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JP2010225498A - 有機電解液電池 - Google Patents

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Abstract

【課題】高温多湿環境下で信頼性に優れるマンガン酸化物を活物質に用いた有機電解液電池を提供することを目的とする。
【解決手段】有機電解液電池において、正極4と、リチウム金属、リチウム合金あるいはリチウムの吸蔵・放出が可能な材料からなる負極5と、有機電解液なる有機電解液電池において、活物質であるマンガン酸化物と、導電剤の混合物をイミダゾールとリチウムビスパーフルオロスルホニルイミドを含む有機溶媒中にて熱処理したものからなる正極4を用いることを特徴とする。
【選択図】図1

Description

本発明は、正極にマンガン酸化物を用いた有機電解液電池の保存特性向上技術に関する。
正極活物質にコバルト酸リチウム(LiCoO)、負極に黒鉛系の炭素材料を組み合わせたリチウムイオン二次電池が実用化され、携帯電話などの小型携帯機器の主電源に用いられている。コバルト酸リチウムはコストに課題があり、それに代わる活物質の候補であるスピネル型のマンガン酸リチウム(LiMn)について現在多くの研究者により実用化に向けての検討が盛んに行われている。
しかし、スピネル型のマンガン酸リチウムを正極に用いた二次電池は、電池内部の水分による影響(酸形成)や、高温環境下にさらされることにより著しく電池性能が劣化することがある。劣化要因は正極からのマンガンの溶解による正極容量の低下と、溶解したマンガンの負極表面への析出による負極容量の低下の二つが組み合わさって起こると考えられている。
そこで、マンガンの溶解反応を抑制する方法として、マンガン酸リチウムへの異種金属の添加や、マンガン酸リチウムへのコバルト酸リチウムやニッケル酸リチウムの添加、有機電解液への添加剤による水分除去や、負極表面のコーティングなど様々な取り組みがなされている。スピネル型マンガン酸リチウムからなる正極と、有機電解液にエチレンカーボネートとジエチルカーボネートを含む2種類以上の溶媒に、1−ビニルイミダゾール、メタクリル酸ビニル、酢酸ビニル及びこれらの化合物の誘導体からなる群より選択される重合性有機化合物を含むことで、有機電解液の分解に起因するガスの発生を抑制する手段、および電池の高温保存や保存特性を向上させる提案がなされている(特許文献1参照)。
特開2000−223154号公報
しかし、電池内部での水分との反応で形成された酸成分によるマンガンの溶解反応を抑制することに対しては十分な対策がなされていないのが現状である。本発明は、電池内部での水分との反応で形成された酸成分によるマンガン溶解反応を抑制することで、保存特性に優れた有機電解液電池を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために本発明は、正極と、リチウム金属、リチウム合金あるいはリチウムの吸蔵・放出が可能な材料からなる負極と、有機電解液、セパレータからなる有機電解液電池において、前記正極として活物質であるマンガン酸化物と導電剤の混合物をイミダゾールとリチウムビスパーフルオロスルホニルイミドを含む有機溶媒中で熱処理したもので構成したことを特徴とするものである。
本発明により、電池内部での水分との反応で形成された酸成分によるマンガンの溶解反応を抑制することができ、長期保存性能が著しく向上した有機電解液電池を得ることができる。
本発明の第一の発明は、正極と、リチウム金属、リチウム合金あるいはリチウムの吸蔵・放出が可能な材料からなる負極と、有機電解液、セパレータからなる有機電解液電池において、上記正極として活物質であるマンガン酸化物と導電剤の混合物をイミダゾールとリチウムビスパーフルオロスルホニルイミドを含む有機溶媒中で熱処理したもので構成したことを特徴とする有機電解液電池である。上記の構成により、電池内部での水分との反応で形成された酸成分によるマンガンの溶解反応を抑制することができ、長期保存性能が著しく向上した有機電解液電池を得ることができる。
本発明の第二の発明は、第一の発明において、有機溶媒として230℃以上の沸点を有するものを用いたことを特徴とする。この構成により、熱処理温度を高く設定することができるので、上記マンガンの溶解反応の抑制効果もより高くなり、長期保存性能がより優れた有機電解液電池を得ることができる。
正極活物質であるマンガン酸化物と導電剤をイミダゾールとリチウムビスパーフルオロスルホニルイミドを含む有機溶媒中で熱処理することで、マンガンの溶解反応を抑制することができる。しかし、正極活物質のマンガン酸化物のみを同様に熱処理しても効果は得られなかった。詳細な反応機構については不明であるが、以下のように推察している。電池内部での酸成分の形成が主に正極活物質である触媒活性の高いマンガン酸化物、導電剤と有機電解液との3相界面で、水分と有機電解液と溶質などにおいて起こる。前記の熱処理によりマンガン酸化物と導電剤の表面をイミダゾール重合物の被膜でコーティングすることで、有機電解液と直接接することができなくなり、酸形成反応が進行しなかったものと推察される。実際、マンガン酸化物は活性が高く、触媒に使われるのが一般的であり、導電剤であるカーボン種は電極材料としても標準的に使われており、空気電池の空気極の構成としてマンガン酸化物と活性炭との組み合わせがその一例として挙げられる。
熱処理方法としては、正極活物質であるマンガン酸化物と導電剤とを外部にて有機溶媒に浸漬することで予め処理したものを電池に組み込むことや、電池作製後に電池自体を高温に曝すことで電池内部にて正極活物質であるマンガン酸化物と導電剤からなる電極を熱処理することなどが挙げられる。
熱処理温度としては、150℃以上が好ましい。150℃より低くなると、コーティング膜の厚みが薄くなり、厚みのむらも出やすく、熱処理によるコーティングの効果が不十分となる可能性がある。より好ましくは180℃以上で行うことである。また、熱処理の上限温度としては270℃以下にすることが好ましい。
有機溶媒としては、沸点が230℃以上のものを用いることが重要である。低沸点の有機溶媒では蒸気圧が高く、熱処理を行う際の液の蒸発による重量減少が大きくなる。加えて、熱処理温度を高く設定することが難しく、本発明の狙いの熱処理効果も不十分となる可能性があるためである。また、沸点が高い有機溶媒は極性が高いため、イミダゾールとリチウムビスパーフルオロスルホニルイミドの溶解性が良好となる。
熱処理工程の後に、合剤粉末に有機溶媒が残っていても電池特性に悪影響がなく、作業性も簡易となることから、好ましくは電池の有機電解液としても使用可能な有機溶媒種を用いることが最適であり、プロピレンカーボネート、スルホラン、テトラグライムなどが好ましい。
イミダゾールの有機溶媒中での濃度としては0.5〜5wt%程度が好ましい。0.1wt%未満になると完全にマンガン酸化物と導電剤の表面を覆う被膜の厚みが薄くなり、ピンホールの形成の危険性があるため、0.1wt%以上にすることが好ましい。厚みの
観点から好ましくは0.5wt%以上である。また、濃度が5wt%より多くなっても、効果に差が無いため、5wt%以下で十分である。おそらく、膜の厚み等にほとんど差がないものと思われる。
リチウムビスパーフルオロスルホニルイミドの濃度については、有機電解液の溶質として用いる場合と同等レベルの0.7〜1.5mol/Lが好ましい。イミダゾールの量がリチウムビスパーフルオロスルホニルイミドに比べて多くなると、熱処理時の反応性が低下すると思われ、効果は得られなくなる。また、イミダゾール化合物としては官能基がついたものも存在するが、十分な効果は得られない。
以下、本発明の好ましい実施の形態について説明する。なお、以下に示す実施の形態は本発明を具体化した一例であって、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
図1は本発明の実施の形態による有機電解液電池の一例であるコイン型リチウム二次電池の断面構造図である。発電要素を収容するコイン型の電池容器は、耐食性に優れたステンレス鋼からなる正極缶1と、同様にステンレス鋼の負極缶2、及び正極缶1と負極缶2とを絶縁する機能に加え、物理的に発電要素を液蜜的に電池容器内に密閉するためのガスケット3を有している。正極缶1と負極缶2との間に介在されるガスケット3には、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂からなるものを使用した。このガスケット3と正極缶1及び負極缶2とガスケット3との間にブチルゴムをトルエンで希釈した溶液を塗布し、トルエンを蒸発させることによりブチルゴム膜からなるシーラント(図示せず)を形成した。
正極4は、マンガン酸化物を活物質に含む。負極5はリチウムアルミニウム合金である。正極4と負極5との間に配されるセパレータ6には、ポリフェニレンサルファイド(PPS)を使用した。セパレータ6には図示していない有機電解液が充填されている。
マンガン酸化物としては、二酸化マンガン、リチウム含有マンガン酸化物、スピネル型のマンガン酸リチウムが用いられる。二酸化マンガンは一次電池材料として使用されており、電解二酸化マンガンを350〜440℃程度で熱処理したγ―MnOやβ―MnOについては溶解性が高く、本発明の効果が顕著に得られる。リチウム含有マンガン酸化物としては、リチウム化したラムスデライト型の二酸化マンガンや斜方晶のLi0.44MnOが用いられる。スピネル型のマンガン酸リチウムは二次電池の正極材料に用いられている。マンガン酸リチウムについては、リチウム、マンガン、酸素の3源系のLi1+X Mn2−X(0≦X≦0.33)またはスピネル型のマンガンの一部を異種元素で置換したLi1+X Mn2−X−yAO(AはCr、Ni、Co、Fe、Al、B、0≦X≦0.33、0<y≦0.25)などが挙げられる。
導電剤としては、カーボンブラック、アセチレンブラック、デンカブラック、天然黒鉛、人造黒鉛からなる群より選択される少なくとも一種以上である。導電性の点からはカーボンブラック、アセチレンブラック、デンカブラックなどの比表面積が大きいものが好ましい。しかし、マンガン酸化物と有機電解液と導電剤との3相界面が増えるため、酸形成反応の観点ではより多くの反応が起こりやすくなるが、本発明の熱処理を行うことで、電極としての高い導電性を維持しつつ、酸形成反応を抑制し、優れた正極の性能を実現することができる。また、従来課題である正極を構成する活物質や導電剤による有機電解液の分解反応も抑制することができる。
マンガン酸化物からなる正極の結着剤としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、4フッ化エチレン、6フッ化プロピレン共重合体(FEP)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)などのフッ素系樹脂が好ましい。
熱処理は正極活物質と導電剤との混合物、または正極活物質と導電剤とバインダーからなる合剤粉末、または、合剤粉末を成型したペレット、もしくは集電体のアルミニウムに正極活物質と導電剤とバインダーが塗工された電極に実施すると本発明の効果が得られる。また、実際に、電池形成後に合剤ペレットまたは塗工電極と有機電解液とで熱処理することでも同様の効果が得られる。
負極材料としては、リチウム、天然黒鉛、人造黒鉛、難黒鉛化性炭素などの炭素系材料、シリコン、アルミニウム、スズ、ゲルマニウムなどのリチウム合金、一酸化ケイ素、一酸化スズ、一酸化コバルトなどを主体とする金属リチウムに対して1V以下で反応する酸化物と、スピネル型のリチウムチタン酸化物、五酸化二オブ、二酸化タングステンなどの金属リチウムに対して1V以上で反応する酸化物、および、負極に正極に用いるスピネル型のリチウムマンガン酸化物を用いることができる。
セパレータ材料としては、ポロプロピレン、ポリエチレンなどのオレフィン系ポリマー、ポリブチレンテレフタレート、ポリフェニレンスルフイド、ポリエーテルエーテルケトンなどのエンジニアリングプラスチック、無機のガラス繊維からなるガラスセパレータなどが使用できる。好ましくは、エンジニアリングプラスチックやガラス繊維からなるセパレータが好ましい。セパレータとしては、不織布や微多孔膜どちらの形態でも使用できる。
有機電解液としては、前記の沸点が230℃以上の有機溶媒に、低沸点溶媒である1,2ジメトキシエタン、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジグライム、トリグライムやエチレンカーボネートなどから少なくとも一種以上混合した混合溶媒に、溶質として、リチウムビスパーフルオロスルホニルイミドを0.7〜1.5mol/L溶解させたものを用いることができる。また、溶質のリチウムビスパーフルオロスルホニルイミドに4フッ化ホウ酸リチウムや6フッ化リン酸リチウムを10〜20mol%添加して用いてもよい。また、イミダゾールを有機電解液に添加する場合の濃度としては0.5〜5wt%が好ましい。
本発明の有機電解液電池の形状としては、コイン型やボタン型の偏平形電池、円筒型電池、角型電池、アルミラミネート電池などに適応することが可能である。特に、カシメ封口により封止される気密性の低い偏平形電池や円筒型電池に対しては、電池内部への水分侵入が多いため、本発明はより効果的である。
以上の構成にすることで、保存特性に優れた正極にマンガン酸化物を用いた有機電解液電池を提供することができる。
以下、本発明の好ましい実施例について説明する。
(実験1)
図1は、本発明の実施例で用いた厚さ1.4mm、直径4.8mmの二次電池の断面図である。
正極4は、水酸化リチウムと二酸化マンガンを600℃で10時間焼成して得られたスピネル型のマンガン酸リチウムを正極活物質に、導電剤としてカーボンブラック及び結着剤としてフッ素樹脂粉末を85:7:8の重量比で混合したもの7mgを、直径2mm、厚さ0.9mmのペレット状に成型した後、250℃中で12時間乾燥したものである。得られたペレット状の正極材料は、正極缶1の内面にカーボン塗料を塗布することで形成
された正極集電体7に接触するようにしてある。
一方、負極5は、アルミニウムシートを直径2.5mm、厚さ0.2mmの円盤状に打ち抜き、負極缶2の内側に圧着し、続いて厚さ0.10mmのリチウム金属のシートをφ2.0mmに打ち抜き、このアルミニウムの表面に圧着してある。電池組み立て時に、有機電解液を注入することによりリチウムとアルミニウムがショートした状態になり、電気化学的にリチウムがアルミニウム金属中に吸蔵される。この反応により得られたリチウムアルミニウム合金を負極5とした。
また、正極4と負極5との間に配置されるセパレータ6には、ポリフェニレンサルファイド(PPS)を使用した。スルホラン(沸点286℃):1,2ジメトキシエタン(沸点83℃)を90:10の体積比で混合した溶媒に溶質としてリチウムビスパーフルオロスルホニルイミドを1.2mol/L、イミダゾールを1wt%溶解させた有機電解液を、正極缶1、負極缶2とガスケット3からなる電池容器内に体積で2.5μlが充填されている。
このようにして得られた有機電解液電池を、本実施例1に係る電池Aとした。電池自身を高温下に置くことで、電池内部で正極活物質であるマンガン酸化物と導電剤の混合物をイミダゾールとリチウムビスパーフルオロスルホニルイミドを含む有機溶媒中で熱処理を実施した。
電池Aについて、リフロー時のピーク温度を変えて、熱風式リフロー炉中を通過させた。リフロー時のピーク温度は240℃、220℃、200℃、180℃、150℃、140℃である。試験に用いたリフロー炉の内部の温度プロファイルは余熱行程として140℃の環境下に2分間曝され、引き続き加熱行程として140℃、各ピーク温度、140℃を30秒間で通過した後、室温に至るまで自然冷却される。このリフロー工程を2回通過させた。各リフローピーク温度通過後の電池はそれぞれ電池A、A1、A2、A3、A4、A5とする。その後、4.0〜3.0Vの範囲で5μAの定電流で充放電を行い、初期放電容量を調べた。電池A〜A5を5μAの定電流で4.0Vまで充電した後、85℃の乾燥雰囲気と60℃90%多湿環境下での保存試験を実施した。保存期間が30日後に、常温常湿下に取り出して、4.0〜3.0Vの範囲で、5μAの定電流で放電、充電、放電を行い、充電回復容量を測定した。容量は240℃のピーク温度を通過させた電池Aの初期放電容量を100として算出を行った。(表1)に初期放電容量と85℃保存と60℃90%保存試験後の充電回復容量の結果を示す。
Figure 2010225498
リフローピーク温度が140℃になると多湿保存後の充電回復容量が若干低下した。150℃以上では、充電回復容量がより安定な値を示した。
(実験2)
電池Aの有機電解液の混合溶媒に代えて、テトラグライム(沸点275℃)と1,2ジメトキシエタン(沸点83℃)の体積比率が90:10を用いた以外は同構成である電池Bを作製した。
電池Aの有機電解液の混合溶媒に代えて、プロピレンカーボネート(沸点242℃)と1,2ジメトキシエタン(沸点83℃)の体積比率が90:10を用いた以外は同構成である電池Cを作製した。
電池Aの有機電解液の混合溶媒に代えて、ブチレンカーボネート(沸点240℃)と1,2ジメトキシエタン(沸点83℃)の体積比率が90:10を用いた以外は同構成である電池Dを作製した。
電池Aの有機電解液の混合溶媒に代えて、γ―ブチロラクトン(沸点206℃)と1,2ジメトキシエタン(沸点83℃)の体積比率が90:10を用いた以外は同構成である電池Eを作製した。
実施例1と同様に、電池B〜Eについてピーク温度が240℃のリフロー炉を2回通過させた。その後、初期放電容量の測定及び85℃乾燥雰囲気と60℃90%多湿環境下での保存試験を実施した。(表2)に初期放電容量と85℃保存と60℃90%保存試験後の充電回復容量の結果を示す。
電池Eでは、乾燥保存および多湿保存後の劣化が電池A〜Dに比べて若干大きくなった。電池A、B、C、Dでは充電回復容量値がより安定な値を示した。
Figure 2010225498
(実験3)
電池Aのスルホラン(沸点286℃)と1,2ジメトキシエタン(沸点83℃)の体積比率を90:10から70:30に変更した以外は同構成である電池Fを作製した。
電池Aのスルホラン(沸点286℃)と1,2ジメトキシエタン(沸点83℃)の体積比率を90:10から50:50に変更した以外は同構成である電池Gを作製した。
電池Aのスルホラン(沸点286℃)と1,2ジメトキシエタン(沸点83℃)の体積比率を90:10から30:70に変更した以外は同構成である電池Hを作製した。
電池Aのスルホラン(沸点286℃)と1,2ジメトキシエタン(沸点83℃)の体積比率を90:10から10:90に変更した以外は同構成である電池Iを作製した。
実施例1と同様に、電池A,F〜Iについてピーク温度が240℃のリフロー炉を2回通過させた。その後、初期放電容量の測定及び85℃乾燥雰囲気と60℃90%多湿環境下での保存試験を実施した。(表2)に初期放電容量と85℃保存と60℃90%保存試験後の充電回復容量の結果を示す。
電池H、Iでは、乾燥保存および多湿保存後の劣化が電池A〜Dに比べて若干大きくなった。電池A、F、Gでは充電回復容量値がより安定な値を示した。
Figure 2010225498
(実験4)
電池Aの有機電解液のイミダゾール添加量を0.1wt%とした以外は同構成である電池Jを作製した。
電池Aの有機電解液のイミダゾール添加量を0.5wt%とした以外は同構成である電池Kを作製した。
電池Aの有機電解液のイミダゾール添加量を3wt%とした以外は同構成である電池Lを作製した。
電池Aの有機電解液のイミダゾール添加量を5wt%とした以外は同構成である電池Mを作製した。
電池Aの有機電解液のイミダゾール添加量を10wt%とした以外は同構成である電池Nを作製した。
電池Aの有機電解液のイミダゾールを添加しなかった以外は同構成である比較電池1を作製した。
電池Aの有機電解液のイミダゾールをジメチルイミダゾールとした以外は同構成である比較電池2を作製した。
電池Aの有機電解液のイミダゾールをエチルイミダゾールとした以外は同構成である比較電池3を作製した。
実施例1と同様に、ピーク温度が240℃のリフロー炉を2回通過させた。その後、初期放電容量の測定及び85℃保存と60℃90%多湿環境下での保存試験を実施した。
(表4)に初期放電容量と85℃保存と60℃90%保存試験後の充電回復容量の結果を示す。
Figure 2010225498
比較電池1〜3では、乾燥保存および多湿保存後の充電回復容量が著しく低下した。0.1wt%以上で充電回復容量がより安定な値を示した。特に0.5〜5wt%で非常に高い充電回復容量が得られた。また、イミダゾールに置換基を有するものについてはその効果は得られなかった。
(実験5)
電池Aの有機電解液の溶質であるリチウムビスパーフルオロスルホニルイミドを4フッ化ホウ酸リチウムに変更した以外は同構成である比較電池4を作製した。
電池Aの有機電解液の溶質であるリチウムビスパーフルオロスルホニルイミドを6フッ化リン酸リチウムに変更した以外は同構成である比較電池5を作製した。
電池Aの有機電解液の溶質であるリチウムビスパーフルオロスルホニルイミドをトリフルオロメタンスルホン酸リチウムに変更した以外は同構成である比較電池6を作製した。実施例1と同様に、ピーク温度が240℃のリフロー炉を2回通過させた。その後、初期放電容量の測定及び85℃保存と60℃90%多湿環境下での保存試験を実施した。 (表5)に初期放電容量と85℃保存と60℃90%保存試験後の充電回復容量の結果を示す。
Figure 2010225498
比較電池4〜6では、乾燥保存および多湿保存後の充電回復容量が著しく低下した。
(実験6)
図1と同構成である厚さ5mm、直径24mmのコイン型一次電池を作製した。コイン型の電池容器は、耐食性に優れたステンレス鋼からなる正極缶1と、同様にステンレス鋼の負極缶2は実施例1と同様のものを用いた。ガスケット3には、ポリフェニレンサルファイド(PPS)樹脂からなるものを使用した。実施例1と同様にガスケット3と正極缶1及び負極缶2とガスケット3との間にブチルゴムをトルエンで希釈した溶液を塗布し、トルエンを蒸発させることによりブチルゴム膜からなるシーラント(図示せず)を形成した。
正極4は、350℃で熱処理された電解二酸化マンガン(EMD)を活物質に、導電剤としてカーボンブラック及び結着剤としてフッ素樹脂粉末を90:5:5の質量比率で混合したもの2500mgを直径18mm、厚さ3mmのペレット状に成型した後、50℃中で12時間乾燥したものである。この正極ペレットを、プロピレンカーボネートとメチルジグライムを体積比で50:50の比で混合した有機溶媒に1.0mol/Lのリチウムビスパーフルオロスルホニルイミドと1wt%のイミダゾールを溶解させた有機溶液を150℃に加熱し、当該過熱溶液中に正極を5分間浸漬して熱処理を行った。
得られたペレット状の正極材料は、正極缶1の内面にカーボン塗料を塗布することで形成された正極集電体7に接触するようにしてある。一方、負極5は、直径20mm、厚さ1.2mmの金属リチウムを用い、負極缶2に圧着した。また、正極4と負極5との間に配されるセパレータ6には、ポリフェニレンサルファイド(PPS)樹脂からなるものを使用した。熱処理に使用したものと同組成の有機電解液を500μl用いた。このようにして得られた有機電解液電池を本実施例4に係る電池Kとした。
電池Kの正極を熱処理しなかった以外は電池Kと同じ構成の比較電池7を作製した。
電池Kと比較電池7について、正極の二酸化マンガンの理論容量に対して10%容量分を5mAの定電流で放電した後に、高温保存、高温多湿保存、低温放電などを行った。高温保存試験として100℃で240時間貯蔵した後、−40℃の環境下で3mAの電流値で放電させ、放電開始から1秒後の開回路電圧(CCV)を測定した。
高温多湿保存試験として85℃90%で240時間貯蔵した後に、−40℃の環境下で3mAの電流値で放電させ、放電開始から1秒後の開回路電圧(CCV)を測定した。
上記保存試験を行う前に同様のCCV測定を行った。その結果を(表6)に示す。
Figure 2010225498
本発明の電池Kについては、高温保存後及び多湿保存後でもCCVの極端な低下がなく、優れた低温放電特性を維持することができた。熱処理をしていない比較電池4では高温保存及び多湿保存後のCCVの著しい低下が見られた。
実施例に示した以外の本発明に記載の電池構成についても同様の効果が得られる。
本発明は、正極にマンガン酸化物を用いた場合でも、優れた保存性能の有機電解液電池を提供することができ、産業上極めて有用である。
本発明の一実施の形態における有機電解液電池の断面図
1 正極缶
2 負極缶
3 ガスケット
4 正極
5 負極
6 セパレータ
7 正極集電体

Claims (2)

  1. 正極と、リチウム金属、リチウム合金あるいはリチウムの吸蔵・放出が可能な材料からなる負極と、有機電解液、セパレータからなる有機電解液電池において、前記正極として活物質であるマンガン酸化物と導電剤の混合物をイミダゾールとリチウムビスパーフルオロスルホニルイミドを含む有機溶媒中で熱処理したもので構成したことを特徴とする有機電解液電池。
  2. 前記有機溶媒として230℃以上の沸点を有するものを用いたことを特徴とする請求項1記載の有機電解液電池。
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