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JP2010241878A - 結晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液の製造方法およびトナーの製造方法 - Google Patents

結晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液の製造方法およびトナーの製造方法 Download PDF

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JP2010241878A JP2009089622A JP2009089622A JP2010241878A JP 2010241878 A JP2010241878 A JP 2010241878A JP 2009089622 A JP2009089622 A JP 2009089622A JP 2009089622 A JP2009089622 A JP 2009089622A JP 2010241878 A JP2010241878 A JP 2010241878A
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Katsuru Matsumoto
香鶴 松本
Yutaka Onda
裕 恩田
Kiyoshi Toizumi
潔 戸泉
Yasuhiro Shibai
康博 芝井
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Abstract

【課題】 結晶性ポリエステル樹脂微粒子の水性媒体中における分散状態が安定に維持されるとともに、結晶性ポリエステル樹脂微粒子の均一な結晶化が促進されて結晶化度の低下が防止された状態で、高い生産効率で結晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液を製造する方法を提供する。
【解決手段】 結晶性ポリエステル樹脂微粒子が水性媒体中に分散してなる微粒子分散液を得る微粒子分散液調製工程は、せん断工程と冷却減圧工程とを含む。せん断工程では、加熱加圧下で撹拌されて搬送される結晶性ポリエステル樹脂の粗粉砕粒子に水性媒体を加えて、せん断力を付与しながら転相乳化を行う。そして、冷却減圧工程では、撹拌下で搬送される分散液を、温度および圧力が徐々に低下するように冷却および減圧する。
【選択図】 図1

Description

本発明は、結晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液の製造方法およびトナーの製造方法に関する。
潜像の現像に用いられるトナーは、種々の画像形成プロセスに用いられており、その一例として電子写真方式の画像形成プロセスに用いられている。電子写真方式の画像形成プロセスを利用する画像形成装置においては、一般的に、潜像担持体である感光体の表面を均一に帯電させる帯電工程、帯電状態にある感光体の表面に原稿像の信号光を投射して静電潜像を形成する露光工程、感光体の表面の静電潜像にトナーを供給して顕像化する現像工程、感光体の表面のトナー像を紙やOHPシートなどの記録媒体に転写する転写工程、トナー像を加熱、加圧などにより記録媒体上に定着させる定着工程を実行して記録媒体上に所望の画像を形成する。
このような画像形成プロセスに用いられるトナーとしては、省エネルギー化の要望に応えるため、低温で定着できるトナーの開発が進められている。このような、低温定着可能なトナーは、結着樹脂として、非晶質ポリエステル樹脂と結晶性ポリエステル樹脂とを含む。結晶性ポリエステル樹脂を含有したトナーは、比較的低い温度で溶融し、かつ定着強度の高いトナーとなる。
結着樹脂として非晶質ポリエステル樹脂と結晶性ポリエステル樹脂とを含むトナーは、混練粉砕法で製造することができる。混練粉砕法によれば、結着樹脂および着色剤を主成分とし、必要に応じて離型剤、帯電制御剤などを添加して混合したトナー原料を溶融混練し、冷却固化させた後、粉砕分級することでトナーを得ることができる。
しかしながら、非晶質ポリエステル樹脂と結晶性ポリエステル樹脂との溶融粘度が著しく異なるため、混練粉砕法でトナーを製造しようとすると、非晶質ポリエステル樹脂と結晶性ポリエステル樹脂とを、均一かつ微細に混合することが困難である。そのため、得られるトナーは、粒径が不均一で粒度分布幅の広いものとなり、高品位の画像を形成することができない。
このような問題点を解決するために、特許文献1には、結晶性ポリエステル樹脂を他のトナー成分と区別した状態で水性媒体中に乳化分散させて、結晶性ポリエステル樹脂微粒子の分散液を調製する工程を含むトナーの製造方法が開示されている。特許文献1に開示されるトナーの製造方法によれば、トナーの構成成分のうち結晶性ポリエステル樹脂のみが乳化分散される分散液と、他のトナー成分が水性媒体中に分散されてなる分散液とを混合して凝集させることによって、結晶性ポリエステル樹脂を構成成分として含有するトナー母粒子を得ることができる。
このとき、特許文献1に開示されるトナーの製造方法では、結晶性ポリエステル樹脂微粒子の分散液は、キャビトロン(商品名、株式会社ユーロテック製)などの乳化機を用いて調製される。具体的には、加熱加圧状態に保持される結晶性ポリエステル樹脂と水性媒体との混合物が、ロータが回転することによる遠心力を受けて、ロータとステータとの間の微小すき間に吐出されて壁面に衝突し、この衝突によって発生する衝撃力およびせん断力が付与されて、混合物中の結晶性ポリエステル樹脂が微粒化されるようになっている。
特開2005−266565号公報
結晶性ポリエステル樹脂と水性媒体との混合物を壁面に衝突させて結晶性ポリエステル樹脂を微粒化し、これによって結晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液を製造する方法では、結晶性ポリエステル樹脂微粒子の分散状態が不安定になり、結晶性ポリエステル樹脂微粒子同士の固着が発生して粗大化し、得られる結晶性ポリエステル樹脂微粒子は粒度分布幅の広いものとなってしまう。さらに、前記結晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液の製造方法では、結晶性ポリエステル樹脂微粒子の均一な結晶化が促進されず、結晶化度が低下してしまう場合がある。これは、前記結晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液の製造方法では、分散液に対して大きなせん断力を付与することが困難であるため、処理温度を高くする必要があり、熱により結晶性ポリエステル樹脂微粒子の結晶化度が低下しやすいためである。結晶化度が低下した結晶性ポリエステル樹脂微粒子を含むトナーは、保存安定性が低下して凝集が発生しやすくなるばかりでなく、低温定着性および耐ホットオフセット性に劣るトナーとなってしまう。
また、加熱加圧下で結晶性ポリエステル樹脂が乳化分散されて得られる結晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液を冷却および減圧して常温常圧に戻すとき、水性媒体の突沸が発生する場合がある。このように、水性媒体の突沸が発生すると、分散液中の結晶性ポリエステル樹脂微粒子が、不安定な分散状態になったり、結晶化度の低下したものとなってしまう。
また、前記結晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液の製造方法では、キャビトロン(商品名、株式会社ユーロテック製)などの乳化機が用いられているが、該乳化機は、バッチ処理して分散液を製造するのには適しているが、連続処理して分散液を製造するのが困難であり、分散液の生産効率を向上させるのが困難である。
したがって本発明の目的は、結晶性ポリエステル樹脂微粒子の水性媒体中における分散状態が安定に維持されるとともに、結晶性ポリエステル樹脂微粒子の均一な結晶化が促進されて結晶化度の低下が防止された状態で、高い生産効率で結晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液を製造する方法を提供することである。
また本発明の他の目的は、結晶性ポリエステル樹脂微粒子の結晶化度の低下が防止されて優れた低温定着性および耐ホットオフセット性を有するとともに、粒度分布幅が狭く高品位の画像を形成することができるトナーの製造方法を提供することである。
本発明は、結晶性ポリエステル樹脂の微粒子と水性媒体とを撹拌下で搬送し、前記微粒子が前記水性媒体中に分散されてなる微粒子分散液を連続的に得る微粒子分散液調製工程を含む結晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液の製造方法であって、
前記微粒子分散液調製工程は、
加熱加圧下で撹拌されてせん断力が付与されながら搬送される結晶性ポリエステル樹脂の粗粉砕粒子に、水性媒体を加えて転相乳化を行うせん断工程と、
前記せん断工程において加熱加圧され、撹拌下でせん断力が付与されながら搬送される分散液を、温度および圧力が徐々に低下するように冷却および減圧する冷却減圧工程と、を含むことを特徴とする結晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液の製造方法である。
また本発明は、前記せん断工程は、押出混練機を用いて行われることを特徴とする。
また本発明は、前記冷却減圧工程は、熱交換手段を備える多段減圧装置を用いて行われることを特徴とする。
また本発明は、前記せん断工程では、粗粉砕粒子を溶融させた後、粗粉砕粒子100重量部に対して30重量部以上50重量部以下の割合で水性媒体を添加することを特徴とする。
また本発明は、前記せん断工程において粗粉砕粒子に対して添加する水性媒体は、0.1重量%以上9重量%以下の乳化剤を含有することを特徴とする。
また本発明は、前記結晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液の製造方法により製造される結晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液と、少なくとも着色剤を含有する微粒子である着色剤含有粒子が水性媒体中に分散してなる着色剤含有粒子分散液とを混合し、結晶性ポリエステル樹脂微粒子と着色剤含有粒子とを凝集させる凝集工程を含むことを特徴とするトナーの製造方法である。
本発明によれば、結晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液の製造方法は、結晶性ポリエステル樹脂の微粒子が水性媒体中に分散されてなる微粒子分散液を連続的に得る微粒子分散液調製工程を含む。微粒子分散液調製工程では、結晶性ポリエステル樹脂微粒子と水性媒体とを撹拌下で搬送して微粒子分散液を連続的に得るので、高い生産効率で結晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液を製造することができる。そして、微粒子分散液調製工程は、せん断工程と冷却減圧工程とを含む。
せん断工程では、加熱加圧下で撹拌されてせん断力が付与されながら搬送される結晶性ポリエステル樹脂の粗粉砕粒子に、水性媒体を加えて転相乳化を行う。せん断工程において粗粉砕粒子は、撹拌されて搬送されているときにせん断力が付与されて微粒化され、結晶性ポリエステル樹脂微粒子となって水性媒体中に分散される。そのため、結晶性ポリエステル樹脂微粒子の水性媒体中における分散状態が安定に維持されるとともに、結晶性ポリエステル樹脂微粒子の均一な結晶化が促進される。このように、結晶性ポリエステル樹脂微粒子の分散状態が安定に維持されると、結晶性ポリエステル樹脂微粒子同士の固着が発生して粗大化するのを防止することができ、粒度分布幅の狭い結晶性ポリエステル樹脂微粒子を得ることができる。また、結晶性ポリエステル樹脂微粒子の均一な結晶化が促進されると、結晶化度の低下が防止された結晶性ポリエステル樹脂微粒子を得ることができる。
そして、冷却減圧工程では、撹拌下でせん断力が付与されながら搬送される分散液を、温度および圧力が徐々に低下するように冷却および減圧する。これによって、転相乳化後に微粒子分散液を冷却および減圧する途中で、水性媒体の突沸が発生するのを防止することができる。そのため、結晶性ポリエステル樹脂微粒子の水性媒体中における分散状態を安定に維持することができるとともに、結晶性ポリエステル樹脂微粒子の均一な結晶化が促進される。
また本発明によれば、せん断工程は、押出混練機を用いて行われる。これによって、水性媒体中において粗粉砕粒子に高いせん断力を付与することができるので、効率よく粗粉砕粒子を微粒化して結晶性ポリエステル樹脂微粒子とすることができる。また、せん断工程において押出混練機を用いて粗粉砕粒子に対して高いせん断力を付与することによって、結晶性ポリエステル樹脂微粒子の水性媒体中における分散状態を安定に維持することができるとともに、結晶性ポリエステル樹脂微粒子の均一な結晶化が促進される。また、せん断工程において押出混練機を用いることによって、連続的に微粒子分散液を得ることができ、結晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液の生産効率を向上させることができる。
また本発明によれば、冷却減圧工程は、熱交換手段を備える多段減圧装置を用いて行われる。これによって、せん断工程において加熱加圧された微粒子分散液を、温度および圧力が徐々に低下するように冷却および減圧することができる。そのため、転相乳化後に微粒子分散液を冷却および減圧する途中で、水性媒体の突沸が発生するのを防止することができる。そのため、結晶性ポリエステル樹脂微粒子の水性媒体中における分散状態を安定に維持することができるとともに、結晶性ポリエステル樹脂微粒子の均一な結晶化が促進される。また、冷却減圧工程において熱交換手段を備える多段減圧装置を用いることによって、連続的に微粒子分散液を冷却および減圧することができ、結晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液の生産効率を向上させることができる。
また本発明によれば、せん断工程では、粗粉砕粒子を溶融させた後、粗粉砕粒子100重量部に対して30重量部以上50重量部以下の割合で水性媒体を添加する。粗粉砕粒子100重量部に対する水性媒体の添加量が50重量部を超えると、粗粉砕粒子に付与されるせん断力が小さくなり過ぎて、粗粉砕粒子を微粒化することができない。また、粗粉砕粒子100重量部に対する水性媒体の添加量が30重量部未満であると、粗粉砕粒子が微粒化されてなる結晶性ポリエステル樹脂微粒子同士が固着しやすくなり、結晶性ポリエステル樹脂微粒子の粒度分幅が広くなってしまう。
また本発明によれば、せん断工程において粗粉砕粒子に対して添加する水性媒体は、0.1重量%以上9重量%以下の乳化剤を含有する。特定量の乳化剤を含有する水性媒体を粗粉砕粒子に添加することによって、結晶性ポリエステル樹脂微粒子の水性媒体中における分散状態を安定に維持することができる。
また本発明によれば、トナーの製造方法は、結晶性ポリエステル樹脂微粒子を含んで構成されるトナーを製造する方法であり、凝集工程を含む。凝集工程では、前記結晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液の製造方法により製造される結晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液と、少なくとも着色剤を含有する微粒子である着色剤含有粒子が水性媒体中に分散してなる着色剤含有粒子分散液とを混合し、結晶性ポリエステル樹脂微粒子と着色剤含有粒子とを凝集させて、トナー母粒子の分散液を得る。このようにして得られた分散液中のトナー母粒子は、結晶化度の低下が防止されて粒度分布幅が狭い結晶性ポリエステル樹脂微粒子を構成成分として含有することになる。したがって、トナー母粒子からなるトナーは、優れた低温定着性および耐ホットオフセット性を有するとともに、高品位の画像を形成することができる。
本発明の実施の一形態である結晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液の製造方法を示すフローチャートである。 せん断工程において用いられる押出混練機1の構成を示す図である。 本発明の実施の一形態であるトナーの製造方法における着色剤含有粒子分散液の調製手順を示すフローチャートである。 トナーの製造方法におけるトナー母粒子を作製する手順を示すフローチャートである。
<結晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液の製造>
結晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液の製造方法は、粗粉砕工程と、微粒子分散液調製工程とを含む。図1は、本発明の実施の一形態である結晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液の製造方法を示すフローチャートである。
[粗粉砕工程]
ステップs1の粗粉砕工程は、結晶性ポリエステル樹脂を粗粉砕して、体積平均粒子径が0.5〜5mmの粗粉砕粒子を得る工程である。結晶性ポリエステル樹脂の粗粉砕は、カッティングミル、ハンマーミルなどの公知の粉体粉砕機を用いて行うことができる。
結晶性ポリエステル樹脂とは、結晶性指数が0.6〜1.5、好ましくは0.8〜1.2であるポリエステル樹脂をいう。ここで、結晶性指数とは、樹脂の結晶化の度合いの指標となる物性であり、軟化温度と吸熱の最高ピーク温度との比(軟化温度/吸熱の最高ピーク温度)により定義されるものである。結晶性指数が1.5を超える樹脂は非晶質であり、0.6未満の樹脂は結晶性が低く、非晶質部分が多い。結晶化の度合いは、原料モノマーの種類とその比率、及び製造条件(たとえば、反応温度、反応時間、冷却速度)などにより調整することができる。なお、吸熱の最高ピーク温度とは、観測される吸熱ピークのうち、最も高温側にあるピークの温度を指す。最高ピーク温度が軟化温度と20℃以内の差であれば融点とし、軟化温度との差が20℃を超えるピークはガラス転移に起因するピークとする。
結晶性ポリエステル樹脂は、たとえば特開2006−113473号公報で開示される公知の方法で製造でき、原料モノマーとしてアルコール成分とカルボン酸成分を縮重合させて得られる。
結晶性ポリエステル樹脂は、結晶性ポリエステル樹脂におけるアルコール成分として、炭素数2〜8の脂肪族ジオールなどの、樹脂の結晶性を促進させるモノマーが含有されていることが好ましい。
炭素数2〜8の脂肪族ジオールとしては、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−ブテンジオールなどが挙げられ、特にα,ω−直鎖アルカンジオールが好ましい。
炭素数2〜8の脂肪族ジオールの含有量は、結晶性の高さの観点から、アルコール成分中、80モル%以上が好ましい。さらに、その中の1種の脂肪族ジオールが、アルコール成分中の70モル%以上を占めているのが望ましい。
カルボン酸成分としては、フマル酸、アジピン酸、シュウ酸、マロン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、コハク酸、セバシン酸、アゼライン酸、n−ドデシルコハク酸、n−ドデセニルコハク酸などの炭素数2〜30、好ましくは2〜8の脂肪族ジカルボン酸;フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸などの芳香族ジカルボン酸;シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環式ジカルボン酸;トリメリット酸、ピロメリット酸などの3価以上の多価カルボン酸などが挙げられる。これらの中では、結晶化度の高さの観点から、脂肪族ジカルボン酸が好ましく、炭素数2〜8の脂肪族ジカルボン酸が好ましい。なお、カルボン酸成分には、カルボン酸、その無水物およびそのアルキル(炭素数1〜3)エステルが含まれるが、これらの中では、カルボン酸が好ましい。脂肪族ジカルボン酸化合物の含有量は、カルボン酸成分中、70モル%以上が好ましい。
なお、結晶性ポリエステルにおけるカルボン酸成分とアルコール成分のモル比(カルボン酸成分/アルコール成分)は、結晶性ポリエステルの高分子量化を図る際には、カルボン酸成分よりもアルコール成分が多い方が好ましく、さらに減圧反応時、アルコール成分の留去によりポリエステルの分子量を容易に調整できる観点からは、0.9以上1未満が好ましい。結晶性ポリエステル樹脂を製造する際のアルコール成分とカルボン酸成分との縮重合は、たとえば、不活性ガス雰囲気中にて、要すればエステル化触媒を用いて、120〜230℃の温度で行うことができる。
また、結晶性ポリエステル樹脂の軟化温度は、低温定着性の観点から、70〜140℃であることが好まししい。
[微粒子分散液調製工程]
ステップs2の微粒子分散液調製工程は、ステップs2−(a)のせん断工程と、ステップs2−(b)の冷却減圧工程とを含み、結晶性ポリエステル樹脂の微粒子が水性媒体中に分散されてなる微粒子分散液を、連続的に得る工程である。微粒子分散液調製工程では、結晶性ポリエステル樹脂の微粒子と水性媒体とを撹拌下で搬送して、微粒子分散液を連続的に得るので、高い生産効率で結晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液を製造することができる。
(せん断工程)
ステップs2−(a)のせん断工程は、加熱加圧下で撹拌されてせん断力が付与されながら搬送される結晶性ポリエステル樹脂の粗粉砕粒子に、水性媒体を加えて転相乳化を行う工程である。ここで、転相乳化とは、粗粉砕粒子中に水性媒体が分散する状態から、水性媒体中に粗粉砕粒子が分散する状態に転化することを意味する。
せん断工程において粗粉砕粒子は、撹拌されて搬送されているときにせん断力が付与されて微粒化され、結晶性ポリエステル樹脂微粒子となって水性媒体中に分散される。これによって、結晶性ポリエステル樹脂微粒子の水性媒体中における分散状態が安定に維持されるとともに、結晶性ポリエステル樹脂微粒子の均一な結晶化が促進される。このように、結晶性ポリエステル樹脂微粒子の分散状態が安定に維持されると、結晶性ポリエステル樹脂微粒子同士の固着が発生して粗大化するのを防止することができ、粒度分布幅の狭い結晶性ポリエステル樹脂微粒子を得ることができる。また、結晶性ポリエステル樹脂微粒子の均一な結晶化が促進されると、結晶化度の低下が防止された結晶性ポリエステル樹脂微粒子を得ることができる。
粗粉砕粒子に対して添加される水性媒体は、粗粉砕粒子を溶解させない液体から選ばれ、たとえば、水である。粗粉砕粒子100重量部に対する水性媒体の添加量は、30〜50重量部であることが好ましい。粗粉砕粒子100重量部に対する水性媒体の添加量が50重量部を超えると、粗粉砕粒子に付与されるせん断力が小さくなり過ぎて、粗粉砕粒子を微粒化することができない。また、粗粉砕粒子100重量部に対する水性媒体の添加量が30重量部未満であると、粗粉砕粒子が微粒化されてなる結晶性ポリエステル樹脂微粒子同士が固着しやすくなり、結晶性ポリエステル樹脂微粒子の粒度分布幅が広くなってしまう。
また、水性媒体としては、乳化剤が添加されたものを用いるのが好ましい。乳化剤としては、公知のものが使用できるが、オレフィンスルホン酸塩が好ましく、具体的にはドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムである。その他の乳化剤として、低分子アニオン乳化剤も使用可能であるが、この場合には濡れ剤を併用する必要がある。水性媒体中における乳化剤の含有量は、0.1〜9重量%であることが好ましい。乳化剤の含有量を0.1重量%以上とすることによって、結晶性ポリエステル樹脂微粒子の水性媒体中における分散状態を安定に維持することができる。また、乳化剤の含有量を9重量%以下とすることによって、製造される結晶性ポリエステル樹脂微粒子の吸湿性などの特性が悪化するのを防止することができる。
なお、結晶性ポリエステル樹脂として水性媒体への自己分散性を有する自己分散性樹脂を用いた場合には、その分散性に応じて乳化剤の添加量を低減することができる。
また、せん断工程は、押出混練機を用いて行われることが好ましい。押出混練機としては、粗粉砕粒子をバレル内で加熱混練できる二軸混練機や一軸混練機を挙げることができ、たとえば、特開2008−101156号公報に記載の押出混練機を挙げることができる。押出混練機を用いることによって、水性媒体中において粗粉砕粒子に高いせん断力を付与することができるので、効率よく粗粉砕粒子を微粒化して結晶性ポリエステル樹脂微粒子とすることができる。また、せん断工程において押出混練機を用いて粗粉砕粒子に対して高いせん断力を付与することによって、結晶性ポリエステル樹脂微粒子の水性媒体中における分散状態を安定に維持することができるとともに、結晶性ポリエステル樹脂微粒子の均一な結晶化が促進される。また、せん断工程において押出混練機を用いることによって、連続的に微粒子分散液を得ることができ、結晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液の生産効率を向上させることができる。
図2は、せん断工程において用いられる押出混練機1の構成を示す図である。押出混練機1は、二軸押出部10と、材料フィーダ40と、水性媒体供給部50とを含んで構成される。
二軸押出部10は、加熱および冷却などの温度調節が可能なバレル11と、バレル11内に回転自在に設けられる2本のスクリュー12と、スクリュー12を回転駆動させる駆動モータ13とを備える。そして、バレル11には、上流側10aに材料投入口40a、下流側に乳化液排出口10bが設けられ、材料投入口40aと乳化液排出口10bとの間に、水性媒体投入口53aが設けられている。二軸押出部10において、材料投入口40aからバレル11内に供給される粗粉砕粒子は、回転駆動されるスクリュー12により、撹拌下で搬送されながらせん断力を受け加熱溶融される。そして、水性媒体投入口53aからバレル11内に供給される水性媒体は、スクリュー12の回転力によって、加熱溶融状態にある粗粉砕粒子と撹拌混合される。その後、粗粉砕粒子と水性媒体との混合物は、加熱加圧下のバレル11内で、スクリュー12の回転力によって搬送されながらせん断力が付与されて転相乳化され、粗粉砕粒子が微粒化されてなる結晶性ポリエステル樹脂微粒子が水性媒体中に分散する微粒子分散液が生成するようになっている。
スクリュー12の回転数は、粗粉砕粒子に対する水性媒体の添加量、バレル11内の温度および圧力、粗粉砕粒子および水性媒体のバレル11内への供給速度などを考慮して設定すればよく、本実施形態では、100〜800rpmの範囲に設定されている。
また、バレル11内の温度は、粗粉砕粒子を構成する結晶性ポリエステル樹脂の軟化温度(たとえば109℃)よりも高い温度(たとえば120〜150℃)に調整されている。そして、バレル11内の圧力は、0.2〜1.0MPaに調整されている。このようにバレル11内の温度および圧力を調整する理由は、材料投入口40aからバレル11内に供給される粗粉砕粒子を、水性媒体投入口53aの近傍で溶融状態とするためである。水性媒体が供給される前に粗粉砕粒子が溶融されていないと、転相乳化が十分に行われず、サブミクロンオーダーの結晶性ポリエステル樹脂微粒子が形成されず、生成する結晶性ポリエステル樹脂微粒子の粒度分布幅が広くなってしまう。
材料フィーダ40は、材料投入口40aを介してバレル11内に粗粉砕粒子を供給する部材である。本実施形態では、材料フィーダ40による粗粉砕粒子のバレル11内への供給速度は、5〜50kg/hに設定される。粗粉砕粒子のバレル11内への供給速度を前記範囲に設定することによって、粗粉砕粒子が確実に微粒化されるとともに、粗粉砕粒子が微粒化されてなる結晶性ポリエステル樹脂微粒子の水性媒体中における分散状態が安定に維持される。
水性媒体供給部50は、乳化剤が含有される水性媒体を、水性媒体投入口53aを介してバレル11内に供給する部材である。水性媒体供給部50は、水性媒体供給手段51と、水性媒体を水性媒体投入口53aに導く水性媒体配管53と、水性媒体に圧力を付与するとともに水性媒体のバレル11内への供給量を調節する液量調節バルブ52とを備える。そして、水性媒体供給手段51は、水性媒体投入口53aを介してバレル11内に水性媒体を供給する。本実施形態では、水性媒体供給部50による水性媒体のバレル11内への供給速度は、2〜30kg/hに設定される。水性媒体のバレル11内への供給速度を前記範囲に設定することによって、粗粉砕粒子が確実に微粒化されるとともに、粗粉砕粒子が微粒化されてなる結晶性ポリエステル樹脂微粒子の水性媒体中における分散状態が安定に維持される。
また、水性媒体供給部50によってバレル11内に供給される水性媒体の温度は、0〜50℃に調整されるのが好ましい。水性媒体の温度が0℃未満では、水性媒体が凍結するため供給不可となってしまうおそれがある。また、水性媒体の温度が50℃を超えると、水性媒体が溶融状態にある粗粉砕粒子と接触した際に沸騰しやすくなり、転相乳化が十分に行われず、生成する結晶性ポリエステル樹脂微粒子の粒度分布幅が広くなってしまう。
二軸押出部10のバレル11内において生成した微粒子分散液は、乳化液排出口10bにおいて多段減圧装置20と気密状態で接続する流路30を流過して、多段減圧装置20に向けて排出される。排出される微粒子分散液中の結晶性ポリエステル樹脂微粒子は、体積平均粒子径が0.3〜1.0μmの範囲内である。
(冷却減圧工程)
ステップs2−(b)の冷却減圧工程は、撹拌下でせん断力が付与されながら搬送される微粒子分散液を、温度および圧力が徐々に低下するように冷却および減圧する工程である。具体的には、冷却減圧工程では、冷却速度が5〜40℃/min、減圧速度が0.05〜0.2MPa/minとなるように、加熱加圧状態にある微粒子分散液を常温常圧になるまで冷却および減圧する。冷却速度および減圧速度が上記範囲を満たすように、微粒子分散液を冷却および減圧することによって、高い生産効率を維持した状態で、転相乳化後に微粒子分散液を冷却および減圧する途中で、水性媒体の突沸が発生するのを防止することができる。そのため、結晶性ポリエステル樹脂微粒子の水性媒体中における分散状態を安定に維持することができるとともに、結晶性ポリエステル樹脂微粒子の均一な結晶化が促進される。このように、結晶性ポリエステル樹脂微粒子の分散状態が安定に維持されると、結晶性ポリエステル樹脂微粒子同士の固着が発生して粗大化するのを防止することができ、粒度分布幅の狭い結晶性ポリエステル樹脂微粒子を得ることができる。また、結晶性ポリエステル樹脂微粒子の均一な結晶化が促進されると、結晶化度の低下が防止された結晶性ポリエステル樹脂微粒子を得ることができる。
本実施形態では、冷却減圧工程は、国際公開第03/059497号パンフレットに記載の熱交換手段を備える多段減圧装置20を用いて行われる。押出混練機1の乳化液排出口10bから排出される微粒子分散液は、流路30を流過して多段減圧装置20に導入される。
多段減圧装置20は、加熱加圧状態にある微粒子分散液を多段減圧装置20内に導入する入口通路と、入口通路に連通するように形成されて、冷却減圧された微粒子分散液を多段減圧装置20外に排出する出口通路20aと、入口通路と出口通路20aとの間に設けられて、連結部材を介して2以上の減圧部材が連結されてなる多段減圧手段と、多段減圧手段の全体を覆って冷却する熱交換手段とを含んで構成される。
多段減圧装置20において、多段減圧手段に用いられる減圧部材としては、たとえば、パイプ状部材が挙げられる。連結部材としては、たとえば、リング状シールが挙げられる。内径の異なる複数のパイプ状部材をリング状シールにて連結することによって多段減圧手段が構成される。たとえば、多段減圧手段は、入口通路から出口通路20aに向けて、同じ内径を有するパイプ状部材が2〜4個連結され、次にこれらよりも内径の大きなパイプ状部材が1個連結され、さらに、内径の大きなパイプ状部材よりも5〜20%程度の内径を有する小さなパイプ状部材が1〜3個程度連結されて構成されている。
加圧状態にある微粒子分散液は、上記のように構成された複数のパイプ状部材内を流過することによって、徐々に減圧され、最終的にはバブリングが起こらない大気圧(常圧)まで減圧される。また、多段減圧装置20は、多段減圧手段の全体を覆って冷却する熱交換手段が設けられ、微粒子分散液に付加されている圧力(背圧)の値に応じて、常温(20℃)まで冷却が行われるように構成されている。そして、多段減圧装置20内で冷却減圧された微粒子分散液は、出口通路20aから該多段減圧装置20の外部に排出される。
以上のようにして、結晶化度の低下が防止されて粒度分布幅が狭い結晶性ポリエステル樹脂微粒子が水性媒体中に分散された結晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液を製造することができる。冷却減圧工程を経て調製された分散液中の結晶性ポリエステル樹脂微粒子は、その体積平均粒子径が、0.3〜1.0μmの範囲内である。
<トナーの製造>
本実施形態のトナーの製造方法では、前記結晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液の製造方法により製造される結晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液と、少なくとも着色剤を含有する微粒子である着色剤含有粒子が水性媒体中に分散してなる着色剤含有粒子分散液とを混合し、結晶性ポリエステル樹脂微粒子と着色剤含有粒子とを凝集させてトナー母粒子を得る。
(着色剤含有粒子分散液の調製)
着色剤含有粒子分散液は、混合工程、溶融混練工程、粗粉砕工程および着色剤含有粒子分散液調製工程を経て作製することができる。図3は、本発明の実施の一形態であるトナーの製造方法における着色剤含有粒子分散液の調製手順を示すフローチャートである。
[混合工程]
ステップa1の混合工程は、着色剤、結着樹脂、帯電制御剤および離型剤を混合してトナー原料混合物を得る工程である。
着色剤としては、染料および顔料が挙げられるが、その中でも顔料を用いることが好ましい。顔料は、染料に比べて耐光性および発色性に優れるので、顔料を用いることによって耐光性および発色性に優れるトナーを得ることができる。顔料としては、黒色系顔料、有彩色系顔料などを使用できる。黒色系顔料としては、たとえば、カーボンブラック、酸化銅、二酸化マンガン、活性炭、非磁性フェライト、磁性フェライト、マグネタイトなどの黒色系無機顔料、アニリンブラックなどの黒色系有機顔料などが挙げられる。
有彩色系顔料としては、たとえば、黄鉛、亜鉛鉛、カドミウムイエロー、黄色酸化鉄、ミネラルファストイエロー、ニッケルチタンイエロー、ネーブルイエローなどの黄色系無機顔料、ナフトールイエローS、ハンザイエローG、ハンザイエロー10G、ベンジジンイエローG、ベンジジンイエローGR、キノリンイエローレーキ、パーマネントイエローNCG、タートラジンレーキなどの黄色系有機顔料、赤色黄鉛、モリブデンオレンジなどの橙色系無機顔料、パーマネントオレンジGTR、ピラゾロンオレンジ、バルカンオレンジ、インダスレンブリリアントオレンジRK、ベンジジンオレンジG、インダスレンブリリアントオレンジGKなどの橙色系有機顔料、ベンガラ、カドミウムレッド、鉛丹、硫化水銀、カドミウムなどの赤色系無機顔料、パーマネントレッド4R、リソールレッド、ピラゾロンレッド、ウォッチングレッド、カルシウム塩、レーキレッドC、レーキレッドD、ブリリアントカーミン6B、エオシンレーキ、ローダミンレーキB、アリザリンレーキ、ブリリアントカーミン3Bなどの赤色系有機顔料、マンガン紫などの紫色系無機顔料、ファストバイオレットB、メチルバイオレットレーキなどの紫色系有機顔料、紺青、コバルトブルーなどの青色系無機顔料、アルカリブルーレーキ、ビクトリアブルーレーキ、フタロシアニンブルー、無金属フタロシアニンブルー、フタロシアニンブルー部分塩素化物、ファーストスカイブルー、インダスレンブルーBCなどの青色系有機顔料、クロムグリーン、酸化クロムなどの緑色系無機顔料、ピグメントグリーンB、マイカライトグリーンレーキ、ファイナルイエローグリーンGなどの緑色系有機顔料などが挙げられる。
着色剤は、1種または2種以上を使用できる。また、同色系の着色剤を2種以上用いてもよく、異色系のものを混合して用いても良い。着色剤の含有量は、好ましくはトナー原料混合物全量の1〜20重量%、さらに好ましくは0.2〜10重量%である。
結着樹脂としては、溶融状態で造粒可能であれば特に制限されず、公知のものを使用でき、たとえば、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、スチレン系樹脂、(メタ)アクリル樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂などが挙げられる。結着樹脂は、1種を単独で使用できまたは2種以上を併用できる。これらの中でも、低温定着性や耐ホットオフセット性に優れる点で、非晶質ポリエステル樹脂が好ましい。非晶質ポリエステル樹脂とは、結晶性指数が1.5より大きいか、0.6未満であり、好ましくは1.5より大きいポリエステル樹脂をいう。非晶質ポリエステル樹脂は、原料モノマーとしてアルコール成分とカルボン酸成分を縮重合させて得られる。
非晶質ポリエステル樹脂は、非晶質ポリエステル樹脂におけるアルコール成分として、ポリオキシプロピレン(2,2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシエチレン(2,2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンなどのビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物などの芳香族ジオール;エチレングリコール、プロピレングリコールなどの脂肪族ジオール;グリセリン、ペンタエリスリトールなどの3価以上のアルコールなどが挙げられる。
前記アルコール成分の中では、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物などの芳香族ジオールなどの、樹脂の非晶質化を促進するモノマーが好ましく、さらに帯電性の観点から、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物の含有量は、アルコール成分中、50モル%以上が好ましく、70モル%以上がより好ましく、90モル%以上がさらに好ましい。
また、カルボン酸成分としては、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸などの芳香族ジカルボン酸;シュウ酸、マロン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、n−ドデシルコハク酸、n−ドデセニルコハク酸などの脂肪族ジカルボン酸;シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環式ジカルボン酸;トリメリット酸、ピロメリット酸などの3価以上の多価カルボン酸;およびこれらの酸の無水物、アルキル(炭素数1〜3)エステルなどが挙げられ、これらの中では、帯電性の観点から、芳香族系のカルボン酸化合物が好ましく、結晶性ポリエステルの分散性の観点からは、脂肪族系のカルボン酸化合物が好ましく、フマル酸がより好ましい。なお、本発明においてカルボン酸化合物とは、ジカルボン酸、その無水物およびそのアルキル(炭素数1〜3)エステルを指す。
非晶質ポリエステル樹脂を製造する際のアルコール成分とカルボン酸成分との縮重合は、たとえば、不活性ガス雰囲気中にて、要すればエステル化触媒を用いて、180〜250℃の温度で行うことができる。
また、非晶質ポリエステル樹脂の軟化温度は、80〜150℃であることが好ましい。また、非晶質ポリエステル樹脂は、低温定着性と耐オフセット性の両立の観点から、軟化温度の異なる2種類の非晶質ポリエステル樹脂からなることが好ましく、その軟化温度の差は、好ましくは10℃以上、より好ましくは20〜60℃である。低軟化点ポリエステル樹脂の軟化温度は、低温定着性の観点から、好ましくは80〜120℃であり、高軟化点ポリエステル樹脂の軟化温度は、耐オフセット性の観点から、好ましくは120〜150℃である。高軟化点ポリエステル樹脂の低軟化点ポリエステル樹脂に対する重量比(高軟化点ポリエステル樹脂/低軟化点ポリエステル樹脂)は、20/80〜80/20であることが好ましい。
また、非晶質ポリエステル樹脂の酸価は、1〜50mgKOH/gが好ましく、10〜30mgKOH/gがより好ましい。また、非晶質ポリエステル樹脂のガラス転移温度は、粉砕性および保存安定性の観点から、40〜80℃であることが好ましい。
ここで、結晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液に含有される結晶性ポリエステル樹脂微粒子を構成する樹脂と、着色剤含有粒子分散液に含有される着色剤含有粒子を構成する非晶質ポリエステル樹脂とは、結晶性ポリエステル樹脂の分散性の観点から、少なくとも1種の共通の化合物を原料モノマーとするものであることが好ましい。かかる共通の化合物は、カルボン酸成分であることが好ましく、結晶性ポリエステル樹脂の結晶化度を高める観点から、フマル酸およびフタル酸がより好ましく、フマル酸がさらに好ましい。
なお、結着樹脂の主鎖または側鎖にカルボキシル基、スルホン酸基などの親水性基を結合させ、水性媒体中での自己分散性を付与した結着樹脂を用いることもできる。
帯電制御剤としてはこの分野で常用されるものを使用でき、たとえば、クロム・アゾ錯体染料、鉄アゾ錯体染料、コバルト・アゾ錯体染料などの含金属アゾ染料、銅フタロシアニン染料、サリチル酸とそのアルキル誘導体の金属(クロム、亜鉛、アルミニウム、硼素など)錯体およびその塩、ナフトール酸とその誘導体の金属(クロム、亜鉛、アルミニウム、硼素など)錯体およびその塩、ベンジル酸とその誘導体の金属(クロム、亜鉛、アルミニウム、硼素など)錯体およびその塩、長鎖アルキルカルボン酸塩、長鎖アルキルスルホン酸塩などの負帯電性トナー用帯電制御剤、ニグロシン染料とその誘導体、ベンゾグアナミン、トリフェニルメタン誘導体、4級アンモニウム塩、4級ホスフォニウム塩、4級ピリジニウム塩、グアニジン塩、アミジン塩、含窒素官能基を有するモノマー〔N,N−ジメチルアミノメチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレートなどのN,N−ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート類、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドなどのN,N−ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミド類など〕のラジカル重合性共重合体などの正帯電性トナー用帯電制御剤が挙げられる。帯電制御剤は、1種または2種以上を使用できる。帯電制御剤の含有量は、好ましくはトナー原料混合物全量の0.1〜5.0重量%である。
離型剤としてはこの分野で常用されるものを使用でき、たとえば、パラフィンワックスとその誘導体、マイクロクリスタリンワックスとその誘導体などの石油系ワックス、フィッシャートロプシュワックスとその誘導体、ポリオレフィンワックスとその誘導体、低分子量ポリプロピリンワックスとその誘導体、ポリオレフィン系重合体ワックス(低分子量ポリエチレンワックスなど)とその誘導体などの炭化水素系合成ワックス、カルナバワックスとその誘導体、ライスワックスとその誘導体、キャンデリラワックスとその誘導体、木蝋などの植物系ワックス、蜜蝋、鯨蝋などの動物系ワックス、脂肪酸アミド、フェノール脂肪酸エステルなどの油脂系合成ワックス、長鎖カルボン酸とその誘導体、長鎖アルコールとその誘導体、シリコーン系重合体、高級脂肪酸などが挙げられる。なお、誘導体には、酸化物、ビニル系モノマーとワックスとのブロック共重合物、ビニル系モノマーとワックスとのグラフト変性物などが含まれる。離型剤の使用量は特に制限されず広い範囲から適宜選択できるけれども、好ましくは、トナー原料混合物全量の0.2〜20重量%である。
[溶融混練工程]
ステップa2の溶融混練工程は、混合工程において得られたトナー原料混合物を溶融混練して溶融混練物を得る工程である。混練温度は、結着樹脂の溶融温度以上の温度(通常は80〜200℃程度、好ましくは100〜150℃程度)である。溶融混練には、二軸混練機、オープンロール混練機などの一般的な混練機を使用できる。
[溶融混練物粗粉砕工程]
ステップa3の溶融混練物粗粉砕工程は、溶融混練工程において得られた溶融混練物を粗粉砕して、体積平均粒子径が0.5〜5mmの着色剤含有粗粉砕粒子を得る工程である。溶融混練物の粗粉砕は、カッティングミル、ハンマーミルなどの公知の粉体粉砕機を用いて行うことができる。
[着色剤含有粒子分散液調製工程]
ステップa4の着色剤含有粒子分散液調製工程は、ステップa4−(a)の着色剤含有粒子せん断工程と、ステップa4−(b)の着色剤含有粒子冷却減圧工程とを含み、溶融混練物粗粉砕工程において得られた着色剤含有粗粉砕粒子に水性媒体を加えて転相乳化を行い、体積平均粒子径が0.1〜2μmの着色剤含有粒子が水性媒体中に分散してなる着色剤含有粒子分散液を調製する工程である。
(着色剤含有粒子せん断工程)
ステップa4−(a)の着色剤含有粒子せん断工程は、加熱加圧下で撹拌されてせん断力が付与されながら搬送される着色剤含有粗粉砕粒子に、水性媒体を加えて転相乳化を行う工程である。着色剤含有粒子せん断工程は、前述した押出混練機1を用いて行うことができる。
着色剤含有粒子せん断工程において着色剤含有粗粉砕粒子は、撹拌されて搬送されているときにせん断力が付与されて微粒化され、着色剤含有粒子となって水性媒体中に分散される。これによって、着色剤含有粒子の水性媒体中における分散状態が安定に維持されるので、着色剤含有粒子同士の固着が発生して粗大化するのを防止することができ、粒度分布幅の狭い着色剤含有粒子を得ることができる。
着色剤含有粗粉砕粒子に対して添加される水性媒体は、着色剤含有粗粉砕粒子を溶解させない液体から選ばれ、たとえば、水である。着色剤含有粗粉砕粒子100重量部に対する水性媒体の添加量は、30〜50重量部であることが好ましい。着色剤含有粗粉砕粒子100重量部に対する水性媒体の添加量が50重量部を超えると、着色剤含有粗粉砕粒子に付与されるせん断力が小さくなり過ぎて、着色剤含有粗粉砕粒子を微粒化することができない。また、着色剤含有粗粉砕粒子100重量部に対する水性媒体の添加量が30重量部未満であると、着色剤含有粗粉砕粒子が微粒化されてなる着色剤含有粒子同士が固着しやすくなり、着色剤含有粒子の粒度分幅が広くなってしまう。
また、水性媒体としては、乳化剤が添加されたものを用いるのが好ましい。乳化剤としては、公知のものが使用できるが、オレフィンスルホン酸塩が好ましく、具体的にはドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムである。その他の乳化剤として、低分子アニオン乳化剤も使用可能であるが、この場合には濡れ剤を併用する必要がある。水性媒体中における乳化剤の含有量は、0.1〜9重量%であることが好ましい。乳化剤の含有量を0.1重量%以上とすることによって、着色剤含有粒子の水性媒体中における分散状態を安定に維持することができる。また、乳化剤の含有量を9重量%以下とすることによって、製造される着色剤含有粒子の吸湿性などの特性が悪化するのを防止することができる。
(着色剤含有粒子冷却減圧工程)
ステップa4−(b)の着色剤含有粒子冷却減圧工程は、撹拌下でせん断力が付与されながら搬送される着色剤含有粒子分散液を、温度および圧力が徐々に低下するように冷却および減圧する工程である。着色剤含有粒子冷却減圧工程は、前述した多段減圧装置20を用いて行うことができる。
着色剤含有粒子冷却減圧工程では、冷却速度が5〜20℃/min、減圧速度が0.05〜0.2MPa/minとなるように、加熱加圧状態にある着色剤含有粒子分散液を常温常圧になるまで冷却および減圧する。冷却速度および減圧速度が上記範囲を満たすように、着色剤含有粒子分散液を冷却および減圧することによって、高い生産効率を維持した状態で、転相乳化後に着色剤含有粒子分散液を冷却および減圧する途中で、水性媒体の突沸が発生するのを防止することができる。そのため、着色剤含有粒子の水性媒体中における分散状態を安定に維持することができるので、着色剤含有粒子同士の固着が発生して粗大化するのを防止することができ、粒度分布幅の狭い着色剤含有粒子を得ることができる。
以上のようにして、粒度分布幅が狭い着色剤含有粒子が水性媒体中に分散された着色剤含有粒子分散液を製造することができる。着色剤含有粒子冷却減圧工程を経て調製された分散液中の着色剤含有粒子は、その体積平均粒子径が、0.1〜2μmの範囲内である。
(トナー母粒子の作製)
トナーを構成するトナー母粒子は、凝集工程、洗浄工程、分離工程および乾燥工程を経て作製することができる。図4は、トナーの製造方法におけるトナー母粒子を作製する手順を示すフローチャートである。
[凝集工程]
ステップb1の凝集工程は、前述のようにして得られた結晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液と着色剤含有粒子分散液とを混合して混合分散液とし、該混合分散液に凝集剤を添加して結晶性ポリエステル樹脂微粒子と着色剤含有粒子とを凝集させて、トナー母粒子の分散液を得る工程である。凝集工程において得られる分散液中のトナー母粒子は、結晶化度の低下が防止されて粒度分布幅が狭い結晶性ポリエステル樹脂微粒子を構成成分として含有することになる。
また、結晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液と着色剤含有粒子分散液とを混合するときには、結晶性ポリエステル樹脂と非晶質ポリエステル樹脂との合計量に対して、結晶性ポリエステル樹脂の含有量が、3〜40重量%であることが好ましく、5〜30重量%であることが特に好ましい。また、結晶性ポリエステル樹脂と非晶質ポリエステル樹脂との重量比(結晶性ポリエステル樹脂/非晶質ポリエステル樹脂)は、3/97〜50/50が好ましく、5/95〜35/65がより好ましい。
凝集剤の添加は無撹拌下で行ってもよいけれども、撹拌下で行うのが好ましい。撹拌下で凝集剤の添加を行う場合には、たとえば、撹拌手段を備える造粒装置を用いることができる。また、微粒子分散液と凝集剤との混合において、撹拌手段による撹拌速度、撹拌時の到達温度、昇温速度および凝集剤の添加量を適宜選択することによって、所望の体積平均粒子径、粒度分布および形状を有するトナー母粒子を得ることができる。本実施形態では、トナー母粒子の体積平均粒子径は、4〜7μm程度の範囲に調整される。体積平均粒子径が前記範囲に調整されたトナー母粒子からなるトナーは、ドット再現性に優れ、カブリやトナー飛散のない、高品位の画像を形成可能なトナーとなる。
凝集工程において用いられる凝集剤としては公知のものを使用できるが、その中でも、水溶性多価金属化合物が好ましい。水溶性多価金属化合物としては、たとえば、塩化カルシウム、塩化バリウム、塩化マグネシウム、塩化亜鉛、塩化アルミニウムなどの多価金属ハロゲン化物、硝酸カルシウム、硫酸アルミニウム、硫酸マグネシウムなどの多価金属塩、ポリ塩化アルミニウム、ポリ水酸化アルミニウム、多硫化カルシムウムなどの無機金属塩重合体などが挙げられる。これらの中でも多価金属塩が好ましく、硫酸マグネシウム、硫酸アルミニウムなどの2または3価金属硫酸塩がさらに好ましい。水溶性多価金属化合物の使用量は特に制限されず、最終的に得ようとするトナー母粒子の体積平均粒子径などに応じて、広い範囲から適宜選択すればよいけれども、好ましくは、結晶性ポリエステル樹脂微粒子および着色剤含有粒子の合計量100重量部に対して0.1〜30重量部程度とすればよい。
なお、本実施形態では、結着樹脂、着色剤、帯電制御剤および離型剤を含む着色剤含有粒子が水性媒体に分散されてなる着色剤含有粒子分散液を用いてトナー母粒子を作製する例を示した。しかしながら、これに限定されるものではなく、凝集工程において結晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液と混合する着色剤含有粒子分散液は、着色剤が単独で水性媒体に分散されてなる分散液であってもよい。この場合には、結晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液と、着色剤のみで構成される着色剤含有粒子分散液と、必要に応じて、帯電制御剤が水性媒体に分散されてなる分散液と、離型剤が水性媒体に分散されてなる分散液とを混合して混合分散液とし、該混合分散液に凝集剤を添加して凝集させて、トナー母粒子の分散液を得るようにすればよい。
[洗浄工程]
ステップb2の洗浄工程は、分散液中に含まれるトナー母粒子を洗浄する工程である。トナー母粒子の洗浄は、乳化剤およびこれらに由来する不純物などを除去するために実施される。乳化剤および前記不純物がトナー母粒子に残留すると、トナー母粒子で構成されるトナーの帯電性能が不安定になるおそれがある。また、空気中の水分の影響によって帯電量が低下するおそれがある。
トナー母粒子の洗浄は、たとえば、トナー母粒子の分散液に水を加えて撹拌し、遠心分離などによって分離される上澄み液を除去することによって行うことができる。トナー母粒子の洗浄は、導電率計などを用いて測定した上澄み液の導電率が100μS/cm以下、好ましくは10μS/cm以下になるまで繰返し行うことが好ましい。これにより、乳化剤およびこれらに由来する不純物類の残留を一層確実に防ぎ、トナー母粒子で構成されるトナーの帯電性能をさらに均一に安定化することができる。
洗浄に用いる水は、導電率が20μS/cm以下の水であることが好ましい。このような洗浄水は、たとえば、活性炭法、イオン交換法、蒸留法、逆浸透法などによって調製することができる。またこれらの方法のうち、2種以上を組合せて水を調製してもよい。トナー母粒子の洗浄は、バッチ式および連続式のいずれで実施してもよい。また洗浄水の温度は特に制限されるものではないが、10℃以上、トナー母粒子のガラス転移温度(Tg)以下であることが好ましい。
[分離工程]
ステップb3の分離工程では、洗浄後のトナー母粒子を含有する水性媒体の混合物から、トナー母粒子を分離し回収する。水性媒体からのトナー母粒子の分離は、特に限定されるものではないが、たとえば、濾過、吸引濾過、遠心分離などによって行うことができる。
[乾燥工程]
ステップb4の乾燥工程では、洗浄、分離後のトナー母粒子を乾燥させる。トナー母粒子の乾燥は、特に限定されるものではないが、凍結乾燥法、気流式乾燥法などによって実施できる。
本実施形態のトナーの製造方法では、前述のようにして製造されるトナー母粒子を用いてトナーを作製する。トナー母粒子は前述したように、結晶化度の低下が防止されて粒度分布幅が狭い結晶性ポリエステル樹脂微粒子を構成成分として含有する。したがって、トナー母粒子からなるトナーは、優れた低温定着性および耐ホットオフセット性を有するとともに、高品位の画像を形成することができる。
トナーは、トナー母粒子単独で構成されていてもよく、トナー母粒子に、粉体流動性向上、摩擦帯電性向上、耐熱性、長期保存性改善、クリーニング特性改善などの機能を担う外添剤を混合して、トナーとしてもよい。
外添剤としては、この分野で常用されるものを使用でき、たとえば、シリカ微粉末、酸化チタン微粉末およびアルミナ微粉末などが挙げられる。これらの無機微粉末は、疎水化、帯電性コントロールなどの目的でシリコーンワニス、各種変性シリコーンワニス、シリコーンオイル、各種変性シリコーンオイル、シランカップリング剤、官能基を有するシランカップリング剤、その他の有機ケイ素化合物などの処理剤で処理されていることが好ましく、1種を単独で使用でき、または2種以上を併用できる。外添剤の添加量としては、トナーに必要な帯電量、トナーの環境特性などを考慮して、トナー母粒子100重量部に対し1〜10重量部であることが好ましい。
以上のようにして、必要に応じて外添剤が外添されるトナーは、そのまま一成分現像剤として使用することができ、またキャリアと混合して二成分現像剤として使用することができる。一成分現像剤として使用する場合、キャリアを用いることなくトナーのみで使用する。また一成分現像剤として使用する場合、ブレードおよびファーブラシを用い、現像スリーブで摩擦帯電させてスリーブ上にトナーを付着させることによってトナーを搬送し、画像形成を行う。
二成分現像剤として使用する場合、トナーをキャリアとともに用いる。キャリアとしては、公知のものを使用でき、たとえば、鉄、銅、亜鉛、ニッケル、コバルト、マンガン、クロムなどからなる単独または複合フェライトおよびキャリアコア粒子を被覆物質で表面被覆した樹脂被覆キャリア、または樹脂に磁性を有する粒子を分散させた樹脂分散型キャリアなどが挙げられる。被覆物質としては公知のものを使用でき、たとえば、ポリテトラフルオロエチレン、モノクロロトリフルオロエチレン重合体、ポリフッ化ビニリデン、シリコン樹脂、ポリエステル樹脂、ジターシャリーブチルサリチル酸の金属化合物、スチレン系樹脂、アクリル樹脂、ポリアシド、ポリビニルブチラール、ニグロシン、アミノアクリレート樹脂、塩基性染料、塩基性染料のレーキ物、シリカ微粉末、アルミナ微粉末などが挙げられる。また、樹脂分散型キャリアに用いられる樹脂としても特に制限されないけれども、たとえば、スチレンアクリル樹脂、ポリエステル樹脂、フッ素系樹脂、およびフェノール樹脂などが挙げられる。いずれも、トナー成分に応じて選択するのが好ましく、1種を単独で使用できまたは2種以上を併用できる。また、キャリアの粒径は特に制限されないけれども、高画質化を考慮すると、好ましくは10〜100μm、さらに好ましくは20〜50μmである。
(実施例)
以下に実施例および比較例を挙げ、本発明を具体的に説明する。実施例および比較例における各物性値は、以下に示すようにして測定した。
<体積平均粒子径および変動係数CV>
電解液(商品名:ISOTON−II、ベックマン・コールター株式会社製)50mlに、試料20mgおよびアルキルエーテル硫酸エステルナトリウム1mlを加え、超音波分散器(商品名:UH−50、株式会社エスエムテー製)を用いて、超音波周波数20kHzで3分間分散処理し、測定用試料を調製した。この測定用試料について、粒度分布測定装置(商品名:MultisizerIII、ベックマン・コールター株式会社製)を
用い、アパーチャ径20μm、測定粒子数50000カウントの条件下に測定を行い、試料粒子の体積粒度分布から体積平均粒子径を求めた。また体積平均粒子径およびその標準偏差に基づき、変動係数CVを、下記式(1)によって算出した。
変動係数CV(%)=(標準偏差/体積平均粒子径)×100 …(1)
<ガラス転移温度(Tg)>
日本工業規格(JIS)K7121−1987に準じ、示差走査熱量計(商品名:DSC220、セイコー電子工業株式会社製)を用いて、試料1gを昇温速度毎分10℃で加熱してDSC曲線を測定した。得られたDSC曲線のガラス転移に相当する吸熱ピークの高温側のベースラインを低温側に延長した直線と、ピークの立ち上がり部分から頂点までの曲線に対して勾配が最大になるような点で引いた接線との交点の温度をガラス転移温度(Tg)として求めた。
<軟化温度(Tm)>
流動特性評価装置(商品名:フローテスターCFT−100C、株式会社島津製作所製)において、荷重10kgf/cm2(9.8×105Pa)を与えて試料1gがダイ(ノズル口径1mm、長さ1mm)から押出されるように設定し、昇温速度毎分6℃で加熱し、ダイから試料の半分量が流出したときの温度を求め、軟化温度(Tm)とした。
<結晶化度>
上記にしたがって測定した軟化温度(Tm)と、ガラス転移温度測定方法と同様の方法により測定した吸熱の最高ピーク温度に相当する温度(Tc)とを用い、下記式(2)から結晶性の度合いとして、結晶性指数を算出した。そして、結晶性指数が0.6〜1.5の範囲内である樹脂を結晶化度が良好である樹脂とし、範囲外の樹脂を結晶化度が不良である樹脂とした。
結晶性指数=Tm/Tc …(2)
<酸価>
樹脂の酸価はJIS K 0070に規定される方法により測定される。この場合、酢酸エチル不溶分が3.0重量%以上の場合は、酸価測定溶媒はジオキサンを用いた。
<結晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液の製造>
[結晶性ポリエステル樹脂Aの製造]
1,6−ヘキサンジオール300g、フマル酸812g、酸化ジブチル錫4gおよびハイドロキノン1gを、窒素導入管、脱水管、撹拌器および熱電対を装備した5リットル容積の四つ口フラスコに入れ、160℃で5時間かけて反応させた後、200℃に昇温して1時間反応させ8.3kPaにてさらに所望の結晶性指数に達するまで反応させて、軟化温度109℃、吸熱の最高ピーク温度113℃、結晶性指数0.97の結晶性ポリエステル樹脂Aを得た。
(実施例1)
[粗粉砕工程]
結晶性ポリエステル樹脂Aをカッターミル(商品名:VM−16、株式会社セイシン企業製)で1mmのフレークに粗粉砕し、粗粉砕粒子を得た。
[せん断工程]
粗粉砕粒子100重量部に対して、水性媒体(水40重量部、乳化剤としてドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム3重量部)を添加し、前述した押出混練機1を用いて粗粉砕粒子にせん断力を付与しながら転相乳化を行い、粗粉砕粒子が微粒化されてなる結晶性ポリエステル樹脂微粒子が水中に分散されてなる結晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液を得た。このとき、転相乳化する際の押出混練機1における条件は、バレル内温度を145℃、バレル内圧力を0.2MPa、スクリュー回転数を300rpm(スクリュー先端部の周速度0.5m/s)、粗粉砕粒子のバレル内への供給速度を10kg/h、水性媒体のバレル内への供給速度を4.2kg/hに設定した。
[冷却減圧工程]
せん断工程において加熱加圧された結晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液を多段減圧装置に導入し、温度および圧力が徐々に低下するように冷却および減圧した。このとき、多段減圧装置による分散液の冷却速度は30℃/min、減圧速度は0.1Mpa/minであり、常温常圧になるまで結晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液を冷却および減圧した。
得られた結晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液A1に含まれる結晶性ポリエステル樹脂微粒子は、体積平均粒子径が0.35μm、変動係数CVが26%で、結晶性指数が0.9であった。
(実施例2)
せん断工程において粗粉砕粒子100重量部に対して添加する水性媒体の添加量を、水30重量部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム2.5重量部としたこと以外は実施例1と同様にして、実施例2の結晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液A2を得た。得られた結晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液A2に含まれる結晶性ポリエステル樹脂微粒子は、体積平均粒子径が0.40μm、変動係数CVが28%で、結晶性指数が1.2であった。
(実施例3)
せん断工程において粗粉砕粒子100重量部に対して添加する水性媒体の添加量を、水50重量部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム4重量部としたこと以外は実施例1と同様にして、実施例3の結晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液A3を得た。得られた結晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液A3に含まれる結晶性ポリエステル樹脂微粒子は、体積平均粒子径が0.36μm、変動係数CVが24%で、結晶性指数が1.1であった。
(実施例4)
せん断工程において転相乳化する際の押出混練機1の設定条件を、バレル内温度が135℃、バレル内圧力が0.6Mpaとなるように変更したこと以外は実施例1と同様にして、実施例4の結晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液A4を得た。得られた結晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液A4に含まれる結晶性ポリエステル樹脂微粒子は、体積平均粒子径が0.54μm、変動係数CVが27%で、結晶性指数が1.2であった。
(実施例5)
せん断工程において転相乳化する際の押出混練機1の設定条件を、スクリュー回転数が200rpm(スクリュー先端部の周速度が0.3m/s)となるように変更したこと以外は実施例1と同様にして、実施例5の結晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液A5を得た。得られた結晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液A5に含まれる結晶性ポリエステル樹脂微粒子は、体積平均粒子径が0.42μm、変動係数CVが27%で、結晶性指数が0.9であった。
(実施例6)
せん断工程において粗粉砕粒子100重量部に対して添加する水性媒体の添加量を、水40重量部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.5重量部としたこと以外は実施例1と同様にして、実施例6の結晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液A6を得た。得られた結晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液A6に含まれる結晶性ポリエステル樹脂微粒子は、体積平均粒子径が0.40μm、変動係数CVが35%で、結晶性指数が1.2であった。
(実施例7)
せん断工程において転相乳化する際の押出混練機1の設定条件を、バレル内温度が145℃、バレル内圧力が0.55Mpaとなるようにし、スクリュー回転数が900rpm(スクリュー先端部の周速度が1.5m/s)となるように変更したこと以外は実施例1と同様にして、実施例7の結晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液A7を得た。得られた結晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液A7に含まれる結晶性ポリエステル樹脂微粒子は、体積平均粒子径が0.40μm、変動係数CVが24%で、結晶性指数が1.2であった。
(比較例1)
せん断工程を以下のように変更したこと以外は実施例1と同様にした。
[せん断工程]
粗粉砕粒子100重量部に対して、水性媒体(水400重量部、乳化剤としてドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム25重量部)を添加し、高圧ホモジナイザ(商品名:Nano3000、株式会社 美粒製)を用いて粗粉砕粒子にせん断力を付与しながら転相乳化を行い、粗粉砕粒子が微粒化されてなる結晶性ポリエステル樹脂微粒子が水中に分散されてなる結晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液A8を得た。このとき、転相乳化する際の高圧ホモジナイザにおける条件は、温度が200℃、圧力が180MPaに設定した。
得られた結晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液A8に含まれる結晶性ポリエステル樹脂微粒子は、体積平均粒子径が0.55μm、変動係数CVが56%で、結晶性指数が1.8であった。
(比較例2)
せん断工程を以下のように変更したこと以外は実施例1と同様にした。
[せん断工程]
粗粉砕粒子100重量部に対して、水性媒体(水400重量部、乳化剤としてドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム25重量部)を添加し、乳化機(商品名:キャビトロン、株式会社ユーロテック製)を用いて粗粉砕粒子にせん断力を付与しながら転相乳化を行い、粗粉砕粒子が微粒化されてなる結晶性ポリエステル樹脂微粒子が水中に分散されてなる結晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液A9を得た。このとき、転相乳化する際の乳化機における条件は、温度が110℃、圧力が1.1Mpa、スクリュー回転数が3000rpm(スクリュー先端部の周速度が10m/s)に設定した。
得られた結晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液A9に含まれる結晶性ポリエステル樹脂微粒子は、体積平均粒子径が0.38μm、変動係数CVが106%で、結晶性指数が0.4であった。
(比較例3)
冷却減圧工程を以下のように変更したこと以外は実施例1と同様にした。
[冷却減圧工程]
せん断工程において加熱加圧された結晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液を多段減圧装置を用いずに冷却および減圧した。このとき、分散液の冷却速度は80℃/minであり、常温常圧になるまで結晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液を冷却および減圧した。
得られた結晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液A10に含まれる結晶性ポリエステル樹脂微粒子は、体積平均粒子径が4μm、変動係数CVが46%で、結晶性指数が1.6であった。
以上のようにして製造された実施例1〜7および比較例1〜3の結晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液において、分散液中の結晶性ポリエステル樹脂微粒子の特性を、表1にまとめた。
Figure 2010241878
表1から、実施例1〜7の分散液中の結晶性ポリエステル樹脂微粒子は、比較例1〜3の分散液中の結晶性ポリエステル樹脂微粒子と比較して、変動係数CVの値が小さくて粒度分布幅が狭く、結晶化度が良好な微粒子であることは明らかである。
<着色剤含有粒子分散液の製造>
[非晶質ポリエステルBの製造]
ポリオキシプロピレン(2,2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン1750g、テレフタル酸706gおよび酸化ジブチル錫4gを、窒素導入管、脱水管、撹拌器および熱電対を装備した5リットル容積の四つ口フラスコに入れ、230℃で20時間かけて反応させた後、8.3kPaにて1時間反応させて、酸価11.6mgKOH/g、軟化温度100℃、ガラス転移温度63℃、吸熱の最高ピーク温度67℃、結晶性指数1.5の非晶質ポリエステル樹脂Bを得た。
[非晶質ポリエステルCの製造]
ポリオキシプロピレン(2,2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン873g、ポリオキシエチレン(2,2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン813g、フマル酸435g、酸化ジブチル錫4gおよびハイドロキノン1gを、窒素導入管、脱水管、撹拌器および熱電対を装備した5リットル容積の四つ口フラスコに入れ、200℃で8時間かけて反応させた。さらに210℃にて無水トリメリット酸240gを添加し、軟化温度に達するまで反応させて、酸価35mgKOH/g、軟化温度135℃、ガラス転移温度62℃の非晶質ポリエステル樹脂Cを得た
[着色剤含有粒子分散液Pの調製]
非晶質ポリエステル樹脂Bが50重量部、非晶質ポリエステル樹脂Cが30重量部、シリカ微粒子が6重量部、C.I.ピグメント・ブルー15:3が5重量部、ホウ素化合物(日本カーリット社製LR−147)が2重量部、および、パラフィンワックス(日本精鑞社製HNP−10)が3重量部を、ヘンシェルミキサで10分間混合した後、混練分散処理装置(三井鉱山株式会社製:ニーディックスMOS140−800)で溶融混練した。冷却した溶融混練物をカッターミルで1mmのフレークに粗粉砕し、着色剤含有粗粉砕粒子を得た。
その後、着色剤含有粗粉砕粒子100重量部に対して、水性媒体(水25重量部、アニオン系乳化剤8重量部)を添加し、前述した押出混練機1を用いて着色剤含有粗粉砕粒子にせん断力を付与しながら転相乳化を行い、着色剤含有粗粉砕粒子が微粒化されてなる着色剤含有粒子が水中に分散されてなる着色剤含有粒子分散液を得た。このとき、転相乳化する際の押出混練機1における条件は、バレル内温度を145℃、バレル内圧力を0.25Mpa、スクリュー回転数を300rpm、粗粉砕粒子のバレル内への供給速度を20kg/h、水性媒体のバレル内への供給速度を5kg/hに設定した。
次に、加熱加圧された着色剤含有粒子分散液を多段減圧装置に導入し、温度および圧力が徐々に低下するように冷却および減圧した。このとき、多段減圧装置による分散液の冷却速度は15℃/min、減圧速度は0.05Mpa/minであり、常温常圧になるまで着色剤含有粒子分散液を冷却および減圧した。
得られた着色剤含有粒子分散液Pに含まれる着色剤含有粒子は、体積平均粒子径が0.4μm、変動係数CVが24%であった。
<トナーの製造>
(実施例8)
[凝集工程]
実施例1で得られた結晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液A1の全重量の85%分(123.25重量部)と、着色剤含有粒子分散液Pの129重量部とを、マックスブレンド撹拌機(日本ガイシ株式会社製)に投入し、撹拌下(回転数:1500rpm)で塩化マグネシウム(凝集剤)の1%水溶液270重量部を少量ずつ滴下し、滴下終了後この混合液を1時間撹拌した。
次に、実施例1で得られた結晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液A1の残量15%分(21.75重量部)をさらに添加して混合し、撹拌下(回転数:1500rpm)で塩化マグネシウムの1%水溶液30重量部を少量ずつ滴下し、滴下終了後この混合液を1時間撹拌した。その後、混合液の液温が75℃となるように加熱して30分間撹拌し、さらに液温が94℃となるように加熱して20分間撹拌し、トナー母粒子が水性媒体中に分散されてなるトナー母粒子分散液を得た。
[洗浄工程、分離工程および乾燥工程]
次に、トナー母粒子分散液から濾過によってトナー母粒子を単離した。このトナー母粒子と純水(導電率:0.5μS/cm)とを混合(混合重量割合:トナー母粒子/純水=1/4)し、トナー母粒子を濾過によって単離するという洗浄操作を5回行った。さらに、トナー母粒子と塩酸水溶液(pH=2)とを混合(混合重量割合:トナー母粒子/塩酸水溶液=1/4)し、トナー母粒子を濾過によって単離するという洗浄操作を3回行った後、真空乾燥機によって乾燥し、実施例8のトナーT1を得た。実施例8のトナーT1は、体積平均粒子径が6.5μm、変動係数CVが22%、ガラス転移温度が54℃、軟化温度が116℃であった。
なお、洗浄に用いた純水は、超純水製造装置(商品名:Ultra Pure Water System CPW−102、ADVANTEC社製)を用いて水道水から調製した導電率0.5μS/cmの純水である。純水のpHおよび導電率はラコムテスター(商品名:EC−PHCON10、アズワン株式会社製)を用いて測定した。
(実施例9)
凝集工程において着色剤含有粒子分散液Pと混合する結晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液を、実施例2で得られた結晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液A2としたこと以外は実施例8と同様にして、実施例9のトナーT2を得た。実施例9のトナーT2は、体積平均粒子径が6.3μm、変動係数CVが24%、ガラス転移温度が54℃、軟化温度が116℃であった。
(実施例10)
凝集工程において着色剤含有粒子分散液Pと混合する結晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液を、実施例3で得られた結晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液A3としたこと以外は実施例8と同様にして、実施例10のトナーT3を得た。実施例10のトナーT3は、体積平均粒子径が6.2μm、変動係数CVが26%、ガラス転移温度が54℃、軟化温度が116℃であった。
(実施例11)
凝集工程において着色剤含有粒子分散液Pと混合する結晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液を、実施例4で得られた結晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液A4としたこと以外は実施例8と同様にして、実施例11のトナーT4を得た。実施例11のトナーT4は、体積平均粒子径が6.4μm、変動係数CVが25%、ガラス転移温度が54℃、軟化温度が116℃であった。
(実施例12)
凝集工程において着色剤含有粒子分散液Pと混合する結晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液を、実施例5で得られた結晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液A5としたこと以外は実施例8と同様にして、実施例12のトナーT5を得た。実施例12のトナーT5は、体積平均粒子径が6.8μm、変動係数CVが23%、ガラス転移温度が54℃、軟化温度が116℃であった。
(実施例13)
凝集工程において着色剤含有粒子分散液Pと混合する結晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液を、実施例6で得られた結晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液A6としたこと以外は実施例8と同様にして、実施例13のトナーT6を得た。実施例13のトナーT6は、体積平均粒子径が7.3μm、変動係数CVが34%、ガラス転移温度が55℃、軟化温度が116℃であった。
(実施例14)
凝集工程において着色剤含有粒子分散液Pと混合する結晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液を、実施例7で得られた結晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液A7としたこと以外は実施例8と同様にして、実施例14のトナーT7を得た。実施例14のトナーT7は、体積平均粒子径が6.4μm、変動係数CVが25%、ガラス転移温度が54℃、軟化温度が116℃であった。
(比較例4)
凝集工程において着色剤含有粒子分散液Pと混合する結晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液を、比較例1で得られた結晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液A8としたこと以外は実施例8と同様にして、比較例4のトナーT8を得た。比較例4のトナーT8は、体積平均粒子径が6.5μm、変動係数CVが29%、ガラス転移温度が52℃、軟化温度が113℃であった。
(比較例5)
凝集工程において着色剤含有粒子分散液Pと混合する結晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液を、比較例2で得られた結晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液A9としたこと以外は実施例8と同様にして、比較例5のトナーT9を得た。比較例5のトナーT9は、体積平均粒子径が26.1μm、変動係数CVが149%、ガラス転移温度が54℃、軟化温度が124℃であった。
(比較例6)
凝集工程において着色剤含有粒子分散液Pと混合する結晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液を、比較例3で得られた結晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液A10としたこと以外は実施例8と同様にして、比較例6のトナーT10を得た。比較例6のトナーT10は、体積平均粒子径が6.7μm、変動係数CVが49%、ガラス転移温度が51℃、軟化温度が119℃であった。
実施例8〜14および比較例4〜6で得られたトナーを用いて、トナー凝集性を評価した。評価方法は以下のとおりであり、評価結果を表2に示した。
[トナー凝集性]
10gのトナーを100mlのガラス瓶に入れて温度50℃の恒温槽に24時間放置した後のトナーを、400メッシュの超音波フルイで1分間のフルイ操作を行った後、凝集トナーの有無を目視で確認した。凝集トナーがないものを良好とし、凝集トナーがあるものを不良とした。
<外添トナーの作製>
実施例8〜14および比較例4〜6で得られたトナー100重量部に、個数平均粒径が12nmのヘキサメチルジシラザンで表面を処理したシリカ微粒子1.5重量部を加えて、撹拌羽根の先端速度を15m/sに設定した気流混合機(ヘンシェルミキサ、三井鉱山株式会社製)で2分間撹拌することによって、外添剤が外添された外添トナーを得た。
<二成分現像剤>
実施例8〜14および比較例4〜6のトナーに対応した外添トナーと、キャリアとを用いて二成分現像剤を作製した。
[キャリアの作製]
フェライト原料として、酸化鉄(KDK株式会社製)50mol%、酸化マンガン(KDK株式会社製)35mol%、酸化マグネシウム(KDK株式会社製)14.5mol%および酸化ストロンチウム(KDK株式会社製)0.5mol%をボールミルで4時間粉砕した後、ロータリーキルンにて930℃で2時間仮焼した。得られた仮焼粉を、湿式粉砕機により粉砕媒体としてスチールボールを用いて平均粒径2μm以下にまで微粉砕した。このスラリーにPVA(ポリビニルアルコール)を2重量%添加してスプレードライ方式により造粒し、該造粒物を電気炉にて1100℃(酸素濃度0体積%)で4時間焼成した。焼成後、クラッシャを用いて解砕し、体積平均粒子径が44μm、体積抵抗率が1×109Ω・cmのフェライト成分からなるコア粒子を得た。
次に、コア粒子を被覆するための被覆用塗液として、シリコーン樹脂(数平均分子量:約15000)100重量部と、導電材としてカーボンブラック(1次粒子径25nm、吸油量150ml/100g)3重量部と、硬化剤としてオクチル酸5重量部とをトルエンに溶解および分散し、被覆塗液を調製した。
調製した被覆塗液を、スプレー被覆装置を用いてコーティングすることによりトルエンを完全に蒸発除去し、前記フェライト成分からなるコア粒子に被覆し、体積平均粒子径が45μm、シリコーン樹脂の被覆率が100%、体積抵抗率が2×1011Ω・cm、飽和磁化が65emu/gのキャリアを作製した。
[二成分現像剤の作製]
実施例8〜14および比較例4〜6の各トナーに対応した外添トナーとキャリアとを混合することにより、それぞれ二成分現像剤を作製した。トナーとキャリアとの混合方法については、キャリア94重量部とトナー6重量部とをナウターミキサ(VL−0、ホソカワミクロン株式会社製)に投入し、20分間撹拌混合することにより作製した。
<低温定着性および耐ホットオフセット性の評価>
実施例8〜14および比較例4〜6のトナーのそれぞれに対応した二成分現像剤を用いて、低温定着性および耐ホットオフセット性の評価を行った。評価方法は以下のとおりである。
各二成分現像剤について、画像形成装置(デジタルフルカラー複合機:MX−2600G、シャープ株式会社製)を用いて(給紙速度:230mm/sec、温度:20℃、湿度:60%)、ベタ画像(100%濃度)部における未定着状態でのトナーの記録用紙への付着量が0.5mg/cm2になるように調整して未定着画像を記録用紙上に形成し、複合機の定着部を用いて定着画像を形成した。定着ローラの温度を120℃から10℃刻みで温度を上げ、低温オフセットが発生しない定着下限温度、および高温オフセットの発生開始温度を観測した。
そして、定着ローラの各温度に対応して定着画像を形成した記録用紙の印字面を内側にして折り曲げた後、850gのローラを一定加圧になるように一往復転がすことにより荷重を与え、境界部分の折り曲げ部分をエアーブラシで吹き払うことにより、折り曲げ部分にできる白地のライン幅を測定した。
白地の最大ライン幅が0.3mm未満で良好な定着画像が得られる場合における、定着下限温度が130℃以下であるときを低温定着性が良好である判断し、定着下限温度が130℃を超えるときを低温定着性が不良であると判断した。
また、白地の最大ライン幅が0.3mm未満で良好な定着画像が得られる場合における、高温オフセット発生開始温度が210℃以上であるときを耐ホットオフセット性が良好であると判断し、高温オフセット発生開始温度が210℃未満であるときを耐ホットオフセット性が不良であると判断した。
評価結果を表2に示す。
Figure 2010241878
表2から、実施例1〜7の結晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液A1〜A7を用いて製造した実施例8〜14のトナーは、凝集トナーが発生することなくトナー凝集性が良好であることが明らかである。また、実施例8〜14のトナーに対応した二成分現像剤は、優れた低温定着性および耐ホットオフセット性を有することが明らかである。
1 押出混練機
10 二軸押出部
11 バレル
12 スクリュー
20 多段減圧装置
50 水性媒体供給部

Claims (6)

  1. 結晶性ポリエステル樹脂の微粒子と水性媒体とを撹拌下で搬送し、前記微粒子が前記水性媒体中に分散されてなる微粒子分散液を連続的に得る微粒子分散液調製工程を含む結晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液の製造方法であって、
    前記微粒子分散液調製工程は、
    加熱加圧下で撹拌されてせん断力が付与されながら搬送される結晶性ポリエステル樹脂の粗粉砕粒子に、水性媒体を加えて転相乳化を行うせん断工程と、
    前記せん断工程において加熱加圧され、撹拌下でせん断力が付与されながら搬送される分散液を、温度および圧力が徐々に低下するように冷却および減圧する冷却減圧工程と、を含むことを特徴とする結晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液の製造方法。
  2. 前記せん断工程は、押出混練機を用いて行われることを特徴とする請求項1に記載の結晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液の製造方法。
  3. 前記冷却減圧工程は、熱交換手段を備える多段減圧装置を用いて行われることを特徴とする請求項1または2に記載の結晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液の製造方法。
  4. 前記せん断工程では、粗粉砕粒子を溶融させた後、粗粉砕粒子100重量部に対して30重量部以上50重量部以下の割合で水性媒体を添加することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の結晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液の製造方法。
  5. 前記せん断工程において粗粉砕粒子に対して添加する水性媒体は、0.1重量%以上9重量%以下の乳化剤を含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の結晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液の製造方法。
  6. 請求項1〜5のいずれか1つに記載の結晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液の製造方法により製造される結晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液と、少なくとも着色剤を含有する微粒子である着色剤含有粒子が水性媒体中に分散してなる着色剤含有粒子分散液とを混合し、結晶性ポリエステル樹脂微粒子と着色剤含有粒子とを凝集させる凝集工程を含むことを特徴とするトナーの製造方法。
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