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JP2007307893A - マット調フィルムおよび成形品 - Google Patents

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JP2007307893A JP2007104574A JP2007104574A JP2007307893A JP 2007307893 A JP2007307893 A JP 2007307893A JP 2007104574 A JP2007104574 A JP 2007104574A JP 2007104574 A JP2007104574 A JP 2007104574A JP 2007307893 A JP2007307893 A JP 2007307893A
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亘 合田
Shunichi Osada
俊一 長田
Kazue Sonoda
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Abstract

【課題】従来に比べて、干渉反射特有のぎらつきをおさえ、高級感のある金属調の質感を有したマット調フィルムおよびそれからなる成形品を提供する。
【解決手段】熱可塑性樹脂Aからなる層(A層)と熱可塑性樹脂Bからなる層(B層)を交互にそれぞれ100層以上積層した構造を含んでなり、分光反射率曲線R(λ)の波長λ区間[400,700](nm)における積分値が10000以上および/または反射率が60%以上であり、粒子を含んでなる少なくとも1層の厚みt(nm)と粒子の平均粒径r(nm)の関係が下記(1)式を満足する層を含んでなるマット調フィルム。1≦r/t≦300・・・式(1)
【選択図】図1

Description

本発明は、2種の熱可塑性樹脂を交互に積層した金属調の質感をもつマット調フィルムおよびそれを用いた成形品に関するものである。
従来、金属調外観を有する樹脂フィルム(以下、金属調フィルムと称す。)としては、例えば、樹脂フィルムの一面に蒸着、もしくはスパッタリングなどの方法で薄い金属層を被着成形したものが知られており、主に装飾用途等に用いられている。しかしながら、この金属調フィルムは、成形時に金属層の剥離、クラックなどの問題が発生しやすいという問題があった。この問題に対する対策としては、樹脂フィルムと金属層との間に密着性を向上するための接着層を介在させる提案(例えば、特許文献1参照)がなされているが、成形条件などが厳しい場合には満足すべき改善に至っていない。
また、光輝性粉末(アルミニウム粉末)と熱可塑性樹脂バインダを含有したインク成分を、熱可塑性樹脂フィルムの片面にベタ印刷または塗布することにより、金属発色が付与され真空成形に適した金属調フィルム(例えば、特許文献2参照)が提案されているが、この場合にもまた、金属粉を高濃度に添加しなければ金属調外観が得られないばかりか、金属を高濃度に含有した樹脂フィルムであるために、回収が困難であるという問題を有していた。
一方、金属を用いずに金属調を呈する積層フィルムが種々提案されており、例えば、屈折率の異なる樹脂層を交互に多層に積層することより、選択的に特定の波長を反射するフィルム(例えば、特許文献3〜5参照)が知られている。これらの中で選択的に特定の波長を反射するフィルムは、特定の光を透過あるいは反射するフィルタとして作用し、液晶ディスプレイなどのバックライト用金属調リフレクターおよび反射型偏光子などに利用されている。
しかしながら、この選択的に特定の波長を反射するフィルムは、光沢感が強いために色の深みや高級感などが要求される装飾用途としの金属調の質感が不十分であるばかりか、層間剥離を生じ易く、成形性も良いものではなかった。
特再平3−010562号公報(第2頁) 特開平8−183057号公報(第2頁) 特開平3−41401号公報(第2頁) 特開平4−295804号公報(第2頁) 特表平9−506837号公報(第2頁)
本発明は、上述した従来技術における問題点の解決を課題として検討した結果達成されたものである。したがって、本発明の目的は、従来に比べて、干渉反射特有のぎらつき(光沢感)をおさえ、高級感のある金属調の質感を有したマット調フィルムおよびそれからなる成形品を提供することにある。
上記目的を達成するため本発明によれば、熱可塑性樹脂Aからなる層(A層)と熱可塑性樹脂Bからなる層(B層)を交互にそれぞれ100層以上積層した構造を有し、かつ粒子を含有する層を少なくとも1層有する多層積層フィルムであって、前記粒子を含有する層の厚みt(nm)と粒子の数平均粒径r(nm)の関係が下記(1)式を満足し、
1≦r/t≦300・・・式(1)
分光反射率曲線R(λ)の波長λ区間[400,700](nm)において、少なくとも下記(a)および(b)のいずれかを満足するマット調フィルムが提供される。
(a)分光反射率曲線R(λ)の積分値が10000以上
(b)反射率が60%以上
なお、本発明のマット調フィルムにおいては、
前記粒子を含有する層と該粒子との間の屈折率差の絶対値Xと該粒子の数平均粒径r(nm)との関係が下記(2)式を満足すること、
100≦r×X・・・式(2)
平均粗さRaが35nm以上であること、
波長1500nmの光におけるヘイズ値が10%以上であること、および
前記熱可塑性樹脂Aがポリエチレンテレフタレートからなり、前記熱可塑性樹脂Bがスピログリコール成分とシクロヘキサンジガルボン酸成分をそれぞれ10モル%以上共重合したポリエステルからなること
が、いずれも好ましい条件として挙げられる。
また、本発明の成形品は、上記マット調フィルムを用いたフィルムインサート成形品、または上記マット調フィルムを用いた真空および/または圧空成形品であることを特徴とする。
本発明によれば、以下に説明するとおり、従来の金属調フィルムに比べて、回収可能であるために環境負荷が低減し、さらに剥離性、成形性に優れた金属ヘアライン・サンドブラストおよびエンボス加工を施したかのような高級感のある金属調の質感を持つマット調フィルムを得ることができる。
以下に、本発明について詳細に説明する。
本発明のマット調フィルムは、熱可塑性樹脂Aからなる層(A層)と熱可塑性樹脂Bからなる層(B層)を交互にそれぞれ100層以上積層した構造を含んでなり、分光反射率曲線R(λ)の波長λ区間[400,700](nm)における積分値が10000以上および/または反射率が60%以上であり、粒子を含んでなる少なくとも1層の厚みt(nm)と粒子の数平均粒径r(nm)の関係が下記(1)式を満足する層を含んでなければならない。
1≦r/t≦300・・・式(1)
本発明においては、ポリエチレン・ポリプロピレン・ポリ(4−メチルペンテン−1)などのポリオレフィン、シクロオレフィンとしては、ノルボルネン類の開環メタセシス重合,付加重合,他のオレフィン類との付加共重合体である脂環族ポリオレフィン、ポリ乳酸・ポリブチルサクシネートなどの生分解性ポリマー、ナイロン6、11、12、66などのポリアミド、アラミド、ポリメチルメタクリレート、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、エチレン酢酸ビニルコポリマー、ポリアセタール、ポリグルコール酸、ポリスチレン、スチレン共重合ポリメタクリル酸メチル、ポリカーボネート、ポリプロピレンテレフタレート・ポリエチレンテレフタレート・ポリブチレンテレフタレート・ポリエチレン−2,6−ナフタレートなどのポリエステル、ポリエーテルサルフォン、ポリエーテルエーテルケトン、変性ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルイミド、ポリイミド、ポリアリレート、4フッ化エチレン樹脂・3フッ化エチレン樹脂・3フッ化塩化エチレン樹脂・4フッ化エチレン−6フッ化プロピレン共重合体・ポリフッ化ビニリデンなどの熱可塑性樹脂を用いることができる。この中で、強度・耐熱性・透明性の観点から、特にポリエステルであることがより好ましい。これらは、ホモポリマーでも共重合ポリマー、さらには、アロイポリマーであってもよい。
本発明のマット調フィルムを構成するポリエステルとしては、芳香族ジカルボン酸または脂肪族ジカルボン酸とジオールを主たる構成成分とする単量体からの重合により得られるポリエステルが好ましい。ここで、芳香族ジカルボン酸として、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、1,4-ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、4,4′-ジフェニルジカルボン酸、4,4′-ジフェニルエーテルジカルボン酸、4,4′-ジフェニルスルホンジカルボン酸などを挙げることができる。脂肪族ジカルボン酸としては、例えば、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、ダイマー酸、ドデカンジオン酸、シクロヘキサンジカルボン酸とそれらのエステル誘導体などが挙げられる。中でも好ましくはテレフタル酸と2,6ナフタレンジカルボン酸を挙げることができる。これらの酸成分は1種のみ用いてもよく、2種以上併用してもよく、さらには、ヒドロキシ安息香酸等のオキシ酸などを一部共重合してもよい。
また、ジオール成分としては、例えば、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,2-シクロヘキサンジメタノール、1,3-シクロヘキサンジメタノール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリアルキレングリコール、2,2-ビス(4-ヒドロキシエトキシフェニル)プロパン、イソソルベート、スピログリコールなどを挙げることができる。中でもエチレングリコールが好ましく用いられる。これらのジオール成分は1種のみ用いてもよく、2種以上併用してもよい。
上記ポリエステルのうち、ポリエチレンテレフタレートおよびその重合体、ポリエチレンナフタレートおよびその共重合体、ポリブチレンテレフタレートおよびその共重合体、ポリブチレンナフタレートおよびその共重合体、さらにはポリヘキサメチレンテレフタレートおよびその共重合体、ポリヘキサメチレンナフタレートおよびその共重合体などを用いることが好ましい。
本発明における熱可塑性樹脂Aからなる層(A層)と、熱可塑性樹脂Bからなる層(B層)とは、上記熱可塑性樹脂から選ばれた異なる2種の熱可塑性樹脂からなる層のことである。最適な熱可塑性樹脂の組み合わせは、金属レベルの反射率を光干渉現象により生み出す観点から、樹脂間の面内屈折率差が0.05以上であることが好ましい。より好ましくは、0.08以上である。さらに好ましくは、0.1以上である。ここでいう面内屈折率とは、フィルムの面内方向の屈折率のことであり、本発明のマット調フィルムの場合、フィルムの走行方向であるMD(Machine Direction)方向の屈折率とフィルム幅方向であるTD(Transverse Direction)方向の屈折率の平均値である。面内屈折率差とは、樹脂間の面内屈折率の差の絶対値のことである。屈折率は、公知のアッべの屈折率計を用いて測定することができる。
また、2種類の熱可塑性樹脂の組み合わせとしては、高精度で積層構造が実現しやすい観点から、熱可塑性樹脂Aからなる層と熱可塑性樹脂Aと同一の基本骨格を含む熱可塑性樹脂Bからなる層を有していることが好ましい。ここでいう基本骨格とは、樹脂を構成する繰り返し単位のことであり、例えば、一方の樹脂がポリエチレンテレフタレートの場合は、エチレンテレフタレートが基本骨格である。また別の例としては、一方の樹脂がポリエチレンの場合、エチレンが基本骨格である。熱可塑性樹脂Aと熱可塑性樹脂Bが同一の基本骨格を含む樹脂であると、さらに層間での剥離が生じにくくなるからである。
また、本発明のマット調フィルムでは、配向結晶化により面内屈折率が高くなる観点から、熱可塑性樹脂Aがポリエチレンテレフタレートまたはポリエチレンナフタレートであることが好ましく、一方、熱可塑性樹脂Bは、配向結晶化が生じがたいシクロヘキサンジメタノール成分、あるいはスピログリコール成分を含んでなるポリエステルであることが好ましい。シクロヘキサンジメタノール成分、あるいはスピログリコール成分を含んでなるポリエステルとは、スピログリコール、あるいはシクロヘキサンジメタノールを共重合したコポリエステル、またはホモポリエステル、またはそれらをブレンドしたポリエステルのことを言う。シクロヘキサンジメタノール成分、あるいはスピログリコール成分を含んでなるポリエステルは、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレートとのガラス転移温度差が小さいため、成形時に過延伸になりにくく、かつ層間剥離もしにくいために好ましいからである。
熱可塑性樹脂Bがシクロヘキサンジメタノール成分を含んでいる場合は、面内屈折率を低下させ、層間の剥離が生じ難く、かつ加熱や経時による物性変化が少ない観点から、その共重合量が15モル%以上60モル%以下であるエチレンテレフタレート重縮合体であることが好ましい。
シクロヘキサンジメタノール成分以上に面内屈折率を低下させる観点から、熱可塑性樹脂Bは、スピログリコール成分およびシクロヘキサンジカルボン酸成分を含んでなるポリエステルであることが好ましい。熱可塑性樹脂Bがスピログリコール成分およびシクロヘキサンジカルボン酸成分を含んでなるポリエステルであると、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレートとの面内屈折率差がさらに大きくなるため、高い反射率が得られやすくなる。また、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレートとのガラス転移温度差が小さいため、成形時に過延伸になりにくく、かつ層間剥離もしにくい。
本発明のマット調フィルムにおいては、特に成形性の観点から熱可塑性樹脂Aがポリエチレンテレフタレートであることが好ましく、シクロヘキサンジメタノール成分より面内屈折率を低下させ、層間の剥離が生じ難く、かつ加熱や経時による物性変化が少ない観点から、熱可塑性樹脂Bがスピログリコール成分とシクロヘキサンジガルボン酸成分を、それぞれ10モル%以上共重合したポリエステルからなることが好ましい。過度に共重合量を増やすと、樹脂間の相溶性が悪くなるために高精度で積層構造が実現し難くなり、かつ層間の剥離がしやすくなる観点から、その共重合量は、それぞれ、10モル%以上50モル%以下の範囲内での組み合わせが好ましい。より好ましくは、20モル%以上40モル%以下である。
本発明のマット調フィルムは、熱可塑性樹脂Aからなる層(A層)と熱可塑性樹脂Bからなる層(B層)が、厚み方向に交互にそれぞれ100層以上積層した構造を含んでいることが必要である。厚み方向に交互にとは、2種類の熱可塑性樹脂A層とB層を、周期的にA(BA)n(nは自然数)などの規則的な配列で積層されていることをいう。
本発明のマット調フィルムの積層数は、高い光反射性能を達成する観点から、100以上あることが必要であり、好ましくは400以上、より好ましくは800以上である。さらに好ましくは、1200以上である。
本発明のマット調フィルムにおける100層以上の積層構造は、次のような方法で作製することができる。例えば、A(BA)nの積層フィルムの場合、A層に対応する押出機AとB層に対応する押出機Bの2台から熱可塑性樹脂が供給され、それぞれの流路からのポリマーが、公知の積層装置であるマルチマニホールドタイプのフィードブロックとスクエアミキサーを用いる方法、もしくは、コームタイプのフィードブロックのみを用いることにより100層以上に積層し、次いでその溶融体をT型口金等を用いてシート状に溶融押出し、その後、キャスティングドラム上で冷却固化して未延伸フィルムを得る方法が挙げられる。
マルチマニホールドタイプのフィードブロックとは、沢田慶司「プラスチック押出成形の最新技術」(ラバーダイジェスト社)(1993)に記載されているような公知のフィードブロックのことである。すなわち、複数の樹脂をダイ本体に送り込む前に、フィードブロック内で合流させ、次いでダイのシングルマニホールドへ送り込んで流れを拡幅して押出すものである。
また、スクエアミキサーとは、ポリマー流路を断面積が四角状の流路に2分割し、さらに、分岐されたポリマーを、再度、厚み方向上下に積層されるように合わさる合流部を備えた公知の筒体である。この工程を繰り返すことにより、何層もの積層体を得ることができる。例えば、2種の樹脂からなるA/B/A3層の積層体が、1度の分岐・合流を行うと5層の積層体になる。このような場合、積層数は、(初期の層数−1)×2のn乗+1で表現できる。但し、nは、1度の分岐・合流をn回、繰り返すことを意味する。また、スクエアミキサーの分配比は、通常、1:1の等しい断面積をもつ流路で等分配で分岐されるため、同じ積層体が周期的に形成される。一方、初期の積層体の構造が傾斜構造であるならば、分配比を非等分配とすることで、スクエアミキサー通過後の積層体も連続した層厚みの傾斜構造を維持することができる。スクエアミキサー前の初期の傾斜構造は、傾斜構造となっている各層に対応するマルチマニホールドタイプのフィードブロック内の各マニホールドの圧力損失を傾斜させることにより達成できる。
以上より、マルチマニホールドタイプのフィードブロックとスクエアミキサーを組み合わせれば、例えば、マルチマニホールドタイプのフィードブロックにて11層に積層された溶融状態の積層体が、スクエアミキサーを4回通過すると、161層の積層体を得ることができる。より層数を多くする方法としては、複数のフィードブロックを並列に並べる方法、スクエアミキサーの回数を増加させる方法、フィードブロック内で得られる積層流の層数を増加させる方法が挙げられる。ここでのマルチマニホールドタイプのフィードブロックとしては、特開2006−44212号公報に記載のタイプIIのフィードブロックが例示される。
しかしながら、上記したマニホールドタイプのフィードブロックを用いると、装置サイズが大型化し、また、スクエアミキサーを複数回通過するために高い積層精度を維持した多層積層されたフィルムを得ることは難しい。そのため、本発明のマット調フィルムにおいては、多数の微細スリットを有するコームタイプのフィードブロックを用いて積層構造を得ることが好ましい。このコームタイプのフィードブロックについての詳細は、特開2005−352237号公報に記載されている。このフィードブロックは、スリットの数を増やすことにより容易に400層までの積層体を一度に形成することが可能である。さらに、スクエアミキサーを組み合わせれば、1000層以上の積層体を得ることができる。さらに高い積層精度を実現するためには、スクエアミキサーを用いずに多数の微細スリット部材を並列に少なくとも2つ以上並べることにより、容易に800層以上の積層体を得ることができる。製造方法についての詳細は、特開2005−352237号公報に記載されている。
本発明のマット調フィルムは、金属調の光沢感が得られる観点から、(a)分光反射率曲線R(λ)の波長λ区間[400,700](nm)における分光反射率曲線R(λ)の積分値が10000以上、(b)波長λ区間[400,700](nm)における反射率が60%以上、の少なくともいずれかを満たすことが必要である。従来は、この光沢感を数値化するには、JIS Z8741記載の鏡面光沢度やJIS Z8722記載の色の測定方法で得られる分光立体角反射率・y値などの視感度に合わせたパラメーターにより表現されてきた。しかしながら、本発明のような干渉反射現象を利用した再帰反射体においては、その分光反射曲線に特徴があるために人間が見た目での金属調の光沢感を表すには、「分光反射率曲線R(λ)の波長λ区間[400,700](nm)における分光反射率曲線R(λ)の積分値が10000以上である」という評価を行うことが適当であることを見出して採用したものである。反射率の平均で表すと33.3%以上となる。
また、(b)については、波長λ区間[400,700](nm)における反射率が60%以上あることが必要である。(a)で記したような積分値で、大枠の金属調の光沢感を表現できるが、それでも表現できない場合がある。すなわち、(a)の条件を満足していなくとも、特定の波長で高い反射率を実現していれば、同様の光沢感を実現する場合がある。ゆえに、反射率60%以上であると、(a)の条件と同様の金属調の光沢感を出す効果がある観点から、より好ましくは、80%以上、さらに好ましくは、100%以上である。ここでの反射率とは、最大反射率を意味する。
最も好ましい条件は、(a)と(b)の両条件を満足することである。
分光反射率曲線R(λ)とは、公知の分光光度計で得られる各波長における反射率の分布のことである。反射率は相対反射率であっても、絶対反射率であっても良い。同じ被試験体を用いて、絶対反射率と相対反射率を比べると、通常は絶対反射率の方が低くでるため、絶対反射率が好ましい。測定点の波長間隔Δλは、1nmとする。可視光領域における積分値が大きければ大きい程、金属調の光沢感が増すため、より好ましくは波長λ区間[400,700](nm)における積分値が15000以上である。逆に金属以上の光沢感があると、高級感を損なうために、その積分値は32000以下であることが好ましい。
波長λ区間[400,700](nm)における積分値とは、波長と反射率の関係のグラフにおいて、波長λ区間[400,700](nm)における分光反射率曲線R(λ)と波長λ軸とで囲まれた面積のことである。積分値Sを式で表すと、下記式(3)で定義される。
Figure 2007307893
しかしながら、任意に得られる分光反射率曲線R(λ)を積分することは難しく、通常は、シンプソン法、台形法などの数値積分法の理論を用いて(3)式を計算する。本発明においては、分光光度計により得られる波長λ区間[400,700](nm)の波長1nm毎における反射率R(λ)データを用いて、計算の簡便さからシンプソン法を用いて計算することが好ましい。シンプソン法について詳細な説明は、山内二郎他著書の「電子計算機のための数値計算法I」(培風館)(昭和40年)に記載されている。
また、干渉反射の視野角に依存したカラーシフト現象を抑制し、かつ金属調の光沢感を得る観点からは、分光反射率曲線R(λ)の波長λ区間[400,1000](nm)における積分値が30000以上であることがより好ましい。一方、その積分値の上限は60000以下であることが好ましい。
本発明のマット調フィルムの光沢感を生み出す反射性能は、従来の金属自体の鏡面反射性能を利用したのではなく、光学波長レベルの積層構造による干渉反射の原理を利用したものである。干渉反射とは、光透過性のある異なる媒質、すなわち屈折率が異なる薄い層を多数重ね、その境の面の反射光が互いに干渉し、強め合う現象である。例えば、2種の熱可塑性樹脂A,Bを交互に多数重ねた多層膜について、膜の表面に対し垂直に光を入射したとき、積層の界面では、下記式(4)の条件を満たす波長λ(nm)の光が反射する。
2・(nA・dA+nB・dB)=nλ・・・式(4)
ここで、
nA:熱可塑性樹脂Aの屈折率
nB:熱可塑性樹脂Bの屈折率
dA(nm):熱可塑性樹脂Aの層の厚み
dB(nm):熱可塑性樹脂Bの層の厚み
n:反射の次数を表す自然数
である。したがって反射波長λは、熱可塑性樹脂A,Bの選択や層厚みの調整により、任意に設定することができる。得られる分光反射曲線の特徴としては、リップル状の曲線となる。層厚み分布に依存して、大きな山(反射率のピーク値)や谷(反射率の極小値)が繰り返された分光反射曲線となる。
構成する各層の層厚みは、各層を構成する熱可塑性樹脂の屈折率に応じて設定すると良い。例えば、後述するような例示における積層構造を形成する熱可塑性樹脂の屈折率はおよそ1.3〜1.9の範囲にあり、この場合の各層の厚みは、光干渉を利用し易くする観点から30〜650nmの範囲の値に設定することが好ましい。より好ましくは、50〜350nmである。
また、目的とする積層構成は、必要とする反射性能に応じて決定される。例えば、特定の波長の光のみ反射し、それ以外の光を透過させる機能を持つ狭帯域反射フィルタは、厚み方向の樹脂Aの層厚みと樹脂Bの層厚みが一定である周期構造を形成する必要があり、また、ある波長以上の全ての光を透過、もしくは反射させる機能をもつエッジフィルタは、樹脂Aの層厚みと樹脂Bの層厚みが一定の割合で変化する傾斜構造を形成する必要がある。この他、狭帯域透過フィルタ、広帯域透過フィルタ、偏光ビームスプリッターなどの如何なるフィルタにおいても、目的となる機能が決定すれば、光学計算により、その最適な構造が決定され得る。光学計算の理論については、小檜山 光信「光学薄膜の基礎理論」(オプトロニクス社)(2003)に記載されている。
本発明のマット調フィルムにおいては、金属光沢感を出す観点から、可視光領域の反射性能が必須であるため、エッジフィルタの積層構成に類似している。すなわち、所望の反射波長帯域の端部となる波長λ(例えば400nm)、λ’ (例えば700nm)を決定し、既知の吐出比と屈折率から上記式(4)に従い反射波長λに対応する層厚みdA、dBを、さらに、反射波長λ’に対応する層厚みdA’、dB’をそれぞれ求める。層厚みdA→dA’間、dB→dB’間を、それぞれ単調増加もしくは単調減少と連続的に変化する層厚み分布となるような積層構成とする。この厚み方向の層厚みの傾斜構造は、等差数列、等比数列、二次関数の関係を採用することが好ましい。特に、等比数列の関係が好ましい。また、熱可塑性樹脂Aの最小厚み層に対する最大厚み層の比である傾斜度合いは、樹脂Aと樹脂Bの屈折率差に依存するが、本発明のマット調フィルムにおいては高い反射帯域を達成する観点から0.7以下であることが好ましい。より好ましくは、0.5以下である。以上のような積層構成を達成することで、金属調の光沢感のあるマット調フィルムが得られるのである。また、熱可塑性樹脂AとBの積層比(A/B)は、反射率を高く、かつ反射帯域を広くする観点から0.8〜3が好ましい。より好ましくは、1〜2である。
本発明のマット調フィルムは、粒子を含有する層を少なくとも1層有し、粒子を含有する層の厚みt(nm)と粒子の数平均粒径r(nm)の関係が下記(1)式を満足しなければならない。
1≦r/t≦300・・・式(1)
すなわち、粒子を含んでなる少なくとも1層が上記式(1)を満足することにより、高級感のある金属調の質感をもつマット調フィルムを提供することができる。粒子による光拡散性は、粒子の散乱断面積が多く、光路長が長いほど、その性質は強くなるため、100層以上の層が、上記式(1)を満足していることが好ましい。r/tが1未満であると、粒子が層に埋没してしまうため、正反射光によるぎらつきが強く、高級感が損なわれる。より好ましくは、5以上である。さらに、好ましくは20以上である。一方、r/tが300を越えると、マット調フィルムの内部の層に粒子があれば層が乱れるために金属調の光沢感が失われやすく、また、表層にあれば、粒子の脱落や表面のゴツゴツ感が高級感を損なうことになる。より好ましくは、100以下である。
本発明の粒子としては、樹脂に対して不活性な有機、無機系の粒子であれば、如何なるものも用いることができる。その形状としては、凝集粒子、真球状粒子、数珠状粒子、コンペイト状粒子、鱗片状粒子などの粒子を使うことができる。また、その材質としては、無機系としては、酸化鉄、酸化マグネシウム、酸化セリウム、酸化亜鉛、炭酸バリウム、チタン酸バリウム、塩化バリウム、水酸化バリウム、酸化バリウム、アルミナ、セリナイト、酸化珪素(シリカ)、炭酸カルシウム、酸化チタン、アルミナ、ジルコニア、珪酸アルミニウム、マイカ、パールマイカ、ろう石クレー、焼成クレー、ベントナイト、タルク、カオリン、その他の複合酸化物等を、有機系としてはポリイミド系樹脂、オレフィンあるいは変性オレフィン系樹脂、架橋ないし無架橋ポリスチレン系樹脂、架橋ないし無架橋アクリル樹脂、フッ素系樹脂、シリコン系樹脂等を挙げることができる。中でも、層の界面を破壊することなく、粒子自体が形状変化しやすい凝集粒子が好ましい。
粒子を含有する層とは、本発明のマット調フィルムは、100層以上の層を有するため、これらの層のうち、粒子が含まれている層の少なくとも1層を意味する。すなわち、全ての層に粒子が存在する場合は、少なくとも1層が上記式(1)を満足すれば良いことを意味する。逆に、1層を除く全ての層が無粒子層であるなれば、この1層が上記式(1)を満足しなければならない。
層厚みは、マット調フィルムの断面切片を公知のTEMもしくはSEM観察で測長することができる。倍率は、適宜、観察する層厚みに合わせれば良い。例えば、1μm以下の層厚みは、TEM観察で2万倍以上で観察することができる。一方、1〜10μmまでは、SEM観察で2万〜1000倍程度での観察が好ましい。
本発明における粒子の平均粒径とは、数平均の粒子径ことである。数平均の粒子径Dは、下記式(5)に従って求めることができる。
Figure 2007307893
Nは粒子数。diは、粒子径(nm)とする。粒子径diは、粒子を観察したときの長軸径とする。
その他、粒度分布から求まる平均粒子径であっても同様の傾向を示す観点から採用しても良い。粒度分布曲線を測定する方法としては、公知のふるい分け法、顕微鏡法、光散乱法、沈降法、遠心力法などを用いて測定することができる。種々の平均粒子径の求め方は、久保輝一郎著「粉体」(丸善)(昭和37)に記載されている。近年は、得られた顕微写真から画像処理ソフトを用いも平均粒子径は求められる。
本発明のマット調フィルムにおいては、高い拡散反射性能を付与する観点から、粒子を含んでなる層と該粒子との間の屈折率差の絶対値Xと該粒子の平均粒径r(nm)との関係が下記(2)式を満足することが好ましい。
100≦r×X・・・式(2)
上記式(2)は、拡散性能を付与するために、含有する粒子の平均粒径が小さい場合は屈折率差を大きく、逆に平均粒径が大きい場合は屈折率差が小さくても良いことを見出したことにより導き出したものである。より高い拡散性を付与する観点から、r×Xは500以上であることがより好ましい。粒子を含んでなる層とは、粒子を包含している樹脂層のことであり、熱可塑、熱硬化、電子線硬化性樹脂の如何なるものであっても良い。粒子を含んでなる層と該粒子との間の屈折率差の絶対値Xとは、樹脂層の屈折率と粒子の屈折率との差の絶対値のことである。屈折率は、JIS K7142(1996)A法およびB法により測定することができる。r×Xの値を調整するには、樹脂と粒子の選択を調整することで容易に達成することができる。
光散乱は、大別すると前記した粒子と屈折率が異なる媒体との間に起こる光散乱(ミー散乱、レイリー散乱などを含む。)と、表面形状に依存した光散乱とがある(例えば、すりガラス)。本発明のマット調フィルムは、適度な易滑性とより光拡散性を付与する観点から、平均粗さRaが35nm以上であることが好ましい。より好ましくは、100nm以上である。ここでRaとは、中心線平均粗さのことである。Raは、粗さ曲線からその中心の方向に測定長さL部分をとり、この抜き取りの中心線をX軸、縦軸をYとし、粗さ曲線をY=f(x)で表したとき、下記(6)式で与えられる。
Figure 2007307893
また、Raが余り高すぎると表面が荒れすぎて、逆に高級な質感が損なわれるため、Raは1000nm以下であることが好ましい。Raを上記した値に制御する方法は特に限定されないが、最外層に含まれる粒子の平均粒径と最外層厚み、さらに粒子濃度を適宜調整することで達成することができる。その他、エンボス加工によりマット調フィルムの表面を粗らすことでも達成することができる。
本発明のマット調フィルムにおいては、波長1500nmの光におけるヘイズ値が10%以上であることが好ましい。ヘイズ値が10%未満であると、光拡散性が少ないために高級感のある金属調の質感をもつことができない。より好ましくは、20%以上である。逆に余りヘイズが高すぎると高級感を損なう観点から、ヘイズ値は50%未満であることが好ましい。この可視光領域でない光の波長で上記したヘイズの範囲に調整する方法は、平均粗さRa、(1)式のr(nm)/t(nm)、との関係が上記(1)式および(2)式のr×Xの値を調整することである。
本発明のマット調フィルムと成形品を一体成形化することで高級感のある金属調の質感をもつ成形品が得られるため、フィルムインサート成形品が本発明のマット調フィルムを用いていることが好ましい。フィルムインサート成形品とは、デザイン印刷などを施した特殊フィルムをプラスチック成形の金型(mold)に挿入し、次いで加熱流動化した成形材料(射出樹脂)を、その金型に流し込むことによって製造されるデザインフィルム一体型の射出成形品のことである。本発明のマット調フィルムは、インサート成形し易くなる観点から、フィルム厚みは50μm以上350μm以下であることが好ましい。より好ましくは、80μm以上200μm以下である。フィルム製造工程におけるキャスト速度、押出量などを変更することで調整することができる。さらに、インサート樹脂との接着性を向上させるために、予め本発明のマット調フィルムの上にアクリル系、ウレタン系、ポリエステル系、ポリ塩化ビニル酢酸ビニル共重合体系の樹脂などの易接着層を形成しておいても良い。フィルムインサート成形の条件としては、成形樹脂の射出温度は、樹脂の溶融温度であり、一般的にアクリル系では240℃前後、ポリエステル系では280℃前後、ポリアミド系では200℃前後であることが知られている。その他、ポリスチレン、ポリカーボネートなどは270℃前後であり、用いる樹脂に合わせて決定すれば良い。また、金型温度は、本発明のマット調フィルムの成形性と接着性の観点から、80℃以上150℃以下であることが好ましい。なお、本発明のマット調フィルムを際立たせるために、インサートする樹脂には、カーボンブラックが添加されていることが好ましい。その添加量としては、1重量%以上が適当である。
また、成形品は、本発明のマット調フィルムを用いた真空および/または圧空成形品であることが好ましい。真空成形とは、まず、熱可塑性樹脂のシートをクランプ金枠にはさんでヒーターで加熱軟化させた後、あらかじめ型のコーナーに真空孔を設けた雄型、または雌型を突き上げて真空吸引し、大気圧でシートを型に密着させて成形するもので、成形品は冷却・硬化させてから取り出す。真空圧空成形は、上記の工程にプラスして、型突き上げと同時に圧空箱を降下させ、この中に圧空を加えることにより、大気圧にかわって大きな成形圧力でシートを型に密着成形する方法である。この方法によって製造される成形品が、真空圧空成形品となる。ヒーターの加熱温度は、樹脂が熱変形する温度が好ましい。本発明のマット調フィルムの場合は、150℃未満であると高い成形性が得られず、また250℃を越えると色むらの発生ならびに成形品の平面性が悪くなるため、好ましくは150以上250℃以下である。一方、金型温度についても同様であり、ガラス転移点以上結晶融解温度以下が好ましい。本発明のマット調フィルムにおいては、80℃以上150℃以下であることが好ましい。空気圧は、余り高すぎるとフィルム破れに繋がり、また、低すぎると成形性が甘くなるため、0.5MPa〜5MPa程度が好ましい。ここでの成形性が「甘い」とは、通常のインサート成形材料に用いられるアクリル(PMMA)やポリカーボネート(PC)などの未延伸シートなどに比べて、角が出ていないという意味である。真空度も同様な理由から、差圧表示で100mmHg以下であることが好ましい。また、成形倍率が高い成形品とする場合は、本発明であるマット調フィルムと、前記したPMMAやPCやアクリルニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体(ABS)樹脂シートと貼り合わせたインサート成形用マット調フィルムとすることも好ましい。未延伸シートの厚みは、成形性の観点から100〜500μm程度が好ましい。
本発明のマット調フィルムを達成する具体的な態様を以下に記す。
本発明の多層積層されているマット調フィルムの製造方法は、A(BA)nの積層フィルムの場合、個々の熱可塑性樹脂がA層に対応する押出機AとB層に対応する押出機Bの2台から供給され、それぞれの流路からのポリマーが、マルチマニホールドダイやフィードブロックやスクエアミキサーやスタティックミキサーを用いて積層された溶融体をT型口金等を用いてシート状に溶融押出し、その後、キャスティングドラム上で冷却固化して未延伸フィルムを得る方法で得られる。本発明のマット調フィルムの積層構造は、100層以上からなる傾斜構造であることが好ましい。100層以上の傾斜構造は、コームタイプのフィードブロックを用いることで製造できる。層数は、コームタイプのフィードブロックを構成するスリット板のスリット数を調整することで決定することができる。本発明のマット調フィルムは、波長λ区間[400,700](nm)において高い反射性能を達成する観点から、本発明の層数は、500層以上が好ましく、より好ましくは800層以上である。さらに好ましくは、1600層である。スリット板1枚に付き、スリット数は装置の大型化の観点から最大で300個程度が限界であるため、800層以上を達成するためには、スリット板1枚+スクエアミキサーを用いる方法、もしくは、スリット板を数個、並列に並べる方法がある。より高い積層精度を達成するためには、後者が最も好ましい。また、傾斜構造を得る方法としては、フィードブロック内部のスリットの間隙や長さを傾斜させることで達成される。一方、スクエアミキサーを用いる場合は、通常、その分配比は、1:1の等しい断面積をもつ流路で等分配分岐されるため、初期の積層体の構造が傾斜構造であるならば、厚み方向に分岐回数分、傾斜構造が周期的に繰り返して並ぶことになる。しかしながら、分配比を非等分配とすることで、スクエアミキサー通過後のポリマー積層体が連続した傾斜構造を維持することができる。すなわち、層番号と層厚みのグラフをプロットしたときに、連続的に右肩上がりの等比数列や二次関数で表される近似曲線もしくは近似直線が得られることになる。
また、これらの積層構造の最表層のみ、異なる特性を持たせたい場合は、押出機Cから供給される新たな第3成分の樹脂をピノールを用いて合流させ、カバー層を形成することも可能である。公知のピノールは、片側表層のみ、もしくは、両表層のどちらでも対応可能である。前記の共押出法以外では、コーティング法で第三成分樹脂を表層に積層することができる。異なる特性とは、易滑性、光拡散性、易接着性、耐湿性などのことである。
本発明のマット調フィルムにおいて、この最表層に粒子を添加することは、高級な質感を有する金属調を呈するための光拡散性を付与する観点からは非常に効果的である。
図1に本発明の実施形態であるフィードブロックの例を示す。該フィードブロックは、2種の熱可塑性樹脂Aと熱可塑性樹脂Bを多層に積層する積層装置のことであり、詳細を以下に説明する。図1において、部材板1〜9がこの順に重ねられ、フィードブロック10を形成する。
図1のフィードブロック10は、樹脂導入板2,4,6,8に由来して4つの樹脂導入口を有するが、例えば熱可塑性樹脂Aを樹脂導入板2,6の導入口11から供給し、熱可塑性樹脂Bを樹脂導入板4,8の導入口11から供給する。 すると、スリット板3は、樹脂導入板2から熱可塑性樹脂A、樹脂導入板4から熱可塑性樹脂Bの供給を受け、スリット板5は、樹脂導入板6から熱可塑性樹脂A、樹脂導入板4から熱可塑性樹脂Bの供給を受け、スリット板7は、樹脂導入板6から熱可塑性樹脂A、樹脂導入板8から熱可塑性樹脂Bの供給を受けることになる。
ここで、各スリット板に導入される熱可塑性樹脂の種類は、樹脂導入板2,4,6,8における液溜部12の底面とスリット板における各スリットの端部との位置関係により決定される。すなわち、図3に示すように、スリット板における各スリットの頂部の稜線13は、スリット板の厚み方向に対して傾斜を有する(図2(b),(c))。但し、図2(a)に示すように、各スリット板の両端部に位置した厚膜層を形成するスリット巾は、薄膜層の破壊を防ぐ観点から、他の薄膜層を形成するスリット巾の2倍以上であることが必要である。ここでの他の薄膜層を形成するスリット巾とは、厚膜層を形成するスリットに隣接する薄膜層を形成するスリット部の巾のことである。より好ましくは、3倍以上である。
そして、図3に示すように、樹脂導入板2,4,6,8(8は繰り返し構造のため、図3中から省略)における液溜部12の底面の高さは、前記稜線13の上端部14と下端部15との間の高さに位置する。このことにより、前記稜線13が上がった側からは樹脂導入板2,4,6,8の液溜部12から熱可塑性樹脂が導入されるが(図3中16)、前記稜線13が下がった側からはスリットが封鎖された状態となり熱可塑性樹脂は導入されない。かくして各スリットごとに熱可塑性樹脂AまたはBが選択的に導入されるので、積層構造を有する熱可塑性樹脂の流れがスリット板3,5,7(7は繰り返し構造のため、図3中から省略)中に形成され、当該スリット板3,5,7の下方の流出口17より流出する。
スリットの形状としては、熱可塑性樹脂が導入される側のスリット面積と熱可塑性樹脂が導入されない側のスリット面積が同一ではないことが好ましい。このような構造とすると、熱可塑性樹脂が導入される側と熱可塑性樹脂が導入されない側での流量分布を低減できるため、幅方向の積層精度が向上する。さらには、(熱可塑性樹脂が導入されない側のスリット面積)/(熱可塑性樹脂が導入される側のスリット面積)が0.2以上0.9以下であることが好ましい。より好ましくは0.5以下である。また、フィードブロック内の圧力損失が1MPa以上となることが好ましい。また、スリット長(図1中Z方向スリット長さの内、長い方)を20mm以上とすることが好ましい。一方、スリットの間隙は、加工精度の観点から0.1mm以上が好ましく、より好ましくは。0.5mm以上2mm以下である。このようにスリットの間隙や長さを調整することにより、各層の厚みを制御することが可能である。なお、スリットは、その間隙や長さを微妙に調整した高い加工精度を必要とする観点から、ワイヤー放電加工にて製作されたものが好ましい。
また、各スリット板に対応したマニホールド部を有していることも好ましい。マニホールド部により、スリット板の内部での幅方向(図1中Y方向)の流速分布が均一化するため、積層されたフィルムの幅方向の積層比を均一化することができ、大面積のフィルムでも精度良く積層することが可能となり、フィルム巾方向の反射率を精度良く制御することができる。
また、一つの液溜部から二つ以上のスリット板へ熱可塑性樹脂を供給することがより好ましい。このようにすると、例え、わずかにスリット板の内部で幅方向に流量分布が生じていたとしても、次に説明する合流装置にてさらに積層されるため、積層比としてはトータルでは均一化されて、高次の反射帯域のむらを低減することが可能となる。
図1に示すように、スリット板3,5,7の下方の流出口17は、3つの熱可塑性樹脂流れの積層構造が並列となる位置関係で配置され、また、樹脂導入板4,6によって互いに隔てられている。この流出口17の形状は、積層精度を高くする観点から、アスペクト比が1以上であることが好ましい。ここでのアスペクト比とは、フィルム巾方向(図1中でY軸方向)の長さに対する積層方向(図1中でX軸方向)の長さの比ことである。
本発明の積層フィルムは、図1のフィードブロック10の真下(Z方向)に図4(a)に示すような合流装置18を配置し、これを用いて製造されることが好ましい。図4(a)中のL−L’、M−M’、N−N’におけるXY断面図を、それぞれ、図4(b)、(c)、(d)に示す。以下、スリット板以後の3つの熱可塑性樹脂流れについて説明する。図4(a)に示す合流装置18により、中L−L’からM−M’にかけて、図4(b)、(c)の断面図から理解されるように、流路の規制による配置の転換が行われ3つの熱可塑性樹脂流れの構成が並列から直列となる。ここで、図4(a)中のL−L’からM−M’にかけての樹脂流路の断面積は、積層精度を高くする観点から、全て一定であることが好ましい。また、M−M’位置における断面形状の面積も、ポリマーの流速を調整し、積層乱れを制御する観点から、出来るだけ広い方が良い。具体的には、断面積内を単位時間内に通過する交互積層された熱可塑性樹脂の吐出量は、40kg/hr/cm以下であることが好ましい。より好ましくは、30kg/hr/cm以下であり、さらに好ましくは、20kg/hr/cm以下である。さらに、当該熱可塑性樹脂流れは図4(a)中、M−M’からN−N’にかけて拡幅され、図4中N−N’より下流にある口金部へ流入される。その後、溶融状態の当該熱可塑性樹脂流れは、Tダイ内部のマニホールド部に充填、さらに拡幅され、次いでダイスリットからシート状に押し出され、熱可塑性樹脂のガラス転移温度以下の冷却ロール上で固化されることにより未延伸状態の積層フィルムが得られる。このようにして得られた未延伸フィルムである積層フィルムは、高い積層精度を有する。
さらに、この未延伸状態の積層フィルムを樹脂組成物のガラス転移点(Tg)以上の温度で延伸する方法などで得ることもできる。この際の延伸の方法は、少なくとも一方向に延伸されていることが、熱寸法安定性の観点から好ましい。特に、公知の逐次2軸延伸法、もしくは同時二軸延伸法で2軸延伸されていることが好ましい。公知の2軸延伸法とは、長手方向に延伸した後に幅方向に延伸する方法、幅方向に延伸した後に長手方向に延伸する方法で行えばよく、長手方向の延伸、幅方向の延伸を複数回組み合わせて行なってもよい。例えば、ポリエステルから構成された延伸フィルムの場合、延伸温度及び延伸倍率はいくらであっても良いが、通常のポリエステルフィルムの場合、延伸温度は80℃以上130℃以下であり、延伸倍率は2倍以上7倍以下が好ましい。長手方向の延伸方法は、ロール間の速度を変化を利用して行う。また、幅方向の延伸方法は、公知のテンター法を利用する。すなわち、フィルムの両端をクリップで把持しながら搬送して、幅方向に延伸する。
次いで、この延伸されたフィルムを、引き続きテンター内で熱処理する。この熱処理は、延伸温度より高く、融点より低い温度で行うのが一般的である。通常のポリエステルの場合、130℃ないし250℃の範囲で行うのが好ましいが、熱収縮率を抑える観点から200℃乃至240℃の範囲で行うのがより好ましい。さらに、フィルムの熱寸法安定性を付与するために幅方向、もしくは長手方向に2〜10%程度の弛緩熱処理を施すことも好ましい。
次に、同時二軸延伸法について説明する。冷却ロール上にキャストされた未延伸フィルムを、同時二軸テンターへ導き、フィルムの両端をクリップで把持しながら搬送して、長手方向と幅方向に同時および/または段階的に延伸する。長手方向の延伸は、テンターのクリップ間の距離を広げることで、また、幅方向はクリップが走行するレールの間隔を広げることで達成される。本発明における延伸・熱処理を施すテンタークリップは、リニアモータ方式で駆動することが好ましい。その他、パンタグラフ方式、スクリュー方式などがあるが、中でもリニアモータ方式は、個々のクリップの自由度が高いため延伸倍率を自由に変更できる点で優れている。フィルムが通常のポリエステルの場合、延伸倍率、延伸温度および熱処理温度は、逐次二軸延伸の条件と類似している。すなわち、延伸温度は80℃以上130℃以下、延伸倍率は面積倍率として8〜30倍が好ましく用いられる。
本発明のマット調フィルムの厚みは、各層厚みと総積層数の兼ね合いから決定され、通常、50μm〜200μmである。
本発明のマット調フィルムは、インサート樹脂との易接着性、および/あるいは高濃度粒子添加による拡散反射性能を高める観点から、最表層には、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂の少なくとも1種から選ばれた樹脂を含んでなるプライマー層があることが好ましい。これらの樹脂は、それぞれ単独で用いてもよく、複数種類を組み合わせて用いてもよい。
プライマー層の構成成分として用いるウレタン樹脂としては、アニオン性基を有する、水溶性あるいは水分散性のものであればよく、その主要構成成分としては、ポリオール化合物とポリイソシアネート化合物を共重合して得られるものである。
ウレタン樹脂に用いるポリオール化合物としては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレン・プロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、テトラメチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリカプロラクトン、ポリヘキサメチレンアジペート、ポリテトラメチレンアジペート、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、グリセリン、アクリル系ポリオールなどを挙げることができる。
また、ウレタン樹脂に用いるポリイソシアネート化合物としては、例えば、トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネートとトリメチロールプロパンの付加物、ヘキサメチレンジイソシアネートとトリメチロールエタンの付加物などを挙げることができる。
ウレタン樹脂中のアニオン性基は水への親和性の向上に資するものであり、例えば、スルホン酸基、カルボン酸基、硫酸半エステル基およびこれらのアンモニウム塩、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩を挙げることができる。特に好ましくは、スルホン酸塩基である。
アニオン性基のウレタン樹脂に対する含有量としては、0.5〜15質量%が好ましい。
ポリウレタン樹脂に対するアニオン性基の含有量としては、0.05〜8質量%が好ましい。0.05質量%以上とすることで、ウレタン樹脂の水分散性向上の実効を得ることができ、8質量%以下とすることで、樹脂の耐水性の劣化や、樹脂層同士が固着するブロッキング現象の発生を抑えることができる。
ウレタン樹脂は、上記成分の他に、鎖長延長剤あるいは架橋剤などを含んでなることも好ましい。鎖延長剤あるいは架橋剤としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ジエチレングリコール、エチレンジアミン、ジエチレントリアミンなどを用いることができる。
ウレタン樹脂の分子量としては、数平均分子量で300〜20000が好ましい。
プライマー層の構成成分として用いるアクリル樹脂に関して、当該アクリル樹脂を構成するモノマー成分としては、例えば、アルキルアクリレート、アルキルメタクリレート(アルキル基としてはメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、2−エチルヘキシル基、ラウリル基、ステアリル基、シクロヘキシル基、フェニル基、ベンジル基、フェニルエチル基などが挙げられる。)、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレートなどのヒドロキシ基含有モノマー、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、N,N−ジメチロールアクリルアミド、N−メトキシメチルアクリルアミド、N−メトキシメチルメタクリルアミド、N−フェニルアクリルアミドなどのアミド基含有モノマー、N,N−ジエチルアミノエチルアクリレート、N,N−ジエチルアミノエチルメタクリレートなどのアミノ基含有モノマー、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレートなどのエポキシ基含有モノマー、アクリル酸、メタクリル酸またはそれらの塩(リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩などが挙げられる)などのカルボキシル基またはその塩を含有するモノマーなどを用いることができる。これらは1種を単独で重合して用いてもよいし、2種以上を共重合して用いてもよい。
特に、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、n−ブチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、アクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、アクリル酸から選ばれる重合成分を含むものが好ましい。
また、アクリル樹脂のプライマー層としての効果を阻害しない範囲で、他種のモノマーを共重合してもよい。共重合しうる他種のモノマーとしては、例えば、アリルグリシジルエーテルなどのエポキシ基含有モノマー、スチレンスルホン酸、ビニルスルホン酸およびそれらの塩などのスルホン酸基またはその塩を含有するモノマー、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマール酸およびそれらの塩などのカルボキシル基またはその塩を含有するモノマー、無水マレイン酸、無水イタコン酸などの酸無水物を含有するモノマー、ビニルイソシアネート、アリルイソシアネート、スチレン、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルトリスアルコキシシラン、アルキルマレイン酸モノエステル、アルキルフマール酸モノエステル、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アルキルイタコン酸モノエステル、塩化ビニリデン、酢酸ビニル、塩化ビニルなどを用いることができる。なお、スルホン酸基やカルボキシル基との塩としては、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩などを挙げることができる。
また、アクリル樹脂は、ポリエステル、ウレタン、エポキシなどで変性した、ブロック共重合体、グラフト共重合体などの変性アクリル共重合体であってもよい。
ポリエステル樹脂は、プライマー層を構成する樹脂の中でも接着性の点で好ましい。
該ポリエステル樹脂を構成する酸成分としては、芳香族、脂肪族、脂環族のジカルボン酸や3価以上の多価カルボン酸を使用することができる。
芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、オルソフタル酸、フタル酸、2,5−ジメチルテレフタル酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、ビフェニルジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,2−ビスフェノキシエタン−p,p’−ジカルボン酸、フェニルインダンジカルボン酸などを用いることができる。プライマー層の強度や耐熱性の点から、これらの芳香族ジカルボン酸が、全ジカルボン酸成分の30モル%以上を占めていることが好ましく、より好ましくは35モル%以上、さらに好ましくは40モル%以上である。
また、脂肪族および脂環族のジカルボン酸としては、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ドデカンジオン酸、ダイマー酸、1,3−シクロペンタンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸など、およびそれらのエステル形成性誘導体を用いることができる。
プライマー層の構成成分として用いられるポリエステル樹脂のグリコール成分としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、2,4−ジメチル−2−エチルヘキサン−1,3−ジオール、ネオペンチルグリコール、2−エチル−2−ブチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−2−イソブチル−1,3−プロパンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2,2,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、2,2,4,4−テトラメチル−1,3−シクロブタンジオール、4,4’−チオジフェノール、ビスフェノールA、4,4’−メチレンジフェノール、4,4’−(2−ノルボルニリデン)ジフェノール、4,4’−ジヒドロキシビフェノール、o−,m−,およびp−ジヒドロキシベンゼン、4,4’−イソプロピリデンフェノール、4,4’−イソプロピリデンビンジオール、シクロペンタン−1,2−ジオール、シクロヘキサン−1,2−ジオール、シクロヘキサン−1,4−ジオールなどを用いることができる。
プライマー層の構成成分として用いられるポリエステル樹脂は、水系液にして塗液として用いるのが好ましく、この場合には、ポリエステル樹脂の水溶化あるいは水分散化を容易にするため、カルボン酸基、カルボン酸塩基、スルホン酸基あるいはスルホン酸塩基を含む化合物を共重合することが好ましい。
カルボン酸基あるいはカルボン酸塩基を含む化合物としては、例えば、トリメリット酸、無水トリメリット酸、ピロメリット酸、無水ピロメリット酸、4−メチルシクロヘキセン−1,2,3−トリカルボン酸、トリメシン酸、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸、1,2,3,4−ペンタンテトラカルボン酸、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロフルフリル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロフルフリル)−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸、シクロペンタンテトラカルボン酸、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸、エチレングリコールビストリメリテート、2,2’,3,3’−ジフェニルテトラカルボン酸、チオフェン−2,3,4,5−テトラカルボン酸、エチレンテトラカルボン酸など、あるいはこれらのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩等を挙げることができる。
また、スルホン酸基あるいはスルホン酸塩基を含む化合物としては、例えば、スルホテレフタル酸、5−スルホイソフタル酸、4−スルホイソフタル酸、4−スルホナフタレン−2,7−ジカルボン酸、スルホ−p−キシリレングリコール、2−スルホ−1,4−ビス(ヒドロキシエトキシ)ベンゼンなど、あるいはこれらのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩を用いることができる。
プライマー層に用いられる好ましいポリエステル樹脂としては、酸成分としてテレフタル酸、イソフタル酸、セバシン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、グリコール成分としてエチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコールから選ばれる共重合体などが挙げられる。プライマー層に耐水性が必要とされる場合は、5−ナトリウムスルホイソフタル酸の代わりに、トリメリット酸をその共重合成分とした共重合体なども好適に用いることができる。
また、プライマー層に用いるポリエステル樹脂は、アクリル、ウレタン、エポキシなどで変性した、ブロック共重合体、グラフト共重合体などの変性ポリエステル共重合体であってもよい。
本発明にかかるプライマー層に用いられるポリエステル樹脂の固有粘度は、接着性の点で0.3dl/g以上であることが好ましく、より好ましくは0.35dl/g以上、さらに好ましくは0.4dl/g以上である。
また、ポリエステル樹脂のガラス転移温度(Tg)は、樹脂の安定性や水分散性を得る上で130℃以下とすることが好ましく、より好ましくは80℃以下である。一方、耐熱接着性を保ち、樹脂層同士が固着するブロッキング現象の発生を防ぐ上で、0℃以上とすることが好ましい。
プライマー層の構成としては、単一層であっても複数層からなるものであってもよい。
プライマー層の厚みとしては、0.001〜5μmが好ましく、好ましくは0.005〜1μm、更に好ましくは0.01〜0.1μmである。0.001μm以上とすることで接着性向上の実効を得ることができ、5μm以下とすることで耐熱性の低下および粒子の脱落を抑えることができる。
プライマー層を形成する好ましい樹脂の一つであるアニオン性基を有するウレタン樹脂を製造する方法としては、例えば、ポリオール、ポリイソシアネート、鎖延長剤などとアニオン性基を有する化合物とを混合して、ウレタン樹脂の重合とアニオン性基の付加とを同一工程にて行うる方法や、予め生成したウレタン樹脂のイソシアネート基にアニオン性基を有する化合物を反応させて固定する方法や、予め生成したウレタン樹脂の活性水素を有する基に特定の化合物を反応させる方法などを挙げることができる。
また、プライマー層を形成する好ましい樹脂の他の一つであるアクリル樹脂は、水に溶解、乳化、あるいは懸濁し、水系アクリル樹脂液として用いることが、環境保全や塗布時の防爆性の点で好ましい。水系アクリル樹脂は、親水性基を有するモノマー(アクリル酸、メタクリル酸、アクリルアミド、ビニルスルホン酸およびその塩など)との共重合や、反応性乳化剤や界面活性剤を用いた乳化重合、懸濁重合、ソープフリー重合などの方法によって作製することができる。
また、プライマー層を形成する好ましい樹脂の他の一つであるポリエステル樹脂を製造する方法としては、例えば、ジカルボン酸成分とグリコール成分とを直接エステル化反応させてもよいし、第一段階としてエステル交換反応させた後に第二段階として重縮合反応させてもよい。この際の反応触媒としては例えば、アルカリ金属、アルカリ土類金属、マンガン、コバルト、亜鉛、アンチモン、ゲルマニウム、チタン等の化合物を用いることができる。
また、カルボン酸を、末端および/または側鎖に多く有するポリエステル樹脂が好ましく用いられるが、これらを得る方法としては、たとえば特開昭54−46294号公報、特開昭60−209073号公報、特開昭62−240318号公報、特開昭53−26828号公報、特開昭53−26829号公報、特開昭53−98336号公報、特開昭56−116718号公報、特開昭61−124684号公報、特開昭62−240318号公報などに記載の3価以上の多価カルボン酸を共重合する方法で製造することができる。
本発明のマット調フィルムにプライマー層を設ける方法としては、マット調フィルムの製造後に塗布する方法であってもよいが、延伸フィルムであるマット調フィルムの製造工程中に塗布し、基材であるマット調フィルムと共に延伸する方法がコスト的に好適である。例えば、長手方向に一軸延伸されたポリエステルフィルムに連続的に塗液を塗布するとよい。塗布されたフィルムは、段階的に加熱されたゾーンを通過しつつ乾燥され、幅方向に延伸される。さらに、連続的に150〜240℃の加熱ゾーンに導かれ2種の熱可塑性樹脂の内、ポリエチレンテレフタレート層が結晶配向を完了させる。この場合に用いられる塗布液は、環境汚染、防爆性の点で水系のものが好ましい。本発明においては、塗液を塗布する前に、基材フィルムの表面(上記例の場合では、一軸延伸フィルム)にコロナ放電処理などを施し、該基材フィルム表面の濡れ張力を、好ましくは47mN/m以上、より好ましくは50mN/m以上とするのが、プライマー層の基材フィルムとの接着性を向上させる観点から好ましい。基材フィルム上への塗布の方法は、各種の塗布方法、例えば、リバースコート法、グラビアコート法、ロッドコート法、バーコード法、マイヤーバーコード法、ダイコート法、スプレーコートなどを用いることができる。
また、本発明のマット調フィルム中には、各種添加剤、例えば、酸化防止剤、耐熱安定剤、易滑剤、顔料、染料、耐電防止剤、充填剤、核剤などが、その特性を低下させない程度に添加されていても良い。特に易滑剤は、すべり性を付与する観点から添加することが好ましい。易滑剤としては、光拡散性を付与する粒子と兼ねていても良い。易滑剤としても、有機、無機滑材に大別ができる。その形状としては、凝集粒子、真球状粒子、数珠状粒子、コンペイト状粒子、鱗片状粒子などの形状粒子を使うことができる。また、その材質としては、無機系としては、酸化珪素、炭酸カルシウム、酸化チタン、アルミナ、ジルコニア、珪酸アルミニウム、マイカ、クレー、タルク、硫酸バリウム等を、有機系としては、ポリイミド系樹脂、オレフィンあるいは変性オレフィン系樹脂、架橋ないし無架橋ポリスチレン系樹脂、架橋ないし無架橋アクリル樹脂、フッ素系樹脂、シリコン系樹脂等の樹脂、また有機滑材としてステアリン酸アミド、オレイン酸アミド、フマール酸アミドなどの各種アミド化合物を挙げることができる。特に、本発明のマット調フィルムでは、高級な金属調の質感を呈する光散乱効果が高い観点から、粒子の数平均粒径は1μm以上で、粒子濃度が0.1重量%以上であることが好ましい。なお、ここでの粒子濃度とは、フィルム全体においてではなく、粒子が添加された樹脂層における濃度のことである。より好ましくは、3μm以上で粒子濃度が0.2重量%以上である。粒子種については、上記した式(1)および/あるいは式(2)を満足する観点から決定される。コストおよび光拡散性の高さの観点からは、平均粒径が4μm以上の凝集シリカが0.1重量%以上添加されていることが好ましい。本発明のマット調フィルムの好適な粒子と層厚みの関係を表す例のマット調フィルム断面の模式図を図5に示す。図5に示すように、本発明のマット調フィルムは、含有されている粒子の粒子径22が十数層にわたっていても層界面が破壊され難い特徴があるため、金属調の光沢感と光散乱による高級な質感を同時に満足する。
本発明のマット調フィルムは、表面形状を利用した光拡散性能を付与する観点から、構成する樹脂のガラス転移温度(Tg)以上融点(Tm)以下の温度でカレンダリング処理をすることが好ましい。例えば、ポリエステルの場合は、100℃以上200℃未満で、線圧30kg/cm以上の条件でカレンダリングすることが好ましい。より好ましくは、120℃以上180℃未満で、線圧100kg/cm以上である。その際のロール材質は均一に圧力をかけられる観点から、上ロールは表面粗度が1S以上の金属ロール、下ロールは、超硬質ゴムロールであることが効果的である。ここでの線圧とは、油圧方式などでロールへかける荷重をロールの面長で割った値のことである。高い光拡散性を付与する観点から、より好ましくは、3.2S以上、さらに好ましくは、12.5S以上である。さらに、ロール表面が、エンボス処理されたロールを用いることも好ましい。この場合のエンボス(凹凸)パターンは、フィルム表面に光拡散性を付与する観点から、微粒面#350、1000、さらにサンドブラスト加工の60番などを用いたものでも良い。各種エンボスパターンのロールの溝深さは、0.009mm以上であることが好ましい。より好ましくは、0.03mm以上である。
本発明の効果である高級感のある金属調の質感について説明する。本発明における高級感のある金属調の質感とは、金属自体を鏡面加工して仕上げたものに比べて光沢感を抑え、すなわち正反射成分を抑えつつ、それでいて可視光領域の反射率は金属並みにあり、かつ干渉反射現象特有のカラーシフト現象を抑えた反射色を呈するということである。カラーシフト現象とは、光の入射角度が深くなると、色変化する現象のことである。具体的には、(5)式を拡張して、光の入射角度が考慮した式(7)で表されることが知られている。すなわち、この式は、入射角度が深くなればなるほど、反射波長λは低波長側へシフトすることを示している。
2・(nA・dA・cosθA+nB・dB・cosθB)=nλ・・・式(7)
なお、nは屈折率、dは層厚み、θは、入射角(入射ベクトルと界面の法線ベクトルで挟まれた角度)を表し、添え字は、A層、B層を示す。このカラーシフトが生じても、波長400〜700nm区間の分光反射率曲線にあまり変化がなければ、全くの擬似金属反射体となるため好ましい。また、僅かな色変化があっても、金属では出せない発色であるため、独特な質感が高級感に繋がる。
この高級感のある金属調の質感を評価するには、光沢度(明るさ)、正反射光と拡散反射光での色目などで判断することが好ましい。
以下、本発明のマット調フィルムについて実施例を用いて説明する。
[物性の測定方法ならびに効果の評価方法]
特性値の評価方法ならびに効果の評価方法は次の通りである。
(1)層厚み、積層数、積層構造
フィルムの層構成は、ミクロトームを用いて断面を切り出したサンプルについて、透過型電子顕微鏡(TEM)観察により求めた。すなわち、透過型電子顕微鏡H−7100FA型((株)日立製作所製)を用い、加速電圧75kVの条件でフィルムの断面を40000倍に拡大観察し、断面写真を撮影、層構成および各層厚みを測定した。なお、場合によっては、コントラストを高く得るために、公知のRuOやOsOなどを使用した染色技術を用いた。
(2)粒子含有層厚み「t」の算出方法。
(1)項で得られた約4万倍のTEM写真画像を、CanonScanD123Uを用いて画像サイズ720dpiで取り込んだ。画像をビットマップファイル(BMP)もしくは、圧縮画像ファイル(JPEG)でパーソナルコンピューターに保存し、次に、画像処理ソフト Image-Pro Plus ver.4(販売元 プラネトロン(株))を用いて、このファイルを開き、画像解析を行った。画像解析処理は、垂直シックプロファイルモードで、厚み方向位置と幅方向の2本のライン間で挟まれた領域の平均明るさとの関係を、数値データとして読み取った。表計算ソフト(Excel2000)を用いて、位置(nm)と明るさのデータに対してサンプリングステップ6(間引き6)でデータ採用した後に、3点移動平均の数値処理を施した。さらに、この得られた周期的に明るさが変化するデータを微分し、VBAプログラムにより、その微分曲線の極大値と極小値を読み込み、隣り合うこれらの間隔を1層の層厚みとして層厚みを算出した。この操作を写真毎に行い、全ての層の層厚みを算出した。
ここでは、r/tの値を一義的に求めるために、粒子を包含している熱可塑性樹脂層のうち、層厚みの順列で薄い層厚みから100層分の平均層厚みを求めて、それを粒子含有層厚み「t」とした。但し、粒子含有層が100層未満である場合は、その層数の平均層厚みの値を粒子含有層厚み「t」とする。1層のみ粒子が含有する場合は、その層厚みを粒子含有層厚み「t」とする。
(3)分光反射率及び積分値の算出方法
日立製作所製 分光光度計(U−3410 Spectrophotomater)にφ60積分球130−0632((株)日立製作所)および10°傾斜スペーサーを取り付け反射率を測定した。バンドパスは2nm/servoとし、ゲインは3と設定し、250nm〜2600nmの範囲を120nm/min.の走査速度で測定し、分光反射率曲線R(λ)を得た。また、反射率を基準化するため、標準反射板として装置付属の酸化アルミニウム板を用い、サンプル測定時は、裏面からの反射による干渉をなくすために、マジックインキで黒塗りした。また、反射率は、波長400〜700nmにおける反射率曲線の最大値のことであり、その波長を反射波長とした。また、出力データは、1nmステップ毎に採取した。
次いで、波長250〜2600nmにおいて、1nm毎に得られた反射率データを用いて、波長λ区間[400,700](nm)における積分値を求めた。積分値は、シンプソンの1/3公式を利用して、Excel2000のワークシート上でVBA(Visual Basic Application)により計算した。計算するための等間隔の分点hは、1nmとして計算した。
(4)平均粒径:r(μm)
マット調フィルムをミクロトームを用いて切削し、断面切片を作製した。粒子が含有したフィルム断面または/および表面を電界放出型走査型電子顕微鏡JSM−6700F((株)Jeol製)を用いて、倍率5000〜40000倍の範囲で粒子が十分に観察できる倍率を選択し、粒子を観察した。観察箇所を変えて粒子個数50個以上について粒子径を測長し、式(5)に基づき、その数平均粒径を求めた。測長する粒子径は、粒子の長軸粒子径とする。
粒子が凝集粒子の場合は、断面観察では凝集粒子の一部しか確認できないことが多いため、フィルム表面をプラズマイオンエッチングにより、粒子表面を露出させ、その後、その表面にPtのイオンプレーティングを行い、凝集粒子を観察した。粒子径22としては、図6に示すような一塊の凝集粒子に外接する円または楕円26の長軸を測長した。
また、コーティングに用いる粒子の粒径φ(μm)は、不活性粒子をエチレングリコールまたは水スラリーとして遠心沈降式粒度分布測定装置(高滓製作所製5A−Cp2型)を用いて測定し、式(5)に基づき、平均粒径を求めた。
(5) 粒子濃度
ポリエステルを溶解し不活性粒子は溶解させない溶媒を選択し、不活性粒子をポリエステルから遠心分離し、粒子の全体重量に対する比率(重量%)をもって粒子濃度とした。
(6)マトリックス樹脂層の屈折率と該樹脂層に含まれる粒子の屈折率の差の絶対値ΔN
共押出法により得られるマトリックス樹脂層の場合は、マット調フィルムと同じ製膜条件で単膜フィルムを製膜した(無粒子)。この際の製膜方法は、キャスティングまでは同じ方法で未延伸フィルムを製膜した。次いで、未延伸フィルムからサンプルを10cm×10cmの寸法に切り出し、二軸延伸装置(東洋精機(株))を用いて延伸し、さらに、得られた延伸フィルムを20cm×20cmの金枠に貼り付けてトンネルオーブン(泰伸製作所製)を用いて熱処理を施し、単膜フィルムを得た。なお、製膜時の熱処理温度が熱可塑性樹脂を溶融する温度の場合は、ポリイミドフィルムなどの支持体で挟みトンネルオーブンで熱処理を施した。得られた単膜フィルムのフィルム巾方向中央部からサンプルを長さ4×巾3.5cmの寸法で切り出し、アッベ屈折率計4T(アタゴ(株)製)を用いて、MD、TDの屈折率を求めた。光源は、ナトリウムD線 波長589nmを用いた。MDとTDの屈折率の平均をマトリックス樹脂層の屈折率とした。なお、浸液には、ヨウ化メチレン、テストピースの屈折率は、1.74のものを用いた。
コーティング法により得られるマトリックス樹脂層の場合は、熱可塑性樹脂A,Bともにポリエチレンテレフタレートの樹脂を用いて、マット調フィルムを製膜し、表層に形成されたマトリックス樹脂層の屈折率を、上記同様にJIS K7142(1996)A法に従って測定した。
一方、粒子の屈折率に関しては、JIS K7142(1996)B法に従って測定した。
この得られた2つの屈折率の差の絶対値を求めた。
(7)表面粗さ
フィルム幅方向の中央部から、長手4.0×幅3.5cmの寸法に切り出したものをサンプルとし、表面粗さ(中心線平均粗さRa)は、小坂研究所製の3次元粗さ計SE−3AKを用いて測定した。測定条件を以下に示す。Z. magnification:20000、Y. drive. pitch:10μm、X. magnification:200、X. drive:100μm/s、X. measure length:2000μm
(8)波長1500nmにおけるヘイズ
フィルム幅方向の中央部から、長手4.0×幅3.5cmの寸法に切り出したものをサンプルとし、日立製作所製の分光光度計U−3410を用いて特定波長である1500nmにおける受光器側に積分球を用いた場合の全光線透過率と積分球を用いない場合の直線透過率を測定した。ヘイズは、これらの差を全光線透過率で除し、100を乗じることにより求めた。なお、平行光で直線透過率を測定する日立製作所製の付属装置は、型式210−2112を用いた。測定条件は、(3)項と同じとした。
(9)高級感のある金属調の質感の判定
サンプルをフィルム幅方向中央部から5cm×5cmで切り出し、次いでサンプル裏面をマジックインキ(名称)で黒く塗り、コニカミノルタ(株)製CM−3600dを用いて、測定径φ8mmのターゲットマスク(CM−A106)条件下で、正反射光を除去したSCE方式、および正反射光を含めたSCI方式でそれぞれ、L*,a*,b*値を測定し、n数5の平均値を求めた。なお、白色校正板、およびゼロ校正ボックスは下記のものを用いて校正を行った。さらに、この得られた値に対して、以下の式(8)、式(9)を同時に満足するマット調フィルムを○、式(9)のみを満足するマット調フィルムを△として、合格とした。なお、式(8)、式(9)ともに満足しないものは、×とし、不合格とした。また、○の中でも式(10)と式(11)を同時に満足するマット調フィルムは、特に高級感のある金属調の質感を呈しているので◎とした。なお、測色値の計算に用いる光源はD65を選択した。
白色校正板 :CM−A103
ゼロ校正ボックス:CM−A104
Figure 2007307893
Figure 2007307893
Figure 2007307893
Figure 2007307893
(なお、Δaは、SCI方式とSCE方式で得られたクロマティクネス係数a*の差の絶対値である。Δbについても同様である。また、L*(SCE)とは、SCE方式で得られたL*値のことである。)
(10)剥離試験結果
フィルム幅方向中央部から5cm四方でサンプルを切り出し、JIS K5600に準拠して評価した。カット間隔2mmで5×5の25マス切れ目を入れ、セキスイセロテープ(品番252)を使用して着脱を行い、マスの剥離数をカウントした。試行回数は5回とし、その平均値を求めた。なお、評価基準は以下のように定めた。
○:剥離数3マス以下
△:剥離数4〜6マス以下
×:剥離数7マス以上
[実施例1]
IV=0.63のポリエチレンテレフタレートを熱可塑性樹脂A(熱可塑性樹脂Aには、平均粒径4μmの凝集シリカを0.2重量%添加した。)として用い、また熱可塑性樹脂BとしてIV=0.55のポリエチレンテレフタレートの共重合体(スピログリコール成分20モル%およびシクロヘキサンジカルボン酸成分30モル%を共重合したポリエチレンテレフタレート)を用いた(熱可塑性樹脂Bは無粒子)。
熱可塑性樹脂AおよびBを、それぞれの押出機にて280℃で溶融させ、FSSタイプのリーフディスクフィルタを5枚介した後、ギアポンプにて吐出比が熱可塑性樹脂A組成物/熱可塑性樹脂B組成物=1.2/1になるように計量しながら、スリット数267個のスリット板を2枚、269個のスリット板1枚の計3枚用いた構成である801層フィードブロックにて合流させて、厚み方向に交互に801層積層された積層体とした。但し、用いた各スリット板において、両端部に位置した厚膜層を形成するスリット巾が、他の薄膜層を形成するスリット巾の2倍以上である設計とし、さらに、薄膜層を形成する最小の層厚みと最大の層厚みの比である傾斜度合いを0.3設計とした。ここでは、スリット幅(間隙)は、全て一定とし、長さのみ変化させた。また、積層構造の内訳は、熱可塑性樹脂Aが401層、熱可塑性樹脂Bが400層からなる厚み方向に交互に積層された傾斜構造を有する積層体とした。
次いで、このフィードブロックから、ポリマー管を経て、各スリット板からの積層流が合流した801層の積層流が通過するポリマー流路の断面形状(図4(a)中のM−M’の位置)には、アスペクト比(巾方向の長さ/厚み方向の長さ)1.5の角型形状を用いた。また、このポリマー管の断面積内を単位時間内に通過する801層積層された熱可塑性樹脂の吐出量は、20kg/hr/cmであった。該積層体をTダイに供給し、シート状に成形した後、ワイヤーで8kVの静電印可電圧をかけながら、表面温度25℃に保たれたキャスティングドラム上で急冷固化し未延伸フィルムを得た。
この未延伸フィルムを、100℃、延伸倍率3.5倍で縦延伸を行い、両端部をクリップで把持するテンターに導き110℃、4.3倍横延伸した後、235℃で熱処理を施し、120℃で約5%のTDリラックスを実施し、厚み97μmのマット調フィルムを得た。得られたマット調フィルムの厚み方向の断面を4万倍でTEM観察し、画像処理により層厚み分布を求めた。最表層となる層番号1の層厚みは1.7μmであり、層番号267の層厚み3.3μm、層番号535の層厚みは3.7μm、そして、最表層となる層番号801の層厚みは1.5μmであり、これら4層とも熱可塑性樹脂Aの厚膜層であった。一方、得られた熱可塑性樹脂A、Bの薄膜層の厚みは、全て44nm〜199nmの範囲にあり、A層、B層とも傾斜構造を実現していた。得られたマット調フィルムの物性結果を表1に示す。
次いで、得られたマット調フィルムを、雄型、雌型とも深さ1mm、3mm、5mmのそれぞれ「ルミラー TORAY」と刻印されたアルミ製の金型を用いて、予熱温度230℃、金型温度90℃、圧空1MPa、到達真空度は差圧表示で300mmHg以下の条件で真空圧空成形を行った。得られた成形品の裏面をスプレーで黒塗りすることにより、従来に比べて干渉反射特有のぎらつきが抑えられた高級感のある金属調の質感を有した成形品を得ることができた。
また、得られたマット調フィルムを用いて、フィルムインサート成形品を作製した。成形条件は、東レ(株)製ポリブチレンテレフタレート(トレコン タイプ1200S)にカーボンブラックを5重量%添加したペレット状の樹脂を射出成形用押出機に投入し、押出温度250度でモールド成形を行った。なお、金型には、携帯電話のリアピースを成形するものを用いた。得られた携帯電話のリアピースの成形品は、従来に比べて干渉反射特有のぎらつきが抑えられた高級感のある金属調の質感を有した成形品を得ることができた。
[実施例2]
IV=0.63のポリエチレンテレフタレートを熱可塑性樹脂A(熱可塑性樹脂Aには、平均粒径0.3μmの酸化チタンを0.5重量%添加した。)として用い、また熱可塑性樹脂BとしてIV=0.75のポリエチレンテレフタレートの共重合体(シクロヘキサンジメタノール成分30モル%を共重合したポリエチレンテレフタレート)を用いた(熱可塑性樹脂Bは無粒子)。また、傾斜度合いの設計値を0.7に変更すること以外は、実施例1と同様にして、厚み78μmのマット調フィルムを得た。得られたマット調フィルムの物性結果を表1に示す。裏面をスプレーで黒くすることにより、高級感のある金属調の質感を有したマット調フィルムであることを確認した。
[実施例3]
IV=0.63のポリエチレンテレフタレートを熱可塑性樹脂A(熱可塑性樹脂Aには、平均粒径1.2μmの凝集シリカを0.2重量%添加した。)として用い、また熱可塑性樹脂BとしてIV=0.55のポリエチレンテレフタレートの共重合体(スピログリコール成分10モル%およびシクロヘキサンジカルボン酸成分10モル%を共重合したポリエチレンテレフタレート)を用いた(熱可塑性樹脂Bは無粒子)。その他は、実施例1と同様にして、厚み93μmのマット調フィルムを得た。得られたマット調フィルムの物性結果を表1に示す。裏面をスプレーで黒くすることにより、高級感のある金属調の質感を有したマット調フィルムであることを確認した。
[実施例4]
IV=0.63のポリエチレンテレフタレートを熱可塑性樹脂A(熱可塑性樹脂Aには、平均粒径0.55μmのコロイダルシリカ(日本触媒製KE−P50)を0.2重量%添加した。)として用いた。その他は、実施例2と同様にして、厚み75μmのマット調フィルムを得た。得られたマット調フィルムの物性結果を表1に示す。裏面をスプレーで黒くすることにより、高級感のある金属調の質感を有したマット調フィルムであることを確認した。
[実施例5]
IV=0.63のポリエチレンテレフタレートを熱可塑性樹脂Aとして用い、また熱可塑性樹脂BとしてIV=0.55のポリエチレンテレフタレートの共重合体(シクロヘキサンジメタノール成分30モル%を共重合したポリエチレンテレフタレート)を用いた(熱可塑性樹脂A,Bともに無粒子)。また、傾斜度合いの設計値を0.7に変更すること以外は、実施例1と同様にして、厚み75μmのマット調フィルムを得た。得られたマット調フィルムの物性結果を表1に示す。
さらに、希釈剤にメチルエチルケトンを用いて硬質成分(日本化薬製DPHA)、軟質成分(東亞合成M350)、熱架橋剤(日本サイテック製サイメル303)、粒子(積水化学製SBX8)を攪拌して、塗剤を調合し、メタバーでフィルムに塗布した後、200℃で乾燥固化した。なお、粒子濃度は、塗剤の固形成分に対して濃度が5重量%となるように調合した。裏面をスプレーで黒くすることにより、高級感のある金属調の質感を有したマット調フィルムであることを確認した。
[実施例6]
平均粒径2μmの硫酸バリウムを5重量%添加した熱可塑性樹脂Aを用いた以外は、実施例2と同様にして、厚み73μのマット調フィルムを得た。得られたマット調フィルムの物性結果を表1に示す。裏面をスプレーで黒くすることにより、高級感のある金属調の質感を有したマット調フィルムであることを確認した。
[実施例7]
IV=0.63のポリエチレンテレフタレートを熱可塑性樹脂A(無粒子)として用い、また熱可塑性樹脂BとしてIV=0.75のポリエチレンテレフタレートの共重合体(シクロヘキサンジメタノール成分30モル%を共重合したポリエチレンテレフタレート)を用いた(熱可塑性樹脂Bには、平均粒径1.2μmの凝集シリカを0.2重量%添加した。)。
その他は、実施例2と同様にして、厚み75μmのマット調フィルムを得た。得られたマット調フィルムの物性結果を表1に示す。裏面をスプレーで黒くすることにより、高級感のある金属調の質感を有したマット調フィルムであることを確認した。
[実施例8]
IV=0.63のポリエチレンテレフタレートを熱可塑性樹脂A(熱可塑性樹脂Aには、平均粒径4μmの凝集シリカを0.2重量%添加した。)として用い、また熱可塑性樹脂BとしてIV=0.55のポリエチレンテレフタレートの共重合体(スピログリコール成分25モル%およびシクロヘキサンジカルボン酸成分40モル%を共重合したポリエチレンテレフタレート)を用いた(熱可塑性樹脂Bは無粒子)。熱可塑性樹脂AおよびBを、それぞれの押出機にて280℃で溶融させ、FSSタイプのリーフディスクフィルタを5枚介した後、ギアポンプにて吐出比が熱可塑性樹脂A組成物/熱可塑性樹脂B組成物=1.2/1になるように計量しながら、スリット数267個のスリット板を2枚、269個のスリット板1枚の計3枚用いた構成である801層フィードブロックにて合流させて、厚み方向に交互に801層積層された積層体とした。但し、用いた各スリット板において、両端部に位置した厚膜層を形成するスリット巾が、他の薄膜層を形成するスリット巾の2倍以上である設計とし、さらに、薄膜層を形成する最小の層厚みと最大の層厚みの比である傾斜度合いを0.5設計とした。ここでは、スリット幅(間隙)は、全て一定とし、長さのみ変化させた。また、積層構造の内訳は、熱可塑性樹脂Aが401層、熱可塑性樹脂Bが400層からなる厚み方向に交互に積層された傾斜構造を有する積層体とした。
次いで、このフィードブロックから、ポリマー管を経て、各スリット板からの積層流が合流した801層の積層流が通過するポリマー流路の断面形状(図4(a)中のM−M’の位置)は、アスペクト比(巾方向の長さ/厚み方向の長さ)1.5の角型形状を用いた。また、このポリマー管の断面積内を単位時間内に通過する801層積層された熱可塑性樹脂の吐出量は、20kg/hr/cmであった。該積層体をTダイに供給し、シート状に成形した後、ワイヤーで8kVの静電印可電圧をかけながら、表面温度25℃に保たれたキャスティングドラム上で急冷固化し未延伸フィルムを得た。
この未延伸フィルムを、100℃、延伸倍率3.5倍で縦延伸を行い、次いで、プレート電圧3.4V、プレート電流0.15Aの条件でフィルム表面にコロナ処理を行い、メタバーで易接着性を付与するために水系の塗剤(酢ビ・アクリル系樹脂/架橋剤:メラミン樹脂/界面活性剤の調合品)を、フィルム片面に熱乾燥後のプライマー層として0.5μmの厚みとなるように塗布し、さらに両端部をクリップで把持するテンターに導き110℃、4.3倍横延伸した後、235℃で熱処理を施し、120℃で約5%のTDリラックスを実施し、厚み87μmのマット調フィルムを得た。得られたマット調フィルムの厚み方向の断面を4万倍でTEM観察し、画像処理により層厚み分布を求めた。最表層となる層番号1の層厚みは1.7μmであり、層番号267の層厚み3.3μm、層番号535の層厚みは3.5μm、そして、最表層となる層番号801の層厚みは1.5μmであり、これら4層とも熱可塑性樹脂Aの厚膜層であった。一方、得られた熱可塑性樹脂A、Bの薄膜層の厚みは、全て44nm〜155nmの範囲にあり、傾斜構造を実現していた。得られたマット調フィルムの物性結果を表1に示す。裏面をスプレーで黒くすることにより、高級感のある金属調の質感を有したマット調フィルムであることを確認した。
また、得られたマット調フィルムを用いて、フィルムインサート成形品を作製した。実施例1と比べて、インサートフィルムと樹脂成形体の界面が剥離し難い成形品となっており、従来に比べて干渉反射特有のぎらつきが抑えられた高級感のある金属調の質感を有した成形品であることも確認した。
[実施例9]
IV=0.63のポリエチレンテレフタレートを熱可塑性樹脂A(熱可塑性樹脂Aには、平均粒径4μmの凝集シリカを0.2重量%添加した。)として用い、また熱可塑性樹脂BとしてIV=0.55のポリエチレンテレフタレートの共重合体(スピログリコール成分15モル%およびシクロヘキサンジカルボン酸成分20モル%を共重合したポリエチレンテレフタレート)を用いた(熱可塑性樹脂Bは無粒子)。熱可塑性樹脂AおよびBを、それぞれの押出機にて280℃で溶融させ、FSSタイプのリーフディスクフィルタを5枚介した後、ギアポンプにて吐出比が熱可塑性樹脂A組成物/熱可塑性樹脂B組成物=2/1になるように計量しながら、スリット数201個のスリット板を1枚だけ用いた構成である201層フィードブロックにて合流させて、厚み方向に交互に201層積層された積層体とした。但し、用いたスリット板において、両端部に位置した厚膜層を形成するスリット巾が、他の薄膜層を形成するスリット巾の2倍以上である設計とし、さらに、薄膜層を形成する最小の層厚みと最大の層厚みの比である傾斜度合いを0.915設計とした。ここでは、スリット幅(間隙)は、全て一定とし、長さのみ変化させた。また、積層構造の内訳は、熱可塑性樹脂Aが101層、熱可塑性樹脂Bが100層からなる厚み方向に交互に積層された傾斜構造を有する積層体とした。
次いで、このフィードブロックから、アスペクト比(巾方向の長さ/厚み方向の長さ)1.5の角型形状のポリマー管を経て(ポリマー管の断面積内を単位時間内に通過する201層積層された熱可塑性樹脂の吐出量は、20kg/hr/cmであった。)、該積層体をTダイに供給し、シート状に成形した後、ワイヤーで8kVの静電印可電圧をかけながら、表面温度25℃に保たれたキャスティングドラム上で急冷固化し未延伸フィルムを得た。
この未延伸フィルムを、92℃、延伸倍率3.5倍で縦延伸を行い、次いで、両端部をクリップで把持するテンターに導き100℃、4.3倍横延伸した後、230℃で熱処理を施し、120℃で約5%のTDリラックスを実施し、厚み15μmのマット調フィルムを得た。得られたマット調フィルムの厚み方向の断面を4万倍でTEM観察し、画像処理により層厚み分布を求めた。最表層となる層番号1および201の層厚みは1.5μmであり、2層とも熱可塑性樹脂Aの厚膜層であった。一方、得られた熱可塑性樹脂A、Bの薄膜層の厚みは、全て34nm〜108nmの範囲にあり、A層、B層とも僅かな傾斜構造を実現していた。得られたマット調フィルムの物性結果を表1に示す。裏面をスプレーで黒くすることにより、高級感のある金属調の質感を有したマット調フィルムであることを確認した。
[実施例10]
IV=0.65のポリエチレンテレフタレートを熱可塑性樹脂A(熱可塑性樹脂Aには、MERCK製Xirallic(R) T60-24 WNT Stellar Green ( TiO2被覆干渉グリーン) を12重量%添加した。)として用い、また熱可塑性樹脂BとしてIV=0.75のポリエチレンテレフタレートの共重合体(シクロヘキサンジメタノール成分30モル%を共重合したポリエチレンテレフタレート)を用いた(熱可塑性樹脂Bは無粒子)。その他は、実施例9と同様にして、厚み16μmのマット調フィルムを得た。得られたマット調フィルムの厚み方向の断面を4万倍でTEM観察し、画像処理により層厚み分布を求めた。最表層となる層番号1および201の層厚みは1.5μmであり、2層とも熱可塑性樹脂Aの厚膜層であった。一方、得られた熱可塑性樹脂A、Bの薄膜層の厚みは、全て44nm〜122nmの範囲にあり、A層、B層とも僅かな傾斜構造を実現していた。得られたマット調フィルムの物性結果を表1に示す。裏面をスプレーで黒くすることにより、高級感のある金属調の質感を有したマット調フィルムであることを確認した。
[実施例11]
IV=0.63のポリエチレンテレフタレートを熱可塑性樹脂A(熱可塑性樹脂Aには、平均粒径4μmの凝集シリカを1.0重量%添加した。)として用い、また熱可塑性樹脂BとしてIV=0.55のポリエチレンテレフタレートの共重合体(スピログリコール成分15モル%およびシクロヘキサンジカルボン酸成分20モル%を共重合したポリエチレンテレフタレート)を用いた(熱可塑性樹脂Bは無粒子)。また、傾斜度合いの設計値を0.5に変更すること以外は、実施例1と同様にして、厚み110μmのフィルムを得た。さらに、製膜条件であるキャスト速度を変更し、厚みを90μmのフィルムを得た。これら厚みの異なるフィルムを接着剤を介して2枚貼り合わせることにより、マット調フィルムを得た。マット調フィルムの物性結果を表1に示す。裏面をスプレーで黒くすることにより、高級感のある金属調の質感を有したマット調フィルムであることを確認した。
[比較例1]
IV=0.63のポリエチレンテレフタレートを熱可塑性樹脂Aとして用い、また熱可塑性樹脂BとしてIV=0.75のポリエチレンテレフタレートの共重合体(シクロヘキサンジメタノール成分30モル%を共重合したポリエチレンテレフタレート)を用いた(熱可塑性樹脂A,Bともに無粒子)。
熱可塑性樹脂AおよびBを、それぞれの押出機にて280℃で溶融させ、FSSタイプのリーフディスクフィルタを5枚介した後、ギアポンプにて吐出比が熱可塑性樹脂A組成物/熱可塑性樹脂B組成物=1/1になるように計量しながら、スリット数267個のスリット板を2枚、269個のスリット板1枚の計3枚用いた構成である801層フィードブロックにて合流させて、厚み方向に交互に801層積層された積層体とした。但し、用いた各スリット板において、両端部に位置した厚膜層を形成するスリット巾なく、薄膜層を形成する最小の層厚みと最大の層厚みの比である傾斜度合いを0.7設計とした。ここでは、スリット幅(間隙)は、全て一定とし、長さのみ変化させた。また、積層構造の内訳は、熱可塑性樹脂Aが401層、熱可塑性樹脂Bが400層からなる厚み方向に交互に積層された傾斜構造を有する積層体とした。
次いで、このフィードブロックから、ポリマー管を経て、各スリット板からの積層流が合流した801層の積層流が通過するポリマー流路の断面形状(図4(a)中のM−M’の位置)は、アスペクト比(巾方向の長さ/厚み方向の長さ)1.5の角型形状を用いた。また、このポリマー管の断面積内を単位時間内に通過する801層積層された熱可塑性樹脂の吐出量は、20kg/hr/cmであった。
さらに、押出機Cから熱可塑性樹脂Aに平均粒径1.1μmの合成炭酸カルシウムを0.05重量%添加した熱可塑性樹脂Cが、最表層部にくるようにフィードブロック下のピノールから合流させて、計803層からなる積層体とした。
該積層体をTダイに供給し、シート状に成形した後、ワイヤーで8kVの静電印可電圧をかけながら、表面温度25℃に保たれたキャスティングドラム上で急冷固化し未延伸フィルムを得た。
この未延伸フィルムを、100℃、延伸倍率3.5倍で縦延伸を行い、両端部をクリップで把持するテンターに導き110℃、4.3倍横延伸した後、235℃で熱処理を施し、120℃で約5%のTDリラックスを実施し、厚み75μmのフィルムを得た。得られたフィルムの厚み方向の断面を4万倍でTEM観察し、画像処理により層厚み分布を求めた。最表層となる層番号1の層厚みは1.5μmであり、最表層となる層番号803の層厚みは1.5μmであり、これら2層とも熱可塑性樹脂Cの厚膜層であった。一方、得られた熱可塑性樹脂A、Bの薄膜層の厚みは、全て54nm〜125nmの範囲にあり、傾斜構造を実現していた。得られたフィルムの物性結果を表1に示す。得られたフィルムは、正反射が強いためにぎらつきが酷く、高級感のある金属調の質感を有していなかった。
[比較例2]
IV=0.63のポリエチレンテレフタレートを熱可塑性樹脂Aとして用い、また熱可塑性樹脂BとしてIV=0.67のポリエチレンテレフタレートの共重合体(イソフタル酸25モル%を共重合したポリエチレンテレフタレート)を用いた(熱可塑性樹脂A,Bともに無粒子)。
熱可塑性樹脂AおよびBを、それぞれの押出機にて280℃で溶融させ、FSSタイプのリーフディスクフィルタを5枚介した後、ギアポンプにて吐出比が熱可塑性樹脂A組成物/熱可塑性樹脂B組成物=1/1になるように計量しながら、スリット数268個のスリット板を2枚用いた構成である533層フィードブロックにて合流させて、厚み方向に交互に533層積層された積層体とした。但し、用いた各スリット板において、両端部に位置した厚膜層を形成するスリット巾なく、薄膜層を形成する最小の層厚みと最大の層厚みの比である傾斜度合いを0.7設計とした。ここでは、スリット幅(間隙)は、全て一定とし、長さのみ変化させた。また、積層構造の内訳は、熱可塑性樹脂Aが267層、熱可塑性樹脂Bが266層からなる厚み方向に交互に積層された傾斜構造を有する積層体とした。
次いで、このフィードブロックから、ポリマー管を経て、各スリット板からの積層流が合流した533層の積層流が通過するポリマー流路の断面形状(図4(a)中のM−M’の位置)は、アスペクト比(巾方向の長さ/厚み方向の長さ)1.5の角型形状を用いた。また、このポリマー管の断面積内を単位時間内に通過する533層積層された熱可塑性樹脂の吐出量は、20kg/hr/cmであった。
さらに、押出機Cから熱可塑性樹脂Aに平均粒径0.4μmの合成炭酸カルシウムを0.04重量%添加した熱可塑性樹脂Cが、最表層部にくるようにフィードブロック下のピノールから合流させて、計535層からなる積層体とした。
これ以降は、比較例1と同様にして、厚み50μmのフィルムを得た。得られたフィルムの物性結果を表1に示す。得られたフィルムは、反射率も弱いため、光沢感がなく、金属調の質感を有していなかった。
[比較例3]
熱可塑性樹脂Aをポリエチレンテレフタレートに平均粒径0.3μmの架橋ポリスチレンを0.05重量%添加したものに変更し、熱可塑性樹脂Bをポリエチレンテレフタレートの共重合体(イソフタル成分17.5mol%を共重合したポリエチレンテレフタレート)に変更し、さらにピノールを用いずに比較例1と同様にして計801層からなる積層体とした。
これ以降は、比較例1と同様にして、厚み68μmのフィルムを得た。得られたフィルムの物性結果を表1に示す。得られたフィルムは、反射率も弱いため、光沢感がなく、金属調の質感を有していなかった。
[比較例4]
熱可塑性樹脂Cを熱可塑性樹脂Aに平均粒径1.2μmの凝集シリカを0.02重量%添加したものに変更した以外は、比較例1と同様にして、熱可塑性樹脂Cが最表層部にくるようにフィードブロック下のピノールから合流させて、計803層からなる積層体とした。得られたフィルムの物性結果を表1に示す。得られたフィルムは、正反射が強いためにぎらつきが酷く、高級感のある金属調の質感を有していなかった。
[比較例5]
IV=0.63のポリエチレンテレフタレートを熱可塑性樹脂A(熱可塑性樹脂Aには、平均粒径0.03μmのコロイダルシリカを0.5重量%添加した。)として用い、したポリエチレンテレフタレート)を用いる以外は、実施例1と同様にして、厚み97μmのマット調フィルムを得た。得られたマット調フィルムの物性結果を表1に示す。得られたフィルムは、鏡面反射が強く、高級感のある金属調の質感を有していなかった。
Figure 2007307893

本発明のマット調フィルムは、従来の金属調フィルムに比べて、回収可能であるために環境負荷が低減し、さらに剥離性、成形性に優れた金属ヘアライン・サンドブラストおよびエンボス加工を施したかのような高級感のある金属調の質感を持つことから、金属調装飾材料、特に建材、包装、自動車の内外装などに用いられる反射性意匠材料、有価証券に用いられるホログラムなどの偽造防止用材料などとして好適に使用することができる。
本発明に用いられてフィードブロックの構成図の一例 スリット板およびスリットの構成図 スリットの断面構成図 合流装置の模式図 マット調フィルム断面の模式図 一塊の凝集粒子
符号の説明
1:部材板
2:樹脂導入板
3:スリット板
4:樹脂導入板
5:スリット板
6:樹脂導入板
7:スリット板
8:樹脂導入板
9:部材板
10:フィードブロック
11:導入口
12:液溜部
13:各スリットの頂部の稜線
14:各スリットの頂部の稜線の上端部
15:各スリットの頂部の稜線の下端部
16:スリットへ導入される樹脂
17:流出口
18:合流装置
19L:スリット板3の流出口
20L:スリット板5の流出口
21L:スリット板7の流出口
19M:スリット板3の流出口から流路の規制により再配置された流路の断面形状
20M:スリット板5の流出口から流路の規制により再配置された流路の断面形状
21M:スリット板7の流出口から流路の規制により再配置された流路の断面形状
19N:拡幅された流路の断面形状
20N:拡幅された流路の断面形状
21N:拡幅された流路の断面形状
22 :粒子径
23 :樹脂層
24 :フィルム厚み方向
25 :凝集粒子
26 :一塊の凝集粒子に外接する円または楕円

Claims (7)

  1. 熱可塑性樹脂Aからなる層(A層)と熱可塑性樹脂Bからなる層(B層)を交互にそれぞれ100層以上積層した構造を有し、かつ粒子を含有する層を少なくとも1層有する多層積層フィルムであって、前記粒子を含有する層の厚みt(nm)と粒子の数平均粒径r(nm)の関係が下記(1)式を満足し、
    1≦r/t≦300・・・式(1)
    分光反射率曲線R(λ)の波長λ区間[400,700](nm)において、少なくとも下記(a)および(b)のいずれかを満足するマット調フィルム。
    (a)分光反射率曲線R(λ)の積分値が10000以上
    (b)反射率が60%以上
  2. 前記粒子を含有する層と該粒子との間の屈折率差の絶対値Xと該粒子の数平均粒径r(nm)との関係が下記(2)式を満足する請求項1に記載のマット調フィルム。
    100≦r×X・・・式(2)
  3. 平均粗さRaが35nm以上である請求項1または2に記載のマット調フィルム。
  4. 波長1500nmの光におけるヘイズ値が10%以上である請求項1〜3のいずれか1項に記載のマット調フィルム。
  5. 前記熱可塑性樹脂Aがポリエチレンテレフタレートからなり、前記熱可塑性樹脂Bがスピログリコール成分とシクロヘキサンジガルボン酸成分をそれぞれ10モル%以上共重合したポリエステルからなる請求項1〜4のいずれか1項に記載のマット調フィルム。
  6. 請求項1〜5のいずれかに記載のマット調フィルムを用いたフィルムインサート成形品。
  7. 請求項1〜5のいずれかに記載のマット調フィルムを用いた真空および/または圧空成形品。
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