以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施の形態」という。)について詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施できる。
本実施の形態における太陽電池モジュールは、透光性絶縁基板と裏面絶縁基板との間の太陽電池セルを樹脂封止シートにより封止してなる太陽電池モジュールであって、前記太陽電池セルに隣接する2枚の樹脂封止シートのうち一方のみが架橋されている太陽電池モジュールである。
図1は本実施の形態における太陽電池モジュールの断面図を模式的に示した図である。図1に示すように、本実施の形態における太陽電池モジュール1は、結晶シリコン等により形成された太陽電池セル4を2枚以上の樹脂封止シート5A及び5Bで挟み積層し、さらに表面を透光性絶縁基板2で、裏面を裏面絶縁基板3でカバーした構造を有している。即ち、透光性絶縁基板2/樹脂封止シート5A/太陽電池セル4/樹脂封止シート5B/裏面絶縁基板3という構成を有する。尤も、図1に示す構成は好ましい実施形態の1つであるため、本実施の形態の太陽電池モジュールは上記の構成には限定されず、本発明の目的を損なわない範囲で上記以外の層を適宜設けることができる。典型的には、接着層、衝撃吸収層、コーティング層、反射防止層、裏面再反射層、光拡散層等を設けることができるがこれらに限定されない。これらの層を設ける位置としては、特に限定はなく、そのような層を設ける目的や、そのような層の特性を考慮のうえ、適切な位置に設けることができる。
本実施の形態のおける太陽電池モジュールは、図1に示す太陽電池セル4に隣接する2枚の樹脂封止シート5A及び5Bのうち、その一方のみが架橋されているものである。通常、太陽電池モジュールは2枚の封止シートを未架橋の状態で積層し、真空ラミネーターにより一体化した後、キュア炉で有機過酸化物による架橋処理を施して高温でのクリープを抑制する(耐クリープ性を付与する)が、本発明者らは、セルに隣接する2枚の樹脂封止シートのうち一方のみを架橋するだけで、十分な耐クリープ性を奏することを発見した。さらに、有機過酸化物を用いて架橋を行う場合、有機過酸化物が熱分解した際に発生するガスの量を低減できるため、真空ラミネーターの真空ポンプの腐食ダメージ及びオイルの汚れを抑制できることが分かった。
本実施の形態における太陽電池モジュールは、特に、太陽電池セルに隣接する2枚の樹脂封止シートのうち、裏面絶縁基板側の樹脂封止シート(図1中の樹脂封止シート5B)のみが架橋されていることがより好ましい。裏面絶縁基板側の樹脂封止シートのみが架橋されていると、耐クリープ性や隙間埋め性がより良好となる傾向にある。
樹脂封止シートが「架橋されている」とは、公知の方法によって樹脂を構成する高分子を物理的、化学的に架橋した結果、ゲル分率が好ましくは3質量%以上となった状態をいう。太陽電池セルに隣接する2枚の樹脂封止シートのうちの架橋された樹脂封止シートのゲル分率は、好ましくは3〜90質量%、より好ましくは3〜86質量%、さらに好ましくは5〜80質量%である。また、架橋されていない樹脂封止シートとは、実質的に架橋が施されていない状態のシートを示し、そのゲル分率は好ましくは3質量%未満、より好ましくは1質量%未満、さらに好ましくは0質量%である。太陽電池セルに隣接する2枚の樹脂封止シートのゲル分率がそれぞれ上記範囲であると、太陽電池モジュールの耐クリープ性及び隙間埋め性のバランスに優れる傾向にある。なお、樹脂封止シートが後述する単層構造又は多層構造のいずれの構造を有する場合であっても、上記ゲル分率は、樹脂封止シート全体の平均のゲル分率(全層ゲル分率)の値を意味する。
樹脂封止シートの架橋方法としては、公知の方法を制限なく使用でき、例えば、有機過酸化物による架橋処理や、電離性放射線(電子線、γ線、紫外線等)の照射による架橋処理等が挙げられ、これらを組み合わせて用いてもよい。
電離性放射線の照射により架橋させる場合は、α線、β線、γ線、中性子線、電子線等の電離性放射線を樹脂封止シートに照射し、架橋させる方法が挙げられる。電子線等の電離性放射線の加速電圧は、樹脂封止シートの厚さにより選択すればよく、例えば、500μmの厚さの場合、樹脂封止シート全体を架橋するときには、加速電圧として300kV以上が必要である。
電子線等の電離性放射線の加速電圧は、架橋処理を施す樹脂層に応じて適宜調節が可能であり、電離性放射線の照射線量は使用される樹脂によって異なるが、一般的に3kGy未満の場合、樹脂封止シート全体を均一に架橋することが困難となる傾向にある。
電離性放射線の加速電圧や照射線量は、所望のゲル分率を得るため適宜調節することができる。架橋の度合いは、ゲル分率を測定することにより評価できる。
上記範囲のゲル分率を達成するためには、電離性放射線の照射量の他、樹脂の種類による架橋度合いの違いや、転移化剤等による架橋促進又は架橋抑制の効果を利用してもよい。
有機過酸化物により架橋させる場合は、架橋剤として有機過酸化物を樹脂中に配合し、或いは含浸させて熱架橋を行う。この場合100〜130℃における半減期が1時間以内の有機過酸化物が好ましい。
有機過酸化物としては、良好な相溶性が得られ、かつ上記半減期を有するものとして、例えば、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、n−ブチル−4,4−ビス(t−ブチルパーオキシ)バレレート、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン等が挙げられる。これらの有機過酸化物を用いた樹脂封止シートは、架橋時間を比較的短くすることができ、かつ、キュア工程を、従来汎用されている100〜130℃における半減期が1時間以上の有機過酸化物を用いた場合と比較して半分程度に短縮することができる。
有機過酸化物の含有量は、樹脂封止シートを構成する樹脂に対して、0〜10質量%であることが好ましく、0〜5質量%であることがより好ましい。
有機過酸化物が配合された樹脂封止シートは、ラミネーション時にシートが軟化し、隙間埋めが行われた後に有機過酸化物の分解及び架橋が促進されるため、樹脂のゲル分率が大きくなっても隙間埋め性が阻害されないという利点を有している。
上述したように「架橋」には電離性放射線の照射を行う方法、及び有機過酸化物を利用する方法が挙げられるが、電離性放射線の照射によって架橋させる方法が特に好ましい。電離性放射線の照射による架橋処理は、有機過酸化物の熱分解によるガスが発生しないため、真空ポンプの腐食ダメージ及びオイルの汚れをさらに低減できる傾向にある。また、有機過酸化物を用いた架橋方法は、ラミネーション工程において有機過酸化物を分解させ、樹脂封止シートの架橋を促進させるための長時間のキュア工程が必要であるため、太陽電池モジュールの生産を高速化しにくいが、電離性放射線の照射による架橋方法の場合は長時間のキュア工程を必要とせず、太陽電池モジュールの生産性を向上させることができる点においても優れている。
[樹脂封止シート]
樹脂封止シートは、樹脂成分に熱等のエネルギーを直接与える方法や、樹脂成分に固有の振動を与え樹脂自身を発熱させる方法等により、樹脂を軟化させ、その軟化状態を利用して他の物質を密着させて封止することができる。樹脂を軟化させる方法としては、樹脂成分への直接加熱、輻射熱等の間接熱、超音波等の振動発熱等を用いる公知の方法を使用することができる。
樹脂封止シートを構成する樹脂としては、有機過酸化物或いは電離性放射線により架橋される樹脂であれば特に限定されないが、良好な透明性、柔軟性、被接着物の接着性や取り扱い性を確保する観点から、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−脂肪族不飽和カルボン酸共重合体、エチレン−脂肪族カルボン酸エステル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物、エチレン−酢酸ビニル−アクリル酸エステル共重合体ケン化物、及びポリオレフィン系樹脂からなる群から選択される少なくとも1種の樹脂を含有することが好ましい。
エチレン−酢酸ビニル共重合体とは、エチレンモノマーと酢酸ビニルとの共重合により得られる共重合体を示す。また、エチレン−脂肪族不飽和カルボン酸共重合体とは、エチレンモノマーと、脂肪族不飽和カルボン酸から選ばれる少なくとも1種のモノマーとの共重合により得られる共重合体を示す。さらに、エチレン−脂肪族不飽和カルボン酸エステル共重合体とは、エチレンモノマーと、脂肪族不飽和カルボン酸エステルから選ばれる少なくとも1種のモノマーとの共重合により得られる共重合体を示す。
上記共重合は、高圧法、溶融法等の公知の方法により行うことができ、重合反応の触媒としてマルチサイト触媒やシングルサイト触媒等を用いることができる。また、上記共重合体において、各モノマーの結合形状は特に限定されず、ランダム結合、ブロック結合等の結合形状を有するポリマーを使用することができる。なお、光学特性の観点から、上記共重合体としては、高圧法を用いてランダム結合により重合した共重合体が好ましい。
上記エチレン−酢酸ビニル共重合体は、光学特性、接着性、柔軟性の観点から、共重合体を構成する全モノマー中の酢酸ビニルの割合が、10〜40質量%であることが好ましく、13〜35質量%であることがより好ましく、15〜30質量%であることが更に好ましい。また、樹脂封止シートの加工性の観点より、JIS−K−7210に準じて測定されるメルトフローレートの値(以下、「MFR」とも略記される。)(190℃、2.16kg)が0.3g/10min〜30g/10minであることが好ましく、0.5g/min〜30g/minであることがより好ましく、0.8g/min〜25g/minであることが更に好ましい。
上記エチレン−脂肪族不飽和カルボン酸共重合体としては、例えば、エチレン−アクリル酸共重合体(以下、「EAA」とも略記される。)、エチレン−メタクリル酸共重合体(以下、「EMAA」とも略記される。)等が挙げられる。また、上記エチレン−脂肪族不飽和カルボン酸エステル共重合体としては、例えば、エチレン−アクリル酸エステル共重合体、エチレン−メタクリル酸エステル共重合体等が挙げられる。ここで、アクリル酸エステル及びメタクリル酸エステルとしては、メタノール、エタノール等の炭素数1〜8のアルコールとのエステルが好適に使用される。
これらの共重合体は、3成分以上のモノマーを共重合してなる多元共重合体であってもよい。上記多元共重合体としては、例えば、エチレン、脂肪族不飽和カルボン酸及び脂肪族不飽和カルボン酸エステルから選ばれる少なくとも3種類のモノマーを共重合してなる共重合体が挙げられる。
上記エチレン−脂肪族不飽和カルボン酸共重合体は、共重合体を構成する全モノマー中の脂肪族不飽和カルボン酸の割合が、3〜35質量%であることが好ましい。また、MFR(190℃、2.16kg)は、0.3g/10min〜30g/10minであることが好ましく、0.5g/10min〜30g/10minであることがより好ましく、0.8g/10min〜25g/10minであることが更に好ましい。
上記エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物としては、例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合体の部分或いは完全ケン化物が挙げられ、エチレン−酢酸ビニル−アクリル酸エステル共重合体ケン化物としては、エチレン−酢酸ビニル−アクリル酸エステル共重合体の部分或いは完全ケン化物等が挙げられる。
上記各ケン化物中の水酸基の割合は、樹脂封止シートを構成する樹脂中において、0.1質量%〜15質量%であることが好ましく、より好ましくは0.1質量%〜10質量%、更に好ましくは0.1質量%〜7質量%である。水酸基の割合が0.1質量%以上であると接着性が良好となる傾向にあり、15質量%以下であると相溶性が良好となる傾向にあり、最終的に得られる樹脂封止シートが白濁化するリスクを低減することができる。
水酸基の割合は、エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物、エチレン−酢酸ビニル−アクリル酸エステル共重合体ケン化物の元のオレフィン系重合体樹脂と、この樹脂のVA%(NMR測定による酢酸ビニル共重合比)と、そのケン化度と、樹脂中における配合割合とから算出することができる。
ケン化前のエチレン−酢酸ビニル共重合体及びエチレン−酢酸ビニル−アクリル酸エステル共重合体中の酢酸ビニルの含有量は、良好な光学特性、接着性、及び柔軟性を得る観点から、共重合体全体に対して、10〜40質量%であることが好ましく、13〜35質量%であることがより好ましく、15〜30質量%であることが更に好ましい。また、エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物及びエチレン−酢酸ビニル−アクリル酸エステル共重合体ケン化物のケン化度は、良好な透明性及び接着性を得る観点から、10〜70%であることが好ましく、15〜65%であることがより好ましく、20〜60%であることが更に好ましい。
ケン化方法としては、例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−酢酸ビニル−アクリル酸エステル共重合体のペレット或いは粉末をメタノール等の低級アルコール中でアルカリ触媒を用いてケン化する方法、トルエン、キシレン、ヘキサンのような溶媒を用いて予め共重合体を溶解した後、少量のアルコールとアルカリ触媒を用いてケン化する方法等が挙げられる。また、ケン化した共重合体に水酸基以外の官能基を含有するモノマーをグラフト重合してもよい。
上記各ケン化物は、側鎖に水酸基を有しているため、ケン化前の共重合体と比較して接着性が向上している。また、水酸基の量(ケン化度)を調整することにより、透明性や接着性を制御することができる。
また、樹脂封止シートを構成する樹脂中には、グリシジルメタクリレートを含むエチレン共重合体が含まれていてもよい。グリシジルメタクリレートを含むエチレン共重合体とは、反応サイトとしてエポキシ基を有するグリシジルメタクリレートとのエチレンコポリマー及びエチレンターポリマーを示し、例えば、エチレン−グリシジルメタクリレート共重合体、エチレン−グリシジルメタクリレート−酢酸ビニル共重合体、エチレン−グリシジルメタクリレート−アクリル酸メチル共重合体等が挙げられる。上記化合物は、グリシジルメタクリレートの反応性が高いため安定した接着性を発揮でき、また、ガラス転移温度が低く柔軟性が良好となる傾向にある。
上記ポリオレフィン系樹脂としては、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリブテン系樹脂が好ましい。ここでポリエチレン系樹脂とは、エチレンの単独重合体又はエチレンと他の1種若しくは2種以上のモノマーとの共重合体を示す。また、ポリプロピレン系樹脂とは、プロピレンの単独重合体又はプロピレンと他の1種若しくは2種以上のモノマーとの共重合体を示す。
上記ポリエチレン系樹脂としては、ポリエチレン、エチレン−α−オレフィン共重合体等が挙げられる。
上記ポリエチレンとしては、低密度ポリエチレン(LDPE)、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、線状超低密度ポリエチレン(「VLDPE」、「ULDPE」と称される。)等が挙げられる。
上記エチレン−α−オレフィン共重合体は、エチレンと、炭素数3〜20のα−オレフィンから選ばれる少なくとも1種とからなる共重合体であることが好ましく、エチレンと、炭素数3〜12のα−オレフィンから選ばれる少なくとも1種とからなる共重合体であることがより好ましい。上記α−オレフィンとしては、例えば、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−へキセン、1−オクテン、4−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、1−エイコサン等が挙げられ、これらを1種又は2種以上を併用することができる。また、共重合体を構成する全モノマー中のα−オレフィンの割合(仕込みモノマー基準)は、6〜30質量%であることが好ましい。さらに、上記エチレン−α−オレフィン共重合体は、軟質の共重合体であることが好ましく、X線法による結晶化度が30%以下であることが好ましい。
また、上記エチレン−α−オレフィン共重合体としては、エチレンと、プロピレンコモノマー、ブテンコモノマー、ヘキセンコモノマー及びオクテンコモノマーから選ばれる少なくとも1種のコモノマーとの共重合体が、一般に入手が容易であり、好適に使用できる。
上記ポリエチレン系樹脂は、シングルサイト系触媒、マルチサイト系触媒等の公知の触媒を用いて重合することができ、シングルサイト系触媒を用いて重合することが好ましい。また上記ポリエチレン系樹脂は、クッション性の観点から、密度が0.860〜0.920g/cm3であることが好ましく、0.870〜0.915g/cm3であることがより好ましく、0.870〜0.910g/cm3であること更に好ましい。密度が0.920g/cm3以下であると、クッション性が良好となる傾向にある。なお、密度が0.920g/cm3を超えると透明性が悪化するおそれがある。高密度のポリエチレン系樹脂を用いる場合には、低密度のポリエチレン系樹脂を、例えば、30質量%程度の割合で添加することで透明性を改善することもできる。
上記ポリエチレン系樹脂は、樹脂封止シートの加工性の観点から、MFR(190℃、2.16kg)が0.5g/10min〜30g/10minであることが好ましく、0.8g/10min〜30g/10minであることがより好ましく、1.0g/10min〜25g/10minであることが更に好ましい。
上記ポリエチレン系樹脂としては、結晶/非晶構造(モルフォロジ−)をナノオーダーで制御したポリエチレン系共重合体を使用することもできる。
上記ポリプロピレン系樹脂としては、ポリプロピレン、プロピレン−α−オレフィン共重合体、プロピレンとエチレンとα−オレフィンとの3元共重合体等が挙げられる。
上記プロピレン−α−オレフィン共重合体とは、プロピレンとα−オレフィンから選ばれる少なくとも1種とからなる共重合体を示す。上記プロピレン−α−オレフィン共重合体は、プロピレンと、エチレン及び炭素数4〜20のα−オレフィンから選ばれる少なくとも1種とからなる共重合体が好ましく、プロピレンと、エチレン及び炭素数4〜8のα−オレフィンから選ばれる少なくとも1種からなる共重合体がより好ましい。ここで炭素数4〜20のα−オレフィンとしては、例えば、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−へキセン、1−オクテン、4−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、1−エイコサン等が挙げられ、これらを1種又は2種以上を併用することができる。また、上記プロピレン−α−オレフィン共重合体を構成する全モノマー中のエチレン及び/又はα−オレフィンの含有割合(仕込みモノマー基準)は、6〜30質量%であることが好ましい。さらに、上記プロピレン−α−オレフィン共重合体は、軟質の共重合体であることが好ましく、X線法による結晶化度が30%以下であることが好ましい。
上記プロピレン−α−オレフィン共重合体としては、プロピレンと、エチレンコモノマー、ブテンコモノマー、ヘキセンコモノマー及びオクテンコモノマーから選ばれる少なくとも1種類のコモノマーとの共重合体が、一般に入手が容易であり、好適に使用できる。
上記ポリプロピレン系樹脂は、シングルサイト系触媒、マルチサイト系触媒等の公知の触媒を用いて重合することができ、シングルサイト系触媒を用いて重合することが好ましい。また上記ポリプロピレン系樹脂は、クッション性の観点から、密度が0.860〜0.920g/cm3であることが好ましく、0.870〜0.915g/cm3であることがより好ましく、0.870〜0.910g/cm3であることが更に好ましい。密度が0.920g/cm3以下であると、クッション性が良好となる傾向にある。なお、密度が0.920g/cm3を超えると透明性が悪化するおそれがある。
上記ポリプロピレン系樹脂は、樹脂封止シートの加工性の観点から、MFR(230℃、2.16kgf)が0.3g/10min〜15.0g/10minであることが好ましく、0.5g/10min〜12g/10minであることがより好ましく、0.8g/10min〜10g/10minであることが更に好ましい。
上記ポリプロピレン系樹脂としては、結晶/非晶構造(モルフォロジ−)をナノオーダーで制御したポリプロピレン系共重合体を使用することもできる。
上記ポリプロピレン系樹脂としては、プロピレンと、エチレン、ブテン、ヘキセン、オクテン等のα−オレフィンとの共重合体、又は、プロピレンと、エチレンと、ブテン、ヘキセン、オクテン等のα−オレフィンとの3元共重合体等が好適に使用できる。これらの共重合体は、ブロック共重合体、ランダム共重合体等のいずれの形態でもよく、好ましくはプロピレンとエチレンとのランダム共重合体、又は、プロピレンとエチレンとブテンとのランダム共重合体である。
上記ポリプロピレン系樹脂は、チーグラー・ナッタ触媒のような触媒で重合された樹脂だけでなく、メタロセン系触媒等で重合された樹脂でよく、例えば、シンジオタクチックポリプロピレンや、アイソタクティックポリプロピレン等も使用できる。また、ポリプロピレン系樹脂を構成する全モノマー中のプロピレンの割合(仕込みモノマー基準)は、60〜80質量%であることが好ましい。さらに、熱収縮性が優れるという観点から、ポリプロピレン系樹脂を構成する全モノマー中のプロピレン含有割合(仕込みモノマー基準)が60〜80質量%であり、エチレン含有割合(仕込みモノマー基準)が10〜30質量%であり、ブテン含有割合(仕込みモノマー基準)が5〜20質量%である3元共重合体が好ましい。
また上記ポリプロピレン系樹脂としては、ポリプロピレン系樹脂の総量に対して50質量%以下の高濃度のゴム成分を均一微分散させてなる樹脂を用いることもできる。
樹脂封止シートを構成する樹脂が上記ポリプロピレン系樹脂を含有することで、硬さ、耐熱性等の特性が一層向上する傾向にある。
また、ポリブテン系樹脂は、ポリプロピレン系樹脂との相溶性が特に優れるため、樹脂封止シートの硬さや腰の調整を目的として、上記ポリプロピレン系樹脂と併用することが好ましい。上記ポリブテン系樹脂としては、結晶性であり、ブテンと、エチレン、プロピレン及び炭素数5〜8のオレフィン系化合物から選ばれる少なくとも1種からなる共重合体であり、かつ、ポリブテン系樹脂を構成する全モノマー中のブテンの含有量が70モル%以上である高分子量のポリブテン系樹脂が好適に使用できる。
上記ポリブテン系樹脂は、MFR(190℃、2.16kg)が0.1g/10min〜10g/10minであることが好ましい。また、ビカット軟化点が40〜100℃であることが好ましい。ここで、ビカット軟化点はJIS K7206−1982に従って測定される値である。
本実施の形態の樹脂封止シートは、単層構造、多層構造のいずれの構造を有していてもよい。以下、各構造について説明する。
[単層構造]
樹脂封止シートが単層構造を有する場合、良好な透明性、柔軟性、被接着物の接着性や取扱性を確保する観点から、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−脂肪族不飽和カルボン酸共重合体、エチレン−脂肪族不飽和カルボン酸エステル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物、エチレン−酢酸ビニル−アクリル酸エステル共重合体ケン化物、及びポリオレフィン系樹脂よりなる群から選ばれる少なくとも1種の樹脂からなる層であることが好ましい。
樹脂封止シートを構成する樹脂層に、接着性樹脂としてエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物、エチレン−酢酸ビニル−アクリル酸エステル共重合体ケン化物が含有されている場合は、そのケン化度及び含有量は適宜調整でき、これにより被封止物との接着性を制御できる。接着性と光学特性の観点から、樹脂層中のエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物、エチレン−酢酸ビニル−アクリル酸エステル共重合体ケン化物の含有量は、3〜60質量%であることが好ましく、3〜55質量%であることがより好ましく、5〜50質量%であることが更に好ましい。
[多層構造]
本実施の形態における樹脂封止シートは、表面層と、前記表面層に積層された内層とを含む少なくとも2層以上の多層構造を有していてもよい。ここで、樹脂封止シートの両表面を形成する2層を「表面層」といい、それ以外を「内層」という。
多層構造を有する場合には、接着性樹脂としてエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物、エチレン−酢酸ビニル−アクリル酸エステル共重合体ケン化物を含有する樹脂層が被封止物と接触する層(表面層の少なくとも1層)として形成されていることが好ましい。また、表面層としては、上述したケン化物のみからなる層でもよいが、良好な透明性、柔軟性、被接着物の接着性や取扱性を確保する観点から、ケン化物と、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−脂肪族不飽和カルボン酸共重合体、エチレン−脂肪族不飽和カルボン酸エステル共重合体、及びポリオレフィン系樹脂よりなる群から選ばれる少なくとも1種の樹脂との混合樹脂からなる層であることが好ましい。
被封止物と接触する表面層の層比率は、良好な接着性を確保する観点から、樹脂封止シートの全厚に対し、少なくとも5%以上の厚さを有していることが好ましい。厚さが5%以上であると、上述した単層構造の場合と同等の接着性が得られる傾向にある。
内層を構成する樹脂としては、特に限定されず、上述した表面層に含まれる樹脂に加えて、他のいかなる樹脂を用いてもよい。内層には、他の機能を付与することを目的として、樹脂材料、混合物、添加物等を適宜選定できる。例えば、新たにクッション性を付与する目的として、内層として熱可塑性樹脂を含有する層を設けてもよい。
内層として用いられる熱可塑性樹脂としては、ポリオレフィン系樹脂、スチレン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、塩素系エチレンポリマー系樹脂、ポリアミド系樹脂等が挙げられ、生分解性を有したものや植物由来原料系のもの等も含まれる。上記の中でも、結晶性ポリプロピレン系樹脂との相溶性がよく、透明性が良好な水素添加ブロック共重合体樹脂、プロピレン系共重合樹脂、エチレン系共重合体樹脂が好ましく、水素添加ブロック共重合体樹脂及びプロピレン系共重合樹脂がより好ましい。
水素添加ブロック共重合体樹脂としては、ビニル芳香族炭化水素と共役ジエンのブロック共重合体が好ましい。ビニル芳香族炭化水素としては、スチレン、o−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、1,3−ジメチルスチレン、α−メチルスチレン、ビニルナフタレン、ビニルアントラセン、1,1−ジフェニルエチレン、N,N−ジメチル−p−アミノエチルスチレン、N,N−ジエチル−p−アミノエチルスチレン等が挙げられ、特にスチレンが好ましい。これらは単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。共役ジエンとは、1対の共役二重結合を有するジオレフィンであり、例えば、1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン(イソプレン)、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく2種以上を混合して用いてもよい。
プロピレン系共重合体樹脂としては、プロピレンとエチレン又は炭素原子数4〜20のα−オレフィンとから得られる共重合体が好ましい。そのエチレン又は炭素原子数4〜20のα−オレフィンの含有量は6〜30質量%が好ましい。この炭素原子数4〜20のα−オレフィンとしては、1−ブテン、1−ペンテン、1−へキセン、1−オクテン、4−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、1−エイコサン等が挙げられる。
プロピレン系共重合体樹脂は、マルチサイト系触媒、シングルサイト系触媒、その他、いずれの触媒を用いて重合されたものでもよい。さらにポリマーの結晶/非晶構造(モルフォロジ−)をナノオーダーで制御したプロピレン系共重合体を使用できる。
エチレン系共重合体樹脂は、マルチサイト系触媒、シングルサイト系触媒、その他、いずれの触媒で重合されたものでもよい。また、ポリマーの結晶/非晶構造(モルフォロジ−)をナノオーダーで制御したエチレン系共重合体を使用できる。
内層の材料としてポリエチレン系樹脂を用いる場合、ポリエチレン系樹脂の密度は、適度なクッション性を得る観点から、0.860〜0.920g/cm3であることが好ましく、0.870〜0.915g/cm3であることがより好ましく、0.870〜0.910g/cm3であることが更に好ましい。密度が0.920g/cm3以上の樹脂層を被封止物と接触しない層(内層)として形成した場合、透明性が悪化する傾向にある。
また、樹脂封止シートは、中央層の両面に、中央層に対して対称の配置となるように同一成分の層が1又は2以上積層された構造を有していてもよい。このような樹脂封止シートとしては、例えば、2層の表面層(以下、「スキン層」と記載する場合がある。)と3層の内層からなる樹脂封止シートであって、2層の表面層が同一成分からなり、表面層に隣接する2層の内層(以下、「ベース層」と記載する場合がある。)が同一成分からなる樹脂封止シートが挙げられる。
上記構造を有する樹脂封止シートにおいて、表面層の膜厚は、樹脂封止シート全体の膜厚に対して5〜40%であることが好ましく、上記ベース層の膜厚は、樹脂封止シート全体の膜圧に対して50〜90%であることが好ましく、ベース層に挟まれた内層(以下、「コア層」と記載する場合がある。)の膜厚は、樹脂封止シート全体の膜厚に対して5〜40%であることが好ましい。
次に、樹脂封止シート加工性の観点について検討する。樹脂封止シートを構成する樹脂のMFR(190℃、2.16kg)は、良好な加工性を確保する観点から、0.5〜30g/10minであることが好ましく、0.8〜30g/10minであることがより好ましく、1.0〜25g/10minであることが更に好ましい。樹脂封止シートが2層以上の多層構造の場合、内層(ベース層やコア層)を構成する樹脂のMFRは、樹脂封止シート加工性の観点から、表面層のMFRより低いことが好ましい。
本実施の形態における樹脂封止シートには、特性を損なわない範囲で、各種添加剤、例えば、カップリング剤、防曇剤、可塑剤、酸化防止剤、界面活性剤、着色剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、結晶核剤、滑剤、アンチブロッキング剤、無機フィラー、架橋調整剤等を添加してもよい。
樹脂封止シートには、安定した接着性を確保する目的でカップリング剤を添加してもよい。上記カップリング剤の添加量及び種類は、所望の接着性の度合いや被接着物の種類によって適宜選択できる。上記カップリング剤の添加量としては、カップリング剤を添加する樹脂層の全質量基準で、0.01〜5質量%であることが好ましく、0.03〜4質量%であることがより好ましく、0.05〜3質量%であることが更に好ましい。上記カップリング剤の種類としては、樹脂層に、太陽電池セルやガラスへの良好な接着性を付与する物質が好ましく、例えば、有機シラン化合物、有機シラン過酸化物、有機チタネート化合物等が挙げられる。また、これらのカップリング剤は、押出機内にて樹脂に注入混合する、押出機ホッパー内に混合して導入する、マスターバッチ化して混合して添加する等の公知の添加方法で添加することができる。ただし、押出機を経由する場合、押出機内の熱や圧力等によりカップリング剤の機能が阻害されることがあるため、カップリング剤の種類によっては添加量を適宜調整する必要がある。また、カップリング剤の種類は、樹脂封止シートの透明性や分散具合の観点、押出機への腐食や押出安定性の観点等を考慮して、適宜選択すればよい。好ましいカップリング剤としては、γ−クロロプロピルメトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニル−トリス(β−メトキシエトキシ)シラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エトキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラングリシドキシプロピルトリエトキシシラン等の不飽和基やエポキシ基を有するものが挙げられる。
また、樹脂封止シートには、紫外線吸収剤、酸化防止剤、変色防止剤等を添加することができる。特に長期に渡って透明性や接着性を維持する必要がある場合、紫外線吸収剤、酸化防止剤、変色防止剤等を添加することが好ましい。これらの添加剤を樹脂に添加する場合、その添加量は、添加する樹脂の総量に対して10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましい。
紫外線吸収剤としては、例えば、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−5−スルホベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−ドデシロキシベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン等が挙げられる。酸化防止剤としては、フェノール系、イオウ系、リン系、アミン系、ヒンダードフェノール系、ヒンダードアミン系、ヒドラジン系等の酸化防止剤が挙げられる。
これらの紫外線吸収剤、酸化防止剤、変色防止剤等は樹脂封止シートを構成する樹脂中に、好ましくは0〜10質量%、より好ましくは0〜5質量%を添加する。エチレン系樹脂に添加する場合、シラノール基を有する樹脂をマスターバッチ化して混合することで、さらに接着性を付与することもできる。添加方法としては、特に限定されず、液体の状態で溶融樹脂に添加する、直接対象樹脂層に練り込み添加する、シーティング後に塗布する等の方法が挙げられる。
次に、樹脂封止シートの光学特性について説明する。光学特性の指標としてはヘイズ値が用いられる。ヘイズ値が10.0%以下であると樹脂封止シートにより封止された被封止物を外観上確認できると同時に、太陽電池の発電素子を封止した場合に、実用上十分な発電効率が得られるため好ましい。上記観点から、ヘイズ値は9.5%以下であることが好ましく、9.0%以下であることがより好ましい。ここで、ヘイズ値は、ASTM D−1003に準拠して測定することができる。
また、樹脂封止シートは、実用上十分な発電効率を確保するために、全光線透過率が85%以上であることが好ましく、87%以上であることがより好ましく、88%以上であることが更に好ましい。ここで、全光線透過率は、ASTM D−1003に準拠して測定することができる。
樹脂封止シートは、厚さが50〜1500μmであることが好ましく、100〜1000μmであることがより好ましく、150〜800μmであることが更に好ましい。厚さが50μm未満であると、構造的にクッション性が乏しい場合や、作業性の観点で、耐久性や強度に問題が生ずる傾向にある。一方、厚さが1500μmを超えると、生産性の低下や密着性の低下を招来するという問題が生じる傾向にある。
[樹脂封止シートの製造方法]
樹脂封止シートの製造方法としては、特に制限はないが、例えば、以下の方法が挙げられる。まず、樹脂を押出機で溶融し、ダイより溶融樹脂を押出し、急冷固化して原反を得る。押出機としては、Tダイ、環状ダイ等が用いられる。樹脂封止シートが多層構造を有する場合には、環状ダイが好ましい。
原反の表面には、最終的に目的とする樹脂封止シートの形態に応じてエンボス加工処理を施してもよい。例えば、両面にエンボス加工処理を行う場合には、2本の加熱エンボスロール間に、片面エンボス加工処理を行う場合には、片方のみ加熱されたエンボスロール間に、前記原反を通過させることによりエンボス加工処理を施すことができる。樹脂封止シートが多層構造の場合、多層Tダイ法、多層環状(サーキュラー)ダイ法が好適であり、その他公知のラミネート方法によって多層構造を形成してもよい。
さらに、後処理として、例えば寸法安定化のためのヒートセット、コロナ処理、プラズマ処理、他種樹脂封止シート等とのラミネーションを行ってもよい。
樹脂封止シートを構成する樹脂に対する架橋処理、すなわち電離性放射線照射処理や有機過酸化物の利用等による熱処理は、それぞれの場合に応じてエンボス加工処理の前工程又は後工程として行うか選定することができる。
[透光性絶縁基板]
透光性絶縁基板としては、特に制限はないが、太陽電池モジュールの最表層に位置するため、耐候性、撥水性、耐汚染性、機械強度をはじめとして、太陽電池モジュールの屋外暴露における長期信頼性を確保するための性能を具備することが好ましい。また、太陽光を有効に活用するために、光学ロスの小さい、透明性の高いシートであることが好ましい。
透光性絶縁基板の材料としては、ポリエステル樹脂、フッ素樹脂、アクリル樹脂、環状オレフィン(共)重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体等からなる樹脂フィルムや、ガラス基板等が挙げられ、中でも、耐候性、耐衝撃性、コストのバランスの観点からガラス基板が好ましい。
樹脂フィルムとして特に好適なのは、透明性、強度、コスト等の点で優れたポリエステル樹脂、とりわけポリエチレンテレフタレート樹脂である。
また、特に耐侯性の良好なフッ素樹脂も好適に用いられる。具体的には、四フッ化エチレン−エチレン共重合体(ETFE)、ポリフッ化ビニル樹脂(PVF)、ポリフッ化ビニリデン樹脂(PVDF)、ポリ四フッ化エチレン樹脂(TFE)、四フッ化エチレン−六フッ化プロピレン共重合体(FEP)、ポリ三フッ化塩化エチレン樹脂(CTFE)が挙げられる。耐候性の観点からはポリフッ化ビニリデン樹脂が好ましいが、耐候性及び機械的強度の両立をする観点からは四フッ化エチレン−エチレン共重合体が好ましい。また、樹脂封止シート等の他の層を構成する材料との接着性の改良のために、コロナ処理、プラズマ処理を透光性絶縁基板に行うことが好ましい。また、機械的強度向上のために、延伸処理が施してあるシート、例えば2軸延伸のポリプロピレンシートを用いることも可能である。
透光性絶縁基板としてガラス基板を用いる場合には、波長350〜1400nmの光の全光線透過率が80%以上であることが好ましく、より好ましくは90%以上である。かかるガラス基板としては赤外部の吸収の少ない白板ガラスを使用するのが一般的であるが、青板ガラスであっても厚さが3mm以下であれば太陽電池モジュールの出力特性への影響は少ない。また、ガラス基板の機械的強度を高めるために熱処理により強化ガラスを得ることができるが、熱処理無しのフロート板ガラスを用いてもよい。また、ガラス基板の受光面側に反射を抑えるために反射防止のコーティングを施してもよい。
[裏面絶縁基板]
裏面絶縁基板としては、特に制限はないが、太陽電池モジュールの最表層に位置するため、上述の透光性絶縁基板と同様に、耐候性、機械強度等の諸特性を求められる。従って透光性絶縁基板と同様の材質で裏面絶縁基板を構成してもよい。すなわち、透光性絶縁基板において用いることができる上述の各種材料を、裏面絶縁基板においても用いることができる。特に、ポリエステル樹脂、及びガラス基板を好ましく用いることができ、中でも、耐候性、コストの観点から、ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)がより好ましい。
裏面絶縁基板は、太陽光の通過を前提としないため、透光性絶縁基板で求められていた透明性(透光性)は必ずしも要求されない。そこで、太陽電池モジュールの機械的強度を増すために、或いは、温度変化による歪、反りを防止するために、補強板を張り付けてもよい。例えば、鋼板、プラスチック板、FRP(ガラス繊維強化プラスチック)板等を好ましく使用することができる。
また、裏面絶縁基板は、2層以上からなる多層構造を有していてもよい。多層構造としては、例えば、中央層の両面に、中央層に対して対称の配置となるように同一成分の層が1又は2以上積層された構造等が挙げられる。そのような構造を有するものとしては、例えば、PET/アルミナ蒸着PET/PET、PVF(商品名:テドラー)/PET/PVF、PET/AL箔/PET等が挙げられる。
[太陽電池セル]
太陽電池セルは、半導体の光起電力効果を利用して発電できるものであれば特に制限はなく、たとえば、シリコン(単結晶系、多結晶系、非結晶(アモルファス)系)、化合物半導体(3−5族、2−6族、その他)等を用いることができ、中でも、発電性能とコストとのバランスの観点から、多結晶シリコンが好ましい。
[太陽電池モジュールの製造方法]
本実施の形態における太陽電池モジュールの製造方法としては、特に制限はなく、例えば、透光性絶縁基板/樹脂封止シート/太陽電池セル/樹脂封止シート/裏面絶縁基板の順に重ね、真空ラミネート装置を用いて150℃、15分間の条件で真空ラミネートすることにより製造することができる。
太陽電池モジュールにおける、各部材の厚さとしては特に限定されないが、透光性絶縁基板の厚さは、耐候性、耐衝撃性の観点から好ましくは3mm以上、裏面絶縁基板の厚さは、絶縁性の観点から好ましくは75μm以上、太陽電池セルの厚さは、発電性能とコストのバランスの観点から好ましくは140〜250μm、樹脂封止シートの厚さは、クッション性、封止性の観点から好ましくは250μm以上である。
以下、具体的な実施例及び比較例を挙げて説明するが、本実施の形態はこれらの実施例のみに限定されるものではない。実施例1〜4及び比較例1〜2においては、所定のベース層をスキン層(表面層)で挟み込み多層構造を有する樹脂封止シートを作製した。
実施例及び比較例における各物性の測定方法及び評価方法は以下の通りである。
<ゲル分率>
全層ゲル分率については、沸騰p−キシレン中で、樹脂封止シートを12時間抽出し、不溶解部分の割合を下記式により求めた。
ゲル分率(質量%)=(抽出後の試料質量/抽出前の試料質量)×100
<発電部分隙間埋め評価>
太陽電池用ガラス板(AGC社製白板ガラス5cm×10cm角:厚さ3mm)/樹脂封止シート/発電部分(多結晶シリコンセル)(厚さ250μm)/樹脂封止シート/太陽電池用ガラス板の順に重ね、LM50型真空ラミネート装置(NPC社)を用いて150℃、15分間の条件で真空ラミネートすることで太陽電池モジュールを作製し、発電部分の多結晶シリコンセルと樹脂封止シートとの接触状況を目視にて確認した。
耐クリープ性の評価としては、以下の高温高湿試験及び温度サイクル試験を行った。
<高温高湿試験>
6インチ多結晶セルを6枚(2列x3枚)に配置し、AGC社製白板ガラス(530mm×350mm角:厚さ3mm)/樹脂封止シート/発電部分(多結晶シリコンセル(厚さ250μm)/樹脂封止シート/バックシート(PET製180μm)の順に重ね、LM50型真空ラミネート装置(NPC社)を用いて150℃、15分間の条件で真空ラミネートすることで太陽電池モジュールを作製した。作製したモジュールを試験槽内に設置し、試験温度:85℃、相対湿度:85%に保持し、各時間経過後のモジュールの外観をチェックした。
<温度サイクル試験>
6インチ多結晶セルを6枚(2列x3枚)に配置し、AGC社製白板ガラス(530mm×350mm角:厚さ3mm)/樹脂封止シート/発電部分(多結晶シリコンセル(厚さ250μm)/樹脂封止シート/バックシート(PET製180μm)の順に重ね、LM50型真空ラミネート装置(NPC社)を用いて150℃、15分間の条件で真空ラミネートすることで太陽電池モジュールを作製した。作製したモジュールを試験槽内に設置し、試験槽を閉じ、モジュールの周囲の空気を2m/s以上の速度で循環させ、試験槽内の温度を−40℃〜+85℃との間で周期的に変化させた。1サイクルを4時間とし、最低温度及び最高温度で30分ずつ保持し、温度サイクル行った。200回等の所定回数後のモジュールの外観をチェックした。
<真空ポンプのオイル状態確認>
新品のオイルを入れてから通算運転時間で100時間経過後の真空ポンプ内のオイルをドレインから抜き出し、オイルの色を確認した。オイル交換の目処として色が茶色を呈した頃を目処とした。
<照射処理>
樹脂封止シートに電子線処理をEPS−300もしくはEPS−800の電子線照射装置(日新ハイボルテージ社製)を用いて種々の加速電圧、照射密度で処理した。
<エチレン系重合体のMFR>
JIS―K−7210に準拠して測定した。
実施例及び比較例において用いた各材料は以下の通りである。
<樹脂封止シート>
(1)エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)
東ソー社製 EVA751
(2)エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物
東ソー社製 メルセン6410
<有機過酸化物>
吉富社製 ルパール101
<透光性絶縁基板>
AGC社製 太陽電池用ガラス
<裏面絶縁基板(バックシート)>
三菱アルミパッケージング社製バックシート
<太陽電池セル>
E−TON社製 結晶性シリコンセル
以下、実施例1〜4及び比較例1〜2の樹脂封止シートの製造方法について示す。
<実施例1〜4>
表1に示す樹脂を用いて、2台の押出機(スキン層押出機、ベース層押出機)を使用して樹脂を溶融し、その押出機に接続された環状ダイから樹脂をチューブ状に溶融押出し、溶融押出にて形成されたチューブを水冷リングを用いて急冷することにより実施例1〜4の樹脂封止シートを得た。有機過酸化物を導入するにあたっては導入する樹脂にあらかじめ5質量%程度の濃度で混練してマスターバッチ化して、配合したい量に希釈して使用した。なお、表中、厚さ比率は、樹脂封止シート全体の厚さを100とした場合の、各層の厚さの比を示す。
実施例1及び2の樹脂封止シートに対しては、架橋剤として有機過酸化物を用いた。実施例3及び4の樹脂封止シートに対しては、表1に示される「照射条件」に従い、電子線架橋処理を行った。得られた各樹脂封止シートについてゲル分率の評価を行った。
得られた樹脂封止シートを用いて、表1に示す各条件に従って太陽電池モジュールを製造し、上述した各評価試験を行った。評価結果を表1に示す。なお、真空ラミネーターとしては、NPC社製太陽電池用真空ラミネーターLM50を用いた。
<比較例1及び2>
表1に示す樹脂を用いて、実施例と同様に各条件に従って樹脂封止シートを製造した。比較例1の樹脂封止シートに対しては架橋剤として有機過酸化物を用いて架橋処理を行い、比較例2の樹脂封止シートに対しては架橋処理を行わなかった。得られた各樹脂封止シートについてゲル分率の評価を行った。
得られた樹脂封止シートを用いて、表1に示す各条件に従って太陽電池モジュールを製造し、上述した各評価試験を行った。評価結果を表1に示す。なお、真空ラミネーターとしては、NPC社製太陽電池用真空ラミネーターLM50を用いた。
表1の結果から明らかなように、本実施の形態の太陽電池モジュール(実施例1〜4)は、太陽電池セルに隣接する2枚の樹脂封止シートのうち一方のみが架橋されているため、真空ラミネーターの真空ポンプの汚染が少なく、且つ、耐クリープ性及び隙間埋め性のバランスに優れたものであった。