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JP2009249877A - 折板用断熱マット及びその製造方法並びにそれを用いた断熱折板 - Google Patents

折板用断熱マット及びその製造方法並びにそれを用いた断熱折板 Download PDF

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JP2009249877A JP2008097575A JP2008097575A JP2009249877A JP 2009249877 A JP2009249877 A JP 2009249877A JP 2008097575 A JP2008097575 A JP 2008097575A JP 2008097575 A JP2008097575 A JP 2008097575A JP 2009249877 A JP2009249877 A JP 2009249877A
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Abstract

【課題】優れたロールフォーミング性、断熱性及び制振性等を有する折板用断熱マット及びその製造方法並びにこの折板用断熱マットを備える断熱折板を提供する。
【解決手段】本発明の折板用断熱マット103は、無機繊維11(ガラス繊維等)と、一部の無機繊維を結着している結着部211とを有し、且つ補強用樹脂繊維22を含有する有機繊維混紡無機繊維フェルト1と、このフェルト1の一面に接合された樹脂繊維製不織布3と、他面に接合された樹脂発泡シート4と、を備え、結着部211は0.5〜5質量%であり、補強用樹脂繊維は5質量%以下である。また、本発明の断熱折板は、金属製折板と、この金属製折板に樹脂繊維製不織布3側、又は有機繊維混紡無機繊維フェルト1の他面側が接合された本発明の折板用断熱マットと、を備える。
【選択図】図6

Description

本発明は、折板用断熱マット及びその製造方法並びにそれを用いた断熱折板に関する。更に詳しくは、本発明は、建築等の技術分野、特に、断熱折板の裏打ち材として用いられ、発泡樹脂シートを備えるため、優れた断熱性及び制振性等を有し、且つ無機繊維間等が結着用熱可塑性樹脂により結着されているため、フェルトの平面方向への所定の伸びを維持しつつ、内部の剥離強度及び引張強度等を向上させることができ、過酷な成形であるロールフォーミングに十分に耐え、傷付き、破損等が抑えられる折板用断熱マット及びその製造方法に関する。また、ロールフォーミング等の加工時、並びに屋根施工時等において、無機繊維砕粉の飛散が抑えられる折板用断熱マット及びその製造方法に関する。更に、この折板用断熱マットにより裏打ちされ、折板用断熱マットが十分な断熱性及び制振性等を有するため、結露及び降雨時の雨音等が抑えられ、且つ火災の際の金属製折板の歪みが抑制され、十分な強度が維持される断熱折板屋根として有用な断熱折板に関する。
従来、金属屋根の断熱性、制振性等の向上を目的として、断熱マットが裏打ち材として用いられている。近年、この断熱マットには、より高い難燃性が要求され、例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂等のオレフィン系合成樹脂に、多量の水酸化アルミニウム及び水酸化マグネシウム等の水和金属酸化物、並びに有機ハロゲン化物等の難燃剤を配合し、発泡させてなる合成樹脂発泡体からなる有機系断熱マットが知られている(例えば、特許文献1参照。)。また、ガラス繊維等からなる無機繊維マットの片面又は両面にスパンボンド等の不織布を積層し、これらをニードルパンチにより一体化し、その後、不織布の側に合成樹脂エマルジョンを塗付し、乾燥させてなる断熱マットが知られている(例えば、特許文献2参照。)。
特開昭56−116727号公報 特開昭57−7889号公報
しかし、特許文献1に記載の合成樹脂発泡体の場合、高難燃にするため、多量の難燃剤が配合されており、発泡体の強度低下及び脆化等が避けられない。従って、この合成樹脂発泡体を接合した金属板を折板屋根形状にロールフォーミングするとき、発泡体が傷付いたり、破損したりすることがある。また、破損に至らないまでも、ロールフォーミング時に折り曲げた角部及び端部では、発泡体が極度にへたってしまうことが多い。また、どれほど多量の難燃剤を配合したとしても、火災の際には合成樹脂発泡体の燃焼、及びそれにともなう昇温による金属製折板の歪み等は避けられない。
更に、特許文献2に記載の無機繊維を用いた断熱マットの場合、不織布の側に合成樹脂エマルジョンを塗布しても、樹脂による無機繊維間の接合は表面部のみであり、内部はニードルパンチによる繊維間の絡合のみであって、内部の剥離強度及び引張強度等は十分であるとはいえない。また、無機繊維砕粉の飛散を抑えるためには、無機繊維マットに合成樹脂エマルジョンを十分に塗布する必要があるが、エマルジョンを塗布しすぎると、多量の合成樹脂が含有されることになり、その結果、ロールフォーミングに必要な伸びが失われることがあり、難燃性も低下する。従って、ロールフォーミング時に大きな剪断力が負荷される部分及び折り曲げ部分では、断熱マットが破断したり、繊維がほぐれて盛り上がったりすることがある。特に、折り曲げ形状が深く、成形が過酷になる一山型のハゼ折板のような場合は、上記のような不具合が発生し易い。
本発明は、上記の従来の問題を解決するものであり、発泡樹脂シートが接合されているため、優れた断熱性及び制振性等を有し、且つ無機繊維等の一部が結着用熱可塑性樹脂により結着された有機繊維混紡無機繊維フェルトを基体とするため、フェルトの平面方向への所定の伸びを維持しつつ、基体内部の剥離強度及び引張強度等を大幅に向上させることができ、過酷な成形であるロールフォーミングに十分に耐えられる折板用断熱マット及びその製造方法を提供することを目的とする。また、ロールフォーミング時、ロールによりしごかれて発生するガラス繊維等の無機繊維の砕粉が、折板屋根への取り付け等の作業時に飛散すること、及び砕粉が人の皮膚を刺激すること等、を低減させることができる折板用断熱マット及びその製造方法を提供することを目的とする。更に、この折板用断熱マットにより裏打ちされ、折板用断熱マットが十分な断熱性及び制振性等を有するため、結露及び降雨時の雨音等が抑えられ、且つ火災の際の金属製折板の歪みが抑制され、十分な強度が維持される断熱折板を提供することを目的とする。
ガラス繊維等の無機繊維は優れた耐熱性及び断熱性を有するものの、砕粉の飛散という問題があり、発泡樹脂シートを併用することで、この問題が解決され、且つ十分な断熱性等が維持されることを見出した。また、綿状に堆積された無機繊維にニードルパンチを施すことにより、ニードルが差し込まれた部分では繊維間が絡合され、綿状の堆積物が圧縮されてフェルトが形成される。しかし、絡合は単なる繊維間の絡まりであって、ほぐれ易く、繊維間をそれほど強く拘束するものではない。この場合、ニードル数を多くしてパンチングの密度を高める、及びニードルの形状を工夫する等により、フェルトの強度を向上させることができることもあるが、ニードル数を多くするとガラス砕粉の発生の増加につながり、また、ニードルが折損する確率が高まり、折れた針片がマットに混入し、ロールフォーミング時にロールを傷付けることがある。このように、ニードルパンチの条件によるマット内部の強度向上には限界がある。そこで、ニードルによる繊維間の絡合と併せて、樹脂により繊維間を結着することにより、マットの強度を大きく向上させることができ、且つガラス砕粉の発生も抑えることもできることを見出した。
本発明は、このような知見に基づいてなされたものである。
本発明は以下のとおりである。
1.無機繊維と、該無機繊維のうちの一部の無機繊維を結着している結着用熱可塑性樹脂からなる結着部とを有する有機繊維混紡無機繊維フェルト、該有機繊維混紡無機繊維フェルトの一面に接合された樹脂繊維製不織布、及び該有機繊維混紡無機繊維フェルトの他面、又は該樹脂繊維製不織布の表面に接合された樹脂発泡シートを備え、該無機繊維と該結着部との合計を100質量%とした場合に、該結着部は0.5〜5質量%であることを特徴とする折板用断熱マット。
2.上記無機繊維がガラス繊維である上記1.に記載の折板用断熱マット。
3.上記樹脂発泡シートがポリオレフィン樹脂発泡シートである上記1.又は2.に記載の折板用断熱マット。
4.上記有機繊維混紡無機繊維フェルトは、上記結着用熱可塑性樹脂より融点の高い補強用熱可塑性樹脂からなる補強用樹脂繊維を含有し、上記無機繊維、上記結着部及び該補強用樹脂繊維の合計を100質量%とした場合に、該補強用樹脂繊維は5質量%以下である上記1.乃至3.のうちのいずれか1項に記載の折板用断熱マット。
5.上記1.乃至3.のうちのいずれか1項に記載の折板用断熱マットの製造方法であって、無機繊維と結着用樹脂繊維とを混合し、機材上に堆積させて混紡繊維綿状体を作製し、その後、該混紡繊維綿状体上に上記第1樹脂繊維製不織布となる不織布を積層し、又は無機繊維と結着用樹脂繊維とを混合し、該第1樹脂繊維製不織布となる不織布上に堆積させて混紡繊維綿状体を作製し、次いで、該不織布側からニードルパンチを施してフェルトを形成するとともに、該フェルトと該不織布とを接合させ、その後、加熱し、該結着用樹脂繊維を溶融させて該無機繊維を融着させ、その後、冷却し、該無機繊維のうちの一部の無機繊維を、該結着用樹脂繊維を構成する上記結着用熱可塑性樹脂により結着させ、上記有機繊維混紡無機繊維フェルトを形成し、次いで、該有機繊維混紡無機繊維フェルトの上記他面、又は該樹脂繊維製不織布の上記表面に樹脂発泡シートを接合することを特徴とする折板用断熱マットの製造方法。
6.上記4.に記載の折板用断熱マットの製造方法であって、無機繊維、結着用樹脂繊維及び該結着用樹脂繊維より高温で溶融する補強用樹脂繊維を混合し、機材上に堆積させて混紡繊維綿状体を作製し、その後、該混紡繊維綿状体上に上記第1樹脂繊維製不織布となる不織布を積層し、又は無機繊維、結着用樹脂繊維及び該結着用樹脂繊維より高温で溶融する補強用樹脂繊維を混合し、該第1樹脂繊維製不織布となる不織布上に堆積させて混紡繊維綿状体を作製し、次いで、該不織布側からニードルパンチを施してフェルトを形成するとともに、該フェルトと該不織布とを接合させ、その後、該結着用樹脂繊維は溶融し、且つ該補強用樹脂繊維は溶融しない温度で加熱し、該結着用樹脂繊維を溶融させて該無機繊維及び該補強用樹脂繊維を融着させ、その後、冷却し、該無機繊維のうちの一部の無機繊維及び該補強用樹脂繊維のうちの一部の補強用樹脂繊維を、該結着用樹脂繊維を構成する上記結着用熱可塑性樹脂により結着させ、上記有機繊維混紡無機繊維フェルトを形成し、次いで、該有機繊維混紡無機繊維フェルトの上記他面、又は該樹脂繊維製不織布の上記表面に樹脂発泡シートを接合することを特徴とする折板用断熱マットの製造方法。
7.上記結着用樹脂繊維が、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、鞘がポリエチレンからなり、芯がポリプロピレンからなる芯鞘繊維、及びポリプロピレンとポリエチレンとのサイドバイサイド繊維のうちの少なくとも1種である上記5.又は6.に記載の折板用断熱マットの製造方法。
8.金属製折板と、該金属製折板に、上記樹脂繊維製不織布側、又は有機繊維混紡無機繊維フェルトの他面側が接合された上記1.乃至4.のうちのいずれか1項に記載の折板用断熱マットと、を備えることを特徴とする断熱折板。
本発明の折板用断熱マットは、発泡樹脂シートを備えるため、優れた断熱性及び制振性等を有する折板用断熱マットとすることができる。また、有機繊維混紡無機繊維フェルトの無機繊維間が結着用熱可塑性樹脂により結着されている。そのため、フェルトの平面方向への所定の伸びを維持しつつ、内部の剥離強度及び引張強度等を向上させることができ、過酷な成形であるロールフォーミングに十分に耐え、傷付き、破損等が抑えられ、更にはロールによりしごかれて発生するガラス繊維等の無機繊維の砕粉が、折板屋根への取り付け等の作業時に飛散すること、及び砕粉の飛散により人の皮膚が刺激されること、などが低減される。
更に、無機繊維がガラス繊維である場合は、十分な断熱性及び制振性等が発現され、ガラス繊維は入手も容易であり、且つ安価であって、コストの面でも有利である。
また、樹脂発泡シートがポリオレフィン樹脂発泡シートである場合は、所定の発泡倍率を有し、耐熱性及び制振性等に優れる折板用断熱マットとすることができ、コストの面でも有利である。
更に、有機繊維混紡無機繊維フェルトが、結着用熱可塑性樹脂より融点の高い補強用熱可塑性樹脂からなる補強用樹脂繊維を含有し、無機繊維、結着部及び補強用樹脂繊維の合計を100質量%とした場合に、補強用樹脂繊維が5質量%以下である場合は、フェルトの平面方向への所定の伸びを維持しつつ、内部の剥離強度及び引張強度等をより向上させることができ、過酷な成形であるロールフォーミングに十分に耐え、より傷付き難く、破損等も十分に抑えられる折板用断熱マットとすることができる。
本発明の折板用断熱マットの製造方法によれば、発泡樹脂シートが接合されているため、優れた断熱性及び制振性等を有し、且つ無機繊維間が結着用熱可塑性樹脂により結着され、更には無機繊維間、補強用樹脂繊維間及び無機繊維と補強用樹脂繊維との間が結着用熱可塑性樹脂により結着され、十分な剥離強度及び引張強度等を有する本発明の折板用断熱マットを、簡易な操作、工程により容易に製造することができる。
また、結着用樹脂繊維が、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、鞘がポリエチレンからなり、芯がポリプロピレンからなる芯鞘繊維、及びポリプロピレンとポリエチレンとのサイドバイサイド繊維のうちの少なくとも1種である場合は、比較的低温で溶融し、無機繊維間等を容易に結着させることができ、折板用断熱マットの内部の剥離強度及び引張強度等をより向上させることができる。
本発明の断熱折板は、金属製折板と、この金属製折板に一面側又は他面側が接合された本発明の折板用断熱マットとを備える。そのため、優れた断熱性及び制振性等を有し、断熱折板屋根としたとき、結露及び降雨時の雨音等が抑えられ、火災の際などに昇温が抑制され、金属製折板の歪みも抑えられる等の性能を有する。また、ガラス繊維等の無機繊維の砕粉などの飛散が抑制され、環境への影響も抑えられる。
以下、図1〜11を参照しながら本発明を詳しく説明する。
[1]折板用断熱マット
(1)結着部を有する有機繊維混紡無機繊維フェルト、樹脂繊維製不織布及び樹脂発泡シートを備える折板用断熱マット
本発明の折板用断熱マット101は、無機繊維11と、無機繊維11のうちの一部の無機繊維を結着している結着用熱可塑性樹脂からなる結着部211とを有する有機繊維混紡無機繊維フェルト1、有機繊維混紡無機繊維フェルト1の一面に接合された樹脂繊維製不織布3、及び有機繊維混紡無機繊維フェルト1の他面、又は樹脂繊維製不織布の表面に接合された樹脂発泡シート4を備え、無機繊維11と結着部211との合計を100質量%とした場合に、結着部211は0.5〜5質量%である(図3の折板用断熱マット101参照)。
上記「有機繊維混紡無機繊維フェルト1」は、折板用断熱マットの基体をなすものであり、優れた難燃性及び断熱性等を有する。無機繊維11は特に限定されず、上記「無機繊維11」としては、ガラス繊維、カーボン繊維及びバサルト繊維等が挙げられる。これらの無機繊維11は1種のみ用いてもよく、2種以上を併用してもよい。無機繊維11としては、入手し易く、且つ安価なガラス繊維が好ましい。ガラス繊維を用いる場合、無機繊維11の全量を100質量%とした場合に、ガラス繊維は80質量%以上、特に90質量%以上であることが好ましく、無機繊維11の全量がガラス繊維であってもよい。
上記「結着部211」は、有機繊維混紡無機繊維フェルト1を構成する無機繊維11のうちの一部の無機繊維を結着している。この結着部211は有機繊維混紡無機繊維フェルト1の全体に均等に存在していることが好ましい。これにより、有機繊維混紡無機繊維フェルト全体の剥離強度及び引張強度等が向上し、且つ有機繊維混紡無機繊維フェルト本来の柔軟性が損なわれることもなく、過酷な成形であるロールフォーミングに十分に耐えられる折板用断熱マットとすることができる。更に、この結着部211により、有機繊維混紡無機繊維フェルト1の他面から突き出している無機繊維11の端部11a及び結着用樹脂繊維21の端部21a(図1参照)の各々の一部が、有機繊維混紡無機繊維フェルト1の他面に押し付けられ(図2参照)、作業者のイッチング感等が軽減される(尚、図1、2及び10におけるpはニードルパンチのニードルが刺し込まれて形成された凹部を指している。)。
結着部211は結着用熱可塑性樹脂からなる。上記「結着用熱可塑性樹脂」は特に限定されず、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂、ナイロン6、ナイロン66等のポリアミド樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂などが挙げられる。この樹脂としては、より低温で融解し、無機繊維を結着させることができるポリオレフィン樹脂が好ましい。また、結着用熱可塑性樹脂は、この樹脂と無機繊維との合計を100質量%とした場合に、0.5〜5質量%であり、1〜4.5質量%、特に2〜4質量%であることが好ましい。結着用熱可塑性樹脂の質量割合が0.5〜5質量%であれば、有機繊維混紡無機繊維フェルト1の剥離強度及び引張強度等が十分に向上し、且つ柔軟性の低下によるロールフォーミング時の皺の発生等もなく、難燃性の低下も抑えられる。
更に、結着部211による無機繊維11の結着は、繊維の絡み合いとは異なり、ほぐれてしまうことがなく、且つ負荷が加わったときに応力が集中せず、適度に分散され、これによりロールフォーミング性が大きく向上する。また、結着用熱可塑性樹脂からなる結着用樹脂繊維21(図1参照)は無機繊維11に対して少量であるため、有機繊維混紡無機繊維フェルト1は全体として十分な柔軟性を維持しており、ロールフォーミング時に適度に伸縮し、金属製折板の形状に追随して変形する。従って、折板用断熱マットが金属製折板に密着し、優れた外観を有する断熱折板200(図11参照)とすることができる。
結着用熱可塑性樹脂は難燃性を有していることが好ましい。これにより、有機繊維混紡無機繊維フェルト1が本来有している難燃性の低下を抑えることができる。樹脂の難燃性は、樹脂に難燃剤を配合する、及び樹脂、例えば、ペレット等に難燃剤を付着させる等の方法により向上させることができ、特に長期に渡って十分な難燃性が維持される樹脂に難燃剤を配合する方法が好ましい。この難燃剤は特に限定されず、リン酸エステル系、ポリリン酸グアニジン及びポリリン酸メラミン等のポリリン酸系などのリン系又はリン−窒素系、メラミンシアヌレート等の窒素系、並びにホウ酸亜鉛等の非ハロゲン系難燃剤が挙げられる。また、塩素化パラフィン、デカブロモビフェニルエーテル及びエチレンビス(ペンタブロモフェニル)等の有機ハロゲン化物、並びにこれらの有機ハロゲン化物と三酸化アンチモン等との併用などが挙げられる。これらの難燃剤のうちでは、難燃時に有害ガスの発生等の環境問題がなく、水和金属化合物ほどに多量に配合する必要がないリン酸エステル系、ポリリン酸系及び窒素系等の難燃剤が好ましい。これらの難燃剤は1種のみ用いてもよく、2種以上を併用することもできる。
難燃剤の配合量は特に限定されないが、結着用熱可塑性樹脂を100質量部とした場合に、0.01〜0.05質量部であることが好ましく、0.01〜0.03質量部であることがより好ましい。この含有量が0.01質量部未満であると、有機繊維混紡無機繊維フェルト1の難燃性の低下を十分に抑えることができない場合がある。一方、0.05質量部、特に0.03質量部を越えると、結着用樹脂繊維の製造が容易ではない。
有機繊維混紡無機繊維フェルト1の厚さも特に限定されないが、折板用断熱マットの断熱性、樹脂発泡シート4との接合の際の装置の構造、及び作業性等を考慮すると、2〜4mm、特に2.5〜3.5mmであることが好ましい。
上記「樹脂繊維製不織布3」は、フェルトを作製するときに、混紡繊維綿状体上に積層され、且つこの不織布側からのニードルパンチにより絡合一体化される不織布、又はこの不織布の一面側に混紡繊維を堆積させ、不織布側からニードルパンチを施すことにより絡合一体化される不織布であり、これによって、フェルトと樹脂繊維製不織布3との積層体である不織布付き有機繊維混紡無機繊維フェルトが形成される(図1の結着部が形成されていないフェルト1’参照)。樹脂繊維製不織布3を構成する樹脂繊維の材質は特に限定されず、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、ビニロン繊維及びアクリル繊維等が挙げられる。また、この樹脂繊維は、結着部211を構成する結着用熱可塑性樹脂より十分に高い融点、具体的には、50℃以上高い融点、特に60℃以上高い(例えば、60〜80℃高い)融点を有していることが好ましく、例えば、結着部211を構成する樹脂がポリプロピレンである場合、樹脂繊維製不織布3を構成する樹脂繊維はポリエステル繊維であることが好ましい。この樹脂繊維製不織布3の目付量等は特に限定されず、通常、この用途に用いられる不織布を特に限定されることなく使用することができ、例えば、目付量が25〜60g/m、特に30〜50g/mの不織布を用いることができる。
樹脂繊維製不織布3には難燃処方を施すこともでき、そのときの目付量は難燃処方が施されていない樹脂繊維製不織布3と同等とすることができる。難燃処方を施す場合、難燃剤の種類及び含有量は前記の結着部211を構成する結着用熱可塑性樹脂のときと同様とすることができる。難燃剤の含有量が0.01質量部未満であると、十分な難燃性を有する折板用断熱マットとすることができないことがあり、0.05質量部を越えると、難燃剤が不織布表面にブリードアウトすることがある。
上記「樹脂発泡シート4」は、有機繊維混紡無機繊維フェルト1の他面に接合される(図3の折板用断熱マット101参照)、又は樹脂繊維製不織布3の表面に接合される(図6の折板用断熱マット102参照)。この樹脂発泡シート4は、独泡の比率の高い発泡シートであってもよく、連泡の比率の高い発泡シートであってもよいが、独泡の比率が高い発泡シートであることが、断熱性及び制振性の観点で好ましい。更に、樹脂発泡シート4を構成する樹脂の材質は特に限定されず、ポリオレフィン樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂などが挙げられる。この樹脂としては、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレレン樹脂等のポリオレフィン樹脂が好ましく、ポリエチレン樹脂が特に好ましい。
ポリエチレン樹脂としては、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン等のエチレンの単独重合体、線状低密度ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体等のエチレンと他のモノマーとの共重合体のいずれも用いることができる。エチレンと共重合される他のモノマーとしては、ブテン、ヘキセン、オクテン等のα−オレフィン、及び酢酸ビニル等が挙げられる。これらの他のモノマーは、エチレンと他のモノマーとの合計を100モル%とした場合に、10モル%以下、特に6モル%以下であることが好ましい。また、ポリプロピレン樹脂としては、プロピレンの単独重合体、プロピレンと他のモノマーとの共重合体のいずれも用いることができる。プロピレンと共重合される他のモノマーとしては、エチレン、ブテン及びヘキセン等のα−オレフィンが挙げられる。これらの他のモノマーは、プロピレンと他のモノマーとの合計を100モル%とした場合に、10モル%以下、特に6モル%以下であることが好ましい。
樹脂発泡シート4の製造方法は特に限定されず、各々の樹脂の通常の方法により発泡させて製造することができる。以下、特に好ましい樹脂であるポリオレフィン樹脂について詳述する。
樹脂発泡シート4は、ポリオレフィン樹脂、熱分解型発泡剤、及びその他の添加剤を配合して混合し、その後、押出機等を用いて熱分解型発泡剤が分解しない温度で溶融、混練し、Tダイ等のダイスを用いて押出成形して発泡性ポリオレフィン樹脂シートを作製する。次いで、この発泡性ポリオレフィン樹脂シートを加熱、加圧し、熱分解型発泡剤を分解させ、ポリオレフィン樹脂を発泡させて樹脂発泡シート4を製造することができる。
熱分解型発泡剤は特に限定されず、各種の発泡剤を用いることができる。この熱分解型発泡剤としては、アゾジカルボンアミド、N,N’−ジニトロソペンタメチレンテトラミン、4,4’−オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)及びヒドラゾジカルボンアミド等の有機化合物を用いることができる。更に、炭酸水素ナトリウム等の無機化合物を用いることもできる。特にポリプロピレンの場合、分解温度が好ましい領域にあること、配合量に対する発生ガス量が多いこと、及び安全で取り扱いが容易であること等により、アゾジカルボンアミドが用いられることが多い。これらの熱分解型発泡剤は1種のみ用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
熱分解型発泡剤の配合量は特に限定されないが、ポリオレフィン樹脂を100質量部とした場合に、3〜22質量部、特に4〜17質量部、更に7〜16質量部とすることが好ましい。
その他の添加剤も特に限定されず、この添加剤としては、例えば、フェノール系及びチオエーテル系等の酸化防止剤、顔料、炭酸力ルシウム及びタルク等の充填剤、アルキル変性シリコーン等の気泡安定剤、並びに脂肪酸アミド及び脂肪酸金属塩等の滑剤などが挙げられる。更に、樹脂発泡シート4には難燃処方を施すこともでき、難燃処方を施す場合、難燃剤の種類は前記の結着部211を構成する結着用熱可塑性樹脂のときと同様とすることができる。また、含有量は、樹脂発泡シート3を100質量部とした場合に、10〜50質量部、特に20〜50質量部、更に30〜50質量部とすることができる。この含有量が10質量部未満であると、十分な難燃性を有する折板用断熱マットとすることができないことがあり、50質量部を越えると、難燃剤が樹脂発泡シート表面にブリードアウトすることがあり、シートの強度等が低下することもある。
樹脂発泡シート4の発泡倍率も特に限定されないが、発泡倍率は10〜50倍であることが好ましく、20〜40倍、特に30〜40倍であることがより好ましい。発泡倍率が10〜50倍、特に20〜40倍であれば、軽量であり、且つ十分な断熱性及び制振性等を有する樹脂発泡シート4とすることができる。尚、この発泡倍率は、樹脂発泡体で一般的に用いられている見かけ倍率(cc/g)である。この見かけ倍率は、樹脂発泡シートから10×10cmの寸法の試片を切り出し、重量(Wg)を秤量し、その後、試片の四隅の角部及び中心部における厚さを測定し(測定機はJIS K 6767法に準拠する。)、5点の平均値(Tcm)を用いて下記の式により算出することができる。
発泡倍率(倍)=10×10×T/W(cc/g)
樹脂発泡シート4の厚さも特に限定されないが、軽量であって、十分な断熱性及び制振性等を有する樹脂発泡シート4とすることができ、且つ有機繊維混紡無機繊維フェルト1に接合するときの装置の構造、及び作業性などを勘案すると、樹脂発泡シート4の厚さは、1〜3mm、特に1.5〜2.5mmであることが好ましい。
樹脂発泡シート4は、発泡体であり、且つ架橋された樹脂架橋発泡シート4であることが好ましい。架橋させた場合、強度、伸び及び加工性等により優れ、ロールフォーミングに十分に耐え得る折板用断熱マットとすることができるため、特に好ましい。樹脂架橋発泡シート4とするときに使用するポリオレフィン樹脂は特に限定されず、前記の各種のポリエチレン樹脂及びポリプロピレン樹脂等を用いることができる。また、樹脂架橋発泡シート4の製造にポリプロピレン樹脂を用いる場合、通常、前記のポリエチレン樹脂が配合される。このポリエチレン樹脂は、ポリプロピレン樹脂とポリエチレン樹脂との合計を100質量%とした場合に、10〜30質量%、特に15〜25質量%とすることが好ましい。この樹脂架橋発泡シート4としては、優れた剛性、耐衝撃性、耐熱性等を有するという観点ではプロピレン樹脂架橋発泡シートが特に好ましく、樹脂架橋発泡シート4をより低温で有機繊維混紡無機繊維フェルト1に圧着させることができるという観点ではエチレン樹脂架橋発泡シートが好ましい。
樹脂架橋発泡シート4の製造方法は特に限定されず、通常の方法により架橋、発泡させて製造することができる。樹脂架橋発泡シート4は、ポリエチレン樹脂架橋発泡シートの場合、ポリエチレン樹脂、熱分解型発泡剤、架橋剤、及びその他の添加剤を配合して混合し、その後、圧縮成形機等を用いて加熱、加圧して成形し、次いで、必要に応じて更により高音で加熱、加圧して、製造することができる。また、ポリエチレン樹脂、熱分解型発泡剤、及びその他の添加剤を配合して混合し、その後、押出機等を用いて熱分解型発泡剤が分解しない温度で溶融、混練し、Tダイ等のダイスを用いて押出成形して発泡性ポリエチレン樹脂シートを作製し、次いで、この発泡性ポリエチレン樹脂シートに電子線等を照射し、架橋させ、その後、熱分解型発泡剤を分解させ、樹脂を発泡させてポリエチレン樹脂架橋発泡シートを製造することができる。
プロピレン樹脂架橋発泡シートの場合は、ポリプロピレン樹脂に、ポリエチレン樹脂及び架橋助剤を配合する他は、ポリエチレン樹脂架橋発泡シートと同様にして製造することができる。配合するポリエチレン樹脂としては前記の各種のポリエチレン樹脂を用いることができる。更に、架橋助剤としては、各種の多官能性モノマーを用いることができ、この多官能性モノマーとしては、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート及びジビニルベンゼン等が挙げられる。これらの多官能性モノマーは1種のみ用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
多官能性モノマーの配合量は特に限定されないが、ポリプロピレン樹脂を100質量部とした場合に、1〜7質量部、特に2〜6質量部、更に3〜5質量部とすることが好ましい。多官能性モノマーの配合量が1〜7質量部であれば、架橋が十分に促進され、且つ過剰な多官能性モノマーが未反応のままポリプロピレン樹脂架橋発泡シートに残留することもない。そのため、臭気を有さないポリプロピレン樹脂架橋発泡シートとすることができる。
樹脂架橋発泡シート4の発泡倍率は特に限定されず、前記の樹脂発泡シート4の場合と同様とすることができる。また、樹脂架橋発泡シート4の架橋度も特に限定されず、ポリエチレン樹脂架橋発泡シート及びポリプロピレン樹脂架橋発泡シートのいずれの場合も、架橋度の指標となるゲル分率が20〜50%、特に25〜45%、更に30〜40%であることが好ましい。ゲル分率が20〜50%であれば、有機繊維混紡無機繊維フェルト1に圧着させるときの加圧による塑性変形及び破泡等が抑えられ、厚さが大きく変化(減少)することもない。更に、発泡時の樹脂強度が過大にならず、十分に発泡して所定の発泡倍率を有する樹脂架橋発泡シート4とすることができる。また、加熱、加圧された有機繊維混紡無機繊維フェルト1と樹脂架橋発泡シート4とを強固に圧着させることもできる。
尚、架橋度の指標となるゲル分率は、樹脂架橋発泡シート4を細片に裁断し、50mgを秤取し、この細片を25ミリリットルのキシレンに投入し、攪拌しながら120℃で5時間加熱し、その後、200メッシュの金網を用いてろ過し、次いで、金網上の未溶解分を115℃に調温された乾燥炉に収容し、2時間乾燥させ、乾燥後の重量を秤量し、下記の式により算出することができる。
ゲル分率(%)=(W/50)×100
但し、W(mg)は乾燥後の重量である。
樹脂架橋発泡シート4の厚さも特に限定されず、前記の樹脂発泡シート4のときと同様の理由で、同様の厚さとすることができる。
(2)有機繊維混紡無機繊維フェルトが補強用樹脂繊維を含有している折板用断熱マット
本発明の折板用断熱マットは、有機繊維混紡無機繊維フェルト1が、結着用熱可塑性樹脂より融点の高い補強用熱可塑性樹脂からなる補強用樹脂繊維22を含有し、無機繊維11、結着部211及び補強用樹脂繊維22の合計を100質量%とした場合に、補強用樹脂繊維22が5質量%以下である形態とすることもできる(図6の折板用断熱マット102、図7の折板用断熱マット103、図8の折板用断熱マット104及び図9の折板用断熱マット105参照)。
この形態における無機繊維11、結着用樹脂繊維21、結着部211を構成する結着用熱可塑性樹脂、樹脂繊維製不織布3、及び樹脂発泡シート4(樹脂架橋発泡シート4)の各々の構成及びその作用効果については、前記(1)におけるそれぞれの記載をそのまま適用することができる。
この形態の場合、無機繊維間の他、補強用樹脂繊維間及び無機繊維と補強用樹脂繊維との間が結着用熱可塑性樹脂により結着され、有機繊維混紡無機繊維フェルト全体の剥離強度及び引張強度等がより大きく向上し、更に優れたロールフォーミング性を有する折板用断熱マットとすることができる。これは、補強用樹脂繊維22は無機繊維11に比べて柔軟性が極めて高く、ニードルパンチ時に折損し難く、結着用樹脂繊維21によって、より容易に結着され、より多くの結着部211が形成されるためである。
尚、補強用樹脂繊維間及び無機繊維と補強用樹脂繊維との間の結着部にも、無機繊維間の結着部211と同符号を付するものとする。
また、この形態では、無機繊維11及び結着用樹脂繊維21の他に、補強用樹脂繊維22も、端部の一部が有機繊維混紡無機繊維フェルト1の他面から突き出しているが(図4参照)、この突き出した端部22aも結着部211により有機繊維混紡無機繊維フェルト1の他面に押し付けられ(図5参照)、作業者のイッチング感等がより十分に軽減される。
上記「補強用樹脂繊維22」は、結着用熱可塑性樹脂より融点の高い補強用熱可塑性樹脂からなる。この補強用樹脂繊維22としては、ナイロン6、ナイロン66等のポリアミド樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂などからなる繊維を用いることができ、ポリエステル樹脂繊維が好ましい。また、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂は他の汎用樹脂等に比べて融点が低いため、ポリオレフィン樹脂繊維は、通常、補強用樹脂繊維22としては用いられないが、例えば、結着用樹脂繊維がポリエチレン繊維である場合、結着用樹脂繊維の加熱、溶融に用いる装置及び加熱条件等によっては、補強用樹脂繊維22として、ポリプロピレン繊維を用いることもできる。
有機繊維混紡無機繊維フェルト1における補強樹脂繊維22の含有量は、無機繊維11、結着部211及び補強用樹脂繊維22の合計を100質量%とした場合に、5質量%以下であることが好ましく、1〜5質量%、特に1〜3質量%であることがより好ましい。このように、5質量%以下、特に1〜3質量%の補強用樹脂繊維22を含有させることにより、有機繊維混紡無機繊維フェルト全体の剥離強度及び引張強度等が大きく向上し、有機繊維混紡無機繊維フェルト本来の柔軟性が損なわれることもなく、過酷な成形であるロールフォーミングにより十分に耐えられる折板用断熱マットとすることができ、且つ折板用断熱マットの難燃性の低下も十分に抑えられる。
また、より優れた難燃性を有する折板用断熱マットとするため、補強用樹脂繊維22に難燃処方を施すこともできる。難燃処方を施す場合、難燃剤の種類及び含有量は前記の結着部211を構成する結着用熱可塑性樹脂のときと同様とすることができる。この含有量が0.01質量部未満であると、十分な難燃性を有する折板用断熱マットとすることができないことがあり、0.05質量部を越えると、難燃剤が補強用樹脂繊維22の表面にブリードアウトすることがある。
(3)接着剤層
本発明の折板用断熱マットには、折板用金属板に接合される面に接着剤層5が設けられ(図7の折板用断熱マット103、及び図9の折板用断熱マット105参照、但し、これらの折板用断熱マット103、105では、有機繊維混紡無機繊維フェルト1に補強用樹脂繊維22が含有されている。)、折板用断熱マットは接着剤層5を介して折板用金属板に接合される。折板用断熱マットが、結着部211を有する有機繊維混紡無機繊維フェルト1と、その一面に接合された樹脂繊維製不織布3、及び他面に接合された樹脂発泡シート4とからなるときは、接着剤層5は樹脂繊維製不織布3の表面に設けられる(図7の折板用断熱マット103参照)。また、樹脂発泡シート4が樹脂繊維製不織布3の表面に接合されているときは、接着剤層5は有機繊維混紡無機繊維フェルト1の他面に設けられる(図9の折板用断熱マット105参照)。このように折板用断熱マットに接着剤層5が設けられている場合、折板用金属板への接合が極めて容易である。
接着剤層5の形成に用いる接着剤は特に限定されず、ホットメルト接着剤、溶剤型接着剤等を用いることができる。ホットメルト接着剤としては、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合樹脂及びスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合樹脂並びにそれらの水添樹脂等のスチレン系ブロック共重合樹脂からなるホットメルト接着剤等が挙げられる。また、溶剤型接着剤としては、クロロプレン系溶剤型接着剤、ニトリルゴム系溶剤型接着剤等が挙げられる。接着剤としては、折板用金属板との接着性に優れ、且つ比較的低温で容易に接着させることができるホットメルト接着剤が好ましい。
尚、ホットメルト接着剤には、アルコン樹脂等の粘着付与樹脂などを配合し、ホットメルト接着剤層とすることができる。
[2]折板用断熱マットの製造方法
補強用樹脂繊維22を含有しない有機繊維混紡無機繊維フェルト1を備える本発明の折板用断熱マットの製造方法は、無機繊維11と結着用樹脂繊維21とを混合し、機材上に堆積させて混紡繊維綿状体を作製し、その後、混紡繊維綿状体上に第1樹脂繊維製不織布31となる不織布を積層し、又は無機繊維11と結着用樹脂繊維21とを混合し、第1樹脂繊維製不織布31となる不織布上に堆積させて混紡繊維綿状体を作製し、次いで、不織布側からニードルパンチを施してフェルト1’を形成するとともに、フェルト1’と不織布31とを接合させ、その後、加熱し、結着用樹脂繊維21を溶融させて無機繊維11を融着させ、その後、冷却し、無機繊維11のうちの一部の無機繊維を、結着用樹脂繊維21を構成する結着用熱可塑性樹脂により結着させ、有機繊維混紡無機繊維フェルト1を形成し、次いで、有機繊維混紡無機繊維フェルト1の他面、又は樹脂繊維製不織布3の表面に樹脂発泡シート4を接合することを特徴とする。
また、補強用樹脂繊維22を含有する無機繊維マット1を備える本発明の折板用断熱マットの製造方法は、無機繊維11、結着用樹脂繊維21及び結着用樹脂繊維21より高温で溶融する補強用樹脂繊維22を混合し、機材上に堆積させて混紡繊維綿状体を作製し、その後、混紡繊維綿状体上に第1樹脂繊維製不織布31となる不織布を積層し、又は無機繊維11、結着用樹脂繊維21及び該結着用樹脂繊維21より高温で溶融する補強用樹脂繊維22を混合し、第1樹脂繊維製不織布31となる不織布上に堆積させて混紡繊維綿状体を作製し、次いで、不織布側からニードルパンチを施してフェルト1’を形成するとともに、フェルト1’と不織布とを接合させ、その後、結着用樹脂繊維21は溶融し、且つ補強用樹脂繊維22は溶融しない温度範囲で加熱し、結着用樹脂繊維21を溶融させて無機繊維11及び補強用樹脂繊維22を融着させ、その後、冷却し、無機繊維11のうちの一部の無機繊維及び補強用樹脂繊維22のうちの一部の補強用樹脂繊維を、結着用樹脂繊維21を構成する上記結着用熱可塑性樹脂により結着させ、有機繊維混紡無機繊維フェルト1を形成し、次いで、有機繊維混紡無機繊維フェルト1の他面、又は樹脂繊維製不織布3の表面に樹脂発泡シート4を接合することを特徴とする。
(1)有機繊維混紡無機繊維フェルトの作製
(a)混紡繊維綿状体と樹脂繊維製不織布との積層体の形成
混紡繊維綿状体は、直径5〜12μm程度の単繊維がストランド状に集束されてなる無機繊維集合体を長さ50〜120mm程度に切断し、一方、繊度2〜8デシテックス程度の単繊維がストランド状に集束されてなる結着用樹脂繊維集合体を長さ50〜100mmに切断し、これらの所定長の無機繊維集合体と結着用樹脂繊維集合体とを、無機繊維と結着用樹脂繊維との合計を100質量%とした場合に、結着用樹脂繊維が0.5〜5質量%となる質量割合で混合し、その後、この混紡繊維を周面に多数の針状突起が装着された回転ドラムに供給して解繊させ、解繊した繊維を浮遊させ、次いで、フェルト製造装置の繊維堆積用のベルト等の機材、又は樹脂繊維製不織布3となる不織布上に堆積させて混紡繊維綿状体を作製する。
また、補強用樹脂繊維22を含有する有機繊維混紡無機繊維フェルト1とする場合は、繊度9〜13デシテックス程度の単繊維がストランド状に集束されてなる補強用樹脂繊維集合体を長さ50〜100mmに切断し、この所定長の補強用樹脂繊維集合体を、無機繊維、結着用樹脂繊維(結着部)及び補強用樹脂繊維の合計を100質量%とした場合に、補強用樹脂繊維が5質量%以下、特に1〜3質量%となる質量割合で、無機繊維集合体及び結着用樹脂繊維集合体とともに混合し、その後、上記と同様にして解繊し、堆積させて混紡繊維綿状体を作製する。
無機単繊維の径は5〜12μm、特に7〜12μmが好ましい。径が5μm未満では解繊し難く、12μmを越えるとニードルパンチ時に単繊維間が絡まり難く、有機繊維混紡無機繊維フェルト1の強度が低下することがある。また、繊維長が50mm未満であると、ニードルパンチ時に単繊維1本当りの絡まり数が不足し、有機繊維混紡無機繊維フェルト1の強度が低下することがある。繊維長が100mmを越えると、解繊し難く、塊状で積層されることがあるため、有機繊維混紡無機繊維フェルト1の厚さ及び目付量のばらつきが発生し易く、好ましくない。
結着用樹脂繊維21は特に限定されないが、無機繊維11をより低温で、且つ十分な強度で結着させることができる樹脂繊維が好ましい。この樹脂繊維としては、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維等のポリオレフィン繊維、ポリアミド繊維、ポリエステル繊維等を用いることができる。この結着用樹脂繊維21としては、より低温で溶融し、無機繊維を結着させることができるポリオレフィン繊維が好ましい。また、ポリオレフィン繊維としては、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、鞘がポリエチレンからなり、芯がポリプロピレンからなる芯鞘繊維、及びポリプロピレンとポリエチレンとのサイドバイサイド繊維がより好ましい。これらのポリオレフィン繊維は1種のみ用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
結着用樹脂単繊維の繊度は2〜8デシテックス、特に3〜5デシテックスが好ましい。繊度が2デシテックス未満では解繊し難く、8デシテックスを越えるとニードルパンチ時に単繊維間が絡まり難く、有機繊維混紡無機繊維フェルト1の強度が低下することがある。また、繊維長が50mm未満であると、ニードルパンチ時に単繊維1本当りの絡まり数が不足し、有機繊維混紡無機繊維フェルト1の強度が低下することがある。繊維長が100mmを越えると、解繊し難く、塊状で積層されることがあるため、有機繊維混紡無機繊維フェルト1の厚さ及び目付量のばらつきが発生し易く、好ましくない。
補強用樹脂繊維22としては、前記のように、ポリエステル樹脂及びポリアミド樹脂からなる繊維を用いることができる。更に、補強用樹脂単繊維の繊度は9〜13デシテックス、特に9〜10デシテックスが好ましい。繊度が9デシテックス未満では解繊し難く、13デシテックスを越えるとニードルパンチ時に単繊維間が絡まり難く、有機繊維混紡無機繊維フェルト1の強度を十分に向上させることができない場合がある。また、繊維長が50mm未満であると、ニードルパンチ時に単繊維1本当りの絡まり数が不足し、有機繊維混紡無機繊維フェルト1の強度を十分に向上させることができない場合がある。繊維長が100mmを越えると、解繊し難く、塊状で積層されることがあるため、有機繊維混紡無機繊維フェルト1の厚さ及び目付量のばらつきが発生し易く、好ましくない。
(b)ニードルパンチ
機材上に上記(a)のようにして形成された混紡繊維綿状体と、この混紡繊維綿状体上に積層された樹脂繊維製不織布3となる不織布に、又は樹脂繊維製不織布3となる不織布と、この不織布上に上記(a)のようにして形成された混紡繊維綿状体に、樹脂繊維製不織布3となる不織布側からニードルパンチを施し、厚さ3〜10mm、特に3〜7mmの混紡繊維綿状体に比べて目付量が大きくなったフェルトを作製する。このニードルパンチによる繊維間の絡まりにより有機繊維混紡無機繊維フェルト1の強度が大幅に向上する。
(c)結着部の形成
上記(b)で作製した不織布付き混紡繊維フェルトを加熱し、混合された結着用樹脂繊維21を溶融させる。この溶融した結着用樹脂繊維は、互いに絡まり合っていた無機繊維11の、特に交絡点近傍において塊状となり、冷却後、この塊状の樹脂によって無機繊維11のうちの一部が結着されて結着部211が形成され、有機繊維混紡無機繊維フェルト1が作製される。加熱温度は特に限定されないが、結着用樹脂繊維21が溶融する温度を大きく越えると、繊維が劣化するため、繊維が溶融する温度を30〜80℃、特に40〜80℃上回る温度範囲であることが好ましい。更に、フェルトを加熱する方法は特に限定されないが、フェルトを加熱炉に導入して加熱するのが一般的である。炉内の加熱方法も特に限定されず、遠赤外線ヒータ等による電熱加熱でもよく、熱風加熱でもよい。
また、有機繊維混紡無機繊維フェルト1に補強用樹脂繊維22を含有させる場合は、フェルトの加熱は、結着用樹脂繊維21は溶融し、且つ補強用樹脂繊維22は溶融しない温度でなされる。加熱は、上記のように、結着用樹脂繊維21が溶融する温度を30〜80℃、特に40〜80℃上回り、且つ補強用樹脂繊維22が溶融する温度を50〜90℃、特に60〜90℃下回る温度でなされることが好ましい。これにより、溶融した結着用樹脂繊維により十分に結着がなされ、且つ溶融しない補強用樹脂繊維22の一部も溶融した結着用樹脂繊維により結着されるため、フェルト内が十分に補強され、有機繊維混紡無機繊維フェルト1の剥離強度及び引張強度等がより大きく向上する。
更に、加熱時、又は加熱後、溶融した結着用樹脂繊維が固化しないうちに加熱後繊維フェルトを圧着することがより好ましい。この圧着によって有機繊維混紡無機繊維フェルト1の内部での剥離強度及び引張強度等を、フェルトの平面方向への所定の伸びを維持しつつ、より向上させることができる。加熱後繊維フェルトは、ロール間を通過させる、圧縮成形機によりプレスする等の方法により圧着させることができる。この場合、ロール及び圧縮成形機のプレートの温度は、結着用樹脂繊維21が溶融する温度より30℃以上、特に30〜50℃低いことが好ましい。これにより、加熱後繊維フェルトがロール又はプレートの表面に付着するのを防止することができる。
(2)樹脂発泡シートの接合
上記(1)で作製した有機繊維混紡無機繊維フェルト1の他面、又は樹脂繊維製不織布3の表面に、樹脂発泡シート4を接合させる。この樹脂発泡シート4は、予め成形した樹脂発泡シート4を、加熱された有機繊維混紡無機繊維フェルト1の他面、又は樹脂繊維製不織布3の表面に積層し、押圧し、圧着させて接合させることができる。また、樹脂発泡シート4の一面に接着剤層を設け、この接着剤層の側を積層し、押圧し、圧着させて接合させることもできる。これらの方法のうちでは、工程が簡易であり、且つ接着剤によるコストアップ及び難燃性の低下等のない加熱圧着による接合が好ましい。
上記(1)、(a)混紡繊維綿状体と樹脂繊維製不織布との積層体の形成、上記(1)、(b)ニードルパンチ、上記(1)(c)結着部の形成、及び上記(2)樹脂発泡シートの接合、は連続工程としてもよく、各々の工程を個別に実施してもよいが、可能な限り全工程を連続工程とすることが好ましい。また、嵩高い混紡繊維綿状体は取り扱い難いため、混紡繊維綿状体の形成とニードルパンチとは連続工程とすべきである。更に、樹脂発泡シート4の接合は、加熱された有機繊維混紡無機繊維フェルト1が比較的高温に維持されているうちに実施すべきであり、これによって、樹脂発泡シート4をより容易に熱圧着させることができる。
(3)接着剤層の形成
樹脂繊維製不織布3の表面、又は有機繊維混紡無機繊維フェルト1の他面に、にホットメルト接着剤及び溶剤型接着剤等の接着剤を、押出塗工、ギヤポンプによる吐出塗工等の方法で塗付し、必要に応じて加熱、乾燥等をして接着剤層5を形成する。
[3]断熱折板
本発明の断熱折板(図11の断熱折板200参照)は、金属製折板201と、この金属製折板201に、樹脂繊維製不織布3側、又は有機繊維混紡無機繊維フェルト1の他面側が接合された本発明の折板用断熱マットと、を備える(図11では折板用断熱マット103)。
本発明の断熱折板は断熱折板屋根として用いられる。この断熱折板には、樹脂発泡シート4が接合された折板用断熱マットが裏打ち材として接合されているため、十分な断熱性及び制振性等を有し、断熱折板屋根として用いたときに、結露及び降雨時の雨音等が抑えられ、且つ火災の際に金属製折板の歪みが抑えられて十分な強度が維持される。また、屋根施工時及び施工後のガラス繊維等の無機繊維の砕粉などの飛散が抑制され、工場、倉庫、駐車場及び体育館等の屋根として用いた場合に、環境の悪化及び生体への影響等が抑えられる。
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。
[1]折板用断熱マットの製造(有機繊維混紡無機繊維フェルト1、樹脂繊維製不織布3、及び樹脂発泡シート4からなり、有機繊維混紡無機繊維フェルト1に補強用樹脂繊維22が含有されていない折板用断熱マット)
実施例1〜2
単繊維径が9μmのストランド状ガラス繊維集合体を長さ約75mmに切断し、このガラス繊維に、ポリリン酸系難燃剤を配合したポリプロピレン(融点158℃)とポリエチレン(融点131℃)とからなり、繊度3.3デシテックス、長さ約64mmのサイドバイサイド繊維(結着用樹脂繊維)を、ガラス繊維とサイドバイサイド繊維との合計を100質量%とした場合に、1.5質量%(実施例1)、3.5質量%(実施例2)の質量割合となるように配合し、解繊ドラムにより混合するとともに解繊して綿状の混紡繊維とし、この混紡繊維を駆動ベルト(機材)上に供給し、浮遊、堆積させて所定の目付量の混紡繊維綿状体を作製した。その後、この混紡繊維綿状体上に樹脂繊維製不織布3となる不織布を積層し、次いで、不織布側からニードルパンチを施し(パンチング板仕様;針番36 2列、針番32 14列、針番25 6列)、耳部をカットして除き、幅680mm、厚さ約3.0mm、目付量約360g/mの不織布付き混紡繊維フェルト1’を作製した。
次いで、不織布付き混紡繊維フェルト1’を、ガラス繊維強化ポリテトラフルオロエチレンメッシュ製の駆動ベルト上に載置し、上下に遠赤外線ヒータが並列に配設された加熱炉内に導入し、不織布付き混紡繊維フェルト1’の厚さ方向の中心部の温度が約185℃になるように加熱し、不織布付き混紡繊維フェルト1’に含有される上記のサイドバイサイド繊維を溶融させた。その後、加熱炉から導出された直後の加熱後繊維フェルトを約75℃に調温された駆動ピンチロール間(ロールクリアランスは1mmである。)を挿通させて圧着させ、次いで、冷却ゾーンを通過させて冷却し、巻き取って、有機繊維混紡無機繊維フェルト1と、その一面に接合された樹脂繊維製不織布3とからなるマット中間体(図2参照)を製造した。
その後、マット中間体を、ガラス繊維強化ポリテトラフルオロエチレンメッシュ製の駆動ベルト上に載置し、上記の加熱炉内に導入し、マット中間体の有機繊維混紡無機繊維フェルト1の温度が約190℃になるように加熱し、次いで、加熱炉から導出された直後のマット中間体を約75℃に調温された駆動ピンチロール間(ロールクリアランスは2.5mmである。)を挿通させとともに、有機繊維混紡無機繊維フェルト1の他面側に、厚さ2mmのポリエチレン樹脂発泡シート4(発泡倍率30倍、ゲル分率35%)を供給し、マット中間体とポリエチレン樹脂架橋発泡シート4とを圧着させ、次いで、冷却ゾーンを通過させて冷却し、巻き取って、有機繊維混紡無機繊維フェルト1と、その一面に接合された樹脂繊維製不織布3と、他面に接合されたポリエチレン樹脂発泡シート4とからなる折板用断熱マット(図3の折板用断熱マット101参照)を製造した。実施例1の折板用断熱マットの厚さは約5.0mm、実施例2の折板用断熱マットの厚さは約4.9mmであった。
実施例3
実施例1におけるサイドバイサイド繊維の質量割合を2.5質量%とし、且つリン酸エステル系難燃剤を配合した繊度3.3デシテックス、長さ約100mmのポリエチレンテレフタレート繊維(補強用樹脂繊維、融点264℃)を混合した他は、実施例1と同様にして、幅680mm、厚さ約5.0mm、目付量約600g/mの不織布付き混紡繊維フェルトを作製し、その後、実施例1と同様にして加熱(サイドバイサイド繊維は溶融するが、ポリエチレンテレフタレート繊維は溶融しない。)、圧着し、次いで、冷却し、巻き取って、厚さ約5mmの折板用断熱マットを製造した(図6の折板用断熱マット102参照)。
比較例1
サイドバイサイド繊維を配合しなかった他は、実施例1と同様にして、有機繊維混紡無機繊維フェルト1の一面に樹脂繊維製不織布3が接合され、且つ他面にポリエチレン樹脂架橋発泡シート4が接合された厚さ5mmの折板用断熱マットを製造した。
比較例2
比較例1で製造した折板用断熱マットの樹脂繊維製不織布3の側に、エチレン−酢酸ビニル共重合体エマルジョンを、乾燥後の固形分の塗布量が約35g/mとなるように吹き付け、その後、加熱乾燥炉を通過させてエマルジョンの水分を除去し、エチレン−酢酸ビニル共重合体により樹脂繊維製不織布3の表面側が強化された厚さ5mmの折板用断熱マットを製造した。
比較例3
樹脂架橋発泡シート4を接合しなかった他は、実施例1と同様にして、有機繊維混紡無機繊維フェルト1の一面に樹脂繊維製不織布3が接合された厚さ約5.0mmの折板用断熱マットを製造した。
[2]接着剤層の形成
スチレン系熱可塑性エラストマーからなるホットメルト接着剤を加熱し、溶融させ、ノードソン塗工方式により、実施例1〜3及び比較例1、2で製造した幅680mm、長さ100mの折板用断熱マットに、塗布量約30g/mとなるように塗工し、各々の折板用断熱マットに接着剤層5を形成した。接着剤層は、実施例1〜3及び比較例1〜2のすべてで樹脂繊維製不織布3の表面に形成した。
[3]断熱折板の製造
厚さ0.8mmのガルバニューム鋼板からなる折板用金属板を120℃に加熱し、その後、折板用金属板と、実施例1〜3及び比較例1〜2の折板用断熱マットに形成された接着剤層5と、が接した状態でピンチロールにより圧着して接合させ、次いで、風冷し、折板用積層体を作製した。その後、折板ロールフォーミング機により折板形状に成形し、一山型、ハゼ式の長さ20mの断熱折板を、実施例1〜3及び比較例1〜2の折板用断熱マットの各々につき、それぞれ5本製造した。
[4]性能評価
上記[1]のようにして製造した折板用断熱マットを用いて剥離強度、断熱性及び制振性を評価した(比較例3の折板用断熱マットについては断熱性及び制振性のみを評価した。)。また、上記[3]のようにして製造した断熱折板を用いて、折板ロールフォーミング性及びガラス砕粉の飛散性を評価した。
(1)剥離強度
折板用断熱マットから幅25mm、長さ100mmの試験片を切り出した。また、試験片として、折板用断熱マットの成形方向が長さ方向となる試験片と、折板用断熱マットの幅方向が長さ方向となる試験片との2種類を作製した。剥離強度は、試験片の各々の有機繊維混紡無機繊維フェルトの厚さ方向の中間点において長さ方向の一方の端面から全長の中間点まで切り込みを入れ、その後、切り込み部分のそれぞれの両端部を引張試験機のチャックにより挟持し、200mm/分の速度で引っ張ったときの強度を読み取って測定した。
(2)折板ロールフォーミング性
上記[3]で製造した断熱折板につき、ロールフォーミング時の剪断負荷が大きいハゼ部及び折板の凸部側の角部の仕上がり状況を目視で観察した。評価基準は下記のとおりである。
◎;ハゼ部に折板用断熱マットの破損による浮き上がり等の発生が全くなく、凸部側の角部も鋭角に仕上がっていた
○;ハゼ部に部分的に小さな浮き上がりが発生することがあるが、実用上問題はなく、凸部側の角部は鋭角に仕上がっていた
×;ハゼ部に大きな浮き上がりが発生し、凸部側の角部では所々に破れが発生した
(3)ガラス砕粉の飛散性
上記[3]のロールフォーミング時、折板用断熱マットが接合された凸部側を下面にして送出される断熱折板の一方の側面側に真黒色の平滑板を設置し、他方の側面側から光を照射し、一方の側面側から目視した光の乱反射の状況によりガラス砕粉の飛散状況を観察した。評価基準は下記のとおりである。
尚、この評価は、実施例、比較例の各々の折板用断熱マットを用いたロールフォーミングが終了するたびに、ロールフォーミング機の断熱折板が移動する周辺部を吸引機で掃除し、周辺に付着したガラス砕粉を除去し、判断に誤りが生じないようにした。
◎;ガラス砕粉による乱反射がほとんど観察されない
○;乱反射が少し発生するが気になるほどではない
×;常に全面的に乱反射が観察された
(4)断熱性の評価
折板用断熱マットから試験片を切り出し、JIS A 1412−2「熱絶縁材の熱抵抗及び熱伝導率の測定方法(熱流計法)」に準じ、熱伝導率測定装置(英弘精機社製、型式「HC−072」)を用いて、大気雰囲気、接触圧24500MPaの条件で熱伝導率を測定し、断熱性の指標とした。
(5)制振性の評価
折板用断熱マットから幅10mm、長さ180mmの試験片を切り出し、樹脂繊維製不織布の側の全面に、同幅で、長さ200mm、厚さ0.5mmの鋼板を接合させた。この試験体を使用し、JIS G 0602「片端固定定常加振法」に準じ、損失係数測定装置(B&K社製、型式「3550」)を用いて、試験体の下端からノイズを当て、振動モード2次〜6次での各々の損失係数を測定し、平均値を算出した。
以上、(1)〜(5)の評価結果を表1に記載する。
Figure 2009249877
表1の結果によれば、有機繊維混紡無機繊維フェルトに結着用樹脂繊維を混合し、結着部を形成した実施例1〜3の折板用断熱マットでは、比較例1、2の折板用断熱マットと比べて、剥離強度が成形方向、幅方向ともに大きく向上し、特に補強用樹脂繊維が配合されている実施例3の折板用断熱マットでは剥離強度がより大きく向上していることが分かる。また、実施例1〜3、特に実施例3の折板用断熱マットはいずれも極めて優れたロールフォーミング性を有しており、高品質の断熱折板を製造することができ、ガラス砕粉の飛散も少ないことが分かる。更に、断熱性の評価では、熱伝導率は実施例1と比較例3とで同等であり、本発明の折板用断熱マットは十分な断熱性を有していることが分かる(同様にして測定した厚さ5mmのガラスマットの熱伝導率は0.05W/m・k程度と大きく、断熱性が劣っている。)。また、制振性の評価では、実施例1では比較例3の2倍を越える損失係数(平均値)となっており、本発明の折板用断熱マットは優れた制振性を有していることが分かる。
更に、長さ約25mの折板用断熱マットを、折板用金属板に接合させ、その後、長さ約5mにカットし、カットした各々の接合体をロールフォーミング成形し、この一連の作業を5名の作業者が素手で実施したときの作業終了後のイッチング性について作業者全員の意見を聴取し、評価した。その結果、樹脂発泡シートが接合されている実施例1〜3のいずれにおいても、全員がイッチング性を感じず、優れていた。
一方、比較例1、2では、ガラス砕粉の飛散性が大きく劣ることはないものの、剥離強度が成形方向、幅方向ともに小さく、ロールフォーミング性も劣っていることが分かる。更に、イッチング性についても、比較例1では、全員が強いイッチングを指摘し、不織布面がエチレン−酢酸ビニル共重合体により強化された比較例2でも、全員が通常のイッチングを指摘し、ともに劣っていた。
本発明は、断熱、制振等を目的として折板用断熱マットにより裏打ちされた断熱折板、特に断熱折板屋根などの技術分野において利用することができる。
無機繊維と結着用樹脂繊維とを含有するフェルトと、その一面に接合された第1樹脂繊維製不織布との断面の模式図である。 図1の不織布付き混紡繊維フェルトが加熱され、溶融した結着用樹脂繊維が一部の無機繊維を結着させ、結着部が形成されてなるマット中間体の断面の模式図である。 図2のマット中間体の有機繊維混紡無機繊維フェルトの他面に樹脂発泡シートが接合されてなる本発明の折板用断熱マットの一例の断面の模式図である。 無機繊維、結着用樹脂繊維及び補強用樹脂繊維を含有するフェルトと、その一面に接合された樹脂繊維製不織布との断面の模式図である。 図4の不織布付き混紡繊維フェルトが加熱され、溶融した結着用樹脂繊維が一部の無機繊維及び補強用樹脂繊維を結着させ、結着部が形成されてなるマットの断面の模式図である。 図5の折板用断熱マットの有機繊維混紡無機繊維フェルトの他面に樹脂発泡シートが接合されてなる本発明の折板用断熱マットの他例の断面の模式図である。 図6の折板用断熱マットの樹脂繊維製不織布の表面に接着剤層が設けられてなる本発明の折板用断熱マットの他例の断面の模式図である。 図5の折板用断熱マットの樹脂繊維製不織布の表面に樹脂発泡シートが接合されてなる本発明の折板用断熱マットの他例の断面の模式図である。 図8の折板用断熱マットの有機繊維混紡無機繊維フェルトの他面に接着剤層が設けられてなる本発明の折板用断熱マットの他例の断面の模式図である。 樹脂繊維製不織布と、結着用樹脂繊維が混合されておらず、無機繊維のみからなる無機繊維フェルトとの積層体の断面の模式図である。 図7の折板用断熱マットが金属製折板の一面に接合されてなる断熱折板の一部の模式的な斜視図である。
符号の説明
101、102、103、104、105;折板用断熱マット、1;有機繊維混紡無機繊維フェルト、1’; 不織布付き混紡繊維フェルト、1'';無機繊維のみからなるフェルト、11;無機繊維、11a;表面から突き出している無機繊維の端部、21;結着用樹脂繊維、21a;表面から突き出している結着用樹脂繊維、211;結着部、22;補強用樹脂繊維、22a;表面から突き出している補強用樹脂繊維、3;樹脂繊維製不織布、4;樹脂発泡シート(樹脂架橋発泡シート)、5;接着剤層、200;断熱折板、201;金属製折板。

Claims (8)

  1. 無機繊維と、該無機繊維のうちの一部の無機繊維を結着している結着用熱可塑性樹脂からなる結着部とを有する有機繊維混紡無機繊維フェルト、該有機繊維混紡無機繊維フェルトの一面に接合された樹脂繊維製不織布、及び該有機繊維混紡無機繊維フェルトの他面、又は該樹脂繊維製不織布の表面に接合された樹脂発泡シートを備え、該無機繊維と該結着部との合計を100質量%とした場合に、該結着部は0.5〜5質量%であることを特徴とする折板用断熱マット。
  2. 上記無機繊維がガラス繊維である請求項1に記載の折板用断熱マット。
  3. 上記樹脂発泡シートがポリオレフィン樹脂発泡シートである請求項1又は2に記載の折板用断熱マット。
  4. 上記有機繊維混紡無機繊維フェルトは、上記結着用熱可塑性樹脂より融点の高い補強用熱可塑性樹脂からなる補強用樹脂繊維を含有し、上記無機繊維、上記結着部及び該補強用樹脂繊維の合計を100質量%とした場合に、該補強用樹脂繊維は5質量%以下である請求項1乃至3のうちのいずれか1項に記載の折板用断熱マット。
  5. 請求項1乃至3のうちのいずれか1項に記載の折板用断熱マットの製造方法であって、
    無機繊維と結着用樹脂繊維とを混合し、機材上に堆積させて混紡繊維綿状体を作製し、その後、該混紡繊維綿状体上に上記樹脂繊維製不織布となる不織布を積層し、又は無機繊維と結着用樹脂繊維とを混合し、該樹脂繊維製不織布となる不織布上に堆積させて混紡繊維綿状体を作製し、次いで、該不織布側からニードルパンチを施してフェルトを形成するとともに、該フェルトと該不織布とを接合させ、その後、加熱し、該結着用樹脂繊維を溶融させて該無機繊維を融着させ、その後、冷却し、該無機繊維のうちの一部の無機繊維を、該結着用樹脂繊維を構成する上記結着用熱可塑性樹脂により結着させ、上記有機繊維混紡無機繊維フェルトを形成し、次いで、該有機繊維混紡無機繊維フェルトの上記他面、又は該樹脂繊維製不織布の上記表面に樹脂発泡シートを接合することを特徴とする折板用断熱マットの製造方法。
  6. 請求項4に記載の折板用断熱マットの製造方法であって、
    無機繊維、結着用樹脂繊維及び該結着用樹脂繊維より高温で溶融する補強用樹脂繊維を混合し、機材上に堆積させて混紡繊維綿状体を作製し、その後、該混紡繊維綿状体上に上記第1樹脂繊維製不織布となる不織布を積層し、又は無機繊維、結着用樹脂繊維及び該結着用樹脂繊維より高温で溶融する補強用樹脂繊維を混合し、該第1樹脂繊維製不織布となる不織布上に堆積させて混紡繊維綿状体を作製し、次いで、該不織布側からニードルパンチを施してフェルトを形成するとともに、該フェルトと該不織布とを接合させ、その後、該結着用樹脂繊維は溶融し、且つ該補強用樹脂繊維は溶融しない温度で加熱し、該結着用樹脂繊維を溶融させて該無機繊維及び該補強用樹脂繊維を融着させ、その後、冷却し、該無機繊維のうちの一部の無機繊維及び該補強用樹脂繊維のうちの一部の補強用樹脂繊維を、該結着用樹脂繊維を構成する上記結着用熱可塑性樹脂により結着させ、上記有機繊維混紡無機繊維フェルトを形成し、次いで、該有機繊維混紡無機繊維フェルトの上記他面、又は該樹脂繊維製不織布の上記表面に樹脂発泡シートを接合することを特徴とする折板用断熱マットの製造方法。
  7. 上記結着用樹脂繊維が、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、鞘がポリエチレンからなり、芯がポリプロピレンからなる芯鞘繊維、及びポリプロピレンとポリエチレンとのサイドバイサイド繊維のうちの少なくとも1種である請求項5又は6に記載の折板用断熱マットの製造方法。
  8. 金属製折板と、該金属製折板に、上記樹脂繊維製不織布側、又は有機繊維混紡無機繊維フェルトの他面側が接合された請求項1乃至4のうちのいずれか1項に記載の折板用断熱マットと、を備えることを特徴とする断熱折板。
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