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JP2009534326A - フェノールの製造方法 - Google Patents

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Abstract

【解決手段】本発明は、
a)クメンを酸化して、クメンヒドロペルオキシドを含有する酸化生成物を形成すること;
b)該酸化生成物を酸性触媒を用いて分解して、フェノール、アセトンおよび不純物を含有する分解生成物を形成すること;
c)該分解生成物を塩基性水性媒体で中和および洗浄して、中和分解生成物を得ること;
d)該中和分解生成物を少なくとも1つの蒸留工程によって、少なくともフェノール含有分画とヒドロキシアセトンを含む水性分画とに分離すること;
e)該水性分画を塩基の存在下で酸化剤で処理して、ヒドロキシアセトンを減少した塩基性水性媒体を得ること;
f)該塩基性水性媒体の少なくとも一部を、中和および洗浄工程c)にリサイクルすること;および
g)工程d)で得られる該フェノール含有分画からフェノールを回収すること
を含む、フェノールの製造方法に関する。
【選択図】なし

Description

本発明は、フェノールの製造方法に関し、特に、クメンヒドロペルオキシドの酸触媒分解で得られる生成物を、蒸留により、少なくともフェノール含有分画およびヒドロキシアセトンを含む水性分画とに分離し、該水性分画を塩基の存在下、酸化剤で処理して、ヒドロキシアセトンが減少した塩基性水性媒体を得る方法に関する。
クメンからフェノールを製造する方法はよく知られている。この方法では、クメンは初めに空気酸素でクメンヒドロペルオキシドに酸化される。この方法工程は、一般に、酸化と呼ばれる。第二の反応工程、いわゆる分解工程で、クメンヒドロペルオキシドは、触媒として例えば硫酸等の強鉱酸を用いて、フェノールとアセトンとに分解される。次に、この第二の反応工程の生成物、いわゆる分解生成物は、蒸留によって分画される。
市販されるフェノールの純度に対する要求は、ますます厳しくなってきている。従って、フェノールの生産プラントを経済的に操業するためには、低投資費用および低変動費、特に低エネルギー費用で、所望の最終産物の全体収率および選択率を向上させ、所望の最終産物、特にフェノールおよびアセトンの損失は最低限で、上述の全反応工程の間に形成される不純物をできるだけ定量的に除去しなければならない。酸化工程中に形成される主な副生物は、ジメチルベンジルアルコールおよびアセトフェノンである。アセトフェノンは、蒸留により、高沸点溶剤と共にこの方法工程から分離される。ジメチルベンジルアルコールはα−メチルスチレンへの分解工程において脱水され、酸触媒での分解工程で部分的に高沸点ダイマーおよびクミルフェノールを形成する。高沸点溶剤は蒸留工程でフェノールから分離される。未反応のα−メチルスチレンは、方法中にリサイクルされるクメンを形成するために分離および水素化される。市場の需要によって、α−メチルスチレンもまた、さらに精製され、価値生産物として販売され得る。従って、従来技術における一つの焦点は、直接的なクメンの損失と考え得るこれらの高沸点溶剤の形成を減じるため、酸化工程および分解工程をいかに操作するかである。例えば、分解については、これらの方法が米国特許US-A-4,358,618号、米国特許US-A-5,254,751号、国際特許WO98/27039号および米国特許US-6,555,719号に記載されている。
しかし、これらの高沸点溶剤に加えて、分解において、例えばヒドロキシアセトン、2−メチルベンゾフランおよびメシチルオキシド等の他の成分が形成される。これらのいわゆる微量不純物は、蒸留でフェノールから分離することは容易ではない。ヒドロキシアセトンは単蒸留ではフェノールから分離することはほとんど不可能であるので、最も重要な成分である。ヒドロキシアセトンは、一般的に、分解工程で得られる生成物の中で最も高濃度の微量不純物でもある。分解生成物中のヒドロキシアセトンの濃度は、200〜3,000wppm(百万分の1重量部)に変化し得る。
従って、従来技術では、分解工程で得られる生成物からヒドロキシアセトンを除去および分離するため、多大な努力がなされている(例えば、米国特許US 6,066,767号、同US 6,630,608号、同US 6,576,798号および同US 6,875,898号を参照のこと)。これら全ての方法の不利点は、分解生成物の高容量の流れを処理しなければならないことである。加えて、米国特許US 6,875,898号では、分解生成物の高容量の流れは酸化剤で処理しなければならないが、酸化剤は方法を安全に操作するために甚大な努力を要しかねない。
蒸留に先立ち、分解生成物は、ナトリウムフェノキシドまたは苛性ソーダ等の塩基性水溶液で中和する。次に、水で飽和した分解生成物を蒸留する。よく知られている方法では、米国特許US 3,405,038号または米国特許US 6,657,087号に記載されている通り、第一の蒸留カラムで分離される水相と共にほとんどのヒドロキシアセトンが分離され、高沸点溶剤を伴う粗フェノールが残油となる。
米国特許US 6,657,087号の教示では、第一の蒸留カラムの側面から取り出す生成物を相分離した後に得られる水相の一部は廃棄され、一方、残部は第一の蒸留カラムに戻される。その結果、水相の廃棄部分は、安全性および環境立法に従った廃水処理に付さなければならない。これにより、この方法のランニングコストは大幅に上昇する。さらに、系から廃棄される水の量の新たな水を再導入しなければならないが、これはさらなる資源の廃棄となる。従って、本発明の目的は、上記で論じた従来技術の不利点を回避し、低投資費用および低変動費で粗フェノール流からのヒドロキシアセトンを効率的に減少させることができる、フェノールの製造方法を提供することである。
この目的は、
a)クメンを酸化して、クメンヒドロペルオキシドを含有する酸化生成物を形成すること;
b)該酸化生成物を酸性触媒を用いて分解して、フェノール、アセトンおよび不純物を含有する分解生成物を形成すること;
c)該分解生成物を塩基性水性媒体で中和および洗浄して、中和分解生成物を得ること;
d)該中和分解生成物を少なくとも1つの蒸留工程によって、少なくともフェノール含有分画とヒドロキシアセトンを含む水性分画とに分離すること;
e)該水性分画を塩基の存在下で酸化剤で処理して、ヒドロキシアセトンを減少した塩基性水性媒体を得ること;
f)該塩基性水性媒体の少なくとも一部を、中和および洗浄工程c)にリサイクルすること;および
g)工程d)で得られる該フェノール含有分画からフェノールを回収すること
を含む、フェノールの製造方法によって達成された。
米国特許US 6,576,798号の開示と比較して、酸化剤で処理しなければならないのは、分解生成物の蒸留分離で得られるヒドロキシアセトンを含む、低容量の水性流のみである。さらに、米国特許US 6,576,798号に示された実験データと比較して、本発明の方法を使用する場合、粗フェノール流中のヒドロキシアセトンの残量は大きく低下する。さらに、米国特許US 6,657,087号の教示と比較して、分解生成物の蒸留で得られる、廃水処理を行わなければならないヒドロキシアセトンを含有しない水性流は、残余のヒドロキシアセトンに関して、粗フェノールの品質を落とすことなく、廃棄される。
本発明によれば、クメンヒドロペルオキシドの酸触媒分解で得られる分解生成物中に存在する、ほとんどのヒドロキシアセトン、好ましくは90%を超えるヒドロキシアセトンは、少なくとも1つの蒸留工程による中和分解生成物の分離によって得られる水性分画と共に除去される。分解生成物から除去されるヒドロキシアセトンを含む水相は、塩基の存在下、酸化剤で処理する。それにより、ヒドロキシアセトンは、例えば対応するカルボキシ官能基性物質の塩等の、中和酸化生成物に変換され、ヒドロキシアセトン含量が低減された塩基性水性媒体を得る。少なくとも該塩基性水性媒体の一部は、分解生成物の中和に使用される。
好ましい態様では、塩基の存在下で酸化剤で処理される水性分画は、分解生成物の中和および洗浄工程へ完全にリサイクルされる。これにより、蒸留によって中和分解生成物を分離する際に得られる、さらなる排水流が全て回避される。
好ましい態様では、中和および洗浄工程c)では、分解生成物と水性媒体との混合物は不均一であり、中和洗浄工程c)の後かつ分離工程d)の前に、不均一な混合物は、ヒドロキシアセトンの中和酸化生成物の少なくとも一部および分解生成物の中和由来のあらゆる付加塩を含有する水相と、分離工程d)に供給される水飽和有機相とに、相分離される。
結果として、ヒドロキシアセトンからの中和酸化生成物を含むあらゆる塩物質は、分解生成物の中和の後、系から単排水流中に排出される。
好ましい態様では、酸化処理に先立ち、中和分解生成物の処理より得られる水性分画に、塩基を添加する。好ましくはpHを8より大きく、好ましくは10〜12に調節する量の塩基を添加する。本発明では、あらゆる水溶性塩基を使用し得るが、塩基がNaOH水溶液およびフェノキシド水溶液から選択される場合が好ましい。特に好ましくは、ナトリウムフェノキシド水溶液を使用し、ナトリウムフェノキシド溶液のナトリウムフェノキシドの濃度は、好ましくは5〜50、より好ましくは30〜45、最も好ましくは40〜45重量%である。このようなナトリウムフェノキシド溶液は、一般的には、1つまたは複数のその後の処理工程の結果として、標準的なフェノールプラント中のプロセス流として得られる。いずれにせよフェノールプラントにおいて得られるプロセス流を使用することは、新たな水も新たな苛性剤も、本発明の方法工程中に導入する必要がないという利点を有する。さらに、それによってフェノールプラントの処理工程におけるナトリウムフェノキシドとしてのフェノールの損失は、プロセス中にリサイクルされ、その結果、有益な物質の損失が最小限に抑えられる。
本発明の方法に使用される酸化剤は、ヒドロペルオキシドを酸化生成物に変換することができるあらゆる好適な酸化剤であり得る。好ましくは、酸化剤は、過酸化水素、酸素、空気または、酸素と窒素のあらゆる混合物から選択されるが、空気が最も好ましい。例えば空気等の、酸素含有気体は、系を充分な高圧下に保持することにより、上記で説明したとおり、分離工程d)で得られる水性分画中に溶解してもよく、または、酸素含有気体を気液反応器中の液体中に分散させる。水相を気体酸化剤と反応させる両方法は、従来技術においてよく知られている。
該水性分画を酸化剤で処理する温度は、20〜150℃、好ましくは80〜120℃、より好ましくは90〜110℃の間で変化し得る。好ましくは、分離工程で得られる水相中に存在するヒドキシアセトンの少なくとも90%を、ヒドロキシアセトンの中和酸化生成物に変換するために、処理工程における温度および滞留時間を調節する。
本発明の分離工程d)で得られる水相は、残余量のアセトンおよびフェノールを含有し得るが、驚くべきことに、これらの成分は、好ましくない副生物を生じるヒドロキシアセトンの酸化の間、反応しないことが発見された。水相がフェノールプロセス中にリサイクルされるため、酸化工程にもかかわらず、アセトンやフェノールのような有益な生成物の好ましくない損失はすべて回避される。本発明の好ましい態様では、アセトン含量は0.1重量%未満であり、好ましくはwppmの範囲である。これは、分離工程d)における分離効率が充分高いこと、または、アセトン除去器における酸化の前に水相を処理することによって達成し得る。あらゆる気相は非爆発性であるので、このような低アセトン含量では、水相はいずれの種類の酸化剤と接触しても問題は生じない。このことは、米国特許US 6,576,798号およびヴァシレヴァ(Vasileva)l.lら、2000年、Neftepereab. Neftekhim. モスクワ、Russ. Fed., 12巻:34-38頁に記載された方法と比較して、最も重要な利点の一つである。
本発明のもう一つの重要な利点は、米国特許US 6,066,767号、同US 6,630,608号、同US 6,576,798号および同US6875,898号に記載された方法と比較して、相対的に小容量の水相流のみを処理すればよいことであり、従って、処理工程e)に必要な反応器容量を小さくしておけるので、投資費用が小さくなる。
典型的には、分解生成物中のヒドロキシアセトン含量に依存して、本発明の分離工程d)で得られる粗フェノールは、50〜400wppmのヒドロキシアセトンを含有する。分離工程d)で得られる粗フェノール流をさらに処理して、ヒドロキシアセトンおよび他の不純物の含量をさらに低下させることが好ましい。
従って、本発明の好ましい態様では、メチルベンゾフランおよびヒドロキシアセトンを含む粗フェノール流は、酸性イオン交換樹脂を含有する反応器を直列に接続した少なくとも2つの反応器に粗フェノール流を通過させることによる連続法で処理され、それにより、連続した反応器内の温度はフェノール流の流れ方向に低下し、フェノール流の流れ方向における第一の反応器内の温度は100℃〜200℃であり、フェノール流の流れ方向における最後の反応器内の温度は50℃〜90℃であり、いずれの2つの連続する反応器の間にも熱分離工程はない。
本発明者らは、直列の酸性イオン交換樹脂を含有する複数の反応器を用い、重要なことには上記で規定した通り一連の反応器を通じて温度プロファイルを調節することによって、酸性イオン交換樹脂と接触させる前にヒドロキシアセトンを最初に除去することなく、かつ、酸性イオン交換樹脂を含む2つの反応器の間にエネルギーを消費する蒸留工程がなく、粗フェノール流を精製して、ヒドロキシアセトンおよびメチルベンゾフランの含量を低くし得ることを認識した。さらに驚くべきことに、少なくとも2つの反応器を使用しなければならないが、この好ましい態様では、方法全体の重量毎時空間速度は、米国特許2005/0137429号に記載された1工程の方法よりかなり高く、本発明で必要な全反応器容量は、米国特許US 2005/0137429号に開示された通りの1工程の方法よりはるかに低い。
粗フェノール流の処理方法は、本発明の方法に容易に組み入れ得る。
本発明の好ましい態様の処理工程によって効率的に精製し得る粗フェノールは、不純物として、主としてヒドロキシアセトンおよびメチルベンゾフランを含有する。ヒドロキシアセトンの濃度は1,000wppm以下であり得、メチルベンゾフランの濃度は200ppm以下であり得る。本発明の一つの利点は、ヒドロキシアセトンの濃度が260wppmを超えていても、ヒドロキシアセトンおよびメチルベンゾフランが効率的に除去され得ることである。従って、1,000wppm以下、好ましくは260wppmより多く1,000wppm以下のヒドロキシアセトン、および、200wppm以下、好ましくは50〜200wppmのメチルベンゾフランを含む、粗フェノール流の精製に成功し得る。
ヒドロキシアセトンおよびメチルベンゾフランに加え、さらなる不純物が存在し得る:
1000wppm以下のメシチルオキシド、
500wppm以下の2−フェニルプロピオンアルデヒド、
500wppm以下のメチルイソブチルケトン、
500wppm以下のアセトフェノン、
500wppm以下の3−メチルシクロヘキサノン、
2000wppm以下のα−メチルスチレン、
1000wppm以下のフェニルブテン。
これらの濃度範囲は、イオン交換樹脂での精製に先立つ蒸留によって、アセトン、クメンおよびα−メチルスチレン、水および高沸点溶剤を分離した粗フェノール中の、これらの成分の関連する濃度の範囲に及ぶ。
粗フェノール流が酸性イオン交換樹脂と接触する際に、ヒドロキシアセトンおよびメチルベンゾフランは反応して高沸点溶剤となる。メシチルオキシドはフェノールと反応して、高沸点溶剤および水となる。ヒドロキシアセトンとフェノールとの反応によっても形成される水の存在下、メシチルオキシドの一部は、酸性イオン交換樹脂上でアセトンに分解し得る。アセトンはフェノールとさらに反応して、ビスフェノールAとなり得る。ヒドロキシアセトンおよびメシチルオキシドの他に、フェニルプロピオンアルデヒド、メチルイソブチルケトン、アセトフェノンおよび3−メチルシクロヘキサノンのような他のカルボニル成分が、なおフェノール中に少量存在し得る。加えて、フェノールは、精製フェノール中には望ましくない成分であるα−メチルスチレンおよびフェノールブテンのような、極微量の不飽和炭化水素を有し得る。カルボニル含有成分のように、不飽和炭化水素は、酸性イオン交換樹脂と接触した際に、フェノールと共に高沸点溶剤を形成する。純粋ではないフェノール中にこれらの他の不純物が存在していたとしても、ヒドロキシアセトンおよびメチルベンゾフランの転化は悪影響を受けないことが発見された。さらに、ヒドロキシアセトンおよびメチルベンゾフランの転化が完了する時には必ず、これらのさらなる不純物成分の高沸点溶剤への転化が完了する。結果として、本発明の方法は、粗フェノール中の全ての望ましくない不純物を高沸点溶剤に転化することが可能であり、この高沸点溶剤は、本発明の方法によって粗フェノールを酸性イオン交換樹脂と接触させた後、最終蒸留工程において、精製フェノールから容易に除去し得る。
粗フェノールを酸性イオン交換樹脂と接触させた後、ヒドロキシアセトンの最終濃度は1wppm未満となり得、メチルベンゾフランの濃度は20wppm未満、好ましくは10wpppm未満となり得る。上述の通り、他の全ての不純物は、定量的に高沸点溶剤に転化する。従って、本発明の方法は、高純度のフェノールの製造に適している。直列に接続した酸性イオン交換樹脂を含有する反応器の数、従って、本発明による異なる温度レベルの数は特に制限されないが、投資費用および変動費に関して経済的に考慮すると、直列に接続した2〜4の反応器数が好ましく、直列に接続した2つの反応器が最も好ましい。従って、この最も好ましい態様では、方法は、2つの区別された温度レベルで実施される。
さらに、本発明者らは、市販のイオン交換樹脂の失活は利用度と非常によく相関することを発見した。利用度は、ある期間、イオン交換樹脂と接触した処理フェノールの総量と規定される。連続栓流反応器については、利用度は、反応器の断面積当りの処理フェノールの総量である。
高利用度の後は、触媒活性は新しい触媒の数%でしかない。驚くべきことに、一定の重量毎時空間速度(WHSV)での失活を補うために必要な温度は、利用度に比例して高くなる。実施上の配慮から、市販のイオン交換樹脂のあらゆる熱分解を避けるため、最高温度は200℃である。
他方では、メチルベンゾフランおよび相当量のヒドロキシアセトン、例えば200wppm以下のメチルベンゾフランおよび1000wppm以下のヒドロキシアセトンを含むフェノール流については、メチルベンゾフランの残量を20wppm未満とするために、最終の反応器内の温度が90℃未満であることが必要であり、好ましくはメチルベンゾフランの残量を10wppm未満とするために、70℃未満であることが必要である。実施上の配慮から、新しい触媒を用いたとしても、反応器容量があまりに大きくなるのを避けるため、温度は50℃未満であるべきではない。
粗フェノールを酸性イオン交換樹脂と接触させる複数の明確な温度レベルを有する一つの利点は、使用済みまたはある程度使用した酸性イオン交換樹脂が、例えばヒドロキシアセトンの転化に好都合であるが、メチルベンゾフランの転化には好都合ではない、相対的に高い温度で接触し得ることであり、その結果、使用済みまたはある程度使用した触媒を用いても、高温であるため、既に使用済みの触媒が高活性を維持し得る。他方で、低温レベルでは、新しい触媒またはある程度使用した触媒は、メチルベンゾフランの転化に好都合な低温で使用し得、また、触媒がなお相対的に新しいことから、低温でも高触媒活性が得られる。結果として、酸性イオン交換樹脂との接触の選択性が最も有利にバランスし、同時に触媒の最適活性が確保され、従って、重量毎時空間速度が比較的高くなり、特定のフェノール流の処理に要する触媒容量が少なくなる。
ヒドロキシアセトンおよびメチルベンゾフランに関する触媒選択性の最適化と、特許請求した温度プロファイルの使用による触媒の不活化の程度に依存する触媒活性の最適化との、この相乗効果は知られておらず、また先行技術から導き出すこともできなかった。
本発明の好ましい態様のさらなる利点は、連続法においていくつかの反応器を、少なくとも1つの予備の反応器を含み、直列に接続した場合、完全に使用済みの触媒を方法ラインから容易に除去し得ることである。最高の温度レベルであり、従って上流末端にある、ほとんど使用済みの触媒を含む反応器は、ラインから分離し得、新しい触媒を含む反応器が、最低の温度レベル、従ってラインの下流末端に入れられる。ラインから分離された反応器は、新しい触媒の初期活性を維持するために、使用済みの触媒を新しい触媒と置き換えるか、別の方法工程において再生する。次に、この再活性化された反応器は、最高の温度レベルの反応器であって、その触媒が望ましくないレベルに不活化された反応器をラインから外し次第、最低の温度レベルに入れ得る。このことから、精製効率がその期間にほぼ一定であり、その結果ほぼ一定の規格の製品を得る連続法が可能になるが、このことは大量生産品のフェノールについては非常に重要である。
同一の大きさの反応器を使用することは好ましい。従って、ラインのそれぞれの位置で、あるフェノール流のWHSVは同一であり、ライン中の反応器の位置の変化に伴って、変化しない。異なる活性のイオン交換樹脂を含む反応器に必要な温度は容易に決定し得る。
さらに、並列に接続した複数の反応器を、各温度レベルで使用し得る。従って、処理方法を変化する処理量に適合させることは非常に容易である。重ねて、同一の大きさの反応器および各温度レベルで同数の反応器を使用することは好ましい。
加えて、エネルギー消費を最低限にするため、反応器を通過するフェノール流の熱統合を用いることが可能である。例えば、フェノール流は、第一の反応器と続く第二の反応器との間の熱交換器であって、熱交換器の冷却剤として、第一の反応器の下流に位置する反応器からのより低温のフェノール流出物を使用した熱交換器を通過し得る。この態様では、2つの連続した反応器の間でフェノール流を冷却することが可能で、同時に、フェノール流が熱交換器の冷却剤として使用される場合、最も低い温度レベルの最後の反応器を出るフェノール流は加熱され、高沸点溶剤を除去するその後の蒸留工程でのエネルギー消費が減少する。
さらに、2つの連続する反応器の間に、冷却水等の慣用の冷却剤を用いた追加の熱交換器を使用して、フェノール流の温度を所望のレベルに調整し得る。
本発明の一つの態様では、反応器として細長い容器を使用し、その容器を好ましくは垂直配向に配置し、フェノール流が反応器の頂部から底部へと流れる。しかし、垂直型の容器において上向きの流れを用いること、または、水平型の容器を用いることも可能である。
本発明の好ましい態様では、反応器は固定床において酸性イオン交換樹脂を含有する。好ましくは、イオン交換樹脂の固定床における見かけの液体速度は0.5〜5mm/秒、好ましくは1.0〜3.0mm/秒、より好ましくは1.5〜2mm/秒である。
本発明では、触媒として、あらゆる酸性イオン交換樹脂を使用し得る。本書では、「酸性イオン交換樹脂」という用語は、水素形態でのカチオン交換樹脂であって、水素イオンは活性部位に結合し、溶液中での解離または他の陽イオンとの置換によって除去し得るものを言う。樹脂の活性部位は、異なるイオンに対して異なる強さの引力を有し、この選択的引力はイオン交換のための手段となる。好適な酸性イオン交換樹脂の非制限的例としては、例えばローム・アンド・ハース(Rohm & Haas)より販売されているアンバーリスト(Amberlyst)16、ランクセス(Lanxess)より販売されているK2431、プロライト(Purolite)より販売されているCT-151等の、スルホン化ジビニルベンゼン架橋スチレンコポリマーの系列が挙げられる。
他の好適な樹脂は、ランクセス(Lanxess)、ローム・アンド・ハース(Rohm and Haas)ケミカルカンパニーおよびダウ(Dow)ケミカルカンパニー等の製造業者より商業的に入手し得る。
本発明の好ましい態様では、フェノール流の流れ方向における第一の反応器内の温度は少なくとも100℃であり、フェノール流の流れ方向における最後の反応器内の温度は90℃未満、好ましくは70℃未満である。
フェノール流の流れ方向における第一の反応器内の温度は、最高で200℃、好ましくは最高で150℃、最も好ましくは最高で120℃である。フェノールの流れ方向における最後の反応器内の温度は、少なくとも50℃である。
ここで本発明を、具体例および実施例を参照してさらに説明する。
図1に示した具体例によれば、クメンヒドロペルオキシドの酸触媒分解で得られる分解生成物は、ライン1を通って沈降ドラム4に供給される。分解生成物は、沈降ドラムに入る前に、ヒドロキシアセトンの酸化生成物由来の塩と、過剰の塩基、好ましくはナトリウムフェノキシドとを含有する水相と混合し、ライン2を通って系に供給される。必要であれば、pHを典型的には4〜8の範囲に調整するために、ライン3を通って硫酸を添加してもよい。得られる混合物は不均一であり、沈降ドラム4中において、ヒドロキシアセトンの酸化生成物由来の塩、硫酸ナトリウム、ギ酸ナトリウムおよび他の有機酸の塩を含有する水相5と、水で飽和した有機相とに分離される。上述の塩に加えて少量のヒドロキシアセトンを含む水相は、さらなる処理のためライン5を通って回収される。水で飽和した有機相は、ライン6を通って蒸留カラム7に供給される。蒸留カラム7では、有機相が、ライン9を通って蒸留カラム7の底部から除去される粗フェノール分画、ライン8を通ってカラム7の頭部から除去される粗アセトン分画、および蒸留カラムの側部取出し口から除去される、水、クメン、α−メチルスチレンおよび、ヒドロキシアセトンの大部分を含む分画に分離される。該水相は、ライン10を通って沈降ドラム11に供給され、分画は、ヒドロキシアセトンを含む水相と、クメンおよびα−メチルスチレンを含む有機相とに分離される。有機相は、ライン12を通って、次の処理工程に供給される。水相は、ヒドロキシアセトンに加えて、少量、好ましくは0.1重量%未満のアセトン、いくらかのフェノール、およびギ酸または酢酸等のいくつかの有機酸を含み、pHを8より高く、好ましくは10〜12に上げるため、ライン14を通って導入される塩基と混合される。好ましい態様では、上述した濃度範囲内のナトリウムフェノキシド水溶液を用いる。好ましくは、蒸留カラム7より得られる水相とナトリウムフェノキシド水溶液との混合比は、1:0.05〜1:1、好ましくは1:0.1〜1:0.3の範囲である。これにより、水相およびナトリウムフェノキシド溶液の均一な混合物が得られ、反応器15に供給される。酸化剤、好ましくは空気を、ライン16を通って反応器に導入し、少なくとも90%のヒドロキシアセトンを対応する中和酸化生成物に転化するため、反応器内の温度および滞留時間を調節する。蒸留工程で得られる水相中のヒドロキシアセトン含量は、典型的には0.5〜2重量%である。次に、ヒドロキシアセトンの酸化生成物由来の塩、過剰量のナトリウムフェノキシドおよび残量のヒドロキシアセトンを含有する反応器15からの流出物は、上述した通り、分解生成物の中和に用いられる。
図1を参照して説明した方法に代わり、側部取出し口が全くない第一のカラムを操作して、アセトン、クメン、α−メチルスチレン、水および、ヒドロキシアセトンの大部分を含むカラム頭部よりの生成物を得ることも可能である。次に、この頭部よりの生成物は、米国特許US 5,510,543号に示される通りの、続く純アセトンカラムにおいて分離し、クメン、水およびヒドロキシアセトンを含む底部生成物を得ることが可能である。次に、この底部生成物は、図1を参照して上述した通り、沈降ドラムで分離し、処理し得る。
比較例:
分解生成物は、他の有機成分に加えて、フェノール42重量%、アセトン26重量%、クメン25重量%、α−メチルスチレン3.1重量%、溶解した硫酸200wppmおよびヒドロキシアセトン1500wppmを含有する。全ての濃度は、有機成分(無水)の全量に関する。加えて、溶解した水1重量%が存在する。分解生成物の総量に関して、10重量%の追加の新しい水を分解生成物に添加して分解生成物を水で飽和し、塩を含有する水相を形成しなければならない。充分量の硫酸ナトリウムを添加して中和することにより塩が形成されて、水相中のpHは約6に調整される。第一の蒸留カラムにおいて、側流としてヒドロキシアセトン90%を含有する水を抜くが、この水のヒドロキシアセトン濃度は約1.23重量%である。底部生成物である粗フェノールは340wppmのヒドロキシアセトンを含有する。方法工程から水を抜き、他の成分の生物学的処理につながるさらなる処理に送る。
実施例:
比較例の分解生成物を、ヒドロキシアセトンの酸化反応器からの水と混合する。この水は0.1重量%の残留ヒドロキシアセトンとナトリウムフェノキシドを含有する。分解生成物中のヒドロキシアセトンの濃度は約1590wppmとなる。硫酸を添加して、pHを約6に調整する。第一の蒸留カラムにおいて、側流としてヒドロキシアセトン90%を含有する水を抜くが、この水のヒドロキシアセトン濃度は1.30重量%である。底部生成物である粗フェノールは、360wppmのヒドロキシアセトンを含有する。前記の水を、40重量%のナトリウムフェノキシド水溶液と重量比1:0.1で混合し、純酸素と95℃で接触させる。ヒドロキシアセトンの転化率は92%であり、ヒドロキシアセトンの残留濃度は0.1重量%となる。この水は、分解生成物の中和に完全にリサイクルされる。
比較例と本発明の実施例との比較から、ヒドロキシアセトン濃度に関して粗フェノール流の品質を落とさずに、さらなる廃水流が回避されることが明らかである。
図1は、本発明の具体例を示す。

Claims (25)

  1. a)クメンを酸化して、クメンヒドロペルオキシドを含有する酸化生成物を形成すること;
    b)該酸化生成物を酸性触媒を用いて分解して、フェノール、アセトンおよび不純物を含有する分解生成物を形成すること;
    c)該分解生成物を塩基性水性媒体で中和および洗浄して、中和分解生成物を得ること;
    d)該中和分解生成物を少なくとも1つの蒸留工程によって、少なくともフェノール含有分画とヒドロキシアセトンを含む水性分画とに分離すること;
    e)該水性分画を塩基の存在下で酸化剤で処理して、ヒドロキシアセトンが減少した塩基性水性媒体を得ること;
    f)該塩基性水性媒体の少なくとも一部を、中和および洗浄工程c)にリサイクルすること;および
    g)工程d)で得られる該フェノール含有分画からフェノールを回収すること
    を含む、フェノールの製造方法。
  2. 請求項1の方法であって、工程e)において、酸化処理に先立ち、該塩基を水性分画に加える、方法。
  3. 請求項2の方法であって、pHが8を超えるように、好ましくは10〜12となるように調整する量の塩基を加える、方法。
  4. 前項のいずれかの方法であって、工程e)において、該塩基がナトリウムフェノキシド水溶液である、方法。
  5. 請求項4の方法であって、ナトリウムフェノキシド水溶液中のナトリウムフェノキシドの濃度が、5〜50、好ましくは30〜45、より好ましくは40〜45重量%である、方法。
  6. 請求項1の方法であって、処理工程e)において、ヒドロキシアセトンが中和酸化生成物に転化される、方法。
  7. 請求項6の方法であって、少なくとも90%のヒドロキシアセトンが中和酸化生成物に転化される、方法。
  8. 前項のいずれかの方法であって、該水性分画のアセトン含量が0.1重量%未満である、方法。
  9. 前項のいずれかの方法であって、処理工程e)における温度が20〜150℃、好ましくは80〜120℃、より好ましくは90〜110℃である、方法。
  10. 前項のいずれかの方法であって、中和および洗浄工程c)において、分解生成物と水性媒体との混合物が不均一であり、中和および洗浄工程c)の後かつ分離工程d)の前に、不均一混合物を、ヒドロキシアセトンの中和酸化生成物の少なくとも一部を含有する水相と、分離工程d)に供給される水飽和有機相とに相分離する、方法。
  11. 前項のいずれかの方法であって、分離工程d)で得られる該水性分画が、分離工程d)に供給される中和分解生成物中に存在するヒドロキシアセトンの90%を含む、方法。
  12. 前項のいずれかの方法であって、分離工程d)より得られる粗フェノールがメチルベンゾフランおよびヒドロキシアセトンを含み、粗フェノール流を、直列に接続した酸性イオン交換樹脂を含有する少なくとも2つの反応器を通すことによって処理し、それにより連続した反応器内の温度はフェノール流の流れ方向に低下し、いずれの2つの連続する反応器の間にも熱分離工程を用いず、フェノール流の流れ方向における第一の反応器内の温度が100℃〜200℃であり、フェノール流の流れ方向における最後の反応器内の温度が50℃〜90℃である、方法。
  13. 請求項12の方法であって、直列に接続した2〜4つの反応器を使用する、方法。
  14. 請求項13の方法であって、反応器の数が2である、方法。
  15. 請求項12〜14のいずれかの方法であって、それぞれの温度レベルで、複数の反応器を並列に接続する、方法。
  16. 請求項12〜15のいずれかの方法であって、フェノール流の流れ方向における第一の反応器内の温度が100℃〜150℃、好ましくは100℃〜120℃である、方法。
  17. 請求項12〜16のいずれかの方法であって、フェノール流の流れ方向における最後の反応器内の温度が50℃〜70℃である、方法。
  18. 請求項12〜17のいずれかの方法であって、粗フェノール流における、ヒドロキシアセトンの初濃度が0より多く1000wppm以下、好ましくは260wppmより多く1000wppm以下である、方法。
  19. 請求項12〜18のいずれかの方法であって、粗フェノール流における、メチルベンゾフランの初濃度が0より多く200wppm以下、好ましくは50wppm〜200wppmである、方法。
  20. 請求項12〜19のいずれかの方法であって、粗フェノール流が、1000wppm未満のメシチルオキシド、500wppm未満の2−フェニルプロピオンアルデヒド、500wppm未満のメチルイソブチルケトン、500wppm未満のアセトフェノン、500wppm未満の3−メチルシクロヘキサノン、2000wppm未満のα−メチルスチレンおよび1000wppm未満のフェニルブテンをさらに含む、方法。
  21. 請求項12〜20のいずれかの方法であって、反応器が固定床配置において酸性イオン交換樹脂を含有する、方法。
  22. 請求項21の方法であって、イオン交換樹脂の固定床における見かけの液体速度が0.5〜5mm/秒、好ましくは1.0〜3.0mm/秒、より好ましくは1.5〜2mm/秒である、方法。
  23. 請求項12〜22のいずれかの方法であって、反応器が垂直配向に細長い容器である、方法。
  24. 請求項23の方法であって、フェノール流が容器の頂部から底部へと流れる、方法。
  25. 請求項12〜24のいずれかの方法であって、フェノール流が、第一の反応器と続く第二の反応器との間の熱交換器であって、熱交換器の冷却剤として、第一の反応器の下流に位置する反応器からのより低温のフェノール流出物を使用した熱交換器を通過する、方法。
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