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JP6069972B2 - 芳香族スルホンイミド誘導体、スルホンイミド基含有ポリマー、それを用いた高分子電解質材料、高分子電解質成型体および固体高分子型燃料電池 - Google Patents

芳香族スルホンイミド誘導体、スルホンイミド基含有ポリマー、それを用いた高分子電解質材料、高分子電解質成型体および固体高分子型燃料電池 Download PDF

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Description

本発明は、芳香族スルホンイミド誘導体、およびそれを用いたスルホンイミド基含有ポリマーに関するものであり、なかでも、低加湿条件下においても優れたプロトン伝導性を有し、なおかつ優れた機械強度、化学的安定性および物理的耐久性を達成することができる実用性に優れた高分子電解質材料、ならびにそれを用いた高分子電解質成型体および固体高分子型燃料電池に関するものである。
燃料電池は、水素、メタノールなどの燃料を電気化学的に酸化することによって、電気エネルギーを取り出す一種の発電装置であり、近年、クリーンなエネルギー供給源として注目されている。なかでも固体高分子型燃料電池は、標準的な作動温度が100℃前後と低く、かつ、エネルギー密度が高いことから、比較的小規模の分散型発電施設、自動車や船舶など移動体の発電装置として幅広い応用が期待されている。また、小型移動機器、携帯機器の電源としても注目されており、ニッケル水素電池やリチウムイオン電池などの二次電池に替わり、携帯電話やパソコンなどへの搭載が期待されている。
燃料電池は通常、発電を担う反応の起こるアノードとカソードの電極と、アノードとカソード間のプロトン伝導体となる高分子電解質膜とが、膜電極複合体(以降、MEAと略称することがある。)を構成し、このMEAがセパレータによって挟まれたセルをユニットとして構成されている。高分子電解質膜は高分子電解質材料を主として構成される。高分子電解質材料は電極触媒層のバインダー等にも用いられる。
高分子電解質膜の要求特性としては、第一に高いプロトン伝導性が挙げられ、特に高温低加湿条件でも高いプロトン伝導性を有する必要がある。また、高分子電解質膜は、燃料と酸素の直接反応を防止するバリアとしての機能も担うため、燃料の低透過性が要求される。その他にも燃料電池運転中の強い酸化雰囲気に耐えるための化学的安定性、薄膜化や膨潤乾燥の繰り返しに耐えうる機械強度および物理的耐久性などを挙げることができる。
プロトン伝導性は膜の含水量に依存するため、燃料電池としての高発電性能を発現させるためには、高湿度条件を維持する必要があった。これに伴い、加湿装置の負荷が大きくなるという問題、また氷点下では、プロトン伝導に関与する伝導膜中の水が凍結するため、プロトン伝導性が大きく低下、発電ができなくなるという問題も挙げられた。

このような問題に対して、従来パーフルオロスルホン酸系ポリマーであるナフィオン(登録商標)(デュポン社製)が高分子電解質膜に広く用いられてきた。ナフィオン(登録商標)は高酸解離性パーフルオロスルホン酸基により低加湿条件においても高いプロトン伝導性を示すが、その一方で、多段階合成を経て製造されるため非常に高価であり、加えて、燃料クロスオーバーが大きいという課題があった。また膨潤乾燥によって膜の機械強度や物理的耐久性が失われるという問題、軟化点が低く高温で使用できないという問題、さらには、使用後の廃棄処理の問題や材料のリサイクルが困難といった課題が指摘されてきた。
このような欠点を克服するために、ナフィオン(登録商標)に替わり得る安価で、膜特性に優れた炭化水素系高分子電解質膜の開発が近年活発化している。
なかでも特に、低加湿プロトン伝導性向上に向け、高酸解離性基であるスルホンイミド基に着目した試みがいくつかなされている。特許文献1には、ポリスチレン系スルホンイミド基含有ポリマーについての記載がある。特許文献2、3および非特許文献1には、芳香族系スルホンイミド基含有ポリマーが提案されている。
特開2011−105948号公報 特開2008−163160号公報 米国特許出願公開第2008/0286626号明細書
ジャーナル・オブ・ポリマー・サイエンス:パートA:ポリマー・ケミストリー(Journal of Polymer Science: Part A: Polymer Chemistry), 44, 6007, 2006.)
しかしながら本発明者らは、従来技術に以下の課題があることを見いだした。特許文献1記載のポリスチレン系スルホンイミド基含有ポリマーは、活性水素の存在により化学的安定性、特に耐ラジカル性に劣るものであるのに加え、比較的低いガラス転移温度を有する非晶性ポリマーゆえに、電解質膜としての構造安定性に欠けるものであった。
より高い化学的、構造安定性有するスルホンイミド基含有ポリマーとして、特許文献2および非特許文献1には、主鎖骨格にポリ(エーテルニトリル)系ポリマーやポリ(エーテルスルホン)系ポリマーを用いた例が記載されているが、これらはガラス転移温度の高い非晶性ポリマーを基本骨格に用いているため、脆化し、物理的耐久性に劣るものであった。加えて、吸水性の高いスルホンイミド基を多く含むことによる耐熱水性、物理的耐久性の更なる低下が問題として挙げられた。
さらに特許文献3には、末端を芳香族基で置換したスルホンイミド基を導入したベンゾフェノンを構成単位に有する一連の芳香族系スルホンイミド基含有ポリマーに関する記載がある。しかしながら、これらのポリマーは、スルホンイミド基の末端が電子求引性の低い炭化水素系芳香族基で置換されているため、スルホンイミド基の酸解離度低下や末端芳香族基によるイオン交換容量の低下が更なる問題として考えられた。 このように、従来技術における高分子電解質材料は、経済性、加工性、プロトン伝導性、機械強度、化学的安定性、物理的耐久性を向上する手段としては不十分であり、産業上有用な高分子電解質膜とはなり得ていなかった。

本発明は、かかる従来技術の背景に鑑み、低加湿条件下および低温条件下においても優れたプロトン伝導性を有し、なおかつ機械強度および燃料遮断性に優れる上に、固体高分子型燃料電池としたときに高出力、高エネルギー密度、長期耐久性を達成可能な高分子電解質材料を与えるスルホンイミド基含有ポリマー、ならびに芳香族スルホンイミド誘導体を提供せんとするものである。
本発明は、かかる課題を解決するために、次のような手段を採用するものである。すなわち、本発明の芳香族スルホンイミド誘導体は、下記一般式(M1)で表されることを特徴とするものである。
Figure 0006069972
(式(M1)中、R、Rはそれぞれ独立して、パーフルオロアルキル基からなる群、またはイオン性基を含有する芳香族基からなる群より選択される置換基を表す。それぞれ独立して、M、Mは水素、金属カチオン、アンモニウムカチオンから選択されるカチオン種を表す。またX、Xはハロゲン原子を表す。)
また、本発明のスルホンイミド基含有ポリマーは下記一般式(P1)で表される構成単位を含有することを特徴とするものである。
Figure 0006069972
(式(P1)中、R、Rはそれぞれ独立して、パーフルオロアルキル基からなる群、またはイオン性基を含有する芳香族基からなる群より選択される置換基を表す。M、Mはそれぞれ独立して、水素、金属カチオン、アンモニウムカチオンから選択されるカチオン種を表す。)
さらに、本発明の高分子電解質材料、高分子電解質成型体および固体高分子型燃料電池は、かかる芳香族スルホンイミド誘導体を用いて重合してなるスルホンイミド基含有ポリマーあるいはかかる上記一般式(P1)で表される構成単位を含有するスルホンイミド基含有ポリマーを用いて構成されることを特徴とするものである。
本発明の芳香族スルホンイミド誘導体を用いて重合したスルホンイミド基含有ポリマー、ならびに本発明のスルホンイミド基含有ポリマーからなる高分子電解質材料によれば、低加湿条件下における優れたプロトン伝導性および高い機械強度、高い化学的安定性と、固体高分子型燃料電池としたときの高出力性能や優れた物理的耐久性を達成可能であり、それを用いた高分子電解質成型体および固体高分子型燃料電池を提供することができる。
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明は、前記課題克服に向け、鋭意検討を重ねた結果、特に末端を高電子求引性のパーフルオロアルキル基で置換した高酸解離性スルホンイミド基有する芳香族スルホンイミド誘導体、または末端を、イオン性基を有する芳香族基で置換した高イオン交換容量の芳香族スルホンイミド誘導体、およびそれらを用いて重合したスルホンイミド基含有ポリマーならびに特定の構造を有するスルホンイミド基含有ポリマーが、高分子電解質材料、特に燃料電池用電解質膜として、低加湿条件下を含むプロトン伝導性と発電特性、製膜性などの加工性、耐酸化性、耐ラジカル性、耐加水分解性などの化学的安定性、膜の機械強度、耐熱水性などの物理的耐久性において優れた性能を発現でき、かかる課題を一挙に解決できることを究明したものである。

すなわち、本発明の芳香族スルホンイミド誘導体は、下記一般式(M1)で表されることを特徴とするものである。
Figure 0006069972
(式(M1)中、R、Rはそれぞれ独立して、パーフルオロアルキル基からなる群、またはイオン性基を含有する芳香族基からなる群より選択される置換基を表す。M、Mはそれぞれ独立して、水素、金属カチオン、アンモニウムカチオンから選択されるカチオン種を表す。またX、Xはハロゲン原子を表す。)
本発明において、X、Xはフッ素、塩素、臭素、ヨウ素などのハロゲン原子を表すが、なかでも反応性の点で、フッ素、塩素がより好ましく、フッ素が最も好ましい。
またR,Rはそれぞれ独立して、パーフルオロアルキル基からなる群、またはイオン性基を含有する芳香族基からなる群より選択される置換基を表す。ここで、パーフルオロアルキル基とは、主に炭素とフッ素から構成される置換基のことを指し、具体的には、C2n+1で表される置換基とその酸素、硫黄原子誘導体を指す。さらに具体例を挙げるとすれば、CF基、C基、C基,C基、C11基,C13基などのフッ化炭化水素基に加え、CFOCF基、COC,CFSCF,CSCなどのフッ化炭化水素基の酸素、硫黄原子誘導体が挙げられるが、これらの例に限定されない。なかでも、スルホンイミド基の酸解離度の点で、C2n+1基が好ましく、合成の容易さの点で、nが1〜20のC2n+1基がより好ましく、イオン交換容量の点でnが1〜6のC2n+1基がさらに好ましく、nが1〜4のC2n+1基が最も好ましい。 またイオン性基を含有する芳香族基とは、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、ターフェニル基、フェナレニル基、ピレン基、フルオレニル基などの炭化水素系アリーレン基やピリジル基、キノキサリル基、チオフェニル基などのヘテロアリーレン基のイオン性基含有体が挙げられるが、これらの例に限定されない。またこれらの芳香族基は、イオン性基以外の任意の置換基を有していてもよい。なかでも、合成の容易さの点で、炭素数4〜20の芳香族基が好ましく、イオン交換容量の点で、炭素数4〜12の芳香族基がより好ましく、炭素数4〜6の芳香族基が最も好ましい。
本発明において、スルホンイミド基の末端を前記パーフルオロアルキル基で置換することで、その電子求引性により、スルホンイミド基の酸解離性が増加し、電解質材料としたときに高い低加湿プロトン伝導性が実現できる。一方、末端をイオン性基を有する芳香族基で置換した場合、パーフルオロアルキル基に比べて、電子求引性に劣るため、スルホンイミド基の酸解離性は若干低下するものの、芳香族基に導入されたイオン性基により、イオン交換容量を高めることが可能となり、電解質材料としたときに高い低加湿プロトン伝導性が実現できる。芳香族基がイオン性基を含有しない場合、イオン交換容量が低下し、電解質材料としたときの低加湿プロトン伝導性が不足するため、好ましくない。

本発明において、前記Rおよび/またはRが芳香族基の場合に使用されるイオン性基は、負電荷を有する原子団が好ましく、プロトン交換能を有するものが好ましい。このような官能基としては、スルホン酸基、スルホンイミド基、硫酸基、ホスホン酸基、リン酸基、カルボン酸基が好ましく用いられる。ここで、スルホン酸基は下記一般式(f1)で表される基、スルホンイミド基は下記一般式(f2)で表される基[一般式(f2)中、Rは任意の有機基を表す。]、硫酸基は下記一般式(f3)で表される基、ホスホン酸基は下記一般式(f4)で表される基、リン酸基は下記一般式(f5)または(f6)で表される基、カルボン酸基は下記一般式(f7)で表される基を意味する。
Figure 0006069972
かかるイオン性基は、前記官能基(f1)〜(f7)が塩となっている場合を含むものとする。前記塩を形成するカチオンとしては、任意の金属カチオン、NR4+(Rは任意の有機基)等を例として挙げることができる。金属カチオンの場合、その価数等特に限定されるものではなく、使用することができる。好ましい金属イオンの具体例を挙げるとすれば、Li、Na、K、Rh、Mg、Ca、Sr、Ti、Al、Fe、Pt、Rh、Ru、Ir、Pd等が挙げられる。中でも、本発明に用いるブロック共重合体としては、安価で、容易にプロトン置換可能なNa、K、Liがより好ましく使用される。
これらのイオン性基は前記R、R中に2種類以上含むことができ、イオン交換容量や酸解離度のバランスで適宜選択することができる。中でも、酸解離性の点から少なくともスルホン酸基、スルホンイミド基を有することがより好ましく、原料コストの点から少なくともスルホン酸基を有することが最も好ましい。

ここで、イオン交換容量とは、ブロック共重合体、高分子電解質材料、および高分子電解質膜の単位乾燥重量当たりに導入されたスルホンイミド基のモル量であり、この値が大きいほどスルホンイミド化の度合いが高いことを示す。イオン交換容量は、元素分析、中和滴定法等により測定が可能である。元素分析法を用い、N/C比から算出することもできるが、スルホンイミド基以外の窒素源を含む場合などは測定することが難しい。従って、本発明においては、イオン交換容量は、中和滴定法により求めた値と定義する。本発明の高分子電解質材料、および高分子電解質膜は、本発明のスルホンイミド含有ポリマーとそれ以外の成分からなる複合体である態様をも含むが、その場合もイオン交換容量は複合体の全体量を基準として求めるものとする。
中和滴定の測定例は、以下のとおりである。測定は3回以上行ってその平均値を取るものとする。
(1)プロトン置換し、純水で十分に洗浄した電解質膜の膜表面の水分を拭き取った後、
100℃にて12h以上真空乾燥し、乾燥重量を求める。
(2)電解質に5wt%硫酸ナトリウム水溶液を50mL加え、12h静置してイオン交換する。
(3)0.01mol/L水酸化ナトリウム水溶液を用いて、生じた硫酸を滴定する。指示薬として市販の滴定用フェノールフタレイン溶液0.1w/v% を加え、薄い赤紫色になった点を終点とする。
(4)イオン交換容量は下記の式により求める。
イオン交換容量(meq/g)=
[水酸化ナトリウム水溶液の濃度(mmol/ml)×滴下量(ml)〕/試料の乾燥重量(g)]
本発明において、芳香族スルホンイミド誘導体のイオン交換容量の好適な範囲は、酸解離度と吸水性の点で、末端基がパーフルオロアルキル基である場合とイオン性基を有する芳香族基の場合で区別される。これは、酸解離度が大きいほど、親水性が増し、吸水量が多くなることによる。末端基がパーフルオロアルキル基である場合は、電解質材料としたときのプロトン伝導性と耐水性のバランスから、1 〜 4meq/gが好ましく、より好ましくは1.2meq/g以上、さらに好ましくは1.6meq/g以上、最も好ましくは2meq/g以上である。また、3.5meq/g以下がより好ましく、最も好ましくは3.2meq/g以下である。イオン交換容量が1meq/gより小さい場合には、プロトン伝導性が不足する場合があり、4meq/gより大きい場合には、耐水性が不足する場合がある。一方、末端基がイオン性基を有する芳香族基である場合は、電解質材料としたときのプロトン伝導性と耐水性のバランスから、3.2〜7meq/gが好ましく、より好ましくは3.5meq/g以上、さらに好ましくは4meq/g以上、最も好ましくは4.5meq/g以上である。また、6.2meq/g以下がより好ましく、最も好ましくは5meq/g以下である。イオン交換容量が3.2meq/gより小さい場合には、プロトン伝導性が不足する場合があり、7meq/gより大きい場合には、耐水性が不足する場合がある。尚、イオン交換容量の定義、測定法は前記に従う。

また本発明において、M、Mは水素、金属カチオン、アンモニウムカチオンから選択されるカチオン種を表す。金属カチオンの場合、その価数等特に限定されるものではなく、使用することができる。好ましい金属イオンの具体例を挙げるとすれば、Li、Na、K、Rh、Mg、Ca、Sr、Ti、Al、Fe、Pt、Rh、Ru、Ir、Pd等が挙げられる。中でも、本発明に用いるブロック共重合体としては、安価で、容易にプロトン置換可能なNa、K、Liがより好ましく使用される。アンモニウムカチオンとしては、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、テトラブチルアンモニウムなどの第四級アンモニウムカチオンや、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミンなどの第三級アミンがプロトン化されて生成する第三級アンモニウムカチオンなど挙げられるが、これらの例に限定されず使用することができる。 本発明の芳香族スルホンイミド誘導体は、電子求引性のC=O基の効果、ベンゾフェノン骨格の平面性から、化学的安定性、物理的安定性に優れる上、スルホンイミド基含有ポリマーとしたときに、その高酸解離性、高イオン交換容量により低加湿条件下においても優れたプロトン伝導性を実現することができる。

本発明の芳香族スルホンイミド誘導体としては、合成の容易さ、酸解離性とイオン交換容量の点で、下記一般式(M2)で表されるものがより好ましい。
Figure 0006069972
(式(M2)中、R、Rはそれぞれ独立して、パーフルオロアルキル基からなる群、またはイオン性基を含有する芳香族基からなる群より選択される置換基を表す。M、Mは水素、金属カチオン、アンモニウムカチオンから選択されるカチオン種を表す。またX、Xはハロゲン原子を表す。)
次に本発明のスルホンイミド基含有ポリマーについて説明する。
本発明のスルホンイミド基含有ポリマーは、前記一般式(M1)で表される芳香族スルホンイミド誘導体を用いて重合してなることを特徴とするものである。また前記一般式(M1)で表される芳香族スルホンイミド誘導体を用いて重合したことで明らかになったが、それに限らず特定の構造を有することを特徴とするものである。
その具体例としては、スルホンイミド基含有芳香族ポリエーテルケトン類、スルホンイミド基含有芳香族ポリエーテルスルホン類、スルホンイミド基含有芳香族ポリエーテルホスフィンオキシド類、スルホンイミド基含有芳香族ポリスルフィドケトン類、スルホンイミド基含有芳香族ポリスルフィドスルホン類、スルホンイミド基含有芳香族ポリスルフィドホスフィンオキシド類、スルホンイミド基含有ポリアリーレン類などの芳香族系ポリマーを挙げることが出来る。
なかでも、コストの点から、スルホンイミド基含有芳香族ポリエーテルケトン類、スルホンイミド基含有芳香族ポリエーテルスルホン類、スルホンイミド基含有芳香族ポリエーテルホスフィンオキシド類、スルホンイミド基含有ポリアリーレン類がより好ましく、さらに好ましくは、スルホンイミド基含有芳香族ポリエーテルケトン類、スルホンイミド基含有芳香族ポリエーテルスルホン類、最も好ましくは、スルホンイミド基含有芳香族ポリエーテルケトン類である。
これらスルホンイミド基含有芳香族ポリエーテルは、前記一般式(M1)で表される芳香族スルホンイミド誘導体(ジハライド化合物)と任意の2価フェノール化合物との芳香族求核置換反応により合成することが可能である。2価のフェノール化合物は、特に限定されるものではなく、化学的安定性、物理的耐久性、コスト等を考慮して適宜選択することができる。また、本発明の効果に悪影響を及ぼさない範囲で、これらの2価フェノール化合物にスルホンイミド基が導入されたものをモノマーとして用いることもできるが、反応性の点でスルホンイミド基は持たない方がより好ましい。 本発明に用いる2価フェノール化合物の好適な具体例としては、下記一般式(Y−1)〜(Y−30)で表される2価フェノール化合物が挙げられる。なお、これら2価フェノール化合物のヘテロ原子誘導体である2価チオール化合物も好適な例である。なかでも、電子密度が高く、重合の反応性が高いという観点から、一般式(Y−1)〜(Y−5)で表される2価フェノール化合物がより好ましく、さらに好ましくは(Y−1)〜(Y−3)で表される2価フェノール化合物である。
また、電子吸引性基を有し、化学的安定性に優れた2価フェノール化合物としては、下記式(Y−10)〜(Y−11)、(Y−13)〜(Y−15)が挙げられる。なかでも、結晶性と寸法安定性の点で、(Y−10)、(Y−14)、(Y−15)で表される2価フェノール化合物がさらに好ましい。
下記一般式(Y−1)〜(Y−30)で表される2価フェノール化合物のなかでも、下記一般式(Y−14)で表される2価フェノール化合物が化学的安定性と物理的安定性の点で最も好ましい。
Figure 0006069972
(一般式(Y−1)〜(Y−5)で表される2価フェノール化合物は、任意に置換されていてもよいが、スルホンイミド基は含まない。
Figure 0006069972
(一般式(Y−6)〜(Y−9)で表される2価フェノール化合物は、任意に置換されていてもよいが、nは1以上の整数を表す。)
Figure 0006069972
(一般式(Y−10)〜(Y−19)で表される2価フェノール化合物は、任意に置換されていてもよいが、nおよびmは1以上の整数、Rpは任意の有機基を表す。)
Figure 0006069972
(一般式(Y−20)〜(Y−30)で表される2価フェノール化合物は、任意に置換されていてもよい。)

例えば、一般式(M1)で表される芳香族スルホン酸誘導体(ジハライド化合物)と一般式(Y−14)で表される2価フェノール化合物との芳香族求核置換反応により得られる構成単位は、下記一般式(P1)で表され、本発明のスルホンイミド基含有ポリマーの構成単位として特に好ましい具体例である。
Figure 0006069972
(式(P1)中、R、Rはそれぞれ独立して、パーフルオロアルキル基からなる群、またはイオン性基を含有する芳香族基からなる群より選択される置換基を表す。M、Mは水素、金属カチオン、アンモニウムカチオンから選択されるカチオン種を表す。)
本発明におけるスルホンイミド基含有ポリマーの好ましい態様のひとつは、前記一般式(P1)で表される構成単位を有するスルホンイミド基含有ポリマーである。一般式(P1)で表される構成単位を含まない場合、本発明の効果である耐熱水性、物理的耐久性と低加湿プロトン伝導性を両立できない場合があり好ましくない。
さらに本発明のスルホンイミド基含有ポリマーにおける、前記一般式(P1)で表される構成単位の含有量は20重量%以上であることが好ましい。(P1)で表される構成単位の含有量が20重量%未満である場合は、耐水性、物理的耐久性とプロトン伝導性が両立できない場合があり好ましくない。 本発明においては、前記一般式(P1)で表されるスルホン酸基含有ポリマーを得るために、2価フェノール化合物に保護基を導入し、重合後または成型後に脱保護せしめて、一般式(P1)で表される構造に変換することも好ましい。
本発明のスルホンイミド基含有ポリマーに使用する保護基としては、有機合成で一般的に用いられる保護基があげられ、該保護基とは、後の段階で除去することを前提に、一時的に導入される置換基であり、反応性の高い官能基を保護し、その後の反応に対して不活性とするものであり、反応後に脱保護して元の官能基に戻すことのできるものである。すなわち、保護される官能基と対となるものであり、例えばt − ブチル基を水酸基の保護基として用いる場合があるが、同じt − ブチル基がアルキレン鎖に導入されている場合は、これを保護基とは呼ばない。保護基を導入する反応を保護(反応) 、除去する反応を脱保護( 反応) と呼称される。
このような保護反応としては、例えば、セオドア・ダブリュー・グリーン( T h e o d o r a W. G r e e n e) 、「プロテクティブ グループス イン オーガニック シンセシス」( P r o te c t i v e G r o u p s i n O r g a n i c S y n t h e s i s) 、米国、ジョン ウイリー アンド サンズ( J oh n W i l e y & S o n s , I n c) 、1 9 8 1 、に詳しく記載されており、これらが好ましく使用できる。保護反応および脱保護反応の反応性や収率、保護基含有状態の安定性、製造コスト等を考慮して適宜選択することが可能である。また、重合反応において保護基を導入する段階としては、モノマー段階からでも、オリゴマー段階からでも、ポリマー段階でもよく、適宜選択することが可能である。
保護反応の具体例を挙げるとすれば、ケトン部位をアセタールまたはケタール部位で保護/ 脱保護する方法、ケトン部位をアセタールまたはケタール部位のヘテロ原子類似体、例えばチオアセタールやチオケタール、で保護/ 脱保護する方法が挙げられる。これらの方法については、「プロテクティブ グループス イン オーガニック シンセシス」( P r o t e c t i v e G r o u p s i n O r g a n i c S y n t h e s i s) のチャプター4 に記載されている。しかしながら、これらに限定されることなく、好ましく使用できる。一般的な溶剤に対する溶解性を向上させ、結晶性を低減する点では、立体障害が大きいという点で脂肪族基、特に環状部分を含む脂肪族基が保護基として好ましく用いられ、ケトン部位の保護基としては、アセタール基、ケタール基が特に好ましく用いられる。
保護基を有する2価フェノール化合物の好適な具体例としては、反応性と化学的安定性の点から、下記一般式(r1)〜(r10)で表される化合物、並びにこれらの2価フェノール化合物由来の誘導体を挙げることができる。
Figure 0006069972
これら2価フェノール化合物のなかでも、安定性の点から一般式(r4)〜(r10)で表される化合物がより好ましく、さらに好ましくは一般式(r4)、(r5)および(r9)で表される化合物、最も好ましくは一般式(r4)で表される化合物である。

さらに、本発明のスルホンイミド基含有ポリマーにおいては、前記一般式(P1)で表される構成単位を有するセグメント(A1)とイオン性基を含有しない構成単位を有するセグメント(A2)とを有し、共重合様式がブロック共重合であることがより好ましい態様の一つとして挙げられる。
本発明において、ブロック共重合とは、2種類以上の異なるセグメントを共重合する様式を表し、またセグメントとは、ブロック共重合体中の部分構造であって、1種類の繰り返し単位または複数種類の繰り返し単位の組合せからなるものであり、分子量が2000以上のものを表す。本発明のブロック共重合体からなるスルホンイミド基含有ポリマーは、一般式(P1)で表されるスルホンイミド基を含有するセグメントとともに、イオン性基を含有しないセグメントとを有するが、本発明における「イオン性基を含有しないセグメント」という記載は、当該セグメントが本発明の効果に悪影響を及ぼさない範囲でイオン性基を少量含んでいても構わないことを意味する。以下「イオン性基を含有しない」は同様の意味で用いる場合がある。 本発明のブロック共重合体からなるスルホンイミド基含有ポリマーは、2種類以上の互いに不相溶なセグメント鎖、すなわち、スルホンイミド基を含有する親水性セグメントと、イオン性基を含有しない疎水性セグメントが連結され、1つのポリマー鎖を形成したものである。ブロック共重合体においては、化学的に異なるセグメント鎖間の反発から生じる短距離相互作用により、それぞれのセグメント鎖からなるナノまたはミクロドメインに相分離し、セグメント鎖がお互いに共有結合していることから生じる長距離相互作用の効果により、各ドメインが特定の秩序を持って配置せしめられる。各セグメント鎖からなるドメインが集合して作り出す高次構造は、ナノまたはミクロ相分離構造と呼ばれ、高分子電解質膜のイオン伝導については、膜中におけるイオン伝導セグメントの空間配置、すなわち、ナノまたはミクロ相分離構造が重要になる。ここで、ドメインとは、1本または複数のポリマー鎖において、類似するセグメントが凝集してできた塊のことを意味する。
中でもとりわけ、本発明のブロック共重合体からなるスルホンイミド基含有ポリマーは、さらに前記セグメント間を連結するリンカー部位を1個以上含有することがより好ましい。ここで、リンカーとは、スルホンイミド基を含有するセグメント(A1)と、イオン性基を含有しないセグメント(A2)との間を連結する部位であって、スルホンイミド基を含有するセグメント(A1)やイオン性基を含有しないセグメント(A2)とは異なる化学構造を有する部位と定義する。このリンカーは、エーテル交換反応によるランダム化、セグメント切断、副反応を抑制しながら、異なるセグメント間の連結を可能とするため、構造制御されたブロック共重合体の合成、延いては制御されたミクロ相分離構造を発現せしめるのに必要となる。リンカーがない場合には、ランダム化等のセグメント切断が起こる場合があるために、本発明の効果が十分に得られないことがある。
本発明のブロック共重合体からなるスルホンイミド基含有ポリマーの化学構造、セグメント鎖長、分子量、イオン交換容量などを適宜選択することにより、高分子電解質材料の加工性、ドメインサイズ、結晶性/非晶性、機械強度、プロトン伝導性、寸法安定性等の諸特性を制御することが可能である。

次に、本発明のブロック共重合体について、好ましい具体例を挙げる。本発明のブロック共重合体は、スルホンイミド基を含有する親水性セグメントがドメインを形成することで、高分子電解質材料や高分子電解質膜として、幅広い湿度条件で高いプロトン伝導度を示す。 本発明のスルホンイミド基を含有するブロック共重合体の場合、そのイオン交換容量は、プロトン伝導性と耐水性のバランスから、0.1〜5meq/gが好ましく、より好ましくは1meq/g以上、最も好ましくは1.4meq/g以上である。また、3.5meq/g以下がより好ましく、最も好ましくは3meq/g以下である。イオン交換容量が0.1meq/gより小さい場合には、プロトン伝導性が不足する場合があり、5meq/gより大きい場合には、耐水性が不足する場合がある。尚、イオン交換容量の定義、測定法は前記に従う。
本発明のブロック共重合体としては、スルホンイミド基を含有するセグメント(A1)と、イオン性基を含有しないセグメント(A2)のモル組成比(A1/A2)が、0.2以上であることがより好ましく、0.33以上がさらに好ましく、0.5以上が最も好ましい。また、5以下がより好ましく、3以下がさらに好ましく2.5以下が最も好ましい。モル組成比A1/A2が、0.2未満あるいは5を越える場合には、本発明の効果が不十分となる場合があり、低加湿条件下でのプロトン伝導性が不足したり、耐熱水性や物理的耐久性が不足する場合があるので好ましくない。ここで、モル組成比(A1/A2)とは、セグメント(A1)中に存在する繰り返し単位のモル数とセグメント(A2)中に存在する繰り返し単位のモル数の比を表す。またモル計算は、例えばスルホンイミド基を含有するセグメント(A1)がスルホンイミド基を含有する構成単位(P1)からなる場合、セグメントの数平均分子量を対応する構成単位(P1)の分子量で除することにより行うが、この例に限定されるものでない。
スルホンイミド基を含有するセグメント(A1)のイオン交換容量の好適な範囲は、前記と同様に酸解離度と吸水性の点で、末端基がパーフルオロアルキル基である場合とイオン性基を有する芳香族基の場合で区別される。末端基がパーフルオロアルキル基である場合は、低加湿下でのプロトン伝導性と耐水性のバランスから、好ましくは1.2meq/g以上、より好ましくは1.5meq/g以上、最も好ましくは2meq/g以上である。また、3.5meq/g以下がより好ましく、最も好ましくは2.7meq/g以下である。イオン交換容量が1.2meq/gより小さい場合には、プロトン伝導性が不足する場合があり、3.5meq/gより大きい場合には、耐水性が不足する場合がある。一方、末端基がイオン性基を有する芳香族基である場合は、低加湿下でのプロトン伝導性と耐水性のバランスから、好ましくは、2.2 meq以上より好ましくは3meq/g以上、さらに好ましくは3.5meq/g以上、最も好ましくは4meq/g以上である。また、6.2meq/g以下がより好ましく、最も好ましくは5.5meq/g以下である。イオン交換容量が2.2meq/gより小さい場合には、プロトン伝導性が不足する場合があり、6.2meq/gより大きい場合には、耐水性が不足する場合があるので好ましくない。
イオン性基を含有しないセグメント(A2)のイオン交換容量は、耐熱水性、機械強度、寸法安定性、物理的耐久性の点から、低いことが好ましく、より好ましくは1meq/g以下、さらに好ましくは0.5meq/g、最も好ましくは0.1meq/g以下である。イオン性基を含有しないセグメント(A2)のイオン交換容量が1meq/gを越える場合には、耐熱水性、機械強度、寸法安定性、物理的耐久性が不足する場合があるので好ましくない。
イオン性基を含有しないセグメントとしては、化学的に安定な上、強い分子間凝集力から結晶性を示す構成単位がより好ましく、機械強度、寸法安定性、物理的耐久性に優れたブロック共重合体を得ることができる。
すなわち本発明においては、前記イオン性基を含有しない構成単位が下記一般式(P2)で表される場合が特に好ましい。
Figure 0006069972
(一般式(P2)中、Ar〜Arは任意の2価のアリーレン基を表し、任意に置換されていても良いが、イオン性基を含有しない。Ar〜Arは互いに独立して2種類以上のアリーレン基が用いられても良い。*は一般式(P2)または他の構成単位との結合部位を表す。)
ここで、Ar〜Arとして好ましい2価のアリーレン基は、フェニレン基、ナフチレン基、ビフェニレン基、フルオレンジイル基などの炭化水素系アリーレン基、ピリジンジイル、キノキサリンジイル、チオフェンジイルなどのヘテロアリーレン基などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。Ar〜Arはイオン性基を含有せず、またイオン性基以外の基で置換されていてもよいが、無置換である方がプロトン伝導性、化学的安定性、物理的耐久性の点でより好ましい。さらに、好ましくはフェニレン基で、最も好ましくはp−フェニレン基である。 イオン性基を含有しないセグメント(A2)が含有する一般式(P2)で表される構成単位のより好ましい具体例としては、原料入手性の点で、下記一般式(О1)で表される構成単位が挙げられる。中でも、結晶性による機械強度、寸法安定性、物理的耐久性の点から、下記式(P3)で表される構成単位がさらに好ましい。イオン性基を含有しないセグメント(A2)中に含まれる一般式(P2)で表される構成単位の含有量としては、より多い方が好ましく、20モル%以上がより好ましく、50モル%以上がさらに好ましく、80モル%以上が最も好ましい。含有量が20モル%未満である場合には、結晶性による機械強度、寸法安定性、物理的耐久性に対する本発明の効果が不足する場合があり好ましくない。
Figure 0006069972
イオン性基を含有しないセグメント(A2)として、一般式(P2)で表される構成単位以外に共重合せしめる構成単位の好ましい例は、ケトン基を含む芳香族ポリエーテル系重合体、すなわち、下記一般式(Q1)で示される構成単位を有するもので、イオン性基を含有しないものが挙げられる。
Figure 0006069972
(一般式(Q1)中のZ、Zは芳香環を含む2価の有機基を表し、それぞれが2種類以上の基を表しても良いが、イオン性基は含まない。aおよびbはそれぞれ独立に正の整数を表す。)
一般式(Q1)中のZおよびZとして好ましい有機基としては、Zがフェニレン基、かつ、Zが下記一般式(X−1)、(X−2)、(X−4)、(X−5)から選ばれた少なくとも1種であることがより好ましい。また、イオン性基以外の基で置換されていてもよいが、無置換である方が結晶性付与の点でより好ましい。ZおよびZとしては、さらに好ましくはフェニレン基、最も好ましくはp−フェニレン基である
Figure 0006069972
(一般式(X−1)、(X−2)、(X−4)、(X−5)で表される基は、イオン性基以外の基で任意に置換されていてもよい。)。
前記一般式(Q1)で示される構成単位の好適な具体例としては、下記一般式(Q2)〜(Q7)で示される構成単位などを挙げることができるが、これらに限定されることなく、結晶性や機械強度を考慮して適宜選択することが可能である。なかでも、結晶性と製造コストの点から、前記一般式(Q1)で示される構成単位としては、下記一般式(Q2)、(Q3)、(Q6)、(Q7)がより好ましく、前記一般式(Q2)、(Q7)が最も好ましい。
Figure 0006069972
(一般式(Q2)〜(Q7)は、全てパラ位で表しているが、結晶性を有するものであれば、オルト位やメタ位等他の結合位置を含んでも構わない。ただし、結晶性の観点からパラ位がより好ましい。)

前記(P1)と同様に、本発明の前記一般式(P2)、(Q1)、(P3)で表されるイオン性基を含有しないセグメントを得るために、2価フェノール化合物に保護基を導入し、重合後または成型後に脱保護せしめて、一般式(P2)、(Q1)、(P3)で表される構造に変換することも好ましい。保護基を有する2価フェノール化合物の好適な具体例としては、反応性と化学的安定性の点から、前記一般式(r1)〜(r10)で表される化合物、並びにこれらの2価フェノール化合物由来の誘導体を挙げることができる。 これら2価フェノール化合物のなかでも、安定性の点から一般式(r4)〜(r10)で表される化合物がより好ましく、さらに好ましくは一般式(r4)、(r5)および(r9)で表される化合物、最も好ましくは一般式(r4)で表される化合物である。

スルホンイミド基を含有するセグメント、イオン性基を含有しないセグメントの数平均分子量は、相分離構造のドメインサイズに関係し、低加湿でのプロトン伝導性と物理的耐久性のバランスから、0.5万以上、5万以下がより好ましく、さらに好ましくは、1万以上、4万以下、最も好ましくは1.5万以上、3万以下である。 本発明のブロック共重合体は、セグメント長比の制御により、透過型電子顕微鏡観察で共連続またはラメラ様の相分離構造を観察することができる。ブロック共重合体の相分離構造、つまりスルホンイミド基を含有するセグメントとイオン性基を含有しないセグメントの凝集状態およびその形状を制御することによって、低加湿条件下においても優れたプロトン伝導性を実現できる。相分離構造は透過型電子顕微鏡(TEM)や原子間力顕微鏡(AFM)等によって分析することが可能である。
本発明のブロック共重合体としては、TEMによる観察を5万倍で行った場合に、相分離構造が観察され、画像処理により計測した平均層間距離または平均粒子間距離が8nm以上、300nm以下であるものが好ましい。中でも、平均層間距離または平均粒子間距離が10nm以上、100nm以下がより好ましく、最も好ましくは15nm以上、50nm以下である。透過型電子顕微鏡によって相分離構造が観察されない、または、平均層間距離または平均粒子間距離が8nm未満である場合には、イオンチャンネルの連続性が不足し、伝導度が不足する場合があるので好ましくない。また、層間距離が5000nmを越える場合には、機械強度や寸法安定性が不良となる場合があり、好ましくない。
本発明の高分子電解質材料を高分子電解質膜に成型する方法に特に制限はないが、溶液状態より製膜する方法あるいは溶融状態より製膜する方法等が可能である。前者では、たとえば、該高分子電解質材料をN−メチル−2−ピロリドン等の溶媒に溶解し、その溶液をガラス板等の上に流延塗布し、溶媒を除去することにより製膜する方法が例示できる。
製膜に用いる溶媒としては、高分子電解質材料を溶解し、その後に除去し得るものであればよく、例えば、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルスルホキシド、スルホラン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、ヘキサメチルホスホントリアミド等の非プロトン性極性溶媒、γ−ブチロラクトン、酢酸ブチルなどのエステル系溶媒、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネートなどのカーボネート系溶媒、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等のアルキレングリコールモノアルキルエーテル、あるいはイソプロパノールなどのアルコール系溶媒、水およびこれらの混合物が好適に用いられるが、非プロトン性極性溶媒が最も溶解性が高く好ましい。また、スルホンイミド基を含有するセグメントの溶解性を高めるために、18−クラウンー6などのクラウンエーテルを添加することも好適である。
また、本発明において、ブロック共重合体を使用する場合には、溶媒の選択は相分離構造に対して重要であり、非プロトン性極性溶媒と極性の低い溶媒を混合して使用することも好適な方法である。
必要な固形分濃度に調製したポリマー溶液を常圧の濾過もしくは加圧濾過などに供し、高分子電解質溶液中に存在する異物を除去することは強靱な膜を得るために好ましい方法である。ここで用いる濾材は特に限定されるものではないが、ガラスフィルターや金属性フィルターが好適である。該濾過で、ポリマー溶液が通過する最小のフィルターの孔径は、1μm以下が好ましい。濾過を行わないと異物の混入を許すこととなり、膜破れが発生したり、耐久性が不十分となるので好ましくない。

次いで、得られた高分子電解質膜はスルホンイミド基の少なくとも一部を金属あるいはアンモニウム塩の状態で熱処理することが好ましい。用いる高分子電解質材料が重合時に塩の状態で重合するものであれば、そのまま製膜、熱処理することが好ましい。金属塩の金属カチオンはスルホンイミドと塩を形成しうるものであればよいが、価格および環境負荷の点からはLi、Na、K、Rb、Cs、Mg、Ca、Sr、Ba、Ti、V、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Zr、Mo、Wなどのカチオンが好ましく、これらの中でもLi、Na、K、Ca、Sr、Baのカチオンがより好ましく、Li、Na、Kのカチオンがさらに好ましい。また同様の観点で、アンモニウム塩のアンモニウムカチオンとしては、トリメチルアンモニウム、トリエチルアンモニウム、トリプロピルアンモニウム、トリブチルアンモニウムなどの第三級アンモニウムまたは、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、テトラプロピルアンモニウム、テトラブチルアンモニウムなどの第四級アンモニウムカチオンが好ましい。 この熱処理の温度は好ましくは80〜350℃、さらに好ましくは100〜200℃、特に好ましくは120〜150℃である。熱処理時間は、好ましくは10秒〜12時間、さらに好ましくは30秒〜6時間、特に好ましくは1分〜1時間である。熱処理温度が低すぎると、機械強度や物理的耐久性が不足する場合がある。一方、高すぎると膜材料の化学的分解が進行する場合がある。熱処理時間が10秒未満であると熱処理の効果が不足する。一方、12時間を超えると膜材料の劣化を生じやすくなる。熱処理により得られた高分子電解質膜は必要に応じて酸性水溶液に浸漬することによりプロトン置換することができる。この方法で成形することによって本発明の高分子電解質膜はプロトン伝導度と物理的耐久性をより良好なバランスで両立することが可能となる。
本発明のスルホンイミド基含有ポリマーは、高分子電解質材料として好適であり、特に、高分子電解質成型体として好適に用いられる。本発明において高分子電解質成型体とは、本発明の高分子電解質材料を含有する成型体を意味する。本発明の高分子電解質成型体としては、膜類(フィルムおよびフィルム状のものを含む)の他、板状、繊維状、中空糸状、粒子状、塊状、微多孔状、コーティング類、発泡体類など、使用用途によって様々な形態をとりうる。ポリマーの設計自由度の向上および機械特性や耐溶剤性等の各種特性の向上が図れることから、幅広い用途に適応可能である。特に高分子電解質成型体が膜類であるときに好適である。
本発明において、アセタールおよび/ またはケタール基などで保護したケトン部位の少なくとも一部を脱保護せしめ、ケトン部位とする方法は特に限定されるものではない。前記脱保護反応は、不均一又は均一条件下に水及び酸の存在下において行うことが可能であるが、機械強度や耐溶剤性の観点からは、膜状等に成型した後で酸処理する方法がより好ましい。具体的には、成型された膜を硫酸水溶液中に浸漬することにより脱保護することが可能であり、酸の濃度や水溶液の温度については適宜選択することができる。
ポリマーに対して必要な酸性水溶液の重量比は、好ましくは1〜100倍であるけれども更に大量の水を使用することもできる。酸触媒は好ましくは存在する水の0.1〜50重量% の濃度において使用する。好適な酸触媒としては塩酸、硝酸、フルオロスルホン酸、硫酸などのような強鉱酸、及びp−トルエンスルホン酸、トリフルオロメタンルスホン酸などのような強有機酸が挙げられる。ポリマーの膜厚等に応じて、酸触媒及び過剰水の量、反応圧力などは適宜選択できる。
例えば、膜厚50μm の膜であれば、6N塩酸水溶液に例示されるような酸性水溶液中に浸漬し、95℃ で1〜48時間加熱することにより、容易にほぼ全量を脱保護することが可能である。また、25 ℃ の1N 塩酸水溶液に2 4 時間浸漬しても、大部分の保護基を脱保護することは可能である。ただし、脱保護の条件としてはこれらに限定される物ではなく、酸性ガスや有機酸等で脱保護したり、熱処理によって脱保護しても構わない。
本発明の高分子電解質材料を固体高分子型燃料電池用として使用する際には、高分子電解質膜および電極触媒層などが好適である。中でも高分子電解質膜に好適に用いられる。固体高分子型燃料電池用として使用する場合、通常、膜の状態で高分子電解質膜や電極触媒層バインダーとして使用されるからである。
本発明の高分子電解質成型体は、種々の用途に適用可能である。例えば、体外循環カラム、人工皮膚などの医療用途、ろ過用用途、耐塩素性逆浸透膜などのイオン交換樹脂用途、各種構造材用途、電気化学用途、加湿膜、防曇膜、帯電防止膜、太陽電池用膜、ガスバリアー材料に適用可能である。また、人工筋肉、アクチュエーター材料としても好適である。中でも種々の電気化学用途により好ましく利用できる。電気化学用途としては、例えば、燃料電池、レドックスフロー電池、水電解装置、クロロアルカリ電解装置等が挙げられるが、中でも燃料電池が最も好ましい。
本発明によって得られる高分子電解質膜の膜厚としては、好ましくは1〜2000μmのものが好適に使用される。実用に耐える膜の機械強度、物理的耐久性を得るには1μmより厚い方がより好ましく、膜抵抗の低減つまり発電性能の向上のためには2000μmより薄い方が好ましい。かかる膜厚のさらに好ましい範囲は3〜50μm、特に好ましい範囲は10〜30μmである。かかる膜厚は、溶液濃度あるいは基板上への塗布厚により制御することができる。
また、本発明によって得られる高分子電解質膜には、通常の高分子化合物に使用される結晶化核剤、可塑剤、安定剤、酸化防止剤あるいは離型剤等の添加剤を、本発明の目的に反しない範囲内で添加することができる。
また、本発明によって得られる高分子電解質膜には、前述の諸特性に悪影響をおよぼさない範囲内で機械的強度、熱安定性、加工性などの向上を目的に、各種ポリマー、エラストマー、フィラー、微粒子、各種添加剤などを含有させてもよい。また、微多孔膜、不織布、メッシュ等で補強しても良い。
固体高分子型燃料電池は、電解質膜として水素イオン伝導性高分子電解質膜を用い、その両面に触媒層、電極基材及びセパレータが順次積層された構造となっている。このうち、電解質膜の両面に触媒層を積層させたもの(即ち触媒層/電解質膜/触媒層の層構成のもの)は触媒層付電解質膜(CCM)と称され、さらに電解質膜の両面に触媒層及びガス拡散基材を順次積層させたもの(即ち、ガス拡散基材/触媒層/電解質膜/触媒層/ガス拡散基材の層構成のもの)は、電極−電解質膜接合体または膜電極複合体(MEA)と称されている。
この触媒層付電解質膜の製造方法としては、電解質膜表面に、触媒層を形成するための触媒層ペースト組成物を塗布及び乾燥させるという塗布方式が一般的に行われている。しかし、この塗布方式であると、電解膜がペーストに含まれる水、アルコール等の溶剤により膨潤変形してしまい、電解質膜表面に所望の触媒層が形成しにくい問題が生じている。また、乾燥させる工程で、電解膜も高温に曝してしまうため、電解膜が熱膨張等を起こし、変形する問題も生じている。この問題を克服するために、予め触媒層のみを基材上に作製し、この触媒層を転写することにより、触媒層を電解質膜上に積層させる方法(転写法)が提案されている(例えば、特開2009−9910)。

本発明によって得られる高分子電解質膜は、結晶性により、強靱で耐溶剤性に優れるため、前記塗布方式、転写法のいずれの場合であっても、触媒層付電解質膜としても特に好適に使用できる。
加熱プレスにより、MEAを作製する場合は、特に制限はなく、公知の方法(例えば、電気化学,1985, 53, p.269.記載の化学メッキ法、電気化学協会編(J. Electrochem. Soc.)、エレクトロケミカル サイエンス アンド テクノロジー (Electrochemical Science and Technology),1988, 135, 9, p.2209. 記載のガス拡散電極の熱プレス接合法など)を適用することが可能である。
加熱プレスにより一体化する場合は、その温度や圧力は、電解質膜の厚さ、水分率、触媒層や電極基材により適宜選択すればよい。また、本発明では電解質膜が乾燥した状態または吸水した状態でもプレスによる複合化が可能である。具体的なプレス方法としては圧力やクリアランスを規定したロールプレスや、圧力を規定した平板プレスなどが挙げられ、工業的生産性やスルホン酸基を有する高分子材料の熱分解抑制などの観点から0℃〜250℃の範囲で行うことが好ましい。加圧は電解質膜や電極保護の観点からできる限り弱い方が好ましく、平板プレスの場合、10MPa以下の圧力が好ましく、加熱プレス工程による複合化を実施せずに電極と電解質膜を重ね合わせ燃料電池セル化することもアノード、カソード電極の短絡防止の観点から好ましい選択肢の一つである。この方法の場合、燃料電池として発電を繰り返した場合、短絡箇所が原因と推測される電解質膜の劣化が抑制される傾向があり、燃料電池として耐久性が良好となる。
さらに、本発明の高分子電解質材料および高分子電解質膜を使用した固体高分子型燃料電池の用途としては、特に限定されないが、移動体の電力供給源が好ましいものである。特に、携帯電話、パソコン、PDA、テレビ、ラジオ、ミュージックプレーヤー、ゲーム機、ヘッドセット、DVDプレーヤーなどの携帯機器、産業用などの人型、動物型の各種ロボット、コードレス掃除機等の家電、玩具類、電動自転車、自動二輪、自動車、バス、トラックなどの車両や船舶、鉄道などの移動体の電力供給源、据え置き型の発電機など従来の一次電池、二次電池の代替、もしくはこれらとのハイブリット電源として好ましく用いられる。
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、各物性の測定条件は次の通りである。
(1)イオン交換容量
中和滴定法により測定した。測定は3回実施し、その平均値を取った。
1.プロトン置換し、純粋で十分に洗浄した電解質膜の膜表面の水分を拭き取った後、100℃にて12h以上真空乾燥し、乾燥重量を求めた。
2.電解質に5wt%硫酸ナトリウム水溶液を50mL加え、12h静置してイオン交換した。
3.0.01mol/L水酸化ナトリウム水溶液を用いて、生じた硫酸を滴定した。指示薬として市販の滴定用フェノールフタレイン溶液0.1w/v% を加え、薄い赤紫色になった点を終点とした。
4.イオン交換容量は下記の式により求めた。
イオン交換容量(meq/g)=〔水酸化ナトリウム水溶液の濃度(mmol/ml)×滴下量(ml)〕/試料の乾燥重量(g)
(2)プロトン伝導度
膜状の試料を25℃の純水に24時間浸漬した後、恒温恒湿槽中に入れ、80℃、相対湿度95%の範囲で、定電位交流インピーダンス法によりプロトン伝導度の湿度依存性を測定した。
測定装置としては、Solartron製電気化学測定システム(Solartron 1287 Electrochemical InterfaceおよびSolartron 1255B Frequency Response Analyzer)を使用し、2端子法で定電位インピーダンス測定を行い、プロトン伝導度を求めた。交流振幅は、50mVとした。サンプルは幅10mm、長さ50mmの膜を用いた。測定治具はフェノール樹脂で作製し、測定部分は開放させた。電極として、白金板(厚さ100μm、2枚)を使用した。電極は電極間距離15mm、サンプル膜の表側と裏側に、互いに平行にかつサンプル膜の長手方向に対して直交するように配置した。
(3)数平均分子量、重量平均分子量
ポリマーの数平均分子量、重量平均分子量をGPCにより測定した。紫外検出器と示差屈折計の一体型装置として東ソー製HLC−8022GPCを、またGPCカラムとして東ソー製TSK gel SuperHM−H(内径6.0mm、長さ15cm)2本を用い、N−メチル−2−ピロリドン溶媒(臭化リチウムを10mmol/L含有するN−メチル−2−ピロリドン溶媒)にて、サンプル濃度0.1wt%、流量0.2mL/min、温度40℃で測定し、標準ポリスチレン換算により数平均分子量、重量平均分子量を求めた。
(4)膜厚
ミツトヨ製グラナイトコンパレータスタンドBSG−20にセットしたミツトヨ製ID−C112型を用いて測定した。
(5)ビスフェノール化合物の純度分析
下記条件のガスクロマトグラフィー(GC)により定量分析した。
カラム:DB−5(J&W社製) L=30m Φ=0.53mm D=1.50μm
キャリヤー:ヘリウム(線速度=35.0cm/sec)
分析条件
Inj.temp. 300℃
Detct.temp. 320℃
Oven 50℃×1min
Rate 10℃/min
Final 300℃×15min
SP ratio 50:1
(6)核磁気共鳴スペクトル(NMR)
下記の測定条件で、NMRの測定を行い、芳香族スルホン酸誘導体の構造確認を行った。
装置 :EX−270
共鳴周波数 :270MHz(1H−NMR)
測定温度 :室温
溶解溶媒 :DMSO−d6
内部基準物質:TMS(0ppm)
積算回数 :16回
(7)耐熱水性
電解質膜の耐熱水性は95℃、熱水中での寸法変化率を測定することにより評価した。電解質膜を長さ約5cm、幅約1cmの短冊に切り取り、25℃の水中に24時間浸漬後、ノギスで長さ(L1)を測長した。該電解質膜を95℃の熱水中に8時間浸漬後、再度ノギスで長さ(L2)を測長し、その寸法変化の大きさを目視で観察した。
(8)透過電子顕微鏡(TEM)による相分離構造の観察
染色剤として2wt%酢酸鉛水溶液中に試料片を浸漬させ、25℃下で48時間放置した。染色処理された試料を取りだし、可視硬化樹脂で包埋し、可視光を30 秒照射し固定した。
ウルトラミクロトームを用いて室温下で薄片100nmを切削し、得られた薄片をCu グリッド上に回収しTEM 観察に供した。観察は加速電圧100kV で実施し、撮影は、写真倍率として×8,000、×20,000、×100,000 になるように撮影を実施した。機器としては、TEM H7100FA(日立製作所社製)を使用した。
合成例1
下記式(G1)で表される2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,3−ジオキソラン(K−DHBP)の合成
Figure 0006069972
攪拌器、温度計及び留出管を備えた 500mlフラスコに、4,4′−ジヒドロキシベンゾフェノン49.5g、エチレングリコール134g、オルトギ酸トリメチル96.9g及びp−トルエンスルホン酸1水和物0.50gを仕込み溶解した。その後78〜82℃で2時間保温攪拌した。更に、内温を120℃まで徐々に昇温、ギ酸メチル、メタノール、オルトギ酸トリメチルの留出が完全に止まるまで加熱した。この反応液を室温まで冷却後、反応液を酢酸エチルで希釈し、有機層を5%炭酸カリウム水溶液100mlで洗浄し分液後、溶媒を留去した。残留物にジクロロメタン80mlを加え結晶を析出させ、濾過し、乾燥して2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,3−ジオキソラン52.0gを得た。この結晶をGC分析したところ99.8%の2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,3−ジオキソランと0.2%の4,4′−ジヒドロキシベンゾフェノンであった。
合成例2
下記式(G2)で表されるジソジウムー3,3’−ジスルホネート−4,4’−ジフルオロベンゾフェノンの合成
Figure 0006069972
4,4’−ジフルオロベンゾフェノン109.1g(アルドリッチ試薬)を発煙硫酸(50%SO)150mL(和光純薬試薬)中、100℃で10h反応させた。その後、多量の水中に少しずつ投入し、NaOHで中和した後、食塩200gを加え合成物を沈殿させた。得られた沈殿を濾別し、エタノール水溶液で再結晶し、上記一般式(G2)で示されるジソジウム 3,3’−ジスルホネート−4,4’−ジフルオロベンゾフェノンを得た。純度は99.3%であった。構造はH−NMRで確認した。不純物はキャピラリー電気泳動(有機物)およびイオンクロマトグラフィー(無機物)で定量分析を行った。
実施例1
(下記式(G3)で表される芳香族スルホンイミド誘導体の合成)
Figure 0006069972
攪拌器を備えた 1Lフラスコに窒素気流下、3,3’−ジスルホネート−4,4’−ジフルオロベンゾフェノン133gを秤量し、アセトニトリル330mL、スルホラン250mLに溶解させ、更に三塩化ホスホリル290gを加え、2時間加熱還流した後、N、N-ジメチルアセトアミド20mLを加えて16時間加熱還流した。氷冷後、冷水1.5Lを添加、生成した沈殿物濾集し冷水500mLで洗浄した。沈澱物を室温で減圧乾燥後、トルエンで300mLで再結晶し5,5‘−カルボニルビス(2−フルオロベンゼン−1−スルフォニルクロライド)65gを得た。構造はH−NMRで確認した。
5,5‘−カルボニルビス(2−フルオロベンゼン−1−スルフォニルクロライド)33.2gとトリフルオロメタンスルホンアミド26.6gを脱水アセトン250mLに溶解、氷冷したところに、トリエチルアミン54mLを窒素下で滴下、反応混合物を室温で24時間撹拌した。塩化トリエチルアンモニウム沈殿物を濾過によって分離した後、濾液をロータリーエバポレータによって濃縮し、酢酸エチル 400mLで希釈、1N HCl 200mLで2回洗浄した。有機相を硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒を除去して酸性スルホンイミド粗生成物を赤褐色粘稠性液体として得た。生成物をメタノール/水(200/75mL)に再溶解し、14mlの水に溶解した13.82gのK2CO3で処理した。溶液を濾別し、約100mLに濃縮、徐冷した。沈殿物を濾取し、水で洗浄、乾燥し、エタノールによる再結晶精製を経て、スルホンイミドカリウム塩(G3)を44.13g得た。構造はH−NMRで確認した。不純物はキャピラリー電気泳動(有機物)およびイオンクロマトグラフィー(無機物)で定量分析を行った。
実施例2 (下記式(G4)で表される芳香族スルホンイミド誘導体の合成)
Figure 0006069972
SUS製オートクレーブ中にて、実施例1で合成した5,5‘−カルボニルビス(2−フルオロベンゼン−1−スルフォニルクロライド)30gを脱水アセトン250mLに溶解し、−40℃に冷却、無水アンモニア2.45g加えた後、20℃まで昇温させ3時間撹拌した。濾過により分収し、スルホンアミド体を得た。続いて、スルホンアミド体26g、ベンゼン−1,3−ジスルフォニルジクロライド38gを脱水アセトン220mLに溶解、氷冷したところに、トリエチルアミン14gを窒素下でゆっくり滴下、反応混合物を室温で24時間撹拌した。塩化トリエチルアンモニウム沈殿物を濾過によって分離した後、濾液をロータリーエバポレータによって濃縮し、酢酸エチル 350mLで希釈、1N HCl 175mLで2回洗浄した。有機相を硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒を除去して酸性スルホンイミド粗生成物を得た。生成物をメタノール/水(170/65mL)に再溶解し、12mlの水に溶解した24gのK2CO3で処理した。溶液を濾別し、約100mLに濃縮、徐冷した。沈殿物を濾取し、水で洗浄、乾燥し、エタノールによる再結晶精製を経て、スルホンイミドカリウム塩(G4)を得た。構造はH−NMRで確認した。不純物はキャピラリー電気泳動(有機物)およびイオンクロマトグラフィー(無機物)で定量分析を行った。
実施例3 (下記式(G5)で表される芳香族スルホンイミド誘導体の合成)
Figure 0006069972
攪拌器を備えた 1Lフラスコに窒素気流下、実施例2で合成したスルホンイミド誘導体(G4)を100gに対し、3,3’−ジスルホネート−4,4’−ジフルオロベンゾフェノン133gを秤量し、アセトニトリル110mL、スルホラン90mLに溶解させ、更に三塩化ホスホリル100gを加え、2時間加熱還流した後、N、N-ジメチルアセトアミド7mLを加えて16時間加熱還流した。氷冷後、冷水1.5Lを添加、生成した沈殿物濾集し冷水500mLで洗浄した。沈澱物を室温で減圧乾燥後、トルエンで300mLで再結晶し、スルホン酸クロライド体82gを得た。構造はH−NMRで確認した。
続いてスルホン酸クロライド体70gとトリフルオロメタンスルホンアミド25gを脱水アセトン240mLに溶解、氷冷したところに、トリエチルアミン51mLを窒素下で滴下、反応混合物を室温で24時間撹拌した。塩化トリエチルアンモニウム沈殿物を濾過によって分離した後、濾液をロータリーエバポレータによって濃縮し、酢酸エチル 380mLで希釈、1N HCl 190mLで2回洗浄した。有機相を硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒を除去して酸性スルホンイミド粗生成物を得た。生成物をメタノール/水(190/70mL)に再溶解し、13mlの水に溶解した13.1gのK2CO3で処理した。溶液を濾別し、約100mLに濃縮、徐冷した。沈殿物を濾取し、水で洗浄、乾燥し、エタノールによる再結晶精製を経て、スルホンイミドカリウム塩(G5)を得た。構造はH−NMRで確認した。不純物はキャピラリー電気泳動(有機物)およびイオンクロマトグラフィー(無機物)で定量分析を行った。
実施例4 (下記式(G6)で表される芳香族スルホンイミド誘導体の合成)
Figure 0006069972
ベンゼン−1,3−ジスルフォニルジクロライドをビフェニル−2,4−ジスルフォニルジクロライド48.5gに変えた以外は実施例2記載と同様の方法で、スルホンイミドカリウム塩(G6)を得た。構造はH−NMRで確認した。不純物はキャピラリー電気泳動(有機物)およびイオンクロマトグラフィー(無機物)で定量分析を行った。
実施例5 (下記式(G7)で表される芳香族スルホンイミド誘導体の合成)
Figure 0006069972
トリフルオロメタンスルホンアミドをヘプタデカフルオロオクタンスルホンアミド89gに変えた以外は実施例1記載と同様の方法で、スルホンイミドカリウム塩(G7)を得た。構造はH−NMRで確認した。不純物はキャピラリー電気泳動(有機物)およびイオンクロマトグラフィー(無機物)で定量分析を行った。
実施例6
(下記一般式(G8)で表されるスルホンイミド基含有ポリマー)
Figure 0006069972
かき混ぜ機、窒素導入管、Dean−Starkトラップを備えた1000mL三口フラスコに、炭酸カリウム28.0g(アルドリッチ試薬、202mmol)、前記合成例1で得たK−DHBP25.8g(100mmol)、前記実施例1で得たスルホンイミドカリウム塩 (G 3)60.2g(84mmol)、4,4’−ジフルオロベンゾフェノン4,45g(アルドリッチ試薬、20.4mmol)および18−クラウン−6 、19.5g(和光純薬74mmol)を入れ、窒素置換後、N−メチルピロリドン(NMP)300mL、トルエン100mL中で180℃で脱水後、昇温してトルエン除去、210℃で3時間重合を行った。多量のイソプロピルアルコールに再沈殿することで精製を行い、ケタール基を有する前躯体ポリマーを得た。重量平均分子量は33万であった。
得られた前駆体ポリマーを溶解させた25重量%N−メチルピロリドン(NMP)溶液をガラス繊維フィルターを用いて加圧ろ過後、ガラス基板上に流延塗布し、100℃にて4h乾燥後、窒素下150℃で10分間熱処理し、ポリケタールケトン膜(膜厚24μm)を得た。ポリマーの溶解性は極めて良好であった。95℃で10重量%硫酸水溶液に24時間浸漬してプロトン置換、脱保護反応した後に、大過剰量の純水に24時間浸漬して充分洗浄し、上記式(G4)で表されるスルホンイミド基含有ポリマーからなる高分子電解質膜を得た。得られた膜のスルホンイミド基密度は2.1meq/gであった。
極めて強靱な電解質膜であり、目視では透明で均一な膜であった。プロトン伝導度は、80℃、相対湿度85%で290mS/cm、80℃、相対湿度25%で2mS/cmであり、低加湿プロトン伝導性に優れていた。また、寸法変化率は13%と比較的小さく、耐熱水性にも優れていた。また、NMRにおいてケタール基の存在は認められなかった。

実施例7
(下記一般式(G9)で表されるスルホンイミド基含有ポリマー)
Figure 0006069972
かき混ぜ機、窒素導入管、Dean−Starkトラップを備えた1000mL三口フラスコに、炭酸カリウム24.5g(アルドリッチ試薬、177mmol)、前記合成例1で得たK−DHBP25.8g(100mmol)、前記実施例1で得たスルホンイミドカリウム塩 (G 3)43.9g(61.2mmol)、4,4’−ジフルオロベンゾフェノン8.73g(アルドリッチ試薬、40mmol)および18−クラウン−6 、14.2g(和光純薬53.9mmol)を入れ、窒素置換後、N−メチルピロリドン(NMP)300mL、トルエン100mL中で180℃で脱水後、昇温してトルエン除去、210℃で3時間重合を行った。多量のイソプロピルアルコールに再沈殿することで精製を行い、ケタール基を有する前躯体ポリマーを得た。重量平均分子量は30万であった。
得られた前駆体ポリマーを実施例6記載の方法で製膜し、前駆体ポリマー膜を得た(膜厚25μm)。成型前のスルホンイミド基含有ポリマーの溶解性は極めて良好であった。続いて、実施例6記載の方法でプロトン置換、水洗浄し、上記式(G5)で表されるスルホンイミド基含有ポリマーからなる高分子電解質膜を得た。得られた膜のスルホンイミド基密度は1.8meq/gであった。
極めて強靱な電解質膜であり、目視では透明で均一な膜であった。プロトン伝導度は、80℃、相対湿度85%で240mS/cm、80℃、相対湿度25%で1mS/cmであり、低加湿プロトン伝導性に優れていた。また、寸法変化率は10%と比較的小さく、耐熱水性にも優れていた。また、NMRにおいてケタール基の存在は認められなかった。
実施例8

(下記一般式(G10)で表されるスルホンイミド基含有ポリマー)
Figure 0006069972
KDHBP25.8g(100mmol)をK−DHBPを12.9g(50mmol)、4,4’−ビフェノール9.31g(50mmol)に変えた以外は、実施例7と同様の方法で、ケタール基を有する前駆体ポリマーを得た。重量平均分子量は26万であった。
得られた前駆体ポリマーを実施例6記載の方法で製膜し、前駆体ポリマー膜を得た(膜厚25μm)。成型前のスルホンイミド基含有ポリマーの溶解性は極めて良好であった。続いて、実施例6記載の方法でプロトン置換、水洗浄し、上記式(G9)で表されるスルホンイミド基含有ポリマーからなる高分子電解質膜を得た。得られた膜のスルホンイミド基密度は1.7meq/gであった。
極めて強靱な電解質膜であり、目視では透明で均一な膜であった。プロトン伝導度は、80℃、相対湿度85%で210mS/cm、80℃、相対湿度25%で0.7mS/cmであり、低加湿プロトン伝導性に優れていた。また、寸法変化率は18%と比較的小さく、耐熱水性にも優れていた。また、NMRにおいてケタール基の存在は認められなかった。
実施例9

(下記一般式(G11)で表されるスルホンイミド基含有ポリマー)
Figure 0006069972
(式中、*は他部位との結合箇所を表す)
KDHBP25.8g(100mmol)をK−DHBPを18.1g(70mmol)、2,6−ジヒドロキシナフタレン4.81g(30mmol)に変えた以外は、実施例7と同様の方法で、ケタール基を有する前駆体ポリマーを得た。重量平均分子量は28万であった。
得られた前駆体ポリマーを実施例6記載の方法で製膜し、前駆体ポリマー膜を得た(膜厚25μm)。成型前のスルホンイミド基含有ポリマーの溶解性は極めて良好であった。続いて、実施例6記載の方法でプロトン置換、水洗浄し、上記式(G11)で表されるスルホンイミド基含有ポリマーからなる高分子電解質膜を得た。得られた膜のスルホンイミド基密度は1.7meq/gであった。
極めて強靱な電解質膜であり、目視では透明で均一な膜であった。プロトン伝導度は、80℃、相対湿度85%で220mS/cm、80℃、相対湿度25%で0.8mS/cmであり、低加湿プロトン伝導性に優れていた。また、寸法変化率は16%と比較的小さく、耐熱水性にも優れていた。また、NMRにおいてケタール基の存在は認められなかった。
実施例10

(下記一般式(G12)で表されるスルホンイミド基含有ポリマー)
Figure 0006069972
(式中、*は他部位との結合箇所を表す)
スルホンイミドカリウム塩(G3)43.9g(61.2mmol)を実施例2で得たスルホンイミドカリウム塩(G4)64.8g(61.2mmol)に変えた以外は、実施例7と同様の方法でケタール基を有する前駆体ポリマーを得た。重量平均分子量は32万であった。
得られた前駆体ポリマーを実施例6記載の方法で製膜し、前駆体ポリマー膜を得た(膜厚25μm)。成型前のスルホンイミド基含有ポリマーの溶解性は極めて良好であった。続いて、実施例6記載の方法でプロトン置換、水洗浄し、上記式(G12)で表されるスルホンイミド基含有ポリマーからなる高分子電解質膜を得た。得られた膜のスルホンイミド基密度は3meq/gであった。
強靱な電解質膜であり、目視では透明で均一な膜であった。プロトン伝導度は、80℃、相対湿度85%で600mS/cm、80℃、相対湿度25%で8mS/cmであり、低加湿プロトン伝導性に優れていた。また、寸法変化率は28%と比較的小さかった。また、NMRにおいてケタール基の存在は認められなかった。
実施例11

(下記一般式(G13)で表されるスルホンイミド基含有ポリマー)
Figure 0006069972
(式中、*は他部位との結合箇所を表す)
スルホンイミドカリウム塩(G3)43.9g(61.2mmol)を実施例3で得たスルホンイミドカリウム塩(G5)75.4g(61.2mmol)に変えた以外は、実施例7と同様の方法でケタール基を有する前駆体ポリマーを得た。重量平均分子量は31万であった。
得られた前駆体ポリマーを実施例6記載の方法で製膜し、前駆体ポリマー膜を得た(膜厚25μm)。成型前のスルホンイミド基含有ポリマーの溶解性は極めて良好であった。続いて、実施例6記載の方法でプロトン置換、水洗浄し、上記式(G13)で表されるスルホンイミド基含有ポリマーからなる高分子電解質膜を得た。得られた膜のスルホンイミド基密度は2.6meq/gであった。
強靱な電解質膜であり、目視では透明で均一な膜であった。プロトン伝導度は、80℃、相対湿度85%で630mS/cm、80℃、相対湿度25%で8.2mS/cmであり、低加湿プロトン伝導性に優れていた。また、寸法変化率は35%と比較的小さかった。また、NMRにおいてケタール基の存在は認められなかった。
実施例12

(下記一般式(G14)で表されるスルホンイミド基含有ポリマー)
Figure 0006069972
(式中、*は他部位との結合箇所を表す)
スルホンイミドカリウム塩(G3)43.9g(61.2mmol)を実施例4で得たスルホンイミドカリウム塩(G6)65.7g(61.2mmol)に変えた以外は、実施例7と同様の方法でケタール基を有する前駆体ポリマーを得た。重量平均分子量は32万であった。
得られた前駆体ポリマーを実施例6記載の方法で製膜し、前駆体ポリマー膜を得た(膜厚25μm)。成型前のスルホンイミド基含有ポリマーの溶解性は極めて良好であった。続いて、実施例6記載の方法でプロトン置換、水洗浄し、上記式(G14)で表されるスルホンイミド基含有ポリマーからなる高分子電解質膜を得た。得られた膜のスルホンイミド基密度は2.8meq/gであった。
強靱な電解質膜であり、目視では透明で均一な膜であった。プロトン伝導度は、80℃、相対湿度85%で570mS/cm、80℃、相対湿度25%で6.5mS/cmであり、低加湿プロトン伝導性に優れていた。また、寸法変化率は26%と比較的小さかった。また、NMRにおいてケタール基の存在は認められなかった。
実施例13

(下記一般式(G15)で表されるスルホンイミド基含有ポリマー)
Figure 0006069972
かき混ぜ機、窒素導入管、Dean−Starkトラップを備えた1000mL三口フラスコに、炭酸カリウム40.5g(アルドリッチ試薬、293mmol)、前記合成例1で得たK−DHBP25.8g(100mmol)、前記実施例5で得たスルホンイミドカリウム塩 (G7)143g(101mmol)および18−クラウン−6、23.5g(和光純薬89.1mmol)を入れ、窒素置換後、N−メチルピロリドン(NMP)300mL、トルエン100mL中で180℃で脱水後、昇温してトルエン除去、210℃で3時間重合を行った。多量のイソプロピルアルコールに再沈殿することで精製を行い、ケタール基を有する前躯体ポリマーを得た。重量平均分子量は28万であった。
得られた前駆体ポリマーを実施例6記載の方法で製膜し、前駆体ポリマー膜を得た(膜厚25μm)。成型前のスルホンイミド基含有ポリマーの溶解性は極めて良好であった。続いて、実施例6記載の方法でプロトン置換、水洗浄し、上記式(G15)で表されるスルホンイミド基含有ポリマーからなる高分子電解質膜を得た。得られた膜のスルホンイミド基密度は1.3meq/gであった。
極めて強靱な電解質膜であり、目視では透明で均一な膜であった。プロトン伝導度は、80℃、相対湿度85%で190mS/cm、80℃、相対湿度25%で0.7mS/cmであり、低イオン交換容量の割に、低加湿プロトン伝導性に優れていた。スルホンイミド基末端をパーフルオロアルキル基で置換することで、プロトン解離性、プロトン伝導性が向上したと考えられる。また、寸法変化率は5%と小さく、耐熱水性にも優れていた。また、NMRにおいてケタール基の存在は認められなかった。 実施例14
(下記一般式(G16)で表されるプレポリマーの重合)
Figure 0006069972

(G16)


かき混ぜ機、窒素導入管、Dean−Starkトラップを備えた500mL三口フラスコに、炭酸カリウム13.82g(アルドリッチ試薬、100mmol)、前記合成例1で得たK−DHBP20.66g(80mmol)および4,4’−ジフルオロベンゾフェノン17.46g(アルドリッチ試薬、80mmol)を入れ、窒素置換後、N−メチルピロリドン(NMP)90mL、トルエン45mL中で180℃で脱水後、昇温してトルエン除去、230℃で1時間重合を行った。多量の水で再沈殿することで精製を行い、一般式(G16)で示されるプレポリマーを得た。重量平均分子量は5万であった。
(ブロック共重合体の重合)
かき混ぜ機、窒素導入管、Dean−Starkトラップを備えた500mL三口フラスコに、炭酸カリウム6.91g(アルドリッチ試薬、50mmol)、プレポリマーを8.73g(20mmol)、前記合成例1で得たK−DHBP10.33g(40mmol)、4,4’−ジフルオロベンゾフェノン3.49g(アルドリッチ試薬、16mmol)、および前記実施例1で得たスルホンイミドカリウム塩(G3)17.20g(24mmol)を入れ、窒素置換後、N−メチルピロリドン(NMP)120mL、トルエン45mL中で180℃で脱水後、昇温してトルエン除去、230℃で10時間重合を行った。多量の水で再沈殿することで精製を行い、ブロックポリマーを得た。重量平均分子量は29万であった。
ブロックポリマーは、前記一般式(G16)を繰り返し単位とするプレポリマーのブロック(A2)と、前記一般式(G16)で表される構造が0.4、K−DHBPとスルホンイミドカリウム塩(G3)が反応した結果生成されるエーテル基で連結した構造が0.6である繰り返し単位のブロック(A1)から構成される。
得られた前駆体ポリマーを実施例6記載の方法で製膜し、前駆体ポリマー膜を得た(膜厚23μm)。成型前のスルホンイミド基含有ポリマーの溶解性は極めて良好であった。続いて、実施例6記載の方法でプロトン置換、水洗浄し、スルホンイミド基含有ブロックポリマーからなる高分子電解質膜を得た。中和滴定から求めたイオン交換容量は1.7mmol/gであった。またH−NMRからケタール基の残存は認められなかった。
極めて強靱な電解質膜であり、目視で白濁した膜であった。そのプロトン伝導度は、80℃、相対湿度85%で250mS/cm、80℃、相対湿度25%で1.5mS/cmにあり、低加湿プロトン伝導性に優れていた。また、寸法変化率は9%と比較的小さく、耐熱水性にも優れていた。TEM観察では、ドメインサイズ250nmの相分離構造が確認できた。
実施例15
(下記一般式(G17)で表されるイオン性基を含有しないオリゴマーa1’の合成)
かき混ぜ機、窒素導入管、Dean−Starkトラップを備えた1000mL三口フラスコに、炭酸カリウム16.59g(アルドリッチ試薬、120mmol)、前記合成例1で得たK−DHBP25.8g(100mmol)および4,4’−ジフルオロベンゾフェノン20.3g(アルドリッチ試薬、93mmol)を入れ、窒素置換後、N−メチルピロリドン(NMP)300mL、トルエン100mL中で160℃で脱水後、昇温してトルエン除去、180℃で1時間重合を行った。多量のメタノールに再沈殿精製を行い、イオン性基を含有しないオリゴマーa1(末端:ヒドロキシル基)を得た。数平均分子量は10000であった。
かき混ぜ機、窒素導入管、Dean−Starkトラップを備えた500mL三口フラスコに、炭酸カリウム1.1g(アルドリッチ試薬、8mmol)、イオン性基を含有しない前記オリゴマーa1(末端:ヒドロキシル基)を20.0g(2mmol)を入れ、窒素置換後、N−メチルピロリドン(NMP)100mL、シクロヘキサン30mL中で100℃で脱水後、昇温してシクロヘキサン除去し、デカフルオロビフェニル4.0g(アルドリッチ試薬、12mmol)を入れ、105℃で1時間反応を行った。多量のイソプロピルアルコールで再沈殿することで精製を行い、下記式(G17)で示されるイオン性基を含有しないオリゴマーa1’(末端:フルオロ基)を得た。数平均分子量は11000であり、イオン性基を含有しないオリゴマーa1’の数平均分子量は、リンカー部位(分子量630)を差し引いた値10400と求められた。
Figure 0006069972
(下記一般式(G18)で表されるイオン性基を含有するオリゴマーa2の合成)
かき混ぜ機、窒素導入管、Dean−Starkトラップを備えた1000mL三口フラスコに、炭酸カリウム27.6g(アルドリッチ試薬、200mmol)、前記合成例1で得たK−DHBP12.9g(50mmol)および4,4’−ビフェノール9.3g(アルドリッチ試薬、50mmol)、実施例1で得たスルホンイミドカリウム塩(G3)66.7g(93mmol)、および18−クラウン−6 、17.9g(和光純薬82mmol)を入れ、窒素置換後、N−メチルピロリドン(NMP)300mL、トルエン100mL中で170℃で脱水後、昇温してトルエン除去、180℃で1時間重合を行った。多量のイソプロピルアルコールで再沈殿することで精製を行い、下記式(G18)で示されるイオン性基を含有するオリゴマーa2(末端:ヒドロキシル基)を得た。数平均分子量は16000であった。
Figure 0006069972
(スルホンイミド基を含有するセグメント(A1)としてオリゴマーa2、イオン性基を含有しないセグメント(A2)としてオリゴマーa1、リンカー部位としてオクタフルオロビフェニレンを含有するブロック共重合体b1の合成)
かき混ぜ機、窒素導入管、Dean−Starkトラップを備えた500mL三口フラスコに、炭酸カリウム0.56g(アルドリッチ試薬、4mmol)、イオン性基を含有するオリゴマーa2(末端:ヒドロキシル基)を16g(1mmol)を入れ、窒素置換後、N−メチルピロリドン(NMP)100mL、シクロヘキサン30mL中で100℃で脱水後、昇温してシクロヘキサン除去し、イオン性基を含有しないオリゴマーa1’(末端:フルオロ基)11g(1mmol)を入れ、105℃で24時間反応を行った。多量のイソプロピルアルコールへの再沈殿精製により、ブロック共重合体b1を得た。重量平均分子量は49万であった。
ブロックポリマーb1は、スルホンイミド基を含有するセグメント(A1)として、前記一般式(P1)で表されるセグメントを50モル%、イオン性基を含有しないセグメント(A2)として、前記一般式(P2)で表される構成単位を100モル%含有していた。得られたブロックポリマーb1を実施例6記載の方法で製膜し、前駆体ポリマー膜を得た(膜厚25μm)。成型前のスルホンイミド基含有ポリマーの溶解性は極めて良好であった。続いて、実施例6記載の方法でプロトン置換、水洗浄し、スルホンイミド基含有ブロックポリマーからなる高分子電解質膜を得た。
中和滴定から求めたイオン交換容量は1.6meq/g、H−NMRから求めたモル組成比(A1/A2)は、48モル/52モル=0.92、ケタール基の残存は認められなかった。極めて強靱な電解質膜であり、目視では透明で均一な膜であった。プロトン伝導度は、80℃、相対湿度85%で300mS/cm、80℃、相対湿度25%で4.5mS/cmであり、低加湿プロトン伝導性に優れていた。また、寸法変化率は7%と小さく、耐熱水性にも優れていた。さらに、TEM観察により、ドメインサイズ30nmの共連続様の相分離構造が確認できた。
実施例16
(前記一般式(G17)で表されるイオン性基を含有しないオリゴマーa3’の合成)
4,4’−ジフルオロベンゾフェノンの仕込量を21.4g(アルドリッチ試薬、98mmol)に変えた以外は実施例15に記載の方法で、イオン性基を含有しないオリゴマーa3(末端ヒドロキシル基)の合成を行った。数平均分子量は20000であった。
また、イオン性基を含有しない前記オリゴマーa1(末端:ヒドロキシル基)に変えて、イオン性基を含有しない前記オリゴマーa3(末端:ヒドロキシル基)40.0g(2mmol)を仕込む以外は、実施例15に記載の方法で、前記式(G17)で示されるイオン性基を含有しないオリゴマーa3’(末端フルオロ基)の合成を行った。数平均分子量は21000であり、イオン性基を含有しないオリゴマーa5’の数平均分子量は、リンカー部位(分子量630)を差し引いた値20400と求められた。
(下記一般式(G19)で表されるイオン性基を含有するオリゴマーa4の合成)
スルホンイミドカリウム塩(G3)を前記実施例2で得たスルホンイミドカリウム塩(G4)101g(95mmol)に変えた以外は、実施例15に記載の方法で、下記式(G19)で表されるイオン性基を含有するオリゴマーa4(末端ヒドロキシル基)を得た。数平均分子量は23000であった。
Figure 0006069972
(式中、*は他部位との結合箇所を表す)
(スルホンイミド基を含有するセグメント(A1)としてオリゴマーa4、イオン性基を含有しないセグメント(A2)としてオリゴマーa3、リンカー部位としてオクタフルオロビフェニレンを含有するブロック共重合体b2の合成)
イオン性基を含有するオリゴマーa2(末端ヒドロキシル基)に変えて、イオン性基を含有するオリゴマーa4(末端ヒドロキシル基)を23g(1mmol)を入れ、イオン性基を含有しないオリゴマーa1’(末端フルオロ基)に変えて、イオン性基を含有しないオリゴマーa3’(末端フルオロ基)20g(1mmol)を入れた以外は実施例15に記載の方法で、ブロック共重合体b2を得た。重量平均分子量は39万であった。
ブロックポリマーb1は、スルホンイミド基を含有するセグメント(A1)として、前記一般式(P1)で表されるセグメントを50モル%、イオン性基を含有しないセグメント(A2)として、前記一般式(P2)で表される構成単位を100モル%含有していた。得られたブロックポリマーb2を実施例6記載の方法で製膜し、前駆体ポリマー膜を得た(膜厚25μm)。成型前のスルホンイミド基含有ポリマーの溶解性は極めて良好であった。続いて、実施例6記載の方法でプロトン置換、水洗浄し、スルホンイミド基含有ブロックポリマーからなる高分子電解質膜を得た。
中和滴定から求めたイオン交換容量は2.0meq/g、H−NMRから求めたモル組成比(A1/A2)は、30モル/70モル=0.43、ケタール基の残存は認められなかった。極めて強靱な電解質膜であり、目視では透明で均一な膜であった。プロトン伝導度は、80℃、相対湿度85%で500mS/cm、80℃、相対湿度25%で6mS/cmであり、低加湿プロトン伝導性に優れていた。また、寸法変化率は13%と小さく、耐熱水性にも優れていた。さらに、TEM観察により、ドメインサイズ45nmの相分離構造が確認できた。
実施例17
(スルホンイミド基を含有するセグメント(A1)としてオリゴマーa4、イオン性基を含有しないセグメント(A2)としてオリゴマーa1、リンカー部位としてオクタフルオロビフェニレンを含有するブロック共重合体b3の合成)
イオン性基を含有するオリゴマーa2(末端ヒドロキシル基)に変えて、イオン性基を含有するオリゴマーa4(末端ヒドロキシル基)を23g(1mmol)を入れた以外は実施例15に記載の方法で、ブロック共重合体b3を得た。重量平均分子量は40万であった。
ブロックポリマーb3は、スルホンイミド基を含有するセグメント(A1)として、前記一般式(P1)で表されるセグメントを50モル%、イオン性基を含有しないセグメント(A2)として、前記一般式(P2)で表される構成単位を100モル%含有していた。得られたブロックポリマーb3を実施例6記載の方法で製膜し、前駆体ポリマー膜を得た(膜厚25μm)。成型前のスルホンイミド基含有ポリマーの溶解性は極めて良好であった。続いて、実施例6記載の方法でプロトン置換、水洗浄し、スルホンイミド基含有ブロックポリマーからなる高分子電解質膜を得た。
中和滴定から求めたイオン交換容量は2.7meq/g、H−NMRから求めたモル組成比(A1/A2)は、45モル/55モル=0.82、ケタール基の残存は認められなかった。極めて強靱な電解質膜であり、目視では透明で均一な膜であった。プロトン伝導度は、80℃、相対湿度85%で700mS/cm、80℃、相対湿度25%で15mS/cmであり、低加湿プロトン伝導性に優れていた。また、寸法変化率は25%と比較的小さく、耐熱水性にも優れていた。さらに、TEM観察により、ドメインサイズ40nmの共連続相分離構造が確認できた。
実施例18
(下記一般式(G20)で表されるイオン性基を含有しないオリゴマーa5’の合成)
K−DHBPの仕込み量を25.8g(100mmol)から12.9g(50mmol)に変更し、追加で4,4’−ビフェノール 9.31g(50mmol)を入れる以外は実施例15に記載の方法で、イオン性基を含有しないオリゴマーa5(末端ヒドロキシル基)の合成を行った。数平均分子量は10000であった。
また、イオン性基を含有しない前記オリゴマーa1(末端:ヒドロキシル基)に変えて、イオン性基を含有しない前記オリゴマーa5(末端:ヒドロキシル基)20.0g(2mmol)を仕込む以外は、実施例15に記載の方法で、下記式(G20)で示されるイオン性基を含有しないオリゴマーa5’(末端フルオロ基)の合成を行った。数平均分子量は11000であり、イオン性基を含有しないオリゴマーa5’の数平均分子量は、リンカー部位(分子量630)を差し引いた値10400と求められた。
Figure 0006069972
(スルホンイミド基を含有するセグメント(A1)としてオリゴマーa2、イオン性基を含有しないセグメント(A2)としてオリゴマーa5、リンカー部位としてオクタフルオロビフェニレンを含有するブロック共重合体b4の合成)
イオン性基を含有しないオリゴマーa1’(末端フルオロ基)に変えて、イオン性基を含有しないオリゴマーa5’(末端フルオロ基)を11g(1mmol)入れた以外は実施例15に記載の方法で、ブロック共重合体b4を得た。重量平均分子量は35万であった。
ブロックポリマーb3は、スルホンイミド基を含有するセグメント(A1)として、前記一般式(P1)で表されるセグメントを50モル%、イオン性基を含有しないセグメント(A2)として、前記一般式(P2)で表される構成単位を50モル%含有していた。得られたブロックポリマーb4を実施例6記載の方法で製膜し、前駆体ポリマー膜を得た(膜厚25μm)。成型前のスルホンイミド基含有ポリマーの溶解性は極めて良好であった。続いて、実施例6記載の方法でプロトン置換、水洗浄し、スルホンイミド基含有ブロックポリマーからなる高分子電解質膜を得た。
中和滴定から求めたイオン交換容量は1.6meq/g、H−NMRから求めたモル組成比(A1/A2)は、48モル/52モル=0.92、ケタール基の残存は認められなかった。極めて強靱な電解質膜であり、目視では透明で均一な膜であった。プロトン伝導度は、80℃、相対湿度85%で280mS/cm、80℃、相対湿度25%で4mS/cmであり、低加湿プロトン伝導性に優れていた。また、寸法変化率は9%と小さく、耐熱水性にも優れていた。さらに、TEM観察により、ドメインサイズ33nmの共連続相分離構造が確認できた。
実施例19
(前記一般式(G19)で表されるイオン性基を含有するオリゴマーa6の合成)
スルホンイミドカリウム塩(G3)を前記実施例2で得たスルホンイミドカリウム塩(G4)98.5g(93mmol)に変えた以外は、実施例15に記載の方法で、前記式(G19)で表されるイオン性基を含有するオリゴマーa6(末端ヒドロキシル基)を得た。数平均分子量は16000であった。
(スルホンイミド基を含有するセグメント(A1)としてオリゴマーa6、イオン性基を含有しないセグメント(A2)としてオリゴマーa1、リンカー部位としてオクタフルオロビフェニレンを含有するブロック共重合体b5の合成)
イオン性基を含有するオリゴマーa2(末端ヒドロキシル基)に変えて、イオン性基を含有するオリゴマーa6(末端ヒドロキシル基)を16g(1mmol)入れた以外は実施例15に記載の方法で、ブロック共重合体b5を得た。重量平均分子量は38万であった。
ブロックポリマーb5は、スルホンイミド基を含有するセグメント(A1)として、前記一般式(P1)で表されるセグメントを50モル%、イオン性基を含有しないセグメント(A2)として、前記一般式(P2)で表される構成単位を100モル%含有していた。得られたブロックポリマーb5を実施例6記載の方法で製膜し、前駆体ポリマー膜を得た(膜厚25μm)。成型前のスルホンイミド基含有ポリマーの溶解性は極めて良好であった。続いて、実施例6記載の方法でプロトン置換、水洗浄し、スルホンイミド基含有ブロックポリマーからなる高分子電解質膜を得た。
中和滴定から求めたイオン交換容量は2.4meq/g、H−NMRから求めたモル組成比(A1/A2)は、37モル/63モル=0.59、ケタール基の残存は認められなかった。極めて強靱な電解質膜であり、目視では透明で均一な膜であった。プロトン伝導度は、80℃、相対湿度85%で600mS/cm、80℃、相対湿度25%で10mS/cmであり、低加湿プロトン伝導性に優れていた。また、寸法変化率は18%と小さく、耐熱水性にも優れていた。さらに、TEM観察により、ドメインサイズ35nmの相分離構造が確認できた。
実施例20
(下記一般式(G21)で表されるイオン性基を含有するオリゴマーa7の合成)
スルホンイミドカリウム塩(G3)を前記実施例3で得たスルホンイミドカリウム塩(G5)114.5g(93mmol)に変えた以外は、実施例15に記載の方法で、下記式(G21)で表されるイオン性基を含有するオリゴマーa7(末端ヒドロキシル基)を得た。数平均分子量は16000であった。
Figure 0006069972
(式中、*は他部位との結合箇所を表す)
(スルホンイミド基を含有するセグメント(A1)としてオリゴマーa7、イオン性基を含有しないセグメント(A2)としてオリゴマーa1、リンカー部位としてオクタフルオロビフェニレンを含有するブロック共重合体b6の合成)
イオン性基を含有するオリゴマーa2(末端ヒドロキシル基)に変えて、イオン性基を含有するオリゴマーa7(末端ヒドロキシル基)を16g(1mmol)入れた以外は実施例15に記載の方法で、ブロック共重合体b6を得た。重量平均分子量は39万であった。
ブロックポリマーb6は、スルホンイミド基を含有するセグメント(A1)として、前記一般式(P1)で表されるセグメントを50モル%、イオン性基を含有しないセグメント(A2)として、前記一般式(P2)で表される構成単位を100モル%含有していた。得られたブロックポリマーb6を実施例6記載の方法で製膜し、前駆体ポリマー膜を得た(膜厚25μm)。成型前のスルホンイミド基含有ポリマーの溶解性は極めて良好であった。続いて、実施例6記載の方法でプロトン置換、水洗浄し、スルホンイミド基含有ブロックポリマーからなる高分子電解質膜を得た。
中和滴定から求めたイオン交換容量は1.9meq/g、H−NMRから求めたモル組成比(A1/A2)は、32モル/68モル=0.47、ケタール基の残存は認められなかった。極めて強靱な電解質膜であり、目視では透明で均一な膜であった。プロトン伝導度は、80℃、相対湿度85%で680mS/cm、80℃、相対湿度25%で16mS/cmであり、低加湿プロトン伝導性に優れていた。また、寸法変化率は15%と小さく、耐熱水性にも優れていた。さらに、TEM観察により、ドメインサイズ38nmの相分離構造が確認できた。

比較例1 市販のナフィオン(登録商標)NRE211CS膜(デュポン社製)を用い、各種特性を評価した。中和滴定から求めたイオン交換容量は0.9meq/gであった。目視では透明で均一な膜であり、TEM観察において明確な相分離構造は確認されなかった。プロトン伝導度は、80℃、相対湿度85%で100mS/cm、80℃、相対湿度25%で3mS/cmであった。また、熱水中に浸漬すると激しく膨潤し、取り扱いが困難で掴むと破れてしまうこともあった。

比較例2
(下記一般式(G22)で表されるスルホン酸基含有ポリマー)
Figure 0006069972
かき混ぜ機、窒素導入管、Dean−Starkトラップを備えた1000mL三口フラスコに、炭酸カリウム23.2g(アルドリッチ試薬、168mmol)、前記合成例1で得たK−DHBP25.8g(100mmol)、前記合成例2で得たジソジウムー3,3’−ジスルホネート−4,4’−ジフルオロベンゾフェノン22.2g(52.5mmol)、4,4’−ジフルオロベンゾフェノン 11.1g(アルドリッチ試薬、51mmol)および18−クラウン−6 、12.2g(和光純薬46.2mmol)を入れ、窒素置換後、N−メチルピロリドン(NMP)300mL、トルエン100mL中で180℃で脱水後、昇温してトルエン除去、210℃で3時間重合を行った。多量のイソプロピルアルコールに再沈殿することで精製を行い、ケタール基を有する前躯体ポリマーを得た。重量平均分子量は31万であった。
得られた前駆体ポリマーを実施例6記載の方法で製膜し、前駆体ポリマー膜を得た(膜厚24μm)。成型前のスルホン酸基含有ポリマーの溶解性は極めて良好であった。続いて、実施例6記載の方法でプロトン置換、水洗浄し、スルホン酸基含有ポリマーからなる高分子電解質膜を得た。中和滴定から求めたイオン交換容量は2.1mmol/gであった。
極めて強靱な電解質膜であり、目視では透明で均一な膜であった。プロトン伝導度は、80℃、相対湿度85%で130mS/cm、80℃、相対湿度25%で0.2mS/cmであり、実施例に劣っていた。一方、寸法変化率は8%と比較的小さく、耐熱水性に優れていた。また、NMRにおいてケタール基の存在は認められなかった。

比較例3
(下記一般式(G23)で表されるスルホン酸基含有ポリマー)
Figure 0006069972
かき混ぜ機、窒素導入管、Dean−Starkトラップを備えた1000mL三口フラスコに、炭酸カリウム21.4g(アルドリッチ試薬、155mmol)、前記合成例1で得たK−DHBP25.8g(100mmol)、前記合成例2で得たジソジウムー3,3’−ジスルホネート−4,4’−ジフルオロベンゾフェノン17.2g(40.8mmol)、4,4’−ジフルオロベンゾフェノン 13.1g(アルドリッチ試薬、60mmol)および18−クラウン−6 、9.48g(和光純薬35.9mmol)を入れ、窒素置換後、N−メチルピロリドン(NMP)300mL、トルエン100mL中で180℃で脱水後、昇温してトルエン除去、210℃で3時間重合を行った。多量のイソプロピルアルコールに再沈殿することで精製を行い、ケタール基を有する前躯体ポリマーを得た。重量平均分子量は34万であった。
得られた前駆体ポリマーを実施例6記載の方法で製膜し、前駆体ポリマー膜を得た(膜厚24μm)。成型前のスルホン酸基含有ポリマーの溶解性は極めて良好であった。続いて、実施例6記載の方法でプロトン置換、水洗浄し、スルホン酸基含有ポリマーからなる高分子電解質膜を得た。中和滴定から求めたイオン交換容量は1.8mmol/gであった。
極めて強靱な電解質膜であり、目視では透明で均一な膜であった。プロトン伝導度は、80℃、相対湿度85%で105mS/cm、80℃、相対湿度25%で0.09mS/cmであり、実施例に劣っていた。一方、寸法変化率は6%と小さく、耐熱水性に優れていた。また、NMRにおいてケタール基の存在は認められなかった。
比較例4
非特許文献1および実施例1記載の方法に従って、ポリエーテルスルホン系スルホンイミド含有ポリマーを合成した。
(下記式(G24)で表される芳香族スルホンイミド誘導体)
Figure 0006069972
攪拌器を備えた 1Lフラスコに窒素気流下、3,3’−ジスルホネート−4,4’−ジクロロジフェニルスルホン155gを秤量し、アセトニトリル330mL、スルホラン250mLに溶解させ、更に三塩化ホスホリル290gを加え、2時間加熱還流した後、N、N-ジメチルアセトアミド20mLを加えて16時間加熱還流した。氷冷後、冷水1.5Lを添加、生成した沈殿物濾集し冷水500mLで洗浄した。沈澱物を室温で減圧乾燥後、トルエンで300mLで再結晶し5,5‘−スルホニルビス(2−クロロベンゼン−1−スルホニルクロライド)76gを得た。構造はH−NMRで確認した。

5,5‘−スルホニルビス(2−クロロベンゼン−1−スルホニルクロライド)38.7gとトリフルオロメタンスルホンアミド26.6gを脱水アセトン250mLに溶解、氷冷したところに、トリエチルアミン54mLを窒素下で滴下、反応混合物を室温で24時間撹拌した。塩化トリエチルアンモニウム沈殿物を濾過によって分離した後、濾液をロータリーエバポレータによって濃縮し、酢酸エチル 400mLで希釈、1N HCl 200mLで2回洗浄した。有機相を硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒を除去して酸性スルホンイミド粗生成物を赤褐色粘稠性液体として得た。生成物をメタノール/水(200/75mL)に再溶解し、14mlの水に溶解した13.82gのK2CO3で処理した。溶液を濾別し、約100mLに濃縮、徐冷した。沈殿物を濾取し、水で洗浄、乾燥し、エタノールによる再結晶精製を経て、スルホンイミドカリウム塩(G24)を42.2g得た。構造はH−NMRで確認した。不純物はキャピラリー電気泳動(有機物)およびイオンクロマトグラフィー(無機物)で定量分析を行った。
(下記一般式(G25)で表されるスルホンイミド基含有ポリマー)
Figure 0006069972
かき混ぜ機、窒素導入管、Dean−Starkトラップを備えた500mL三口フラスコに、炭酸カリウム11.6g(アルドリッチ試薬、84mmol)、ビフェノール9.41g(50mmol)、前記スルホンイミド誘導体(G24)を23.6g(30mmol)、4,4’−ジクロロジフェニルスルホン5.74g(アルドリッチ試薬、20mmol)を入れ、窒素置換後、N−メチルピロリドン(NMP)300mL、トルエン100mL中で130℃で脱水後、昇温してトルエン除去、190℃で16時間、205℃で2時間重合を行った。多量のイソプロピルアルコールに再沈殿することで精製を行い、カリウム塩型のスルホンイミド含有ポリマーを得た。重量平均分子量は28万であった。 得られたポリマーを実施例6記載の方法で製膜し、ポリマー膜を得(膜厚25μm)、続いて、実施例6記載の方法でプロトン置換、水洗浄し、上記式(G25)記載のスルホンイミド基含有ポリマーからなる高分子電解質膜を得た。中和滴定から求めたイオン交換容量は1.9mmol/gであった。
硬くて脆い電解質膜であったが、目視では透明で均一な膜であった。プロトン伝導度は、80℃、相対湿度85%で190mS/cm、80℃、相対湿度25%で0.6mS/cmであり、実施例に比べ特に低加湿プロトン伝導性に劣っていた。また、寸法変化率は55%と大きく、耐熱水性にも劣っていた。

比較例5 米国特許出願公開第2008−0286626号および実施例1記載の方法に従って、末端をフェニル基で置換されたスルホンイミド基含有ポリマーを合成した。
(下記式(G26)で表される芳香族スルホンイミド誘導体)
Figure 0006069972
攪拌器を備えた 500mLフラスコに窒素気流下、前記合成例2で得た3,3’−ジスルホネート−4,4’−ジフルオロベンゾフェノン66.5gを秤量し、アセトニトリル165mL、スルホラン125mLに溶解させ、更に三塩化ホスホリル145gを加え、2時間加熱還流した後、N、N-ジメチルアセトアミド10mLを加えて16時間加熱還流した。氷冷後、冷水750mLを添加、生成した沈殿物濾集し冷水250mLで洗浄した。沈澱物を室温で減圧乾燥後、トルエンで150mLで再結晶し5,5‘−カルボニルビス(2−フルオロベンゼン−1−スルフォニルクロライド)32.0gを得た。構造はH−NMRで確認した。
5,5‘−カルボニルビス(2−フルオロベンゼン−1−スルフォニルクロライド)16.6gとフェニルスルホンアミド14.0gを脱水アセトン125mLに溶解、氷冷したところに、トリエチルアミン27mLを窒素下で滴下、反応混合物を室温で24時間撹拌した。塩化トリエチルアンモニウム沈殿物を濾過によって分離した後、濾液をロータリーエバポレータによって濃縮し、酢酸エチル 200mLで希釈、1N HCl 100mLで2回洗浄した。有機相を硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒を除去して酸性スルホンイミド粗生成物を得た。生成物をメタノール/水(100/38mL)に再溶解し、7mlの水に溶解した6.91gのK2CO3で処理した。溶液を濾別し、約50mLに濃縮、徐冷した。沈殿物を濾取し、水で洗浄、乾燥し、エタノールによる再結晶精製を経て、スルホンイミドカリウム塩(G26)を22.0g得た。構造はH−NMRで確認した。不純物はキャピラリー電気泳動(有機物)およびイオンクロマトグラフィー(無機物)で定量分析を行った。
(下記一般式(G27)で表されるスルホンイミド基含有ポリマー)
Figure 0006069972
かき混ぜ機、窒素導入管、Dean−Starkトラップを備えた500mL三口フラスコに、炭酸カリウム11.6g(アルドリッチ試薬、84mmol)、4, 4’−シクロヘキシリデンビスフェノール13.4g(50mmol)、スルホンイミド誘導体(G26)を25.7g(35mmol)、4,4’−ジフルオロベンゾフェノン3.27g(アルドリッチ試薬、15mmol)を入れ、窒素置換後、N−メチルピロリドン(NMP)300mL、トルエン100mL中、180℃で脱水後、昇温してトルエン除去、210℃で3時間重合を行った。多量のイソプロピルアルコールに再沈殿することで精製を行い、カリウム塩型のスルホンイミド含有ポリマーを得た。重量平均分子量は29万であった。
得られたポリマーを実施例6記載の方法で製膜し、ポリマー膜を得(膜厚26μm)、続いて、実施例6記載の方法でプロトン置換、水洗浄し、上記式(G27)記載のスルホンイミド基含有ポリマーからなる高分子電解質膜を得た。中和滴定から求めたイオン交換容量は1.8mmol/gであった。
硬くて脆い電解質膜であったが、目視では透明で均一な膜であった。プロトン伝導度は、80℃、相対湿度85%で170mS/cm、80℃、相対湿度25%で0.3mS/cmであり、実施例に比べ、特に低加湿プロトン伝導性に劣っていた。また、寸法変化率は80%と大きく、耐熱水性にも劣っていた。

比較例6 特開2008−163160号記載の方法に従って、スルホンイミド基含有ブロックポリマーを合成した。
(下記式(G28)で表される芳香族スルホンイミド誘導体)
Figure 0006069972
塩化3−(2,5−ジクロロベンゾイル)ベンゼンスルフォニル(27.97g、80mmol)とトリフルオロメタンスルホンアミド(13.30g、87mmol)を脱水アセトン(250mL)に溶解したところへ、トリエチルアミン(27mL、200mmol)を氷冷溶液に窒素下で滴下、反応混合物を室温で24時間撹拌した。塩化トリエチルアンモニウム沈殿物を濾過によって分離した後、濾液をロータリーエバポレータによって濃縮し、酢酸エチル(400mL)で希釈し、1N HCl(2×200mL)で洗浄した。有機相をMgSO4で乾燥し、溶媒を除去して酸性スルホン酸イミド粗生成物を茶色のオイルとして得た。生成物をメタノール/水(200/75mL)に再溶解し、K2CO3(6.91g、50mmol、7mlの水に溶解)で処理した。溶液を濾別し、約100mLに濃縮し、徐冷した。沈殿物を濾取し、水で洗浄し、乾燥し、活性炭を使用してエタノールで再結晶させ、スルホン酸イミドカリウム塩(G28)を29g得た。
(2−クロロベンゾニトリル末端ポリ(エーテルニトリル)オリゴマー)
4、4‘−ジクロロジフェニルスルホン(12.92g、45mmol)、4、4’−
ジヒドロキシジフェニルスルホン(12.51g、50mmol)およびK2CO3(8.29g、60mmol)からなる混合物を、NMP/トルエン(50/30mL)中で、窒素雰囲気下、180℃で8時間、トルエン/水共沸混合物をDean−Starkトラップに回収しながら、水酸基末端オリゴマーの形成が終了するまで攪拌を行った。反応混合物を80℃に冷却し、2−クロロ−6−フルオロベンゾニトリル(3.11g、20mmol)を一度に加え、さらに165℃で4時間攪拌した。重縮合生成物をメタノールに沈殿分離し、THF(300mL)中で攪拌することにより分別し2−クロロベンゾニトリル末端ポリ(エーテルニトリル)オリゴマーを得た。H−NMRにより、該オリゴマーがクロロベンゾニトリル基で定量的に末端封止されていることを確認し、不純物はキャピラリー電気泳動(有機物)およびイオンクロマトグラフィー(無機物)で定量分析を行った。 数平均分子量は8000であった。
(スルホンイミド含有ブロック共重合体)
芳香族スルホンイミド誘導体(G28)(14.0g、28.0mmol)、2−クロロベンゾニトリル末端ポリ(エーテルニトリル)オリゴマー(Mn=8000、8.32g、1.04mmol)、Ni(PPh3)2Cl2(0.57g、0.87mmol)、PPh3(3.05g、11.61mmol)、NaI(0.13g、0.87mmol)、Znダスト(4.74g、72.6g)の混合物に対し、脱水DMAc(45mL)を、窒素気流下で添加し、反応混合物を80℃で4時間撹拌した。得られた濃厚な懸濁液をTHFで希釈し、セライトパッドで濾過して余分なZnを取り除いた。トルエンとヘキサンを順番に濾液に添加し、カリウム塩としての粗ポリマーを沈殿させた。粉状生成物を高温(80℃)の2N H2SO4とともに2時間攪拌した後、高温のまま濾過し、pH>6となるまで繰り返し洗浄、沸騰水内での20時間撹拌、濾過、乾燥を経て、スルホンイミド含有ブロック共重合体を得た。重量平均分子量は27万であった。
得られたポリマーをNMP/メタノール=2/1の混合溶液に溶解した後、ガラス基板上に膜をキャストし、オーブン内において80℃で30分乾燥した後、基材から剥離、さらに140℃で30分間乾燥し、スルホンイミド基含有ポリマーからなる高分子電解質膜を得た(膜厚24μm。中和滴定から求めたイオン交換容量は1.8mmol/gであった。
硬くて脆い電解質膜であったが、目視では透明で均一な膜であった。プロトン伝導度は、80℃、相対湿度85%で220mS/cm、80℃、相対湿度25%で1.2mS/cmであり、特に実施例4に比べて、低加湿プロトン伝導性に劣っていた。また、寸法変化率は55%と大きく、耐熱水性に関しても実施例に劣っていた。TEM観察では、ドメインサイズ27nmの相分離構造が確認できた。
比較例7
(下記一般式(G29)で表されるイオン性基を含有するオリゴマーc1の合成)
かき混ぜ機、窒素導入管、Dean−Starkトラップを備えた1000mL三口フラスコに、炭酸カリウム27.6g(アルドリッチ試薬、200mmol)、前記合成例1で得たK−DHBP12.9g(50mmol)および4,4’−ビフェノール9.3g(アルドリッチ試薬、50mmol)、前記合成例2で得たジソジウム 3,3’−ジスルホネート−4,4’−ジフルオロベンゾフェノン38.0g(90mmol)、および18−クラウン−6 、17.3g(和光純薬79mmol)を入れ、窒素置換後、N−メチルピロリドン(NMP)300mL、トルエン100mL中で170℃で脱水後、昇温してトルエン除去、180℃で1時間重合を行った。多量のイソプロピルアルコールで再沈殿することで精製を行い、下記式(G29)で示されるイオン性基を含有するオリゴマーc1(末端:ヒドロキシル基)を得た。数平均分子量は14000であった。
Figure 0006069972
(式(G29)において、Mは、NaまたはKを表す。)
(イオン性基を含有するセグメント(A1)としてオリゴマーc1、イオン性基を含有しないセグメント(A2)としてオリゴマーa1、リンカー部位としてオクタフルオロビフェニレンを含有するブロック共重合体d1の合成)
イオン性基を含有するオリゴマーa2(末端ヒドロキシル基)に変えて、イオン性基を含有するオリゴマーc1(末端ヒドロキシル基)を14g(1mmol)入れた以外は実施例15に記載の方法で、ブロック共重合体d1を得た。重量平均分子量は30万であった。
ブロックポリマーd1は、スルホンイミド基を含有するセグメント(A1)として、前記一般式(P1)で表されるセグメントを0モル%、イオン性基を含有しないセグメント(A2)として、前記一般式(P2)で表される構成単位を100モル%含有していた。得られたブロックポリマーd1を実施例6記載の方法で製膜し、前駆体ポリマー膜を得た(膜厚25μm)。成型前のスルホン酸基含有ポリマーの溶解性は極めて良好であった。続いて、実施例6記載の方法でプロトン置換、水洗浄し、スルホン酸基含有ブロックポリマーからなる高分子電解質膜を得た。
中和滴定から求めたイオン交換容量は1.4meq/g、H−NMRから求めたモル組成比(A1/A2)は、45モル/55モル=0.81、ケタール基の残存は認められなかった。極めて強靱な電解質膜であり、目視では透明で均一な膜であった。プロトン伝導度は、80℃、相対湿度85%で160mS/cm、80℃、相対湿度25%で0.5mS/cmであった。スルホンイミド基を含有しないため、実施例には劣っていたが、スルホン酸基含有ポリマー、低イオン交換容量にしては、低加湿プロトン伝導性に優れていた。また、寸法変化率は5%と小さく、耐熱水性にも優れていた。さらに、TEM観察により、ドメインサイズ15nmの共連続相分離構造が確認できた。
本発明のスルホンイミド基含有ポリマーおよび高分子電解質材料は、種々の電気化学装置(例えば、燃料電池、水電解装置、クロロアルカリ電解装置等)に適用可能である。これら装置の中でも、燃料電池用に好適であり、特に水素を燃料とする燃料電池に好適である。
本発明の固体高分子型燃料電池の用途としては、特に限定されないが、携帯電話、パソコン、PDA、ビデオカメラ、デジタルカメラなどの携帯機器、コードレス掃除機等の家電、玩具類、電動自転車、自動二輪、自動車、バス、トラックなどの車両や船舶、鉄道などの移動体の電力供給源、据え置き型の発電機など従来の一次電池、二次電池の代替、もしくはこれらとのハイブリット電源として好ましく用いられる。

Claims (14)

  1. 下記一般式(M1)で表されることを特徴とする芳香族スルホンイミド誘導体。
    Figure 0006069972
    (式(M1)中、R、Rはそれぞれ独立して、パーフルオロアルキル基からなる群、またはイオン性基を含有する芳香族基からなる群より選択される置換基を表す。M、Mは水素、金属カチオン、アンモニウムカチオンから選択されるカチオン種を表す。またX、Xはハロゲン原子を表す。)
  2. 前記一般式(M1)が下記一般式(M2)で表される請求項1記載の芳香族スルホンイミド誘導体。
    Figure 0006069972
    (式(M2)中、R、Rはそれぞれ独立して、パーフルオロアルキル基からなる群、またはイオン性基を含有する芳香族基からなる群より選択される置換基を表す。M、Mは水素、金属カチオン、アンモニウムカチオンから選択されるカチオン種を表す。)
  3. 前記イオン性基を含有する芳香族基の炭素数が4〜20である請求項1または2に記載の芳香族スルホンイミド誘導体。
  4. 前記イオン性基がスルホン酸基またはスルホンイミド基である請求項1〜3のいずれかに記載の芳香族スルホンイミド誘導体。
  5. 前記パーフルオロアルキル基の炭素数が1〜20である請求項1〜4のいずれかに記載の芳香族スルホンイミド誘導体。
  6. 請求項1〜5のいずれかに記載の芳香族スルホンイミド誘導体を用いて重合してなることを特徴とするスルホンイミド基含有芳香族ポリエーテル
  7. 下記一般式(P1)で表される構成単位を含有する請求項6に記載のスルホンイミド基含有芳香族ポリエーテル
    Figure 0006069972
    (式(P1)中、R、Rはそれぞれ独立して、パーフルオロアルキル基からなる群、またはイオン性基を含有する芳香族基からなる群より選択される置換基を表す。M、Mは水素、金属カチオン、アンモニウムカチオンから選択されるカチオン種を表す。)
  8. 前記一般式(P1)で表される構成単位の含有量が20重量%以上である請求項7に記載のスルホンイミド基含有芳香族ポリエーテル
  9. 少なくとも前記一般式(P1)で表される構成単位を有するセグメント(A1)とイオン性基を含有しない構成単位を有するセグメント(A2)を有し、共重合様式がブロック共重合である請求項7または8記載のスルホンイミド基含有芳香族ポリエーテル
  10. 前記イオン性基を含有しない構成単位が下記一般式(P2)で表される請求項9記載のスルホンイミド基含有芳香族ポリエーテル
    Figure 0006069972
    (一般式(P2)中、Ar〜Arは任意の2価のアリーレン基を表し、任意に置換されていても良いが、イオン性基を含有しない。Ar〜Arは互いに独立して2種類以上のアリーレン基が用いられても良い。*は一般式(P2)または他の構成単位との結合部位を表す。)
  11. 前記一般式(P2)で表される構成単位が、下記式(P3)で表されることを特徴とする請求項10に記載のスルホンイミド基含有芳香族ポリエーテル
    Figure 0006069972
  12. 請求項6〜11のいずれかに記載のスルホンイミド基含有芳香族ポリエーテルからなることを特徴とする高分子電解質材料。
  13. 請求項12記載の高分子電解質材料からなることを特徴とする高分子電解質成型体。
  14. 請求項12記載の高分子電解質材料を用いて構成されることを特徴とする固体高分子型燃料電池。
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