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JP5380851B2 - 色素増感型太陽電池の製造方法および色素増感型太陽電池モジュールの製造方法 - Google Patents

色素増感型太陽電池の製造方法および色素増感型太陽電池モジュールの製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、色素増感型の太陽電池および太陽電池モジュール、ならびに太陽電池における電解質層を形成するために用いる塗工液に関するものである。
二酸化炭素が原因とされる地球温暖化が世界的に問題となっている近年、環境にやさしく、クリーンなエネルギー源として、太陽光エネルギーを利用した太陽電池の積極的な研究開発が進められている。その中でも、より光電変換効率が高く、低コストな太陽電池として、色素増感型太陽電池が注目されている。
色素増感型太陽電池は、例えば、光の入射する側から、透明基板、この透明基板上に形成された透明電極、色素が担持された酸化物半導体層、電解質を有する電解質層、および対向電極を形成した基板が順に積層されてセルが形成される。特に、グレッチェルセルは、ナノ微粒子である酸化チタンを焼成させた多孔質の酸化物半導体層を用いることを特徴とし、酸化物半導体層を多孔質とすることで増感色素の吸着量を増加させ光吸収能を向上させている。
上記の色素増感型太陽電池の作製方法は、例えば、まず透明基板の表面に形成された透明電極上に、酸化チタン粒子からなる多孔性半導体層を形成し、その多孔性半導体層に色素を担持させる。次に対向電極に白金膜などの触媒をコーティングし、半導体層と白金膜とが対面するように重ね合わせた後、その間に電解質を注入して電解質層を形成し、側面をエポキシ樹脂等で封止する。このようにして色素増感型太陽電池が作製される。
しかしながら、従来、電解質層には液体電解質が用いられているため、電解質層からの液漏れの可能性があり、光電変換効率の低下をもたらすという問題があった。これに対し、液漏れを防止するべく電解質層を固体化した色素増感型太陽電池が多数提案されている。
特許文献1には、色素で被覆された半導体膜を有する作用電極と、作用電極に対向して設けられた対極と、作用電極と対極の間に挟持された高分子多孔膜からなる固体層とを有し、固体層の空隙に電解液を保持させた色素増感型太陽電池が開示されている。
また、特許文献2には、透明基板の表面に形成された透明導電膜と導電性基板との間に色素が吸着された多孔性半導体層と酸化還元性電解質を有する色素増感型太陽電池において、酸化還元性電解質が3次元的に架橋した高分子化合物に保持されていることを特徴とする色素増感型太陽電池が開示されている。
さらに、特許文献3には、一対の支持体間に、電極層、色素を吸着した多孔性半導体層、電解質層および電極層を備え、電解質層が溶融塩(イオン性液体)を含有する固体電解質からなることを特徴とする色素増感型太陽電池が開示されている。イオン性液体を含有させることで、電解質の粘性を下げ、イオンの伝導性を改善して光電変換効率を向上させることができる。また固体電解質に用いられる高分子化合物として、ポリ(メタ)アクリレート類やエポキシ樹脂等が挙げられている。
その他、固体電解質に用いる高分子化合物としては、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)やウレタン樹脂が提案されているが、これらの従来の樹脂は液体の保持性が悪く、イオン性液体等が分離してしまう傾向があった。その結果、太陽電池の耐久性が悪化したり、光電変換効率が低下するという問題があった。
特開平11−339866号公報 特開2001−210390号公報 特開2006−302531号公報
そこで本発明は、上記従来の状況に鑑み、液体の保持性に優れた樹脂を電解質層に用いることにより、耐久性や光電変換効率を向上させた色素増感型太陽電池、およびそれを用いた色素増感型太陽電池モジュールを提供することを目的とする。また、そのような電解質層を形成するための塗工液を提供することを目的とする。
本発明者は、電解質層の樹脂として、エチルセルロース等のセルロース誘導体を用いることにより上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成した。すなわち、本発明の要旨は次の通りである。
(1)電極基材と、電極基材上に形成され増感色素を細孔表面に担持させた多孔質半導体層と、多孔質半導体層に対向して配置された対向電極と、電極基材および対向電極の間に形成され、酸化還元対およびセルロース誘導体を含む電解質層とから構成される色素増感型太陽電池。
(2)電解質層が、さらにイオン性液体を含む上記(1)に記載の色素増感型太陽電池。
(3)セルロース誘導体が、エチルセルロースである上記(1)または(2)に記載の色素増感型太陽電池。
(4)電極基材および対向電極が、可撓性フィルムである上記(1)〜(3)のいずれかに記載の色素増感型太陽電池。
(5)上記(1)〜(4)のいずれかに記載の色素増感型太陽電池の複数を、直列または並列に接続してなる色素増感型太陽電池モジュール。
(6)上記(1)に記載の色素増感型太陽電池における電解質層を形成するための塗工液であって、酸化還元対、セルロース誘導体および揮発性有機溶媒を含む塗工液。
(7)上記(2)に記載の色素増感型太陽電池における電解質層を形成するための塗工液であって、酸化還元対、セルロース誘導体、イオン性液体および揮発性有機溶媒を含む塗工液。
(8)セルロース誘導体およびイオン性液体が、揮発性有機溶媒に対して溶解性を示す上記(7)に記載の塗工液。
本発明によれば、セルロース誘導体を用いたため、耐久性の優れた固体電解質が形成され、高い光電変換効率を示す色素増感型太陽電池および太陽電池モジュールを得ることができる。
以下、本発明を詳細に説明する。
図1は、本発明の色素増感型太陽電池の一実施形態を示す断面図である。この色素増感型太陽電池1は、電極基材10と、電極基材10上に形成され増感色素を細孔表面に担持させた多孔質半導体層20と、多孔質半導体層20に対向して配置された対向電極40と、電極基材10および対向電極40の間に形成され、酸化還元対、セルロース誘導体および必要に応じてイオン性液体を含む電解質層30とから概略構成されている。電解質層中の樹脂としてセルロース誘導体を用いることにより、酸化還元対、イオン性液体等を良好に保持でき、電解質層30を安定化して色素増感型太陽電池の光電変換効率を向上させることができる。
次に、色素増感型太陽電池1を構成する各部材について説明する。
(1)電極基材および対向電極
電極基材10および対向電極40は、それぞれガラスやプラスチック等の基板の表面上に電極層を形成することによって得ることができる。基板は、透明であっても不透明であっても良いが、光の受光面側に位置する場合には、光の透過性に優れた透明基板であることが好ましい。さらに、耐熱性、耐候性、および水蒸気等に対するガスバリア性に優れたものであることが好ましい。具体的には、石英ガラス、パイレックス(登録商標)、合成石英ガラス等の可撓性のない透明なリジット材、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体フィルム、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエーテルサルフォンフィルム、ポリエーテルエーテルケトンフィルム、ポリエーテルイミドフィルム、ポリイミドフィルム、ポリエステルナフタレート等のプラスチックフィルムを挙げることができる。本発明においては、これらの中でも、プラスチックフィルムを基板としてこれに電極層を形成した可撓性フィルムからなる電極基材および対向電極を使用することが好ましい。これにより様々な用途に太陽電池を用いることができ、また太陽電池の軽量化、製造コストの削減を果たすことができる。なお、プラスチックフィルムは単独で基板として使用しても良く、2種以上の異なるプラスチックフィルムを積層した状態で使用しても良い。
電極基材および対向電極のそれぞれの基板の厚さとしては、15〜500μmの範囲内であることが好ましい。
基板上に形成する電極層の材料としては、導電性に優れたものであれば特に限定はされないが、光の受光面側に位置する電極層においては、光の透過性に優れているものであることが好ましい。例えば、光の透過性に優れた材料として、SnO、ITO、IZO、ZnO等を挙げることができる。中でも、フッ素ドープしたSnO、ITOは、導電性および透過性の両方に優れているため特に好ましく用いられる。
また、電極基材側および対向電極側の電極層は、各々の仕事関数を考慮して材料を選択することが好ましい。例えば、仕事関数が高い材料としては、Au、Ag、Co、Ni、Pt、C、ITO、SnO、フッ素をドープしたSnO、ZnO等を挙げることができる。一方、仕事関数が低い材料としては、Li、In、Al、Ca、Mg、Sm、Tb、Yb、Zr等を挙げることができる。
なお、各々の電極層は、単層から構成されていても良く、また、異なる仕事関数の材料が積層されて構成されていても良い。
電極層の膜厚としては、0.1nm〜500nmの範囲内、好ましくは1nm〜300nmの範囲内である。
このような電極層を形成する方法としては、特に限定はされないが、蒸着法、スパッタ法、CVD法等を挙げることができる。中でも、スパッタ法が好ましく用いられる。
また、対向電極側の電極層上にさらに触媒層を形成することにより、色素増感型太陽電池の発電効率をより向上させることができる。上記触媒層の例としては、Ptを蒸着した層や、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリピロール等の有機物からなる触媒層を挙げることができるが、この限りではない。
(2)多孔質半導体層
次に、多孔質半導体層20について説明する。多孔質半導体層は、金属酸化物半導体の粒子を有し、これに増感色素が担持され、光照射により増感色素から生じた電荷を伝導する機能を有している。
金属酸化物半導体粒子は、その細孔表面に増感色素が担持されることから、連通孔を有する多孔質であることが好ましい。このような多孔質とすることにより、多孔質半導体層の表面積が大きくなり、十分な量の増感色素を担持させることができる。また、後述する電解質層との接触面積も大きくなり、エネルギー変換効率を向上させることができる。
多孔質半導体層の膜厚としては、1μm〜100μmの範囲内、その中でも、5μm〜30μmの範囲内であることが好ましい。上記範囲内であれば、多孔質半導体層の膜抵抗を小さくすることができ、また、多孔質半導体層による光吸収が十分に行われるからである。
多孔質半導体層を形成する金属酸化物半導体粒子は、増感色素から発生した電荷を電極基材10の電極層へ伝導させることができるものであれば特に限定はされない。具体的には、TiO、ZnO、SnO、ITO、ZrO、SiO、MgO、Al、CeO、Bi、Mn、Y、WO、Ta、Nb、La等を挙げることができる。これらの金属酸化物半導体粒子は、いずれか一種を使用しても良く、また、2種以上を混合して使用してもよい。中でも、TiOを好ましく用いることができる。さらに、これらの内の一種をコア粒子とし、他の金属酸化物半導体粒子により、コア粒子を被覆してシェルを形成するコアシェル構造としてもよい。
多孔質半導体層中の金属酸化物半導体粒子の含有量としては、40〜99.9重量%の範囲内、中でも、85〜99.5重量%の範囲内であることが好ましい。
また、金属酸化物半導体粒子の粒径としては、1nm〜10μmの範囲内、特に、10nm〜500nmの範囲内であることが好ましい。上記範囲よりも粒子径が小さい場合には、そのような粒子の製造が困難となり、各々の粒子が凝集し、二次粒子を形成する可能性があるため好ましくない。一方、上記範囲よりも粒子径が大きい場合には、多孔質半導体層が厚膜化してしまい、抵抗が高くなるため好ましくない。
粒径の異なる同種または異種の金属酸化物半導体粒子を混合して用いてもよい。これにより、光散乱効果を高めることができ、多孔質半導体層内により多くの光を閉じ込めることができるため、増感色素における光吸収を効率的に行うことができる。例えば、10〜50nmの金属酸化物半導体粒子と、50〜200nmの金属酸化物半導体粒子とを混合して用いる場合を挙げることができる。
金属酸化物半導体粒子に担持させる増感色素は、光を吸収し起電力を生じさせることが可能なものであれば特に限定はされない。具体的には、有機色素または金属錯体色素を使用することができる。例えば有機色素としては、アクリジン系、アゾ系、インジゴ系、キノン系、クマリン系、メロシアニン系、フェニルキサンテン系、インドリン系、スクアリウム系の色素が挙げられる。特に、クマリン系が好適に用いられる。
また、金属錯体色素としては、ルテニウム系色素、特にルテニウムビピリジン色素およびルテニウムターピリジン色素が好ましく用いられる。このような増感色素を金属酸化物半導体粒子の細孔表面に担持させることにより、可視光の範囲まで効率的に取り込んで光電変換を生じさせることができる。
多孔質半導体層を形成する方法としては、特に限定はされないが、塗布法により形成することが好ましい。すなわち、ホモジナイザー、ボールミル、サンドミル、ロールミル、プラネタリーミキサー等の公知の分散機を用いて、金属酸化物半導体粒子を溶媒に分散させた塗工液を調製し、この塗工液を電極基材10の電極層上に塗布し、乾燥させ、必要に応じてさらに焼成する。その後、金属酸化物半導体粒子の表面に増感色素を吸着させることにより、増感色素が担持された多孔質半導体層を形成することができる。
金属酸化物半導体粒子の塗工液に使用する溶媒としては、特に限定はされない。具体的には、クロロホルム、塩化メチレン、ジクロロエタン等の塩素系溶媒、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル、エチルセルソルブアセテート等のエステル系溶媒、イソプロピルアルコール、エタノール、メタノール、ブチルアルコール等のアルコール系溶媒、その他、N−メチル−2−ピロリドン、および純水等を挙げることができる。
その他、必要に応じて、多孔質半導体層の形成に使用する塗工液の塗工適性を向上させるために、各種添加剤を用いてもよい。添加剤としては、界面活性剤、粘度調整剤、分散助剤、pH調節剤等を用いることができる。pH調整剤としては、例えば、硝酸、塩酸、酢酸、アンモニア等を挙げることができる。
金属酸化物半導体粒子を含む塗工液を塗布する方法としては、公知の塗布方法であれば特に限定はされないが、具体的には、ダイコート、グラビアコート、グラビアリバースコート、ロールコート、リバースロールコート、バーコート、ブレードコート、ナイフコート、エアナイフコート、スロットダイコート、スライドダイコート、ディップコート、マイクロバーコート、マイクロバーリバースコートや、スクリーン印刷等を挙げることができる。このような塗布法を用い、一回または複数回、塗布および乾燥を繰り返すことにより多孔質半導体層を所望の膜厚になるよう調整して形成する。
塗布、乾燥させた後、必要に応じて焼成を行う。これにより、多孔質半導体層の均質化、高密度化を図ることができ、金属酸化物半導体粒子間の結着性が高まるため、電荷の伝導性を向上させることができる。また、電極基材と多孔質半導体層との密着性も向上させることができる。焼成する温度、時間は、多孔質半導体層の膜厚等によって異なり限定されるものではないが、一般的には300〜700℃で5〜120分程度である。また、電極基材が可撓性フィルムから構成される場合は、フィルムの耐熱温度以下で乾燥・焼成を行うことが好ましい。
増感色素を担持させる方法としては、例えば、増感色素の溶液に乾燥・焼成した金属酸化物半導体粒子を浸漬させ、その後、乾燥させる方法や、増感色素の溶液を金属酸化物半導体粒子上に塗布し、浸透させた後、乾燥させる方法等を挙げることができる。増感色素の溶液に使用する溶媒は、用いる色素増感剤の種類に応じて、水系溶媒、有機系溶媒から適宜選択する。
(3)電解質層
次に、電解質層30について説明する。電解質層30は、電極基材10および対向電極40の間に形成され、酸化還元対、セルロース誘導体および必要に応じてイオン性液体を含んでいる。電解質層は固体状であるので、色素増感型太陽電池の耐久性および安定性を向上させることができる。
酸化還元対としては、一般的に電解質層において用いられているものから適宜選択することができる。具体的には、ヨウ素の酸化還元対、もしくは臭素の酸化還元対が好ましく用いられる。ヨウ素の酸化還元対としては、ヨウ素とヨウ化リチウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウム、ヨウ化カルシウム、TPAI(テトラプロピルアンモニウムヨージド)等のヨウ化物との組み合わせを挙げることができる。また、臭素の酸化還元対としては、臭素と臭化リチウム、臭化ナトリウム、臭化カリウム、臭化カルシウム等の臭化物との組み合わせを挙げることができる。
電解質層30中の酸化還元対の濃度は、酸化還元対の種類によっても異なり特に限定されるものではないが、ヨウ素あるいは臭素の酸化還元対を用いる場合、ヨウ素もしくは臭素が0.01〜0.5mol/l、ヨウ化物もしくは臭化物が0.1〜5mol/lとすることが好ましく、一般的にはヨウ素もしくは臭素とヨウ化物もしくは臭化物のモル比が1:10程度となるように設定する。
イオン性液体(常温溶融塩)は、必要に応じて用いられ、電解質の粘性を下げ、イオンの伝導性を改善して光電変換効率を向上させるものである。イオン性液体は蒸気圧が極めて低く、室温では実質的に殆ど蒸発せず、一般的な有機溶媒のように揮発や引火の心配がないことから、揮発によるセル特性の低下を防止することができる。
上記イオン性液体としては、例えば、カチオンが、1−メチル−3−メチルイミダゾリウム、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム、1−ヘキシル−3−メチルイミダゾリウム、1−オクチル−3−メチルイミダゾリウム、1−オクタデシル−3−メチルイミダゾリウム、1−メチル−2,3−ジメチルイミダゾリウム、1−ブチル−2,3−ジメチルイミダゾリウム、1−ヘキシル−2,3−ジメチルイミダゾリウム、1−オクチル−2,3−ジメチルイミダゾリウム、1−オクタデシル−2,3−ジメチルイミダゾリウム等のイミダゾリウム系、1−メチル−ピリジウム、1−ブチル−ピリジウム、1−ヘキシル−ピリジウム等のピリジウム系、脂環式アミン系、脂肪族アミン系であるもの、アニオンが、ヨウ素イオン、臭素イオン、塩素イオン、テトラフルオロボレート、ヘキサフルオロボレート、トリフルオロメタンスルホネート、トリフルオロアセテート等のフッ素系、シアネート系、チオシアネート系であるもの等を挙げることができる。これらの物質は、いずれか一種を単独で用いても良いし、複数を混合して用いても良い。
特に、ヨウ素をアニオンとするヨウ化物系イオン性液体を用いることが好ましい。具体的には、例えば、1,2−ジメチル−3−n−プロピルイミダゾリウムアイオダイド、1−メチル−3−n−プロピルイミダゾリウムアイオダイド、1−プロピル−3−メチルイミダゾリウムアイオダイド、1−ブチル−2,3−ジメチルイミダゾリウムアイオダイド、1−ヘキシル−3−メチルイミダゾリウムアイオダイド等を挙げることができる。これらのヨウ化物系イオン性液体は、ヨウ素イオンの供給源であり上述の酸化還元対としても機能させることができる。
電解質層中のイオン性液体の濃度は、イオン性液体の種類等によっても異なるが、電解質層30中に0〜80重量%、特に30〜70重量%含有させることが好ましい。ヨウ化物系イオン性液体のように、酸化還元対としても機能するイオン性液体については、酸化還元対として含有させることとし、上記の酸化還元対について述べた濃度とすることが好ましく、すなわち電解質層30中に0.1〜5mol/l含有させることが好ましい。その場合、上述の酸化還元対として、そのヨウ化物系イオン性液体以外のヨウ化物は含んでも含んでいなくても良く、結果として酸化還元対として機能するヨウ化物の合計濃度が0.1〜5mol/lであれば良い。
電解質層30に含有させるセルロース誘導体としては、酸化還元対およびイオン性液体を保持して、固体状の電解質層を形成し得るものであれば適宜用いることができる。具体的には、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等を挙げることができ、中でもエチルセルロースが好ましく用いられる。
セルロース誘導体の分子量は、そのセルロース誘導体の種類によって異なり特に限定されない。例えば、セルロース誘導体としてエチルセルロースを用いる場合には、トルエン80%/エタノール20%溶媒に5重量%でエチルセルロースを溶解させ、25℃で粘度測定を行った場合の値で、10〜1000mPa・sの粘度を示すような分子量とすることが好ましい。
電解質層30中のセルロース誘導体の濃度は、小さ過ぎると電解質層の安定性、耐久性が低下し、逆に大き過ぎると太陽電池の光電変換効率が低下するため、これらを考慮して適宜設定される。具体的には、電解質層30中に5〜60重量%含有させることが好ましい。
その他、電解質層30には、耐久性の向上、開放電圧値の向上等を目的として、種々の添加剤を含有させることができる。添加剤の具体例としては、グアニジウムチオシアネート、ターシャリーブチルピリジン、N−メチルベンゾイミダゾール等を挙げることができる。これら添加剤の電解質層中の濃度は、各種添加剤を合計して1mol/l以下とすることが好ましい。
電解質層30の膜厚は、多孔質半導体層20の膜厚も含めて2μm〜150μmの範囲内、その中でも、10μm〜50μmの範囲内であることが好ましい。膜厚が小さ過ぎると多孔質半導体層と対向電極とが接触して短絡の原因となる可能性があり、逆に膜厚が大き過ぎると内部抵抗が大きくなり性能低下につながるため好ましくない。
電解質層30の形成方法としては、電解質層の形成に用いる塗工液を、多孔質半導体層20上に塗布し、乾燥させることにより形成する方法(以下、塗布法という)、あるいは多孔質半導体層20と対向電極40とを所定の間隙を有するように配置させ、その間隙に塗工液を注入することによって電解質層を形成する方法(以下、注入法という)等を挙げることができる。
塗工液の溶媒は、セルロース誘導体の種類等によって適宜選択することができる。具体的には、エタノール等のアルコール系溶媒、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒、N−メチルピロリドン等のアミド系溶媒等の揮発性有機溶媒や、純水等が好ましく用いられる。特に、塗工液の安定性、電解質の成膜性の観点から、セルロース誘導体およびイオン性液体が溶解性を示すような揮発性有機溶媒が好ましく、この観点から、エタノール等のアルコール系溶媒等の溶媒が好ましく用いられる。
塗布法において、塗工液を多孔質半導体層20上に塗布する手段としては、公知の手段を用いることができ、具体的には、ダイコート、グラビアコート、グラビアリバースコート、ロールコート、リバースロールコート、バーコート、ブレードコート、ナイフコート、エアナイフコート、スロットダイコート、スライドダイコート、ディップコート、マイクロバーコート、マイクロバーリバースコートや、スクリーン印刷等を挙げることができる。塗工した後、適宜乾燥させて溶媒を除去することにより電解質層を形成することができる。
塗工液には、場合により添加剤として架橋剤、光重合開始剤等を含有させ、多孔質半導体層上に塗工液を塗布した後、光照射を行うことで電解質層を硬化させても良い。
このようにして形成した電解質層30に対し、対向電極40の電極層側を貼り合わせることにより、本発明の色素増感型太陽電池を得ることができる。
電解質層30を注入法により形成する場合は、まず電極層が形成された対向電極40を準備し、多孔質半導体層20および対向電極40が所定の間隙を有して対向するように配置する。この際の間隙としては、電極基材10および対向電極40の間の距離が2μm〜150μmになるように設定することが好ましい。対向電極40を所定の間隙を有して配置するために、電極基材10側または対向電極40側のいずれか一方にスペーサを設置することができる。このようなスペーサとしては、公知のガラススペーサ、樹脂スペーサが挙げられる。
次に、電解質層の形成に用いる塗工液を、毛細管現象を利用する等して間隙に注入し、温度調整、紫外線照射または電子線照射等を行うことによって硬化させ、電解質層30を形成することができる。これにより、色素増感型太陽電池を得ることができる。
さらに、上述のようにして得られた色素増感型太陽電池1の複数を、直列または並列に接続することにより色素増感型太陽電池モジュールを得ることができる。具体的には、例えば、複数個の色素増感型太陽電池を平面状または曲面状に配列させ、各電池の間には非導電性の隔壁を設けて仕切りをし、それぞれの電池を導電性の部材を用いて電気的に接続するとともに、端部から正極または負極の電極リードを引き出してモジュール化することができる。モジュールを構成する色素増感型太陽電池の個数は任意であり、所望の電圧が得られるように自由に設計することができる。
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、これに限定されるものではない。
(実施例1)
ヘキシルメチルイミダゾリウムアイオダイド(富山薬品)6mol/l、ヨウ素(メルク)0.6mol/l、N−メチルベンゾイミダゾール(アルドリッチ)0.45mol/l、およびグアニジウムチオシアネート(アルドリッチ)0.1mol/lをエチルメチルイミダゾリウムチオシアネート(富山薬品)に溶解し電解液を調製した。
エチルセルロース(30〜50mPa・s、Fluka)をエタノール(純正化学)に10重量%となるように溶解し、樹脂溶液を調製した。なお、上記粘度は、トルエン80%/エタノール20%溶媒に5重量%でエチルセルロースを溶解させ、25℃で粘度測定を行った値である。
次に、上記の電解液と樹脂溶液を1:1.5の重量比となるように混合し、スターラーで攪拌し、電解質層を形成するための塗工液を得た。
フッ素ドープ酸化スズ付きガラス基板(日本板硝子)に、Ti Nanoxide D/SP(Solaronix、約20重量%の酸化チタンを含むペースト)を10μmの膜厚となるようにスクリーン印刷法により塗布し金属酸化物半導体粒子の層を形成した。その後、そのガラス基板を500℃の温度で30分加熱した。
冷却後、増感色素としてルテニウム錯体(Soalronix N719)を無水エタノール溶液に濃度3×10−4mol/lとなるように溶解させ吸着用色素溶液を作製し、ガラス基板を24時間浸漬させ増感色素をガラス基板上の金属酸化物半導体粒子の細孔に担持させ多孔質半導体層を形成した。
形成した多孔質半導体層上に、多孔質半導体層の厚さも含めて55μmの厚さとなるように、上記の電解質層を形成するための塗工液を滴下し、ガラス棒で引き伸ばし、ドライヤで乾燥させた。
対向電極として白金スパッタしたフッ素ドープ酸化スズ付きガラス基板(日本板硝子)を準備し電解質層と貼り合わせて色素増感型太陽電池を作製した。
作製した電池の評価は、AM1.5、擬似太陽光(入射光強度100mW/cm)を光源として、多孔質半導体層を有する電極基材側から入射させ、ソースメジャーユニット(ケースレー2400型)にて電圧印加により電流電圧特性を測定した。その結果、短絡電流11.2mA/cm、開放電圧690mV、変換効率5.2%であった。
(実施例2)
可撓性フィルムであるインジウムドープ酸化スズ付きフィルム基板(ITO/PEN、トービ製OTEC、表面抵抗値13Ω/□)上に、Ti−Nanoxide D−LALT(Solaronix、約18重量%の酸化チタンを含むペースト)を10μmの膜厚となるようにドクターブレード法にて形成した。その後、このフィルム基板をオーブン内において120℃で10分間乾燥させた。
冷却後、増感色素としてルテニウム錯体(Soalronix N719)を無水エタノール溶液に濃度3×10−4mol/lとなるように溶解させ吸着用色素溶液を作製し、ガラス基板を24時間浸漬させて増感色素を金属酸化物半導体粒子の細孔に担持させ多孔質半導体層を形成した。
形成した多孔質半導体層上に上記実施例1に記載の電解質層を形成するための塗工液を多孔質半導体層の厚さも含めて55μmの厚さとなるようにアプリケータによる塗布とドライヤによる乾燥を行い、電解質層を形成した。
対向電極として白金スパッタしたフッ素ドープ酸化スズ付きガラス基板(日本板硝子)を準備し電解質層と貼り合わせて色素増感型太陽電池を作製した。
作製した素子の評価は、AM1.5、擬似太陽光(入射光強度100mW/cm)を光源として、多孔質半導体層を有する電極基材側から入射させ、ソースメジャーユニット(ケースレー2400型)にて電圧印加により電流電圧特性を測定した。その結果、短絡電流7.5mA/cm、開放電圧710mV、変換効率3.5%であった。
(比較例1)
ヘキシルメチルイミダゾリウムアイオダイド(富山薬品)6mol/l、ヨウ素(メルク)0.6mol/l、N−メチルベンゾイミダゾール(アルドリッチ)0.45mol/l、およびグアニジウムチオシアネート(アルドリッチ)0.1mol/lをエチルメチルイミダゾリウムチオシアネート(富山薬品)に溶解し電解液を調製した。
ポリフッ化ビニリデン(PVDF−HFP、品名:POWERFLEX、ARKEMA社)をN−メチルピロリドン(純正化学)に10重量%となるように溶解し、樹脂溶液を調製した。
次に、上記の電解質と樹脂溶液を1:1.5の重量比となるように混合し、スターラーで攪拌し、電解質層を形成するための塗工液を得た。
実施例1において作製したガラス基板上の多孔質半導体層に上記の塗工液を塗布したが、PVDF−HFP添加量が少なく乾燥後においても自立性のあるフィルム状の固体電解質は得られなかった。
本発明の色素増感型太陽電池の一実施形態を示す断面図である。
符号の説明
1 色素増感型太陽電池
10 電極基材
20 多孔質半導体層
30 電解質層
40 対向電極

Claims (3)

  1. 電極基材と、電極基材上に形成され増感色素を細孔表面に担持させた多孔質半導体層と、多孔質半導体層に対向して配置された対向電極と、電極基材および対向電極の間に形成され、酸化還元対セルロース誘導体、およびイオン性液体を含む電解質層とから構成される色素増感型太陽電池の製造方法であって、
    前記電解質層を、酸化還元対、セルロース誘導体、イオン性液体、およびアルコール系溶媒を含有し、かつ前記セルロース誘導体および前記イオン性液体が前記アルコール系溶媒に溶解している塗工液を用いて形成することを特徴とする色素増感型太陽電池の製造方法
  2. 前記アルコール系溶媒がエタノールであることを特徴とする請求項1に記載の色素増感型太陽電池の製造方法。
  3. 電極基材と、電極基材上に形成され増感色素を細孔表面に担持させた多孔質半導体層と、多孔質半導体層に対向して配置された対向電極と、電極基材および対向電極の間に形成され、酸化還元対、セルロース誘導体、およびイオン性液体を含む電解質層とから構成される色素増感型太陽電池の複数を、直列または並列に接続してなる色素増感型太陽電池モジュールの製造方法であって、
    前記電解質層を、酸化還元対、セルロース誘導体、イオン性液体、およびアルコール系溶媒を含有し、かつ前記セルロース誘導体および前記イオン性液体が前記アルコール系溶媒に溶解している塗工液を用いて形成することを特徴とする色素増感型太陽電池モジュールの製造方法。
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