JP2010222541A - 樹脂封止シート - Google Patents
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Abstract
【課題】接着性を付与するための長時間の熱キュア工程を必要としない樹脂封止シートを提供すること。
【解決手段】表面処理を施すことにより表面自由エネルギーが40mN/m以上に調整された樹脂封止シート。
【選択図】なし
【解決手段】表面処理を施すことにより表面自由エネルギーが40mN/m以上に調整された樹脂封止シート。
【選択図】なし
Description
本発明は、太陽電池の部材を保護するための封止材として好適に用いられる樹脂封止シートに関する。
近年、世界的な温暖化現象により環境に対する意識が高まり、炭酸ガス等の温暖化ガスを発生しない新しいエネルギーシステムが関心を集めている。太陽電池発電によるエネルギーは炭酸ガス等の温暖化の原因となるガスを排出しないため、クリーンなエネルギーとして研究開発が行われており、産業用エネルギーとして注目されている。太陽電池の代表例としては、単結晶、多結晶のシリコンセル(結晶系シリコンセル)を用いたものや、アモルファスシリコン、化合物半導体を用いたもの(薄膜系セル)等が挙げられる。太陽電池は、長期間、屋外で風雨に曝されて使用されることが多く、発電部分をガラス板やバックシート等を貼り合わせてモジュール化し、外部からの水分の侵入を防止し、発電部分の保護、漏電防止等を図っていた。発電部分を保護する部材には、発電に必要な光透過を確保するために、光入射側に透明ガラスや透明樹脂を使用している。反対側の部材には、バックシートといわれるアルミ箔、フッ化ポリビニル樹脂(PVF)、ポリエチレンテレフタレート(PET)やそのシリカ等のバリアーコート加工の積層シートを使用している。そして発電素子を樹脂封止シートで挟み込み、ガラスやバックシートでさらに外部を被覆して熱処理を施して樹脂封止シートを溶融し、全体を一体化封止(モジュール化)している。
上述した樹脂封止シートは、次の(1)〜(3)が特性として要求される。すなわち、(1)ガラス、発電素子、バックシートとの良好な接着性、(2)高温状態での樹脂封止シートの溶融に起因する発電素子の流動防止性(耐クリープ性)、(3)太陽光の入射を阻害しない透明性、である。このような観点から樹脂封止シートは、エチレン−酢酸ビニル共重合体(以下、EVAとも略される。)に、紫外線劣化対策として紫外線吸収剤、ガラスとの接着性向上のためカップリング剤、架橋のため有機過酸化物等の添加剤を配合し、カレンダー成形やTダイキャストにより製膜されている。さらに長期に亘って太陽光に曝されることに鑑み、樹脂の劣化による光学特性の低下の防止を図るため耐光剤等の各種添加剤が配合されている。これにより、長期に亘り太陽光の入射を阻害しない透明性を維持している。
上述したような樹脂封止シートにより太陽電池をモジュール化する形態として、ガラス/樹脂封止シート/結晶系シリコンセル等の発電素子/樹脂封止シート/バックシートの順で重ね合わせ、ガラス面を下にして専用の太陽電池真空ラミネーターを用いて、樹脂の溶融温度以上(EVAの場合は150℃の温度条件)で余熱する工程とプレス工程を経て、樹脂封止シートを溶融して貼り合わせる方法がある。この方法においては、先ず、余熱工程で樹脂封止シートの樹脂が溶融し、プレス工程で溶融した樹脂に接している部材と密着して真空ラミネートされる。このラミネート工程においては、(i)樹脂封止シートに含有されている架橋剤、例えば有機過酸化物が熱分解し、EVAの架橋が促進される。(ii)樹脂封止シートに含有しているカップリング剤が接触している部材と共有結合する。これにより互いの接着性がより向上し、高温状態での樹脂封止シートの溶融に起因する発電部分の流動が防止(耐クリープ性)され、ガラス、発電素子、バックシートとの優れた接着性が実現されるのである。
特許文献1には、電子線照射を施したエチレン共重合体からなる太陽電池素子封止材料が開示されている。この封止材料は有機高分子樹脂封止シートにより構成されており、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン−不飽和カルボン酸エステル共重合体、エチレン−不飽和カルボン酸共重合体等の樹脂に、シランカップリング剤、酸化防止剤、架橋助剤、紫外線吸収剤、光安定剤を配合し、押出成形にてシーティングした後、電子線照射を施して樹脂封止シートを得、これを発電素子やバックシートと150℃程度で真空ラミネートすることによりモジュールを得ている。
しかしながら、従来の封止材料は、カップリング剤による接着性を付与するために長時間の熱キュア工程を行う必要があり、太陽電池モジュール等の封止材として用いた場合に生産性に劣るという問題が存在する。
上記事情に鑑み、本発明が解決しようとする課題は、接着性を付与するための長時間の熱キュア工程を必要としない樹脂封止シートを提供することである。
本発明者らは、上記課題に対して鋭意検討を行った結果、表面処理を施すことにより表面自由エネルギーが特定範囲に調整された樹脂封止シートが、上記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成させた。
即ち、本発明は以下のとおりである。
[1]
表面処理を施すことにより表面自由エネルギーが40mN/m以上に調整された樹脂封止シート。
[2]
前記表面処理は、電離性放射線処理、コロナ処理、プラズマ処理からなる群から選択される少なくとも1種の処理である、上記[1]記載の樹脂封止シート。
[3]
前記表面処理は電離性放射線処理である、上記[1]記載の樹脂封止シート。
[4]
ゲル分率が1〜80質量%に調整された、上記[1]〜[3]のいずれか記載の樹脂封止シート。
[5]
エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−脂肪族不飽和カルボン酸共重合体、エチレン−脂肪族カルボン酸エステル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物、エチレン−酢酸ビニル−アクリル酸エステル共重合体ケン化物、及びポリオレフィン系樹脂からなる群から選択される少なくとも1種の樹脂を含有する、上記[1]〜[4]のいずれか記載の樹脂封止シート。
[1]
表面処理を施すことにより表面自由エネルギーが40mN/m以上に調整された樹脂封止シート。
[2]
前記表面処理は、電離性放射線処理、コロナ処理、プラズマ処理からなる群から選択される少なくとも1種の処理である、上記[1]記載の樹脂封止シート。
[3]
前記表面処理は電離性放射線処理である、上記[1]記載の樹脂封止シート。
[4]
ゲル分率が1〜80質量%に調整された、上記[1]〜[3]のいずれか記載の樹脂封止シート。
[5]
エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−脂肪族不飽和カルボン酸共重合体、エチレン−脂肪族カルボン酸エステル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物、エチレン−酢酸ビニル−アクリル酸エステル共重合体ケン化物、及びポリオレフィン系樹脂からなる群から選択される少なくとも1種の樹脂を含有する、上記[1]〜[4]のいずれか記載の樹脂封止シート。
本発明により、接着性を付与するための長時間の熱キュア工程を必要としない樹脂封止シートを提供することができる。
本発明の樹脂封止シートは、接着性を付与するための熱キュア工程の時間を大幅に短縮することができるため、太陽電池モジュール等の封止材として用いた場合に、その生産性を著しく向上させることができる。
本発明の樹脂封止シートは、接着性を付与するための熱キュア工程の時間を大幅に短縮することができるため、太陽電池モジュール等の封止材として用いた場合に、その生産性を著しく向上させることができる。
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施の形態」という。)について詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施できる。
本実施の形態における樹脂封止シートは、表面処理を施すことにより表面自由エネルギーが40mN/m以上に調整された樹脂封止シートである。
樹脂封止シートは、シートを構成する樹脂成分に熱等のエネルギーを直接与える方法や、樹脂成分に固有の振動を与え樹脂自身を発熱させる方法等により、樹脂を軟化させ、その軟化状態を利用して他の物質(被封止物)に密着させることで封止することができる。樹脂を軟化させる方法としては、樹脂成分への直接加熱、輻射熱等の間接熱、超音波等の振動発熱等を用いる公知の方法を使用することができる。
本発明者らは、樹脂封止シートに表面処理を施して表面自由エネルギーを40mN/m以上に調整することにより、従来のように長時間の熱キュア工程を行うことなく、良好な接着性をシートに付与できることを見出した。表面自由エネルギーは、より良好な接着性を付与する観点から、好ましくは45mN/m以上である。
ここで、「表面処理」とは、樹脂封止シートの接着性を向上させるために行われる処理のことを示し、易接着プライマー層の塗布、もしくは、放電、放射線照射等の物理処理等が挙げられるが、一般的に塗布方式より物理処理の方が簡便に表面処理を行うことができるため好ましい。
物理処理としては、例えば、電離性放射線処理、コロナ処理、プラズマ処理からなる群から選択される少なくとも1種の処理が挙げられる。上記の中でも、電離性放射線処理は、表面処理と同時に、樹脂封止シートに耐熱性を付与するための架橋処理を行うことができるため好ましい。
表面処理は、例えば、電離性放射線処理の場合には、加速電圧50kV〜5000kV、好ましくは100v〜4000kV、更に好ましくは150kV〜3000kVの範囲で、照射線量1kGy〜300kGy、好ましくは2kGy〜250kGy、更に好ましくは3kGy〜200kGyの条件により実施することができる。
コロナ処理の場合には、空気雰囲気下、シートと電極間距離0.5mm〜5mmにて、処理電力密度5W・min/m2〜200W・min/m2、好ましくは5W・min/m2〜150W・min/m2、更に好ましくは10W・min/m2〜100W・min/m2の条件により実施することができる。
プラズマ処理の場合には、希ガスが20モル%以上含有される空気雰囲気下で、表面が誘電体によって被覆され50℃に冷却された電極と、これに対向して設けられた表面が誘電体によって被覆された電極を用いて、シートと電極間距離0.5mm〜5mmにて、処理電力密度、100W・min/m2〜1000W・min/m2、好ましくは200W・min/m2〜900W・min/m2、更に好ましくは250W・min/m2〜700W・min/m2の条件により実施することができる。
コロナ処理の場合には、空気雰囲気下、シートと電極間距離0.5mm〜5mmにて、処理電力密度5W・min/m2〜200W・min/m2、好ましくは5W・min/m2〜150W・min/m2、更に好ましくは10W・min/m2〜100W・min/m2の条件により実施することができる。
プラズマ処理の場合には、希ガスが20モル%以上含有される空気雰囲気下で、表面が誘電体によって被覆され50℃に冷却された電極と、これに対向して設けられた表面が誘電体によって被覆された電極を用いて、シートと電極間距離0.5mm〜5mmにて、処理電力密度、100W・min/m2〜1000W・min/m2、好ましくは200W・min/m2〜900W・min/m2、更に好ましくは250W・min/m2〜700W・min/m2の条件により実施することができる。
樹脂封止シートの表面自由エネルギーは、接触角計を用いて液体のシート表面に対する静的接触角を求めることにより測定することができる。
樹脂封止シートのゲル分率は、好ましくは1質量%〜80質量%、より好ましくは2質量%〜70質量%、さらに好ましくは5質量%〜60質量%である。ゲル分率が1質量%以上であると耐熱性が向上する傾向にあり、80質量%以下であると、被封止物に対する封止性(隙間埋め性)が良好となる傾向にある。なお、樹脂封止シートが後述する単層構造又は多層構造のいずれの構造を有する場合であっても、上記ゲル分率は、樹脂封止シート全体の平均のゲル分率(全層ゲル分率)の値を意味する。
樹脂封止シートのゲル分率は、沸騰p−キシレン中で樹脂封止シートを12時間抽出し、不溶解部分の割合から下記式により求めることができる。
ゲル分率(質量%)=(抽出後の試料質量/抽出前の試料質量)×100
なお、有機過酸化物等による熱架橋を施す場合には、ガラス貼り合せ時の熱履歴を与えるため、樹脂封止シートを真空ラミネート機にて150℃にて15分間加熱後にゲル分率の測定を行う。
ゲル分率(質量%)=(抽出後の試料質量/抽出前の試料質量)×100
なお、有機過酸化物等による熱架橋を施す場合には、ガラス貼り合せ時の熱履歴を与えるため、樹脂封止シートを真空ラミネート機にて150℃にて15分間加熱後にゲル分率の測定を行う。
樹脂封止シートのゲル分率を上記範囲に調整する手段としては、シートに適度に架橋処理を施すことが挙げられる。その際の架橋処理方法としては、公知の方法を制限なく使用でき、例えば、有機過酸化物による架橋処理や、電離性放射線(電子線、γ線、紫外線等)の照射による架橋処理等が挙げられ、これらを組合わせて用いてもよい。
電離性放射線の照射により架橋させる場合は、α線、β線、γ線、中性子線、電子線等の電離性放射線を樹脂封止シートに照射し、架橋させる方法が挙げられる。電子線等の電離性放射線の加速電圧は、樹脂封止シートの厚さにより選択すればよく、例えば、500μmの厚さの場合、樹脂封止シート全体を架橋するときには、加速電圧として300kV以上が必要である。
電子線等の電離性放射線の加速電圧は、架橋処理を施す樹脂層に応じて適宜調節が可能であり、電離性放射線の照射線量は使用される樹脂によって異なるが、一般的に3kGy未満の場合、樹脂封止シート全体を均一に架橋することが困難となる傾向にある。
電離性放射線の加速電圧や照射線量は、所望のゲル分率を得るため適宜調節することができる。架橋の度合いは、ゲル分率を測定することにより評価できる。
上記範囲のゲル分率を達成するためには、電離性放射線の照射量の他、樹脂の種類による架橋度合いの違いや、転移化剤等による架橋促進又は架橋抑制の効果を利用してもよい。
また、電離性放射線により架橋を行う場合には、電離性放射線の照射が、架橋処理と上述した表面処理とを兼ねていてもよい。
有機過酸化物により架橋させる場合は、架橋剤として有機過酸化物を樹脂中に配合し、或いは含浸させて熱架橋を行う。この場合100〜130℃における半減期が1時間以内の有機過酸化物が好ましい。
有機過酸化物としては、良好な相溶性が得られ、かつ上記半減期を有するものとして、例えば、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、n−ブチル−4,4−ビス(t−ブチルパーオキシ)バレレート、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン等が挙げられる。これらの有機過酸化物を用いた樹脂封止シートは、架橋時間を比較的短くすることができ、かつ、キュア工程を、従来汎用されている100〜130℃における半減期が1時間以上の有機過酸化物を用いた場合と比較して半分程度に短縮することができる。
有機過酸化物の含有量は、樹脂封止シートを構成する樹脂に対して、0〜10質量%であることが好ましく、0〜5質量%であることがより好ましい。
有機過酸化物が配合された樹脂封止シートは、ラミネーション時にシートが軟化し、隙間埋めが行われた後に有機過酸化物の分解及び架橋が促進されるため、樹脂のゲル分率が大きくなっても隙間埋め性が阻害されないという利点を有している。
上述したように「架橋」には電離性放射線の照射を行う方法、及び有機過酸化物を利用する方法が挙げられるが、電離性放射線の照射によって架橋させる方法が特に好ましい。電離性放射線の照射による架橋処理は、有機過酸化物の熱分解によるガスが発生しないため、真空ポンプの腐食ダメージ及びオイルの汚れを低減できる傾向にある。また、有機過酸化物を用いた架橋方法は、ラミネーション工程において有機過酸化物を分解させ、樹脂封止シートの架橋を促進させるための長時間のキュア工程が必要であるため、太陽電池モジュールの生産を高速化しにくいが、電離性放射線の照射による架橋方法の場合は長時間のキュア工程を必要とせず、太陽電池モジュールの生産性を向上させることができる点においても優れている。
樹脂封止シートを構成する樹脂としては、特に限定されないが、良好な透明性、柔軟性、被接着物の接着性や取り扱い性を確保する観点から、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−脂肪族不飽和カルボン酸共重合体、エチレン−脂肪族カルボン酸エステル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物、エチレン−酢酸ビニル−アクリル酸エステル共重合体ケン化物、及びポリオレフィン系樹脂からなる群から選択される少なくとも1種の樹脂を含有することが好ましい。
エチレン−酢酸ビニル共重合体とは、エチレンモノマーと酢酸ビニルとの共重合により得られる共重合体を示す。また、エチレン−脂肪族不飽和カルボン酸共重合体とは、エチレンモノマーと、脂肪族不飽和カルボン酸から選ばれる少なくとも1種のモノマーとの共重合により得られる共重合体を示す。さらに、エチレン−脂肪族不飽和カルボン酸エステル共重合体とは、エチレンモノマーと、脂肪族不飽和カルボン酸エステルから選ばれる少なくとも1種のモノマーとの共重合により得られる共重合体を示す。
上記共重合は、高圧法、溶融法等の公知の方法により行うことができ、重合反応の触媒としてマルチサイト触媒やシングルサイト触媒等を用いることができる。また、上記共重合体において、各モノマーの結合形状は特に限定されず、ランダム結合、ブロック結合等の結合形状を有するポリマーを使用することができる。なお、光学特性の観点から、上記共重合体としては、高圧法を用いてランダム結合により重合した共重合体が好ましい。
上記エチレン−酢酸ビニル共重合体は、光学特性、接着性、柔軟性の観点から、共重合体を構成する全モノマー中の酢酸ビニルの割合が、10〜40質量%であることが好ましく、13〜35質量%であることがより好ましく、15〜30質量%であることが更に好ましい。また、樹脂封止シートの加工性の観点より、JIS−K−7210に準じて測定されるメルトフローレートの値(以下、「MFR」とも略記される。)(190℃、2.16kg)が0.3g/10min〜30g/10minであることが好ましく、0.5g/min〜30g/minであることがより好ましく、0.8g/min〜25g/minであることが更に好ましい。
上記エチレン−脂肪族不飽和カルボン酸共重合体としては、例えば、エチレン−アクリル酸共重合体(以下、「EAA」とも略記される。)、エチレン−メタクリル酸共重合体(以下、「EMAA」とも略記される。)等が挙げられる。また、上記エチレン−脂肪族不飽和カルボン酸エステル共重合体としては、例えば、エチレン−アクリル酸エステル共重合体、エチレン−メタクリル酸エステル共重合体等が挙げられる。ここで、アクリル酸エステル及びメタクリル酸エステルとしては、メタノール、エタノール等の炭素数1〜8のアルコールとのエステルが好適に使用される。
これらの共重合体は、3成分以上のモノマーを共重合してなる多元共重合体であってもよい。上記多元共重合体としては、例えば、エチレン、脂肪族不飽和カルボン酸及び脂肪族不飽和カルボン酸エステルから選ばれる少なくとも3種類のモノマーを共重合してなる共重合体が挙げられる。
上記エチレン−脂肪族不飽和カルボン酸共重合体は、共重合体を構成する全モノマー中の脂肪族不飽和カルボン酸の割合が、3〜35質量%であることが好ましい。また、MFR(190℃、2.16kg)は、0.3g/10min〜30g/10minであることが好ましく、0.5g/10min〜30g/10minであることがより好ましく、0.8g/10min〜25g/10minであることが更に好ましい。
上記エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物としては、例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合体の部分或いは完全ケン化物が挙げられ、エチレン−酢酸ビニル−アクリル酸エステル共重合体ケン化物としては、エチレン−酢酸ビニル−アクリル酸エステル共重合体の部分或いは完全ケン化物等が挙げられる。
上記各ケン化物中の水酸基の割合は、樹脂封止シートを構成する樹脂中において、0.1質量%〜15質量%であることが好ましく、より好ましくは0.1質量%〜10質量%、更に好ましくは0.1質量%〜7質量%である。水酸基の割合が0.1質量%以上であると接着性が良好となる傾向にあり、15質量%以下であると相溶性が良好となる傾向にあり、最終的に得られる樹脂封止シートが白濁化するリスクを低減することができる。
水酸基の割合は、エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物、エチレン−酢酸ビニル−アクリル酸エステル共重合体ケン化物の元のオレフィン系重合体樹脂と、この樹脂のVA%(NMR測定による酢酸ビニル共重合比)と、そのケン化度と、樹脂中における配合割合とから算出することができる。
ケン化前のエチレン−酢酸ビニル共重合体及びエチレン−酢酸ビニル−アクリル酸エステル共重合体中の酢酸ビニルの含有量は、良好な光学特性、接着性、及び柔軟性を得る観点から、共重合体全体に対して、10〜40質量%であることが好ましく、13〜35質量%であることがより好ましく、15〜30質量%であることが更に好ましい。また、エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物及びエチレン−酢酸ビニル−アクリル酸エステル共重合体ケン化物のケン化度は、良好な透明性及び接着性を得る観点から、10〜70%であることが好ましく、15〜65%であることがより好ましく、20〜60%であることが更に好ましい。
ケン化方法としては、例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−酢酸ビニル−アクリル酸エステル共重合体のペレット或いは粉末をメタノール等の低級アルコール中でアルカリ触媒を用いてケン化する方法、トルエン、キシレン、ヘキサンのような溶媒を用いて予め共重合体を溶解した後、少量のアルコールとアルカリ触媒を用いてケン化する方法等が挙げられる。また、ケン化した共重合体に水酸基以外の官能基を含有するモノマーをグラフト重合してもよい。
上記各ケン化物は、側鎖に水酸基を有しているため、ケン化前の共重合体と比較して接着性が向上している。また、水酸基の量(ケン化度)を調整することにより、透明性や接着性を制御することができる。
また、樹脂封止シートを構成する樹脂中には、グリシジルメタクリレートを含むエチレン共重合体が含まれていてもよい。グリシジルメタクリレートを含むエチレン共重合体とは、反応サイトとしてエポキシ基を有するグリシジルメタクリレートとのエチレンコポリマー及びエチレンターポリマーを示し、例えば、エチレン−グリシジルメタクリレート共重合体、エチレン−グリシジルメタクリレート−酢酸ビニル共重合体、エチレン−グリシジルメタクリレート−アクリル酸メチル共重合体等が挙げられる。上記化合物は、グリシジルメタクリレートの反応性が高いため安定した接着性を発揮でき、また、ガラス転移温度が低く柔軟性が良好となる傾向にある。
上記ポリオレフィン系樹脂としては、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリブテン系樹脂が好ましい。ここでポリエチレン系樹脂とは、エチレンの単独重合体又はエチレンと他の1種若しくは2種以上のモノマーとの共重合体を示す。また、ポリプロピレン系樹脂とは、プロピレンの単独重合体又はプロピレンと他の1種若しくは2種以上のモノマーとの共重合体を示す。
上記ポリエチレン系樹脂としては、ポリエチレン、エチレン−α−オレフィン共重合体等が挙げられる。
上記ポリエチレンとしては、低密度ポリエチレン(LDPE)、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、線状超低密度ポリエチレン(「VLDPE」、「ULDPE」と称される。)等が挙げられる。
上記エチレン−α−オレフィン共重合体は、エチレンと、炭素数3〜20のα−オレフィンから選ばれる少なくとも1種とからなる共重合体であることが好ましく、エチレンと、炭素数3〜12のα−オレフィンから選ばれる少なくとも1種とからなる共重合体であることがより好ましい。上記α−オレフィンとしては、例えば、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−へキセン、1−オクテン、4−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、1−エイコサン等が挙げられ、これらを1種又は2種以上を併用することができる。また、共重合体を構成する全モノマー中のα−オレフィンの割合(仕込みモノマー基準)は、6〜30質量%であることが好ましい。さらに、上記エチレン−α−オレフィン共重合体は、軟質の共重合体であることが好ましく、X線法による結晶化度が30%以下であることが好ましい。
また、上記エチレン−α−オレフィン共重合体としては、エチレンと、プロピレンコモノマー、ブテンコモノマー、ヘキセンコモノマー及びオクテンコモノマーから選ばれる少なくとも1種のコモノマーとの共重合体が、一般に入手が容易であり、好適に使用できる。
上記ポリエチレン系樹脂は、シングルサイト系触媒、マルチサイト系触媒等の公知の触媒を用いて重合することができ、シングルサイト系触媒を用いて重合することが好ましい。また上記ポリエチレン系樹脂は、クッション性の観点から、密度が0.860〜0.920g/cm3であることが好ましく、0.870〜0.915g/cm3であることがより好ましく、0.870〜0.910g/cm3であること更に好ましい。密度が0.920g/cm3以下であると、クッション性が良好となる傾向にある。なお、密度が0.920g/cm3を超えると透明性が悪化するおそれがある。高密度のポリエチレン系樹脂を用いる場合には、低密度のポリエチレン系樹脂を、例えば、30質量%程度の割合で添加することで透明性を改善することもできる。
上記ポリエチレン系樹脂は、樹脂封止シートの加工性の観点から、MFR(190℃、2.16kg)が0.5g/10min〜30g/10minであることが好ましく、0.8g/10min〜30g/10minであることがより好ましく、1.0g/10min〜25g/10minであることが更に好ましい。
上記ポリエチレン系樹脂としては、結晶/非晶構造(モルフォロジ−)をナノオーダーで制御したポリエチレン系共重合体を使用することもできる。
上記ポリプロピレン系樹脂としては、ポリプロピレン、プロピレン−α−オレフィン共重合体、プロピレンとエチレンとα−オレフィンとの3元共重合体等が挙げられる。
上記プロピレン−α−オレフィン共重合体とは、プロピレンとα−オレフィンから選ばれる少なくとも1種とからなる共重合体を示す。上記プロピレン−α−オレフィン共重合体は、プロピレンと、エチレン及び炭素数4〜20のα−オレフィンから選ばれる少なくとも1種とからなる共重合体が好ましく、プロピレンと、エチレン及び炭素数4〜8のα−オレフィンから選ばれる少なくとも1種からなる共重合体がより好ましい。ここで炭素数4〜20のα−オレフィンとしては、例えば、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−へキセン、1−オクテン、4−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、1−エイコサン等が挙げられ、これらを1種又は2種以上を併用することができる。また、上記プロピレン−α−オレフィン共重合体を構成する全モノマー中のエチレン及び/又はα−オレフィンの含有割合(仕込みモノマー基準)は、6〜30質量%であることが好ましい。さらに、上記プロピレン−α−オレフィン共重合体は、軟質の共重合体であることが好ましく、X線法による結晶化度が30%以下であることが好ましい。
上記プロピレン−α−オレフィン共重合体としては、プロピレンと、エチレンコモノマー、ブテンコモノマー、ヘキセンコモノマー及びオクテンコモノマーから選ばれる少なくとも1種類のコモノマーとの共重合体が、一般に入手が容易であり、好適に使用できる。
上記ポリプロピレン系樹脂は、シングルサイト系触媒、マルチサイト系触媒等の公知の触媒を用いて重合することができ、シングルサイト系触媒を用いて重合することが好ましい。また上記ポリプロピレン系樹脂は、クッション性の観点から、密度が0.860〜0.920g/cm3であることが好ましく、0.870〜0.915g/cm3であることがより好ましく、0.870〜0.910g/cm3であることが更に好ましい。密度が0.920g/cm3以下であると、クッション性が良好となる傾向にある。なお、密度が0.920g/cm3を超えると透明性が悪化するおそれがある。
上記ポリプロピレン系樹脂は、樹脂封止シートの加工性の観点から、MFR(230℃、2.16kgf)が0.3g/10min〜15.0g/10minであることが好ましく、0.5g/10min〜12g/10minであることがより好ましく、0.8g/10min〜10g/10minであることが更に好ましい。
上記ポリプロピレン系樹脂としては、結晶/非晶構造(モルフォロジ−)をナノオーダーで制御したポリプロピレン系共重合体を使用することもできる。
上記ポリプロピレン系樹脂としては、プロピレンと、エチレン、ブテン、ヘキセン、オクテン等のα−オレフィンとの共重合体、又は、プロピレンと、エチレンと、ブテン、ヘキセン、オクテン等のα−オレフィンとの3元共重合体等が好適に使用できる。これらの共重合体は、ブロック共重合体、ランダム共重合体等のいずれの形態でもよく、好ましくはプロピレンとエチレンとのランダム共重合体、又は、プロピレンとエチレンとブテンとのランダム共重合体である。
上記ポリプロピレン系樹脂は、チーグラー・ナッタ触媒のような触媒で重合された樹脂だけでなく、メタロセン系触媒等で重合された樹脂でよく、例えば、シンジオタクチックポリプロピレンや、アイソタクティックポリプロピレン等も使用できる。また、ポリプロピレン系樹脂を構成する全モノマー中のプロピレンの割合(仕込みモノマー基準)は、60〜80質量%であることが好ましい。さらに、熱収縮性が優れるという観点から、ポリプロピレン系樹脂を構成する全モノマー中のプロピレン含有割合(仕込みモノマー基準)が60〜80質量%であり、エチレン含有割合(仕込みモノマー基準)が10〜30質量%であり、ブテン含有割合(仕込みモノマー基準)が5〜20質量%である3元共重合体が好ましい。
また上記ポリプロピレン系樹脂としては、ポリプロピレン系樹脂の総量に対して50質量%以下の高濃度のゴム成分を均一微分散させてなる樹脂を用いることもできる。
樹脂封止シートを構成する樹脂が上記ポリプロピレン系樹脂を含有することで、硬さ、耐熱性等の特性が一層向上する傾向にある。
また、ポリブテン系樹脂は、ポリプロピレン系樹脂との相溶性が特に優れるため、樹脂封止シートの硬さや腰の調整を目的として、上記ポリプロピレン系樹脂と併用することが好ましい。上記ポリブテン系樹脂としては、結晶性であり、ブテンと、エチレン、プロピレン及び炭素数5〜8のオレフィン系化合物から選ばれる少なくとも1種からなる共重合体であり、かつ、ポリブテン系樹脂を構成する全モノマー中のブテンの含有量が70モル%以上である高分子量のポリブテン系樹脂が好適に使用できる。
上記ポリブテン系樹脂は、MFR(190℃、2.16kg)が0.1g/10min〜10g/10minであることが好ましい。また、ビカット軟化点が40〜100℃であることが好ましい。ここで、ビカット軟化点はJIS K7206−1982に従って測定される値である。
本実施の形態の樹脂封止シートは、単層構造、多層構造のいずれの構造を有していてもよい。以下、各構造について説明する。
[単層構造]
樹脂封止シートが単層構造を有する場合、良好な透明性、柔軟性、被接着物の接着性や取扱性を確保する観点から、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−脂肪族不飽和カルボン酸共重合体、エチレン−脂肪族不飽和カルボン酸エステル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物、エチレン−酢酸ビニル−アクリル酸エステル共重合体ケン化物、及びポリオレフィン系樹脂よりなる群から選ばれる少なくとも1種の樹脂からなる層であることが好ましい。
[単層構造]
樹脂封止シートが単層構造を有する場合、良好な透明性、柔軟性、被接着物の接着性や取扱性を確保する観点から、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−脂肪族不飽和カルボン酸共重合体、エチレン−脂肪族不飽和カルボン酸エステル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物、エチレン−酢酸ビニル−アクリル酸エステル共重合体ケン化物、及びポリオレフィン系樹脂よりなる群から選ばれる少なくとも1種の樹脂からなる層であることが好ましい。
樹脂封止シートを構成する樹脂層に、接着性樹脂としてエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物、エチレン−酢酸ビニル−アクリル酸エステル共重合体ケン化物が含有されている場合は、そのケン化度及び含有量は適宜調整でき、これにより被封止物との接着性を制御できる。接着性と光学特性の観点から、樹脂層中のエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物、エチレン−酢酸ビニル−アクリル酸エステル共重合体ケン化物の含有量は、3〜60質量%であることが好ましく、3〜55質量%であることがより好ましく、5〜50質量%であることが更に好ましい。
[多層構造]
本実施の形態における樹脂封止シートは、表面層と、前記表面層に積層された内層とを含む少なくとも2層以上の多層構造を有していてもよい。ここで、樹脂封止シートの両表面を形成する2層を「表面層」といい、それ以外を「内層」という。
本実施の形態における樹脂封止シートは、表面層と、前記表面層に積層された内層とを含む少なくとも2層以上の多層構造を有していてもよい。ここで、樹脂封止シートの両表面を形成する2層を「表面層」といい、それ以外を「内層」という。
多層構造を有する場合には、接着性樹脂としてエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物、エチレン−酢酸ビニル−アクリル酸エステル共重合体ケン化物を含有する樹脂層が被封止物と接触する層(表面層の少なくとも1層)として形成されていることが好ましい。また、表面層としては、上述したケン化物のみからなる層でもよいが、良好な透明性、柔軟性、被接着物の接着性や取扱性を確保する観点から、ケン化物と、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−脂肪族不飽和カルボン酸共重合体、エチレン−脂肪族不飽和カルボン酸エステル共重合体、及びポリオレフィン系樹脂よりなる群から選ばれる少なくとも1種の樹脂との混合樹脂からなる層であることが好ましい。
被封止物と接触する表面層の層比率は、良好な接着性を確保する観点から、樹脂封止シートの全厚に対し、少なくとも5%以上の厚さを有していることが好ましい。厚さが5%以上であると、上述した単層構造の場合と同等の接着性が得られる傾向にある。
内層を構成する樹脂としては、特に限定されず、上述した表面層に含まれる樹脂に加えて、他のいかなる樹脂を用いてもよい。内層には、他の機能を付与することを目的として、樹脂材料、混合物、添加物等を適宜選定できる。例えば、新たにクッション性を付与する目的として、内層として熱可塑性樹脂を含有する層を設けてもよい。
内層として用いられる熱可塑性樹脂としては、ポリオレフィン系樹脂、スチレン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、塩素系エチレンポリマー系樹脂、ポリアミド系樹脂等が挙げられ、生分解性を有したものや植物由来原料系のもの等も含まれる。上記の中でも、結晶性ポリプロピレン系樹脂との相溶性がよく、透明性が良好な水素添加ブロック共重合体樹脂、プロピレン系共重合樹脂、エチレン系共重合体樹脂が好ましく、水素添加ブロック共重合体樹脂及びプロピレン系共重合樹脂がより好ましい。
水素添加ブロック共重合体樹脂としては、ビニル芳香族炭化水素と共役ジエンのブロック共重合体が好ましい。ビニル芳香族炭化水素としては、スチレン、o−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、1,3−ジメチルスチレン、α−メチルスチレン、ビニルナフタレン、ビニルアントラセン、1,1−ジフェニルエチレン、N,N−ジメチル−p−アミノエチルスチレン、N,N−ジエチル−p−アミノエチルスチレン等が挙げられ、特にスチレンが好ましい。これらは単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。共役ジエンとは、1対の共役二重結合を有するジオレフィンであり、例えば、1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン(イソプレン)、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく2種以上を混合して用いてもよい。
プロピレン系共重合体樹脂としては、プロピレンとエチレン又は炭素原子数4〜20のα−オレフィンとから得られる共重合体が好ましい。そのエチレン又は炭素原子数4〜20のα−オレフィンの含有量は6〜30質量%が好ましい。この炭素原子数4〜20のα−オレフィンとしては、1−ブテン、1−ペンテン、1−へキセン、1−オクテン、4−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、1−エイコサン等が挙げられる。
プロピレン系共重合体樹脂は、マルチサイト系触媒、シングルサイト系触媒、その他、いずれの触媒を用いて重合されたものでもよい。さらにポリマーの結晶/非晶構造(モルフォロジ−)をナノオーダーで制御したプロピレン系共重合体を使用できる。
エチレン系共重合体樹脂は、マルチサイト系触媒、シングルサイト系触媒、その他、いずれの触媒で重合されたものでもよい。また、ポリマーの結晶/非晶構造(モルフォロジ−)をナノオーダーで制御したエチレン系共重合体を使用できる。
内層の材料としてポリエチレン系樹脂を用いる場合、ポリエチレン系樹脂の密度は、適度なクッション性を得る観点から、0.860〜0.920g/cm3であることが好ましく、0.870〜0.915g/cm3であることがより好ましく、0.870〜0.910g/cm3であることが更に好ましい。密度が0.920g/cm3以上の樹脂層を被封止物と接触しない層(内層)として形成した場合、透明性が悪化する傾向にある。
また、樹脂封止シートは、中央層の両面に、中央層に対して対称の配置となるように同一成分の層が1又は2以上積層された構造を有していてもよい。このような樹脂封止シートとしては、例えば、2層の表面層(以下、「スキン層」と記載する場合がある。)と3層の内層からなる樹脂封止シートであって、2層の表面層が同一成分からなり、表面層に隣接する2層の内層(以下、「ベース層」と記載する場合がある。)が同一成分からなる樹脂封止シートが挙げられる。
上記構造を有する樹脂封止シートにおいて、表面層の膜厚は、樹脂封止シート全体の膜厚に対して5〜40%であることが好ましく、上記ベース層の膜厚は、樹脂封止シート全体の膜圧に対して50〜90%であることが好ましく、ベース層に挟まれた内層(以下、「コア層」と記載する場合がある。)の膜厚は、樹脂封止シート全体の膜厚に対して5〜40%であることが好ましい。
次に、樹脂封止シート加工性の観点について検討する。樹脂封止シートを構成する樹脂のMFR(190℃、2.16kg)は、良好な加工性を確保する観点から、0.5〜30g/10minであることが好ましく、0.8〜30g/10minであることがより好ましく、1.0〜25g/10minであることが更に好ましい。樹脂封止シートが2層以上の多層構造の場合、内層(ベース層やコア層)を構成する樹脂のMFRは、樹脂封止シート加工性の観点から、表面層のMFRより低いことが好ましい。
本実施の形態における樹脂封止シートには、特性を損なわない範囲で、各種添加剤、例えば、カップリング剤、防曇剤、可塑剤、酸化防止剤、界面活性剤、着色剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、結晶核剤、滑剤、アンチブロッキング剤、無機フィラー、架橋調整剤等を添加してもよい。
本実施の形態における樹脂封止シートは、上述したように、表面処理を施して表面自由エネルギーを特定範囲に調整することにより、既に良好な接着性が付与されているが、より強固な接着性が必要とされる場合には、必要に応じて、適宜カップリング剤を添加してもよい。上記カップリング剤の添加量及び種類は、所望の接着性の度合いや被接着物の種類によって適宜選択できる。上記カップリング剤の添加量としては、カップリング剤を添加する樹脂層の全質量基準で、0.01〜5質量%であることが好ましく、0.03〜4質量%であることがより好ましく、0.05〜3質量%であることが更に好ましい。上記カップリング剤の種類としては、例えば、有機シラン化合物、有機シラン過酸化物、有機チタネート化合物等が挙げられる。また、これらのカップリング剤は、押出機内にて樹脂に注入混合する、押出機ホッパー内に混合して導入する、マスターバッチ化して混合して添加する等の公知の添加方法で添加することができる。ただし、押出機を経由する場合、押出機内の熱や圧力等によりカップリング剤の機能が阻害されることがあるため、カップリング剤の種類によっては添加量を適宜調整する必要がある。また、カップリング剤の種類は、樹脂封止シートの透明性や分散具合の観点、押出機への腐食や押出安定性の観点等を考慮して、適宜選択すればよい。好ましいカップリング剤としては、γ−クロロプロピルメトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニル−トリス(β−メトキシエトキシ)シラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エトキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラングリシドキシプロピルトリエトキシシラン等の不飽和基やエポキシ基を有するものが挙げられる。
また、樹脂封止シートには、紫外線吸収剤、酸化防止剤、変色防止剤等を添加することができる。特に長期に渡って透明性や接着性を維持する必要がある場合、紫外線吸収剤、酸化防止剤、変色防止剤等を添加することが好ましい。これらの添加剤を樹脂に添加する場合、その添加量は、添加する樹脂の総量に対して10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましい。
紫外線吸収剤としては、例えば、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−5−スルホベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−ドデシロキシベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン等が挙げられる。酸化防止剤としては、フェノール系、イオウ系、リン系、アミン系、ヒンダードフェノール系、ヒンダードアミン系、ヒドラジン系等の酸化防止剤が挙げられる。
これらの紫外線吸収剤、酸化防止剤、変色防止剤等は樹脂封止シートを構成する樹脂中に、好ましくは0〜10質量%、より好ましくは0〜5質量%を添加する。エチレン系樹脂に添加する場合、シラノール基を有する樹脂をマスターバッチ化して混合することで、さらに接着性を付与することもできる。添加方法としては、特に限定されず、液体の状態で溶融樹脂に添加する、直接対象樹脂層に練り込み添加する、シーティング後に塗布する等の方法が挙げられる。
樹脂封止シートは、厚さが50〜1500μmであることが好ましく、100〜1000μmであることがより好ましく、150〜800μmであることが更に好ましい。厚さが50μm未満であると、構造的にクッション性が乏しい場合や、作業性の観点で、耐久性や強度に問題が生ずる傾向にある。一方、厚さが1500μmを超えると、生産性の低下や密着性の低下を招来するという問題が生じる傾向にある。
次に、樹脂封止シートの光学特性について説明する。光学特性の指標としてはヘイズ値が用いられる。ヘイズ値が10.0%以下であると樹脂封止シートにより封止された被封止物を外観上確認できると同時に、太陽電池の封止材として用いた場合に、実用上十分な発電効率が得られるため好ましい。上記観点から、ヘイズ値は9.5%以下であることが好ましく、9.0%以下であることがより好ましい。ここで、ヘイズ値は、ASTM D−1003に準拠して測定することができる。
また、樹脂封止シートは、太陽電池の封止材として用いた場合に、実用上十分な発電効率を確保するために、全光線透過率が85%以上であることが好ましく、87%以上であることがより好ましく、88%以上であることが更に好ましい。ここで、全光線透過率は、ASTM D−1003に準拠して測定することができる。
[樹脂封止シートの製造方法]
樹脂封止シートの製造方法としては、特に制限はないが、例えば、以下の方法が挙げられる。まず、樹脂を押出機で溶融し、ダイより溶融樹脂を押出し、急冷固化して原反を得る。押出機としては、Tダイ、環状ダイ等が用いられる。樹脂封止シートが多層構造を有する場合には、環状ダイが好ましい。
樹脂封止シートの製造方法としては、特に制限はないが、例えば、以下の方法が挙げられる。まず、樹脂を押出機で溶融し、ダイより溶融樹脂を押出し、急冷固化して原反を得る。押出機としては、Tダイ、環状ダイ等が用いられる。樹脂封止シートが多層構造を有する場合には、環状ダイが好ましい。
原反の表面には、最終的に目的とする樹脂封止シートの形態に応じてエンボス加工処理を施してもよい。例えば、両面にエンボス加工処理を行う場合には、2本の加熱エンボスロール間に、片面エンボス加工処理を行う場合には、片方のみ加熱されたエンボスロール間に、前記原反を通過させることによりエンボス加工処理を施すことができる。樹脂封止シートが多層構造の場合、多層Tダイ法、多層環状(サーキュラー)ダイ法が好適であり、その他公知のラミネート方法によって多層構造を形成してもよい。
さらに、後処理として、例えば寸法安定化のためのヒートセット、コロナ処理、プラズマ処理、他種樹脂封止シート等とのラミネーションを行ってもよい。
樹脂封止シートを構成する樹脂に対する架橋処理、すなわち電離性放射線照射処理や有機過酸化物の利用等による熱処理は、それぞれの場合に応じてエンボス加工処理の前工程又は後工程として行うか選定することができる。
[樹脂封止シートの用途]
本実施の形態における樹脂封止シートは、太陽電池を構成する素子等の部材を保護するための封止材として特に有用である。すなわち透明性や耐クリープ特性に優れ、かつ被封止物との接着性が良好であり、用途に応じて接着性の制御を行うことができる。また、太陽電池を構成するガラス板や、アクリルやポリカーボネート等の樹脂板に対しても安定的に強固な接着性を発揮する。本実施の形態における樹脂封止シートを用いることにより、太陽電池用ガラス自身や各種配線や発電素子等、凹凸を有している各種部材を確実に隙間なく封止できる。
本実施の形態における樹脂封止シートは、太陽電池を構成する素子等の部材を保護するための封止材として特に有用である。すなわち透明性や耐クリープ特性に優れ、かつ被封止物との接着性が良好であり、用途に応じて接着性の制御を行うことができる。また、太陽電池を構成するガラス板や、アクリルやポリカーボネート等の樹脂板に対しても安定的に強固な接着性を発揮する。本実施の形態における樹脂封止シートを用いることにより、太陽電池用ガラス自身や各種配線や発電素子等、凹凸を有している各種部材を確実に隙間なく封止できる。
また、本実施の形態のおける樹脂封止シートは、太陽電池用の封止シートとして使用できる他、LEDの封緘、合わせガラスや防犯ガラスの中間膜等、プラスチックとガラス、プラスチック同士、ガラス同士の接着等にも使用することができる。
ここで、樹脂封止シートを合わせガラスの中間膜として用いる場合には、例えば、2枚のガラス板及び/又は樹脂板の間に樹脂封止シートを挟持することで、複合材を得ることができる。
以下、具体的な実施例及び比較例を挙げて説明するが、本実施の形態はこれらの実施例のみに限定されるものではない。実施例1〜5及び比較例1〜4においては、所定の内層を2枚の表面層で挟み込み多層構造を有する樹脂封止シートを作製した。
実施例及び比較例における各物性の測定方法及び評価方法は以下の通りである。
<ゲル分率(ガラス貼り合せ後)>
ゲル分率については、沸騰p−キシレン中で、樹脂封止シートを12時間抽出し、不溶解部分の割合を下記式により求めた。
ゲル分率(質量%)=(抽出後の試料質量/抽出前の試料質量)×100
なお、ガラス貼り合せ時の熱履歴を考慮し、測定サンプルを予めLM50型真空ラミネート装置(NPC社)を用いて、150℃にて5分間脱気後、10分間真空ラミネートして熱履歴を与えた。
<ゲル分率(ガラス貼り合せ後)>
ゲル分率については、沸騰p−キシレン中で、樹脂封止シートを12時間抽出し、不溶解部分の割合を下記式により求めた。
ゲル分率(質量%)=(抽出後の試料質量/抽出前の試料質量)×100
なお、ガラス貼り合せ時の熱履歴を考慮し、測定サンプルを予めLM50型真空ラミネート装置(NPC社)を用いて、150℃にて5分間脱気後、10分間真空ラミネートして熱履歴を与えた。
<エチレン系重合体のVA>
JIS−K−7129に準拠して測定した。
JIS−K−7129に準拠して測定した。
<エチレン系重合体のMFR>
JIS―K−7210に準拠して測定した。
JIS―K−7210に準拠して測定した。
<エチレン系重合体の融点(mp)>
ティーエイインスツルメント社製の示差走査熱良計「MDSC2920型」を使用し、樹脂約8〜12mgを0℃から200℃まで10℃/分の速度で昇温させ、200℃で5分間溶融保持した後に−50℃以下まで急冷し、次いで0℃から200℃まで10℃/分で昇温させた際に得られる融解に伴う吸熱ピークの温度を融点とした。
ティーエイインスツルメント社製の示差走査熱良計「MDSC2920型」を使用し、樹脂約8〜12mgを0℃から200℃まで10℃/分の速度で昇温させ、200℃で5分間溶融保持した後に−50℃以下まで急冷し、次いで0℃から200℃まで10℃/分で昇温させた際に得られる融解に伴う吸熱ピークの温度を融点とした。
<表面自由エネルギー>
表面自由エネルギー及びその各成分(分散力、極性力、水素結合力)の値が既知の4種の液体として、水、エチレングリコール、ホルムアミド、ヨウ化メチレンを用い、23℃、65%RH下で、接触角計CA−D型(協和界面科学(株)製)にて、各液体の積層膜上での接触角を測定した。1つの測定面に対し5回測定を行い、その平均値を接触角(θ)とした。この接触角の値及び各液体の既知の値(Panzerによる方法IV(日本接着協会誌第15巻、第3号、第96頁に記載)の数値)から、拡張Fowkes式とYoungの式より導入される下記式を用いて各成分の値を計算した。
(γSd・γLd)1/2+(γSp・γLp)1/2+(γSh・γLh)1/2=(1+cosθ)/2
ここで、γLd、γLp、γLhは、それぞれ測定液の分散力、極性力、水素結合力の各成分を表し、θは測定面上での測定液の接触角を表し、また、γSd、γSp、γShは、それぞれ積層膜表面の分散力、極性力、水素結合力の各成分の値を表す。既知の値及びθを上記の式に代入して得られた連立方程式を解くことにより、測定面(積層膜表面)の3成分の値を求めた。本発明においては、求められた分散力成分の値と極性力成分の値と水素結合力成分の値の和を、表面自由エネルギー(E)の値とした。
E=γSd+γSp+γSh
表面自由エネルギー及びその各成分(分散力、極性力、水素結合力)の値が既知の4種の液体として、水、エチレングリコール、ホルムアミド、ヨウ化メチレンを用い、23℃、65%RH下で、接触角計CA−D型(協和界面科学(株)製)にて、各液体の積層膜上での接触角を測定した。1つの測定面に対し5回測定を行い、その平均値を接触角(θ)とした。この接触角の値及び各液体の既知の値(Panzerによる方法IV(日本接着協会誌第15巻、第3号、第96頁に記載)の数値)から、拡張Fowkes式とYoungの式より導入される下記式を用いて各成分の値を計算した。
(γSd・γLd)1/2+(γSp・γLp)1/2+(γSh・γLh)1/2=(1+cosθ)/2
ここで、γLd、γLp、γLhは、それぞれ測定液の分散力、極性力、水素結合力の各成分を表し、θは測定面上での測定液の接触角を表し、また、γSd、γSp、γShは、それぞれ積層膜表面の分散力、極性力、水素結合力の各成分の値を表す。既知の値及びθを上記の式に代入して得られた連立方程式を解くことにより、測定面(積層膜表面)の3成分の値を求めた。本発明においては、求められた分散力成分の値と極性力成分の値と水素結合力成分の値の和を、表面自由エネルギー(E)の値とした。
E=γSd+γSp+γSh
<耐ガラス剥離強度>
太陽電池用ガラス板(AGC社製白板ガラス10cmX5cm角、厚さ3mm)/樹脂封止シート/バックシート(東洋アルミニウム社製、トーヤルソーラー)の順に重ね、LM50型真空ラミネート装置(NPC社)を用いて、150℃にて5分間脱気後、10分間真空ラミネートして剥離強度測定用サンプルを作成した。そのラミネートサンプルを東洋ボールドイン社製の「テンシロンUMT−II−500型」を用いて、温度23℃、相対湿度55%の条件下で、ガラスと封止シート間の剥離強度を測定した。なお、引張速度は200mm/分、剥離角度は180度とし、強度が定常状態の達したときの値を剥離強度の値とした。
太陽電池用ガラス板(AGC社製白板ガラス10cmX5cm角、厚さ3mm)/樹脂封止シート/バックシート(東洋アルミニウム社製、トーヤルソーラー)の順に重ね、LM50型真空ラミネート装置(NPC社)を用いて、150℃にて5分間脱気後、10分間真空ラミネートして剥離強度測定用サンプルを作成した。そのラミネートサンプルを東洋ボールドイン社製の「テンシロンUMT−II−500型」を用いて、温度23℃、相対湿度55%の条件下で、ガラスと封止シート間の剥離強度を測定した。なお、引張速度は200mm/分、剥離角度は180度とし、強度が定常状態の達したときの値を剥離強度の値とした。
<耐熱性>
太陽電池用ガラス板(AGC社製白板ガラス5cmX10cm角:厚さ3mm)/樹脂封止シート/発電部分(単結晶シリコンセル(厚さ250μm)/樹脂封止シート/太陽電池用ガラス板の順に重ね、LM50型真空ラミネート装置(NPC社)を用いて150℃にて5分間脱気後、10分間真空ラミネートし、積層したサンプルの一方のガラス板を85℃に設定した恒温槽の壁面に固定し、24時間放置し、他方のガラス板とのズレを測定した。
〇:ガラス板のズレがほぼなし。
×:ガラス板のズレが3mm以上。
太陽電池用ガラス板(AGC社製白板ガラス5cmX10cm角:厚さ3mm)/樹脂封止シート/発電部分(単結晶シリコンセル(厚さ250μm)/樹脂封止シート/太陽電池用ガラス板の順に重ね、LM50型真空ラミネート装置(NPC社)を用いて150℃にて5分間脱気後、10分間真空ラミネートし、積層したサンプルの一方のガラス板を85℃に設定した恒温槽の壁面に固定し、24時間放置し、他方のガラス板とのズレを測定した。
〇:ガラス板のズレがほぼなし。
×:ガラス板のズレが3mm以上。
樹脂封止シートに対する表面処理は以下の通りに行った。
<電離性放射線処理>
電子線処理をEPS−300もしくはEPS−800の電子線照射装置(日新ハイボルテージ社製)を用いて加速電圧500kV、照射密度30kGyで処理した。
<コロナ処理>
コロナ処理を空気雰囲気下、フィルムと電極との間隔を1mmとし、処理電力を20W・min/m2で処理した。
<プラズマ処理>
希ガスが20モル%以上含有される760torr(常圧)の雰囲気下で、かつ表面が誘電体によって被覆され50℃に冷却された電極と、これに対向して設けられた表面が誘電体によって被覆された電極を用いて、処理電力密度500W・min/m2でプラズマ処理を行った。
<電離性放射線処理>
電子線処理をEPS−300もしくはEPS−800の電子線照射装置(日新ハイボルテージ社製)を用いて加速電圧500kV、照射密度30kGyで処理した。
<コロナ処理>
コロナ処理を空気雰囲気下、フィルムと電極との間隔を1mmとし、処理電力を20W・min/m2で処理した。
<プラズマ処理>
希ガスが20モル%以上含有される760torr(常圧)の雰囲気下で、かつ表面が誘電体によって被覆され50℃に冷却された電極と、これに対向して設けられた表面が誘電体によって被覆された電極を用いて、処理電力密度500W・min/m2でプラズマ処理を行った。
実施例及び比較例において用いた各材料は以下の通りである。
<樹脂>
(1)エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)
東ソー社製 EVA751(VA=28%、MFR=5.7、融点72℃)
(2)エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物(EVAケン化物)
東ソー社製 メルセン6410(VA=28%、MFR=5.7、ケン化度10%、融点72℃)
<有機過酸化物>
アルケマ吉富社製 ルペロックス101
<シランカップリング剤>
信越化学社製 KBM503
<樹脂>
(1)エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)
東ソー社製 EVA751(VA=28%、MFR=5.7、融点72℃)
(2)エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物(EVAケン化物)
東ソー社製 メルセン6410(VA=28%、MFR=5.7、ケン化度10%、融点72℃)
<有機過酸化物>
アルケマ吉富社製 ルペロックス101
<シランカップリング剤>
信越化学社製 KBM503
以下、実施例1〜5及び比較例1〜4の樹脂封止シートの製造方法について示す。
<実施例1〜5>
表1に示す材料及び組成比(単位は質量部)で樹脂封止シートを製造した。
2台の押出機(表面層押出機、内層押出機)を使用して樹脂を溶融し、その押出機に接続された環状ダイから樹脂をチューブ状に溶融押出し、溶融押出にて形成されたチューブを水冷リングを用いて急冷することにより実施例1〜5の樹脂封止シートを得た。有機過酸化物を導入するにあたっては導入する樹脂にあらかじめ5質量%程度の濃度で混練してマスターバッチ化して、配合したい量に希釈して使用した。
得られた実施例1〜5の樹脂封止シートに対して、表中に示した各表面処理を施し、樹脂封止シートの表面自由エネルギー、ゲル分率、耐ガラス剥離強度、耐熱性を評価した。評価結果を表1に示す。
<実施例1〜5>
表1に示す材料及び組成比(単位は質量部)で樹脂封止シートを製造した。
2台の押出機(表面層押出機、内層押出機)を使用して樹脂を溶融し、その押出機に接続された環状ダイから樹脂をチューブ状に溶融押出し、溶融押出にて形成されたチューブを水冷リングを用いて急冷することにより実施例1〜5の樹脂封止シートを得た。有機過酸化物を導入するにあたっては導入する樹脂にあらかじめ5質量%程度の濃度で混練してマスターバッチ化して、配合したい量に希釈して使用した。
得られた実施例1〜5の樹脂封止シートに対して、表中に示した各表面処理を施し、樹脂封止シートの表面自由エネルギー、ゲル分率、耐ガラス剥離強度、耐熱性を評価した。評価結果を表1に示す。
<比較例1〜4>
表1に示す材料及び組成比で、実施例と同様の方法により樹脂封止シートを製造した。有機過酸化物及びシランカップリング剤を導入するにあたっては導入する樹脂にあらかじめ5質量%程度の濃度で混練してマスターバッチ化して、配合したい量に希釈して使用した。
得られた比較例1〜4の樹脂封止シートに対して、樹脂封止シートの表面自由エネルギー、ゲル分率、耐ガラス剥離強度、耐熱性を評価した。評価結果を表1に示す。
表1に示す材料及び組成比で、実施例と同様の方法により樹脂封止シートを製造した。有機過酸化物及びシランカップリング剤を導入するにあたっては導入する樹脂にあらかじめ5質量%程度の濃度で混練してマスターバッチ化して、配合したい量に希釈して使用した。
得られた比較例1〜4の樹脂封止シートに対して、樹脂封止シートの表面自由エネルギー、ゲル分率、耐ガラス剥離強度、耐熱性を評価した。評価結果を表1に示す。
表1の結果から明らかなように、本実施の形態の樹脂封止シート(実施例1〜5)は、電離性放射線等の表面処理により表面自由エネルギーが40mN/mに調整されているため、長時間の熱キュア工程を行うことなく、良好な接着性が付与されていた。
本発明の樹脂封止シートは、太陽電池を構成する素子等の部材を保護するための封止材としての産業上利用可能性を有する。
Claims (5)
- 表面処理を施すことにより表面自由エネルギーが40mN/m以上に調整された樹脂封止シート。
- 前記表面処理は、電離性放射線処理、コロナ処理、プラズマ処理からなる群から選択される少なくとも1種の処理である、請求項1記載の樹脂封止シート。
- 前記表面処理は電離性放射線処理である、請求項1記載の樹脂封止シート。
- ゲル分率が1〜80質量%に調整された、請求項1〜3のいずれか1項記載の樹脂封止シート。
- エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−脂肪族不飽和カルボン酸共重合体、エチレン−脂肪族カルボン酸エステル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物、エチレン−酢酸ビニル−アクリル酸エステル共重合体ケン化物、及びポリオレフィン系樹脂からなる群から選択される少なくとも1種の樹脂を含有する、請求項1〜4のいずれか1項記載の樹脂封止シート。
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- 2009-03-25 JP JP2009074598A patent/JP2010222541A/ja active Pending
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