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JP2007178428A - プローブ担体を用いた標的物質の検出方法および装置 - Google Patents

プローブ担体を用いた標的物質の検出方法および装置 Download PDF

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JP2007178428A JP2006326061A JP2006326061A JP2007178428A JP 2007178428 A JP2007178428 A JP 2007178428A JP 2006326061 A JP2006326061 A JP 2006326061A JP 2006326061 A JP2006326061 A JP 2006326061A JP 2007178428 A JP2007178428 A JP 2007178428A
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Abstract

【課題】DNAマイクロアレイのような平坦な基板から成るプローブ担体を用いて、高精度且つ短時間に標的物質の検出が可能な検出方法および装置を提供する。
【解決手段】担体上の所定の位置に存在する酵素を発光反応により検出する酵素検出装置であって、担体を載置するための載置台と、載置台に載置された担体上の所定の位置に、且つ局所的に前記酵素との発光反応に寄与する物質を付与するための吐出手段と、前記物質の付与によって発光した発光シグナル検出する検出手段と、を有する。担体上の所定の位置に存在する酵素を発光反応により検出する酵素検出方法であって、担体上の所定の位置に、且つ局所的に前記酵素との発光反応に寄与する物質の微量液滴を付与する工程と、前記物質が付与されるタイミングに基づいて、前記プローブ担体上の発光シグナルを検出する工程と、を有する。
【選択図】図1

Description

本発明は、DNAマイクロアレイ等の標的物質と特異的に結合可能なプローブが担体上に固定されたプローブ担体を用いた標的物質の検出方法およびそれに用いる装置に関する。
感染症の診断や、がん細胞の発見などのための、DNAマイクロアレイ等のプローブアレイを用いた検出方法が知られている。この方法は、血液や便などの検体から標的となるDNAを抽出し、プローブアレイと反応させることで、反応したプローブからその標的DNAを特定する方法である。従来は、この反応の有無の検出に、標的核酸に蛍光標識を結合させる方法が利用されていた。(特許文献1を参照)
また、生体試料の高感度検出方法として化学発光法が知られている。化学発光反応を用いて生体試料を検出する方法は、従来イムノアッセイにおいて用いられている。イムノアッセイでは、まず抗原抗体反応を用いて標的物質を含む複合体を形成する。次に、検出マーカーとなる物質を複合体に標識し、発光反応を行うことにより発光検出を行う。
化学発光を様々な検出に利用する試みは、従来からも行われている。特許文献2には、フローセルに接続する被測定液流路の複数の箇所に、化学発光試薬混合器から分岐する流路が夫々接続していることを特徴とする化学発光法による液体蛍光分析装置が開示されている。
また、特許文献3には、マイクロウエルプレート上での化学発光検出を実現するためにの発光検出装置が開示されている。この装置は、マイクロアレイプレートを保持する保持手段と、マイクロアレイプレートに形成された微小ウエルの間隔と同じ間隔で先端を微小ウエルに挿入可能な複数の光伝導ガイドと、を有する。この装置は更に、光伝導ガイドと組み合わされて個々の微小ウエルに発光反応の基質溶液を導入するための基質溶液注入手段を有する。
特開平11−187900号公報 特開平7−190937号公報 国際公開WO2003/31952号パンフレット
蛍光標識法よりも検出感度が高くなると期待できる化学発光法をDNAマイクロアレイに適用しようとする試みは、上記のWO2003/31952号にて為されている。しかし、ここに開示されているのは従来のDNAマイクロアレイのような平坦な基板を用いて、化学発光検出を行う方法ではない。基板上に微小なウエルを設け、該ウエルに試薬を注入するキャピラリーと、発光を検出する光伝導ガイドが一体化された発光検知ユニットを複数のウエルにそれぞれ個別に挿入する構成である。このため、アレイ基板および検出装置を複雑な構成とする必要があった。また、ウエル中に液体を供給する構成であるため、ウエルの厚さ分の光拡散によるバックグラウンド発光が生じる。さらに、ウエル内における発光試薬の拡散が生じるため、反応時間にばらつきが生じ、更に、ウエル毎に光伝導ガイドを設置して発光検出を行う構成であるため、検出に時間を要する。
また、平坦なマイクロアレイに形成したプローブ担体上に発光試薬を滴下した場合、プローブ担体領域以外にも発光試薬が拡散するため、プローブ担体上の発光シグナルを正しく測定できないという問題がある。
本発明は、上記の課題に鑑み、従来の平坦なマイクロアレイを用いることができ、且つ従来法より高精度且つ短時間に検出を行うことのできる方法および装置を提供することを課題とする。
上記の課題を解決するために、本発明に係る標的物質の検出方法は、
標的物質と特異的に結合可能なプローブの複数が担体表面の異なる位置に固定されたプローブ担体を用いて、発光反応により標的物質を検出するための検出方法であって、
前記プローブ担体上のプローブが固定されている複数の位置に、発光反応に寄与する反応寄与物質を含む液体を微小液滴として順次吐出して、前記担体表面に複数の液滴を形成する工程と、
前記液体が吐出されたタイミングに基づいて、前記液体が付与された複数のプローブ位置の発光シグナルを検出する工程と、を有することを特徴とする。
また、本発明に係る検出装置は、
標的物質と特異的に結合可能なプローブの複数が担体表面の異なる位置に固定されたプローブ担体を用いて、発光反応により標的物質を検出するための検出装置であって、
前記プローブ担体のプローブが固定されている複数の位置に対して、発光反応に寄与する反応寄与物質を含む微小液滴を吐出する手段と、
前記吐出されたプローブ位置の発光シグナルを検出する手段と、
を有することを特徴とする。
本発明によれば、発光反応に寄与する反応寄与物質を含む試薬を平坦な基板上に形成したプローブ担体上に微小液滴として順次吐出することにより、プローブ担体上に発光試薬から成る微小液滴が形成される。そして、液滴が吐出されるタイミングに基づき各プローブ担体における発光シグナルを検出することにより、プローブ担体表面における発光シグナルの検出時間を個別に制御することができる。また、微小液滴が担体上で形成されるので、反応場の極小化が可能になり、発光試薬の拡散が生じることが無いため、反応時間も短く、発光シグナルのばらつきも少ない。さらに、エリアセンサを用いてプローブ担体毎の発光シグナルを一括検出することにより、検出時間の短縮が可能となる。これにより、DNAマイクロアレイ等の平坦な基板から成るプローブ担体を用いて、高精度且つ短時間に標的物質の検出を行うことが可能となった。
本発明の標的物質の検出装置の一形態につき、図1を用いて説明するが、本発明はこれによって限定されるものではない。
発光反応としては、発光により検出することができる反応であればよく、例として酵素を用いた化学発光反応や生物発光反応を挙げることができる。
担体1には、DNA等の核酸や抗原などの第1の生体物質(検出対象としての試料)と、標識酵素を有し、かつ第1の生体物質に対して特異的に結合し得る第2の生体物質との複合体が固定されている。この複合体は、担体1のスポット2内に固定された第1の生体物質に第2の生体物質を反応させることにより得ることができる。第2の生体物質が既知のものであれば、これと特異的に結合する第1の生体物質を特定可能となる。第1の生体物質と第2の生体物質との結合は、核酸であれば相補配列間のハイブリダイゼーションであり、抗原抗体であれば抗原抗体反応による結合である。なお、担体1に固定される複合体の構成は、標識酵素を利用して第1の生体物質と第2の生体物質を含む複合体を検出し得るものであれば、上記の例に限定されず、用いる検出方法の種類によって異なる。
担体としてはプローブが固定されている表面が平坦である構成が好ましく、通常平板担体が用いられる。
この装置は、担体1を載置するための載置台3を有する。担体は載置台に着脱可能に固定される。
酵素との発光反応に寄与する物質(発光反応寄与物質)を担体上に付与する微小液滴を吐出する吐出手段は、発光反応寄与物質を収容するタンク4と、発光寄与物質をインジェクション機能により担体上にスポットするヘッド5を有する。ヘッドには、発光反応寄与物質を吐出する吐出ノズル7、発光反応寄与物質をタンクから吐出ノズルへ導く流路6が備わる。
微小液滴吐出手段は、発光寄与物質の付与量および付与時間(タイミングを含む)を制御可能であることが好ましい。インクジェットヘッドは、微小量の発光寄与物質を、短時間で付与することが可能であり、発光寄与物質の付与量および付与時間を容易に制御可能である。従って、ヘッド5としてインクジェットヘッドを用いることが好ましい。また、図示しないが、吐出手段は、ヘッド5を担体表面に対して2次元方向に移動する移動手段を有している。ただし、相対的な移動が実現できれば、ヘッド5は固定し、載置する載置台3を移動させる構成でもよく、両者が移動する構成としてもよい。
インクジェット記録装置では、記録ヘッドからインクを吐出させて記録を行うために非接触で印字が可能であり、このために非常に安定した記録画像を得ることができる。この機能を利用して、発光寄与物質を含む微小液滴を位置精度よく担体表面に配置することができる。
吐出手段としては、微小液滴を所望の位置に、所望の量で、且つ所定のタイミングで、局所的に付与することができる手段であればどのような構成であっても構わない。従って、インクジェットヘッドの他に、例えば、ピンスポッターなども利用可能である。インクジェットヘッドとしては、プリンターなどの画像形成に用いられる公知のインクジェットヘッドを適宜利用することができる。インクジェット方式としては、ピエゾ(圧電)素子の駆動によりヘッド内の液体に吐出エネルギーを付与する方式や、熱エネルギーを付与するバブルジェット(登録商標)方式が挙げられ、いずれも使用可能である。
本発明において微小液滴とは、発光寄与物質である、化学発光試薬、化学発光反応における基質、および化学発光反応における増感試薬の少なくとも一つをプローブ担体上に局所的に滴下する液滴を言う。熱エネルギーを用いる方式およびピエゾ素子を用いる方式を用いて吐出量の制御が可能な液体の量は、2〜50ピコリットル程度であるため、これらは微量物質をプローブ担体上に局所的に付与する手段として極めて有効である。
図1に示す装置では、複数(ここでは3つ)のタンク4が存在し、それぞれのタンクに対応して流路6およびノズル7が設けられており、それぞれのタンクから独立に発光反応寄与物質を吐出可能となっている。この構成により例えば発光試薬、基質および増感剤をそれぞれ独立にタンクに収容しておき、それぞれ独立に担体に付与することができる。この形態はインクジェット方式に好適である。
一方、図2に示す装置では、複数(ここでは3つ)のタンクからの発光反応寄与物質をそれぞれのタンクに連通する複数の流路6から混合槽9に導いて混合し、混合された発光反応寄与物質を一つの吐出ノズル7から吐出するように構成される。この構成により、例えば発光試薬、基質および増感剤をそれぞれ独立にタンクに収容しておき、これらの混合液を一つの吐出ノズルから吐出することができる。この形態はインクジェット方式に好適である。
またこの装置は、発光反応により生じた発光シグナル検出する検出手段8を有する。さらに検出手段が、該液滴が吐出されたタイミングに基いて、該液体が付与されたプローブ位置の発光シグナルを検出する手段であることが好ましく、前記液体を吐出すると同時であるかまたは直後からの担体上の付与した位置における発光シグナルを検出可能な構成であるとより好ましい。
化学発光試薬等の発光反応寄与物質を付与した直後の発光量を容易に検出できるように、担体は石英ガラスなどの透明基板とし、検出手段を基板の裏面側(発光反応寄与物質が付与される側を表面側とする)から発光シグナル検出する位置に配することが好ましい。この場合、載置台は、裏面側からの受光を可能とする構成とする。例えば載置台の少なくともスポット2からの発光を載置台の裏面側に透過させる部分を透明にすることで、裏面側からの受光が可能となる。検出手段としては光電子増倍管を用いて発光量を検出する手段、または基板上にCCD、CMOS等のセンサを設けた検出手段等が利用可能である。
発光反応は化学発光反応もしくは生物発光反応とすることができる。発光寄与物質としては、検出に利用する化学発光反応系に応じて、化学発光試薬、化学発光反応における基質、および化学発光反応における増感試薬の少なくとも一つを用いることができる。あるいは、検出に利用する化学発光反応系に応じて、発光寄与物質として、生物発光試薬、生物発光反応における基質、および生物発光反応における増感試薬の少なくとも一つを用いることができる。
化学もしくは生物発光試薬として、化学もしくは生物発光に用いられる公知の試薬を適宜用いることができる。例えばルミノール、イソルミノール、ルシフェリンを用いることができる。化学もしくは生物発光反応における基質として、化学もしくは生物発光に用いられる公知の基質を適宜用いることができる。例えば、過酸化水素を用いることができる。化学もしくは生物発光反応における増感剤として、化学もしくは生物発光に用いられる公知の増感剤を適宜用いることができる。例えば、p−ヨードフェノールを用いることができる。
発光寄与物質は、適宜溶媒に溶解させて用いることができる。
酵素としては、化学もしくは生物発光反応に関して触媒となる公知の酵素を適宜用いることができる。例えば、西洋わさびペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、ルシフェラーゼを用いることができる。
以上説明したように、本発明によれば、スポット(プローブの固定領域)上のみに発光反応寄与物質を添加することができ、基板上に非特異的に吸着した酵素が検出されることを防止することができる。より具体的には、発光反応寄与物質を収容するタンクと発光反応寄与物質の液滴を吐出するノズルを有するヘッドを装置に設け、発光反応寄与物質の液滴を担体上に付与することにより、担体上のスポット領域のみに試薬を局所的に添加することが可能となる。さらに、発光反応寄与物質の付与量および付与時間を制御することにより、例えば超微量の発光反応寄与物質を局所的にスポット上に滴下することにより、発光量の再現性を高めることができる。
本発明を利用すれば、発光反応を用いた生体試料検査を微量かつ正確に行うことが可能となる。
また、本発明の検出法では、基板上のスポット領域以外に非特異的に吸着した酵素は、発光反応寄与物質が付与されないので検出に影響を及ぼさない。このため、バックグラウンド(プローブ位置以外からの非特異的な発光)の発光量が増加することはない。特開平07−190937号公報記載のフローインジェクション法を用いてスポットに添加する装置では、フローインジェクターを装置に取り付けることにより化学発光試薬と化学発光反応における基質および化学発光反応における増感試薬を基板上に添加する。この方法では基板全体に試薬が適下されるため、スポット領域以外に非特異的に吸着した酵素も発光反応を起こし、バックグラウンド化学発光が大きくなり化学発光のS/N比が悪くなることがあった。また、フローインジェクション法においては、複数の化学発光試薬を同時に添加するため、発光反応時間の制御が困難であり、発光量の再現性にばらつきが生じることがあった。
本発明の方法を用いることにより、基板上に非特異的に吸着した酵素を検出することを防止でき、発光反応を用いた酵素検出においてS/N比を向上させることのできる好適なプローブ担体を用いた標的物質の検出方法および装置を提供することができる。
(標的物質の検出方法)
次に、本発明に係る標的物質の検出方法についてより詳細に説明する。本実施形態の検出方法は、以下の工程を有する。
(1)標的物質をプローブ担体上のプローブと反応させる工程。
(2)前記プローブ担体上のプローブが固定されている位置に、発光反応に寄与する反応寄与物質を含む液滴を担体上に形成する工程。
(3)前記プローブが固定されている位置の発光シグナルを検出する工程。
各工程を以下に詳細に説明する。
(1)標的物質をプローブ担体上のプローブと反応させる工程
プローブ担体に発光反応に寄与する反応寄与物質を含む液滴を担体上に形成する工程に先立ち、標的物質をプローブ担体上のプローブと反応させる。本発明に利用できるプローブ担体に関しては、既に述べた。本形態では、標的物質がDNAである場合について説明する。本工程では、血液や便などの検体から抽出した標的DNAをプローブ担体と反応させる。反応に際し、検体からの標的DNAの抽出、増幅、プローブ担体との反応(ハイブリダイゼーション反応)の処理条件等は従来法(例えば、特開平11−187900号公報に記載)に従えばよい。
ただし、後の化学発光検出を可能とする標識を標的核酸に結合させておくことが好ましい。例えばビオチン等の酵素を標的核酸に結合させておくことや、サンドイッチアッセイ用の酵素標識プローブを標的核酸にハイブリダイゼーション反応で結合させる方法が挙げられる。
上記の反応工程の後、担体上のプローブと反応しなかったDNA等を担体から除去するために洗浄するとよい。ただし、従来の蛍光検出のように、スポットの周囲からの発光は観察されないので、従来のようなブロッキング処理等の作業は不要である。
(2)プローブ担体上のプローブが固定されている位置に、発光反応に寄与する反応寄与物質を含む液滴を担体上に形成する工程
次に、アレイ上のプローブが固定されている位置(スポット位置)に、発光寄与物質を含む液滴を吐出し、スポット位置に液滴を形成する。各々のスポットに発光試薬が吐出されるタイミング、および量は、それぞれ個別に制御されていても構わないが、同時に吐出されるか、または順次に所定の時間間隔で、且つ同量を吐出することがより好ましい。
上記(1)の工程で標的物質が反応したプローブ固定位置においては、反応寄与物質によって反応が生じ、発光シグナルが観測される。吐出手段は、担体に向かって試薬を液滴として吐出するものである。これにより、担体表面に試薬を含む液滴が形成される。担体表面での液滴形成は、液滴の吐出速度、液体の組成(粘度、表面張力)、担体の表面状態を考慮し、担体上に液滴として保持されるように調整することで可能となる。
更に、液滴を担体上に形成する工程は、
プローブ担体上のプローブが固定されている位置に、発光試薬を含む液滴を吐出する第1の工程と、
プローブ担体上のプローブが固定されている位置に、発光反応における基質を含む液滴を吐出する第2の工程と、
プローブ担体上のプローブが固定されている位置に、発光反応における増感試薬を含む液滴を吐出する第3の工程と、
の少なくとも1つの工程を有するとよい。
検出に用いる発光反応系に応じて、上記の第1〜第3の工程を全てを用いる場合や、それらのうちの2つの工程を用いる場合がある。また、複数の工程を行う場合は、工程の順番は適宜変更可能である。中でも、上記の第1〜第3の工程を全て行う場合が好ましい。
または、発光反応に寄与する反応寄与物質を含む液滴を吐出する前に、前記発光試薬、発光反応における基質および発光反応における増感試薬の中から選択される少なくとも2つ以上を混合して、この混合物を吐出してもよい。
(4)発光シグナルを検出する工程
上記(3)の工程において、スポット位置に発光寄与物質、例えば発光試薬が吐出されることで、発光反応が開始される。この反応は、用いる試薬によって急峻であったり、緩慢であったりするが、一般的には図3(a)のシグナルの時間変化に示されるように急峻(数マイクロ秒内で反応が終了する)な反応を示す。また、発光用試薬の吐出により発光反応が開始されない場合、つまり標的物質が存在しない場合のシグナルの変化を(b)に示す。この変化の差異を検出することで、従来の蛍光法よりも高感度な検出(存在有無および定量分析)が可能となる。
複数のプローブ位置に同じ発光寄与物質を順次吐出し、その吐出のタイミングに応じて発光シグナルを観測することが好ましい。すなわち、反応の開始時間が吐出のタイミングによって制御され、検出するタイミングもこれに同期することもできる。よって、たとえば図1に示すようなヘッド走査型の吐出を行う方法であれば、その検出手段も吐出手段に追随して走査型とすることができ、より簡便な検出が可能となる。
また、CCDやCMOSから成るエリアセンサを用いて、全てのプローブが固定されている領域全体を経時的にモニターしてもよい。その場合は、吐出のタイミングの情報と検出される結果とが対応付けられたデータとして出力する構成であることが好ましい。
以下に実施例を用いてより詳細に説明する。
図1に示す構成を有する装置を用いて酵素検出を行った。
〔実施例1〕
(1)担体作成
1インチ×3インチ(25.4mm×76.2mm)、厚さ1mmのガラス石英担体を準備した。石英ガラス担体を水で軽く洗浄した後、担体洗浄専用液に浸し20分間超音波洗浄を行った後、一昼夜そのまま放置した。担体を取り出し、水及び超純水にて洗浄液を洗い流した後、60℃にあらかじめ加熱した1M(mol/l)のNaOH水溶液に20分間浸した。担体を取り出し、水及び超純水でNaOH水溶液を洗い流し、超純水中で20分間超音波洗浄を行なった。
続いて、あらかじめ1質量%の濃度となるように水に溶解し、約1時間加水分解したシランカップリング剤(信越化学工業社製、商品名:KBM603)に担体を1時間浸した。超純水にて軽く洗浄した後、表面に残った水滴を窒素ガスにて飛ばし乾燥させ、120℃のオーブンにて2時間ベークした。このシランカップリング剤をガラス表面に結合させたことでガラス表面にアミノ基が導入されたことになる。
続いて、同仁化学社製の架橋剤であるEMCS(商品名。N−(6−Maleimidocaproyloxy)succinimide)を混合溶媒(エタノール:ジメチルスルホキシド=1:1(体積ベース))に10mlあたり3mgの割合で溶解させた。得られたEMCS溶液に先にベークしたガラス担体を浸し、2時間放置した。EMCS溶液より担体を出し、先程と同じ混合溶媒にて軽く洗浄を行なった後、表面の液滴をエタノールに置換し、窒素ガスにて液滴を飛ばし乾燥した。これによりEMCSが担体全面(両面)に結合された担体(EMCS担体)を得た。EMCSはスクシイミド基とマレイミド基を有し、スクシイミド基が担体表面のアミノ基と結合するため、担体表面にはマレイミド基が導入されたことになる。
(2)DNA結合
末端にチオール基(SH基)を結合させた25merの修飾DNA(プローブ)を、株式会社ベックスに依頼して合成した。塩基配列は下記に示す配列で、5'末端にSH基を結合させた。
(配列) 5'HS−CGTACGATCGATGTAGCTAGCATGC 3'
プローブ固相化の方法は、特開平11−187900号公報の実施例に従った。
(3)ハイブリダイゼーション
担体に結合させたDNAと相補的な配列を持つ、25merのビオチン標識DNAを株式会社ベックスに依頼して合成した。ビオチン標識DNAを1M NaCl/50mMリン酸緩衝液(pH7.0)に最終濃度1μMとなるように溶解し、得られた溶液2mlを担体とともにハイブリパックに封入し、ハイブリダイゼーション反応を3時間行なった。その後、担体を1M NaCl/50mMリン酸緩衝液(pH7.0)溶液にて洗い流した。
(4)酵素標識
ストレプトアビジン結合西洋わさび由来ペルオキシダーゼを1M NaCl/50mMリン酸緩衝液(pH7.0)に最終濃度1μMとなるように溶解し、得られた溶液2mlを担体上に滴下し室温で1時間インキュベーションを行うことにより、アビジン−ビオチン結合を用いた酵素標識を行った。その後、担体を1M NaCl/50mMリン酸緩衝液(pH7.0)溶液にて洗い流し、測定対象である担体1を得た。
(5)化学発光反応
三つの溶液タンク4に、5.0×10-2Mルミノール(和光純薬製)、1.0×10-2M過酸化水素溶液、5.0×10-2Mのp−ヨードフェノール溶液をそれぞれ入れた、ルミノールは水酸化ナトリウム水溶液を用いてアルカリ条件で溶解した後、3−(N−モルホリノ)プロパンスルホン酸(MOPS)緩衝液を用いてpH7.2に調製した。p−ヨードフェノール溶液に関してもMOPS緩衝液を用いてpHを7.2に調製した。化学発光試薬の吐出は、試作のインクジェットヘッドを用いて行った。
用いたインクジェットヘッドは、吐出オリフィス、該吐出オリフィスに連通した液体を収容する液室、および該液室内に設けられた液体に吐出エネルギーを付与する発熱部、を有する担体からなる。担体内の発熱部に電気信号が加わると、ここに接している液体に気泡が発生し、その圧力で吐出オリフィスから液滴が吐出し、固層表面に向かって飛翔する。このような構造を備えたヘッドを用いて吐出可能な液体の量は、2〜50ピコリットル程度に制御することが可能である。
なお、市販のインクジェットプリンターを改造してもよい。例えば、バブルジェットプリンター(商品名:BJF−850、キヤノン(株)社製)を平板へのインクジェット印刷が可能なように改造を施し、所定のファイル作成方法に従って印字パターンを入力することにより、約5plの試薬液滴を、約120μmピッチで吐出することが可能となる。
そして、試薬をインクジェットプリンター用インクタンクに充填し、印字ヘッドに装着する。続いて、この改造インクジェットプリンターを用いて、ガラス担体表面に試薬の吐出操作を行えばよい。
(6)化学発光検出
図1に示すように、担体1を設置したステージ(載置台)3の下に検出器8を固定し、化学発光試薬を担体上に滴下した直後からの発光量を検出した。検出器は浜松ホトニクス株式会社製の高解像度デジタルB/W冷却CCDカメラであるORCA II−ER−1394(商品名)を使用した。CCDカメラの露出時間は10秒とした。その結果、スポット当りの化学発光強度100およびS/N比20の発光量が得られた。また、5回測定における化学発光強度の平均値に対する3σ(σは標準偏差)は0.047となり、化学発光強度の再現性が非常に高いことが明らかとなった。
〔実施例2〕
5.0×10-2Mルミノールに替えて5.0×10-2Mイソルミノール(和光純薬製)を用いたこと以外は実施例1と同様の試験を行ったところ、実施例1と同様の結果が得られた。
〔実施例3〕
ストレプトアビジン結合西洋わさび由来ペルオキシダーゼに替えてストレプトアビジン結合アルカリホスファターゼを用いたこと以外は実施例1と同様の試験を行ったところ、ストレプトアビジン結合アルカリホスファターゼも本発明において好適に用いることができることが確認できた。
〔実施例4〕
ストレプトアビジン結合西洋わさび由来ペルオキシダーゼに替えてストレプトアビジン結合ルシフェラーゼを用いたことおよび発光試薬としてキッコーマン株式会社製の発光試薬キットであるインテライトAB(商品名)を用いたこと以外は実施例1と同様の試験を行ったところ、これら酵素及び発光試薬も本発明において好適に用いることができることが確認できた。
〔実施例5〕
(1)担体作成
1インチ×3インチ(25.4mm×76.2mm)、厚さ1mmのガラス石英担体を準備した。石英ガラス担体を水で軽く洗浄した後、担体洗浄専用液に浸し20分間超音波洗浄を行った後、一昼夜そのまま放置した。担体を取り出し、水及び超純水にて洗浄液を洗い流した後、60℃にあらかじめ加熱した1MのNaOH水溶液に20分間浸した。担体を取り出し、水及び超純水でNaOH水溶液を洗い流し、超純水中で20分間超音波洗浄を行なった。
(2)抗原抗体複合体の形成
ウサギIgG試料溶液(5.0mg/ml)2μlを担体上に滴下し、担体を室温で完全に乾燥した。リン酸緩衝生理食塩水(PBS、pH7.0)で担体を3回洗浄した後、ブロッキング剤として3質量%のBSA(牛血清アルブミン)溶液を加え、37℃で2時間インキュベートを行った。PBSで3回洗浄した後、ペルオキシダーゼ結合ヤギ抗ウサギIgG抗体溶液(5.0mg/ml)5μlをウサギIgGのスポット上に滴下し、37℃で1時間インキュベートを行った。
(化学発光反応および化学発光検出)
実施例1の(5)、(6)と同様に化学発光反応および化学発光検出を行った。その結果、スポット当りの化学発光強度140およびS/N比25の発光量が得られた。また、5回測定における化学発光強度の平均値に対する3σは0.076となり、化学発光強度の再現性が非常に高いことが明らかとなった。
以上の結果は、DNAプローブまたはタンパクを固定化したスポット領域のみに化学発光試薬を滴下した場合でも検出に十分な発光量が得られることを示しており、担体上にウエルなどの反応槽を形成しなくても、反応場の極小化により、平面担体上での化学発光検出が可能なことを示している。
本発明の酵素検出装置の例を示す模式図である。 本発明の酵素検出装置の別の例を示す模式図である。 化学発光反応時の発光シグナルの経時変化を模式的に示す図である。
符号の説明
1 担体
2 スポット
3 ステージ(載置台)
4 タンク
5 ヘッド
6 流路
7 吐出ノズル
8 受光手段
9 混合槽

Claims (15)

  1. 標的物質と特異的に結合可能なプローブの複数が担体表面の異なる位置に固定されたプローブ担体を用いて、発光反応により標的物質を検出するための検出方法であって、
    前記プローブ担体上のプローブが固定されている複数の位置に、発光反応に寄与する反応寄与物質を含む液体を微小液滴として順次吐出して、前記担体表面に複数の微小液滴を形成する工程と、前記液体が吐出されたタイミングに基づいて、前記液体が付与された複数のプローブ位置の発光シグナルを検出する工程と、を有することを特徴とする検出方法。
  2. 前記液体の吐出が、
    前記液滴を吐出するための吐出ノズルと、前記プローブ担体との相対的な移動により前記プローブが固定された位置の複数に対して一つのノズルから順次に吐出される請求項1に記載の検出方法。
  3. 前記プローブ担体が、前記複数のプローブが固定されている平坦な面を有する請求項1に記載の検出方法。
  4. 前記発光反応が、酵素を用いた発光反応である請求項1に記載の検出方法。
  5. 前記担体表面に液滴を形成する工程は、
    前記プローブ担体上のプローブが固定されている位置に、発光試薬を含む液滴を吐出する第1の工程と、
    前記プローブ担体上のプローブが固定されている位置に、発光反応における基質を含む液滴を吐出する第2の工程と、
    前記プローブ担体上のプローブが固定されている位置に、発光反応における増感試薬を含む液滴を吐出する第3の工程と、
    の少なくとも1つの工程を有する
    請求項1に記載の検出方法。
  6. 発光試薬、発光反応における基質および発光反応における増感試薬の中から選択される少なくとも2つ以上を混合し、該混合物を含む液滴を吐出する請求項1に記載の検出方法。
  7. 前記発光反応が、化学発光反応または生物発光反応である請求項1に記載の検出方法。
  8. 前記プローブが、核酸であるか、もしくは抗原及び抗体のいずれか一方である請求項1に記載の検出方法。
  9. 前記吐出のタイミングと同時または直後から、担体上の付与した位置における発光シグナルを検出する請求項1に記載の検出方法。
  10. 標的物質と特異的に結合可能なプローブの複数が担体表面の異なる位置に固定されたプローブ担体を用いて、発光反応により標的物質を検出するための検出装置であって、
    前記プローブ担体のプローブが固定されている複数の位置に対して、発光反応に寄与する反応寄与物質を含む微小液滴を吐出する吐出手段と、
    該液滴が吐出されたタイミングに基いて、該液体が付与されたプローブ位置の発光シグナルを検出する検出手段と、
    を有することを特徴とする検出装置。
  11. 前記吐出手段が、液体の付与量および付与時間を制御可能な請求項10に記載の装置。
  12. 前記吐出手段が、前記液体を吐出するための吐出ノズルを備えるヘッドと、前記液体を収容するタンクとを備える請求項10に記載の装置。
  13. 前記吐出手段が、前記タンクを複数備え、かつ、該複数のタンクからの複数の前記反応寄与物質を混合するための混合槽を有する請求項10に記載の装置。
  14. 前記検出する手段が、前記液体を吐出すると同時であるかまたはその直後からの担体上の前記微小液滴付与位置における発光シグナルを検出可能な請求項10に記載の装置。
  15. 前記プローブ担体の担体が透明であり、前記検出手段が該担体の前記反応寄与物質が付与された側とは反対側から前記発光シグナルを検出可能な構造を有する請求項10に記載の装置。
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