本実施の形態では、試料に光を照射し、その反射光を検出することによって、試料の表面形状を測定する。これにより、試料の反り(撓み)を評価することができる。典型的な試料としては、半導体ウエハやフォトマスクなどがある。
本実施の形態にかかる表面形状測定装置の構成について、図1を用いて説明する。図1(a)は、表面形状測定装置の構成を示す平面図であり、図1(b)はその側面図である。図1に示すように、表面形状測定装置10は、センサヘッド12、ステージ13、制御装置15、Y駆動機構16、及びX駆動機構17を有している。表面形状測定装置10は、試料11の表面形状を測定する。図1では、鉛直方向をZ方向とし、Z方向と垂直な方向をX方向としている。さらに、Z方向、及びX方向と垂直な方向をY方向としている。よって、XY面は水平面となる。試料11は、XY平面と略平行に配置されている。
試料11は、ステージ13上に載置されている。試料11の下面には、所定のパターン膜11cが形成されている。すなわち、試料11には、パターン膜11cが形成されている領域と、パターン膜11cが形成されていない領域とが存在する。ステージ13は3点で試料11を支持している。すなわち、ステージ13は試料11端部の3点で試料11下面と接触する。従って、試料11の略全体において下側が開放している。すなわち、ステージ13が設けられて3点以外では、試料11の下側が空間になっている。ステージ13としては、例えば、3本の支柱が設けられた中空ステージを用いることができる。ステージ13は、Y駆動機構16に接続されている。Y駆動機構16はステージ13をY方向に移動する。従って、ステージ13上の試料11は、Y駆動機構16によって、Y方向に走査される。
センサヘッド12は、試料11の下側に配置される。すなわち、センサヘッド12は、試料11のパターン面側に配置される。センサヘッド12による検出に基づいて、試料11の表面形状が測定される。センサヘッド12は、検出結果に応じた検出信号を制御装置15に出力する。センサヘッド12は、三角測量の原理を応用して検出を行なっている。センサヘッド12の構成については、後述する。センサヘッド12は、X駆動機構17に接続されている。X駆動機構17は、センサヘッド12をX方向に移動する。従って、ステージ13上の試料11に対するセンサヘッド12の位置がX方向に変化する。このように、X駆動機構17によって、センサヘッド12は、X方向に走査される。X駆動機構17は、例えば、一定速度でセンサヘッド12を往復させる。すなわち、走査領域の両端近傍以外で、センサヘッド12が一定速度でX方向に移動する。
X駆動機構17、及びY駆動機構16は、モータなどのアクチュエータと、リニアガイドなどを有している。これにより、直進性よく移動させることができる。X駆動機構17、及びY駆動機構16は、制御装置15に接続されている。制御装置15は、X駆動機構17、及びY駆動機構16の駆動を制御する。すなわち、制御装置15からの駆動信号によって、X駆動機構17、及びY駆動機構16が駆動される。X駆動機構17は、±X方向にセンサヘッド12を往復運動させる。なお、X駆動機構17の構成については、後述する。
センサヘッド12は、ステージ13よりも高速で移動する。そして、センサヘッド12をX方向に移動しながら、ステージ13をY方向に送り出していく。これによって、試料全面に対して測定を行うことができる。すなわち、測定位置をラスタ走査や、ジグザグ走査することによって、試料11の全体に対して測定を行うことができる。具体的には、X駆動機構17は、試料11の一端から他端まで、センサヘッド12を+X方向に移動させる。これにより、試料11の1ライン分の測定が行なわれる。そして、X方向の1ライン分の移動が終了したら、X駆動機構17は、移動方向を反転させる。また、移動方向を反転させている間に、Y駆動機構16が所定の間隔だけY方向にステージを送り出す。そして、2ライン目の測定を行なう。よって、2ライン目の測定では、逆方向(−X方向)にセンサヘッド12が移動する。なお、センサヘッド12が反転している間以外、センサヘッド12は略同じ速さで移動する。すなわち、1ライン分の測定を行っている間は、センサヘッド12が等速で移動する。このように、X駆動機構17は、センサヘッド12を直線往復動させる。
制御装置15には、センサヘッド12からの検出信号が入力される。制御装置15は、センサヘッド12からの検出信号を記憶する。また、Y駆動機構16はステージ13のY方向の位置を示す位置信号を制御装置15に出力する。また、X駆動機構17はセンサヘッド12のX方向の位置を示す位置信号を制御装置15に出力する。これにより、試料11においてセンサヘッド12が検出を行なっている検出位置の座標を特定することができる。制御装置15は、センサヘッド12からの検出信号に検出位置の座標を対応付けて記憶する。これにより、試料11の各座標での検出信号が記憶される。
制御装置15は、パーソナルコンピュータなどの情報処理装置であり、検出信号に対して所定の演算処理を行なう。すなわち、制御装置15は、CPUやメモリ等の記憶領域を備えるコンピュータである。例えば、制御装置15は、演算処理部であるCPU(Central Processing Unit)、記憶領域であるROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)、通信用のインターフェースなどを有し、表面形状を測定するために必要な処理を実行する。例えば、ROMには、演算処理するための演算処理プログラムや、各種の設定データ等が記憶されている。そして、CPUは、このROMに記憶されている演算処理プログラムを読み出し、RAMに展開する。そして、設定データや、センサヘッド等からの出力に応じてプログラムを実行する。さらに、制御装置15は、演算処理結果を表示させるためのモニター等を有している。なお、制御装置15は、物理的に単一な装置にかぎるものではない。
次に、センサヘッド12の構成について図2を用いて説明する。図2は、センサヘッド12の光学系の構成を示す図である。センサヘッド12には、光源21、レンズ22、スリット23、レンズ24、及び光センサ25が設けられている。なお、図2では、図1に示す構成と上下を反転して図示している。図2では、試料11の表面を試料表面11a、11bとして示している。なお、試料表面11aと試料表面11bとは、センサヘッド12からの距離が変化している。すなわち、試料表面11bは、試料表面11aよりもセンサヘッド12からの距離が離れている。
光源21は、レーザ光源等あり、試料11に対してレーザ光を照射する。従って、光源21からの光は、試料11の表面11aに入射する。試料11の表面11aが、光源21からの光は所定のスポットで照明される。また、光源21からのレーザ光は、試料11に対して斜めに入射する。すなわち、レーザ光は、試料11の表面11aに垂直な方向から傾いた方向に伝播し、所定の入射角度で試料11に入射する。光源21から試料11に入射した光の一部は、試料表面11aで反射される。光源21から試料11に入射した光のうち、試料表面11aで反射した反射光は、レンズ22に入射する。レンズ22は反射光を屈折して、集光する。これにより、反射光は、平行光束となる。
レンズ22で屈折された反射光は、スリット23に入射する。スリット23は、レンズ22の瞳位置に配置されている。スリット23は、所定の幅が開口しており、その外側に入射した反射光を遮光する。すなわち、スリット23に設けられたライン状の開口部内に入射した反射光がスリット23を通過し、開口部外に入射した反射光は、遮光される。これにより、光学系内の迷光を遮光することができる。よって、パターン付き試料11からの回折光による誤差を低減することができ、正確な検出が可能になる。スリット23の中央は、反射光の中央になるように配置されている。スリット23を通過した反射光は、レンズ24に入射する。レンズ24は、反射光を屈折して、光センサ25の受光面に集光する。
光センサ25は、例えば、ラインセンサである。具体的には、光センサ25として1次元CCDを用いることができる。よって、光センサ25の受光面には、受光画素が1列に配置されている。光センサ25は、各受光画素が受光した反射光に応じた検出信号を制御装置15に出力する。すなわち、光センサ上での受光強度のプロファイルが検出信号として出力される。ここで、センサヘッド12と試料11の表面との距離が変化すると、光センサ25での受光位置が変化する。光センサ25の受光画素は、試料表面とセンサヘッド12との距離によって受光位置がずれる方向に、配列されている。例えば、試料表面11aからの反射光は、光センサ25の受光面の略中央の画素に入射するが、試料表面11bからの反射光は、光センサ25の受光面の中央からずれた画素に入射する。ここでは、試料11bからの反射光は、中央の画素から左側にずれた画素に入射している。このように、光源11からの光を試料11に対して斜めに照射しているため、試料11の表面の高さに応じて、試料11の表面上における光の入射位置が変わる。従って、試料11の表面上において、光が反射される位置が変化する。光センサ25と試料11との距離が変わると、光センサ25上での受光位置が変化する。よって、光センサ25の受光面上での反射光の入射位置に基づいて、光センサ25と試料11の表面との距離を求めることができる。
また、スリット23は、試料表面とセンサヘッド12との距離に応じて、光センサ25上での反射光の入射位置が変化する方向に反射光の通過を制限している。具体的には、光学系内の中心から両側にずれた光が遮断されるため、反射光が光学系の中心を通過する。従って、光センサ25で検出されたプロファイルの対称性を維持することができる。よって、光センサ25上での入射位置を正確に抽出することができる。
そして、X駆動機構17、及びY駆動機構16によって、センサヘッド12と試料11との相対位置を変化させる。これにより、試料11に対するセンサヘッド12の位置が水平方向に変化し、試料11上における測定位置が変化する。そして、相対位置を変化させながら、試料11の表面からセンサヘッド12までの距離を測定する。複数の相対位置における試料11の表面からセンサヘッド12までの距離をつなぎ合わせる。こうすることによって、試料11の表面形状を測定することができる。すなわち、光センサ25の中央の受光画素を基準とする入射位置のずれ量が、試料11とセンサヘッド12との距離に対応する。この入射位置のずれ量に応じて、試料11と光センサ25との距離が測定される。そして、試料11の全体に対して、光センサ25から試料11の表面までの距離を測定することで、試料11の凹凸、反り、撓み、うねり等を求めることができる。ここで、センサヘッド12からの検出信号によって、表面形状を測定する処理は、制御装置15において実行させる。
次に、X駆動機構17の構成について、図3、及び図4を用いて説明する。図3は、X駆動機構17の全体構成を模式的に示す斜視図である。図4(a)は、X駆動機構17の構成を模式的に示す側面図、図4(b)は、X駆動機構17の構成を模式的に示す上面図、図4(c)は、X駆動機構17の構成を模式的に示す正面図である。すなわち、図4(a)は、YZ面におけるX駆動機構17の構成を示し、図4(b)は、XY面におけるX駆動機構17の構成を示し、図4(c)は、XZ面におけるX駆動機構17の構成を示している。なお、図4では、X駆動機構17の一部の構成を省略している。X駆動機構17は、センサヘッド12を直線往復動させるための直線往復動装置である。
X駆動機構17は、基台31、支柱32、ガイドレール33、ストッパ37、移動体40、質量体58、及びアクチュエータ60等を有している。移動体40は、スライダ部41、ベース板42、及び第1磁石43を有している。この移動体40には、図1で示したセンサヘッドが設けられる。すなわち、移動体40はベース板42上に取り付けられたセンサヘッド12(図3、4では、図示せず)を有している。移動体40は、X方向に沿って設けられたガイドレール33に沿って移動する。これにより、センサヘッド20がX方向に移動する。さらに、質量体58は、反転部50と連結部55とを有している。また、反転部50は、スライダ部51、ベース板52、及び第2磁石53を有している。
水平に配置された基台31の上面には、2つの支柱32が設けられている。支柱32は、Y方向において、基台31の中央近傍に配置されている。支柱32は、X方向において、基台31の両端に配置される。従って、支柱32は、X方向に所定の距離だけ離間して配置されている。支柱32は、基台31に対して固定されている。この支柱32の上面には、ガイドレール33が設けられている。支柱32は、ガイドレール33の両端を支持している。従って、ガイドレール33は、基台31に対して固定されている。ガイドレール33と基台31との間には、隙間が設けられている。すなわち、ガイドレール33の下側には空間が形成されている。ガイドレール33は、X方向に沿って設けられた角柱部材である。従って、ガイドレール33は、水平方向に沿って配置される。ガイドレール33は、移動体40を直線移動可能に保持している。従って、移動体40は、このガイドレール33にガイドされてX方向に移動する。すなわち、移動体40は、ガイドレール33に沿って移動する。
移動体40のスライダ部41は、ガイドレール33の全周を囲むように設けられている。すなわち、図4(a)に示すように、スライダ部41は、ロの字状に形成され、ガイドレール33を囲繞する。なお、図4(a)では、反転部50について省略して図示している。ガイドレール33は、スライダ部41に挿入されている。従って、スライダ部41は、ガイドレール33の4面に対向する面を有している。スライダ部41は、ガイドレール33に気体を噴出するエアスライダである。具体的には、スライダ部41は、ガイドレール33の太さに応じた矩形状の開口が設けられている。そして、スライダ部41は、ガイドレール33の4面に対して気体を噴出する。具体的には、ガイドレール33の4面のそれぞれに対して気体を噴出する。これにより、ガイドレール33のそれぞれの面と、移動体40との間には微小隙間(エアギャップ)が形成される。すなわち、スライダ部41は、エア噴出によってガイドレール33から静圧浮上する。そして、スライダ部41がガイドレール33に接触せずに、移動体40が移動する。もちろん、移動体40の質量等を考慮して、各面に対する噴出圧や、流量を変えてもよい。このように、スライダ部41が静圧軸受となり、移動体40がガイドレール33に沿って、直進性よく移動する。
スライダ部41の上には、ベース板42が取り付けられている。XY平面において、ベース板42は、スライダ部41と略同じ大きさを有している。ベース板42の上には、第1磁石43が設けられている。ベース板42の上には、2つの第1磁石43が設けられている。2つの第1磁石43は、YZ平面において、同じ位置に設けられている。X方向におけるベース板42の両端に、第1磁石43がそれぞれ配設されている。従って、2つの第1磁石43はX方向において、一定の間隔を隔てて配置されている。このように、移動体40の両端には、第1磁石43がそれぞれ配置されている。
さらに、X方向における移動体40の両側には、反転部50が配置されている。従って、ガイドレール33には、2つの反転部50が設けられている。2つの反転部50は、移動体40の移動行程を挟んで離間配置されている。従って、ガイドレール33には、反転部50、移動体40、反転部50の順番で配設されている。反転部50は、スライダ部51、ベース板52、及び第2磁石53を有する。2つの反転部50は、略同じ構成を有し、YZ面に対して対称に配置されている。スライダ部51は、スライダ部41と同様の構成を有する静圧軸受である。スライダ部51は、ロの字状に形成され、ガイドレール33を囲繞する。すなわち、ガイドレール33は、スライダ部51に挿入されている。従って、スライダ部51は、ガイドレール33の側面を囲むように配置されている。スライダ部51は、ガイドレール33に対してエアを噴出する。これにより、ガイドレール33のそれぞれの面と、移動体40との間には微小隙間(エアギャップ)が形成される。スライダ部51は、ガイドレール33に対して気体を噴出して、静圧浮上する。スライダ部51がガイドレール33に接触せずに、質量体58がX方向に移動する。もちろん、質量体58の質量等を考慮して、各面に対する噴出圧や、流量を変えてもよい。
スライダ部51の上には、ベース板52が取り付けられている。さらに、ベース板52の上には、1つの第2磁石53が設けられている。第2磁石53は、反転部50の移動体40側の端部に配置されている。第2磁石53は、第1磁石43と対向する位置に配置されている。例えば、YZ面において、第1磁石43と第2磁石53とは同じ位置に配置される。第1磁石43と第2磁石53とは、移動体40が反転部50に接近したときに反発するように配置されている。すなわち、移動体40の一方の第1磁石43と一方の反転部50に設けられた第2磁石53が反発する。例えば、図3の示すように、+X側の反転部50に移動体40が近づいた場合、+X側の反転部50に設けられている第2磁石53と、移動体40の+X側の第1磁石43が反発しあう。
このため、第1磁石43、及び第2磁石53は、同極が向かい合うように配置されている。すなわち、図4(b)中、2つの第1磁石のうち、右側(+X側)に配置されている第1磁石43と、2つの反転部50のうち、右側(+X側)の反転部50に設けられている第2磁石53は、同極が対向するように配置される。同様に、図4(b)中、左側(−X側)に配置されている第1磁石と、2つの反転部50のうち、左側(−X側)の反転部50に設けられている第2磁石53は、同極が対向するように、配置される。従って、第1磁石43、及び第2磁石53からなる一対の磁石が、反転部50から移動体40を反発させる反発部材となる。反転部50によって、移動体40の移動方向が反転する。例えば、+X方向に移動している移動体40が+X側の端まで移動すると、+X側に配置された反転部50によって反転する。これにより、移動体40は、−X方向に移動するようになる。また、−X方向に移動している移動体40が−X側の端まで移動すると、−X側に配置された反転部50によって反転する。これにより、移動体40は、+X方向に移動するようになる。このように、移動体40は、反転部50での反転を繰り返すことによって、2つの反転部50の間を往復運動する。
2つの反転部50は、連結部55によって連結されている。2つの連結部55は、移動方向に沿って設けられている。2つの連結部55は、例えば、略同じ構成を有する板状部材である。連結部55は、Y方向における移動体40の両側に配置されている。従って、移動体40は、2つの連結部55の間に挟まれている。移動体40は、2つの反転部50と2つの連結部との間の空間に配置される。また、連結部55と移動体40との間には、隙間が開いている。なお、図3では、説明の簡略化のため、2つの連結部55のうちの一方の連結部55について省略している。連結部55は、例えば、ベース板52の側面に取り付けられている。連結部55によって、2つの反転部50が離間配置されている。すなわち、連結部55は、2つの反転部50を一定の間隔で保持するように、所定の長さを有している。2つの反転部50の間隔は、移動体40の移動行程に応じて決定される。2つの反転部50の間隔は、移動範囲よりも広くなっている。すなわち、連結部55の長さは、測定するために必要な走査距離に対応している。
このように、2つの反転部50を2つの連結部55によって連結することによって、質量体58が構成される。そして、2つの反転部50が同じ速度で移動する。移動体40、及び質量体58は、ガイドレール33に対して気体を噴出して、静圧浮上する。換言すると、ガイドレール33は、非接触で移動体40、及び質量体58を直線移動可能に支持するガイド部材である。また、ガイドレール33によって、質量体58、及び移動体40の移動方向がX方向に限定される。すなわち、質量体58、及び移動体40は、Y方向、及びZ方向に移動しない。
さらに、X方向における質量体58の外側には、ストッパ37が設けられている。ここでは、質量体58の+X方向、及び−X方向の移動を制限するように、ストッパ37が質量体58の両側にそれぞれ配置されている。ストッパ37は、図4(a)に示すように、断面コの字型に設けられ、ガイドレール33の上、及び左右を囲んでいる。このストッパ37が、質量体58のX方向の移動を制限する。ストッパ37によって、質量体58がガイドレール33からはみ出さないようになる。ストッパ37は、ガイドレール33の両端にそれぞれ配置されている。従って、2つのストッパ37が基台31に対して固定されている。ここでは、ストッパ37は、支柱32と反転部50との間に配置されている。
+X側に配置されたストッパ37は、質量体58の+X方向の移動を制限する。−X側に配置されたストッパ37が質量体58の−X方向の移動を制限する。ストッパ37が質量体58の可動範囲を設定している。具体的には、ストッパ37には、質量体58側に突出した突出部37aが設けられている。+X側に配置されたストッパ37は、−X側に突出した突出部37aを有している。また、−X側に配置されたストッパ37は、+X側に突出した突出部37aを有している。例えば、移動している反転部50が突出部37aと当接することによって、質量体58の移動が制限される。なお、突出部37aをバネ、ゴムなどの弾性体することも可能である。また、磁石を用いたダンピング機構によって、反転部50の移動を制限することも可能である。ダンピング機構を用いた場合、反転部50、及びストッパ37のそれぞれに磁石を設ける。例えば、突出部37aに磁石を設け、反転部50のストッパ37側に磁石を設ける。これにより、ストッパ37と反転部50が近づくと、反転部50に反発力が加わる。さらに、ストッパ37と反転部50とを、バネ要素等で連結してもよい。バネ要素が収縮することによって、質量体58の移動が制限される。すなわち、バネ要素によって、移動体40、及び質量体58の移動範囲が規定される。
さらに、図3に示すように、ガイドレール33の下には、アクチュエータ60が設けられている。なお、図4では、アクチュエータ60について省略している。アクチュエータ60は、例えば、リニアモータであり、可動子61、固定子62、及びエンコーダ63を有している。固定子62は棒状の部材であって、基台31に対して固定されている。固定子62は、X方向に沿って設けられている。さらに、固定子62は、可動子61が移動可能に支持されている。可動子61は、移動体40に取り付けられている。従って、可動子61に電圧を印加することによって、可動子61が固定子62に沿って移動する。ここで、アクチュエータ60は電磁アクチュエータであるため、可動子61と固定子62とが非接触状態で動作する。従って、アクチュエータ60は、非接触で移動体40に対して駆動力を与える。これにより、移動体40が可動子61とともに移動する。換言すると可動子61が、移動体40に含まれることになる。従って、移動体40は、可動子61を有している。アクチュエータ60が移動体40に駆動力を与えることによって、移動体40が加速する。
さらに、アクチュエータ60は、エンコーダ63を有している。エンコーダ63は、X方向における可動子61の位置、又は移動距離を測定する。このエンコーダ63からの出力によって、移動体40の移動速度を測定することができる。そして、アクチュエータ60は、エンコーダ63からの出力に基づいて、移動体40を目標速度で移動させる。すなわち、アクチュエータ60は、移動体40が目標速度で等速運動するように、駆動力を与える。アクチュエータ60は、制御装置15によって制御される。すなわち、アクチュエータ60が移動体40に与える駆動力は、制御装置15によって制御される。
ここで、移動体40が移動している状態について、図5、及び図6を用いて説明する。図5は、X駆動機構17による駆動を説明するための概念図である。図5、及び図6では、X駆動機構17の一部の構成のみを示している。図5(a)では、移動体40が+X方向に移動している状態を示している。図5(b)では、移動体40が+X側の移動端に移動した状態を示している。図6(c)では、移動体40が−X方向に移動している状態を示している。図6(d)では、移動体40が−X側の移動端に移動した状態を示している。また、質量体58は、弾性体であるバネ要素39によって、ストッパ37に連結されている。このバネ要素39については、後述する。
図5、及び図6では、移動体40の+X側の第1磁石43を第1磁石43aとし、−X側の第1磁石43を第1磁石43bとしている。さらに、質量体58の+X側に設けられた反転部50を反転部50aとし、−X側に設けられた反転部50を反転部50bとしている。同様に、反転部50aに設けられた第2磁石53を第2磁石53aとし、反転部50bの第2磁石53を第2磁石53bとしている。すなわち、図5、及び図6中の右側の部材には符号の後にaを付し、左側の部材には符号の後にbを付している。また、以下の説明において、第1磁石43は+X側の第1磁石43a、及び−X側の第1磁石43bの両方を示すものとする。また、第2磁石53は、+X側の第2磁石53a、及び−X側の第2磁石53bの両方を示すものとする。
移動体40の質量をmAとし、質量体58の質量をmBとする。また、X方向における移動体40の速度をVAとし、質量体58の速度をVBとする。なお、+X方向に移動するときの速度を正とし、−X方向に移動するときの速度を負とする。従って、移動体40の速度VAと、質量体58の速度VBとは、異なる符合になっている。また、質量体58は、移動体40よりも十分重くなっている。すなわち、質量体58の質量mBは、移動体40の質量mAよりも十分大きくなっている。従って、質量mB≫質量mAとなる。例えば、質量mBを質量mAの10倍以上とすることが好ましい。
まず、図5(a)に示すように、移動体40が+X方向に移動している状態を考える。このとき、質量体58は−X方向に移動している。なお、質量体58は、移動体40よりも十分遅くなっている。移動体40と質量体58が接近していく。これにより、第1磁石43aと第2磁石53aとの間隔が小さくなっていく。第1磁石43aと第2磁石53bとは、同極が向かい合うように配置されている。例えば、第1磁石43aの第2磁石53a側がN極の場合、第2磁石53aの第1磁石43a側がN極になっている。従って、N極同士が対向配置されている。もちろん、N極ではなく、S極同士が対向配置されていてもよい。移動体40と反転部50aが接近すると、第1磁石43aと第2磁石53aとが反発する。すなわち、移動体40が反転部50aに接近するにつれて、第1磁石43aと第2磁石53aとの斥力が大きくなっていく。
従って、移動体40と反転部50aとが接近していくと、移動体40は−X方向の磁力を受ける。また、移動体40と反転部50aとが接近していくと、質量体58は+X方向の磁力を受ける。質量体58と移動体40とは、反対方向の力を受ける。第1磁石43aと第2磁石53aとが近づくにつれて、磁力が徐々に大きくなっている。移動体40、及び質量体58は、移動方向と反対方向の磁力を受ける。これにより、移動体40が減速されていく。このとき、質量体58も減速されていく。そして、図5(b)に示す位置で、移動体40が停止する。このとき、質量体58も停止する。換言すると、移動体40、及び質量体58の運動エネルギーがポテンシャルエネルギーに変換される。
このように、移動体40は徐々に減速して停止する。その後、移動体40は、さらに磁力を受けて、−X方向に加速していく。すなわち、移動体40は、移動端で停止した後、加速する。このように、第2磁石53aによって、移動体40は折り返す。これにより、+X方向の移動端で移動体40が反転する。移動体40は、第2磁石53aから磁力によって跳ね返される。換言すると、移動体40が反転する位置が、図5(b)に示す移動体40の移動端(ストロークエンド)となる。また、質量体58も同様に、反転する。すなわち、第1磁石43aによって、質量体58を跳ね返される。移動端では、VA、及びVBは0になっている。
移動体40が反転部50aに接近することによって、磁力に応じた反発力が発生する。すなわち、第1磁石43、及び第2磁石53が移動体40に反発力を付与する反発部材になる。この反発力によって、移動体40が跳ね返される。第1磁石43、及び第2磁石53の間で発生する磁力によって、移動体40が跳ね返される。+X方向に移動していた移動体40が反転して、−X方向に移動する。このとき、第1磁石43aと第2磁石53aの斥力によって、質量体58が反転している。すなわち、質量体58の移動方向が反転して、+X方向に移動する。磁石による反発力は、移動体40の反転部50に対する位置に応じて変化する。
反転された移動体40は、磁力を受けて、加速していく。そして、第1磁石43aの影響がほとんどない位置まで移動する。これにより、図6(c)に示すように、移動体40が、−X方向に等速運動する。第1磁石43と第2磁石53とが十分に離間しているため、移動体40が磁力によって、ほとんど加減速されない。この時、質量体58は、+X方向に移動している。但し、質量体58の速度VBは非常に小さいため、質量体58の移動距離は微小になる。
磁力をほとんど受けない時、移動体40は、−X方向に等速移動していく。このとき、第1磁石43aと第2磁石53aとが十分離れているため、ほとんど磁力を受けない。すなわち、移動体40は、磁力を受けずに、慣性で移動していく。そして、移動体40は、反転部50bに近づいていく。第2磁石53bと第1磁石43bとの間隔が徐々に狭くなっていく。また、第1磁石43bと第2磁石53bとは、同極が向かい合うように、配置されている。すなわち、第1磁石43a、及び第2磁石53aの配置と同様に、同極が対向配置されている。移動体40と反転部50bが接近すると、第1磁石43bと第2磁石53bとが反発する。すなわち、移動体40が反転部50bに接近するにつれて、第1磁石43bと第2磁石53bとの斥力が大きくなっていく。
従って、移動体40と反転部50bとが接近していくと、移動体40は+X方向の磁力を受ける。また、移動体40と反転部50bとが接近していくと、質量体58は−X方向の磁力を受ける。すなわち、質量体58と移動体40とは、反対方向の力を受ける。第1磁石43bと第2磁石53bとが近づくにつれて、磁力が徐々に大きくなっている。移動体40、及び質量体58は、それぞれの移動方向と反対方向の力を受ける。これにより、移動体40が減速されていく。このとき、質量体58も減速されていく。そして、図6(d)に示す位置で、移動体40が停止する。このとき、質量体58も停止する。そして、さらに磁力を受けて、+X方向に加速していく。すなわち、−X方向の移動端で移動体40が反転する。このように、移動体40は、第2磁石53bから磁力によって跳ね返される。移動端で移動体40が折り返して、移動方向が反転する。換言すると、移動体40が反転する位置が、図6(d)に示す移動体40の移動端となる。また、質量体58も同様に、反転する。すなわち、第1磁石43aによって、質量体58を跳ね返される。移動端では、移動体40の速度VA、及び質量体58の速度VBは0になっている。
そして、上記の動作を繰り返して、移動体40が直線往復運動する。すなわち、移動体40は+X方向、及び−方向の移動を繰り返し行う。すなわち、移動体40が磁力を受けるまでの間は、慣性で移動する。そして、磁力を受けることによって、移動体40が反転する。換言すると、移動体40は、移動端の近傍で反転動作をして、移動範囲の中央で等速移動する。等速で移動する等速区間の両側には、反転動作を行う反転区間が配置される。このように、移動体40の移動行程の両端には、反転区間が配置され、中央には等速区間が配置される。
可動子61を含む移動体40と、質量体58とがX方向のみに移動すると仮定する。そして、移動方向と垂直なYZ平面において、移動体40と質量体58との重心位置が一致しているとする。すなわち、Y方向、及びZ方向において、移動体40の重心が、質量体58の重心と同じ位置にある。なお、移動体40の重心位置とは、スライダ部41、及びスライダ部41とともに移動するものを含む物体の重心位置である。従って、移動体40に可動子61、及びセンサヘッド12が取り付けられた場合、可動子61、及びセンサヘッド12を含む移動体40の重心位置が移動体40の重心位置となる。また、質量体58の重心位置とは、スライダ部51、及びスライダ部51とともに移動するものを含む物体の重心位置である。ここで、移動体40の運動量と、質量体58の運動量が同じ大きさになっているとする。すなわち、mAVA=−mBVBの条件を満たすとする。
運動量、及びエネルギーが保存する場合、反転前後で、移動体40の速さが等しくなる。すなわち、反転前後で、移動体40の速度の大きさが等しく、向きが反対になる。従って、運動量の絶対値が等しければ、等速区間では、移動体40の速さは略一定になる。質量体58と移動体40との質量差が大きいため、反転前後で、移動体40が運動エネルギーをほとんど失わない。同様に、反転前後で、質量体58の速さが等しくなる。すなわち、反転前後で、質量体58の速度の大きさが等しく、向きが反対になる。このように、移動体40の両側に反転部50を設けることによって、簡便に反転させることができる。これにより、アクチュエータ60で減速させることなく、移動体40を折り返すことができる。従って、低損失で高速に折り返すことができる。
上記のように、移動方向以外における移動体40、及び質量体58の重心位置が一致している。このため、折り返し時に、X方向以外の力が移動体40に加わらない。例えば、移動体40にかかるモーメント力を低減することができ、損失が低減される。移動体40を折り返すための反発力が、反転部50によって与えられている。従って、低損失で、高速な折返しが可能になる。なお、移動体40の移動端では、磁力を受けて、減速、又は加速している。換言すると、移動端の近傍では、アクチュエータ60によって、駆動力を受けなくなる。これにより、折り返すときにガイドレール33にかかるモーメント力を低減することができる。よって、振動による損失を低減することができる。質量体58の全体の質量を、移動体40の全体の質量よりも十分重くしている。このため、質量体58の移動距離を小さくすることができる。よって、装置の大型化を防ぐことができる。また、質量体58と移動体40が同じガイドレール33に沿って移動する。このため、直進性を向上することができ、損失を低減することができる。
摩擦が全くない理想的な状態では、移動体40を目標速度まで加速すれば、移動体40は直線往復動を永久に繰り返す。すなわち、熱や振動による損失が全くない場合、アクチュエータ60によって駆動力を与えなくでも往復運動を繰り返す。損失が全くない場合、移動体40が繰り返し反転する。しかしながら、実際には、往復運動をしている間の微小な振動や熱によって、エネルギーが減少していく。例えば、折返し時には、熱や振動による微小な損失が発生する。熱や振動によるエネルギー損失によって、等速区間での、移動体40の速さが減少していく。エネルギーの損失を、アクチュエータ60によって補填する。具体的には、アクチュエータ60は、熱や振動によって損失したエネルギーを移動体40に与える。そして、移動体40の移動速度を目標速度で維持する。
移動体40の移動速度は、エンコーダ63の測定結果に基づいて、求めることができる。例えば、エンコーダ63で測定した移動距離、又は位置を微分することによって、移動速度を算出することができる。この移動速度が一定の目標速度よりも低くなっているときに、アクチュエータ60が駆動する。これにより、移動体40に駆動力が与えられて、加速する。そして、移動速度が目標速度に到達したら、アクチュエータ60の駆動が停止する。これにより、損失した分だけ、移動体40が加速される。
なお、図5、及び図6では、反転部50とストッパ37との間には、バネ要素39が設けられている。反転部50の外側に設けられたバネ要素39がストッパ37と反転部50とを連結している。ここでは、それぞれの反転部50に同じバネ要素39が設けられている。2つのバネ要素39が質量体58の振動中心を規定する。質量体58は振動中心に対して対称に往復運動する。具体的には、質量体58に力が全くかかっていないと、質量体58は、バネ要素39に押されて、中心位置に移動する。ここでは、2つのバネ要素39が同じものであるので、X方向における質量体58の重心位置は、ストッパ37間の中心になる。従って、移動体40もX方向における中心位置に対して対称に往復運動する。このように、バネ要素39をストッパ37と反転部50との間に設けることによって、移動体40の移動範囲を確実に規定することができる。なお、バネ要素39としては、バネ定数が小さい弾性体を用いることが好ましい。バネ要素39が、ストッパ37から反転部50を反発させるストッパ用反発部材となる。ストッパ反発部材による反発力は、反転部50のストッパ37に対する位置に応じて変化する。
移動体40の移動端近傍では、移動体40が磁力を受けて、加減速している。移動端の近傍では、アクチュエータ60によって、駆動力を受けなくなる。等速区間では、目標速度に追従するようにフィードバック制御する必要がある。一方、反転区間では、移動速度が変化する必要があるため、目標速度に追従するようフィードバック制御する必要がない。すなわち、アクチュエータ60による駆動力の制御を切り換える必要がある。このように制御を切換えるための構成について説明する。図7は、X駆動機構17の構成を模式的に示す図である。従って、図7では、X駆動機構17の構成要素の一部を適宜省略している。
図7に示すように、X駆動機構17には、エンドセンサ70、及びエンドセンサ71が設けられている。エンドセンサ70、及びエンドセンサ71は、等速区間のエンド(端)を検知する。具体的には、エンドセンサ70が、等速区間の右端を検知し、エンドセンサ71が左端を検知する。例えば、エンドセンサ70、及びエンドセンサ71は、受光素子と発光素子とを有するフォトインターラプタである。そして、発光素子からの光が受光素子に検出されているか否かを判定する。すなわち、受光素子が発光素子からの光を検出しなくなると、フォトインタラプターはOnする。移動体40は、発光素子からの光を遮光する遮光板45を有している。すなわち、移動体40に設けられた遮光板45は移動体40とともに移動する。遮光板45は、移動体40の移動に応じて、発光素子と受光素子との間に移動する。
移動体40が等速区間を移動しているときは、X方向において遮光板45がエンドセンサ70、71からずれている。従って、等速区間では、遮光板45がエンドセンサ70、71の光を遮光しない。等速区間では、エンドセンサ70、71がOffとなる。一方、移動体40が反転区間を移動しているときは、X方向において遮光板45がエンドセンサ70、又はエンドセンサ71と同じ位置になる。従って、反転区間では、遮光板45がエンドセンサ70、又はエンドセンサ71の光を遮光する。具体的には、図7中、右側の反転区間では、遮光板45がエンドセンサ70の光を遮光して、エンドセンサ70がOnする。また、左側の反転区間では、遮光板45がエンドセンサ71の光を遮光して、エンドセンサ71がONする。Onしたエンドセンサ70は、右側の反転区間に入ったことを示す検知信号を出力し、Onしたエンドセンサ71は、左側の反転区間に入ったことを示す検知信号を出力する。なお、移動体40が右側の反転区間を移動しているとき、遮光板45は、常時、エンドセンサ70の光を遮光する。なお、移動体40が左側の反転区間を移動しているとき、遮光板45は、常時、エンドセンサ71の光を遮光する。
従って、等速区間を+X方向に移動している移動体40が右側の反転区間に入ったら、エンドセンサ70が検知信号を出力する。そして、反転した移動体40が右側の反転区間から出たら、エンドセンサ70は、反転区間に入っていることを示す検知信号を出力しなくなる。また、等速区間を−X方向に移動している移動体40が左側の反転区間に入ったら、エンドセンサ71が検知信号を出力する。そして、反転した移動体40が左側の反転区間から出たら、エンドセンサ71は、反転区間に入っていることを示す検知信号を出力しなくなる。従って、移動体40が右側の反転区間にいるときは、エンドセンサ70のみが検知信号を出力し、エンドセンサ71が検知信号を出力しない。また、移動体40が左側の反転区間にいるときはエンドセンサ71のみが検知信号を出力し、エンドセンサ70が検知信号を出力しない。このように、エンドセンサ70、71からの検知信号によって、移動体40が右側の反転区間、等速区間、及び左側の反転区間のいずれを移動しているかを判別することができる。
そして、等速区間でのみ、アクチュエータ60を駆動する。これにより、移動体40は、等速区間のみで加速される。従って、移動体40が一定の目標速度Vmで等速運動をする。
一方、両方の反転区間では、アクチュエータ60が駆動しない。反転区間では、アクチュエータ60が停止する。従って、移動体40は、磁力のみで加減速される。このような、エンドセンサ70、71を設けることで、簡便に制御することができる。
始動時は、停止している移動体40をアクチュエータ60で加速して、目標速度に到達させる。そして、移動体40を複数回反転させば、定常的に、往復運動をする。すなわち、反転する毎に、質量体58にもエネルギーが与えられる。ここで、等速区間では、目標速度で等速運動するように、移動体40が加速されている。従って、反転区間で質量体58に与えられたエネルギーが、等速区間で移動体40に補填される。すなわち、反転区間で移動体40から質量体58に移った運動エネルギーに応じて、等速区間で移動体40が加速される。そして、移動体40を繰り返し反転させていくと、等速区間で移動体40に与える力が徐々に減少していく。すなわち、質量体58に十分なエネルギーが与えられ、質量体58が定常的に往復運動するようになる。等速区間では、移動体40が目標速度Vmで移動する。すなわち、移動体40が目標速度Vmで移動するように、アクチュエータ60がフィードバック制御される。
そして、等速区間で、与える力が十分に小さくなったら、表面形状の測定を開始する。すなわち、定常して往復運動する状態となったら、測定を開始する。センサヘッド12が取り付けられている移動体40をX方向に往復運動させながら、Y方向にステージ13を送り出していく。これにより、試料全面を測定することができる。また、等速区間でのみ測定を行うようにする。換言すると、試料の測定範囲に応じて等速区間を設定する。これにより、移動体40が一定速度で移動している状態で測定が行われる。よって、正確に測定することができる。なお、エンドセンサ70、71は、フォトインターラプタに限られるものではない。例えば、位置検出センサを用いて、ストロークエンドを検出してもよい。
次に、上記の直線往復動装置を用いて往復運動させる方法について図8を用いて説明する。図8は、上記の直線往復動装置を用いた直線往復運動方法を示すフローチャートである。まず、移動体40の速度制御を開始する(ステップS101)。ここでは、移動体40を目標速度Vmまで加速する。また、上記のように、移動体40を複数回、反転させて、定常的な往復運動をさせる。すなわち、移動体40に与える力が十分に減少するまで、移動体40を反転させる。そして、等速区間で移動体40が目標速度Vmで移動させる(ステップS102)。すなわち、等速区間でアクチュエータ60をフィードバック制御して、移動体40を等速で移動させる。
そして、エンドセンサ70、又はエンドセンサ71がOnしたか否かを判定する(ステップS103)。これにより、移動体40が反転区間にいるか否かが判定される。すなわち、移動体40が等速区間から反転区間に到達すると、2つのエンドセンサ70、71の一方がOnになる。エンドセンサ70、又はエンドセンサ71がONしていないと判定されたら、ステップS102に戻る。すなわち、移動体40が反転区間にはおらず、等速区間にいると判定される。エンドセンサ70、又はエンドセンサ71がONしたと判定されたら、ステップS104に進む。すなわち、移動体40が等速区間にはおらず、反転区間にいると判定する。エンドセンサ70、又はエンドセンサ71がOnするまで、アクチュエータ60をフィードバック制御する。
エンドセンサ70、又はエンドセンサ71がONしたら、移動体40への制御を停止する(ステップS104)。すなわち、エンドセンサ70、又はエンドセンサ71がONしたら、移動体40が反転区間を移動していると判定される。制御装置15は、アクチュエータ60の駆動を停止して、移動体40を加速しないようにする。すると、移動体40は、慣性で移動して、質量体58で跳ね返される(ステップS105)。すなわち、磁力に受けて、移動体40が折り返す。また、質量体58も折り返す。このようにして、移動体40、及び質量体58の移動方向が反転する。
そして、エンドセンサ70、及びエンドセンサ71のいずれかがOnに切り換わったかを判定する。すなわち、ステップS103において、どちらのエンドセンサがOnになったかを判定する。そのため、まず、エンドセンサ71がOffからOnに切り換わったかを判定する(ステップS106)。エンドセンサ71がOffからOnに切り換わった場合、移動体40の目標速度Vmの符号を正に置き換える(ステップS108)。すなわち、エンドセンサ71がOnになった場合、左側の反転区間を移動していると判定される。このため、反転後は、移動体40が+X方向に移動する。従って、目標速度Vmの符号を正にする。
一方、エンドセンサ71がOffからOnに切り換わっていない場合、エンドセンサ70がOffからOnに切り換わったか否かを判定する(ステップS107)。エンドセンサ70がOffからOnに切り換わった場合、移動体40の目標速度Vmの符号を負に置き換える(ステップS109)。すなわち、エンドセンサ70がOnになった場合、右側の反転区間を移動していると判定される。このため、反転後は、移動体40が−X方向に移動する。従って、目標速度Vmの符号を正にする。なお、エンドセンサ71がOffからOnに切り換わっていない場合、ステップS106に戻る。なお、ステップS107、及びステップS109では、目標速度Vmの大きさは変わっておらず、符号のみを変えている。
このように、目標速度Vmの符号を置き換えたら、移動体40の速度制御を再開する(ステップS110)。ここでは、エンドセンサ70、及びエンドセンサ71がOffの状態で、移動体40を加速する。すなわち、エンドセンサがOnからOffに切り換わった後、アクチュエータ60の駆動が開始する。これにより、折返し時に損失したエネルギーが移動体40に与えられる。すなわち、移動体40は折返し時等の損失によって減速した分だけ、加速される。そして、ステップS102に戻り、同様の処理を繰り返す。このように制御することによって、折り返される毎に、目標速度Vmの符号が変わる。そして、制御装置15は、目標速度に到達するよう制御する。よって、簡便な制御で、等速区間での等速運動を繰り返す。そして、移動体40が往復運動を行う。
上記の直線往復動装置をX駆動機構17として用いる。すなわち、等速区間を測定領域に対応させる。センサヘッド12が取り付けられている移動体40をX方向に往復運動させながら、Y方向にステージ13を送り出していく。これにより、試料全面を測定することができる。また、等速区間でのみ測定を行うようにする。換言すると、試料の測定範囲に応じて等速区間を設定する。これにより、移動体40が一定速度で移動している状態で測定が行われる。正確な測定が可能になる。上記の構成によって、センサヘッド12を高速に折り返すことができる。よって、測定時間を短縮することができる。また、折返し時に発生する振動や熱を低減することができる。反転時の損失を低減することができるため、エネルギー効率を向上することができる。
なお、上記の説明では、第1磁石43、及び第2磁石53の磁力によって反発させたが、これに限られるものではない。例えば、移動体40と反転部50とを衝突させて、反転させてもよい。すなわち、移動している移動体40は反転部50と当接する。これにより、移動体40が跳ね返される。このように、移動体40を衝突させることによって、折返し時間をより短くすることができる。すなわち、衝突によって折り返す場合、移動端まで減速することがない。よって、高速に折り返すことが可能になる。なお、第1磁石43、及び第2磁石53の磁力を用いることによって、移動体40と反転部50とが接触しなくなる。よって、衝突による発塵を防ぐことができる。よって、試料であるフォトマスクや、半導体ウエハの汚染を低減することができる。
なお、第1磁石43a、及び第2磁石53aの残留磁束密度を低くして、移動体40と反転部50を衝突させるようにしてもよい。この場合、移動体40が反転部50に当接することによって、移動方向が反転する。このようにすることによって、衝突による衝撃を緩和させることができる。また、第1磁石43a、及び第2磁石53aの残留磁束密度を高くすることによって、移動体40と反転部50が接触しなくなる。すなわち、非接触で、移動体40が反転する。これにより、衝突による発塵を低減することができる。
上記の説明では、反転部50と移動体40に反発力を付与するための反発部材として、第1磁石43a、及び第2磁石53aを用いている。なお、反発部材は、第1磁石43a、及び第2磁石53aに限られるものではない。例えば、バネ、ゴムなどの弾性体を反発部材として用いてもよい。すなわち、磁力、又は弾性力を用いて移動体40を跳ね返すことができる。この場合、図9に示すように、移動体40に弾性体48を設ければよい。なお、図9は、本発明の別の態様にかかるX駆動機構17の構成を模式的に示す図である。弾性体48は、移動体40の他の部分よりも、反転部50側に突出している。なお、移動体40ではなく、反転部50に弾性体48を設けてもよい。さらには、反転部50、及び弾性体48の両方に設けてもよい。さらに、反発部材として、磁石、及び弾性体48の両方を用いてもよい。なお、移動体40の両側に配置された2つの反発部材は、同じ反発力を付与することが好ましい。このように、距離に応じた反発力を移動体40に与える反発部材を用いることによって、衝突による発塵を低減することができる。また、反発力が弱く、移動体40と反転部50が衝突する場合でも、衝突による衝撃を緩和することができる。
例えば、ポリブタジエン等のゴム系材料を弾性体48として用いることができる。あるいは、金属バネ等を用いてもよい。このような弾性体や磁石などを用いることによって、移動体40と反転部50との距離が縮まると、反発力が大きくなる。従って、衝突による衝撃を緩和することができる。すなわち、距離に応じた反発力を付与する反発部材を設けることによって、衝撃を緩和することができる。さらに、反発部材を残留磁束密度が高い磁石とした場合、移動体40と反転部50とが衝突しなくなる。よって、接触することによって発生する発塵を低減することができる。
また、上記の説明では、質量体58を中央に移動させるためのストッパ用反発部材としてバネ要素39を用いている。なお、ストッパ用反発部材は、バネ要素39に限られるものではない。例えば、ストッパ用反発部材としてゴムなどの弾性体を用いることができる。さらには、バネ要素の替わりに磁石を用いること可能である。この場合、質量体58、及びストッパ37に対してそれぞれ磁石を設ける。そして、第1磁石43、及び第2磁石53と同様に、同極が向かい合うように一対の磁石を配置する。例えば、反転部50側にN極が配置されるように、ストッパ37に磁石を設ける。この場合、ストッパ37側にN極が配置されるように、反転部50に磁石を設ける。このように、磁石、又は弾性体をストッパ用反発部材として用いることができる。磁力、又は弾性力を用いて質量体58の位置を規制してもよい。また、磁石、及び弾性体をストッパ用反発部材として用いることも可能である。さらには、ストッパ37を弾性体で形成してもよい。この場合、ストッパ37自体が、ストッパ用反発部材となる。すなわち、磁石、及び弾性体を有するストッパ37を設けることによって、ストッパ37に対する反転部50の位置に応じて変化する反発力が反転部50に付与される。
上記のX駆動機構17によってセンサヘッド12をX方向に駆動する。表面形状測定装置によって、表面形状を正確に求めることができる。特にパターン付き基板に対する表面形状の測定に好適である。よって、半導体のシリコンウエハや、半導体製造工程で用いられるフォトマスクの反り、撓み、うねり等を正確に評価することができる。よって、不良となるウエハやフォトマスクを取り除くことができ、半導体の生産性を向上することができる。また、折返し時間を短くすることができるので、測定時間を短縮することができる。さらに、移動体40が測定範囲を移動している間は、等速運動する。これにより、正確な測定が可能になる。よって、生産性を向上することができる。
また、表面形状の測定装置に限らず、光検出器を移動させる測定装置であればよい。例えば、CCDカメラなどの光検出器を直線往復動させるようにしてもよい。上記の直線往復動装置は、試料からの光を受光する光検出器を直線往復動させて測定を行う光学測定装置、及び光学測定方法に対して、好適である。さらに、上記の光学測定装置での測定結果に基づいて、試料を検査する。すなわち、試料の平坦度が許容範囲内に含まれるか否かによって、試料の適否判定を行なう。さらに、検査結果に応じて、欠陥の修正等を行ってもよい。このようにパターン基板の製造工程中に上記の測定装置を用いた検査工程を組み込むことによって、パターン基板の生産性を向上することができる。さらに、上記の測定装置、及び測定方法では、静圧軸受、及びリニアモータを用いて非接触で移動させているため、損失を低減することができる。