JP2008259517A - セルロースからの乳酸製造装置および乳酸製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】セルロースの糖化と乳酸発酵を同時に行う同時糖化発酵を効率よく行う乳酸製造方法および乳酸製造装置の提供。
【解決手段】セルロースの糖化と乳酸発酵とを同時に進行させてセルロースから乳酸を製造する装置であって、糖化糟と、発酵糟と、該糖化糟にセルロース材料を供給する投入ラインと、該糖化糟から糖化物取出ラインを経て送られた糖化物からセルロース短繊維を含む糖化液を分離して糖化物供給ラインを経て該発酵糟に移送するとともに、セルロース長繊維を含む残渣を残渣返送ラインを経て該糖化糟に戻す第1の分離手段と、該発酵糟から発酵物取出ラインを経て取り出した発酵物から乳酸を含む発酵液を分離して発酵液取出ラインを経て取り出すとともに、乳酸発酵微生物を含む残渣を発酵残渣返送ラインを経て該発酵糟に返送する第2の分離手段とを含むセルロースからの乳酸製造装置。
【選択図】図1
【解決手段】セルロースの糖化と乳酸発酵とを同時に進行させてセルロースから乳酸を製造する装置であって、糖化糟と、発酵糟と、該糖化糟にセルロース材料を供給する投入ラインと、該糖化糟から糖化物取出ラインを経て送られた糖化物からセルロース短繊維を含む糖化液を分離して糖化物供給ラインを経て該発酵糟に移送するとともに、セルロース長繊維を含む残渣を残渣返送ラインを経て該糖化糟に戻す第1の分離手段と、該発酵糟から発酵物取出ラインを経て取り出した発酵物から乳酸を含む発酵液を分離して発酵液取出ラインを経て取り出すとともに、乳酸発酵微生物を含む残渣を発酵残渣返送ラインを経て該発酵糟に返送する第2の分離手段とを含むセルロースからの乳酸製造装置。
【選択図】図1
Description
本発明は、古紙資源等のセルロース系バイオマス資源を糖化し、次いで乳酸発酵して乳酸を製造する、セルロースからの乳酸製造装置および乳酸製造方法に関する。
近年、セルロース系バイオマス資源を酵素分解し、その構成単位であるグルコース、キシロースに糖化し、更にこれらの糖化物を発酵して得られるエタノールや乳酸などを液体燃料もしくは化学原料として利用することが検討されている。乳酸発酵によって得られた乳酸は、食品添加物として清酒、醤油、ビール、清涼飲料、漬け物、製パンなどの製造に使用され、また工業用原料として皮革、繊維、プラスチックなどの製造に利用される。さらに近年ではポリ乳酸(PLA)が生分解性ポリマーとして優れた性質を有することが明らかとなり、その原料としての乳酸が注目されている。
従来、発酵法による乳酸の製造は、ラクトバシラス(Lactobacillus)、ラクトコッカス(Lactococcus)などのいわゆる乳酸菌と呼ばれるバクテリアにより、糖水溶液或いは澱粉から得られる糖液を炭素源とし、これに酵母エキスなどの栄養源を副原料として加えた培地で培養することによって行われている。しかしながら、上述した乳酸菌を用いる発酵法は、糖からの乳酸の収率が高い利点があるものの、その培養に糖や酵母エキス等の高価な材料を使用するため、生産コストが高くなる欠点がある。
従来、発酵法による乳酸の製造は、ラクトバシラス(Lactobacillus)、ラクトコッカス(Lactococcus)などのいわゆる乳酸菌と呼ばれるバクテリアにより、糖水溶液或いは澱粉から得られる糖液を炭素源とし、これに酵母エキスなどの栄養源を副原料として加えた培地で培養することによって行われている。しかしながら、上述した乳酸菌を用いる発酵法は、糖からの乳酸の収率が高い利点があるものの、その培養に糖や酵母エキス等の高価な材料を使用するため、生産コストが高くなる欠点がある。
乳酸菌を用いた発酵法における上記問題を解消するべく、リゾプス(Rhizopus)属などの糸状菌を用い、安価な炭素源から乳酸を製造する方法が種々開発されている。糸状菌を用いる方法は、糖からの乳酸収率が最大70〜80%と乳酸菌を用いた場合と比べて必ずしも高収率ではなく、また培養に通気を要するという短所があるが、培地成分として糖以外には少量の無機塩のみで良く、培地コストが安価なこと、さらに、L-体の光学純度が高いこと、菌体がペレットを形成するため菌体分離が容易である等の長所がある。
特開平6−253871号公報には、乳酸生成能を有するリゾプス属の糸状菌の胞子を液体培地に植菌し、通気による撹拌を行いつつ培養することにより生成する菌体集合物(ペレット)を液体培地中に浮遊させて発酵を行わせることを特徴とする乳酸の製造方法が開示されている。
また特開平9−173090号公報には、底部から空気を吹き込む気泡塔型バイオリアクターを使用し、炭素源として澱粉若しくはその糖化液またはグルコースを含有する水性培地でリゾプス(Rhizopus)属に属する菌を培養することを特徴とするL(+)−乳酸の製造法、及び該方法を実施するためのバイオリアクターが開示されている。
また、廃棄物である汚泥の有効利用を図るために、汚泥を乳酸発酵して乳酸を製造する試みもなされている。例えば、特開平9−308494号公報には、汚泥に乳酸菌を添加し乳酸発酵を行う工程を含む、乳酸の製造方法が開示されている。また該公報には、この乳酸発酵をセルラーゼの存在下で行う方法、および汚泥に乳酸菌を添加し乳酸発酵を行って得た乳酸含有液と脱窒素菌とを排水に添加し、排水中の窒素含有化合物を分解する排水処理方法が記載されている。
特開平6−253871号公報
特開平9−173090号公報
特開平9−308494号公報
特開平6−253871号公報には、乳酸生成能を有するリゾプス属の糸状菌の胞子を液体培地に植菌し、通気による撹拌を行いつつ培養することにより生成する菌体集合物(ペレット)を液体培地中に浮遊させて発酵を行わせることを特徴とする乳酸の製造方法が開示されている。
また特開平9−173090号公報には、底部から空気を吹き込む気泡塔型バイオリアクターを使用し、炭素源として澱粉若しくはその糖化液またはグルコースを含有する水性培地でリゾプス(Rhizopus)属に属する菌を培養することを特徴とするL(+)−乳酸の製造法、及び該方法を実施するためのバイオリアクターが開示されている。
また、廃棄物である汚泥の有効利用を図るために、汚泥を乳酸発酵して乳酸を製造する試みもなされている。例えば、特開平9−308494号公報には、汚泥に乳酸菌を添加し乳酸発酵を行う工程を含む、乳酸の製造方法が開示されている。また該公報には、この乳酸発酵をセルラーゼの存在下で行う方法、および汚泥に乳酸菌を添加し乳酸発酵を行って得た乳酸含有液と脱窒素菌とを排水に添加し、排水中の窒素含有化合物を分解する排水処理方法が記載されている。
セルロースからの乳酸製造プロセスにおいて、製品である乳酸のコストを低減するには、生産物濃度と生産速度を高くすることが重要である。高い生産物(乳酸)濃度を得るには、中間物質としての糖濃度を10%程度以上とする必要があるが、セルラーゼによる糖化反応は、高い糖濃度になると生成糖による阻害が生じ、反応速度が著しく低下する。また、糖化反応を開放系で行うとコンタミネーションしやすいため無菌系で行うことが望ましいが、糖化工程、糖化液輸送工程、発酵工程を全て無菌系にする必要があり、設備コストが大きくなる問題がある。
それを解決する手段として、セルラーゼによる糖化と発酵を同一の糟で行う同時糖化発酵が検討されており、特にバイオマスアルコール分野では精力的に最適化が行われている。しかし、完全な同時糖化発酵ではセルラーゼの糖化反応で効果的な強い撹拌による剪断力が微生物に対し悪影響を与える場合があり、撹拌速度を発酵微生物に合わせたものに調整する必要がある。また、発酵微生物が好気性微生物である場合、通気が必要であるが、糖化液中のセルロースや残渣のスラリーが通過を妨げる原因になる。特に、大きなペレットを生成する微生物の場合、セルロースや糖化残渣に付着して流動性がさらに悪化することがある。
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、セルロースの糖化と乳酸発酵を同時に行う同時糖化発酵を効率よく行う乳酸製造方法および乳酸製造装置の提供を目的としている。
上記目的を達成するために、本発明は、セルロースの糖化と乳酸発酵とを同時に進行させてセルロースから乳酸を製造する装置であって、糖化糟と、発酵糟と、該糖化糟にセルロース材料を供給する投入ラインと、該糖化糟から糖化物取出ラインを経て送られた糖化物からセルロース短繊維を含む糖化液を分離して糖化物供給ラインを経て該発酵糟に移送するとともに、セルロース長繊維を含む残渣を残渣返送ラインを経て該糖化糟に戻す第1の分離手段と、該発酵糟から発酵物取出ラインを経て取り出した発酵物から乳酸を含む発酵液を分離して発酵液取出ラインを経て取り出すとともに、乳酸発酵微生物を含む残渣を発酵残渣返送ラインを経て該発酵糟に返送する第2の分離手段とを含むことを特徴とするセルロースからの乳酸製造装置を提供する。
本乳酸製造装置において、前記発酵ゾーンに空気等の酸素含有ガスを導入する通気ラインを含む構成としてよい。
また前記第1の分離手段と第2の分離手段は、流下式スクリーン、円筒回転式スクリーンおよび真空濾過機のような濾過分離手段、またはデカンターおよびサイクロンのような遠心分離手段から選択される固液分離機としてよい。
本乳酸製造装置において、前記発酵ゾーンに空気等の酸素含有ガスを導入する通気ラインを含む構成としてよい。
また前記第1の分離手段と第2の分離手段は、流下式スクリーン、円筒回転式スクリーンおよび真空濾過機のような濾過分離手段、またはデカンターおよびサイクロンのような遠心分離手段から選択される固液分離機としてよい。
さらに本発明は、上記乳酸製造装置を用いてセルロースの糖化と乳酸発酵とを同時に進行させてセルロースから乳酸を製造する方法であって、糖化糟においてセルロース材料にセルラーゼを作用させて糖化するとともに、発酵糟において糖化物を乳酸発酵微生物によって乳酸発酵し、乳酸を含む発酵液を得ることを特徴とする乳酸製造方法を提供する。
本発明の乳酸製造方法において、前記乳酸発酵微生物は、好気性微生物、特にリゾプス(Rhizopus)属に属する菌であることが望ましい。
また前記セルロース材料は、古紙であることが望ましい。
本発明の乳酸製造方法において、前記乳酸発酵微生物は、好気性微生物、特にリゾプス(Rhizopus)属に属する菌であることが望ましい。
また前記セルロース材料は、古紙であることが望ましい。
本発明によればセルロースの糖化と乳酸発酵を同時に行う同時糖化発酵を効率よく行う乳酸製造方法および乳酸製造装置を提供できる。
図1は、本発明に係るセルロースからの乳酸製造装置の一実施形態を示す図である。本乳酸製造装置は、セルロース材料をセルラーゼによって糖化する糖化ゾーン3と糖化液を乳酸発酵微生物で発酵して乳酸を生産する発酵ゾーン4とをセルロース短繊維および水溶液が透過可能な透液性隔壁2で仕切った糖化発酵糟1と、該糖化ゾーン3にセルロース材料を供給する投入ライン5と、該糖化ゾーン3と発酵ゾーン4の少なくとも一方から乳酸を含む発酵液を取り出す取出ライン5とを備えて構成されている。
本乳酸製造装置において、前記透液性隔壁2は、孔径0.1〜5.0mmの金網またはパンチングメタルが好ましい。このような透液性隔壁2で糟内を仕切ることによって、セルロース長繊維や菌体のペレットまたは固定化菌体はそれぞれのゾーンに保持されるが、短い繊維や糖、乳酸、酵素は両ゾーンを自由に行き来することができる。
また本乳酸製造装置では、糖化ゾーン3内の液を撹拌する第1の撹拌手段8と、発酵ゾーン4内の液を該第1の撹拌手段8よりも温和に撹拌する第2の撹拌手段9とを含む構成になっている。これらの撹拌手段としては、液中に沈めて配置したインペラーを所望回転数で回転させて撹拌する周知の撹拌機を利用することができ、特に第2の撹拌手段9は菌体にダメージを与えずに撹拌することができるような回転数制御あるいはインペラー形状を備えたものが好ましい。各ゾーン3,4毎に別個の撹拌手段8,9を配置して、撹拌条件を別々に設定できるので、糖化ゾーン3では比較的強い撹拌を行って効率的な糖化を行わせ、一方発酵ゾーン4ではセルロース短繊維に対する酵素の作用(糖化)、および乳酸発酵微生物による乳酸発酵の同時糖化発酵が効率よく行われる。糖化発酵の際、糖化発酵糟1全体としては低い糖濃度に保たれるため、糖化反応の生成物阻害は少なくなる。
さらに本乳酸製造装置では、発酵ゾーン4に空気等の酸素含有ガスを導入する通気ライン6を設け、好気性微生物を用いた乳酸発酵を行うことができる。本例示のように、乳酸発酵微生物として、栄養要求性の低い微生物、例えばリゾプス・オリザエ(Rhizopus oryzae)を用いると、糖化液に添加する栄養塩が少ないため、コンタミネーションが生じ難い。なお、嫌気性微生物による乳酸発酵を行う場合には、この通気ライン6は不要となる。また、使用微生物によっては発酵ゾーンの形式としてエアリフト方式を採用してよく、その採用によって消費動力を削減することができる。
本乳酸製造装置を構成する各構成要素、すなわち糖化発酵糟1、透液性隔壁2、投入ライン5、通気ライン6、取出ライン7、第1の撹拌手段8および第2の撹拌手段9のうち、少なくとも発酵液に接触する部分は、乳酸に接触しても腐食されない耐酸性の良好な材料、例えばステンレス鋼、チタン合金、フッ素樹脂などの合成樹脂コーティング鋼材、アルミニウム(好ましくは酸化被膜形成アルミニウム)、ガラスなどの材料で構成される。また糖化発酵糟1には、上述した各構成要素以外に、糖化液および発酵液を所望温度に調節、維持する温度調節手段、液のpHを所定値に保持、あるいは変更するpH調節装置、液の濁度、糖度、溶存酸素量等を測定する各種測定機器等を付設することができる。
本例示において、糖化発酵糟1は平面視円形(図1の下方の図参照)の糟を中央部で上記透液性隔壁2で仕切り、その一方を糖化ゾーン3とし、他方を発酵ゾーン4としているが、糖化発酵糟1の形状は平面視円形に限らず、図2に示すように平面視四角形、あるいは楕円形、長尺帯状などの他の形状とすることができる。さらに上記透液性隔壁2による仕切りは、図3に示すように、糟内に同心円状に設けて、その外側を糖化ゾーン3とし、内側を発酵ゾーン4としてもよい(あるいは内外を入れ替えてもよい)。なお、糖化ゾーン3と発酵ゾーン4は横並び、上下並びのいずれでもよいが、通気動力の低さ、運転管理の利便性などから横並びの方が好ましい。また、糖化ゾーン3と発酵ゾーン4の容積比は、使用微生物に応じて適宜設定してよく、例えばリゾプス・オリザエ(Rhizopus oryzae)を用いる古紙からの乳酸発酵においては糖化ゾーン3の容積を糖化発酵糟1全体の容積に対して50%以上90%以下にすることが好ましい。
次に、上述した乳酸製造装置を用いた乳酸製造方法を説明する。本乳酸製造方法は、上述した乳酸製造装置を用いてセルロースの糖化と乳酸発酵とを同時に進行させてセルロースから乳酸を製造する方法であり、糖化ゾーン3においてセルロース材料にセルラーゼを作用させて糖化するとともに、発酵ゾーン4において糖化物を乳酸発酵微生物によって乳酸発酵し、乳酸を含む発酵液を得る工程を含んでいる。
本乳酸製造方法において、セルロース材料としては各種のセルロース資源が使用できるが、セルロース資源の中でも、基質としてはコストが発生せず、入手、扱いが容易なものが好ましく、その点で古紙は有望な基質の一つである。古紙はセルロース系廃棄物の中でも比較的加水分解が容易であり、例えば酵素(セルラーゼ)による糖化では前処理なしでも十分な濃度の糖液が得られる。一般に古紙は、新聞紙、雑誌、オフィス紙、段ボール紙などの多種類があり、通常はそれらの混合物として回収された古紙が用いられる。古紙はセルロース、ヘミセルロースおよびリグニンを含み、その他に印刷インキやトナーなどの着色剤、充填料などを含んでいる。本発明においては、乾燥重量基準で有機物比率90%以上、リグニン含有量20%以下、ヘミセルロース含有量20%以下の組成を有するものを用いることができ、通常の古紙資源は全て利用可能である。
本乳酸製造方法において古紙を糖化するために使用する酵素、セルラーゼは、セルロースのβ-1,4-グルコシド結合をエンド型で切断し、最終的にグルコースを生成する。このセルラーゼは、トリコデルマ・ビリデ(Trichoderma viride)またはアスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)から得られた各種の市販セルラーゼ製剤を利用することができる。しかし、安価かつ大量にセルラーゼを使用するためには、トリコデルマ(Trichoderma)属に属するセルラーゼ生産菌、またはAspergillus属に属するセルラーゼ生産菌を培養し、発酵液若しくは菌体を除去した酵素液を古紙糖化に使用することが好ましい。
なお、セルラーゼの品質改良手段として、例えば遺伝子組み替えや細胞融合などの手法を用い、より強力なセルラーゼを効率よく生産できる菌を創製し、それを用いてセルラーゼを生産することも可能である。
なお、セルラーゼの品質改良手段として、例えば遺伝子組み替えや細胞融合などの手法を用い、より強力なセルラーゼを効率よく生産できる菌を創製し、それを用いてセルラーゼを生産することも可能である。
本発明において、乳酸発酵微生物としては糸状菌であるリゾプス(Rhizopus)属に属する菌、好ましくはリゾプス・オリザエ(Rhizopus oryzae)を用いる。当該菌は、好気条件下で10〜12%程度のグルコースから8〜10%のL-乳酸を生成する。当該菌は、純粋培養された保存菌株を継代培養して利用することができ、また天然由来菌或いは保存菌株に放射線処理などの適宜な突然変異誘発処理を施して新たな菌株を創製し、古紙糖化液に含まれる成育阻害物質に耐性を有するなどの製造上好都合な特性を有する菌株をスクリーニングして用いることができる。リゾプス・オリザエ(Rhizopus oryzae)を用いて乳酸発酵を行う場合、培地としては炭素源である糖液の他に、少量の無機塩だけで良い。培地組成の一例を表1に示す。
本乳酸製造方法において、古紙から乳酸を製造するには、まず、乳酸製造設備内に受け入れた古紙を前処理装置に送り、不燃物を選別する前処理を行う。この前処理の方法は、供給される古紙の種類、品質などに応じて適宜設定され、古紙を裁断、離解(パルピング)、または乾式の繊維化し、必要に応じて綴じ合わせに用いられた金属、合成樹脂フィルムなどの不燃物を除去する。これら不燃物の除去には、磁気選別、比重選別、風力選別などの周知の分離技術および装置を利用することができる。さらに、油性インキやトナーなどの親油性不純物を積極的に除去するために、古紙をパルピングした後、浮遊選別によって親油性不純物を浮遊せしめて除去することもできる。なお、不燃物を実質上含まない良質古紙を原料とする場合には、この前処理を省くこともできる。
前処理を終えた古紙は、投入ライン5を経て糖化発酵糟1の糖化ゾーン3に供給される。
前処理を終えた古紙は、投入ライン5を経て糖化発酵糟1の糖化ゾーン3に供給される。
糖化ゾーン3には、供給される古紙と同時に、あるいは別個の供給ラインを通してセルラーゼ溶液、補給水或いはpH調節済みの緩衝液が供給可能になっている。糖化反応は、連続式、回分式、半回分式など、いずれの方式でも良く、糖化ゾーン3は温度35℃〜60℃、pH3〜6に保持し、撹拌下で糖化を行う。第1の撹拌手段8による糖化ゾーン3内の撹拌は、比較的強めに行うことが好ましく、この撹拌により材料古紙の離解、繊維分散がさらに促進される。
発酵ゾーン4には、菌体(例えばリゾプス・オリザエ(Rhizopus oryzae)菌体)、栄養塩を添加し、通気ライン6を通して空気などの酸素含有ガスを供給する。糖化ゾーン3において、セルラーゼの働きによって分解された糖、オリゴ糖、可溶性多糖類、およびセルロース長繊維が部分的に切断されて生じたセルロース短繊維は、透液性隔壁2の孔を通って糖化液として糖化ゾーン3側から発酵ゾーン4側に移動する。一方、セルラーゼによる分解、糖化が不充分なセルロース長繊維は、透液性隔壁2を透過できず、糖化ゾーン3に留められる。糖化ゾーン3中のセルラーゼは、糖化液とともに透液性隔壁2を通って発酵ゾーン4に移動でき、発酵ゾーン4においてもセルロース短繊維等の分解(糖化)が続行される。
従って、発酵ゾーン4においては、セルロース短繊維等の未糖化物のセルラーゼによる糖化と、糖化物中の糖(グルコース、キシロースなど)から乳酸が生成される乳酸発酵微生物の乳酸発酵とが同時に進行する。第2の撹拌手段9による発酵ゾーン4の撹拌は、比較的温和な条件とされる。なお、通気ライン6から空気を圧送するエアレーションによって、該発酵ゾーン4内が十分に撹拌されるなら、第2の撹拌手段9を不要にできる。
糖化と発酵の方式は連続、回分のいずれでも可能であるが、コンタミネーション対策、運転管理の利便性などから、糖化は流加式、発酵は回分式で行うことが望ましい。
この糖化発酵において、糖化発酵糟1内の液温、pHは、糖化ゾーン3および発酵ゾーン4とで等しくなるが、糖化ゾーン3側を加熱し、発酵ゾーン4側を冷却して若干の温度差を設けることは可能である。また糖化ゾーン3から発酵ゾーン4への液の流速は、投入ライン5等を経て糖化ゾーン3に投入される古紙や水の量と、発酵ゾーン4から取出ライン7を経て抜き出される発酵液の液量を調節することで適宜調節可能である。
糖化と発酵の方式は連続、回分のいずれでも可能であるが、コンタミネーション対策、運転管理の利便性などから、糖化は流加式、発酵は回分式で行うことが望ましい。
この糖化発酵において、糖化発酵糟1内の液温、pHは、糖化ゾーン3および発酵ゾーン4とで等しくなるが、糖化ゾーン3側を加熱し、発酵ゾーン4側を冷却して若干の温度差を設けることは可能である。また糖化ゾーン3から発酵ゾーン4への液の流速は、投入ライン5等を経て糖化ゾーン3に投入される古紙や水の量と、発酵ゾーン4から取出ライン7を経て抜き出される発酵液の液量を調節することで適宜調節可能である。
発酵ゾーン4内の発酵液中の乳酸濃度が所定の濃度(例えば70〜90g/L程度)になったら、撹拌、エアレーションを止め、反応を終了させる。次いで、取出ライン7を通して糖化ゾーン3および発酵ゾーン4のそれぞれから乳酸を含むブロスを抜き出し、固液分離して濾液を乳酸生成工程に送り、乳酸の使用用途に応じて所望の精製処理(濾過、イオン交換、濃縮、減圧蒸留等)を施して製品の乳酸を生産し、あるいはポリ乳酸などの原料として利用される。
本実施形態による乳酸製造装置およびそれを用いた乳酸製造方法によれば、糖化ゾーン3と発酵ゾーン4とをセルロース短繊維および水溶液が透過可能な透液性隔壁2で仕切った糖化発酵糟1を備えた乳酸製造装置を用い、該糖化ゾーン3に古紙等のセルロース材料とセルラーゼを入れ、撹拌下で糖化させるとともに、該発酵ゾーン4に乳酸発酵微生物を入れ、さらに各ゾーン3,4毎に別個の撹拌手段8,9を配置して、撹拌条件を別々に設定できるので、糖化ゾーン3では比較的強い撹拌を行って効率的な糖化を行わせ、一方発酵ゾーン4では乳酸発酵微生物に損傷を与えない比較的温和な撹拌条件下(またはエアレーション下)でセルロース短繊維に対する酵素の作用(糖化)、および乳酸発酵微生物による乳酸発酵の同時糖化発酵が効率よく行われる。また糖化発酵の際、糖化発酵糟1全体としては低い糖濃度に保たれるため、糖化反応の生成物阻害は少なくなる。従って、セルロース材料を効率よく、高い生産速度で乳酸を製造することができる。
図4は本発明のセルロースからの乳酸製造装置の他の実施形態を示す図である。本実施形態において乳酸製造装置は、セルロース材料をセルラーゼによって分解、糖化する糖化糟10と、糖化液中の糖(グルコース、キシロース等)を乳酸発酵微生物により乳酸発酵する発酵糟11と、該糖化糟10にセルロース材料、水およびセルラーゼ溶液等を同時にまたは別個に供給する投入ライン(図示略)と、該糖化糟10から糖化物取出ライン12を経て送られた糖化物からセルロース短繊維を含む糖化液を分離して糖化物供給ライン15を経て該発酵糟に移送するとともに、セルロース長繊維を含む残渣を残渣返送ライン14を経て該糖化糟10に戻す第1の分離手段13と、該発酵糟11から発酵物取出ライン16を経て取り出した発酵物から乳酸を含む発酵液を分離して発酵液取出ライン18を経て取り出すとともに、乳酸発酵微生物を含む残渣を発酵残渣返送ライン20を経て該発酵糟に返送する第2の分離手段17とを備えて構成されている。
糖化糟10および発酵糟11には、図示しない撹拌手段が設けられ、これらの撹拌手段は、上記第1、第2の撹拌手段8,9と同じく、糖化糟10においては比較的強めに液を撹拌して糖化を促進でき、一方発酵糟11においては、発酵糟11内の乳酸発酵微生物に損傷を与えない程度の比較的弱めの撹拌を行うことができるものを選択して配置することができる。発酵糟11の撹拌手段は、エアレーションにより代用できる。糖化糟10および発酵糟11には、糖化液および発酵液を所望温度に調節、維持する温度調節手段、液のpHを所定値に保持、あるいは変更するpH調節装置、液の濁度、糖度、溶存酸素量等を測定する各種測定機器等を付設することができる。
本例示では、発酵糟11に空気等の酸素含有ガスを供給してエアレーションを行わせる通気ラインが設けられている。乳酸発酵微生物として、栄養要求性の低い微生物、例えばリゾプス・オリザエ(Rhizopus oryzae)を用いると、糖化液に添加する栄養塩が少ないため、コンタミネーションが生じ難い。なお、嫌気性微生物による乳酸発酵を行う場合には、この通気ラインは不要となる。また、使用微生物によっては発酵糟の形式としてエアリフト方式を採用してよく、その採用によって消費動力を削減することができる。
前記第1の分離手段13と第2の分離手段17は、流下式スクリーン、円筒回転式スクリーンおよび真空濾過機のような濾過分離手段、またはデカンターおよびサイクロンのような遠心分離手段から選択される固液分離機とすることができ、好ましくはデカンターが用いられる。第2の分離手段17から発酵液を取り出す発酵液取出ライン18は、糖化糟10に接続する発酵液返送ライン19を途中で分岐し、発酵液を循環させつつ同時糖化発酵することもできる。
さらに、第1の分離手段13と第2の分離手段17による固液分離方式として、糖化糟10(または発酵糟11)の内部に重力沈降ゾーンを設け、オーバーフローを発酵糟11(または糖化糟10)に供給する手段を追加してもよい。この重力沈降ゾーンは糖化糟10、発酵糟11の両方または一方に設置できる。
さらに、第1の分離手段13と第2の分離手段17による固液分離方式として、糖化糟10(または発酵糟11)の内部に重力沈降ゾーンを設け、オーバーフローを発酵糟11(または糖化糟10)に供給する手段を追加してもよい。この重力沈降ゾーンは糖化糟10、発酵糟11の両方または一方に設置できる。
本実施形態の乳酸製造装置は、先の実施形態による乳酸製造装置と同じく、糖化糟10では比較的強い撹拌を行って効率的な糖化を行わせ、一方発酵糟11では乳酸発酵微生物に損傷を与えない比較的温和な撹拌条件下(またはエアレーション下)でセルロース短繊維に対する酵素の作用(糖化)、および乳酸発酵微生物による乳酸発酵の同時糖化発酵が効率よく行われる。また糖化発酵の際、全体としては低い糖濃度に保たれるため、糖化反応の生成物阻害は少なくなる。従って、セルロース材料を効率よく、高い生産速度で乳酸を製造することができる。
内容量3Lのステンレスビーカー(直径150mm、高さ200mm、上部開放)に、透液性隔壁としてアルミニウム製パンチ板(孔径1mm)で作製した円筒(直径75mm、高さ200mm、上部開放)を設置し、このパンチ板円筒内を糖化ゾーンとし、上部に撹拌機(インペラー;ディスクタービン翼(直径50mm)を設置した。パンチ板とステンレスビーカーの間は発酵ゾーンとして通気装置を設置した。トータル液量を2Lとして以下の条件で反応を行った(実施例)。対照としては、パンチ板円筒を配置しないビーカーで2通りの撹拌速度で同様の反応を行った(比較例1,2)。他の条件(古紙の添加量、添加のタイミング、酵素量、反応温度、炭酸カルシウムの添加量)は全て等しくした。殺菌は特に行わなかった。
(実験条件)
[原料]オフィス古紙(前処理は離解し濾過、乾燥)
[糖化]酵素:市販セルラーゼ
添加酵素量:10FPU/g−古紙
仕込みの古紙濃度:15w/v%(トータル)
反応方式:流加(0時間、24時間、48時間に5w/v%ずつ古紙および 相当量の酵素を添加)
撹拌速度:基質の流動性に応じ50〜300rpmの間で調整
[発酵]使用菌体:リゾプス・オリザエ(Rhizopus oryzae)
pH:3〜7(炭酸カルシウム2w/v%を2回添加しpHの低下を防ぐ)
通気量:0.5vvm
培地:古紙の他に表1に示した無機塩類培地を添加した。
[原料]オフィス古紙(前処理は離解し濾過、乾燥)
[糖化]酵素:市販セルラーゼ
添加酵素量:10FPU/g−古紙
仕込みの古紙濃度:15w/v%(トータル)
反応方式:流加(0時間、24時間、48時間に5w/v%ずつ古紙および 相当量の酵素を添加)
撹拌速度:基質の流動性に応じ50〜300rpmの間で調整
[発酵]使用菌体:リゾプス・オリザエ(Rhizopus oryzae)
pH:3〜7(炭酸カルシウム2w/v%を2回添加しpHの低下を防ぐ)
通気量:0.5vvm
培地:古紙の他に表1に示した無機塩類培地を添加した。
[セルラーゼ活性測定法] FPU:濾紙(ワットマン No.1)50mgを基質とし、これに酵素液0.5mLとクエン酸緩衝液(pH4.8、0.05M)1.0mLを加え、50℃で1.0時間酵素反応を行った後、ジニトロサリチル酸試薬3.0mLを加え、100℃で5分間加熱し発色させる。冷却後、これにイオン交換水または蒸留水20mLを加え、540nmの波長で比色定量する。1分間に1μmolのグルコースに相当する還元糖を生成する酵素量を1ユニット(FPU)とした。
[結果]
実施例:パンチ板円筒による仕切りを設置した同時糖化発酵(撹拌速度300rpmで一定)
比較例1:仕切り無しでの同時糖化発酵(撹拌速度300rpmで一定)
比較例2:仕切り無しでの同時糖化発酵(撹拌速度100rpmで一定)
これらの実施例、比較例1,2のそれぞれについて、同時糖化発酵の開始から所定時間経過時毎にサンプルを採取して乳酸含有量を測定し、結果を図5にまとめた。
図5に示す結果からわかるように、パンチ板円筒による仕切りを設置した同時糖化発酵(実施例)においては、古紙から4〜6日で70g/L以上の濃度の乳酸が製造できる。
一方、仕切り無しの同時糖化発酵(比較例1,2)においては、実施例に比べて乳酸生産量が明らかに低かった。
実施例:パンチ板円筒による仕切りを設置した同時糖化発酵(撹拌速度300rpmで一定)
比較例1:仕切り無しでの同時糖化発酵(撹拌速度300rpmで一定)
比較例2:仕切り無しでの同時糖化発酵(撹拌速度100rpmで一定)
これらの実施例、比較例1,2のそれぞれについて、同時糖化発酵の開始から所定時間経過時毎にサンプルを採取して乳酸含有量を測定し、結果を図5にまとめた。
図5に示す結果からわかるように、パンチ板円筒による仕切りを設置した同時糖化発酵(実施例)においては、古紙から4〜6日で70g/L以上の濃度の乳酸が製造できる。
一方、仕切り無しの同時糖化発酵(比較例1,2)においては、実施例に比べて乳酸生産量が明らかに低かった。
1A〜1C 糖化発酵糟
2 透液性隔壁
3 糖化ゾーン
4 発酵ゾーン
5 投入ライン
6 通気ライン
7 取出ライン
8 第1の撹拌手段
9 第2の撹拌手段
10 糖化糟
11 発酵糟
12 糖化物取出ライン
13 第1の分離手段
14 残渣返送ライン
15 糖化物供給ライン
16 発酵物取出ライン
17 第2の分離手段
18 発酵液取出ライン
20 発酵残渣返送ライン
2 透液性隔壁
3 糖化ゾーン
4 発酵ゾーン
5 投入ライン
6 通気ライン
7 取出ライン
8 第1の撹拌手段
9 第2の撹拌手段
10 糖化糟
11 発酵糟
12 糖化物取出ライン
13 第1の分離手段
14 残渣返送ライン
15 糖化物供給ライン
16 発酵物取出ライン
17 第2の分離手段
18 発酵液取出ライン
20 発酵残渣返送ライン
Claims (7)
- セルロースの糖化と乳酸発酵とを同時に進行させてセルロースから乳酸を製造する装置であって、
糖化糟と、発酵糟と、該糖化糟にセルロース材料を供給する投入ラインと、該糖化糟から糖化物取出ラインを経て送られた糖化物からセルロース短繊維を含む糖化液を分離して糖化物供給ラインを経て該発酵糟に移送するとともに、セルロース長繊維を含む残渣を残渣返送ラインを経て該糖化糟に戻す第1の分離手段と、該発酵糟から発酵物取出ラインを経て取り出した発酵物から乳酸を含む発酵液を分離して発酵液取出ラインを経て取り出すとともに、乳酸発酵微生物を含む残渣を発酵残渣返送ラインを経て該発酵糟に返送する第2の分離手段とを含むことを特徴とするセルロースからの乳酸製造装置。 - 前記発酵ゾーンに空気等の酸素含有ガスを導入する通気ラインを含む請求項1記載のセルロースからの乳酸製造装置。
- 前記第1の分離手段と第2の分離手段が、流下式スクリーン、円筒回転式スクリーンおよび真空濾過機のような濾過分離手段、またはデカンターおよびサイクロンのような遠心分離手段から選択される固液分離機である請求項1または2記載のセルロースからの乳酸製造装置。
- 請求項1〜3のいずれかに記載の乳酸製造装置を用いてセルロースの糖化と乳酸発酵とを同時に進行させてセルロースから乳酸を製造する方法であって、糖化糟においてセルロース材料にセルラーゼを作用させて糖化するとともに、発酵糟において糖化物を乳酸発酵微生物によって乳酸発酵し、乳酸を含む発酵液を得ることを特徴とする乳酸製造方法。
- 前記乳酸発酵微生物が、好気性微生物である請求項4記載の乳酸製造方法。
- 前記乳酸発酵微生物が、リゾプス(Rhizopus)属に属する菌である請求項4または5記載の乳酸製造方法。
- 前記セルロース材料が、古紙である請求項4〜6のいずれかに記載の乳酸製造方法。
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WO2013190874A1 (ja) * | 2012-06-21 | 2013-12-27 | 月島機械株式会社 | バイオマスの処理装置および処理方法 |
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-
2008
- 2008-06-30 JP JP2008170829A patent/JP2008259517A/ja active Pending
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