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JP2008034543A - 光電変換素子およびその製造方法 - Google Patents

光電変換素子およびその製造方法 Download PDF

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学 古茂田
Kenji Fukui
健次 福井
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Abstract

【課題】
特に薄型多結晶シリコン基板を用いて高変換効率を実現する光電変換素子とその製造方法を提供する。
【解決手段】
一導電型領域と逆導電型領域とを有する多結晶半導体基板13と、多結晶半導体基板13の一導電型領域側の主面の少なくとも一部に形成され、且つ、水素を含有する絶縁層16と、絶縁層16を介して多結晶半導体基板13上に形成された一導電型を示す薄膜層18とを有する光電変換素子とする。
【選択図】図3

Description

本発明は、光電変換素子およびその製造方法に関するものである。
従来の太陽電池素子の例を図1および図2に示す。
まず図1おいて1はp型多結晶シリコン基板、2は拡散層、3は反射防止膜、4はBSF層、5は表面電極、6は裏面電極を示す。
まず、p型多結晶シリコン基板1の受光面となる表面側には、P(リン)等の導電型決定元素を含むn型の拡散層2と酸化シリコン膜や窒化シリコン膜などからなる反射防止膜3が形成される。p型多結晶シリコン基板1の裏面側には、アルミニウムなどを拡散して形成された高濃度p型のBSF層4を有する。
そして、p型多結晶シリコン基板1の表裏両面にはそれぞれ、銀等を主成分とする表面電極5と裏面電極6が形成されている(例えば、特許文献1参照)。
一方、図2において7はn型単結晶シリコン基板、8はp型非晶質層、9は透明導電膜、10はn型非晶質層、11は表面電極、12は裏面電極を示す。
まず、n型単結晶シリコン基板7の両主面に水素化アモルファスシリコンなどからなるp型非晶質層8およびn型非晶質層10をプラズマCVD法等により形成し、さらに両面にITOなどからなる透明導電膜9をスパッタ法等により形成する。そして、透明導電膜9上には表面電極11、および裏面電極12がそれぞれ形成されている。なお、n型単結晶シリコン基板7とp型非晶質層8の間、およびn型単結晶シリコン基板7とn型非晶質層10の間には界面特性を向上させる目的で真性な非晶質層(不図示)が形成されることもある。(例えば、特許文献2参照)。
特許2999867号公報 特許2614561号公報
しかし、上述の従来技術によると、特に薄型多結晶シリコン基板を用いた太陽電池の高効率化を達成する上で、以下のような問題があった。
すなわち、図1に示す従来の構造では裏面側のBSF層形成においてアルミニウムペーストの塗布と、引き続いての高温焼成により高濃度ドープ層を形成しているが、同プロセス中に基板が大きく反るといった問題を抱えているとともに、ホモ接合であるために小数キャリアの裏面側再結合速度が高く、薄型多結晶シリコン基板を用いた太陽電池の開放電圧を大きく向上させることができないといった問題を有していた。
一方、図2に示す従来の構造では、pn接合部およびBSF層部において、それぞれ低温プロセスによるヘテロ接合を用い、表裏面とも低い表面再結合速度を実現しているが、低温にて非常に薄い非晶質シリコン層を積層しているため、多結晶シリコン基板を用いる際には表面からの水素が充分にドライブインされず、粒界のパッシベーションが不充分となる。従って同構造を有する多結晶シリコン太陽電池においても高い開放電圧、短絡電流が得られないといった問題を有していた。
本発明はこのような問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、特に薄型多結晶シリコン基板を用いて高変換効率を実現する光電変換素子とその製造方法を提供するものである。
本発明の光電変換素子は、一導電型領域と逆導電型領域とを有する多結晶半導体基板と、
前記多結晶半導体基板の一導電型領域側の主面の少なくとも一部に形成され、且つ、水素を含有する絶縁層と、前記絶縁層を介して前記多結晶半導体基板上に形成された一導電型を示す薄膜層と、を有してなることを特徴とする。
また、前記絶縁層は、窒化珪素を主成分とすることを特徴とする。
また、前記薄膜層は、非単結晶相であることを特徴とする。ここで非単結晶相とは、単結晶やこれと光学的バンドギャップまたは移動度ギャップに差異が見られない多結晶相を除いた相状態を有するものを指すものとし、水素等の他元素の添加、合金化により結晶配列が変化し、少なくとも上記バンドギャップが完全結晶構造に比して変化したものを表すものである。特に非単結晶相は、非晶質或いは微結晶質であることが好ましい。
さらに、上記の光電変換素子の製造方法は、一導電型領域を有する多結晶半導体基板の該一導電型領域側の第一主面の少なくとも一部に、水素を含有する絶縁層を形成する工程と、前記絶縁層を介して前記多結晶半導体基板上に、一導電型を示す薄膜層を形成する工程と、を有して成ることを特徴とする。
また、前記薄膜層形成工程に先立って、前記多結晶半導体基板の第二主面側に逆導電型領域を熱拡散法により形成することを特徴とする。
さらに、前記薄膜層は、化学気相成長法を用いて形成されることが望ましい。
またさらに、前記絶縁層は、化学気相成長法を用いて形成されることが望ましい。
本発明の光電変換素子は、一導電型領域と逆導電型領域とを有する多結晶半導体基板と、前記多結晶半導体基板の一導電型領域側の主面の少なくとも一部に形成され、且つ、水素を含有する絶縁層と、前記絶縁層を介して前記多結晶半導体基板上に形成された一導電型を示す薄膜層とを有してなることから、絶縁層からの水素供給により多結晶半導体基板の結晶粒界が効果的にパッシベートされ、且つ、多結晶半導体基板と一導電型薄膜層とのローカルコンタクト構造により表面再結合速度が低減されることで、特に開放電圧値に優れた高効率の光電変換素子を得ることができる。
また、前記絶縁層を高温安定性の高い窒化珪素を用いて構成することにより、界面および基板内部における優れたパッシベーション効果を得ることができる。
さらに、一導電型を示す薄膜層を非単結晶相とすること、即ち、多結晶半導体基板と異なるバンドギャップを有する相を基板に対してヘテロコンタクトさせることで、該界面での比較的大きなバンドオフセットを構成して低い再結合速度を実現することが可能となる。特に非単結晶相は、非晶質或いは微結晶質であることが好ましい。
また本発明の光電変換素子の製造方法は、一導電型領域を有する多結晶半導体基板の該一導電型領域側の第一主面の少なくとも一部に、水素を含有する絶縁層を形成する工程と、前記絶縁層を介して前記多結晶半導体基板上に、一導電型を示す薄膜層を形成する工程と、を有して成ることから、絶縁層を形成する際に水素供給により多結晶半導体基板の粒界が効果的にパッシベートされ、且つ、多結晶半導体基板と一導電型薄膜層とのローカルコンタクト構造により表面再結合速度が低減されることで、特に開放電圧値に優れた高効率の光電変換素子を得ることができる。しかも、一導電型層を比較的低い温度条件で薄膜形成することから、多結晶半導体基板の反り発生を効果的に抑制することが可能となる。
また、前記多結晶半導体基板の第二主面側に逆導電型領域を熱拡散法によって形成することにより、多結晶半導体基板中の特に金属を主とする不純物に対してゲッタリングの効果をも得ることができる。特に、前記薄膜層形成工程に先立って行うことにより、薄膜層が高温プロセスに曝されることに起因して生じる、水素脱離によるパッシベーション効果の低下を抑止することが可能となる。
またさらに、薄膜層を、化学気相成長法により形成することにより、効果的に水素パッシベーションを行うことが可能となる。
さらにまた、絶縁層が、化学気相成長法により形成されることにより、当該工程で生成する水素ラジカル等によって効果的に水素パッシベーションを行うことが可能となる。
以下、本発明の光電変換素子とその製造方法について、光電変換素子の一例である太陽電池素子を例にとって図面を参照しつつ詳細に説明する。
図3は、本発明における太陽電池素子の断面の構造を示す図である。
多結晶シリコン基板13は、p型またはn型の多結晶シリコンからなる。この多結晶シリコン基板13は、ボロン(B)またはリン(P)などの導電型決定元素を含有し、抵抗は例えば0.3〜2.0Ω・cm程度であり、鋳造法などによって形成される。鋳造法によって形成されたインゴットを10cm×10cm〜25cm×25cm程度の大きさに切断し、300μm以下、より好ましくは200μm以下の厚みにスライスして多結晶シリコン基板13とする。
この多結晶シリコン基板13のスライス面を清浄化するために、表面をNaOHやKOH、あるいはフッ酸やフッ酸と硝酸の混合液等でごく微量エッチングする。
その後、光入射面となる基板表面(受光面)側に、ドライエッチング方法やウェットエッチング方法などを用いて、光反射率低減機能を有する凹凸(粗面化)構造を形成することが好ましい。
次に、基板が示す導電型とは逆の導電型を示す拡散層14を形成する。
n型化ドーピング元素としてはP(リン)、p型化ドーピング元素としてはB(ボロン)を用いることが好ましく、シート抵抗を例えば30〜300Ω/□程度とする。
拡散層14は、n型の場合では、例えば、ペースト状態にしたPを塗布して熱拡散させる塗布熱拡散法、ガス状態にしたPOCl(オキシ塩化リン)を拡散源とした気相熱拡散法、及びPイオンを直接拡散させるイオン打ち込み法等によって形成される。また、p型の場合では、BBr(三臭化ボロン)を拡散源とした熱拡散法を用いて温度800〜1100℃程度で形成することができる。この拡散層14は、0.2〜0.5μm程度の深さに形成される。
なお、予定しない部位にも拡散領域が形成された場合には、後でエッチングによって除去すればよい。例えば多結晶シリコン基板13の受光面側以外の拡散層14の除去は、多結晶シリコン基板13の受光面側にレジスト膜を塗布し、フッ酸又はフッ酸と硝酸の混合液を用いてエッチング除去した後、レジスト膜を除去することにより行なえばよい。また、レーザースクライブ処理やサンドブラスト処理によってメカニカルにエッチング除去する手法も挙げられる。
次に、受光面側絶縁層15を拡散層14上に、さらに本発明に係る水素を含有する絶縁層(以下裏面側絶縁層16と示す)を多結晶シリコン基板13の拡散層14と反対側の主面の一部に形成する。
受光面側絶縁層15および裏面側絶縁層16の材料としては、水素を含有するものが好ましく、例えば窒化珪素:SiNx膜(Si34ストイキオメトリを中心にして組成比(x)には幅がある)、SiOyNz膜(0<y、z<1)などを用いることができる。窒化珪素は、パッシベーション効果に優れることに加え、化学的・構造的安定性から、耐熱性や耐候性、および耐水性に優れるといったことが特長として挙げられる。
受光面側絶縁層15の構成は、本太陽電池素子のように母材がシリコンである場合、屈折率は1.8〜2.3程度、厚み500〜1200Å程度にすればよい。
裏面側絶縁層16の形成エリアは、主面上の約30〜60%の割合で被覆することが好ましく、30%より小さくした場合にはパッシベーション領域が縮小され、基板改質効果が顕著に低下するため好ましくなく、60%より大きい場合には、下記BSF層と多結晶シリコン基板13の電気的抵抗が増大し、好ましくない。
さらにキャリアの基板水平方向への直列抵抗を増大させないため、数十μm〜数百μmピッチでパターン形成することが望ましい。
また、裏面側絶縁層16の膜厚は100〜800Å程度にすることが好ましく、100Åより小さい場合にはパッシベーション効果が顕著に低下して好ましくなく、800Åより大きい場合にはBSF層のステップカバレッジが低下して良好な接合が得られなくなるとともに、裏面側絶縁層16での光吸収ロスが増大して好ましくない。
裏面ヘテロ接合部での少数キャリアの再結合速度を決定する因子としては、薄膜層の界面およびバルク領域の欠陥および不純物に起因した界面準位密度、バンドオフセット、界面の荷電状態等が挙げられるが、裏面側絶縁層16を基板主面の一部に挿入することにより、上記界面準位密度の低減、バンドオフセットの増大、荷電状態の変化によるバンドベンディング効果により、裏面接合部における少数キャリアの再結合速度を効果的に低減することが可能となる。
また、裏面側絶縁層16の形成時および以下に示す電極焼成時には、多結晶シリコン基板13の結晶粒界に主に存在するダングリングボンドが、拡散した水素によりパッシベーションされる効果が期待でき、受光面側絶縁層15のみを形成した時に比べ、本発明の形態においては、顕著にそのパッシベーション効果が増大する。
受光面側絶縁層15および裏面側絶縁層16の製法としては、PECVD法、CatCVD法、蒸着法又はスパッタ法などが用いられるが、中でもPECVD法等の化学気相成長法を用いることが望ましい。このとき、気相中に存在する活性水素により界面および多結晶シリコン基板に対してパッシベーション効果が期待される。パッシベーション効果は、具体的には不純物元素の電気的活性度を低減すること、すなわち不純物が作る深いレベルの欠陥準位を、浅いレベル、あるいはバンドギャップ中以外のレベルに移動させる効果のことを指す。
次に、表面電極17を、多結晶シリコン基板13の受光面側に形成する。
ファイヤースルー法によって形成される場合には、受光面側絶縁層15上にAgペースト等の電極材料をパターニングして供給し、これを高温焼成することにより受光面側絶縁層15を貫通させて拡散層14と電気的コンタクトをとる。一方、ファイヤースルー法によって形成しない場合には、受光面側絶縁層15を予めパターニング製膜するか、表面電極17を形成する部位をエッチング除去する等、開口部を設けておき、同部に電極材料を供給し、焼成してコンタクトをとる。
なお、電極材料の焼成には500℃以上の高温処理が施されるが、この際に受光面側絶縁層15に含有される水素が基板中にドライブインされ、より効果的なパッシベーションが行われる。
次に、基板が示す導電型と同じ導電型を示すBSF層18を形成する。
ここで、BSF層18は、多結晶シリコン基板13の裏面側絶縁層16が形成された側に基板と同一の導電型決定元素が高濃度にドープされた領域を言い、少数キャリアの裏面接合部での再結合を抑止する役割を有するものである。本発明においては、非晶質シリコン層または微結晶シリコン層等の非単結晶相の薄膜を用い、p型の場合の不純物元素としてB(ボロン)やAl(アルミニウム)を用い、n型の場合の不純物元素としてP(リン)やAs(ヒ素)を用いる。よって、この非単結晶相を有するBSF層18を多結晶シリコン基板13に接合させることで、両者のバンドオフセットによるエネルギー障壁によって裏面側での少数キャリアの再結合を抑止することが可能となる。
BSF層18は、プラズマCVD法、光CVD法、CatCVD法等の化学気相成長法によって基板温度100〜300℃の低温にて形成されることが望ましく、これにより非単結晶薄膜からの水素の脱離が抑えられ、接合部での欠陥密度が低減される。また、低温プロセスにて形成した薄膜層を用いているため、応力による基板の反りが殆ど無く、同層での光吸収ロスが極めて小さい。
なお、バンドエンジニアリング上の観点から、多結晶シリコン基板13がp型の場合にはBSF層18にはp+型の微結晶シリコンを用いることが好ましく、同基板がn型の場合にはBSF層18をn+型の非晶質シリコンとした上で、多結晶シリコン基板13とBSF層18間に真性の非晶質シリコン層を挿入することが好ましい。不純物のドープされた非晶質シリコン層ではなく真性の非晶質シリコン層を多結晶シリコン基板13と接合させることにより、接合界面近傍での欠陥準位密度を低減することが可能となる。
次に、裏面電極19を、BSF層18上に形成する。
裏面電極19は基板裏面部のシート抵抗を低減する目的を有し、通常ITO,GaまたはAlがドープされたZnO、フッ素がドープされたSnO2等の金属酸化物から成る透明導電膜を用いる。裏面電極19はスパッタ法やスプレー熱分解法により形成される。
次に裏面取出電極20を裏面電極19の表面に、スクリーン印刷法やドクターブレード法、ディスペンサー塗布法等を用いて導電性ペーストを塗布し、ピーク温度が150〜300℃程度で数分〜数十分間焼成して電極を形成する。
ここで、焼成のピーク温度を150℃以上300℃未満にすることが好ましく、これによって非単結晶薄膜層からの水素脱離を抑制することができる。なお、導電性ペーストとしては、抵抗率の低い銀を主成分とし、エポキシ樹脂等を含有したものが好ましい。
なお、裏面での光反射特性が充分でない場合には、裏面電極19上に高反射率金属膜等を略全面に形成してもよい。
以上のようにして、本発明の光電変換素子を形成することによって、特に薄型多結晶シリコン基板を用いた素子の高効率化を達成することができる。
尚、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更、改良等が可能である。
例えば、上記実施形態においては多結晶シリコン基板を用いた光電変換素子について述べたが、欠陥を局所的に有した単結晶シリコン基板を用いた光電変換素子に適用した場合にも同様の効果が期待できる。
また、一導電型の多結晶半導体基板に対して、同導電型の拡散層を受光面側に形成し、裏面側に他導電型の非単結晶薄膜層を形成した素子構造においても、後述する特性向上のメカニズムに基づき、同様の効果が期待できる。
<光電変換素子(太陽電池素子)>
実施例1として、以下に説明する本発明の光電変換素子を作製した。
まず、厚さ200μm、外形15cm×15cm、比抵抗1.5Ω・cmのp型多結晶シリコン基板13の表面のダメージ層をKOH水溶液でエッチングして洗浄した後、KOH水溶液にイソプロピルアルコールを添加した溶液に揺動浸漬して表面に凹凸構造を形成した。
次に、酸素バブリングによりガス状態にしたPOCl(オキシ塩化リン)を750℃程度で供給し、多結晶シリコン基板13の表面よりリン原子を拡散させて拡散層14を形成した。この時、シート抵抗は70Ω/□であった。その後、受光面側となる基板表面に耐酸レジストをスクリーン印刷法によって塗布、乾燥し、フッ酸と硝酸の混合液により余分な拡散層14のエッチングを行った後、アセトンおよびエタノールに浸漬して耐酸レジストを除去した。
次に、多結晶シリコン基板13の受光面側に、アンモニアと水素とシランを原料ガスとしたプラズマCVD法によって受光面側絶縁層15となる窒化硅素膜を形成した。
さらに基板を表裏反転させ、プラズマCVD装置内に配置し、受光面側絶縁層15を形成した側とは反対の主面に裏面側絶縁層16となる窒化珪素膜を基板面の35%の面積を占める部分に200Åの膜厚にてパターン形成した。窒化珪素膜の形成条件は受光面側絶縁層15と同様である。
そして、受光面側絶縁層15上に銀粉末、ガラスフリット、および金属酸化物を含む銀ペーストをスクリーン印刷法で塗布してピーク温度500℃以上で焼成を行い、表面電極17を形成した。
次いで、基板をプラズマCVD装置内に配置し、裏面側絶縁層16側表面に水素プラズマ処理を施した後、BSF層18となるp型微結晶シリコン層を積層した。
次にp型微結晶シリコン層のシート抵抗を低減するため、裏面電極19となるITO層をスパッタリング法により形成した。具体的にはITOターゲットを用いて、アルゴンおよび酸素の混合ガス雰囲気にてプラズマを形成し、基板温度150℃にて300Åの膜厚を積層した。
最後に、裏面取出電極20をITOの表面に、スクリーン印刷法を用いてパターン形成した。この時、下地に含まれるp型微結晶シリコン層からの水素の脱離を抑制するため、200℃以下の焼成が可能な低温硬化型のエポキシ樹脂を含む銀ペーストを用いた。特に本発明に係る窒化珪素膜およびp型微結晶シリコン層の形成条件については表1に詳細に示した。
Figure 2008034543
実施例2及び3として、上述した実施例1の光電変換素子における窒化珪素膜(裏面側絶縁層)16の基板に対する被覆率を、それぞれ55%、70%と変化させた光電変換素子を作製した。詳細な条件は表1に示す。
次に本発明の実施例1〜3の比較例として、以下に説明する光電変換素子を作製した。
比較例1として、裏面側絶縁層16を有さない以外、上述した実施例1の光電変換素子の構成と同一のものを作製した。
比較例2として、以下の光電変換素子を作製した。
まず、厚さ200μm、外形15cm×15cm、比抵抗1.5Ω・cmのp型多結晶シリコン基板の表面のダメージ層をKOH水溶液でエッチングして洗浄した後、KOH水溶液にイソプロピルアルコールを添加した溶液に揺動浸漬して表面に凹凸構造を形成した。
次に、酸素バブリングによりガス状態にしたPOCl(オキシ塩化リン)を750℃程度で供給し、多結晶シリコン基板の表面よりリン原子を拡散させて拡散層を形成した。
次に基板の裏面側にAl粉末、ガラスフリット、有機溶剤、バインダからなるAlペーストをスクリーン印刷法により塗布し、700〜850℃の高温焼成を行った。次に、多結晶シリコン基板の受光面側に、アンモニアと水素とシランを原料ガスとしたPECVD法によって窒化硅素膜を形成した。
そして、この窒化硅素膜上に銀粉末、ガラスフリット、および金属酸化物を含む銀ペーストをスクリーン印刷法で塗布してピーク温度500℃以上で焼成を行い、表面電極を形成した。
最後に、裏面取出電極を基板の裏面側に、スクリーン印刷法を用いて銀ペーストをパターン形成し、焼成を行った。
比較例3として、以下の光電変換素子を作製した。
まず、厚さ200μm、外形15cm×15cm、比抵抗1.0Ω・cmのn型多結晶シリコン基板の表面のダメージ層をKOH水溶液でエッチングして洗浄した後、KOH水溶液にイソプロピルアルコールを添加した溶液に揺動浸漬して表面に凹凸構造を形成した。
次に基板の受光面側および裏面側にそれぞれ真性の非晶質シリコン層を水素とシランを原料ガスとしてプラズマCVD法により3〜10nmの膜厚で形成した。
次いで、受光面側には先の原料ガスにジボランを添加し、p型の非晶質シリコン層を5〜10nmの膜厚で積層し、裏面側には同じくフォスフィンを添加し、n型の非晶質シリコン層を5〜10nmの膜厚で積層した。
さらに、両面スパッタ装置を用いて基板の両面にITO層を、受光面側に85nm、裏面側に40nmの膜厚にて積層した。
最後に、低温硬化型のエポキシ樹脂を含む銀ペーストを、スクリーン印刷法を用いて、上記表裏面のITO上にパターン形成し、それぞれ200℃以下の低温にて焼成を行った。
<特性評価>
以上の様にして形成した本発明の実施例1〜3および比較例1〜3に、入射光強度が100mW/cm2に調整された擬似太陽光を照射し、特性評価を行った。各光電変換素子の特性を表2に示す。
Figure 2008034543
表2の結果から、実施例1〜3はいずれも、比較例に比して特に開放電圧値に優れ、高効率特性が得られることがわかる。この理由は、以下のように考えられる。
まず、実施例1においては、多結晶シリコン基板へPを拡散する工程により、ゲッタリング効果によって基板の品質が大きく改善されていることが考えられる。ゲッタリングは、不純物元素を光活性領域と接合領域からそれ以外の領域へ除去させる技術であり、特に小数キャリアに対して捕獲準位を形成する金属元素のゲッタリングが行われていることが考えられる。それ故、比較例3の構造およびプロセスの場合には、この効果を得ることができないため、本来の基板品質が素子特性に大きく反映し、高変換効率が得られない。
また、実施例1〜3においては、裏面側絶縁層16を形成する際に、雰囲気に存在する水素が接合部および基板の結晶粒界に拡散し、パッシベーションに寄与していることが考えられ、特に結晶粒界に存在するダングリングボンドを効果的に終端することにより、同部での再結合電流を低下させ、ひいては素子の開放電圧を向上せしめたと考えられる。また、絶縁層を形成した後に電極部を高温焼成する際に、絶縁層中に含有される水素が熱エネルギーを得て、結晶粒界へドライブインされるため、さらに大きなパッシベーション効果を得ることができたと考えられる。これらの効果の寄与は、比較例1との開放電圧の差異に明確に現れている。
さらに、実施例1〜3においては、BSF層として非単結晶薄膜層を用いており、上記と同様に、同層形成時に雰囲気に存在する水素がBSF層部および基板の結晶粒界に拡散し、パッシベーションに寄与していることが考えられる。なお、比較例2においては、BSF層形成プロセスとして、高温熱処理によるAlの拡散工程を用いているため、上記のような水素パッシベーション効果が得られず、結晶品質の改質が期待できない。
また、実施例2、3においては、実施例1に比して、裏面側絶縁層16の被覆率を増大させているが、同層形成時の水素パッシベーション効果がより増大し、裏面再結合速度を低減させることにより、実施例1よりさらに高い開放電圧値を得ることができた。裏面側絶縁層16の被覆率を増大させた場合、例えば実施例3では比較例1に比して、裏面側絶縁層の光吸収量が増大すること等に起因して短絡電流密度が低下しているが、上記の開放電圧値の増大効果が非常に大きいため、総合的には変換効率を向上させることが可能となる。以上により、本発明の光電変換素子では、特に開放電圧値に優れ、高効率特性が得られることがわかった。
従来の光電変換素子の構造を説明するための図である。 従来の光電変換素子の構造を説明するための図である。 本発明の光電変換素子の一実施形態を示す図である。
符号の説明
1・・・p型多結晶シリコン基板
2・・・拡散層
3・・・反射防止膜
4・・・BSF層
5・・・表面電極
6・・・裏面電極
7・・・n型単結晶シリコン基板
8・・・p型非晶質層
9・・・透明導電膜
10・・n型非晶質層
11・・表面電極
12・・裏面電極
13・・多結晶シリコン基板
14・・拡散層
15・・受光面側絶縁層
16・・裏面側絶縁層
17・・表面電極
18・・BSF層
19・・裏面電極
20・・裏面取出電極

Claims (8)

  1. 一導電型領域と逆導電型領域とを有する多結晶半導体基板と、
    前記多結晶半導体基板の一導電型領域側の主面の少なくとも一部に形成され、且つ、水素を含有する絶縁層と、
    前記絶縁層を介して前記多結晶半導体基板上に形成された一導電型を示す薄膜層と、を有してなる光電変換素子。
  2. 前記絶縁層は、窒化珪素を主成分とすることを特徴とする請求項1に記載の光電変換素子。
  3. 前記薄膜層は、非単結晶相であることを特徴とする請求項1又は2に記載の光電変換素子。
  4. 前記非単結晶相は、非晶質或いは微結晶質であることを特徴とする請求項3に記載の光電変換素子。
  5. 一導電型領域を有する多結晶半導体基板の該一導電型領域側の第一主面の少なくとも一部に、水素を含有する絶縁層を形成する工程と、
    前記絶縁層を介して前記多結晶半導体基板上に、一導電型を示す薄膜層を形成する工程と、を有して成る光電変換素子の製造方法。
  6. 前記薄膜層形成工程に先立って、前記多結晶半導体基板の第二主面側に逆導電型領域を熱拡散法により形成することを特徴とする請求項5に記載の光電変換素子の製造方法。
  7. 前記薄膜層は、化学気相成長法を用いて形成されることを特徴とする請求項5又は6に記載の光電変換素子の製造方法。
  8. 前記絶縁層は、化学気相成長法を用いて形成されることを特徴とする請求項5乃至7のいずれかに記載の光電変換素子の製造方法。
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