以下、本発明を実施するための形態(以下、単に「本実施の形態」という。)について、必要に応じて図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明を以下の内容に限定する趣旨ではない。そして、本発明は、その要旨の範囲内で適宜に変形して実施できる。なお、図面中、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。更に、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
図1は、本実施の形態に係る太陽電池封止シートの製造方法の一例を説明する概念図である。本実施の形態に係る太陽電池封止シートの製造方法は、樹脂を軟化させて被封止物に密着させる太陽電池封止シートの製造方法であって、梨地面を有する梨地ロール12を樹脂シートSの表面に押圧することで、前記樹脂シートSの表面の少なくとも一部に梨地面を転写する梨地加工工程を含む。かかる製造方法を採用することにより、梨地面が形成された太陽電池封止シートとすることができ、かかる太陽電池封止シートは、耐ブロッキング性に優れ、かつラミネート時に空気抜けさせることができる。
(梨地加工)
梨地加工工程により形成される梨地面の表面粗さ(Ra)は、耐ブロッキング性の観点から、2μm〜10μmであることが好ましく、2μm〜9μmがより好ましく、4μm〜8μmがさらに好ましい。ここで、梨地面とは、不定形な微細な凹凸が形成された面のことをいい、一般的には、梨の皮の表面のようにざらついている面である。梨地面の表面粗さ(Ra)は、例えば、レーザー顕微鏡(キーエンス社製)を用いて測定することができる。
梨地ロール12は、特に限定されず、例えば、梨地加工を行う際に通常用いられる梨地ロールを用いることができる。例えば、ロール表面にサンドブラストによる表面処理を施した梨地ロールや、ロール表面にエッチングによる表面処理を施した梨地ロール等を用いることができる。上記したサンドブラストやエッチング等の条件を調整することで、ロール表面に形成する梨地形状を制御できる。更に、めっき等を併用することで、表面粗さだけでなく光沢度も制御できる。
梨地ロール12が前記樹脂シートSの表面を押圧することで、梨地ロール12の梨地面を樹脂シートSに転写することができるが、その転写条件は、特に限定されず、梨地形状の賦形性及び梨地ロール12からの樹脂シートSの離形性を考慮して、適宜好適な条件を選択することができる。例えば、ロール間の線圧は2kg/cm以上が好ましく、3kg/cm以上がより好ましい。さらに、ロール間でシートが押圧されていることが好ましい。生産性の観点から、ロール径が大きくして押圧条件を制御することが好ましい。梨地ロール12のロール径は、300mmΦ以上が好ましく、350mmΦ以上がより好ましく、400mmΦ以上がさらに好ましい。
梨地ロール12は、表面の少なくとも一部がエンボス形状であり、かつ前記エンボス形状の凸部表面に前記梨地面が少なくとも形成されている、ロール(以下、「梨地付きエンボスロール」という場合がある。)であることが、好ましい。この梨地付きエンボスロールを用いることで、エンボス形状の凸部表面の少なくとも一部が梨地面である樹脂シート(以下、「梨地付きエンボスシート」という場合がある。)を得ることができる。これにより、被封止物(発電素子等)を封止した際にブロッキングをより効果的に制御でき、かつ太陽電池モジュールをラミネートする際に空気等のガスを効果的に抜くことができる。ここで、エンボス形状とは、何らかの凹凸形状を型押しすることで施された形状であり、上記した梨地形状とは異なるものである。
エンボス形状は、樹脂封止シートSの少なくとも片面に施されていてもよいし、樹脂封止シートの両面に施されていてもよい。エンボス加工を行う場合、賦形するエンボス形状の深さは、特に限定されないが、空気抜け性や耐ブロッキング性等の観点から、深さが20〜400μmであるエンボス形状であることが好ましい。特に、エンボス形状の深さの下限値は、好ましくは20μm以上であり、より好ましくは40μm以上であり、さらに好ましくは80μm以上であり、よりさらに好ましくは90μm以上である。上限値は、好ましくは400μm以下であり、より好ましくは350μm以下であり、さらに好ましくは310μm以下であり、よりさらに好ましくは200μm以下であり、より一層好ましくは100μm以下である。ここで、エンボス形状の深さとは、太陽電池封止シートのエンボス加工された表面を断面視した際の、エンボス凸部からエンボス凹部までの深さをいう(例えば、図3のD1、図5のD2参照)。
本実施の形態では、浅いエンボス形状であるエンボスシートであっても、梨地面を有するシートとすることで、空気抜け性や耐ブロッキング性に優れる。例えば、従来では空気抜け性や耐ブロッキング性が十分に得られない程度のエンボス形状の深さであっても、梨地面を有するシートとすることで、空気抜け性や耐ブロッキング性を向上させることもできる。従って、本実施の形態によれば、製造条件の制限等によってエンボス形状の深さを浅くしなければならない場合であっても、空気抜け性や耐ブロッキング性を向上させることができる。
また、従来、空気抜け性や耐ブロッキング性を向上させようとして、エンボス形状を深くしたり複雑な形状にしたりする場合、転写するエンボス形状が潰れたりしないように製膜速度を低速にしなければならないといった製造条件の制限を受ける場合があるが、本実施の形態によれば、浅いエンボス形状であっても、優れた空気抜け性や耐ブロッキング性を発揮できるため、製膜速度をより高速にすることもできる。例えば、本実施の形態の製造方法では、製膜速度を15m/分以上とすることができるため、生産効率に優れた製造方法とすることができるが、エンボス形状の深さをより浅くすること等によって製膜速度をより高速にすることもできる。このように、本実施の形態の製造方法によれば、空気抜け性や耐ブロッキング性に優れた太陽電池封止シートを、高い生産効率で製造することも可能である。
図2は、本実施の形態の製造方法において得られる太陽電池封止シート表面の一例を示す概略上面図である。図3は、図2のA−A’線に沿う断面図である。図2,3に示す梨地形状は、四角錘形状(いわゆる、ピラミッド形状)の表面に施されている。太陽電池封止シートの表面が四角錘形状のエンボス形状である場合、四角錘形状の頂点で被封止物(例えば、発電セル等)と当接して封止する。梨地付きエンボスシートの梨地面は、エンボス形状の凸部表面の少なくとも一部に形成されていればよく、図2,3の場合であれば、四角錐形状の頂点の周辺領域の少なくとも一部に梨地形状(図示せず)が形成されていればよく、梨地形状は、エンボス形状が形成されている全面に必ずしも形成されていなくてもよい。
図4は、本実施の形態の製造方法において得られる太陽電池封止シート表面の別の一例を示す概略上面図である。図5は、図4のB−B’線に沿う断面図である。図4,5に示す梨地形状は、四角錘台形状(いわゆる、台形カップ形状)のエンボス加工の表面に施されている。太陽電池封止シートの表面が四角錘台形状のエンボス形状である場合、梨地は四角錘台形状の頂面(凸部表面)に形成されており、被封止物は四角錘台形状の頂面で当接して封止される。梨地付きエンボスシートの梨地面は、エンボス形状の凸部表面の少なくとも一部に形成されていればよく、図4,5の場合であれば、四角錐台形状の頂面の少なくとも一部に梨地形状(図示せず)が形成されていればよく、梨地形状は、エンボス形状が形成されている全面に必ずしも形成されていなくてもよい。
梨地付きエンボスシートの梨地面は、エンボス形状の凸部表面の少なくとも一部に形成されていればよいが、エンボス形状の凸部表面積合計の50%以上に形成されていることが好ましく、70%以上がより好ましく、80%以上がさらに好ましく、90%以上がよりさらに好ましく、全表面(100%)に形成されていることが一層好ましい。
(製膜工程、準備工程)
本実施の形態では、前記梨地加工工程の前に、樹脂をシート状に製膜した後、一旦冷却固化させて平滑な樹脂シートを得る製膜工程と、前記平滑な樹脂シートを加熱により軟質化させる準備工程と、をさらに含み、前記梨地加工工程において、前記軟質化された前記平滑な樹脂シートを、前記梨地ロールに押圧することが好ましい。
上記製膜工程及び準備工程の後に、梨地加工を行うことで、樹脂シートの収縮を抑制でき、梨地加工工程後に樹脂シートをアニーリングする工程を省略することもできる。その結果、製造工程を簡略化でき、シートの生産性をより向上させることができる。また、梨地付きエンボス形状を樹脂シートの転写する場合(例えば、梨地ロール12が、上記した梨地付きエンボスロールである場合)、より微細な梨地付きエンボス形状を樹脂シートに転写でき、高い転写精度とすることができる。特に、エンボス形状の凹凸の転写精度が一段と優れたものにできる。以下、各工程について詳述する。
(製膜工程)
樹脂を溶融押出しして溶融シートとする方法については、特に限定されず、例えば、Tダイ法、サーキュラーダイ法、カレンダー法が挙げられる。Tダイ法は、流動性の高い(メルトフローが高い)樹脂の製膜に適している。また、サーキュラーダイ法は、比較的低いメルトフローの樹脂を製膜できる点で優れている。上記の中でも、多層構造のシートを安定して製膜できる観点から、Tダイ法及びサーキュラーダイ法が好ましく、設備コストの観点から、サーキュラーダイ法がより好ましい。
製膜工程の具体例としては、まず、樹脂封止シートの原材料となる樹脂、及び必要に応じてその他の添加剤を、予め周知の混合装置、例えば、ヘンシェルミキサー、リボンブレンダー、タンブラーブレンダー等で事前混合する。次いで、一軸押出機、二軸押出機等のスクリュー押出機、ニーダー、ミキサー等により溶融混練した後、その混練物を、T型ダイやサーキュラーダイ、カレンダーダイ等からシート状に押出す。このとき、単層押出しであっても積層押出しであっても構わない。
次に、前記溶融押出しされた溶融シートを一旦冷却固化させる。冷却固化の方法としては、特に限定されず、図1に示した以外にも公知の方法を適宜に選択することもできる。例えば、表面が平滑なキャスティングロールに前記溶融シートに圧接させる方法が挙げられる。より具体的には、対向配置された平滑なキャスティングロール及びバックアップロールの隙間に、前記溶融シートを導入して、前記キャスティングロールの表面に圧接させることができる。その他の冷却方法としては、冷風や冷却水等の冷却媒体に直接接触させる方法、冷媒で冷却したロールやプレス機に接触させる方法等が挙げられるが、冷媒で冷却したロールやプレス機に接触させる方法が、膜厚制御に優れる点で好ましい。
冷却固化時の温度としては、特に制限はないが、樹脂シートの材料として用いられる樹脂の融点−5℃以下であることが好ましく、より好ましくは室温〜融点−5℃、さらに好ましくは室温〜融点−10℃である。この際にシートの収縮率を抑える目的で、製膜時の流動配向を緩和させるためにゆっくりと冷却させること(徐冷)が好ましい。冷却方法としては直接水等の冷媒中に一気に浸して冷却する方法でもよいが、シートの収縮率低減の観点から、温調したロールにより徐々に冷却する方法や空冷で徐々に冷却する方法が好ましく、冷媒を使用する場合でも、ミスト状の霧を噴霧して徐冷する方法が好ましい。ここで、シートが多層構造を有する場合等、シートの材料として複数の樹脂を用いる場合の「融点」とは、シートを構成する樹脂のうち最も多く含まれる樹脂成分の融点を意味する。樹脂の融点は、示差走査熱量計を用いて測定することができる。
(準備工程)
次いで、上記冷却固化した樹脂シートSを加熱部22により加熱して軟質化する。ここで「軟質化」(以下、「軟化」ともいう。)とは、梨地ロールを押し付けて賦形できる状態のことを言い、通常、樹脂の融点よりも10℃程度高い温度で加熱されることで軟質化される。
樹脂シートを軟質化するための加熱方法としては、特に限定されず、例えば、加熱部22として、赤外線加熱、加熱ロール、及び熱風加熱からなる群から選ばれる少なくとも1種以上を用いることが挙げられる。これらの中でも、赤外線加熱は、樹脂シートの中心まで効率よく加熱することができ、深いエンボス形状を入れ易い点で優れている。また、加熱ロール及び熱風加熱は、エンボス形状を施す表面の温度を一気に上昇させることができ、シートの延伸を防止して収縮率を抑制しつつエンボス形状を作成できる点で有利である。赤外線加熱としては、遠赤外、近赤外等が挙げられ、所望の温度にするための最適な赤外波長を選択すればよい。上記加熱方法は、単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
樹脂シートを軟質化する際の加熱温度は、特に限定されず、用いる樹脂の融点近傍であることが深いエンボスを入れる際には好ましい。また、浅いエンボスを入れる場合は、融点よりも3℃程度低いことが好ましい。また、収縮率を抑えるためには残存応力を小さくするために、軟化させるときに機械流れ方向にシートを引き伸ばさないことが重要であるが、加熱温度が融点+20℃を超える高温であると、シートが機械流れ方向に引き伸ばされる傾向にある。従って、軟質化する際の加熱温度としては、好ましくは融点−5℃〜融点+20℃、より好ましくは融点−3℃〜融点+20℃である。
加熱方法としては、冷却固化された樹脂シートを予熱した後に、本加熱することが好ましい。より具体的には、予熱ロール24に樹脂シートを密着させて予熱した後、赤外線ヒータ等である加熱部22を用いて本加熱することが好ましい。予熱した後に、より高温で本加熱することで、エンボス形状を賦形できる程度の十分な軟化状態を、ムラなく速やかに作り出すことができる。また、予熱を行うことにより、樹脂シートの粘度が極端に落ちることを抑制でき、シートが引き伸ばされて収縮率が高くなることを防ぐことができる。予熱として行う加熱方法としては、融点よりも比較的低温の予熱ロール24を用いて予熱を施し、梨地ロール12の直前に、加熱部22(赤外線加熱、ロール加熱、熱風加熱等)により樹脂表面を軟化させた後、梨地ロール(あるいは梨地付きエンボスロール)12とバックアップロール26とで押圧することで梨地形状(あるいは、梨地付きエンボス形状)を転写できる。予熱の温度としては、好ましくは樹脂の融点−20℃〜融点、より好ましくは融点−20℃〜融点−3℃である。
また、予熱ロール24は、非粘着性の表面処理が施されていることが好ましい。非粘着性の表面であることにより、軟化した樹脂シートを引き剥がす際に伸びを生じ難くでき、低収縮率に抑えることができる。非粘着の表面処理としては、例えば、フッ素系、シリコン系、ガラス系のコーティングや表面塗布により行うことができる。
また、梨地ロール12及び予熱ロール24の長さは、特に限定されないが、より短い方が、樹脂シートの収縮率を低減できるため好ましい。さらに、予熱ロール24から軟質化した樹脂シートを引き剥がす際に、細径の回転ロール(引き離しロール)を設置することが好ましい。回転ロールを設けることで、樹脂シートを引き伸ばさずに予熱ロール24から樹脂シートを引き剥がすことができるため、収縮率をより低減できる。この際、引き離しロールも予熱ロール24と同様に非粘着性の表面処理が施されていることが好ましい。
準備工程で軟質化された樹脂シートは、後続の梨地ロール12に搬送されて梨地加工を施される(梨地加工工程)。軟質化した樹脂シートの表面には、最終的に目的とする太陽電池封止シートの形態に応じて梨地加工(あるいは梨地付きエンボス加工)等の処理を施す。例えば、あるいは、樹脂シートの片面に梨地加工を行う場合、少なくとも梨地ロール12とバックアップロール26の間に、軟質化した樹脂シートを加圧状態で通過させることにより、エンボスロールの形状をシート表面に転写することができる。あるいは、樹脂シートの両面に梨地加工を行う場合、少なくとも1対以上の梨地ロールを対向配置させ、その隙間に、軟質化した樹脂シートを導入して圧接させることで、梨地形状をシートの両面に転写できる。
また、本実施の形態においては、冷却固化した樹脂シートを加熱して軟質化する工程の前後に、軟質化した樹脂シートが延伸しないようにテンションコントロールすることが好ましい。テンションコントロールを行うことにより、軟質化したシートの引き伸ばしを抑制でき、より低い収縮率を達成できる。テンションコントールの際のテンションとしては、シート幅1mに対して0.1〜80N、より好ましくは0.1〜70N、さらに好ましくは0.1〜60Nである。
テンションコントロールの方法としては、例えば、冷却固化した樹脂シートを加熱して軟質化する工程の前後でピンチする方法が挙げられる。具体的には、軟質化する工程の前にピンチロール20を配置し、軟質化する工程の後に梨地ロール12及びバックアップロール26を配置して、これらで樹脂シートSをピンチする方法等が挙げられる。
このようにして、梨地加工(あるいは梨地付きエンボス加工)を施された樹脂シートは、ガイドロールを経て、巻き取りロール等に搬送されて巻き取ることで、長尺の樹脂シートを得ることができる。この長尺の樹脂シートを所望の大きさに切断することで、太陽電池封止シートを得ることができる。
〔太陽電池封止シート〕
本実施の形態の太陽電池封止シートは、樹脂を軟化させて被封止物に密着させる太陽電池封止シートであって、少なくとも一方の表面に梨地面が形成されている。これにより、耐ブロッキング性に優れ、ラミネート時の空気抜きを効果的に行うことができる。さらに、少なくとも一方の表面にエンボス形状が形成され、かつ前記エンボス形状の少なくとも凸部表面に梨地面が形成されていることが好ましい。
本実施の形態の太陽電池封止シートは架橋処理されていることが好ましい。架橋することにより、被封止物(太陽電池セル等)を封止する際に、耐クリープ性や隙間埋め性がより良好となる。太陽電池封止シートの架橋方法としては、公知の方法を制限なく使用でき、例えば、電離性放射線(電子線、γ線、紫外線等)の照射や有機過酸化物による架橋処理による架橋処理等が挙げられる。これらの架橋処理(例えば、電離性放射線照射処理、有機過酸化物を用いる場合には熱処理)は、それぞれの場合に応じてエンボス加工処理の前工程又は後工程として行うか、適宜に選択できる。
太陽電池封止シートが「架橋されている」とは、樹脂又は樹脂組成物を構成する高分子を物理的、又は化学的に架橋した結果、ゲル分率が好ましくは1質量%以上となった状態をいう。例えば、成分が同じ太陽電池封止シート2枚を用いて太陽電池セル等の被封止物を封止する場合、太陽電池封止シートのゲル分率は、好ましくは1〜90質量%、より好ましくは2〜85質量%、さらに好ましくは2〜65質量%である。例えば、成分が異なる太陽電池封止シートを用いる場合は、一方の太陽電池封止シートが未架橋であり、他方の太陽電池封止シートのゲル分率が90質量%以下であってもよい。
ゲル分率が1質量%以上であると、耐熱性が向上する傾向にあり、65質量%以下であると、被封止物に対する封止性(隙間埋め性)が良好となる傾向にある。なお、太陽電池封止シートが後述する単層構造又は多層構造のいずれの構造を有する場合であっても、上記ゲル分率は、太陽電池封止シート全体の平均のゲル分率(全層ゲル分率)の値を意味する。太陽電池封止シートのゲル分率を上記範囲に調整する手段としては、シートに適度に架橋処理を施すことが挙げられる。
太陽電池封止シートのゲル分率は、沸騰p−キシレン中で太陽電池封止シートを12時間抽出し、不溶解部分の割合から下記式により求めることができる。
ゲル分率(質量%)=(抽出後の試料質量/抽出前の試料質量)×100
電離性放射線による架橋の場合は、照射強度(加速電圧)と照射密度によって厚さ減少率を調整することができる。照射強度(加速電圧)はシートの厚さ方向にどれだけ深く電子を届かせるかを示すものであり、照射密度は単位面積当たりどれだけ多くの電子を照射するかを示すものである。有機過酸化物による架橋の場合は、有機過酸化物の含有量によって厚さ減少率を調整することができる。また、樹脂の種類による架橋度合いの違いや、転移化剤等による架橋促進又は架橋抑制の効果を利用してもよい。
電離性放射線の照射により架橋させる場合は、α線、β線、γ線、中性子線、電子線等の電離性放射線を太陽電池封止シートに照射し、架橋させる方法が挙げられる。電子線等の電離性放射線の加速電圧は、太陽電池封止シートの厚さにより選択でき、例えば、500μmの厚さの場合、太陽電池封止シート全体を架橋するときには、加速電圧として300kV以上が必要である。
電子線等の電離性放射線の加速電圧は、架橋処理を施す樹脂層に応じて適宜調節が可能であり、電離性放射線の照射線量は使用される樹脂によって異なるが、一般的に3kGy以上とすることで、太陽電池封止シート全体を均一に架橋することができる傾向にある。
有機過酸化物により架橋させる場合は、架橋剤として有機過酸化物を樹脂中に配合し、又は含浸させて熱架橋を行う。この場合100〜130℃における半減期が1時間以内の有機過酸化物が好ましい。
有機過酸化物としては、良好な相溶性が得られ、かつ上記半減期を有するものとして、例えば、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、n−ブチル−4,4−ビス(t−ブチルパーオキシ)バレレート、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン等が挙げられる。これらの有機過酸化物を用いた太陽電池封止シートは、架橋時間を比較的短くすることができ、かつ、キュア工程を、従来汎用されている100〜130℃における半減期が1時間以上の有機過酸化物を用いた場合と比較して半分程度に短縮することができる。
有機過酸化物の含有量は、太陽電池封止シートを構成する樹脂に対して、0〜10質量%であることが好ましく、0〜5質量%であることがより好ましい。
有機過酸化物が配合された太陽電池封止シートは、ラミネーション時にシートが軟化し、隙間埋めが行われた後に有機過酸化物の分解及び架橋が促進されるため、樹脂のゲル分率が大きくなっても隙間埋め性が阻害されないという利点を有している。
上述したように「架橋」には電離性放射線の照射を行う方法、及び有機過酸化物を利用する方法等が挙げられるが、電離性放射線の照射によって架橋させる方法が特に好ましい。例えば、本実施の形態の製造方法においては、前記樹脂シートに電離性放射線を照射することで架橋処理を施す架橋工程をさらに含むことで、架橋処理を施すことができる。電離性放射線の照射による架橋処理は、有機過酸化物の熱分解によるガスが発生しないため、真空ポンプの腐食ダメージ及びオイルの汚れを低減できる傾向にある。また、有機過酸化物を用いた架橋方法は、ラミネーション工程において有機過酸化物を分解させ、太陽電池封止シートの架橋を促進させるための長時間のキュア工程が必要であるため、太陽電池モジュールの生産を高速化しにくいが、電離性放射線の照射による架橋方法の場合は長時間のキュア工程を必要とせず、太陽電池モジュールの生産性を向上させることができる点においても優れている。
太陽電池封止シートを構成する樹脂としては、特に限定されないが、良好な透明性、柔軟性、被接着物の接着性や取り扱い性を確保する観点から、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−脂肪族不飽和カルボン酸共重合体、エチレン−脂肪族カルボン酸エステル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物、エチレン−酢酸ビニル−アクリル酸エステル共重合体ケン化物、グリシジルメタクリレートを含むエチレン共重合体、及びポリオレフィン系樹脂からなる群から選択される少なくとも1種の樹脂を含有することが好ましい。
エチレン−酢酸ビニル共重合体とは、エチレンモノマーと酢酸ビニルとの共重合により得られる共重合体を示す。また、エチレン−脂肪族不飽和カルボン酸共重合体とは、エチレンモノマーと、脂肪族不飽和カルボン酸から選ばれる少なくとも1種のモノマーとの共重合により得られる共重合体を示す。さらに、エチレン−脂肪族不飽和カルボン酸エステル共重合体とは、エチレンモノマーと、脂肪族不飽和カルボン酸エステルから選ばれる少なくとも1種のモノマーとの共重合により得られる共重合体を示す。
上記共重合は、高圧法、溶融法等の公知の方法により行うことができ、重合反応の触媒としてマルチサイト触媒やシングルサイト触媒等を用いることができる。また、上記共重合体において、各モノマーの結合形状は特に限定されず、ランダム結合、ブロック結合等の結合形状を有するポリマーを使用することができる。なお、光学特性の観点から、上記共重合体としては、高圧法を用いてランダム結合により重合した共重合体が好ましい。
上記エチレン−酢酸ビニル共重合体は、光学特性、接着性、柔軟性の観点から、共重合体を構成する全モノマー中の酢酸ビニルの割合が、10〜40質量%であることが好ましく、13〜35質量%であることがより好ましく、15〜30質量%であることがさらに好ましい。また、太陽電池封止シートの加工性の観点より、JIS−K−7210に準じて測定されるメルトフローレート(MFR;190℃、2.16kg)の値が0.3g/10分〜30g/10分であることが好ましく、0.5g/10分〜30g/10分であることがより好ましく、0.8g/10分〜25g/10分であることがさらに好ましい。
上記エチレン−脂肪族不飽和カルボン酸共重合体としては、例えば、エチレン−アクリル酸共重合体(以下、「EAA」とも略記される。)、エチレン−メタクリル酸共重合体(以下、「EMAA」とも略記される。)等が挙げられる。また、上記エチレン−脂肪族不飽和カルボン酸エステル共重合体としては、例えば、エチレン−アクリル酸エステル共重合体、エチレン−メタクリル酸エステル共重合体等が挙げられる。ここで、アクリル酸エステル及びメタクリル酸エステルとしては、メタノール、エタノール等の炭素数1〜8のアルコールとのエステルが好適に使用される。
これらの共重合体は、3成分以上のモノマーを共重合してなる多元共重合体であってもよい。上記多元共重合体としては、例えば、エチレン、脂肪族不飽和カルボン酸及び脂肪族不飽和カルボン酸エステルから選ばれる少なくとも3種類のモノマーを共重合してなる共重合体が挙げられる。
上記エチレン−脂肪族不飽和カルボン酸共重合体は、共重合体を構成する全モノマー中の脂肪族不飽和カルボン酸の割合が、3〜35質量%であることが好ましい。MFR(190℃、2.16kg)は、0.3g/10分〜30g/10分であることが好ましく、0.5g/10分〜30g/10分であることがより好ましく、0.8g/10分〜25g/10分であることがさらに好ましい。
上記エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物としては、例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合体の部分又は完全ケン化物が挙げられる。エチレン−酢酸ビニル−アクリル酸エステル共重合体ケン化物としては、エチレン−酢酸ビニル−アクリル酸エステル共重合体の部分又は完全ケン化物等が挙げられる。
上記各ケン化物中の水酸基の割合は、太陽電池封止シートを構成する樹脂中において、0.1質量%〜15質量%であることが好ましく、より好ましくは0.1質量%〜10質量%、さらに好ましくは0.1質量%〜7質量%である。水酸基の割合が0.1質量%以上であると接着性が良好となる傾向にあり、15質量%以下であると相溶性が良好となる傾向にあり、最終的に得られる太陽電池封止シートが白濁化するリスクを低減できる。
水酸基の割合は、エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物、エチレン−酢酸ビニル−アクリル酸エステル共重合体ケン化物の元のオレフィン系重合体樹脂と、この樹脂のVA%(NMR測定による酢酸ビニル共重合比)と、そのケン化度と、樹脂中における配合割合とから算出することができる。
ケン化前のエチレン−酢酸ビニル共重合体及びエチレン−酢酸ビニル−アクリル酸エステル共重合体中の酢酸ビニルの含有量は、良好な光学特性、接着性、及び柔軟性を得る観点から、共重合体全体に対して、10〜40質量%であることが好ましく、13〜35質量%であることがより好ましく、15〜30質量%であることがさらに好ましい。また、エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物及びエチレン−酢酸ビニル−アクリル酸エステル共重合体ケン化物のケン化度は、良好な透明性及び接着性を得る観点から、10〜70%であることが好ましく、15〜65%であることがより好ましく、20〜60%であることがさらに好ましい。
ケン化方法としては、例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−酢酸ビニル−アクリル酸エステル共重合体のペレット或いは粉末をメタノール等の低級アルコール中でアルカリ触媒を用いてケン化する方法、トルエン、キシレン、ヘキサンのような溶媒を用いて予め共重合体を溶解した後、少量のアルコールとアルカリ触媒を用いてケン化する方法等が挙げられる。また、ケン化した共重合体に水酸基以外の官能基を含有するモノマーをグラフト重合してもよい。
上記各ケン化物は、側鎖に水酸基を有しているため、ケン化前の共重合体と比較して接着性が向上している。また、水酸基の量(ケン化度)を調整することにより、透明性や接着性を制御することができる。
グリシジルメタクリレートを含むエチレン共重合体とは、反応サイトとしてエポキシ基を有するグリシジルメタクリレートとのエチレンコポリマー及びエチレンターポリマーを示し、例えば、エチレン−グリシジルメタクリレート共重合体、エチレン−グリシジルメタクリレート−酢酸ビニル共重合体、エチレン−グリシジルメタクリレート−アクリル酸メチル共重合体等が挙げられる。上記化合物は、グリシジルメタクリレートの反応性が高いため安定した接着性を発揮でき、また、ガラス転移温度が低く柔軟性が良好となる傾向にある。
上記ポリオレフィン系樹脂としては、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリブテン系樹脂が好ましい。ここでポリエチレン系樹脂とは、エチレンの単独重合体又はエチレンと他の1種若しくは2種以上のモノマーとの共重合体を示す。また、ポリプロピレン系樹脂とは、プロピレンの単独重合体又はプロピレンと他の1種若しくは2種以上のモノマーとの共重合体を示す。
上記ポリエチレン系樹脂としては、ポリエチレン、エチレン−α−オレフィン共重合体等が挙げられる。
上記ポリエチレンとしては、低密度ポリエチレン(LDPE)、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、線状超低密度ポリエチレン(「VLDPE」、「ULDPE」と称される。)等が挙げられる。
上記エチレン−α−オレフィン共重合体は、エチレンと、炭素数3〜20のα−オレフィンから選ばれる少なくとも1種とからなる共重合体であることが好ましく、エチレンと、炭素数3〜12のα−オレフィンから選ばれる少なくとも1種とからなる共重合体であることがより好ましい。上記α−オレフィンとしては、例えば、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−へキセン、1−オクテン、4−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、1−エイコサン等が挙げられ、これらを1種又は2種以上を併用することができる。また、共重合体を構成する全モノマー中のα−オレフィンの割合(仕込みモノマー基準)は、6〜30質量%であることが好ましい。さらに、上記エチレン−α−オレフィン共重合体は、軟質の共重合体であることが好ましく、X線法による結晶化度が30%以下であることが好ましい。
また、上記エチレン−α−オレフィン共重合体としては、エチレンと、プロピレンコモノマー、ブテンコモノマー、ヘキセンコモノマー及びオクテンコモノマーから選ばれる少なくとも1種のコモノマーとの共重合体が、一般に入手が容易であり、好適に使用できる。
上記ポリエチレン系樹脂は、シングルサイト系触媒、マルチサイト系触媒等の公知の触媒を用いて重合することができ、シングルサイト系触媒を用いて重合することが好ましい。また上記ポリエチレン系樹脂は、クッション性の観点から、密度が0.860〜0.920g/cm3であることが好ましく、0.870〜0.915g/cm3であることがより好ましく、0.870〜0.910g/cm3であることさらに好ましい。密度が0.920g/cm3以下であると、クッション性が良好となる傾向にある。なお、密度が0.920g/cm3を超えると透明性が悪化するおそれがある。高密度のポリエチレン系樹脂を用いる場合には、低密度のポリエチレン系樹脂を、例えば、30質量%程度の割合で添加することで透明性を改善することもできる。
上記ポリエチレン系樹脂は、太陽電池封止シートの加工性の観点から、MFR(190℃、2.16kg)が0.5g/10分〜30g/10分であることが好ましく、0.8g/10分〜30g/10分であることがより好ましく、1.0g/10分〜25g/10分であることがさらに好ましい。
上記ポリエチレン系樹脂としては、結晶/非晶構造(モルフォロジ−)をナノオーダーで制御したポリエチレン系共重合体を使用することもできる。
上記ポリプロピレン系樹脂としては、ポリプロピレン、プロピレン−α−オレフィン共重合体、プロピレンとエチレンとα−オレフィンとの3元共重合体等が挙げられる。
上記プロピレン−α−オレフィン共重合体とは、プロピレンとα−オレフィンから選ばれる少なくとも1種とからなる共重合体を示す。上記プロピレン−α−オレフィン共重合体は、プロピレンと、エチレン及び炭素数4〜20のα−オレフィンから選ばれる少なくとも1種とからなる共重合体が好ましく、プロピレンと、エチレン及び炭素数4〜8のα−オレフィンから選ばれる少なくとも1種からなる共重合体がより好ましい。ここで炭素数4〜20のα−オレフィンとしては、例えば、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−へキセン、1−オクテン、4−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、1−エイコサン等が挙げられ、これらを1種又は2種以上を併用することができる。また、上記プロピレン−α−オレフィン共重合体を構成する全モノマー中のエチレン及び/又はα−オレフィンの含有割合(仕込みモノマー基準)は、6〜30質量%であることが好ましい。さらに、上記プロピレン−α−オレフィン共重合体は、軟質の共重合体であることが好ましく、X線法による結晶化度が30%以下であることが好ましい。
上記プロピレン−α−オレフィン共重合体としては、プロピレンと、エチレンコモノマー、ブテンコモノマー、ヘキセンコモノマー及びオクテンコモノマーから選ばれる少なくとも1種類のコモノマーとの共重合体が、一般に入手が容易であり、好適に使用できる。
上記ポリプロピレン系樹脂は、シングルサイト系触媒、マルチサイト系触媒等の公知の触媒を用いて重合することができ、シングルサイト系触媒を用いて重合することが好ましい。上記ポリプロピレン系樹脂は、クッション性の観点から、密度が0.860〜0.920g/cm3であることが好ましく、0.870〜0.915g/cm3であることがより好ましく、0.870〜0.910g/cm3であることがさらに好ましい。密度が0.920g/cm3以下であると、クッション性及び透明性が良好となる傾向にある。
上記ポリプロピレン系樹脂は、太陽電池封止シートの加工性の観点から、MFR(230℃、2.16kg)が0.3g/10分〜15.0g/10分であることが好ましく、0.5g/10分〜12g/10分であることがより好ましく、0.8g/10分〜10g/10分であることがさらに好ましい。
上記ポリプロピレン系樹脂としては、結晶/非晶構造(モルフォロジ−)をナノオーダーで制御したポリプロピレン系共重合体を使用することもできる。
上記ポリプロピレン系樹脂としては、プロピレンと、エチレン、ブテン、ヘキセン、オクテン等のα−オレフィンとの共重合体、又は、プロピレンと、エチレンと、ブテン、ヘキセン、オクテン等のα−オレフィンとの3元共重合体等が好適に使用できる。これらの共重合体は、ブロック共重合体、ランダム共重合体等のいずれの形態でもよく、好ましくはプロピレンとエチレンとのランダム共重合体、又は、プロピレンとエチレンとブテンとのランダム共重合体である。
上記ポリプロピレン系樹脂は、チーグラー・ナッタ触媒のような触媒で重合された樹脂だけでなく、メタロセン系触媒等で重合された樹脂でよく、例えば、シンジオタクチックポリプロピレンや、アイソタクティックポリプロピレン等も使用できる。また、ポリプロピレン系樹脂を構成する全モノマー中のプロピレンの割合(仕込みモノマー基準)は、60〜80質量%であることが好ましい。さらに、熱収縮性が優れるという観点から、ポリプロピレン系樹脂を構成する全モノマー中のプロピレン含有割合(仕込みモノマー基準)が60〜80質量%であり、エチレン含有割合(仕込みモノマー基準)が10〜30質量%であり、ブテン含有割合(仕込みモノマー基準)が5〜20質量%である3元共重合体が好ましい。
上記ポリプロピレン系樹脂としては、ポリプロピレン系樹脂の総量に対して50質量%以下の高濃度のゴム成分を均一微分散させてなる樹脂を用いることもできる。
太陽電池封止シートを構成する樹脂が上記ポリプロピレン系樹脂を含有することで、硬さ、耐熱性等の特性が一層向上する傾向にある。
ポリブテン系樹脂は、ポリプロピレン系樹脂との相溶性が特に優れるため、太陽電池封止シートの硬さや腰の調整を目的として、上記ポリプロピレン系樹脂と併用することが好ましい。上記ポリブテン系樹脂としては、結晶性であり、ブテンと、エチレン、プロピレン及び炭素数5〜8のオレフィン系化合物から選ばれる少なくとも1種からなる共重合体であり、かつ、ポリブテン系樹脂を構成する全モノマー中のブテンの含有量が70モル%以上である高分子量のポリブテン系樹脂が好適に使用できる。
上記ポリブテン系樹脂は、MFR(190℃、2.16kg)が0.1g/10分〜10g/10分であることが好ましい。また、ビカット軟化点が40〜100℃であることが好ましい。ここで、ビカット軟化点はJIS K7206−1982に従って測定される値である。
本実施の形態の太陽電池封止シートは、単層構造、多層構造のいずれの構造を有していてもよい。以下、各構造について説明する。これらの構造は、例えば、上記した製膜工程において用いるTダイに接続する押出機の数や構造等を調製することで、適宜に選択できる。
〔単層構造〕
太陽電池封止シートが単層構造を有する場合、良好な透明性、柔軟性、被接着物の接着性や取扱性を確保する観点から、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−脂肪族不飽和カルボン酸共重合体、エチレン−脂肪族不飽和カルボン酸エステル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物、エチレン−酢酸ビニル−アクリル酸エステル共重合体ケン化物、及びポリオレフィン系樹脂よりなる群から選ばれる少なくとも1種の樹脂からなる層であることが好ましい。
太陽電池封止シートを構成する樹脂層に、接着性樹脂としてエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物、エチレン−酢酸ビニル−アクリル酸エステル共重合体ケン化物が含有されている場合は、そのケン化度及び含有量は適宜調整でき、これにより被封止物との接着性を制御できる。接着性と光学特性の観点から、樹脂層中のエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物、エチレン−酢酸ビニル−アクリル酸エステル共重合体ケン化物の含有量は、3〜60質量%であることが好ましく、3〜55質量%であることがより好ましく、5〜50質量%であることがさらに好ましい。
単層構造の太陽電池封止シートを製造する場合、例えば、上記したTダイに1台の押出機を接続することで得ることができる。
〔多層構造〕
本実施の形態における太陽電池封止シートは、表面層と、前記表面層に積層された内層とを含む少なくとも2層以上の多層構造を有していてもよい。ここで、太陽電池封止シートの両表面を形成する2層を「表面層」といい、それ以外を「内層」という。
多層構造の太陽電池封止シートを製造する場合、上記したTダイに複数の押出機を接続することで得ることができる。
多層構造を有する場合には、接着性樹脂としてエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物、エチレン−酢酸ビニル−アクリル酸エステル共重合体ケン化物を含有する樹脂層が被封止物と接触する層(表面層の少なくとも1層)として形成されていることが好ましい。また、表面層としては、上述したケン化物のみからなる層でもよいが、良好な透明性、柔軟性、被接着物の接着性や取扱性を確保する観点から、ケン化物と、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−脂肪族不飽和カルボン酸共重合体、エチレン−脂肪族不飽和カルボン酸エステル共重合体、及びポリオレフィン系樹脂よりなる群から選ばれる少なくとも1種の樹脂との混合樹脂からなる層であることが好ましい。
被封止物と接触する表面層の層比率は、良好な接着性を確保する観点から、太陽電池封止シートの全厚に対し、少なくとも5%以上の厚さを有していることが好ましい。厚さが5%以上であると、上述した単層構造の場合と同等の接着性が得られる傾向にある。
内層を構成する樹脂としては、特に限定されず、上述した表面層に含まれる樹脂に加えて、他のいかなる樹脂を用いてもよい。内層には、他の機能を付与することを目的として、樹脂材料、混合物、添加物等を適宜選定できる。例えば、新たにクッション性を付与する目的として、内層として熱可塑性樹脂を含有する層を設けてもよい。
内層として用いられる熱可塑性樹脂としては、ポリオレフィン系樹脂、スチレン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、塩素系エチレンポリマー系樹脂、ポリアミド系樹脂等が挙げられ、生分解性を有したものや植物由来原料系のもの等も含まれる。上記の中でも、結晶性ポリプロピレン系樹脂との相溶性がよく、透明性が良好な水素添加ブロック共重合体樹脂、プロピレン系共重合樹脂、エチレン系共重合体樹脂が好ましく、水素添加ブロック共重合体樹脂及びプロピレン系共重合樹脂がより好ましい。
水素添加ブロック共重合体樹脂としては、ビニル芳香族炭化水素と共役ジエンのブロック共重合体が好ましい。ビニル芳香族炭化水素としては、スチレン、o−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、1,3−ジメチルスチレン、α−メチルスチレン、ビニルナフタレン、ビニルアントラセン、1,1−ジフェニルエチレン、N,N−ジメチル−p−アミノエチルスチレン、N,N−ジエチル−p−アミノエチルスチレン等が挙げられ、特にスチレンが好ましい。これらは単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。共役ジエンとは、1対の共役二重結合を有するジオレフィンであり、例えば、1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン(イソプレン)、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく2種以上を混合して用いてもよい。
プロピレン系共重合体樹脂としては、プロピレンとエチレン又は炭素原子数4〜20のα−オレフィンとから得られる共重合体が好ましい。そのエチレン又は炭素原子数4〜20のα−オレフィンの含有量は6〜30質量%が好ましい。この炭素原子数4〜20のα−オレフィンとしては、1−ブテン、1−ペンテン、1−へキセン、1−オクテン、4−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、1−エイコサン等が挙げられる。
プロピレン系共重合体樹脂は、マルチサイト系触媒、シングルサイト系触媒、その他、いずれの触媒を用いて重合されたものでもよい。さらにポリマーの結晶/非晶構造(モルフォロジ−)をナノオーダーで制御したプロピレン系共重合体を使用できる。
エチレン系共重合体樹脂は、マルチサイト系触媒、シングルサイト系触媒、その他、いずれの触媒で重合されたものでもよい。また、ポリマーの結晶/非晶構造(モルフォロジ−)をナノオーダーで制御したエチレン系共重合体を使用できる。
内層の材料としてポリエチレン系樹脂を用いる場合、ポリエチレン系樹脂の密度は、適度なクッション性を得る観点から、0.860〜0.920g/cm3であることが好ましく、0.870〜0.915g/cm3であることがより好ましく、0.870〜0.910g/cm3であることがさらに好ましい。密度が0.920g/cm3以上の樹脂層を被封止物と接触しない層(内層)として形成した場合、透明性が悪化する傾向にある。
また、太陽電池封止シートは、中央層の両面に、中央層に対して対称の配置となるように同一成分の層が1又は2以上積層された構造を有していてもよい。このような太陽電池封止シートとしては、例えば、2層の表面層(以下、「スキン層」と記載する場合がある。)と3層の内層からなる太陽電池封止シートであって、2層の表面層が同一成分からなり、表面層に隣接する2層の内層(以下、「ベース層」と記載する場合がある。)が同一成分からなる太陽電池封止シートが挙げられる。
上記構造を有する太陽電池封止シートにおいて、表面層の膜厚は、太陽電池封止シート全体の膜厚に対して5〜40%であることが好ましく、上記ベース層の膜厚は、太陽電池封止シート全体の膜圧に対して50〜90%であることが好ましく、ベース層に挟まれた内層(以下、「コア層」と記載する場合がある。)の膜厚は、太陽電池封止シート全体の膜厚に対して5〜40%であることが好ましい。
次に、太陽電池封止シート加工性の観点について検討する。太陽電池封止シートを構成する樹脂のMFR(190℃、2.16kg)は、良好な加工性を確保する観点から、0.5〜30g/10分であることが好ましく、0.8〜30g/10分であることがより好ましく、1.0〜25g/10分であることがさらに好ましい。太陽電池封止シートが2層以上の多層構造の場合、内層(ベース層やコア層)を構成する樹脂のMFRは、太陽電池封止シート加工性の観点から、表面層のMFRより低いことが好ましい。
本実施の形態における太陽電池封止シートには、特性を損なわない範囲で、各種添加剤、例えば、カップリング剤、防曇剤、可塑剤、酸化防止剤、界面活性剤、着色剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、結晶核剤、滑剤、アンチブロッキング剤、無機フィラー、架橋調整剤等を添加してもよい。
太陽電池封止シートには、安定した接着性を確保する目的でカップリング剤を添加してもよい。上記カップリング剤の添加量及び種類は、所望の接着性の度合いや被接着物の種類によって適宜選択できる。上記カップリング剤の添加量としては、カップリング剤を添加する樹脂層の全質量基準で、0.01〜5質量%であることが好ましく、0.03〜4質量%であることがより好ましく、0.05〜3質量%であることがさらに好ましい。上記カップリング剤の種類としては、樹脂層に、太陽電池セルやガラスへの良好な接着性を付与する物質が好ましく、例えば、有機シラン化合物、有機シラン過酸化物、有機チタネート化合物等が挙げられる。また、これらのカップリング剤は、押出機内にて樹脂に注入混合する、押出機ホッパー内に混合して導入する、マスターバッチ化して混合して添加する等の公知の添加方法で添加することができる。ただし、押出機を経由する場合、押出機内の熱や圧力等によりカップリング剤の機能が阻害されることがあるため、カップリング剤の種類によっては添加量を適宜調整する必要がある。また、カップリング剤の種類は、太陽電池封止シートの透明性や分散具合の観点、押出機への腐食や押出安定性の観点等を考慮して、適宜選択すればよい。好ましいカップリング剤としては、γ−クロロプロピルメトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニル−トリス(β−メトキシエトキシ)シラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エトキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラングリシドキシプロピルトリエトキシシラン等の不飽和基やエポキシ基を有するものが挙げられる。
また、太陽電池封止シートには、紫外線吸収剤、酸化防止剤、変色防止剤等を添加することができる。特に長期に渡って透明性や接着性を維持する必要がある場合、紫外線吸収剤、酸化防止剤、変色防止剤等を添加することが好ましい。これらの添加剤を樹脂に添加する場合、その添加量は、添加する樹脂の総量に対して10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましい。
紫外線吸収剤としては、例えば、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−5−スルホベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2'−ジヒドロキシ−4,4'−ジメトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−ドデシロキシベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2'−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン等が挙げられる。酸化防止剤としては、フェノール系、イオウ系、リン系、アミン系、ヒンダードフェノール系、ヒンダードアミン系、ヒドラジン系等の酸化防止剤が挙げられる。
これらの紫外線吸収剤、酸化防止剤、変色防止剤等は太陽電池封止シートを構成する樹脂中に、好ましくは0〜10質量%、より好ましくは0〜5質量%を添加する。エチレン系樹脂に添加する場合、シラノール基を有する樹脂をマスターバッチ化して混合することで、さらに接着性を付与することもできる。添加方法としては、特に限定されず、液体の状態で溶融樹脂に添加する、直接対象樹脂層に練り込み添加する、シーティング後に塗布する等の方法が挙げられる。
本実施の形態の製造方法により得られる太陽電池封止シートは、厚さが50〜1500μmであることが好ましく、100〜1000μmであることがより好ましく、150〜800μmであることがさらに好ましい。厚さが50μm未満であると、構造的にクッション性が乏しい場合や、作業性の観点で、耐久性や強度に問題が生ずる傾向にある。一方、厚さが1500μmを超えると、生産性の低下や密着性の低下を招来するという問題が生じる傾向にある。
〔太陽電池封止シートの用途〕
本実施の形態における太陽電池封止シートは、太陽電池を構成する素子等の部材を保護するための太陽電池用の封止材として有用であり、太陽電池を構成するガラス板や、アクリルやポリカーボネート等の樹脂板に対しても安定的に強固な接着性を発揮する。本実施の形態における太陽電池封止シートを用いることにより、太陽電池用ガラス自身や各種配線や発電素子等、凹凸を有している各種部材を確実に隙間なく封止できる。
〔太陽電池モジュール〕
本実施の形態によれば、透明基板と、バックシートと、前記透明基板及び前記バックシートの間に配置された発電素子と、前記透明基板及び前記バックシートの間で前記発電素子を封止する太陽電池封止シートと、を備える太陽電池モジュールとすることができる。
(透明基板)
本実施の形態で用いる透明基板の材質等は、特に限定されず、公知のものを用いることができる。ここで、透明基板とは、少なくとも光透過性を有する基材であればよい。特に、太陽電池モジュールの使用時における長期信頼性を確保する観点から、耐候性、撥水性、耐衝撃性等の機械強度等に優れている材質であることが好ましい。
具体的には、ポリエステル樹脂、フッ素樹脂、アクリル樹脂、環状ポリオレフィン、エチレン−酢酸ビニル共重合体等からなる樹脂フィルムや、ガラス基板等が挙げられる。これらの中でも、光透過性、耐候性、耐衝撃性、コストのバランスの観点から、ガラス基板、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、環状ポリオレフィン(COP)が好ましい。
特に耐侯性の良好なフッ素樹脂も好適に用いられる。具体的には、四フッ化エチレン−エチレン共重合体(ETFE)、ポリフッ化ビニル樹脂(PVF)、ポリフッ化ビニリデン樹脂(PVDF)、ポリ四フッ化エチレン樹脂(TFE)、四フッ化エチレン−六フッ化プロピレン共重合体(FEP)、ポリ三フッ化塩化エチレン樹脂(CTFE)が挙げられる。耐候性の観点からはポリフッ化ビニリデン樹脂が好ましいが、耐候性及び機械的強度の両立をする観点からは四フッ化エチレン−エチレン共重合体が好ましい。また、樹脂封止材等の他の層を構成する材料との接着性の改良のために、コロナ処理、プラズマ処理を透明基板に行うことが好ましい。また、機械的強度向上のために、延伸処理が施してあるシート、例えば2軸延伸のポリプロピレンシートを用いることも可能である。
透明基板としてガラス基板を用いる場合には、波長350〜1400nmの光の全光線透過率が80%以上であることが好ましく、より好ましくは90%以上である。かかるガラス基板としては赤外部の吸収の少ない白板ガラスを使用するのが一般的であるが、青板ガラスであっても厚さが3mm以下であれば太陽電池モジュールの出力特性への影響は少ない。また、ガラス基板の機械的強度を高めるために熱処理により強化ガラスを得ることができるが、熱処理無しのフロート板ガラスを用いてもよい。また、ガラス基板の受光面側に反射を抑えるために反射防止のコーティングを施してもよい。
(バックシート)
本実施の形態で用いるバックシートとしては、特に限定されず、太陽電池モジュールの最表層に位置するため、上述の透光性絶縁基板と同様に、耐候性、機械強度等の諸特性を求められる。従って透光性絶縁基板と同様の材質でバックシートを構成してもよい。すなわち、透光性絶縁基板において用いることができる上述の各種材料を、バックシートにおいても用いることができる。特に、ポリエステル樹脂、及びガラス基板を好ましく用いることができ、中でも、耐候性、コストの観点から、ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)がより好ましい。
バックシートは、太陽光の通過を前提としないため、透明基板で求められていた透明性(光透過性)は必ずしも要求されない。そこで、太陽電池モジュールの機械的強度を増すために、或いは、温度変化による歪みや反りを防止するために、補強板を張り付けてもよい。例えば、鋼板、プラスチック板、FRP(ガラス繊維強化プラスチック)板等を好ましく使用することができる。
バックシートは、2層以上からなる多層構造を有していてもよい。多層構造としては、例えば、中央層の両面に、中央層に対して対称の配置となるように同一成分の層が1又は2以上積層された構造等が挙げられる。そのような構造を有するものとしては、例えば、PET/アルミナ蒸着PET/PET、PVF(商品名:テドラー)/PET/PVF、PET/AL箔/PET等が挙げられる。
(発電素子)
本実施の形態で用いる発電素子は、半導体等の光起電力効果を利用して発電できるものであれば特に制限はなく、たとえば、シリコン(単結晶系、多結晶系、非結晶(アモルファス)系)、化合物半導体(3−5族、2−6族、その他)等を用いることができ、中でも、発電性能とコストとのバランスの観点から、多結晶シリコンが好ましい。
以下の実施例により本発明を更に詳しく説明するが、本発明は以下の実施例により何ら限定されるものではない。
なお、各実施例及び各比較例において使用した材料は以下の通りである。
<樹脂>
(1)エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)
ARUKEMA社製 2805
東ソー社製 ウルトラセン751
(2)エチレン−酢酸ビニル−グリシジルメタクリレート共重合体(EVA−GMA共重合体)
住友化学社製 ボンドファースト7B
(3)線状超低密度ポリエチレン(VL)
ダウケミカル社製 EG8100
ダウケミカル社製 1140G
<透明基板>
AGC社製、太陽電池用ガラス 白板ガラスエンボス付き厚さ3.2mm
<バックシート>
三菱アルミパッケージング社製バックシート
ポリフッ化ビニル(商品名:テドラー、40μm)/PET(250μm)/ポリフッ化ビニル(40μm)の3層構造を有するバックシート
<太陽電池セル>
E−TON社製、結晶性シリコンセル厚さ250μm
<照射処理>
樹脂封止シートに、EPS−300又はEPS−800の電子線照射装置(日新ハイボルテージ社製)を用いて、表1〜3に示す加速電圧及び照射密度にて電子線処理を行った。
<ゲル分率>
ゲル分率については、沸騰p−キシレン中で、樹脂封止シートを12時間抽出し、不溶解部分の割合を下記式により求めた。
ゲル分率(質量%)=(抽出後の試料質量/抽出前の試料質量)×100
多層の場合は、あらかじめ同方法にて厚さ、樹脂組成が同一のシートを採取し、そのシートに同条件にて照射をしたものをゲル分率測定サンプルとして用いた。
<エチレン系重合体の密度>
JIS−K−7112に準拠して測定した。
<エチレン系重合体のMFR(メルトフローレート)>
JIS−K−7210に準拠して測定した。
<樹脂の融点(mp)>
ティーエイインスツルメント社製の示差走査熱量計「MDSC2920型」を使用し、樹脂約8〜12mgを0℃から200℃まで10℃/分の速度で昇温させ、200℃で5分間溶融保持した後に−50℃以下まで10℃/分の速度で降温し、再度0℃から200℃まで10℃/分で昇温させた際に得られる融解に伴う吸熱ピークの温度を融点とした。
<ブロッキング性>
樹脂シートの梨地面(処理面)と、梨地面でない表面(非処理面)とが重なり合うようにして2枚の樹脂シートを積層させて試験片とした。試験片に500g/12cm2の圧力をかけ、40℃オーブンに3日間静置した。その後、張り付いた処理面と非処理面との剥がし易さを評価した。同様に、試験片に2000g/12cm2の圧力をかけ、40℃オーブンに3日間静置した。その後、張り付いた処理面と非処理面との剥がし易さを評価した。いずれも、張り付いていないものを良好とし、剥がすのに強い力を要するものを不良と判定した。
(エンボス形状の転写率)
得られたシートに梨地付きエンボス形状を転写した場合の転写率を下記式に基づいて算出した。
転写率(%)=(得られたシートのエンボス形状の深さ/ロールのエンボス形状の深さ)×100
以下、各実施例の太陽電池封止シートの製造方法について示す。
<実施例1>
表1に示す材料及び組成比(単位は質量部)で、図1に沿って樹脂封止シートを製造した。3台の押出機(表面層押出機、内層押出機、表面層押出機)を使用して樹脂を溶融し、その押出機に接続されたサーキュラーダイから樹脂をチューブ状に溶融押出し、溶融押出にて形成されたチューブを上向きのダイレクトインフレ方法により製膜し樹脂シートとした。この樹脂シートを、ガイドロール14,16の間に通過させ、20℃の冷風を当てることで冷却固化させることで、樹脂シートSを得た。次いで、冷却固化した樹脂シートSを、50℃に設定した予熱ロール24に密着させることで予熱し、さらに、シート温度が70℃に設定された赤外線ヒータを備えた加熱部22により本加熱して軟質化させた。次いで、軟質化された樹脂シートSをバックアップロール26と梨地ロール12の間に通過させることにより梨地加工を施した。
また、樹脂シートSを加熱して軟質化する工程の前に設けたピンチロール20と、軟質化する工程の後に設けた梨地ロール12(サンドブラスト加工、#200)及びバックアップロール26と、により、軟質化した樹脂シートが延伸しないようにテンションコントロールを行った。ここで、表中の「Aピンチ:Bピンチ比(速度比)」とは、予熱ロール24よりも前(上流ライン)に配置されたピンチ部(Aピンチ)の速度を1としたときに対する、予熱ロール24の後(下流ライン)に配置されたピンチ部(梨地ロール12とバックアップロール26)によってピンチされる部分(Bピンチ)の速度の比をいう。
<実施例2〜4>
梨地ロールの代わりに、エンボスロール(由利ロール社製)の表面をサンドブラスト加工することで、梨地付きエンボスロールとした。梨地ロール12として梨地付きエンボスロールを使用し、表1に示す条件で樹脂シートを製造した点以外は、実施例1と同様にして樹脂シートを得た。ここで、実施例2,4においては、図2に示す三角錐形状(ピラミッド模様)の梨地付きエンボス形状を転写した。実施例2においては、図4に示す三角錐台形状(台形模様)の梨地付きエンボス形状を転写した。
<太陽電池モジュールの製造>
また、得られた樹脂封止シートを用いて、表1に示す各条件に従って太陽電池モジュールを製造した。太陽電池用ガラス板/樹脂封止シート/発電部分/樹脂封止シート/バックシートの順に積層し、LM50型真空ラミネート装置(NPC社)を用いて、表1に示す条件で真空ラミネートすることにより太陽電池モジュールを製造した。得られた太陽電池モジュールについて、封止結果(ラミネート結果)を外観により評価した。セルの段差を完全に封止できていないものや、モジュール内に気泡の存在が確認されたものは不良とし、外観上問題のないものは良好と判断した。評価結果を表1〜3に示す。
以上より、各実施例の太陽電池封止シートは、耐ブロッキング性に優れており、太陽電池モジュールとしてラミネートした際の空気抜け性に優れ、その外観が良好であることが確認された。さらに、実施例2〜4の太陽電池封止シートは梨地付きエンボス形状が転写されたシートであるが、そのエンボス形状の転写率は、いずれも80%以上であり、エンボス形状の転写精度が高いことも確認された。さらに、各実施例における製膜速度を15m/分以上とすることができ、生産効率に優れていることも確認された。
比較例1の太陽電池封止シートは、エンボス形状の深さが20μmのシートであるが、梨地面が形成されていないため、空気抜け性はある程度良好であったものの、耐ブロッキング性は不十分であった。一方、実施例2の太陽電池封止シートは、エンボス形状の深さが20μmであるが、そのエンボス形状の凸部表面の少なくとも一部に梨地面を有しているために、空気抜け性に優れ、外観良好であるだけでなく、耐ブロッキング性も優れていることが確認された。
比較例2の太陽電池封止シートは、ラミネートした際に気泡が残存しており外観不良であり、さらに耐ブロッキング性も不良であった。