JP7015102B2 - 正極材料,非水電解質二次電池用正極及び非水電解質二次電池 - Google Patents
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Description
また、安全性に関しては、Tiを含有した正極、すなわち、LiNiMnTiO2とする技術が非特許文献1に記載されている。
ただし、この非特許文献1に記載のようにTiの添加では、安全性の圧倒的な向上がない事が記載されている。
しかしながら、この正極において遷移金属は4配位の配位構造をとることで、充電時に構造が不安定化し、やはり十分な耐久性を持つ正極ではなかった。
しかしながら、特許文献8に記載の正極活物質は、正極活物質表面における結晶構造の安定化の効果は得られるが、安全性については十分でなかった。具体的には、リチウムイオン二次電池(非水電解質二次電池)は、過充電等により、正極活物質に使用されるリチウムの複合酸化物の結晶構造が崩壊し、含有される酸素が放出されてしまう虞があった。
本発明の非水電解質二次電池は、請求項1~4のいずれか1項に記載の正極材料を用いてなる非水電解質二次電池用正極,請求項5に記載の非水電解質二次電池用正極の少なくとも一つを用いてなる。
なお、主成分とは、最も含有割合が大きい成分を示す。
XANESのスペクトル構造は、測定物質を構成する原子の内殻準位から種々の空準位への遷移に対応するため、測定元素の空状態の密度を反映している。
本発明の正極材料は、X線吸収微細構造解析(XAFS)法で測定した酸素K吸収端のXANESスペクトルで、532eV~535eVの範囲に吸収端のピークを持つことが好ましい。この範囲にピークを持つことで、M2-Oの化学結合を有することが確認できる。
[実施形態]
本形態は、図1にその構成を概略断面図で示したコイン型のリチウムイオン二次電池1である。本形態のリチウムイオン二次電池1は、本発明の正極材料を正極活物質として有する正極(非水電解質二次電池用正極)を用いてなる二次電池(非水電解質二次電池)である。
正極材料は、Li2NiαM1 βM2 γMnηO4-ε(0.50<α≦1.33、0.33≦γ≦1.1、0≦η≦1.00、0≦β<0.67、0≦ε≦1.00、M1:Co,Gaより選ばれる少なくとも一種、M2:Ge,Sn,Sbより選ばれる少なくとも一種)で表される。
本形態の正極材料は、XAFS法で測定した酸素K吸収端のXANESスペクトルで、532eV~535eVの範囲に吸収端のピークを持つことが好ましい。
この範囲にピークを持つことで、M2-Oの化学結合を有することが確認できる。
本形態のリチウムイオン二次電池1は、正極活物質として上記の正極材料を用いること以外の構成は、従来のリチウムイオン二次電池と同様とすることができる。
正極14は、正極活物質、導電材及び結着材を混合して得られた正極合剤を正極集電体140に塗布して正極合剤層141が形成される。
非水電解質13は、支持塩が有機溶媒に溶解してなるものを用いる。
非水電解質13の支持塩は、その種類が特に限定されるものではないが、LiPF6,LiBF4,LiClO4及びLiAsF6から選ばれる無機塩,これらの無機塩の誘導体,LiSO3CF3,LiC(SO3CF3)3及びLiN(SO2CF3)2,LiN(SO2C2F5)2,LiN(SO2CF3)(SO2C4F9),から選ばれる有機塩、並びにこれらの有機塩の誘導体の少なくとも1種であることが望ましい。これらの支持塩は、電池性能を更に優れたものとすることができ、かつその電池性能を室温以外の温度域においても更に高く維持することができる。支持塩の濃度についても特に限定されるものではなく、用途に応じ、支持塩及び有機溶媒の種類を考慮して適切に選択することが好ましい。
本形態のリチウムイオン二次電池1において、最も好ましい非水電解質13は、支持塩が有機溶媒に溶解したものである。
負極17は、負極活物質と結着剤とを混合して得られた負極合剤を負極集電体170の表面に塗布して負極合剤層171が形成される。
負極活物質は、従来の負極活物質を用いることができる。Sn,Si,Sb,Ge,Cの少なくともひとつの元素を含有する負極活物質を挙げることができる。これらの負極活物質のうち、Cは、リチウムイオン二次電池1の電解質イオンを吸蔵・脱離可能な(Li吸蔵能がある)炭素材料であることが好ましく、アモルファスコート天然黒鉛であることがより好ましい。
溶媒としては、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)などの有機溶媒、又は水などを挙げることができる。
正極ケース11と負極ケース16は絶縁性のシール材12を介して内蔵物を密封する。内蔵物は、非水電解質13,正極14,セパレータ15,負極17,保持部材18などである。
正極ケース11には正極集電体140を介して正極合剤層141が面接触して導電する。負極ケース17には負極集電体170を介して負極合剤層171が面接触する。
本形態のリチウムイオン二次電池1は、上記の通りコイン型の形状であるが、その形状には特に制限を受けず、円筒型,角型等、種々の形状の電池や、ラミネート外装体に封入した不定形状の電池とすることができる。
本形態の正極材料は、上記の構成を有している者であれば、その製造方法が限定されるものではない。製造方法の例としては、固相合成法、共沈合成法、水熱合成法、錯体重合合成法、イオン交換を介する方法、高温高圧処理による合成法、ゾルゲル法、スプレードライ法、超臨界合成法等が挙げられ、これら方法を単独ないしは複数組み合わせる等の方法を挙げることができる。
本発明を具体的に説明するための実施例として、正極材料(正極活物質),それを用いた正極及びリチウムイオン二次電池を製造した。実施例では、上記の図1に示したリチウムイオン二次電池を製造した。
まず、出発原料であるNa2NiSnO4を製造した。詳しくは、Na,Ni,Snの一種以上の元素を含有する化合物を、これらの元素が所定の原子比となるように秤量・混合した。そして、焼成(大気雰囲気)し、ほぼ単相の結晶構造を有している出発原料を得た。
つづいて、得られたNa2NiSnO4を、硝酸Li及び塩化Liからなる溶融塩中で加熱してイオン交換処理を施した。
以上により、本例の正極材料(Li2NiSnO4粉末)が製造された。製造されたLi2NiSnO4粉末に対し、粉末XRDで観察したところ、ほぼ単相の化合物であることが確認できた。
Li,Ni,Mn,Geのそれぞれの金属錯体を含有する水溶液を調整した。得られた錯体溶液を目的の正極材料の組成比となるように、すなわちLi:Ni:Mn:Geの原子比が2:1:0.67:0.33となるように、混合した。
得られた混合溶液を乾燥炉内で乾燥して有機成分を加熱処理により取り除いた後、加熱し、焼成した。
以上により、本例の正極材料(Li2NiMn0.67Ge0.33O4粉末)が製造された。製造されたLi2.1NiMn0.67Ge0.33O4粉末に対し、粉末XRDで観察したところ、ほぼ単相の化合物であることが確認できた。
実施例1の出発原料と同様にして、ほぼ単相のNa2NiMn0.67Ge0.33O4を製造した。
つづいて、得られたNa2NiMn0.67Ge0.33O4に対し、実施例1の時と同様にイオン交換処理を施した。
以上により、本例の正極材料(Li2NiMn0.67Ge0.33O4粉末)が製造された。製造された正極材料に対し、粉末XRDで観察したところ、ほぼ単相の化合物であることが確認できた。
実施例2の場合と同様に、金属錯体を含有する水溶液から、本例の正極材料(Li2NiMn0.67Sn0.33O4粉末)が製造された。製造された正極材料に対し、粉末XRDで観察したところ、ほぼ単相の化合物であることが確認できた。
実施例1の出発原料と同様にして、ほぼ単相のNa2NiMn0.67Sn0.33O4を製造した。
つづいて、得られたNa2NiMn0.67Sn0.33O4に対し、実施例1の時と同様にイオン交換処理を施した。
以上により、本例の正極材料(Li2NiMn0.67Sn0.33O4粉末)が製造された。製造された正極材料に対し、粉末XRDで観察したところ、ほぼ単相の化合物であることが確認できた。
実施例2の時と同様にして、金属錯体を含有する水溶液から、本例の正極材料(Li2.1Ni0.67Co0.67Mn0.33Ge0.33O4粉末)が製造された。
製造された正極材料に対し、粉末XRDで観察したところ、ほぼ単相の化合物であることが確認できた。
実施例1の出発原料と同様にして、ほぼ単相のNa2Ni0.67Co0.33Mn0.33Ge0.33O4を製造した。
つづいて、得られたNa2Ni0.67Co0.67Mn0.33Ge0.33O4に対し、実施例1の時と同様にイオン交換処理を施した。
以上により、本例の正極材料(Li2Ni0.67Co0.33Mn0.33Ge0.33O4粉末)が製造された。
粉末XRDで観察したところ、ほぼ単相の化合物であることが確認できた。
実施例6の時と同様にして、金属錯体を含有する水溶液から、本例の正極材料(Li2.1Ni0.88Co0.22Mn0.44Ge0.44O4粉末)が製造された。
製造された正極材料に対し、粉末XRDで観察したところ、ほぼ単相の化合物であることが確認できた。
実施例1の時と同様にして、ほぼ単相のNa2Ni0.88Co0.22Mn0.44Ge0.44O4を製造した。
つづいて、得られたNa2Ni0.88Co0.22Mn0.44Ge0.44O4に対し、実施例1の時と同様にイオン交換処理を施した。
以上により、本例の正極材料(Li2Ni0.88Co0.22Mn0.44Ge0.44O4粉末)が製造された。
製造された正極材料に対し、粉末XRDで観察したところ、ほぼ単相の化合物であることが確認できた。
本例の正極材料として、以下の分析結果を示す正極材料を準備した。
正極材料に対し、ICP発光分析及び粉末XRD分析を行った。その結果、本例の正極材料がLi2NiGeO4の組成を持ち、かつ層状岩塩型の結晶構造を有し、空間群R3m(或いはC2/m)にて指数付けが可能な化合物であることが確認できた。また、粉末XRDより、本例の正極材料がほぼ単相であることも確認された。
実施例2の場合と同様に、金属錯体を含有する水溶液から、本例の正極材料(LiNiO2粉末)が製造された。製造されたLi1.05NiO2粉末に対し、粉末XRDで観察したところ、ほぼ単相の化合物であることが確認できた。
上記した各例の正極材料を、X線吸収微細構造解析(XAFS)法で酸素K吸収端のX線吸収スペクトルを測定した。
いずれの実施例においても、532eV~535eVの範囲に吸収端のピークを持つことが確認できた。
各例の代表として、実施例1,2,4,10のX線吸収スペクトルの測定結果を図2~図5に示した。なお、各図においては、比較例1のX線吸収スペクトルを合わせて示した。
図2に示したように、実施例1の正極材料は、532eV~533eVの範囲に、ピークが確認できる。このピークは、Sn-O結合に起因するピークである。すなわち、実施例1の正極材料は、Sn-O結合を有している。
また、図2中に破線で示した比較例1の正極材料は、530eV近傍に、ピークが確認できる。つまり、532eV~535eVの範囲に、ピークを有していない。このピークは、Ni-O結合に起因するピークである。
図3に示したように、実施例2の正極材料は、528eV~529eVの範囲、531eV近傍、及び533eV~534eVの範囲に、三つのピークが確認できる。これらのピークは、低eVのピークから順に、Mn-O結合,Ni-O結合,Ge-O結合に起因するピークである。すなわち、実施例2の正極材料は、Ge-O結合を有している。
図4に示したように、実施例2の正極材料は、528eV~529eVの範囲、531eV近傍、及び533eV近傍に、三つのピークが確認できる。これらのピークは、低eVのピークから順に、Mn-O結合,Ni-O結合,Sn-O結合に起因するピークである。すなわち、実施例4の正極材料は、Sn-O結合を有している。
図5に示したように、実施例10の正極材料は、531eV近傍、及び533eV~534eVの範囲に、二つのピークが確認できる。これらのピークは、低eVのピークから順に、Ni-O結合,Ge-O結合に起因するピークである。すなわち、実施例10の正極材料は、Ge-O結合を有している。
上記の各例の正極材料の評価として、リチウムイオン二次電池を組み立て、充放電特性の評価を行った。また、充放電特性の測定後、コイン型電池を分解して正極を取り出し、安全性の評価を行った。
上記の各例の正極活物質を用いて、リチウムイオン二次電池よりなる試験セル(2032型コイン型ハーフセル)を組み立て、評価を行った。
試験セル(コイン型ハーフセル)は、図1にその構成を示したコイン型のリチウムイオン二次電池1と同様の構成である。
正極は、正極活物質(各例の正極活物質)91質量部,アセチレンブラック2質量部,PVDF7質量部を混合して得られた正極合剤をアルミニウム箔よりなる正極集電体140に塗布して正極合剤層141を形成したものを用いた。
非水電解質13は、エチレンカーボネート(EC)30体積%とジエチルカーボネート(DEC)70体積%との混合溶媒に、LiPF6を1モル/リットルとなるように溶解させて調製されたものを用いた。
試験セルは、組み立てられた後に、1/3C×2サイクルの充放電での活性化処理が行われた。
以上により、各例の試験セル(ハーフセル)が製造された。
リチウムイオン二次電池に対し、1/50Cレートで充電及び放電を行った。充電は4.5VカットのCC充電で、放電は2.6VカットのCC放電で、それぞれ行われた。
すなわち、各実施例の二次電池は、良好な充放電特性がえられることが確認された。
リチウムイオン二次電池に対し、1/50Cレートで4.8Vまで、CC充電で充電を行った。
充電終了後、電池を解体し、正極を取り出した。
測定結果を、表1に合わせて示した。
すなわち、各実施例の正極材料(正極)を用いることで、酸素発生量の少ない安全性に優れた二次電池となることがわかる。
11:正極ケース
12:シール材(ガスケット)
13:非水電解質
14:正極
140:正極集電体
141:正極合剤層
15:セパレータ
16:負極ケース
17:負極
170:負極集電体
171:負極合剤層
18:保持部材
Claims (6)
- Li2NiαM1 βM2 γMnηO4-ε(0.50<α≦1.33、0.33≦γ≦1.1、0≦η≦1.00、0≦β<0.67、0≦ε≦1.00、M1:Co,Gaより選ばれる少なくとも一種、M2:Ge,Sn,Sbより選ばれる少なくとも一種)で表され、
Li層と、Ni層とを備えた層状構造を有し、
M2-Oの化学結合を有し、
Ni、M 1 、及びM 2 が6配位の局所構造を備える正極材料。 - X線吸収微細構造解析(XAFS)法で測定した酸素K吸収端のX線吸収スペクトルで、532eV~535eVの範囲に吸収端のピークを持つ請求項1記載の正極材料。
- 前記層状構造において、
Li層は、Liを主成分として形成される層を示し、
Ni層は、Ni及び、M1及びM2の各元素を主成分として形成される層である請求項1~2のいずれか1項に記載の正極材料。 - M 2 はGeである請求項1~3のいずれか1項に記載の正極材料。
- 請求項1~4のいずれか1項に記載の正極材料を用いてなる非水電解質二次電池用正極(14)。
- 請求項1~4のいずれか1項に記載の前記正極材料を用いてなる非水電解質二次電池用正極,請求項5に記載の前記非水電解質二次電池用正極の少なくとも一つを用いてなる非水電解質二次電池(1)。
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