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JP2011040223A - 色素増感型太陽電池、電解質層形成用の塗工液、及び太陽電池モジュール - Google Patents

色素増感型太陽電池、電解質層形成用の塗工液、及び太陽電池モジュール Download PDF

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JP2011040223A JP2009185093A JP2009185093A JP2011040223A JP 2011040223 A JP2011040223 A JP 2011040223A JP 2009185093 A JP2009185093 A JP 2009185093A JP 2009185093 A JP2009185093 A JP 2009185093A JP 2011040223 A JP2011040223 A JP 2011040223A
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Abstract

【課題】本発明は、アルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩を酸化還元対とする電解質層の安定性が高く、優れた耐久性を有する色素増感型太陽電池を提供することを課題とする。
【解決手段】本発明の色素増感型太陽電池は、導電性基材と、前記導電性基材上に形成され、増感色素を細孔表面に担持させた多孔質半導体層と、前記多孔質半導体層に対向して配置された対向電極と、前記導電性基材と前記対向電極の間に形成され、アルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩と、アニオンがB(CN)4 -、Al(CN)4 -、C(CN)3 -、Si(CN)3 -、P(CN)2 -、OCN-、又はSCN-であるイオン性液体とを含む電解質層と、から構成される。
【選択図】図1

Description

本発明は、色素増感型の太陽電池、太陽電池における電解質層を形成するために用いる塗工液、及び二以上の太陽電池を接続してなる色素増感型の太陽電池モジュールに関するものである。
二酸化炭素が原因とされる地球温暖化が世界的に問題となっている近年、環境にやさしく、クリーンなエネルギー源として、太陽光エネルギーを利用した太陽電池の積極的な研究開発が進められている。その中でも、より光電変換効率が高く、低コストの太陽電池として、色素増感型太陽電池が注目されている。
色素増感型太陽電池では、例えば、光の入射する側から、透明基板、この透明基板上に形成された透明導電層、色素が担持された酸化物の半導体層、酸化還元対及び電解質を有する電解質層、並びに対向電極を形成した基板が順に積層されて、セルが形成される。特に、グレッチェルセルは、ナノ微粒子である酸化チタンを焼成させた多孔質半導体層を用いることを特徴とし、半導体層を多孔質とすることで増感色素の吸着量を増加させ光吸収能を向上させている。さらに、グレッチェルセルの電池性能を向上させる技術として、グレッチェルセルの酸化還元対としてヨウ化リチウム等のアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩を用いることで、電流値を増加させることが知られている(特許文献1の段落0004から0005)。
ところが、従来の色素増感型太陽電池では、有機溶媒系の電解質が用いられているので、液の蒸発による性能低下の問題がある。これに対して、常温で比較的安定なイオン性液体を電解質に用いる色素増感型太陽電池が提案されている。
例えば、特許文献2には、アニオンがフッ素含有イミドイオンであるイオン性液体を溶媒とした電解質が開示されている。しかし、アニオンがフッ素含有イミドイオンであるイオン性液体は、電流値や光電変換効率の電池性能が不十分であるという問題がある。
また、例えば、特許文献2や特許文献3には、アニオンが非フッ素含有物であるイオン性液体が開示されている。しかし、非フッ素含有物であるイオン性液体の多くは、アルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩に対する溶解性が低い。溶解性が低いイオン性液体を用いた電解質層では、十分な量のアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩が添加できず、また、無理に添加してもアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩が析出してくることがあり、電解質層の経時安定性に欠けるという問題がある。
さらに、色素増感型太陽電池の実用化にあたっては、様々な環境下において長期の使用に耐え得るように太陽電池の耐久性をより高めることが重要な課題である。太陽電池の耐久性を向上させるには、電解質層の経時や熱に対する安定性が必要となる。
特開2004−247158 特開2006−134615 特開2006−302531
本発明は、上記の状況を鑑みて、アルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩を酸化還元対とする電解質層の安定性が高く、優れた耐久性を有する色素増感型太陽電池、及び色素増感型太陽電池モジュールを提供することを課題とする。また、そのような電解質層を形成するための塗工液を提供することを課題とする。
本発明者は、アニオンがB(CN)4 -、Al(CN)4 -、C(CN)3 -、Si(CN)3 -、P(CN)2 -、OCN-、又はSCN-であるイオン性液体が、アルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩に対する溶解性が高いことを見出して、本発明を完成させた。
さらに、本発明者は特に、アニオンがB(CN)4 -であるイオン性液体を用いることで、アルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩の経時劣化等を防止できることを見出して、より優れた発明も完成させた。
すなわち、本発明の要旨は、下記の通りである。
第1の発明は、 導電性基材と、前記導電性基材上に形成され、増感色素を細孔表面に担持させた多孔質半導体層と、前記多孔質半導体層に対向して配置された対向電極と、前記導電性基材と前記対向電極の間に形成され、アルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩と、アニオンがB(CN)4 -、Al(CN)4 -、C(CN)3 -、Si(CN)3 -、P(CN)2 -、OCN-、又はSCN-であるイオン性液体とを含む電解質層と、から構成される色素増感型太陽電池である。
第2の発明は、第1の発明において、アニオンがB(CN)4 -である色素増感型太陽電池である。
第3の発明は、第1の発明又は第2の発明において、電解質層に熱可塑性のセルロース系樹脂を含む色素増感型太陽電池である。
第4の発明は、色素増感型太陽電池の電解質層形成用塗工液であって、アルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩と、アニオンがB(CN)4 -、Al(CN)4 -、C(CN)3 -、Si(CN)3 -、P(CN)2 -、OCN-、又はSCN-であるイオン性液体とを含む塗工液である。
第5の発明は、二以上の第1の発明から第3の発明のいずれかの色素増感型太陽電池を、直列又は並列に接続してなる色素増感型太陽電池モジュールである。
本発明によれば、アルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩を酸化還元対として含む電解質層の安定性が高く、優れた耐久性を有する色素増感型太陽電池、及び太陽電池モジュールを得ることができる。また、そのような電解質を形成するための塗工液を得ることができる。
本発明の色素増感型太陽電池の一実施形態を示す断面図である。
以下、本発明を詳細に説明する。
図1は、本発明の色素増感型太陽電池の一実施形態を示す断面図である。この色素増感型太陽電池1は、導電性基材10と、導電性基材10上に形成され増感色素を細孔表面に担持させた多孔質半導体層20と、多孔質半導体層20に対向して配置された対向電極40と、導電性基材10及び対向電極40の間に形成された電解質層30とから概略構成されている。電解質層30は少なくとも、アルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩を成分とする酸化還元対、及びアニオンがB(CN)4 -、Al(CN)4 -、C(CN)3 -、Si(CN)3 -、P(CN)2 -、OCN-、又はSCN-であるイオン性液体で構成されている。
(導電性基材)
導電性基材10としては、各種の金属箔や金属板等の一般的な導電性基材を用いることができ、あるいは、ガラスやプラスチック等の基板上に導電層を形成することによって得ることができる。基板は、透明であっても不透明であっても良いが、光の受光面側に位置する場合には、光の透過性に優れた透明基板であることが好ましい。さらに、耐熱性、耐候性、及び水蒸気等に対するガスバリア性に優れたものであることが好ましい。具体的には、石英ガラス、パイレックス(登録商標)、及び合成石英ガラス等の可撓性のない透明なリジット材、あるいはエチレン−テトラフルオロエチレン共重合体フィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム(PET)、ポリエーテルサルフォンフィルム、ポリエーテルエーテルケトンフィルム、ポリエーテルイミドフィルム、ポリイミドフィルム、及びポリエチレンナフタレート(PEN)等のプラスチックフィルムを挙げることができる。
上記のうち、リジット材を基板としてこれに導電層を形成した導電性基材を使用する場合は、その導電性基材上に後述する多孔質半導体層を形成した後に数百度程度で焼結処理をおこなうことが好ましい。焼結処理により、多孔質半導体層の酸化還元対の保持機能が向上するので、酸化還元対の経時劣化による光電変換効率の低下を防ぎ、太陽電池の耐久性が高まる。
プラスチックフィルムを基板としてこれに導電層を形成した可撓性フィルムからなる導電性基材を使用する場合は、これにより様々な用途に太陽電池を用いることができ、また太陽電池の軽量化、製造コストの削減を果たすことができる。プラスチックフィルムを基板として用いたときは、多孔質半導体層を形成した後に、多孔質半導体層のプレス処理及び/又はプラスチックフィルムが耐えられる程度の温度で焼結処理をおこなうことで、多孔質半導体層の酸化還元対の保持機能を向上させることができる。なお、プラスチックフィルムは単独で基板として使用しても良く、2種以上の異なるプラスチックフィルムを積層した状態で使用しても良い。
導電性基材、又は導電性基材の基板の厚さとしては、10μm〜500μmの範囲内であることが好ましい。
基板上に形成する導電層の材料としては、導電性に優れたものであれば特に限定はされないが、光の受光面側に位置する導電層においては、光の透過性に優れているものであることが好ましい。例えば、光の透過性に優れた材料として、SnO2、ITO、FTO、ZnO、IZO等を挙げることができる。中でも、FTO、ITOは、導電性及び透過性の両方に優れているため特に好ましく用いられる。
また、基板上に形成する導電層の材料としては、各々の仕事関数を考慮して選択することが好ましい。例えば、仕事関数が高い材料としては、Au、Ag、Co、Ni、Pt、C、ITO、FTO、SnO2、ZnO等を挙げることができる。一方、仕事関数が低い材料としては、Li、In、Al、Ca、Mg、Sm、Tb、Yb、Zr等を挙げることができる。
なお、各々の導電層は、単層から構成されていても良く、また、異なる仕事関数の材料が積層されて構成されていても良い。
導電層の膜厚としては、0.1nm〜500nmの範囲内、好ましくは1nm〜300nmの範囲内である。
このような導電層を形成する方法としては、特に限定はされないが、蒸着法、スパッタ法、CVD法等を挙げることができる。中でも、スパッタ法が好ましく用いられる。
(多孔質半導体層)
次に、多孔質半導体層20について説明する。多孔質半導体層は、金属酸化物の微粒子を有し、これに増感色素が担持され、光照射により増感色素から生じた電荷を伝導する機能を有している。
金属酸化物微粒子は、その細孔表面に増感色素が担持されることから、連通孔を有する多孔質であることが好ましい。このような多孔質とすることにより、多孔質半導体層の表面積が大きくなり、十分な量の増感色素を担持させることができる。また、後述する電解質層との接触面積も大きくなり、エネルギー変換効率を向上させることができる。
多孔質半導体層の膜厚としては、1μm〜100μmの範囲内、その中でも、5μm〜30μmの範囲内であることが好ましい。上記範囲内であれば、多孔質半導体層の膜抵抗を小さくすることができ、また、多孔質半導体層による光吸収が十分に行われるからである。
多孔質半導体層を形成する金属酸化物微粒子は、増感色素から発生した電荷を導電性基材10へ伝導させることができるものであれば特に限定はされない。具体的には、TiO2、ZnO、SnO2、ITO、ZrO2、SiO2、MgO、Al23,CeO2、Bi23、Mn34、Y23、WO3、Ta25、Nb25、La23等を挙げることができる。これらの金属酸化物微粒子は、いずれか一種を使用しても良く、また、2種以上を混合して使用してもよい。中でも、TiO2を好ましく用いることができる。さらに、これらの内の一種をコア粒子とし、他の金属酸化物微粒子により、コア粒子を被覆してシェルを形成するコアシェル構造としてもよい。
多孔質半導体層には、金属酸化物微粒子の結着剤として樹脂を添加することができる。このような樹脂としては、後述するセルロース系樹脂を用いることが好ましい。
多孔質半導体層中の金属酸化物微粒子の含有量としては、40重量%〜99.9重量%の範囲内、中でも、85重量%〜99.5重量%の範囲内であることが好ましい。
また、金属酸化物微粒子の粒径としては、1nm〜10μmの範囲内、特に、10nm〜500nmの範囲内であることが好ましい。上記範囲よりも粒子径が小さい場合には、そのような粒子の製造が困難となり、各々の粒子が凝集し、二次粒子を形成する可能性があるため好ましくない。一方、上記範囲よりも粒子径が大きい場合には、多孔質半導体層が厚膜化してしまい、抵抗が高くなるため好ましくない。
粒径の異なる金属酸化物微粒子を混合して用いてもよい。これにより、光散乱効果を高めることができ、多孔質半導体層内により多くの光を閉じ込めることができるため、増感色素における光吸収を効率的に行うことができる。例えば、10nm〜50nmの金属酸化物微粒子と、50nm〜200nmの金属酸化物微粒子とを混合して用いる場合を挙げることができる。
金属酸化物微粒子に担持させる増感色素は、光を吸収し起電力を生じさせることが可能なものであれば特に限定はされない。具体的には、有機色素または金属錯体色素を使用することができる。例えば有機色素としては、アクリジン系、アゾ系、インジゴ系、キノン系、クマリン系、メロシアニン系、フェニルキサンテン系、インドリン系、スクアリウム系の色素が挙げられる。特に、クマリン系が好適に用いられる。
また、金属錯体色素としては、ルテニウム系色素、特にルテニウムビピリジン色素及びルテニウムターピリジン色素が好ましく用いられる。このような増感色素を金属酸化物微粒子の細孔表面に担持させることにより、可視光の範囲まで効率的に取り込んで光電変換を生じさせることができる。
多孔質半導体層を形成する方法としては、特に限定はされないが、塗布法により形成することが好ましい。すなわち、ホモジナイザー、ボールミル、サンドミル、ロールミル、プラネタリーミキサー等の公知の分散機を用いて、金属酸化物微粒子を溶媒に分散させた塗工液を調製し、この塗工液を導電性基材10上(導電層が形成されている場合には導電性基材の導電層側)に塗布し、乾燥させ、必要に応じてさらに焼成する。その後、金属酸化物微粒子の表面に増感色素を吸着させることにより、増感色素が担持された多孔質半導体層を形成することができる。
金属酸化物微粒子の塗工液に使用する溶媒としては、特に限定はされない。具体的には、クロロホルム、塩化メチレン、ジクロロエタン等の塩素系溶媒、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル、エチルセルソルブアセテート等のエステル系溶媒、イソプロピルアルコール、エタノール、メタノール、ブチルアルコール等のアルコール系溶媒、その他、N−メチル−2−ピロリドン、及び純水等を挙げることができる。
その他、必要に応じて、多孔質半導体層の形成に使用する塗工液の塗工適性を向上させるために、各種添加剤を用いてもよい。添加剤としては、界面活性剤、粘度調整剤、分散助剤、pH調節剤等を用いることができる。pH調整剤としては、例えば、硝酸、塩酸、酢酸、アンモニア等を挙げることができる。
金属酸化物微粒子を含む塗工液を塗布する方法としては、公知の塗布方法であれば特に限定はされないが、具体的には、ダイコート、グラビアコート、グラビアリバースコート、ロールコート、リバースロールコート、バーコート、ブレードコート、ナイフコート、エアナイフコート、スロットダイコート、スライドダイコート、ディップコート、マイクロバーコート、マイクロバーリバースコートや、スクリーン印刷等を挙げることができる。このような塗布法を用い、一回または複数回、塗布及び乾燥を繰り返すことにより多孔質半導体層を所望の膜厚になるよう調整して形成する。
塗布、乾燥させた後、必要に応じて焼成を行う。これにより、多孔質半導体層の均質化、高密度化を図ることができ、金属酸化物微粒子間の結着性が高まるため、電荷の伝導性を向上させることができる。また、導電性基材と多孔質半導体層との密着性も向上させることができる。焼成する温度、時間は、多孔質半導体層の膜厚等によって異なり限定されるものではないが、一般的には300℃〜700℃で5分〜120分程度である。また、導電性基材がプラスチックフィルムから構成される場合は、フィルムの耐熱温度以下で乾燥・焼成を行うことが好ましい。
増感色素を担持させる方法としては、例えば、増感色素の溶液に乾燥・焼成した金属酸化物微粒子を浸漬させ、その後、乾燥させる方法や、増感色素の溶液を金属酸化物微粒子上に塗布し、浸透させた後、乾燥させる方法等を挙げることができる。増感色素の溶液に使用する溶媒は、用いる色素増感剤の種類に応じて、水系溶媒、有機系溶媒から適宜選択する。
(対向電極)
対向電極40としては、各種の金属箔や金属板等、あるいはガラスやプラスチック等の基板の表面上に導電層が形成されたものを用いることができる。基板は、透明であっても不透明であっても良いが、光の受光面側に位置する場合には、光の透過性に優れた透明基板であることが好ましい。さらに、耐熱性、耐候性、及び水蒸気等に対するガスバリア性に優れたものであることが好ましい。具体的には、石英ガラス、パイレックス(登録商標)、及び合成石英ガラス等の可撓性のない透明なリジット材、あるいはエチレン−テトラフルオロエチレン共重合体フィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム(PET)、ポリエーテルサルフォンフィルム、ポリエーテルエーテルケトンフィルム、ポリエーテルイミドフィルム、ポリイミドフィルム、及びポリエチレンナフタレート(PEN)等のプラスチックフィルムを挙げることができる。
プラスチックフィルムを基板としてこれに導電層を形成した可撓性フィルムからなる対向電極を使用する場合は、これにより様々な用途に太陽電池を用いることができ、また太陽電池の軽量化、製造コストの削減を果たすことができる。なお、プラスチックフィルムは単独で基板として使用しても良く、2種以上の異なるプラスチックフィルムを積層した状態で使用しても良い。
対向電極、又は対向電極の基板の厚さとしては、の厚さとしては、10μm〜500μmの範囲内であることが好ましい。
基板上に形成する導電層の材料としては、導電性に優れたものであれば特に限定はされないが、光の受光面側に位置する導電層においては、光の透過性に優れているものであることが好ましい。例えば、光の透過性に優れた材料として、SnO2、ITO、FTO、ZnO、IZO等を挙げることができる。中でも、FTO、ITOは、導電性及び透過性の両方に優れているため特に好ましく用いられる。
また、基板上に形成する導電層の材料としては、各々の仕事関数を考慮して選択することが好ましい。例えば、仕事関数が高い材料としては、Au、Ag、Co、Ni、Pt、C、SnO2、ITO、FTO、ZnO等を挙げることができる。一方、仕事関数が低い材料としては、Li、In、Al、Ca、Mg、Sm、Tb、Yb、Zr等を挙げることができる。
なお、各々の導電層は、単層から構成されていても良く、また、異なる仕事関数の材料が積層されて構成されていても良い。
導電層の膜厚としては、0.1nm〜500nmの範囲内、好ましくは1nm〜300nmの範囲内である。
このような導電層を形成する方法としては、特に限定はされないが、蒸着法、スパッタ法、CVD法等を挙げることができる。中でも、スパッタ法が好ましく用いられる。
対向電極の導電層上にさらに触媒層を形成することにより、色素増感型太陽電池の発電効率をより向上させることができる。上記触媒層の例としては、Ptを蒸着した層や、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリピロール等の有機物からなる触媒層を挙げることができるが、これに限定されるものではない。
(電解質層)
次に、電解質層30について説明する。電解質層30は、多孔質半導体層20を形成した導電性基材10と対向電極40との間に形成され、アルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩を成分とする酸化還元対、アニオンがB(CN)4 -、Al(CN)4 -、C(CN)3 -、Si(CN)3 -、P(CN)2 -、OCN-、又はSCN-であるイオン性液体を少なくとも含むものである。
酸化還元対として用いるアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩は、酸化チタン等の金属酸化物半導体のコンダクションバンドを下げる効果があるため、電流が増加し、その結果、電池性能を高めることができる。アルカリ金属塩としては、リチウム塩、ナトリウム塩、及びカリウム塩を挙げることができ、アルカリ土類金属塩としては、カルシウム塩、及びマグネシウム塩を挙げることができる。アルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩は、ヨウ化物又は臭化物であることが好ましい。具体的には、ヨウ化リチウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウム、ヨウ化カルシウム、臭化リチウム、臭化ナトリウム、臭化カリウム、及び臭化カルシウムを挙げることができる。これらのうち、ヨウ化リチウムとヨウ化カリウムが、アニオンがB(CN)4 -、Al(CN)4 -、C(CN)3 -、Si(CN)3 -、P(CN)2 -、OCN-、又はSCN-であるイオン性液体に対する被溶解性が高いので好ましい。これらのアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩は、二種類以上を組み合わせて用いてもよい。
酸化還元対としては、アルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩を含むことを条件として、ヨウ素や臭素を併用することが好ましい。
電解質層30中の酸化還元対の濃度は、酸化還元対の種類によっても異なり特に限定されるものではないが、アルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩がヨウ化物又は臭化物であって、ヨウ素あるいは臭素の酸化還元対を併用する場合には、ヨウ化物又は臭化物が0.1mol/l〜5mol/l、ヨウ素もしくは臭素が0.01mol/l〜0.5mol/lとすることが好ましく、一般的にはアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩とヨウ素又は臭素とのモル比が10:1程度となるように設定する。
イオン性液体は、電解質の粘性を下げ、イオンの伝導性を改善して光電変換効率を向上させるものである。イオン性液体は蒸気圧が極めて低く、室温では実質的に殆ど蒸発せず、一般的な有機溶媒のように揮発や引火の心配がないことから、揮発によるセル特性の低下を防止することができる。
イオン性液体としては、アニオン(陰イオン)が、(1)B(CN)4 -、Al(CN)4 -、C(CN)3 -、Si(CN)3 -、若しくはP(CN)2 -であるシアン化物イオンがホウ素原子、アルミニウム原子、炭素原子、珪素原子、若しくはリン原子に配位して形成されたイオン、(2)OCN-であるシアン酸イオン、又は(3)SCN-であるチオシアン酸イオンであるイオン性液体を用いる。これらのアニオンは、炭素原子と窒素原子の共有結合を有し、共通ないし近似する配位力を備えている。シアン化物イオン、シアン酸イオン又はチオシアン酸イオンがアルカリ金属イオン又はアルカリ土類金属イオンに良好に配位するので、アニオンがB(CN)4 -、Al(CN)4 -、C(CN)3 -、Si(CN)3 -、P(CN)2 -、OCN-、又はSCN-であるイオン性液体は、アルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩を成分とする酸化還元対の溶解性が高く、アルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩を成分とする酸化還元対を良好に保持することができ、電解質層を安定化させることができる。これらのイオン性液体は、いずれか一種を単独で用いても良いし、複数を混合して用いても良い。
特に、アニオンがB(CN)4 -(テトラシアノボレートイオン)であるイオン性液体(以下「TCB系イオン性液体」と記載することがある)を用いることがより好ましい。TCB系イオン性液体を電解質に用いることで、電池性能が良好で、かつアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩の経時劣化等による光電変換効率の低下が少なく、優れた耐久性を有する色素増感型太陽電池を得ることができる。
上記のイオン性液体のカチオン(陽イオン)としては、1−メチル−3−メチルイミダゾリウム、1−エチル−3−メチルイミダゾリウム、1−プロピル−3−メチルイミダゾリウム、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム、1−ヘキシル−3−メチルイミダゾリウム、1−オクチル−3−メチルイミダゾリウム、1−オクタデシル−3−メチルイミダゾリウム、1−メチル−2,3−ジメチルイミダゾリウム、1−ブチル−2,3−ジメチルイミダゾリウム、1−ヘキシル−2,3−ジメチルイミダゾリウム、1−オクチル−2,3−ジメチルイミダゾリウム、及び1−オクタデシル−2,3−ジメチルイミダゾリウム等のイミダゾリウム系、1−メチル−ピリジウム、1−ブチル−ピリジウム、及び1−ヘキシル−ピリジウム等のピリジウム系、脂環式アミン系、並びに脂肪族アミン系であるものを挙げることができる。
イオン液体としては、アニオンがB(CN)4 -、Al(CN)4 -、C(CN)3 -、Si(CN)3 -、P(CN)2 -、OCN-、又はSCN-であるイオン性液体を用いることを条件として、他のイオン性液体を併用しても良く、ヨウ素をアニオンとするヨウ化物系イオン性液体を併用することが好ましい。具体的には、例えば、1,2−ジメチル−3−n−プロピルイミダゾリウムアイオダイド、1−メチル−3−n−プロピルイミダゾリウムアイオダイド、1−プロピル−3−メチルイミダゾリウムアイオダイド、1−ブチル−2,3−ジメチルイミダゾリウムアイオダイド、及び1−ヘキシル−3−メチルイミダゾリウムアイオダイド等を挙げることができる。これらのヨウ化物系イオン性液体は、ヨウ素イオンの供給源であり上記の酸化還元対としても機能させることができる。
電解質層30中のイオン性液体の濃度は、イオン性液体の種類等によっても異なるが、電解質層30中に5重量%〜95重量%、特に10重量%〜85重量%含有させることが好ましい。また、電解質層中に含有させる全てのイオン性液体のうち、アニオンがB(CN)4 -、Al(CN)4 -、C(CN)3 -、Si(CN)3 -、P(CN)2 -、OCN-、又はSCN-であるイオン性液体は、少なくとも、10重量%以上を占めることが好ましい。
なお、ヨウ化物系イオン性液体のように、酸化還元対としても機能するイオン性液体については、上記の電解質層30中のイオン性液体の濃度を決するにあたってイオン性液体ではなく酸化還元対として含有させることとし、上記の酸化還元対について述べた濃度とすることが好ましく、すなわち電解質層30中に0.1〜5mol/l含有させることが好ましい。その場合、アルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩のヨウ化物又は臭化物とヨウ化物系イオン性液体との合計濃度が0.1〜5mol/lであれば良いが、アルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩のヨウ化物又は臭化物は、少なくとも、0.2mol/l以上を占めることが好ましい。
さらに、電解質層30に熱可塑性のセルロース系樹脂を含有させることが好ましい。ここでセルロース系樹脂とは、セルロース又はその誘導体をいい、酸化還元対及びイオン性液体を保持して、固体状の電解質層を形成させるものである。電解質を固体化することで、封止材の劣化や破損により液漏れが発生することを防止できる。
一般に、高分子化合物を用いて電解質を固体化する場合は、高分子化合物をイオン性液体に直接溶解させることが困難であるので、高分子化合物、イオン性液体、及び酸化還元対を適当な溶媒に溶解させた塗工液を作成した後、その塗工液を後述する塗布法により半導体層上に塗布し溶媒を蒸発させて、固体状の電解質層を形成させる。セルロース系樹脂は、本発明におけるアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩を成分とする酸化還元対、及びB(CN)4 -、Al(CN)4 -、C(CN)3 -、Si(CN)3 -、P(CN)2 -、OCN-、又はSCN-であるイオン性液体が溶解し易い溶媒(メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール等の低級アルコール、水、NMP等)に対する被溶解性が高いので、全体として塗工液の生産性に優れ、さらに電解質層を塗工液の塗布によって形成する場合に、成膜性に優れ、薄膜形成(例えば4μm)が可能であるので、本発明における電解質の固体化に適している。また、セルロース系樹脂で固体化された電解質層は、酸化還元対及びB(CN)4 -、Al(CN)4 -、C(CN)3 -、Si(CN)3 -、P(CN)2 -、OCN-、又はSCN-であるイオン性液体の保持能力が良好である。
さらに、セルロース系樹脂は、耐熱性が高いので、セルロース系樹脂で固体化した電解質層は、高温下でも液漏れが起こらず熱安定性が高い。例えば、太陽電池の製造工程では、セルを150℃程度で熱封止する必要が生じる場合があり、また、炎天下の密閉空間では空間内温度が80℃程度まで上昇することも起こり得るので、電解質層の熱安定性を向上させることは重要である。特に、TCB系イオン性液体を用いた電解質層をセルロース系樹脂で固体化することで、電解質層の経時かつ熱に対する安定性を高くすることができ、耐久性がより優れた色素増感型太陽電池を得ることができる。
このようなセルロース系樹脂としては、反応性物質を使用しない熱可塑性樹脂(非熱硬化性樹脂)を用いる。反応性物質を用いると、未反応の残存物や副生成物が電解質中に発生し、酸化還元対等に悪影響を及ぼし、太陽電池の耐久性を損ねることがあるからである。具体的にはセルロース、酢酸セルロース、二酢酸セルロース、三酢酸セルロース等のセルロースアセテート(CA)、セルロースアセテートブチレート(CAB)、セルロースアセテートプロピオネート(CAP)、セルロースアセテートフタレート、硝酸セルロース等のセルロースエステル類、メチルセルロース、エチルセルロース、ベンジルセルロース、シアノエチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等のセルロースエーテル類が挙げられる。これらのセルロース系樹脂は、いずれかを単独で用いても良いし、2種以上を組み合わせて用いても良い。
セルロース系樹脂の中でも、電解質溶液への相溶性の観点から、特にカチオン性セルロース誘導体が好ましく用いられる。カチオン性セルロース誘導体とは、セルロース又はその誘導体のOH基にカチオン化剤を反応させてカチオン化したものをいう。カチオン性セルロース誘導体を含有させることにより、電解液の保持性に優れ、特に高温下あるいは加圧時において電解液の液漏れがない、熱安定性に優れた固体電解質を得ることができる。また、電解液の液漏れがないため、従来必須材料であった、セル内に電解質層を封止するための封止材が不要となり、太陽電池の製造コストを低減し、作製工程の簡略化を図ることができる。これらの効果は、色素増感型太陽電池における電解液が、主に溶媒(有機溶媒やイオン性液体)及びヨウ素塩(I-、I3 -)等から構成され、アニオン性に偏っているため、カチオン化したセルロース誘導体を用いることで、電解液との相溶性、電解液の吸着性が向上することに起因すると考えられる。
カチオン化するセルロース又はその誘導体としては、セルロース、及びメチルセルロース、エチルセルロース等のアルキルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等のヒドロキシアルキルセルロース、あるいはヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルエチルセルロース等の、セルロースのOH基がアルコキシ基又はヒドロキシアルコキシ基で置換されたヒドロキシアルキルアルキルセルロース等を挙げることができる。その中でも、ヒドロキシエチルセルロース等のヒドロキシアルキルセルロースが好ましく用いられる。
カチオン化剤としては、セルロース又はその誘導体のOH基と反応する基、及び4級アンモニウム基等のカチオン部位を有する物質が用いられる。OH基と反応する基としては、OH基と共有結合を形成する反応基であれば特に限定されず、例えば、エポキシ基、ハロヒドリン基、ハロゲン基、ビニル基、メチロール基等が挙げられる。特に、反応性の点からエポキシ基及びハロヒドリン基が好ましい。また、4級アンモニウム基は、−N+3(ただし、式中のRは置換基を有していてもよいアルキル基、アリール基又は複素環基である)の構造を有する。このようなカチオン化剤の好適な例として、グリシジルトリメチルアンモニウムクロライド、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロライド等のグリシジルトリアルキルアンモニウムハライド及びそのハロヒドリン型が挙げられる。
例えば、好ましいカチオン性セルロース又はその誘導体の例として、ヒドロキシエチルセルロースと、カチオン化剤である3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロライドとを反応させて得られるエーテルが挙げられる。このカチオン性セルロース誘導体では、セルロースの3つのOH基の水素原子の一部がヒドロキシエチル基(−CH2CH2OH)によって置換されており、その置換されている割合(置換度m)は、1〜3(すなわちセルロースの繰り返し単位中1〜3個のOH基が置換されている)、好ましくは1.3程度である。
また、カチオン化剤によってカチオン化する割合、すなわち、上記のカチオン性セルロース誘導体の場合において、ヒドロキシエチルセルロースの全ての−CH2CH2OH基の内の、4級アンモニウム塩でカチオン化されている−CH2CH2OH基の割合は、セルロースの分子量等によって異なり、特に限定されるものではないが、好ましくは20%〜50%、より好ましくは30%〜40%である。なお、これらの置換度m及びカチオン化する割合についての数値範囲は、上記のようなカチオン化したヒドロキシエチルセルロース以外のカチオン性セルロース誘導体についても同様に当てはまる。
上記カチオン性セルロース又はその誘導体を製造するに当たっては、常法に従って行うことができる。具体的には、セルロース又はその誘導体にカチオン化剤と触媒であるアルカリ金属の水酸化物とを作用させることにより行われる。反応溶媒としては、セルロース又はその誘導体に対して8重量倍〜15重量倍の水、あるいはメタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、t−ブタノール等の低級アルコールの単独又は水との混合溶媒が適用可能である。アルカリ金属の水酸化物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が挙げられる。また、カチオン化剤及び触媒の量は、反応系の溶媒組成、反応器の機械的条件その他の要因によって異なるが、上記の、セルロース又はその誘導体の分子中のカチオン化される割合が所望の値となるように適宜調整される。
なお、アルキルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース等のセルロース誘導体は、例えば、セルロースをアルカリ処理した後、塩化メチル等のハロゲン化アルカンやアルキレンオキシド等を付加する方法等により得ることができる。
カチオン化剤と反応させた後、残存する水酸化アルカリ金属塩を鉱酸もしくは有機酸により中和し、適宜、イソプロピルアルコール、アセトン等の有機溶媒により洗浄、精製、乾燥を行ってカチオン性のセルロース又はその誘導体を得ることができる。乾燥物が凝集した塊状物である場合には、ハンマーミル等で解砕することにより粉末状とし、使用時のハンドリング性を向上させることができる。
上記のようなセルロース系樹脂の分子量は、そのセルロース系樹脂の種類によって異なり特に限定されないが、電解質層を形成する際に良好な造膜性を得る観点から、重量平均分子量が10,000以上(ポリスチレン換算)、特に100,000〜200,000の範囲であることが好ましい。例えば、セルロース系樹脂としてエチルセルロースを用いる場合には、水に2重量%でエチルセルロースを溶解させ、30℃で粘度測定を行った場合の値で、10mPa・s〜1000mPa・s、特に5mPa・s〜500mPa・sの粘度を示すような分子量とすることが好ましい。
また、セルロース系樹脂のガラス転移温度は、電解質層の十分な熱安定性を得るために、80℃〜150℃であることが好ましい。
電解質層30中のセルロース系樹脂の濃度は、低過ぎると電解質層の熱安定性が低下し、逆に高過ぎると太陽電池の光電変換効率が低下するため、これらを考慮して適宜設定される。具体的には、電解質層30中に5重量%〜60重量%含有させることが好ましい。
その他、電解質層30には、耐久性の向上、開放電圧値の向上等を目的として、種々の添加剤を含有させることができる。添加剤の具体例としては、グアニジウムチオシアネート、ターシャリーブチルピリジン、N−メチルベンゾイミダゾール等を挙げることができる。これら添加剤の電解質層30中の濃度は、各種添加剤を合計して1mol/l以下とすることが好ましい。
電解質層30の形成方法としては、電解質層の形成に用いる塗工液を、多孔質半導体層20と対向電極40とを所定の間隙を有するように配置させ、その間隙に塗工液を注入することによって電解質層を形成する方法(以下、注入法という)、あるいは多孔質半導体層20上に塗布し、乾燥させることにより形成する方法(以下、塗布法という)等を挙げることができる。
電解質層30を注入法により形成する場合は、まず導電層が形成された対向電極40を準備し、多孔質半導体層20及び対向電極40が所定の間隙を有して対向するように配置する。この際の間隙としては、導電性基材10及び対向電極40の間の距離が2μm〜150μmになるように設定することが好ましい。対向電極40を所定の間隙を有して配置するために、導電性基材10側または対向電極40側のいずれか一方にスペーサを設置することができる。このようなスペーサとしては、公知のガラススペーサ、樹脂スペーサが挙げられる。
次に、電解質層の形成に用いる塗工液を、毛細管現象を利用する等して間隙に注入し、温度調整、紫外線照射または電子線照射等を行うことによって硬化させ、電解質層30を形成することができる。これにより、色素増感型太陽電池を得ることができる。
電解質層30を塗布法により形成する場合は、まず、酸化還元対と、アニオンがB(CN)4 -、Al(CN)4 -、C(CN)3 -、Si(CN)3 -、P(CN)2 -、OCN-、又はSCN-であるイオン性液体とを少なくとも含む塗工液を作成する。
次に、塗布法において、塗工液を多孔質半導体層20上に塗布する手段としては、公知の手段を用いることができ、具体的には、ダイコート、グラビアコート、グラビアリバースコート、ロールコート、リバースロールコート、バーコート、ブレードコート、ナイフコート、エアナイフコート、スロットダイコート、スライドダイコート、ディップコート、マイクロバーコート、マイクロバーリバースコートや、スクリーン印刷等を挙げることができる。
なお、セルロース系樹脂やその他の添加剤等を含有させたり、塗工液の塗布適性を調整するために、必要に応じて塗工液に溶媒を用いることができる。溶媒としては、酸化還元対、及びアニオンがB(CN)4 -、Al(CN)4 -、C(CN)3 -、Si(CN)3 -、P(CN)2 -、OCN-、又はSCN-であるイオン性液体が被溶解性を示すエタノール等のアルコール系溶媒、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒、N−メチルピロリドン(NMP)等のアミド系溶媒等の揮発性有機溶媒や、純水等が好ましく用いられる。具体的には、塗工液の安定性、電解質の成膜性の観点から、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール等の低級アルコールや、水、NMP等の溶媒が好適に用いられる。溶媒を用いた場合には、塗工した後、適宜乾燥させて溶媒を除去することにより電解質層を形成することができる。
このようにして形成した電解質層30に対し、対向電極40の導電層側を貼り合わせることにより、本発明の色素増感型太陽電池を得ることができる。
(太陽電池モジュール)
上述のようにして得られた二以上の色素増感型太陽電池1を、直列または並列に接続することにより色素増感型太陽電池モジュールを得ることができる。具体的には、例えば、複数個の色素増感型太陽電池を平面状または曲面状に配列させ、各電池の間には非導電性の隔壁を設けて仕切りをし、それぞれの電池を導電性の部材を用いて電気的に接続するとともに、端部から正極または負極の電極リードを引き出してモジュール化することができる。モジュールを構成する色素増感型太陽電池の個数は任意であり、所望の電圧が得られるように自由に設計することができる。
以下、実施例及び比較例により本発明をさらに詳しく説明するが、これに限定されるものではない。
(電解質層形成用塗工液の調製)
(実施例1)
1−エチル−3−メチルイミダゾリウムテトラシアノボレート(EMIm−TCB)6.67gに、ヨウ化リチウムを0.13g加え、撹拌して溶解させた。続いて、その溶液に、1−プロピル−3−メチルイミダゾリウムアイオダイド(PMIm−I)2.74g、及びヨウ素(I2)を0.24g加えて、攪拌して溶解させた。これにより、電解質層形成用塗工液を調整した。このとき、塗工液(電解質層)中におけるEMIm−TCBの濃度は約26重量%である。
(実施例2)
3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロライドを用いてカチオン化したカチオン性ヒドロキシエチルセルロース(ダイセル化学社製;ジェルナーQH200;置換度m=1.3、カチオン化の割合は−CH2CH2OH基の35%)2.9gをメタノール57gに溶解させた溶液に、ヨウ化リチウムを0.86g加え、攪拌して溶解させた。続いて、その溶液に1−エチル−3−メチルイミダゾリウムテトラシアノボレート(EMIm−TCB)3.6g、1−プロピル−3−メチルイミダゾリウムアイオダイド(PMIm−I)5.0g、及びヨウ素(I2)を0.5g加えて、攪拌して溶解させた。これにより、塗布可能な電解質層形成用の塗工液を調製した。このとき、塗工液を塗布後に乾燥させてメタノールを除去した後の電解質層中におけるEMIm−TCBの濃度は約28重量%であり、カチオン性セルロースの濃度は約22重量%である。
(比較例1)
実施例1にて、ヨウ化リチウムを用いなかった以外は、実施例1と同様にして電解質層形成用塗工液を調整した。
(比較例2)
実施例1にて、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムテトラシアノボレート(EMIm−TCB)に代えて、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムトリフルオロスルフォニルイミド(EMIm−TFSI)を用いた以外は、実施例1と同様にして電解質層形成用塗工液を調整した。
(比較例3)
比較例2にて、ヨウ化リチウムを用いなかった以外は、比較例2と同様にして電解質層形成用塗工液を調整した。
(比較例4)
実施例2にて、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムテトラシアノボレート(EMIm−TCB)に代えて、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムトリフルオロスルフォニルイミド(EMIm−TFSI)を用いた以外は、実施例1と同様にして電解質層形成用塗工液を調整した。
(導電性基材及び多孔質半導体層の形成)
酸化チタン(日本アエロジル社製;P25)をエタノール中に分散させた酸化チタンインキを用意した。続いて、導電性基材としてガラス板上にフッ素ドープ酸化スズ(FTO)膜が形成された透明導電ガラス(日本板硝子社製)を用意し、その導電ガラス上に、上記酸化チタンインキをスクリーン印刷法で塗布し、550℃で焼成し、膜厚10μmの多孔質の酸化チタン層を形成した。次いで、ルテニウム錯体(Solaronix社製;RuI2(NCS)2)を無水エタノール中に3.0×10-4mol/lの濃度となるように溶解させた色素溶液に、上述の酸化チタン層を20時間浸漬させた。浸漬後に色素溶液から引き上げ、酸化チタン層に付着した色素溶液をアセトニトリルで洗浄し、風乾した。これにより、導電性基材上に多孔質半導体層を形成した。
(対向電極の作製)
ガラス板上にフッ素ドープ酸化スズ(FTO)膜が形成された透明導電ガラス(日本板硝子社製)上に白金を厚み150Åで積層することにより対向電極を作製した。
(色素増感型太陽電池の作製)
A.実施例1、比較例1〜3
導電性基材上の多孔質半導体層(4mm×4mm)と対向電極の白金膜とを向かい合わせて、厚さ30μmのアイオノマー樹脂を用いて貼り合わせた。そして、貼り合せたものを実施例1、比較例1〜2における各電解質層形成用塗工液に浸漬させることで、アイオノマー樹脂に電解質層形成用塗工液を含浸させ、電解質層を形成させた。これにより、所望の色素増感型太陽電池を作製した。
B.実施例2、比較例3
導電性基材上の多孔質半導体層(4mm×4mm)上に、実施例2、比較例3における各電解質形成塗工液をドクターブレードで塗布し、100℃で乾燥して厚さ4μmの電解質層を形成した。次いで、その電解質層及び多孔質半導体層を形成した導電性基材と対向電極とを貼り合わせ、クリップで圧着した。これにより、所望の色素増感型太陽電池を作製した。
(発電性能の評価方法)
太陽電池の発電性能の評価は、擬似太陽光(AM1.5、入射光強度100mW/cm2)を光源として、増感色素を吸着させた多孔質半導体層を有する導電性基材側から入射させ、ソースメジャーユニット(ケースレー社製、2400型)を用いて電圧を印加して、太陽電池の電流電圧特性を測定し、光電変換効率を求めた。なお、測定に用いた多孔質半導体層の面積は0.16cm2(4mm×4mm)である。
(耐久性の評価方法)
太陽電池の耐久性は、加速劣化試験及び熱安定性試験により評価した。加速劣化試験では、温度を60℃に設定し湿度を無制御としたオーブン内に、500時間及び1000時間保存した後の太陽電池について、上記の発電性能の評価方法と同様の方法で、光電変換効率を求めた。一方、熱安定性試験では、温度を120℃又は150℃に設定し湿度を無制御としたオーブン内に、太陽電池を15分間保存した後、液漏れの有無を目視で調べ、また、上記の発電性能の評価方法と同様の方法で、光電変換効率を求めた。
(評価結果)
表1、表2に上記の実施例及び比較例で作製した色素増感型太陽電池の評価結果を示す。
Figure 2011040223
Figure 2011040223
表1にて、実施例1と比較例1を対比することにより、電解質層にヨウ化リチウムを含むことで、短絡電流密度と光電変換効率が高い、電池特性が良好な色素増感型太陽電池が得られたことがわかる。
また、比較例2にて、電解質層にヨウ化リチウムを含み、かつEMIm−TFSIを用いた場合には、加速劣化試験後に、光電変換効率が大幅に低下した(0.74倍)。他方、比較例3にて、電解質層にヨウ化リチウムを含まないときは、同様に光電変換効率の大幅な低下が見られた(0.86倍)が、その低下の幅は比較例2よりも少なかった。このことは、比較例2では、加速劣化試験によりヨウ化リチウムの経時劣化が起こったことを示している。これに対して、実施例1では、電解質層にEMIm−TCBを用いることで、電解質層にヨウ化リチウムを含んでいても、加速劣化試験後の光電変換効率の低下を少なくすることができた(0.95倍)。このため、電解質層にEMIm−TCBを用いることで、ヨウ化リチウムの経時劣化を防ぎ、光電変換効率を比較的維持でき、耐久性に優れた色素増感型太陽電池が得られたことがわかる。
なお、比較例1にて、電解質層にEMIm−TCBを用いた場合、電解質層にヨウ化リチウムを含まないときは、加速劣化試験をおこなっても光電変換効率が低下することはなかった(1.02倍)。他方で、比較例3にて、EMIm−TFSIを用いた場合には、電解質層にヨウ化リチウムを含まなくても加速劣化試験A後に光電変換効率が低下している(0.86倍)。このことは、EMIm−TFSIを用いた場合には、ヨウ化リチウムの経時劣化以外の要因でも性能低下が発生していることを示している。比較例1と比較例3を対比することで、電解質層にEMIm−TCBを用いることで、ヨウ化リチウムの経時劣化以外の要因による光電変換効率の低下も防ぐことができることがわかる。
表2にて、実施例1と実施例2を対比することで、カチオン性ヒドロキシエチルセルロースを用いて電解質層を固体化することで、熱安定性試験後に液漏れが生じない、熱安定性の優れた電解質層が形成されたことがわかる。さらに、実施例2と比較例4を対比することで、この熱安定性に優れた電解質層においても、EMIm−TCBを用いることで、ヨウ化リチウムの経時劣化等による光電変換効率の低下を少なくし、耐久性により優れた色素増感型太陽電池が得られたことがわかる。
1 色素増感型太陽電池
10 導電性基材
20 多孔質半導体層
30 電解質層
40 対向電極

Claims (5)

  1. 導電性基材と、
    前記導電性基材上に形成され、増感色素を細孔表面に担持させた多孔質半導体層と、
    前記多孔質半導体層に対向して配置された対向電極と、
    前記導電性基材と前記対向電極の間に形成され、アルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩と、アニオンがB(CN)4 -、Al(CN)4 -、C(CN)3 -、Si(CN)3 -、P(CN)2 -、OCN-、又はSCN-であるイオン性液体とを含む電解質層と、
    から構成されることを特徴とする色素増感型太陽電池。
  2. アニオンがB(CN)4 -であることを特徴とする請求項1に記載の色素増感型太陽電池。
  3. 電解質層に熱可塑性のセルロース系樹脂を含むことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の色素増感型太陽電池。
  4. 色素増感型太陽電池の電解質層形成用の塗工液であって、
    アルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩と、アニオンがB(CN)4 -、Al(CN)4 -、C(CN)3 -、Si(CN)3 -、P(CN)2 -、OCN-、又はSCN-であるイオン性液体とを含むことを特徴とする塗工液。
  5. 二以上の請求項1から請求項3のいずれかに記載の色素増感型太陽電池を、直列又は並列に接続してなる色素増感型太陽電池モジュール。
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