Nothing Special   »   [go: up one dir, main page]

JP2012506710A - 宿主細胞中での糖鎖付加タンパク質の産生のための新規ツール - Google Patents

宿主細胞中での糖鎖付加タンパク質の産生のための新規ツール Download PDF

Info

Publication number
JP2012506710A
JP2012506710A JP2011533616A JP2011533616A JP2012506710A JP 2012506710 A JP2012506710 A JP 2012506710A JP 2011533616 A JP2011533616 A JP 2011533616A JP 2011533616 A JP2011533616 A JP 2011533616A JP 2012506710 A JP2012506710 A JP 2012506710A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
cell
activity
glycoprotein
type
seq
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Withdrawn
Application number
JP2011533616A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2012506710A5 (ja
Inventor
ヘレニウス,ヨンネ
ノイペルト,クリスティーネ
エビ,マルクス
ナサブ,ファルノウシュ パルサイエ
フライ,アレクサンダー,ダニエル
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Lonza AG
Original Assignee
Lonza AG
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Lonza AG filed Critical Lonza AG
Publication of JP2012506710A publication Critical patent/JP2012506710A/ja
Publication of JP2012506710A5 publication Critical patent/JP2012506710A5/ja
Withdrawn legal-status Critical Current

Links

Images

Classifications

    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C12BIOCHEMISTRY; BEER; SPIRITS; WINE; VINEGAR; MICROBIOLOGY; ENZYMOLOGY; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING
    • C12NMICROORGANISMS OR ENZYMES; COMPOSITIONS THEREOF; PROPAGATING, PRESERVING, OR MAINTAINING MICROORGANISMS; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING; CULTURE MEDIA
    • C12N9/00Enzymes; Proenzymes; Compositions thereof; Processes for preparing, activating, inhibiting, separating or purifying enzymes
    • C12N9/10Transferases (2.)
    • C12N9/1048Glycosyltransferases (2.4)
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C12BIOCHEMISTRY; BEER; SPIRITS; WINE; VINEGAR; MICROBIOLOGY; ENZYMOLOGY; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING
    • C12PFERMENTATION OR ENZYME-USING PROCESSES TO SYNTHESISE A DESIRED CHEMICAL COMPOUND OR COMPOSITION OR TO SEPARATE OPTICAL ISOMERS FROM A RACEMIC MIXTURE
    • C12P21/00Preparation of peptides or proteins
    • C12P21/005Glycopeptides, glycoproteins
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C12BIOCHEMISTRY; BEER; SPIRITS; WINE; VINEGAR; MICROBIOLOGY; ENZYMOLOGY; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING
    • C12NMICROORGANISMS OR ENZYMES; COMPOSITIONS THEREOF; PROPAGATING, PRESERVING, OR MAINTAINING MICROORGANISMS; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING; CULTURE MEDIA
    • C12N9/00Enzymes; Proenzymes; Compositions thereof; Processes for preparing, activating, inhibiting, separating or purifying enzymes
    • C12N9/10Transferases (2.)
    • C12N9/1048Glycosyltransferases (2.4)
    • C12N9/1081Glycosyltransferases (2.4) transferring other glycosyl groups (2.4.99)
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C12BIOCHEMISTRY; BEER; SPIRITS; WINE; VINEGAR; MICROBIOLOGY; ENZYMOLOGY; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING
    • C12YENZYMES
    • C12Y204/00Glycosyltransferases (2.4)
    • C12Y204/99Glycosyltransferases (2.4) transferring other glycosyl groups (2.4.99)
    • C12Y204/99018Dolichyl-diphosphooligosaccharide—protein glycotransferase (2.4.99.18)

Landscapes

  • Chemical & Material Sciences (AREA)
  • Life Sciences & Earth Sciences (AREA)
  • Organic Chemistry (AREA)
  • Health & Medical Sciences (AREA)
  • Engineering & Computer Science (AREA)
  • Wood Science & Technology (AREA)
  • Zoology (AREA)
  • Bioinformatics & Cheminformatics (AREA)
  • Genetics & Genomics (AREA)
  • General Engineering & Computer Science (AREA)
  • General Health & Medical Sciences (AREA)
  • Biochemistry (AREA)
  • Biotechnology (AREA)
  • Molecular Biology (AREA)
  • Microbiology (AREA)
  • Medicinal Chemistry (AREA)
  • Biomedical Technology (AREA)
  • Chemical Kinetics & Catalysis (AREA)
  • General Chemical & Material Sciences (AREA)
  • Micro-Organisms Or Cultivation Processes Thereof (AREA)
  • Preparation Of Compounds By Using Micro-Organisms (AREA)
  • Medicines That Contain Protein Lipid Enzymes And Other Medicines (AREA)
  • Medicines Containing Antibodies Or Antigens For Use As Internal Diagnostic Agents (AREA)
  • Peptides Or Proteins (AREA)

Abstract

本発明は、真核生物における糖タンパク質産生およびタンパク質糖鎖工学、具体的には、酵母などの下等真核生物におけるヒト様複合またはハイブリッド糖鎖付加タンパク質の産生を改善する。本発明は、免疫グロブリンおよび他の治療用タンパク質として有用な糖鎖最適化タンパク質を産生することができる糖鎖改変真核宿主細胞を提供し、ヒト細胞中で産生される糖タンパク質と同様のグリカン構造を有する糖タンパク質を産生することができる細胞を提供する。本発明はさらに、ヒト様グリカン構造を有するタンパク質およびこれらの細胞により産生可能なその新規組成物を提供する。
【選択図】図12

Description

本発明は、真核生物における糖タンパク質産生およびタンパク質糖鎖付加(グリコシル化)工学、具体的には、酵母などの下等真核生物におけるヒト様複合もしくはハイブリッド糖鎖付加タンパク質の産生の分野に関する。本発明はさらに、ヒト用の免疫グロブリンおよび他の治療用タンパク質として特に有用である糖鎖付加が最適化されたタンパク質を産生することができる糖鎖付加改変真核宿主細胞に関する。本発明はまた、ヒト細胞中で産生される糖タンパク質と同様のグリカン構造を有する糖タンパク質を産生することができる遺伝子操作された真核非ヒト細胞にも関する。従って、本発明はさらに、ヒト様グリカン構造を有するタンパク質および前記細胞により産生可能であるその新規組成物に関する。
タンパク質に基づく生物薬剤の多くは、その治療用途に関連するタンパク質特性に多大に影響し得るいくつかの形態の翻訳後修飾を担持した。タンパク質糖鎖付加は、最も一般的な修飾である(約50%のヒトタンパク質が糖鎖付加されている)。糖鎖付加は、タンパク質組成物内のタンパク質上での異なるグリカン構造の生成を介して、該組成物中にかなりの不均質性を導入し得る。そのようなグリカン構造は、糖タンパク質は小胞体(ER)およびゴルジ複合体を通過するため(糖鎖付加カスケード)、糖鎖付加機構の多様な酵素の作用により作られる。タンパク質のグリカン構造の性質は、タンパク質の折畳み、安定性、寿命、往来、薬力学、薬物動態および免疫原性に影響する。グリカン構造はタンパク質の主要な機能的活性に大きく影響する。糖鎖付加は、局所タンパク質構造に影響し、ポリペプチド鎖の折畳みを指令するのを助けることができる。1つの重要な種類のグリカン構造は、いわゆるN-グリカンである。それらは、新生ポリペプチド鎖のコンセンサス配列NXS/T中のアスパラギン残基のアミノ(N)-基へのオリゴ糖の共有結合により生成する。N-グリカンはさらに、その最終的な標的へのタンパク質の分類もしくは指向に関与し得る:抗体のN-グリカンは、例えば、補体成分と相互作用することができる。N-グリカンはまた、例えば、その溶解性を増強し、その表面上の疎水性パッチを防護し、タンパク質溶解から保護し、および鎖内安定化相互作用を指令することにより、糖タンパク質を安定化するのに役立つ。糖鎖付加は、タンパク質半減期を調節することができ、例えば、ヒトにおいては、N-グリカン中の末端シアル酸の存在は、血流中に循環するタンパク質の半減期を増加させることができる。
オリゴ糖の合成は、ER膜の両側で起こる。糖鎖付加カスケードは、ER膜の細胞質表面上での脂質結合オリゴ糖(LLO)の生成から始まる。まず、規定の構造を有する脂質結合コアオリゴ糖(Man3GlcNAc2)が合成される。さらに、オリゴ糖は細胞質表面上の脂質ドリコール結合Man3GlcNAc2上に付加されて、ヘプタ糖Man5GlcNAc2グリカン構造を生じる。次いで、このLLOはERの内腔側に移行する(「フリップ」)。そこで、3個のグルコース、9個のマンノースおよび2個のN-アセチルグルコサミン残基を含む分枝状オリゴ糖単位(Glc3Man9GlcNAc2)構造へのヘプタオリゴ糖鎖のさらなる加工が起こる。Glc3Man9GlcNAc2構造は、いくつかのグリコシルトランスフェラーゼの作用により作られる。それぞれ個々のグリコシルトランスフェラーゼは、特定のオリゴ糖基質に対する強い選択性を示す。これは、分枝状オリゴ糖の基本的に線状の段階的生合成を誘導する。次いで、Glc3Man9GlcNAc2構造は、ドリコール脂質から新生ポリペプチドに移動(転移)する。図1は、野生型酵母におけるERでのLLOプロセッシングを描いたものである。
2段階のこのER糖鎖付加経路は、グリコシルトランスフェラーゼの作用と直接関連しない:(1)ER膜の細胞質側から内腔側へのMan5GlcNAc2-LLOのフリッピングおよび(2)脂質リンカーから新生ポリペプチドへのオリゴ糖移動。
フリッピングは、ATP非依存性二方向フリッパーゼにより触媒される。酵母においては、フリッパーゼ活性は、ER膜を通って広がる約10個の膜貫通ドメインを含むポリトピック膜タンパク質「Rft1」により支援または付与される。相同タンパク質の遺伝子は、他の真核生物のゲノム中に生じる。
理論に束縛されることを望むものではないが、完全なオリゴ糖Glc3Man9GlcNAc2は、オリゴサッカリルトランスフェラーゼ(OTもしくはOST)の最適な基質であり、次いで、ドナーLLOから、新生タンパク質もしくはポリペプチドのAsn-X-Ser/Thrコンセンサス配列内の選択されたアスパラギン残基のアミノ基上に一括でオリゴ糖を移動させる。多くの生物においては、オリゴサッカリルトランスフェラーゼは、その1個(Stt3p)が触媒サブユニットである7もしくは8個の異なるタンパク質を含むマルチマー複合体である。一度、糖タンパク質が折畳まれ、適切にオリゴマー化されたら、それらはゴルジ複合体に移動する。次いで、N結合グリカンはさらなるトリミングおよび修飾にかけられ、新しい糖が付加されて、ヒト細胞中で、例えば、ハイブリッドまたは複合型グリカンを生成する。
グリコシルトランスフェラーゼおよびグリコシダーゼは、ERおよびゴルジ装置の内部(内腔)表面に並び、それらはERおよびゴルジネットワークを通って進行するため、それによって糖タンパク質の連続的プロセッシングを可能にする「触媒」表面を提供する。実際、シス、中央、およびトランスのゴルジならびにトランス-ゴルジネットワーク(TGN)の複数の区画が、整然とした順序の糖鎖付加反応が起こり得る様々な局所性を提供する。糖タンパク質がERにおける合成から、後のゴルジまたはTGNでの完全な成熟に進行するにつれて、それは、特定のオリゴ糖グリカン構造を合成することができるように、様々なグリコシダーゼ、マンノシダーゼおよびグリコシルトランスフェラーゼに連続的に曝露される。
様々な生物が、様々な糖鎖付加酵素(グリコシルトランスフェラーゼおよびグリコシダーゼ)を提供する。かくして、タンパク質のグリカン構造の最終組成は、宿主に応じて顕著に変化し得る。例えば、酵母および繊維性菌類などの下等真核生物は、典型的には、ゴルジ体内に大量のマンノース残基を付加して、「高マンノース」型糖タンパク質を生じるが、哺乳動物細胞においては、グリカン構造はゴルジ体内でトリミングされて、9個のマンノース残基のうちのいくつかを除去し、典型的には、下等真核生物のN-グリカン中に存在しないさらなる糖残基、例えば、シアル酸またはフコースを用いてさらに伸長させることができる。
組換えタンパク質を産生する可能性は、様々な疾患を有する患者の治療に革命をもたらした。多くの治療用タンパク質はグリカン構造の付加により改変する必要がある。この糖鎖付加は、タンパク質の正確な折畳み、長い循環、および多くの場合、最適な活性にとって必要であり得る。一般的に用いられるチャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO細胞)などの哺乳動物細胞は、ヒトグリカン構造と同様の複雑なグリカン構造を産生することができる。にもかかわらず、例えば、CHO細胞に由来するグリカン構造は、CHO細胞がa)低い程度でシアル化し、b)さらなるオリゴ糖を一般的なシアル酸(NeuAc)、別の非ヒトシアル酸(NeuGc)に組込み、ならびにc)ヒト細胞には存在しない末端結合したα-1,3-ガラクトースを含むため、ヒト起源のグリカン構造とは異なる。組換えタンパク質の産生のための現在用いられている哺乳動物発現系の欠点は、(1)低い生産性、(2)コストが高い発酵手順、(3)複雑な鎖設計および(4)ウイルス汚染の危険である。
哺乳動物細胞とは対照的に、酵母細胞は工業的発酵のための強固な酵母であり、明確に定義された培地中で高密度で培養することができる。酵母および菌類における糖鎖付加は、哺乳動物およびヒトにおけるものとは非常に異なるが、いくつかの一般的なエレメントが共有されている。第1段階、ER中でのLLOの新生タンパク質への移動は、酵母、菌類、植物およびヒトなどの全ての真核生物において高度に保存されている。しかしながら、ゴルジ体でのN-グリカンのその後のプロセッシングは、酵母および哺乳動物において有意に異なっている。酵母においては、それはいくつかのマンノース糖の付加を含む。これらのマンノシル化は、ゴルジ体に存在するマンノシルトランスフェラーゼ(例えば、Och1、Mnn1、Mnn2など)により触媒され、続いて、マンノース糖をN-グリカンに付加する。
再生可能であり、一貫した糖型プロフィールを有する治療用タンパク質の製造は、生物薬剤産業に対する未だかなりの課題である。特に、酵母中で産生される治療用糖タンパク質は、高等真核生物、特に、動物およびヒトにおいては望ましくない免疫応答を誘発し、酵母などにおいて産生される治療用タンパク質の治療的価値を低くすることがある。いくつかの治療用タンパク質の分泌、安定性、免疫原性および活性に対する糖鎖付加の影響が、血液因子、抗凝固剤、血栓溶解剤、抗体、ホルモン、刺激因子およびサイトカイン、例えば、TFN-ファミリーの調節タンパク質、EPO、ゴナドトロピン、免疫グロブリンG(IgG)、顆粒球-マクロファージ刺激因子およびインターフェロンなどのいくつかの重要な治療クラスについて観察されてきた。
そのような系の利点を使用するが、糖鎖付加に関する欠点を排除するために、いくつかの酵母、例えば、ピチア・パストリス(Pichia pastoris)、ヤロウイア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)およびサッカロミセス・セレビジア(Saccharomyces cerevisiae)が、最近開発中である。タンパク質上に規定のヒト様グリカン構造を作製するためのいくつかの株が遺伝的に開発中である。
脂質およびタンパク質、特に、組換え糖タンパク質などの糖鎖付加された分子、好ましい例として、免疫グロブリンの産生のための手段および方法を提供することが本発明の課題である。特に、前記手段および方法により製造可能である、ヒト様またはハイブリッドもしくは複合グリカン構造などの規定のグリカン構造を有する糖タンパク質、およびその新規組成物を提供することがさらなる課題である。本発明の特定の課題は、N-糖鎖付加タンパク質および特に、高い治療効力で、かつ望ましくない副作用を誘発することなくヒトにおける治療に使用可能であるヒト様グリカン構造を有する免疫グロブリンの提供である。
本発明の基礎を為す技術的問題は主に、新規脂質結合オリゴ糖(LLO)フリッパーゼ活性(LLOフリッパーゼ活性)の提供により解決される。新規フリッパーゼ活性は主に、それが特に高い活性で、1個のマンノース残基を含むグリカン構造を含むLLO、特に、Man1GlcNAc2を効率的にフリップすることができること;2個のマンノース残基を含むグリカン構造を含むLLO、特に、Man2GlcNAc2を効率的にフリップすることができること;ならびに3個のマンノース残基を含むグリカン構造を含むLLO、特に、Man3GlcNAc2を効率的にフリップすることができることを特徴とする。
本発明は、既知のフリッパーゼ活性、特に、Rft-1型活性とは対照的に、フリップしようとするオリゴサッカリル構造に関して「緩やかな」特異性を示す、新しい型の「LLOフリッパーゼ活性」を提供する。理論に束縛されることを望むものではないが、例えば、以前に特性評価された下等真核生物の既知のフリッパーゼ活性は、フリップしようとするLLOの特定のグリカン構造に対する高い特異性を示す。より具体的には、Rft-1型活性(YBL020W;Man5GlcNAc2-PP-Dolフリッパーゼと同義)は主に、5個のマンノース残基を含むLLO、特に、Man5GlcNAc2グリカン構造をフリップすることができるが、Man1GlcNAc2グリカン構造を含むLLOをフリップすることは基本的にできない。
本明細書で用いられる用語「効率的に」とは、主に、本明細書に記載の本発明の範囲および課題内で宿主細胞の技術的目的を達成するのに十分な量または速度で起こる酵素活性または移動(転移)活性を指す。例えば、「効率的な」移動または合成は、本発明に従う糖タンパク質を産生するために宿主細胞内で提供される酵素合成工程のカスケード中の化合物の流動における主要な速度制限工程と類似しないか、またはそれを反映しないと考えられる。
本発明の基礎を為す技術的問題はまた、前記新規LLOフリッパーゼ活性を含み、発現する、改変された、もしくは遺伝子操作された細胞もしくは宿主細胞、特に、真核細胞の提供によっても解決される。
本発明者らは驚くべきことに、フリップしようとするLLOのグリカン構造に対する緩い特異性を有するその新しい型の「LLOフリッパーゼ活性」の提供が可能であることを見出した。この新規LLOフリッパーゼは、有利には、細胞内器官の膜、特に、ER膜で起こる糖鎖付加プロセスの遺伝子操作を可能にする。
本発明の第1の態様に従えば、宿主細胞中での糖鎖付加の改変および制御のための価値あるツールとして有用である緩い特異性を有する新規LLOフリッパーゼ活性が提供される。好ましい実施形態においては、宿主細胞のこの改変を、膜の細胞質側および/または器官の内腔側でのLLO構造の構築プロセスの少なくとも1個以上の遺伝的改変と組合わせる(図1を参照)。
より好ましい実施形態においては、これらの改変を、構築プロセスの終わりに新生ポリペプチドへのオリゴサッカリル移動(転移)を媒介した器官におけるオリゴサッカリルトランスフェラーゼ活性の遺伝的改変とさらに組合わせる。これらの複合系の改変は、有利には、特に、細胞内器官、およびより具体的には、ER中で、1、2または3個のマンノース残基からなるグリカン構造、特に、Man1GlcNAc2、Man2GlcNAc2、またはMan3GlcNAc2を特異的に合成することができる、新規に改変された宿主細胞の提供を可能にする。
本発明の好ましい態様においては、1個以上の器官、またはER局在性グリコシルトランスフェラーゼ活性、特に、マンノシルトランスフェラーゼ活性を欠くか、またはそれを抑制し、減少させるか、もしくは枯渇させ、かつ特に、代わりの異種グリコシルトランスフェラーゼ活性およびタンパク質のハイブリッドもしくは複合N-糖鎖付加にとって必要な他の酵素を発現するように前記細胞をさらに改変する。
本発明の第2の態様においては、あるいは、またはさらに、LLOからタンパク質に移動(転移)させようとするグリカン構造に対する緩い特異性を有する、1個以上の器官もしくはERに局在化した、改変された、および特に、異種性のオリゴサッカリルトランスフェラーゼ(OT)活性を含むか、もしくは発現するように改変された細胞が提供される。特に、Man1GlcNAc2、Man2GlcNAc2、またはMan3GlcNAc2グリカン構造を移動させるそのようなOTの活性は高い。この文脈においては、用語「高い」とは、Man1GlcNAc2、Man2GlcNAc2、またはMan3GlcNAc2を、新生タンパク質の少なくとも20%、少なくとも40%、少なくとも60%、および好ましくは、少なくとも80%、および最も好ましくは、少なくとも90%に移動することを意味する。前記細胞はさらに、該細胞が、オリゴサッカリルトランスフェラーゼ活性がGlc3Man9GlcNAc2をタンパク質に選択的に移動させないが、Glc3Man9GlcNAc2以外のオリゴ糖、好ましくは、1〜9個のマンノース残基を有するオリゴ糖、最も好ましくは、Man1GlcNAc2、Man2GlcNAc2、またはMan3GlcNAc2をタンパク質に移動させることもできることを特徴とする、オリゴサッカリルトランスフェラーゼ活性をコードする1個以上の核酸分子を含むことを特徴とする。より具体的には、前記細胞は、その活性がGlc3Man9GlcNAc2をタンパク質に移動させるだけでなく、Glc3Man9GlcNAc2以外のオリゴ糖、好ましくは、1〜9個のマンノース残基を有するオリゴ糖(Man1GlcNAc2、Man2GlcNAc2、Man3GlcNAc2、Man4GlcNAc2、Man5GlcNAc2、Man6GlcNAc2、Man7GlcNAc2、Man8GlcNAc2、Man9GlcNAc2)、最も好ましくは、Man1GlcNAc2、Man2GlcNAc2および/またはMan3GlcNAc2をタンパク質に効率的に移動させることもできることを特徴とする。
より具体的には、オリゴサッカリルトランスフェラーゼ(OT)活性は、単一ユニットであるか、または単一タンパク質ユニットの形態のOT活性をもたらす原生動物型OTである。より具体的な実施形態においては、原生動物から誘導されたOT、すなわち、原生動物OT(POT)である。この態様の細胞は、好ましくは、原生動物オリゴサッカリルトランスフェラーゼ活性が、トキソプラズマ・ゴンジ(Toxoplasma gondii) (Tg)、リーシュマニア・メジャー(Leishmania major) (Lm); リーシュマニア・インファンタム(Leishmania infantum) (Li)、リーシュマニア・ブラジリエンシス(Leishmania braziliensis) (Lb)、リーシュマニア・メキシカーナ(Leishmania Mexicana) (Lmx)、リーシュマニア・ドノバニ(Leishmania donovani) (Ld)、リーシュマニア・グヤネンシス(Leishmania guyanensis) (Lg)、リーシュマニア・トロピカ(Leishmania tropica) (Lt)、トリパノソーマ・クルージ(Trypanosoma cruzi) (Tc)、およびトリパノソーマ・ブルセイ(Trypanosoma brucei) (Tb)から誘導されることをさらに特徴とする。本発明はまた、前記細胞中でPOT活性をもたらすように機能する前記POTに関連するか、またはそれから誘導された相同構造または人工構造にも関する。
本発明の特定の態様においては、前記細胞を、1個以上のゴルジ体局在性マンノシルトランスフェラーゼ活性を欠くか、または抑制し、減少させるか、もしくは枯渇させるようにさらに改変する。
本発明の細胞は、好ましくは、1個以上の、特に異種性および組換え糖タンパク質をコードし、該糖タンパク質またはその1種以上の組成物を産生することができる1個以上の核酸分子を含む。本発明はまた、前記糖タンパク質または糖タンパク質組成物を製造するための方法またはプロセスであって、主に、本発明に従う細胞を提供し、該糖タンパク質を製造するのに用いることを特徴とする前記方法も提供する。本発明はまた、本発明の細胞により産生可能であるか、または産生された糖タンパク質、および特に、新規糖タンパク質組成物も提供する。
本発明に従う細胞は、宿主細胞の未改変野生型株と比較して、増加した内腔内濃度のMan1〜Man3型LLOを示す。特に、内腔内濃度は、少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、40%、50%、70%、または90%、より特には、少なくとも100%、200%、500%、700%、1000%、1500%、2000%以上増加する。かくして、前記細胞は、宿主細胞の未改変野生型株と比較して、増加した糖鎖付加効率を示す。特に、糖鎖付加は、特にMan3に基づく構造については、少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、40%、50%、70%、または90%、より特には、少なくとも100%、200%、500%、700%、1000%、1500%、2000%以上増加する。
ERノックアウト突然変異株、すなわち、ER中に改変糖鎖、特に、alg改変経路を有する株に関連して、本発明に従って改変された場合、そのような突然変異株は、未改変のERノックアウト突然変異株と比較して、増殖速度の増加および/または温度感受性の低下を示す。特に、ERノックアウト突然変異株における増殖速度は、少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、40%、50%、70%、または90%、より特には、少なくとも100%、200%、500%、700%、1000%、1500%、2000%以上増加する。
本発明の特定の態様は、単離されたLLOフリッパーゼおよび該フリッパーゼをコードする単離された核酸分子に関する。本発明に従うフリッパーゼは、少なくとも1個の膜貫通ドメインと、細胞内の膜のための少なくとも1個の局在化配列とを含むタンパク質であり、膜に結合している。フリッパーゼはさらに、膜を横切る脂質結合オリゴ糖のMan1GlcNAc2、Man2GlcNAc2、またはMan3GlcNAc2構造をフリップすることができる、例えば、前記器官の細胞質側から内腔側に前記Man1GlcNAc2、Man2GlcNAc2、またはMan3GlcNAc2構造をフリップすることができることを特徴とする。前記LLOフリッパーゼを、本明細書の以下にさらに記載される方法に従って単離することができる。本発明はさらに、細胞中でのフリッパーゼ活性の発現のための発現カセットおよびベクターに関する。
本発明のさらに特定の態様は、好ましくは、特に、原生動物オリゴサッカリルトランスフェラーゼ(POT)などのグリカン構造に対する緩い特異性を有するオリゴサッカリルトランスフェラーゼと組合わせた前記LLOフリッパーゼの使用または糖タンパク質もしくはそのような糖タンパク質を含む組成物の産生のための本発明に従う細胞のいずれか1つの使用に関する。本発明の他の態様は、本発明の細胞を含むキットにより産生された糖タンパク質および該キットならびに該糖タンパク質の産生のためのその使用に関する。
より具体的には、第1の態様において、本発明は、1〜3個のマンノース残基を含む脂質結合した全てのオリゴ糖を、細胞内器官の細胞質側から内腔側へ効率的にフリップすることができるLLOフリッパーゼ活性を発現するように改変された細胞または宿主細胞を提供する。
その特定の態様においては、前記細胞はさらに、前記LLOフリッパーゼが、Man1GlcNAc2、Man2GlcNAc2、およびMan3GlcNAc2からなる群より選択される脂質結合したオリゴ糖を効率的にフリップする活性を有することを特徴とする。
その好ましい態様においては、前記細胞はさらに、前記LLOフリッパーゼ活性が、
a)配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号7、配列番号9、配列番号11、配列番号13、配列番号15、および配列番号17、配列番号21、配列番号23、配列番号25、配列番号27、および配列番号29のうちの1個以上の配列を含むか、もしくはそれからなる核酸分子;
b)配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10、配列番号12、配列番号14、配列番号16および配列番号18、配列番号22、配列番号24、配列番号26、配列番号28、および配列番号30のうちの1個以上の配列を含む、ポリアミノ酸をコードする核酸分子;ならびに
c)a)もしくはb)の核酸分子の断片、変異体、類似体または誘導体、
からなる群より選択される、1個以上の核酸分子の発現により付与されることを特徴とする。
前記態様の1つの細胞はさらに、細胞内器官が小胞体(ER)であることを特徴としてもよい。
前記請求項の1つの細胞はさらに、該細胞が異種(糖)タンパク質をコードする少なくとも1種の核酸を含み、好ましくはその(糖)タンパク質を発現することを特徴としてもよい。
前記細胞はさらに、該細胞がRft1-型LLOフリッパーゼ活性を欠くか、またはそれが抑制され、減少するか、もしくは枯渇したことを特徴としてもよい。この態様の細胞は、好ましくは、Rft1-型LLOフリッパーゼが、5個未満のマンノース残基を有する脂質結合オリゴ糖をフリップするためのその活性が5個のマンノース残基を有する脂質結合オリゴ糖をフリップするためのその活性よりも低いことを特徴とすることをさらに特徴とする。より具体的には、Rft1-型LLOフリッパーゼは、5個未満のマンノース残基を有する脂質結合オリゴ糖をフリップするためのその活性が、5個のマンノース残基を有する脂質結合オリゴ糖をフリップするためのその活性よりも低いことを特徴とし、ここで、「低い」とは、5個のマンノース残基を有する脂質結合オリゴ糖の量と比較した場合、5個未満のマンノース残基を有する10%、20%、50%、80%未満の脂質結合オリゴ糖がフリップされることを意味する。
この特定の態様の細胞は、好ましくは、該細胞が遺伝子rft1またはrft1相同体のノックアウト突然変異体であることをさらに特徴とする。
前記細胞はさらに、該細胞が、1種以上のER局在性グリコシルトランスフェラーゼ活性を欠くか、またはそれが抑制され、減少するか、もしくは枯渇したことを特徴としてもよい。この態様の細胞は、好ましくは、ER局在性グリコシルトランスフェラーゼがマンノシルトランスフェラーゼであることをさらに特徴とする。
前記細胞はさらに、該細胞が、1種以上のER局在性脂質結合単糖(LLM)フリッパーゼ活性を欠くか、またはそれが抑制され、減少するか、もしくは枯渇したことを特徴としてもよい。
前記細胞はさらに、該細胞が、Alg11-型活性を欠くか、またはそれが抑制され、減少するか、もしくは枯渇したことを特徴としてもよい。この態様の細胞は、好ましくは、該細胞が遺伝子alg11またはalg11相同体のノックアウト突然変異体であることをさらに特徴とする。
前記細胞はさらに、該細胞がAlg11-型活性を欠くか、またはそれが抑制され、減少するか、もしくは枯渇し、1種以上の脂質結合単糖(LLM)フリッパーゼ型活性をさらに欠くか、またはそれが抑制され、減少するか、もしくは枯渇したことを特徴としてもよい。この態様の細胞は、好ましくは、該細胞が遺伝子alg11またはalg11相同体および脂質結合単糖(LLM)フリッパーゼ活性をコードする1個以上の遺伝子のノックアウト突然変異体であることをさらに特徴とする。
前記細胞はさらに、該細胞が、Alg11-型活性を欠くか、またはそれが抑制され、減少するか、もしくは枯渇し、Alg3-型活性をさらに欠くか、またはそれが抑制され、減少するか、もしくは枯渇したことを特徴としてもよい。この態様の細胞は、好ましくは、該細胞が遺伝子alg11またはalg11相同体およびalg3またはalg3相同体のノックアウト突然変異体であることをさらに特徴とする。
前記細胞はさらに、該細胞が、Alg11-型活性を欠くか、またはそれが抑制され、減少するか、もしくは枯渇し、β-D-マンノシルトランスフェラーゼもしくはDPM1-型活性をさらに欠くか、またはそれが抑制され、減少するか、もしくは枯渇したことを特徴としてもよい。この態様の細胞は、好ましくは、該細胞が遺伝子alg11またはalg11相同体およびdpm1またはdpm1相同体のノックアウト突然変異体であることをさらに特徴とする。
前記細胞はさらに、該細胞がAlg2-型活性を欠くか、またはそれが抑制され、減少するか、もしくは枯渇したことを特徴としてもよい。この態様の細胞は、好ましくは、alg2またはalg2相同体のノックアウト突然変異体であることをさらに特徴とする。
前記細胞はさらに、該細胞が、オリゴサッカリルトランスフェラーゼ活性が、Glc3Man9GlcNAc2をタンパク質に選択的に移動させるだけでなく、Glc3Man9GlcNAc2以外のオリゴ糖、好ましくは、1〜9個のマンノース残基を有するオリゴ糖、最も好ましくは、Man1GlcNAc2、Man2GlcNAc2、またはMan3GlcNAc2をタンパク質に移動させることもできることを特徴とする、前記活性をコードする1個以上の核酸分子を含むことを特徴としてもよい。より具体的には、前記細胞は、前記活性がGlc3Man9GlcNAc2をタンパク質に移動させるだけでなく、Glc3Man9GlcNAc2以外のオリゴ糖、好ましくは、1〜9個のマンノース残基を有するオリゴ糖(Man1GlcNAc2、Man2GlcNAc2、Man3GlcNAc2、Man4GlcNAc2、Man5GlcNAc2、Man6GlcNAc2、Man7GlcNAc2、Man8GlcNAc2、Man9GlcNAc2)、最も好ましくは、Man1GlcNAc2、Man2GlcNAc2、および/またはMan3GlcNAc2をタンパク質に効率的に移動させることもできることを特徴とする。
前記態様の細胞は、好ましくは、原生動物オリゴサッカリルトランスフェラーゼ活性が、TbStt3Bp-型活性、TbStt3Cp-型活性、LmStt3Ap-型活性、LmStt3Bp-型活性、およびLmStt3Dp-型活性からなる群より選択されることをさらに特徴とする。
前記細胞はさらに、該細胞が1種以上のゴルジ体局在性マンノシルトランスフェラーゼ活性を欠くか、またはそれが抑制され、減少するか、もしくは枯渇したことを特徴としてもよい。
前記態様のうちの1つ以上の細胞は、特に、ゴルジ体局在性マンノシルトランスフェラーゼが、Och1-型活性ならびにMnnマンノシルトランスフェラーゼファミリー、特に、Mnn1-型活性、Mnn2-型活性、Mnn4-型活性、Mnn-5型活性、Mnn9-型活性、Mnn10-型活性、およびMnn11-型活性からなる群より選択されることを特徴とする。この態様の細胞は、好ましくは、該細胞がoch1、mnn1、mnn2、mnn4、mnn5、mnn9、mnn10、mnn11および/またはその相同体のうちの少なくとも1個以上のノックアウト突然変異体であることをさらに特徴とする。
前記態様のうちの1つ以上の細胞は、特に、ゴルジ体局在性マンノシルトランスフェラーゼが、Ktrマンノシルトランスフェラーゼファミリー、特に、Ktr1-型活性、Ktr2-型活性、Ktr3-型活性、Ktr5-型活性、Ktr6-型活性、およびKtr7-型活性からなる群より選択されることを特徴とする。この態様の細胞は、好ましくは、該細胞がktr1、ktr2、ktr3、ktr4、ktr5、ktr6、ktr7および/またはその相同体のうちの少なくとも1個のノックアウト突然変異体であることをさらに特徴とする。
前記態様のうちの1つ以上の細胞は特に、ゴルジ体局在性マンノシルトランスフェラーゼが、Vanマンノシルトランスフェラーゼファミリー、特に、Van1-型活性およびVrg4-型活性からなる群より選択されることを特徴とする。この態様の細胞は、好ましくは、該細胞がvan1、vrg4および/またはその相同体のうちの少なくとも1個のノックアウト突然変異体であることをさらに特徴とする。
前記態様のうちの1つの細胞は、好ましくは、該細胞がMnn2-型活性を欠くか、またはそれが抑制され、減少するか、もしくは枯渇し、Mnn5-型活性をさらに欠くか、またはそれが抑制され、減少するか、もしくは枯渇したことをさらに特徴とする。前記態様の細胞は、好ましくは、該細胞は遺伝子mnn2またはmnn2相同体および遺伝子mnn5またはmnn5相同体のノックアウト突然変異体であることをさらに特徴とする。
前記細胞は、該細胞がOch1-型活性を欠くか、またはそれが抑制され、減少するか、もしくは枯渇したことをさらに特徴としてもよい。この態様の細胞は、好ましくは、該細胞が遺伝子och1またはoch1相同体のノックアウト突然変異体であることをさらに特徴とする。
前記細胞は、該細胞が、好ましくは、
マンノシル(α-1,3-)-糖タンパク質β-1,2-N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ(GnTI);
マンノシル(α-1,6-)-糖タンパク質β-1,2-N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ(GnTII);
β-1,4-マンノシル-糖タンパク質4-β-N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ(GnTIII);
マンノシル(α-1,3-)-糖タンパク質β-1,4-N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ(GnTIV);
マンノシル(α-1,6-)-糖タンパク質β-1,6-N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ(GnTV);
マンノシル(α-1,6-)-糖タンパク質β-1,4-N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ(GnTVI);
β-N-アセチルグルコサミニル糖ペプチドβ-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼ(GalT);
α(1,6)フコシルトランスフェラーゼ(FucT);
β-ガラクトシドα-2,6-シアリルトランスフェラーゼ(ST);
UDP-N-アセチルグルコサミン2-エピメラーゼ(NeuC);
シアル酸シンターゼ(NeuB);
CMP-Neu5Acシンテターゼ;
N-アシルノイラミン酸-9-リン酸シンターゼ;
N-アシルノイラミン酸-9-ホスファターゼ;
UDP-N-アセチルグルコサミン輸送因子;
UDP-ガラクトース輸送因子;
GDP-フコース輸送因子;
CMP-シアル酸輸送因子;
ヌクレオチドジホスファターゼ;
GDP-D-マンノース4,6-デヒドラターゼ;および
GDP-4-ケト-6-デオキシ-D-マンノース-3,5-エピメラーゼ-4-リダクターゼ、
からなる群より選択される、1個以上のゴルジ体に局在化した異種酵素またはその触媒ドメインを発現することをさらに特徴としてもよい。
前記細胞は、該細胞が菌類細胞などの下等真核細胞ならびに哺乳動物細胞、植物細胞、および昆虫細胞などの高等真核細胞から選択されることをさらに特徴としてもよい。
第3の態様において、本発明は、本発明の第1の態様において特性評価されたLLOフリッパーゼ活性をコードするか、またはそれを付与することができる、単離された核酸分子を提供する。その好ましい態様において、前記核酸分子は、該分子が本発明の前記態様のうちの1つで特性評価された1種以上の核酸分子から選択されることを特徴とする。
第4の態様において、本発明は、プロモーターをコードする核酸分子およびターミネーターをコードする核酸分子のうちの少なくとも1つに連結した本発明の前記態様のうちの1つで特性評価された核酸分子の1つの1個以上のコピーを含む、真核宿主細胞中での発現のための発現カセットを提供する。
その好ましい態様において、前記発現カセットは、本発明の前記態様のうちの1つで特性評価されたオリゴサッカリルトランスフェラーゼ活性をコードする核酸分子の1個以上のコピーをさらに含む。
第5の態様において、本発明は、真核宿主細胞の形質転換のためのベクターであって、本発明の前記態様のうちの1つで特性評価された核酸分子の1つのコピーと、本発明の前記態様のうちの1つで特性評価された発現カセットの1個以上のコピーから選択される1つ以上を含む前記ベクターを提供する。
第6の態様において、本発明は、細胞内器官である小胞体中で、Man1GlcNAc2、Man2GlcNAc2、またはMan3GlcNAc2グリカン構造を有する脂質結合オリゴ糖を特異的に合成することができる細胞の作製方法であって、少なくとも、
本発明の前記態様のうちの1つで特性評価された核酸分子;
本発明の前記態様のうちの1つで特性評価された発現カセット;および
本発明の前記態様のうちの1つで特性評価されたベクター、
からなる群より選択されるLLOフリッパーゼをコードする少なくとも1個の構築物または構造を用いて前記細胞を形質転換する工程であって、前記細胞がその構築物または構造によりコードされるLLOフリッパーゼ活性を発現することができるような前記工程を含む、前記方法を提供する。
その好ましい態様において、前記構築物は、前記細胞がその構築物によりコードされるLLOフリッパーゼ活性およびオリゴサッカリルトランスフェラーゼ活性を発現することができるように、オリゴサッカリルトランスフェラーゼ活性をさらにコードする。
前記態様のうちの1つ以上の好ましい態様において、前記方法はさらに、前記細胞中で、
Alg2-型活性;
Alg11-型活性;
Alg3-型活性;
DPM1-型活性;および
脂質結合単糖(LLM)フリッパーゼ型活性、
からなる群より選択される少なくとも1種の酵素活性を減少または枯渇させる工程を含む。
第7の態様において、本発明は、細胞内器官中でMan1GlcNAc2、Man2GlcNAc2、またはMan3GlcNAc2グリカン構造を有する脂質結合オリゴ糖を特異的に合成し、その細胞中で発現される新生タンパク質に該グリカン構造を移動させることができる単離された細胞であって、該細胞が本発明の前記態様の1つに記載の方法に従って作製可能であるか、または実際に作製されることを特徴とする、前記1または複数の細胞を提供する。
第8の態様において、本発明は、糖タンパク質または糖タンパク質組成物の製造方法であって、
本発明の前記態様の1つに従って細胞を提供する工程;
前記細胞中での糖タンパク質または糖タンパク質組成物の産生を可能にする条件下、培養培地中で該細胞を培養する工程;ならびに
必要に応じて、前記細胞および/または前記培養培地から糖タンパク質または糖タンパク質組成物を単離する工程、
を含む前記方法を提供する。
第9の態様において、本発明は、
本発明の前記態様の1つに記載の細胞および
糖タンパク質の産生を与えるための、細胞を培養するための培養培地、
を含む、糖タンパク質を製造するためのキットまたはキットの一部を提供する。
第10の態様において、本発明は、グリカン構造が、
GlcNAcMan3-5GlcNAc2、
GlcNAc2Man3GlcNAc2、
GlcNAc3Man3GlcNAc2-バイセクティング(bisecting)、
Gal2GlcNAc2Man3GlcNAc2、
Gal2GlcNAc2Man3GlcNAc2Fuc、
Gal2GlcNAc3Man3GlcNAc2-バイセクティング、
Gal2GlcNAc3Man3GlcNAc2Fuc-バイセクティング、
NeuAc2Gal2GlcNAc2Man3GlcNAc2、NeuAc2Gal2GlcNAc2Man3GlcNAc2Fuc、
NeuAc2Gal2GlcNAc3Man3GlcNAc2-バイセクティング、
NeuAc2Gal2GlcNAc3Man3GlcNAc2Fuc-バイセクティング、
GlcNAc3Man3GlcNAc2、
Gal3GlcNAc3Man3GlcNAc2、
Gal3GlcNAc3Man3GlcNAc2Fuc、
NeuAc3Gal3GlcNAc3Man3GlcNAc2、および
NeuAc3Gal3GlcNAc3Man3GlcNAc2Fuc
から選択されることを特徴とする、糖タンパク質または糖タンパク質組成物を提供する。
第11の態様において、本発明は、本発明の第9の態様で特性評価された1種以上の糖タンパク質または糖タンパク質組成物を特異的に産生することができる宿主細胞を提供する。
第12の態様において、本発明は、
本発明の前記態様の1つに従う細胞により産生可能な糖タンパク質、
本発明の前記態様の1つに従う方法により産生可能な糖タンパク質、および
本発明の第10の態様に従う糖タンパク質、
から選択される糖タンパク質を提供する。
その好ましい態様は、第10の態様に従う2種以上の糖タンパク質を含む糖タンパク質組成物である。
その好ましい態様は、1または複数の組換えタンパク質である。その好ましい態様は、治療上活性な1または複数のタンパク質である。
その好ましい態様は、1または複数の免疫グロブリンである。
第13の態様において、本発明は、本発明の前記態様の1つに記載の1種以上の糖タンパク質および好ましくは、少なくとも1種の製薬上許容し得る担体またはアジュバントを含む医薬組成物を提供する。
第14の態様において、本発明は、前記態様の1つ以上に記載の1種以上の糖タンパク質または組成物の投与によって治療可能である障害を治療する方法であって、その糖タンパク質または組成物の投与によって治療可能な疾患を罹患しているか、または罹患することが疑われる被験者に、上記の糖タンパク質または組成物を投与する工程を含む、前記方法を提供する。
酵母における生合成脂質結合オリゴ糖(LLO)経路の模式図である。LLO合成はERの外膜で開始し、Man5GlcNAc2(M5)構造の生成の際に、LLOはER内腔にフリップされ、LLO合成が完了する。オリゴ糖はOT(OST)によりタンパク質に移される。 Δalg11突然変異株(YG1365)(図2A)、およびΔalg3Δ11突然変異株(YG1363)(図2B)に由来する[3H]-マンノース標識脂質結合オリゴ糖のHPLCトレースを示し、YG1363におけるMan3GlcNAc2構造(M3)の生成を示す。 Δalg11突然変異株(YG1365)(図3A)、およびΔalg3Δalg11突然変異株(YG1363)(図3B)に由来する[3H]-マンノース標識タンパク質結合オリゴ糖のHPLCトレースを示す。ER合成されたMan3GlcNAc2 LLO構造(M3)は、ゴルジ体においてMan4GlcNAc2(M4)およびMan5GlcNAc2(M5)にさらに伸長される。 野生型株(WT)(図4A)、Δalg11突然変異株(YG1365)(図4B)、およびΔalg3Δalg11突然変異株(YG1363)(図4C)に由来する細胞壁タンパク質から単離された2-AB-標識N-グリカンのMALDI-TOF MSスペクトルを示す。Man3GlcNAc2〜Man12GlcNAc2グリカン構造(M3〜M12)を表す、個々のN-グリカンのピークをそれぞれのピークの下に注記する。それぞれのマークを付けた構造は2個のN-アセチルグルコサミン(GlcNAc)残基およびそれぞれ示された数のマンノースから構成される;m/z 1053でのピークはM3を表し、m/z 1214でのピークはM4、およびm/z 1377でのピークはM5を表す。ERで合成されたM3 LLO構造は、ゴルジ体においてM4およびM5にさらに伸長される。 図5A-Kは、Flc2'もしくはそのフラグメントをコードするヌクレオチド配列またはその転写物のアミノ酸配列を列挙する(ER局在化シグナルを下線付きで印刷し、膜貫通ドメインを太字で印刷する):図5AはFlc2'をコードするヌクレオチド配列を示す(配列番号1);図5BはFlc2'転写物のアミノ酸配列を示す(配列番号2);図5Cはflc2'のコード領域のER局在化シグナルと、膜貫通ドメイン(TM)1〜3(TM1-3)をコードするヌクレオチド配列を示す(配列番号3);図5Dは図5Cのヌクレオチド配列の転写物のアミノ酸配列を示す(配列番号4);図5Eはflc2'のコード領域のER局在化シグナルと、膜貫通ドメイン(TM)1〜2(TM1-2)をコードするヌクレオチド配列を示す(配列番号5);図5Fは図5Eのヌクレオチド配列の転写物のアミノ酸配列を示す(配列番号6);図5Gはflc2'のコード領域のER局在化シグナルと、膜貫通ドメイン(TM)2〜4(TM3-4)をコードするヌクレオチド配列を示す(配列番号7);図5Hは図5Gのヌクレオチド配列の転写物のアミノ酸配列を示す(配列番号8);図5Iはflc2'のコード領域のER局在化シグナルと、膜貫通ドメイン(TM)3〜4(TM3-4)をコードするヌクレオチド配列を示す(配列番号9);図5Kは図5Iのヌクレオチド配列の転写物のアミノ酸配列を示す(配列番号10);図5Lはflc2'の内因性プロモーターを表すヌクレオチド配列を示す(配列番号61)。下線部分は開始コドンを識別する。 図5−1の続きである。 図5−2の続きである。 図5−3の続きである。 図6Aは、空ベクター、Rft1(oe RFT1)またはFlc2'発現プラスミド(oe Flc2')を担持するΔrft1突然変異株と比較した野生型株のスポッティングアッセイを示す。各行は示された株の連続希釈液からなる。プラスミド担持Flc2'はRft1欠失Δを補完することができる;図6Bは、Δalg11突然変異株と比較した野生型株の対応するスポッティングアッセイを示す;図6Cは、Δalg2-1突然変異株と比較した野生型株の対応するスポッティングアッセイを示す。 図7AおよびBは、空ベクター、Rft1、Flc2'、膜貫通ドメイン3(TM3)、膜貫通ドメイン1および3(TM1-3)もしくは膜貫通ドメイン3および4(TM3-4)を含むFlc2'フラグメントまたはFlc2発現プラスミドを担持するΔrft1突然変異株のスポッティングアッセイを示す。各行は、示された株の連続希釈液からなる。プラスミド担持Flc2'はRft1欠失を補完することができる。対照的に、完全長Flc2の過剰発現(oe Flc2)は増殖欠陥を補完することができず、かくして、内因性フリッパーゼ活性の欠如に対する補償をもたらす。図7Cは、空プラスミド(YEp352)、またはRft1およびFlc2'フリッパーゼの過剰発現のためのプラスミドを担持する野生型酵母株Δrft1突然変異株におけるカルボキシペプチダーゼYのN-糖鎖付加を示す。完全に糖鎖付加された(mCPY)および低糖鎖付加形態のCPYを表すバンドを、-1、-2、-3および-4で示す。YEp26.2はHCSSにおいて同定された元のクローンを表す。 Δrft1突然変異株に由来する[3H]-マンノース標識脂質結合オリゴ糖のHPLCトレースを示す:図8A:空ベクターYEp352を担持するΔrft1突然変異株;図8B:Rft1発現構築物を担持するΔrft1突然変異株;図8C:Flc2'発現構築物を担持するΔrft1突然変異株。 空プラスミド(YEp352)、またはFlc2'、もしくはRft1フリッパーゼの過剰発現のためのプラスミドを担持する野生型またはΔalg3Δalg11突然変異酵母株におけるカルボキシペプチダーゼYのN-糖鎖付加の結果を示す。 野生型酵母(YG1509)またはFlc2'フリッパーゼ、LmStt3D、もしくはFlc2'フリッパーゼとLmStt3Dの組合せを発現する突然変異酵母株YG1365(Δalg11)およびYG1363(Δalg3Δalg11)におけるカルボキシペプチダーゼY(CPY)およびβ-1,3-グルカノシルトランスフェラーゼ(Gas1p)のN-糖鎖付加のウェスタンブロットの結果を示す。完全に糖鎖付加された(M CPY)および低糖鎖付加形態のCPYならびにGas1Pを表すバンドを示す。 空ベクター(e.v.、YEp352)、またはFlc2'、POT、もしくはFlc2'とPOTの過剰発現のためのプラスミドを担持するΔalg11突然変異株におけるカルボキシペプチダーゼYのN-糖鎖付加を示す。完全に糖鎖付加された(mCPY)および低糖鎖付加形態のCPYを表すバンドを-1、-2、-3および-4で示す。 下等真核生物、例えば、酵母におけるN結合糖鎖に関する本発明に従う好ましい複合系の模式図を示す。より詳細には、脂質結合オリゴ糖の合成はERの細胞質側で起こる;合成はSec59pによるリン酸残基のドリコールへの移動により開始し、オリゴ糖供与体はERの細胞質側と内腔側でのいくつかの単糖類トランスフェラーゼの連続的作用により伸長し、最終的には脂質結合Glc3Man9GlcNAc2をもたらす。脂質結合Glc3Man9GlcNAc2は、内因性多サブユニット酵母オリゴサッカリル複合体(Ost複合体)のための基質として働く;複合系においては、alg3およびalg11遺伝子は欠失し(Δalg11、Δalg3)、脂質結合Man3GlcNAc2の生成をもたらす。残りのトランスフェラーゼは依然として細胞中に存在するが、脂質結合GlcNAc2Man3基質上で不活性である。本発明に従う新規LLOフリッパーゼ(Flc2')および原生動物オリゴサッカリルトランスフェラーゼ(POTリーシュマニア・メジャーStt3D)を添加する。代替的な実施形態においては、脂質結合Man3GlcNAc2の生成はdpm1遺伝子の欠失により提供され、その生成物はER膜の細胞質側上で脂質結合マンノースを生成する(DPM1)。代替的な実施形態においては、脂質結合Man3GlcNAc2の生成は、ドリコール結合マンノースをER内腔(星印)にフリップする単糖類フリッパーゼの欠失により提供される。脂質結合マンノースは、ER内腔に局在化したオリゴサッカリルトランスフェラーゼのための供与体として働く。alg11突然変異と組合わせた場合、そのような細胞は脂質結合Man3GlcNAc2も産生するであろう。余剰の使用されていないトランスフェラーゼ、フリッパーゼ(Rft1)、酵母Ost複合体の成分および非合成構造を灰色で印刷する。 好ましい実施形態のヌクレオチド配列、Flc2'発現プラスミドYEp352Flc2'を示す(配列番号31)。 図13−1の続きである。 図13−2の続きである。 別の好ましい実施形態のヌクレオチド配列、LmStt3DとFlc2'の同時発現プラスミドpAX306fを示す(配列番号32)。 図14−1の続きである。 図14−2の続きである。 図14−3の続きである。 図15Aは、酵母Flc2タンパク質のトランケート型Flc2'(膜貫通ドメイン1-4)の模式図を示す。図15Bは、空ベクター(v.c.)、またはFlc2'の過剰発現のためのベクター(oe Flc2*)もしくはトランケートエレメントのベクター(TMD1-2、TMD1-3、TMD3-4)またはFlc2'の個々の膜貫通ドメイン1、3、もしくは4のベクター(TMD1、TMD3、TMD4)を担持するΔrft1突然変異株のスポッティングアッセイを示す。膜貫通ドメイン3および4(TMD3-4)ならびに膜貫通ドメイン4(TMD4)を含むトランケートエレメントは完全長Flc2'(=膜貫通ドメイン1-4)と同様のレベルまでRft1の欠失を補完することが示される。図15Cは、空プラスミド(v.c.)またはFlc2'の過剰発現のためのプラスミド(oe Flc2*)またはFlc2'の膜貫通ドメイン4のみを含むトランケート型のFlc2'のプラスミド(Flc2*-TMD4)を担持するΔrft1突然変異酵母株におけるカルボキシペプチダーゼY(CPY)のN-糖鎖付加の結果を示す。完全に糖鎖付加された(mCPY)と低糖鎖付加形態のCPYを表すバンドを示す。膜貫通ドメイン4(Flc2*-TMD4)のみの過剰発現がΔrft1突然変異酵母株における糖鎖付加欠損を補完することができる。 図16Aは、空プラスミド(v.c.)、またはRft1(oe Rft1)、Flc2'(oe Flc2*)もしくは内因性Flc2(oe Flc2)の過剰発現のためのプラスミドを担持するΔrft1突然変異酵母株におけるカルボキシペプチダーゼY(CPY)のN-糖鎖付加の結果を示す。完全に糖鎖付加された(mCPY)および低糖鎖付加形態のCPYを表すバンドを示す。Flc2の過剰発現はRft1の欠失の際に観察された低糖鎖付加表現型を補完することができない。図16Bは、空ベクター(v.c.)、Rft1(oe Rft1)、Flc2*(oe Flc2*)もしくはFlc2の過剰発現のためのプラスミドを担持するΔrft1細胞の増殖アッセイを示す。この増殖アッセイは、Flc2*の能力およびRft1欠損を補完する完全長Flc2の無能力を確認する。 図17ABCは、空ベクター(v.c.)(図17A)、Rft1(oe Rft1)(図17B)、もしくはFlc2'(oe Flc2*)(図17C)の過剰発現のためのプラスミドを担持するΔalg11突然変異株(YG1365)から単離された[3H]-マンノース標識脂質結合オリゴ糖のHPLCトレースを示す。検出されたLLO種は、Man2GlcNAc2(Man2、M2)、Man3GlcNAc2(Man3、M3)、Man5GlcNAc2(Man5、M5)、Man6GlcNAc2(Man6、M6)、およびMan7GlcNAc2(Man7、M7)である。M2およびM3オリゴ糖はER膜の細胞質側(cytopl.)に位置し、M5-M7オリゴ糖はER膜の内腔側(lumenal)に位置する。細胞質対内腔LLO種の相対量は、発現されたタンパク質のフリッパーゼ活性を示す。 図18Aは、空ベクター(v.c.)、Rft1(oe Rft1)もしくはFlc2'(oe Flc2*)の過剰発現のためのプラスミドを担持するΔalg11Δalg3突然変異酵母株の増殖アッセイを示す。図18Bは、それぞれの細胞のスポッティングアッセイを示す。増殖アッセイおよびスポッティングアッセイは、Δalg11Δalg3突然変異酵母株の増殖を改善するFlc2'またはRft1の過剰発現の能力を示す。図18Cは、空プラスミド(v.c.)、またはRft1(oe Rft1)もしくはFlc2'(oe Flc2*)の過剰発現のためのプラスミドを担持するΔalg11Δalg3突然変異酵母株におけるカルボキシペプチダーゼY(CPY)のN-糖鎖付加の結果を示す。完全に糖鎖付加された(mCPY)および低糖鎖付加形態のCPYを表すバンドを示す。Rft1またはFlc2'の過剰発現はCPYのN-糖鎖付加を改善する。 図19Aは、空ベクター(v.c.)、Rft1(oe Rft1)もしくはFlc2'(oe Flc2*)の過剰発現のためのプラスミドを担持するΔalg11突然変異酵母株の増殖アッセイを示す。図19Bは、それぞれの細胞のスポッティングアッセイを示す。増殖アッセイおよびスポッティングアッセイは、Δalg11突然変異酵母株の増殖を改善するFlc2'またはRft1の過剰発現の能力を示す。図19Cは、空プラスミド(v.c.)、またはRft1(oe Rft1)もしくはFlc2'(oe Flc2*)の過剰発現のためのプラスミドを担持するΔalg11突然変異酵母株におけるカルボキシペプチダーゼY(CPY)のN-糖鎖付加の結果を示す。完全に糖鎖付加された(mCPY)および低糖鎖付加形態のCPYを表すバンドを示す。Rft1またはFlc2'の過剰発現はCPYのN-糖鎖付加を改善する。 図20Aは、温度感受性Alg2タンパク質を担持するalg2-1株におけるLLO合成の模式図を示す。Alg2はMan1GlcNAc2(M1)構造へのマンノースの2個の連続的付加を触媒し、Man2GlcNAc2(M2)およびMan3GlcNAc2(M3)を生成する。この突然変異は、Alg2活性を低下させ、次いで、M1より大きいLLO種の合成を減少させる。しかしながら、Alg2の残留活性は規則的なLLO合成を持続させるのに十分であり、Glc3Man9GlcNAc2構造の生成をもたらす。M1およびM2構造のフリッピングはAlg2により触媒される伸長反応と競合する。M1およびM2構造がER内腔にフリップされるようになる場合、これらの構造物はER内腔においてマンノシルトランスフェラーゼの基質ではなく、さらに伸長されない。最後に、様々なLLO供与体に由来するオリゴ糖はタンパク質のN-糖鎖付加共通配列中のAsn残基上に移動する。図20Bは、MALDI-TOFスペクトルの模式図を示し、予想されるピークはMan1GlcNAc2(M1)、Man2GlcNAc2(M2)および高マンノース構造Man8GlcNAc2〜Man12GlcNAc2(M8-M12)である。NLO種のピーク強度に基づいて、個々の構造の相対量を算出することができる。M1種の相対的な増加は、M1のフリッピングがAlg2によるMan1GlcNAc2(M1)の伸長反応を支配することを示している。 図21Aは、Flc2'(oe Flc2*)もしくは原生動物オリゴサッカリルトランスフェラーゼPOT(oe POT)、およびFlc2'とPOTの組合せ(oe Flc2* & POT)の過剰発現のためのベクターを担持するΔalg11突然変異酵母細胞におけるカルボキシペプチダーゼY(CPY)のN-糖鎖付加の結果を示す。完全に糖鎖付加された(mCPY)および低糖鎖付加形態のCPYを表すバンドを示す。図21Bは、Flc2*(oe Flc2*)、POT(oe POT)、およびFlc2'とPOTの組合せ(oe Flc2* & POT)の過剰発現のためのベクターを担持するΔalg11Δalg3突然変異酵母細胞におけるカルボキシペプチダーゼY(CPY)のN-糖鎖付加の結果を示す。完全に糖鎖付加された(mCPY)および低糖鎖付加形態のCPYを表すバンドを示す。POTとFlc2'の同時発現は、Δalg11およびΔalg11Δalg3酵母株の両方においてより高い程度まで低糖鎖付加表現型を抑制する。 図22ABは、Δalg3Δalg11酵母突然変異株に由来する細胞壁タンパク質(図22A)およびΔalg11Δalg3Δmnn1酵母突然変異株に由来する細胞壁タンパク質(図22B)から単離された2-AB-標識N-グリカンのMALDI-TOF MSスペクトルを示す。個々のN-グリカンのピークを上に注記し、それぞれのピークはMan3GlcNAc2(M3)〜Man6GlcNAc2(M6)である。マンノースに加えて、それぞれ示された構造は2個のさらなるGn残基を含む。m/z 1053でのピークはM3、m/z 1215でのピークはM4、m/z 1377でのピークはM5、m/z 1539でのピークはM6を表す。ERで合成されたMan3GlcNAc2 LLO構造はゴルジ体内でMan4GlcNAc2、Man5GlcNAc2および非常に少量のMan6GlcNAc2にさらに伸長される。mnn1の欠失は、ゴルジ体内でのMan5ピークの強い低下により示されるようにERで合成されたMan3GlcNAc2構造のプロセッシングを部分的に無効化する。
発明の詳細な説明
本発明は主に、哺乳動物、例えば、ヒトの治療用糖タンパク質の製造のための宿主株になるグリコシルトランスフェラーゼ、糖輸送因子およびマンノシダーゼのセットの異種発現によりさらに改変することができる修飾脂質結合オリゴ糖を有する宿主細胞に関する。このプロセスは、糖鎖付加に関与する任意の所望の遺伝子を発現させ、標的化するのに用いることができる遺伝子操作された宿主細胞を提供する。修飾脂質結合オリゴ糖を含む宿主細胞を作製するか、または選択する。遺伝子操作された宿主細胞中で作られたN-グリカンは、Man1GlcNAc2、Man2GlcNAc2、および/またはMan3GlcNAc2コア構造を有し、次いで、これを1種以上の酵素、例えば、グリコシルトランスフェラーゼ、糖輸送因子およびマンノシダーゼの異種発現によりさらに改変して、ヒト様糖タンパク質を得ることができる。治療用タンパク質の製造のために、この方法を遺伝子操作細胞系に適用し、任意の所望の糖鎖構造を取得することができる。
本明細書で別途定義されない限り、本発明と関連して用いられる科学的および技術的用語は、当業者によって一般的に理解される意味を有する。さらに、本文によって別途要求されない限り、単数形の用語は複数形を含み、複数形の用語は単数形を含むものとする。本発明の方法および技術は、一般的には当業界でよく知られた従来の方法に従って実施される。一般的には、本明細書に記載の生化学、酵素学、分子生物学および細胞生物学、微生物学、遺伝学ならびにタンパク質および核酸化学およびハイブリダイゼーションに関連して用いられる命名法ならびにその技術はよく知られたものであり、当業界で一般的に用いられるものである。本発明の方法および技術は、別途指摘しない限り、当業界でよく知られた従来の方法に従って、ならびに本明細書を通して記載および考察される様々な一般的かつより具体的な参考文献に記載されるように実施される。例えば、Sambrookら、Molecular Cloning: A Laboratory Manual、第2版、Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y. (1989); Ausubelら、Current Protocols in Molecular Biology, Greene Publishing Associates (1992年、および2002年補遺); HarlowおよびLane Antibodies: A Laboratory Manual Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y. (1990); Introduction to Glycobiology, Maureen E. Taylor, Kurt Drickamer, Oxford Univ. Press (2003); Worthington Enzyme Manual, Worthington Biochemical Corp. Freehold, N.J.; Handbook of Biochemistry: Section A Proteins Vol I 1976 CRC Press; Handbook of Biochemistry: Section A Proteins Vol II 1976 CRC Press; Essentials of Glycobiology, Cold Spring Harbor Laboratory Press (1999)を参照されたい。本明細書に記載の生化学および分子生物学に関連して用いられる命名法、ならびにその実験室手順および技術は、当業界でよく知られたものであり、一般的に用いられるものである。
新規LLOフリッパーゼの提供
本発明の文脈において、「LLOフリッパーゼ活性」または「フリッパーゼ」は、主に膜の細胞質(細胞質ゾル)側の細胞内器官の膜に結合した脂質結合した、特に、ドリコール結合したオリゴ糖(LLO)を、細胞質側から膜を通って該器官の内腔側に移行させる機能と定義される。特に、細胞内器官は、小胞体(ER)である。LLOの移行のこのプロセスは、「フリッピング」を特徴とする。好ましい実施形態においては、フリッパーゼ活性はERを標的とする。理論に束縛されることを望むものではないが、用語「フリッパーゼ」および「フリッピング」はまた、フリッパーゼ活性をもたらす別の潜在的なフリッパーゼタンパク質を支援するための支援作用も指す。
驚くべきことに、細胞の糖鎖付加カスケードにおいて、新規LLOフリッパーゼが単離可能であり、かつ機能的であること、およびそれらが例えば、Rft1型活性などの内因性LLOフリッパーゼ活性の低下または欠如を相殺することができることが見出された。さらに驚くべきことに、本発明に従うLLOフリッパーゼ活性が、変化した糖鎖付加カスケードにおいて機能することができることが見出された。前記変化は、その生成と、例えば、5個未満のマンノース残基を含むLLOなどの少ないオリゴ糖を有する脂質結合オリゴ糖のER膜を横断するフリッピングとを含む。そのようなLLO構造は通常、野生型細胞においては主に産生またはフリップされない。驚くべきことに、新規LLOフリッパーゼは、細胞内器官の膜を横断する、5個未満のマンノース残基を含む脂質結合オリゴ糖、特に、Man1GlcNAc2、Man2GlcNAc2、Man3GlcNAc2、またはMan4GlcNAc2を効率的にフリップする活性を有することが見出された。新規LLOフリッパーゼは、Man5GlcNAc2を含む脂質結合オリゴ糖をフリップする高い活性を示す;それは、Man4GlcNAc2を含む脂質結合オリゴ糖をフリップする高い活性を示す;それは、Man3GlcNAc2を含む脂質結合オリゴ糖をフリップする高い活性を示す;それは、Man2GlcNAc2を含む脂質結合オリゴ糖をフリップするさらに高い活性を示す;およびMan1GlcNAc2を含む脂質結合オリゴ糖をフリップするさらに高い活性を示す。新規LLOフリッパーゼは、フリップしようとするオリゴサッカリル構造に関して「緩い」特異性を示すことがわかった。
理論に束縛されることを望むものではないが、特に、LLOフリッパーゼに関して本明細書で用いられる用語「活性」は、輸送または合成しようとする特定の化合物または分子に特異的な輸送、移動または合成の速度に関する。分子の膜貫通輸送に関して、輸送速度として表される輸送活性を、生物学的障壁を越える輸送因子である、より具体的には、細胞内器官の膜を越えるか、もしくはそれを通って「フリップ」される、特定の分子もしくは構造の正味の流動を評価することにより評価する。正味の流動を、特に、取込み速度と流出速度から算出する。正味の流動は、輸送された分子の分子構造に大きな程度で依存し得ることがわかった。正味の流動、および次いで、輸送活性は、輸送されるか、またはフリップされるそれぞれ個々の構造にとって特異的であってもよい。理論に束縛されることを望むものではないが、フリッパーゼ活性を、ERの細胞質側に存在するLLO中に取り込まれた標識マンノースの量を決定し、その数を、LLOに取り込まれた標識マンノース、好ましくは[3H]-マンノースの総量で割ることにより算出することができる。あるいは、LLOフリッパーゼ活性を、「人工」ベシクルを用いて決定することができる。Rft1型のLLOフリッパーゼにおいては、例えば、Man5GlcNAc2構造を有するLLOをフリップする活性は高いが、Man1GlcNAc2構造を有するLLOについては、たとえあっても、低いことがわかった。かくして、Rft1型のLLOフリッパーゼは、Man5GlcNAc2構造をフリップする高い特異性を示す。対照的に、本発明に従う新規LLOフリッパーゼにおいては、Man1GlcNAc2構造を有するLLOをフリップする活性は高く、Man2GlcNAc2またはMan3GlcNAc2構造を有するLLOをフリップする活性も高い。本発明に従う新規LLOフリッパーゼは、特定のグリカン構造に対する特異性が低い活性を示し、かくして、「緩い」または特異性の低いフリッパーゼ活性を示す。
本発明に従うLLOフリッパーゼ活性をコードする遺伝子または「人工」遺伝子を、好ましい例においては、酵母細胞から、添付の実施例に詳細に概略された高コピーサプレッサースクリーン(HCSS)を用いて単離することができる。簡単に述べると、例えば、rft1遺伝子の欠失を担持する酵母細胞などの、内因性LLOフリッパーゼが不活化された細胞を、HCSSにおいて用いることができる。次いで、前記細胞を、選択マーカーをも担持する、例えば、Yep352などの高コピープラスミドから発現された、ゲノム酵母DNAライブラリーなどのゲノムDNAライブラリーを用いて形質転換することができる。糖鎖付加カスケード中に欠損を有する細胞は、低糖鎖タンパク質を産生し、増加した温度感受性ならびに浸透圧感受性を有する。従って、HCSSで得られる選択された細胞を、例えば、ソルビトールなどの浸透圧安定化剤の非存在下で増殖するその能力について試験する。次いで、その温度感受性および発現されたタンパク質を糖鎖付加する能力について、陽性コロニーをさらに分析することができる。
本発明はまた、新規LLOフリッパーゼ活性を有する新規LLOフリッパーゼポリペプチドをコードする単離された核酸またはその複数、該単離された核酸を含むベクター、およびこのベクターを含む細胞にも関する。
特定の実施形態において、本発明は、flc2'の転写物である「人工」新規LLOフリッパーゼ活性を提供する。「人工」遺伝子flc2'は、flc2遺伝子から誘導される(同義名:YAL053W;酵母染色体1上に位置する;塩基45900-48251)。Flc2転写物は、ER膜中に位置する、推定FAD輸送因子であり、重要なFADをERに輸送するように機能する。内因性Flc2-タンパク質は、フリッパーゼとして機能せず、LLOを輸送しない。
「人工」flc2'は主に、3'トランケート型のflc2である。flc2'の完全な配列を配列番号1(図5A)に列挙し、これは酵母染色体1、塩基45900-47222である。flc2'の転写物は、4個の完全な膜貫通ドメインと、5番目のトランケートされた膜貫通ドメインを含む452アミノ酸のタンパク質である(配列番号2;図5B)。アミノ酸442-452のC末端の11アミノ酸は、クローニング手順から生じる。予想外にも、Flc2'、すなわち、Flc2のN末端断片は、Δrft1突然変異株においてフリッパーゼ活性の欠如を相殺することができるが、完全長Flc2自体はフリッパーゼ活性を全く示さない。より具体的には、Flc2'フリッパーゼは、Man1構造に対する高い親和性を示し、高速でMan1構造をフリップすることがわかった。
本発明は、本発明に従う新規LLOフリッパーゼをコードするいくつかの「人工」遺伝子または遺伝子構築物を提供する。これらは全て、flc2遺伝子から誘導されたものである。特に、「人工」flc2'の断片および1個以上のこれらの断片の構築物を提供する。本発明は、これらの配列に限定されない。本発明は、特に、本明細書で特性評価され、記載された新規LLOフリッパーゼ型機能を示す「人工」遺伝子または遺伝子構築物に関する。本発明者らは驚くべきことに、細胞内器官の膜中に局在化し、器官の内腔へのLLOのフリッピングを付与する「人工」膜貫通タンパク質を構築することができるか、またはそれが入手可能であることを見出した。これらのタンパク質は、本明細書に記載のLLOのグリカン構造に関して緩い特異性を主な特徴とする新規LLOフリッパーゼ活性を示す。
主に、flc2から誘導された「人工」遺伝子または遺伝子構築物の形態の、本明細書で提供される「原理の証明」を開発した後、類似する機能のLLOフリッパーゼ活性をコードするさらなる「人工」遺伝子または遺伝子構築物を、単に本明細書の以下に記載のスクリーニング方法を実行することによって、当業者により容易に提供することができる。
あるいは、またはさらに、本発明は、細胞、特に、Rft1がrft1の過剰発現によって高濃度で存在する遺伝的に改変された細胞中でLLOフリッパーゼ活性をもたらすrft1遺伝子またはRft1もしくはRft1型活性をコードするポリヌクレオチドに基づき、特に、それらを含む遺伝子構築物、ならびにそのような細胞を産生する手段を提供する。
好ましい実施形態においては、LLOフリッパーゼ活性は、多ユニット輸送因子などの、1種以上のタンパク質またはタンパク質様構造中で具体化される。
本発明に従えば、本明細書の上記で特性評価されたフリッパーゼ活性をコードするか、または付与することができる、単離された、または「実質的に純粋な」核酸分子またはその機能的類似体が提供される。好ましい実施形態においては、この核酸分子を、本明細書の以下で特性評価される1種以上の核酸分子から選択する。
用語「ポリヌクレオチド」または「核酸分子」とは、長さ少なくとも10塩基のポリマー形態のヌクレオチドを指す。この用語は、DNA分子(例えば、cDNAまたはゲノムもしくは合成DNA)およびRNA分子(例えば、mRNAもしくは合成RNA)、ならびに非天然ヌクレオチド類似体、非天然ヌクレオシド間結合、もしくはその両方を含むDNAまたはRNAの類似体を含む。核酸は、任意の位相コンフォメーションにあってもよい。例えば、核酸は、一本鎖、二本鎖、三本鎖、四本鎖、部分二本鎖、分枝鎖、ヘアピン、環状、または南京錠型コンフォメーションであってよい。この用語は、一本鎖および二本鎖形態のDNAを含む。
「単離された」または「実質的に純粋な」核酸またはポリヌクレオチド(例えば、RNA、DNAまたは混合ポリマー)は、その天然の宿主細胞中で天然ポリヌクレオチドに天然で付随する他の細胞成分、例えば、それが天然で結合したリボソーム、ポリメラーゼ、およびゲノム配列から実質的に分離されたものである。この用語は、(1)その天然の環境から除去された、(2)「単離されたポリヌクレオチド」が天然で認められるポリヌクレオチドの全部もしくは一部と結合していない、(3)天然で連結していないポリヌクレオチドに機能し得る形で連結された、または(4)天然に存在しない核酸またはポリヌクレオチドを包含する。
また、用語「単離された」を、組換えもしくはクローン化DNA単離物、化学的に合成されたポリヌクレオチド類似体、または異種系により生物学的に合成されたポリヌクレオチド類似体を参照して用いることもできる。しかしながら、「単離された」は、そのように記載された核酸またはポリヌクレオチド自体がその天然の環境から物理的に取り出されたことを必ずしも要しない。例えば、生物のゲノム中の内因性核酸配列は、この内因性核酸配列の発現が変化するように、異種配列(すなわち、この内因性核酸配列に天然では隣接しない配列)が内因性核酸配列の近くに置かれた場合、本明細書では「単離された」と見なされる。例えば、非天然プロモーター配列を、(例えば、相同組換えにより)ヒト細胞のゲノム中の遺伝子の天然プロモーターに置換して、この遺伝子が変化した発現パターンを有するようにしてもよい。この遺伝子は、それに天然でフランキングする少なくともいくつかの配列から分離しているため、今や「単離された」ことになるであろう。また、核酸がゲノム中で対応する核酸に天然では起こらない任意の改変を含む場合、それは「単離された」と考えられる。例えば、内因性コード配列が、例えば、ヒトの介入によって「人工的に」導入された挿入、欠失または点突然変異を含む場合、それは「単離された」と考えられる。「単離された核酸」はまた、異種部位で宿主細胞染色体中に組込まれた核酸、エピソームとして存在する核酸構築物も含む。さらに、「単離された核酸」は、他の細胞材料を実質的に含まないか、または組換え技術により作製された場合、培養培地を実質的に含まないか、または化学的に合成された場合、化学的前駆体もしくは他の化合物を実質的に含まないものであってよい。
主な態様において、本発明は、flc2から誘導され、LLOフリッパーゼ活性をコードする核酸分子に関する。その態様の好ましい実施形態においては、前記核酸分子は、少なくともER局在化シグナルおよび1個以上の膜貫通領域の配列を担持する。
好ましい実施形態においては、宿主細胞中の前記LLOフリッパーゼ活性は、
・配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号7、配列番号9、配列番号11、配列番号13、配列番号15および配列番号17のうちの1個以上の配列を含むか、もしくはそれからなる核酸分子;
・配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10、配列番号12、配列番号14、配列番号16および配列番号18のうちの1個以上の配列を含むか、もしくはそれからなるポリアミノ酸をコードする核酸分子;
・特に、好ましくは配列番号19、およびHDELモチーフおよび/もしくはKKxxモチーフを含むポリアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列の1つから選択されるER局在化シグナルをコードする1個以上の核酸分子に融合された場合、配列番号21、配列番号23、配列番号25、配列番号27および配列番号29のうちの1個以上の配列を含むか、もしくはそれからなる核酸分子;
・特に、好ましくは配列番号20、およびHDELモチーフおよび/もしくはKKxxモチーフを含むポリアミノ酸配列の1つから選択される1個以上のER局在化シグナルをさらに含む、配列番号22、配列番号24、配列番号26、配列番号28および配列番号30のうちの1個以上の配列を含むか、もしくはそれからなるポリアミノ酸をコードする核酸分子;ならびに
・本発明のLLOフリッパーゼ活性を付与する、上記で同定された核酸分子の断片、変異体、類似体または誘導体、
から選択される、1個以上の核酸分子の発現により付与される。
本明細書で用いられる用語「断片」とは、ポリヌクレオチドの断片を指す。断片は、末端(5'-もしくは3'-末端)および/または内部欠失を有してもよい。一般的には、ポリヌクレオチドの断片は、長さ少なくとも4、特に少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも12、少なくとも15、少なくとも18、少なくとも25、少なくとも30、少なくとも35、少なくとも40、少なくとも50、少なくとも60、少なくとも65、少なくとも70、少なくとも75、少なくとも80、少なくとも85、少なくとも90、または少なくとも100以上のヌクレオチドであろう。
本明細書で用いられる用語「欠失」とは、(1個以上のヌクレオチドの)1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19または20個のポリヌクレオチド断片が、そのヌクレオチド配列から失われるか、または欠失しているヌクレオチド配列の変異体を指す。
本明細書で用いられる用語「付加」とは、(1個以上のヌクレオチドの)1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19または20個のポリヌクレオチド断片が、そのヌクレオチド配列に付加されているか、または融合しているヌクレオチド配列の変異体を指す。付加変異体はまた、融合分子を含む。
特に、1個以上のヌクレオチドの付加または欠失による、上記改変の好ましい変形において、3またはその倍数である数のヌクレオチドを付加するか、または欠失させることにより、フレームシフトが回避されることが理解される。
本明細書で用いられる用語「類似体」とは主に、天然のRNAおよびDNAを構造的に類似する化合物を指す。核酸は、3個の部分:リン酸主鎖、ひだのある形状のペントース糖、リボースもしくはデオキシリボース、および4個の核酸塩基のうちの1個から構成される、ヌクレオチドの鎖である。類似体は、これらのいずれかが変化していてもよく、典型的には、核酸塩基類似体は、特に、異なる塩基対および4種全部の基準塩基と対形成し得る普遍的塩基などの塩基積み重ねの妥当性を与えるが、リン酸-糖主鎖類似体は、PNA(Petersson Bら、Crystal structure of a partly self-complementary peptide nucleic acid (PNA) oligomer showing a duplex-triplex network. J Am Chem Soc. 2005 Feb 9;127(5):1424-30)、DNAとは有意に異なり、三重らせんを形成し得る二次構造(三本鎖らせん)など、鎖の特性に影響する。
好ましい実施形態は、(a)上記で特性評価された核酸分子および(b)高度にストリンジェントな条件下で(a)の核酸分子の相補体にハイブリダイズする核酸分子から選択される単離された核酸分子またはその複数である。高度にストリンジェントな条件は、一般的には、45℃の6X塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム(SSC)中でのハイブリダイゼーション、次いで、65℃の0.2 X SSC、0.1%SDS中での洗浄と等価であると定義される。
その実施形態の好ましい変形は、本明細書に記載の核酸配列のいずれかと少なくとも80%同一である配列を含むか、またはそれからなる単離された核酸分子である。
「ER局在化シグナル」とは、そのようなペプチド配列を有するタンパク質がER中に輸送され、保持されるように指令するペプチド配列を指す。そのようなER局在化配列は、ER中に存在し、そこで機能するタンパク質に認められることが多い。ER局在化または「保持」シグナルは当業者には利用可能であり、例えば、サッカロミセス・セレビジアのERタンパク質MNS1の最初の21アミノ酸残基が挙げられる(Martinetら、Biotechnology Letters 20: 1171-1177, 1998)。本発明における使用にとって好ましいER局在化シグナルは、ペプチドHDEL(配列番号31)である。いくつかの酵母タンパク質のC末端に認められるHDELペプチド配列は、ERの保持/回収シグナルとして働く(Pelham EMBO J. 7: 913-918, 1988)。HDEL配列を有するタンパク質は、膜結合受容体(Erd2p)により結合した後、ゴルジ装置からERに戻るための逆行輸送経路に進入する。
あるいは、KKxx配列は、ER局在化を提供することができる(Jackson J. Cell Biol. 121:317)。このモチーフは、いくつかの内因性ER膜タンパク質上に存在する。この配列は、前記タンパク質のNもしくはC末端上に存在してもよく、ER後区画から回収される。
本発明の主な態様は、好適な宿主細胞の改変もしくは遺伝子操作のためのツールおよび手段を提供すること(下記参照)およびその細胞中に変化した、かつより好適なN-糖鎖を付与することである。
従って、1コピー以上の上記で特性評価された核酸分子の1つを含む、真核宿主細胞中での上記で特性評価された新規LLOフリッパーゼ活性の発現のための発現カセットまたはその機能的類似体も提供される。前記ベクター中の核酸配列を、発現制御配列に機能し得る形で連結することができる。好ましくは、1個以上の前記核酸分子は、プロモーターをコードする核酸分子とターミネーターをコードする核酸分子の少なくとも一方と共に存在する。
本明細書で用いられる「プロモーター」とは、遺伝子の転写を可能にするDNA配列を指す。プロモーターはRNAポリメラーゼにより認識され、次いで転写を開始する。プロモーターは、RNAポリメラーゼにより直接結合するか、またはその動員に関与するDNA配列を含む。プロモーター配列はまた、タンパク質と結合して遺伝子クラスター中での遺伝子の転写レベルを増強することができる(これが名前の由来)1個以上のDNA領域である「エンハンサー領域」(すなわち、転写因子のセットとよく似たトランス作用因子)を含んでもよい。エンハンサーは、典型的にはコード領域の5'末端にあるが、プロモーター配列から離れていてもよく、例えば、遺伝子の固有の領域にあるか、または遺伝子のコード領域の3'側にあってもよい。
本発明に従えば、プロモーターは好ましくは、遺伝子の内因性プロモーターである。好ましい実施形態においては、前記遺伝子は、好ましくは過剰発現を誘導する高コピー数プラスミド上にある。別の好ましい実施形態においては、前記遺伝子は低コピー数プラスミド上にある。プロモーターは、異種プロモーターであってもよい。特定の変異体においては、プロモーターは構成的プロモーターである。別の特定の変異体においては、プロモーターは誘導性プロモーターである。本発明に従う特定のプロモーターは、1コピー以上の核酸分子の過剰発現を与える。好ましい実施形態においては、前記分子は、内因性プロモーターからの発現と比較した場合、2倍、より好ましくは5倍、10倍、20倍、50倍、100倍、200倍、500倍、1000倍、および最も好ましくは、2000倍以上過剰発現される。例えば、宿主細胞がピチア・パストリスである場合、好適なプロモーターとしては、限定されるものではないが、aox1、aox2、das、gap、pex8、ypt1、fld1、およびp40が挙げられる;宿主細胞がサッカロミセス・セレビジアである場合、好適なプロモーターとしては、限定されるものではないが、gal1、接合因子a、cyc-1、pgk1、adh2、adh、tef、gpd、met25、galL、galS、ctr1、ctr3、およびcup1が挙げられる。宿主細胞が、例えば、哺乳動物細胞である場合、安定なプロモーターとしては、限定されるものではないが、CMV、SV40、アクチンプロモーター、rps21、ラウス肉腫ウイルスゲノムの大ゲノム末端反復配列(RSV)、メタロチオネイン、チミジンキナーゼまたはインターフェロン遺伝子プロモーターが挙げられる。
「ターミネーター」または3'終結配列は、ポリアデニル化を引き出す配列などの、配列が機能し得る形で連結された遺伝子のmRNA転写産物を安定化するように機能する構造遺伝子の停止コドンであってよい。3'終結配列を、ピチアまたは他のメチロトープ酵母または他の酵母または高等菌類または他の真核生物から取得することができる。本発明の実施にとって有用なピチア・パストリスの3'終結配列の例としては、aox1遺伝子、p40遺伝子、his4遺伝子およびfld1遺伝子に由来する終結配列が挙げられる。
本発明に従えば、1コピー以上の上記で特性評価された核酸分子の1つまたは1コピー以上の上記で特性評価された発現カセットを含む、真核宿主細胞の形質転換のためのベクターも提供される。
本明細書で用いられる用語「ベクター」は、それが連結された別の核酸を輸送することができる核酸分子を指す。ベクターの1つの型は、追加のDNA断片を連結することができる環状二本鎖DNAループを指す、「プラスミド」である。他のベクターとしては、コスミド、細菌「人工」染色体(BAC)および酵母「人工」染色体(YAC)が挙げられる。別の型のベクターは、追加のDNA断片をウイルスゲノム中に連結することができるウイルスベクターである(以下でより詳細に考察する)。特定のベクターは、それらが導入された宿主細胞中で自己複製することができる(例えば、宿主細胞中で機能する複製起点を有するベクター)。他のベクターを、宿主細胞中への導入の際に宿主細胞のゲノム中に組込むことができ、それによってそれらは宿主ゲノムと共に複製される。さらに、特定の好ましいベクターは、それらが機能し得る形で連結された遺伝子の発現を指令することができる。そのようなベクターを本明細書では「組換え発現ベクター」(または単に「発現ベクター」)と呼ぶ。
本発明のベクターは、好ましくは、選択マーカー遺伝子を含む。そのような系の例としては、his4ピチア株を補完するのに用いることができるサッカロミセス・セレビジアもしくはピチア・パストリスのhis4遺伝子、またはピチア・パストリスのarg突然変異体を補完するのに用いることができるサッカロミセス・セレビジアもしくはピチア・パストリスのarg4遺伝子、またはそれぞれ、ピチア・パストリスura3もしくはade1突然変異体を補完するのに用いることができるピチア・パストリスのura3およびade1遺伝子が挙げられる。ピチア・パストリス中で機能する他の選択マーカーとしては、zeoR遺伝子、g418R遺伝子、ブラスチシジン耐性遺伝子などが挙げられる。
本発明のベクターはまた、自己複製配列(ARS)を含んでもよい。このベクターはまた、細菌中で機能する選択マーカー遺伝子、ならびに細菌中での複製および染色体外維持を担う配列を含んでもよい。代替的な実施形態においては、前記選択は栄養要求性マーカーにより付与される。細菌選択マーカー遺伝子の例としては、アンピシリン耐性(ampr)、テトラサイクリン耐性(tetr)、ネオマイシン耐性、ヒグロマイシン耐性およびゼオシン耐性(zeoR)遺伝子が挙げられる。
本発明はまた、遺伝子組込みを指令するための対応する手段も提供する。細胞中で発現させようとするタンパク質をコードする本発明に従うヌクレオチド配列を、組込みベクターまたは複製ベクター(複製環状プラスミドなど)中に入れることができる。組込みベクターは、一般的には、少なくとも第1の挿入可能なDNA断片、選択マーカー遺伝子、および第2の挿入可能なDNA断片の連続的に配置された配列を含む。第1および第2の挿入可能なDNA断片は、それぞれ約200ヌクレオチド長であり、形質転換しようとする種のゲノムDNAの一部と相同であるヌクレオチド配列を有する。発現のための目的の構造遺伝子を含むヌクレオチド配列を、このベクター中のマーカー遺伝子の前後の第1および第2の挿入可能なDNA断片の間に挿入する。組込みベクターを酵母形質転換の前に線状化して、目的のヌクレオチド配列の宿主細胞ゲノムへの組込みを容易にすることができる。
本発明はまた、脂質結合し、トランケートされた、または完全な前駆体オリゴ糖(LLO)、特に、Man1GlcNAc2、Man2GlcNAc2および/またはMan3GlcNAc2をフリップすることができるポリアミノ酸分子、特に、タンパク質も提供する。用語「ポリアミノ酸分子」、「ポリペプチド」および「タンパク質」は互換的に用いられ、長さまたは翻訳後修飾に関わらず、アミノ酸の任意のペプチド結合鎖を意味する。
本発明の特定かつ好ましい実施形態においては、前記分子は、Flc2'の膜貫通ドメイン4(TM4)またはその相同な機能的構造をコードする断片を含むか、または本質的にそれからなる。その特定かつ好ましい実施形態においては、前記分子は、Flc2'の膜貫通ドメイン3〜4(TM3-4)またはその相同な機能的構造をコードする断片を含むか、または本質的にそれからなる。
前記分子は、Flc2'の膜貫通ドメイン1(TM1)またはその相同な機能的構造をコードする断片を含むか、または本質的にそれからなってもよい。前記分子はまた、Flc2'の膜貫通ドメイン2(TM3)またはその相同な機能的構造をコードする断片を含むか、または本質的にそれからなってもよい。その特定かつ好ましい実施形態においては、前記分子は、Flc2'の膜貫通ドメイン1〜2(TM1-2)またはその相同な機能的構造をコードする断片を含むか、または本質的にそれからなる。その別の実施形態においては、前記分子は、Flc2'の膜貫通ドメイン2〜4(TM2-4)またはその相同な機能的構造をコードする断片を含むか、または本質的にそれからなる。
前記分子は、Flc2'の膜貫通ドメイン3(TM3)またはその相同な機能的構造をコードする断片を含むか、または本質的にそれからなってもよい。その特定の実施形態においては、前記分子は、Flc2'の膜貫通ドメイン1〜3(TM1-3)またはその相同な機能的構造をコードする断片を含むか、または本質的にそれからなる。その別の実施形態においては、前記分子は、Flc2'の膜貫通ドメイン2〜3(TM2-3)またはその相同な機能的構造をコードする断片を含むか、または本質的にそれからなる。
主な態様において、前記ポリアミノ酸は、flc2'から誘導され、flc2'を含む1個以上の上記で同定された「人工」構築物の転写物である。好ましい実施形態においては、前記転写物は、配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10、配列番号12、配列番号14、配列番号16および配列番号18のうちの1個以上の配列を含むか、またはそれからなる。
別の好ましい実施形態においては、前記転写物は、好ましくは、配列番号20とHDELおよびKKxxモチーフを含むポリアミノ酸配列の1つから選択される、ER局在化シグナルに融合された、配列番号22、配列番号24、配列番号26、配列番号28、および配列番号30のうちの1個以上の配列を含むか、またはそれからなる。
別の好ましい実施形態においては、ポリアミノ酸は、1個以上の上記で同定された転写物の断片、類似体および誘導体である。本明細書で用いられる転写物の「断片」、「類似体」および「誘導体」とは、付加、欠失、または置換を含んでもよい生物学的に活性な変異体を指す。
置換を有する変異体は、好ましくは、50個以下、特に、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、12、15、20、25、30、35、40、または45個以下の保存的アミノ酸置換を有する。「保存的置換」は、あるアミノ酸の類似する特性を有する別のアミノ酸への置換と理解される。保存的置換としては、以下の群内の置換が挙げられる:バリン、アラニンおよびグリシン;ロイシン、バリン、およびイソロイシン;アスパラギン酸およびグルタミン酸;アスパラギンおよびグルタミン;セリン、システイン、およびトレオニン;リジンおよびアルギニン;ならびにフェニルアラニンおよびチロシン。非極性の疎水性アミノ酸としては、アラニン、ロイシン、イソロイシン、バリン、プロリン、フェニルアラニン、トリプトファンおよびメチオニンが挙げられる。極性の中性アミノ酸としては、グリシン、セリン、トレオニン、システイン、チロシン、アスパラギンおよびグルタミンが挙げられる。正に荷電した(塩基性)アミノ酸としては、アルギニン、リジンおよびヒスチジンが挙げられる。負に荷電した(酸性)アミノ酸としては、アスパラギン酸およびグルタミン酸が挙げられる。対照的に、非保存的置換は、あるアミノ酸の類似する特性を有する別のアミノ酸への置換である。
本発明に従うポリアミノ酸分子は、本明細書に記載のLLOフリッパーゼ活性を示すか、または付与する。それは特に、脂質結合した、トランケートされたか、または完全な前駆体オリゴ糖(LLO)、特に、Man1GlcNAc2、Man2GlcNAc2および/またはMan3GlcNAc2をフリップすることができることを特徴とする。
理論に束縛されることを望むものではないが、LLOフリッパーゼまたはその断片、変異体、類似体もしくは誘導体の活性または特異性を、当業者には公知の方法により測定することができる。理論に束縛されることを望むものではないが、本発明に従うLLOフリッパーゼ活性を評価するための好ましい方法は、以下の工程:推定LLOフリッパーゼであるタンパク質を発現している細胞を増殖および培養する工程;特定の時間および特定の温度で、標識されたマンノース基質、特に、放射性[3H]-マンノースに前記細胞を曝露する工程(標識);ならびにマンノース標識されたLLOを単離する工程;および[3H]-マンノース標識されたLLOのオリゴ糖含量を評価する工程を含んでもよい。[3H]-標識されたLLOを、本明細書に含まれる実施例に詳述するように単離することができる。[3H]-マンノース標識されたLLOのオリゴ糖含量を、例えば、質量分析(例えば、MALDI-TOF-MS)または高速液体クロマトグラフィー(HPLC)などの好適な検出方法により分析することができる。次いで、ERの細胞質側に存在するLLO中の取り込まれた[3H]-マンノースの量を決定し、その数を、LLO中に取り込まれた[3H]-マンノースの総量で割ることにより、フリッパーゼ活性を算出することができる。特定のグリカン構造のLLOをフリップすることができない細胞は、細胞質LLOを蓄積するであろう。例えば、本発明に従う推定LLOフリッパーゼは、Man5GlcNAc2構造を有するLLOがフリップされ、ER内腔中のマンノシルトランスフェラーゼによりさらに改変される場合、陽性に検出される。
野生型細胞においては、Man5GlcNAc2構造を有するLLOは、例えば、Rft1フリッパーゼなどのLLOフリッパーゼの基質である。機能的フリッパーゼを発現する野生型細胞は、Glc3Man9GlcNAc2構造を有する最終的なLLOフリッパーゼの基質にさらに加工される主に内腔のLLOを産生するであろう。LLOフリッパーゼを欠くか、またはLLOフリッパーゼ中に欠損を有する細胞、例えば、rft1ノックアウト細胞は、主にERの細胞質側に存在し、そこで測定可能であるMan5GlcNAc2構造を有するLLOを産生するが、これはERの内腔へのLLOの移行の遮断、すなわち、Glc3Man9GlcNAc2構造を有する最終的なER内腔LLOへのLLOのさらなる加工の遮断を示唆している。
あるいは、LLOフリッパーゼの活性または特異性を、「人工」ベシクルを用いて決定してもよい。細胞からER膜を抽出することにより、そのようなベシクルを作製することができる。例えば、Rft1などの内因性LLOフリッパーゼが枯渇したそのような膜からベシクルを再構成すること、およびこれらのベシクルに新しいLLOフリッパーゼを装備させることにより、前記の新しいタンパク質のフリッパーゼ活性を決定することができる。標識のために[3H]-マンノースを添加し、細胞質のマンノシルトランスフェラーゼ活性は、[3H]-マンノースを細胞質側でLLO中に取り込む。次いで、LLOを、活性LLOフリッパーゼを用いてER内腔にフリップすることができる。ベシクルをEndo H酵素で処理することにより、ベシクルの表面上に露出したLLOを切り取り、ドリコール脂質上の末端GlcNAc残基のみを残し、それによってベシクルの表面から放射性標識を除去する。ベシクルの内腔中のEndo H処理された[3H]-マンノース対Endo Hで処理しないベシクル中に存在する放射活性の量を定量することにより、フリッピングの量を算出することができる;ここで、低い放射活性が決定された場合、LLOフリッパーゼが特定のLLOに対して活性または特異性が低い。
そのオリゴ糖構造において変化する特定の型のLLOに関するLLOフリッパーゼの特異性または活性を、少なくとも1種の細胞質マンノシルトランスフェラーゼを欠くか、またはその中に欠損を有する細胞を用いることにより決定することができる。例えば、Alg2型活性に欠損を有する細胞は、Man1GlcNAc2もしくはMan2GlcNAc2構造を有するLLOを産生するであろうが、Alg11および必要に応じてAlg3型活性を欠くか、もしくはその中に欠損を有する細胞はMan3GlcNAc2構造を有するLLOを生成するであろう。そのような突然変異細胞またはその再構成されたER膜ベシクルを、新しく単離されたLLOフリッパーゼの活性および特異性を測定および決定するのに用いることができる。
本明細書でさらに詳細に説明されるフリッパーゼについては、脂質結合した低マンノースオリゴ糖、すなわち、Man1-3GlcNAc2構造を有するオリゴ糖(ここでMan1-3GlcNAc2構造はMan1GlcNAc2、Man2GlcNAc2またはMan3GlcNAc2構造である)をフリップするための特異性が低いか、または基本的に非特異的であるフリッパーゼ活性を有するフリッパーゼ活性または特異性を測定する。対照的に、内因性LLOフリッパーゼ活性、特に、Rft1型活性は、Man5GlcNAc2、次いでMan3GlcNAc2を有するLLOに対する最も高いフリッパーゼ活性または特異性を有する。より具体的には、本発明のフリッパーゼは、内因性Rft1と比較して、LLOに対する逆転した特異性を示し、それはMan1GlcNAc2などの小さいLLOについては最も高く、Man5GlcNAc2については最も小さい。
好適な宿主細胞
ER中の新生タンパク質へのLLOの移行(転移)は、酵母、菌類、植物、動物、およびヒトなどの全ての真核生物において高度に保存されている。従って、上記で詳述された本発明の細胞は、原理的には、下等真核細胞、菌類細胞などの任意の型の真核細胞であってよいが、植物細胞、昆虫細胞または哺乳動物細胞であってもよい。
本発明に従う「宿主細胞」は、組換えベクターが導入された細胞に関することが意図される。そのような用語は、特定の被験体の細胞だけでなく、そのような細胞の子孫も指すと意図されると理解されるべきである。特定の改変が突然変異または環境的影響に起因して後の世代において生じ得るため、そのような子孫は、実際、親細胞と同一ではないかもしれないが、本明細書で用いられる用語「宿主細胞」の範囲内に依然として含まれる。組換え宿主細胞は、単離された細胞もしくは培養物中で増殖させた細胞系であってよく、または生きている組織もしくは生物中に存在する細胞であってもよい。異種糖タンパク質の製造に用いられる用語「細胞」または「宿主細胞」とは、例えば、異種糖タンパク質をコードする核酸を導入/トランスフェクトすることができるか、またはそうする細胞を指す。そのような細胞は、ベクター/プラスミドの増殖に用いられる原核細胞と、真核細胞の両方を含む。
好ましい実施形態においては、宿主細胞は哺乳動物細胞である。好ましくは、前記細胞を、ハイブリドーマ細胞、ミエローマ細胞、好ましくは、ラットミエローマ細胞およびマウスミエローマ細胞、またはヒト細胞の好ましくは不死化された細胞系から選択する。
そのより好ましい変形においては、前記細胞を、限定されるものではないが、CHO細胞、特に、CHO K-1およびCHO DG44、BHK細胞、NSO細胞、SP2/0細胞、HEK293細胞、HEK293EBNA細胞、PER.C6細胞、COS細胞、3T3細胞、YB2細胞、HeLa細胞、およびVero細胞から選択する。好ましい変形においては、前記細胞を、DHFR欠損CHO細胞、例えば、dhfr-CHO(Proc. Natl. Acad. Sci. USA, Vol. 77, p. 4216-4220, 1980)およびCHO K-1(Proc. Natl. Acad. Sci. USA, Vol. 60, p. 1275, 1968)から選択する。
他の好ましい実施形態においては、宿主細胞は両生類細胞である。好ましくは、前記細胞を、限定されるものではないが、アフリカツメガエル(Xenopus laevis)卵母細胞(Nature, Vol. 291, p. 358-360, 1981)から選択する。
他の好ましい実施形態においては、宿主細胞は昆虫細胞である。好ましくは、前記細胞を、限定されるものではないが、Sf9、Sf21、およびTn5から選択する。
他の好ましい実施形態においては、宿主細胞は植物細胞である。好ましくは、前記細胞を、限定されるものではないが、タバコ(Nicotiana tabacum)、水生植物コウキクサ(Lemna minor)またはコケ類ヒメツリガネゴケ(Physcomitrella patens)から誘導された細胞から選択する。これらの細胞は、ポリペプチドを製造するための系として知られており、カルスとして培養することができる。
現在最も好ましい実施形態においては、宿主細胞は下等真核細胞である。本発明に従う下等真核細胞としては、限定されるものではないが、ピチア種(Pichia)、カンジダ種(Candida)、サッカロミセス種(Saccharomyces)、サッカロミコデス種(Saccharomycodes)、サッカロミコプシス種(Saccharomycopsis)、シゾサッカロミセス種(Schizosaccharomyces)、ザイゴサッカロミセス種(Zygosaccharomyces)、ヤロウイア種(Yarrowia)、ハンセニュラ種(Hansenula)、クルイベロミセス(Kluyveromyces)、トリコデルマ種(Trichoderma)、アスペルギルス種(Aspergillus)、およびフサリウム種(Fusarium)から選択される単細胞性、多細胞性、および繊維性菌類ならびに、好ましくは子嚢菌類(Ascomycetes)、特に、チソスポリウム・ルクノウェンス(Chysosporium lucknowense)および担子菌類(Basidiomycetes)、特に、コニホラ種(Coniphora)ならびにアルクスラ種(Arxula)から選択される真菌(Myceteae)が挙げられる。
そのより好ましい変形においては、前記細胞を、限定されるものではないが、P. pastoris、P. stiptis、P. methanolica、P. bovis、P. canadensis、P. fermentans、P. membranaefaciens、P. pseudopolymorpha、P. quercuum、P. robertsii、P. saitoi、P. silvestrisi、P. strasburgensis; P. finlandica、P. trehalophila、P. koclamae、P. opuntiae、P. thermotolerans、P. salictaria、P. guercuum、P. pijperi; C. albicans、C. amphixiae、C. atlantica、C. corydalis、C. dosseyi、C. fructus、C. glabrata、C. fermentati、C. krusei、C. lusitaniae、C. maltosa、C. membranifaciens、C. utilis; S. bayanus、S. cerevisiae、S. bisporus、S. delbrueckii、S. fermentati、S. fragilis、S. mellis、S. rosei; Saccharomycodes ludwigii、Saccharomycopsis capsularis; Schizosaccharomyces pombe、Schizosaccharomyces octosporus、Zygosaccharomyces bisporus、Zygosaccharomyces mellis、Zygosaccharomyces rouxii; Yarrowia lipolytica、Hansenula polymorpha、Kluyveromyces sp.、Trichoderma reseei.、A. nidulans、A. candidus、A. carneus、A. clavatus、A. fumigatus 、A. niger、A. oryzae、A. versicolor、Fusarium gramineum、Fusarium venenatum、およびNeurospora crassaならびにArxula adeninivoransから選択する。
Rft1型フリッパーゼ活性を欠く宿主細胞
本明細書に記載され、表1および表2で言及される全ての酵素活性および遺伝子は、酵母サッカロミセス・セレビジア中のそれぞれ対応する遺伝子座に従って命名される。当業者であれば、原核生物などの他の生物に存在する対応する活性を提供することができる。代替起源の例は、サッカロミセス、ピチア、アスペルギルス、カンジダなどの株である。既知の酵素活性間の相同性に基づいて、PCRプライマーを設計するか、または標的生物のDNAライブラリー中の相同体を同定するためのプローブとして、そのような酵素をコードする遺伝子もしくは遺伝子断片を使用することができる。あるいは、関連生物における特定の表現型を補完することができる。
あるいは、目的の特定の菌類の全遺伝子配列が既知である場合、NCBI、Swissprotなどのいくつかの供給源から入手可能である公共的に利用可能なDNAデータベースを単に検索することにより、そのような遺伝子を同定することができる。例えば、サッカロミセス・セレビジアに由来する既知の遺伝子を用いて所与のゲノム配列またはデータベースを検索することにより、高い程度の確度で、類似するか、または同一の活性を有する遺伝子をコードする、そのようなゲノム中で相同性が高い遺伝子を同定することができる。例えば、P.pastorisにおいて、S.cerevisiaeに由来する既知のマンノシルトランスフェラーゼに対する相同体を、これらの手法のいずれか1つを用いて同定した;これらの遺伝子は、S.cerevisiaeにおけるタンパク質のマンノシル化に関与する遺伝子と類似する機能を有し、かくして、その欠失を用いて、P.pastorisまたは類似する糖鎖付加経路を有する任意の他の菌類における糖鎖付加パターンを操作することができる。
上記で特性評価された実施形態の好ましい変形においては、例えば、rft1および/またはrft1相同体をノックアウトさせることにより、特に、Rft1型の(内因性)LLOフリッパーゼ活性を欠くか、またはそれが減少するか、もしくは枯渇するように、前記宿主細胞をさらに改変するか、または遺伝子操作する。より具体的には、前記細胞は、遺伝子rft1に対するノックアウト突然変異体である。本発明はまた、この細胞を作製する方法にも関する。
従って、本発明は、反転による抑制、アンチセンス構築物による抑制、欠失による抑制、転写レベルでの抑制、翻訳レベルでの抑制および他の手段から選択される1個以上の手段に起因して、少なくとも1種の内因性酵素活性が欠如しているか、または無効である遺伝子操作された細胞に関する。これらのものは、分子生物学の当業者にはよく知られている。
本発明の文脈において、用語「ノックアウト」または「ノックアウト突然変異体」とは、遺伝子もしくは転写物が全く存在しない完全ノックアウト系、および遺伝子もしくは転写物は依然として存在するが、それぞれ、サイレントであるか、もしくは低濃度であり、相当な効果が細胞中の転写物により発揮されない部分的ノックアウト突然変異体の両方を指す。
一度所与の標的遺伝子配列が決定されたら、遺伝子ノックアウトの作製は、酵母および菌類の分子生物学の社会における確立した技術であり、当業者であれば誰でも実行することができる(例えば、R. Rothsteins, (1991) Methods in Enzymology, vol. 194, p. 281を参照されたい)。実際、宿主生物の選択は、良好な形質転換の利用性およびそのような宿主に関する遺伝子破壊技術により影響され得る。いくつかのトランスフェラーゼをノックアウトさせなければならない場合、マーカー、例えば、全ての望ましくない内因性トランスフェラーゼまたは本明細書に記載の他の酵素活性を連続的に排除するためのURA3マーカーの反復使用を可能にする方法が開発された。この技術は他の技術により改善されたが、基本的には対抗選択可能なマーカーにフランキングする2個の反復DNA配列の使用を含む。該マーカーの存在は、形質転換体のその後の選択において有用である;例えば、酵母においては、ura3、his4、suc2、g418、bla、またはshble遺伝子を用いることができる。例えば、ura3をマーカーとして用いて、構築物を組込んだ形質転換体の選択を確保することができる。ura3マーカーを直接反復にフランキングすることにより、第1に構築物を組込み、かくして、標的遺伝子を破壊した形質転換体を選択することができる。形質転換体の単離、およびその特性評価後、2回目のラウンドにおいて5'FOAに耐性を有するものを対抗選択することができる。5'FOAを含むプレート上で生存することができるコロニーは、上記の反復を含む交叉事象を介して再びura3マーカーを失った。かくして、この手法により、同じマーカーの反復使用が可能になり、追加のマーカーを要することなく複数の遺伝子の破壊が容易になる。
核酸またはポリペプチドに適用される、本明細書で用いられる用語「野生型」とは、それぞれ、自然界に存在する生物中に存在するか、またはそれによって産生される核酸またはポリペプチドを指す。
宿主細胞中の核酸または宿主細胞により産生されるポリペプチドに対して本明細書で適用される用語「異種」とは、宿主細胞と同じ種の細胞から誘導されない任意の核酸またはポリペプチド(例えば、N-糖鎖活性を有するタンパク質)を指す。従って、本明細書で用いられる「相同」核酸、またはタンパク質は、宿主細胞と同じ種の細胞中に存在するか、またはそれにより産生されるものである。
より具体的には、核酸および特定の宿主細胞を参照して本明細書で用いられる用語「異種」とは、自然界に認められる特定の細胞中には存在しない(およびそれから取得することができない)任意の核酸を指す。かくして、非天然核酸は、一度、宿主細胞中に導入された宿主細胞に対して異種であると考えられる。非天然核酸が全体として自然界に存在しないという条件で、該核酸が自然界で認められる核酸サブ配列または核酸配列の断片を含んでもよいことに留意することが重要である。例えば、発現ベクター内にゲノムDNA配列を含む核酸分子は、非天然核酸であり、かくして、その核酸分子が全体として(ゲノムDNA+ベクターDNA)自然界に存在しないため、宿主細胞中に一度導入された宿主細胞に対して異種である。かくして、全体として自然界に存在しない任意のベクター、自己複製するプラスミド、またはウイルス(例えば、レトロウイルス、アデノウイルス、もしくはヘルペスウイルス)は、非天然核酸であると考えられる。従って、PCRまたは制限エンドヌクレアーゼ処理により産生されたゲノムDNA断片ならびにcDNAは、それらが自然界に認められない個別の分子として存在するため、非天然核酸であると考えられる。
また、自然界で認められない配置のプロモーター配列およびポリペプチドをコードする配列を含む任意の核酸(例えば、cDNAまたはゲノムDNA)は非天然核酸であるということになる。天然である核酸は特定の細胞に対して異種であってよい。例えば、酵母xの細胞から単離された全染色体は、一度、染色体が酵母yの細胞中に導入されたら、酵母yの細胞に関して異種核酸である。
ER局在性マンノシルトランスフェラーゼ活性をさらに欠く宿主細胞
本発明に従うフリッパーゼは、例えば、遺伝子操作により、ER局在性グリカン合成経路の1種以上の酵素活性、特に、マンノース残基の、例えば、Man1-3GlcNAc2構造を有するLLOなどのグリカン構造への移動を与えるマンノシルトランスフェラーゼ活性を有する1種以上の酵素を欠く突然変異細胞中で発現させた場合、増殖および安定性を支援する。
好ましい実施形態においては、前記細胞を特異的に設計または選択して、ゴルジ体でのさらなる糖鎖付加プロセッシングにとって好適なMan1GlcNAc2構造を有する新生糖タンパク質を合成する。
別の好ましい実施形態においては、前記細胞を特異的に設計または選択して、ゴルジ体でのさらなる糖鎖付加プロセッシングにとって好適なMan2GlcNAc2構造を有する新生糖タンパク質を合成する。
別の好ましい実施形態においては、前記細胞を特異的に設計または選択して、ゴルジ体でのさらなる糖鎖付加プロセッシングにとって好適なMan3GlcNAc2構造を有する新生糖タンパク質を合成する。
好ましい態様において、上記で同定された新規LLOフリッパーゼ活性を発現するように改変された本発明の宿主細胞を、細胞内器官に局在化した1種以上のグリコシルトランスフェラーゼ活性を欠くようにさらに改変するか、または遺伝子操作する。これらの好ましい実施形態の後ろにある主要な考えは、細胞内器官での、および/または細胞内器官中のLLOの糖鎖付加および特に、マンノシル化を減少させ、制御することである。緩い特異性で上記で同定された新規LLOフリッパーゼ活性を発現するように改変され、かくして、低マンノース、特に、Man1-3グリカン構造を内腔にフリップすることができる本発明の宿主細胞の提供により、糖鎖付加の選択的制御が可能になり、特に、以下の改良された実施形態を提供することが可能になる。
宿主細胞中でノックアウトし、減少させるか、または枯渇させようとするER局在性グリコシルトランスフェラーゼは、好ましくは、マンノシルトランスフェラーゼである(表1を参照)。宿主細胞の好ましい実施形態においては、Alg2-、Alg3-、およびAlg11-型活性のうちの1個以上をノックアウトし、減少させるか、または枯渇させる。より好ましい変形において、これらの実施形態はさらに、β-D-マンノシルトランスフェラーゼ(Dpm1)-型活性および脂質結合単糖(LLM)フリッパーゼ活性のうちの1つ以上を欠くか、またはそれが減少もしくは枯渇する。
Figure 2012506710
特定の実施形態においては、前記宿主細胞は、Alg2-型活性を欠いている突然変異体である。より具体的には、前記細胞は、遺伝子alg2および/またはalg2相同体のノックアウト突然変異体である。前記宿主細胞は、Man1GlcNAc2およびMan2GlcNAc2構造を有するLLOを特異的に合成することができる。本発明はまた、この細胞を作製する方法にも関する。
別の特定の実施形態においては、前記宿主細胞は、Alg11-型活性を欠いている突然変異体である。より具体的には、前記細胞は、遺伝子alg11および/またはその相同体のノックアウト突然変異体である。前記細胞は、Man3GlcNAc、Man6GlcNAc2およびMan7GlcNAc2構造を有するLLOを特異的に合成することができる。その好ましい変形においては、前記宿主細胞は、Alg11-型活性と脂質結合単糖(LLM)フリッパーゼ活性の両方を欠く突然変異体である。より具体的には、前記細胞は、alg11および/またはその相同体と、脂質結合単糖(LLM)フリッパーゼ活性をコードする1個以上の遺伝子の両方のノックアウト突然変異体である。前記細胞は、主にMan3GlcNAc2構造を有するLLOを特異的に合成することができる。本発明はまた、この細胞を作製する方法にも関する。
その別の好ましい変形においては、前記宿主細胞は、Alg11-型活性とβ-D-マンノシルトランスフェラーゼ(DPM1)-型活性の両方を欠いている突然変異体である。より具体的には、前記細胞は、両遺伝子、alg11および/またはその相同体ならびにdpm1および/またはその相同体に対するノックアウト突然変異体である。この細胞は、主にMan3GlcNAc2構造を有するLLOを特異的に合成することができる。本発明はまた、この細胞を作製する方法にも関する。
別の特定の実施形態においては、前記宿主細胞は、Alg3型活性を欠いている突然変異体である。より具体的には、前記細胞は、遺伝子alg3および/またはその相同体のノックアウト突然変異体である。より好ましい実施形態においては、前記宿主細胞は、Alg3-型活性とAlg11-型活性の両方を欠いている突然変異体である。より具体的には、前記細胞は、両遺伝子、alg3およびalg11、ならびにその任意の相同体のノックアウト突然変異体である。この細胞は、Man3GlcNAc2構造を有するLLOを特異的に合成することができる。本発明はまた、この細胞を作製する方法にも関する。
上記で特性評価された実施形態の好ましい変形においては、少なくとも1種のゴルジ体局在性マンノシルトランスフェラーゼ活性を欠くか、またはそれが減少するか、もしくは枯渇するように、前記宿主細胞をさらに改変または遺伝子操作する。本発明はまた、この細胞を作製する方法にも関する。
POT活性を発現する宿主細胞-複合系
本発明の特に好ましい実施形態は、好ましくは、異種性の、および/または改変されたオリゴサッカリルトランスフェラーゼ(OSTまたはOT)の発現に関する。オリゴサッカリルトランスフェラーゼは、グリコシルトランスフェラーゼである。それはLLOのオリゴ糖を新生タンパク質に移動させる膜タンパク質またはタンパク質複合体である。野生型細胞においては、LLOフリッパーゼの基質のGlc3Man9GlcNAc2構造を、糖鎖付加されるであろうタンパク質のアスパラギン(Asn)残基に移し、結合させるであろう。OTにより触媒される反応は、N-結合糖鎖付加経路における中心的な工程である。
酵母および脊椎動物のOTは、7もしくは8個のサブユニット(酵母においては、Ost1p、Ost2p、Ost3p/Ost6p、Ost4p、Ost5p、Stt3p、Wbp1p、およびSwp1p; 哺乳動物細胞においては、リボフォリンI、DAD1、N33/IAP、OST4、Stt3A/Stt3B、Ost48、およびリボフォリンII)からなる複雑なヘテロオリゴマータンパク質である。酵母または脊椎動物の多タンパク質複合体とは対照的に、3もしくは4個の完全なパラログがコードされる触媒Stt3サブユニットのみを含むトリパノソーマ種およびリーシュマニア種以外の原生動物のゲノムは、2〜4個のサブユニットを有する。原生動物のオリゴサッカリルトランスフェラーゼ(POT)は、様々な脂質結合オリゴ糖構造に対するその特異性において、酵母および脊椎動物のOTと異なる。
理論に束縛されることを望むものではないが、内因性オリゴサッカリルトランスフェラーゼは、野生型細胞のERにとって典型的である高マンノースグリカン構造を有するLLOを移動させるのに高度に特殊化されているのかもしれない。かくして、内因性オリゴサッカリルトランスフェラーゼは、Glc3Man9GlcNAc2構造を有するLLOを移動させるのに高度に特殊化されているかもしれない。本発明に従う宿主細胞においては、マンノシル化はERにおいて抑制されており、改変された細胞は主にMan1-3GlcNAc2構造を有するLLOを産生する。酵母ドリチル-ジホスホオリゴ糖-タンパク質グリコトランスフェラーゼ(サブユニット;Wbp1、Ost1、Ost2、Ost3、Ost4、Ost5、Ost6、Swp1、Stt3p)などの内因性オリゴサッカリルトランスフェラーゼは、そのような低マンノースLLOに対する低い活性を有し得る。例えば、酵母OT(図1を参照)は、Man1GlcNAc2、Man2GlcNAc2、Man3GlcNAc2、Man4GlcNAc2またはMan5GlcNAc2構造を有するLLOに対する低い活性を有すると予想される。理論に束縛されることを望むものではないが、低マンノースグリカンの新生タンパク質への移動は、たとえあったとしても非常に限られた速度で起こるため、内因性オリゴサッカリルトランスフェラーゼ活性の存在は、速度制限工程を課し、糖鎖付加カスケードにおける「ボトルネック」を引き起こし得る。
かくして、さらなる態様において、本発明は、1種以上の改変されたか、または好ましくは異種性のオリゴサッカリルトランスフェラーゼ、および特に、1種以上のこれらの改変された、または好ましくは異種性のオリゴサッカリルトランスフェラーゼを発現するか、または過剰発現する細胞をさらに提供する。あるいは、またはさらに、オリゴサッカリルトランスフェラーゼ活性がGlc3Man9GlcNAc2をタンパク質に選択的に移動させないが、Glc3Man9GlcNAc2以外のオリゴ糖、好ましくは、1〜9個のマンノース残基を有するオリゴ糖、最も好ましくは、Man1GlcNAc2、Man2GlcNAc2、および/またはMan3GlcNAc2をタンパク質に移動させることもできることを特徴とする、1種以上の、改変された、または好ましくは異種性のオリゴサッカリルトランスフェラーゼ活性を発現するか、または含むように改変または遺伝子操作された、本発明に従う宿主細胞が提供される。換言すれば、本発明は、タンパク質に移動される様々な型のグリカン構造に対する「緩い」特異性を示す、少なくとも1種のER局在性オリゴサッカリルトランスフェラーゼ活性を有する宿主細胞を提供する。特に、そのような活性を、本明細書では「POT様活性」または「POT活性」と呼ぶ。
特定の実施形態においては、低マンノース構造、特に、Man1GlcNAc2、Man2GlcNAc2またはMan3GlcNAc2を移動させるかなりの活性を示す、原生動物のオリゴサッカリルトランスフェラーゼ(POT)を、本発明の宿主細胞における使用のために提供する。
より好ましい変形においては、POTは、原生動物、特に、限定されるものではないが、トキソプラズマ種、リーシュマニア種およびトリパノソーマ種から選択される原生動物の酵母オリゴサッカリルトランスフェラーゼのStt3サブユニットの相同体である。原生動物を、好ましくは、限定されるものではないが、トキソプラズマ・ゴンジ(Toxoplasma gondii) (Tg)、リーシュマニア・メジャー(Leishmania major) (Lm); リーシュマニア・インファンタム(Leishmania infantum) (Li)、リーシュマニア・ブラジリエンシス(Leishmania braziliensis) (Lb)、リーシュマニア・メキシカーナ(Leishmania mexicana) (Lmx)、リーシュマニア・ドノバニ(Leishmania donovani) (Ld)、リーシュマニア・グヤネンシス(Leishmania guyanensis) (Lg)、リーシュマニア・トロピカ(Leishmania tropica) (Lt)、トリパノソーマ・クルージ(Trypanosoma cruzi) (Tc)、およびトリパノソーマ・ブルセイ(Trypanosoma brucei) (Tb)から選択する。特定の実施形態においては、POTを、1種以上のパラログ:トリパノソーマ・ブルセイのTbStt3BpおよびTbStt3Cp; リーシュマニア・インファンタムのLiStt3-1、LiStt3-2、およびLiStt3-3; リーシュマニア・ブラジリエンシスのLbStt3-1、LbStt3-2、およびLbStt3-3; ならびにリーシュマニア・メジャーのLmStt3A、LmStt3B、LmStt3C、およびLmStt3D、ならびにその相同体から選択する。別の実施形態においては、POTを、トリパノソーマ・ブルセイのTbStt3BpおよびTbStt3Cp、ならびにリーシュマニア・メジャーのLmStt3Ap、LmStt3Bp、およびLmStt3Dpのうちの1種以上から選択する。
かくして、本発明はまた、1種以上のPOTをコードする1種以上の核酸を含む、本発明に従う宿主細胞にも関する。POTまたはPOT様活性を発現させるためのプロモーターは、その活性が発現される細胞に関して内因性である、内因性プロモーターであってよい。このプロモーターは、1コピー以上の核酸分子の過剰発現を与えることができる。
ADH、TefまたはGPDなどのプロモーターを、酵母におけるPOTまたはPOT様活性の発現のために用いることができる。好ましい実施形態においては、POTまたはPOT様活性をコードする遺伝子は、好ましくは過剰発現を誘導する高コピー数プラスミド上にある。好ましい実施形態においては、前記分子は、低コピー数プラスミドまたは1コピーの染色体組込みからの発現と比較した場合、2倍、より好ましくは5倍、10倍、20倍、50倍、100倍、200倍、500倍、1000倍、および最も好ましくは2000倍以上過剰発現される。POTまたはPOT様活性を発現させるためのプロモーターは、例えば、高コピー数プラスミド上のadh、Tefまたはgpdであってよい。
本発明はまた、これらの細胞を作製する方法にも関する。
LLMノックアウト-POT複合系
本発明は、以下で「複合系」と呼ばれる改変された、または遺伝子操作された宿主細胞を提供する。本発明の複合系とは、低マンノースグリカン構造を有するLLOを特異的に合成することができ、低マンノースグリカンをこの細胞中の1種以上の新生タンパク質に移動させる宿主細胞であって、
(i)特に、少なくとも1種の器官局在性マンノシルトランスフェラーゼおよび必要に応じて、本明細書により詳細に記載される脂質結合単糖(LLM)フリッパーゼをノックアウトすることにより達成された、細胞内器官において、低マンノースグリカン構造、特に、Man1GlcNAc2、Man2GlcNAc2もしくはMan3GlcNAc2を有するLLOを合成するように改変された前記細胞;ならびに
(ii)特に、内因性OTの基質特異性と比較して、新生タンパク質に移動させる低マンノースグリカン構造に対する緩い基質特異性を示す、外因性/異種性オリゴサッカリルトランスフェラーゼであって、原生動物のオリゴサッカリルトランスフェラーゼ(POT)である前記オリゴサッカリルトランスフェラーゼを発現するようにさらに改変された前記細胞、
を指す。
特定の実施形態においては、新生タンパク質に移動させる低マンノースグリカン構造に対する緩い基質特異性を示す、オリゴサッカリルトランスフェラーゼは、原生動物のオリゴサッカリルトランスフェラーゼ(POT)である。特定の実施形態においては、本発明に従う宿主細胞中で発現させるか、または過剰発現させるPOTは、リーシュマニア・メジャーのパラログLmStt3Aまたはその構造相同体である。別の特定の実施形態においては、本発明に従う宿主細胞中で発現させるか、または過剰発現させるPOTは、リーシュマニア・メジャーのパラログLmStt3Cまたはその構造相同体である。別の特定の実施形態においては、本発明に従う宿主細胞中で発現させるか、または過剰発現させるPOTは、リーシュマニア・メジャーのパラログLmStt3Dまたはその構造相同体である。
別の特定の実施形態においては、本発明に従う宿主細胞中で発現させるか、または過剰発現させるPOTは、リーシュマニア・ブラジリエンシスのパラログLbStt3-1またはその構造相同体である。本発明に従う宿主細胞中で発現させるか、または過剰発現させるPOTは、リーシュマニア・ブラジリエンシスのパラログLbStt3-2またはその構造相同体であってもよい。別の特定の実施形態においては、本発明に従う宿主細胞中で発現させるか、または過剰発現させるPOTは、リーシュマニア・ブラジリエンシスのパラログLbStt3-3またはその構造相同体である。
別の特定の実施形態においては、本発明に従う宿主細胞中で発現させるか、または過剰発現させるPOTは、リーシュマニア・インファンタムのパラログLiStt3-1またはその構造相同体である。別の特定の実施形態においては、本発明に従う宿主細胞中で発現させるか、または過剰発現させるPOTは、リーシュマニア・インファンタムのパラログLiStt3-2またはその構造相同体である。本発明に従う宿主細胞中で発現させるか、または過剰発現させるPOTは、リーシュマニア・インファンタムのパラログLiStt3-3またはその構造相同体である。
さらに別の特定の実施形態においては、本発明に従う宿主細胞中で発現させるか、または過剰発現させるPOTは、トリパノソーマ・ブルセイのパラログTbStt3Aまたはその構造相同体である。別の特定の実施形態においては、本発明に従う宿主細胞中で発現させるか、または過剰発現させるPOTは、トリパノソーマ・ブルセイのパラログTbStt3Bまたはその構造相同体である。別の特定の実施形態においては、本発明に従う宿主細胞中で発現させるか、または過剰発現させるPOTは、トリパノソーマ・ブルセイのパラログTbStt3Cまたはその構造相同体である。
本発明の特定の実施形態においては、特に、1種以上の上記で特性評価されたPOTなどの低マンノースグリカン構造に対する緩い基質特異性を有する1種以上のPOTの発現のための発現カセットまたはその機能的類似体が提供される。この発現カセットは、上記で同定されたPOTから選択される、低マンノースグリカン構造に対する緩い基質特異性を有するオリゴサッカリルトランスフェラーゼをコードする1コピー以上の核酸分子の1つを含む。
その特定の変形においては、上記で特性評価された1種以上のPOTをコードする1コピー以上の核酸分子を含む、真核宿主細胞の形質転換のためのベクターも提供される。前記ベクター中の核酸配列を、発現制御配列に機能し得る形で連結することができる。好ましくは、1種以上の前記核酸分子は、プロモーターをコードする核酸分子とターミネーターをコードする核酸分子のうちの少なくとも一方と共に存在する。POT活性を発現させるためのプロモーターは、例えば、高コピー数プラスミド上のADH、TefまたはGPDであってもよい。
より好ましい実施形態においては、本発明は、リーシュマニア・メジャーのパラログLmStt3Dまたはその構造相同体を発現するトランスジェニック突然変異細胞を提供する。その特定の変形においては、LmStt3Dを、低コピーベクター中、前記細胞中で発現させる。別の特定の変形においては、LmStt3Dを、高コピーベクター中、前記細胞中で発現させる。
別の好ましい実施形態においては、提供される細胞は、リーシュマニア・ブラジリエンシスのパラログLbStt3-3またはその構造相同体を発現する。その特定の変形においては、LbStt3-3を、低コピーベクター中、前記細胞中で発現させる。別の特定の変形においては、LbStt3-3を、高コピーベクター中、前記細胞中で発現させる。
別の好ましい実施形態においては、提供される細胞は、リーシュマニア・ブラジリエンシスのパラログLbStt3-1またはその構造相同体を発現する。その特定の変形においては、LbStt3-1を、高コピーベクター中、前記細胞中で発現させる。
別の好ましい実施形態においては、提供される細胞は、リーシュマニア・インファンタムのパラログLiStt3-2またはその構造相同体を発現する。その特定の変形においては、LiStt3-2を、高コピーベクター中、前記細胞中で発現させる。
さらに別の好ましい実施形態においては、提供される細胞は、トリパノソーマ・ブルセイのパラログTbStt3Bまたはその構造相同体を発現する。その特定の変形においては、TbStt3Bを、高コピーベクター中、前記細胞中で発現させる。
さらに別の好ましい実施形態においては、提供される細胞は、トリパノソーマ・ブルセイのパラログTbStt3Cまたはその構造相同体を発現する。その特定の変形においては、TbStt3Cを、高コピーベクター中、前記細胞中で発現させる。
複合系の特定の実施形態においては、前記細胞は、(i)少なくともAlg2-型活性を欠いている、および(ii)POT活性を発現または過剰発現する突然変異体である。より具体的には、前記細胞は、(i)alg2および/またはalg2相同体のノックアウト突然変異体であり、(ii)1種以上の上記で同定されたPOT活性を発現する。本発明はまた、この細胞を作製する方法にも関する。
複合系の特定の実施形態においては、前記細胞は、(i)少なくともAlg11-型活性を欠いている、および(ii)POT活性を発現または過剰発現する突然変異体である。より具体的には、前記細胞は、(i)alg11および/またはalg11相同体のノックアウト突然変異体であり、(ii)1種以上の上記で同定されたPOT活性を発現または過剰発現する。好ましい実施形態においては、本発明は、リーシュマニア・メジャーのパラログLmStt3Dを発現するalg11および/またはalg11相同体のノックアウト突然変異体を提供する。その特定の変形においては、LmStt3Dを、低コピーベクター中で発現させる。別の好ましい実施形態においては、この突然変異細胞は、リーシュマニア・ブラジリエンシスのパラログLbStt3-3を発現する。その特定の変形においては、LbStt3-3を、低コピーベクター中で発現させる。その特定の変形においては、LbStt3-3を、低コピーベクター中で発現させる。本発明はまた、これらの細胞を作製する方法にも関する。
複合系の別の特定の実施形態においては、前記細胞は、(i)少なくともAlg3-型活性とAlg11-型活性の両方を欠いている、および(ii)POT活性を発現または過剰発現する突然変異体である。より具体的には、前記細胞は、(i)alg3およびalg11の両方ならびに/またはその任意の相同体のノックアウト突然変異体であり、(ii)1種以上の上記で同定されたPOT活性を発現する。好ましい実施形態においては、本発明は、リーシュマニア・メジャーのパラログLmStt3Dを発現する、alg3およびalg11の両方ならびに/またはその任意の相同体のノックアウト突然変異体を提供する。その特定の変形においては、LmStt3Dを低コピーベクター中で発現させる。別の好ましい実施形態においては、この突然変異細胞は、リーシュマニア・ブラジリエンシスのパラログLbStt3-3を発現する。その特定の変形においては、LbStt3-3を、低コピーベクター中で発現させる。さらに別の好ましい実施形態においては、この突然変異細胞は、トリパノソーマ・ブルセイのパラログTbStt3BまたはTbStt3Cを発現する。その特定の変形においては、TbStt3BまたはTbStt3Cを、高コピーベクター中で発現させる。本発明はまた、これらの細胞を作製する方法にも関する。
複合系の別の特定の実施形態においては、前記細胞は、(i)少なくともAlg11-型活性と脂質結合単糖(LLM)フリッパーゼ活性の両方を欠いている、および(ii)POT活性を発現または過剰発現する突然変異体である。より具体的には、前記細胞は、(i)alg11および/またはalg11相同体ならびに脂質結合単糖(LLM)フリッパーゼをコードする1個以上の遺伝子の相同体の両方のノックアウト突然変異体であり、(ii)1種以上の上記で同定されたPOT活性を発現する。本発明はまた、これらの細胞を作製する方法にも関する。
複合系のさらに別の特定の実施形態においては、前記細胞は、(i)少なくともAlg11-型活性とβ-D-マンノシルトランスフェラーゼ(DPM1)-型活性の両方を欠いている、および(ii)POT活性を発現または過剰発現する突然変異体である。より具体的には、前記細胞は、(i)alg11および/もしくはdpm1の両方ならびに/またはその相同体のノックアウト突然変異体であり、(ii)1種以上の上記で同定されたPOT活性を発現する。本発明はまた、これらの細胞を作製する方法にも関する。
理論に束縛されることを望むものではないが、好ましい変形においては、内因性OTのためのノックアウト突然変異は必要ではない。しかしながら、好ましい変形においては、内因性OTは、前記細胞中に存在しないか、または抑制されている。従って、内因性OTサブユニットをコードする1個以上の遺伝子がノックアウトされた細胞が提供される。酵母細胞を含む好ましい変形においては、内因性オリゴサッカリルトランスフェラーゼの前記少なくとも1個のサブユニットを、Wbp1p、Ost1p、Ost2p、Ost3p、Ost4p、Ost5p、Ost6p、Swp1p、およびStt3pからなる群より選択する。好ましい実施形態においては、前記細胞は、wbp1およびstt3遺伝子のノックアウト突然変異体である。別の好ましい実施形態においては、前記細胞は、ost1およびost2遺伝子のノックアウト突然変異体である。
特定の変形においては、前記宿主細胞は、Stt3pの突然変異体であり、より具体的には、宿主細胞はstt3-7対立遺伝子の温度感受性表現型を有する、酵母株YG543である(Spirigら、Mol. Gen. Genet. 256, p. 628-637, 1997)。
LLMノックアウト-LLOフリッパーゼ-POT複合系
別の態様に従えば、本発明は、低マンノースグリカン構造を有するLLOを特異的に合成することができる宿主細胞であって、低マンノースグリカンを、この細胞中で発現された1種以上の新生タンパク質に移動させる前記細胞であって、
(i)低マンノースグリカン構造、特に、Man1GlcNAc2、Man2GlcNAc2もしくはMan3GlcNAc2を有するLLOを細胞内器官中で合成するように改変され、特に、少なくとも1種の器官局在化マンノシルトランスフェラーゼおよび必要に応じて、本明細書により詳細に記載される脂質結合単糖(LLM)フリッパーゼをノックアウトすることにより達成された前記細胞;
(ii)本明細書により詳細に記載される低マンノースLLOに対する緩い特異性を有する新規LLOフリッパーゼを発現するように改変された前記細胞;ならびに
(iii)好ましくは、原生動物のオリゴサッカリルトランスフェラーゼ(POT)であり、より特には、上記で同定されたPOTから選択される、新生タンパク質に移動させる低マンノースグリカン構造に対する緩い基質特異性を示すオリゴサッカリルトランスフェラーゼを発現するようにさらに改変された前記細胞、
を提供する。
上記で特性評価された新規LLOフリッパーゼ活性と、POTなどの低マンノースグリカン構造に対する緩い基質特異性を有するオリゴサッカリルトランスフェラーゼの両方の発現のための発現カセットまたはその機能的類似体が提供される。この発現カセットは、1コピー以上の上記で特性評価された新規LLOフリッパーゼ活性をコードする核酸分子の1つと、1コピー以上の上記で特性評価されたPOTなどの低マンノースグリカン構造に対する緩い基質特異性を有するオリゴサッカリルトランスフェラーゼをコードする核酸分子の1つとを含む。
その特定の変形においては、1コピー以上の上記で特性評価された核酸分子の1つまたは1コピー以上の上記で特性評価された発現カセットとを含む、真核宿主細胞の形質転換のためのベクターも提供される。このベクター中の核酸配列を、発現制御配列に機能し得る形で連結することができる。好ましくは、1種以上の前記核酸分子は、プロモーターをコードする核酸分子とターミネーターをコードする核酸分子のうちの少なくとも一方と共に存在する。POT活性を発現させるためのプロモーターは、例えば、高コピー数プラスミド上のADH、TefまたはGPDであってよい。
新規LLOフリッパーゼ活性およびPOT活性を宿主細胞に付与するベクターに関する好ましい実施形態を、図14に記載する。そのヌクレオチド配列を配列番号32に提供する。
本明細書で用いられる用語「flc2'から誘導された(flc2'に由来する)」は、flc2'の完全な配列(配列番号1)を含む分子も包含し、好ましいさらなる変形においては、Flc2分子の1個以上の膜貫通ドメインをコードするflc2'の1個以上の断片を含む分子を包含する。本発明の特定かつ好ましい実施形態においては、前記分子は、Flc2'の膜貫通ドメイン4(TM4)またはその相同な機能的構造をコードする断片を含むか、または実質的にそれからなる。その特定かつ好ましい実施形態においては、前記分子は、Flc2'の膜貫通ドメイン3〜4(TM3-4)またはその相同な機能的構造をコードする断片を含むか、または実質的にそれからなる。
前記分子は、Flc2'の膜貫通ドメイン1(TM1)またはその相同な機能的構造をコードする断片を含むか、または実質的にそれからなってもよい。前記分子はまた、Flc2'の膜貫通ドメイン2(TM3)またはその相同な機能的構造をコードする断片を含むか、または実質的にそれからなってもよい。その特定かつ好ましい実施形態においては、前記分子は、Flc2'の膜貫通ドメイン1〜2(TM1-2)またはその相同な機能的構造をコードする断片を含むか、または実質的にそれからなる。別の実施形態においては、前記分子は、Flc2'の膜貫通ドメイン2〜4(TM2-4)またはその相同な機能的構造をコードする断片を含むか、または実質的にそれからなる。
前記分子は、Flc2'の膜貫通ドメイン3(TM3)またはその相同な機能的構造をコードする断片を含むか、または実質的にそれからなってもよい。その特定の実施形態においては、前記分子は、Flc2'の膜貫通ドメイン1〜3(TM1-3)またはその相同な機能的構造をコードする断片を含むか、または実質的にそれからなる。別の実施形態においては、前記分子は、Flc2'の膜貫通ドメイン2〜3(TM2-3)またはその相同な機能的構造をコードする断片を含むか、または実質的にそれからなる。
前記複合系の特定の実施形態においては、前記細胞は、(i)少なくともAlg2-型活性を欠いている;(ii)本発明に従う新規LLOフリッパーゼ活性を発現する;および(iii)POT活性を発現する突然変異体である。より具体的には、前記細胞は、(i)alg2および/もしくはalg2相同体のノックアウト突然変異体である;(ii)LLOフリッパーゼ活性を付与する1個以上の核酸分子を発現する;ならびに(iii)1種以上の上記で同定されたPOT活性を発現する。より特定の実施形態においては、前記細胞は、新規LLOフリッパーゼ活性を付与する、上記でより詳細に記載されたflc2'から誘導された1種以上の核酸分子を発現する。別の変形においては、前記細胞は、LLOフリッパーゼ活性を付与する、上記のrft1から誘導された1種以上の核酸分子を発現する。この細胞は、Man1GlcNAc2およびMan2GlcNAc2構造を有するLLOを特異的に合成し、この構造を新生タンパク質に移動させることができる。本発明はまた、この細胞を作製する方法にも関する。
別の好ましい実施形態においては、前記細胞は、(i)少なくともAlg11-型活性を欠いている;(ii)本発明に従う新規LLOフリッパーゼ活性を発現する;および(iii)POT活性を発現する突然変異体である。より具体的には、前記細胞は、(i)alg11および/もしくはalg11相同体のノックアウト突然変異体である;(ii)LLOフリッパーゼ活性を付与する1個以上の核酸分子を発現する;ならびに(iii)1種以上の上記で同定されたPOT活性を発現する。より特定の実施形態においては、前記細胞は、新規LLOフリッパーゼ活性を付与する、上記でより詳細に記載されたflc2'から誘導された1種以上の核酸分子を発現する。別の変形においては、前記細胞は、LLOフリッパーゼ活性を付与する、上記のrft1から誘導された1種以上の核酸分子を発現する。この細胞は、Man3GlcNAcおよびMan6GlcNAc2、Man7GlcNAc2および/またはMan8GlcNAc2構造を有するLLOを特異的に合成し、この構造を新生タンパク質に移動させることができる。本発明はまた、この細胞を作製する方法にも関する。
最も好ましい実施形態においては、前記細胞は、(i)少なくともAlg3-型活性とAlg11-型活性の両方を欠いている;(ii)本発明に従う新規LLOフリッパーゼ活性を発現する;および(iii)POT活性を発現する突然変異体である。より具体的には、前記細胞は、(i)alg3および/もしくはalg11、またはその任意の相同体の両方のノックアウト突然変異体である;(ii)LLOフリッパーゼ活性を付与する1個以上の核酸分子を発現する;ならびに(iii)1種以上の上記で同定されたPOT活性を発現する。より特定の実施形態においては、前記細胞は、新規LLOフリッパーゼ活性を付与する、上記でより詳細に記載されたflc2'から誘導された1種以上の核酸分子を発現する。別の変形においては、前記細胞は、LLOフリッパーゼ活性を付与する、上記のrft1から誘導された1種以上の核酸分子を発現する。この細胞は、Man3GlcNAc2構造を有するLLOを特異的に合成し、この構造を新生タンパク質に移動させることができる。本発明に従う好ましい突然変異細胞は、リーシュマニア・メジャーのパラログLmStt3Dを発現する。その特定の変形においては、LmStt3Dを低コピーベクター中で発現させる。別の好ましい実施形態においては、この突然変異細胞は、リーシュマニア・ブラジリエンシスのパラログLbStt3-3を発現する。その特定の変形においては、LbStt3-3を低コピーベクター中で発現させる。さらに別の好ましい実施形態においては、この突然変異細胞は、トリパノソーマ・ブルセイのパラログTbStt3BまたはTbStt3Cを発現する。その特定の変形においては、TbStt3BまたはTbStt3Cを、高コピーベクター中で発現させる。本発明はまた、これらの細胞を作製する方法にも関する。
別の好ましい実施形態においては、前記細胞は、(i)少なくともAlg11-型活性と、脂質結合単糖(LLM)フリッパーゼ活性の両方を欠いている;(ii)本発明に従う新規LLOフリッパーゼ活性を発現する;および(iii)POT活性を発現する突然変異体である。より具体的には、前記細胞は、(i)alg11および/もしくはその相同体と、脂質結合単糖(LLM)フリッパーゼ活性をコードする1個以上の遺伝子の両方のノックアウト突然変異体である;(ii)LLOフリッパーゼ活性を付与する1個以上の核酸分子を発現する;ならびに(iii)1種以上の上記で同定されたPOT活性を発現する。より特定の実施形態においては、前記細胞は、新規LLOフリッパーゼ活性を付与する、上記でより詳細に記載されたflc2'から誘導された1種以上の核酸分子を発現する。あるいは、またはさらに、前記細胞は、LLOフリッパーゼ活性を付与する、上記のrft1から誘導された1種以上の核酸分子を発現する。本発明に従う好ましい突然変異細胞は、リーシュマニア・メジャーのパラログLmStt3Dを発現する。その特定の変形においては、LmStt3Dを低コピーベクター中で発現させる。別の好ましい実施形態においては、この突然変異細胞は、リーシュマニア・ブラジリエンシスのパラログLbStt3-3を発現する。その特定の変形においては、LbStt3-3を低コピーベクター中で発現させる。さらに別の好ましい実施形態においては、この突然変異細胞は、トリパノソーマ・ブルセイのパラログTbStt3BまたはTbStt3Cを発現する。その特定の変形においては、TbStt3BまたはTbStt3Cを、高コピーベクター中で発現させる。本発明はまた、これらの細胞を作製する方法にも関する。この細胞は、Man3GlcNAc2構造を有するLLOを特異的に合成し、この構造を新生タンパク質に移動させることができる。本発明はまた、この細胞を作製する方法にも関する。
さらに別の好ましい実施形態においては、前記細胞は、(i)少なくともAlg11-型活性と、β-D-マンノシルトランスフェラーゼ(DPM-1)型活性の両方を欠いている;(ii)本発明に従う新規LLOフリッパーゼ活性を発現する;および(iii)POT活性を発現する突然変異体である。より具体的には、前記細胞は、(i)alg11および/もしくはdpm1および/もしくはその相同体の両方のノックアウト突然変異体である;(ii)LLOフリッパーゼ活性を付与する1個以上の核酸分子を発現する;ならびに(iii)1種以上の上記で同定されたPOT活性を発現する。より特定の実施形態においては、前記細胞は、新規LLOフリッパーゼ活性を付与する、上記でより詳細に記載されたflc2'から誘導された1種以上の核酸分子を発現する。あるいは、またはさらに、前記細胞は、LLOフリッパーゼ活性を付与する、上記のrft1から誘導された1種以上の核酸分子を発現する。本発明に従う好ましい突然変異細胞は、リーシュマニア・メジャーのパラログLmStt3Dを発現する。その特定の変形においては、LmStt3Dを低コピーベクター中で発現させる。別の好ましい実施形態においては、この突然変異細胞は、リーシュマニア・ブラジリエンシスのパラログLbStt3-3を発現する。その特定の変形においては、LbStt3-3を低コピーベクター中で発現させる。さらに別の好ましい実施形態においては、この突然変異細胞は、トリパノソーマ・ブルセイのパラログTbStt3BまたはTbStt3Cを発現する。その特定の変形においては、TbStt3BまたはTbStt3Cを、高コピーベクター中で発現させる。本発明はまた、これらの細胞を作製する方法にも関する。この細胞は、主にMan3GlcNAc2構造を有するLLOを特異的に合成し、この構造を新生タンパク質に移動させることができる。本発明はまた、この細胞を作製する方法にも関する。
特に、内因性OTサブユニットをコードする1個以上の遺伝子がノックアウトされた細胞が提供される。酵母細胞を含む好ましい変形においては、内因性オリゴサッカリルトランスフェラーゼの少なくとも1個のサブユニットを、Wbp1p、Ost1p、Ost2p、Ost3p、Ost4p、Ost5p、Ost6p、Swp1p、およびStt3pからなる群より選択する。好ましい実施形態においては、前記細胞は、遺伝子wbp1およびstt3のノックアウト突然変異体である。別の好ましい実施形態においては、前記細胞は遺伝子ost1およびost2のノックアウト突然変異体である。
本発明のさらなる実施形態においては、上記の細胞のいずれか1種は、異種糖タンパク質をコードする少なくとも1種の核酸をさらに含んでもよい。異種糖タンパク質を発現させるためのプロモーターは、その活性が発現される細胞に関して内因性である内因性プロモーターであってよい。別の好ましい実施形態においては、前記プロモーターは、1コピー以上の核酸分子の過剰発現を付与する、異種プロモーター、誘導性プロモーターまたは構成的プロモーターである。これらの細胞は、主にMan1-3GlcNAc2構造を有するLLOを特異的に合成し、この構造を前記異種タンパク質に移動させることができる。
理論に束縛されることを望むものではないが、上記で特定されたノックアウト欠失株は、ER上で、またはER中で、低マンノースLLO、特に、Man3GlcNAc2を産生することのみを可能にするべきであり、次いで、ER中のタンパク質に結合される。いくつかの状態においては、さらなるマンノース残基がマンノシルトランスフェラーゼによりゴルジ装置中で後に付加され、タンパク質上にMan4GlcNAc2およびMan5GlcNAc2構造をもたらし得る。望ましくないMan4GlcNAc2およびMan5GlcNAc2構造の量を減少させるために、本発明は、これを回避するための尺度を提供する。好ましい尺度は、上記で詳細に説明された本発明の細胞のいずれか1種における、ゴルジ体局在性マンノシルトランスフェラーゼをコードする1種以上の遺伝子の欠失である。
所望の低マンノシル化グリカンを、相同性もしくは異種性マンノシダーゼ活性を用いる高マンノース(例えば、Man8GlcNAc2もしくはMan9GlcNAc2)または超マンノシル化糖型の除去/切断により取得する本発明は、従来技術の以前の教示とは明確に対照的である。かくして、好ましい実施形態においては、本発明は、有効なマンノシダーゼ活性を示さないか、またはマンノシダーゼ活性を全く示さない細胞に関する。
改変されたゴルジ糖鎖付加を有する宿主細胞
ERでのオリゴサッカリルトランスフェラーゼ活性の結果生じる主要な糖タンパク質を、以下でより詳細に説明されるゴルジ体でのさらなる糖鎖付加にかけることができる。本発明のさらに主要な態様は、本発明の宿主細胞中でのゴルジ体に基づく糖鎖付加の改変のための手段および方法の提供である。上記でより詳細に説明されたERに基づく糖鎖付加の改変および下記でより詳細に説明されるゴルジ体に基づく糖鎖付加の改変は連動する。本発明は、有利には、ゴルジ体での続いて改変される糖鎖付加のための理想的な基質を形成する低マンノースグリカン構造を有する主要な糖タンパク質を提供する。
ゴルジ体局在性マンノシルトランスフェラーゼ活性をさらに欠く宿主細胞
好ましい実施形態においては、本発明の宿主細胞を、1種以上、少なくとも2種、好ましくは少なくとも3種、少なくとも4種または少なくとも5種のゴルジ体局在性マンノシルトランスフェラーゼを欠くか、またはそれが減少もしくは枯渇するようにさらに改変または遺伝子操作する。このマンノシルトランスフェラーゼを、好ましくは、Och1p、Mnn1p、Mnn2p、Mnn4p、Mnn5p、Mnn9p、Mnn10p、およびMnn11p、ならびにその相同体から選択する(表2を参照)。前記細胞は、好ましくは、och1、mnn1、mnn2、mnn4、mnn5、mnn9、mnn10、およびmnn11遺伝子ならびにその相同体からなる群より選択される少なくとも1個の遺伝子のノックアウト突然変異体である。相同体はまた、同じか、または関連する遺伝子ファミリーの他のメンバーも含む。
Figure 2012506710
前記細胞は、och1、またはmnn1、mnn2、mnn4、mnn5、mnn9、mnn10、mnn11および/またはその相同体の少なくとも1個の遺伝子のノックアウト突然変異体であってよい。前記細胞はまた、ktr1、ktr2、ktr3、ktr4、ktr5、ktr6、ktr7および/またはその相同体の少なくとも1個の遺伝子のノックアウト突然変異体であってもよい。前記細胞はまた、van1、vrg4および/またはその相同体の少なくとも1個の遺伝子のノックアウト突然変異体であってもよい。
好ましい実施形態においては、本発明の細胞、および特に上記で同定された複合系は、少なくともOch1-型活性、より具体的には、α-1,6-マンノシルトランスフェラーゼをさらに欠いている。より具体的には、前記細胞はさらに、och1に対するノックアウト突然変異体である。例えば、本発明の複合系を、ピチア・パストリスの超マンノシル化-マイナス(Och1)突然変異株に基づいて遺伝子操作することができる。
好ましい実施形態においては、本発明の細胞、および特に上記で同定された複合系は、mnn1遺伝子またはその相同体により付与される少なくともα-1,3-マンノシルトランスフェラーゼ活性を欠いている。より具体的には、前記細胞は少なくともmnn1またはその相同体に対するノックアウト突然変異体である。この細胞はまた、1個以上の上記で特性評価されたマンノシルトランスフェラーゼ活性を欠いてもよく、特に、mnn9、mnn5、van1およびその相同体の1個以上から選択される、このマンノシルトランスフェラーゼ活性をコードするこれらの遺伝子の1個以上のノックアウト突然変異体である。
好ましい実施形態においては、前記細胞は、少なくともAlg11-型活性、およびMnn1-型活性を欠いている突然変異体である。より具体的には、前記細胞は、少なくともalg11およびmnn1のノックアウト突然変異体である。その好ましい実施形態は、
(i)特に、本明細書で定義された1種以上の核酸分子によりコードされる少なくとも1種の新規LLOフリッパーゼ活性を発現するように改変され、alg11もしくはその相同体に対するノックアウト突然変異体である、
(ii)少なくともmnn1もしくはその相同体に対するノックアウト突然変異体である、ならびに
(iiia)上記で特性評価されたPOT活性の少なくとも1種をさらに発現するか、または過剰発現する、ならびに、あるいは、またはさらに、
(iiib)上記で特性評価されたLLO活性の少なくとも1種をさらに発現するか、または過剰発現する、
複合系である突然変異細胞、好ましくは酵母細胞である。
この細胞は、主にMan3GlcNAc2構造を有するLLOを特異的に合成し、この構造を新生タンパク質に移動させることができる。本発明はまた、この細胞を作製する方法にも関する。
好ましい実施形態においては、前記細胞は、少なくともAlg3-型活性、Alg11-型活性、およびMnn1-型活性を欠いている突然変異体である。より具体的には、前記細胞は、少なくともalg11、alg3およびmnn1のノックアウト突然変異体である。その好ましい実施形態は、
(i)特に、本明細書で定義された1種以上の核酸分子によりコードされる少なくとも1種の新規LLOフリッパーゼ活性を発現するように改変され、alg3およびalg11もしくはその相同体に対するノックアウト突然変異体である、
(ii)少なくともmnn1もしくはその相同体に対するノックアウト突然変異体である、ならびに
(iiia)上記で特性評価されたPOT活性の少なくとも1種をさらに発現するか、または過剰発現する、ならびに、あるいは、またはさらに、
(iiib)上記で特性評価されたLLO活性の少なくとも1種をさらに発現するか、または過剰発現する、
複合系である突然変異細胞、好ましくは酵母細胞である。
この細胞は、主にMan3GlcNAc2、Man6GlcNAc2、Man7GlcNAc2、またはMan8GlcNAc2構造を有するLLOを特異的に合成し、この構造を新生タンパク質に移動させることができる。本発明はまた、この細胞を作製する方法にも関する。
別の好ましい実施形態においては、前記細胞は、少なくともAlg11-型活性、DPM1-型活性、およびMnn1-型活性を欠いている突然変異体である。より具体的には、前記細胞は、少なくともalg11、dpm1、およびmnn1のノックアウト突然変異体である。その好ましい実施形態は、
(i)特に、本明細書で定義された1種以上の核酸分子によりコードされる少なくとも1種の新規LLOフリッパーゼ活性を発現するように改変され、dpm1およびalg11もしくはその相同体に対するノックアウト突然変異体である、
(ii)少なくともmnn1もしくはその相同体に対するノックアウト突然変異体である、ならびに
(iiia)上記で特性評価されたPOT活性の少なくとも1種をさらに発現するか、または過剰発現する、ならびに、あるいは、またはさらに、
(iiib)上記で特性評価されたLLO活性の少なくとも1種をさらに発現するか、または過剰発現する、
複合系である突然変異細胞、好ましくは酵母細胞である。
特定の実施形態においては、これらの細胞は、新規LLOフリッパーゼ活性を付与する、上記でより詳細に説明されたflc2'から誘導された1種以上の核酸分子を発現するか、または過剰発現する。あるいは、またはさらに、前記細胞は、LLOフリッパーゼ活性を付与する、上記のrft1から誘導された1種以上の核酸分子を発現する。
その特定の実施形態においては、これらの細胞は、リーシュマニア・メジャーのパラログLmStt3Dを発現または過剰発現する。その特定の変形においては、LmStt3Dを低コピーベクター中で発現させる。別の好ましい実施形態においては、この突然変異細胞は、リーシュマニア・ブラジリエンシスのパラログLbStt3-3を発現する。その特定の変形においては、LbStt3-3を低コピーベクター中で発現させる。さらに別の好ましい実施形態においては、この突然変異細胞は、トリパノソーマ・ブルセイのパラログTbStt3BまたはTbStt3Cを発現する。その特定の変形においては、TbStt3BまたはTbStt3Cを高コピーベクター中で発現させる。本発明はまた、これらの細胞を作製する方法にも関する。
その特定の実施形態においては、これらの細胞はまた、ost1およびost2ならびに/またはwbp1およびstt3ならびに/または対応するその相同体のノックアウトによる、内因性OT活性のノックアウト突然変異体でもある。
異種グリコシルトランスフェラーゼの発現によるゴルジ体に基づく糖鎖付加の特異的制御
以下でより詳細に説明するように、本発明の核酸分子またはポリアミノ酸分子の好ましい実施形態を用いて、以下に特性評価される糖タンパク質または糖タンパク質組成物を産生するように特殊化された改変宿主細胞を作製する。
本発明の細胞を、様々な真核生物間で有意に異なるゴルジ体内の糖鎖付加カスケードを変化させ、かくして、糖タンパク質が、それらが発現され、そこから単離された細胞型に応じてそのグリカン構造において異なるように、さらに遺伝子操作することができる。例えば、下等真核生物は通常、高マンノースを含有するN-グリカンを産生する。従って、本発明の別の課題は、例えば、ヒト細胞以外の細胞中のヒトグリカン構造などの、特定の型のN-グリカン構造を有する糖タンパク質を産生するのに有用な細胞およびそれを産生することができる方法を提供することである。従って、例えば、ヒトにおける糖タンパク質のプロセッシングを模倣する、一連の酵素反応を前記細胞が実行することができるゴルジ体糖鎖付加経路において、そのような細胞をさらに遺伝的に改変することができる。これらの遺伝子操作された細胞中で発現された組換えタンパク質は、そのヒト対応物と、実質的に同一ではなくても、より類似する糖タンパク質を得る。上記に例示したように、通常は高マンノース含有N-グリカンを産生する下等真核細胞を用いる場合、前記細胞を、Man3GlcNAc2もしくはMan5GlcNAc2またはヒト糖鎖付加経路に沿った他の構造などのN-グリカンを産生するように改変する。好ましい実施形態としては、限定されるものではないが、
GlcNAcMan3-5GlcNAc2、
GlcNAc2Man3GlcNAc2、
GlcNAc3Man3GlcNAc2-バイセクティング
Gal2GlcNAc2Man3GlcNAc2、
Gal2GlcNAc2Man3GlcNAc2Fuc、
Gal2GlcNAc3Man3GlcNAc2-バイセクティング、
Gal2GlcNAc3Man3GlcNAc2Fuc-バイセクティング、
NeuAc2Gal2GlcNAc2Man3GlcNAc2、
NeuAc2Gal2GlcNAc2Man3GlcNAc2Fuc、
NeuAc2Gal2GlcNAc3Man3GlcNAc2-バイセクティング、
euAc2Gal2GlcNAc3Man3GlcNAc2Fuc-バイセクティング、
GlcNAc3Man3GlcNAc2、
Gal3GlcNAc3Man3GlcNAc2、
Gal3GlcNAc3Man3GlcNAc2Fuc、
NeuAc3Gal3GlcNAc3Man3GlcNAc2、および
NeuAc3Gal3GlcNAc3Man3GlcNAc2Fuc、
から選択される1個以上のグリカン構造を含む組換え糖タンパク質が挙げられる。
本明細書で用いられる、GlcNAcはN-アセチルグルコサミンであり、Galはガラクトースであり、Fucはフコースであり、NeuAcはN-アセチルノイラミン酸またはシアル酸である。好ましい実施形態においては、本明細書で用いられる全てのグリカン構造は、フコース(Fuc)の存在が特に例示されない限り、そのグリカン構造中にフコースを欠く。
本発明に従って、好ましくは、下等真核生物、特に、酵母などの菌類細胞の糖タンパク質に特徴的な望ましくない高マンノース型構造を作る特定の酵素活性を欠く株の遺伝子操作および/または選択により、これを達成する。好ましくは、活性が望まれる菌類などの下等真核細胞中に存在する条件下で最適な活性を有するか、または最適な活性が達成される器官に標的化されるように選択された高マンノース型を作る酵素によって認識されないグリカン構造を生成する異種活性を発現する宿主細胞、および遺伝子操作された真核生物が「ヒト様」糖タンパク質を産生するのに必要とされる複数の異種酵素を発現するその組合せを遺伝子操作することにより、これを達成する。
好ましい実施形態においては、本発明はまた、「ヒト様」N-グリカンを産生することができるゴルジ体中への1種以上の異種酵素活性の組込みにも関する。好ましい実施形態においては、本発明は、ゴルジ体中に、少なくとも1種の異種グリコシルトランスフェラーゼ活性および/または表3、4および5に記載の活性群から選択される活性に関連する1種以上のグリコシルトランスフェラーゼ活性を含む遺伝子操作された細胞を提供する。
ヒト様糖鎖は主に、N-アセチルグルコサミン、ガラクトース、フコースおよび/またはN-アセチルノイラミン酸を含む「複雑な」N-グリカン構造を特徴とする。ハムスターなどの他の哺乳動物に由来するN-グリカン中に存在するN-グリコリルノイラミン酸などの他のシアル酸は、ヒトには存在しない。また、末端結合したα-1-3-ガラクトースなどの特殊なオリゴサッカリル結合は、げっ歯類には典型的であるが、ヒト細胞には存在しない。
Figure 2012506710
Figure 2012506710
Figure 2012506710
Figure 2012506710
Figure 2012506710
Figure 2012506710
Figure 2012506710
Figure 2012506710
Figure 2012506710
Figure 2012506710
Figure 2012506710
Figure 2012506710
この遺伝子操作努力の主な目標は、工業的発酵プロセスにおける規定のヒト様グリカン構造を有するタンパク質を実行することができる強固なタンパク質産生株を作製することである。宿主(例えば、菌類)染色体への複数の遺伝子の組込みには、注意深い計画が必要である。遺伝子操作された株を、様々な遺伝子により形質転換しなければならない可能性が高く、これらの遺伝子を安定な様式で形質転換して、所望の活性が発酵プロセスを通して維持されることを確保しなければならないであろう。任意の組合せの酵素活性を、タンパク質発現レベルで宿主細胞中に遺伝子操作しなければならないであろう。
DNA配列情報に関して、当業者であれば、GnT活性をコードするDNA分子をクローニングすることができるであろう。当業者にはよく知られた標準的な技術を用いて、1個以上のGnTをコードする(またはその触媒的に活性な断片をコードする)核酸分子を、本発明の選択された宿主細胞、例えば、本明細書に記載のピチア種、クルイベロミセス種、サッカロミセス種、ヤロウイア種およびアスペルギルス種などの菌類宿主において転写を駆動することができるプロモーターおよび他の発現制御配列の転写制御下で、好適な発現ベクター中に挿入して、1種以上のこれらの哺乳動物GnT酵素を、ヒト様複合糖タンパク質の産生のために選択された宿主細胞中で活発に発現させることができる。
遺伝子操作された株を、様々な糖鎖付加関連遺伝子で安定に形質転換して、所望の活性が発酵プロセスを通して維持されることを確保することができる。以下の酵素活性の任意の組合せを、発現宿主中に遺伝子操作しなければならないであろう。平行して、望ましくない糖鎖付加反応に関与するいくつかの宿主遺伝子を欠失させなければならないであろう。
好ましい実施形態においては、異種糖鎖付加酵素をコードする遺伝子のサブセット、少なくとも2個の遺伝子(ライブラリーとも呼ぶ)を、宿主生物中に形質転換し、最初に遺伝子混合集団を得る。次いで、所望の糖鎖付加表現型を有する形質転換体を、混合集団から選択する。好ましい実施形態においては、この宿主生物は下等真核生物であり、宿主糖鎖付加経路を、1個以上のヒトもしくは動物の糖鎖付加酵素の安定な発現により改変し、ヒトグリカン構造と類似するか、または同一であるN-グリカンを得る。特に好ましい実施形態においては、遺伝子のサブセットまたは「DNAライブラリー」は、糖鎖付加に関与する様々な細胞位置、特に、ER、シスゴルジ体、中央ゴルジ体、またはトランスゴルジ体のための標的化配列を有する糖鎖付加酵素の融合物をコードする遺伝子構築物を含む。
いくつかの場合、DNAライブラリーを、存在するか、または野生型遺伝子から直接集合させることができる。しかしながら、好ましい実施形態においては、DNAライブラリーを、1個以上のサブライブラリーの融合物から集合させる。サブライブラリーのインフレーム連結により、有用な標的化糖鎖付加活性をコードする多数の新規遺伝子構築物を作製することができる。例えば、1つの有用なサブライブラリーとしては、本明細書の以後に記載される任意の組合せの酵素および酵素活性をコードするDNA配列が挙げられる。
好ましくは、前記酵素は、ヒト起源のものであるが、他の真核生物または原核生物の酵素、より具体的には、哺乳動物、原生動物、植物、細菌または菌類の酵素も有用である。好ましい実施形態においては、遺伝子をトランケートして、酵素の触媒ドメインをコードする断片を得る。次いで、内因性標的化配列を除去することにより、酵素を他の細胞位置に再指向させ、そこで発現させることができる。そのような触媒ドメインの選択を、触媒ドメインが続いて活性となる特定の環境に関する知識によって誘導することができる。別の有用なサブライブラリーとしては、ER、ゴルジ体またはトランスゴルジネットワーク内の特定の場所にタンパク質を局在化させるシグナルペプチドをコードするDNA配列が挙げられる。これらのシグナル配列を、宿主生物ならびに他の関連するか、または関連しない生物から選択することができる。典型的なERまたはゴルジ体の膜結合タンパク質としては、例えば、細胞質尾部(ct)、膜貫通ドメイン(tmd)、およびステム領域(sr)をコードするN-末端配列が挙げられる。ct、tmdおよびsr配列は、十分に個別に、または組み合わさって、タンパク質を器官の内部(内腔)膜に固定する。従って、シグナル配列のサブライブラリーの好ましい実施形態は、これらのタンパク質に由来するct、tmd、および/またはsr配列を含む。いくつかの場合、変化する長さのsr配列を含むサブライブラリーを提供することが望ましい。これを、細胞質領域をコードするDNAの5'末端に結合するプライマーを用い、ステム領域の様々な部分に結合する一連の反対向きのプライマーを用いるPCRにより達成することができる。シグナル配列のさらに他の有用な起源としては、回収シグナルペプチドが挙げられる。
オープンリーディングフレーム配列に加えて、一般的には、各ライブラリー構築物に、そのようなプロモーター、転写ターミネーター、エンハンサー、リボソーム結合部位、および宿主生物中への形質転換の際に遺伝子の効率的な転写および翻訳を確保するのに必要であってよい他の機能的配列を提供することが好ましい。
かくして、これに従えば、本発明はさらに、表3、4および5に示され、好ましくは、
マンノシル(α-1,3-)-糖タンパク質β-1,2-N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼもしくはN-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼI (GnTI);
マンノシル(α-1,6-)-糖タンパク質β-1,2-N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼもしくはN-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ II (GnTII);
β-1,4-マンノシル-糖タンパク質4-β-N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼもしくはN-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ III (GnTIII);
マンノシル(α-1,3-)-糖タンパク質β-1,4-N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼもしくはN-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ IV (GnTIV);
マンノシル(α-1,6-)-糖タンパク質β-1,6-N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼもしくはN-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼV (GnTV);
α-1,6-マンノシル-糖タンパク質4-β-N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼもしくはN-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼVI (GnTVI);
β-N-アセチルグルコサミニルグリコペプチドβ-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼもしくはガラクトシルトランスフェラーゼ (GalT);
α(1,6)フコシルトランスフェラーゼもしくはフコシルトランスフェラーゼ (FucT);
β-ガラクトシドα-2,6-シアリルトランスフェラーゼもしくはシアリルトランスフェラーゼ (ST)
からなるゴルジ体に基づく異種酵素群より選択される、少なくとも1個の好ましくは異種酵素またはその触媒ドメインを発現するようにさらに遺伝子操作または改変された本明細書に記載の本発明に従う宿主細胞に関する。
これらの酵素活性を、UDP-GlcNAcトランスフェラーゼ;UDP-GlcNAc輸送因子;UDP-ガラクトシルトランスフェラーゼ;UDP-ガラクトース輸送因子;GDP-フコシルトランスフェラーゼ;GDP-フコース輸送因子;CMP-シアリルトランスフェラーゼ;CMP-シアル酸輸送因子;およびヌクレオチドジホスファターゼのうちの1種以上の活性によりさらに支援することができる。
本明細書に記載の少なくとも1種の酵素または触媒ドメインが、細胞内の膜または器官のための少なくとも局在化配列を含むことは言うまでもない。好ましい実施形態においては、その細胞内の膜または器官はゴルジ体である。
その好ましい変形においては、N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼV(GnTV)および/またはN-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼVI(GnTVI)は、改変された細胞中に存在しないか、またはその中で欠損している。これらの変形においては、これらの2種の酵素活性の一方または両方により触媒される改変は必要ではないか、またはゴルジ体に基づく改変から排除される。
GlcNAcMan3-5GlcNAc2構造の合成に関する実施形態
好ましい実施形態においては、改変された宿主細胞は、マンノシル(α-1,3-)-糖タンパク質β-1,2-N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ(GnTI)型活性、特に、Mgat1-型転写物から選択されるゴルジ体に基づくプロセッシングのための、好ましくは異種性の酵素活性を示す。
この細胞はまた、UDP-N-アセチルグルコサミン輸送因子型活性、特に、Slc35A3-型転写物から選択される好ましくは異種性の酵素活性をも含む。
最も好ましい実施形態においては、この細胞は、これらのゴルジ体プロセッシング関連酵素活性の少なくとも両方またはそれのみを含む。
この実施形態の好ましい変形においては、前記細胞は、以下の遺伝子の1つ:mgat1およびslc35A3ならびに/またはその相同体のうちの1種以上を発現する。
この細胞は特に、GlcNAcMan3-5GlcNAc2構造を有するN-グリカンを産生することができる。かくして、本発明はまた、このグリカン構造を有する糖タンパク質を産生するように特異的に設計された宿主細胞にも関する。かくして、本発明はまた、好ましくはこの細胞により産生可能であるか、または実際に産生された、この構造を有する、好ましくは単離された糖タンパク質にも関する。また、本発明は、この細胞を用いることによるその糖タンパク質を作製するための方法またはプロセスを提供する。
GlcNAc2Man3GlcNAc2構造の合成に関する実施形態
別の好ましい実施形態においては、改変された宿主細胞は、
マンノシル(α-1,3-)-糖タンパク質β-1,2-N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ(GnTI)型活性、特に、Mgat1-型転写物;
UDP-N-アセチルグルコサミン輸送因子型活性、特に、Slc35A3-型転写物;および
マンノシル(α-1,6-)-糖タンパク質β-1,2-N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ(GnTII)型活性、特に、Mgat2-型転写物、
から選択されるゴルジ体に基づくプロセッシングのための、好ましくは異種性の酵素活性を示す。
最も好ましい実施形態においては、この細胞は、これらのゴルジ体プロセッシング関連酵素活性の少なくとも全部またはそれのみを含む。
この実施形態の好ましい変形においては、前記細胞は、以下の遺伝子の1つ:mgat1、mgat2、およびslc35A3ならびに/またはその相同体の1種以上を発現する。
この細胞は特に、GlcNAcMan3GlcNAc2構造を有するN-グリカンを産生することができる。かくして、本発明はまた、このグリカン構造を有する糖タンパク質を産生するように特異的に設計された宿主細胞にも関する。かくして、本発明はまた、好ましくはこの細胞により産生可能であるか、または実際に産生された、この構造を有する、好ましくは単離された糖タンパク質にも関する。また、本発明は、この細胞を用いることによるその糖タンパク質を作製するための方法またはプロセスを提供する。
GlcNAc3Man3GlcNAc2-バイセクティングの合成に関する実施形態
別の好ましい実施形態においては、改変された宿主細胞は、
マンノシル(α-1,3-)-糖タンパク質β-1,2-N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ(GnTI)型活性、特に、Mgat1-型転写物;
UDP-N-アセチルグルコサミン輸送因子型活性、特に、Slc35A3-型転写物;
マンノシル(α-1,6-)-糖タンパク質β-1,2-N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ(GnTII)、特に、Mgat2-型転写物;および
β-1,4-マンノシル-糖タンパク質4-β-N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ(GnTIII)、特に、Mgat3-型転写物、
から選択されるゴルジ体に基づくプロセッシングのための、好ましくは異種性の酵素活性を示す。
最も好ましい実施形態においては、この細胞は、これらのゴルジ体プロセッシング関連酵素活性の少なくとも全部またはそれのみを含む。
この実施形態の好ましい変形においては、前記細胞は、以下の遺伝子の1つ:mgat1、mgat2、mgat3およびslc35A3ならびに/またはその相同体の1種以上を発現する。
この細胞は特に、GlcNAc2Man3GlcNAc2-バイセクティング構造を有するN-グリカンを産生することができる。かくして、本発明はまた、このグリカン構造を有する糖タンパク質を産生するように特異的に設計された宿主細胞にも関する。かくして、本発明はまた、好ましくはこの細胞により産生可能であるか、または実際に産生された、この構造を有する、好ましくは単離された糖タンパク質にも関する。また、本発明は、この細胞を用いることによるその糖タンパク質を作製するための方法またはプロセスを提供する。
Gal2GlcNAc2Man3GlcNAc2構造の合成に関する実施形態
別の好ましい実施形態においては、改変された宿主細胞は、
マンノシル(α-1,3-)-糖タンパク質β-1,2-N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ(GnTI)型活性、特に、Mgat1-型転写物;
UDP-N-アセチルグルコサミン輸送因子型活性、特に、Slc35A3-型転写物;
マンノシル(α-1,6-)-糖タンパク質β-1,2-N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ(GnTII)、特に、Mgat2-型転写物;
β-N-アセチルグルコサミニル糖ペプチドβ-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼ(GalT)、特に、B4galt1-型転写物;および
UDP-ガラクトース輸送因子型活性、特に、Slc35A2-型転写物、
から選択されるゴルジ体に基づくプロセッシングのための、好ましくは異種性の酵素活性を示す。
最も好ましい実施形態においては、この細胞は、これらのゴルジ体プロセッシング関連酵素活性の少なくとも全部またはそれのみを含む。
この実施形態の好ましい変形においては、前記細胞は、以下の遺伝子の1つ:mgat1、mgat2、mgat3、b4galt1およびslc35a2ならびに/またはその相同体の1種以上を発現する。
この細胞は特に、Gal2GlcNAc2Man3GlcNAc2構造を有するN-グリカンを産生することができる。かくして、本発明はまた、このグリカン構造を有する糖タンパク質を産生するように特異的に設計された宿主細胞にも関する。かくして、本発明はまた、好ましくはこの細胞により産生可能であるか、または実際に産生された、この構造を有する、好ましくは単離された糖タンパク質にも関する。また、本発明は、この細胞を用いることによるその糖タンパク質を作製するための方法またはプロセスを提供する。
Gal2GlcNAc2Man3GlcNAc2Fuc構造の合成に関する実施形態
別の好ましい実施形態においては、改変された宿主細胞は、
マンノシル(α-1,3-)-糖タンパク質β-1,2-N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ(GnTI)型活性、特に、Mgat1-型転写物;
UDP-N-アセチルグルコサミン輸送因子型活性、特に、Slc35A3-型転写物;
マンノシル(α-1,6-)-糖タンパク質β-1,2-N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ(GnTII)、特に、Mgat2-型転写物;
β-N-アセチルグルコサミニル糖ペプチドβ-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼ(GalT)、特に、B4galt1-型転写物;および
UDP-ガラクトース輸送因子型活性、特に、Slc35A2-型転写物;
GDP-D-マンノース4,6-デヒドラターゼ型活性、特に、Gmds-型転写物;
GDP-4-ケト-6-デオキシ-D-マンノース-3,5-エピメラーゼ-4-リダクターゼ型活性、特に、Tsta3-型転写物;
GDP-フコース輸送因子型活性、特に、Slc35C1-型転写物;および
α(1,6)フコシルトランスフェラーゼ(FucT)型活性、特に、Fut8-型転写物、
から選択されるゴルジ体に基づくプロセッシングのための、好ましくは異種性の酵素活性を示す。
最も好ましい実施形態においては、この細胞は、これらのゴルジ体プロセッシング関連酵素活性の少なくとも全部またはそれのみを含む。
この実施形態の好ましい変形においては、前記細胞は、以下の遺伝子の1つ:mgat1、mgat2、slc35a3、mgat3、b4galt1、slc35a2、gmds、tsta3、slc35c1およびfut8ならびに/またはその相同体の1種以上を発現する。
この細胞は特に、Gal2GlcNAc2Man3GlcNAc2Fuc構造を有するN-グリカンを産生することができる。かくして、本発明はまた、このグリカン構造を有する糖タンパク質を産生するように特異的に設計された宿主細胞にも関する。かくして、本発明はまた、好ましくはこの細胞により産生可能であるか、または実際に産生された、この構造を有する、好ましくは単離された糖タンパク質にも関する。また、本発明は、この細胞を用いることによるその糖タンパク質を作製するための方法またはプロセスを提供する。
Gal2GlcNAc3Man3GlcNAc2-バイセクティング構造の合成に関する実施形態
別の好ましい実施形態においては、改変された宿主細胞は、
マンノシル(α-1,3-)-糖タンパク質β-1,2-N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ(GnTI)型活性、特に、Mgat1-型転写物;
UDP-N-アセチルグルコサミン輸送因子型活性、特に、Slc35A3-型転写物;
マンノシル(α-1,6-)-糖タンパク質β-1,2-N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ(GnTII)、特に、Mgat2-型転写物;
β-1,4-マンノシル-糖タンパク質4-β-N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ(GnTIII)、特に、Mgat3-型転写物、
β-N-アセチルグルコサミニル糖ペプチドβ-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼ(GalT)、特に、B4galt1-型転写物;および
UDP-ガラクトース輸送因子型活性、特に、Slc35A2-型転写物;
から選択されるゴルジ体に基づくプロセッシングのための、好ましくは異種性の酵素活性を示す。
最も好ましい実施形態においては、この細胞は、これらのゴルジ体プロセッシング関連酵素活性の少なくとも全部またはそれのみを含む。
この実施形態の好ましい変形においては、前記細胞は、以下の遺伝子の1つ:mgat1、mgat2、mgat3、slc35a3、b4galt1、およびslc35a2ならびに/またはその相同体の1種以上を発現する。
この細胞は特に、Gal2GlcNAc3Man3GlcNAc2-バイセクティング構造を有するN-グリカンを産生することができる。かくして、本発明はまた、このグリカン構造を有する糖タンパク質を産生するように特異的に設計された宿主細胞にも関する。かくして、本発明はまた、好ましくはこの細胞により産生可能であるか、または実際に産生された、この構造を有する、好ましくは単離された糖タンパク質にも関する。また、本発明は、この細胞を用いることによるその糖タンパク質を作製するための方法またはプロセスを提供する。
Gal2GlcNAc3Man3GlcNAc2Fuc-バイセクティング構造の合成に関する実施形態
別の好ましい実施形態においては、改変された宿主細胞は、
マンノシル(α-1,3-)-糖タンパク質β-1,2-N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ(GnTI)型活性、特に、Mgat1-型転写物;
UDP-N-アセチルグルコサミン輸送因子型活性、特に、Slc35A3-型転写物;
マンノシル(α-1,6-)-糖タンパク質β-1,2-N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ(GnTII)、特に、Mgat2-型転写物;
β-1,4-マンノシル-糖タンパク質4-β-N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ(GnTIII)、特に、Mgat3-型転写物、
β-N-アセチルグルコサミニル糖ペプチドβ-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼ(GalT)、特に、B4galt1-型転写物;
UDP-ガラクトース輸送因子型活性、特に、Slc35A2-型転写物;
GDP-D-マンノース4,6-デヒドラターゼ型活性、特に、Gmds-型転写物;
GDP-4-ケト-6-デオキシ-D-マンノース-3,5-エピメラーゼ-4-リダクターゼ型活性、特に、Tsta3-型転写物;
GDP-フコース輸送因子型活性、特に、Slc35C1-型転写物;および
α(1,6)フコシルトランスフェラーゼ(FucT)型活性、特に、Fut8-型転写物、
から選択されるゴルジ体に基づくプロセッシングのための、好ましくは異種性の酵素活性を示す。
最も好ましい実施形態においては、この細胞は、これらのゴルジ体プロセッシング関連酵素活性の少なくとも全部またはそれのみを含む。
この実施形態の好ましい変形においては、前記細胞は、以下の遺伝子の1つ:mgat1、mgat2、mgat3、slc35a3、b4galt1、slc35a2、gmds、tsta3、slc35c1およびfut8ならびに/またはその相同体の1種以上を発現する。
この細胞は特に、Gal2GlcNAc3Man3GlcNAc2Fuc-バイセクティング構造を有するN-グリカンを産生することができる。かくして、本発明はまた、このグリカン構造を有する糖タンパク質を産生するように特異的に設計された宿主細胞にも関する。かくして、本発明はまた、好ましくはこの細胞により産生可能であるか、または実際に産生された、この構造を有する、好ましくは単離された糖タンパク質にも関する。また、本発明は、この細胞を用いることによるその糖タンパク質を作製するための方法またはプロセスを提供する。
NeuAc2Gal2GlcNAc2Man3GlcNAc2構造の合成に関する実施形態
別の好ましい実施形態においては、改変された宿主細胞は、
マンノシル(α-1,3-)-糖タンパク質β-1,2-N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ(GnTI)型活性、特に、Mgat1-型転写物;
UDP-N-アセチルグルコサミン輸送因子型活性、特に、Slc35A3-型転写物;
マンノシル(α-1,6-)-糖タンパク質β-1,2-N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ(GnTII)、特に、Mgat2-型転写物;
β-N-アセチルグルコサミニル糖ペプチドβ-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼ(GalT)、特に、B4galt1-型転写物;
UDP-ガラクトース輸送因子型活性、特に、Slc35A2-型転写物;
β-ガラクトシドα-2,6-シアリルトランスフェラーゼ(ST)、特に、ST6gal1-型転写物;
UDP-N-アセチルグルコサミン2-エピメラーゼ(NeuC)、特に、NeuC-型転写物;
シアル酸シンターゼ(NeuB)、特に、NeuB-型転写物;
CMP-Neu5Acシンテターゼ、特に、Slc35A1-型転写物;および
CMP-シアル酸輸送因子、特に、NeuA/Cmas-型転写物、
から選択されるゴルジ体に基づくプロセッシングのための、好ましくは異種性の酵素活性を示す。
最も好ましい実施形態においては、この細胞は、これらのゴルジ体プロセッシング関連酵素活性の少なくとも全部またはそれのみを含む。
その代替的な変形においては、改変された宿主細胞は、シアル酸シンターゼ活性の代わりに、N-アシルノイラミン酸-9-リン酸シンターゼおよびN-アシルノイラミン酸-9-ホスファターゼ活性を示し、より具体的には、改変された宿主細胞は、
マンノシル(α-1,3-)-糖タンパク質β-1,2-N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ(GnTI)型活性、特に、Mgat1-型転写物;
UDP-N-アセチルグルコサミン輸送因子型活性、特に、Slc35A3-型転写物;
マンノシル(α-1,6-)-糖タンパク質β-1,2-N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ(GnTII)、特に、Mgat2-型転写物;
β-N-アセチルグルコサミニル糖ペプチドβ-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼ(GalT)、特に、B4galt1-型転写物;
UDP-ガラクトース輸送因子型活性、特に、Slc35A2-型転写物;
β-ガラクトシドα-2,6-シアリルトランスフェラーゼ(ST)、特に、ST6gal1-型転写物;
UDP-N-アセチルグルコサミン2-エピメラーゼ(NeuC)、特に、NeuC-型転写物;
N-アシルノイラミン酸-9-リン酸シンターゼ;
N-アシルノイラミン酸-9-ホスファターゼ;
CMP-Neu5Acシンテターゼ、特に、Slc35A1-型転写物;および
CMP-シアル酸輸送因子、特に、NeuA/Cmas-型転写物、
から選択されるゴルジ体に基づくプロセッシングのための、好ましくは異種性の酵素活性を示す。
最も好ましい実施形態においては、この細胞は、これらのゴルジ体プロセッシング関連酵素活性の少なくとも全部またはそれのみを含む。
これらの実施形態の好ましい変形においては、前記細胞は、以下の遺伝子の1つ:mgat1、mgat2、slc35a3、b4galt1、slc35a2、st6gal1、neuC、neuB、slc35a1、およびneuC/cmasならびに/またはその相同体の1種以上を発現する。
この細胞は特に、NeuAc2Gal2GlcNAc2Man3GlcNAc2構造を有するN-グリカンを産生することができる。かくして、本発明はまた、このグリカン構造を有する糖タンパク質を産生するように特異的に設計された宿主細胞にも関する。かくして、本発明はまた、好ましくはこの細胞により産生可能であるか、または実際に産生された、この構造を有する、好ましくは単離された糖タンパク質にも関する。また、本発明は、この細胞を用いることによるその糖タンパク質を作製するための方法またはプロセスを提供する。
NeuAc2Gal2GlcNAc3Man3GlcNAc2-バイセクティング構造の合成に関する実施形態
別の好ましい実施形態においては、改変された宿主細胞は、
マンノシル(α-1,3-)-糖タンパク質β-1,2-N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ(GnTI)型活性、特に、Mgat1-型転写物;
UDP-N-アセチルグルコサミン輸送因子型活性、特に、Slc35A3-型転写物;
マンノシル(α-1,6-)-糖タンパク質β-1,2-N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ(GnTII)、特に、Mgat2-型転写物;
β-1,4-マンノシル-糖タンパク質4-β-N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ(GnTIII)、特に、Mgat3-型転写物、
β-N-アセチルグルコサミニル糖ペプチドβ-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼ(GalT)、特に、B4galt1-型転写物;
UDP-ガラクトース輸送因子型活性、特に、Slc35A2-型転写物;
β-ガラクトシドα-2,6-シアリルトランスフェラーゼ(ST)、特に、ST6gal1-型転写物;
UDP-N-アセチルグルコサミン2-エピメラーゼ(NeuC)、特に、NeuC-型転写物;
シアル酸シンターゼ(NeuB)、特に、NeuB-型転写物;
CMP-Neu5Acシンテターゼ、特に、Slc35A1-型転写物;および
CMP-シアル酸輸送因子、特に、NeuA/Cmas-型転写物、
から選択されるゴルジ体に基づくプロセッシングのための、好ましくは異種性の酵素活性を示す。
最も好ましい実施形態においては、この細胞は、これらのゴルジ体プロセッシング関連酵素活性の少なくとも全部またはそれのみを含む。
その代替的な変形においては、改変された宿主細胞は、シアル酸シンターゼ活性の代わりに、N-アシルノイラミン酸-9-リン酸シンターゼおよびN-アシルノイラミン酸-9-ホスファターゼ活性を示し、より具体的には、改変された宿主細胞は、
マンノシル(α-1,3-)-糖タンパク質β-1,2-N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ(GnTI)型活性、特に、Mgat1-型転写物;
UDP-N-アセチルグルコサミン輸送因子型活性、特に、Slc35A3-型転写物;
マンノシル(α-1,6-)-糖タンパク質β-1,2-N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ(GnTII)、特に、Mgat2-型転写物;
β-1,4-マンノシル-糖タンパク質4-β-N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ(GnTIII)、特に、Mgat3-型転写物;
β-N-アセチルグルコサミニル糖ペプチドβ-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼ(GalT)、特に、B4galt1-型転写物;
UDP-ガラクトース輸送因子型活性、特に、Slc35A2-型転写物;
β-ガラクトシドα-2,6-シアリルトランスフェラーゼ(ST)、特に、ST6gal1-型転写物;
UDP-N-アセチルグルコサミン2-エピメラーゼ(NeuC)、特に、NeuC-型転写物;
N-アシルノイラミン酸-9-リン酸シンターゼ;
N-アシルノイラミン酸-9-ホスファターゼ;
CMP-Neu5Acシンテターゼ、特に、Slc35A1-型転写物;および
CMP-シアル酸輸送因子、特に、NeuA/Cmas-型転写物、
から選択されるゴルジ体に基づくプロセッシングのための、好ましくは異種性の酵素活性を示す。
最も好ましい実施形態においては、この細胞は、これらのゴルジ体プロセッシング関連酵素活性の少なくとも全部またはそれのみを含む。
これらの実施形態の好ましい変形においては、前記細胞は、以下の遺伝子の1つ:mgat1、mgat2、slc35a3、mgat3、b4galt1、slc35a2、st6gal1、neuC、neuB、slc35a1、およびneuC/cmasならびに/またはその相同体の1種以上を発現する。
この細胞は特に、NeuAc2Gal2GlcNAc2Man3GlcNAc2-バイセクティング構造を有するN-グリカンを産生することができる。かくして、本発明はまた、このグリカン構造を有する糖タンパク質を産生するように特異的に設計された宿主細胞にも関する。かくして、本発明はまた、好ましくはこの細胞により産生可能であるか、または実際に産生された、この構造を有する、好ましくは単離された糖タンパク質にも関する。また、本発明は、この細胞を用いることによるその糖タンパク質を作製するための方法またはプロセスを提供する。
NeuAc2Gal2GlcNAc2Man3GlcNAc2Fuc構造の合成に関する実施形態
別の好ましい実施形態においては、改変された宿主細胞は、
マンノシル(α-1,3-)-糖タンパク質β-1,2-N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ(GnTI)型活性、特に、Mgat1-型転写物;
UDP-N-アセチルグルコサミン輸送因子型活性、特に、Slc35A3-型転写物;
マンノシル(α-1,6-)-糖タンパク質β-1,2-N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ(GnTII)、特に、Mgat2-型転写物;
β-N-アセチルグルコサミニル糖ペプチドβ-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼ(GalT)、特に、B4galt1-型転写物;
UDP-ガラクトース輸送因子型活性、特に、Slc35A2-型転写物;
GDP-D-マンノース4,6-デヒドラターゼ型活性、特に、Gmds-型転写物;
GDP-4-ケト-6-デオキシ-D-マンノース-3,5-エピメラーゼ-4-リダクターゼ型活性、特に、Tsta3-型転写物;
GDP-フコース輸送因子型活性、特に、Slc35C1-型転写物;
α(1,6)フコシルトランスフェラーゼ(FucT)型活性、特に、Fut8-型転写物;
β-ガラクトシドα-2,6-シアリルトランスフェラーゼ(ST)、特に、ST6gal1-型転写物;
UDP-N-アセチルグルコサミン2-エピメラーゼ(NeuC)、特に、NeuC-型転写物;
シアル酸シンターゼ(NeuB)、特に、NeuB-型転写物;
CMP-Neu5Acシンテターゼ、特に、Slc35A1-型転写物;および
CMP-シアル酸輸送因子、特に、NeuA/Cmas-型転写物、
から選択されるゴルジ体に基づくプロセッシングのための、好ましくは異種性の酵素活性を示す。
最も好ましい実施形態においては、この細胞は、これらのゴルジ体プロセッシング関連酵素活性の少なくとも全部またはそれのみを含む。
その代替的な変形においては、改変された宿主細胞は、シアル酸シンターゼ活性の代わりに、N-アシルノイラミン酸-9-リン酸シンターゼおよびN-アシルノイラミン酸-9-ホスファターゼ活性を示し、より具体的には、改変された宿主細胞は、
マンノシル(α-1,3-)-糖タンパク質β-1,2-N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ(GnTI)型活性、特に、Mgat1-型転写物;
UDP-N-アセチルグルコサミン輸送因子型活性、特に、Slc35A3-型転写物;
マンノシル(α-1,6-)-糖タンパク質β-1,2-N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ(GnTII)、特に、Mgat2-型転写物;
β-N-アセチルグルコサミニル糖ペプチドβ-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼ(GalT)、特に、B4galt1-型転写物;
UDP-ガラクトース輸送因子型活性、特に、Slc35A2-型転写物;
GDP-D-マンノース4,6-デヒドラターゼ型活性、特に、Gmds-型転写物;
GDP-4-ケト-6-デオキシ-D-マンノース-3,5-エピメラーゼ-4-リダクターゼ型活性、特に、Tsta3-型転写物;
GDP-フコース輸送因子型活性、特に、Slc35C1-型転写物;
α(1,6)フコシルトランスフェラーゼ(FucT)型活性、特に、Fut8-型転写物;
β-ガラクトシドα-2,6-シアリルトランスフェラーゼ(ST)、特に、ST6gal1-型転写物;
UDP-N-アセチルグルコサミン2-エピメラーゼ(NeuC)、特に、NeuC-型転写物;
N-アシルノイラミン酸-9-リン酸シンターゼ;
N-アシルノイラミン酸-9-ホスファターゼ;
CMP-Neu5Acシンテターゼ、特に、Slc35A1-型転写物;および
CMP-シアル酸輸送因子、特に、NeuA/Cmas-型転写物、
から選択されるゴルジ体に基づくプロセッシングのための、好ましくは異種性の酵素活性を示す。
最も好ましい実施形態においては、この細胞は、これらのゴルジ体プロセッシング関連酵素活性の少なくとも全部またはそれのみを含む。
これらの実施形態の好ましい変形においては、前記細胞は、以下の遺伝子の1つ:mgat1、mgat2、slc35a3、b4galt1、slc35a2、gmds、tsta3、slc35c1、fut8、st6gal1、neuC、neuB、slc35a1、およびneuC/cmasならびに/またはその相同体の1種以上を発現する。
この細胞は特に、NeuAc2Gal2GlcNAc2Man3GlcNAc2Fuc構造を有するN-グリカンを産生することができる。かくして、本発明はまた、このグリカン構造を有する糖タンパク質を産生するように特異的に設計された宿主細胞にも関する。かくして、本発明はまた、好ましくはこの細胞により産生可能であるか、または実際に産生された、この構造を有する、好ましくは単離された糖タンパク質にも関する。また、本発明は、この細胞を用いることによるその糖タンパク質を作製するための方法またはプロセスを提供する。
NeuAc2Gal2GlcNAc3Man3GlcNAc2Fuc-バイセクティング構造の合成に関する実施形態
別の好ましい実施形態においては、改変された宿主細胞は、
マンノシル(α-1,3-)-糖タンパク質β-1,2-N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ(GnTI)型活性、特に、Mgat1-型転写物;
UDP-N-アセチルグルコサミン輸送因子型活性、特に、Slc35A3-型転写物;
マンノシル(α-1,6-)-糖タンパク質β-1,2-N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ(GnTII)、特に、Mgat2-型転写物;
β-1,4-マンノシル-糖タンパク質4-β-N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ(GnTIII)、特に、Mgat3-型転写物;
β-N-アセチルグルコサミニル糖ペプチドβ-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼ(GalT)、特に、B4galt1-型転写物;
UDP-ガラクトース輸送因子型活性、特に、Slc35A2-型転写物;
GDP-D-マンノース4,6-デヒドラターゼ型活性、特に、Gmds-型転写物;
GDP-4-ケト-6-デオキシ-D-マンノース-3,5-エピメラーゼ-4-リダクターゼ型活性、特に、Tsta3-型転写物;
GDP-フコース輸送因子型活性、特に、Slc35C1-型転写物;
α(1,6)フコシルトランスフェラーゼ(FucT)型活性、特に、Fut8-型転写物;
β-ガラクトシドα-2,6-シアリルトランスフェラーゼ(ST)、特に、ST6gal1-型転写物;
UDP-N-アセチルグルコサミン2-エピメラーゼ(NeuC)、特に、NeuC-型転写物;
シアル酸シンターゼ(NeuB)、特に、NeuB-型転写物;
CMP-Neu5Acシンテターゼ、特に、Slc35A1-型転写物;および
CMP-シアル酸輸送因子、特に、NeuA/Cmas-型転写物、
から選択されるゴルジ体に基づくプロセッシングのための、好ましくは異種性の酵素活性を示す。
最も好ましい実施形態においては、この細胞は、これらのゴルジ体プロセッシング関連酵素活性の少なくとも全部またはそれのみを含む。
その代替的な変形においては、改変された宿主細胞は、シアル酸シンターゼ活性の代わりに、N-アシルノイラミン酸-9-リン酸シンターゼおよびN-アシルノイラミン酸-9-ホスファターゼ活性を示し、より具体的には、改変された宿主細胞は、
マンノシル(α-1,3-)-糖タンパク質β-1,2-N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ(GnTI)型活性、特に、Mgat1-型転写物;
UDP-N-アセチルグルコサミン輸送因子型活性、特に、Slc35A3-型転写物;
マンノシル(α-1,6-)-糖タンパク質β-1,2-N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ(GnTII)、特に、Mgat2-型転写物;
β-1,4-マンノシル-糖タンパク質4-β-N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ(GnTIII)、特に、Mgat3-型転写物;
β-N-アセチルグルコサミニル糖ペプチドβ-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼ(GalT)、特に、B4galt1-型転写物;
UDP-ガラクトース輸送因子型活性、特に、Slc35A2-型転写物;
GDP-D-マンノース4,6-デヒドラターゼ型活性、特に、Gmds-型転写物;
GDP-4-ケト-6-デオキシ-D-マンノース-3,5-エピメラーゼ-4-リダクターゼ型活性、特に、Tsta3-型転写物;
GDP-フコース輸送因子型活性、特に、Slc35C1-型転写物;
α(1,6)フコシルトランスフェラーゼ(FucT)型活性、特に、Fut8-型転写物;
β-ガラクトシドα-2,6-シアリルトランスフェラーゼ(ST)、特に、ST6gal1-型転写物;
UDP-N-アセチルグルコサミン2-エピメラーゼ(NeuC)、特に、NeuC-型転写物;
N-アシルノイラミン酸-9-リン酸シンターゼ;
N-アシルノイラミン酸-9-ホスファターゼ;
CMP-Neu5Acシンテターゼ、特に、Slc35A1-型転写物;および
CMP-シアル酸輸送因子、特に、NeuA/Cmas-型転写物、
から選択されるゴルジ体に基づくプロセッシングのための、好ましくは異種性の酵素活性を示す。
最も好ましい実施形態においては、この細胞は、これらのゴルジ体プロセッシング関連酵素活性の少なくとも全部またはそれのみを含む。
これらの実施形態の好ましい変形においては、前記細胞は、以下の遺伝子の1つ:mgat1、mgat2、slc35a3、b4galt1、mgat3、slc35a2、gmds、tsta3、slc35c1、fut8、st6gal1、neuC、neuB、slc35a1、およびneuC/cmasならびに/またはその相同体の1種以上を発現する。
この細胞は特に、NeuAc2Gal2GlcNAc2Man3GlcNAc2Fuc-バイセクティング構造を有するN-グリカンを産生することができる。かくして、本発明はまた、このグリカン構造を有する糖タンパク質を産生するように特異的に設計された宿主細胞にも関する。かくして、本発明はまた、好ましくはこの細胞により産生可能であるか、または実際に産生された、この構造を有する、好ましくは単離された糖タンパク質にも関する。また、本発明は、この細胞を用いることによるその糖タンパク質を作製するための方法またはプロセスを提供する。
GlcNAc3Man3GlcNAc2構造の合成に関する実施形態
別の好ましい実施形態においては、改変された宿主細胞は、
マンノシル(α-1,3-)-糖タンパク質β-1,2-N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ(GnTI)型活性、特に、Mgat1-型転写物;
UDP-N-アセチルグルコサミン輸送因子型活性、特に、Slc35A3-型転写物;
マンノシル(α-1,6-)-糖タンパク質β-1,2-N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ(GnTII)、特に、Mgat2-型転写物;および
マンノシル(α-1,3-)-糖タンパク質β-1,4-N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ(GnTIV)型活性、特に、Mgat4-型転写物;
から選択されるゴルジ体に基づくプロセッシングのための、好ましくは異種性の酵素活性を示す。
最も好ましい実施形態においては、この細胞は、これらのゴルジ体プロセッシング関連酵素活性の少なくとも全部またはそれのみを含む。
この実施形態の好ましい変形においては、前記細胞は、以下の遺伝子の1つ:mgat1、mgat2、mgat4、およびslc35A3ならびに/またはその相同体の1種以上を発現する。
この細胞は特に、GlcNAc3Man3GlcNAc2構造を有するN-グリカンを産生することができる。かくして、本発明はまた、このグリカン構造を有する糖タンパク質を産生するように特異的に設計された宿主細胞にも関する。かくして、本発明はまた、好ましくはこの細胞により産生可能であるか、または実際に産生された、この構造を有する、好ましくは単離された糖タンパク質にも関する。また、本発明は、この細胞を用いることによるその糖タンパク質を作製するための方法またはプロセスを提供する。
Gal3GlcNAc3Man3GlcNAc2構造の合成に関する実施形態
別の好ましい実施形態においては、改変された宿主細胞は、
マンノシル(α-1,3-)-糖タンパク質β-1,2-N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ(GnTI)型活性、特に、Mgat1-型転写物;
UDP-N-アセチルグルコサミン輸送因子型活性、特に、Slc35A3-型転写物;
マンノシル(α-1,6-)-糖タンパク質β-1,2-N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ(GnTII)、特に、Mgat2-型転写物;および
マンノシル(α-1,3-)-糖タンパク質β-1,4-N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ(GnTIV)型活性、特に、Mgat4-型転写物;
β-N-アセチルグルコサミニル糖ペプチドβ-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼ(GalT)、特に、B4galt1-型転写物;および
UDP-ガラクトース輸送因子型活性、特に、Slc35A2-型転写物、
から選択されるゴルジ体に基づくプロセッシングのための、好ましくは異種性の酵素活性を示す。
最も好ましい実施形態においては、この細胞は、これらのゴルジ体プロセッシング関連酵素活性の少なくとも全部またはそれのみを含む。
この実施形態の好ましい変形においては、前記細胞は、以下の遺伝子の1つ:mgat1、mgat2、mgat4、slc35a3、b4galt1およびslc35a2ならびに/またはその相同体の1種以上を発現する。
この細胞は特に、Gal3GlcNAc3Man3GlcNAc2構造を有するN-グリカンを産生することができる。かくして、本発明はまた、このグリカン構造を有する糖タンパク質を産生するように特異的に設計された宿主細胞にも関する。かくして、本発明はまた、好ましくはこの細胞により産生可能であるか、または実際に産生された、この構造を有する、好ましくは単離された糖タンパク質にも関する。また、本発明は、この細胞を用いることによるその糖タンパク質を作製するための方法またはプロセスを提供する。
Gal3GlcNAc3Man3GlcNAc2Fuc構造の合成に関する実施形態
別の好ましい実施形態においては、改変された宿主細胞は、
マンノシル(α-1,3-)-糖タンパク質β-1,2-N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ(GnTI)型活性、特に、Mgat1-型転写物;
UDP-N-アセチルグルコサミン輸送因子型活性、特に、Slc35A3-型転写物;
マンノシル(α-1,6-)-糖タンパク質β-1,2-N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ(GnTII)、特に、Mgat2-型転写物;および
マンノシル(α-1,3-)-糖タンパク質β-1,4-N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ(GnTIV)型活性、特に、Mgat4-型転写物;
β-N-アセチルグルコサミニル糖ペプチドβ-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼ(GalT)、特に、B4galt1-型転写物;
UDP-ガラクトース輸送因子型活性、特に、Slc35A2-型転写物;
GDP-D-マンノース4,6-デヒドラターゼ型活性、特に、Gmds-型転写物;
GDP-4-ケト-6-デオキシ-D-マンノース-3,5-エピメラーゼ-4-リダクターゼ型活性、特に、Tsta3-型転写物;
GDP-フコース輸送因子型活性、特に、Slc35C1-型転写物;および
α(1,6)フコシルトランスフェラーゼ(FucT)型活性、特に、Fut8-型転写物、
から選択されるゴルジ体に基づくプロセッシングのための、好ましくは異種性の酵素活性を示す。
最も好ましい実施形態においては、この細胞は、これらのゴルジ体プロセッシング関連酵素活性の少なくとも全部またはそれのみを含む。
この実施形態の好ましい変形においては、前記細胞は、以下の遺伝子の1つ:mgat1、mgat2、mgat4、slc35a3、b4galt1、slc35a2、gmds、tsta3、slc35c1およびfut8ならびに/またはその相同体の1種以上を発現する。
この細胞は特に、Gal3GlcNAc3Man3GlcNAc2Fuc構造を有するN-グリカンを産生することができる。かくして、本発明はまた、このグリカン構造を有する糖タンパク質を産生するように特異的に設計された宿主細胞にも関する。かくして、本発明はまた、好ましくはこの細胞により産生可能であるか、または実際に産生された、この構造を有する、好ましくは単離された糖タンパク質にも関する。また、本発明は、この細胞を用いることによるその糖タンパク質を作製するための方法またはプロセスを提供する。
NeuAc3Gal3GlcNAc3Man3GlcNAc2構造の合成に関する実施形態
別の好ましい実施形態においては、改変された宿主細胞は、
マンノシル(α-1,3-)-糖タンパク質β-1,2-N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ(GnTI)型活性、特に、Mgat1-型転写物;
UDP-N-アセチルグルコサミン輸送因子型活性、特に、Slc35A3-型転写物;
マンノシル(α-1,6-)-糖タンパク質β-1,2-N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ(GnTII)、特に、Mgat2-型転写物;
マンノシル(α-1,3-)-糖タンパク質β-1,4-N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ(GnTIV)型活性、特に、Mgat4-型転写物;
β-N-アセチルグルコサミニル糖ペプチドβ-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼ(GalT)、特に、B4galt1-型転写物;
UDP-ガラクトース輸送因子型活性、特に、Slc35A2-型転写物;
β-ガラクトシドα-2,6-シアリルトランスフェラーゼ(ST)、特に、ST6gal1-型転写物;
UDP-N-アセチルグルコサミン2-エピメラーゼ(NeuC)、特に、NeuC-型転写物;
シアル酸シンターゼ(NeuB)、特に、NeuB-型転写物;
CMP-Neu5Acシンテターゼ、特に、Slc35A1-型転写物;および
CMP-シアル酸輸送因子、特に、NeuA/Cmas-型転写物、
から選択されるゴルジ体に基づくプロセッシングのための、好ましくは異種性の酵素活性を示す。
最も好ましい実施形態においては、この細胞は、これらのゴルジ体プロセッシング関連酵素活性の少なくとも全部またはそれのみを含む。
その代替的な変形においては、改変された宿主細胞は、シアル酸シンターゼ活性の代わりに、N-アシルノイラミン酸-9-リン酸シンターゼおよびN-アシルノイラミン酸-9-ホスファターゼ活性を示し、より具体的には、改変された宿主細胞は、
マンノシル(α-1,3-)-糖タンパク質β-1,2-N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ(GnTI)型活性、特に、Mgat1-型転写物;
UDP-N-アセチルグルコサミン輸送因子型活性、特に、Slc35A3-型転写物;
マンノシル(α-1,6-)-糖タンパク質β-1,2-N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ(GnTII)、特に、Mgat2-型転写物;
マンノシル(α-1,3-)-糖タンパク質β-1,4-N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ(GnTIV)型活性、特に、Mgat4-型転写物;
β-N-アセチルグルコサミニル糖ペプチドβ-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼ(GalT)、特に、B4galt1-型転写物;
UDP-ガラクトース輸送因子型活性、特に、Slc35A2-型転写物;
β-ガラクトシドα-2,6-シアリルトランスフェラーゼ(ST)、特に、ST6gal1-型転写物;
UDP-N-アセチルグルコサミン2-エピメラーゼ(NeuC)、特に、NeuC-型転写物;
N-アシルノイラミン酸-9-リン酸シンターゼ;
N-アシルノイラミン酸-9-ホスファターゼ;
CMP-Neu5Acシンテターゼ、特に、Slc35A1-型転写物;および
CMP-シアル酸輸送因子、特に、NeuA/Cmas-型転写物、
から選択されるゴルジ体に基づくプロセッシングのための、好ましくは異種性の酵素活性を示す。
最も好ましい実施形態においては、この細胞は、これらのゴルジ体プロセッシング関連酵素活性の少なくとも全部またはそれのみを含む。
これらの実施形態の好ましい変形においては、前記細胞は、以下の遺伝子の1つ:mgat1、mgat2、slc35a3、b4galt1、mgat4、slc35a2、st6gal1、neuC、neuB、slc35a1、およびneuC/cmasならびに/またはその相同体の1種以上を発現する。
この細胞は特に、NeuAc3Gal3GlcNAc3Man3GlcNAc2構造を有するN-グリカンを産生することができる。かくして、本発明はまた、このグリカン構造を有する糖タンパク質を産生するように特異的に設計された宿主細胞にも関する。かくして、本発明はまた、好ましくはこの細胞により産生可能であるか、または実際に産生された、この構造を有する、好ましくは単離された糖タンパク質にも関する。また、本発明は、この細胞を用いることによるその糖タンパク質を作製するための方法またはプロセスを提供する。
NeuAc3Gal3GlcNAc3Man3GlcNAc2Fuc構造の合成に関する実施形態
別の好ましい実施形態においては、改変された宿主細胞は、
マンノシル(α-1,3-)-糖タンパク質β-1,2-N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ(GnTI)型活性、特に、Mgat1-型転写物;
UDP-N-アセチルグルコサミン輸送因子型活性、特に、Slc35A3-型転写物;
マンノシル(α-1,6-)-糖タンパク質β-1,2-N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ(GnTII)、特に、Mgat2-型転写物;
マンノシル(α-1,3-)-糖タンパク質β-1,4-N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ(GnTIV)型活性、特に、Mgat4-型転写物;
β-N-アセチルグルコサミニル糖ペプチドβ-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼ(GalT)、特に、B4galt1-型転写物;
UDP-ガラクトース輸送因子型活性、特に、Slc35A2-型転写物;
GDP-D-マンノース4,6-デヒドラターゼ型活性、特に、Gmds-型転写物;
GDP-4-ケト-6-デオキシ-D-マンノース-3,5-エピメラーゼ-4-リダクターゼ型活性、特に、Tsta3-型転写物;
GDP-フコース輸送因子型活性、特に、Slc35C1-型転写物;
α(1,6)フコシルトランスフェラーゼ(FucT)型活性、特に、Fut8-型転写物;
β-ガラクトシドα-2,6-シアリルトランスフェラーゼ(ST)、特に、ST6gal1-型転写物;
UDP-N-アセチルグルコサミン2-エピメラーゼ(NeuC)、特に、NeuC-型転写物;
シアル酸シンターゼ(NeuB)、特に、NeuB-型転写物;
CMP-Neu5Acシンテターゼ、特に、Slc35A1-型転写物;および
CMP-シアル酸輸送因子、特に、NeuA/Cmas-型転写物、
から選択されるゴルジ体に基づくプロセッシングのための、好ましくは異種性の酵素活性を示す。
最も好ましい実施形態においては、この細胞は、これらのゴルジ体プロセッシング関連酵素活性の少なくとも全部またはそれのみを含む。
その代替的な変形においては、改変された宿主細胞は、シアル酸シンターゼ活性の代わりに、N-アシルノイラミン酸-9-リン酸シンターゼおよびN-アシルノイラミン酸-9-ホスファターゼ活性を示し、より具体的には、改変された宿主細胞は、
マンノシル(α-1,3-)-糖タンパク質β-1,2-N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ(GnTI)型活性、特に、Mgat1-型転写物;
UDP-N-アセチルグルコサミン輸送因子型活性、特に、Slc35A3-型転写物;
マンノシル(α-1,6-)-糖タンパク質β-1,2-N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ(GnTII)、特に、Mgat2-型転写物;
マンノシル(α-1,3-)-糖タンパク質β-1,4-N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ(GnTIV)型活性、特に、Mgat4-型転写物;
β-N-アセチルグルコサミニル糖ペプチドβ-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼ(GalT)、特に、B4galt1-型転写物;
UDP-ガラクトース輸送因子型活性、特に、Slc35A2-型転写物;
GDP-D-マンノース4,6-デヒドラターゼ型活性、特に、Gmds-型転写物;
GDP-4-ケト-6-デオキシ-D-マンノース-3,5-エピメラーゼ-4-リダクターゼ型活性、特に、Tsta3-型転写物;
GDP-フコース輸送因子型活性、特に、Slc35C1-型転写物;
α(1,6)フコシルトランスフェラーゼ(FucT)型活性、特に、Fut8-型転写物;
β-ガラクトシドα-2,6-シアリルトランスフェラーゼ(ST)、特に、ST6gal1-型転写物;
UDP-N-アセチルグルコサミン2-エピメラーゼ(NeuC)、特に、NeuC-型転写物;
N-アシルノイラミン酸-9-リン酸シンターゼ;
N-アシルノイラミン酸-9-ホスファターゼ;
CMP-Neu5Acシンテターゼ、特に、Slc35A1-型転写物;および
CMP-シアル酸輸送因子、特に、NeuA/Cmas-型転写物、
から選択されるゴルジ体に基づくプロセッシングのための、好ましくは異種性の酵素活性を示す。
最も好ましい実施形態においては、この細胞は、これらのゴルジ体プロセッシング関連酵素活性の少なくとも全部またはそれのみを含む。
これらの実施形態の好ましい変形においては、前記細胞は、以下の遺伝子の1つ:mgat1、mgat2、slc35a3、b4galt1、mgat4、slc35a2、gmds、tsta3、slc35c1、fut8、st6gal1、neuC、neuB、slc35a1、およびneuC/cmasならびに/またはその相同体の1種以上を発現する。
この細胞は特に、NeuAc3Gal2GlcNAc2Man3GlcNAc2Fuc構造を有するN-グリカンを産生することができる。かくして、本発明はまた、このグリカン構造を有する糖タンパク質を産生するように特異的に設計された宿主細胞にも関する。かくして、本発明はまた、好ましくはこの細胞により産生可能であるか、または実際に産生された、この構造を有する、好ましくは単離された糖タンパク質にも関する。また、本発明は、この細胞を用いることによるその糖タンパク質を作製するための方法またはプロセスを提供する。
糖タンパク質を作製するための方法またはプロセス
本発明はまた、本発明に従う宿主細胞のいずれか1つを用いることによる糖タンパク質を作製するための方法またはプロセスも提供する。理論に束縛されることを望むものではないが、本発明に従う細胞は、前記糖タンパク質上でMan1GlcNAc2、Man2GlcNAc2またはMan3GlcNAc2構造を有する大量のN-グリカンを産生することができる。糖タンパク質は、同種または異種タンパク質であってよい。従って、上記に概略された宿主細胞のいずれか1つは、好ましくは、異種糖タンパク質をコードする少なくとも1種の核酸を含む。同種タンパク質は主に、宿主細胞自身に由来するタンパク質を指すが、「外来」のクローニングされた遺伝子によりコードされるタンパク質は、宿主細胞の異種タンパク質である。より具体的には、本発明に従う異種タンパク質をコードする任意の核酸を、目的の宿主細胞中での発現のためにコドン最適化することができる。例えば、トリパノソーマ・ブルセイのPOT活性をコードする核酸を、サッカロミセス・セレビジアなどの酵母細胞中での発現のためにコドン最適化することができる。
本発明に従う宿主細胞は、複合N-結合オリゴ糖とハイブリッドオリゴ糖を産生することができる。分枝状複合N-グリカンは、ヒトエリスロポエチン(hEPO)などの治療用タンパク質の生理学的活性に関与する。二分岐構造を有するヒトEPOは、低い活性を有することが示されているが、四分岐構造を有するhEPOは血流からのより遅い消失およびかくして、より高い活性をもたらした(Misaizu Tら(1995) Blood December 1; 86(11):4097-104)。
グリカン構造は、タンパク質コアに結合したオリゴ糖を意味する。高マンノース構造は6個以上のマンノースを含むが、主としてマンノースからなり、ある程度までに過ぎないが、5個未満のマンノース部分からなるグリカン構造は低マンノースグリカン構造、例えば、Man3GlcNAc2である。より具体的には、本明細書で用いられる用語「グリカン」または「糖タンパク質」とは、N-結合オリゴ糖、例えば、アスパラギン-N-アセチルグルコサミン結合により、ポリペプチドのアスパラギン残基に結合したものを指す。N-グリカンは、Man3GlcNAc2の共通の五糖類コアを有する(「Man」はマンノースを指し、「Glc」はグルコースを指し、および「NAc」はN-アセチルを指し、GlcNAcはN-アセチルグルコサミンを指す)。N-グリカンは、Man3GlcNAc2(「Man3」)コア構造に付加された末梢糖(例えば、フコースおよびシアル酸)を含む分枝(アンテナ)の数に関して異なる。N-グリカンは、その分枝した構成要素に従って分類される(例えば、高マンノース、複合またはハイブリッド)。糖型は、特定のN-グリカンを担持する糖鎖付加されたタンパク質を表す。従って、糖型は、異なるN-グリカンを担持する糖鎖付加されたタンパク質を表す。「高マンノース」型N-グリカンは、5個以上のマンノース残基を有する。
N-グリカンの全てのクラスに共通のものは、コア構造Man3GlcNAc2である。このコア構造の後に、それぞれの分枝上の伸長配列があり、細胞型特異的ヘキソースで終わる。3つの一般的な型のN-グリカン構造を定義することができる:(1)その伸長配列内に、およびまた末端部分として主にマンノースを含む高マンノースグリカン。(2)対照的に、複合グリカンは異なるヘキソースから構成される。ヒトにおいては、それらは末端ヘキソースとしてN-アセチルノイラミン酸を含むことが多い。ならびに(3)1個の単一のグリカン内にポリマンノシル酸と複合伸長配列の両方を含むハイブリッドグリカン。
「複合」型N-グリカンは、典型的には、1,3マンノースアームに結合した少なくとも1個のGlcNAcおよび「トリマンノース」コアの1,6マンノースアームに結合した少なくとも1個のGlcNAcを有する。「トリマンノースコア」は、Man3構造を有する五糖類である。複合N-グリカンはまた、必要に応じて、シアル酸または誘導体(「NeuAc」、ここで「Neu」はノイラミン酸を指し、「Ac」はアセチルを指す)で改変されたガラクトース(「Gal」)残基を有してもよい。複合N-グリカンはまた、「分岐」GlcNAcとコアフコース(「Fuc」)を含む鎖内置換を有してもよい。「ハイブリッド」N-グリカンは、トリマンノースコアの1,3マンノースアームの末端上に少なくとも1個のGlcNAcと、トリマンノースコアの1,6マンノースアーム上に0個以上のマンノースを有する。
本発明のさらなる態様は、低マンノースグリカン構造を有する糖タンパク質または低マンノースグリカン構造を有する1個以上の糖タンパク質を含む糖タンパク質組成物を作製するためのプロセスである。
好ましい実施形態においては、前記タンパク質は異種タンパク質である。その好ましい変形においては、異種タンパク質は組換えタンパク質である。本発明の好ましい実施形態は、本発明の細胞により産生されるか、または産生可能である異種および/または組換え糖タンパク質を含む組成物であって、Man1-3GlcNAc2のグリカン構造を有する高収量の糖タンパク質を含む前記組成物である。
「組換えタンパク質」、「異種タンパク質」および「異種タンパク質」は、組換えDNA技術により作製されたポリペプチドを指すように互換的に用いられ、一般的には、ポリペプチドをコードするDNAを好適な発現ベクター中に挿入し、次いで、宿主細胞を形質転換して、異種タンパク質を産生させるために用いる。すなわち、前記ポリペプチドを、異種核酸から発現させる。
好ましい変形においては、Man3GlcNAc2グリカン構造を有する糖タンパク質またはMan3GlcNAc2グリカン構造を有する少なくとも1個の糖タンパク質を含む糖タンパク質組成物を作製するためのプロセスを提供する。別の好ましい変形においては、Man2GlcNAc2グリカン構造を有する糖タンパク質またはMan2GlcNAc2グリカン構造を有する少なくとも1個の糖タンパク質を含む糖タンパク質組成物を作製するためのプロセスを提供する。別の好ましい変形においては、Man1GlcNAc2グリカン構造を有する糖タンパク質またはMan1GlcNAc2グリカン構造を有する少なくとも1個の糖タンパク質を含む糖タンパク質組成物を作製するためのプロセスも提供する。別の好ましい変形においては、Man4GlcNAc2グリカン構造を有する糖タンパク質またはMan4GlcNAc2グリカン構造を有する少なくとも1個の糖タンパク質を含む糖タンパク質組成物を作製するためのプロセスも提供する。別の好ましい変形においては、Man5GlcNAc2グリカン構造を有する糖タンパク質またはMan5GlcNAc2グリカン構造を有する少なくとも1個の糖タンパク質を含む糖タンパク質組成物を作製するためのプロセスも提供する。
前記プロセスは、少なくとも以下の工程:本発明に従う突然変異細胞の提供を含む。前記細胞を、好ましくは液体培養培地中、好ましくは、該細胞中での前記糖タンパク質または糖タンパク質組成物の産生を可能にするか、または最も好ましくは、それを支援する条件下で培養する。必要に応じて、必要とされる前記糖タンパク質または糖タンパク質組成物を、前記細胞および/または前記培養培地から単離することができる。その単離を、好ましくは、当業界で公知の方法および手段を用いて実施する。
本発明はまた、本発明に従う細胞または方法により産生可能であるか、または産生される、新規糖タンパク質およびその組成物を提供する。そのような組成物はさらに、Man1GlcNAc2、Man2GlcNAc2、およびMan3GlcNAc2、好ましくは、Man3GlcNAc2構造から選択されるグリカンコア構造を含むことを特徴とする。本発明はまた、ゴルジ体でのMan1GlcNAc2、Man2GlcNAc2またはMan3GlcNAc2コアのさらなるマンノシル化に起因して産生され得る、Man4GlcNAc2およびMan5GlcNAc2から選択されるグリカン構造を含むことを特徴とする組成物を提供し得る。
好ましい実施形態においては、1種以上の前記グリカン構造が、少なくとも40%以上、より好ましくは少なくとも50%以上、さらにより好ましくは60%以上、さらにより好ましくは70%以上、さらにより好ましくは80%以上、さらにより好ましくは90%以上、さらにより好ましくは95%以上、最も好ましくは99%または100%の量で前記組成物中に存在する。そのようなタンパク質組成物に共通する他の物質および副生成物はその計算から排除されることは言うまでもない。最も好ましい実施形態においては、前記細胞により産生される基本的に全てのグリカン構造は、Man3GlcNAc構造を示す。別の好ましい実施形態においては、前記細胞により産生される基本的に全ての糖型は、Man4GlcNAc2および/またはMan5GlcNAc2構造を示す。
上記でより詳細に説明されたように、ゴルジ改変の結果として、複合ならびにハイブリッドN-グリカンを担持する糖タンパク質が取得可能である。前記糖タンパク質は、限定されるものではないが、
GlcNAcMan3-5GlcNAc2、
GlcNAc2Man3GlcNAc2、
GlcNAc3Man3GlcNAc2-バイセクティング、
Gal2GlcNAc2Man3GlcNAc2、
Gal2GlcNAc2Man3GlcNAc2Fuc、
Gal2GlcNAc3Man3GlcNAc2-バイセクティング、
Gal2GlcNAc3Man3GlcNAc2Fuc-バイセクティング、
NeuAc2Gal2GlcNAc2Man3GlcNAc2、NeuAc2Gal2GlcNAc2Man3GlcNAc2Fuc、
NeuAc2Gal2GlcNAc3Man3GlcNAc2-バイセクティング、
NeuAc2Gal2GlcNAc3Man3GlcNAc2Fuc-バイセクティング、
GlcNAc3Man3GlcNAc2、
Gal3GlcNAc3Man3GlcNAc2、
Gal3GlcNAc3Man3GlcNAc2Fuc、
NeuAc3Gal3GlcNAc3Man3GlcNAc2、および
NeuAc3Gal3GlcNAc3Man3GlcNAc2Fuc
から選択されるグリカン構造を含む。
好ましい実施形態においては、1種以上の上記で同定されたグリカン構造が、全ての糖タンパク質に対して少なくとも約40%以上、より好ましくは少なくとも約50%以上、さらにより好ましくは約60%以上、さらにより好ましくは約70%以上、さらにより好ましくは80%以上、さらにより好ましくは約90%以上、さらにより好ましくは約95%以上、および最も好ましくは99%の量で前記糖タンパク質または糖タンパク質組成物中に存在する。そのようなタンパク質組成物に共通する他の物質および副生成物がその計算から排除されることは言うまでもない。最も好ましい実施形態においては、本発明の宿主細胞により産生される基本的に全ての糖タンパク質は、1種以上の上記で同定されたグリカン構造を示す。
いくつかの実施形態においては、本発明に従う糖タンパク質のN-糖鎖型は、相同であるか、または実質的に相同であってよい。特に、前記糖タンパク質中の1つの特定のグリカン構造の画分は、全ての糖タンパク質に対して少なくとも約20%以上、約30%以上、約40%以上、より好ましくは少なくとも約50%以上、さらにより好ましくは約60%以上、さらにより好ましくは約70%以上、さらにより好ましくは80%以上、さらにより好ましくは約90%以上、さらにより好ましくは約95%以上、および最も好ましくは99%である。
本発明の好ましい実施形態は、上記で同定されたグリカン構造の2種以上の異なる糖タンパク質で示す宿主細胞により産生されるか、または産生可能である新規糖タンパク質組成物である。理論に束縛されることを望むものではないが、好ましい実施形態においては、本発明の特定の宿主細胞は、異なる構造の糖タンパク質の「混合物」をもたらす、同時に2種以上の異なる糖タンパク質を産生することができる。これはまた、中間型の糖鎖を指す。本発明の最も好ましい変形においては、前記宿主細胞が本質的な程度で、主に、またはさらに純粋に(90%を超える、好ましくは95%を超える、最も好ましくは99%以上)、1種の特定のグリカン構造を提供することに留意しなければならない。
別の好ましい実施形態においては、本発明の2種以上の異なる宿主細胞を、好ましくは、2種以上の異なるN-グリカン構造を産生するように同時培養して、異なる構造の糖タンパク質の「混合物」をもたらす。
N-グリカン分析にとって好適な器具としては、例えば、ABI PRISM(登録商標)377 DNA配列決定装置(Applied Biosystems)が挙げられる。データ分析を、例えば、GENESCAN(登録商標)3.1ソフトウェア(Applied Biosystems)を用いて実施することができる。N-グリカン分析のさらなる方法としては、例えば、質量分析(例えば、MALDI-TOF-MS)、通常相、逆相上での高速液体クロマトグラフィー(HPLC)およびイオン交換クロマトグラフィー(例えば、グリカンを標識しない場合、パルスアンペロメトリー検出を用いる、およびグリカンを好適に標識する場合、UV吸収または蛍光を用いる)が挙げられる。
好ましい実施形態は、Gal2GlcNAc2Man3GlcNAc2構造のN-グリカンを含む、本発明の細胞により産生可能な、IgGなどの組換え免疫グロブリンである。
別のより好ましい実施形態は、NeuAc3Gal3GlcNAc3Man3GlcNAc2Fuc構造の3個のN-グリカンを含む、本発明の細胞により産生可能な、組換えヒトエリスロポエチン(rhuEPO)である。
好ましい実施形態においては、糖タンパク質または糖タンパク質組成物を、限定されるものではないが、前記宿主細胞から単離することができる。好ましい実施形態においては、糖タンパク質または糖タンパク質組成物を、限定されるものではないが、前記宿主細胞からさらに精製することができる。本明細書で用いられる用語「単離された」とは、天然に不随する成分、例えば、タンパク質または他の天然の生物分子もしくは有機分子から分離または精製された分子、またはその断片を指す。典型的には、本発明の単離された糖タンパク質または糖タンパク質組成物は、調製物中の同じ型の全分子の少なくとも60重量%、例えば、サンプル中の同じ型の全分子の60%を占める。例えば、単離された糖タンパク質は、調製物またはサンプル中の全タンパク質の少なくとも60重量%を占める。いくつかの実施形態においては、調製物中の単離された糖タンパク質は、調製物中の同じ型の全分子の少なくとも75重量%、少なくとも90重量%、または少なくとも99重量%からなる。
遺伝子操作された宿主細胞を、治療上活性である新規糖タンパク質またはその組成物を製造するための方法において用いることができる。
上記で同定された好ましい実施形態に従う宿主細胞により産生されるか、または産生可能である好ましい糖タンパク質または糖タンパク質組成物としては、限定されるものではないが、血液因子、凝固防止剤、血栓溶解剤、抗体、その抗原結合フラグメント、ホルモン、増殖因子、刺激因子、ケモカイン、およびサイトカイン、より具体的には、TFNファミリーの調節タンパク質、エリスロポエチン(EPO)、ゴナドトロピン、免疫グロブリン、顆粒球-マクロファージコロニー刺激因子、インターフェロン、および酵素が挙げられる。最も好ましい糖タンパク質または糖タンパク質組成物を、エリスロポエチン(EPO)、インターフェロン-α、インターフェロン-β、インターフェロン-γ、インターフェロン-ω、および顆粒球-CSF、第VIII因子、第IX因子、ヒトプロテインC、可溶性IgE受容体α鎖、免疫グロブリンG(IgG)、IgGのFab、IgM、ウロキナーゼ、キマーゼ、尿素トリプシン阻害剤、IGF-結合タンパク質、表皮増殖因子、増殖ホルモン放出因子、アネキシンV融合タンパク質、アンギオスタチン、血管内皮増殖因子2、ミエロイド前駆体阻害因子1、オステオプロテゲリン、グルコセレブロシダーゼ、ガラクトセレブロシダーゼ、α-L-イズロニダーゼ、β-D-ガラクトシダーゼ、β-グルコシダーゼ、β-ヘキソサミニダーゼ、β-D-マンノシダーゼ、α-L-フコシダーゼ、アリールスルファターゼB、アリールスルファターゼA、α-N-アセチルガラクトサミニダーゼ、アスパルチルグルコサミニダーゼ、イズロネート-2-スルファターゼ、α-グルコサミニド-N-アセチルトランスフェラーゼ、β-D-グルクロニダーゼ、ヒアルロニダーゼ、α-L-マンノシダーゼ、α-ノイラミニダーゼ、ホスホトランスフェラーゼ、酸リパーゼ、酸セラミダーゼ、スフィンゴミエリナーゼ、チオエステラーゼ、カテプシンK、およびリポタンパク質リパーゼから選択する。
本発明の別の実施形態は、1種以上の上記で同定された糖タンパク質、特に、上記で同定された低マンノースグリカン構造を有する糖タンパク質を含む、組換えの治療上活性なタンパク質である。治療上活性なタンパク質は、好ましくは、本発明に従う細胞により産生可能である。
その好ましい実施形態は、免疫グロブリンである。その別の好ましい実施形態は、1種以上の上記で同定された免疫グロブリンを含む抗体または抗体組成物である。用語「免疫グロブリン」とは、それが抗原と特異的に相互作用し、分子の任意の鎖が、限定されるものではないが、キメラ抗体もしくはヒト化抗体などの任意の天然もしくは組換え形態のそのような分子などの抗体可変領域の機能的に動作する領域を含むという理由でアミノ酸配列を有する任意の分子を指す。本明細書で用いられる「免疫グロブリン」は、免疫グロブリン遺伝子により本質的にコードされる1種以上のポリペプチドからなるタンパク質を意味する。本発明の免疫グロブリンは、好ましくは活性断片、好ましくは、1個以上の糖鎖付加部位を含む断片を包含する。活性断片とは、抗原抗体反応活性を有する抗体のフラグメントを意味し、F(ab')2、Fab'、Fvおよび組換えFvが挙げられる。
さらに別の好ましい実施形態は、1種以上の以下のもの:1種以上の上記で同定された糖タンパク質もしくは本発明に従う糖タンパク質組成物、1種以上の上記で同定された本発明に従う組換え治療用タンパク質、1種以上の上記で同定された本発明に従う免疫グロブリン、および1種以上の上記で同定された本発明に従う抗体を含む医薬組成物である。必要に応じて、または適用可能な場合、前記組成物はさらに、少なくとも1種の製薬上許容し得る担体またはアジュバントを含む。
本発明の糖タンパク質を、医薬組成物中で製剤化することができる。これらの組成物は、1種以上の上記物質に加えて、製薬上許容し得る賦形剤、担体、バッファー、安定剤または当業者にはよく知られた他の材料を含んでもよい。そのような材料は非毒性的であるべきであり、活性成分の効力を阻害するべきではない。前記担体または他の材料の正確な性質は、投与経路、例えば、経口、静脈内、皮膚もしくは皮下、鼻内、筋肉内、腹腔内またはパッチ経路に依存する。
経口投与のための医薬組成物は、錠剤、カプセル、粉末または液体形態にあってもよい。錠剤は、ゼラチンなどの固形担体またはアジュバントを含んでもよい。液体医薬組成物は、一般的には、水、石油、動物油もしくは植物油、鉱物油または合成油などの液体担体を含む。生理食塩溶液、デキストロースもしくは他の糖類溶液またはエチレングリコール、プロピレングリコールもしくはポリエチレングリコールなどのグリコールを含有させてもよい。静脈内、皮膚もしくは皮下注射、または罹患部位での注射のためには、活性成分は、発熱源を含まず、好適なpH、等張性および安定性を有する非経口的に許容し得る水性溶液の形態にあるであろう。当業者であれば、例えば、等張性ビヒクルを用いて好適な溶液を調製することができる。必要に応じて、保存剤、安定剤、バッファー、酸化防止剤および/または他の添加物を含有させてもよい。
それが個体に投与されるポリペプチド、ペプチド、または核酸分子、本発明に従う他の製薬上有用な化合物であろうと、投与は好ましくは、「予防上有効量」または「治療上有効量」にあり(場合によっては、予防が治療と考えられることもあるが)、これは個体に対して利益を示すのに十分なものである。投与される実際の量、ならびに投与の速度および時間経過は、治療しようとするものの性質および重篤度に依存するであろう。治療の処方、例えば、用量の決定などは、一般開業医および他の医学博士の責任の範囲内にあり、典型的には、治療しようとする障害、個々の患者の症状、送達部位、投与方法および医師には公知の他の因子を考慮に入れる。
別の態様においては、本発明は、1種以上の上記で同定された糖タンパク質もしくはその組成物の投与により治療可能な障害を治療する方法であって、上記の糖タンパク質もしくは組成物を、該糖タンパク質もしくは組成物の投与により治療可能な疾患に罹患しているか、もしくはそれが疑われる被験体に投与する工程を含む前記方法を提供する。好ましい実施形態においては、前記方法はまた、(a)被験者を提供する工程および/または(b)該被験体が前記糖タンパク質もしくは組成物の投与により治療可能な疾患に罹患しているかどうかを決定する工程を含む。前記被験体は、ヒトなどの哺乳動物であってよい。前記障害は、例えば、癌、免疫障害、炎症症状または代謝性障害であってよい。
本発明に従えば、糖タンパク質を製造するためのキットまたはキットの一部であって、少なくとも、組換えタンパク質を産生することができる1種以上の本発明に従う宿主細胞、および好ましくは、該組換えタンパク質を産生するように該細胞を培養するための培養培地を含む前記キットも提供する。
配列表
配列番号1は、flc2遺伝子のトランケートされた断片であるflc2'をコードするヌクレオチド配列である(図5A):
Figure 2012506710
配列番号2は、Flc2'のアミノ酸配列である(図5B):
Figure 2012506710
配列番号3は、flc2'のコード領域のER局在化シグナルおよび膜貫通ドメイン(TM)1-3(TM1-3)をコードするヌクレオチド配列である:
Figure 2012506710
配列番号4は、Flc2'のER局在化シグナルと膜貫通ドメイン(TM)1-3(TM1-3)のアミノ酸配列である:
Figure 2012506710
配列番号5は、flc2'のコード領域のER局在化シグナルと膜貫通ドメイン(TM)1-2(TM1-2)をコードするヌクレオチド配列である:
Figure 2012506710
Figure 2012506710
配列番号6は、Flc2'のER局在化シグナルと膜貫通ドメイン(TM)1-2(TM1-2)のアミノ酸配列である:
Figure 2012506710
配列番号7は、flc2'のコード領域のER局在化シグナルと膜貫通ドメイン(TM)2-4(TM2-4)をコードするヌクレオチド配列である:
Figure 2012506710
配列番号8は、Flc2'のER局在化シグナルと膜貫通ドメイン(TM)2-4(TM2-4)のアミノ酸配列である:
Figure 2012506710
配列番号9は、flc2'のコード領域のER局在化シグナルと膜貫通ドメイン(TM)3-4(TM3-4)をコードするヌクレオチド配列である:
Figure 2012506710
配列番号10は、Flc2'のER局在化シグナルと膜貫通ドメイン(TM)3-4(TM3-4)のアミノ酸配列である:
Figure 2012506710
配列番号11は、flc2'のコード領域のER局在化シグナルと膜貫通ドメイン(TM)1(TM1)をコードするヌクレオチド配列である:
Figure 2012506710
配列番号12は、Flc2'のER局在化シグナルと膜貫通ドメイン(TM)1(TM1)のアミノ酸配列である:
Figure 2012506710
配列番号13は、flc2'のコード領域のER局在化シグナルと膜貫通ドメイン(TM)2(TM2)をコードするヌクレオチド配列である:
Figure 2012506710
配列番号14は、Flc2'のER局在化シグナルと膜貫通ドメイン(TM)2(TM2)のアミノ酸配列である:
Figure 2012506710
配列番号15は、flc2'のコード領域のER局在化シグナルと膜貫通ドメイン(TM)3(TM3)をコードするヌクレオチド配列である:
Figure 2012506710
配列番号16は、Flc2'のER局在化シグナルと膜貫通ドメイン(TM)3(TM3)のアミノ酸配列である:
Figure 2012506710
配列番号17は、flc2'のコード領域のER局在化シグナルと膜貫通ドメイン(TM)4(TM4)をコードするヌクレオチド配列である:
Figure 2012506710
配列番号18は、Flc2'のER局在化シグナルと膜貫通ドメイン(TM)4(TM4)のアミノ酸配列である:
Figure 2012506710
配列番号19は、flc2'のコード領域のER局在化シグナルをコードするヌクレオチド配列である:
Figure 2012506710
配列番号20は、Flc2'のER局在化シグナルのアミノ酸配列である:
Figure 2012506710
配列番号21は、flc2'の第1の膜貫通ドメイン(TM1)をコードするヌクレオチド配列である:
Figure 2012506710
配列番号22は、Flc2'の第1の膜貫通ドメイン(TM1)のアミノ酸配列である:
Figure 2012506710
配列番号23は、flc2'の第2の膜貫通ドメイン(TM2)をコードするヌクレオチド配列である:
Figure 2012506710
配列番号24は、Flc2'の第2の膜貫通ドメイン(TM2)のアミノ酸配列である:
Figure 2012506710
配列番号25は、flc2'の第3の膜貫通ドメイン(TM3)をコードするヌクレオチド配列である:
Figure 2012506710
配列番号26は、Flc2'の第3の膜貫通ドメイン(TM3)のアミノ酸配列である:
Figure 2012506710
配列番号27は、flc2'の第4の膜貫通ドメイン(TM4)をコードするヌクレオチド配列である:
Figure 2012506710
配列番号28は、Flc2'の第4の膜貫通ドメイン(TM4)のアミノ酸配列である:
Figure 2012506710
配列番号29は、flc2'の第5の膜貫通ドメイン(TM5)をコードするヌクレオチド配列である:
Figure 2012506710
配列番号30は、Flc2'の第5の膜貫通ドメイン(TM5)のアミノ酸配列である:
Figure 2012506710
配列番号31は、ACSプロモーター(1...399)、flc2'(400...1722)と潜在的な停止コドン(1753...1758)を含むFlc2'発現カセットを含むFlc2'発現プラスミドYEp352Flc2'のヌクレオチド配列(図13)である。
配列番号32は、ACSプロモーター(1...399)、flc2' ORF(400...1722)、停止コドンの後にCYC1ターミネーター(6904...7155)を含むFlc2'発現カセットと、逆方向に、LmStt3D ORF(相補的)(7192...9762)および強力な構成的GPDプロモーター(相補的)(9781...10435)を含むPOT LmStt3D発現カセットをさらに含むLmStt3DおよびFlc2'同時発現プラスミドpAX306fのヌクレオチド配列(図14)である;LmStt3DのATGはGPDプロモーターの直後にある。
配列番号33は、リーシュマニア・ブラジリエンシスのパラログLbStt3-1をコードするヌクレオチド配列である。
配列番号34は、LbStt3-1のアミノ酸配列である。
配列番号35は、リーシュマニア・ブラジリエンシスのパラログLbStt3-2をコードするヌクレオチド配列である。
配列番号36は、LbStt3-2のアミノ酸配列である。
配列番号37は、リーシュマニア・ブラジリエンシスのパラログLbStt3-3をコードするヌクレオチド配列である。
配列番号38は、LbStt3-3のアミノ酸配列である。
配列番号39は、リーシュマニア・インファンタムのパラログLiStt3-1をコードするヌクレオチド配列である。
配列番号40は、LiStt3-1のアミノ酸配列である。
配列番号41は、リーシュマニア・インファンタムのパラログLiStt3-2をコードするヌクレオチド配列である。
配列番号42は、LiStt3-2のアミノ酸配列である。
配列番号43は、リーシュマニア・インファンタムのパラログLiStt3-3をコードするヌクレオチド配列である。
配列番号44は、LiStt3-3のアミノ酸配列である。
配列番号45は、リーシュマニア・メジャーのパラログLmStt3Aをコードするヌクレオチド配列である。
配列番号46は、LmStt3Aのアミノ酸配列である。
配列番号47は、リーシュマニア・メジャーのパラログLmStt3Bをコードするヌクレオチド配列である。
配列番号48は、LmStt3Bのアミノ酸配列である。
配列番号49は、リーシュマニア・メジャーのパラログLmStt3Cをコードするヌクレオチド配列である。
配列番号50は、LmStt3Cのアミノ酸配列である。
配列番号51は、リーシュマニア・メジャーのパラログLmStt3Dをコードするヌクレオチド配列である。
配列番号52は、LmStt3Dのアミノ酸配列である。
配列番号53は、トリパノソーマ・ブルセイのパラログTbStt3Aをコードするヌクレオチド配列である。
配列番号54は、TbStt3Aのアミノ酸配列である。
配列番号55は、トリパノソーマ・ブルセイのパラログTbStt3Bをコードするヌクレオチド配列である。
配列番号56は、TbStt3Bのアミノ酸配列である。
配列番号57は、トリパノソーマ・ブルセイのパラログTbStt3Cをコードするヌクレオチド配列である。
配列番号58は、TbStt3Cのアミノ酸配列である。
配列番号59は、トリパノソーマ・クルージのパラログTbStt3をコードするヌクレオチド配列である。
配列番号60は、TbStt3のアミノ酸配列である。
配列番号61は、flc2'の内因性プロモーターエレメントのヌクレオチド配列である。
(実施例)
Man3GlcNAc2構造を有する糖タンパク質の製造
1.1 酵母培地および方法
全ての株を、別途記述しない限りYPD培地上で増殖させた。YG1137株をYPGal上で維持した。YCN1(Δrft1)、YG1363(Δalg3Δalg11)、YG1365(Δalg11)およびYG1830(alg2-1)株を、別途記述しない限り1Mソルビトールを補給した培地中で増殖させた。
1.2 株の構築
全Alg11オープンリーディングフレームを、S. cerevisiae HIS3座を含むPCR産物の組込みによりSS328XSS330中で置換した。形質転換された酵母株YG1141(MATa/α ade2-201/ade2-201 ura3-52/ura3-52 his3Δ200/his3Δ200 tyr1/+ lys2-801/+ Δalg11::HIS3/+)を胞子形成させ、テトラドを切り分けて、Δalg11半数体YG1361(MATα ade2-201 ura3-52 his3Δ200 Δalg11::HIS3)を取得し、これをYG248 (MATa Δalg3::HIS3 ade2-101 his3Δ200 lys2-801 ura3-52)とつがわせた。得られた2倍体YG1362(MATa/α ade2-201/ade2-201 ura3-52/ura3-52 his3Δ200/his3Δ200 lys2-801/+ Δalg3::HIS3 Δalg11::HIS3/+)を、1Mソルビトールを含むYPDプレート上で胞子形成させて、半数体株YG1365(MATα ade2-101 ura3-52 his3Δ200 Δalg11::HIS3)およびYG1363 (MATα ade2-101 ura3-52 his3Δ200 lys2-801 Δalg3::HIS3 Δalg11::HIS3)を得た。2倍体株中でrft1遺伝子をHIS3カセットと置換し、得られた2倍体ヘテロ接合株を胞子形成させ、得られた半数体Δrft1::HIS3株(YCN1)を選択することにより、Δrft1株を作製した。
1.3 タンパク質分析
タンパク質の抽出およびウェスタン分析を記載のように実施した。CPYに対する抗体を3,000倍に希釈した。
1.4 脂質およびタンパク質結合オリゴ糖分析
脂質結合オリゴ糖を記載のように標識し、抽出し、分析した。簡単に述べると、酵母細胞(1の546 nmでの吸光度を有する50 mlの培養物)をYPD中で増殖させ、有機溶媒で溶解する前に[3H]-マンノースを含む培地中でインキュベートした。脂質結合オリゴ糖を有機溶媒を用いて抽出し、オリゴ糖を穏和な酸加水分解により遊離させた。遊離したオリゴ糖を、流量を計測しながらNH2-カラムを用いるHPLCにより分析した。実行における全計数で割った1分あたりの計数を計測した。サンプル中の全シグナルの割合は2つの測定値を用いる平均である。脂質結合オリゴ糖の抽出後、N-結合オリゴ糖を細胞破片から精製した。破片ペレットのタンパク質を(100℃で10分間)、0.2 mlの1%SDS、50 mmol/l Tris-HCl、1%β-メルカプトエタノール中に溶解した。遠心分離後(15,000gで2分間)、上清を0.25 ml中1%(v/v)NP40に補給し、タンパク質結合オリゴ糖をPNGaseF(2ユニット、37℃で一晩)を用いて消化した。タンパク質を0.75 mlのエタノールで沈降させ、サンプルを15,000gで20分間遠心分離した。上清を乾燥させ、0.2 mlの70:30アセトニトリル:水中に再懸濁し、その0.1 mlを上記のようにHPLCにより分析した。
1.5 MALDI-TOF-MS
細胞壁タンパク質に由来するN-グリカンの分析のために、ガラスビーズを用いて細胞を10 mmol/l Tris中で破壊し、不溶性細胞壁画分を2Mチオウレア、7 mol/l尿素、2%SDS、50 mmol/l Tris、pH 8.0および10 mmol/l DTTを含むバッファー中で還元した。25 mmol/lヨードアセタミドを含む同一のバッファー中、激しく攪拌しながら、37℃で1時間、アルキル化を実施した。細胞壁画分を遠心分離により回収し、得られたペレットを50 mmol/l NH4CO3中で洗浄した。
1 x変性バッファー、50 mmol/lリン酸バッファー、pH 7.5、および1%NP-40を含むバッファー中、1μlのPNGase Fを用いて37℃で一晩、N-グリカンを遊離させた。C18および炭素カラムを介してN-グリカンを精製し、N-グリカンを含む溶出液を蒸発させた。N-グリカンを2-アミノベンズアミドを用いて標識し、最後に炭素カラムを用いて精製した。精製されたN-グリカン調製物の質量スペクトルを、陽イオンモードのAutoflex MALDI-TOF MS (Bruker Daltonics, Fallanden, Switzerland)を用いて獲得し、リフレクターモードで運転した。800-3000のm/z範囲を測定した。
1.6 高コピーサプレッサースクリーン
高コピーサプレッサースクリーンのために、ベクターYEp352(Hillら、1986)中に連結された部分消化酵母染色体DNAを含有する1μgのゲノムライブラリー(Stagljarら、1994)を、エレクトロポレーションにより1 x 109 YCN1(Δrft1)細胞中に形質転換し、25℃でウラシルを欠く1Mソルビトールを含む最少培地上で形質転換体を選択した。増殖した形質転換体を、33℃、YPDおよびYPDS上でのレプリカ平板法により増殖について試験した。陽性コロニー(YPDおよびYPDS上、33℃で増殖)を、33、35および37℃でΔrft1の増殖を支援するその能力について試験した。完全または部分抑制を示すコロニーのプラスミドDNAを、全酵母DNAを抽出することにより単離し、大腸菌株DH5α中でのプラスミド増幅に用いた。回収されたプラスミドを再度形質転換し、YPD上、33、35および37℃でΔrft1株の増殖を支援する能力について試験した。64個のC.tesを、Δrft1細胞中での糖鎖付加を改善する能力についてさらに分析した。選択された高コピーサプレッサープラスミドを、M13(GTA AAA CGA CGG CCA GT)およびM13rev (GAG CGG ATA ACA ATT)プライマーを用いて配列決定した。
1.7 スポッティングアッセイ
Rft1もしくはFlc2'またはその断片を発現する、例えば、Δrft1、Δalg11またはΔalg2突然変異株などの酵母株または酵母突然変異株の増殖を評価するために、そのような酵母株のスポッティングアッセイを行った。株を一晩増殖させ、培養物を等しい細胞密度に調整した。連続希釈液を寒天プレート上に塗布し、プレートを指示された温度で3日間インキュベートした。
液体培地中での増殖アッセイを以下のように実施し、1個のコロニーを用いて接種された前培養物を、プラスミド維持のためにウラシルを欠き、1 mol/lソルビトールを補給した5 mlのSD培地中で48時間増殖させた。増殖アッセイのために、25 mlの同一の培地に0.05の出発細胞密度に達する等量の細胞を接種した。細胞を、23℃または30℃、200 rpmで回転式振とう器上で48時間増殖させた。細胞密度を指示された時点で測定した。
1.8 Man3GlcNAc2構造の生成
脂質結合オリゴ糖(LLO)は、集合した糖を、N-糖鎖付加コンセンサス配列のアスパラギン残基に移す、小胞体(ER)中のオリゴサッカリルトランスフェラーゼのための基質である。LLOの構築は、活性化された糖供与体に由来する糖を、成長しているLLO構造に付加する連続的プロセスである。LLO合成のための詳細な経路は、図1に記載されている。細胞から特定のトランスフェラーゼを除去することにより、調整されたLLO構造を生成させることができる。
本発明者らは、理論に束縛されることを望むものではないが、このプロセスにおいて、Alg3pおよびAlg11pタンパク質がLLO構造の構築において主要な役割を果たすことを見出した。Alg11pの標的化された除去により、A-分枝の合成を上手く防止し、Man6GlcNAc2およびMan7GlcNAc2構造の生成を誘導することができる(図2A)。本発明の宿主細胞中で、Man3GlcNAc2構造をERの細胞質側で合成した後、ER内腔にフリップすることができ、そこでそれはER内腔に局在化したトランスフェラーゼのための基質として働く。さらに、B-分枝を開始するα(1,3)-マンノースの誘導を触媒する酵素Alg3pも、フリップされたLLO基質のプロセッシングにおいて重要な役割を果たすと同定される。Alg3pの排除はB-分枝の形成を防止するだけでなく、α(1,3)-マンノースの存在がC-分枝の形成のための必要条件である。従って、Alg3p型およびAlg11p型の活性を共に欠く突然変異酵母株または同様のものが提供される。かくして、本発明の宿主細胞は、例えば、産生されたLLO構造の[3H]-マンノース標識およびHPLCプロファイリングにより示されるように、主に、かつ好ましくは、低マンノースのみ、および特に、Man3GlcNAc2グリカン構造を産生する(図2B)。
[3H]-マンノース標識を用いるタンパク質結合オリゴ糖(NLO)分析により、Δalg3Δalg11株においてはMan3GlcNAc2より大きい構造が、Δalg11株においてはN-グリカンより小さい構造が産生されることが示された(図3B)。
この構造を、細胞壁タンパク質から単離された2-AB標識N-グリカンのMALDI-TOF MSを用いてさらに特性評価した(図4)。還元末端にGlcNAc2に加えて8個以上のヘキソース残基を含むグリカンのアレイが存在する野生型酵母とは対照的に(図4A)、Δalg11株においては、還元末端にGlcNAc2に加えて5〜9個のヘキソースを含むN-グリカンが主に検出された(図4B)。Δalg3Δalg11株においては、ほんのわずかのMan3GlcNAc2(m/z 1053)およびより多いMan4GlcNAc2(m/z 1215)およびMan5GlcNAc2(m/z 1377)構造が検出された(図4C)。
LLOおよびNLOの分析は全体として、Δalg3Δalg11株においては、Man3GlcNAc2がER中で産生され、タンパク質に移されるが、この構造はゴルジ装置においてさらに改変されることを示している。
1.9 高コピーサプレッサースクリーン-新規フリッパーゼの同定
高コピーサプレッサースクリーン(HCSS)は、所望の表現型を提供する遺伝子の選択のための好ましく、かつ効率的なツールである。
必須のRft1機能の喪失を補うことができる遺伝子を同定するために、HCSSをΔrft1株において実施した。ゲノム酵母DNAライブラリーを、突然変異株中で、高コピープラスミドYep352から発現させた。
形質転換体を、25℃でウラシルを欠く1 mol/lソルビトールを含む最少培地上で選択した。増殖した形質転換体を、33℃、YPDおよびYPDS上でのレプリカ平板法により増殖について試験した。陽性コロニー(YPDおよびYPDS上、33℃で増殖する)を、33、35および37℃でΔrft1の増殖を支援する能力について試験した。64個のC.tesを、Δrft1細胞中での糖鎖付加を改善する能力についてさらに分析した。
これらのクローンのうちの1個は、3'トランケート型のflc2遺伝子(flc2')を含んでいた。Flc2'は酵母第1染色体上にコードされる。HCSSスクリーンにおいて同定されたトランケート型は、その天然プロモーターを含む完全長遺伝子の塩基43309-44631を含む。Flc2'発現プラスミド(YEp352Flc2')の配列を図13(配列番号33)に記載し、Flc2'のコード配列を図5Aに示す。Flc2'は4個の完全な膜貫通ドメインと第5のトランケートされた膜貫通ドメインを含む452アミノ酸のタンパク質をコードする。アミノ酸442-452に由来するC末端の11個のアミノ酸は、クローニング手順から生じる(図5B)。flc2'遺伝子配列およびそのプロモーターを図5に提供する(図5L)。
1.10 突然変異宿主細胞
Rft1またはFlc2'発現プラスミドを担持するΔrft1、Δalg11またはalg2-1突然変異株のスポッティングアッセイを実施した。細胞をYPDプレート上にスポットした。プレートを37℃、30℃または31.5℃で3日間インキュベートした(それぞれ示された通り)。Flc2'の過剰発現は、Δrft1もしくはΔalg11株の増殖の改善をもたらし、Rft1を発現する突然変異株と同一であるか、または類似する増殖表現型を示す(図6Aおよび6B)。Flc2'の過剰発現はまた、alg2-1株の増殖の改善をもたらすが、Rft1の過剰発現は増殖の改善を誘導しない(図6C)。
Δalg3Δalg11株は、高温感受性表現型および増殖欠陥を示す。これらの欠陥を、Flc2'の発現により強く弱めることができる。Flc2'の発現は、株の増殖行動を強く改善し、温度感受性を低下させる(図18B)。
さらに、Flc2'の膜貫通ドメイン3(配列番号16)または膜貫通ドメイン3および4(配列番号10)をコードする発現プラスミドを担持するΔrft1突然変異株のスポッティングアッセイを実施した。細胞を上記のようにスポットし、37℃で3日間インキュベートした。Flc2'の膜貫通ドメイン1-3またはFlc2'の膜貫通ドメイン3-4の過剰発現は、増殖の増加をもたらすが、完全長Flc2を発現する細胞は増殖の改善を示さない(図7Aおよび7B)。
さらに、Flc2'を、Δrft1株において糖鎖付加欠損を修復する能力について試験した。野生型酵母株ならびに空プラスミド(YEp352)、またはRft1およびFlc2'の過剰発現のためのプラスミドを担持するΔrft1を、SD-ura培地(ウラシルを欠く合成デキストロース培地)中で増殖させた。総可溶性タンパク質をSDS-PAGEゲル上で分離し、抗CPY抗体を用いる免疫ブロッティングにより分析した。Flc2'の過剰発現は、免疫ブロッティングにより示されるように、Rft1の過剰発現の際に観察されるのと同様のレベルまでΔrft1株におけるカルボキシペプチダーゼCPYのN-糖鎖付加を修復させる(図7C)。
LLO合成に対するFlc2'の効果を調査するために、Flc2'発現構築物を担持するΔrft1細胞(図8C)の3H-マンノース標識を実施した。対照として、空ベクターYEp352を担持するΔrft1細胞(図8A)およびRft1発現構築物を担持するΔrft1細胞(図8B)を用いた。細胞を、最初に[3H]-マンノースで標識した。オリゴ糖を酸加水分解により脂質担体から遊離させ、精製し、HPLCにより分析した。[3H]-マンノース標識されたLLOのHPLCプロフィールは、機能的フリッパーゼの非存在下では、細胞はMan5GlcNAc2を蓄積することを示している(図8A)。これは、Man5GlcNAc2をER内腔にフリップすることができる分子は存在しないため、LLO合成がERの細胞質側でAlg11pにより触媒される工程の後に停止することを示唆している。プラスミド上にrft1を提供することにより、LLO合成が修復され、Glc3Man9GlcNAc2の蓄積が誘導される(図8B)。Δrft1細胞中でのFlc2'の発現の際に、フリッピングが修復され、Man5GlcNAc2の他にGlc3Man9GlcNAc2も細胞中に蓄積した(図8C)。全体として、このデータは、Flc2'がΔrft1酵母細胞中でフリッパーゼとして機能することを示唆している。
Δrft1突然変異株におけるFlc2'および/またはRft1の発現は、対照株と比較して約3倍高い細胞密度に達する同様の程度まで、48時間後に培養物の最終的な細胞密度を改善した(表6)。Flc2'と対照的に、完全長Flc2の過剰発現は、Δrft1株中でノックアウトされたフリッパーゼを補わなかった:Δrft1株の対照と比較して増殖の改善は検出されなかった。内因性完全長Flc2はΔrft1株の増殖欠損を補完することができない。
Rft1またはFlc2'の発現は増殖を改善し、空プラスミドのみを担持する対応する対照と比較して、Δalg11(図19A)およびΔalg3Δalg11(図18A)突然変異株の48時間後により高い最終光細胞密度を誘導した。Δalg11株においては、Flc2*の発現はベクター対照と比較して33%増殖を改善し、Rft1の過剰発現は49%の増加をもたらした。Δalg3Δalg11突然変異株においては、Flc2*の発現はベクター対照と比較して54%増殖を改善し、Rft1の過剰発現は最終的な細胞密度の74%の増加をもたらした(表6)。
表6は、Rft1、Flc2'、完全長Flc2を過剰発現するか、または空ベクター(対照)を担持する酵母株の増殖アッセイの結果をまとめたものである(n.d.=決定/測定せず)。
Figure 2012506710
1.11 Man3GlcNAc2構造のフリッピングおよび移動
カルボキシペプチダーゼY(CPY)のN-糖鎖付加効率に対するFlc2'の過剰発現の効果を、Δalg3Δalg11株において分析した。野生型酵母株ならびに空プラスミド(YEp352)、またはFlc2'もしくはRft1の過剰発現のためのプラスミドを担持するΔalg3Δalg11をSD-ura培地中で増殖させた。総可溶性タンパク質をSDS-PAGEゲル上で分離し、抗CPY抗体を用いる免疫ブロッティングにより分析した(図9)。野生型細胞中で、CPYはRft1またはFlc2'の過剰発現とは無関係に完全に糖鎖付加される。しかしながら、Δalg3Δalg11株におけるFlc2'またはRft1の発現は、CPYのより高い分子量へのシフトにより示されるように、CPYの糖鎖付加を改善した(図9)。
1.12 alg2-1株におけるフリッパーゼに関する特異性アッセイ
短いLLOに向かうFlc2'の活性および特異性を確立するために、温度感受性Alg2タンパク質を担持する酵母株を選択した。より低いAlg2活性に起因して、この株は主にMan12GlcNAc2(M1)およびMan2GlcNAc2(M2)構造を蓄積する。しかしながら、残留酵素活性はGlc3Man9GlcNAc2である規則的な酵母LLOの生成を誘導する。M1またはM2がER内腔にフリップされる場合、これらの2つのLLO種はAlg経路に関与する内腔のマンノシルトランスフェラーゼのための基質ではない。M1またはM2ならびにGlc3Man9GlcNAc2はタンパク質上に移される。Glc3Man9GlcNAc2構造はERならびにゴルジ装置中でさらに加工され、8〜14個のマンノース残基を含むNLO種を生じる。Alg2_1株を、Flc2'およびRft1発現ベクターならびに空ベクター対照を用いて形質転換した。この株を1のA600まで増殖させ、細胞を収穫した。細胞壁タンパク質を単離し、還元し、アルキル化し、N-グリカンをPNGase Fを用いて遊離させた。N-グリカンを精製し、過メチル化し、700〜4000のm/zの範囲のMALDI-TOF MSにより分析した。
M1、M2および高マンノース構造Man8GlcNAc2〜Man14GlcNAc2(M8〜M14)の予想されるサイズのピークがMALDI-TOFスペクトルで検出された。NLO種のピーク強度に基づいて、個々の構造の相対量を算出した。M1またはM2種の相対的増加は、これらの構造のフリッピングがAlg2により触媒される伸長を支配することを示唆している。Flc2'の発現はM1構造の88.5%の蓄積を誘導した。対照的に、M1構造は、Rft1を発現するか、または空ベクターを担持するalg2-1株において総N-グリカンに対して74.7%および78.7%だけ寄与した(表7)。
表7は、Rft1またはFlc2*を過剰発現するか、または空ベクターを担持するalg2-1株におけるN-グリカンの相対的存在度(%)をまとめたものである。
Figure 2012506710
1.13 Δalg11株におけるフリッパーゼに関する特異性アッセイ
Man3GlcNAc2(M3)構造に向かうFlc2'の活性および特異性を確立するために、Δalg11酵母株を選択した。この株の使用により、ER膜の細胞質側および内腔側でのLLO構造の相対量の決定が可能になる。alg11遺伝子の不活性化に起因して、細胞質側でのLLO合成のみがM3のレベルまで進行する。この構造は、ER内腔にフリップされる場合、Alg3によりさらに改変されるようになり、その後、マンノシルトランスフェラーゼがM7の生成を誘導する。3H-マンノースを用いる細胞の標識により、HPLCを用いて様々なLLO種の相対量を定量することが可能になる。フリッピングが非効率的である場合、細胞質のLLO種はER膜の細胞質側に蓄積し、対照的に、内腔のLLOの相対量は減少する。
Δalg11株におけるFlc2'およびRft1の発現は、LLOの総量に対する細胞質LLO種の相対的寄与を低下させ(図17A、17B、17C)、それによって、内腔のLLO種を対照株における約43%からFlc2'またはRft1を過剰発現する両方の株における約70%まで増加させる(表8)。
表8は、Rft1もしくはFlc2*を過剰発現するか、または空ベクターを担持するΔalg11株における様々なLLO種の相対量(%)をまとめたものである。LLO種を細胞質群または内腔群に割り当てる。
Figure 2012506710
1.14 Δalg3Δalg11Δmnn1ノックアウト株の作製
Δmnn1欠失株をΔalg3欠失株と交配させた。2倍体ヘテロ接合Δalg3Δmnn1株を胞子形成させ、半数体の胞子をΔalg3およびmnn1遺伝子の非存在について試験した。二重ノックアウト株をPCR分析によりalg3およびmnn1遺伝子の非存在について試験した。選択されたΔalg3Δmnn1株をΔalg3Δalg11株とさらに交配させ、得られた株を胞子形成させ、テトラドをalg3、alg11およびmnn1遺伝子を欠く株について分析した。
二重および三重突然変異体の糖プロフィールを記載のように分析した。N-グリカンをPNGase Fにより細胞壁タンパク質から遊離させ、2-ABで標識し、MALDI-TOF MSにより分析した。Δalg3Δalg11と三重突然変異体に由来するN-グリカンスペクトルの比較により、M5であるm/z = 1377でのピークの低下が示される。これらのデータは、mnn1遺伝子の排除により、ゴルジ装置中でのNLOの改変を無効化することができることを示している。図22は、Δalg3Δalg11酵母突然変異株に由来する細胞壁タンパク質(図22A)およびΔalg11Δalg3Δmnn1酵母突然変異株(図22B)から単離された2-AB-標識N-グリカンのMALDI-TOF MSスペクトルを示す。
糖鎖付加のための複合系
2.1 酵母突然変異株における新規LLOおよび原生動物オリゴサッカリルトランスフェラーゼの発現
好ましい実施形態においては、少なくとも3つの構成要素:(i)オリゴサッカリルトランスフェラーゼのための前駆体としての脂質結合Man3GlcNAc2の生成;(ii)フリッパーゼ、例えば、(Flc2')、および(iii)緩い基質特異性を示す原生動物オリゴサッカリルトランスフェラーゼ(POT)を含む、特に酵母におけるタンパク質の糖鎖付加のための複合系を提供する。
2種の異種タンパク質、フリッパーゼとPOTを組合わせるために、両部分を含むベクターを構築した。
その目的のために、GPDプロモーターとcyc1ターミネーターの制御下にある原生動物オリゴサッカリルトランスフェラーゼ(LmStt3D)を、遺伝子が反対方向に転写されるような様式でFlc2'を含むベクター中に挿入した。LmStt3D、Flc2'または両酵素を担持するプラスミドを、野生型酵母(YG1509)またはalg11(YG1365)もしくはalg11とalg3(YG1363)を欠く酵母細胞中に形質転換し、CPYおよびGas1pのN-糖鎖付加をウェスタンブロットを用いて分析した(図10)。
ERに局在化したオリゴサッカリルトランスフェラーゼの欠失を含まない対照株において、CPY移動性はFlc2'またはLmStt3DまたはFlc2'とLmStt3Dの両方の発現時に同一である。alg11を欠損し、脂質結合GlcNAc2Man5を産生する酵母株YG1365またはalg11およびalg3を欠損し、脂質結合GlcNAc2Man5を産生するYG1363においては、Flc2'とLmStt3Dの同時発現は、Flc2'またはLmStt3Dのみを発現する細胞と比較してより高い分子量にCPYをシフトさせるが、これはFlc2'およびLmStt3Dの存在下でのCPYのより完全なN-糖鎖付加を示唆している。移動性の同様の変化は、β-1,3-グルカノシルトランスフェラーゼ(Gas1p)上でも観察された。このGPIアンカータンパク質は細胞壁に局在化し、ゴルジ装置中で起こる改変も受ける。
カルボキシペプチダーゼY(CPY)のN-糖鎖付加効率に対するFlc2'およびLmStt3Dの過剰発現の効果を、空プラスミド(YEp352)、またはFlc2'もしくはLmStt3DまたはFlc2'およびLmStt3Dの過剰発現のためのプラスミドを担持するΔalg11株において分析するか、または23℃でSD-ura培地中で増殖させた。総可溶性タンパク質をSDS-PAGEゲル上で分離し、抗CPY抗体を用いる免疫ブロッティングにより分析した(図11)。Δalg11細胞中で、Flc2'およびLmStt3D CPYの過剰発現は完全に糖鎖付加されるが(mCPY)、Flc2'またはPOT LmStt3D株のみを過剰発現する細胞は、Flc2'とPOTの同時発現と同程度ではないが、ベクター対照と比較してCPYの低糖鎖付加を減少させる(図11)。
図12に図示される複合系においては、alg3とalg11遺伝子の両方が欠失しており、脂質結合Man3GlcNAc2の生成をもたらす。残りのトランスフェラーゼは細胞中に依然として存在するが、脂質結合Man3GlcNAc2基質上では不活性である。第1の手法においては、新規フリッパーゼ(例えば、Flc2'など)を付加する。第2に、原生動物オリゴサッカリルトランスフェラーゼ(POT、リーシュマニア・メジャーのStt3Dなど)を付加する。脂質結合Man3GlcNAc2の生成のための代替物は、その生成物がER膜の細胞質側で脂質結合マンノースを生成するdpm1遺伝子の欠失、またはドリコール結合マンノースをER内腔にフリップする単糖類フリッパーゼの欠失であろう。脂質結合マンノースは、ER内腔に局在化したオリゴサッカリルトランスフェラーゼのための供与体として働く。Δalg11突然変異と共に、そのような細胞はまた、脂質結合Man3GlcNAc2を産生するであろう。余剰の使用されていないトランスフェラーゼ、フリッパーゼ(Rft1)、酵母Ost複合体の成分および非合成構造を灰色で示す。
2.2 酵母突然変異株における原生動物オリゴサッカリルトランスフェラーゼの発現
少なくとも2つの構成要素:(i)オリゴサッカリルトランスフェラーゼのための前駆体としての脂質結合Man3GlcNAc2の生成および(ii)緩い基質特異性を示す、原生動物オリゴサッカリルトランスフェラーゼ(POT)の1種以上のパラログの発現を含む、特に、酵母におけるタンパク質の糖鎖付加のための複合系を提供する。
4種のStt3パラログであるLmStt3A〜LmStt3Dを有するL.major;それぞれ、Lb3_1〜Lb3_3およびLi3_1〜Li3_3と命名されたそれぞれ3種の異なるStt3パラログを有するL.braziliensisおよびL.infantumのPOTを含むベクターを構築した。それぞれのPOT遺伝子を全て、低コピー数プラスミドならびに高コピー数プラスミド上に含有させた。さらに、トリパノソーマ・ブルセイのパラログTbStt3_BおよびTbStt3_CのPOT遺伝子を高コピー数プラスミド上に含有させた。個々のPOTパラログを、POTプラスミドを導入した改変Δalg11突然変異酵母株およびΔalg3Δalg11突然変異酵母株中で発現させた。全ての株の細胞抽出物を調製し、CPY特異的抗体により分析した。N-糖鎖付加効率の結果の比較により、個々のPOTの効果が異なる突然変異株において異なっていてもよいことが示され、LLO基質のための異なるPOTの異なる選択性を示唆している。低コピー数プラスミドからのPOTの発現は、高コピー数プラスミドからの発現よりもN-糖鎖付加の改善においてより有効であったが、これは適切な発現レベルが重要であり、これを最適化することができることを示唆している。
N-糖鎖付加スコアを確立するために、ウェスタンCPYブロット(n=2〜5)群を分析し、N-糖鎖付加効率を、未改変Δalg11およびΔalg3Δalg11バックグラウンドと比較して0(追加効果なし)〜3(大きい追加効果)とスコア化した。個々の実験のポイントを合計し、その合計を反復回数で割ることによりN-糖鎖付加スコアを算出した。結果を表9にまとめる。
Figure 2012506710

Claims (101)

  1. 細胞内器官の細胞質側から内腔側に、1個のマンノース残基を含む脂質結合オリゴ糖(LLO)を効率的にフリップすることができる、2個のマンノース残基を含むLLOを効率的にフリップすることができる、および3個のマンノース残基を含むLLOを効率的にフリップすることができるLLOフリッパーゼ活性を発現するように改変された細胞。
  2. 前記LLOフリッパーゼが、Man1GlcNAc2、Man2GlcNAc2、およびMan3GlcNAc2からなる群より選択される脂質結合オリゴ糖のフリップにおいて活性であることを特徴とする、請求項1に記載の細胞。
  3. 前記LLOフリッパーゼ活性が、
    a)配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号7、配列番号9、配列番号11、配列番号13、配列番号15および配列番号17、配列番号21、配列番号23、配列番号25、配列番号27、および配列番号29のうちの1個以上の配列を含む核酸分子;
    b)配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10、配列番号12、配列番号14、配列番号16および配列番号18、配列番号22、配列番号24、配列番号26、配列番号28、および配列番号30のうちの1個以上の配列を含むポリアミノ酸をコードする核酸分子;ならびに
    c)a)またはb)の核酸分子の断片、変異体、類似体または誘導体、
    からなる群より選択される1個以上の核酸分子の発現により付与される、請求項1または2に記載の細胞。
  4. 細胞内器官が小胞体(ER)である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の細胞。
  5. 前記細胞が異種(糖)タンパク質をコードする少なくとも1種の核酸を含み、その(糖)タンパク質を発現することを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の細胞。
  6. 前記細胞がRft1型LLOフリッパーゼ活性を欠くか、またはそれが抑制され、減少するか、もしくは枯渇したことを特徴とし、Rft1型LLOフリッパーゼ活性が、1〜3個のマンノース残基を有する脂質結合オリゴ糖をフリップするその活性が5個のマンノース残基を有する脂質結合オリゴ糖をフリップするその活性よりも低いことを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の細胞。
  7. 前記細胞が遺伝子rft1またはrft1相同体のノックアウト突然変異体である、請求項6に記載の細胞。
  8. 前記細胞が、1種以上のER局在性グリコシルトランスフェラーゼ活性を欠くか、またはそれが抑制され、減少するか、もしくは枯渇したことを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項に記載の細胞。
  9. ER局在性グリコシルトランスフェラーゼがマンノシルトランスフェラーゼであることを特徴とする、請求項8に記載の細胞。
  10. 前記細胞が、1種以上のER局在性脂質結合単糖(LLM)フリッパーゼ活性を欠くか、またはそれが抑制され、減少するか、もしくは枯渇したことを特徴とする、請求項1〜9のいずれか1項に記載の細胞。
  11. 前記細胞が、Alg11型活性を欠くか、またはそれが抑制され、減少するか、もしくは枯渇したことを特徴とする、請求項1〜10のいずれか1項に記載の細胞。
  12. 前記細胞が遺伝子alg11またはalg11相同体のノックアウト突然変異体である、請求項11に記載の細胞。
  13. 前記細胞が、Alg11型活性を欠くか、またはそれが抑制され、減少するか、もしくは枯渇し、1種以上の脂質結合単糖(LLM)フリッパーゼ型活性をさらに欠くか、またはそれが抑制され、減少するか、もしくは枯渇したことを特徴とする、請求項1〜12のいずれか1項に記載の細胞。
  14. 前記細胞が、遺伝子alg11もしくはalg11相同体および脂質結合単糖(LLM)フリッパーゼ活性をコードする1個以上の遺伝子のノックアウト突然変異体である、請求項13に記載の細胞。
  15. 前記細胞が、Alg11型活性を欠くか、またはそれが抑制され、減少するか、もしくは枯渇し、Alg3型活性をさらに欠くか、またはそれが抑制され、減少するか、もしくは枯渇したことを特徴とする、請求項1〜14のいずれか1項に記載の細胞。
  16. 前記細胞が遺伝子alg11またはalg11相同体およびalg3またはalg3相同体のノックアウト突然変異体である、請求項16に記載の細胞。
  17. 前記細胞が、Alg11型活性を欠くか、またはそれが抑制され、減少するか、もしくは枯渇し、β-D-マンノシルトランスフェラーゼもしくはDPM1型活性をさらに欠くか、またはそれが抑制され、減少するか、もしくは枯渇したことを特徴とする、請求項1〜16のいずれか1項に記載の細胞。
  18. 前記細胞が、遺伝子alg11またはalg11相同体およびdpm1またはdpm1相同体のノックアウト突然変異体である、請求項17に記載の細胞。
  19. 前記細胞が、Alg2型活性を欠くか、またはそれが抑制され、減少するか、もしくは枯渇したことを特徴とする、請求項1〜18のいずれか1項に記載の細胞。
  20. 前記細胞がalg2またはalg2相同体のノックアウト突然変異体である、請求項19に記載の細胞。
  21. 前記細胞が、オリゴサッカリルトランスフェラーゼ活性をコードする1種以上の核酸分子を含むことを特徴とし、それがGlc3Man9GlcNAc2以外のオリゴ糖をタンパク質に転移させることができることを特徴とする、請求項1〜20のいずれか1項に記載の細胞。
  22. オリゴサッカリルトランスフェラーゼ活性が、原生動物オリゴサッカリルトランスフェラーゼ(POT)活性であることを特徴とする、請求項21に記載の細胞。
  23. 原生動物オリゴサッカリルトランスフェラーゼ活性が、トキソプラズマ・ゴンジ(Toxoplasma gondii) (Tg)、リーシュマニア・メジャー(Leishmania major) (Lm)、リーシュマニア・インファンタム(Leishmania infantum) (Li)、リーシュマニア・ブラジリエンシス(Leishmania braziliensis) (Lb)、リーシュマニア・メキシカーナ(Leishmania Mexicana) (Lmx)、リーシュマニア・ドノバニ(Leishmania donovani) (Ld)、リーシュマニア・グヤネンシス(Leishmania guyanensis) (Lg)、リーシュマニア・トロピカ(Leishmania tropica) (Lt)、トリパノソーマ・クルージ(Trypanosoma cruzi) (Tc)、またはトリパノソーマ・ブルセイ(Trypanosoma brucei) (Tb)に由来することを特徴とする、請求項22に記載の細胞。
  24. 原生動物オリゴサッカリルトランスフェラーゼ活性が、TbStt3Bp型活性、TbStt3Cp型活性、LmStt3Ap型活性、LmStt3Bp型活性、およびLmStt3Dp型活性からなる群より選択されることを特徴とする、請求項23に記載の細胞。
  25. 原生動物オリゴサッカリルトランスフェラーゼ活性が、TbStt3B型活性、TbStt3C型活性、LmStt3A型活性、LmStt3B型活性、LmStt3C型活性、およびLmStt3D型活性、LiStt3-1型活性、LiStt3-2型活性、およびLiStt3-3型活性、LbStt3-1型活性、LbStt3-2型活性、およびLbStt3-3型活性からなる群より選択されることを特徴とする、請求項23に記載の細胞。
  26. 3個のマンノース残基、4個のマンノース残基および/または5個のマンノース残基を含むオリゴ糖をタンパク質に効率的に転移させることができるオリゴサッカリルトランスフェラーゼ活性を発現するように改変された細胞。
  27. オリゴサッカリルトランスフェラーゼ活性が、1ユニットの原生動物型オリゴサッカリルトランスフェラーゼ(POT)であることを特徴とする、請求項26に記載の細胞。
  28. 原生動物オリゴサッカリルトランスフェラーゼ活性が、トキソプラズマ・ゴンジ(Toxoplasma gondii) (Tg)、リーシュマニア・メジャー(Leishmania major) (Lm)、リーシュマニア・インファンタム(Leishmania infantum) (Li)、リーシュマニア・ブラジリエンシス(Leishmania braziliensis) (Lb)、リーシュマニア・メキシカーナ(Leishmania mexicana) (Lmx)、リーシュマニア・ドノバニ(Leishmania donovani) (Ld)、リーシュマニア・グヤネンシス(Leishmania guyanensis) (Lg)、リーシュマニア・トロピカ(Leishmania tropica) (Lt)、トリパノソーマ・クルージ(Trypanosoma cruzi) (Tc)、またはトリパノソーマ・ブルセイ(Trypanosoma brucei) (Tb)に由来することを特徴とする、請求項27に記載の細胞。
  29. 原生動物オリゴサッカリルトランスフェラーゼ活性が、TbStt3Bp型活性、TbStt3Cp型活性、LmStt3Ap型活性、LmStt3Bp型活性、およびLmStt3Dp型活性からなる群より選択されることを特徴とする、請求項28に記載の細胞。
  30. 原生動物オリゴサッカリルトランスフェラーゼ活性が、TbStt3B型活性、TbStt3C型活性、LmStt3A型活性、LmStt3B型活性、LmStt3C型活性、およびLmStt3D型活性、LiStt3-1型活性、LiStt3-2型活性、およびLiStt3-3型活性、LbStt3-1型活性、LbStt3-2型活性、およびLbStt3-3型活性からなる群より選択されることを特徴とする、請求項28に記載の細胞。
  31. 前記細胞が1種以上のER局在性グリコシルトランスフェラーゼ活性を欠くか、またはそれが抑制され、減少するか、もしくは枯渇したことをさらに特徴とする、請求項26〜30のいずれか1項に記載の細胞。
  32. ER局在性グリコシルトランスフェラーゼがマンノシルトランスフェラーゼであることを特徴とする、請求項31に記載の細胞。
  33. 前記細胞が1種以上のER局在性脂質結合単糖(LLM)フリッパーゼ活性を欠くか、またはそれが抑制され、減少するか、もしくは枯渇したことをさらに特徴とする、請求項26〜32のいずれか1項に記載の細胞。
  34. 前記細胞がAlg11型活性を欠くか、またはそれが抑制され、減少するか、もしくは枯渇したことをさらに特徴とする、請求項26〜33のいずれか1項に記載の細胞。
  35. 前記細胞が遺伝子alg11またはalg11相同体のノックアウト突然変異体である、請求項34に記載の細胞。
  36. 前記細胞がAlg11型活性を欠くか、またはそれが抑制され、減少するか、もしくは枯渇し、1種以上の脂質結合単糖(LLM)フリッパーゼ型活性をさらに欠くか、またはそれが抑制され、減少するか、もしくは枯渇したことをさらに特徴とする、請求項26〜35のいずれか1項に記載の細胞。
  37. 前記細胞が遺伝子alg11またはalg11相同体および脂質結合単糖(LLM)フリッパーゼ活性をコードする1個以上の遺伝子のノックアウト突然変異体である、請求項36に記載の細胞。
  38. 前記細胞がAlg11型活性を欠くか、またはそれが抑制され、減少するか、もしくは枯渇し、Alg3型活性をさらに欠くか、またはそれが抑制され、減少するか、もしくは枯渇したことをさらに特徴とする、請求項26〜37のいずれか1項に記載の細胞。
  39. 前記細胞が遺伝子alg11またはalg11相同体およびalg3またはalg3相同体のノックアウト突然変異体である、請求項38に記載の細胞。
  40. 前記細胞がAlg11型活性を欠くか、またはそれが抑制され、減少するか、もしくは枯渇し、β-D-マンノシルトランスフェラーゼもしくはDPM1型活性をさらに欠くか、またはそれが抑制され、減少するか、もしくは枯渇したことをさらに特徴とする、請求項26〜39のいずれか1項に記載の細胞。
  41. 前記細胞が遺伝子alg11またはalg11相同体およびdpm1またはdpm1相同体のノックアウト突然変異体である、請求項40に記載の細胞。
  42. 前記細胞がRft1型LLOフリッパーゼ活性を示すことをさらに特徴とする、請求項26〜41のいずれか1項に記載の細胞。
  43. 野生型細胞と比較してRft1型活性を過剰発現する、請求項42に記載の細胞。
  44. 前記細胞が1種以上のゴルジ体局在性マンノシルトランスフェラーゼ活性を欠くか、またはそれが抑制され、減少するか、もしくは枯渇したことを特徴とする、請求項1〜43のいずれか1項に記載の細胞。
  45. ゴルジ体局在性マンノシルトランスフェラーゼ活性が、Och1型活性、Mnn1型活性、Mnn2型活性、Mnn4型活性、Mnn5型活性、Mnn9型活性、Mnn10型活性、およびMnn11型活性からなる群より選択されることを特徴とする、請求項44に記載の細胞。
  46. 前記細胞がoch1、mnn1、mnn2、mnn4、mnn5、mnn9、mnn10、mnn11、およびその相同体からなる群より選択される少なくとも1個の遺伝子のノックアウト突然変異体である、請求項45に記載の細胞。
  47. 前記細胞がMnn1型活性を欠くか、またはそれが抑制され、減少するか、もしくは枯渇したことを特徴とする、請求項44に記載の細胞。
  48. 前記細胞が、遺伝子mnn1および/またはmnn1相同体のノックアウト突然変異体である、請求項47に記載の細胞。
  49. 前記細胞がOch1型活性を欠くか、またはそれが抑制され、減少するか、もしくは枯渇したことを特徴とする、請求項44に記載の細胞。
  50. 前記細胞が遺伝子och1またはoch1相同体のノックアウト突然変異体である、請求項49に記載の細胞。
  51. 前記細胞が、
    マンノシル(α-1,3-)-糖タンパク質β-1,2-N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ(GnTI);
    マンノシル(α-1,6-)-糖タンパク質β-1,2-N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ(GnTII);
    β-1,4-マンノシル-糖タンパク質4-β-N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ(GnTIII);
    マンノシル(α-1,3-)-糖タンパク質β-1,4-N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ(GnTIV);
    マンノシル(α-1,6-)-糖タンパク質β-1,6-N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ(GnTV);
    マンノシル(α-1,6-)-糖タンパク質β-1,4-N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ(GnTVI);
    β-N-アセチルグルコサミニルグリコペプチドβ-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼ(GalT);
    α(1,6)フコシルトランスフェラーゼ(FucT);
    β-ガラクトシドα-2,6-シアリルトランスフェラーゼ(ST);
    UDP-N-アセチルグルコサミン2-エピメラーゼ(NeuC);
    シアル酸シンターゼ(NeuB);
    CMP-Neu5Acシンテターゼ;
    N-アシルノイラミン酸-9-リン酸シンターゼ;
    N-アシルノイラミン酸-9-ホスファターゼ;
    UDP-N-アセチルグルコサミン輸送因子;
    UDP-ガラクトース輸送因子;
    GDP-フコース輸送因子;
    CMP-シアル酸輸送因子;
    ヌクレオチドジホスファターゼ;
    GDP-D-マンノース4,6-デヒドラターゼ;および
    GDP-4-ケト-6-デオキシ-D-マンノース-3,5-エピメラーゼ-4-リダクターゼ、
    からなる群より選択される1種以上のゴルジ体局在性異種酵素またはその触媒ドメインを発現することを特徴とする、請求項1〜50のいずれか1項に記載の細胞。
  52. 前記細胞が、菌類細胞を含む下等真核細胞ならびに哺乳動物細胞および哺乳動物細胞系、植物細胞、および昆虫細胞を含む高等真核細胞から選択されることを特徴とする、請求項1〜51のいずれか1項に記載の細胞。
  53. 請求項1または2に記載のLLOフリッパーゼ活性をコードするか、またはそれを付与することができる単離された1又は複数の核酸分子。
  54. 前記分子が請求項3に記載の1種以上の核酸分子から選択されることを特徴とする、請求項53に記載の核酸分子。
  55. プロモーターをコードする核酸分子およびターミネーターをコードする核酸分子の少なくとも1つと連結した1コピー以上の請求項53または54に記載の核酸分子の1つを含む、真核宿主細胞中での発現のための発現カセット。
  56. 1コピー以上の請求項21〜25のいずれか1項に記載のオリゴサッカリルトランスフェラーゼ活性をコードする核酸分子をさらに含む、請求項55に記載の発現カセット。
  57. 1コピー以上の請求項53もしくは54に記載の核酸分子の1つおよび/または1コピー以上の請求項55もしくは56に記載の発現カセットを含む、真核宿主細胞の形質転換のためのベクター。
  58. 細胞内器官中でMan3GlcNAc2グリカン構造を有する脂質結合オリゴ糖を特異的に合成することができる細胞の作製方法であって、
    該細胞を、
    請求項53もしくは54に記載の核酸分子;
    請求項55もしくは56に記載の発現カセット;および
    請求項57に記載のベクター、
    の群より選択されるLLOフリッパーゼ活性をコードする少なくとも1個の構築物または構造物で形質転換して、該細胞がその構築物または構造物によりコードされるLLOフリッパーゼ活性を発現することができるようにする工程を含む、前記方法。
  59. 前記細胞が、前記構築物または構造物によりコードされるLLOフリッパーゼ活性およびオリゴサッカリルトランスフェラーゼ活性を発現することができるように、前記構築物または構造物が、さらにオリゴサッカリルトランスフェラーゼ活性をコードし、かつ
    請求項56に記載の発現カセットおよび
    1コピー以上の請求項57に記載の発現カセットを含むベクター
    の群より選択される、請求項58に記載の方法。
  60. Alg2型活性;
    Alg11型活性;
    Alg3型活性;
    DPM1型活性;および
    脂質結合単糖(LLM)フリッパーゼ型活性、
    から選択される少なくとも1種の酵素活性を前記細胞中で減少させるか、または枯渇させる工程をさらに含む、請求項58または59に記載の方法。
  61. 細胞内器官中でMan1GlcNAc2、Man2GlcNAc2および/またはMan3GlcNAc2グリカン構造を有する脂質結合オリゴ糖を特異的に合成し、そのグリカン構造を、その細胞中で発現された新生タンパク質に転移させることができ、請求項58〜60のいずれか1項に記載の方法に従って作製可能であることを特徴とする、単離された1または複数の細胞。
  62. 請求項1〜52または61のいずれか1項に記載の細胞を提供する工程;
    前記細胞中での糖タンパク質または糖タンパク質組成物の産生を可能にする条件下、培養培地中で前記細胞を培養する工程;ならびに
    必要に応じて、前記細胞および/または前記培養培地から糖タンパク質または糖タンパク質組成物を単離する工程、
    を含む、糖タンパク質または糖タンパク質組成物の産生のための方法。
  63. 請求項1〜52または61のいずれか1項に記載の細胞、および
    糖タンパク質の産生を付与する細胞を培養するための培養培地
    を含む、糖タンパク質または糖タンパク質組成物を産生するためのキット。
  64. GlcNAcMan3-5GlcNAc2構造を有する糖タンパク質を産生するように特異的に設計された、請求項1〜52または61のいずれか1項に記載の細胞。
  65. 請求項45に記載の細胞により産生された、GlcNAcMan3-5GlcNAc2グリカン構造を有する糖タンパク質。
  66. GlcNAc2Man3GlcNAc2構造を有する糖タンパク質を産生するように特異的に設計された、請求項1〜52または61のいずれか1項に記載の細胞。
  67. 請求項66に記載の細胞により産生された、GlcNAc2Man3GlcNAc2グリカン構造を有する糖タンパク質。
  68. GlcNAc3Man3GlcNAc2-バイセクティンググリカン構造を有する糖タンパク質を産生するように特異的に設計された、請求項1〜52または61のいずれか1項に記載の細胞。
  69. 請求項68に記載の細胞により産生された、GlcNAc3Man3GlcNAc2-バイセクティンググリカン構造を有する糖タンパク質。
  70. Gal2GlcNAc2Man3GlcNAc2グリカン構造を有する糖タンパク質を産生するように特異的に設計された、請求項1〜52または61のいずれか1項に記載の細胞。
  71. 請求項70に記載の細胞により産生された、Gal2GlcNAc2Man3GlcNAc2グリカン構造を有する糖タンパク質。
  72. 請求項70に記載の1種以上の細胞により産生された、Gal2GlcNAc2Man3GlcNAc2またはGalGlcNAc2Man3GlcNAc2構造を有する糖タンパク質の組成物。
  73. Gal2GlcNAc2Man3GlcNAc2Fucグリカン構造を有する糖タンパク質を産生するように特異的に設計された、請求項1〜52または61のいずれか1項に記載の細胞。
  74. 請求項73に記載の細胞により産生された、Gal2GlcNAc2Man3GlcNAc2Fucグリカン構造を有する糖タンパク質。
  75. Gal2GlcNAc3Man3GlcNAc2-バイセクティンググリカン構造を有する糖タンパク質を産生するように特異的に設計された、請求項1〜52または61のいずれか1項に記載の細胞。
  76. 請求項75に記載の細胞により産生された、Gal2GlcNAc3Man3GlcNAc2-バイセクティンググリカン構造を有する糖タンパク質。
  77. Gal2GlcNAc3Man3GlcNAc2Fuc-バイセクティンググリカン構造を有する糖タンパク質を産生するように特異的に設計された、請求項1〜52または61のいずれか1項に記載の細胞。
  78. 請求項77に記載の細胞により産生された、Gal2GlcNAc3Man3GlcNAc2Fuc-バイセクティンググリカン構造を有する糖タンパク質。
  79. NeuAc2Gal2GlcNAc2Man3GlcNAc2グリカン構造を有する糖タンパク質を産生するように特異的に設計された、請求項1〜52または61のいずれか1項に記載の細胞。
  80. 請求項79に記載の細胞により産生された、NeuAc2Gal2GlcNAc2Man3GlcNAc2グリカン構造を有する糖タンパク質。
  81. NeuAc2Gal2GlcNAc2Man3GlcNAc2Fucグリカン構造を有する糖タンパク質を産生するように特異的に設計された、請求項1〜52または61のいずれか1項に記載の細胞。
  82. 請求項81に記載の細胞により産生された、NeuAc2Gal2GlcNAc2Man3GlcNAc2Fucグリカン構造を有する糖タンパク質。
  83. NeuAc2Gal2GlcNAc3Man3GlcNAc2-バイセクティンググリカン構造を有する糖タンパク質を産生するように特異的に設計された、請求項1〜52または61のいずれか1項に記載の細胞。
  84. 請求項83に記載の細胞により産生された、NeuAc2Gal2GlcNAc3Man3GlcNAc2-バイセクティンググリカン構造を有する糖タンパク質。
  85. NeuAc2Gal2GlcNAc3Man3GlcNAc2Fuc-バイセクティンググリカン構造を有する糖タンパク質を産生するように特異的に設計された、請求項1〜52または61のいずれか1項に記載の細胞。
  86. 請求項85に記載の細胞により産生された、NeuAc2Gal2GlcNAc3Man3GlcNAc2Fuc-バイセクティンググリカン構造を有する糖タンパク質。
  87. GlcNAc3Man3GlcNAc2グリカン構造を有する糖タンパク質を産生するように特異的に設計された、請求項1〜52または61のいずれか1項に記載の細胞。
  88. 請求項87に記載の細胞により産生された、GlcNAc3Man3GlcNAc2グリカン構造を有する糖タンパク質。
  89. Gal3GlcNAc3Man3GlcNAc2グリカン構造を有する糖タンパク質を産生するように特異的に設計された、請求項1〜52または61のいずれか1項に記載の細胞。
  90. 請求項89に記載の細胞により産生された、Gal3GlcNAc3Man3GlcNAc2グリカン構造を有する糖タンパク質。
  91. NeuAc3Gal3GlcNAc3Man3GlcNAc2グリカン構造を有する糖タンパク質を産生するように特異的に設計された、請求項1〜52または61のいずれか1項に記載の細胞。
  92. 請求項91に記載の細胞により産生された、NeuAc3Gal3GlcNAc3Man3GlcNAc2グリカン構造を有する糖タンパク質。
  93. NeuAc3Gal3GlcNAc3Man3GlcNAc2Fucグリカン構造を有する糖タンパク質を産生するように特異的に設計された、請求項1〜52または61のいずれか1項に記載の細胞。
  94. 請求項93に記載の細胞により産生された、NeuAc3Gal3GlcNAc3Man3GlcNAc2Fucグリカン構造を有する糖タンパク質。
  95. 請求項1〜52または61のいずれか1項に記載の細胞により産生可能な糖タンパク質;
    請求項62に記載の方法により産生可能な糖タンパク質;ならびに
    請求項63、67、69、71、72、74、76、78、80、82、84、86、88、90、92、および94のいずれか1項に記載の糖タンパク質
    の1種以上から選択される、単離された1または複数の糖タンパク質。
  96. 請求項95に記載の2種以上の異なる糖タンパク質を含む、糖タンパク質組成物。
  97. 請求項95または96に記載の治療上活性な1または複数の組換えタンパク質。
  98. 請求項96または97に記載の1または複数の免疫グロブリン。
  99. 請求項95〜98の1以上に記載の1種以上の糖タンパク質または糖タンパク質組成物と、少なくとも1種の製薬上許容し得る担体またはアジュバントとを含む医薬組成物。
  100. 糖タンパク質または組成物の投与により治療可能な症状の治療的処理における使用のための、請求項95〜99のいずれか1項に記載の糖タンパク質または糖タンパク質組成物。
  101. 請求項95〜99の1以上に記載の1種以上の糖タンパク質または組成物の投与により治療可能な障害を治療する方法であって、該糖タンパク質または組成物の投与により治療可能な疾患に罹患しているか、またはそれが疑われる被験体に、上記の糖タンパク質または組成物を投与する工程を含む、前記方法。
JP2011533616A 2008-10-31 2009-10-31 宿主細胞中での糖鎖付加タンパク質の産生のための新規ツール Withdrawn JP2012506710A (ja)

Applications Claiming Priority (5)

Application Number Priority Date Filing Date Title
US19802308P 2008-10-31 2008-10-31
EP08400044.7 2008-10-31
EP08400044 2008-10-31
US61/198,023 2008-10-31
PCT/EP2009/007816 WO2010049177A1 (en) 2008-10-31 2009-10-31 Novel tools for the production of glycosylated proteins in host cells

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2012506710A true JP2012506710A (ja) 2012-03-22
JP2012506710A5 JP2012506710A5 (ja) 2012-11-08

Family

ID=40386055

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2011533616A Withdrawn JP2012506710A (ja) 2008-10-31 2009-10-31 宿主細胞中での糖鎖付加タンパク質の産生のための新規ツール

Country Status (9)

Country Link
US (1) US20110207214A1 (ja)
EP (1) EP2350123A1 (ja)
JP (1) JP2012506710A (ja)
CN (1) CN102203123A (ja)
AU (1) AU2009309925A1 (ja)
CA (1) CA2741964A1 (ja)
IL (1) IL212580A0 (ja)
TW (1) TW201028431A (ja)
WO (1) WO2010049177A1 (ja)

Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2017505620A (ja) * 2014-01-29 2017-02-23 アムジエン・インコーポレーテツド 組換えタンパク質のグリコシル化を調節するためのn−グリコシル化経路制御因子の過剰発現
JP2018061520A (ja) * 2018-01-26 2018-04-19 東洋紡株式会社 アスペルギルス属微生物が生産するタンパク質のn型糖鎖構造を改変する方法

Families Citing this family (15)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
PT1522590E (pt) * 2000-06-28 2009-10-26 Glycofi Inc Métodos para a produção de glicoproteínas modificadas
EP2539430B1 (en) 2010-02-24 2016-09-14 Merck Sharp & Dohme Corp. Method for increasing n-glycosylation site occupancy on therapeutic glycoproteins produced in pichia pastoris
EP2643456B1 (en) * 2010-11-24 2016-05-11 Novartis International Pharmaceutical Ltd. Fusion enzymes having n-acetylglucosaminyltransferase activity
CN102586316B (zh) * 2012-02-16 2013-08-07 中国科学院微生物研究所 人源糖基化改造的汉逊酵母
WO2013123034A1 (en) * 2012-02-16 2013-08-22 Merck Sharp & Dohme Corp. Methods for reducing mannosyltransferase activity in yeast
CN102839157A (zh) * 2012-07-12 2012-12-26 扬州大学 稳定共表达hST3GalIV和β1-4GalT1的MDCK细胞系及构建方法和应用
JP6356229B2 (ja) * 2013-06-04 2018-07-11 アイコン ジェネティクス ゲーエムベーハー 植物産生糖タンパク質及び組換え糖タンパク質のn−グリコシル化部位占有率を調節する方法
CN105492620A (zh) * 2013-07-10 2016-04-13 诺华股份有限公司 具有增加的n糖基化占位的糖蛋白的生产
CA2954974A1 (en) 2014-07-21 2016-01-28 Glykos Finland Oy Production of glycoproteins with mammalian-like n-glycans in filamentous fungi
CN105372214B (zh) * 2014-08-18 2019-06-28 中国科学院上海有机化学研究所 一种鉴定新红细胞生成刺激蛋白的n-连接寡糖结构的方法
CN104784754B (zh) * 2015-03-04 2017-05-10 重庆市畜牧科学院 一种蚕丝人工血管及制备方法
CN106867966B (zh) * 2015-12-11 2020-11-24 复旦大学 稳定表达核心α(1,3)岩藻糖基转移酶的脊椎动物细胞系及其制备方法
CN108179160B (zh) * 2018-01-29 2021-05-11 江南大学 一种植烷醇连接的高甘露糖型寡糖的制备方法
WO2019213095A1 (en) * 2018-05-01 2019-11-07 Conagen Inc. Recombinant organisms and methods for producing glycomolecules with high glycan occupancy
CN110687035A (zh) * 2019-10-10 2020-01-14 沈阳万类生物科技有限公司 Annexin V-Light 650凋亡检测试剂盒

Family Cites Families (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US7507573B2 (en) * 2003-11-14 2009-03-24 Vib, Vzw Modification of protein glycosylation in methylotrophic yeast
WO2006014679A1 (en) * 2004-07-21 2006-02-09 Glycofi, Inc. Immunoglobulins comprising predominantly a glcnac2man3glcnac2 glycoform

Cited By (7)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2017505620A (ja) * 2014-01-29 2017-02-23 アムジエン・インコーポレーテツド 組換えタンパク質のグリコシル化を調節するためのn−グリコシル化経路制御因子の過剰発現
JP2019088305A (ja) * 2014-01-29 2019-06-13 アムジエン・インコーポレーテツド 組換えタンパク質のグリコシル化を調節するためのn−グリコシル化経路制御因子の過剰発現
JP2021040638A (ja) * 2014-01-29 2021-03-18 アムジエン・インコーポレーテツド 組換えタンパク質のグリコシル化を調節するためのn−グリコシル化経路制御因子の過剰発現
JP7034236B2 (ja) 2014-01-29 2022-03-11 アムジエン・インコーポレーテツド 組換えタンパク質のグリコシル化を調節するためのn-グリコシル化経路制御因子の過剰発現
KR20220086703A (ko) * 2014-01-29 2022-06-23 암젠 인크 재조합 단백질의 글리코실화를 조절하기 위한 n-글리코실화 경로 조절자의 과발현
KR102519540B1 (ko) 2014-01-29 2023-04-10 암젠 인크 재조합 단백질의 글리코실화를 조절하기 위한 n-글리코실화 경로 조절자의 과발현
JP2018061520A (ja) * 2018-01-26 2018-04-19 東洋紡株式会社 アスペルギルス属微生物が生産するタンパク質のn型糖鎖構造を改変する方法

Also Published As

Publication number Publication date
US20110207214A1 (en) 2011-08-25
EP2350123A1 (en) 2011-08-03
CN102203123A (zh) 2011-09-28
CA2741964A1 (en) 2010-05-06
AU2009309925A1 (en) 2010-05-06
TW201028431A (en) 2010-08-01
IL212580A0 (en) 2011-07-31
WO2010049177A1 (en) 2010-05-06

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP2012506710A (ja) 宿主細胞中での糖鎖付加タンパク質の産生のための新規ツール
EP1505149B1 (en) Methylotroph yeast producing mammalian type sugar chain
US20130040897A1 (en) Glycosylation of proteins in host cells
EP2134834B1 (en) Production of glycoproteins with modified fucosylation
EP3172333B1 (en) Production of glycoproteins with mammalian-like n-glycans in filamentous fungi
KR20110122134A (ko) 글리코공학처리된 효모 피키아 파스토리스에서 갈락토스 동화 경로의 대사 공학
US9528116B2 (en) Method for producing therapeutic proteins in Pichia pastoris lacking dipeptidyl aminopeptidase activity
JP2015502144A (ja) Alg3の発現を欠損したピキア・パストリス(Pichiapastris)株中のN−グリカン占有率を増加させ、ハイブリッドN−グリカンの産生を低減させる方法
US8936918B2 (en) Yeast strain for the production of proteins with modified O-glycosylation
US9518100B2 (en) Methods for increasing N-glycan occupancy and reducing production of hybrid N-glycans in Pichia pastoris strains lacking Alg3 expression
KR20140091018A (ko) 재조합 단백질 발현을 위한 조작된 하등 진핵 숙주 균주
EP2771477A1 (en) Controlling o-glycosylation in lower eukaryotes
EP2563902A1 (en) Improved glycosylation of proteins in host cells
JP2014509864A (ja) Gdp−フコースを産生可能な酵母組換え細胞

Legal Events

Date Code Title Description
A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20120918

A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20120918

A761 Written withdrawal of application

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A761

Effective date: 20131106