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JP2010104984A - ポリスルホン系中空糸膜モジュールおよび製造方法 - Google Patents

ポリスルホン系中空糸膜モジュールおよび製造方法 Download PDF

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JP2010104984A JP2009226406A JP2009226406A JP2010104984A JP 2010104984 A JP2010104984 A JP 2010104984A JP 2009226406 A JP2009226406 A JP 2009226406A JP 2009226406 A JP2009226406 A JP 2009226406A JP 2010104984 A JP2010104984 A JP 2010104984A
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Abstract

【課題】 有機物やタンパク質、血小板付着などの付着が少ない高性能なポリスルホン系中空糸膜モジュールを提供することにある。
【解決手段】ポリスルホン系中空糸膜が内蔵されたモジュールであって、ポリスルホン系中空糸膜の長手方向における端面近傍および中央部付近の機能層表面での、1730cm−1 付近のエステル基C=O由来の赤外吸収ピーク強度(ACO)の1580cm−1付近のポリスルホン系ポリマーのベンゼン環C=C由来の赤外吸収ピーク強度(ACC)に対する比(ACO)/(ACC)が、平均値0.005以上、かつ0.001以下の測定点の割合が10%以下であることを特徴とするポリスルホン系中空糸膜モジュール。
【選択図】図1

Description

本発明は、ポリスルホン系中空糸膜モジュールに関するものであり、分離性能が高く、かつ、血液適合性やタンパク質、有機物の非付着が要求される用途に好適に用いられる。例えば、血液浄化用の分離膜では血液適合性やタンパク質の非付着が要求され、浄水器用膜、上水浄化膜、下水浄化膜、逆浸透膜や、生体成分分離用膜などではタンパク質や有機物の非付着が要求されるため、好適に用いられる。
体液や血液と接触する医療用の中空糸膜は、タンパク質や血小板が付着すると中空糸膜の性能低下や、生体反応を引き起こす原因となり、深刻な問題となる。また、浄水器などの水処理膜においても、タンパク質や有機物の付着が、中空糸膜の分離性能低下を引き起こす。このような問題に対して、中空糸膜を親水化することによって解決しようとして、様々な検討がなされている。例えば、ポリスルホンに親水性高分子であるポリビニルピロリドンを、製膜原液の段階で混合させて成形することで、膜に親水性を与え、汚れを抑制する方法が開示されている(特許文献1)。しかしながら、これらの方法では、表面に親水性を付与するには、製膜原液中の親水性高分子量を多くする必要があることや、基材となる高分子と相溶性のある親水性高分子に限定されることや、材料の使用用途に合わせて、最適な原液組成を検討しなければならないなどの制約を受ける。
そこで、製膜の工程中で放射線または熱により、水不溶化するポリビニルピロリドンなどの親水性成分を導入する方法(特許文献2)や、ポリスルホン系の中空糸膜をポリビニルピロリドンなどの親水性高分子溶液と接触させた後、放射線架橋により不溶化した被膜層を形成する方法(特許文献3)が開示されている。しかしながら、ポリビニルピロリドンなどの水性高分子とポリスルホン系高分子は、分子間の相互作用が弱いために、被膜層を形成させることは困難であった。
そのため、ある範囲のケン化度のポリビニルアルコール水溶液をポリスルホン系分離膜と接触させて、ポリスルホンと酢酸ビニルの疎水性相互作用により、効率的に膜表面の被膜層を形成させる方法(特許文献4)が開示されている。しかしながら、本発明者らが検討した結果、ポリビニルアルコールを分離膜に被覆すると、中空糸の分離性能低下が著しいこと、さらには、ポリビニルアルコールのポリスルホンへの吸着が強すぎて、中空糸膜モジュールに適用した際には、中空糸膜の長手方向へ吸着が不均一になりやすいことがわかった。また、ポリビニルアルコールの水酸基は、血液と接触した際に、補体を活性化することが知られている。
また、生体適合性や透水性を高めた中空糸膜として、ポリスルホン系ポリマーとポリグリコール類、ビニルピロリドンと酢酸ビニル共重合体の混合溶液から製膜する方法(特許文献5)が開示されている。しかしながら、生体適合性としては、補体活性など以外にも、血小板などの付着を抑制することが必要であるが、該特許には血小板やタンパク質などの付着については着目していない。さらには、近年、γ線や電子線などの高エネルギー線を照射する滅菌方法が主流となっているが、この方法ではかかるγ線滅菌などにより血液適合性が消失してしまうことが課題であった。すなわち、かかる方法における製膜条件においては、製膜時にポリグリコールとビニルピロリドンと酢酸ビニル共重合体が混合されているだけであり、エステル基ユニットの表面量や表面存在状態が、全く考慮されていない。このため、本発明者らが検討した結果、残血性の向上は認められても、血小板などの付着抑制は不十分であることがわかった。しかも、γ線照射により、その効果すらもなくなったものと考えられる。
ポリプロピレン中空糸膜にポリビニルアセタールジエチルアミノアセテートとビニルピロリドン/酢酸ビニル(6/4)共重合体の混合溶液を塗布することで、膜を親水性化し、透水性を向上させる方法(特許文献6)も開示されている。しかしながら、この方法は透水性を向上させる目的としており、血小板などの付着を抑制するものではない。そもそも、該方法は、ビニルピロリドン/酢酸ビニル(6/4)共重合体だけで親水化処理しては水に溶けだす問題を解決するために、ビニルピロリドン/酢酸ビニル(6/4)共重合体を、水不溶なポリビニルアセタールジエチルアミノアセテートで覆うことで、水中への溶出を抑えている。したがって、最表面のビニルピロリドン/酢酸ビニル(6/4)濃度は低く抑えられている。これでは、血小板の付着を抑制することができない。また、該方法は物理吸着のみで膜の親水化を行っている。したがって、数時間程度では溶出がなくても、長期間の使用においては溶出が懸念される。さらに言えば、仮に水と接触するではこれらのポリマーの溶出が少なかったとしても、医療用途などでは、血液のように水よりも溶出させる力が大きい溶液と膜が接触することになる。このような場合には、物理吸着しただけのポリマーは、血中への溶出が強く懸念される。
また、ポリビニルピロリドンやポリエチレングリコールのようなホモポリマーの親水性高分子で、材料表面を被覆しても、タンパク質などの付着は一時的にしか抑制できないとも言われている。すなわち、高性能な分離膜で、血液成分の付着が少ない血液適合性を満たす分離膜モジュールは未だ確立されていない。
特公平2−18695号公報 特公平8−9668号公報 特開平6−238139号公報 特開2006−198611号公報 特開平6−165926号公報 特開平8−131791号公報
本発明の目的は、かかる従来技術の欠点を改良し、タンパク質や有機物の付着が少ない高性能なポリスルホン系分離膜モジュールを提供することにある。
本発明者らは上記課題を達成するため鋭意検討を進めた結果、血液適合性に優れ、タンパク質や有機物の付着が少ない高性能なポリスルホン系分離膜モジュールは、下記の1〜10の構成によって達成される。
1.ポリスルホン系中空糸膜が内蔵されたモジュールであって、ポリスルホン系中空糸膜の長手方向における端面近傍および中央部付近の機能層表面での、1730cm−1 付近のエステル基C=O由来の赤外吸収ピーク強度(ACO)の1580cm−1付近のポリスルホン系ポリマーのベンゼン環C=C由来の赤外吸収ピーク強度(ACC)に対する比(ACO)/(ACC)が、平均値0.005以上かつ0.001以下の測定点の割合が10%以下であることを特徴とするポリスルホン系中空糸膜モジュール。
2.前記(ACO)/(ACC)が平均値0.5以下であることを特徴とする前記1に記載のポリスルホン系中空糸膜モジュール。
3.前記エステル基C=Oが、ポリマー由来であることを特徴とする前記1または2に記載のポリスルホン系中空糸膜モジュール。
4.前記エステル基C=Oの由来となるポリマーが、カルボン酸ビニルエステル、アクリル酸エステルおよびメタクリル酸エステルから選ばれる少なくともひとつのユニットを有することを特徴とする前記3に記載のポリスルホン系中空糸膜モジュール。
5.前記エステル基C=Oの由来となるポリマーにおけるエステル基含有ユニットの比が0.3以上であることを特徴とする前記3または4に記載のポリスルホン系中空糸膜モジュール。
6.前記エステル基が、ポリ酢酸ビニルおよび/または酢酸ビニルとビニルピロリドン共重合体に由来することを特徴とする前記3〜5のいずれかに記載のポリスルホン系中空糸膜モジュール。
7.前記機能層表面での、1660cm−1 付近のビニルピロリドン基由来の赤外吸収ピーク強度(ANCO)の1580cm−1付近のポリスルホンのベンゼン環C=C由来の赤外吸収ピーク強度(ACC)に対する比(ANCO)/(ACC)が、平均値0.4以上、かつ0.25以下の測定点の割合が10%以下であることを特徴とする前記1〜6に記載のポリスルホン系中空糸膜モジュール。
8.前記ポリスルホン系中空糸膜を構成する全元素に対する窒素原子の濃度が0.01重量%以上、0.1重量%以下であることを特徴とする前記1〜7のいずれかに記載のポリスルホン系中空糸膜モジュール。
9.血液浄化用であることを特徴とする前記1〜8のいずれかに記載のポリスルホン系中空糸膜モジュール。
10.ポリスルホン系中空糸膜モジュールに内蔵された中空糸膜を、中空糸膜の乾燥重量に対して0.2重量倍以上、6重量倍以下のビニルピロリドンと酢酸ビニルの共重合体水溶液に湿潤した状態として放射線照射を行うことを特徴とするポリスルホン系中空糸膜モジュールの製造方法。
本発明は、エステル基が、中空糸膜機能層の表面に局在化し、かつ表面において均一に分布していることを特徴とするポリスルホン系中空糸膜モジュールであり、透水性能および分離性能が高く、かつ、血液適合性やタンパク質・有機物の付着しにくい性質が要求される用途に幅広く用いることができる。
本発明に用いられる人工腎臓の一態様を示す。 β−ミクログロブリン クリアランス測定における回路を示す。
本発明は、エステル基が、中空糸膜機能層の表面に局在化し、かつ表面において均一に分布していることを特徴とするポリスルホン系中空糸膜モジュールに関するものである。
本発明でいうところの機能層とは、中空糸膜モジュールが処理する液体と接触する側の層であり、機能層表面とは、その層における表面のことを言う。例えば、処理液体が血液である人工腎臓用中空糸膜の場合は、機能層表面は血液が接触する中空糸膜内表面である。
タンパク質や血小板の付着は、エステル基が中空糸膜機能層の表面にあることにより、抑制される。かかる付着抑制機能について説明すると、先ず、タンパク質の材料表面への付着は、タンパク質の高次構造が変化して内部にある疎水性部位が露出し、かかる疎水性部位が材料表面と疎水性相互作用することが原因と言われている。一方で、材料表面の親水性が強過ぎると、タンパク質の付着を充分に抑制することができないと言われている。なぜならば、タンパク質の周囲や材料表面には、水素結合により運動性が束縛された水、いわゆる結合水が存在し、タンパク質が材料表面に付着する際、両者の表面に存在する結合水同士の相互作用が大きく影響するところ、表面の親水性が強い材料はタンパク質周囲の結合水をトラップするからである。エステル基の付着抑制効果についてのメカニズムは充分に分かっていないが、上記のことから考えると、エステル基は適度な親水性を有するために、タンパク質の高次構造変化を誘起することがなく、一方、親水性の度合いも強すぎることがないために、タンパク質周囲の結合水をトラップすることもなく、タンパク質の材料表面付着の防止効果を奏していると推察できる。
一方で、本発明においては、活性化したタンパク質や血小板は、ポリスルホン量に比したエステル基の存在量が少ない場合、エステル基が存在する表面にも付着することを発見し、中空糸膜機能層の表面にあるエステル基は、中空糸膜のどの部位でも、均一に、一定量以上が必要である、という結論に到った。そこで、本発明者等は、かかるエステル基の存在量を示す指標として、エステル基の存在量をポリスルホンの存在量で除した比で表すことを考え、種々検討した結果、ポリスルホン系中空糸膜の長手方向における端面近傍および中央部付近の機能層表面での、1730cm−1付近のエステル基C=O由来の赤外吸収ピーク強度(ACO)の1580cm−1付近のポリスルホンのベンゼン環C=C由来の赤外吸収ピーク強度(ACC)に対する比(ACO)/(ACC)を選定し、その平均値が0.005以上、好ましくは0.01以上、より好ましくは0.02以上であることがよく、かつ当該比が0.001以下である測定点の割合が10%以下、好ましくは5%以下が必要であることがわかった。なお、(ACO)/(ACC)の平均値は、大きすぎるとポリスルホン中空糸膜の性能低下を引き起こすことがあるため、0.5以下、好ましくは0.4以下、さらには0.3以下が好ましい。
さらに、最表面にエステル基が配向していることが好ましい。最表面は、X線光電子分光法(XPS)により、10nm程度の厚みで測定できる。エステル基(COO)由来の炭素のピークはC1sのCHやC−C由来のメインピークから+4.0〜4.2eVに現れるピークをピーク分割することによって求めることができる。全元素(水素原子は検出できないので、水素原子以外の全元素)に対する該ピーク面積の割合を算出することで、エステル基由来の炭素量(原子数%)が求まる。機能層表面のエステル基由来の炭素のピーク面積百分率が0.3(原子数%)以上、好ましくは0.5(原子数%)以上、7(原子数%)以下、5(原子数%)以下、であることが好ましい。
また、機能層と反対表面のエステル基由来の炭素量は、2(原子数%)以下、好ましくは1(原子数%)以下、さらには検出されないことが好ましい。これは、反対表面もエステル基があった場合には膜の透水性が低下傾向を示すためである。
中空糸膜の長手方向において、ここでいう端面近傍とは、端面から5cm以内の部位を指し、中央部付近とは、両端面の中央点から長手方向に±2.5cm以内の部位を指す。また、上記(ACO)/(ACC)の比は、以下のように算出する。
中空糸膜機能層表面について、測定範囲を3μm×3μm、積算回数は30回以上として赤外吸収スペクトルを吸収強度で25点測定する。この25点測定を、1本の中空糸膜について異なる3箇所で、モジュール1本当たり計3本の中空糸膜について測定する。得られた赤外吸収スペクトルについては、1549〜1620cm−1で基準線を引き、その基準線とスペクトルの正部分で囲まれた部分のピーク面積をACCとし、同様に、1711〜1759cm−1で基準線を引き、そのピーク面積をACOとして、両者の比(ACO)/(ACC)を算出する。
中空糸膜の機能層表面へのエステル基の導入は、中空糸膜成形後に、エステル基を含有した反応性化合物で機能層表面を化学修飾させることによって可能である。しかしながら、かかる表面反応が中空糸膜の性能低下等を引き起こす可能性もあり、実際に適用するには種々の条件制約がある。そこで、水系でも架橋反応が進行するクロロアセトアミドメチル基などを有するポリスルホン系ポリマーが好適に用いられる。また、該官能基と反応するために、エステル基含有ポリマーは、アミノ基も有していることが好適である。
そこで、上記反応性化合物としてエステル基を含有したポリマーを用いると、比較的簡便にエステル基を機能層表面に導入することができる。エステル基を含有したポリマーとしては、ポリ乳酸やポリエステルなどの主鎖にエステル基が含有されたものや、酢酸ビニルなどのカルボン酸ビニルエステル、メチルアクリレート、メトキシエチルアクリレートなどのアクリル酸エステル、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレートなどのメタクリル酸エステルのように側鎖に含有されたものが挙げられる。特に、エステル基含有ポリマーとして、酢酸ビニルやメタクリル酸エステルのように脂肪族炭化水素系のポリマーが好適に用いられ、ポリエチレンテレフタレートのように、芳香環を含んでいるポリマーは、疎水性の度合いが強く成りすぎるために、本発明において好ましく用いられるものではない。
特に、タンパク質や血小板の付着の抑制性から、カルボン酸ビニルエステル、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステルなどの側鎖に含有されたものが好ましい。中でも、カルボン酸ビニルエステルの内、酢酸ビニルは、タンパク質や血小板の付着の抑制性に優れており、酢酸ビニルとビニルピロリドンとの共重合体が、後述する理由で好適に用いられる。また、当該ポリマーにおいて、エステル基ユニットの全ユニットに対する比率(モル比)が0.3以上、好ましくは0.35以上あれば、エステル基のタンパク質や血小板付着の抑制効果が発現される。
また、共重合体としては、グラフト共重合体よりもブロック共重合体や交互共重合体、ランダム共重合体が好適に用いられ、交互共重合体、ランダム共重合体がより好適に用いられる。すなわち、同じユニットの繰り返し数の平均が5以下であることが好ましい。
この理由は定かではないが、エステル基ユニットが連続した場合、エステル基同士の相互作用が強くなり、エステル基が表面に配向しにくくなるためかもしれない。
エステル基含有ポリマーを機能層表面に導入する方法としては、ポリマーを中空糸膜の製膜原液に混和して成形する方法や、製膜時の中空部分形成用の注入液に混和させる方法や、中空糸膜成形後に膜表面にポリマーをコーティングする方法が好適に用いられる。さらにコーティング後、放射線照射、熱処理などにより不溶化する方法、中空糸膜を疎水性モノマーの混合溶液に浸漬し、重合反応を中空糸膜表面上で起こさせる方法などが挙げられる。なお、製膜原液に混和させる場合は、ポリスルホン系ポリマーとの相溶性の観点から、エステル基含有ポリマーとしては、酢酸ビニルとビニルピロリドンとの共重合体が特に好適である。
これらのなかでも、中空糸膜表面をコーティングする方法は、簡便かつ少量で実施できるため好適な方法である。例えば、エステル基含有ポリマーを溶媒に溶かして、中空糸膜に塗布し吸着させても良いし、バインダーとなる高分子等を介して、中空糸膜素材にエステル基含有ポリマーを固定化させても良い。また、エステル基含有ポリマーを中空糸膜表面に接触させる際に、圧力差を利用して膜表面に濃縮する方法は効率的であり、好適に用いられる。圧力差としては、加圧・減圧いずれであっても良い。なお、エステル基含有ポリマー溶液そのものを用いて圧力差を付与して、膜表面に導入する方法を採らなくとも、溶液を接触後、気体や、水など他の溶液で加圧しても良い。圧力差としては、モジュールの入口と出口で、50mmHg以上、さらには100mmHg以上が好ましい。
上記のようにポリマー溶液でコーティングする際の溶媒としては、水もしくはアルコールまたは、アルコール水溶液が好適である。取り扱い性の観点から水もしくはアルコール水溶液がより好適に用いられる。アルコール水溶液のアルコール濃度は70重量%以下が好ましい。アルコール以外の有機溶媒を用いると膜の変性、膜性能変化などが生じる可能性がある。このような溶媒を用いる際には、エステル基含有ポリマーとしては、水溶性のポリマーが好適に用いられる。具体的にはビニルピロリドンと酢酸ビニルの共重合体、ビニルアルコールと酢酸ビニルの共重合体である。ただし、ビニルアルコールと酢酸ビニルの共重合体の場合、その理由は不明であるが、膜性能の低下が著しいので、注意が必要である。これは、ビニルアルコールは水酸基の分子間相互作用が強いため、水分子が膜を通過しにくく、透水性が低下する原因になっていることが考えられる。一方、ビニルピロリドンと酢酸ビニルの共重合体は、ポリスルホンへの吸着力が強いために、好適に用いられる。また、他のポリマーをコーティングした後、エステル基含有ポリマーをコーティングするなど、エステル基含有ポリマーの効果を妨げない範囲で、他のポリマーをコーティングしても良い。さらに、コーティング後、放射線照射、熱処理などにより不溶化する方法は、血液処理時にポリマーが溶出することを低減できるため好適な方法である。特に、水やアルコール溶媒でコーティングする場合は、不溶化処理が安全性や環境的な面から重要である。
中空糸膜内表面積1m当たりの水中へのポリマーの溶出は1mg以下、好ましくは0.5mg以下である。水中への溶出は、中空糸膜モジュールを純水にて、血液側1L、透析液側2.5L洗浄後、37℃の純水4Lを200mL/minで4時間循環した際に溶出した量を求める。
上記不溶化を行うためには、例えば、中空糸膜をエステル基含有ポリマー溶液に浸漬した状態で放射線照射や熱処理を行えば良い。あるいは、中空糸膜をビニルピロリドンユニットと疎水性ユニットの共重合体溶液に浸漬した後、溶液を抜き出し、放射線照射や熱処理をしても良い。放射線照射する場合には、若干量の溶媒が存在したほうが、エステル基含有ポリマーが中空糸膜に固定、不溶化されやすい。これは、溶媒が放射線照射によりラジカルとなり、これが起点となって、該ポリマーや中空糸膜の素材もラジカル化し、共重合体が膜へ架橋、不溶化することが原因と考えられる。したがって、放射線照射する際に、中空糸膜の乾燥重量に対して、0.2重量倍以上、さらには1.0重量倍の溶媒が残存していることがより好ましい。溶媒としては、水または水溶液が好ましい。一方で、中空糸膜モジュール内に水が充填されていない方が、放射線照射までの時間に溶出する懸念が少ないので、中空糸膜のみを湿潤状態とすることが好ましい。具体的な水分量は中空糸膜の乾燥重量に対して6.0重量倍以下、好ましくは4.0重量倍以下である。また、中空糸膜をエステル基含有ポリマー溶液に浸漬した後、水などに置換してから放射線照射や熱処理を行っても良い。さらには、置換した水などを抜き出した後、放射線照射や熱処理をしても良い。
なお、エステル基含有ポリマー溶液の濃度が低いと、中空糸膜を充分にコーティングできず、(ACO)/(ACC)の値が0.001未満となる箇所の割合が増加する。また、濃度が高すぎると、ポリマーからの溶出物が増える場合が多い。具体的な濃度は、該ポリマーの種類によってことなるが、一般的には、0.0001重量%以上、1重量%以下が好ましく、さらには、0.0005重量%以上、0.5重量%以下が好ましい。例えば、ビニルピロリドンと酢酸ビニルの7:3の共重合体では、0.01重量%から0.5重量%が好ましい。ビニルピロリドンと酢酸ビニルの6:4の共重合体では、0.0005重量%から0.1重量%が好ましい。ビニルピロリドンと酢酸ビニルの5:5の共重合体では、0.0001重量%から0.05重量%が好ましい。
また、浸漬させたエステル基含有ポリマー溶液や水などをモジュールから抜き出す方法としては、減圧乾燥、高温乾燥、低温送風乾燥、ブロー乾燥など、種々の方法を用いることができる。なお、放射線を照射する際に、酸素が存在すると、酸素ラジカルなどが発生し、中空糸膜素材の高分子材料が分解してしまうことが知られている。従って、放射線照射する際の中空糸膜周囲の酸素濃度は10%以下であることが望ましい。中空糸膜モジュールに放射線照射する場合は、例えば、モジュール内を窒素ガスやアルゴンガスなどの不活性ガスでパージすると酸素濃度が低下するので、その後、密栓し、放射線照射すれば良い。
中空糸膜をエステル基含有ポリマーでコーティングした後にモジュールに組み込んでも良いし、中空糸膜モジュール内をエステル基含有ポリマー溶液で充填することで、コーティングしても良い。コーティング後、上述したように放射線照射や熱処理を行っても良い。
ただし、中空糸膜へ均一に導入するには、中空糸膜モジュール内をエステル基含有ポリマー溶液で充填することで、コーティングしたほうが効率的である。さらには、ポリマー溶液を中空糸膜モジュールに通液する流速としては、速いほうが均一にコーティング可能であり、好ましくは200mL/min以上、より好ましくは300mL/min以上である。一方で、速すぎると十分な量をコーティングできないので、1000mL/min以下、好ましくは800mL/min以下である。
また、ポリマー溶液の濃度が低いと、ポリマーコーティングされていない箇所の割合が増えるために、ポリマー溶液の濃度は1ppm以上、好ましくは5ppm以上、さらには10ppm以上が好ましい。また、濃度が高すぎても、溶出物が増えるために、ポリマー溶液の濃度は好ましくは1重量%以下、さらには3000ppm以下が好ましい。ポリマー溶液を中空糸膜の機能層表面から反対方面に濾過をかけて通液する方法は、機能層表面にポリマーを集積させることができるので好ましい。このときの濾過圧力は50mmHg以上が好ましく、さらには100mmHgが好ましい。また、濾過をかけてポリマー溶液を通液した後、濾過をかけて通液した方向と逆方向から気体をブローしたり、液体を通液したりすることは、機能層の反対表面のエステル基含有ポリマー量を少なくしつつ、機能層表面のエステル基含有ポリマー量を多くさせるのに好適な手段である。このときの気体の流量は70NL/min以下が好ましく、さらには50NL/min以下が好ましく、時間としては、10分以下が好ましい。また、液体の場合は1L/min以下が好ましく、さらには0.5L/min以下が好ましく、時間としては、1分以下が好ましい。
ポリマーの分子量としては、大きすぎると、膜表面を均一に覆うことができない。そのため重量平均分子量は10万以下が好ましく、さらには5万以下が好しい。また、小さすぎると、表面への吸着力が低下するために、コーティングの効率が悪くなったり、膜の細孔から外側に抜けたりするために、表面を覆いにくくなる。そのため、重量平均分子量は1000以上が好ましく、さらには5000以上が好ましい。
本発明でいうところの放射線はα線、β線、γ線、X線、紫外線、電子線などが用いられる。また、人工腎臓などの血液浄化用モジュールは滅菌することが必要であり、近年は残留毒性の少なさや簡便さの点から、γ線や電子線を用いた放射線滅菌法が多用されている。すなわち、中空糸膜にエステル基含有ポリマーをコーティングさせた場合、滅菌と同時に該共重合体の不溶化も同時に達成できる。
基材の滅菌と改質を同時に行う場合は、15kGy以上の照射線量が好ましい。血液浄化用モジュール等をγ線で滅菌するには15kGy以上が効果的なためである。しかしながら、照射線量が100kGy以上であると、エステル基含有ポリマーは、3次元架橋やエステル部分の分解などが起きるため、血液適合性が低下する。
また、中空糸膜にエステル基含有ポリマーをコーティングさせ、放射線により不溶化する工程において、溶液中に該ポリマー以外の成分、例えば、抗酸化剤が入っていても良い。さらには、エステル基含有ポリマー溶液で、中空糸膜をコーティングした後、抗酸化剤溶液と接触させても良い。
抗酸化剤を入れることで、発生するラジカル量を調整することができる。例えば、血液浄化用モジュールで、放射線照射による不溶化と滅菌を兼ねる際に、両者いずれかの線量では中空糸膜などが劣化する場合、それを防止するために抗酸化剤を併用すれば良い。抗酸化剤とは、他の分子に電子を与えやすい性質を持つ分子のことを言う。例えば、ビタミンCなどの水溶性ビタミン類、ポリフェノール類、メタノール、エタノール、プロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリンなどのアルコール類、グルコース、ガラクトース、マンノース、トレハロースなどの糖類、ソジウムハイドロサルファイト、ピロ亜硫酸ナトリウム、二チオン酸ナトリウムなどの無機塩類、尿酸、システイン、グルタチオン、などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらの抗酸化剤は単独で用いてもよいし、2種類以上混合して用いてもよい。本発明の方法を医療用具に用いる際は、その安全性を考慮する必要があるため、抗酸化剤は毒性の低いものが好適に用いられる。
なお、水溶液中の溶存酸素や大気中の酸素は、酸化分解を促進する。したがって、水溶液中の酸素濃度は10mg/L以下、好ましくは5mg/L以下である。
抗酸化剤を含有する溶液の濃度については、含有する抗酸化剤の種類、放射線の照射線量などにより異なる。抗酸化剤の濃度が低すぎると、溶媒から発生するラジカルの消去が十分にできないため、中空糸膜などの劣化を防ぐことができない。また、抗酸化剤を多量に入れると、ラジカルが十分に消去されてしまうために、共重合体の中空糸膜への固定化量が落ちるために、溶出物の増加やタンパク質や血小板などの付着抑制効果も十分に得られない。以上のことから、抗酸化剤としては、エタノール、n−プロパノール、2−プロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリンが好適に用いられ、その濃度範囲は、0.01重量%以上、90重量%以下が好適に用いられる。特にエタノール、n−プロパノール、2−プロパノールの場合は、0.01重量%以上、10重量%以下が好適に用いられ、さらに好ましくは0.05重量%以上、1重量%以下である。プロピレングリコール、グリセリンの場合は、0.1重量%以上、90重量%、さらに好ましくは、0.5重量%以上、70重量%以下である。
本発明に係る中空糸膜は、高い付着抑制性を有するので、水処理用中空糸膜や生体成分分離膜として好適に用いることができる。特に、人工腎臓などの血液浄化用モジュールに適する。ここで、血液浄化用モジュールとは、血液を体外に循環させて、血中の老廃物や有害物質を取り除く機能を有したモジュールのことをいう。
本発明の中空糸膜となる素材は、ポリスルホン系ポリマーであり、ポリスルホンやポリエーテルスルホンなど、主鎖に芳香環、スルフォニル基およびエーテル基をもつものである。例えば、次式(1)、(2)の化学式で示されるポリスルホンが好適に使用されるが、本発明ではこれらに限定されない。式中のnは、例えば50〜80の如き整数である。
Figure 2010104984
ポリスルホンの具体例としては、ユーデルポリスルホンP−1700、P−3500(ソルベイ社製)、ウルトラソンS3010、S6010(BASF社製)、ビクトレックス(住友化学)、レーデルA(ソルベイ社製)、ウルトラソンE(BASF社製)等のポリスルホンが挙げられる。又、本発明で用いられるポリスルホンは上記式(1)及び/又は(2)で表される繰り返し単位のみからなるポリマーが好適ではあるが、本発明の効果を妨げない範囲で他のモノマーと共重合していても良い。特に限定するものではないが、他の共重合モノマーは10重量%以下であることが好ましい。
ポリスルホン系中空糸膜の製膜原液に、親水化剤、造孔剤としてポリビニルピロリドンやポリエチレングリコールなどを添加していても良いが、特に中空糸膜性能等に問題なければ、添加しなくとも良い。ただし、血小板やタンパク質付着抑制の観点からは、ポリビニルピロリドンを添加していることが好ましい。
また、エステル基含有ポリマーを製膜原液に添加する場合、ポリスルホン系ポリマーの重量平均分子量は3万以上、さらには5万以上が好適である。また、エステル基含有ポリマーの重量分子量は、ポリスルホン系ポリマーの重量平均分子量に対して1.7倍以下、好ましくは1.5倍以下、0.5倍以上、好ましくは1倍以上であることが、血小板付着抑制などの観点から好ましい。これは、エステル基含有ポリマーの分子量がポリスルホン系ポリマーに対して大きすぎると、エステル基含有ポリマーで凝集が起こりやすくなり、逆に小さすぎてもポリスルホン系ポリマーと絡みあいができないので、水洗などの工程で、エステル基含有ポリマーが脱離しやすくなるためではないかと考えられる。製膜原液中のエステル基含有ポリマー濃度は、エステル基含有ポリマー内のエステル基量にも依存するが、エステル基ユニットの全ユニットに対する比率(モル比)が0.3以上、0.7以下程度であれば、ポリスルホン系ポリマー濃度に対して、0.15倍以上、さらには0.2倍以上、好ましくは0.3倍以上である。また、エステル基含有ユニットが多すぎても、透水性などの膜性能が低下するので、1倍以下、好ましくは0.9倍以下である。また、第3成分として、ポリビニルピロリドンなどの親水性ポリマーを添加しても良い。親水性ポリマーの分子量としては、1万以上、さらには5万以上が好ましい。製膜原液中の親水性ポリマー濃度が高すぎると、エステル基含有ポリマーの血小板付着抑制効果が低下するため、エステル基含有ポリマー濃度の3倍以下、好ましくは2倍以下、さらには1倍以下が好ましい。また、エステル基含有ポリマーとしては、ポリスルホン系ポリマーとの相溶性からビニルピロリドンと酢酸ビニルの共重合体が好ましい。
さらに、中空糸膜の注入液にエステル基含有ポリマーを製膜原液に添加する場合、注入液のエステル基含有ポリマー濃度は、1重量%以上、好ましくは5重量%以上、さらには10重量%以上が好ましい。また、濃度が高いと紡糸性が低下するために、30重量%以下、好ましくは25重量%以下、さらには20重量%以下が好ましい。
なお、中空糸膜の透水性としては、200mL/hr/m/mmHg以上、好ましくは300mL/hr/m/mmHg以上、さらには400mL/hr/m/mmHg以上が好ましい。また、人工腎臓用途の場合、透水性が高すぎると残血などの現象が見られることがあるので、好ましくは2000mL/hr/m/mmHg以下、さらには1500mL/hr/m/mmHg以下が好ましい。
また、中空糸膜機能層表面において、酢酸ビニル基だけでなく、ビニルピロリドン基が共存することは、血小板の付着抑制性や、膜の透水性を向上させるために好適である。そのことから、機能層表面での赤外吸収スペクトルにおいて、1660cm−1 付近のビニルピロリドン基由来の赤外吸収ピーク強度(ANCO)の1580cm−1付近のポリスルホンのベンゼン環C=C由来の赤外吸収ピーク強度(ACC)に対する比(ANCO)/(ACC)が、平均値0.4以上が好ましく、より好ましくは0.6以上であり、さら好ましくは0.7以上で、かつ0.25以下の測定点の割合が10%以下が好ましく、より好ましくは5%以下である。
また、赤外吸収スペクトルの測定方法としては、前述の方法と同様に、測定範囲を3μm×3μm、積算回数は30回以上として赤外吸収スペクトルを吸収強度で25点測定する。この25点測定を、1本の中空糸膜について異なる3箇所で、モジュール1本当たり計3本の中空糸膜について測定する。得られた赤外吸収スペクトルについては、1620〜1711cm−1で基準線を引き、その基準線とスペクトルの正部分で囲まれた部分のピーク面積をANCOとし、同様に、1549〜1620cm−1で基準線を引き、そのピーク面積をACCとして、両者の比(ANCO)/(ACC)を算出する。
特に、ポリビニルピロリドンを含んだポリスルホン系ポリマーの中空糸膜にエステル基を導入することは、血小板の付着抑制性や、膜の透水性の観点から、好ましい方法である。ビニルピロリドン基は、窒素原子を含んでいるので、膜中の全元素に対する窒素原子の濃度は、ビニルピロリドン基に比例する。窒素原子の濃度は、元素分析によって求めることができる。膜中のビニルピロリドン基が多いと、膜全体が親水性であるために、透水性が高くなる。一方で、ビニルピロリドン基が多すぎると、溶出物が増えるなどの問題が生じる。従って、全元素に対する窒素原子の濃度としては、0.15重量%以上、好ましくは原子の0.25重量%以上、1重量%以下、好ましくは0.8重量%以下である。
さらに、機能層表面において、ポリビニルピロリドンや、ポリエチレングリコールの量が多すぎても、血小板付着などを抑制するエステル基ユニットが埋もれてしまい、十分な効果を発揮できなかったり、γ線や電子線などの放射線が照射された場合に、ビニルピロリドンユニットやエチレングリコールユニットが架橋してしまい、エステル基ユニットを覆ったり、エステル基と反応してしまったりすることにより、血小板付着抑制効果が低下する可能性がある。したがって、機能層表面の(ANCO)/(ACC)の平均値は2以下、好ましくは1.5以下、さらには1.0以下が好ましい。また、ビニルピロリドンユニット量としては45重量%以下が好ましく、さらには40重量%以下が好ましい。機能層表面のビニルピロリドンユニット量などは、X線電子分光法(XPS)によって求めることができる。また、ポリビニルピロリドンや、ポリエチレングリコールの分子量が大きすぎても、エステル基ユニットが埋もれてしまう可能性がある。したがって、製膜原液やコーティング時に用いるポリビニルピロリドンや、ポリエチレングリコールの重量平均分子量は200万以下が好ましく、さらには150万以下が好ましい。重量平均分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィによって求めることができる。なお、分子量の検量線には市販の標準ポリエチレンオキサイドを使用する。
中空糸膜モジュールの製造としては、その用途により、種々の方法があるが、大まかな工程としては、中空糸膜の製造工程と、その中空糸膜をモジュールに組み込むという工程にわけることができる。
血液浄化用モジュールとして、人工腎臓の製造方法についての一例を示す。まず、中空糸膜の製造方法としては、ポリスルホンとポリビニルピロリドン(重量比率20:1〜1:5が好ましく、5:1〜1:1がより好ましい)をポリスルホンの良溶媒(N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、ジオキサンなどが好ましい)および貧溶媒の混合溶液に溶解させた原液(濃度は、10〜30重量%が好ましく、15〜25重量%がより好ましい)を二重環状口金から吐出する際に内側に注入液(芯液)を流し、乾式部を走行させた後凝固浴へ導く。この際、乾式部の湿度が影響を与えるために、乾式部走行中に膜外表面からの水分補給によって、外表面近傍での相中空糸挙動を速め、孔径拡大し、結果として透析の際の透過・拡散抵抗を減らすことも可能である。ただし、相対湿度が高すぎると外表面での原液凝固が支配的になり、かえって孔径が小さくなり、結果として透析の際の透過・拡散抵抗を増大する傾向がある。そのため、相対湿度としては60〜90%が好適である。また、注入液組成としてはプロセス適性から原液に用いた溶媒を基本とする組成からなるものを用いることが好ましい。注入液濃度としては、例えばジメチルアセトアミドを用いたときは、45〜80重量%、さらには60〜75重量%の水溶液が好適に用いられる。中空糸膜の内径が小さくなるほど、境膜物質移動係数を低減できるために、中空糸膜の物質除去性能は向上する一方で、血液の成分が膜に付着したり、活性化を惹起しやすくなるために、残血などの現象を引き起こしやすい。しかしながら、本発明の方法によれば、血液の成分が膜に付着することを抑制できるので、中空糸膜の内径を小さくすることができる。以上のことから、中空糸膜の内径は80μm以上、好ましくは100μm以上、さらには120μm以上、200μm以下、好ましくは180μm以下、さらには160μm以下が好ましい。
中空糸膜をモジュールに内蔵する方法としては、特に限定されないが、一例を示すと次の通りである。まず、中空糸膜を必要な長さに切断し、必要本数を束ねた後、筒状ケースに入れる。その後両端に仮のキャップをし、中空糸膜両端部にポッティング剤を入れる。このとき遠心機でモジュールを回転させながらポッティング剤を入れる方法は、ポッティング剤が均一に充填されるために好ましい方法である。ポッティング剤が固化した後、中空糸膜の両端が開口するように両端部を切断し、中空糸膜モジュールを得る。
以下実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。
以下実施例と比較例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。なお、下記で作製したいずれの中空糸膜においても機能層は内表面である。
1.中空糸膜モジュールの作製(中空糸膜モジュールの概要は図1の通り)
(1)ポリスルホン/ポリビニルピロリドン混合中空糸膜
ポリスルホン(アモコ社 Udel−P3500)16重量部、ポリビニルピロリドン(インターナショナルスペシャルプロダクツ社;以下ISP社と略す)K30 2重量部、ポリビニルピロリドン(ISP社K90)2重量部をジメチルアセトアミド79部、水1部を加熱溶解し、製膜原液とした。
この製膜原液を環状スリット部の外径0.3mm、内径0.2mmのオリフィス型二重円筒型口金の外側の管より吐出した。注入液としてN,N’−ジメチルアセトアミド60重量部および水40重量部からなる溶液を内側の管より吐出した。吐出された製膜原液は、乾式長350mm、温度30℃、相対湿度78%RHのドライゾーン雰囲気を通過した後、水100%、温度40℃の凝固浴に導かれ、60〜75℃で90秒の水洗工程、130℃で2分の乾燥工程を通過させ、160℃のクリンプ工程を経て得られた中空糸膜を巻き取り束とした。中空糸膜の内径は200μm、外径は280μmであった。中空糸膜の内表面積が1.6mになるように、中空糸膜をケースに充填し、かつ中空糸膜の両端をポッティングによりケース端部に固定し、ポッティング材の端部の一部をカッティングすることで両端の中空糸膜を両面開口させて、中空糸膜モジュール1とした。
(2)ポリスルホン中空糸膜
ポリスルホン(アモコ社 Udel−P3500)18重量部をジメチルアセトアミド81部、水1部を加熱溶解し、製膜原液とした。
この原液を温度50℃の紡糸口金部へ送り、環状スリット部の外径0.35mm、内径0.25mmの2重スリット管から注入液としてジメチルアセトアミド63部、水37部からなる溶液を吐出させ、中空糸膜を形成させた後、温度30℃、露点28℃の、乾式長350mmのドライゾーン雰囲気を通過した後、ジメチルアセトアミド20重量%、水80重量%からなる温度40℃の凝固浴を通過させ、60〜75℃で90秒の水洗工程、130℃で2分の乾燥工程を通過させ、160℃のクリンプ工程を経て得られた中空糸膜を巻き取り束とした。中空糸膜の内径は200μm、外径は280μmであった。中空糸膜の内表面積が1.6mになるように、中空糸膜をケースに充填し、かつ中空糸膜の両端をポッティングによりケース端部に固定し、ポッティング材の端部の一部をカッティングすることで両端の中空糸膜を両面開口させて、中空糸膜モジュール2とした。
(3)ポリエーテルスルホン/ポリビニルピロリドン混合中空糸膜
ポリエーテルスルホン19重量部、ポリビニルピロリドン(ISP社製)K90 3重量部、ジメチルアセトアミド74部、水4部を加熱溶解し、製膜原液とした。
この製膜原液を環状スリット部の外径0.3mm、内径0.2mmのオリフィス型二重円筒型口金の外側の管より吐出した。注入液としてN,N’−ジメチルアセトアミド51重量部および水49重量部からなる溶液を内側の管より吐出した。吐出された製膜原液は、乾式長350mm、温度29℃、相対湿度95%RHのドライゾーン雰囲気を通過した後、水100%の凝固浴に導かれ、60〜75℃で90秒の水洗工程、130℃で2分の乾燥工程を通過させ、160℃のクリンプ工程を経て得られた中空糸膜を巻き取り束とした。中空糸膜の内径は200μm、外径は280μmであった。中空糸膜の内表面積が1.6mになるように、中空糸膜をケースに充填し、かつ中空糸膜の両端をポッティングによりケース端部に固定し、ポッティング材の端部の一部をカッティングすることで両端の中空糸膜を両面開口させて、中空糸膜モジュール3とした。
(4)注入液へのエステル基含有ポリマー添加検討
ポリスルホン(アモコ社 Udel−P3500)18重量部、ポリビニルピロリドン(ISP社)K30 9重量をジメチルアセトアミド72重量部、水1重量部を加熱溶解し、製膜原液とした。
ジメチルアセトアミド63重量部、水37重量部の溶液にビニルピロリドン/酢酸ビニル(6/4)共重合体(BASF社製、“KOLLIDON”(登録商標)VA64(以下VA64))10重量部を溶解させて注入液とした。
製膜原液を温度50℃の紡糸口金部へ送り、環状スリット部の外径0.35mm、内径0.25mmの2重スリット管から注入液を吐出させ、中空糸膜を形成させた後、温度30℃、露点28℃の、350mmのドライゾーン雰囲気を経て、ジメチルアセトアミド20重量%、水80重量%からなる温度40℃の凝固浴を通過させ、60〜75℃で90秒の水洗工程、130℃の乾燥工程を2分通過させ、160℃のクリンプ工程を経て得られた中空糸膜(中空糸膜4)を巻き取り束とした。中空糸膜の内径は200μm、外径は280μmであった。
また、注入液にVA64を添加しない組成の溶液を用いて、上記と同様にして中空糸膜(中空糸膜5)を作成した。
(5)クロロアセトアミドメチル化ポリスルホン含有中空糸膜
7.13重量%に調製したポリスルホン(アモコ社 Udel−P3500)のニトロベンゼン溶液175.3gを8℃に冷却し、これに別に−5℃で30分間撹拌することにより調製した5.30重量%のN−メチロール−2−クロロアセトアミドの硫酸溶液を33g添加し反応を8℃で行ない、クロロアセトアミドメチル化ポリスルホン(クロロアミドメチル基置換度0.39)を得た。
ポリスルホン(アモコ社 Udel−P3500)18重量部、上記クロロアセトアミドメチル化ポリスルホン2重量部、PVP(ISP社)K30 10重量部、をジメチルアセトアミド69重量部、水1重量部とともに加熱溶解し、製膜原液とした。
この原液を温度40℃の紡糸口金部へ送り、環状スリット部の外径0.35mm、内径0.25mmの2重スリット管から注入液としてジメチルアセトアミド35部、水65部からなる溶液を吐出させ、中空糸膜を形成させた後、温度27℃、露点11℃の、乾式長300mmのドライゾーン雰囲気を通過した後、水100重量%からなる温度40℃の凝固浴を通過させ、水洗した後、中空糸膜(中空糸膜6)を巻き取り束とした。中空糸膜の内径は200μm、外径は280μmであった。膜は各種評価を行うまでは乾燥させないようにした。
(6)ビニルピロリドン/酢酸ビニル共重合体含有中空糸膜(1)
ポリスルホン(アモコ社 Udel−P3500)18重量部、ビニルピロリドン/酢酸ビニル(6/4)共重合体(BASF社製、VA64)9重量をジメチルアセトアミド72重量部、水1重量部とともに加熱溶解し、製膜原液とした。
この原液を温度50℃の紡糸口金部へ送り、環状スリット部の外径0.35mm、内径0.25mmの2重スリット管から注入液としてジメチルアセトアミド61部、水39部からなる溶液を吐出させ、中空糸膜を形成させた後、温度29℃、露点27℃の、乾式長350mmのドライゾーン雰囲気を通過した後、ジメチルアセトアミド20重量%、水80重量%からなる温度40℃の凝固浴を通過させ、水洗した後、中空糸膜が乾燥しないように、グリセリンを付与した後、中空糸膜(中空糸膜7)を巻き取り束とした。中空糸膜の内径は200μm、外径は280μmであった。なお、ポリスルホン(アモコ社 Udel−P3500)およびVA64の重量平均分子量をゲルパーミエーションクロマトグラフィにより測定した結果、ポリスルホンは35000であり、VA64は52000であった。すなわち、VA64の重量分子量は、ポリスルホン系ポリマーの重量平均分子量に対して1.5倍である。
(7)ビニルピロリドン/酢酸ビニル共重合体含有中空糸膜(2)
ポリスルホン(アモコ社 Udel−P1700)17重量部、ポリエチレングリコール(分子量600)ビニルピロリドン/酢酸ビニル(6/4)共重合体(BASF社製、VA64)1.7重量を溶解し、製膜原液とした。
ジメチルアセトアミド61重量部、水39重量部の溶液にビニルピロリドン/酢酸ビニル(6/4)共重合体(BASF社製、VA64)0.5重量部を溶解させて注入液とした。
この原液を温度50℃の紡糸口金部へ送り、環状スリット部の外径0.35mm、内径0.25mmの2重スリット管から注入液として上述したジメチルアセトアミド、水、VA64からなる溶液を吐出させ、中空糸膜を形成させた後、温度29℃、露点27℃の、乾式長350mmのドライゾーン雰囲気を通過した後、ジメチルアセトアミド20重量%、水80重量%からなる温度40℃の凝固浴を通過させ、水洗した後、中空糸膜が乾燥しないように、グリセリンを付与した後、中空糸膜(中空糸膜8)を巻き取り束とした。中空糸膜の内径は200μm、外径は280μmであった。ポリスルホン(アモコ社 Udel−P1700)の重量平均分子量をゲルパーミエーションクロマトグラフィにより測定した結果、29000であった。すなわち、VA64の重量分子量は、ポリスルホン系ポリマーの重量平均分子量に対して1.8倍であった。
2.測定方法
(1)赤外吸収スペクトルの測定方法
中空糸膜を片刃で半円筒状にそぎ切り、超純水でリンスした後、室温、0.5Torrにて10時間乾燥させた。この乾燥中空糸膜の内表面をJASCO社製IRT−3000の顕微ATR法により測定した。測定は視野(アパーチャ)を100μm×100μmとし、測定範囲は3μm×3μmで積算回数を30回、縦横各5点の計25点で測定を行った。得られたスペクトルの波長1549〜1620cm−1で、基準線を引き、その基準線とスペクトルの正部分で囲まれた部分のピーク面積をポリスルホンのベンゼン環C=C由来の赤外吸収ピーク面積ACCとした。同様に、1711〜1759cm−1で、基準線を引き、エステル基C=O由来の赤外吸収ピーク面積ACOとした。さらに、得られたスペクトルのうち、1660cm−1付近にビニルピロリドン基のアミド結合由来のピークが現れるので、1620〜1711cm−1で基準線を引き、アミド基NCO由来の赤外吸収ピーク面積ANCOとした。
上記の操作をモジュール1本当たり3本の異なる中空糸について、それぞれ同一中空糸で異なる3箇所測定し、(ACO)/(ACC)の平均値および、0.001以下の割合、(ANCO)/(ACC)の平均値および0.25以下の割合を算出した。
(2)中空糸膜内表面のエステル基量測定
中空糸膜内表面のエステル基量は、X線光電子分光法(XPS)によって測定した。測定装置、条件としては、以下の通り。
測定装置: ESCALAB220iXL
励起X線: monochromatic Al Kα1,2 線(1486.6eV)
X線径: 0.15mm
光電子脱出角度: 90 °(試料表面に対する検出器の傾き)
C1sのCHやC−Cのメインピーク(285eV付近)から+4.0〜4.2eVに現れるピークが、エステル基(COO)由来のピークであるため、ピーク分割を行った後、全元素(水素原子は検出できないので、水素原子以外の全元素)に対する該ピーク面積の割合を算出し、エステル基由来の炭素量(原子数%)を算出する。より具体的には、C1sには、主にCHx,C−C,C=C,C−S由来の成分、主にC−O,C−N由来の成分、π-π*サテライト由来の成分、C=O由来の成分、COO由来の成分の5つの成分から構成される。従って、5つ成分でピーク分割を行う。COO由来の成分は、CHxやC−Cのメインピーク(285eV付近)から+4.0〜4.2eVに現れるピークである。この各成分のピーク面積比は、小数点第2桁目を四捨五入し、算出する。エステル基由来の炭素量(原子数%)は、C1sの炭素量(原子数%)から、COO由来の成分のピーク面積比を乗じることで求める。なお、ピーク分割の結果、0.4%以下であれば、検出限界以下とした。
(3)中空糸膜内表面のビニルピロリドンユニット量測定
中空糸膜内表面のビニルピロリドンユニット量は、XPSによって測定した。測定装置としてESCALAB220iXLを用い、サンプルを装置にセットして、X線の入射角に対する検出器の角度は90度にて測定を行った。中空糸膜を片刃で半円筒状にそぎ切り、中空糸膜の内表面を測定した。測定サンプルは、超純水でリンスした後、室温、0.5Torrにて10時間乾燥させた後、測定に供した。
XPSの測定により得られた、C1s、N1s、S2pスペクトルの面積強度より、装置付属の相対感度係数を用いて窒素の表面量(a)と硫黄の表面量(b)を求め、下式より表面ポリビニルピロリドン量を算出した。
表面ビニルピロリドンユニット量(重量%)=a×100/(a×111+b×442)
(4)中空糸膜のヒト血小板付着試験方法
18mmφのポリスチレン製の円形板に両面テープを貼り付け、そこに中空糸膜を固定した。貼り付けた中空糸膜を片刃で半円筒状にそぎ切り、中空糸膜の内表面を露出させた。中空糸内表面に汚れや傷、折り目などがあると、その部分に血小板が付着し、正しい評価ができないことがあるので注意を要する。筒状に切ったFalcon(登録商標)チューブ(18mmφ、No.2051)に該円形板を、中空糸膜を貼り付けた面が、円筒内部にくるように取り付け、パラフィルムで隙間を埋めた。この円筒管内を生理食塩水で洗浄後、生理食塩水で満たした。人間の静脈血を採血後、直ちにヘパリンを50U/mlになるように添加した。前記円筒管内の生理食塩水を廃棄後、前記血液を、採血後10分以内に、円筒管内に1.0ml入れて37℃にて1時間振盪させた。その後、中空糸膜を10mlの生理食塩水で洗浄し、2.5%体積グルタルアルデヒド生理食塩水で血液成分の固定を行い、20mlの蒸留水にて洗浄した。洗浄した中空糸膜を常温0.5Torrにて10時間減圧乾燥した。この中空糸膜を走査型電子顕微鏡の試料台に両面テープで貼り付けた。その後、スパッタリングにより、Pt−Pdの薄膜を中空糸膜表面に形成させて、試料とした。この中空糸膜の内表面をフィールドエミッション型走査型電子顕微鏡(日立社製S800)にて、倍率1500倍で試料の内表面を観察し、1視野中(4.3×103μm2)の付着血小板数を数えた。中空糸長手方向における中央付近で、異なる10視野での付着血小板数の平均値を血小板付着数(個/4.3×103μm2)とした。中空糸の長手方向における端の部分は、血液溜まりができやすいため付着数の計測対象からはずした。
血小板付着数は、少ないほど血液適合性が良く、20個/4.3×103μm2以下が好ましいと考えられる。また、ポリスルホンフィルムをコントロールとして、実験毎に入れ、ポリスルホンフィルムへの血小板付着数が20個/4.3×103μm2以上であれば、実験が成立していると判断した。
(5)β−ミクログロブリン クリアランス(β−MG CL)測定
中空糸膜の性能評価として、β−ミクログロブリンのクリアランスを測定した。β−ミクログロブリンは、透析治療において、除去対象となるタンパク質であり、近年では、そのクリアランスが、膜の性能指標としてよく使われているので、本実施例においても、その値を指標とした。
エチレンジアミン四酢酸二ナトリウムを添加した牛血液について、ヘマトクリットが30±3%、総タンパク量が6.5±0.5g/dLとなるように調整した。
次に、β−ミクログロブリン濃度が1mg/lになるように加え、撹拌した。かかる牛血液について、その2Lを循環用に、1.5Lをクリアランス測定用として分けた。
回路を図2のようにセットした。透析装置としては、東レメディカル株式会社製 TR2000Sを用いた。TR2000Sは、図2のうち、Biポンプ、Fポンプ、および透析装置にあたる。
透析装置に、透析液(キンダリー液AF2号 扶桑薬品工業株式会社製)A液およびB液をセットした。透析液側から血液側に向けてRO水を流した。透析液濃度13〜15mS/cm、温度34℃以上、透析液側流量を500ml/minに設定した。
透水装置の除水速度を10ml/(min・m)に設定した。Bi回路入口部を上記で調整した牛血液2L(37℃)の入った循環用ビーカーに入れ、Biポンプをスタートし、Bo回路出口部から排出される液体90秒間分を廃棄後、ただちにBo回路出口部および、Do回路出口部を循環用ビーカーに入れて循環状態とした。
続いて透析装置のFポンプを動かし、循環を1時間行った後、BiポンプおよびFポンプを停止した。
次に、Bi回路入口部を上記で調整したクリアランス測定用の牛血液に入れ、Bo回路出口部を廃棄用ビーカーに入れた。Do回路出口部から流出する液体は廃棄した。
Diポンプをスタートした。また、血液ポンプをスタートするとともに、トラップとBiチャンバーの間を開放した。
スタートから2分経過後、クリアランス測定用の牛血液(37℃)からサンプルを10ml採取し、Bi液とした。スタートから4分30秒経過後に、Bo回路出口部からサンプルを10ml採取し、Bo液とした。これらのサンプルは、−20℃以下の冷凍庫で保存した。
各液のβ−ミクログロブリンの濃度からクリアランスを下記(3)式によって算出した。牛血液のロットによって測定値が異なる場合があるので、実施例に用いたデータは全て同一ロットの牛血液を使用した。
Co(ml/min)=(CBi−CBo)×Q/CBi (3)
(3)式において、C=β−ミクログロブリンクリアランス(ml/min)、CBi=Bi液におけるβ−ミクログロブリン濃度、CB=Bo液におけるβ−ミクログロブリン濃度、Q=Biポンプ流量(ml/min)である。
(6)重量平均分子量測定
親水性ポリマーの重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィにて測定した。親水性ポリマー水溶液0.1wt%をマイショリディスク(水系、東ソー社製)でろ過して、水溶液中のゴミなどを取り除いた。測定条件は下記の通り。重量平均分子量の検量線としてはポリエチレングリコールを用いた。
カラム:TSKgel GMPWXL
溶媒:0.1mol/L 硝酸リチウム、水/メタノール:50vol/50vol
流速:0.5ml/min
カラム温度:40℃
(7)透水性能の測定
中空糸両端部を封止したガラス管ミニモジュール(本数36本:有効長10cm)の中空糸内側に水圧100mmHgをかけ、外側へ流出してくる単位時間当たりの濾過量を測定した。透水性能(UFR)は下記の式で算出した。
UFR(mL/hr/m/mmHg)=Q/(P×T×A)
ここで、Q:濾過量(mL)、T:流出時間(hr)、 P:圧力(mmHg)、A:中空糸膜内表面積(m
実施例1〜8および比較例1〜4は中空糸膜モジュール1を用いた。
(8)残血性の評価
残血糸とは、返血操作後に血液が残った中空糸のことを言い、下記のようなモデル実験を行うことにより、中空糸膜モジュールの残血性を評価することができる。
中空糸膜モジュールをBiが下になるように垂直に立て、モジュール血液側について、生理食塩液700mL(流速:200mL/min)を下から上に洗浄した。
中空糸膜モジュール透析側に透析液を流速500mL/minで流した後、牛血液(ヘマトクリット30%、総タンパク量6g/dL)を100mL/minで牛血液の透析を開始した。血液がBoから出てから血液流速を200mL/minに変更し、Biを上に変更した。この状態で30分間、流した。なお、除水は0とした。返血操作は、透析液を停止し、生理食塩液300mLを100mL/minで、Biから流した。
返血後に中空糸膜モジュールの側面に存在している残血糸をカウントすることで、残血性の評価を行った。
(9)親水性ポリマーの溶出量測定
中空糸膜モジュールの中空内側を室温の超純水700mlで洗浄し、外側を室温の超純水2500mlで洗浄した後、再び内側を室温の超純水300mlで洗浄し、膜に付着している親水性ポリマーを洗い流した。その後、血液側を37℃に加温した4000mlの超純水で流速200ml/minで4時間灌流した。その後、灌流液を200倍に濃縮し、GPC(ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー)にて測定した。その値から、潅流液中に溶出した親水性ポリマーの総量を算出した。
GPCの測定条件としては、カラムは東ソー社製GMPWXLを使用し、流速0.5ml/min、溶媒は0.1Nの硝酸リチウムを添加したメタノール:水=1:1(容積比)の混合溶媒、カラム温度40℃で行った。親水性ポリマー量の検量線としては、BASF社製K90のポリビニルピロリドンを用いて、ポリビニルピロリドン換算の濃度とした。ポリビニルピロリドン濃度が10ppm未満は、検出限界以下とした(4L中に溶出した親水性ポリマー量の検出限界は0.4mgとなる)。
(実施例1)
ビニルピロリドン/酢酸ビニル(7/3)共重合体(BASF社製、以下、VA73)0.1重量%水溶液を中空糸膜モジュール1の血液側入口(Bi)から血液側出口(Bo)に500mL/minで1分間通液した。次に血液側入口(Bi)から透析液側入口(Di)に500mL/minで1分間通液することで、中空糸膜の内表面にVA73を集積させた。この時の中空糸膜内部に入り込んだVA73を、内表面により集積させるために、100kPaの圧縮空気で透析液側から血液側へ充填液を押しだした。この後、血液側の充填液をブローし、中空糸膜のみに水溶液が保持された状態にした。さらに窒素で透析液側、血液側それぞれを各1分間ブローし、モジュール内を窒素で置換した後、該モジュールに25kGyのγ線を照射した。モジュール内の酸素濃度は0.6%であった。
該中空糸膜モジュールについて、親水性ポリマーの溶出量を測定したところ、検出限界以下(0.25mg/m)未満であった。なお、γ線を照射しなかった場合の親水性ポリマーの溶出量は、1.8mg/mであった。さらに、残血性の評価を行った結果、残血糸は7本と少なかった。中空糸膜内表面および外表面についてXPS測定を行ったところ、エステル基由来の炭素量は内表面が2.4(原子数%)、外表面が1.2(原子数%)であった。その他の各種試験を行った結果を表1に示した。
(実施例2)
ビニルピロリドン/酢酸ビニル(6/4)共重合体(BASF社製、VA64、)0.1重量%水溶液を中空糸膜モジュール1の血液側入口(Bi)から血液側出口(Bo)に500mL/minで1分間、通液した。次に血液側入口(Bi)から透析液側入口(Di)に500mL/minで1分間、通液することで、中空糸膜の内表面に、VA64を集積させた。この時の中空糸膜内部に入り込んだVA64を内表面に、より集積させるために、100kPaの圧縮空気で透析液側から血液側へ充填液を押しだした。この後、血液側の充填液をブローし、中空糸膜のみに水溶液が保持された状態にした。さらに窒素で透析液側、血液側それぞれを各1分間ブローし、モジュール内を窒素で置換した後、該モジュールに25kGyのγ線を照射した。モジュール内の酸素濃度は0.7%であった。
(実施例3)
ビニルピロリドン/酢酸ビニル(6/4)共重合体(BASF社製、VA64)0.01重量%水溶液を用いた以外は、実施例2と同様の操作を行った。モジュール内の酸素濃度は0.8%であった。
該中空糸膜モジュールについて、親水性ポリマーの溶出量を測定したところ、検出限界以下(0.25mg/m)未満であった。なお、γ線を照射しなかった場合の親水性ポリマーの溶出量は、1.7mg/mであった。さらに、残血性の評価を行った結果、残血糸は3本と少なかった。中空糸膜内表面および外表面についてXPS測定を行ったところ、エステル基由来の炭素量は内表面が1.6(原子数%)、外表面が0.6(原子数%)であった。その他の各種試験を行った結果を表1に示した。
(実施例4)
ビニルピロリドン/酢酸ビニル(6/4)共重合体(BASF社製、VA64)0.001重量%とエタノール0.1重量%の混合水溶液を用いた以外は、実施例2と同様の操作を行った。モジュール内の酸素濃度は0.7%であった。
該中空糸膜モジュールについて、親水性ポリマーの溶出量を測定したところ、検出限界以下(0.25mg/m)未満であった。さらに、残血性の評価を行った結果、残血糸は1本と少なかった。中空糸膜内表面および外表面についてXPS測定を行ったところ、エステル基由来の炭素量は内表面が0.9(原子数%)、外表面は検出されなかった。その他の各種試験を行った結果を表1に示した。すなわち、抗酸化剤であるエタノールを共存させることで、VA64濃度を低減しても血小板付着抑制を達成しつつ、高い透水性、β−ミクログロブリン除去性能を達成できることが示された。
(実施例5)
ビニルピロリドン/酢酸ビニル(6/4)共重合体(BASF社製、VA64)0.001重量%とヘキサノール0.1重量%の混合水溶液を用いた以外は、実施例2と同様の操作を行った。モジュール内の酸素濃度は0.7%であった。結果は表1の通りであった。すなわち、抗酸化剤であるヘキサノールを共存させることで、VA64濃度を低減しても血小板付着抑制を達成しつつ、高い透水性、β−ミクログロブリン除去性能を達成できることが示された。
(実施例6)
ビニルピロリドン/酢酸ビニル(6/4)共重合体(BASF社製、VA64)0.0005重量%とエタノール0.1重量%の混合水溶液を用いた以外は、実施例2と同様の操作を行った。モジュール内の酸素濃度は0.7%であった。結果は表1の通りであった。
(実施例7)
ビニルピロリドン/酢酸ビニル(5/5)共重合体(BASF社製)0.01重量%水溶液を用いた以外は、実施例2と同様の操作を行った。モジュール内の酸素濃度は0.7%であった。中空糸膜内表面および外表面についてXPS測定を行ったところ、エステル基由来の炭素量は内表面が5.2(原子数%)、外表面が2.2(原子数%)であった。その他の結果は表1の通りであった。血小板付着抑制を達成しつつ、高い透水性、β−ミクログロブリン除去性能を達成できたが、外表面にエステル基が2.2(原子数%)検出されており、実施例1や3、4に比べて、やや透水性が低かった。
(実施例8)
ポリ酢酸ビニル0.008重量%の60vol%メタノール水溶液を中空糸膜モジュール1の血液側入口(Bi)から血液側出口(Bo)に500mL/minで1分間、通液した。次に血液側入口(Bi)から透析液側入口(Di)に500mL/minで1分間、通液した後、純水を上記と同様に通液させ、メタノールを置換した。次に100kPaの圧縮空気で透析液側から血液側へ充填液を押しだした。この後、血液側の充填液をブローし、中空糸膜のみに水溶液が保持された状態にした。さらに窒素で透析液側、血液側それぞれを各1分間ブローし、モジュール内を窒素で置換した後、該モジュールに25kGyのγ線を照射した。モジュール内の酸素濃度は0.6%であった。該モジュールの中空糸を切り出し、血小板付着試験を行った。結果は表1の通りであった。すなわち、中空糸膜内表面にポリ酢酸ビニル量が多く存在するために、中空糸膜の透水性は、やや低かったが、高い血小板付着抑制性を示した。
(比較例1)
水を用いた以外は、実施例2と同様の操作を行った。モジュール内の酸素濃度は0.7%であった。なお、エステル基ユニットを含んでいないにも関わらず、ACO/ACCの値がわずかに出ているのは、ノイズを拾っているためである。該モジュールについて、残血性の評価を行った結果、残血糸は35本と多かった。中空糸膜内表面および外表面についてXPS測定を行ったところ、エステル基由来の炭素量は内表面、外表面ともに検出されなかった。その他の各種試験を行った結果を表1に示した。すなわち、血小板が付着する膜であった。
(比較例2)
ビニルピロリドン/酢酸ビニル(6/4)共重合体(BASF社製、VA64)0.001重量%とエタノール0.1重量%の混合水溶液を用いた。窒素置換以外は、実施例2と同様の操作を行った。モジュール内の酸素濃度は19%であった。
該中空糸膜モジュールについて、親水性ポリマーの溶出量を測定したところ、2.5mg/mであった。さらに、残血性の評価を行った結果、残血糸は30本と多かった。その他の各種試験を行った結果を表1に示した。酸素が存在することで、酢酸ビニルユニットの分解が進行したことが原因と推察される。
(比較例3)
ビニルピロリドン/酢酸ビニル(6/4)共重合体(BASF社製、VA64)0.0003重量%とエタノール0.1重量%の混合水溶液を用いた以外は、実施例2と同様の操作を行った。モジュール内の酸素濃度は0.9%であった。結果は表1の通りであった。
(比較例4)
ポリビニルピロリドン(BASF社製)K90 0.1重量%とエタノール0.1重量%の混合水溶液を用いた以外は、実施例2と同様の操作を行った。モジュール内の酸素濃度は0.9%であった。該モジュールについて、残血性の評価を行った結果、残血糸は37本と多かった。その他の結果は表1の通りであった。すなわち、中空糸膜内表面の親水性ホモポリマー量を上げただけでは、血小板付着を抑制できなかった。
(比較例5)
ポリビニルアルコール(ケン化度98%、分子量1万)0.01重量%水溶液を用いた以外は、実施例2と同様の操作を行った。モジュール内の酸素濃度は0.9%であった。結果は表1の通りであった。
(比較例6)
ビニルピロリドン/スチレン(9/1)共重合体(ISP社)0.01重量%水溶液を用いた以外は、実施例2と同様の操作を行った。モジュール内の酸素濃度は0.9%であった。結果は表1の通りであった。すなわち、親水性のビニルピロリドンと疎水性のスチレンの共重合体を用いただけでは血小板付着を抑制できず、エステル基が重要であることがわかった。

下記実施例9、10および比較例7においては中空糸膜モジュール2を用いた。
(実施例9)
ビニルピロリドン/酢酸ビニル(6/4)共重合体(BASF社製、VA64)0.01重量%水溶液を中空糸膜モジュール2の血液側入口(Bi)から血液側出口(Bo)に500mL/minで1分間通液した。次に血液側入口(Bi)から透析液側入口(Di)に500mL/minで1分間通液することで、中空糸膜の内表面にVA64を集積させた。この時の中空糸膜内部に入り込んだVA64を、内表面により集積させるために、100kPaの圧縮空気で透析液側から血液側へ充填液を押しだした。この後、血液側の充填液をブローし、中空糸膜のみに水溶液が保持された状態にした。さらに窒素で透析液側、血液側それぞれを各1分間ブローし、モジュール内を窒素で置換した後、該モジュールに25kGyのγ線を照射した。モジュール内の酸素濃度は0.8%であった。該モジュールの中空糸を切り出し、血小板付着試験を行った。結果は表2の通りであった。また、後述の比較例7に比べて透水性が向上しているのは、ポリスルホンのみからなる疎水性の強い膜だったものに対して、VA64により親水性が付与されたためと考えられる。
(実施例10)
ビニルピロリドン/酢酸ビニル(6/4)共重合体(BASF社製、VA64)0.001重量%水溶液とエタノール0.1重量%の混合水溶液を用いた以外は、実施例9と同様の操作を行った。モジュール内の酸素濃度は0.9%であった。結果は表2の通りであった。
(比較例7)
水を用いた以外は、実施例9と同様の操作を行った。モジュール内の酸素濃度は0.8%であった。結果は表2の通りであった。

下記実施例11および比較例8,9においては中空糸膜モジュール3を用いた。
(実施例11)
ビニルピロリドン/酢酸ビニル(5/5)共重合体(BASF社製、VA55)0.001重量%水溶液を用いた以外は、実施例2と同様の操作を行った。モジュール内の酸素濃度は0.9%であった。結果は表3の通りであった。
(比較例8)
ポリエチレングリコール(分子量5万)0.01重量%水溶液を用いた以外は、実施例2と同様の操作を行った。モジュール内の酸素濃度は0.9%であった。結果は表3の通りであった。
(比較例9)
水を用いた以外は、実施例2と同様の操作を行った。モジュール内の酸素濃度は0.8%であった。結果は表3の通りであった。

下記の実施例12および比較例10については、注入液へのエステル基含有ポリマーの添加の比較(中空糸膜4,5)を行った。
(実施例12)
プラスチック管に中空糸膜4を36本通し、両端を接着剤で固定した有効長100mmのプラスチック管ミニモジュールを作製し、純水で十分に洗浄した。中空糸膜の内部および外側の水を圧空ブローにて抜き出した後、25kGyのγ線を照射した。γ線照射後、純水にて十分に洗浄した後、各種試験を行った。なお、中空糸膜の性能としては、以下の方法で、β−ミクログロブリンのクリアランスを測定した。すなわち、濃度が5mg/Lになるように、β−ミクログロブリンを37℃の牛血清に加えた。これを前記ミニモジュールの血液側に1mL/minで流し、透析液側に37℃の生理食塩液を20mL/minで流した。2時間循環させた後、血液側の牛血清と、透析液側の生理食塩液を全量回収してエスアールエル(株)に分析を依頼し、β−ミクログロブリンの濃度を測定した。測定結果から1.8mに換算したクリアランスを算出した。ミニモジュールでのβ−ミクログロブリンのクリアランス測定は、実験毎の数値のばらつきがあるため、実験数を3回とし、平均値を採用した。数値は小数点第1位を四捨五入して計算した。その他の結果は表4の通りであった。
(比較例10)
プラスチック管に中空糸膜5を36本通し、実施例12と同様の操作を行い、得られた中空糸膜についても、同様の評価を行った。結果は表4の通りであった。すなわち、血小板がよく付着する表面であり、β−ミクログロブリン除去性能も実施例12よりも低かった。
下記の実施例13および比較例11は、クロロアセトアミドメチル化ポリスルホン(CAMPS)含有中空糸膜(中空糸膜6)を用いた。
(実施例13)
アリルアミン塩酸塩47gをメタノール110gに溶解させ、酢酸ビニル103gを添加した。さらに、重合開始剤として、アゾビスイソブチロニトリル41gを添加した後、60℃に加熱し、24時間反応させた後、アゾビスイソブチロニトリル41gを追添し、さらに60℃で24時間反応させた。重合反応終了時、残存モノマーと単独重合体を除去し、アリルアミン塩酸塩−酢酸ビニル共重合体を得た。元素分析により、共重合体中のアリルアミン含有量は28モル%と計算された。
プラスチック管にクロロアセトアミドメチル化ポリスルホン(CAMPS)含有中空糸膜(中空糸膜6)を36本通し、両端を接着剤で固定した有効長100mmのプラスチック管ミニモジュールを作製し、純水で十分に洗浄した。次に、クロロアセトアミドメチル基とアミノ基は容易に反応が進行するので、上記で得たアリルアミン/酢酸ビニル共重合体を、主として中空糸膜の内表面に固定化することを行った。すなわち、中空糸膜の内側と外側に充填された水を抜き出した後、アリルアミン/酢酸ビニル共重合体5重量%の60重量%イソプロパノール水溶液(pH9.0に調整)を、中空糸膜モジュールの内側だけに通液し、室温で1時間放置して反応させた。反応後、60重量%イソプロパノール水溶液で未反応のアリルアミン/酢酸ビニル共重合体を洗浄後、純水で洗浄、置換した。該中空糸膜について、各種試験を行った。
中空糸膜の性能としては、実施例12と同様にしてβ−ミクログロブリンのクリアランスを測定した。結果は表5の通りであった。
(比較例11)
プラスチック管にCAMPS含有中空糸膜(中空糸膜6)を36本通し、両端を接着剤で固定した有効長100mmのプラスチック管モジュールを作製し、純水で十分に洗浄した。次に、60重量%イソプロパノール水溶液(pH9.0に調整)を、中空糸膜モジュールの内側だけに通液し、室温で1時間静置させた。その後、純水で洗浄、置換した。該中空糸膜について、各種試験を行った。
中空糸膜の性能としては、実施例12と同様にしてβ−ミクログロブリンのクリアランスを測定した。結果は表5の通りであった。
下記の実施例14においては中空糸膜7を、比較例12においては中空糸膜8を用いた。
(実施例14)
プラスチック管に中空糸膜7を36本通し、両端を接着剤で固定した有効長100mmのプラスチック管ミニモジュールを作製し、純水で十分に洗浄し、グリセリンを除去した。中空糸膜の内部および外側の水を圧空ブローにて抜き出した後、25kGyのγ線を照射した。γ線照射後、純水にて十分に洗浄した後、各種試験を行った。
中空糸膜の性能としては、実施例11と同様にしてβ−ミクログロブリンのクリアランスを測定した。結果は表6の通りであった。
(比較例12)
プラスチック管に中空糸膜8を36本通し、実施例13と同様の操作を行い、得られた中空糸膜についても、同様の評価を行った。結果は表6の通りであった。すなわち、血小板がよく付着する表面であり、β−ミクログロブリン除去性能は実施例16におけるより低かった。これは、膜内表面のVA64存在分布にばらつきがあり、効果的に血小板の付着を抑制できない一方で、膜厚部分に対しては、多量のVA64が存在し、透水性が低くなってしまったためと考えられる。なお、該中空糸膜について、γ線を照射しなかった場合のACO/ACCは0.01、ACO/ACCが0.001以下の割合は15%であった。血小板付着数は60(個/4.3×10μm)であり、血小板の付着を十分に抑制できていなかった。
Figure 2010104984
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Claims (10)

  1. ポリスルホン系中空糸膜が内蔵されたモジュールであって、ポリスルホン系中空糸膜の長手方向における端面近傍および中央部付近の機能層表面での、1730cm−1 付近のエステル基C=O由来の赤外吸収ピーク強度(ACO)の1580cm−1付近のポリスルホン系ポリマーのベンゼン環C=C由来の赤外吸収ピーク強度(ACC)に対する比(ACO)/(ACC)が、平均値0.005以上かつ0.001以下の測定点の割合が10%以下であることを特徴とするポリスルホン系中空糸膜モジュール。
  2. 前記(ACO)/(ACC)が平均値0.5以下であることを特徴とする請求項1に記載のポリスルホン系中空糸膜モジュール。
  3. 前記エステル基C=Oが、ポリマー由来であることを特徴とする請求項1または2に記載のポリスルホン系中空糸膜モジュール。
  4. 前記エステル基C=Oの由来となるポリマーが、カルボン酸ビニルエステル、アクリル酸エステルおよびメタクリル酸エステルから選ばれる少なくともひとつのユニットを有することを特徴とする請求項3に記載のポリスルホン系中空糸膜モジュール。
  5. 前記エステル基C=Oの由来となるポリマーにおけるエステル基含有ユニットの比が0.3以上であることを特徴とする請求項3または4に記載のポリスルホン系中空糸膜モジュール。
  6. 前記エステル基が、ポリ酢酸ビニルおよび/または酢酸ビニルとビニルピロリドン共重合体に由来することを特徴とする請求項3〜5のいずれかに記載のポリスルホン系中空糸膜モジュール。
  7. 前記機能層表面での、1660cm−1 付近のビニルピロリドン基由来の赤外吸収ピーク強度(ANCO)の1580cm−1付近のポリスルホンのベンゼン環C=C由来の赤外吸収ピーク強度(ACC)に対する比(ANCO)/(ACC)が、平均値0.4以上、かつ0.25以下の測定点の割合が10%以下であることを特徴とする請求項1〜6に記載のポリスルホン系中空糸膜モジュール。
  8. 前記ポリスルホン系中空糸膜を構成する全元素に対する窒素原子の濃度が0.01重量%以上、0.1重量%以下であることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のポリスルホン系中空糸膜モジュール。
  9. 血液浄化用であることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載のポリスルホン系中空糸膜モジュール。
  10. ポリスルホン系中空糸膜モジュールに内蔵された中空糸膜を、中空糸膜の乾燥重量に対して0.2重量倍以上、6重量倍以下のビニルピロリドンと酢酸ビニルの共重合体水溶液に湿潤した状態として放射線照射を行うことを特徴とするポリスルホン系中空糸膜モジュールの製造方法。
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