/g以下である。イオン交換容量が0.1meq/gより小さい場合には、プロトン伝導性が不足する場合があり、5meq/gより大きい場合には、耐水性が不足する場合がある。
本発明のブロック共重合体としては、イオン性基を含有するセグメント(A1)と、イオン性基を含有しないセグメント(A2)のモル組成比(A1/A2)が、0.2以上であることがより好ましく、0.33以上がさらに好ましく、0.5以上が最も好ましい。また、5以下がより好ましく、3以下がさらに好ましく、2以下が最も好ましい。モル組成比A1/A2が、0.2未満あるいは5を越える場合には、本発明の効果が不十分となる場合があり、低加湿条件下でのプロトン伝導性が不足したり、耐熱水性や物理的耐久性が不足する場合があるので好ましくない。
イオン性基を含有するセグメント(A1)のイオン交換容量は、低加湿条件下でのプロトン伝導性の点から、高いことが好ましく、より好ましくは2.5meq/g以上、さらに好ましくは、3meq/g以上、最も好ましくは3.5meq/g以上である。また、6.5meq/g以下がより好ましく、5meq/g以下がさらに好ましく、最も好ましいのは4.5meq/g以下である。イオン性基を含有するセグメント(A1)のイオン交換容量が2.5meq/g未満の場合には、低加湿条件下でのプロトン伝導性が不足する場合があり、6.5meq/gを越える場合には、耐熱水性や物理的耐久性が不足する場合があるので好ましくない。
イオン性基を含有しないセグメント(A2)のイオン交換容量は、耐熱水性、機械強度、寸法安定性、物理的耐久性の点から、低いことが好ましく、より好ましくは1meq/g以下、さらに好ましくは0.5meq/g、最も好ましくは0.1meq/g以下である。イオン性基を含有しないセグメント(A2)のイオン交換容量が1meq/gを越える場合には、耐熱水性、機械強度、寸法安定性、物理的耐久性が不足する場合があるので好ましくない。
ここで、イオン交換容量とは、ブロック共重合体、高分子電解質材料、および高分子電解質膜の単位乾燥重量当たりに導入されたスルホン酸基のモル量であり、この値が大きいほどスルホン化の度合いが高いことを示す。イオン交換容量は、元素分析、中和滴定法等により測定が可能である。元素分析法を用い、S/C比から算出することもできるが、スルホン酸基以外の硫黄源を含む場合などは測定することが難しい。従って、本発明においては、イオン交換容量は、中和滴定法により求めた値と定義する。本発明の高分子電解質材料、および高分子電解質膜は、後述するように本発明のブロック共重合体とそれ以外の成分からなる複合体である態様を含むが、その場合もイオン交換容量は複合体の全体量を基準として求めるものとする。
中和滴定の測定例は、以下のとおりである。測定は3回以上行ってその平均値を取るものとする。
(1)プロトン置換し、純粋で十分に洗浄した電解質膜の膜表面の水分を拭き取った後、100℃にて12h以上真空乾燥し、乾燥重量を求める。
(2)電解質に5wt%硫酸ナトリウム水溶液を50mL加え、12h静置してイオン交換する。
(3)0.01mol/L水酸化ナトリウム水溶液を用いて、生じた硫酸を滴定する。指示薬として市販の滴定用フェノールフタレイン溶液0.1w/v% を加え、薄い赤紫色になった点を終点とする。
(4)イオン交換容量は下記の式により求める。
イオン交換容量(meq/g)=〔水酸化ナトリウム水溶液の濃度(mmol/ml)×滴下量(ml)〕/試料の乾燥重量(g)
本発明のブロック共重合体を得るためにイオン性基を導入する方法は、イオン性基を有するモノマーを用いて重合する方法と、高分子反応でイオン性基を導入する方法が挙げられる。
イオン性基を有するモノマーを用いて重合する方法としては、繰り返し単位中にイオン性基を有したモノマーを用いればよい。かかる方法は例えば、ジャーナル オブ メンブレン サイエンス(Journal of Membrane Science),197,2002,p.231-242に記載がある。この方法はポリマーのイオン交換容量の制御、工業的にも適用が容易であり、特に好ましい。
高分子反応でイオン性基を導入する方法について例を挙げて説明する。芳香族系高分子へのホスホン酸基導入は、例えば、ポリマープレプリンツ(Polymer Preprints, Japan),51,2002,p.750等に記載の方法によって可能である。芳香族系高分子へのリン酸基導入は、例えばヒドロキシル基を有する芳香族系高分子のリン酸エステル化によって可能である。芳香族系高分子へのカルボン酸基導入は、例えばアルキル基やヒドロキシアルキル基を有する芳香族系高分子を酸化することによって可能である。芳香族系高分子への硫酸基導入は、例えばヒドロキシル基を有する芳香族系高分子の硫酸エステル化によって可能である。芳香族系高分子をスルホン化する方法、すなわちスルホン酸基を導入する方法としては、たとえば特開平2−16126号公報あるいは特開平2−208322号公報等に記載の方法を用いることができる。
具体的には、例えば、芳香族系高分子をクロロホルム等の溶媒中でクロロスルホン酸のようなスルホン化剤と反応させたり、濃硫酸や発煙硫酸中で反応することによりスルホン化することができる。スルホン化剤には芳香族系高分子をスルホン化するものであれば特に制限はなく、上記以外にも三酸化硫黄等を使用することができる。この方法により芳香族系高分子をスルホン化する場合には、スルホン化の度合いはスルホン化剤の使用量、反応温度および反応時間により、制御することができる。芳香族系高分子へのスルホンイミド基の導入は、例えばスルホン酸基とスルホンアミド基を反応させる方法によって可能である。
次に、本発明で使用するイオン性基を含有しないセグメント(A2)について具体的に説明する。
イオン性基を含有しないセグメント(A2)としては、化学的に安定な上、強い分子間凝集力から結晶性を示す構成単位がより好ましく、機械強度、寸法安定性、物理的耐久性に優れたブロック共重合体を得ることができる。
イオン性基を含有しないセグメント(A2)は、下記一般式(S4)〜(S6)のいずれかで表される構成単位を含有することが好ましい。
(一般式(S4)〜(S6)中、nは1または2を表す。Ar4、Ar5、Ar6a、Ar6bは互いに独立に2価の芳香族基を表し、ここでこれらの2 価の芳香族基は、置換基を有していてもよい炭素数1〜20の炭化水素基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルコキシ基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアシル基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリールオキシ基または置換基を有していてもよい炭素数7〜20のアリールカルボニル基で置換されていてもよい。Wは酸素原子、炭素数1〜6のアルキレン基または炭素数1〜6のフッ素置換アルキレン基を表し、Wはいが複数個ある場合、それらは互いに同一でも異なっていてもよい。*は一般式(S4)〜(S6)または他の構成単位との結合部位を表す。)
更に好ましくはイオン性基を含有しないセグメント(A2)が、下記一般式(S7)で表される。
(一般式(S7)中、は式中、Ar7〜Ar10は互いに独立に2価の芳香族基を表し、ここでこれらの2 価の芳香族基は、置換基を有していてもよい炭素数1〜20の炭化水素基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルコキシ基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアシル基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリールオキシ基または置換基を有していてもよい炭素数7〜20のアリールカルボニル基またはフルオロ基で置換されていてもよい。rは0または1、sは0、1または2表す。Dは、直接結合または、下記一般式(B1)〜(B9)から選ばれる2価の基を表し、Dが複数個ある場合、それらは互いに同一でも異なっていてもよい。*は一般式(S7)または他の構成単位との結合部位を表す。)
ここで、一般式(S7)におけるAr7、Ar8は、互いに独立に2価の芳香族基を表し、その代表例としては、例えば、1,3−フェニレン、1,4−フェニレン等の2価の単環性芳香族基、1,3−ナフタレンジイル、1,4−ナフタレンジイル、1,5− ナフタレンジイル、1,6−ナフタレンジイル、1,7−ナフタレンジイル、2,6− ナフタレンジイル、2,7−ナフタレンジイル等の2価の縮環系芳香族基、3,3’−ビフェニリレン、3,4’−ビフェニリレン、4,4’−ビフェニリレン等の2価のビフェニリレン基などが挙げられる。
これらの2価の芳香族基は、置換基を有していてもよい炭素数1〜20の炭化水素基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルコキシ基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアシル基、炭素数6〜20のアリールオキシ基、炭素数6〜20のアリールカルボニル基又はフルオロ基で置換されていてもよい。ここで、これらの炭化水素基、アルコキシ基、アシル基、アリールオキシ基およびアリールカルボニル基の具体例としては、上記Ar1、Ar2、Ar3a、Ar3bにおける置換基として例示したものと同様のものが挙げられが、かかる炭化水素基、アルコキシ基、アシル基、アリールオキシ基またはアリールカルボニル基に置換基を有している場合、セグメント全体での、構造単位当たりのイオン交換基数が前記の範囲となるようにする必要があり、該置換基はイオン交換基でないことが特に好ましい。中でも、Ar7、Ar8としては、無置換すなわち置換基を有さないか、フルオロ基で置換されている場合が好ましい。
また、一般式(S7)における2価の芳香族としては、芳香族求核置換反応による芳香族ポリエーテル系重合体の重合に用いることができる各種2価フェノール化合物を使用することができ、特に限定されるものではない。
好ましい2価フェノール化合物の具体例としては、上記イオン性基を含むセグメントに例示したものと同様のものが挙げられる。
このようなイオン性基を含まないセグメントの代表例としては、2価の芳香族基が、置換基を有していてもよいポリエーテルケトン構造である。中でも、下記一般式(S9)−1〜(S9)−18で示されるセグメントが好ましく使用される。
(*は(S9)−1〜(S9)−18または他の構成単位との結合部位を表す。)
イオン性基を含有するセグメント(A1)、イオン性基を含有しないセグメント(A2)の数平均分子量(A1/A2)は、相分離構造のドメインサイズに関係し、低加湿でのプロトン伝導性と物理的耐久性のバランスから、0.5万以上がより好ましく、さらに好ましくは1万以上、最も好ましくは1.5万以上である。また、6万以下がより好ましく、さらに好ましくは、5万以下、最も好ましくは4万以下である。
本発明のブロック共重合体は、高分子電解質材料として好適であり、特に、高分子電解質成型体として好適に用いられる。本発明において高分子電解質成型体とは、本発明の高分子電解質材料を含有する成型体を意味する。本発明の高分子電解質成型体としては、膜類(フィルムおよびフィルム状のものを含む)の他、板状、繊維状、中空糸状、粒子状、塊状、微多孔状、コーティング類、発泡体類など、使用用途によって様々な形態をとりうる。ポリマーの設計自由度の向上および機械特性や耐溶剤性等の各種特性の向上が図れることから、幅広い用途に適応可能である。特に高分子電解質成型体が膜類であるときに好適である。
本発明の高分子電解質材料を固体高分子型燃料電池用として使用する際には、高分子電解質膜および電極触媒層などが好適である。中でも高分子電解質膜に好適に用いられる。固体高分子型燃料電池用として使用する場合、通常、膜の状態で高分子電解質膜や電極触媒層バインダーとして使用されるからである。
本発明の高分子電解質成型体は、種々の用途に適用可能である。例えば、体外循環カラム、人工皮膚などの医療用途、ろ過用用途、耐塩素性逆浸透膜などのイオン交換樹脂用途、各種構造材用途、電気化学用途、加湿膜、防曇膜、帯電防止膜、太陽電池用膜、ガスバリアー材料に適用可能である。また、人工筋肉、アクチュエーター材料としても好適である。中でも種々の電気化学用途により好ましく利用できる。電気化学用途としては、例えば、燃料電池、レドックスフロー電池、水電解装置、クロロアルカリ電解装置等が挙げられるが、中でも燃料電池が最も好ましい。
次に、本発明の高分子電解質成型体を得るための製造方法について具体的に説明する。
従来のイオン性基を含有するセグメント(A1)、イオン性基を含有しないセグメント(A2)、およびセグメント間を連結するリンカー部位からなるブロック共重合体は、重合時や製膜時に溶剤可溶性が必要という合成上の制限から、イオン性基を含有するセグメント(A1)だけでなく、イオン性基を含有しないセグメント(A2)も溶解性のある非晶性ポリマーで構成されていた。これらイオン性基を含有しない非晶性セグメントは、ポリマー分子鎖の凝集力に乏しいため、膜状に成型された場合に靭性が不足したり、イオン性基を含有するセグメント(A1)の膨潤を抑えきれず、十分な機械強度や物理的耐久性を達成することができなかった。また、イオン性基の熱分解温度の問題から、通常キャスト成型が用いられるため、溶解性の乏しい結晶性ポリマーでは、均一で強靱な膜を得ることはできなかった。
本発明のイオン性基を含有しないセグメント(A2)は、結晶性を示すセグメントであるため、少なくともイオン性基を含有しないセグメント(A2)に保護基を導入したブロック共重合体前駆体を成型した後、成型体に含有される該保護基の少なくとも一部を脱保護せしめることにより製造することが出来る。ブロック共重合体では、ランダム共重合体よりも、ドメインを形成したポリマーの結晶化により、加工性が不良となる傾向があるので、少なくともイオン性基を含有しないセグメント(A2)に保護基を導入し、加工性を向上させることが好ましく、イオン性基を含有するセグメント(A1)についても、加工性が不良となる場合には保護基を導入することが好ましい。
本発明に使用する保護基の具体例としては、有機合成で一般的に用いられる保護基があげられ、該保護基とは、後の段階で除去することを前提に、一時的に導入される置換基であり、反応性の高い官能基を保護し、その後の反応に対して不活性とするものであり、反応後に脱保護して元の官能基に戻すことのできるものである。すなわち、保護される官能基と対となるものであり、例えばt−ブチル基を水酸基の保護基として用いる場合があるが、同じt−ブチル基がアルキレン鎖に導入されている場合は、これを保護基とは呼ばない。保護基を導入する反応を保護(反応)、除去する反応を脱保護(反応)と呼称される。
このような保護反応としては、例えば、セオドア・ダブリュー・グリーン(Theodora W. Greene)、「プロテクティブ グループス イン オーガニック シンセシス」(Protective Groups in Organic Synthesis)、米国、ジョン ウイリー アンド サンズ(John Wiley & Sons, Inc)、1981、に詳しく記載されており、これらが好ましく使用できる。保護反応および脱保護反応の反応性や収率、保護基含有状態の安定性、製造コスト等を考慮して適宜選択することが可能である。また、重合反応において保護基を導入する段階としては、モノマー段階からでも、オリゴマー段階からでも、ポリマー段階でもよく、適宜選択することが可能である。
保護反応の具体例を挙げるとすれば、ケトン部位をケタール部位で保護/脱保護する方法、ケトン部位をケタール部位のヘテロ原子類似体、例えばチオケタール、で保護/脱保護する方法が挙げられる。これらの方法については、前記「プロテクティブ グループス イン オーガニック シンセシス」(Protective Groups in Organic Synthesis)のチャプター4に記載されている。また、スルホン酸と可溶性エステル誘導体との間で保護/脱保護する方法、芳香環に可溶性基としてt−ブチル基を導入および酸で脱t−ブチル化して保護/脱保護する方法等が挙げられる。しかしながら、これらに限定されることなく、保護基であれば好ましく使用できる。一般的な溶剤に対する溶解性を向上させる点では、立体障害が大きいという点で脂肪族基、特に環状部分を含む脂肪族基が保護基として好ましく用いられる。
保護反応としては、反応性や安定性の点で、さらに好ましくは、ケトン部位をケタール部位で保護/脱保護する方法、ケトン部位をケタール部位のヘテロ原子類似体、例えばチオケタール、で保護/脱保護する方法である。本発明の高分子電解質材料および高分子電解質膜において、保護基を含む構成単位として、より好ましくは下記一般式(U1)および(U2)から選ばれる少なくとも1種を含有するものである。
(式(U1)および(U2)において、Ar11〜Ar14は任意の2価のアリーレン基、R1およびR2はHおよびアルキル基から選ばれた少なくとも1種の基、R3は任意のアルキレン基、EはOまたはSを表し、それぞれが2種類以上の基を表しても良い。式(U1)および(U2)で表される基は任意に置換されていてもよい。)
なかでも、化合物の臭いや反応性、安定性等の点で、前記一般式(U1)および(U2)において、EがOである、すなわち、ケトン部位をケタール部位で保護/脱保護する方法が最も好ましい。
前記一般式(U1)中のR1およびR2としては、安定性の点でアルキル基であることがより好ましく、さらに好ましくは炭素数1〜6のアルキル基、最も好ましく炭素数1〜3のアルキル基である。また、前記一般式(U2)中のR3としては、安定性の点で炭素数1〜7のアルキレン基であることがより好ましく、最も好ましくは炭素数1〜4のアルキレン基である。R3の具体例としては、−CH2CH2 −、−CH(CH3 )CH2 −、−CH(CH3 )CH(CH3)−、−C(CH3 )2CH2 −、−C(CH3 )2 CH(CH3)−、−C(CH3)2O(CH3)2−、−CH2CH2CH2 −、−CH2C(CH3)2CH2−等があげられるが、これらに限定されるものではない。
前記一般式(U1)および(U2)で表される構成単位のなかでも、耐加水分解性などの安定性の点から少なくとも前記一般式(U2)を有するものがより好ましく用いられる。さらに、前記一般式(U2)のR3としては炭素数1〜7のアルキレン基、すなわち、Cn1H2n1(n1は1〜7の整数)で表される基であることが好ましく、安定性、合成の容易さの点から−CH2CH2 −、−CH(CH3 )CH2 −、または−CH2CH2CH2−から選ばれた少なくとも1種であることが最も好ましい。
前記一般式(U1)および(U2)中のAr11〜Ar14として好ましい有機基は、フェニレン基、ナフチレン基、またはビフェニレン基である。これらは任意に置換されていてもよい。本発明のブロック共重合体としては、溶解性および原料入手の容易さから、前記一般式(U2)中のAr13およびAr14が共にフェニレン基であることがより好ましく、最も好ましくはAr13およびAr14が共にp−フェニレン基である。
本発明において、ケトン部位をケタールで保護する方法としては、ケトン基を有する前駆体化合物を、酸触媒存在下で1官能および/または2官能アルコールと反応させる方法が挙げられる。例えば、ケトン前駆体の4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノンと1官能および/または2官能アルコール、脂肪族又は芳香族炭化水素などの溶媒中で臭化水素などの酸触媒の存在下で反応させることによって製造できる。アルコールは炭素数1〜20の脂肪族アルコールである。本発明に使用するケタールモノマーを製造するための改良法は、ケトン前駆体の4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノンと2官能アルコールをアルキルオルトエステル及び固体触媒の存在下に反応させることからなる。
本発明において、ケタールで保護したケトン部位の少なくとも一部を脱保護せしめ、ケトン部位とする方法は特に限定されるものではない。前記脱保護反応は、不均一又は均一条件下に水及び酸の存在下において行うことが可能であるが、機械強度、物理的耐久性、耐溶剤性の観点からは、膜等に成型した後で酸処理する方法がより好ましい。具体的には、成型された膜を塩酸水溶液や硫酸水溶液中に浸漬することにより脱保護することが可能であり、酸の濃度や水溶液の温度については適宜選択することができる。
ポリマーに対して必要な酸性水溶液の重量比は、好ましくは1〜100倍であるけれども更に大量の水を使用することもできる。酸触媒は好ましくは存在する水の0.1〜50重量%の濃度において使用する。好適な酸触媒としては塩酸、硝酸、フルオロスルホン酸、硫酸などのような強鉱酸、及びp−トルエンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸などのような強有機酸が挙げられる。ポリマーの膜厚等に応じて、酸触媒及び過剰水の量、反応圧力などは適宜選択できる。
例えば、膜厚25μmの膜であれば、6N塩酸水溶液、5重量%硫酸水溶液に例示されるような酸性水溶液中に浸漬し、室温〜95℃で1〜48時間加熱することにより、容易にほぼ全量を脱保護することが可能である。また、25℃の1N塩酸水溶液に24時間浸漬しても、実質的に全ての保護基を脱保護することは可能である。ただし、脱保護の条件としてはこれらに限定される物ではなく、酸性ガス、有機酸、熱処理によって脱保護しても構わない。
具体的には、例えば前記一般式(U1)および(U2)で表される構成単位を含有するブロック共重合体の前駆体は、2価フェノール化合物としてそれぞれ下記一般式(U1−1)および(U2−1)で表される化合物を使用し、芳香族活性ジハライド化合物との芳香族求核置換反応により合成することが可能である。前記一般式(U1)および(U2)で表される構成単位が2価フェノール化合物、芳香族活性ジハライド化合物のどちら側由来でも構わないが、モノマーの反応性の反応性を考慮して2価フェノール化合物由来と使用する方がより好ましい。
(一般式(U1−1)および(U2−1)において、Ar9〜Ar12は任意の2価のアリーレン基、R1およびR2はHおよびアルキル基から選ばれた少なくとも1種の基、R3は任意のアルキレン基、EはOまたはSを表す。一般式(U1−1)および一般式(U2−1)で表される化合物は任意に置換されていてもよい。)
特に好ましい2価フェノール化合物の具体例としては、下記一般式(r1)〜(r10)で表される化合物、並びにこれらの2価フェノール化合物由来の誘導体が挙げることができる。
これら2価フェノール化合物のなかでも、安定性の点から一般式(r4)〜(r10)で表される化合物がより好ましく、さらに好ましくは一般式(r4)、(r5)および(r9)で表される化合物、最も好ましくは一般式(r4)で表される化合物である。
本発明に使用されるセグメントを得るために行う芳香族求核置換反応によるオリゴマー合成は、上記モノマー混合物を塩基性化合物の存在下で反応させることで重合体を得ることができる。重合は、0〜350℃の温度範囲で行うことができるが、50〜250℃の温度であることが好ましい。0℃より低い場合には、十分に反応が進まない傾向にあり、350℃より高い場合には、ポリマーの分解も起こり始める傾向がある。反応は、無溶媒下で行うこともできるが、溶媒中で行うことが好ましい。使用できる溶媒としては、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルスルホキシド、スルホラン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、ヘキサメチルホスホントリアミド等の非プロトン性極性溶媒などを挙げることができるが、これらに限定されることはなく、芳香族求核置換反応において安定な溶媒として使用できるものであればよい。これらの有機溶媒は、単独でも2種以上の混合物として使用されても良い。
塩基性化合物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等があげられるが、芳香族ジオール類を活性なフェノキシド構造にしうるものであれば、これらに限定されず使用することができる。また、フェノキシドの求核性を高めるために、18−クラウンー6などのクラウンエーテルを添加することも好適である。これらクラウンエーテル類は、スルホン酸基のナトリウムイオンやカリウムイオンに配位して有機溶媒に対する溶解性が向上する場合があり、好ましく使用できる。
芳香族求核置換反応においては、副生物として水が生成する場合がある。この際は、重合溶媒とは関係なく、トルエンなどを反応系に共存させて共沸物として水を系外に除去することもできる。水を系外に除去する方法としては、モレキュラーシーブなどの吸水剤を使用することもできる。
反応水又は反応中に導入された水を除去するのに用いられる共沸剤は、一般に、重合を実質上妨害せず、水と共蒸留し且つ約25℃〜約250℃の間で沸騰する任意の不活性化合物である。普通の共沸剤には、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロルベンゼン、塩化メチレン、ジクロルベンゼン、トリクロルベンゼン、シクロヘキサンなどが含まれる。もちろん、その沸点が用いた双極性溶媒の沸点よりも低いような共沸剤を選定することが有益である。共沸剤が普通用いられるが、高い反応温度、例えば200℃以上の温度が用いられるとき、特に反応混合物に不活性ガスを連続的に散布させるときにはそれは常に必要ではない。一般には、反応は不活性雰囲気下に酸素が存在しない状態で実施するのが望ましい。
芳香族求核置換反応を溶媒中で行う場合、得られるポリマー濃度として5〜50重量%となるようにモノマーを仕込むことが好ましい。5重量%よりも少ない場合は、重合度が上がりにくい傾向がある。一方、50重量%よりも多い場合には、反応系の粘性が高くなりすぎ、反応物の後処理が困難になる傾向がある。
重合反応終了後は、反応溶液より蒸発によって溶媒を除去し、必要に応じて残留物を洗浄することによって、所望のポリマーが得られる。また、反応溶液を、ポリマーの溶解度が低く、副生する無機塩の溶解度が高い溶媒中に加えることによって、無機塩を除去、ポリマーを固体として沈殿させ、沈殿物の濾取によりポリマーを得ることもできる。回収されたポリマーは場合により水やアルコール又は他の溶媒で洗浄され、乾燥される。所望の分子量が得られたならば、ハライドあるいはフェノキシド末端基は場合によっては安定な末端基を形成させるフェノキシドまたはハライド末端封止剤を導入することにより反応させることができる。
このようにして得られる本発明のブロック共重合体の分子量は、ポリスチレン換算重量平均分子量で、0.1万〜500万、好ましくは1万〜50万である。0.1万未満では、成型した膜にクラックが発生するなど機械強度、物理的耐久性、耐溶剤性のいずれかが不十分な場合がある。一方、500万を超えると、溶解性が不充分となり、また溶液粘度が高く、加工性が不良になるなどの問題がある。
なかでも、重量平均分子量が10万以上、100万以下であり、かつ、重量平均分子量/数平均分子量が4.0以下であることがより好ましい。重量平均分子量として、さらに好ましくは20万以上、70万以下、最も好ましくは、30万以上、50万以下である。また、重量平均分子量/数平均分子量として、さらに好ましくは3.5以下、最も好ましくは3以下である。重量平均分子量/数平均分子量が4以上ある場合には、架橋反応によってゲル化したり、溶解性が不足して製膜性に劣る場合があり好ましくない。分子量分布(重量平均分子量Mw/数平均分子量Mn)はゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)法によって測定したポリスチレン換算の重量平均分子量Mw及び数平均分子量Mnより算出した値を意味する。
なお、本発明のブロック共重合体の化学構造は、赤外線吸収スペクトルによって、1,030〜1,045cm-1、1,160〜1,190cm-1のS=O吸収、1,130〜1,250cm-1のC−O−C吸収、1,640〜1,660cm-1 のC=O吸収などにより確認でき、これらの組成比は、スルホン酸基の中和滴定や、元素分析により知ることができる。また、核磁気共鳴スペクトル(1H−NMR)により、例えば6.8〜8.0ppmの芳香族プロトンのピークから、その構造を確認することができる。また、溶液13C−NMRや固体13C−NMRによって、スルホン酸基の付く位置や並び方を確認することができる。
次に、イオン性基を含有するセグメント(A1)、イオン性基を含有しないセグメント(A2)、および前記セグメント間を連結するリンカー部位をそれぞれ1個以上含有するブロック共重合体の具体的な合成方法を例示する。ただし、本発明は、これらに限定されるものではない。
また、本発明のブロック共重合体は、ブロック共重合体前駆体を合成した後、前駆体に含有される該保護基の少なくとも一部を脱保護せしめることにより製造することが出来る。
本発明のブロック共重合体およびブロック共重合体前駆体の製造方法の具体例としては、
a.両末端ヒドロキシル基の式(S1)で表されるセグメントおよび/またはセグメント前駆体と両末端ヒドロキシル基の式(S2)で表されるセグメントおよび/またはセグメント前駆体のいずれかにジハライドリンカーとを反応させた後、もう一方のセグメントと交互的に重合させてブロック共重合体を製造する方法、
b.両末端ヒドロキシル基の式(S1)で表されるセグメントおよび/またはセグメント前駆体と両末端ヒドロキシル基の式(S2)で表されるセグメントおよび/またはセグメント前駆体とジハライドリンカーとをランダム的に重合させてブロック共重合体を製造する方法、
c.式(S1)で表されるセグメントおよび/またはセグメント前駆体の未スルホン化物 を用いてaまたはbに記載の方法でブロック共重合体を製造した後、式(S2)で表されるセグメントおよび/またはセグメント前駆体の未スルホン化部分に選択的にイオン性基を導入する方法、
d.a〜cの組み合わせる方法などが挙げられる。なかでも、交互共重合により相分離ドメインサイズを制御でき、化学的に安定なブロック共重合体を製造できる点から、方法aが最も好ましい。
すなわち、本発明のブロック共重合体の製造方法としては、少なくとも下記工程(1)〜(4)を備えることがより好ましい。これら工程を備えることにより、高分子量化による機械強度と耐久性の向上を達成でき、かつ、両セグメントの交互導入によって、相分離構造やドメインサイズが厳密に制御された低加湿プロトン伝導性に優れたブロック共重合体を得ることが出来る。
(1)前記一般式(S1)で表される構成単位、および/または、前記一般式(S1)で表される構成単位の前駆体となる構成単位を含有し、両末端ヒドロキシル基を有する、イオン性基を含有するセグメント(A1)を合成する工程、
(2)前記一般式(S2)で表される構成単位、および/または、前記一般式(S2)で表される構成単位の前駆体となる構成単位を含有し、両末端ヒドロキシル基を有する、イオン性基を含有しないセグメント(A2)を合成する工程、
(3)イオン性基を含有するセグメント(A1)またはイオン性基を含有しないセグメント(A2)の両末端ヒドロキシル基にリンカー部位を導入せしめる工程、
(4)(3)で合成したセグメントの両末端リンカー部位と、もう一方のセグメントの両末端ヒドロキシル基を重合せしめることによりブロック共重合体およびブロック共重合体前駆体を製造する工程
方法aにおいて、両末端ヒドロキシル基の式(S1)で表されるセグメントと両末端ヒドロキシル基の式(S2)で表されるセグメントの具体例としては、それぞれ下記式(H3−1)と(H3−2)が挙げられ、4,4‘−ジフルオロジフェニルスルホンリンカーと反応させたセグメントの具体例としては、それぞれ下記式(H3−3)と(H3−4)が挙げられる。ただし、本発明はこれらに限定されるものではない。
前記式(H3−1)〜(H3−4)において、ハロゲン原子はF、アルカリ金属はNaおよびKで示しているが、これらに限定されることなく使用することが可能である。前記式は読み手の理解を助ける目的で挿入するものであり、ポリマーの重合成分の化学構造、正確な組成、並び方、スルホン酸基の位置、数、分子量などを必ずしも正確に表すわけではなく、これらに限定されるものでない。
さらに、前記式(H3−1)〜(H3−4)ではいずれのセグメントに対しても、保護基としてケタール基を導入したが、本発明においては、結晶性が高く溶解性が低い成分に保護基を導入すればよく、前記式(H3−1)や(H3−3)で表されるイオン性基を含有するセグメント(A1)には必ずしも保護基が必要ではなく、耐久性や寸法安定性の観点から、保護基がないものも好ましく使用できる。
また、前記式(H3−1)で例示されるブロックは、ビスフェノール成分と芳香族ジハライド成分を(N1+1):N1で反応させることにより、分子量が制御されたオリゴマーの合成が可能である。前記式(H3−2)も同様である。
リンカーを用いたブロック共重合の反応温度としては、140℃以下の加温条件下が好ましい。より好ましくは、80℃以上、120℃以下である。反応温度を120℃以下とすることにより、反応時のエーテル交換反応による高分子構造のランダム化を十分に抑制することができる。一方、180℃以上とすれば、ランダムな高分子構造をもつポリマーが得られる。
本発明のブロック共重合体は、透過型電子顕微鏡観察によって共連続な相分離構造を観察することができる。ブロック共重合体の相分離構造、つまりイオン性基を含有するセグメント(A1)とイオン性基を含有しないセグメントの凝集状態およびその形状を制御することによって、低加湿条件下においても優れたプロトン伝導性を実現できる。相分離構造は透過型電子顕微鏡(TEM)、原子間力顕微鏡(AFM)等によって分析することが可能である。
本発明のブロック共重合体としては、TEMによる観察を5万倍で行った場合に、相分離構造が観察され、画像処理により計測した平均層間距離または平均粒子間距離が8nm以上、100nm以下であるものが好ましい。中でも、平均層間距離または平均粒子間距離が10nm以上、50nm以下がより好ましく、最も好ましくは15nm以上、30nm以下である。透過型電子顕微鏡によって相分離構造が観察されない、または、平均層間距離または平均粒子間距離が8nm未満である場合には、イオンチャンネルの連続性が不足し、伝導度が不足する場合があるので好ましくない。また、層間距離が5000nmを越える場合には、機械強度や寸法安定性が不良となる場合があり、好ましくない。
本発明のブロック共重合体は、相分離構造を有しながら、結晶性を有することを特徴とし、示差走査熱量分析法(DSC)あるいは広角X線回折によって結晶性が認められる。すなわち、示差走査熱量分析法によって測定される結晶化熱量が0.1J/g以上、または、広角X線回折によって測定される結晶化度が0.5%以上であるブロック共重合体である。
本発明において、「結晶性を有する」とはポリマーが昇温すると結晶化されうる、結晶化可能な性質を有する、あるいは既に結晶化していることを意味する。また、非晶性ポリマーとは、結晶性ポリマーではない、実質的に結晶化が進行しないポリマーを意味する。従って、結晶性ポリマーであっても、結晶化が十分に進行していない場合には、ポリマーの状態としては非晶状態である場合がある。
本発明の高分子電解質材料を高分子電解質膜に成型する方法に特に制限はないが、ケタール等の保護基を有する段階で、溶液状態より製膜する方法あるいは溶融状態より製膜する方法等が可能である。前者では、たとえば、該高分子電解質材料をN−メチル−2−ピロリドン等の溶媒に溶解し、その溶液をガラス板等の上に流延塗布し、溶媒を除去することにより製膜する方法が例示できる。
製膜に用いる溶媒としては、高分子電解質材料を溶解し、その後に除去し得るものであればよく、例えば、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルスルホキシド、スルホラン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、ヘキサメチルホスホントリアミド等の非プロトン性極性溶媒、γ−ブチロラクトン、酢酸ブチルなどのエステル系溶媒、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネートなどのカーボネート系溶媒、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等のアルキレングリコールモノアルキルエーテル、あるいはイソプロパノールなどのアルコール系溶媒、水およびこれらの混合物が好適に用いられるが、非プロトン性極性溶媒が最も溶解性が高く好ましい。また、イオン性基を含有するセグメント(A1)の溶解性を高めるために、18−クラウンー6などのクラウンエーテルを添加することも好適である。
また、本発明において、ブロック共重合を使用する場合には、溶媒の選択は相分離構造に対して重要であり、非プロトン性極性溶媒と極性の低い溶媒を混合して使用することも好適な方法である。
必要な固形分濃度に調製したポリマー溶液を常圧の濾過もしくは加圧濾過などに供し、高分子電解質溶液中に存在する異物を除去することは強靱な膜を得るために好ましい方法である。ここで用いる濾材は特に限定されるものではないが、ガラスフィルターや金属性フィルターが好適である。該濾過で、ポリマー溶液が通過する最小のフィルターの孔径は、1μm以下が好ましい。濾過を行わないと異物の混入を許すこととなり、膜破れが発生したり、耐久性が不十分となるので好ましくない。
次いで、得られた高分子電解質膜はイオン性基の少なくとも一部を金属塩の状態で熱処理することが好ましい。用いる高分子電解質材料が重合時に金属塩の状態で重合するものであれば、そのまま製膜、熱処理することが好ましい。金属塩の金属はスルホン酸と塩を形成しうるものであればよいが、価格および環境負荷の点からはLi、Na、K、Rb、Cs、Mg、Ca、Sr、Ba、Ti、V、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Zr、Mo、Wなどが好ましく、これらの中でもLi、Na、K、Ca、Sr、Baがより好ましく、Li、Na、Kがさらに好ましい。
この熱処理の温度は好ましくは80〜350℃、さらに好ましくは100〜200℃、特に好ましくは120〜150℃である。熱処理時間は、好ましくは10秒〜12時間、さらに好ましくは30秒〜6時間、特に好ましくは1分〜1時間である。熱処理温度が低すぎると、機械強度や物理的耐久性が不足する場合がある。一方、高すぎると膜材料の化学的分解が進行する場合がある。熱処理時間が10秒未満であると熱処理の効果が不足する。一方、12時間を超えると膜材料の劣化を生じやすくなる。熱処理により得られた高分子電解質膜は必要に応じて酸性水溶液に浸漬することによりプロトン置換することができる。この方法で成形することによって本発明の高分子電解質膜はプロトン伝導度と物理的耐久性をより良好なバランスで両立することが可能となる。
本発明で使用される高分子電解質材料を膜へ転化する方法としては、該高分子電解質材料から構成される膜を前記手法により作製後、ケタールで保護したケトン部位の少なくとも一部を脱保護せしめ、ケトン部位とするものである。この方法によれば、溶解性に乏しいイオン性基を含有しないブロックを含むブロック共重合体の溶液製膜が可能となり、プロトン伝導性と機械強度、物理的耐久性を両立することができる。
本発明の高分子電解質膜の膜厚としては、好ましくは1〜2000μmのものが好適に使用される。実用に耐える膜の機械強度、物理的耐久性を得るには1μmより厚い方がより好ましく、膜抵抗の低減つまり発電性能の向上のためには2000μmより薄い方が好ましい。かかる膜厚のさらに好ましい範囲は3〜50μm、特に好ましい範囲は10〜30μmである。かかる膜厚は、溶液濃度あるいは基板上への塗布厚により制御することができる。
また、本発明によって得られる高分子電解質膜には、通常の高分子化合物に使用される結晶化核剤、可塑剤、安定剤、酸化防止剤あるいは離型剤等の添加剤を、本発明の目的に反しない範囲内で添加することができる。
また、本発明によって得られる高分子電解質膜には、前述の諸特性に悪影響をおよぼさない範囲内で機械的強度、熱安定性、加工性などの向上を目的に、各種ポリマー、エラストマー、フィラー、微粒子、各種添加剤などを含有させてもよい。また、微多孔膜、不織布、メッシュ等で補強しても良い。
かかる高分子電解質膜を燃料電池として用いる際の高分子電解質膜と電極の接合法については特に制限はなく、公知の方法(例えば、電気化学,1985, 53, p.269.記載の化学メッキ法、電気化学協会編(J. Electrochem. Soc.)、エレクトロケミカル サイエンス アンド テクノロジー (Electrochemical Science and Technology),1988, 135, 9, p.2209. 記載のガス拡散電極の熱プレス接合法など)を適用することが可能である。
加熱プレスにより一体化する場合は、その温度や圧力は、電解質膜の厚さ、水分率、触媒層や電極基材により適宜選択すればよい。また、本発明では電解質膜が乾燥した状態または吸水した状態でもプレスによる複合化が可能である。具体的なプレス方法としては圧力やクリアランスを規定したロールプレスや、圧力を規定した平板プレスなどが挙げられ、工業的生産性やイオン性基を有する高分子材料の熱分解抑制などの観点から0℃〜250℃の範囲で行うことが好ましい。加圧は電解質膜や電極保護の観点からできる限り弱い方が好ましく、平板プレスの場合、10MPa以下の圧力が好ましく、加熱プレス工程による複合化を実施せずに電極と電解質膜を重ね合わせ燃料電池セル化することもアノード、カソード電極の短絡防止の観点から好ましい選択肢の一つである。この方法の場合、燃料電池として発電を繰り返した場合、短絡箇所が原因と推測される電解質膜の劣化が抑制される傾向があり、燃料電池として耐久性が良好となる。
さらに、本発明の高分子電解質材料および高分子電解質膜を使用した固体高分子型燃料電池の用途としては、特に限定されないが、移動体の電力供給源が好ましいものである。特に、携帯電話、パソコン、PDA、テレビ、ラジオ、ミュージックプレーヤー、ゲーム機、ヘッドセット、DVDプレーヤーなどの携帯機器、産業用などの人型、動物型の各種ロボット、コードレス掃除機等の家電、玩具類、電動自転車、自動二輪、自動車、バス、トラックなどの車両や船舶、鉄道などの移動体の電力供給源、据え置き型の発電機など従来の一次電池、二次電池の代替、もしくはこれらとのハイブリット電源として好ましく用いられる。
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、各物性の測定条件は次の通りである。また、本実施例中には化学構造式を挿入するが、該化学構造式は読み手の理解を助ける目的で挿入するものであり、これらに限定されるものではない。
(1)イオン交換容量
中和滴定法により測定した。測定は3回行って、その平均値を取った。
(1)プロトン置換し、純粋で十分に洗浄した電解質膜の膜表面の水分を拭き取った後、100℃にて12h以上真空乾燥し、乾燥重量を求めた。
(2)電解質に5wt%硫酸ナトリウム水溶液を50mL加え、12h静置してイオン交換した。
(3)0.01mol/L水酸化ナトリウム水溶液を用いて、生じた硫酸を滴定した。指示薬として市販の滴定用フェノールフタレイン溶液0.1w/v% を加え、薄い赤紫色になった点を終点とした。
(4)イオン交換容量は下記の式により求めた。
イオン交換容量(meq/g)=
〔水酸化ナトリウム水溶液の濃度(mmol/ml)×滴下量(ml)〕/試料の乾燥重量(g)
(2)プロトン伝導度
膜状の試料を25℃の純水に24時間浸漬した後、80℃、相対湿度25〜95%の恒温恒湿槽中にそれぞれのステップで30分保持し、定電位交流インピーダンス法でプロトン伝導度を測定した。
測定装置としては、Solartron製電気化学測定システム(Solartron 1287 Electrochemical InterfaceおよびSolartron 1255B Frequency Response Analyzer)を使用し、2端子法で定電位インピーダンス測定を行い、プロトン伝導度を求めた。交流振幅は、50mVとした。サンプルは幅10mm、長さ50mmの膜を用いた。測定治具はフェノール樹脂で作製し、測定部分は開放させた。電極として、白金板(厚さ100μm、2枚)を使用した。電極は電極間距離10mm、サンプル膜の表側と裏側に、互いに平行にかつサンプル膜の長手方向に対して直交するように配置した。
(3)数平均分子量、重量平均分子量
ポリマーの数平均分子量、重量平均分子量をGPCにより測定した。紫外検出器と示差屈折計の一体型装置として東ソー製HLC−8022GPCを、またGPCカラムとして東ソー製TSK gel SuperHM−H(内径6.0mm、長さ15cm)2本を用い、N−メチル−2−ピロリドン溶媒(臭化リチウムを10mmol/L含有するN−メチル−2−ピロリドン溶媒)にて、サンプル濃度0.1wt%、流量0.2mL/min、温度40℃で測定し、標準ポリスチレン換算により数平均分子量、重量平均分子量を求めた。
(4)膜厚
ミツトヨ製グラナイトコンパレータスタンドBSG−20にセットしたミツトヨ製ID−C112型を用いて測定した。
(5)透過電子顕微鏡(TEM)による相分離構造の観察
染色剤として2wt%酢酸鉛水溶液中に試料片を浸漬させ、25℃下で24 時間放置した。染色処理された試料を取りだし、可視硬化樹脂で包埋し、可視光を30 秒照射し固定した。
ウルトラミクロトームを用いて室温下で薄片100nmを切削し、得られた薄片をCu グリッド上に回収しTEM 観察に供した。観察は加速電圧100kV で実施し、撮影は、写真倍率として×8,000、×20,000、×100,000 になるように撮影を実施した。機器としては、TEM H7100FA(日立製作所社製)を使用した。
(6)純度の測定方法
下記条件のガスクロマトグラフィー(GC)により定量分析した。
カラム:DB−5(J&W社製) L=30m Φ=0.53mm D=1.50μm
キャリヤー:ヘリウム(線速度=35.0cm/sec)
分析条件
Inj.temp. 300℃
Detct.temp. 320℃
Oven 50℃×1min
Rate 10℃/min
Final 300℃×15min
SP ratio 50:1
(7)耐熱水性
電解質膜の耐熱水性は95℃、熱水中での寸法変化率を測定することにより評価した。電解質膜を長さ約5cm、幅約1cmの短冊に切り取り、25℃の水中に24時間浸漬後、ノギスで長さ(L1)を測長した。該電解質膜を95℃の熱水中に8時間浸漬後、再度ノギスで長さ(L2)を測長し、その寸法変化の大きさを目視で観察した。
(8)核磁気共鳴スペクトル(NMR)
下記の測定条件で、1H−NMRの測定を行い、構造確認、およびイオン性基を含有するセグメント(A1)とイオン性基を含有しないセグメント(A2)のモル組成比の定量を行った。該モル組成比は、8.2ppm(ジスルホネート−4,4’−ジフルオロベンゾフェノン由来)と6.5〜8.0ppm(ジスルホネート−4,4’−ジフルオロベンゾフェノンを除く全芳香族プロトン由来)に認められるピークの積分値から算出した。
装置 :日本電子社製EX−270
共鳴周波数 :270MHz(1H−NMR)
測定温度 :室温
溶解溶媒 :DMSO−d6
内部基準物質:TMS(0ppm)
積算回数 :16回
また、下記の測定条件で、固体13C−CP/MASスペクトルの測定を行い、ケタール基の残存有無確認を行った。
装置 :Chemagnetics社製CMX−300Infinity
測定温度 :室温
内部基準物質:Siゴム(1.56ppm)
測定核 :75.188829MHz
パルス幅 :90°パルス、4.5μsec
パルス繰り返し時間:ACQTM=0.03413sec、PD=9sec
スペクトル幅:30.003kHz
試料回転 :7kHz
コンタクトタイム:4msec
(9)化学的安定性
電解質膜の化学的安定性は、約10mgのサンプルを80℃で、大過剰の0.05wt%の過酸化水素水に浸漬することにより評価した。浸漬前、100時間後の重量平均分子量を測定し、分子量保持率を計算した。
合成例1
下記一般式(G1)で表される2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,3−ジオキソラン(K−DHBP)の合成
攪拌器、温度計及び留出管を備えた500mlフラスコに、4,4′−ジヒドロキシベンゾフェノン49.5g、エチレングリコール134g、オルトギ酸トリメチル96.9g及びp−トルエンスルホン酸1水和物0.50gを仕込み溶解する。その後78〜82℃で2時間保温攪拌した。更に、内温を120℃まで徐々に昇温、ギ酸メチル、メタノール、オルトギ酸トリメチルの留出が完全に止まるまで加熱した。この反応液を室温まで冷却後、反応液を酢酸エチルで希釈し、有機層を5%炭酸カリウム水溶液100mlで洗浄し分液後、溶媒を留去した。残留物にジクロロメタン80mlを加え結晶を析出させ、濾過し、乾燥して2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,3−ジオキソラン52.0gを得た。この結晶をGC分析したところ99.8%の2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,3−ジオキソランと0.2%の4,4′−ジヒドロキシベンゾフェノンであった。
合成例2
下記一般式(G2)で表されるジソジウム 3,3’−ジスルホネート−4,4’−ジフルオロベンゾフェノンの合成
4,4’−ジフルオロベンゾフェノン109.1g(アルドリッチ試薬)を発煙硫酸(50%SO3)150mL(和光純薬試薬)中、100℃で10h反応させた。その後、多量の水中に少しずつ投入し、NaOHで中和した後、食塩200gを加え合成物を沈殿させた。得られた沈殿を濾別し、エタノール水溶液で再結晶し、上記一般式(G2)で示されるジソジウム 3,3’−ジスルホネート−4,4’−ジフルオロベンゾフェノンを得た。純度は99.3%であった。構造は1H−NMRで確認した。不純物はキャピラリー電気泳動(有機物)およびイオンクロマトグラフィー(無機物)で定量分析を行った。
実施例1
(下記一般式(G3)で表されるイオン性基を含有しないオリゴマーa1’の合成)
かき混ぜ機、窒素導入管、Dean−Starkトラップを備えた1000mL三口フラスコに、炭酸カリウム16.59g(アルドリッチ試薬、120mmol)、前記合成例1で得たK−DHBP25.8g(100mmol)および4,4’−ジフルオロベンゾフェノン20.3g(アルドリッチ試薬、93mmol)を入れ、窒素置換後、N−メチルピロリドン(NMP)300mL、トルエン100mL中で160℃で脱水後、昇温してトルエン除去、180℃で1時間重合を行った。多量のメタノールで再沈殿することで精製を行い、イオン性基を含有しないオリゴマーa1(末端ヒドロキシル基)を得た。数平均分子量は10000であった。
かき混ぜ機、窒素導入管、Dean−Starkトラップを備えた500mL三口フラスコに、炭酸カリウム1.1g(アルドリッチ試薬、8mmol)、イオン性基を含有しない前記オリゴマーa1(末端ヒドロキシル基)を20.0g(2mmol)を入れ、窒素置換後、N−メチルピロリドン(NMP)100mL、シクロヘキサン30mL中で100℃で脱水後、昇温してシクロヘキサン除去し、ビス(4−フルオロフェニルスルホン)3.0g(アルドリッチ試薬、12mmol)を入れ、105℃で1時間反応を行った。多量のイソプロピルアルコールで再沈殿することで精製を行い、下記式(G3)で示されるイオン性基を含有しないオリゴマーa1’(末端フルオロ基)を得た。数平均分子量は11000であり、イオン性基を含有しないオリゴマーa1’の数平均分子量は、リンカー部位(分子量470)を差し引いた値10530と求められた。
(下記一般式(G4)で表されるイオン性基を含有するオリゴマーa2の合成)
かき混ぜ機、窒素導入管、Dean−Starkトラップを備えた1000mL三口フラスコに、炭酸カリウム27.6g(アルドリッチ試薬、200mmol)、前記合成例1で得たK−DHBP12.9g(50mmol)および4,4’−ビフェノール9.3g(アルドリッチ試薬、50mmol)、前記合成例2で得たジソジウム 3,3’−ジスルホネート−4,4’−ジフルオロベンゾフェノン39.3g(93mmol)、および18−クラウン−6 、17.9g(和光純薬82mmol)を入れ、窒素置換後、N−メチルピロリドン(NMP)300mL、トルエン100mL中で170℃で脱水後、昇温してトルエン除去、180℃で1時間重合を行った。多量のイソプロピルアルコールで再沈殿することで精製を行い、下記式(G4)で示されるイオン性基を含有するオリゴマーa2(末端ヒドロキシル基)を得た。数平均分子量は16000であった。
(式(G4)において、Mは、NaまたはKを表す。)
(イオン性基を含有するセグメント(A1)としてオリゴマーa2、イオン性基を含有しないセグメント(A2)としてオリゴマーa1’、リンカー部位としてジフェニルスルホンを含有するブロック共重合体b1の合成)
かき混ぜ機、窒素導入管、Dean−Starkトラップを備えた500mL三口フラスコに、炭酸カリウム0.56g(アルドリッチ試薬、4mmol)、イオン性基を含有するオリゴマーa2(末端ヒドロキシル基)を16g(1mmol)入れ、窒素置換後、N−メチルピロリドン(NMP)100mL、シクロヘキサン30mL中で100℃で脱水後、昇温してシクロヘキサン除去し、イオン性基を含有しないオリゴマーa1’(末端フルオロ基)11g(1mmol)を入れ、105℃で24時間反応を行った。多量のイソプロピルアルコールで再沈殿することで精製を行い、ブロック共重合体b1を得た。重量平均分子量は28万、分子量分布は2.1であった。
ブロックポリマーb1は、イオン性基を含有するセグメント(A1)、イオン性基を含有しないセグメント(A2)として、前記一般式(S1)および(S2)で表される構成単位をそれぞれ50モル%、100モル%含有していた。分子量維持率は81%であり、化学的安定性に優れていた。
得られたブロックポリマーb1を溶解させた25重量%N−メチルピロリドン(NMP)溶液をガラス繊維フィルターを用いて加圧ろ過後、ガラス基板上に流延塗布し、100℃にて4h乾燥後、窒素下150℃で10分間熱処理し、ポリケタールケトン膜(膜厚25μm)を得た。ポリマーの溶解性は極めて良好であった。95℃で10重量%硫酸水溶液に24時間浸漬してプロトン置換、脱保護反応した後に、大過剰量の純水に24時間浸漬して充分洗浄し、高分子電解質膜を得た。
中和滴定から求めたイオン交換容量は1.8meq/g、1H−NMRから求めたモル組成比(A1/A2)は、56モル/44モル=1.27、ケタール基の残存は認められなかった。極めて強靱な電解質膜であり、目視では透明で均一な膜であった。プロトン伝導度は、80℃、相対湿度85%で250mS/cm、80℃、相対湿度25%で2mS/cmであり、低加湿プロトン伝導性に優れていた。また、寸法変化率は10%と小さく、耐熱水性にも優れていた。
さらに、TEM観察において、ドメインサイズ20nmの共連続様の相分離構造が確認できた。イオン性基を含有するドメイン、イオン性基を含有しないドメインともに連続相を形成していた。
実施例2
(下記一般式(G3)で表されるイオン性基を含有しないオリゴマーa3’の合成)
4,4’−ジフルオロベンゾフェノンの仕込量を20.7g(アルドリッチ試薬、95mmol)に変えた以外は実施例1に記載の方法で、イオン性基を含有しないオリゴマーa3(末端ヒドロキシル基)の合成を行った。数平均分子量は15000であった。
また、イオン性基を含有しない前記オリゴマーa1(末端ヒドロキシル基)に変えて、イオン性基を含有しない前記オリゴマーa3(末端ヒドロキシル基)30.0g(2mmol)を仕込む以外は、実施例1に記載の方法で、前記式(G3)で示されるイオン性基を含有しないオリゴマーa3’(末端フルオロ基)の合成を行った。数平均分子量は16000であり、イオン性基を含有しないオリゴマーa3’の数平均分子量は、リンカー部位(分子量470)を差し引いた値15530と求められた。
(下記一般式(G4)で表されるイオン性基を含有するオリゴマーa4の合成)
3,3’−ジスルホネート−4,4’−ジフルオロベンゾフェノンの仕込量を40.1g(95mmol)に変えた以外は、実施例1に記載の方法で、前記式(G4)で示されるイオン性基を含有するオリゴマーa4(末端ヒドロキシル基)を得た。数平均分子量は21000であった。
(イオン性基を含有するセグメント(A1)としてオリゴマーa4、イオン性基を含有しないセグメント(A2)としてオリゴマーa3’、リンカー部位としてジフェニルスルホンを含有するブロック共重合体b2の合成)
イオン性基を含有するオリゴマーa2(末端ヒドロキシル基)に変えて、イオン性基を含有するオリゴマーa4(末端ヒドロキシル基)を21g(1mmol)入れ、イオン性基を含有しないオリゴマーa1’(末端フルオロ基)に変えて、イオン性基を含有しないオリゴマーa3’(末端フルオロ基)16g(1mmol)を入れた以外は実施例1に記載の方法で、ブロック共重合体b2を得た。重量平均分子量は40万、分子量分布は2.2であった。
ブロックポリマーb2は、イオン性基を含有するセグメント(A1)、イオン性基を含有しないセグメント(A2)として、前記一般式(S1)および(S2)で表される構成単位をそれぞれ50モル%、100モル%含有していた。分子量維持率は83%であり、化学的安定性に優れていた。
得られたブロックポリマーb2を溶解させた25重量%N−メチルピロリドン(NMP)溶液を用いて、実施例1に記載の方法で、高分子電解質膜の製膜を行った。
中和滴定から求めたイオン交換容量は1.6meq/g、1H−NMRから求めたモル組成比(A1/A2)は、60モル/40モル=1.5、ケタール基の残存は認められなかった。極めて強靱な電解質膜であり、目視では透明で均一な膜であった。プロトン伝導度は、80℃、相対湿度85%で200mS/cm、80℃、相対湿度25%で0.8mS/cmであり、低加湿プロトン伝導性に優れていた。また、寸法変化率は6%と小さく、耐熱水性にも優れていた。
さらに、TEM観察において、ドメインサイズ35nmの共連続様の相分離構造が確認できた。イオン性基を含有するドメイン、イオン性基を含有しないドメインともに連続相を形成していた。
実施例3
(下記一般式(G3)で表されるイオン性基を含有しないオリゴマーa5’の合成)
4,4’−ジフルオロベンゾフェノンの仕込量を21.4g(アルドリッチ試薬、98mmol)に変えた以外は実施例1に記載の方法で、イオン性基を含有しないオリゴマーa5(末端ヒドロキシル基)の合成を行った。数平均分子量は20000であった。
また、イオン性基を含有しない前記オリゴマーa1(末端ヒドロキシル基)に変えて、イオン性基を含有しない前記オリゴマーa5(末端ヒドロキシル基)40.0g(2mmol)を仕込む以外は、実施例1に記載の方法で、前記式(G3)で示されるイオン性基を含有しないオリゴマーa5’(末端フルオロ基)の合成を行った。数平均分子量は21000であり、イオン性基を含有しないオリゴマーa5’の数平均分子量は、リンカー部位(分子量470)を差し引いた値20530と求められた。
(下記一般式(G4)で表されるイオン性基を含有するオリゴマーa6の合成)
3,3’−ジスルホネート−4,4’−ジフルオロベンゾフェノンの仕込量を41.4g(98mmol)、ビスフェノールをK−DHBP25.8g(100mmol)に変えた以外は、実施例1に記載の方法で、前記式(G4)で示されるイオン性基を含有するオリゴマーa6(末端ヒドロキシル基)を得た。数平均分子量は33000であった。
(イオン性基を含有するセグメント(A1)としてオリゴマーa6、イオン性基を含有しないセグメント(A2)としてオリゴマーa5’、リンカー部位としてジフェニルスルホンを含有するブロック共重合体b3の合成)
イオン性基を含有するオリゴマーa2(末端ヒドロキシル基)に変えて、イオン性基を含有するオリゴマーa6(末端ヒドロキシル基)を33g(1mmol)入れ、イオン性基を含有しないオリゴマーa1’(末端フルオロ基)に変えて、イオン性基を含有しないオリゴマーa5’(末端フルオロ基)21g(1mmol)を入れた以外は実施例1に記載の方法で、ブロック共重合体b3を得た。重量平均分子量は36万、分子量分布は2.1であった。
ブロックポリマーb3は、イオン性基を含有するセグメント(A1)、イオン性基を含有しないセグメント(A2)として、前記一般式(S1)および(S2)で表される構成単位をそれぞれ100モル%、100モル%含有していた。分子量維持率は95%であり、化学的安定性に極めて優れていた。電子吸引性基増量の効果と考えられた。
得られたブロックポリマーb3を溶解させた25重量%N−メチルピロリドン(NMP)溶液を用いて、実施例1に記載の方法で、高分子電解質膜の製膜を行った。
中和滴定から求めたイオン交換容量は2.0meq/g、1H−NMRから求めたモル組成比(A1/A2)は、50モル/50モル=1.0、ケタール基の残存は認められなかった。極めて強靱な電解質膜であり、目視では透明で均一な膜であった。プロトン伝導度は、80℃、相対湿度85%で290mS/cm、80℃、相対湿度25%で4mS/cmであり、低加湿プロトン伝導性に優れていた。また、寸法変化率は13%と比較的小さく、耐熱水性にも優れていた。
さらに、TEM観察において、ドメインサイズ50nmの共連続様の相分離構造が確認できた。イオン性基を含有するドメイン、イオン性基を含有しないドメインともに連続相を形成していた。
実施例4
(イオン性基を含有するセグメント(A1)としてオリゴマーa4、イオン性基を含有しないセグメント(A2)としてオリゴマーa1、リンカー部位としてジフェニルスルホンを含有するブロック共重合体b4の合成)
イオン性基を含有するオリゴマーa2(末端ヒドロキシル基)に変えて、イオン性基を含有するオリゴマーa4(末端ヒドロキシル基)を21g(1mmol)を入れた以外は実施例1に記載の方法で、ブロック共重合体b4を得た。重量平均分子量は32万、分子量分布は2.2であった。
ブロックポリマーb4は、イオン性基を含有するセグメント(A1)、イオン性基を含有しないセグメント(A2)として、前記一般式(S1)および(S2)で表される構成単位をそれぞれ50モル%、100モル%含有していた。分子量維持率は85%であり、化学的安定性に優れていた。
得られたブロックポリマーb4を溶解させた25重量%N−メチルピロリドン(NMP)溶液を用いて、実施例1に記載の方法で、高分子電解質膜の製膜を行った。
中和滴定から求めたイオン交換容量は2.2meq/g、1H−NMRから求めたモル組成比(A1/A2)は、40モル/60モル=0.67、ケタール基の残存は認められなかった。極めて強靱な電解質膜であり、目視では透明で均一な膜であった。プロトン伝導度は、80℃、相対湿度85%で350mS/cm、80℃、相対湿度25%で2mS/cmであり、低加湿プロトン伝導性に優れていた。また、寸法変化率は15%と比較的小さく、耐熱水性にも優れていた。
さらに、TEM観察において、ドメインサイズ30nmのラメラ状の相分離構造が確認できた。イオン性基を含有するドメイン、イオン性基を含有しないドメインともに連続相を形成していた。
実施例5
(下記一般式(G5)で表されるイオン性基を含有しないオリゴマーa7’の合成)
かき混ぜ機、窒素導入管、Dean−Starkトラップを備えた500mL三口フラスコに、炭酸カリウム1.1g(アルドリッチ試薬、8mmol)、イオン性基を含有しない前記オリゴマーa1(末端ヒドロキシル基)を20.0g(2mmol)を入れ、窒素置換後、N−メチルピロリドン(NMP)100mL、シクロヘキサン30mL中で100℃で脱水後、昇温してシクロヘキサン除去し、ビス(4−フルオロ−3−ニトロフェニルスルホン)4.1g(アルドリッチ試薬、12mmol)を入れ、105℃で1時間反応を行った。多量のイソプロピルアルコールで再沈殿することで精製を行い、下記式(G5)で示されるイオン性基を含有しないオリゴマーa7’(末端フルオロ基)を得た。数平均分子量は10800であり、イオン性基を含有しないオリゴマーa7’の数平均分子量は、リンカー部位(分子量651)を差し引いた値10149と求められた。
(イオン性基を含有するセグメント(A1)としてオリゴマーa2、イオン性基を含有しないセグメント(A2)としてオリゴマーa7’、リンカー部位としてニトロジフェニルスルホンを含有するブロック共重合体b5の合成)
イオン性基を含有しないオリゴマーa1’(末端フルオロ基)に変えて、イオン性基を含有しないオリゴマーa7’(末端フルオロ基)10g(1mmol)を入れた以外は実施例1に記載の方法で、ブロック共重合体b5を得た。重量平均分子量は40万、分子量分布は2.2であった。
ブロックポリマーb5は、イオン性基を含有するセグメント(A1)、イオン性基を含有しないセグメント(A2)として、前記一般式(S1)および(S2)で表される構成単位をそれぞれ100モル%、100モル%含有していた。分子量維持率は95%であり、化学的安定性に極めて優れていた。電子吸引性基増量の効果と考えられた。
得られたブロックポリマーb5を溶解させた25重量%N−メチルピロリドン(NMP)溶液を用いて、実施例1に記載の方法で、高分子電解質膜の製膜を行った。
中和滴定から求めたイオン交換容量は1.8meq/g、1H−NMRから求めたモル組成比(A1/A2)は、56モル/44モル=1.27、ケタール基の残存は認められなかった。極めて強靱な電解質膜であり、目視では透明で均一な膜であった。プロトン伝導度は、80℃、相対湿度85%で250mS/cm、80℃、相対湿度25%で2mS/cmであり、低加湿プロトン伝導性に優れていた。また、寸法変化率は10%と小さく、耐熱水性にも優れていた。
さらに、TEM観察において、ドメインサイズ50nmの共連続様の相分離構造が確認できた。イオン性基を含有するドメイン、イオン性基を含有しないドメインともに連続相を形成していた。
実施例6
(下記一般式(G6)で表されるイオン性基を含有しないオリゴマーa8’の合成)
かき混ぜ機、窒素導入管、Dean−Starkトラップを備えた500mL三口フラスコに、炭酸カリウム1.1g(アルドリッチ試薬、8mmol)、イオン性基を含有しない前記オリゴマーa1(末端ヒドロキシル基)を20.0g(2mmol)を入れ、窒素置換後、N−メチルピロリドン(NMP)100mL、シクロヘキサン30mL中で100℃で脱水後、昇温してシクロヘキサン除去し、ビス(4−クロロ−3−ニトロフェニルスルホン)4.1g(アルドリッチ試薬、12mmol)を入れ、105℃で1時間反応を行った。多量のイソプロピルアルコールで再沈殿することで精製を行い、下記式(G6)で示されるイオン性基を含有しないオリゴマーa8’(末端クロロ基)を得た。数平均分子量は10600であり、イオン性基を含有しないオリゴマーa8’の数平均分子量は、リンカー部位(分子量651)を差し引いた値9949と求められた。
(イオン性基を含有するセグメント(A1)としてオリゴマーa2、イオン性基を含有しないセグメント(A2)としてオリゴマーa8’、リンカー部位としてニトロジフェニルスルホンを含有するブロック共重合体b6の合成)
イオン性基を含有しないオリゴマーa1’(末端フルオロ基)に変えて、イオン性基を含有しないオリゴマーa8’(末端クロロ基)10g(1mmol)を入れた以外は実施例1に記載の方法で、ブロック共重合体b6を得た。重量平均分子量は20万、分子量分布は2.2であった。
ブロックポリマーb6は、イオン性基を含有するセグメント(A1)、イオン性基を含有しないセグメント(A2)として、前記一般式(S1)および(S2)で表される構成単位をそれぞれ100モル%、100モル%含有していた。分子量維持率は95%であり、化学的安定性に極めて優れていた。電子吸引性基増量の効果と考えられた。
得られたブロックポリマーb6を溶解させた25重量%N−メチルピロリドン(NMP)溶液を用いて、実施例1に記載の方法で、高分子電解質膜の製膜を行った。
中和滴定から求めたイオン交換容量は1.8meq/g、1H−NMRから求めたモル組成比(A1/A2)は、56モル/44モル=1.27、ケタール基の残存は認められなかった。極めて強靱な電解質膜であり、目視では透明で均一な膜であった。プロトン伝導度は、80℃、相対湿度85%で250mS/cm、80℃、相対湿度25%で2mS/cmであり、低加湿プロトン伝導性に優れていた。また、寸法変化率は10%と小さく、耐熱水性にも優れていた。
さらに、TEM観察において、ドメインサイズ50nmの共連続様の相分離構造が確認できた。イオン性基を含有するドメイン、イオン性基を含有しないドメインともに連続相を形成していた。
実施例7
(下記一般式(G7)で表されるイオン性基を含有しないオリゴマーa9’の合成)
かき混ぜ機、窒素導入管、Dean−Starkトラップを備えた500mL三口フラスコに、炭酸カリウム1.1g(アルドリッチ試薬、8mmol)、イオン性基を含有しない前記オリゴマーa1(末端ヒドロキシル基)を20.0g(2mmol)を入れ、窒素置換後、N−メチルピロリドン(NMP)100mL、シクロヘキサン30mL中で100℃で脱水後、昇温してシクロヘキサン除去し、2,6−ジフルオロベンゾニトリル1.7g(アルドリッチ試薬、12mmol)を入れ、105℃で1時間反応を行った。多量のイソプロピルアルコールで再沈殿することで精製を行い、下記式(G7)で示されるイオン性基を含有しないオリゴマーa9’(末端フルオロ基)を得た。数平均分子量は10200であり、イオン性基を含有しないオリゴマーa9’の数平均分子量は、リンカー部位(分子量101)を差し引いた値10100と求められた。
(イオン性基を含有するセグメント(A1)としてオリゴマーa2、イオン性基を含有しないセグメント(A2)としてオリゴマーa9’、リンカー部位としてベンゾニトリルを含有するブロック共重合体b7の合成)
イオン性基を含有しないオリゴマーa1’(末端フルオロ基)に変えて、イオン性基を含有しないオリゴマーa9’(末端フルオロ基)10g(1mmol)を入れた以外は実施例1に記載の方法で、ブロック共重合体b7を得た。重量平均分子量は36万、分子量分布は2.1であった。
ブロックポリマーb7は、イオン性基を含有するセグメント(A1)、イオン性基を含有しないセグメント(A2)として、前記一般式(S1)および(S2)で表される構成単位をそれぞれ100モル%、100モル%含有していた。分子量維持率は95%であり、化学的安定性に極めて優れていた。電子吸引性基増量の効果と考えられた。
得られたブロックポリマーb7を溶解させた25重量%N−メチルピロリドン(NMP)溶液を用いて、実施例1に記載の方法で、高分子電解質膜の製膜を行った。
中和滴定から求めたイオン交換容量は1.8meq/g、1H−NMRから求めたモル組成比(A1/A2)は、56モル/44モル=1.27、ケタール基の残存は認められなかった。極めて強靱な電解質膜であり、目視では透明で均一な膜であった。プロトン伝導度は、80℃、相対湿度85%で250mS/cm、80℃、相対湿度25%で2mS/cmであり、低加湿プロトン伝導性に優れていた。また、寸法変化率は10%と小さく、耐熱水性にも優れていた。
さらに、TEM観察において、ドメインサイズ50nmの共連続様の相分離構造が確認できた。イオン性基を含有するドメイン、イオン性基を含有しないドメインともに連続相を形成していた。
実施例8
(下記一般式(G8)で表されるイオン性基を含有しないオリゴマーa10’の合成)
かき混ぜ機、窒素導入管、Dean−Starkトラップを備えた500mL三口フラスコに、炭酸カリウム1.1g(アルドリッチ試薬、8mmol)、イオン性基を含有しない前記オリゴマーa1(末端ヒドロキシル基)を20.0g(2mmol)を入れ、窒素置換後、N−メチルピロリドン(NMP)100mL、シクロヘキサン30mL中で100℃で脱水後、昇温してシクロヘキサン除去し、2,4−ジフルオロベンゾニトリル1.7g(12mmol)を入れ、105℃で1時間反応を行った。多量のイソプロピルアルコールで再沈殿することで精製を行い、下記式(G8)で示されるイオン性基を含有しないオリゴマーa10’(末端フルオロ基)を得た。数平均分子量は10200であり、イオン性基を含有しないオリゴマーa10’の数平均分子量は、リンカー部位(分子量101)を差し引いた値10100と求められた。
(イオン性基を含有するセグメント(A1)としてオリゴマーa2、イオン性基を含有しないセグメント(A2)としてオリゴマーa10’、リンカー部位としてベンゾニトリルを含有するブロック共重合体b8の合成)
イオン性基を含有しないオリゴマーa1’(末端フルオロ基)に変えて、イオン性基を含有しないオリゴマーa10’(末端フルオロ基)10g(1mmol)を入れた以外は実施例1に記載の方法で、ブロック共重合体b8を得た。重量平均分子量は36万、分子量分布は2.3であった。
ブロックポリマーb8は、イオン性基を含有するセグメント(A1)、イオン性基を含有しないセグメント(A2)として、前記一般式(S1)および(S2)で表される構成単位をそれぞれ100モル%、100モル%含有していた。分子量維持率は95%であり、化学的安定性に極めて優れていた。電子吸引性基増量の効果と考えられた。
得られたブロックポリマーb8を溶解させた25重量%N−メチルピロリドン(NMP)溶液を用いて、実施例1に記載の方法で、高分子電解質膜の製膜を行った。
中和滴定から求めたイオン交換容量は1.8meq/g、1H−NMRから求めたモル組成比(A1/A2)は、56モル/44モル=1.27、ケタール基の残存は認められなかった。極めて強靱な電解質膜であり、目視では透明で均一な膜であった。プロトン伝導度は、80℃、相対湿度85%で250mS/cm、80℃、相対湿度25%で2mS/cmであり、低加湿プロトン伝導性に優れていた。また、寸法変化率は10%と小さく、耐熱水性にも優れていた。
さらに、TEM観察において、ドメインサイズ50nmの共連続様の相分離構造が確認できた。イオン性基を含有するドメイン、イオン性基を含有しないドメインともに連続相を形成していた。
実施例9
(下記一般式(G9)で表されるイオン性基を含有しないオリゴマーa11’の合成)
かき混ぜ機、窒素導入管、Dean−Starkトラップを備えた500mL三口フラスコに、炭酸カリウム1.1g(アルドリッチ試薬、8mmol)、イオン性基を含有しない前記オリゴマーa1(末端ヒドロキシル基)を20.0g(2mmol)を入れ、窒素置換後、N−メチルピロリドン(NMP)100mL、シクロヘキサン30mL中で100℃で脱水後、昇温してシクロヘキサン除去し、2,5−ジフルオロ−1,4−ベンゾジニトリル2.0g(12mmol)を入れ、105℃で1時間反応を行った。多量のイソプロピルアルコールで再沈殿することで精製を行い、下記式(G9)で示されるイオン性基を含有しないオリゴマーa11’(末端フルオロ基)を得た。数平均分子量は10300であり、イオン性基を含有しないオリゴマーa11’の数平均分子量は、リンカー部位(分子量290)を差し引いた値10010と求められた。
(イオン性基を含有するセグメント(A1)としてオリゴマーa2、イオン性基を含有しないセグメント(A2)としてオリゴマーa11’、リンカー部位としてベンゾジニトリルを含有するブロック共重合体b9の合成)
イオン性基を含有しないオリゴマーa1’(末端フルオロ基)に変えて、イオン性基を含有しないオリゴマーa11’(末端フルオロ基)10g(1mmol)を入れた以外は実施例1に記載の方法で、ブロック共重合体b9を得た。重量平均分子量は20万、分子量分布は2.3であった。
ブロックポリマーb9は、イオン性基を含有するセグメント(A1)、イオン性基を含有しないセグメント(A2)として、前記一般式(S1)および(S2)で表される構成単位をそれぞれ100モル%、100モル%含有していた。分子量維持率は95%であり、化学的安定性に極めて優れていた。電子吸引性基増量の効果と考えられた。
得られたブロックポリマーb9を溶解させた25重量%N−メチルピロリドン(NMP)溶液を用いて、実施例1に記載の方法で、高分子電解質膜の製膜を行った。
中和滴定から求めたイオン交換容量は1.8meq/g、1H−NMRから求めたモル組成比(A1/A2)は、56モル/44モル=1.27、ケタール基の残存は認められなかった。極めて強靱な電解質膜であり、目視では透明で均一な膜であった。プロトン伝導度は、80℃、相対湿度85%で250mS/cm、80℃、相対湿度25%で2mS/cmであり、低加湿プロトン伝導性に優れていた。また、寸法変化率は10%と小さく、耐熱水性にも優れていた。
さらに、TEM観察において、ドメインサイズ50nmの共連続様の相分離構造が確認できた。イオン性基を含有するドメイン、イオン性基を含有しないドメインともに連続相を形成していた。
実施例10
(下記一般式(G10)で表されるイオン性基を含有しないオリゴマーa12’の合成)
かき混ぜ機、窒素導入管、Dean−Starkトラップを備えた500mL三口フラスコに、炭酸カリウム1.1g(アルドリッチ試薬、8mmol)、イオン性基を含有しない前記オリゴマーa1(末端ヒドロキシル基)を20.0g(2mmol)を入れ、窒素置換後、N−メチルピロリドン(NMP)100mL、シクロヘキサン30mL中で100℃で脱水後、昇温してシクロヘキサン除去し、4,4‘ジフルオロ−3,3’ジニトロベンゾフェノン3.7g(アルドリッチ試薬、12mmol)を入れ、105℃で1時間反応を行った。多量のイソプロピルアルコールで再沈殿することで精製を行い、下記式(G10)で示されるイオン性基を含有しないオリゴマーa12’(末端フルオロ基)を得た。数平均分子量は10500であり、イオン性基を含有しないオリゴマーa12’の数平均分子量は、リンカー部位(分子量270)を差し引いた値10230と求められた。
(イオン性基を含有するセグメント(A1)としてオリゴマーa2、イオン性基を含有しないセグメント(A2)としてオリゴマーa12’、リンカー部位としてジニトロベンゾフェノンを含有するブロック共重合体b10の合成)
イオン性基を含有しないオリゴマーa1’(末端フルオロ基)に変えて、イオン性基を含有しないオリゴマーa12’(末端フルオロ基)10g(1mmol)を入れた以外は実施例1に記載の方法で、ブロック共重合体b10を得た。重量平均分子量は20万、分子量分布は2.3であった。
ブロックポリマーb10は、イオン性基を含有するセグメント(A1)、イオン性基を含有しないセグメント(A2)として、前記一般式(S1)および(S2)で表される構成単位をそれぞれ100モル%、100モル%含有していた。分子量維持率は95%であり、化学的安定性に極めて優れていた。電子吸引性基増量の効果と考えられた。
得られたブロックポリマーb10を溶解させた25重量%N−メチルピロリドン(NMP)溶液を用いて、実施例1に記載の方法で、高分子電解質膜の製膜を行った。
中和滴定から求めたイオン交換容量は1.8meq/g、1H−NMRから求めたモル組成比(A1/A2)は、56モル/44モル=1.27、ケタール基の残存は認められなかった。極めて強靱な電解質膜であり、目視では透明で均一な膜であった。プロトン伝導度は、80℃、相対湿度85%で250mS/cm、80℃、相対湿度25%で2mS/cmであり、低加湿プロトン伝導性に優れていた。また、寸法変化率は10%と小さく、耐熱水性にも優れていた。
さらに、TEM観察において、ドメインサイズ50nmの共連続様の相分離構造が確認できた。イオン性基を含有するドメイン、イオン性基を含有しないドメインともに連続相を形成していた。
実施例11
(下記一般式(G11)で表されるイオン性基を含有しないオリゴマーa13’の合成)
かき混ぜ機、窒素導入管、Dean−Starkトラップを備えた500mL三口フラスコに、炭酸カリウム1.1g(アルドリッチ試薬、8mmol)、イオン性基を含有しない前記オリゴマーa1(末端ヒドロキシル基)を20.0g(2mmol)を入れ、窒素置換後、N−メチルピロリドン(NMP)100mL、シクロヘキサン30mL中で100℃で脱水後、昇温してシクロヘキサン除去し、4,4‘ジクロロロ−3,3’ジニトロベンゾフェノン4.1g(アルドリッチ試薬、12mmol)を入れ、105℃で1時間反応を行った。多量のイソプロピルアルコールで再沈殿することで精製を行い、下記式(G11)で示されるイオン性基を含有しないオリゴマーa13’(末端クロロ基)を得た。数平均分子量は10610であり、イオン性基を含有しないオリゴマーa13’の数平均分子量は、リンカー部位(分子量270)を差し引いた値10340と求められた。
(イオン性基を含有するセグメント(A1)としてオリゴマーa2、イオン性基を含有しないセグメント(A2)としてオリゴマーa13’、リンカー部位としてジニトロベンゾフェノンを含有するブロック共重合体b11の合成)
イオン性基を含有しないオリゴマーa1’(末端フルオロ基)に変えて、イオン性基を含有しないオリゴマーa13’(末端クロロ基)10g(1mmol)を入れた以外は実施例1に記載の方法で、ブロック共重合体b10を得た。重量平均分子量は20万、分子量分布は2.3であった。
ブロックポリマーb11は、イオン性基を含有するセグメント(A1)、イオン性基を含有しないセグメント(A2)として、前記一般式(S1)および(S2)で表される構成単位をそれぞれ100モル%、100モル%含有していた。分子量維持率は95%であり、化学的安定性に極めて優れていた。電子吸引性基増量の効果と考えられた。
得られたブロックポリマーb11を溶解させた25重量%N−メチルピロリドン(NMP)溶液を用いて、実施例1に記載の方法で、高分子電解質膜の製膜を行った。
中和滴定から求めたイオン交換容量は1.8meq/g、1H−NMRから求めたモル組成比(A1/A2)は、56モル/44モル=1.27、ケタール基の残存は認められなかった。極めて強靱な電解質膜であり、目視では透明で均一な膜であった。プロトン伝導度は、80℃、相対湿度85%で250mS/cm、80℃、相対湿度25%で2mS/cmであり、低加湿プロトン伝導性に優れていた。また、寸法変化率は10%と小さく、耐熱水性にも優れていた。
さらに、TEM観察において、ドメインサイズ50nmの共連続様の相分離構造が確認できた。イオン性基を含有するドメイン、イオン性基を含有しないドメインともに連続相を形成していた。
実施例12
(下記一般式(G12)で表されるイオン性基を含有しないオリゴマーa14’の合成)
かき混ぜ機、窒素導入管、Dean−Starkトラップを備えた500mL三口フラスコに、炭酸カリウム1.1g(アルドリッチ試薬、8mmol)、イオン性基を含有しない前記オリゴマーa1(末端ヒドロキシル基)を20.0g(2mmol)を入れ、窒素置換後、N−メチルピロリドン(NMP)100mL、シクロヘキサン30mL中で100℃で脱水後、昇温してシクロヘキサン除去し、2,4−ジクロロ−6−メトキシ−1,3,5−トリアジン2.2g(アルドリッチ試薬、12mmol)を入れ、105℃で1時間反応を行った。多量のイソプロピルアルコールで再沈殿することで精製を行い、下記式(G12)で示されるイオン性基を含有しないオリゴマーa14’(末端クロロ基)を得た。数平均分子量は10119であり、イオン性基を含有しないオリゴマーa14’の数平均分子量は、リンカー部位(分子量109)を差し引いた値10010と求められた。
(イオン性基を含有するセグメント(A1)としてオリゴマーa2、イオン性基を含有しないセグメント(A2)としてオリゴマーa14’、リンカー部位としてメトキシトリアジンを含有するブロック共重合体b12の合成)
イオン性基を含有しないオリゴマーa1’(末端フルオロ基)に変えて、イオン性基を含有しないオリゴマーa12’(末端クロロ基)10g(1mmol)を入れた以外は実施例1に記載の方法で、ブロック共重合体b12を得た。重量平均分子量は20万、分子量分布は2.3であった。
ブロックポリマーb12は、イオン性基を含有するセグメント(A1)、イオン性基を含有しないセグメント(A2)として、前記一般式(S1)および(S2)で表される構成単位をそれぞれ100モル%、100モル%含有していた。分子量維持率は95%であり、化学的安定性に極めて優れていた。電子吸引性基増量の効果と考えられた。
得られたブロックポリマーb12を溶解させた25重量%N−メチルピロリドン(NMP)溶液を用いて、実施例1に記載の方法で、高分子電解質膜の製膜を行った。
中和滴定から求めたイオン交換容量は1.8meq/g、1H−NMRから求めたモル組成比(A1/A2)は、56モル/44モル=1.27、ケタール基の残存は認められなかった。極めて強靱な電解質膜であり、目視では透明で均一な膜であった。プロトン伝導度は、80℃、相対湿度85%で250mS/cm、80℃、相対湿度25%で2mS/cmであり、低加湿プロトン伝導性に優れていた。また、寸法変化率は10%と小さく、耐熱水性にも優れていた。
さらに、TEM観察において、ドメインサイズ50nmの共連続様の相分離構造が確認できた。イオン性基を含有するドメイン、イオン性基を含有しないドメインともに連続相を形成していた。
実施例13
(下記一般式(G13)で表されるイオン性基を含有するオリゴマーa15’の合成)
かき混ぜ機、窒素導入管、Dean−Starkトラップを備えた500mL三口フラスコに、炭酸カリウム1.1g(アルドリッチ試薬、8mmol)、イオン性基を含有する前記オリゴマーa2(末端ヒドロキシル基)を32.0g(2mmol)を入れ、窒素置換後、N−メチルピロリドン(NMP)100mL、シクロヘキサン30mL中で100℃で脱水後、昇温してシクロヘキサン除去し、ビス(4−フルオロフェニルスルホン)3.0g(アルドリッチ試薬、12mmol)を入れ、105℃で1時間反応を行った。多量のイソプロピルアルコールで再沈殿することで精製を行い、下記式(G13)で示されるイオン性基を含有するオリゴマーa15’(末端フルオロ基)を得た。数平均分子量は15900であり、イオン性基を含有するオリゴマーa15’の数平均分子量は、リンカー部位(分子量470)を差し引いた値15430と求められた。
(式(G13)において、Mは、NaまたはKを表す。)
(イオン性基を含有するセグメント(A1)としてオリゴマーa15’、イオン性基を含有しないセグメント(A2)としてオリゴマーa1、リンカー部位としてジフェニルスルホンを含有するブロック共重合体b13の合成)
かき混ぜ機、窒素導入管、Dean−Starkトラップを備えた500mL三口フラスコに、炭酸カリウム0.56g(アルドリッチ試薬、4mmol)、イオン性基を含有しないオリゴマーa1(末端ヒドロキシル基)を10g(1mmol)入れ、窒素置換後、N−メチルピロリドン(NMP)100mL、シクロヘキサン30mL中で100℃で脱水後、昇温してシクロヘキサン除去し、イオン性基を含有するオリゴマーa15’(末端フルオロ基)15g(1mmol)を入れ、105℃で24時間反応を行った。多量のイソプロピルアルコールで再沈殿することで精製を行い、ブロック共重合体b11を得た。重量平均分子量は25万、分子量分布は2.1であった。
ブロックポリマーb13は、イオン性基を含有するセグメント(A1)、イオン性基を含有しないセグメント(A2)として、前記一般式(S1)および(S2)で表される構成単位をそれぞれ50モル%、100モル%含有していた。分子量維持率は81%であり、化学的安定性に優れていた。
得られたブロックポリマーb13を溶解させた25重量%N−メチルピロリドン(NMP)溶液をガラス繊維フィルターを用いて加圧ろ過後、ガラス基板上に流延塗布し、100℃にて4h乾燥後、窒素下150℃で10分間熱処理し、ポリケタールケトン膜(膜厚25μm)を得た。ポリマーの溶解性は極めて良好であった。95℃で10重量%硫酸水溶液に24時間浸漬してプロトン置換、脱保護反応した後に、大過剰量の純水に24時間浸漬して充分洗浄し、高分子電解質膜を得た。
中和滴定から求めたイオン交換容量は1.8meq/g、1H−NMRから求めたモル組成比(A1/A2)は、56モル/44モル=1.27、ケタール基の残存は認められなかった。極めて強靱な電解質膜であり、目視では透明で均一な膜であった。プロトン伝導度は、80℃、相対湿度85%で250mS/cm、80℃、相対湿度25%で2mS/cmであり、低加湿プロトン伝導性に優れていた。また、寸法変化率は10%と小さく、耐熱水性にも優れていた。
さらに、TEM観察において、ドメインサイズ20nmの共連続様の相分離構造が確認できた。イオン性基を含有するドメイン、イオン性基を含有しないドメインともに連続相を形成していた。
実施例14
(下記一般式(G14)で表されるイオン性基を含有しないオリゴマーa16’の合成)
かき混ぜ機、窒素導入管、Dean−Starkトラップを備えた1000mL三口フラスコに、塩化メチレン(30ml)、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン(16.9g:63mmol)、トリエチルアミン(17.3ml:124.9mmol)を混合し、20℃で攪拌した。この溶液に氷浴下で濃度0.581mol/lであるトリホスゲンの塩化メチレン溶液(9ml)を10分かけて滴下し、滴下終了後20℃で60分間攪拌した。この溶液に氷冷下ノルボルニルホスホン酸ジクロライド(1ml:6.3mmol)の塩化メチレン2ml溶液を5分間かけて滴下し20℃で3時間攪拌し、この溶液にフェニルホスホン酸ジクロライド(2.2ml:15.8mmol)の塩化メチレン4ml溶液を10分間かけて滴下し20℃で1時間攪拌し、続いてこの溶液に氷浴下で濃度0.581mol/lであるトリホスゲンの塩化メチレン溶液(12.7ml)を20分かけて滴下し、滴下終了後20℃で60分間攪拌し、イオン性基を含有しないオリゴマーa16(末端ヒドロキシル基)を得た。数平均分子量は6000であった。
かき混ぜ機、窒素導入管、Dean−Starkトラップを備えた500mL三口フラスコに、炭酸カリウム1.1g(アルドリッチ試薬、8mmol)、イオン性基を含有しない前記オリゴマーa16(末端ヒドロキシル基)を12.0g(2mmol)を入れ、窒素置換後、NMP100mL、シクロヘキサン30mL中で100℃で脱水後、昇温してシクロヘキサン除去し、ビス(4−フルオロフェニルスルホン)3.0g(アルドリッチ試薬、12mmol)を入れ、105℃で1時間反応を行った。多量のイソプロピルアルコールで再沈殿することで精製を行い、下記式(G14)で示されるイオン性基を含有しないオリゴマーa16’(末端フルオロ基)を得た。数平均分子量は7000であり、イオン性基を含有しないオリゴマーa16’の数平均分子量は、リンカー部位(分子量470)を差し引いた値6530と求められた。
(イオン性基を含有するセグメント(A1)としてオリゴマーa2、イオン性基を含有しないセグメント(A2)としてオリゴマーa16’、リンカー部位としてジフェニルスルホンを含有するブロック共重合体b14の合成)
イオン性基を含有するオリゴマーa2(末端ヒドロキシル基)を16g(1mmol)、イオン性基を含有しないオリゴマーa1’(末端フルオロ基)に変えて、イオン性基を含有しないオリゴマーa16’(末端フルオロ基)6g(1mmol)を入れた以外は実施例1に記載の方法で、ブロック共重合体b14を得た。重量平均分子量は50万、分子量分布は2.5であった。
ブロックポリマーb14は、イオン性基を含有するセグメント(A1)、イオン性基を含有しないセグメント(A2)として、前記一般式(S1)および(S2)で表される構成単位をそれぞれ100モル%、100モル%含有していた。分子量維持率は92%であり、化学的安定性に極めて優れていた。電子吸引性基増量の効果と考えられた。
得られたブロックポリマーb14を溶解させた25重量%N−メチルピロリドン(NMP)溶液を用いて、実施例1に記載の方法で、高分子電解質膜の製膜を行った。
中和滴定から求めたイオン交換容量は1.7meq/g、1H−NMRから求めたモル組成比(A1/A2)は、56モル/32モル=1.75、ケタール基の残存は認められなかった。極めて強靱な電解質膜であり、目視では透明で均一な膜であった。プロトン伝導度は、80℃、相対湿度85%で240mS/cm、80℃、相対湿度25%で2mS/cmであり、低加湿プロトン伝導性に優れていた。また、寸法変化率は13%と小さく、耐熱水性にも優れていた。
さらに、TEM観察において、ドメインサイズ50nmの共連続様の相分離構造が確認できた。イオン性基を含有するドメイン、イオン性基を含有しないドメインともに連続相を形成していた。
実施例15
(下記一般式(G15)で表されるイオン性基を含有しないオリゴマーa17’の合成)
かき混ぜ機、窒素導入管、Dean−Starkトラップを備えた1000mL三口フラスコに、塩化メチレン(30ml)、イソプロピリデンビスフェノール(14.4g:63mmol)、トリエチルアミン(17.3ml:124.9mmol)を混合し、20℃で攪拌した。この溶液に氷浴下で濃度0.581mol/lであるトリホスゲンの塩化メチレン溶液(9ml)を10分かけて滴下し、滴下終了後20℃で60分間攪拌した。
この溶液に氷冷下ノルボルニルホスホン酸ジクロライド(1ml:6.3mmol)の塩化メチレン2ml溶液を5分間かけて滴下し20℃で3時間攪拌し、この溶液にフェニルホスホン酸ジクロライド(2.2ml:15.8mmol)の塩化メチレン4ml溶液を10分間かけて滴下し20℃で1時間攪拌し、続いてこの溶液に氷浴下で濃度0.581mol/lであるトリホスゲンの塩化メチレン溶液(12.7ml)を20分かけて滴下し、滴下終了後20℃で60分間攪拌し、イオン性基を含有しないオリゴマーa17(末端ヒドロキシル基)を得た。数平均分子量は6000であった。
かき混ぜ機、窒素導入管、Dean−Starkトラップを備えた500mL三口フラスコに、炭酸カリウム1.1g(アルドリッチ試薬、8mmol)、イオン性基を含有しない前記オリゴマーa17(末端ヒドロキシル基)を12.0g(2mmol)を入れ、窒素置換後、NMP100mL、シクロヘキサン30mL中で100℃で脱水後、昇温してシクロヘキサン除去し、ビス(4−フルオロフェニルスルホン)3.0g(アルドリッチ試薬、12mmol)を入れ、105℃で1時間反応を行った。多量のイソプロピルアルコールで再沈殿することで精製を行い、下記式(G15)で示されるイオン性基を含有しないオリゴマーa17’(末端フルオロ基)を得た。数平均分子量は7000であり、イオン性基を含有しないオリゴマーa17’の数平均分子量は、リンカー部位(分子量470)を差し引いた値6530と求められた。
(イオン性基を含有するセグメント(A1)としてオリゴマーa2、イオン性基を含有しないセグメント(A2)としてオリゴマーa17’、リンカー部位としてジフェニルスルホンを含有するブロック共重合体b15の合成)
イオン性基を含有するオリゴマーa2(末端ヒドロキシル基)を16g(1mmol)、イオン性基を含有しないオリゴマーa1’(末端フルオロ基)に変えて、イオン性基を含有しないオリゴマーa17’(末端フルオロ基)6g(1mmol)を入れた以外は実施例1に記載の方法で、ブロック共重合体b15を得た。重量平均分子量は50万、分子量分布は2.5であった。
ブロックポリマーb15は、イオン性基を含有するセグメント(A1)、イオン性基を含有しないセグメント(A2)として、前記一般式(S1)および(S2)で表される構成単位をそれぞれ100モル%、100モル%含有していた。分子量維持率は91%であり、化学的安定性に極めて優れていた。電子吸引性基増量の効果と考えられた。
得られたブロックポリマーb15を溶解させた25重量%N−メチルピロリドン(NMP)溶液を用いて、実施例1に記載の方法で、高分子電解質膜の製膜を行った。
中和滴定から求めたイオン交換容量は1.7meq/g、1H−NMRから求めたモル組成比(A1/A2)は、56モル/32モル=1.75、ケタール基の残存は認められなかった。極めて強靱な電解質膜であり、目視では透明で均一な膜であった。プロトン伝導度は、80℃、相対湿度85%で230mS/cm、80℃、相対湿度25%で2mS/cmであり、低加湿プロトン伝導性に優れていた。また、寸法変化率は15%と小さく、耐熱水性にも優れていた。
さらに、TEM観察において、ドメインサイズ50nmの共連続様の相分離構造が確認できた。イオン性基を含有するドメイン、イオン性基を含有しないドメインともに連続相を形成していた。
実施例16
(下記一般式(G16)で表されるイオン性基を含有しないオリゴマーa18’の合成)
かき混ぜ機、窒素導入管、Dean−Starkトラップを備えた1000mL三口フラスコに、塩化メチレン(30ml)、9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フルオレン(22.08g:63mmol)、トリエチルアミン(17.3ml:124.9mmol)を混合し、20℃で攪拌した。この溶液に氷浴下で濃度0.581mol/lであるトリホスゲンの塩化メチレン溶液(9ml)を10分かけて滴下し、滴下終了後20℃で60分間攪拌した。 この溶液に氷冷下ノルボルニルホスホン酸ジクロライド(1ml:6.3mmol)の塩化メチレン2ml溶液を5分間かけて滴下し20℃で3時間攪拌し、この溶液にフェニルホスホン酸ジクロライド(2.2ml:15.8mmol)の塩化メチレン4ml溶液を10分間かけて滴下し20℃で1時間攪拌し、続いてこの溶液に氷浴下で濃度0.581mol/lであるトリホスゲンの塩化メチレン溶液(12.7ml)を20分かけて滴下し、滴下終了後20℃で60分間攪拌し、イオン性基を含有しないオリゴマーa18(末端ヒドロキシル基)を得た。数平均分子量は6000であった。
かき混ぜ機、窒素導入管、Dean−Starkトラップを備えた500mL三口フラスコに、炭酸カリウム1.1g(アルドリッチ試薬、8mmol)、イオン性基を含有しない前記オリゴマーa18(末端ヒドロキシル基)を12.0g(2mmol)を入れ、窒素置換後、NMP100mL、シクロヘキサン30mL中で100℃で脱水後、昇温してシクロヘキサン除去し、ビス(4−フルオロフェニルスルホン)3.0g(アルドリッチ試薬、12mmol)を入れ、105℃で1時間反応を行った。多量のイソプロピルアルコールで再沈殿することで精製を行い、下記式(G17)で示されるイオン性基を含有しないオリゴマーa18’(末端フルオロ基)を得た。数平均分子量は7000であり、イオン性基を含有しないオリゴマーa18’の数平均分子量は、リンカー部位(分子量470)を差し引いた値6530と求められた。
(イオン性基を含有するセグメント(A1)としてオリゴマーa2、イオン性基を含有しないセグメント(A2)としてオリゴマーa18’、リンカー部位としてジフェニルスルホンを含有するブロック共重合体b16の合成)
イオン性基を含有するオリゴマーa2(末端ヒドロキシル基)を16g(1mmol)、イオン性基を含有しないオリゴマーa1’(末端フルオロ基)に変えて、イオン性基を含有しないオリゴマーa18’(末端フルオロ基)6g(1mmol)を入れた以外は実施例1に記載の方法で、ブロック共重合体b17を得た。重量平均分子量は50万、分子量分布は2.5であった。
ブロックポリマーb16は、イオン性基を含有するセグメント(A1)、イオン性基を含有しないセグメント(A2)として、前記一般式(S1)および(S2)で表される構成単位をそれぞれ100モル%、100モル%含有していた。分子量維持率は91%であり、化学的安定性に極めて優れていた。電子吸引性基増量の効果と考えられた。
得られたブロックポリマーb16を溶解させた25重量%N−メチルピロリドン(NMP)溶液を用いて、実施例1に記載の方法で、高分子電解質膜の製膜を行った。
中和滴定から求めたイオン交換容量は1.5meq/g、1H−NMRから求めたモル組成比(A1/A2)は、56モル/32モル=1.75、ケタール基の残存は認められなかった。極めて強靱な電解質膜であり、目視では透明で均一な膜であった。プロトン伝導度は、80℃、相対湿度85%で230mS/cm、80℃、相対湿度25%で2mS/cmであり、低加湿プロトン伝導性に優れていた。また、寸法変化率は14%と小さく、耐熱水性にも優れていた。
さらに、TEM観察において、ドメインサイズ50nmの共連続様の相分離構造が確認できた。イオン性基を含有するドメイン、イオン性基を含有しないドメインともに連続相を形成していた。
比較例1
市販のナフィオン(登録商標)NRE211CS膜(デュポン社製)を用い、各種特性を評価した。中和滴定から求めたイオン交換容量は0.9meq/gであった。目視では透明で均一な膜であり、TEM観察において明確な相分離構造は確認されなかった。プロトン伝導度は、80℃、相対湿度85%で100mS/cm、80℃、相対湿度25%で3mS/cmであった。また、熱水中に浸漬すると激しく膨潤し、取り扱いが困難で掴むと破れてしまうこともあった。
比較例2
(イオン性基およびケタール基を含有しないポリエーテルケトンオリゴマーc1の合成)
K−DHBP25.8g(100mmol)に変えて、DHBP21.4g(100mmol)を入れた以外は実施例1に記載の方法でイオン性基を含有しないポリエーテルケトンオリゴマーの合成を行った。重合初期段階から、ポリマーが析出し、重合が困難であった。溶剤不溶性のためブロックポリマーの重合は困難であり、電解質膜として評価できなかった。
比較例3
特開2009−235158に記載の方法で、ポリエーテルスルホン系のブロック共重合体の合成を行った。すなわち、まず、4,4−ジクロロジフェニルスルホンを発煙硫酸中で反応させ、反応終了後、塩化ナトリウムを用いて塩析を行うことにより、3,3'−ジスルホン酸ナトリウム塩−4,4'−ジクロロジフェニルスルホン(以下、「SDCDPS」と称する)を得た。次いで、窒素雰囲気下、ディーンスターク管を付けた一口なすフラスコに前記SDCDPS3.16g(6.0mmol)、4,4'−ビフェノール1.34g(7.2mmol)、炭酸カリウム1.49g(10.8mmol)、NMP23ml、トルエン20mlを仕込み、150℃にて2時間保温することにより系中の水分を共沸除去した。その後180℃まで昇温し、16時間反応させた。放冷後、反応液を水に注ぎ、塩化カリウムを加えた。ろ過で析出物を回収し、60℃にて減圧乾燥することで両末端がOH基の親水性オリゴマーを得た。
次に、窒素雰囲気下、ディーンスターク管を付けた一口なすフラスコに4,4'−ジクロロジフェニルスルホン4.31g(15.0mmol)、4,4'−ビフェノール3.05g(16.4mmol)、炭酸カリウム3.39g(24.5mmol)、NMP35ml、トルエン20mlを仕込み、150℃にて2時間保温することにより系中の水分を共沸除去した。その後180℃まで昇温し、12時間反応させた。放冷後、反応液を水に注ぎ、得られた沈殿物をろ過し、さらにメタノール洗浄を行った。そして、100℃にて減圧乾燥することで両末端にOH基を有する疎水性オリゴマーを得た。
窒素雰囲気下、三方コックを付けた一口なすフラスコに上記親水性オリゴマーを0.45g、疎水性オリゴマーを0.20g、NMP5.5mlを仕込み、80℃で親水性オリゴマーと、疎水性オリゴマーを溶解させた。空冷後、デカフルオロビフェニル0.02g(0.06mmol)と炭酸カリウム0.01g(0.07mmol)を加え、120℃で18時間反応させた。放冷後、反応液をNMPで希釈し、イソプロパノールに注ぎ、得られた沈殿をろ過、水で洗浄した。次に、得られたポリマーの酸処理を行った。得られたポリマーを、室温で2日間、1.0M硫酸水溶液中で攪拌した後、ろ過によりポリマーを回収した。そして、ポリマーを純水でよく洗浄し、60℃で10時間乾燥することにより薄茶色のポリマーを得た。重量平均分子量は15万であり、高分子量化は困難であった。分子量維持率は10%であり、前記一般式(S1)および(S2)で表される構成単位が少ないため、化学的安定性に劣っていた。
中和滴定から求めたイオン交換容量は1.8meq/gであった。硬くて脆い電解質膜であり、目視では不透明で不均一な膜であった。プロトン伝導度は、80℃、相対湿度85%で150mS/cm、80℃、相対湿度25%で0.1mS/cmであり、実施例1〜11に比べて、低加湿プロトン伝導性に劣っていた。また、寸法変化率L2/L1は80%と大きく、耐熱水性に劣っていた。
さらに、TEM観察において、ドメインサイズ30nmのラメラ状の相分離構造が確認できた。イオン性基を含有するドメイン、イオン性基を含有しないドメインともに連続相を形成していた。
比較例4
(下記一般式(G17)で表されるイオン性基を含有しないオリゴマーc2’の合成)
K−DHBP25.8g(100mmol)に変えて、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン33.6(100mmol)を加えた以外は実施例1に記載の方法で、イオン性基を含有しないオリゴマーc2(末端ヒドロキシル基)の合成を行った。数平均分子量は13000であった。
また、イオン性基を含有しない前記オリゴマーa1(末端ヒドロキシル基)に変えて、イオン性基を含有しない前記オリゴマーc2(末端ヒドロキシル基)(2mmol)を仕込む以外は、実施例2に記載の方法で、下記一般式(G17)で示されるイオン性基を含有しないオリゴマーc2’(末端フルオロ基)の合成を行った。数平均分子量は14000であり、イオン性基を含有しないオリゴマーc2’の数平均分子量は、リンカー部位(分子量470)を差し引いた値13530と求められた。
(下記一般式(G18)で表されるイオン性基を含有するオリゴマーc3の合成)
K−DHBP12.9g(50mmol)および4,4’−ビフェノール9.3g(アルドリッチ試薬、50mmol)に変えて、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン33.6(100mmol)を加えた以外は、実施例1に記載の方法で、下記一般式(G18)で示されるイオン性基を含有するオリゴマーc3(末端ヒドロキシル基)を得た。数平均分子量は19000であった。
(ブロック共重合体d1の合成)
イオン性基を含有するオリゴマーa2(末端ヒドロキシル基)に変えて、イオン性基を含有するオリゴマーc3(末端ヒドロキシル基)を19g(1mmol)を入れ、イオン性基を含有しないオリゴマーa1’(末端フルオロ基)に変えて、イオン性基を含有しないオリゴマーc2’(末端フルオロ基)14g(1mmol)を入れた以外は実施例1に記載の方法で、ブロック共重合体d1を得た。重量平均分子量は16万、分子量分布は4.9であった。
ブロックポリマーd1は、イオン性基を含有するセグメント(A1)、イオン性基を含有しないセグメント(A2)として、前記一般式(S1)および(S2)で表される構成単位をそれぞれ0モル%、0モル%含有していた。分子量維持率は31%であり、前記一般式(S1)および(S2)で表される構成単位がないため、化学的安定性に劣っていた。
得られたブロックポリマーd1を溶解させた25重量%N−メチルピロリドン(NMP)溶液を用いて、実施例1に記載の方法で、高分子電解質膜の製膜を行った。 中和滴定から求めたイオン交換容量は2.3meq/gであった。また、熱水中に浸漬すると激しく膨潤し、取り扱いが困難で掴むと破れてしまうこともあった。
比較例5
(下記一般式(G19)で表されるイオン性基を含有しないオリゴマーc4’の合成)
かき混ぜ機、窒素導入管、Dean−Starkトラップを備えた500mL三口フラスコに、炭酸カリウム1.1g(アルドリッチ試薬、8mmol)、イオン性基を含有しない前記オリゴマーa1(末端ヒドロキシル基)を20.0g(2mmol)を入れ、窒素置換後、N−メチルピロリドン(NMP)100mL、シクロヘキサン30mL中で100℃で脱水後、昇温してシクロヘキサン除去し、デカフルオロビフェニル4.0g(アルドリッチ試薬、12mmol)を入れ、105℃で1時間反応を行った。多量のイソプロピルアルコールで再沈殿することで精製を行い、下記一般式(G19)で示されるイオン性基を含有しないオリゴマーc4’(末端フルオロ基)を得た。数平均分子量は11000であり、イオン性基を含有しないオリゴマーc4’の数平均分子量は、リンカー部位(分子量630)を差し引いた値10400と求められた。
(イオン性基を含有するセグメント(A1)としてオリゴマーa2、イオン性基を含有しないセグメント(A2)としてオリゴマーc4’、リンカー部位としてオクタフルオロビフェニレンを含有するブロック共重合体d2の合成)
かき混ぜ機、窒素導入管、Dean−Starkトラップを備えた500mL三口フラスコに、炭酸カリウム0.56g(アルドリッチ試薬、4mmol)、イオン性基を含有するオリゴマーa2(末端ヒドロキシル基)を16g(1mmol)を入れ、窒素置換後、N−メチルピロリドン(NMP)100mL、シクロヘキサン30mL中で100℃で脱水後、昇温してシクロヘキサン除去し、イオン性基を含有しないオリゴマーc4’(末端フルオロ基)10g(1mmol)を入れ、105℃で24時間反応を行った。多量のイソプロピルアルコールで再沈殿することで精製を行い、ブロック共重合体d2を得た。重量平均分子量は42万、分子量分布は4.8と、架橋反応および分岐反応により分子量分布が大きかった。
ブロックポリマーd2は、イオン性基を含有するセグメント(A1)、イオン性基を含有しないセグメント(A2)として、前記一般式(S1)および(S2)で表される構成単位をそれぞれ50モル%、100モル%含有していた。分子量維持率は81%であり、化学的安定性に優れていた。
得られたブロックポリマーd2を溶解させた25重量%N−メチルピロリドン(NMP)溶液をガラス繊維フィルターを用いて加圧ろ過したが、架橋反応および分岐反応による溶解性低下のため、イオン性基を含有するセグメント(A1)が3%ろ過により除去された。
得られたろ液をガラス基板上に流延塗布し、100℃にて4h乾燥後、窒素下150℃で10分間熱処理し、ポリケタールケトン膜(膜厚25μm)を得た。ポリマーの溶解性は極めて良好であった。95℃で10重量%硫酸水溶液に24時間浸漬してプロトン置換、脱保護反応した後に、大過剰量の純水に24時間浸漬して充分洗浄し、高分子電解質膜を得た。
中和滴定から求めたイオン交換容量は1.7meq/g、1H−NMRから求めたモル組成比(A1/A2)は、54モル/44モル=1.22、ケタール基の残存は認められなかった。しかし、架橋反応による溶解性低下やゲル化、分岐反応による機械特性低下が起き、物理的耐久性に優れた電解質膜を得ることは出来なかった。また、プロトン伝導度は、80℃、相対湿度85%で245mS/cm、80℃、相対湿度25%で1.96mS/cmであり、ろ過によりイオン性基を含有するセグメント(A1)が3%ろ過により除去されたため、低加湿プロトン伝導性が若干悪くなっていた。