JP2008039157A - 電磁弁 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】電磁弁80のプランジャ132をプランジャ本体172とスリーブ174とによって構成し、プランジャ本体172の側面に凸部200を設ける。その凸部200をプランジャ本体172と同じく強磁性材料で形成し、スリーブ174を非磁性材料で形成する。ソレノイド124が発生する磁界によって、プランジャ本体172とハウジング120との間の隙間176を磁力線が通過するが、スリーブ174を通過する磁力線の磁束密度よりも、凸部200を通過する磁力線の磁束密度が大きくなり、凸部200とハウジング120とが引きつけ合う力が強くなる。その結果、プランジャ132を軸線に直角な直交平面内の凸部200の側に移動させる力が生じ、プランジャ132とハウジング120との摩擦抵抗が大きくなり、プランジャ132の自励振動が抑制される。
【選択図】 図2
Description
そのハウジング内に軸方向に往復動可能に設けられたプランジャと、
そのプランジャの先端部に保持された弁子と、
前記ハウジングの前記弁子と対向する位置に設けられ、前記高圧側の液通路が弁子によって閉塞可能に開口させられた弁座と、
前記プランジャを前記弁座に接近または弁座から離間する向きに付勢する弾性体と、
その弾性体が付勢する向きと逆向きにプランジャを移動させる磁気力を発生させるソレノイドと、
前記プランジャの往復動を抑制する力を付与する抑制力付与装置と
を含むことを特徴とする電磁弁。
本項に記載の電磁弁は、弁子を往復動させることにより、弁子が弁座に着座した状態と、弁座から離間した状態とを切り換えて弁の開閉を行うものであり、例えば、ポペット弁をソレノイドで駆動するといった態様である。すなわち、弁子と弁座とを含んで弁が構成されているのである。なお、弁子およびプランジャの弁座に接近する向きの移動を前進、弁子等の弁座から離間する向きの移動を後退と表現する場合がある。
本電磁弁は、常閉弁と常開弁とのいずれとしても構成することができる。例えば、本電磁弁が常閉弁にされる態様では、弾性体によってプランジャが弁座に接近させる向きに付勢されており、電力が供給されていない状態において弁子が弁座に着座させられて弁が閉状態にされ、一方、電力が供給された状態において、ソレノイドの磁気力によって強磁性体のプランジャが弁座から離間する向きに移動させられ、弁子が弁座から離間させられて弁が開状態にされる。逆に、本電磁弁が常閉弁にされる態様では、電力が供給されていない状態において、弾性体の付勢力によって弁子が弁座から離間させられて弁が開状態にされる。
一般的に、電磁弁の開度が中間的な状態において、弁子およびプランジャ(以後、「弁子等」と略記する場合がある)には、弾性体の付勢力(以下、「弾性力」と称する場合がある)、ソレノイドの磁気力、流体の圧力(高圧側の圧力と定圧側の圧力との差圧)が作用している。ここで、電磁弁が常閉弁であるとすると、弾性体の付勢力が弁子を弁座に接近させる向きに作用するのに対し、流体圧力に基づく差圧作用力と磁気力とが弁子を弁座から離間させる向きに作用する。ところが、これら弾性力、磁気力および差圧作用力の釣り合いが振動状態となり、弁子等が軸方向(往復動方向)に振動させられ、自励振動が発生する場合がある。この自励振動が大きい場合や、あるいは、最初は小さくとも自励振動が成長した場合には、例えば、液圧の制御が困難になったり、異音が発生したりするなど、好ましくない状況となる。
それに対し、本電磁弁によれば、プランジャにそれの往復動を抑制する力を付与することにより、弁子等の振動が発生すること、あるいは、弁子等の振動が成長することを抑制することができる。すなわち、本発明によればより実用的な電磁弁が得られるのである。
プランジャの往復動を抑制する力は、例えば、後述するように、プランジャとハウジングとの摩擦抵抗を意図的に増加させることや、弁が開いた状態においても弁子を弁座に接触させ続けること等によって付与することができる。なお、抑制力付与装置は、プランジャの前進、後退のいずれか少なくとも一方を抑制するものとすることができる。例えば、プランジャの前進のみを抑制することによって自励振動を抑制することもできる。
本電磁弁は、例えば、ソレノイドへの供給電流の増減に応じて開弁圧や開弁量が変化するリニア電磁弁として構成することができる。リニア電磁弁は、液圧制御や流量制御のために弁が中間的な開度にされる状態が、単に弁の開閉が切り換えられる電磁開閉弁に比較して多いため、抑制力付与装置を設けて自励振動を抑制する必要性が大きい。ただし、電磁開閉弁であっても、自励振動が生じる可能性がある場合には、抑制力付与装置を設けることは有効である。
(2)前記抑制力付与装置が、前記プランジャにそれが往復動する方向と直交する方向である直交方向の力を付与することによって前記プランジャと前記ハウジングとの摩擦抵抗を増加させる直交力付与装置を含む(1)項に記載の電磁弁。
本項の電磁弁は、ハウジングに対してプランジャを直交方向に相対移動させる力を付与し、例えば、プランジャをハウジングに押し付ける等によってハウジングとプランジャとの摩擦抵抗を増加させるものである。摩擦抵抗は、ハウジングとプランジャとの往復動方向の相対移動を妨げる向きに発生するため、自励振動を抑制することができる。直交力付与装置には、例えば、後述するように、直交方向の力である直交力を発生させるために、磁気力の偏りを生じさせる態様や、直交方向の弾性力を付与する態様がある。
(3)前記プランジャが、強磁性を有するとともに柱状をなし、前記ハウジングが、強磁性を有して前記プランジャの往復動方向に延びる筒状をなすとともに前記プランジャが相対的に往復動可能に嵌合される筒状壁を含み、
前記直交力付与装置が、前記プランジャの往復動方向と直交する直交平面内において、前記筒状壁と前記プランジャとの間に作用する磁気力の総和に偏りを生じさせる磁気力偏寄装置を含む(2)項に記載の電磁弁。
通常の電磁弁では、直交平面内において、ハウジングの筒状壁とプランジャとの間に作用する磁気力は、できる限り釣り合うようにされている。そのため、筒状壁とプランジャとを直交方向に相対移動させる力はほとんど生じず、それらの摩擦抵抗は非常に小さいものとなる。それに対して、本項の電磁弁は、筒状壁とプランジャとの間の磁気力を直交方向において偏らせることにより、それらを直交方向に相対移動させる比較的大きな力を発生させることができる。その結果、筒状壁とプランジャとの摩擦抵抗が大きくなり、自励振動を抑制することができる。
磁気力を偏らせるために、例えば、後述するように、直交平面内の特定の向きにおいて、筒状壁とプランジャとの間の磁気抵抗を他の向きとは異ならせることができる。特定の向きにおいて磁気抵抗を小さくすれば、その磁気抵抗が小さい部分を通過する磁束が増加し、その特定の向きにおいて筒状壁とプランジャとが引きつけ合う磁気力が増大する。その結果、その特定の向きにおいて筒状壁とプランジャとの摩擦抵抗が増加するのである。逆に、特定の向きにおいて磁気抵抗を大きくすれば、特定の向きとは反対の向きにおいて筒状壁とプランジャとの摩擦抵抗が増加する。
ここで、筒状壁とプランジャとの摩擦抵抗の変化について述べる。筒状壁とプランジャとの間の磁気力は、ソレノイドに供給される電力に応じた大きさとなる。したがって、例えば、本電磁弁が常閉弁である場合には、弁の開度が大きい場合は磁気力も大きくなり、その結果、摩擦抵抗も大きくなる。すなわち、本項の電磁弁において、筒状壁とプランジャとの摩擦抵抗は、ソレノイドに供給される電力に応じて変化する。そのため、本電磁弁が常閉弁である場合には、弁の開度が小さく自励振動が発生しにくい状態では摩擦抵抗が小さくなるため、弁子等を比較的スムーズに移動させることができるとともに、弁の開度が大きく自励振動が発生しやすい状態では摩擦抵抗が大きくなるため、自励振動を抑制しやすくなる。つまり、本電磁弁には、自励振動が発生しやすい状態において、自然に摩擦抵抗が大きくなるというメリットがあり、常閉弁として構成されることが特に好適である。ただし、常開弁として構成された場合であっても、自励振動を抑制することができる。
(4)前記磁気力偏寄装置が、前記直交平面内の特定の向きにおいて、前記筒状壁と前記プランジャの側面とのうちの少なくとも一方に設けられて他の部分よりも透磁率を増加または減少させる透磁率変更部を含む(3)項に記載の電磁弁。
本項の電磁弁は、特定の向きにおいて、筒状壁とプランジャとの少なくとも一方に透磁率の大きなまたは小さな部分を設けて、特定の向きにおける筒状壁とプランジャとの間の磁気抵抗を他の向きとは異ならせる態様である。透磁率の大きな部分は磁気抵抗が減少し、透磁率が小さい部分は磁気抵抗が増大する。
透磁率変更部は、例えば、直交方向のうちの特定の向きにおいて、筒状壁とプランジャの側面とのうちの少なくとも一方(以後、「プランジャ等」と略記する)の少なくとも一部分を異なる材質にすることによって設けることができる。例えば、特定の向きにおいてプランジャ等の一部分を樹脂,銅合金,アルミニウム合金等の非磁性材料に置換すれば、透磁率が低下して磁気抵抗が増加する。その結果、特定の向きとは反対の向きにおいて筒状壁とプランジャとの摩擦抵抗を大きくすることができる。また、プランジャ等の一部分を凹部や空洞とすることもできる。その凹部等に空気や作動液が充填されれば、その凹部等の透磁率はプランジャ自身の透磁率よりも著しく低下する。
また、例えば、上記プランジャ等の一部分を、プランジャ本体よりも透磁率の大きい部材(例えば、透磁率が数倍〜数十倍程度)に置換することもできる。その場合は、プランジャ本体の他の部分に比して、透磁率の大きい部材の磁気抵抗が小さく、その特定の向きにおいて筒状壁とプランジャとの摩擦抵抗が大きくなる。
また、筒状壁あるいはプランジャを、それぞれ筒状壁本体とその内周壁を覆うスリーブ、あるいはプランジャ本体とその側面を覆うスリーブを含むものとし、そのスリーブの一部分を透磁率変更部とすることができる。例えば、スリーブ自体を非磁性材料で形成し、それの一部分を強磁性材料で透磁率変更部として形成することにより、透磁率変更部の磁気抵抗を減少させて特定の向きにおける筒状壁とプランジャとの摩擦抵抗を大きくすることができる。逆に、スリーブ自体を強磁性材料で形成し、透磁率変更部を非磁性材料で形成することもでき、その場合は、特定の向きとは反対の向きにおける筒状壁とプランジャとの摩擦抵抗を大きくすることができる。また、後述するように、プランジャ本体に凸部を設け、スリーブの凸部を覆う部分を薄肉部や切欠部とすることもできる。
透磁率(μ)は、磁束密度(B)を磁界の強さ(H)で除したものとすることができる。なお、鋼鉄等のように、磁界の強さによって透磁率が変化する材質の場合は、例えば、自励振動が生じる際の磁界の強さにおける透磁率を基準とすることができる。自励振動は、弁が中間的な開度であって、比較的流量が多い場合に生じやすいことから、弁の開度が70%〜80%程度(弁子の最大後退量に対する後退量の割合)になる電力供給量で生じる磁界の強さにおける透磁率を基準とすることができる。有意な磁気力の偏りを生じさせるためには、例えば、透磁率変更部の透磁率が、変更前の透磁率の2倍程度以上(または2分の1以下)であることが望ましい。
(5)前記筒状壁と前記プランジャとの一方が、前記筒状壁と前記プランジャの前記筒状壁に対向する面である側面との間に介在させられる非磁性のスリーブを含み、
前記磁気力偏寄装置が、前記直交平面内の特定の向きにおいて、前記筒状壁と前記プランジャの側面と前記スリーブとのうちの少なくとも1つに設けられ、他の部分よりも透磁率を増加または減少させる透磁率変更部を含む(3)項または(4)項に記載の電磁弁。
本項の態様は、前項の態様において、筒状壁とプランジャとの一方が非磁性のスリーブを含む態様に限定したものである。透磁率変更部が、筒状壁,プランジャ,スリーブのうちのいずれに設けられても、前項の態様と同様の作用効果が得られる。
本項の態様では、スリーブが非磁性にされているため、例えば、スリーブの一部分を強磁性材料に置き換えることによって、その部分の磁気抵抗を減少させて磁束を増加させることができる。
(6)前記透磁率変更部が、前記筒状壁と前記プランジャの側面との前記一方に突出して設けられた凸部を含む(5)項に記載の電磁弁。
本項の態様によれば、凸部が設けられた部分と、筒状壁とプランジャの側面との他方との間の磁気抵抗を、容易に減少させることができる。なお、スリーブの凸部を覆う部分に薄肉部または切欠部を設けることができる。
(7)前記直交力付与装置が、前記プランジャと前記ハウジングとの一方に設けられて前記プランジャと前記ハウジングとにそれらを前記直交方向に付勢する弾性力を付与する弾性体を含む(2)項に記載の電磁弁。
本項の電磁弁は、プランジャとハウジングとの摩擦抵抗を増加させるために、弾性体によって直交方向の力を発生させる態様である。本項の態様によれば、例えば、プランジャとハウジングとの一方に凹部を設けて、その凹部にゴム等の弾性体を配設すれば摩擦抵抗を増加させることができ、容易に自励振動を抑制することができる。また、プランジャとハウジングとの一方に、弾性体と、その弾性体によって直交方向に付勢されてプランジャとハウジングとの他方に当接する当接部材とを設けることもできる。
なお、自励振動の抑制については、供給された電力に応じて摩擦抵抗が変化しないこと以外は、前述の「磁気力を偏らせる」態様と同様である。
(8)前記ハウジングが、前記プランジャの往復動方向に延びる筒状をなすとともに前記プランジャが相対的に往復動可能に嵌合される筒状壁を含み、
前記直交力付与装置が、前記プランジャと前記ハウジングとの前記一方に回転可能に保持されて、前記弾性体の弾性力によって前記プランジャの側面と前記筒状壁との他方に押し付けられるとともに、前記プランジャと前記筒状壁との相対的な往復動に伴って回転する回転体を含む(7)項に記載の電磁弁。
本項の態様によれば、回転体によって、直交力付与装置と、プランジャと筒状壁との他方との局部的な摩擦の発生を回避しつつ、プランジャと筒状壁との摩擦抵抗を増加させることができる。
(9)前記弁座が、前記ハウジングの内側に向かって広がるテーパ状に形成されたものであり、
前記抑制力付与装置が、
前記ハウジングに設けられて前記プランジャの先端部とは反対側の部分である基端部の前記直交方向への移動を規制する直交移動規制部と、
前記プランジャの先端部の前記直交方向への移動を許容する直交移動許容部と
を備え、前記プランジャが最大限後退した状態においても、前記弁子が前記弁座に接触することを許容する弁子弁座接触許容機構を含む(1)項に記載の電磁弁。
本項の態様は、プランジャの弁座に向かう向きの移動を抑制することによって自励振動を抑制するものである。弁が開かれる際に、プランジャの後退距離がある程度以下の状態では、従来の電磁弁においても弁子が弁座のテーパ面に接触した状態で斜めに移動することが確認されている。そして、弁子が弁座に接触した状態において流体圧力の変動が生じたとしてもプランジャの前進が抑制されるため、自励振動が抑制される。しかしながら、従来は、プランジャの先端部の直交方向への移動許容量が小さく設定されており、弁の開度が大きくなってプランジャがある程度後退すると、弁子が斜めに移動できなくなり、弁座から離れるように構成されていた。
それに対し、本項の態様においては、プランジャの先端部の直交方向への移動が従来より大きく許容され、弁が全開状態になるまで、つまり、プランジャが最大限後退するまで弁子が弁座に接触した状態を保つことができるようにされている。その結果、弁がどのような開度であっても自励振動が抑制される。プランジャの先端部の直交方向への移動を許容するには、プランジャとハウジングとのクリアランスを大きくすればよく、例えば、プランジャとハウジングとの少なくとも一方の弁座側の部分の径を減少あるいは増加させることや、後述するようにプランジャとハウジングとの少なくとも一方にテーパ部を設けることができる。プランジャは、例えば、それが往復動する方向に延びた柱状(円柱状等)をなすものとすることができる。
なお、本項の態様において、弁子と弁座との接触が許容されるのであり、それらが強制的に接触させられるわけではない。よって、仮に、弁の開度が中間的な状態において、弁子が弁座から自然に離れてしまう場合には、例えば、前述の直交力付与装置と同様な装置によって、プランジャをハウジングに対して直交方向に移動させる力を付与して弁子を弁座に強制的に接触させることもできる。その場合には、直交力付与装置は、必ずしも摩擦抵抗を増加させる必要性はなく、比較的小さな力を発生させるものでよい。
(10)前記弁子弁座接触許容機構が、前記プランジャと前記ハウジングとの少なくとも一方に設けられて、前記プランジャの基端部から先端部に向かう向きにおいて前記プランジャと前記ハウジングとのクリアランスを漸増させるテーパ部を含む(9)項に記載の電磁弁。
本項の電磁弁によれば、テーパ部を設けることにより、プランジャとハウジングとの離間距離の増加を抑制しつつ、プランジャの先端部の直交方向への移動を許容することができる。そのため、プランジャとハウジングとの間の磁気抵抗の増加を抑制することができる。
(11)当該電磁弁が常閉弁であり、前記ハウジングが、前記プランジャと当接してそのプランジャの後退限度を規定する当接部を含む(1)項ないし(10)項のいずれかに記載の電磁弁。
本項の電磁弁は、弁が全開状態にされた場合に、プランジャが当接部に当接し、自励振動を抑制する態様である。また、(9)項または(10)項に従属する態様に関しては、「プランジャが最大限後退した状態」が当接部により明瞭に規定される利点もある。ただし、不可欠ではない。ソレノイドへ最大の電流が供給された状態におけるプランジャの後退位置を後退限度とすることも可能なのである。なお、プランジャの少なくとも一部が当接部に当接した状態も、「プランジャが最大限後退した状態」に含めることができる。
ブレーキアクチュエータ14は、上記ホイールシリンダ32,34および左後輪46および右後輪48の回転をそれぞれ制動するブレーキのホイールシリンダ50,52の各液圧を制御する。ブレーキアクチュエータ14は、図1に示すように、2つのマスタカット弁56,58,液圧源たる動力液圧源60,液圧制御弁装置62,2つのマスタシリンダ圧センサ64および4つのホイールシリンダ圧センサ66を備えている。これらブレーキアクチュエータ14の構成要素は図示を省略するブロック状の本体部材に組み付けられて1ユニットを構成している。
前記スプリング138は、プランジャ132と第二磁路形成部材146との間に配設され、プランジャ132はスプリング138により、ボール130が弁座128に着座する向きに付勢されている。
プランジャ本体172の先端部には、プランジャ132と同心に嵌合穴182が設けられており、その嵌合穴182にボール保持体175の嵌入軸部184が圧入されている。ボール保持体175は、弁座128側に延び出す保持軸部186において、ボール130をプランジャ132の軸線上に位置させて保持しており、ボール保持体175の中央に設けられた嵌入軸部184よりも径が大きくされた大径部188がプランジャ本体172の先端面に当接することによって、プランジャ132におけるボール130の軸方向の位置が規定される。
Fm+Fp=Fs ・・・(1−1)
本実施例において、「磁気力偏寄装置」が、凸部200およびスリーブ174を含んでいる。また、直交平面内の凸部200が設けられた向きが「特定の向き」である。
軸方向の4つの力には、次の2式の関係が成り立つ。抵抗力Frは、プランジャ132が移動する向きと反対向きに作用することから、上記シート弁122の開度が増加する場合(プランジャ132が後退)には、シート弁122の開度を減少させる向き(プランジャ132を前進させる向き)に作用し、シート弁122の開度が減少する場合(プランジャ132が前進)には逆の向きに作用する。
[開度増加時]Fm+Fp=Fs+Fr ・・・(1−2)
[開度減少時]Fm+Fp=Fs−Fr ・・・(1−3)
Fm=A・i ・・・(1−4)
なお、プランジャ132のスプリング138側の端面には、プランジャ132よりも直径が小さくされた小径部210が設けられている。また、プランジャ室170の弁座128と反対側の端部を形成する第二磁路形成部材146には、小径部210よりも内径が若干大きな凹部212が形成されている。プランジャ132が後退する際に、凹部212に小径部210が進入することによって、小径部210の側面と凹部212の内周壁との間を通過する磁力線が増加する。すなわち、プランジャ132の後退に伴い吸引面196とプランジャ132の肩面との距離が小さくなり、プランジャ132を後退させる磁気力の作用が大きくなるのであるが、プランジャ132の後退に伴い小径部210の側面と凹部212の内周壁との重なる部分を通過する磁力線が増加するため、吸引面196とプランジャ132の肩面との間を通過する磁力線が減少するようにされているのである。したがって、本実施例において、プランジャ132の後退距離に拘わらず、供給電流が一定であれば磁気力Fmもほぼ一定となる。
抵抗力Fr=係数B・電流i ・・・(1−5)
Fp=ΔP・S ・・・(1−6)
ΔP=Ph−Pw ・・・(1−7)
Fs=K・X+C ・・・(1−8)
まず、S31において、液圧目標値Pxとホイール液圧Pwとの偏差が設定値Hよりも小さいか否かが判定される。これは、偏差が大きい場合には増圧弁80の開度を最大にし、そうでない場合には増圧弁80の開度を偏差に応じたものにするためである。例えば、ホイール液圧Pwを大気圧付近から最大圧付近まで増圧するような場合に開度が最大にされる。
Xa=α・(Px−Pw) ・・・(2−1)
上記偏差が設定値H以上である場合には、S33において増圧弁80の開度目標値XaがXh(Xaの最大値である)にされる。
A・i+ΔP・S=(K・X+C)+B・i ・・・(2−2)
この式のXに開度目標値Xaを、電流iに目標電流値Iaを代入して整理すれば、開度増加時の目標電流値Iaが得られる。
Ia=(K・Xa+C−ΔP・S)/(A−B) ・・・(2−3)
なお、差圧ΔPは、式(1−7)より高圧側液圧Phからホイール液圧Pwを減じた値となる。
一方、開度減少時には、式(1−3)に、式(1−4)〜(1−8)を代入すると次式が得られる。
A・i+ΔP・S=(K・X+C)−B・i ・・・(2−4)
上述と同様に、開度目標値Xa、目標電流値Iaを代入して整理すれば、開度減少時の目標電流値Iaが得られる。
Ia=(K・Xa+C−ΔP・S)/(A+B) ・・・(2−5)
Ia=A・(K・Xa+C−ΔP・S)/(A2−B2) ・・・(2−6)
Ia=Ih+(K・Xa+C−ΔP・S)/(A−B) ・・・(2−7)
S51において、液圧目標値Pxが大気圧(=0)にされ、かつ、ホイール液圧Pwが設定圧力Uよりも小さいか否かが判定される。S51の判定がNoとなる場合、つまり、液圧目標値Pxが大気圧でない場合、あるいは、ホイール液圧Pwが大気圧に比して十分大きい場合には、S52において、減圧弁90の開度目標値Xbが次式に基づいて決定される。なお、次式のβは設定値である。
Xb=β・(Pw−Px) ・・・(3−1)
一方、S51の判定がYesとなる場合には、つまり、ホイール液圧Pwを大気圧まで下げる等の場合には、S53において、開度目標値Xbが設定開度Xuにされる。設定開度Xuは、ホイール液圧Pwが大気圧に近くなった場合であっても、比較的スムーズにホイール液圧Pwを減少させ得る開度とされている。
Ib=(K・Xb+C−ΔP・S)/(A−B) ・・・(3−2)
Ib=(K・Xb+C−ΔP・S)/(A+B) ・・・(3−3)
Ib=A・(K・Xb+C−ΔP・S)/(A2−B2) ・・・(3−4)
なお、減圧処理における差圧ΔPは、ホイール液圧Pwから大気圧を引いた値、つまり、ホイール液圧Pwと同じ値になる。また、スプリング138のばね定数Kの値が、増圧弁80と減圧弁90とで異なる場合がある。
S59において、ホイール液圧Pwを大気圧まで下げる場合の目標電流値Ibが、上式(3−2)に基づいて決定される。
S60,S61の処理は、上述の増圧処理ルーチンにおけるS40〜S41の処理と同様である。
この処理は、液圧目標値Pxとホイール液圧Pwとの差が微少である場合に、ホイール液圧Pwが変化しないように目標電流値Ia,Ibを決定する処理である。本実施例において、目標電流値Ia,Ibは、いずれも閉弁電流値I0にされ、増圧弁80、減圧弁90ともに閉弁状態とされる。なお、閉弁電流値I0は、0あるいは閉弁状態を維持可能な電流値とされる。
また、本実施例において、凸部200が、軸方向においてプランジャ本体172の中央に配設されていたが、ボール130側あるいはスプリング138側に配設することもできる。
本電磁弁300は、上記実施例と同様の液圧ブレーキシステム(図1)において、増圧弁80〜86あるいは減圧弁90,92のいずれかの箇所に設けられる。また、本電磁弁300は、多くの部分が上記実施例の電磁弁80と同様な構成とされているため、同じ構成部品については同じ符号を付して説明を省略し、異なる部分を中心に説明する。
弾性力発生機構320は、弾性部材として、平面形状が円形の皿ばね336を備えており、その皿ばね336は、収容穴332に、それの底面の側に凹部側を向けて配設されている。また、弾性力発生機構320は、収容穴332の皿ばね336の凸部側に回転可能に収容された「回転体」たる転動ボール340と、その転動ボール340と皿ばね336とのすべり摩擦を軽減する摩擦低減部材342とを備えている。転動ボール340は、プランジャ室170内周壁よりも硬度の低い非磁性材料によって形成されている。摩擦低減部材342は、転動ボール340と皿ばね336とを直接接触させる場合に比較して転動ボール340との接触面積を大きくできる形状,寸法を有するものであれば、効果が得られるが、少なくとも転動ボール340との接触面がポリテトラフルオロエチレン等低摩擦係数の材料によって形成されることが望ましい。
[開度増加時]Fm+Fp=Fs+Fr ・・・(4−1)
[開度減少時]Fm+Fp=Fs−Fr ・・・(4−2)
したがって、本電磁弁300が配備された液圧ブレーキシステムにおいて、前記実施例と同様の液圧制御(図6〜8)がなされる。しかし、本電磁弁300において、抵抗力Frの大きさは、供給電流の大きさによって変化しない点が、電磁弁80と異なる。本電磁弁300の抵抗力Frの大きさは、皿ばね336が発生する弾性力に応じた大きさとなり、ほぼ一定である。そのため、液圧制御の増圧処理(図7)において、目標電流値Iaを決定する前述の式(2−3),(2−5),(2−6),(2−7)は、それぞれ次のようになる。
Ia=(K・Xa+C−ΔP・S+R)/A ・・・(4−3)
Ia=(K・Xa+C−ΔP・S−R)/A ・・・(4−4)
Ia=(K・Xa+C−ΔP・S)/A ・・・(4−5)
Ia=Ih+(K・Xa+C−ΔP・S+R)/A ・・・(4−6)
上式(4−3)は開度増加時の目標電流値、式(4−4)は開度減少時の目標電流値、式(4−5)は開度維持時の目標電流値、式(4−6)は開度最大時の目標電流値をそれぞれ求めるものである。なお、変数Rは、抵抗力Frの大きさである。
また、液圧制御の減圧処理(図7)において、目標電流値Ibを決定する前述の式(3−2),(3−3),(3−4)は、それぞれ次のようになる。
Ib=(K・Xb+C−ΔP・S+R)/A ・・・(4−7)
Ib=(K・Xb+C−ΔP・S−R)/A ・・・(4−8)
Ib=(K・Xb+C−ΔP・S)/A ・・・(4−9)
なお、上記2つの実施例においては、プランジャ132あるいは310と、プランジャ室170の内壁との摩擦抵抗の作用方向を考慮して、ソレノイド124への供給電流が開度増加時と開度減少時とで互いに異ならされるため、ホイールシリンダ32の液圧の制御精度が高くなる効果が得られるが、不可欠ではなく、開度増加時も開度減少時も同じ式に基づいて決定されるようにすることも可能である。
まず、シート弁122が開閉する際に、弁子たるボール130がどのように移動するかについて説明する。図10に、ボール130と弁座128とを拡大し、ボール130の動きを模式的に示す。なお、ボール130の動きを分かり易くするために、ボール130の移動量等を誇張して示した。二点鎖線で示す閉弁状態において、ボール130は、一円周に沿って弁座128と接触し、高圧側の液圧通路たる第二ポート164を塞いでいる。シート弁122が開かれる場合には、実線で示すボール130はプランジャ310が後退する向きに移動させられる、つまり、後退させられるのである。しかし、後退を開始した直後に弁座128に接触しなくなるわけではなく、後退開始当初は弁座128のテーパ面に沿って斜めに移動する場合が多い。それは、ボール130と弁座128との間の隙間を通って弁室178に流入する作動液により、ボール130が半径方向において一方の側へ寄せられることが一因であると推測される。そして、ボール130がさらに後退すると、ボール130およびプランジャ310の直交方向の移動は、プランジャ室170の内壁によって規制されるため、点線で示すようにボール130は弁座128から離れることとなる。
それに対して、図12に示す電磁弁400は、プランジャの先端部の直交方向への移動を意図的に比較的大きく許容するものである。なお、本電磁弁400は、上記最初の実施例と同様の液圧ブレーキシステム(図1)において、増圧弁80〜86あるいは減圧弁90,92のいずれかの箇所に設けられる。また、本電磁弁400は、多くの部分が上記最初の実施例の電磁弁80と同様な構成とされているため、同じ構成については同じ符号を付して説明を省略し、異なる部分を中心に説明する。
本電磁弁400において、ソレノイド124に電流が供給された場合に、プランジャ410に作用する力は、前述の電磁弁80と概ね同様であるが、開度増加時に抵抗力が作用しないものとされる点が異なる。なお、次式において、Fmは磁気力、Fpは差圧力、Fsは付勢力、Frは抵抗力である。
[開度増加時]Fm+Fp=Fs ・・・(5−1)
[開度減少時]Fm+Fp=Fs−Fr ・・・(5−2)
したがって、本電磁弁400が配備された液圧ブレーキシステムにおいて、前記実施例と同様の液圧制御(図6〜8)がなされる。液圧制御の増圧処理(図7)において、目標電流値Iaを決定する前述の式(2−3),(2−5),(2−6),(2−7)は、それぞれ次のようになる。
Ia=(K・Xa+C−ΔP・S)/A ・・・(5−3)
Ia=(K・Xa+C−ΔP・S−Z)/A ・・・(5−4)
Ia=(K・Xa+C−ΔP・S−Z/2)/A ・・・(5−5)
Ia=Ih+(K・Xa+C−ΔP・S)/A ・・・(5−6)
上式(5−3)は開度増加時の目標電流値、式(5−4)は開度減少時の目標電流値、式(5−5)は開度維持時の目標電流値、式(5−6)は開度最大時の目標電流値をそれぞれ求めるものである。なお、変数Zは、抵抗力Frの大きさである。
また、液圧制御の減圧処理(図7)において、目標電流値Ibを決定する前述の式(3−2),(3−3),(3−4)は、それぞれ次のようになる。
Ib=(K・Xb+C−ΔP・S)/A ・・・(5−7)
Ib=(K・Xb+C−ΔP・S−Z)/A ・・・(5−8)
Ib=(K・Xb+C−ΔP・S)/A ・・・(5−9)
なお、本実施例においても、前記2つの実施例と概ね同様に、ボール130が弁座128に接触することによる抵抗の作用を考慮して、ソレノイド124への供給電流が開度増加時と開度減少時とで互いに異ならされるため、ホイールシリンダ32の液圧の制御精度が高くなる効果が得られるが、不可欠ではなく、開度増加時も開度減少時も同じ式に基づいて決定されるようにすることも可能である。また、開度減少時にボール130が弁座128に接触することによる抵抗が作用し、開度増加時に抵抗が作用しないものとしてソレノイド124への供給電流を決定しているが、不可欠ではなく、開度増加時も開度減少時も抵抗が作用するものとしてソレノイド124への供給電流を決定することもできる。なお、開度増加時と開度減少時との抵抗の大きさが同じものとすることや異なるものとすることができる。
Claims (7)
- 高圧側の液通路および低圧側の液通路が接続され、それら高圧側の液通路と低圧側の液通路とを連通させるハウジングと、
そのハウジング内に軸方向に往復動可能に設けられたプランジャと、
そのプランジャの先端部に保持された弁子と、
前記ハウジングの前記弁子と対向する位置に設けられ、前記高圧側の液通路が弁子によって閉塞可能に開口させられた弁座と、
前記プランジャを前記弁座に接近または弁座から離間する向きに付勢する弾性体と、
その弾性体が付勢する向きと逆向きにプランジャを移動させる磁気力を発生させるソレノイドと、
前記プランジャの往復動を抑制する力を付与する抑制力付与装置と
を含むことを特徴とする電磁弁。 - 前記抑制力付与装置が、前記プランジャにそれが往復動する方向と直交する方向である直交方向の力を付与することによって前記プランジャと前記ハウジングとの摩擦抵抗を増加させる直交力付与装置を含む請求項1に記載の電磁弁。
- 前記プランジャが、強磁性を有するとともに柱状をなし、前記ハウジングが、強磁性を有して前記プランジャの往復動方向に延びる筒状をなすとともに前記プランジャが相対的に往復動可能に嵌合される筒状壁を含み、
前記直交力付与装置が、前記プランジャの往復動方向と直交する直交平面内において、前記筒状壁と前記プランジャとの間に作用する磁気力の総和に偏りを生じさせる磁気力偏寄装置を含む請求項2に記載の電磁弁。 - 前記磁気力偏寄装置が、前記直交平面内の特定の向きにおいて、前記筒状壁と前記プランジャの側面とのうちの少なくとも一方に設けられて他の部分よりも透磁率を増加または減少させる透磁率変更部を含む請求項3に記載の電磁弁。
- 前記筒状壁と前記プランジャとの一方が、前記筒状壁と前記プランジャの前記筒状壁に対向する面である側面との間に介在させられる非磁性のスリーブを含み、
前記磁気力偏寄装置が、前記直交平面内の特定の向きにおいて、前記筒状壁と前記プランジャの側面と前記スリーブとのうちの少なくとも1つに設けられ、他の部分よりも透磁率を増加または減少させる透磁率変更部を含む請求項3または4に記載の電磁弁。 - 前記直交力付与装置が、前記プランジャと前記ハウジングとの一方に設けられて前記プランジャと前記ハウジングとにそれらを前記直交方向に付勢する弾性力を付与する弾性体を含む請求項2に記載の電磁弁。
- 前記弁座が、前記ハウジングの内側に向かって広がるテーパ状に形成されたものであり、
前記抑制力付与装置が、
前記ハウジングに設けられて前記プランジャの先端部とは反対側の部分である基端部の前記直交方向への移動を規制する直交移動規制部と、
前記プランジャの先端部の前記直交方向への移動を許容する直交移動許容部と
を備え、前記プランジャが最大限後退した状態においても、前記弁子が前記弁座に接触することを許容する弁子弁座接触許容機構を含む請求項1に記載の電磁弁。
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