JP2007258432A - 電磁波吸収体およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】高い電磁波吸収性能と優れた柔軟性とを有する電磁波吸収体およびその製造方法を提供することである。
【解決手段】有機マトリックスと、球状軟磁性粉末と、滑剤とを含有する、柔軟性を有する電磁波吸収体である。前記有機マトリックス100重量部に対して、前記滑剤を4〜8重量部の割合で含むのが好ましい。有機マトリックスと、球状軟磁性粉末と、滑剤とを含有し、柔軟性を有する電磁波吸収体の製造方法であって、前記有機マトリックスと、球状軟磁性粉末と、滑剤とを混練して混練物を調製する工程と、該混練物を加熱加圧する工程とを含む。
【選択図】なし
【解決手段】有機マトリックスと、球状軟磁性粉末と、滑剤とを含有する、柔軟性を有する電磁波吸収体である。前記有機マトリックス100重量部に対して、前記滑剤を4〜8重量部の割合で含むのが好ましい。有機マトリックスと、球状軟磁性粉末と、滑剤とを含有し、柔軟性を有する電磁波吸収体の製造方法であって、前記有機マトリックスと、球状軟磁性粉末と、滑剤とを混練して混練物を調製する工程と、該混練物を加熱加圧する工程とを含む。
【選択図】なし
Description
本発明は、電子機器内の不要電磁波の干渉によって生じる電磁障害を抑制するための電磁波吸収体およびその製造方法に関する。
近年、例えばテレビなどの家庭電気製品、パーソナルコンピューターなどのコンピューター、携帯電話などの移動体通信機器、医療機器など各種の電子機器が広く使われているが、これらの電子機器から放出される不要な電磁波(不要電磁波)が、他の電子機器に影響を与え、誤作動を発生させるという問題(電磁障害)がある。
また、これら電子機器の高速化、軽量化、薄型化および小型化等に伴い、該電子機器内における回路基板への電子部品の実装密度が飛躍的に高くなっている。このため、電子部品間や回路基板間の電磁干渉に起因する電磁ノイズの増大に伴い、電子機器内の電子部品間や回路基板間でも不要電磁波による電磁障害が発生する。そのため、このような電子機器には、不要電磁波を取り除く電磁波吸収体が使用されている。
一般に、電磁波吸収体はシート形状であり、パソコンの中央処理装置(CPU)やマイクロプロセッサ(MPU)、高速処理の集積回路(IC)などの被着体表面に直接貼り付けて使用される。ところが、これらの表面は平坦なものばかりではなく、凹凸の表面や曲面等の場合が多い。このため、電磁波吸収体には、被着体表面への形状追従性、すなわち適度な柔軟性(フレキシブル性)が要求される。
ここで、電磁波吸収体に用いられる軟磁性粉末としては、一般に扁平形状のものである。すなわち、扁平軟磁性粉末は、電磁波吸収体中に高充填することができるので、高い透磁率、すなわち電磁波の吸収性能に優れる。例えば特許文献1には、軟磁性体粉末(軟磁性粉末)と結合剤からなるシート状の複合磁性体層を有する電磁干渉抑制体(電磁波吸収体)が記載されており、前記軟磁性粉末としては、扁平形状(アスペクト比>5)のものを用いている。
しかしながら、電磁波の吸収性能を高める(すなわち高い透磁率を有する)ために扁平形状の軟磁性粉末を高充填すると、電磁波吸収体の柔軟性が低下するという問題がある。そのため、被着体表面への形状追従性、すなわち適度な柔軟性を得ることができない。
一方、軟磁性粉末として球状のものがあるが、球状の軟磁性粉末は高充填することが困難なため、透磁率が低い(すなわち電磁波の吸収性能が低い)という問題がある。このため、球状の軟磁性粉末は、電磁波吸収体には一般に使用されていなかった。
特開2004−127986号公報
本発明の課題は、高い電磁波吸収性能と優れた柔軟性とを有する電磁波吸収体およびその製造方法を提供することである。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、以下の知見を得た。すなわち、有機マトリックスを含有し、扁平形状の軟磁性粉末を高充填した電磁波吸収体は柔軟性が低い。これは、扁平形状の軟磁性粉末1同士が互いに面で近接しているので、電磁波吸収体を曲げるには、各面で近接している扁平な軟磁性粉末1を折り曲げる必要があり、その結果、電磁波吸収体の柔軟性が低下する。
一方、有機マトリックスを含有し、球状の軟磁性粉末を充填した電磁波吸収体は、球状の軟磁性粉末同士が互いに点で近接するので、電磁波吸収体に対して柔軟性は優れるが、面で近接する扁平形状の軟磁性粉1のように高充填することができない。
そこで、球状軟磁性粉末を含有する電磁波吸収体に、滑剤を含有させると、軟磁性粉末を高充填することができると共に、滑剤自体が有する潤滑作用とも相まって、電磁波吸収体の柔軟性も向上するという新たな知見を見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の電磁波吸収体は、以下の構成からなる。
(1)有機マトリックスと、球状軟磁性粉末と、滑剤とを含有することを特徴とする、柔軟性を有する電磁波吸収体。
(2)前記球状軟磁性粉末が球状センダスト合金である前記(1)記載の電磁波吸収体。
(3)前記球状軟磁性粉末の平均粒径が30μm以下である前記(1)または(2)記載の電磁波吸収体。
(4)前記有機マトリックス100重量部に対して、前記球状軟磁性粉末を1000〜1500重量部の割合で含む前記(1)〜(3)のいずれかに記載の電磁波吸収体。
(5)前記滑剤が高級脂肪酸またはその塩である前記(1)〜(4)のいずれかに記載の電磁波吸収体。
(6)前記高級脂肪酸がステアリン酸である前記(5)記載の電磁波吸収体。
(7)前記有機マトリックス100重量部に対して、前記滑剤を4〜8重量部の割合で含む前記(1)〜(6)のいずれかに記載の電磁波吸収体。
(8)高周波数帯域(1GHz)における透磁率実部(μ’)が5.0以上、透磁率虚部(μ’’)が5.0以上である前記(1)〜(7)のいずれかに記載の電磁波吸収体。
(9)硬度(JIS K 6253−A)が85以下である前記(1)〜(8)のいずれかに記載の電磁波吸収体。
(10)熱伝導率が2.0W/m・K以上である前記(1)〜(9)のいずれかに記載の電磁波吸収体。
(1)有機マトリックスと、球状軟磁性粉末と、滑剤とを含有することを特徴とする、柔軟性を有する電磁波吸収体。
(2)前記球状軟磁性粉末が球状センダスト合金である前記(1)記載の電磁波吸収体。
(3)前記球状軟磁性粉末の平均粒径が30μm以下である前記(1)または(2)記載の電磁波吸収体。
(4)前記有機マトリックス100重量部に対して、前記球状軟磁性粉末を1000〜1500重量部の割合で含む前記(1)〜(3)のいずれかに記載の電磁波吸収体。
(5)前記滑剤が高級脂肪酸またはその塩である前記(1)〜(4)のいずれかに記載の電磁波吸収体。
(6)前記高級脂肪酸がステアリン酸である前記(5)記載の電磁波吸収体。
(7)前記有機マトリックス100重量部に対して、前記滑剤を4〜8重量部の割合で含む前記(1)〜(6)のいずれかに記載の電磁波吸収体。
(8)高周波数帯域(1GHz)における透磁率実部(μ’)が5.0以上、透磁率虚部(μ’’)が5.0以上である前記(1)〜(7)のいずれかに記載の電磁波吸収体。
(9)硬度(JIS K 6253−A)が85以下である前記(1)〜(8)のいずれかに記載の電磁波吸収体。
(10)熱伝導率が2.0W/m・K以上である前記(1)〜(9)のいずれかに記載の電磁波吸収体。
本発明の電磁波吸収体の製造方法は、有機マトリックスと、球状軟磁性粉末と、滑剤とを含有し、柔軟性を有する電磁波吸収体の製造方法であって、前記有機マトリックスと、球状軟磁性粉末と、滑剤とを混練して混練物を調製する工程と、該混練物を加熱加圧する工程とを含むことを特徴とする。
本発明によれば、有機マトリックスと球状軟磁性粉末を含有する電磁波吸収体に滑剤を含有するので、該軟磁性粉末を高充填することができ、透磁率が向上することにより、高い電磁波吸収性能を有する電磁波吸収体が得られるという効果がある。しかも、滑剤を含有し、かつ球状の軟磁性粉末を使用しているので、優れた柔軟性を有する電磁波吸収体となる。その結果、この電磁波吸収体は、被着体表面の複雑な形状にもよく追従して密着することができるので、剥離しにくくなり、電磁波吸収体として十分な機能を発揮することができる。
<電磁波吸収体>
本発明の電磁波吸収体は、柔軟性を有するものであり、有機マトリックスと、球状軟磁性粉末と、滑剤とを含有する。前記有機マトリックス(結合剤)としては、各種の有機重合体材料が使用可能であり、例えばシリコーン樹脂(ジメチルポリシロキサン)、ゴム、熱可塑性エラストマー、各種プラスチック等の高分子材料が挙げられるが、特に、シリコーン樹脂が好適である。
本発明の電磁波吸収体は、柔軟性を有するものであり、有機マトリックスと、球状軟磁性粉末と、滑剤とを含有する。前記有機マトリックス(結合剤)としては、各種の有機重合体材料が使用可能であり、例えばシリコーン樹脂(ジメチルポリシロキサン)、ゴム、熱可塑性エラストマー、各種プラスチック等の高分子材料が挙げられるが、特に、シリコーン樹脂が好適である。
前記ゴムとしては、例えば天然ゴムのほか、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレンーブタジエンゴム、エチレンープロピレンゴム、ブチルゴム、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、アクリルゴム、エピクロロヒドリンゴム、フッ素ゴム、ウレタンゴム、塩素化ポリエチレンゴム、水素添加ニトリルゴム(HNBR)等の合成ゴム単独、もしくはこれらのゴムを各種変性処理にて改質したものが挙げられる。
これらのゴムは、単独で使用するほか、複数をブレンドして用いることができる。ゴムには加硫剤のほか、加硫促進剤、老化防止剤、軟化剤、可塑剤、充填剤、着色剤等の従来からゴムの配合剤として使用されていたものを適宜配合することができる。また、これら以外にも任意の添加剤を使用することができる。例えば、誘電率や導電率を制御するために所定量の誘電体(カーボンブラック、黒鉛、酸化チタン等)、放熱特性を付与するための熱伝導性材料(窒化ホウ素、水酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、アルミナ等)を、使用される電子機器内に発生する不要電磁波へのインピーダンスマッチングや、温度環境に応じて、材料設計して添加することができる。さらに加工助剤(滑剤、分散剤)を適宜選択して添加してもよい。
前記熱可塑性エラストマーとしては、例えば塩素化ポリエチレンのようなポリ塩化ビニル系、ポリスチレン系、ポリオレフィン系、ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の各種熱可塑性エラストマーが挙げられ、これらは1種または2種以上を混合して用いてもよい。
前記各種プラスチックとしては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、AS樹脂、ABS樹脂、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ酢酸ビニル、エチレン‐酢酸ビニル共重合体、フッ素樹脂、アクリル系樹脂、ナイロン、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、アルキド樹脂、不飽和ポリエステル、ポリスルホン、ポリウレタン、フェノール樹脂、尿素樹脂、エポキシ樹脂等の熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂が挙げられ、これらは1種または2種以上を混合して用いてもよい。
なお、有機マトリックスに架橋剤を添加し、有機マトリックスを架橋させて電磁波吸収体の耐熱性を向上させてもよい。該架橋剤としては、特に限定されるものではなく、例えば前記有機マトリックスを架橋することが可能な各種の公知の架橋剤が採用可能であるが、シリコーン樹脂を用いる場合には、過酸化物等の架橋剤を用いるのが好ましい。架橋剤の添加量は、用いる架橋剤の種類により異なるが、通常、有機マトリックス100重量部に対して0.1〜1.0重量部程度である。
球状軟磁性粉末とは、形状が球状である軟磁性金属の粉末を意味する。該軟磁性金属としては、例えば磁性ステンレス(Fe−Cr−Al−Si合金)、センダスト合金(Fe−Si−Al合金)、パーマロイ(Fe−Ni合金)、ケイ素銅(Fe―Cu―Si合金)、Fe−Si合金、Fe−Si−B(−Cu−Nb)合金、Fe−Ni−Cr―Si合金、Fe―Si−Cr合金、Fe―Si−Al−Ni−Cr合金等が挙げられ、特に、透磁率が高いセンダスト合金(Fe−Si−Al合金)が好ましい。これらは1種または2種以上を混合して用いてもよい。
球状軟磁性粉末の表面は、有機マトリックスとの親和性を向上させる上で、表面処理が施されていてもよく、該表面処理としては、例えばカップリング剤処理、樹脂コーティング等が挙げられる。前記カップリング剤としては、例えばシランカップリング剤、チタン系カップリング剤、アルミネート系カップリング剤等が挙げられ、その使用量は、球状軟磁性粉末総量に対して約0.01〜5重量%であるのがよい。また、前記樹脂コーティングする樹脂としては、使用する有機マトリックスと同じか、あるいは使用する有機マトリックスとの親和性に優れたエラストマー、樹脂等が挙げられる。このエラストマーおよび樹脂としては、上記有機マトリックスで例示したものと同じものが挙げられる。樹脂コーティング量は、球状軟磁性粉末総量に対して約0.01〜10重量%であるのがよい。
球状軟磁性粉末の平均粒径は30μm以下、好ましくは20μm以下、より好ましくは5μm以下であるのがよい。これにより、球状軟磁性粉末をより高充填することができる。また、平均粒径の異なる球状軟磁性粉末をブレンドして用いてもよい。なお、前記平均粒径の下限値としては、1μm程度がよい。これより小さい平均粒径の球状軟磁性粉末は、入手が困難である。
球状軟磁性粉末は、前記有機マトリックス100重量部に対して1000〜1500重量部、好ましくは1000〜1400重量部の割合で含むのが好ましい。これにより、電磁波吸収体が高い透磁率を有する。これに対し、球状軟磁性粉末の含有量が1000重量部より低いと、透磁率が低下するおそれがあり、1500重量部より多いと、電磁波吸収体の柔軟性が低下するおそれがある。
ここで、本発明の電磁波吸収体は、上記した通り滑剤を含有する。これにより、球状軟磁性粉末を高充填することができると共に、柔軟性も向上する。この理由としては、以下の理由が推察される。すなわち、前記した通り、球状軟磁性粉末は高充填することが困難であるが、滑剤を添加すると、該軟磁性粉末の表面が滑剤でコーティングされ、前記表面に滑り性が付与される。すなわち、球状軟磁性粉末の表面に潤滑剤として作用する滑剤の皮膜が形成される。
したがって、球状の軟磁性粉末を含有することで、互いの軟磁性粉末(軟磁性金属)同士は点で近接する形となり、さらにその金属周りには滑剤による潤滑作用があるので、各金属間が互いの表面で滑りやすい形となり、その結果、球状軟磁性粉末を高充填することができ、かつ柔軟性も向上すると。この高充填により、従来の球状軟磁性粉末にはない、高透磁率が達成され、電磁波吸収体としての使用が可能となった。
滑剤としては、例えば高級脂肪酸またはその塩、高級アルコール類、エステルワックス類等が挙げられる。前記高級脂肪酸としては、例えばステアリン酸、パルミチン酸、ミリスチン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸等が挙げられ、炭素数は10〜20程度であるのが好ましい。また、飽和高級脂肪酸および不飽和高級脂肪酸のいずれも使用可能であるが、安定性の上で飽和高級脂肪酸であるのが好ましい。高級脂肪酸塩の塩としては、例えばカドミウム、バリウム、カルシウム、亜鉛、鉛、スズ、アルミニウム、マグネシウム、ナトリウム、カリウム、リチウム等が挙げられる。前記高級アルコール類としては、例えばステアリルアルコール、パルミチルアルコール、ミリスチルアルコール等が挙げられ、前記エステルワックス類としては、例えばステアリン酸エステル、パルミチン酸エステル、ミリスチン酸エステル等が挙げられる。これらは1種または2種以上を混合して用いてもよい。
特に本発明では、滑剤がステアリン酸等の高級脂肪酸であるのが好ましい。これにより、球状軟磁性粉末をより高充填することができる。この理由としては、滑剤としての高級脂肪酸(特にステアリン酸)は、軟磁性粉末(軟磁性金属)の塩基性部位に作用するため、有機マトリックスよりも軟磁性粉末表面に作用しやすいためと推察される。
滑剤は、前記有機マトリックス100重量部に対して4〜8重量部の割合で含むのが好ましい。この範囲内で滑剤を含有する電磁波吸収体は、高い透磁率と優れた柔軟性を有する。これに対し、滑剤の含有量が4重量部より少ないと、上記した効果が得られないおそれがあり、8重量部を超えると、滑剤が電磁波吸収体表面にブリードアウトするおそれがあるので好ましくない。
本発明の電磁波吸収体は、上記した通り、高い透磁率を有する。具体的には、高周波数帯域(1GHz)における透磁率実部(μ’)が5.0以上、透磁率虚部(μ’’)が5.0以上である。このような高い透磁率は、例えば軟磁性粉末である軟磁性金属の種類や添加量を調整することによって得られる。前記透磁率実部(μ’)および透磁率虚部(μ’’)は、同軸管法により測定して得られた値である。具体的には、シート状の電磁波吸収体から外形7mm、内径3mmのリング状試料を切り取り、試料の同軸管内部への接触部分に導電性塗料を塗布・乾燥し、同軸管部分を同軸ケーブルを介してアジレント社製のネットワークアナライザー8720ESに接続し、S11(反射減衰強度)及びS21(透過減衰強度)を測定し、この測定結果からμ’及びμ”を得ることができる。
また、本発明の電磁波吸収体は、上記した通り、優れた柔軟性を有する。具体的には、硬度(JIS K 6253−A)が85以下であるのが好ましい。これに対し、前記硬度が85より大きいと、被着体表面の形状に追従しにくくなる。
本発明の電磁波吸収体は、放熱性を有するのが好ましい。具体的には、熱伝導率が2.0W/m・K以上であるのがよい。これにより、被着体である電子機器類等から放出される熱を外部に逃がすことができる。前記熱伝導率は、式:熱伝導率=熱拡散率×比熱×比重で算出される値であり、レーザーフラッシュ法により測定して得られた値である。レーザーフラッシュ法は、例えば「放熱材料の高熱伝導化および熱伝導率の測定・評価技術(技術情報協会)」に記載されているように、試料の表面をレーザーによってパルス状に加熱したときの試料裏面の温度応答から熱拡散率を測定する方法である。
本発明の電磁波吸収体は難燃剤を含有してもよい。該難燃剤としては、特に限定されるものではなく、例えば亜鉛系難燃剤、窒素系難燃剤、水酸化物系難燃剤、リン系難燃剤、ハロゲン系難燃剤等が挙げられる。
前記亜鉛系難燃剤としては、例えば炭酸亜鉛、酸化亜鉛、ホウ酸亜鉛等が挙げられ、前記窒素系難燃剤としては、例えばトリアジン化合物、ヒンダードアミン化合物、メラミンシアヌレート、メラミングアニジン化合物といったようなメラミン系化合物等が挙げられる。前記水酸化物系難燃剤としては、例えば水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム等が挙げられる。前記リン系難燃剤としては、例えば(縮合)リン酸エステル等が挙げられ、該(縮合)リン酸エステルとしては、例えばトリアリールホスフェート、レゾルシノールビスジフェニルホスフェート、ビスフェノールAビスジフェニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリス(ブトキシエチル)ホスフェート等が挙げられる。ハロゲン系難燃剤としては塩素系化合物、臭素系化合物が挙げられ、例えば塩素化パラフィン、デカブロモジフェニルエタン等が挙げられる。これらの化合物は単独で用いてもよく、あるいは2種以上を併用することもできる。
また、前記難燃剤は単独で使用する他、難燃助剤と併用してもよい。これにより、少量で高い難燃効果が得られる。前記難燃助剤としては、例えばカーボンブラック、三酸化アンチモン等が挙げられる。
難燃剤は、有機マトリックス100重量部に対して4〜100重量部、好ましくは8〜50重量部の割合で含有されているのがよく、前記難燃助剤は、有機マトリックス100重量部に対して2〜150重量部、好ましくは6〜50重量部の割合で含有されているのがよい。難燃剤と難燃助剤を併用する場合には、難燃剤と難燃助剤とが合計で、有機マトリックス100重量部に対して6〜250重量部、好ましくは14〜100重量部の割合で含有されているのがよい。
<製造方法>
次に、本発明にかかる電磁波吸収体の製造方法について、架橋剤を使用してシート状に成形する場合を例に挙げて説明する。まず、有機マトリクスと架橋剤を混練装置で混練する。この際、温度は50〜90℃程度であり、混練時間は10〜60分程度であるのが好ましい。前記混練装置としては、例えばミキサー、ニーダー、アジタ、ボールミル、サウンドミル、ロールミル、エクストルーダー、ホモジナイザ、超音波分散機、2軸遊星式混練機等が挙げられる。
次に、本発明にかかる電磁波吸収体の製造方法について、架橋剤を使用してシート状に成形する場合を例に挙げて説明する。まず、有機マトリクスと架橋剤を混練装置で混練する。この際、温度は50〜90℃程度であり、混練時間は10〜60分程度であるのが好ましい。前記混練装置としては、例えばミキサー、ニーダー、アジタ、ボールミル、サウンドミル、ロールミル、エクストルーダー、ホモジナイザ、超音波分散機、2軸遊星式混練機等が挙げられる。
ついで、この混練物に、必要に応じて表面処理を施した球状軟磁性粉末および滑剤を添加して、前記混練装置で混練する。この際、該球状軟磁性粉末は、一度に添加するのではなく、所定の時間をかけて分割添加するのが好ましい。これにより、有機マトリクスと球状軟磁性粉末を確実に混練することができる。添加時間は、軟磁性粉末の添加量等により異なるが、通常、10〜60分程度である。滑剤は、軟磁性粉末の添加前または軟磁性粉末と共に添加することができ、特に、軟磁性粉末と共に添加するのが好ましい。
すべてを添加終了した後、50〜90℃程度で、1〜3時間程度かけて、前記混練装置で混練する。ついで、得られた混練物を、ロールに通して圧延した後、加熱加圧する。これにより、前記滑剤が軟磁性粉末(軟磁性金属)表面で溶融し、隣り合い近接している金属間に潤滑剤として機能すると共に、その状態で上下から加圧されるので、球状軟磁性金属が高充填される。
前記加熱加圧の条件としては、特に限定されるものではなく、例えばプレス温度は160〜180℃、プレス時間は10〜60分、プレス面圧は100〜150MPa程度であるのがよい。このような条件で加熱加圧した後、室温で1〜20分程度冷却して、本発明の電磁波吸収体を得る。
なお、電磁波吸収体の厚さが薄いものが必要な場合(例えば厚さ0.3mm以下)には、所定量の前記各構成成分に適量の溶剤を加えてなる組成物(磁性塗料)を作製し、電磁波吸収体が必要な対象面に塗布、スプレー、ナイフコーティングといった公知の技術を用いて電磁波吸収体を作製することも可能である。
本発明の電磁波吸収体は、通常シート体であり、その厚さは5μm〜5mm、好ましくは10μm〜1mmであるのがよい。厚さが5μm未満であると、電磁波吸収効果が不十分であり、また厚さが5mmを超えると、限られた空間内の占有体積が大きくなり過ぎ、他のものの配置に制限を加えることになるので好ましくない。
本発明の電磁波吸収体の使用形態としては、例えばシート状の電磁波吸収体を適宜切り取り、粘着剤等を介して機器のノイズ源近傍に貼り付けたり、あるいは機器のノイズ源または近傍に前記のように塗布するなどして電磁波吸収体を形成するなどして使用される。
具体的には、本発明の電磁波吸収体は、高い透磁率と優れた柔軟性を有するので、テレビなどの家庭電気製品、パソコンなどのコンピューター、携帯電話などの移動体通信機器、医療機器など各種の電子機器に使用すると、これら電子機器から放出される不要電磁波が他の電子機器や電子部品、回路基板に影響を与えて誤作動を発生させるのを抑制することができる。このため、該電磁波吸収体を前記電子機器類の内部または周辺部に配置することにより、不要電磁波の干渉によって生じる電磁障害を効果的に抑制することができる。
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、以下の実施例および比較例で使用した材料は次の通りである。
・有機マトリックス:シリコーン樹脂であるジメチルポリシロキサン(信越化学工業(株)製の商品名「X-30-2359AU」)
・球状軟磁性粉末A:平均粒径5μmの球状センダスト合金(Fe-Si-Al合金)粉末(日本アトマイズ加工(株)製の商品名「SFR」)
・球状軟磁性粉末B:平均粒径20μmの球状センダスト合金(Fe-Si-Al合金)粉末(日本アトマイズ加工(株)製の商品名「SFR」)
カップリング剤:シランカップリング剤(チッソ(株)製の商品名「S-330」)
・滑剤:ステアリン酸
・架橋剤:過酸化物
・有機マトリックス:シリコーン樹脂であるジメチルポリシロキサン(信越化学工業(株)製の商品名「X-30-2359AU」)
・球状軟磁性粉末A:平均粒径5μmの球状センダスト合金(Fe-Si-Al合金)粉末(日本アトマイズ加工(株)製の商品名「SFR」)
・球状軟磁性粉末B:平均粒径20μmの球状センダスト合金(Fe-Si-Al合金)粉末(日本アトマイズ加工(株)製の商品名「SFR」)
カップリング剤:シランカップリング剤(チッソ(株)製の商品名「S-330」)
・滑剤:ステアリン酸
・架橋剤:過酸化物
<電磁波吸収体の作製>
上記の有機マトリックス、球状軟磁性粉末A、滑剤および架橋剤を表1に示す組み合わせで用いた。すなわち、有機マトリックス100重量部および架橋剤0.56重量部をミキサー(東洋精機(株)製の4C150)にそれぞれ投入し、80℃で30分間混練した。
上記の有機マトリックス、球状軟磁性粉末A、滑剤および架橋剤を表1に示す組み合わせで用いた。すなわち、有機マトリックス100重量部および架橋剤0.56重量部をミキサー(東洋精機(株)製の4C150)にそれぞれ投入し、80℃で30分間混練した。
ついで、球状軟磁性粉末Aをカップリング剤でカップリング処理した後、該球状軟磁性粉末A、1362重量部を20分かけて少しずつミキサーに添加した。球状軟磁性粉末Aを添加する間に、滑剤4.5重量部を少しずつミキサーに添加した。
すべてを添加終了した後、80℃で2時間混練を行った。この混練物をロールに通して圧延した後、加熱加圧(プレス加硫)を行った。加熱加圧(プレス加硫)の条件は、プレス温度170℃、プレス時間15分およびプレス面圧100MPaに設定した。加熱加圧(プレス加硫)後、室温で10分間冷却して、厚さ1000μmのシート状の電磁波吸収体を得た。
[比較例1]
滑剤を添加しなかった以外は、上記実施例1と同様にして厚さ1000μmのシート状の電磁波吸収体を得た。
滑剤を添加しなかった以外は、上記実施例1と同様にして厚さ1000μmのシート状の電磁波吸収体を得た。
上記実施例1において、球状軟磁性粉末Aに代えて、球状軟磁性粉末A,Bを表1に示す割合で用いた。すなわち、球状軟磁性粉末A,Bをカップリング剤でカップリング処理した後、まず、球状軟磁性粉末B、340.5重量部を5分かけてミキサーに添加した。ついで、球状軟磁性粉末A、1021.5重量部を15分かけてミキサーに添加した。この際、球状軟磁性粉末A,Bを添加する間に、滑剤4.5重量部を少しずつミキサーに添加した以外は、上記実施例1と同様にして厚さ1000μmのシート状の電磁波吸収体を得た。
[比較例2]
滑剤を添加しなかった以外は、上記実施例2と同様にして厚さ1000μmのシート状の電磁波吸収体を得た。
滑剤を添加しなかった以外は、上記実施例2と同様にして厚さ1000μmのシート状の電磁波吸収体を得た。
<評価>
上記で得られた各電磁波吸収体(実施例1,2および比較例1,2)について、硬度、熱伝導率および透磁率を評価した。各評価方法を以下に示すと共に、結果を表2に併せて示す。
なお、各電磁波吸収体(実施例1,2および比較例1,2)の難燃性について、UL94の規格に準拠して評価した結果、いずれも難燃性を示した。
上記で得られた各電磁波吸収体(実施例1,2および比較例1,2)について、硬度、熱伝導率および透磁率を評価した。各評価方法を以下に示すと共に、結果を表2に併せて示す。
なお、各電磁波吸収体(実施例1,2および比較例1,2)の難燃性について、UL94の規格に準拠して評価した結果、いずれも難燃性を示した。
(硬度)
硬度は、JIS K 6253−Aに準拠して測定した。
(熱伝導率)
熱伝導率は、上記で説明したレーザーフラッシュ法により測定した。
(透磁率)
高周波数帯域(1GHz)における透磁率実部(μ’)および透磁率虚部(μ’’)は、上記で説明した同軸管法により測定した。
硬度は、JIS K 6253−Aに準拠して測定した。
(熱伝導率)
熱伝導率は、上記で説明したレーザーフラッシュ法により測定した。
(透磁率)
高周波数帯域(1GHz)における透磁率実部(μ’)および透磁率虚部(μ’’)は、上記で説明した同軸管法により測定した。
表2から明らかなように、滑剤を含有していない比較例1の電磁波吸収体に対し、滑剤を含有している実施例1の電磁波吸収体は、硬度が低く(すなわち柔軟性に優れ)、高い透磁率を示しているのがわかる。また、滑剤を含有していない比較例2の電磁波吸収体に対し、滑剤を含有している実施例2の電磁波吸収体は、硬度が低く(すなわち柔軟性に優れ)、高い透磁率を示しているのがわかる。
Claims (11)
- 有機マトリックスと、球状軟磁性粉末と、滑剤とを含有することを特徴とする、柔軟性を有する電磁波吸収体。
- 前記球状軟磁性粉末が球状センダスト合金である請求項1記載の電磁波吸収体。
- 前記球状軟磁性粉末の平均粒径が30μm以下である請求項1または2記載の電磁波吸収体。
- 前記有機マトリックス100重量部に対して、前記球状軟磁性粉末を1000〜1500重量部の割合で含む請求項1〜3のいずれかに記載の電磁波吸収体。
- 前記滑剤が高級脂肪酸またはその塩である請求項1〜4のいずれかに記載の電磁波吸収体。
- 前記高級脂肪酸がステアリン酸である請求項5記載の電磁波吸収体。
- 前記有機マトリックス100重量部に対して、前記滑剤を4〜8重量部の割合で含む請求項1〜6のいずれかに記載の電磁波吸収体。
- 高周波数帯域(1GHz)における透磁率実部(μ’)が5.0以上、透磁率虚部(μ’’)が5.0以上である請求項1〜7のいずれかに記載の電磁波吸収体。
- 硬度(JIS K 6253−A)が85以下である請求項1〜8のいずれかに記載の電磁波吸収体。
- 熱伝導率が2.0W/m・K以上である請求項1〜9のいずれかに記載の電磁波吸収体。
- 有機マトリックスと、球状軟磁性粉末と、滑剤とを含有し、柔軟性を有する電磁波吸収体の製造方法であって、前記有機マトリックスと、球状軟磁性粉末と、滑剤とを混練して混練物を調製する工程と、該混練物を加熱加圧する工程とを含むことを特徴とする電磁波吸収体の製造方法。
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- 2006-03-23 JP JP2006080638A patent/JP2007258432A/ja active Pending
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