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JP2007187952A - 防眩フィルム、その製造方法、そのための金型の製造方法、及び表示装置 - Google Patents

防眩フィルム、その製造方法、そのための金型の製造方法、及び表示装置 Download PDF

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JP2007187952A JP2006007048A JP2006007048A JP2007187952A JP 2007187952 A JP2007187952 A JP 2007187952A JP 2006007048 A JP2006007048 A JP 2006007048A JP 2006007048 A JP2006007048 A JP 2006007048A JP 2007187952 A JP2007187952 A JP 2007187952A
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Abstract

【課題】防眩機能と視認性に優れた防眩フィルム、その製法及びそれを得るための金型の製法を提供し、その防眩フィルムを画像表示装置に適用する。
【解決手段】この防眩フィルムは、透明基材上に微細な凹凸形状が形成されており、その凹凸表面の断面曲線における平均長さPSmが12μm以下であり、その断面曲線における算術平均高さPaと平均長さPSmの比Pa/PSmが0.005以上0.012以下であり、凹凸表面の傾斜角度が2°以下である面の割合が50%以下であり、傾斜角度が6°以下である面の割合が90%以上である。金属の表面に銅めっき又はニッケルめっきを施し、そのめっき表面が研磨された金属41の当該研磨面42に微粒子をぶつけて、凹凸43を形成し、その凹凸面にクロムめっき層44を形成して金型とし、その金型の凹凸を透明樹脂フィルムに転写する方法により、この防眩フィルムが製造できる。

【選択図】図10

Description

本発明は、低ヘイズでありながら防眩特性に優れた防眩(アンチグレア)フィルム、その製造方法、かかる防眩フィルムを得るための金属金型の製造方法、及びその防眩フィルムを備えた画像表示装置に関するものである。
液晶ディスプレイやプラズマディスプレイパネル、ブラウン管(陰極線管:CRT)ディスプレイ、有機エレクトロルミネッセンス(EL)ディスプレイ等の画像表示装置は、その表示面に外光が写り込むと視認性が著しく損なわれてしまう。このような外光の映り込みを防止するために、画質を重視するテレビやパーソナルコンピュータ、外光の強い屋外で使用されるビデオカメラやデジタルカメラ、反射光を利用して表示を行う携帯電話等においては、従来から画像表示装置の表面に外光の映り込みを防止するフィルム層が設けられていた。このフィルム層は、光学多層膜による干渉を利用した無反射処理が施されたフィルムからなるものと、表面に微細な凹凸を形成することにより入射光を散乱させて映り込み像をぼかす防眩処理が施されたフィルムからなるものとに大別される。このうち、前者の無反射フィルムは、均一な光学膜厚の多層膜を形成する必要があるため、コスト高になる。これに対して後者の防眩フィルムは、比較的安価に製造することができるため、大型のパーソナルコンピュータやモニタ等の用途に広く用いられている。
このような防眩フィルムは従来から、例えば、フィラーを分散させた樹脂溶液を基材シート上に塗布し、塗布膜厚を調整してフィラーを塗布膜表面に露出させることでランダムな凹凸をシート上に形成する方法などにより製造されている。しかしながら、このようなフィラーを分散させることにより製造された防眩フィルムは、樹脂溶液中のフィラーの分散状態や塗布状態等によって凹凸の配置や形状が左右されてしまうため、意図したとおりの凹凸を得ることが困難であり、ヘイズが低いものでは十分な防眩性能が得られないという問題があった。さらに、このような従来の防眩フィルムを画像表示装置の表面に配置した場合、散乱光によって表示面全体が白っぽくなり、表示が濁った色になる、いわゆる白ちゃけが発生しやすいという問題があった。また、最近の画像表示装置の高精細化に伴って、画像表示装置の画素と防眩フィルムの表面凹凸形状が干渉し、結果として輝度分布が発生して見にくくなる、いわゆるギラツキ現象が発生しやすいという問題もあった。
一方、フィラーを含有させずに、透明樹脂層の表面に形成された微細な凹凸だけで防眩性を発現させる試みもある。例えば、特開 2002-189106号公報(特許文献1)には、エンボス鋳型と透明樹脂フィルムとの間に電離放射線硬化性樹脂を挟んだ状態で当該電離放射線硬化性樹脂を硬化させることにより、三次元10点平均粗さ及び、三次元粗さ基準面上における隣接する凸部どうしの平均距離が、それぞれ所定値を満足する微細な凹凸を形成させ、その凹凸が形成された電離放射線硬化性樹脂層を前記透明樹脂フィルム上に設けた形の防眩フィルムが開示されている。
また、表示装置の表示面に配置される防眩フィルムではなく、液晶表示装置の背面側に配置される光拡散層として、表面に微細な凹凸が形成されたフィルムを用いることも、例えば、特開平 6-34961号公報(特許文献2)、特開 2004-45471 号公報(特許文献3)、特開 2004-45472 号公報(特許文献4)などに開示されている。
フィルムの表面に凹凸を形成する手法として、上記特許文献3や特許文献4には、凹凸を反転させた形状を有するエンボスロールに電離放射線硬化性樹脂液を充填し、充填された樹脂にロール凹版の回転方向に同期して走行する透明基材を接触させ、透明基材がロール凹版に接触しているときに、ロール凹版と透明基材との間にある樹脂を硬化させ、硬化と同時に硬化樹脂と透明基材とを密着させた後、硬化後の樹脂と透明基材との積層体をロール凹版から剥離する方法が開示されている。
このような手法では、用いることのできる電離放射線硬化性樹脂液の組成が限られ、また溶媒で希釈して塗布したときのようなレベリングが期待できないことから、膜厚の均一性に課題があることが予想される。さらに、エンボスロール凹版に直接樹脂液を充填する必要があることから、凹凸面の均一性を確保するためには、エンボスロール凹版に高い機械精度が要求され、エンボスロールの作製が難しいという課題があった。
次に、表面に凹凸を有するフィルムの作製に用いられるロールの作製方法として、例えば、前記特許文献2には、金属等を用いて円筒体を作り、その表面に、電子彫刻、エッチング、サンドブラストなどの手法により凹凸を形成する方法が開示されている。また、特開 2004-29240 号公報(特許文献5)には、ビーズショット法によってエンボスロールを作製する方法が開示されており、特開 2004-90187 号公報(特許文献6)には、エンボスロールの表面に金属めっき層を形成する工程、金属めっき層の表面を鏡面研磨する工程、鏡面研磨した金属めっき層面に、セラミックビーズを用いてブラスト処理を施す工程、さらに必要に応じてピーニング処理をする工程を経て、エンボスロールを作製する方法が開示されている。
このようにエンボスロールの表面にブラスト処理を施したままの状態では、ブラスト粒子の粒径分布に起因する凹凸径の分布が生じるとともに、ブラストにより得られるくぼみの深さを制御することが困難であり、防眩機能に優れた凹凸の形状を再現性良く得ることに課題があった。
また、前記特許文献1には、好ましくは鉄の表面にクロムめっきしたローラーを用い、サンドブラスト法やビーズショット法により凹凸型面を形成することが記載されている。さらに、このように凹凸が形成された型面には、使用時の耐久性を向上させる目的で、クロムめっきなどを施してから使用することが好ましく、それにより硬膜化及び腐食防止を図ることができる旨の記載もある。一方、前記特許文献3や特許文献4のそれぞれ実施例には、鉄芯表面にクロムめっきし、#250の液体サンドブラスト処理をした後に、再度クロムめっき処理して、表面に微細な凹凸形状を形成することが記載されている。
このようなエンボスロールの作製法では、硬度の高いクロムめっき上にブラストやショットを行うため、凹凸が形成されにくく、しかも形成された凹凸の形状を精密に制御することが困難であった。また、特開 2004-29672 号公報(特許文献7)にも記載されるとおり、クロムめっきは、下地となる材質及びその形状に依存して表面が荒れることが多く、ブラストにより形成された凹凸上にクロムめっきで生じた細かいクラックが形成されるため、どのような凹凸ができるのか設計が難しいという課題があった。さらに、クロムめっきで生じる細かいクラックがあるため、最終的に得られる防眩フィルムの散乱特性が好ましくない方向に変化するという課題もあった。さらには、エンボスロール母材表面の金属種とめっき種の組合せにより、仕上がりのロール表面が多種多様に変化するため、必要とする表面凹凸形状を精度良く得るためには、適切なロール表面の金属種と適切なめっき種を選択しなければならないという課題もあった。さらにまた、望む表面凹凸形状が得られたとしても、めっき種によっては使用時の耐久性が不十分となることもあった。
一方、本発明者らによる特開 2005-92197 号公報(特許文献8)には、凹凸表面の傾斜角度が1°以下である面の割合が20%以下、当該表面の傾斜角度が5°以上である面の割合が20%以下であり、高さの標準偏差が0.2μm以下である防眩フィルムが開示されている。同じく特開 2005-140890号公報(特許文献9)には、凹凸の平均高さよりも高い領域を凸、それよりも低い領域を凹として、個々の凸又は凹の投影面積から求められる見かけの面積の頻度をヒストグラムで表したときのピーク位置とその半値幅が所定の条件を満たす防眩フィルムが開示されている。そして、ヘイズが高いと、防眩フィルムと液晶パネルを組み合わせて液晶表示装置としたときの正面コントラストが低下することから、前者の公報ではヘイズは10%以下であるのが好ましいとされ、また後者の公報ではヘイズは15%以下であるのが好ましいとされている。
特開2002−189106号公報(請求項1〜6、段落0043〜0046) 特開平6−34961号公報(請求項1〜3、段落0024) 特開2004−45471号公報(請求項4、実施例1) 特開2004−45472号公報(請求項4、実施例1) 特開2004−29240号公報(請求項2) 特開2004−90187号公報(請求項1及び2) 特開2004−29672号公報(段落0030) 特開2005−92197号公報(請求項1、段落0031) 特開2005−140890号公報(請求項1、段落0056)
本発明は、優れた防眩機能を示しながら、白ちゃけによる視認性の低下が十分に防止され、高精細の画像表示装置の表面に配置したときにギラツキの発生しない防眩フィルム、その製造方法及びその防眩フィルムを得るための金属金型の製造方法を提供し、さらにはその防眩フィルムを適用した画像表示装置を提供することを目的とする。本発明はまた、金型表面へのめっきとして、硬度や表面光沢などに優れるクロムめっきを採用しながら、そのクロムめっき面に荒れを生じさせずに、防眩フィルムの製作に好適な金型を製造し、それを用いて優れた防眩機能を示す防眩フィルムを製造することを目的とする。
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、金型となる金属の表面に下地めっきとして銅めっき又はニッケルめっきを施し、そのめっき表面に微粒子をぶつけることにより凹凸を形成し、その凹凸面にクロムめっきを施して金型とし、その金型の凹凸面を透明樹脂フィルムに転写して得られる凹凸面付き防眩フィルムは、低ヘイズでありながら十分な防眩性能を有し、画像表示装置に配置したときにも白ちゃけやギラツキなどが発生せず、良好な視認性を示すという、従来品では兼備していなかった性能が発現されることを見出した。また、かかる防眩フィルムを作製するために、表面を上記の如く特定の金属めっきで被覆したものを用い、特定の工程を経て表面に凹凸が形成された金属金型とすれば、上記光学特性を満たすフィルムを得るためのネガ型となる金型が再現性良く得られることを見出した。本発明は、かかる知見に基づき、さらに種々の検討を加えて完成されたものである。
すなわち、本発明の防眩フィルムは、透明基材上に微細な凹凸形状が形成されており、その凹凸表面の任意の断面曲線における平均長さPSmが12μm以下であり、その断面曲線における算術平均高さPaと平均長さPSmの比Pa/PSmが0.005以上0.012以下であり、その凹凸表面の傾斜角度が2°以下である面の割合が50%以下であり、傾斜角度が6°以下である面の割合が90%以上である。
本発明では、防眩層に微粒子を含有させなくても、このような表面凹凸形状が達成できる。この防眩フィルムは、凹凸表面の凸部の頂点を母点としてその表面をボロノイ分割したときに形成される多角形の平均面積が100μm2以上200μm2以下であることが好ましい。またこの防眩フィルムは、ヘイズが12%以下であることが好ましく、暗部と明部の幅が0.5mm、1.0mm及び2.0mm である3種類の光学くしを用いて入射角45゜で測定される反射鮮明度の合計が50%以下であることが好ましく、さらに、入射角30°で入射した光に対して、反射角30°の反射率R(30)が0.05%以上1.5%以下で、反射角50°の反射率R(50)が0.00001%以上0.0003%以下であることが好ましい。
この防眩フィルムは、金属の表面に銅めっき又はニッケルめっきを施し、そのめっき表面を研磨した後、その研磨面に微粒子をぶつけて凹凸を形成し、その凹凸面にクロムめっきを施して金型とし、その金型の凹凸面を透明樹脂フィルムに転写し、次いでその凹凸が転写された透明樹脂フィルムを金型から剥がす方法により、有利に製造される。
この方法において、クロムめっき後に表面を研磨せず、そのままクロムめっき面を金型の凹凸面として用いるのが有利である。クロムめっきの厚みは、1μm以上20μm以下、さらには3μm以上10μm以下であることが好ましい。金型の凹凸面を転写する透明樹脂フィルムは、透明基材フィルムの表面に光硬化性樹脂層が形成されたもので構成し、その光硬化性樹脂層を金型の凹凸面に押し付けながら硬化させることにより、金型の凹凸面を光硬化性樹脂層に転写することができる。
また本発明によれば、金属の表面に銅めっき又はニッケルめっきを施し、そのめっき表面を研磨した後、その研磨面に微粒子をぶつけて凹凸を形成し、その凹凸面にクロムめっきを施すことにより、防眩フィルム作製用金属金型を製造する方法も提供される。
本発明の防眩フィルムは、液晶表示素子、プラズマディスプレイパネルなどの画像表示手段と組み合わせて、画像表示装置とすることができる。そこで本発明による画像表示装置は、前記の防眩フィルムと画像表示手段とを備え、その防眩フィルムが画像表示手段の視認側に配置されているものである。
本発明の防眩フィルムは、ヘイズが低く、表示画像の明るさを保ちながら、映り込み防止や反射防止、白ちゃけの抑制、ギラツキ発生防止など、防眩性能に優れたものとなる。また本発明の方法によれば、かかる防眩フィルムが、工業的有利に製造できる。そして、本発明の防眩フィルムを配置した画像表示装置は、明るさや防眩性能、視認性に優れている。
以下、本発明の好適な実施形態について、詳細に説明する。本発明の防眩フィルムは、表面に微細な凹凸が形成されているものであって、その凹凸表面の任意の断面曲線における平均長さPSm が12μm 以下であり、その断面曲線における算術平均高さPa と平均長さPSm の比Pa/PSmが0.005以上0.012以下であり、その凹凸表面の傾斜角度が2°以下である面の割合が50%以下であり、傾斜角度が6°以下である面の割合が90%以上である。そして本発明においては、防眩層が微粒子(フィラー)を含有することを排除するものではないが、防眩層に微粒子を含有させなくても、このような表面形状ないし光学特性が達成できる。
凹凸の平均長さPSm が12μm よりも大きい場合には、最近の高精細の画像表示装置に防眩フィルムを配置したときに、表示装置の画素と防眩フィルムの表面凹凸形状が干渉し、ギラツキが発生しやすくなる。凹凸の平均長さPSm の下限は特に限定されないが、一般には1μm 以上であるのが好ましい。
また、算術平均高さPaと平均長さPSmの比Pa/PSm が0.005未満であったり、凹凸表面の傾斜角度が2°以下である面の割合が50%より大きかったりすると、凹凸表面が平坦に近くなって、十分な防眩性能が得られず、光源などの像が映り込むこととなりやすい。一方、上記の比Pa/PSm が0.012より大きかったり、凹凸表面の傾斜角度が6°以下である面の割合が90%を下回ったりすると、凹凸表面の傾斜角度が急峻になって、周囲からの光を集光し、表示面が全体的に白くなる白ちゃけが発生しやすくなる。傾斜角度が2°以下である面の割合は、小さいほうが好ましく、例えば、40%以下であるのがより好ましい。ただ、例えば凸の頂部や凹の底部は、傾斜角度が事実上0°になるので、傾斜角度が2°以下である面の割合が0になることはない。
表面粗さ、すなわち、凹凸表面の任意の断面曲線における平均長さPSm 及び算術平均高さPa についてさらに説明すると、これらは、 JIS B 0601 に基づいて決定される値であって、前者の平均長さPSm は凹凸の平均間隔とも呼ばれ、後者の算術平均高さPa は中心線平均粗さ又は算術平均粗さとも呼ばれるものである。表面粗さの測定にあたって、従来の一般的な接触式表面粗さ計を用いたのでは限界があり、また、防眩フィルムを傷付け、定量的な測定が行えない可能性がある。そこで、共焦点顕微鏡、干渉顕微鏡、原子間力顕微鏡(Atomic Force Microscope :AFM)などの装置により表面凹凸形状の三次元情報を入手し、その情報に基づいて表面粗さを決定することが好ましい。なお、三次元情報から計算する場合は、十分な基準長さを確保するために、200μm×200μm以上の領域を3点以上測定し、その平均値をもって測定値とすることが好ましい。
次に、防眩フィルム表面の傾斜角度について説明する。図1に、防眩フィルムの表面の概略を斜視図で示した。この図を参照して、防眩フィルム1は、その表面に微細な凹凸が形成されたものである。そして、本発明でいう凹凸表面の傾斜角度とは、フィルム1表面の任意の点Pにおいて、フィルムの主法線5、すなわち、フィルムの平均面での法線に対する、そこでの凹凸を加味した局所的な法線6のなす角度ψを意味する。図1には、フィルム面内の直行座標を(x,y)で表示し、またフィルム全体の面を投影面3で表示している。
フィルム表面の傾斜角度は、共焦点顕微鏡、干渉顕微鏡、原子間力顕微鏡(AFM)などの装置により測定される表面粗さの三次元情報から求めることができる。測定機に要求される水平分解能は、少なくとも5μm 以下、好ましくは2μm 以下であり、また垂直分解能は、少なくとも0.1μm以下、好ましくは0.01μm以下である。この測定に好適な非接触三次元表面形状・粗さ測定機としては、米国 Zygo Corporation の製品で、日本ではザイゴ(株)から入手できる“New View 5000 ”シリーズ、 Sensofar 社製の共焦点顕微鏡“PLμ2300”などを挙げることができる。測定面積は広いほうが好ましく、少なくとも200μm×200μmとするのがよい。好ましくは、200μm×200μm以上の領域を3点以上測定し、その平均値をもって測定値とする。
具体的な傾斜角度の決定方法を説明すると、図2に示すように、点線で示されるフィルム平均面FGHI上の着目点Aを決定し、そこを通るx軸上の着目点Aの近傍に、点Aに対してほぼ対称に点B及びDを、また点Aを通るy軸上の着目点Aの近傍に、点Aに対してほぼ対称に点C及びEをとり、これらの点B,C,D,Eに対応するフィルム面上の点Q,R,S,Tを決定する。なお図2では、フィルム面内の直交座標を(x,y)で表示し、フィルム厚み方向の座標をzで表示している。フィルム平均面FGHIは、y軸上の点Cを通るx軸に平行な直線、及び同じくy軸上の点Eを通るx軸に平行な直線と、x軸上の点Bを通るy軸に平行な直線、及び同じくx軸上の点Dを通るy軸に平行な直線とのそれぞれの交点F,G,H,Iによって形成される面であり、必然的にフィルム平均面を構成することになる。また図2では、フィルム平均面FGHIに対して、実際のフィルム面の位置が上方にくるように描かれているが、着目点Aのとる位置によって当然ながら、実際のフィルム面の位置がフィルム平均面の上方にくることもあるし、下方にくることもある。
そして、得られる表面形状データの傾斜角度は、着目点Aに対応する実際のフィルム面上の点Pと、その近傍にとられた4点B,C,D,Eに対応する実際のフィルム面上の点Q,R,S,Tの合計5点により張られるポリゴン4平面、すなわち、四つの三角形PQR,PRS,PST,PTQの各法線ベクトル6a,6b,6c,6dを平均して得られる平均法線ベクトル6の極角を求めることにより、得ることができる。各測定点について傾斜角度を求めた後、ヒストグラムが計算される。
図3に傾斜角度分布のヒストグラムの例を示す。この図において、横軸は傾斜角度であって、0.5度刻みで分割してある。例えば、一番左の縦棒は、傾斜角度が0°〜0.5°の範囲にある集合の分布を示し、以下、右へ行くにつれて角度が 0.5°ずつ大きくなっている。図では、横軸の2目盛毎に値の下限値を表示しており、例えば、横軸で「1」とある部分は、傾斜角度が 1°〜1.5°の範囲にある集合の分布を示す。また、縦軸は傾斜角度の分布を表し、積分すれば1になる値である。この例では、傾斜角度が2°以下である面の割合は約32%であり、傾斜角度が6°以下である面の割合は約95%である。なお、後述する実施例及び比較例のヒストグラムを示す図12、図14、図16、図18及び図20も、表示のし方は図3と同様である。
本発明者らの調査によれば、現在市中に出回っている防眩フィルムには、凹凸表面の任意の断面曲線における平均長さPSm が12μm 以下であり、その断面曲線における算術平均高さPa と平均長さPSm の比Pa/PSmが0.005以上0.012以下であり、凹凸表面の傾斜角度が2°以下である面の割合が50%以下であり、その傾斜角度が6°以下である面の割合が90%以上であるという要件を全て満たすものはなかった。その結果として、低ヘイズ、十分な映り込み防止、白ちゃけ抑制、ギラツキ防止という性能を全て備えている防眩フィルムはなかった。
また、本発明の防眩フィルムは、凹凸表面における凸部の頂点を母点としてその表面をボロノイ分割したときに形成される多角形の平均面積が100μm2以上200μm2以下であることが好ましい。
まず、防眩フィルムの凹凸表面における凸部の頂点を求めるアルゴリズムについて説明する。防眩フィルムの表面における任意の点に着目したときに、その点の周囲において、着目した点よりも標高の高い点が存在せず、かつ、その点の凹凸面における標高が凹凸面の最高点の標高と最低点の標高との中間より高い場合に、その点が凸部の頂点であるとする。より具体的には、図4に示すように、防眩フィルム表面の任意の点11に着目し、その点11を中心として、防眩フィルム基準面13に平行な半径2μm〜5μmの円を描いたとき、その円の投影面14内に含まれる防眩フィルム表面12上の点の中に、着目した点11よりも標高の高い点が存在せず、かつ、その点の凹凸面における標高が凹凸面の最高点の標高と最低点の標高との中間より高い場合に、その点11が凸部の頂点であると判定する。その際、上記円14の半径は、サンプル表面の細かい凹凸をカウントせず、また、複数の凸部を含まない程度の大きさであることが求められ、3μm 程度が好ましい。この手法によれば、凹凸表面単位面積あたりの凸部の数を決定することもできる。
次に、ボロノイ分割について説明すると、平面上にいくつかの点(母点という)が配置されているとき、その平面内の任意の点がどの母点に最も近いかによってその平面を分割してできる図をボロノイ図といい、その分割のことをボロノイ分割という。図5に、防眩フィルムの表面における凸部の頂点を母点としてその表面をボロノイ分割した例を示す。図5において、四角の点16,16が母点であり、一つの母点を含む個々の多角形17,17が、ボロノイ分割により形成される領域であって、ボロノイ領域とかボロノイ多角形とか呼ばれるものであるが、以下ではボロノイ多角形と呼ぶ。この図において、周囲の薄く塗りつぶしてある部分18,18については、後で説明する。ボロノイ図においては、母点の数とボロノイ多角形の数は一致する。なお、図5においては、一部の母点及びボロノイ多角形に対してのみ引き出し線と符号を付しているが、母点とボロノイ多角形が多数存在することは、以上の説明とこの図から容易に理解されるであろう。
凸部の頂点を母点としたボロノイ分割を行うことにより得られるボロノイ多角形の平均面積を求めるにあたっては、共焦点顕微鏡、干渉顕微鏡、原子間力顕微鏡(AFM)などの装置により表面形状を測定し、防眩フィルム表面の各点の三次元的な座標値を求めてから、以下に示すアルゴリズムによりボロノイ分割を行い、ボロノイ多角形の平均面積を求める。すなわち、まず防眩フィルムの凹凸表面における凸部の頂点を上述のアルゴリズムによって求め、次に、防眩フィルム基準面にその凸部の頂点を投影する。その後、表面形状の測定によって得られた三次元座標全てをその基準面に投影し、それら投影された全ての点を最近接の母点に帰属させることによってボロノイ分割を行い、分割されて得られる各多角形の面積を求め、平均することにより、ボロノイ多角形の平均面積とする。測定に際しては、誤差を少なくするために、測定視野の境界に接するボロノイ多角形は算入しない。すなわち図5において、視野の境界に接し、薄く塗りつぶされているボロノイ多角形18,18は、平均面積の算出にカウントしない。また、測定誤差を少なくするために、200μm ×200μm 以上の領域を3点以上測定し、その平均値をもって測定値とすることが好ましい。
本発明では、上述したとおり、凹凸表面における凸部の頂点を母点としてその表面をボロノイ分割したときに形成される多角形の平均面積が100μm2以上200μm2以下となるようにするのが好ましい。このボロノイ多角形の平均面積が100μm2を下回る場合には、防眩フィルム表面の傾斜角度が急峻なものとなり、結果として白ちゃけが発生しやすくなるので、好ましくない。一方、ボロノイ多角形の平均面積が200μm2より大きい場合には、凹凸表面形状が粗くなり、最近の高精細な画像表示装置に適用したときにギラツキが発生しやすく、また質感も低下するので、好ましくない。
さらに、本発明の防眩フィルムは、ヘイズが12%以下であること、暗部と明部の幅が0.5mm、1.0mm及び2.0mm である3種類の光学くしを用いて光の入射角45゜で測定される反射鮮明度の合計が100%以下、とりわけ50%以下であること、また、入射角30°で入射した光に対して、反射角30°の反射率R(30)が0.05%以上1.5%以下であり、反射角50°の反射率R(50)が0.00001%以上0.0003%以下であることが好ましい。
ヘイズは、 JIS K 7136 に規定される方法で測定される。ヘイズが12%を超えると、画像表示装置に配置したときに画像が暗くなり、その結果、正面コントラストが低下しやすいので、使用上好ましくない。
反射鮮明度は、 JIS K 7105 に規定される方法で測定される。この規格では、像鮮明度測定に用いる光学くしとして、暗部と明部の幅の比が1:1で、その幅が 0.125mm、0.5mm、1.0mm及び2.0mmである4種類が規定されている。このうち、幅0.125mmの光学くしを用いた場合、本発明で規定する防眩フィルムにおいては、その測定値の誤差が大きくなることから、幅0.125mm の光学くしを用いた場合の測定値は和に加えないこととし、幅が0.5mm、1.0mm及び2.0mm である3種類の光学くしを用いて測定された像鮮明度の和を持って反射鮮明度と呼ぶことにする。この定義による場合の反射鮮明度の最大値は300%である。この定義による反射鮮明度があまり大きくなると、光源などの像が映り込んで、防眩性が低下する傾向になりやすい。
次に、入射角30°で入射した光に対する所定反射角での反射率について説明する。図6は、防眩フィルムに対する光の入射方向と反射方向とを模式的に示した斜視図である。本発明では、防眩フィルム21の法線22から30°の角度で入射した入射光23に対して、反射角30°の方向、すなわち、正反射方向25への反射光の反射率(つまり、正反射率)をR(30)としたときに、R(30)が0.05%以上1.5%以下となるようにするのが好ましい。正反射率R(30)が 0.05%未満では、結果として高角度側の反射率が高くなり、白ちゃけが発生しやすくなる傾向にある。また、R(30)が 1.5%を超えると、十分な防眩機能が得られず、視認性が低下しやすくなる傾向にある。図6では、任意の反射角θでの反射光を符号26で表しており、反射率を測定するときの反射光の方向25,26は、入射光の方向23と法線22とを含む面28内とする。
また本発明では、図6における防眩フィルム21の法線22から30゜の角度で入射した入射光23に対して、反射角50゜の反射率をR(50)としたとき、R(50)が、0.00001%以上0.0003%以下となるようにするのが好ましい。このR(50)が 0.00001%未満である場合には、光源などの輪郭が防眩フィルム上で認識できる映り込みが観察され、防眩機能が低下する傾向にある。一方、R(50)が 0.0003%を超えると、映り込みは起きにくいが、白ちゃけが起こりやすくなる傾向にある。すなわち、例えば、表示装置の最前面に防眩フィルムを設置した状態で表示面に黒を表示した場合でも、周囲からの光を拾って表示面が全体的に白くなる白ちゃけが発生しやすくなる傾向にある。
図7は、図6における防眩フィルム21の法線22から30゜の角度で入射した入射光23に対する反射光26の、反射角と反射率(反射率は対数目盛)をプロットしたグラフの一例である。このような反射角と反射率の関係を表すグラフ、又はそれから読み取られる反射角毎の反射率を、反射プロファイルと呼ぶことがある。このグラフに示した如く、正反射率R(30)は30゜で入射した入射光23に対する反射率のピークであり、正反射方向から角度がずれるにつれて反射率は低下する傾向にある。図7に示す反射プロファイルの例では、正反射率R(30)が約0.09%、R(50)が約0.0001%となっている。
本発明者らの調査によれば、現在市中に出回っている防眩フィルムで十分な映り込み防止効果を発現するもの、すなわち、前記のようにして測定されるR(30)が 1.5%以下のものは、多くの場合、R(50)が 0.0003%を超えており、このようなものでは、特に高精細の画像表示装置に適用した場合に白ちゃけが見られた。一方、R(30)が1.5%以下で、R(50)が0.0003%以下のものも存在するが、本発明で規定する表面形状を満たさないために、映り込み防止効果が不十分であったり、特に高精細の画像表示装置に適用したときにギラツキが観察されたりして、視認性が低下していた。
防眩フィルムの反射率を測定するにあたっては、0.001% 以下の反射率を精度良く測定することが必要である。そこで、ダイナミックレンジの広い検出器の使用が有効である。このような検出器としては、例えば、市販の光パワーメーターなどを用いることができ、この光パワーメーターの検出器前にアパーチャーを設け、防眩フィルムを見込む角度が2°になるようにした変角光度計を用いて測定を行うことができる。入射光としては、380〜780nmの可視光線を用いることができ、測定用光源としては、ハロゲンランプ等の光源から出た光をコリメートしたものを用いてもよいし、レーザーなどの単色光源で平行度の高いものを用いてもよい。また、裏面が平滑で透明な防眩フィルムの場合には、防眩フィルム裏面からの反射が測定値に影響を及ぼすことがあるため、例えば、黒色のアクリル樹脂板に防眩フィルムの平滑面を粘着剤又は水やグリセリン等の液体を用いて光学密着させることにより、防眩フィルム最表面の反射率のみが測定できるようにすることが好ましい。
本発明の防眩フィルムでは、組み合わせて使用する高精細の画像表示素子の画素密度で120ppi(pixel per inch)までぎらつかないほうが好ましい。120ppi又はそれより小さい画素密度でギラツキが見える場合には、高精細の画像表示素子と組み合わせて使用することが難しくなる。
ギラツキは、以下の方法で評価することができる。まず、図8に平面図で示すようなユニットセルのパターンを有するフォトマスクを用意する。この図において、ユニットセル30は、透明な基板上に、線幅10μm でカギ形のクロム遮光パターン31が形成され、そのクロム遮光パターン31の形成されていない部分が開口部32となっている。120ppi の画素密度で評価するときは、ユニットセルの寸法が211μm×70μm(図の縦×横)、したがって開口部の寸法が201μm×60μm(図の縦×横)のものを用いればよい。図示するユニットセルが縦横に多数並んで、フォトマスクを形成する。
そして、図9に模式的な断面図で示すように、フォトマスク33のクロム遮光パターン31を上にしてライトボックス35に置き、ガラス板37に粘着剤を介して防眩フィルム21をその平坦面側で貼合したサンプルを、フォトマスク33上に置く。ライトボックス35の中には、光源36が配置されている。この状態で、サンプルから約30cm離れた場所39から目視観察することにより、ギラツキの官能評価を行う。
次に、本発明による防眩フィルムの製造方法、及びその防眩フィルムを得るための表面に凹凸が形成された金属金型の製造方法について説明する。本発明では、凹凸を有する金属金型を得るために、金属基材の表面に銅めっき又はニッケルめっきを施し、そのめっき表面を研磨した後、その研磨面に微粒子をぶつけて凹凸を形成し、その後、その凹凸面にクロムめっきを施して、金型とする。
まず、微粒子をぶつけて凹凸を形成し、さらにクロムめっき層を形成する金属基材の表面には、銅めっき又はニッケルめっきが施される。このように、金型を構成する金属の表面に銅めっき又はニッケルめっきを施すことにより、後工程におけるクロムめっきの密着性や光沢性を上げることができる。鉄などの表面にクロムめっきを施した場合、あるいはクロムめっき表面にサンドブラスト法やビーズショット法などで凹凸を形成してから再度クロムめっきを施した場合は、先に背景技術の項で述べた如く、表面が荒れやすく、細かいクラックが生じて、防眩フィルムの形状に好ましくない影響を与えることがある。これに対して、表面に銅めっき又はニッケルめっきを施すことにより、このような不都合がなくなることが見出された。これは、銅めっきやニッケルめっきは、被覆性が高く、また平滑化作用が強いために、金属基材の微小な凹凸や巣などを埋めて平坦で光沢のある表面を形成するためである。これらの銅めっき及びニッケルめっきの特性によって、金属基材に存在していた微小な凹凸や巣に起因すると思われるクロムめっき表面の荒れが解消され、また、銅めっきやニッケルめっきの被覆性の高さから、細かいクラックの発生が低減されるものと考えられる。
ここでいう銅又はニッケルは、それぞれの純金属であることができるほか、銅を主体とする合金、又はニッケルを主体とする合金であってもよい。したがって、本明細書でいう銅は、銅及び銅合金を含む意味であり、またニッケルは、ニッケル及びニッケル合金を含む意味である。銅めっき及びニッケルめっきは、それぞれ電解めっきで行っても無電解めっきで行ってもよいが、通常は電解めっきが採用される。
金型を構成するのに好適な金属として、コストの観点からアルミニウムや鉄などが挙げられる。さらに取扱いの利便性から、軽量なアルミニウムがより好ましい。ここでいうアルミニウムや鉄も、それぞれ純金属であることができるほか、アルミニウム又は鉄を主体とする合金であってもよい。このような金属基材の表面に銅めっき又はニッケルめっきを施し、さらにその表面を研磨して、より平滑で光沢のある表面を得た後、その表面に微粒子をぶつけて微細な凹凸を形成し、さらにそこに銅めっき又はニッケルめっきを施して、金型を構成する。
銅めっき又はニッケルめっきを施す際には、めっき層があまり薄いと、下地金属の影響が排除しきれないことから、その厚みは10μm 以上であるのが好ましい。めっき層厚みの上限は臨界的でないが、コスト等とのからみから、一般には500μm 程度までで十分である。
金属金型の形状は、平らな金属板であってもよいし、円柱状又は円筒状の金属ロールであってもよい。金属ロールを用いて金型を作製すれば、防眩フィルムを連続的なロール状で製造することができる。
図10は、金属板を用いた場合を例に、金属金型を得るまでの工程を模式的に示した断面図である。図10の(A)は、銅めっき又はニッケルめっきと鏡面研磨を施した後の金属基板41の断面を示すもので、その表面はめっき層の研磨面42で形成されている。このような鏡面研磨後の金属表面に微粒子をぶつけることにより、表面に凹凸を形成する。図10の(B)は、微粒子をぶつけた後の金属基板41の断面模式図であり、微粒子がぶつけられることで、部分球面状の微細な凹面43が形成されている。さらに、こうして微粒子による凹凸が形成された面に、クロムめっきを施すことにより、金属表面の凹凸形状をなまらせる。図10の(C)は、クロムめっきを施した後の断面模式図であり、金属基板41に形成された微細な凹面上に、クロムめっき層44が形成され、その表面46は、クロムめっきにより、(B)の凹面43に比べてなまった状態、換言すれば凹凸形状が緩和された状態になっている。このように、金属の表面に微粒子をぶつけて形成される部分球面状の微細な凹面43に、クロムめっきを施すことにより、実質的に平坦部がなく、好ましい光学特性を示す防眩フィルムを得るのに好適な凹凸が形成された金属金型を得ることができる。
銅めっき又はニッケルめっきからなる金属表面は、表面が研磨された状態で、微粒子がぶつけられるのであるが、特に、鏡面に近い状態に研磨されていることが好ましい。なぜならば、金属板や金属ロールは、所望の精度にするために、切削や研削などの機械加工が施されていることが多く、それにより金属表面に加工目が残っているためである。銅めっき又はニッケルめっきが施された状態でも、それらの加工目が残ることがあるし、また、めっきした状態で、表面が完全に平滑になるとは限らない。深い加工目などが残った状態では、微粒子をぶつけて金属表面を変形させても、微粒子により形成される凹凸よりも加工目などの凹凸のほうが深い場合があり、加工目などの影響が残って、光学特性に予期できない影響を与えることがある。
金属基材のめっきが施された表面を研磨する方法に特別な制限はなく、機械研磨法、電解研磨法、化学研磨法のいずれも使用できる。機械研磨法としては、超仕上げ法、ラッピング、流体研磨法、バフ研磨法などが例示される。研磨後の表面粗度は、中心線平均粗さRa で表して、Ra が1μm 以下であることが好ましく、より好ましくはRa が0.5μm以下、さらに好ましくはRa が0.1μm以下である。Ra があまり大きくなると、微粒子をぶつけて金属表面を変形させても、変形前の表面粗度の影響が残る可能性があるので好ましくない。また、Ra の下限については特に制限されず、加工時間や加工コストの観点から、おのずと限界があるので、特に指定する必要性はない。
金属基材のめっきが施された表面に微粒子をぶつける方法としては、噴射加工法が好適に用いられる。噴射加工法には、サンドブラスト法、ショットブラスト法、液体ホーニング法などがある。これらの加工に用いられる粒子としては、鋭い角があるような形状よりは、球形に近い形状であるほうが好ましく、また加工中に破砕されて鋭い角が出ないような、硬い材質の粒子が好ましい。これらの条件を満たす粒子として、セラミックス系の粒子では、球形ジルコニアのビーズや、アルミナのビーズが好ましく用いられる。また金属系の粒子では、スチールやステンレススチール製のビーズが好ましい。さらには、樹脂バインダーにセラミックスや金属の粒子を担持させた粒子を用いてもよい。
金属基材のめっきが施された表面にぶつける微粒子として、平均粒径が5〜35μm のもの、特に球形の微粒子を用いることにより、本発明で規定するところの、凹凸表面の断面曲線における平均長さPSm が12μm 以下であり、その断面曲線における算術平均高さPa と平均長さPSm の比Pa/PSmが0.005以上0.012以下であり、凹凸表面の傾斜角度が2°以下である面の割合が50%以下であり、傾斜角度が6°以下である面の割合が90%以上であるという要件を満たす防眩フィルムを作製することができる。微粒子の平均粒径が5μm より小さいと、金属基材のめっきの施された表面に十分な凹凸を形成することが困難となり、十分な防眩性能が得られにくくなる。一方、微粒子の平均粒径が35μm より大きいと、表面凹凸が粗くなり、ギラツキが発生したり、質感が低下したりする。ここで、平均粒径が15μm 以下の微粒子を用いて加工する際には、粒子が静電気等で凝集しないよう、適当な分散媒に分散させて加工する湿式ブラスト法を採用することが好ましい。
また、微粒子をぶつける際の圧力や微粒子の使用量も、加工後の凹凸形状、延いては防眩フィルムの表面形状に影響するが、一般には、ゲージ圧で0.07〜0.2MPa 程度の圧力、また処理される金属の表面積1cm2 あたり4〜20g程度の微粒子量から、用いる微粒子の種類や粒径、金属の種類、所望の凹凸形状などに応じて、適宜選択すればよい。
このようにして銅めっきまたはニッケルめっき表面に凹凸が形成された金属基材に、さらにクロムめっきを施すことにより、凹凸の表面をなまらせて金属版を作る。凹凸のなまり具合は、下地金属の種類、ブラストなどの手法により得られた凹凸のサイズと深さ、まためっきの種類や厚みなどによって異なるため、一概には言えないが、なまり具合を制御するうえで最も大きな因子はめっき厚みである。クロムめっき層の厚みが薄いと、ブラストなどの手法により得られた凹凸の表面形状をなまらせる効果が不十分であり、その凹凸形状を透明フィルムに転写して得られる防眩フィルムの光学特性があまり良くならない。一方で、めっき厚みが厚すぎると、生産性が悪くなってしまう。本発明で用いられるクロムめっきの厚みとしては1〜20μm が好ましく、さらには3μm 以上、また10μm 以下であるのがより好ましい。
本発明では、金属板や金属ロールなどの表面に、光沢があり、硬度が高く、摩擦係数が小さく、良好な離型性を与えうるクロムめっきを採用する。クロムめっきの種類は特に制限されないが、いわゆる光沢クロムめっきや装飾用クロムめっきなどと呼ばれる、良好な光沢を発現するクロムめっきを用いることが好ましい。クロムめっきは通常、電解によって行われ、そのめっき浴としては、無水クロム酸(CrO3 )と少量の硫酸を含む水溶液が用いられる。電流密度と電解時間を調節することにより、クロムめっきの厚みを制御することができる。
背景技術の項で掲げた特許文献1、特許文献4、特許文献6などには、クロムめっきを採用することが開示されているが、金属金型のめっき前の下地とクロムめっきの種類によっては、めっき後に表面が荒れたり、クロムめっきによる微小なクラックが多数発生したりすることが多く、その結果、作製される防眩フィルムの光学特性が好ましくない方向へと進む。めっき表面が荒れた状態のものは、防眩フィルム用の金属金型に向いていない。なぜならば、一般的にざらつきを消すためにクロムめっき後にめっき表面を研磨することが行われているが、後述するように、本発明ではめっき後の表面の研磨が好ましくないからである。本発明では、下地金属に銅めっき又はニッケルめっきを施すことにより、クロムめっきで生じやすいこのような不都合を解消している。
なお、凹凸をつけた金属表面にクロムめっき以外のめっきを施すことは好ましくない。なぜなら、クロム以外のめっきでは、硬度や耐摩耗性が低くなるため、金型としての耐久性が低下し、使用中に凹凸が磨り減ったり、金型が損傷したりする。そのような金型から得られた防眩フィルムでは、十分な防眩機能が得られにくい可能性が高く、また、フィルム上に欠陥が発生する可能性も高くなる。
前記特許文献6などに開示されているような、めっき後の表面を研磨することも、やはり本発明では好ましくない。研磨することにより、最表面に平坦な部分が生じるため、光学特性の悪化を招く可能性があること、形状の制御因子が増えるため、再現性の良い形状制御が困難になることなどの理由からである。図11は、微粒子をぶつけて得られた凹凸面にクロムめっきを施してなまらせた面を研磨した場合に、平坦面が生じた金属板の断面模式図であり、具体的には、図10(C)の状態から、そのクロムめっき層44の表面を研磨した状態に相当する。研磨により、金属41の表面に形成されたクロムめっき層44の表面凹凸46のうち、一部の凸が削られて、平坦面48が生じている。
次に、このようにして得られる金属金型を用いて、防眩フィルムを製造する工程について説明する。上で説明したような方法で得られる金属金型の形状を透明樹脂フィルムに転写することにより、防眩フィルムが得られる。金型形状のフィルムへの転写は、エンボスにより行うことが好ましい。エンボスとしては、光硬化性樹脂を用いるUVエンボス法、熱可塑性樹脂を用いるホットエンボス法が例示される。
UVエンボス法では、透明基材フィルムの表面に光硬化性樹脂層を形成し、その光硬化性樹脂層を金型の凹凸面に押し付けながら硬化させることで、金型の凹凸面が光硬化性樹脂層に転写される。具体的には、透明な基材フィルム上に紫外線硬化型樹脂を塗工し、塗工した紫外線硬化型樹脂を金属金型に密着させた状態で、透明基材フィルム側から紫外線を照射して紫外線硬化型樹脂を硬化させ、その後金属金型から、硬化後の紫外線硬化型樹脂層が形成された透明基材フィルムを剥離することにより、金属金型の形状を紫外線硬化型樹脂に転写する。紫外線硬化型樹脂の種類は特に制限されない。また、紫外線硬化型樹脂という表現をしているが、光開始剤を適宜選定することにより、紫外線より波長の長い可視光でも硬化が可能な樹脂とすることもできる。すなわち、ここでいう紫外線硬化型樹脂とは、このような可視光硬化型の樹脂も含めた総称である。一方、ホットエンボス法では、透明な熱可塑性樹脂フィルムを加熱状態で金属金型に押し付け、金型の表面形状を熱可塑性樹脂フィルムに転写する。これらのエンボス法の中でも、生産性の観点から、UVエンボス法が好ましい。
防眩フィルムの作製に用いることのできる透明基材フィルムは、実質的に光学的に透明であればよく、例えば、トリアセチルセルロースフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルムなどの樹脂フィルムが挙げられる。
紫外線硬化型樹脂としては、市販されているものを用いることができる。例えば、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート等の多官能アクリレートをそれぞれ単独で、あるいはそれら2種以上を混合して用い、それと、“イルガキュアー 907”、“イルガキュアー 184”(以上、チバ・スペシャルティー・ケミカルズ社製)、“ルシリン TPO”(BASF社製)等の光重合開始剤とを混合したものを、紫外線硬化型樹脂とすることができる。
ホットエンボス法に用いる熱可塑性の透明樹脂フィルムとしては、実質的に透明なものであればいかなるものであってもよく、例えば、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、トリアセチルセルロース、ノルボルネン系化合物をモノマーとする非晶性環状ポリオレフィン等の熱可塑性樹脂の溶剤キャストフィルムや押出フィルムなどを用いることができる。これらの透明樹脂フィルムはまた、上で説明したUVエンボス法を採用する場合の透明基材フィルムともなりうる。
以上のように構成される本発明の防眩フィルムは、防眩効果に優れ、白ちゃけも有効に防止されるため、画像表示装置に装着したときに視認性に優れたものとなる。画像表示装置が液晶ディスプレイである場合には、この防眩フィルムを偏光フィルムに積層することができる。すなわち、偏光フィルムは一般に、ヨウ素又は二色性染料が吸着配向されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムからなる偏光子の少なくとも片面に保護フィルムが積層された形のものが多いが、このような偏光フィルムの一方の面に、上記のような凹凸が付与された防眩フィルムを貼合すれば、防眩性の偏光フィルムとなる。また、上記のような防眩性の凹凸が付与されたフィルムを、保護フィルム兼防眩層として用い、その凹凸面が外側となるように偏光子の片面に貼合することによっても、防眩性の偏光フィルムとすることができる。さらには、保護フィルムが積層された偏光フィルムにおいて、その片面保護フィルムの表面に上記のような防眩性の凹凸を付与することにより、防眩性の偏光フィルムとすることもできる。
本発明の画像表示装置は、以上説明したような特定の表面形状を有する防眩フィルムを画像表示手段と組み合わせたものである。ここで画像表示手段は、上下基板間に液晶が封入された液晶セルを備え、電圧印加により液晶の配向状態を変化させて画像の表示を行う液晶パネルが代表的であるが、その他、プラズマディスプレイパネル、CRTディスプレイ、有機ELディスプレイなど、公知の各種ディスプレイに対しても、本発明の防眩フィルムを適用することができる。そして、上記した防眩フィルムを画像表示手段よりも視認側に配置することで、画像表示装置が構成される。この際、防眩フィルムの凹凸面が外側(視認側)となるように配置される。防眩フィルムは、画像表示手段の表面に直接貼合してもよいし、液晶パネルを画像表示手段とする場合は、例えば先述のように、偏光フィルムを介して液晶パネルの表面に貼合することもできる。このように本発明の防眩フィルムを備えた画像表示装置は、防眩フィルムの有する表面の凹凸により入射光を散乱して映り込み像をぼかすことができ、優れた視認性を与えるものとなる。
また、本発明の防眩フィルムを高精細の画像表示装置に適用した場合でも、従来の防眩フィルムに見られたようなギラツキが発生することもなく、低ヘイズでありながら、十分な映り込み防止、白ちゃけの防止、ギラツキの抑制という性能を兼備したものとなる。
以下に実施例を示して、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。以下の例における防眩フィルムの評価方法は、次のとおりである。
(断面曲線における平均長さPSm 及び算術平均高さPa の測定)
Sensofar 社製の共焦点顕微鏡“PLμ2300”を用いて、防眩フィルムの表面形状を測定した。この際、サンプルの反りを防止するため、光学的に透明な粘着剤を用いて凹凸面が表面となるようにガラス基板に貼合してから、測定に供した。測定の際、対物レンズの倍率は50倍とした。測定データをもとに、 JIS B 0601 に準拠した方法で計算することにより、平均長さPSm 及び算術平均高さPa を求めた。
(凹凸面の傾斜角度の測定)
上と同じ共焦点顕微鏡“PLμ2300”を用いて、防眩フィルムの表面形状を測定した。この場合も、サンプルの反りを防止するため、光学的に透明な粘着剤を用いて凹凸面が表面となるようにガラス基板に貼合してから、測定に供した。測定の際、対物レンズの倍率は50倍とした。測定データをもとに、前述のアルゴリズムに基づいて計算し、凹凸面の傾斜角度のヒストグラムを作成し、そこから傾斜角度毎の分布を求めた。
(ボロノイ分割したときのボロノイ多角形平均面積の測定)
上と同じ共焦点顕微鏡“PLμ2300”を用いて、防眩フィルムの表面形状を測定した。この場合も、サンプルの反りを防止するため、光学的に透明な粘着剤を用いて凹凸面が表面となるようにガラス基板に貼合してから、測定に供した。測定の際、対物レンズの倍率は50倍とした。測定データをもとに、前述のアルゴリズムに基づいて計算し、ボロノイ多角形の平均面積を求めた。
(ヘイズの測定)
JIS K 7136 に準拠した(株)村上色彩技術研究所製のヘイズメーター“HM-150”型を用いて防眩フィルムのヘイズを測定した。この場合も、サンプルの反りを防止するため、光学的に透明な粘着剤を用いて凹凸面が表面となるようにガラス基板に貼合してから、測定に供した。
(反射鮮明度の測定)
JIS K 7105 に準拠したスガ試験機(株)製の写像性測定器“ICM-1DP” を用いて、防眩フィルムの反射鮮明度を測定した。この場合も、サンプルの反りを防止するため、光学的に透明な粘着剤を用いて凹凸面が表面となるようにガラス基板に貼合してから、測定に供した。また、裏面ガラス面からの反射を防止するために、防眩フィルムを貼ったガラス板のガラス面に2mm厚みの黒色アクリル樹脂板を水で密着させて貼り付け、この状態でサンプル(防眩フィルム)側から光を入射させ、測定を行った。ここでの測定値は、前述したとおり、暗部と明部の幅がそれぞれ0.5mm、1.0mm及び2.0mm である3種類の光学くしを用いて測定された値の合計値である。
(透過鮮明度の測定)
上と同じ写像性測定器“ICM-1DP” を用いて、防眩フィルムの透過鮮明度を測定した。この場合も、サンプルの反りを防止するため、光学的に透明な粘着剤を用いて凹凸面が表面となるようにガラス基板に貼合してから、測定に供した。この状態でガラス側から光を入射させ、測定を行った。ここでの測定値は、暗部と明部の幅がそれぞれ 0.125mm、0.5mm、1.0mm及び2.0mm である4種類の光学くしを用いて測定された値の合計値である。この場合の透過鮮明度の最大値は400%となる。
(反射率の測定)
防眩フィルムの凹凸面に、フィルム法線に対して30゜傾斜した方向から、He−Neレーザーからの平行光を照射し、フィルム法線と照射方向を含む平面内における反射率の角度変化の測定を行った。反射率の測定には、いずれも横河電機(株)製の“3292 03 オプティカルパワーセンサー”と“3292 オプティカルパワーメーター”を用いた。
(映り込み及び白ちゃけの目視評価)
防眩フィルムの裏面からの反射を防止するために、凹凸面が表面となるように黒色アクリル樹脂板に防眩フィルムを貼合し、蛍光灯のついた明るい室内で凹凸面側から目視で観察し、蛍光灯の映り込みの有無及び白ちゃけの程度を目視で評価した。映り込み、白ちゃけともに、1から3の3段階で次の基準により評価した。
映り込み 1:映り込みが観察されない、
2:映り込みが少し観察される、
3:映り込みが明瞭に観察される。
白ちゃけ 1:白ちゃけが観察されない、
2:白ちゃけが少し観察される、
3:白ちゃけが明瞭に観察される。
(ギラツキの評価)
ギラツキは、先に図8及び図9を参照して説明した方法により評価した。すなわち、図8に示すユニットセルのパターンを有するフォトマスクを作製し、これを図9に示すように、フォトマスク33のクロム遮光パターン31を上にしてライトボックス35に置き、1.1mm厚のガラス板37に20μm厚みの粘着剤で防眩フィルム21を貼合したサンプルをフォトマスク33上に置き、サンプルから約30cm離れた場所39から目視観察することにより、ギラツキの程度を7段階で官能評価した。レベル1はギラツキが全く認められない状態、レベル7はひどくギラツキが観察される状態に該当し、レベル3はごくわずかにギラツキが観察される状態である。なお、フォトマスクのユニットセルは、図8におけるユニットセル縦×ユニットセル横が211μm×70μm、したがって同図における開口部縦×開口部横が201μm×60μmのものを用いた。
[実施例1]
直径200mmのアルミニウムロール(JIS による A5056)の表面に銅バラードめっきが施されたものを用意した。銅バラードめっきは、銅めっき層/薄い銀めっき層/表面銅めっき層からなるものであり、めっき層全体の厚さは、約200μm であった。その銅めっき表面を鏡面研磨し、さらにその研磨面に、ブラスト装置((株)不二製作所製)を用いて、東ソー(株)製のジルコニアビーズ“TZ-SX-17”(商品名、平均粒径20μm )を、ブラスト圧力0.1MPa(ゲージ圧、以下同じ)、ビーズ使用量8g/cm2 (ロールの表面積1cm2 あたりの使用量、以下同じ)でブラストし、表面に凹凸をつけた。得られた凹凸つき銅めっきアルミニウムロールにクロムめっき加工を行い、金属金型を作製した。このとき、クロムめっき厚みが6μm となるように設定した。
別途、大日本インキ化学工業(株)製の光硬化性樹脂組成物“GRANDIC 806T”(商品名)を酢酸エチルに溶解して、50重量%濃度の溶液とし、さらに、光重合開始剤である“ルシリン TPO”(BASF社製、化学名:2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド)を、硬化性樹脂成分100重量部あたり5重量部添加して塗布液を調製した。厚さ80μm のトリアセチルセルロース(TAC)フィルム上に、この塗布液を乾燥後の塗布厚みが5μm となるように塗布し、60℃に設定した乾燥機中で3分間乾燥させた。乾燥後のフィルムを、上で作製した金属金型の凹凸面に、光硬化性樹脂組成物層が金型側となるようにゴムロールで押し付けて密着させた。この状態でTACフィルム側より、強度20mW/cm2 の高圧水銀灯からの光をh線換算光量で200mJ/cm2 となるように照射して、光硬化性樹脂組成物層を硬化させた。この後、TACフィルムを硬化樹脂ごと金型から剥離して、表面に凹凸を有する硬化樹脂とTACフィルムとの積層体からなる透明な防眩フィルムを得た。
得られた防眩フィルムについて、凹凸表面形状、光学特性及び防眩性能を上記した手法により評価し、その結果を、金型の作製条件とともに表1に示した。また、この防眩フィルムの凹凸面における傾斜角度のヒストグラムを図12に、反射率測定の際に得られた反射光の散乱特性(反射プロファイルのグラフ)を図13に、それぞれ示した。なお、表1(B)中の反射鮮明度及び透過鮮明度の内訳は、次のとおりである。
反射鮮明度 透過鮮明度
0.125mm 光学くし: − 78.7%
0.5mm 光学くし : 5.8% 78.7%
1.0mm 光学くし : 8.3% 78.8%
2.0mm 光学くし : 12.9% 79.7%
合計 27.0% 315.9%
[実施例2及び3並びに比較例1及び2]
金型作製条件を表1のように変更し、その他は実施例1と同様にして、表面に凹凸を有する金属金型を作製した。それぞれの金型を用い、実施例1と同様にして、表面に凹凸を有する硬化樹脂とTACフィルムとの積層体からなる透明な防眩フィルムを作製した。得られた防眩フィルムの表面形状、光学特性及び防眩性能を、金型の作製条件とともに表1に示した。表1において、(A)は金型作製条件と防眩フィルムの表面形状をまとめたもの、そして(B)は防眩フィルムの光学特性と防眩性能をまとめたものである。なお、表中、傾斜角度「≦6°」の欄に「>99.5%」 とあるものは、傾斜角度が6°以下である面の割合が 99.5%超で、ほぼ100%に近い値であったことを意味する。
また、実施例2及び3については、防眩フィルムの凹凸面における傾斜角度のヒストグラムを実施例1の結果とともに図12に、そして反射プロファイルのグラフを実施例1の結果とともに図13に、それぞれ示した。一方、比較例1及び2については、防眩フィルムの凹凸面における傾斜角度のヒストグラムを図14に、そして反射プロファイルのグラフを図15に、それぞれ示した。
表1に示すように、比較例1は、凹凸表面の傾斜角度が2°以下である面の割合が85%、また比較例2は、同じく傾斜角度2°以下の面の割合が66%で、いずれも傾斜角度の小さい面が多くなっている。これは、金属ロールに対するブラスト圧力を0.05MPaと小さくしたことに伴い、十分な数の凹凸が形成されず、結果的に得られる防眩フィルムの凹凸面にも、平坦な面が多く存在するためと考えられる。このように傾斜角度の小さい面が多い比較例1及び2のサンプルは、映り込みがあり、十分な防眩性能を示さなかった。
これに対し、表面粗さと表面の傾斜角度分布を含む表面形状が本発明の規定を満たす実施例1〜3のサンプルは、映り込みが観察されず、白ちゃけもなく、ギラツキもほとんど観察されず、優れた防眩性能を示すものであった。
[比較例3]
直径200mmの鋼管ロール(JIS による STKM 13A)の表面に厚さ約100μmのクロムめっきが施されたものを用意した。そのクロムめっき表面を鏡面研磨し、さらにその研磨面に実施例1で用いたのと同じジルコニアビーズ TZ-SX-17 を、ブラスト圧力0.2MPa、ビーズ使用量8g/cm2 でブラストし、表面に凹凸をつけた。得られた凹凸つき鏡面研磨クロムめっき鋼管ロールに再度クロムめっき加工を行い、金属金型を作製した。ここで、最表面のクロムめっき層の厚みは2μm となるように設定した。この金型を用い、実施例1と同様にして、表面に凹凸を有する硬化樹脂とTACフィルムとの積層体からなる透明な防眩フィルムを作製した。得られた防眩フィルムの表面形状、光学特性及び防眩性能を表2に示した。表2において、(A)は防眩フィルムの表面形状をまとめたもの、そして(B)は防眩フィルムの光学特性と防眩性能をまとめたものである。また、得られた防眩フィルムの凹凸面における傾斜角度のヒストグラムを図16に、そして反射プロファイルのグラフを図17に、それぞれ示した。
表2に示すように、比較例3の防眩フィルムは、傾斜角度が2°以下である面の割合が62%に達しており、映り込みが明瞭に観察され、わずかに白ちゃけて見えるなど、十分な防眩性を示さなかった。映り込みが観察されたのは、微粒子をぶつける前のクロムめっきが硬く、十分な凹凸を形成できなかったためと考えられ、また、映り込み防止効果が不足しているにも拘わらず白ちゃけて見えるのは、最終工程のクロムめっきによって防眩面に微小なクラックが発生したためと考えられる。
[比較例4]
直径300mmのアルミニウムロール(JIS による A5056)の表面を鏡面研磨した。得られた鏡面研磨アルミニウムロールの表面に、実施例1で用いたのと同じジルコニアビーズ“TZ-SX-17”を、ブラスト圧力0.1MPa、ビーズ使用量8g/cm2 でブラストし、表面に凹凸をつけた。得られた凹凸つきアルミニウムロールに無電解光沢ニッケルめっき加工を行い、金属金型を作製した。めっき厚みは15μm に設定した。この金型を用い、実施例1と同様にして、表面に凹凸を有する硬化樹脂とTACフィルムとの積層体からなる透明な防眩フィルムを作製した。得られた防眩フィルムの凹凸表面形状、光学特性及び防眩性能を表3に示した。表3において、(A)は防眩フィルムの表面形状をまとめたもの、そして(B)は防眩フィルムの光学特性と防眩性能をまとめたものである。表中、傾斜角度「≦6°」の欄にある「>99.5%」 の意味は、先の表1と同じである。また、この防眩フィルムの凹凸面における傾斜角度のヒストグラムを図18に、そして反射プロファイルのグラフを図19に、それぞれ示した。
表3に示すように、比較例4の防眩フィルムは、十分な映り込み防止と白ちゃけ抑止を達成していたが、凹凸表面の断面曲線における平均長さPSm が12μm を超えているため、ギラツキが少し見られた。
[比較例5〜10]
住友化学(株)が販売する偏光板“スミカラン”に防眩層として使用されており、紫外線硬化樹脂中にフィラーが分散されてなる防眩フィルム “AG1”、 “AG3”、 “AG5”、“AG6”、“AG8”、“GL6” (それぞれ比較例5から比較例10とする)について、それぞれの表面形状、光学特性及び防眩性能を前述した手法により評価し、その結果を表4に示した。表4において、(A)は防眩フィルムの表面形状をまとめたもの、そして(B)は防眩フィルムの光学特性と防眩性能をまとめたものである。また、各防眩フィルムの凹凸面における傾斜角度のヒストグラムを図20に、そして反射プロファイルのグラフを図21に、それぞれ示した。図20及び図21において、それぞれ(A)は比較例5〜7の結果であり、(B)は比較例8〜10の結果である。
表4に示すように、比較例5〜10の中に本発明の要件を満たすものはなく、結果として、低ヘイズ、十分な映り込み防止、白ちゃけ防止、及びギラツキ防止の全てを兼ね備えた防眩フィルムは存在しなかった。比較例5及び6の防眩フィルムは、凹凸表面の断面曲線における平均長さPSm が12μm を大きく上回るために、ギラツキが顕著であり、また、傾斜角度が2°以下である面の割合が50%を上回るために表面凹凸が平坦となり、特にその割合が78%と大きくなっている比較例6は、映り込み防止効果が十分とは言えなかった。一方、比較例7〜10の防眩フィルムは、傾斜角度が2°以下である面の割合が小さいために、十分な映り込み防止効果を備えているものの、主に、傾斜角度が6°以下である面の割合が90%を下回る(比較例7から9)かほぼ90%(比較例10)であることと、30°入射光に対する反射角50°方向の反射率R(50)が 0.0003%を上回ること(全て)と相俟って、白ちゃけの発生する傾向が強かった。
以上の結果より、本発明で規定する要件をバランスよく備えていることが、本発明の目的とする光学特性を達成するのに必要であることが分かった。
本発明の防眩フィルムを、液晶パネル、プラズマディスプレイパネル、CRTディスプレイ、有機ELディスプレイなどの各種ディスプレイに対し、その防眩フィルムが画像表示素子よりも視認側となるように配置することで、白ちゃけ及びギラツキを発生させることなく、映り込み像をぼかすことができ、優れた視認性を与えるものとなる。
防眩フィルムの表面の概略を示し、さらに表面の傾斜角度を説明するための斜視図である。 表面の傾斜角度の測定方法を説明するための模式的な斜視図である。 防眩フィルムの表面傾斜角度のヒストグラムをグラフに表した一例である。 防眩フィルムの凸部判定のアルゴリズムを模式的に示した斜視図である。 防眩フィルムの凸部頂点を母点としてボロノイ分割したときの例を示すボロノイ図である。 防眩フィルムへの光の入射方向と反射方向とを模式的に示す斜視図である。 防眩フィルムの法線から30°の角度で入射した光に対する反射光の反射角と反射率(反射率は対数目盛)をプロットしたグラフの一例である。 ギラツキ評価用パターンのユニットセルを示す平面図である。 ギラツキ評価の状態を示す断面模式図である。 本発明に係る防眩フィルムの製造方法を工程毎に示す断面模式図である。 クロムめっき後に表面を研磨した状態を示す断面模式図である。 実施例1〜3で得られた防眩フィルムの表面傾斜角度のヒストグラムを表すグラフである。 実施例1〜3で得られた防眩フィルムの反射プロファイルを表すグラフである。 比較例1及び2で得られた防眩フィルムの表面傾斜角度のヒストグラムを表すグラフである。 比較例1及び2で得られた防眩フィルムの反射プロファイルを表すグラフである。 比較例3で得られた防眩フィルムの表面傾斜角度のヒストグラムを表すグラフである。 比較例3で得られた防眩フィルムの反射プロファイルを表すグラフである。 比較例4で得られた防眩フィルムの表面傾斜角度のヒストグラムを表すグラフである。 比較例4で得られた防眩フィルムの反射プロファイルを表すグラフである。 比較例5〜10の防眩フィルムにつき、表面傾斜角度のヒストグラムを表すグラフである。 比較例5〜10の防眩フィルムにつき、反射プロファイルを表すグラフである。
符号の説明
1……防眩フィルム(又はその平均面)、
2……フィルム表面に形成された凹凸、
3……フィルムの投影面、
5……フィルムの主法線、
6……凹凸を加味した局所的な法線、
6a〜6d……ポリゴン面の法線ベクトル、
ψ……表面傾斜角度、
11……防眩フィルム上の任意の点、
12……防眩フィルム表面、
13……フィルム基準面、
14……防眩フィルム上の任意の点を中心とする円のフィルム基準面への投影円、
16……凸部頂点の投影点(ボロノイ分割の母点)、
17……ボロノイ多角形、
18……平均値にカウントしない測定視野境界に接するボロノイ多角形、
21……防眩フィルム、
22……フィルム法線、
23……入射光線方向、
25……正反射方向、
26……任意の反射方向、
28……入射光線方向とフィルム法線を含む面、
θ……反射角、
30……フォトマスクのユニットセル、
31……フォトマスクのクロム遮光パターン、
32……フォトマスクの開口部、
33……フォトマスク、
35……ライトボックス、
36……光源、
37……ガラス板、
39……ギラツキの観察場所、
41……金属基板、
42……研磨面、
43……微粒子をぶつけて形成される凹面、
44……クロムめっき層、
46……めっき後に残る凹凸面、
48……めっき後の表面を研磨したときに発生する平坦面。

Claims (10)

  1. 透明基材上に微細な凹凸形状が形成されている防眩フィルムであって、
    該凹凸表面の任意の断面曲線における平均長さPSmが12μm以下であり、
    該断面曲線における算術平均高さPaと平均長さPSmの比Pa/PSm が0.005以上0.012以下であり、
    該凹凸表面の傾斜角度が2°以下である面の割合が50%以下であり、
    該傾斜角度が6°以下である面の割合が90%以上であることを特徴とする
    防眩フィルム。
  2. 防眩層に微粒子を含まない請求項1に記載の防眩フィルム。
  3. 凹凸表面の凸部の頂点を母点としてその表面をボロノイ分割したときに形成される多角形の平均面積が100μm2以上200μm2以下である請求項1又は2に記載の防眩フィルム。
  4. ヘイズが12%以下であり、
    暗部と明部の幅が0.5mm、1.0mm及び2.0mm である3種類の光学くしを用いて光の入射角45゜で測定される反射鮮明度の合計が50%以下であり、
    入射角30°で入射した光に対して、反射角30°の反射率R(30)が 0.05%以上1.5%以下で、反射角50°の反射率R(50)が 0.00001%以上0.0003%以下である
    請求項1〜3のいずれかに記載の防眩フィルム。
  5. 金属の表面に銅めっき又はニッケルめっきを施し、そのめっき表面を研磨した後、その研磨面に微粒子をぶつけて凹凸を形成し、その凹凸面にクロムめっきを施して金型とし、該金型の凹凸面を透明樹脂フィルムに転写し、次いで凹凸面が転写された透明樹脂フィルムを金型から剥がすことを特徴とする防眩フィルムの製造方法。
  6. クロムめっきの表面を研磨せず、そのままクロムめっき面を金型の凹凸面として用いる請求項5に記載の方法。
  7. クロムめっきの厚みが1μm以上20μm以下である請求項5又は6に記載の方法。
  8. クロムめっきの厚みが3μm以上10μm以下である請求項5又は6に記載の方法。
  9. 金属の表面に銅めっき又はニッケルめっきを施し、そのめっき表面を研磨した後、その研磨面に微粒子をぶつけて凹凸を形成し、その凹凸面にクロムめっきを施すことを特徴とする防眩フィルム作製用金属金型の製造方法。
  10. 請求項1〜4のいずれかに記載の防眩フィルムと画像表示手段とを備え、該防眩フィルムが画像表示手段の視認側に配置されていることを特徴とする画像表示装置。
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