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JP7015102B2 - 正極材料,非水電解質二次電池用正極及び非水電解質二次電池 - Google Patents

正極材料,非水電解質二次電池用正極及び非水電解質二次電池 Download PDF

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Description

本発明は、正極材料,非水電解質二次電池用正極及びそれを用いてなる非水電解質二次電池に関する。
ノート型コンピュータ、携帯電話、デジタルカメラ等電子機器の普及に伴い、これら電子機器を駆動するための二次電池の需要が拡大している。近年、これら電子機器においては、高機能化の進展に伴い消費電力が増大していることや、小型化が期待されていることから、二次電池の性能の向上が求められている。二次電池の中でも非水電解質二次電池(特に、リチウムイオン二次電池)は高容量化が可能であることから、種々の電子機器への利用が進められている。
非水電解質二次電池は、一般に、正極活物質に代表される正極材料を有する正極活物質層を正極集電体の表面に形成した正極と、負極活物質を有する負極活物質層を負極集電体の表面に形成した負極とが、非水電解質(非水電解液)を介して接続され、電池ケースに収納される構成を有している。
非水電解質二次電池の代表例であるリチウムイオン二次電池では、正極材料(正極活物質)としてリチウムの複合酸化物が用いられている。この複合酸化物としては、例えば、特許文献1~8に記載されている。
特許文献1には、LiCoMOと、LiNiMnMOと、を混合した正極活物質とすることが記載されている(M:いずれも所定の元素より選択)。この正極活物質は、放電時の平均電圧の高い活物質と、高い熱的安定性を持つ活物質と、を有する。
特許文献2には、LiNiMnTiOの層状岩塩型構造の結晶層を含む正極活物質が記載されている。この正極活物質は、Tiを含有することで、含有しない場合と比べて高い充放電容量を得られる。
特許文献3には、LiMnMOと、LiNiMOと、を混合した正極活物質とすることが記載されている(M:いずれも所定の元素より選択)。この正極活物質は、高温保存後の電池性能に優れたものとなる。
特許文献4には、層状が多結晶構造のLiMnMOにおけるLiの一部が欠損した正極活物質が記載されている(M:いずれも所定の元素より選択)。この正極活物質は、結晶中の歪みや化学結合の安定化が行われ、充放電時のサイクル安定性,耐久安定性等の効果が得られる。
特許文献5には、LiCoOにおいてLi及びCoの一部がそれぞれ所定の元素Mに置換された正極活物質が記載されている(M:いずれも所定の元素より選択)。この正極活物質は、LiとCoのそれぞれが元素Mに置換されたことで、リチウムの層とコバルトの層の結合力が強化され、層間の歪みや結晶格子の膨張が抑えられ、充放電時のサイクル安定性,耐久安定性等の効果が得られる。
特許文献6には、LiNiMnCoOと、LiMOと、を混合した正極活物質とすることが記載されている(M:所定の元素より選択)。この正極活物質は、電池容量と安全性にすぐれた効果を発揮する活物質と、サイクル特性と貯蔵特性とに効果を発揮する活物質と、を有する。
しかしながら、これらの正極活物質(正極材料)では、いずれも充放電時の結晶構造の崩壊が十分に抑制できず、非水電解質二次電池の容量の低下を招くという問題があった。
また、安全性に関しては、Tiを含有した正極、すなわち、LiNiMnTiOとする技術が非特許文献1に記載されている。
ただし、この非特許文献1に記載のようにTiの添加では、安全性の圧倒的な向上がない事が記載されている。
安全性と結晶の高安定化を両立するための別の試みとしては、酸素との結合力の強いSiを遷移金属と同量含有した正極、すなわちLiMnSiOとする技術が非特許文献2に記載されている。
しかしながら、この正極において遷移金属は4配位の配位構造をとることで、充電時に構造が不安定化し、やはり十分な耐久性を持つ正極ではなかった。
特許文献7には、Li[LiMeM’]O2+d(x+y+z=1、0<x<0.33、0.05≦y≦0.15、0<d≦0.1、Me:Mn,V,Cr,Fe,Co,Ni,Al,Bより選ばれる少なくとも一種、M’:Ge,Ru,Sn,Ti,Nb,Ptより選ばれる少なくとも一種)で表されるLi酸化物を有する正極活物質が記載されている。
しかしながら、この正極活物質を用いた電池では、安全性の向上が不十分であった。具体的には、遷移金属に占めるMeで示される元素の添加割合が14at%程度となっており、Meで示される元素と結合しない酸素原子が存在していた。Meで示される元素と酸素原子との結合は、強固であり、結合の切断(酸素の脱離)がほとんど生じない。つまり、引用文献7の正極活物質に含まれるMeで示される元素と結合しない酸素原子が、電池を形成したときに酸素ガスとなり、電池の安全性を低下していた。
特許文献8には、X線吸収微細構造解析(XAFS)法で測定した酸素K吸収端のX線吸収スペクトルで、酸素K吸収端の530eV付近に現れる吸収端ピークが一定の挙動を示す正極活物質を有することで、充電状態での界面での反応を抑え、電池性能を向上することが記載されている。
しかしながら、特許文献8に記載の正極活物質は、正極活物質表面における結晶構造の安定化の効果は得られるが、安全性については十分でなかった。具体的には、リチウムイオン二次電池(非水電解質二次電池)は、過充電等により、正極活物質に使用されるリチウムの複合酸化物の結晶構造が崩壊し、含有される酸素が放出されてしまう虞があった。
特開2007-188703号公報 特開2008-127233号公報 特開2001-345101号公報 特開2001-250551号公報 特許第3782058号公報 特開2006-202702号公報 米国特許第8734994号明細書 特開2008-127234号公報
Seung-Taek Myung 他5名、「Synthesis of LiNi0.5Mn0.5-xTixO2 by an Emulsion Drying Method and Effect of Ti on Structure and Electrochemical Properties」、Chemistry of Materials、2005年、第17巻、P2427-2435 R. Dominko Li2MSiO4 (M= Fe and/or Mn) cathode materials、Journal of Power Sources、2008年、第184巻、P462-P468
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、充放電時の結晶構造の崩壊が抑制され、かつ安全性に優れた正極材料,非水電解質二次電池用正極及び非水電解質二次電池を提供することを課題とする。
上記課題を解決するために本発明者らは、正極材料の構造に着目し、Ni元素に加え、酸素と強く結合するM元素を多量に含む正極材料であり、M元素と酸素が化学結合を持つことで上記課題を解決できることを見出した。
本発明の正極材料は、LiNiα β γMnη4-ε(0.50<α≦1.33、0.33≦γ≦1.1、0≦η≦1.00、0≦β<0.67、0≦ε≦1.00、M:Co,Gaより選ばれる少なくとも一種、M:Ge,Sn,Sbより選ばれる少なくとも一種)で表され、Li層と、Ni層とを備えた層状構造を有し、M-Oの化学結合を有し、Ni、M 、及びM が6配位の局所構造を備える正極材料。
本発明の非水電解質二次電池用正極は、請求項1~4のいずれか1項に記載の正極材料を用いてなる。
本発明の非水電解質二次電池は、請求項1~4のいずれか1項に記載の正極材料を用いてなる非水電解質二次電池用正極,請求項5に記載の非水電解質二次電池用正極の少なくとも一つを用いてなる。
本発明の正極材料は、その組成中にNiを含む。このNiは、酸素(O)が6配位した局所構造を形成する。この結果、安定な充放電が行われる。また、酸化還元種である、Niが0.50<α≦1.33の範囲で多量に含まれることで、高容量化が達成される。
また、M元素及びM元素を多量に含むことで、結晶構造がより安定し、充放電時の結晶構造が抑制され、その結果として電池容量の低下が抑えられる。M元素は、酸素を強く固定する。その結果、異常発熱時に懸念される酸素の脱離が抑制される結果、電池の安全性がより向上する。さらに、M元素の量が、0.33以上となった際に、平均的には、Ni層中の全ての酸素がM元素と隣り合い、M元素との結合を持つこととなる故、酸素脱離効果が顕著に高まる。
本発明の正極材料は、Li層とNi層とを備えた層状構造を有することで、Liイオンの伝導性に優れたものとなる。なお、Li層は、Liを主成分として形成される層を示し、実質的にLiよりなる層である。Ni層は、Ni(Ni化合物)を主成分として形成される層を示し、実質的にはNi及び、M元素、M元素を主成分として含む層である。
なお、主成分とは、最も含有割合が大きい成分を示す。
そして、本発明の正極材料は、M-Oの化学結合を有する。M-Oの化学結合を有することで、異常発熱時に懸念される酸素の脱離が抑制され、電池の安全性がより向上する。
元素と酸素との結合状態は、従来から知られた分析方法(装置)を用いて知ることができる。特に、X線吸収微細構造(以下、XAFSと称する)の解析によって、酸素の局所構造を判別することがより好ましい。以下に、一般的なXAFSについて簡単に説明する。
入射X線のエネルギーを変えながら物質の吸光度を測定すると、入射X線エネルギーが測定物質を構成する原子の内殻準位に等しいとき、吸光度の急激な上昇(吸収端)が観測される。その後、入射X線のエネルギー増加に伴い、吸光度の緩やかな減衰が観測される。このスペクトルを詳細に調べると、吸収端付近に大きな変化をもったスペクトル構造がある。また、吸収端より高エネルギー領域においても、小さいながら緩やかな振動構造をもつスペクトル構造がある。
前者をX線吸収端構造(XANES)、後者を広域X線吸収微細構造(EXAFS)と呼び、両者をまとめてX線吸収微細構造(XAFS)と総称している。
XANESのスペクトル構造は、測定物質を構成する原子の内殻準位から種々の空準位への遷移に対応するため、測定元素の空状態の密度を反映している。
本発明の正極材料は、X線吸収微細構造解析(XAFS)法で測定した酸素K吸収端のXANESスペクトルで、532eV~535eVの範囲に吸収端のピークを持つことが好ましい。この範囲にピークを持つことで、M-Oの化学結合を有することが確認できる。
本発明の非水電解質二次電池用正極及び非水電解質二次電池は、本発明の正極材料を用いてなり、本発明の正極材料により得られる効果を発揮できる。
実施形態のコイン型のリチウムイオン二次電池の構成を示す概略断面図である。 実施例1の正極材料のX線吸収微細構造解析(XAFS)法の測定結果を示すグラフである。 実施例2の正極材料のX線吸収微細構造解析(XAFS)法の測定結果を示すグラフである。 実施例4の正極材料のX線吸収微細構造解析(XAFS)法の測定結果を示すグラフである。 実施例10の正極材料のX線吸収微細構造解析(XAFS)法の測定結果を示すグラフである。
以下、本発明を、実施の形態を用いて具体的に説明する。
[実施形態]
本形態は、図1にその構成を概略断面図で示したコイン型のリチウムイオン二次電池1である。本形態のリチウムイオン二次電池1は、本発明の正極材料を正極活物質として有する正極(非水電解質二次電池用正極)を用いてなる二次電池(非水電解質二次電池)である。
本形態のリチウムイオン二次電池1は、正極ケース11,シール材12(ガスケット),非水電解質13,正極14,正極集電体140,正極合剤層141,セパレータ15,負極ケース16,負極17,負極集電体170,負極合剤層171,保持部材18などを有する。
本形態のリチウムイオン二次電池1の正極14は、本発明の正極材料よりなる正極活物質を含む正極合剤層141を有する。正極合剤層141は、正極活物質以外に、必要に応じて、バインダ,導電材等の部材を備える。
(正極材料)
正極材料は、LiNiα β γMnη4-ε(0.50<α≦1.33、0.33≦γ≦1.1、0≦η≦1.00、0≦β<0.67、0≦ε≦1.00、M:Co,Gaより選ばれる少なくとも一種、M:Ge,Sn,Sbより選ばれる少なくとも一種)で表される。
本形態の正極材料は、その組成中にNi(遷移金属)を含む。このNiは、酸素(O)が6配位した局所構造(6配位の局所構造)を形成する。この結果、安定な充放電が行われる。酸化還元種である、Niが0.50<α≦1.33の範囲で多量に含まれることで、高容量化が達成される。
また、M元素及びM元素を多量に含むことで、結晶構造がより安定し、充放電時の結晶構造が抑制され、その結果として電池容量の低下が抑えられる。M元素は、酸素を強く固定する。その結果、異常発熱時に懸念される酸素の脱離が抑制される結果、電池の安全性がより向上する。さらに、M元素の量が、0.33以上となった際に、平均的には、Ni層中の全ての酸素がM元素と隣り合い、M元素との結合を持つこととなる故、酸素脱離効果が顕著に高まる。
非水電解質二次電池(リチウムイオン電池)では、過充電等が進行すると、発火・発煙の不具合を生じることがある。この電池における発火発煙は、そこに至る過程で、正極活物質(正極材料)から放出される酸素の影響が大きい。具体的には、充電に伴い正極活物質の酸素から電子が奪われ、酸素放出に至りやすくなる。本発明の正極材料では、M元素を添加しており、添加されたM元素がNiやMn(遷移金属)よりも酸素と強く結合している。つまり、M元素の添加により、充放電時の酸素脱離を最小限に抑制することが可能となる。
本形態の正極材料は、Li層とNi層とを備えた層状構造を有する。この構成となることで、正極材料は、Liイオンの伝導性に優れたものとなる。なお、Li層は、Liを主成分として形成される層を示し、実質的にLiよりなる層である。Ni層は、Ni(Ni化合物)を主成分として形成される層を示し、実質的にはNi及び、M及びMの各元素を主成分として含む層である。
そして、本形態の正極材料は、M-Oの化学結合を有する。M-Oの化学結合を有することで、正極材料においてOがM元素に強固に固定される。その結果、異常発熱時に懸念される酸素の脱離が抑制される結果、電池の安全性がより向上する。この結果、本形態の正極材料では、安全性に優れたものとなっている。
なお、このM-Oの化学結合を有することは、その測定方法が限定されない。例えば、XAFS法で確認できる。
本形態の正極材料は、XAFS法で測定した酸素K吸収端のXANESスペクトルで、532eV~535eVの範囲に吸収端のピークを持つことが好ましい。
この範囲にピークを持つことで、M-Oの化学結合を有することが確認できる。
本形態の正極材料では、M元素及びM元素が6配位状態であることが好ましく、この構成となることで、隣接する遷移金属元素(Niの配位構造体)との構造的ギャップを小さくすることを可能とし、耐久性を一層向上させることを可能とする。
本形態の正極材料は、その組成中に、さらに遷移金属であるMn(0以上、1.00以下の割合)を含んでも良い。このMnはNiと同様に、酸素(O)が6配位した局所構造(6配位の局所構造)を形成する。この割合で含まれることで、Ni層を安定化させる効果を発揮する。
正極活物質は、上記の正極材料を正極活物質として有するものであればよく、更に、別の正極活物質(正極材料)を有していてもよい。別の正極活物質は、上記化学式に含まれる別の物質であっても、更に別の化合物であっても、いずれでもよい。
(正極活物質以外の構成)
本形態のリチウムイオン二次電池1は、正極活物質として上記の正極材料を用いること以外の構成は、従来のリチウムイオン二次電池と同様とすることができる。
正極14は、正極活物質、導電材及び結着材を混合して得られた正極合剤を正極集電体140に塗布して正極合剤層141が形成される。
導電材は、正極14の電気伝導性を確保する。導電材としては、黒鉛の微粒子,アセチレンブラック,ケッチェンブラック,カーボンナノファイバーなどのカーボンブラック,ニードルコークスなどの無定形炭素の微粒子などを使用できるが、これらに限定されない。
結着剤は、正極活物質粒子や導電材を結着する。結着剤としては、例えば、PVDF,EPDM,SBR,NBR,フッ素ゴムなどを使用できるが、これらに限定されない。
正極合剤は、溶媒に分散させて正極集電体140に塗布される。溶媒としては、通常は結着剤を溶解する有機溶媒を使用する。例えば、NMP,ジメチルホルムアミド,ジメチルアセトアミド,メチルエチルケトン,シクロヘキサノン,酢酸メチル,アクリル酸メチル,ジエチルトリアミン,N-N-ジメチルアミノプロピルアミン,エチレンオキシド,テトラヒドロフランなどを挙げることができるが、これらに限定されない。また、水に分散剤、増粘剤などを加えてPTFEなどで正極活物質をスラリー化する場合もある。
正極集電体140は、例えば、アルミニウム,ステンレスなどの金属を加工したもの、例えば板状に加工した箔,網,パンチドメタル,フォームメタルなどを用いることができるが、これらに限定されない。
(非水電解質)
非水電解質13は、支持塩が有機溶媒に溶解してなるものを用いる。
非水電解質13の支持塩は、その種類が特に限定されるものではないが、LiPF,LiBF,LiClO及びLiAsFから選ばれる無機塩,これらの無機塩の誘導体,LiSOCF,LiC(SOCF及びLiN(SOCF,LiN(SO,LiN(SOCF)(SO),から選ばれる有機塩、並びにこれらの有機塩の誘導体の少なくとも1種であることが望ましい。これらの支持塩は、電池性能を更に優れたものとすることができ、かつその電池性能を室温以外の温度域においても更に高く維持することができる。支持塩の濃度についても特に限定されるものではなく、用途に応じ、支持塩及び有機溶媒の種類を考慮して適切に選択することが好ましい。
支持塩が溶解する有機溶媒(非水溶媒)は、通常の非水電解質に用いられる有機溶媒であれば特に限定されるものではなく、例えばカーボネート類,ハロゲン化炭化水素,エーテル類,ケトン類,ニトリル類,ラクトン類,オキソラン化合物等を用いることができる。特に、プロピレンカーボネート,エチレンカーボネート,1,2-ジメトキシエタン,ジメチルカーボネート,ジエチルカーボネート,エチルメチルカーボネート,ビニレンカーボネート等及びそれらの混合溶媒が適当である。例に挙げたこれらの有機溶媒のうち、特にカーボネート類,エーテル類からなる群より選ばれた1種以上の非水溶媒を用いることにより、支持塩の溶解性、誘電率及び粘度において優れ、電池の充放電効率が高いので、好ましい。
本形態のリチウムイオン二次電池1において、最も好ましい非水電解質13は、支持塩が有機溶媒に溶解したものである。
(負極)
負極17は、負極活物質と結着剤とを混合して得られた負極合剤を負極集電体170の表面に塗布して負極合剤層171が形成される。
負極活物質は、従来の負極活物質を用いることができる。Sn,Si,Sb,Ge,Cの少なくともひとつの元素を含有する負極活物質を挙げることができる。これらの負極活物質のうち、Cは、リチウムイオン二次電池1の電解質イオンを吸蔵・脱離可能な(Li吸蔵能がある)炭素材料であることが好ましく、アモルファスコート天然黒鉛であることがより好ましい。
また、これらの負極活物質のうち、Sn、Sb、Geは、特に、体積変化の多い合金材料である。これらの負極活物質は、Ti-Si、Ag-Sn、Sn-Sb、Ag-Ge、Cu-Sn、Ni-Snなどのように、別の金属と合金をなしていてもよい。
導電材としては、炭素材料、金属粉、導電性ポリマーなどを用いることができる。導電性と安定性の観点から、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、カーボンブラックなどの炭素材料を使用することが好ましい。
結着材としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、フッ素樹脂共重合体(四フッ化エチレン・六フッ化プロピレン共重合体)SBR、アクリル系ゴム、フッ素系ゴム、ポリビニルアルコール(PVA)、スチレン・マレイン酸樹脂、ポリアクリル酸塩、カルボキシルメチルセルロース(CMC)などを挙げることができる。
溶媒としては、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)などの有機溶媒、又は水などを挙げることができる。
負極集電体170としては、従来の集電体を用いることができ、銅、ステンレス、チタンあるいはニッケルなどの金属を加工したもの、例えば板状に加工した箔,網,パンチドメタル,フォームメタルなどを用いることができるが、これらに限定されない。
(その他の構成)
正極ケース11と負極ケース16は絶縁性のシール材12を介して内蔵物を密封する。内蔵物は、非水電解質13,正極14,セパレータ15,負極17,保持部材18などである。
正極ケース11には正極集電体140を介して正極合剤層141が面接触して導電する。負極ケース17には負極集電体170を介して負極合剤層171が面接触する。
正極合剤層141と負極合剤層171との間に介在させるセパレータ15は、正極合剤層141と負極合剤層171とを電気的に絶縁し、非水電解質13を保持する。セパレータ15は、例えば、多孔性合成樹脂膜、特にポリオレフィン系高分子(ポリエチレン、ポリプロピレン)の多孔膜を用いる。セパレータ15は、二つの合剤層141,171の電気的な絶縁を担保するために、合剤層141,171よりも大きな寸法で成形される。
保持部材18は、正極集電体140,正極合剤層141,セパレータ15,負極合剤層171,負極集電体170を定位置に保持する役割を担う。弾性片やバネ等の弾性部材を用いると、定位置に保持しやすい。
(その他の形態)
本形態のリチウムイオン二次電池1は、上記の通りコイン型の形状であるが、その形状には特に制限を受けず、円筒型,角型等、種々の形状の電池や、ラミネート外装体に封入した不定形状の電池とすることができる。
(製造方法)
本形態の正極材料は、上記の構成を有している者であれば、その製造方法が限定されるものではない。製造方法の例としては、固相合成法、共沈合成法、水熱合成法、錯体重合合成法、イオン交換を介する方法、高温高圧処理による合成法、ゾルゲル法、スプレードライ法、超臨界合成法等が挙げられ、これら方法を単独ないしは複数組み合わせる等の方法を挙げることができる。
以下、実施例を用いて本発明を説明する。
本発明を具体的に説明するための実施例として、正極材料(正極活物質),それを用いた正極及びリチウムイオン二次電池を製造した。実施例では、上記の図1に示したリチウムイオン二次電池を製造した。
(実施例1)
まず、出発原料であるNaNiSnOを製造した。詳しくは、Na,Ni,Snの一種以上の元素を含有する化合物を、これらの元素が所定の原子比となるように秤量・混合した。そして、焼成(大気雰囲気)し、ほぼ単相の結晶構造を有している出発原料を得た。
つづいて、得られたNaNiSnOを、硝酸Li及び塩化Liからなる溶融塩中で加熱してイオン交換処理を施した。
以上により、本例の正極材料(LiNiSnO粉末)が製造された。製造されたLiNiSnO粉末に対し、粉末XRDで観察したところ、ほぼ単相の化合物であることが確認できた。
(実施例2)
Li,Ni,Mn,Geのそれぞれの金属錯体を含有する水溶液を調整した。得られた錯体溶液を目的の正極材料の組成比となるように、すなわちLi:Ni:Mn:Geの原子比が2:1:0.67:0.33となるように、混合した。
得られた混合溶液を乾燥炉内で乾燥して有機成分を加熱処理により取り除いた後、加熱し、焼成した。
以上により、本例の正極材料(LiNiMn0.67Ge0.33粉末)が製造された。製造されたLi2.1NiMn0.67Ge0.33粉末に対し、粉末XRDで観察したところ、ほぼ単相の化合物であることが確認できた。
(実施例3)
実施例1の出発原料と同様にして、ほぼ単相のNaNiMn0.67Ge0.33を製造した。
つづいて、得られたNaNiMn0.67Ge0.33に対し、実施例1の時と同様にイオン交換処理を施した。
以上により、本例の正極材料(LiNiMn0.67Ge0.33粉末)が製造された。製造された正極材料に対し、粉末XRDで観察したところ、ほぼ単相の化合物であることが確認できた。
(実施例4)
実施例2の場合と同様に、金属錯体を含有する水溶液から、本例の正極材料(LiNiMn0.67Sn0.33粉末)が製造された。製造された正極材料に対し、粉末XRDで観察したところ、ほぼ単相の化合物であることが確認できた。
(実施例5)
実施例1の出発原料と同様にして、ほぼ単相のNaNiMn0.67Sn0.33を製造した。
つづいて、得られたNaNiMn0.67Sn0.33に対し、実施例1の時と同様にイオン交換処理を施した。
以上により、本例の正極材料(LiNiMn0.67Sn0.33粉末)が製造された。製造された正極材料に対し、粉末XRDで観察したところ、ほぼ単相の化合物であることが確認できた。
(実施例6)
実施例2の時と同様にして、金属錯体を含有する水溶液から、本例の正極材料(Li2.1Ni0.67Co0.67Mn0.33Ge0.33粉末)が製造された。
製造された正極材料に対し、粉末XRDで観察したところ、ほぼ単相の化合物であることが確認できた。
(実施例7)
実施例1の出発原料と同様にして、ほぼ単相のNaNi0.67Co0.33Mn0.33Ge0.33を製造した。
つづいて、得られたNaNi0.67Co0.67Mn0.33Ge0.33に対し、実施例1の時と同様にイオン交換処理を施した。
以上により、本例の正極材料(LiNi0.67Co0.33Mn0.33Ge0.33粉末)が製造された。
粉末XRDで観察したところ、ほぼ単相の化合物であることが確認できた。
(実施例8)
実施例6の時と同様にして、金属錯体を含有する水溶液から、本例の正極材料(Li2.1Ni0.88Co0.22Mn0.44Ge0.44粉末)が製造された。
製造された正極材料に対し、粉末XRDで観察したところ、ほぼ単相の化合物であることが確認できた。
(実施例9)
実施例1の時と同様にして、ほぼ単相のNaNi0.88Co0.22Mn0.44Ge0.44を製造した。
つづいて、得られたNaNi0.88Co0.22Mn0.44Ge0.44に対し、実施例1の時と同様にイオン交換処理を施した。
以上により、本例の正極材料(LiNi0.88Co0.22Mn0.44Ge0.44粉末)が製造された。
製造された正極材料に対し、粉末XRDで観察したところ、ほぼ単相の化合物であることが確認できた。
(実施例10)
本例の正極材料として、以下の分析結果を示す正極材料を準備した。
正極材料に対し、ICP発光分析及び粉末XRD分析を行った。その結果、本例の正極材料がLiNiGeOの組成を持ち、かつ層状岩塩型の結晶構造を有し、空間群R3m(或いはC2/m)にて指数付けが可能な化合物であることが確認できた。また、粉末XRDより、本例の正極材料がほぼ単相であることも確認された。
(比較例1)
実施例2の場合と同様に、金属錯体を含有する水溶液から、本例の正極材料(LiNiO粉末)が製造された。製造されたLi1.05NiO粉末に対し、粉末XRDで観察したところ、ほぼ単相の化合物であることが確認できた。
[XAFS]
上記した各例の正極材料を、X線吸収微細構造解析(XAFS)法で酸素K吸収端のX線吸収スペクトルを測定した。
いずれの実施例においても、532eV~535eVの範囲に吸収端のピークを持つことが確認できた。
各例の代表として、実施例1,2,4,10のX線吸収スペクトルの測定結果を図2~図5に示した。なお、各図においては、比較例1のX線吸収スペクトルを合わせて示した。
(実施例1)
図2に示したように、実施例1の正極材料は、532eV~533eVの範囲に、ピークが確認できる。このピークは、Sn-O結合に起因するピークである。すなわち、実施例1の正極材料は、Sn-O結合を有している。
また、図2中に破線で示した比較例1の正極材料は、530eV近傍に、ピークが確認できる。つまり、532eV~535eVの範囲に、ピークを有していない。このピークは、Ni-O結合に起因するピークである。
(実施例2)
図3に示したように、実施例2の正極材料は、528eV~529eVの範囲、531eV近傍、及び533eV~534eVの範囲に、三つのピークが確認できる。これらのピークは、低eVのピークから順に、Mn-O結合,Ni-O結合,Ge-O結合に起因するピークである。すなわち、実施例2の正極材料は、Ge-O結合を有している。
(実施例4)
図4に示したように、実施例2の正極材料は、528eV~529eVの範囲、531eV近傍、及び533eV近傍に、三つのピークが確認できる。これらのピークは、低eVのピークから順に、Mn-O結合,Ni-O結合,Sn-O結合に起因するピークである。すなわち、実施例4の正極材料は、Sn-O結合を有している。
(実施例10)
図5に示したように、実施例10の正極材料は、531eV近傍、及び533eV~534eVの範囲に、二つのピークが確認できる。これらのピークは、低eVのピークから順に、Ni-O結合,Ge-O結合に起因するピークである。すなわち、実施例10の正極材料は、Ge-O結合を有している。
[評価]
上記の各例の正極材料の評価として、リチウムイオン二次電池を組み立て、充放電特性の評価を行った。また、充放電特性の測定後、コイン型電池を分解して正極を取り出し、安全性の評価を行った。
(リチウムイオン二次電池)
上記の各例の正極活物質を用いて、リチウムイオン二次電池よりなる試験セル(2032型コイン型ハーフセル)を組み立て、評価を行った。
(コイン型ハーフセル)
試験セル(コイン型ハーフセル)は、図1にその構成を示したコイン型のリチウムイオン二次電池1と同様の構成である。
正極は、正極活物質(各例の正極活物質)91質量部,アセチレンブラック2質量部,PVDF7質量部を混合して得られた正極合剤をアルミニウム箔よりなる正極集電体140に塗布して正極合剤層141を形成したものを用いた。
負極(対極)には、金属リチウムを用いた。図1中の負極合剤層171に相当する。
非水電解質13は、エチレンカーボネート(EC)30体積%とジエチルカーボネート(DEC)70体積%との混合溶媒に、LiPFを1モル/リットルとなるように溶解させて調製されたものを用いた。
試験セルは、組み立てられた後に、1/3C×2サイクルの充放電での活性化処理が行われた。
以上により、各例の試験セル(ハーフセル)が製造された。
[充放電特性]
リチウムイオン二次電池に対し、1/50Cレートで充電及び放電を行った。充電は4.5VカットのCC充電で、放電は2.6VカットのCC放電で、それぞれ行われた。
各例(実施例1~10,比較例1)のリチウムイオン二次電池の充電容量と放電容量の測定結果を表1に示した。
Figure 0007015102000001
表1に示したように、各実施例の二次電池は、充電容量及び放電容量が比較例1と比較して、いずれも優れたものとなっている。
すなわち、各実施例の二次電池は、良好な充放電特性がえられることが確認された。
[安全性試験]
リチウムイオン二次電池に対し、1/50Cレートで4.8Vまで、CC充電で充電を行った。
充電終了後、電池を解体し、正極を取り出した。
取り出した正極は、DMCで洗浄した後、ヘリウム雰囲気下で、室温~1000℃まで20℃/minの昇温速度で加温した。その際に正極から発生した酸素の量をTPD-MS測定により測定した。
測定結果を、表1に合わせて示した。
表1に示したように、比較例1では6.99%と高い酸素発生量であることがわかる。そして、各実施例では、1%以下(最大で0.77%)と酸素発生量が少なくなっていることがわかる。
すなわち、各実施例の正極材料(正極)を用いることで、酸素発生量の少ない安全性に優れた二次電池となることがわかる。
1:リチウムイオン二次電池
11:正極ケース
12:シール材(ガスケット)
13:非水電解質
14:正極
140:正極集電体
141:正極合剤層
15:セパレータ
16:負極ケース
17:負極
170:負極集電体
171:負極合剤層
18:保持部材

Claims (6)

  1. LiNiα β γMnη4-ε(0.50<α≦1.33、0.33≦γ≦1.1、0≦η≦1.00、0≦β<0.67、0≦ε≦1.00、M:Co,Gaより選ばれる少なくとも一種、M:Ge,Sn,Sbより選ばれる少なくとも一種)で表され、
    Li層と、Ni層とを備えた層状構造を有し、
    -Oの化学結合を有し、
    Ni、M 、及びM が6配位の局所構造を備える正極材料。
  2. X線吸収微細構造解析(XAFS)法で測定した酸素K吸収端のX線吸収スペクトルで、532eV~535eVの範囲に吸収端のピークを持つ請求項1記載の正極材料。
  3. 前記層状構造において、
    Li層は、Liを主成分として形成される層を示し、
    Ni層は、Ni及び、M及びMの各元素を主成分として形成される層である請求項1~2のいずれか1項に記載の正極材料。
  4. はGeである請求項1~3のいずれか1項に記載の正極材料。
  5. 請求項1~4のいずれか1項に記載の正極材料を用いてなる非水電解質二次電池用正極(14)。
  6. 請求項1~4のいずれか1項に記載の前記正極材料を用いてなる非水電解質二次電池用正極,請求項5に記載の前記非水電解質二次電池用正極の少なくとも一つを用いてなる非水電解質二次電池(1)。
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