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JP2010012666A - タイヤ成形用金型及びこれにより成形された空気入りタイヤ - Google Patents

タイヤ成形用金型及びこれにより成形された空気入りタイヤ Download PDF

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貴紀 伊藤
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Abstract

【課題】 バットレス部に発生するクラックを抑制するようにしたタイヤ成形用金型及びこれにより成形された空気入りタイヤを提供する。
【解決手段】 タイヤのサイド部を形成するサイド成形面のうち、タイヤ最大幅位置Pからトレッド外周面Qに至る径方向距離をSとしたとき、トレッド外周面Qから径方向内側に向けて(0.55〜0.75)×Sの範囲として定義されるバットレス領域Rに対応する成形面4に、金型周方向に延びて連続する環状の周方向溝5と、周方向に間欠的に間隔を隔てて周方向溝5に交差しかつ少なくとも一方の端部がバットレス領域Rを超えて延びる複数本の径方向溝6とを設けると共に、径方向溝6のバットレス領域Rを超えて延びる側の端部に金型外側に貫通するベントホール7を形成したタイヤ成形用金型、及びこれにより成形された空気入りタイヤ10。
【選択図】 図3

Description

本発明は、タイヤ成形用金型及びこれにより成形された空気入りタイヤに関し、更に詳しくは、バットレス部に発生するクラックを抑制するようにしたタイヤ成形用金型及びこれにより成形された空気入りタイヤに関する。
タイヤ成形用金型には、タイヤ加硫時にタイヤと金型との間に残留するエアやタイヤから発生するガスなどを外部に排出するために、ベントホールなどの気体抜き通路が多数設けられている。このように形成された気体抜き通路には、加硫時の熱により流動化されたゴムが残留エアや発生ガスと共に気体抜き通路を経由して外部に押し出される。
気体抜き通路内に押し出されたゴムはスピュー(髭状の突起)となって加硫後のタイヤ表面に多数残存する。その後、これらスピューは切除されるが、この切除によってタイヤ表面にはスピューのゴムが裸の状態で露出することになる。したがって、異種のゴムが配置された部位では、タイヤの表面には表面ゴムとは物性の異なるゴムが露出した状態で残存することになる。
一般に、タイヤのトレッド部とサイドウォール部とを連結するバットレス部では、タイヤ加硫時において金型内にエアなどが残留し易いため、バットレス部の金型成形面には、通例、周方向に所定の間隔を隔てて複数のベントホールを形成してきた。特に、重荷重用空気入りタイヤの場合には、トレッド幅を確保するために、トレッド部の両肩(ショルダー部)を角張った形態に形成しているので、バットレス部には残留エアや発生ガスが溜まり易く、この対策として金型の成形面には複数のベントホールを形成してきた。
ところが、バットレス部に対応する金型の成形面にベントホールを形成した場合には、これにより加硫されたタイヤは、バットレス部のスピュー痕からクラックが発生し易いという問題があった。発明者の検証によれば、この現象はバットレス部における特定の領域に顕著に表れることが判明した。クラックの発生原因は、バットレス部の周辺に配置されたトレッドゴムやベルトクッションゴムなどの周辺ゴムがベントホールを経由して排出されて、スピューの切除面では物性の異なる異種ゴムが混在した裸状態になって露出するため、この露出ゴムの物性の違いからクラックが発生するものと考えられている。
特に、負荷荷重の大きい重荷重用空気入りタイヤにあっては、ショルダー部に応力が集中するため、制駆動時においてバットレス部に加わるねじれ方向の力が大きくなって、異種ゴムの露出部分を中心にしてクラックが発生し易く、このクラックの発生を抑制することが重要な課題となっていた。
従来、タイヤ加硫時における残留エアや発生ガスを排出する対策として、気体抜き通路として金型内面に溝を形成し、この溝に連結させてベントホールを形成するようにした提案(例えば、特許文献1、2参照)がある。しかし、バットレス部の成形面にベントホールを形成した場合には、これにより加硫されたタイヤは、周辺ゴムがベントホールを経由してバットレス部の表面に露出してくるため、これら周辺ゴムの露出部分からクラックの発生を防止することが極めて難しかった。
特開2004−136616号公報 特開2004−136617号公報
本発明の目的は、上述する従来の問題点を解消するもので、バットレス部に発生するクラックを抑制するようにしたタイヤ成形用金型及びこれにより成形された空気入りタイヤを提供することにある。
上記目的を達成する本発明のタイヤ成形用金型は、タイヤのバットレス部、サイドウォール部及びビード部を成形するサイド成形面を備えたタイヤ成形用金型において、前記サイド成形面のうち、タイヤ最大幅位置からトレッド外周面に至る径方向距離をSとしたとき、該トレッド外周面から径方向内側に向けて(0.55〜0.75)×Sの範囲として定義されるバットレス領域に対応するサイド成形面に、金型周方向に延びて連続する環状の周方向溝と、周方向に間欠的に間隔を隔てて前記周方向溝に交差しかつ少なくとも一方の端部が前記バットレス領域を超えて延びる複数本の径方向溝とを設けると共に、該径方向溝の前記バットレス領域を超えて延びる側の端部に金型外側に貫通するベントホールを形成したことを特徴とする。
さらに、上述する構成において、以下の(1)〜(3)に記載するように構成することが好ましい。
(1)前記径方向溝を周方向に対して間欠的に8本以上設ける。
(2)前記周方向溝及び径方向溝の幅及び深さをそれぞれ0.3〜1.5mmにする。
(3)前記径方向溝の両端部を前記バットレス領域を超えて延びるように形成すると共に、該径方向溝の両端部にそれぞれ前記ベントホールを形成する。
また、本発明の空気入りタイヤは、上述するタイヤ成形用金型により成形されたことを特徴とする。この場合において、前記空気入りタイヤを重荷重用に供するとよい。
上述する本発明のタイヤ成形用金型によれば、タイヤのサイド部を形成するサイド成形面のうち、タイヤの制駆動時に最も応力が集中し易い特定の範囲からなるバットレス領域に対応するサイド成形面にベントホールを形成せずに、周方向に延びる環状の周方向溝と、この周方向溝に交差しかつ少なくとも一方の端部がバットレス領域を超えて延びる複数本の径方向溝とを設けると共に、この径方向溝のバットレス領域を超えて延びる側の端部にベントホールを形成したので、これにより成形された空気入りタイヤは、バットレス領域内にスピューが生じることがないため、バットレス部におけるクラックの発生を抑制することができる。
特に、トレッド部のショルダー部を角張った形態に形成する負荷荷重の大きい重荷重用空気入りタイヤにあっては、制駆動時においてバットレス部に加わるねじれ方向の力が大きくなってクラックが発生し易いため、上述した構成を採用することにより、バットレス部におけるクラックの発生を効率よく抑制することができる。
以下、本発明の構成について添付の図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本発明の実施形態によるタイヤ成形用金型とこれにより成形されるタイヤとの関係を示す断面図、図2は図1のタイヤ成形用金型の上型及び下型におけるサイド成形面の一部を破断して示す斜視図である。
図1において、本発明のタイヤ成形用金型はセクショナル型の金型からなり、タイヤの一方のサイド部を成形する環状の上型1と、他方のサイド部を成形する環状の下型2と、トレッド部を成形する複数のセクターからなる側型3とを備えており、上型1及び下型2の内面が、それぞれタイヤのバットレス部、サイドウォール部及びビード部を成形するサイド成形面4に形成されている。
そして、本発明のタイヤ成形用金型では、上述するサイド成形面4のうち、タイヤ最大幅位置Pからトレッド外周面Qに至る径方向距離をSとしたときのトレッド外周面Qから径方向内側の(0.55〜0.75)×Sの範囲として定義されるバットレス領域Rに対応するサイド成形面4に、図2に示すように、金型周方向に延びて連続する環状の周方向溝5と、周方向に間欠的に間隔を隔てて周方向溝5に交差しかつ少なくとも一方の端部(図では両方の端部)がバットレス領域Rを超えて延びる複数本の径方向溝6とが設けられており、さらに、これら径方向溝のバットレス領域Rを超えて延びる側の端部に金型外側に貫通するベントホール7が形成されている。なお、図では径方向溝6の両端部をバットレス領域Rを超えて形成し、この両端部にベントホール7を形成した場合を示しているが、一方の端部にはベントホール7を形成しない場合がある。
これにより、本発明のタイヤ成形用金型により加硫されたタイヤでは、タイヤ内部ゴムがタイヤの制駆動時に最も応力が集中し易いバットレス領域Rから外れた位置にスピューとなって排出されるため、トレッドゴムやベルトクッションゴムなどの異種ゴムの露出に伴うクラックの発生を抑制することができる。
本発明において、周方向溝5に交差して形成する径方向溝6の本数は、特に限定されるものではないが、好ましくは8本以上、最も好ましくは12〜16本程度設けるようにするとよい。径方向溝6の本数は、タイヤの種類や大きさ、ショルダー部の外郭形状、タイヤの構成材料などに応じてその都度適宜設定するとよい。なお、径方向溝6の本数が周方向に対して8本未満では、残留エアや発生ガスの排出効果が不足するため、金型とタイヤとの間にエアや発生ガスが残存してライト故障が発生し易くなる。
さらに好ましくは、周方向溝5及び径方向溝6の幅及び深さをそれぞれ0.3〜1.5mm、最も好ましくは0.7〜1.2mmに設定するとよい。これにより、残留エアや発生ガスを効率よく排出させることができる。ここで、上述する幅及び深さが0.3mm未満では残留エアや発生ガスの排出効果が低減することになり、1.5mm超では残留エアや発生ガスと共に周囲ゴムが多量に流れ込むことになるため、これら周辺ゴムがバットレス領域Rに裸状態で残存することはないものの、バットレス領域Rにおいてもクラックが発生し易くなる。
径方向溝6の端部に形成するベントホール7の位置は、特に限定されるものではないが、バットレス領域Rから5.0mm程度外れた位置に形成するとよい。すなわち、径方向溝6の少なくとも一方の端末、好ましくは両方の端末をバットレス領域Rから5.0mm程度超えた位置に終端させると共に、その端末に連結させてベントホール7を形成ようにするとよい。これにより、バットレス部におけるクラックを抑制しながら、バットレス部におけるライト故障を効率よく抑制することができる。
なお、上述する図1の実施形態では、本発明のタイヤ成形用金型がセクショナル型である場合を示したが、本発明のタイヤ成形用金型は、上型と下型とからなる2分割型のタイヤ成形用金型であってもよく、タイヤのサイド部であるバットレス部、サイドウォール部及びビード部を成形するサイド成形面を備えた金型であれば、いずれのタイヤ成形用金型に対しても本発明を適用することができる。
本発明の空気入りタイヤは、上述したタイヤ成形用金型により成形される。すなわち、本発明の空気入りタイヤ10は、図3に示すように、正規リム11に装着して正規空気圧を充填した状態において、タイヤ最大幅位置Pからトレッド外周面Qに至る径方向距離をSとしたときのトレッド外周面Qから径方向内側に向けて(0.55〜0.75)×Sの範囲として定義されるバットレス部21におけるバットレス領域Rの外壁に、図4に示すように、周方向に延びて連続する環状の周方向突起15と、周方向に間欠的に間隔を隔てて周方向突起15に交差しかつ少なくとも一方の端部(図では両方の端部)がバットレス領域Rを超えて延びる複数本の径方向突起16とを設けている。
なお、径方向突起16の少なくとも一方の端部(図では両側)には、加硫時に形成されたスピューの切除痕17が残存している。図3において、20はトレッド部、22はサイドウォール部、23はビード部、24はベルト層、25はカーカス層をそれぞれ示している。
このように構成された本発明の空気入りタイヤ10は、タイヤの制駆動時に最も応力が集中し易いバットレス領域Rにスピューの切除痕17が残存しないので、スピューの切除痕17における周辺ゴムの露出に起因するクラックの発生が抑制される。
上述するように、本発明のタイヤ成形用金型は、タイヤのサイド部を形成するサイド成形面のうち、タイヤの制駆動時に最も応力が集中し易い特定範囲からなるバットレス領域に対応するサイド成形面にベントホールを形成せずに、周方向に延びる環状の周方向溝と、この周方向溝に交差して少なくとも一方の端部がバットレス領域を超えて延びる複数本の径方向溝とを設けると共に、これら径方向溝のバットレス領域を超える側の端部に金型外側に貫通するベントホールを形成することにより、これにより成形されたタイヤのバットレス領域におけるスピューの形成を排除して、バットレス部における耐クラック性を向上させるもので、特にバットレス部に残留エアや発生ガスが溜まり易く、かつ負荷荷重の大きい重荷重用タイヤに対して好ましく適用することができる。
タイヤサイズを275/70R22.5、タイヤの基本構造を図3として、バットレス領域Rに対応するサイド成形面の周上8箇所に等間隔にベントホールを設けた従来金型により成形した従来タイヤ(従来例)と、本発明金型によりバットレス部の周上に形成した周方向突起15の幅及び高さと、径方向突起16の本数、幅及び高さとをそれぞれ表1のように異ならせた本発明タイヤ(実施例1〜3)とをそれぞれ12本ずつ作製した。なお、本発明タイヤにおける径方向突起16は、それぞれ両端末がバットレス領域から5.0mm超えて延びるように形成すると共に、その両端末にスピュー痕が残存するように形成した。また、各金型におけるベントホールの直径をそれぞれ1.6mmにした。
これら4種類のタイヤをそれぞれリム組み(リムサイズ:22.5×7.50)すると共に、空気圧900kPaを充填してバスの前後輪に装着し、アスファルト路面からなる一般車道上を15万km走行させた。走行後の各タイヤについて、バットレス部におけるクラックの発生状況を調べ、その結果を表1に併記した。なお、表1にはタイヤの周上に発生したクラックの箇所(個数)を各12本のタイヤにおける平均値により表示した。
Figure 2010012666
表1に示すように、本発明タイヤではクラックの発生が認められず、従来タイヤに比して、バットレス部における耐クラック性が向上していることがわかる。
本発明の実施形態によるタイヤ成形用金型とこれにより成形されるタイヤとの関係を示す断面図である。 図1のタイヤ成形用金型の上型及び下型におけるサイド成形面の一部を破断して示す斜視図である。 本発明のタイヤ成形用金型により成形された空気入りタイヤをリムに装着し、空気圧を充填した状態を示す半断面図である。 図3のタイヤのサイド面を示す一部斜視図である。
符号の説明
1 上型
2 下型
4 サイド成形面
5 周方向溝
6 径方向溝
7 ベントホール
10 空気入りタイヤ
21 バットレス部
22 サイドウォール部
23 ビード部
P タイヤ最大幅位置
Q タイヤ外周面
R バットレス領域

Claims (6)

  1. タイヤのバットレス部、サイドウォール部及びビード部を成形するサイド成形面を備えたタイヤ成形用金型において、
    前記サイド成形面のうち、タイヤ最大幅位置からトレッド外周面に至る径方向距離をSとしたとき、該トレッド外周面から径方向内側に向けて(0.55〜0.75)×Sの範囲として定義されるバットレス領域に対応するサイド成形面に、金型周方向に延びて連続する環状の周方向溝と、周方向に間欠的に間隔を隔てて前記周方向溝に交差しかつ少なくとも一方の端部が前記バットレス領域を超えて延びる複数本の径方向溝とを設けると共に、該径方向溝の前記バットレス領域を超えて延びる側の端部に金型外側に貫通するベントホールを形成したタイヤ成形用金型。
  2. 前記径方向溝を周方向に対して間欠的に8本以上設けた請求項1に記載のタイヤ成形用金型。
  3. 前記周方向溝及び径方向溝の幅及び深さをそれぞれ0.3〜1.5mmにした請求項1又は2に記載のタイヤ成形用金型。
  4. 前記径方向溝の両端部を前記バットレス領域を超えて延びるように形成すると共に、該径方向溝の両端部にそれぞれ前記ベントホールを形成した請求項1〜3のいずれか1項に記載のタイヤ成形用金型。
  5. 請求項1〜4のいずれか1項に記載のタイヤ成形用金型により成形された空気入りタイヤ。
  6. 重荷重用である請求項5に記載の空気入りタイヤ。
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