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JP2007009895A - 内燃機関の特性パラメータ計測方法 - Google Patents

内燃機関の特性パラメータ計測方法 Download PDF

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JP2007009895A JP2005305417A JP2005305417A JP2007009895A JP 2007009895 A JP2007009895 A JP 2007009895A JP 2005305417 A JP2005305417 A JP 2005305417A JP 2005305417 A JP2005305417 A JP 2005305417A JP 2007009895 A JP2007009895 A JP 2007009895A
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智 渡辺
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功 小林
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Abstract

【課題】 計測工数を少なく抑えつつ各計測点において実際に計測を行って比較的信頼性の高い特性パラメータの計測値を得ることができる特性パラメータの計測方法を提供する。
【解決手段】 内燃機関の制御パラメータの値を変化させることで内燃機関を過渡運転させつつ、制御パラメータの値の変化に伴って変化し得る少なくとも一つの特性パラメータの値を計測し、検出された過渡運転中における特性パラメータの値を定常運転中における特性パラメータの値として取得する特性パラメータ計測方法において、過渡運転中においては、計測される特性パラメータのうちの少なくとも一つの特性パラメータの値又はその変化速度が所定範囲内に収まるように制御パラメータの値の変化速度を調整するようにした。
【選択図】 図2

Description

本発明は、内燃機関の特性パラメータ計測方法に関する。
一般に、内燃機関の制御は、トルク、エミッション及び燃費等についての要求を満たすようにスロットル開度、点火時期、吸気弁又は排気弁の開閉弁特性、燃料噴射量等の制御パラメータの値を変化させることによって行われる。斯かる制御パラメータには、そのときの機関運転状態(例えば、機関負荷及び機関回転数等)毎に最適な値が存在する。このような機関運転状態毎の制御パラメータの最適な値は、一般に、各機関運転状態毎に制御パラメータを様々な値に設定し、そのときのトルク、燃料消費量又はNOX排出量等の特性パラメータの計測値から、制御パラメータの最適な値を求める作業、いわゆる適合作業によって求められる。
斯かる適合作業においては、定常運転時における特性パラメータの値を計測する必要があることから、各計測点毎に機関運転状態が安定するまで待ってから、例えばトルク、吸気管内圧力等がほぼ一定の値に収束するまで待ってから計測が行われる。このため、各計測点において特性パラメータの計測値を得るまでに時間がかかる。また、適合精度を高いものとするためには、多くの計測点において計測が必要であり、場合によっては計測点数が数千〜数十万点にも及ぶ。このため、適合作業全体の計測工数は膨大なものとなる。
そこで、各計測点間の間隔を広げ、すなわち各計測点間の制御パラメータの値の差を大きくして、計測点数を低減すると共に、特性パラメータの計測値に基づいてモデル式を求め、斯かるモデル式に基づいて各制御パラメータの値に対する特性パラメータの値を推定することが提案されている(特許文献1)。これにより、計測工数を低減させることができる。
特開2002−206456号公報 特開2004−68729号公報
しかしながら、こうして推定される特性パラメータの値は、計測点間については、モデル式を用いたとしてもあくまで推定された値であるため、その信頼性はそれほど高いものではない。よって、特性パラメータの値の信頼性を高いものとするためには、各測定点において実際に計測を行って値を求める必要がある。
従って、本発明の目的は、計測工数を少なく抑えつつ各計測点において実際に計測を行って比較的信頼性の高い特性パラメータの計測値を得ることができる特性パラメータの計測方法を提供することにある。
上記課題を解決するために、第1の発明では、内燃機関の制御パラメータの値を変化させることで内燃機関を過渡運転させつつ、制御パラメータの値の変化に伴って変化し得る少なくとも一つの特性パラメータの値を計測し、計測された過渡運転中における特性パラメータの値を定常運転中における特性パラメータの値として取得する特性パラメータ計測方法において、上記過渡運転中においては、計測される特性パラメータのうちの少なくとも一つの特性パラメータの値又はその変化速度が所定範囲内に収まるように制御パラメータの値の変化速度を調整するようにした。
第1の発明によれば、内燃機関の過渡運転中に特性パラメータの値の計測が行われるため、各計測点について内燃機関が定常運転を行うまで待ってから計測を行う場合に比べて計測工数を低減できる。また、特性パラメータの値又はその変化速度が所定範囲内に収まるように制御パラメータの変化速度が調整されるため、過渡運転中に特性パラメータの値の計測を行ったとしても、計測値を比較的高い信頼性で定常運転中における特性パラメータの値として利用することができる。
なお、制御パラメータとは、内燃機関の運転状態に影響を与える制御可能なパラメータであり、例えば、充填効率、スロットル開度、点火時期、機関回転数、吸気弁又は排気弁の開閉弁特性、燃料噴射量、空燃比等が挙げられる。一方、特性パラメータとは、上記制御パラメータを変更することによりその値が変わり得るパラメータであって内燃機関の特性を表すパラメータであり、例えば、トルク、出力、機関回転数、空燃比、排気ガスの温度、排気エミッション等が挙げられる。なお、上記説明からわかるように、同じパラメータが制御パラメータ及び特性パラメータのいずれにも該当し得る。例えば、空燃比は、制御パラメータとして用いられることもあれば特性パラメータとして用いられることもあり得る。
第2の発明では、第1の発明において、検出される特性パラメータのうちの少なくとも一つの特性パラメータの値又はその変化速度が所定範囲外となった場合には、上記制御パラメータの値を変化させるのを一時的に中止させるようにした。
第3の発明では、第1の発明において、検出される特性パラメータのうちの少なくとも一つの特性パラメータの値又はその変化速度が所定範囲外となった場合には、上記制御パラメータの値の変化速度を遅くするようにした。
第4の発明では、第1〜第3のいずれか一つの発明において、検出される特性パラメータのうちの少なくとも一つの特性パラメータの値又はその変化速度が上記所定範囲よりも小さい特定範囲内にある場合には、上記制御パラメータの変化速度を速くするようにした。
第5の発明では、第1〜第4のいずれか一つの発明において、上記制御パラメータが充填効率であり、上記特性パラメータの一つが空燃比であり、上記空燃比の値が目標空燃比となるように燃料噴射量を制御すると共に上記空燃比が目標空燃比からずれても該目標空燃比を含む上記所定範囲内に収まるように制御パラメータの値の変化速度を調整するようにした。
第6の発明では、第5の発明において、上記特性パラメータの値の計測中に空燃比の値が目標空燃比となるような各充填効率の値に対する燃料噴射量を推定し、計測条件を変えて行う次回の特性パラメータの値の計測において上記推定された燃料噴射量に基づいて燃料噴射が行われる。
第7の発明では、第1〜第6のいずれか一つの発明において、少なくとも二つの特性パラメータの値を計測し、これら特性パラメータのうち一つの特性パラメータの値が目標値となるように上記制御パラメータ以外のパラメータを制御すると共に、該一つの特性パラメータの値が上記目標値からずれても該目標値を含む上記所定範囲内に収まるように制御パラメータの値の変化速度を調整し、上記一つの特性パラメータの計測値が目標値からずれた場合には、該一つの特性パラメータの計測値の上記目標値からのずれに基づいて、該一つの特性パラメータ以外の特性パラメータの計測値を補正するようにした。
第8の発明では、第7の発明において、上記一つの特性パラメータ以外の特性パラメータの計測値の補正は、上記一つの特性パラメータの計測値の目標値からのずれに基づいて補正値を算出し、該補正値を上記一つの特性パラメータ以外の特性パラメータの計測値に加算することによって行われる。
第9の発明では、第7又は第8の発明において、上記制御パラメータが充填効率であり、上記一つの特性パラメータが空燃比であり、上記一つの特性パラメータ以外の特性パラメータが出力トルクである。
本発明によれば、内燃機関の過渡運転中に特性パラメータの値の計測が行われるため計測工数を低減でき、特性パラメータの値又はその変化速度が所定範囲内に収まるように制御パラメータの変化速度が調整されるため比較的高い信頼性で特性パラメータの値を推定することができる。よって、計測工数を少なく抑えつつ各計測点において実際に計測を行って比較的信頼性の高い特性パラメータの計測値を得ることができる。
以下、図面を参照して本発明について詳細に説明する。図1は後述する適合作業の対象となる内燃機関及び当該適合作業に用いられる計測装置を示している。
図1を参照すると1は機関本体、2はシリンダブロック、3はシリンダブロック2内で往復動するピストン、4はシリンダブロック2上に固定されたシリンダヘッド、5はピストン3とシリンダヘッド4との間に形成された燃焼室、6は吸気弁、7は吸気ポート、8は排気弁、9は排気ポートをそれぞれ示す。図1に示したようにシリンダヘッド4の内壁面の中央部には点火プラグ10が配置され、シリンダヘッド4内壁面周辺部には燃料噴射弁11が配置される。またピストン3の頂面上には燃料噴射弁11の下方から点火プラグ10の下方まで延びるキャビティ12が形成されている。
各気筒の吸気ポート7はそれぞれ対応する吸気枝管13を介してサージタンク14に連結され、サージタンク14は吸気管15に連結される。吸気管15内にはステップモータ17によって駆動されるスロットル弁18が配置される。一方、各気筒の排気ポート9は排気マニホルド19に連結される。また、吸気弁6には吸気弁6の開閉弁時期等、すなわち位相角及び作用角を変更するための可変動弁機構20が取付けられている。
一般に、図1に示したような内燃機関の制御は、内燃機関の運転中に変化するトルク、排気エミッション及び燃費等についての要求を満たすように、すなわち実際のトルク、排気エミッション及び燃費等が目標トルク、目標排気エミッション及び目標燃費等となるように、内燃機関の運転状態に影響を与える制御可能なパラメータ(以下、「制御パラメータ」と称す)の値を変化させることによって行われる。
このような制御パラメータには、そのときの内燃機関に対する要求及び機関運転状態(例えば、機関負荷及び機関回転数等)毎に最適な値が存在する。例えば、点火プラグ10による点火時期については、内燃機関のトルク、燃費や失火等を考慮すると、一般に、トルクが最も大きくなるような最小進角時期、いわゆるMBT(Minimum Advance for Best Torque)付近で点火を行うのが好ましい。このMBTは、全ての機関運転状態に対して同じではなく、例えば機関回転数が異なると、MBTも異なる時期となる。また、一方で、内燃機関の排気浄化のために内燃機関の排気通路に設けられた排気浄化触媒(図示せず)を高温にする必要があるような場合には、機関本体1から排出される排気ガスの温度(以下、「排気温度」と称す)を高めるために上記MBTよりも或る程度進角側の時期に点火を行うのが好ましい。
このような内燃機関に対する要求及び機関運転状態に対する制御パラメータの最適な値は、数値計算等のみから算出することは困難であるため、通常、内燃機関の形式毎に適合作業によって求められる。ここで、適合作業とは、各機関運転状態毎に特定の制御パラメータを様々な値に設定し、各制御パラメータの値毎に特性パラメータ(制御パラメータの値を変更することによりその値が変わり得るパラメータであって内燃機関の特性を表すパラメータ)を計測し、これら特性パラメータの計測値から各機関運転状態に対する制御パラメータの最適な値を求める作業を意味する。
図1には、適合作業の対象となる内燃機関に加えて、この内燃機関の特性パラメータの計測装置が示されている。図示したように、適合作業の対象となる内燃機関に対しては、スロットル弁18の開度を計測するためのスロットル開度センサ31がスロットル弁18に取付けられ、また、吸気管15内を流れる空気の流量を計測するエアフロメータ32がスロットル弁18上流側の吸気管15内に取付けられる。さらに、機関本体1から排出された排気ガスの温度を計測する排気温度センサ33及び機関本体1から排出された排気ガスの空燃比を計測する空燃比センサ34が排気ポート又は排気マニホルド19に取付けられる。さらに、機関本体1のクランクシャフト(図示せず)には内燃機関による駆動力であるトルクを検出するためのトルクセンサ(図示せず)が取り付けられる。これらセンサ31〜34は、計測装置本体40に接続され、計測装置本体40ではこれらセンサ31〜34によって計測された各特性パラメータの値が表示、保存される。
一方、上述したスロットル弁駆動用のステップモータ17、燃料噴射弁11及び点火プラグ10は計測装置本体に接続され、これらステップモータ17等は計測装置本体40によって駆動、制御される。すなわち、計測装置本体40によって制御パラメータの値が変更される。
例えば、適合作業によって様々な機関運転状態におけるMBTを求める場合を考えると、まず、或る機関運転状態において点火時期のみを変化させた複数の計測点において各計測点毎に特性パラメータであるトルクや失火等の計測を行う。得られたトルクや失火等の計測値に基づいてその機関運転状態におけるMBTが求められる。そして、機関運転状態を僅かに変化させてから、例えば空燃比のみを僅かに変えてから再び上記方法でその制御状態におけるMBTが求められる。このような作業を、実際に運転が行われると想定される全ての機関運転状態(以下、単に「全ての機関運転状態」と称す)について行う。こうして、全ての機関運転状態におけるMBTが求められる。しかしながら、このように全ての機関運転状態において特性パラメータの値を計測するとなると、その計測点数は非常に多いものとなる。
一方、例えば、点火プラグによる点火時期を変えると、トルクや機関本体1から排出される排気温度は比較的迅速に変わるが、内燃機関内を流れる作動油の温度等は直ぐには変わらず、点火時期が変化した後或る程度時間が経過しないと作動油の温度は安定しない。このように特性パラメータの値が安定しないうちに計測を行うと、その機関運転状態における特性パラメータの正確な値を計測することができない。そこで、このような適合作業においては、通常、或る計測点における特性パラメータの値の計測は制御パラメータを変えた後或る程度時間が経過して、ほとんどの特性パラメータの値が安定してから行われる。これにより、その機関運転状態における定常運転時の特性パラメータの値が計測される。
ところが、このように各機関運転状態毎に特性パラメータの値が安定するまで待ってから計測を行うと、上述したように計測点数が非常に多いことを考えると、計測工数は膨大なものとなってしまう。
そこで、本実施形態では、各測定点において全ての特性パラメータの値が完全に安定するまで待ってからではなく、或る一つの制御パラメータの値を徐々に変化させながら、特性パラメータの値の計測が行われる。例えば、制御パラメータとして点火時期を用いた場合を考えると、点火時期以外のパラメータ(例えば、スロットル開度、吸気弁及び排気弁の開閉弁時期、機関回転数等)が変化しないように固定しつつ、点火時期を遅角側から進角側へと徐々に変化させ、各計測点における特性パラメータ、すなわちトルクや排気温度の計測を行う。すなわち、点火時期が徐々に変わる過渡運転を内燃機関が行っている状態で、特性パラメータの値の計測が行われる。
特に、このように各点火時期を変化させつつ特性パラメータの値を計測した場合、上述したようにトルク、排気温度が点火時期の変化に対して比較的迅速に変化することから、機関運転状態の安定を待たずに計測した特性パラメータの値であっても機関運転状態の安定を待って計測した特性パラメータの値とほとんど変わりがない。このため、点火時期を徐々に変化させながら特性パラメータの値を計測した場合であっても、計測された値は機関運転状態の安定を待って計測した特性パラメータの値とほぼ同一の値となる。すなわち、内燃機関が過渡運転を行っている状態で特性パラメータの計測を行っても、特性パラメータの種類によっては比較的正確に内燃機関が定常運転を行っている状態における特性パラメータの値として利用することができる。
このようなことは、点火時期のみならず他の制御パラメータの値を徐々に変化させた場合においても言える。従って、一般化して言うと、他の制御パラメータの値を固定して或る一つの制御パラメータの値を徐々に変化させながら特性パラメータの値の計測を行ったとしても、比較的正確に機関運転状態の安定を待って計測した特性パラメータの値を求めることができる。
そこで、本実施形態では、基本的に、或る一つの制御パラメータのみを徐々に変化させることで内燃機関を過渡運転させつつ計測された特性パラメータの値(以下、「過渡運転中の特性パラメータの値」と称す)を、内燃機関が定常運転を行っている状態における特性パラメータの値(以下、「定常運転中の特性パラメータの値」と称す)として取得することとしている。
ところが、上述したように制御パラメータの値を徐々に変化させつつ特性パラメータの値の計測を行うと、特性パラメータの値の時間変化率が大きくなってしまうような場合がある。斯かる事態は、制御パラメータの値の変化量に対する特性パラメータの値の変化量が大きいような場合に起こり易い。このように、或る特性パラメータが急激に変化すると、その特性パラメータが急激に変化している間におけるその特性パラメータの値及び他の特性パラメータの計測値は、機関運転状態の安定を待って計測した特性パラメータの値に対して誤差が大きいものとなり易い。
一方、制御パラメータの変化量に対して或る特性パラメータの変化量が大きいような制御領域では、制御パラメータの値が僅かにずれるとその特性パラメータの値が大きく変わってしまう。例えば、或る点火時期の領域では、点火時期を僅かに進角させると、他の点火時期の領域よりも排気温度の低下量が大きい。斯かる点火時期の領域では、目標とする排気温度によっては実際の機関運転中に精密な点火時期の制御が必要となり、そのためには制御パラメータの値に対する特性パラメータの値を正確に計測しておく必要がある。
そこで、本発明では、過渡運転中の特性パラメータの値の計測を行い、計測された特性パラメータの値を定常運転中の特性パラメータの値として取得するにあたり、計測される特性パラメータのうち少なくとも一つの特性パラメータの計測値の変化速度が所定範囲内に収まるように制御パラメータの値の変化速度を調整するようにしている。
以下に、制御パラメータとして点火時期を徐々に変化させつつ特性パラメータとして排気温度及びトルクを計測する場合を例にとって説明する。
図2は、本実施形態により計測を行った場合における点火時期、トルク、排気温度及び排気温度の変化速度のタイムチャートである。図からわかるように、本実施形態の特性パラメータの計測では、点火時期が実際の機関運転中に実行可能であると想定される範囲(例えば、点火時期においては失火やノッキング等が確実に起こると考えられる点火時期の範囲以外の範囲)内で最も遅角側の点火時期から徐々に進角側へと変化せしめられる。最も遅角側の点火時期から点火時期の進角が開始されると(図中の時刻0)、まず点火時期が徐々に進角されるのに伴って排気温度が徐々に低下すると共にトルクが徐々に上昇する(図中の時刻0〜t1)。
一般に、排気温度は点火時期の進角にほぼ比例して低下するが、斯かる排気温度の低下は点火時期の進角に対して完全に比例しているわけではない。このため、点火時期の進角速度が一定であるのに対して、排気温度の低下速度は一定ではない。図2に示した例では、時刻0〜時刻t1の間、点火時期が一定の速度で進角されているのに対して、計測された排気温度の低下速度は徐々に速くなっていく。
このように、排気温度の低下速度が速くなると、上述したように、過渡運転中の特性パラメータの計測値は、定常運転中の特性パラメータの値と異なったものになり易い。
すなわち、各特性パラメータの値は、制御パラメータの値の変化のみに依存して変化するものではなく、制御パラメータの値が変化することによる他の特性パラメータの値の変化によっても変化する。例えば、点火時期が変わると排気温度が変わり、排気温度が変わると機関排気通路内の排気浄化触媒(図示せず)の温度が変わる。ここで、排気浄化触媒には或る程度の熱容量があるため、その温度は排気温度の変化に伴って直ぐに変化するわけではなく、多少の応答遅れを伴って変化する。従って、排気温度の変化速度が遅いときに計測された排気浄化触媒の温度は定常運転中の排気浄化触媒の温度とほぼ等しい温度になっているのに対して、排気温度の変化速度が速いときに計測された排気浄化触媒の温度は定常運転中の排気浄化触媒の温度と異なった温度になり易い。
また、排気温度自体も、内燃機関内を流れる作動油温や排気ポートの熱容量等により、点火時期が変わると直ぐに排気温度が変わるわけではなく、多少の応答遅れを伴って変化する。従って、排気温度の変化速度が遅いときに計測された排気温度は定常運転中の排気温度とほぼ等しい値となっているのに対して、排気温度の変化速度が速いときに計測された排気温度は定常運転中の排気温度と異なったものとなり易い。
そこで、本実施形態では、排気温度の変化速度が或る一定の範囲を超えて速くなった場合には、点火時期を変化させるのを中止し、点火時期を固定する。図示した実施形態では、排気温度の変化速度が継続領域(すなわち、継続下限速度V1以上であって継続上限速度V1’以下)外の速度になった場合に点火時期を変化させるのを中止する(時刻t1)。これにより、排気温度の低下速度は急激に低下する。ただし、上述したように、排気温度は、点火時期の変化に対して多少の応答遅れを伴って変化しているため、点火時期を変化させるのを中止してから直ぐに排気温度の低下速度が零になるわけではない。
そして、排気温度の低下速度が再開領域(すなわち、再開下限速度V2以上であって再開上限速度V2’以下)内の速度になると、点火時期を変化させるのを再開する(時刻t2)。なお、再開領域は継続領域内の領域であり、よって再開下限速度V2は継続下限速度V1よりも高く、また再開上限速度V2’は継続上限速度V1’よりも低い。これにより、各点火時期に対応する排気温度及びその他の特性パラメータの値の計測が再開される。点火時期を変化させるのを再開するにあたっては、点火時期の低下速度は中止前の点火時期の低下速度よりも遅いものとされる。このため、点火時期を変化させるのを再開した後に排気温度の低下速度が速くなって再び継続領域外の速度となってしまうことが防止される。
これにより、排気温度の変化速度は継続領域外の速度となってしまうことが防止される。このため、過渡運転中に計測された各点火時期に対応する排気温度及び触媒温度は、定常運転中における各点火時期に対応する実際の排気温度及び触媒温度とほぼ等しいものとなる。なお、継続下限速度V1以上であって継続上限速度V1’は、排気温度の変化速度が継続領域内にあれば、過渡運転中の特性パラメータの計測値が定常運転中の特性パラメータと大きく異なる値となってしまうことがないように、予め実験的に又は計算によって定められる。
図3は、トルク、排気温度及び触媒温度等の特性パラメータの計測時における点火時期の変化速度の調整制御の制御ルーチンを示すフローチャートである。
まず、ステップ101では、排気温度の変化速度Vetが継続下限速度V1以上であって継続上限速度V1’以下の速度となっているか否かが判定される。排気温度の変化速度Vetは、排気温度センサ33の出力に基づいて算出される。排気温度の変化速度Vetが継続下限速度V1以上であって継続上限速度V1’以下の速度となっていると判定された場合には、制御ルーチンが終了せしめられ、点火時期の変化速度はそのままの速度に維持される。
一方、ステップ101において、排気温度の変化速度Vetが継続下限速度V1よりも低いかまたは継続上限速度V1’よりも高いと判定された場合には、ステップ102へと進む。ステップ102では、点火時期の変化速度Vswが零にせしめられる。次いで、ステップ103では、排気温度の変化速度Vetが再開下限速度V2以上であって再開上限速度V2’以下の速度になっているか否かが判定される。排気温度の変化速度Vetが再開下限速度V2よりも低いかまたは再開上限速度V2’よりも高いと判定された場合には、ステップ103が繰り返され、その間点火時期は固定されている。その後、排気温度の変化速度Vetが再開下限速度V2以上であって再開上限速度V2’以下の速度になると、ステップ104へと進む。ステップ104では、点火時期の変化速度Vswが、点火時期の変化が中止せしめられる前の点火時期の変化速度Vsw’から所定値αだけ低い速度とされ(Vsw=Vsw’−α)、制御ルーチンが終了せしめられる。
なお、上記実施形態では、点火時期を変化させるのを再開するにあたって、点火時期の変化速度を中止前の点火時期の変化速度よりも遅い速度としているが、中止前の点火時期の変化速度と同じ速度にしてもよい。
次に、上記第一実施形態の変更例について説明する。上記実施形態では、或る特性パラメータの変化速度が或る一定の範囲を超えて速くなった場合に、点火時期を変化させるのを一時的に中止しているが、本変更例では、点火時期を変化させるのを中止せずに点火時期の変化速度を遅くする。
図4は、本変更例により計測を行った場合における点火時期、排気温度及び排気温度の変化速度のタイムチャートである。図2に示した実施形態と同様に、最も遅角側の点火時期から点火時期の進角が開始されると(図中の時刻0)、まず点火時期が徐々に進角されるのに伴って排気温度が徐々に低下する(図中の時刻0〜t3)。このとき、点火時期の変化速度Vsw1(°/sec)は予め定められた初期速度とされる。
その後、排気温度の変化速度が或る一定の範囲を超えて速くなった場合には、点火時期の変化速度を遅くさせる。図示した例では、排気温度の低下速度が継続領域外の速度になった場合に点火時期の変化速度が予め定められた値βだけ減速せしめられ、速度Vsw2(Vsw2=Vsw1−β)とされる(時刻t3)。これにより、排気温度の低下速度が低下し、排気温度及び触媒温度等の特性パラメータを正確に計測することができるようになる。
ただし、点火時期の変化速度を遅くし過ぎると、計測時間の増大を招く。このため、排気温度の変化速度が非常に低い場合、図示した例では、排気温度の変化速度が増速領域(すなわち、増速下限速度V3以上であって再開上限速度V3’以下)内の速度となっている場合には、点火時期の変化速度が予め定められた値γだけ増速せしめられ、速度Vsw3(Vsw3=Vsw2+γ)とされる(時刻t4)。これにより、点火時期の変化速度が速くされて、計測時間が短縮せしめられる。なお、点火時期の変化速度を増速する場合の増速分γは、点火時期の変化速度を減速する場合の減速分βよりも小さい値とされる(γ<β)。
なお、上記実施形態及びその変更例では、制御パラメータとして点火時期、特性パラメータとして排気温度、トルク及び触媒温度を用いた場合について示したが、制御パラメータ及び特性パラメータとして用いられるパラメータはこれらに限られない。制御パラメータとしては、点火時期以外にも、例えば、充填効率、スロットル開度、機関回転数、吸気弁又は排気弁の開閉弁特性、燃料噴射量、空燃比等を用いることができる。一方、特性パラメータとしては、排気温度、触媒温度及びトルク以外にも、例えば、出力、機関回転数、空燃比、排気ガスの温度、排気エミッション等が挙げられる。同じことが下記の実施形態についても言える。
次に、本発明の第二実施形態について説明する。本実施形態では、制御パラメータとして充填効率を用い、特性パラメータとして空燃比を用いた場合を示す。本実施形態においても、エアフロメータ、スロットル開度センサ、スロットル弁及び燃料噴射弁も同様に計測装置本体に接続される。しかしながら、スロットル弁及び燃料噴射弁は、通常、電子制御装置(ECU)によって制御される方法と同じ方法でエアフロメータ及びスロットル開度センサ等の出力に基づいて制御される。
ところで、空燃比を一定値に固定して或る制御パラメータを変化させて空燃比以外の特性パラメータの値を計測しようとする場合、空燃比が一定値となるように何らかのパラメータを制御しなければならない。例えば空燃比を理論空燃比に固定しつつ充填効率を変化させてトルクや機関回転数を計測しようとする場合、空燃比が理論空燃比となるように燃料噴射量を制御する必要がある。
このように空燃比が目標空燃比となるように燃料噴射量を制御する場合、一般に排気通路に設けられた空燃比センサによって検出される空燃比が目標空燃比となるように燃料噴射量をフィードバック制御することによって行われる。
ところが、斯かる燃料噴射量のフィードバック制御には、或る程度の応答遅れがある。このため、例えば充填効率が変化しているような過渡運転中には、燃料噴射量の制御が遅れて実際の空燃比が目標空燃比からずれてしまうことがある。このように実際の空燃比が目標空燃比からずれているときに計測した特性パラメータの値を、空燃比を目標空燃比に固定した場合における特性パラメータの値として取得すると、実際に空燃比が目標空燃比である場合における特性パラメータの値とは異なる値となってしまう。
例えば、空燃比を理論空燃比に固定して、各気筒への充填効率を徐々に変化させて各充填効率に対するトルクを計測する場合、空燃比が理論空燃比からずれている状態で計測を行うと、計測された各充填効率に対するトルクの値は実際の値からずれたものとなってしまう。
そこで、本実施形態では、過渡運転中の特性パラメータの値の計測を行い、計測された特性パラメータの値を定常運転中の特性パラメータの値として推定するにあたり、計測される特性パラメータのうち少なくとも一つの特性パラメータの値が所定範囲内に収まるように制御パラメータの値の変化速度を調整するようにしている。
以下に、制御パラメータとして充填効率を徐々に変化させつつ特性パラメータとして空燃比及びトルクを計測する場合を例にとって説明する。
図5は、本実施形態により計測を行った場合における燃料噴射量に関するFB補正係数、空燃比及び充填効率のタイムチャートである。図示した例では、目標空燃比を理論空燃比(約14.7)として、充填効率を変化させつつトルク等を計測する場合を示している。図からわかるように、本実施形態の特性パラメータの値の計測では、充填効率がほぼ零の状態(すなわちアイドリング時における充填効率)から徐々に増大せしめられる。スロットル開度を増大することにより充填効率の増大が開始されると(図中の時刻0)、それに伴って燃料噴射量がフィードバック制御により増大せしめられ、空燃比はほぼ理論空燃比に維持される。
ところが、充填効率の増大が進むと、フィードバック制御による燃料噴射量の制御が遅れだして実際の空燃比が低下していく。このように空燃比が低下し過ぎたり、あるいは増大し過ぎたりすると、上述したように正確に計測を行うことができない。そこで、本実施形態では、計測した空燃比が継続領域(すなわち、継続下限空燃比AF1(図示した例では14.0)以上であって継続上限空燃比AF1’(図示した例では15.0)以下)外の空燃比になった場合に充填効率を変化させるのを中止する(時刻t5)。これにより、フィードバック制御の応答遅れによって理論空燃比からずれていた空燃比が理論空燃比へと戻っていく。
そして、計測された空燃比が再開領域(すなわち、再開下限空燃比AF2以上であって再開上限空燃比AF2’以下)内の空燃比になると、充填効率の変化操作を開始する(時刻t6)。これにより、各充填効率に対応するトルク等の特性パラメータの値の計測が再開される。充填効率を変化させるのを再開するにあたっては、充填効率の変化速度は中止前の充填効率の変化速度よりも遅いものとされる。このため、充填効率を変化させるのを再開した後に再び空燃比が継続領域外の空燃比となってしまうことが防止される。よって、計測中に実際の空燃比が目標空燃比から大きくずれてしまうことが防止され、効果的に計測を行うことができる。
なお、上記実施形態では、充填効率を変化させるのを再開するにあたって、充填効率の変化速度を中止前の充填効率の変化速度よりも遅い速度としているが、中止前の充填効率の変化速度と同じ速度にしてもよい。
ところで、上述したように空燃比が理論空燃比となるように燃料噴射量を制御する場合、燃料噴射量は以下のように決められている。すなわち、ECUにはエアフロメータ32によって検出された空気流量mtに対して基準となる燃料噴射量(以下、「基準燃料噴射量」と称す)Qfbaseが記憶されている。すなわち、ECUには基準燃料噴射量Qfbaseが空気流量mtに対する関数として又はマップとして記憶されている。そして、基本的には、エアフロメータ32によって検出された空気流量mtに基づいて燃料噴射弁11から噴射すべき基準燃料噴射量Qfbaseが算出され、算出された基準燃料噴射量Qfbaseが燃料噴射弁から噴射される。
しかしながら、実際には吸気管15内の脈動等の影響により上記基準燃料噴射量Qfbaseを燃料噴射弁11から噴射したとしても空燃比は目標空燃比に一致しにくいため、上述したようにフィードバック制御が行われる。具体的には、空燃比センサによって検出された実際の空燃比AFと目標空燃比AFtrgとのずれに基づいて算出されたFB補正係数Ffbに基づいて下記式(1)を用いて基準燃料噴射量Qfbaseを補正して得た補正燃料噴射量Qfが燃料噴射弁から噴射される。
Qf=Qfbase(1+Ffb) …(1)
図5に示したようにFB補正係数Ffbは計測中に空燃比センサ34に基づいて逐次変更され、一回の計測が終わると充填効率の各値に対して計測中に採用されたFB補正係数の値が求められる。すなわち、一回の計測が終わるとFB補正係数の値が充填効率の関数として求められる。そして、例えば点火時期を僅かに変更して行う次回の計測においても、実際の空燃比を理論空燃比にするために同様なFB補正係数の値により燃料噴射量の補正が行われると考えられる。
そこで、本実施形態では、二回目以降の計測において、フィードバック制御に加えて、一回目の計測により充填効率の関数として求められたFB補正係数を利用したフィードフォワード制御を用いて燃料噴射量を決定することとしている。以下、フィードフォワード制御を用いた燃料噴射量の決定について具体的に説明する。
一回目の計測において、充填効率KLの関数としてのFB補正係数Ffb(KL)に加えて、空燃比センサ34によって検出された空燃比AF(KL)を求めることができる。また、基準燃料噴射量Qfbaseは、エアフロメータ32によって検出された空気流量mtに基づいて決定されるが、充填効率KLがこの空気流量mtの関数として表せることを考慮すると、基準燃料噴射量Qfbaseも充填効率KLの関数であると考えることができる。そして、計測中における実際の筒内充填空気量を充填効率KLの関数としてAir(KL)とすると、これらパラメータの間には下記式(2)のような関係がある。
Figure 2007009895
一方、空燃比AFが常に理論空燃比(目標空燃比)に維持されるように基準燃料噴射量Qfbaseを補正した場合の補正係数をFF補正係数Fff(KL)とすると、下記式(3)が成り立つ。
Figure 2007009895
上記式(2)及び(3)から基準燃料噴射量Qfbase(KL)及び筒内充填空気量Air(KL)を消去して、これら式をまとめると下記式(4)が導かれる。
Figure 2007009895
そして、二回目以降の計測においては、このようにして算出されたFF補正係数を用いて、下記式(5)により算出された燃料噴射量の燃料を燃料噴射弁から噴射する。
Figure 2007009895
式(5)において、(1+Fff(KL))はいわゆるフィードフォワード項であり、斯かるフィードフォワード項の存在により空燃比をより正確に理論空燃比に合わせることができるようになる。ただし、フィードフォワード制御のみでは計測中常に空燃比を完全に理論空燃比に合わせることはできないため、フィードバック制御も合わせて行われる。式(5)におけるFfbはその計測中に空燃比センサの出力に基づいて算出されたFB補正係数であり、上記一回目の計測において算出されたFB補正係数Ffb(KL)とは無関係な係数である。このように燃料噴射量の算出にあたってフィードフォワード制御とフィードバック制御とを併用することにより、フィードバック制御による応答遅れがあったとしても空燃比が理論空燃比から大きくずれることがなくなる。さらに、空燃比が理論空燃比から大きくずれることがなくなるため、充填効率の変化速度を速めることができるようになる。
なお、上記実施形態では、計測された空燃比AF、FB補正係数Ffb及びFF補正係数Fffは充填効率KLのみの関数であるとして説明したが、実際にはこれらパラメータは充填効率KLのみならず機関回転数に応じても変化する。従って、上記実施形態では、空燃比AF、FB補正係数Ffb及びFF補正係数Fffを充填効率及び機関回転数の関数として用いてもよい。
この場合、空燃比AF及びFB補正係数Ffbについては、全ての機関回転数NE及び充填効率KLの領域において実際に計測が行われているわけではないため、一回目の計測中の実際の計測値及び算出値に基づいて下記式(6)を作成し、FF補正係数Fffを求める際にこの式(6)から空燃比AF(KL,NE)及びFB補正係数Ffb(KL,NE)の値を求め、上記式(4)に代入してもよい。なお、下記式(6)の定数C1〜C6は、計測値から最小二乗法により求められる値である。
Ffb(KL,NE)=C1+C2・KL+C3・NE+C4・KL2+C5・NE2+C6・KL・NE …(6)
次に、図6を参照して、第二実施形態の変更例について説明する。上述したようにフィードフォワード制御を用いて空燃比が目標空燃比となるように燃料噴射量を制御した場合、実際の空燃比が目標空燃比からずれにくくなる。このため、本実施形態では、フィードフォワード制御実行中に空燃比の目標空燃比からのずれが小さい場合には、充填効率の変化速度を増速させることとしている。
図6は、本変更例により計測を行った場合における燃料噴射量に関するFB補正係数、空燃比、充填効率及び充填効率の変化速度のタイムチャートである。図示した例では、空燃比を理論空燃比に固定して、充填効率を変化させつつトルク等の特性パラメータの値を計測しようとしている場合を示している。図6に示した例では、計測された空燃比が継続領域(継続下限空燃比AF1以上であって継続上限空燃比AF1’以下)内の空燃比になっている場合に充填効率を増大させるのを中止し、その後、空燃比が再開領域(再開下限空燃比AF2以上であって再開上限空燃比AF2’以下)内の空燃比になると充填効率を増大させるのを再開するのに加えて、空燃比が増速領域(増速下限空燃比AF3以上であって増速上限空燃比AF3’以下)になると充填効率の増大速度を速めるようにする。なお、なお、増速領域は再開領域内の領域であり、よって増速下限空燃比AF3は再開下限空燃比AF2よりも大きく、また増速上限空燃比AF3’は再開上限空燃比AF2’よりも小さい。
図5に示した第二実施形態と同様に、本実施形態の特性パラメータの値の計測でも充填効率がほぼ零の状態から徐々に増大せしめられる。充填効率の増大開始(図中の時刻0)時には充填効率の変化速度は予め定められた初期速度とされる。時刻0〜時刻t7においては、計測された空燃比が増速領域内の空燃比となっているため、充填効率の変化速度は徐々に増加せしめられる。
次いで、時刻t7において空燃比が増速領域外の空燃比になると、充填効率の変化速度の増速が中止され、その後再び空燃比が増速領域内の空燃比にならない限り、充填効率の変化速度は一定に維持される。時刻t8において計測された空燃比が継続下限空燃比AF1よりも小さくなると、充填効率を変化させるのが中止せしめられる。
その後、計測された空燃比が再開下限空燃比AF2よりも以上になると、充填効率を変化させるのが再開される。このとき、充填効率の変化速度は、初期速度とされる。その後、再び計測された空燃比が増速下限空燃比AF3以上になると充填効率の変化速度が速められ、増速下限空燃比AF3よりも小さくなると充填効率の変化速度は一定に維持される。なお、計測された空燃比が増速領域内にある場合であっても、充填効率の増大速度が上限速度以上になる場合にはそれ以上の充填効率の変化速度の増速は中止される。
図7は、充填効率を変化させて特性パラメータの計測を行う場合における充填効率の調整制御の制御ルーチンを示すフローチャートである。
まず、ステップ121において、充填効率の変化速度Vklが零であるか否か、すなわち充填効率を変化させるのを中止しているか否かが判定される。ステップ121において、充填効率の変化速度Vklが零でないと判定された場合(Vkl≠0)、ステップ122へと進む。ステップ122では、計測された空燃比が継続領域(継続下限空燃比AF1以上であって継続上限空燃比AF1’以下)内の空燃比であるか否かが判定される。ステップ122において、計測された空燃比が継続領域内の空燃比であると判定された場合には、ステップ123へと進む。
ステップ123〜ステップ125では、計測された空燃比が増速領域(増速下限空燃比AF3以上であって増速下限空燃比AF3以下)内の空燃比であるか否か、フィードフォワード制御を行っているか否か、及び充填効率の変化速度Vklが上限速度Vklmax以下となっているか否かが判定される。計測された空燃比が増速領域内の空燃比であり、フィードフォワード制御を行っており且つ充填効率の変化速度Vklが上限速度Vklmax以下である場合にはステップ126へと進む。ステップ126では、充填効率の変化速度Vklに所定速度bを加えた値が充填効率の変化速度とされる。すなわち、充填効率の変化速度Vklが増速せしめられる。一方、計測された空燃比が増速領域外の空燃比であるか、フィードフォワード制御を行っていないか、または充填効率の変化速度Vklが上限速度Vklmaxよりも高い場合には、充填効率の変化速度はそのまま維持される。
一方、ステップ122において、計測された空燃比が継続領域外の空燃比であると判定された場合(AF<AF1またはAF>AF1’)には、ステップ127へと進む。ステップ127では、充填効率の変化速度Vklが零とされ、充填効率を変化させるのが中止せしめられる。
充填効率の変化速度Vklが零とされると、次回のルーチンにおいてステップ121で充填効率の変化速度Vklが零であると判定され、ステップ128へと進む。ステップ128では、計測された空燃比AFが再開領域(再開下限空燃比AF2以上であって再開上限空燃比AF2’以下)内の空燃比であるか否かが判定される。ステップ128において、計測された空燃比AFが再開領域外にあると判定された場合には制御ルーチンが終了せしめられる。一方、ステップ128において、計測された空燃比AFが再開領域内の空燃比であると判定された場合には、ステップ129へと進む。ステップ129では、充填効率の変化速度Vklが初期速度Vkldeとされる。
なお、上記実施形態では、計測された空燃比が継続領域外にある場合には充填効率を変化させるのを一時的に中止しているが、斯かる場合には変化させるのを中止せずに充填効率の変化速度を減速させるようにしてもよい。
次に、本発明の第三実施形態について説明する。ところで、上記第二実施形態では、空燃比を理論空燃比に固定しつつ充填効率を変化させてトルクや機関回転数を計測しようとすべく、フィードバック制御又はフィードフォワード制御により空燃比が理論空燃比となるように燃料噴射量を制御することとしている。
ところが、フィードバック制御やフィードフォワード制御を行っても充填効率を徐々に変化させている間中、常に実際の空燃比を目標空燃比に一致させることは困難であり、実際の空燃比は僅かながら目標空燃比からずれてしまう。このため、空燃比以外の計測されるパラメータ(上記実施形態ではトルク等)の値は、目標空燃比に対応する値となっておらず、目標空燃比からずれた実際の空燃比に対応する値となっている。したがって、充填効率、目標空燃比及びトルクの関係を正確に求めることは困難である。
そこで、本実施形態では、計測された実際の空燃比と目標空燃比との差分を算出し、算出された差分に基づいて計測された特性パラメータの値を補正することとしている。以下、図8及び図9を参照して、制御パラメータとして充填効率を用い、特性パラメータとして空燃比及びトルクを計測する場合を例にとって、本実施形態の特性パラメータ計測方法について詳細に説明する。
図8は、本実施形態により計測を行った場合における空燃比、計測トルク、充填効率、トルク補正値及び算出トルクのタイムチャートである。なお、トルク補正値及び算出トルクは後述するように計測された空燃比や計測トルクに基づいて算出されるが、図8ではこれらトルク補正値及び算出トルクが空燃比等の計測と同時に算出されるように示しているが、これらトルク補正値及び算出トルクは全ての計測が終了した後に計測時のデータに基づいて算出されてもよい。
図示した例では、目標空燃比を理論空燃比として、充填効率を変化させつつトルクを計測する場合を示している。図からわかるように、本実施形態の特性パラメータの値の計測では、充填効率がほぼ零の状態から徐々に増大せしめられる。スロットル開度を増大することにより充填効率の増加が開始されると(図中の時刻0)、それに伴って、空燃比を目標空燃比に維持すべく燃料噴射量がフィードバック制御又はフィードフォワード制御により増大せしめられる。
本実施形態においても、第二実施形態と同様に、計測した空燃比が継続領域外の空燃比になった場合には充填効率を変化させるのが中止せしめられたり、充填効率の変化速度が遅くされたりせしめられ、その結果、計測される実際の空燃比は基本的に継続領域内で上下に変動することになる。逆に言うと、第二実施形態の説明で示したように、フィードバック制御又はフィードフォワード制御を行っても、充填効率を変化させつつ実際の空燃比を常に目標空燃比に一致させることは困難であり、実際の空燃比は図8に示したように目標空燃比に対して上下に変動してしまうことになる。
計測される実際のトルクは、図8に示したように上下に変動しつつ徐々に大きくなることになる。この理由としては、実際のトルクが、充填効率が増大するのに伴って大きくなると共に、実際の空燃比が目標空燃比に対して上下に変動するのに伴って上下に変動するためである。すなわち、実際のトルクは、充填効率の変化の影響のみならず、空燃比の変動の影響を受けて推移する。従って、実際のトルクを空燃比を目標空燃比に固定した場合におけるトルクの値として取得すると、実際に空燃比が目標空燃比である場合におけるトルクの値とは僅かながら異なる値となってしまう。
そこで、本実施形態では、計測されたトルクの値を実際の空燃比AFと目標空燃比AFTとの差分ΔAF(=AF−AFT)に基づいて補正することとしている。具体的には、本実施形態では、まず、各時刻t毎に計測された実際の空燃比AFと目標空燃比AFTとの差分ΔAF(t)を算出する。次いで、算出された差分ΔAF(t)に基づいて下記式(7)によりトルク補正値Ktq(t)を算出する。
Ktq(t)=k・KL(t)・ΔAF(t) …(7)
式(7)において、KL(t)は、時刻tにおける充填効率であり、kは補正係数である。充填効率KL(t)を乗算しているのは、充填効率が高いほど空燃比のずれに対するトルクのずれが大きいためである。また、補正係数kは、内燃機関の形式及び目標空燃比に基づいて定まる値である。すなわち、空燃比のずれとトルクの変化との関係はすべての形式の内燃機関において同一ではなく、例えば機関出力が高い大型の内燃機関では空燃比のずれに対するトルクの変化が大きく、逆に機関出力が小さい小型の内燃機関では空燃比のずれに対するトルクの変化が小さい。このため、本実施形態では、内燃機関の形式に応じて、その形式の内燃機関の空燃比−トルク特性に基づいて補正係数kの値が定められる。
また、図9に示したように、空燃比とトルクとは比例関係にないため、すべての空燃比範囲において空燃比の増大量に対するトルクの増大量は一定ではない。しかしながら、本実施形態では充填効率を変化させるにあたり上述したように計測される実際の空燃比は継続領域内に維持され、継続領域は例えば目標空燃比から±0.2程度とされる。例えば目標空燃比を理論空燃比(14.7)としている場合、実際の空燃比は14.5〜14.9に維持される。ここで、図9からわかるように、空燃比−トルク曲線は緩やかな曲線であるため、すべての空燃比範囲において空燃比の増大量に対するトルクの増大量は一定ではないが、14.5〜14.9程度の狭い空燃比範囲においては空燃比の増大量に対するトルクの増大量はほぼ一定であると考えることができる。従って、本実施形態では、実際の空燃比が継続領域内で変動している限り、空燃比とトルクは比例関係にあるとみなすことができ、その比例係数は目標空燃比によって異なる。そこで、本実施形態では、補正係数kを、内燃機関の形式だけでなく目標空燃比にも基づいて定めることとしている。
そして、このようにして算出された時刻tにおけるトルク補正値Ktq(t)を、計測された時刻tにおけるトルクTQ(t)に加算することにより、下記式(8)のように空燃比の目標空燃比からのずれの影響を排除したトルクTQr(t)が算出される。
TQr(t)=TQ(t)+Ktq(t)
上述したような操作を全ての時刻について、すなわち全ての充填効率について行うことにより、空燃比を理論空燃比とした場合における充填効率とトルクとの関係をかなり正確に求めることができ、その後、目標空燃比を他の空燃比としてから同様な操作を行うことによりその空燃比における充填効率とトルクとの関係がかなり正確に求められる。このような操作が繰り返されることにより空燃比、充填効率及びトルクの関係を正確に求めることができる。
このように、本実施形態では、空燃比、充填効率及びトルクの関係をかなり正確に求めることができる。また、計測中に空燃比が多少目標空燃比からずれても補正されるため、上記第二実施形態に比べて空燃比のずれの許容幅、すなわち継続領域を広くとることができる。
本実施形態について一般化して説明すると、本実施形態では、上記第二実施形態と同様に、少なくとも二つの特性パラメータ(例えば、空燃比とトルク)の値を検出する。例えば、第一特性パラメータ(空燃比)と第二特性パラメータ(例えばトルク)との二つの特性パラメータの値を検出する。そして第一特性パラメータ(例えば空燃比)の値が目標値となるように制御パラメータ以外のパラメータ(例えば燃料噴射量)を制御する。同時に、第一特性パラメータの値が目標値からずれても継続領域内に収まるように制御パラメータの値の変化速度(例えば、充填効率の変化速度)を調整する。そして、本実施形態では、上記第一特性パラメータの計測値が目標値からずれた場合、第一特性パラメータの計測値とその目標値との差分に基づいて、第二特性パラメータの計測値を補正するようにしている。また、第二特性パラメータの計測値の補正は、上記差分に基づいて補正値を算出し、この補正値を第二特性パラメータの計測値に加算することによって行われる。そして、このようにして、上記差分に基づいて第二特性パラメータの計測値を補正することで、第二特性パラメータの値をかなり正確に算出することができる。特に、上記実施形態では、第二特性パラメータとしてトルクを計測する場合について示しているが、第二特性パラメータとしてトルクに加えて或いはトルクを計測せずに排気ガス温度や排気エミッション(すなわち、排気ガス中の炭化水素(HC)、一酸化炭素(CO)及び窒素酸化物(NOX)等の濃度)等を計測してもよい。
適合作業の対象となる内燃機関及び適合作業に用いられる計測装置を示す図である。 第一実施形態により計測を行った場合における点火時期、トルク、排気温度及び排気温度の変化速度のタイムチャートである。 トルク、排気温度及び触媒温度等の特性パラメータの計測時における点火時期の変化速度の調整制御の制御ルーチンを示すフローチャートである。 第一実施形態の変更例により計測を行った場合における点火時期、排気温度及び排気温度の変化速度のタイムチャートである。 第二実施形態により計測を行った場合における燃料噴射量に関するFB補正係数、空燃比及び充填効率のタイムチャートである。 第二実施形態の変更例により計測を行った場合における燃料噴射量に関するFB補正係数、空燃比、充填効率及び充填効率の変化速度のタイムチャートである。 充填効率を変化させて特性パラメータの計測を行う場合における充填効率の調整制御の制御ルーチンを示すフローチャートである。 第三実施形態により計測を行った場合における空燃比、計測トルク、充填効率、トルク補正値及び算出トルクのタイムチャートである。 空燃比とトルクとの関係を示す図である。
符号の説明
1 機関本体
5 吸気弁
8 排気弁
10 点火プラグ
11 燃料噴射弁
18 スロットル弁
31 スロットル開度センサ
32 エアフロメータ
33 排気温度センサ
34 空燃比センサ
40 計測装置本体

Claims (9)

  1. 内燃機関の制御パラメータの値を変化させることで内燃機関を過渡運転させつつ、制御パラメータの値の変化に伴って変化し得る少なくとも一つの特性パラメータの値を計測し、計測された過渡運転中における特性パラメータの値を定常運転中における特性パラメータの値として取得する特性パラメータ計測方法において、
    上記過渡運転中においては、計測される特性パラメータのうちの少なくとも一つの特性パラメータの値又はその変化速度が所定範囲内に収まるように制御パラメータの値の変化速度を調整するようにした、内燃機関の特性パラメータ計測方法。
  2. 検出される特性パラメータのうちの少なくとも一つの特性パラメータの値又はその変化速度が所定範囲外となった場合には、上記制御パラメータの値を変化させるのを一時的に中止させるようにした、請求項1に記載の内燃機関の特性パラメータ計測方法。
  3. 検出される特性パラメータのうちの少なくとも一つの特性パラメータの値又はその変化速度が所定範囲外となった場合には、上記制御パラメータの値の変化速度を遅くするようにした、請求項1に記載の内燃機関の特性パラメータ計測方法。
  4. 検出される特性パラメータのうちの少なくとも一つの特性パラメータの値又はその変化速度が上記所定範囲よりも小さい特定範囲内にある場合には、上記制御パラメータの変化速度を速くするようにした、請求項1〜3のいずれか1項に記載の内燃機関の特性パラメータ計測方法。
  5. 上記制御パラメータが充填効率であり、上記特性パラメータの一つが空燃比であり、上記空燃比の値が目標空燃比となるように燃料噴射量を制御すると共に上記空燃比が目標空燃比からずれても該目標空燃比を含む上記所定範囲内に収まるように制御パラメータの値の変化速度を調整するようにした、請求項1〜4のいずれか1項に記載の内燃機関の特性パラメータ計測方法。
  6. 上記特性パラメータの値の計測中に空燃比の値が目標空燃比となるような各充填効率の値に対する燃料噴射量を推定し、計測条件を変えて行う次回の特性パラメータの値の計測において上記推定された燃料噴射量に基づいて燃料噴射が行われる、請求項5に記載の内燃機関の特性パラメータ計測方法。
  7. 少なくとも二つの特性パラメータの値を計測し、これら特性パラメータのうち一つの特性パラメータの値が目標値となるように上記制御パラメータ以外のパラメータを制御すると共に、該一つの特性パラメータの値が上記目標値からずれても該目標値を含む上記所定範囲内に収まるように制御パラメータの値の変化速度を調整し、
    上記一つの特性パラメータの計測値が目標値からずれた場合には、該一つの特性パラメータの計測値の上記目標値からのずれに基づいて、該一つの特性パラメータ以外の特性パラメータの計測値を補正するようにした、請求項1〜6に記載の内燃機関の特性パラメータ計測方法。
  8. 上記一つの特性パラメータ以外の特性パラメータの計測値の補正は、上記一つの特性パラメータの計測値の目標値からのずれに基づいて補正値を算出し、該補正値を上記一つの特性パラメータ以外の特性パラメータの計測値に加算することによって行われる、請求項7に記載の内燃機関の特性パラメータ計測方法。
  9. 上記制御パラメータが充填効率であり、上記一つの特性パラメータが空燃比であり、上記一つの特性パラメータ以外の特性パラメータが出力トルクである、請求項7又は8に記載の内燃機関の特性パラメータ計測方法。
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