以下に、本発明の実施の形態を図面を用いて詳細に説明する。
図1の(a)は、本発明に係る帯電部材の一態様である帯電ローラの概略断面図である。同図中、1は導電性支持体であり、その周囲に弾性層(導電性弾性体基層)2が設けられ、更に該帯電ローラの最外層(表層)3が被覆されている。また(b)は、(a)の帯電ローラの導電性支持体1の長手方向に沿う方向の断面図である。そして、表層3は、コア粒子の表面に導電性材料が結着された複合導電粒子と、架橋された樹脂粒子(好ましくは平均粒径1〜15μm)とフタロシアニン化合物とを含有する。
フタロシアニン化合物を添加することにより、複合導電粒子と樹脂粒子の表面に式(1)のフタロシアニン化合物が付着することにより、複合導電粒子と樹脂粒子との相互作用の力が低下し、樹脂粒子による複合導電粒子の再凝集が防止され、塗料の経時による複合導電粒子の沈降、経時による抵抗変化が抑制される。
(1)フタロシアニン化合物
本発明のフタロシアニン化合物の構造は、
であらわされる。ただし、上記構造式において、Mは中心金属、X1〜X4はClまたはBrをあらわし、n、m、l、kは0から4の整数である。
フタロシアニンの中心金属は、イオン結合的な要素の強いNa、K、Be、Ca、Ba、Cd、Mg、Hgなどの元素や、共有結合的要素の強いCu、Fe、Zn、Co、Pt、Cr、Ni、Ptなどが挙げられる。また、電子写真感光体の電荷発生層に使用される、アルミクロルフタロシアニン、クロロインジウムフタロシアニン、オキシバナジルフタロシアニン、クロロガリウムフタロシアニンおよびオキシチタニウムフタロシアニンなどの化合物も知られている。このうち多くのフタロシアニン化合物は様々な結晶形を有することが知られており、例えば無金属フタロシアニンではα型、β型、γ型、δ型、ε型、x型およびτ型などがあり、銅フタロシアニンではα型、β型、γ型、δ型、ε型およびx型などがあることが一般的に知られている。
本発明のフタロシアニン化合物は、導電性微粒子と混合してよく分散してから用いられるので、原材料としてはどのような結晶系でもさしつかえない。分散前に、必要に応じて、アシッドペーシティング法により処理して非晶質にしたり、あるいは、1時間以上のメタノール中での攪拌処理を施したのち、減圧乾燥し、さらにn−プロピルエーテル、n−ブチルエーテル、iso−ブチルエーテル、sec−ブチルエーテル、n−アミルエーテル、n−ブチルメチルエーテル、n−プチルエチルエーテル、エチレングリコールn−ブチルエーテル等のエーテル系溶剤またはテルピノレン、ピネン等のモノテルペン系炭化水素溶剤や流動パラフィンなどの溶剤を分散媒として用いて5時間以上、好ましくは10時間以上のミリング処理(ガラスビーズ、スチールビーズ、アルミナボール等の分散メディアとともにサンドミル、ボールミル等のミリング装置を用いてすり潰す処理)を行うことによって特定の結晶形へ調整しておいてもよい。
本発明においては、フタロシアニン化合物が導電性微粒子の再凝集を防止し、塗料の経時による導電性微粒子の沈降、経時による抵抗変化を防止する。
フタロシアニン化合物の添加量は、導電性微粒子100質量部に対しておおむね0.1〜1000質量部、好ましくは1〜100質量部である。0.1質量部より少ないと複合導電粒子の沈降や抵抗変化を抑制する効果が小さくなるし、1000質量部より多いと被覆層の最外層(表層)の体積抵抗率が大きくなり過ぎるので好ましくない。
(2)複合導電粒子
本発明においては、コア粒子の表面に導電性材料が結着された複合導電粒子を用いることで、耐リーク性に優れ、微小な抵抗ムラが少なく、それに起因した帯電不良が発生しない、帯電均一性の非常に優れた画像を得ることができる。すなわち本発明においては、帯電部材を構成する最外層(樹脂層)の抵抗調整に用いる複合導電粒子は、コア粒子に導電性材料を結着、好ましくは薄膜コートしたものであるため、複合導電粒子の抵抗が大きく、中抵抗である半導電性の粒子とすることができる。また、半導電性の粒子とすることで帯電部材の樹脂層中で汎用的に用いられるカーボンブラック等の導電剤と比較して多量に配合しても樹脂層の抵抗を半導電領域とすることが可能で、かつ耐リーク性を向上することができる。また、樹脂層中に中抵抗の粒子が大量に分散しているため、樹脂と複合導電粒子間の電気抵抗差が小さく、抵抗のばらつきの小さい、優れた帯電均一性を発現する。
導電性材料;
複合導電粒子に用いる導電性材料としてはカーボンブラックが挙げられる。カーボンブラックとしては特に制限は無く、一般的に導電性ローラに導電性付与剤として用いられているものが挙げられる。導電性カーボンブラックとしては、アセチレン法によるアセチレンブラック、ファーネス法によるファーネスブラック、シェル法のガス化炉による特殊カーボンブラックなどが挙げられる。また、カーボンブラックとしては我々が検討を重ねた結果、酸性のカーボンブラックが特に好適であることが分かった。酸性のカーボンブラックを用いることで、連続通電による抵抗変化を低減することができることが明らかになった。PHは2〜6.5の範囲にあることが好ましく、より好ましくは2〜5の範囲である。以上のような効果が得られる理由については以下のように考えられる。通電劣化メカニズムとしては、通電時に発生するオゾン等の酸化性物質によるカーボンブラックの酸化により酸性官能基が生成し、それにより生成するσ電子が本来あったπ電子軌道を阻害してしまうことによりカーボンブラックの抵抗が上昇し抵抗変化が発生していると考えている。酸性のカーボンブラックはカーボンブラック表面が既に酸化されているため、通電時の酸化反応が起こりにくく、通電による抵抗変化が低減できるのではないかと考えている。
コア粒子;
複合導電粒子に用いるコア粒子としては、被覆層よりも体積抵抗が大きければ特に制限は無いが、小粒径が得られやすい無機化合物が好ましく、シリカ、酸化チタン等の酸化物、複酸化物等や窒化物、炭化物、セラミックなどを用いることができる。
コア粒子と導電性材料との間に用いる接着剤;
接着剤としては、アルコキシシランから生成するオルガノシラン化合物ならびにポリシロキサン、変性ポリシロキサン、末端変性ポリシロキサンまたはこれらの混合物が挙げられる。
アルコキシシランとしては、具体的には、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン等が挙げられる。
コア粒子表面へのカーボンブラックの付着強度を考慮すると、メチルトリエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシランから生成するオルガノシラン化合物がより好ましく、最も好ましくはメチルトリエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン及びフェニルトリエトキシシランから生成するオルガノシラン化合物である。
ポリシロキサンの中では、コア粒子表面へのカーボンブラックの付着強度を考慮すると、メチルハイドロジェンシロキサン単位を有するポリシロキサンが好ましく、変性ポリシロキサンの中では、ポリエーテル変成ポリシロキサン及び末端がカルボン酸で変成された末端カルボン酸変成ポリシロキサンが好ましい。
接着剤は公知の粉体表面処理方法によりコア粒子表面に付着される。公知の付着方法としては、乾式法、湿式法が挙げられ、湿式法としては、水溶液法、有機溶媒法、スプレー法が挙げられる。
本発明における複合導電粒子、例えばカーボンブラックでコートされたシリカは、カーボンブラックとシリカをホイール型混練機にて粉体にせん断を加えることにより作成したものである。混練条件としては、混練時間、ホイール回転数は適時設定し、カーボンブラックのほとんどがシリカに付着するまで混練する。このようにせん断を加えながらカーボンブラックを付着させることにより得られた、複合導電粒子の表面に結着されたカーボンブラックはストラクチャー構造が小さく、シリカの形状及び粒径を反映した構造となる。
特に良好に表面を導電剤によってコートされた複合導電粒子のコート層の厚さは、前記製造条件においてシリカ等のコア粒子に対するカーボンブラック等の導電性材料の添加量により制御することができる。例えば一次粒子径14nmのシリカにカーボンブラックを厚さ2nmでコートさせる場合には、シリカ100質量部に対して、カーボンブラックを110質量部添加して混練することにより作成することができる。
コートした複合導電粒子は、分級して粒度を揃えてもよい。分級方法としては、例えば、遠心分離やシックナーといった沈降分離を利用したものや、例えばサイクロンを利用した湿式分級装置などの手段が好適である。
表層の樹脂に加える複合導電粒子の配合量は、表層の樹脂の体積抵抗率が低温低湿環境(L/L:15℃/10%RH)、常温常湿環境(N/N:23℃/55%RH)、高温高湿環境(H/H:30℃/80%RH)で、中抵抗領域(体積抵抗率が1×106〜1×1015Ω・cm)になるように決める。
表層の体積抵抗率がこれよりも小さいと、帯電ローラとして使用した場合、感光体にピンホールがある時にピンホールに過大な電流が流れてリークしてしまい、リークした跡が画像に表れてしまうので好ましくない。逆に体積抵抗率が大き過ぎると、帯電ローラに電流が流れず、感光体を所定の電位に帯電することができず、画像が所望する濃度にならないという弊害がある。また、ある程度の電位に帯電したとしても帯電が不均一になり画像上に表れてしまうので好ましくない。
表層の体積抵抗は、ローラ状態から表層を剥がし、5mm×5mm程度の短冊形に切り出す。両面に金属を蒸着して電極とガード電極とを作製し、微小電流計(ADVANTEST R8340A ULTRA HIGH RESISTANCE METER (株)アドバンテスト社製)を用いて200Vの電圧を印加して30秒後の電流を測定し、膜厚と電極面積とから計算して求める。
複合導電粒子の配合量としては、塗工後の表層に対して1〜80質量%が好ましく、特に好ましくは5〜60質量%である。複合導電粒子の一次粒子径は、示差走査型電子顕微鏡観察で0.1μm以下が好ましい。表層塗料中で二次粒子が小さくなるまで公知の方法で分散する。二次粒子径は、遠心沈降式粒度分布計(CAPA700:(株)堀場製作所製)による体積平均粒径MEDIANの値で、1.0μm以下が好ましく、特に好ましくは0.5μm以下に分散する。二次粒子径が大きいと表層材料の抵抗の位置によるばらつきが大きくなり、帯電ムラの原因となるので好ましくない。
(3)架橋された樹脂粒子
本発明の帯電部材の表層は、帯電ローラ表面を粗面化するための架橋された樹脂粒子を含有する。架橋されていないと表層塗工用の塗料としたときに溶解する恐れがあるので好ましくない。架橋された樹脂粒子を作るモノマーとしては、特には限定しないが、重合の容易さ等から、ビニル系のモノマーが好適に用いられる。
本発明に用いるビニル系モノマーは、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルへキシル等のアクリル酸エステル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸へキシル等のメタクリル酸エステル、スチレン、p−メチルスチレン、α−メチルスチレン等の芳香族系ビニル単量体、酢酸ビニル及びアクリロニトリル等が挙げられる。
樹脂粒子が架橋された樹脂粒子となるために、本発明においては、上記のビニル系モノマー以外に、分子内にビニル基を2つ以上有する架橋性のビニル系モノマーを使用する。このような架橋性のビニル系モノマーとしては、例えば、エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート及びトリメチロールプロパントリメタアクリレート等が挙げられる。これら架橋性のビニル系モノマーの添加量は、非架橋性のビニルモノマー100質量部に対して0.5〜30質量部が好ましい。
これらの架橋された樹脂粒子は、シード乳化重合、分散重合、懸濁重合等により重合されるが、低分子の界面活性剤等の残留が少ないので、懸濁重合によって重合されることが好ましい。重合開始剤は、特に限定されないが、過酸化ベンゾイルや過酸化ラウロイル等の過酸化物系触媒、アゾビスイソブチロニトリルのようなアゾ系触媒が挙げられる。
本発明で使用される架橋された樹脂粒子は、形状がより真球形状に近いことがより好ましい。
具体的には、平均円形度が0.95以上であることが好ましい。平均円形度が0.95以上となるように樹脂粒子の粒子形状を精密に制御することにより、帯電ローラの表面粗さが均一になり、異なるプロセススピードで使用してもより均一な帯電特性を得ることができる。
更に、円形度標準偏差が0.040未満であることがより好ましい。円形度標準偏差が0.040未満となるように樹脂粒子の粒子形状を精密に制御することにより、真球から大きくかけ離れた樹脂粒子の存在割合が小さくなり、帯電ローラの表面に突発的に樹脂粒子の突起が発生して帯電を乱す確率を抑え、帯電ローラの表面粗さが更に均一になり、異なるプロセススピードで使用してもより均一な帯電特性を得ることができる。
本発明における円形度は、粒子の形状を定量的に表現する簡便な方法として用いたものであり、本発明では東亜医用電子社製フロー式粒子像分析装置FPIA−1000を用いて粒子形状の測定を行い、円形度を下式により求める。更に下式で示すように、測定された全粒子の円形度の総和を全粒子数で除した値を平均円形度と定義する。
(上記数式中、ciはm個の各粒子の円形度を表す)
ここで、「粒子投影面積」とは二値化された樹脂粒子像の面積であり、「粒子投影像の周囲長」とは該樹脂粒子像のエッジ点を結んで得られる輪郭線の長さと定義する。
なお、本発明で用いている測定装置である「FPIA−1000」は、各粒子の円形度を算出後、平均円形度及び円形度標準偏差の算出に当たって、粒子を得られた円形度によって、円形度0.400〜1.000を0.010間隔で、0.400以上0.410未満、0.410以上0.420未満…0.990以上1.000未満及び1.000の如くに61分割した分割範囲に分け、分割点の中心値と頻度を用いて平均円形度及び円形度標準偏差の算出を行う算出法を用いている。
この算出法で算出される平均円形度及び円形度標準偏差の各値と、上述した各粒子の円形度を直接用いる算出式によって算出される平均円形度及び円形度標準偏差の各値との誤差は、非常に少なく、実質的には無視できる程度であるため、本発明においては、算出時間の短絡化や算出演算式の簡略化の如きデータの取り扱い上の理由で、上述した各粒子の円形度を直接用いる算出式の概念を利用し、一部変更したこのような算出法を用いている。
本発明における円形度は、粒子の凹凸の度合いを示す指標であり、粒子が完全な球形の場合に1.000を示し、表面形状が複雑になる程、円形度は小さな値となる。
具体的な測定方法としては、容器中に予め不純固形物等を除去したイオン交換水10mlを用意し、その中に分散剤として界面活性剤、好ましくはアルキルベンゼンスルホン酸塩を加えた後、更に測定試料を0.02g加え、均一に分散させる。分散させる手段としては、超音波分散機「UH−50型」(エスエムテー社製)に振動子としてφ5mmのチタン合金チップを装着したものを用い、5分間分散処理を用い、測定用の分散液とする。その際、該分散液の温度が40℃以上とならないように適宜冷却する。
樹脂粒子の形状測定には、前記フロー式粒子像測定装置を用い、測定時の樹脂粒子濃度が3000〜1万個/μlとなるように該分散液濃度を再調整し樹脂粒子を1000個以上計測する。
樹脂粒子の平均粒径は、100μm以下であることが好ましく、より好ましくは0.5〜50μmであり、更に好ましくは1〜25μmである。また、質量平均粒径の3倍以上の粒径を有す樹脂粒子が実質的に皆無であることが好ましい。粒径が大き過ぎると帯電ローラ表面が粗れ過ぎて帯電が不均一になってしまうという弊害がある。また、小さ過ぎると樹脂粒子を添加して低プロセススピードの領域での帯電を安定化させる効果が現れないので好ましくない。
以下に、本発明における樹脂粒子の粒径測定の具体例を示す。
電解質溶液100〜150mlに界面活性剤(アルキルベンゼンスルホン酸塩)を0.1〜5ml添加し、これに測定試料を2〜20mg添加する。試料を懸濁した電解液を超音波分散器で1〜3分間分散処理して、コールターカウンターマルチサイザーにより17μmまたは100μm等の適宜樹脂粒子サイズに合わせたアパチャーを用いて体積を基準として0.3〜40μmの粒度分布等を測定するものとする。この条件で測定した個数平均粒径、質量平均粒径をコンピュータ処理により求め、体積基準の粒度分布より質量平均粒径の3倍径累積分布以上の累積割合を計算し、3倍径累積分布以上の累積値を求める。
樹脂粒子の添加量は塗工後の表層中の質量割合として、1〜80質量%が好ましい。1質量%より少ないと樹脂粒子を添加して帯電が安定する効果が得られないし、80質量%より多いと表層塗料の粘度の制御が難しくなり、均一に塗工することが難しくなるので、好ましくない。
(4)バインダ樹脂
表層のバインダとしては、熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂等の樹脂が用いられる。
本発明の表層のバインダとしては、ラクトン変性アクリルポリオールを、イソホロンジイソシアネートとヘキサメチレンジイソシアネートとで架橋されたウレタン樹脂が特に好適に用いられる。
表層のポリオールを架橋するイソシアネートとしてヘキサメチレンジイソシアネートを単独で用いた場合、表層が柔軟でローラの塗工後の表面が均一に仕上がるというメリットがある反面、苛酷な高温高湿環境ではでき上がった表層が導電性弾性体基層中の未加硫成分(例えば、イオン導電剤や可塑剤)がローラ表面へ染み出してくることを充分に阻止できない可能性がある。このような染み出し物質が存在すると、感光体を汚染する可能性がある。
一方、表層のポリオールを架橋するイソシアネートとしてイソホロンジイソシアネートを単独で用いた場合、表層が基層からの染み出し物質の染み出しを防止する効果は大きいが、表層が固くなり過ぎて基層ゴムの熱収縮に追従できず、でき上がったローラの表面にシワが発生し、ローラの表面粗さや形状の面で望みのローラを得ることができないという弊害がある。
本発明のローラの表層は、イソホロンジイソシアネートの染み出し物質ブロック性とヘキサメチレンジイソシアネートの柔軟性とを併せ持った良好な特性をもつ表層樹脂を提供し、イオン性の基層からの染み出し物質がローラ表面に染み出してくることを防止しつつ、良好な表面形状を有する帯電ローラを得ることができる。
すなわち、本発明において表層に用いる樹脂は、ラクトン変性アクリルポリオールとイソホロンジイソシアネートとヘキサメチレンジイソシアネートとをブレンドし硬化させることにより、ラクトン変性アクリルポリオールに対してイソホロンジイソシアネートとヘキサメチレンジイソシアネートとがランダムに反応して、架橋構造が形成されたものである。
本発明に用いるイソシアネートは、イソシアヌレート型の3量体とすることがより好ましい。分子の剛直な3量体が架橋点となり、表層がより密に架橋することができ、イオン性の基層からの染み出し物質がローラ表面に染み出してくることをより一層効果的に防止することができる。
また、本発明に用いるイソシアネートは、イソシアネート基がブロック剤によりブロックされたブロックイソシアネートとすることがより好ましい。この理由としては、上記イソシアネート基は反応し易く、表層塗料を常温に長時間放置しておくと徐々に反応が進み、塗料の特性が変化してしまう恐れがあるからである。これに対してブロックイソシアネートは、活性なイソシアネート基がブロックされ、ブロック剤の解離温度までは反応しないので、塗料の取り扱いが容易になるというメリットがある。マスキングを行うブロック剤には、フェノールやクレゾール等のフェノール類、ε−カプロラクタムのラクタム類及びメチルエチルケトオキシム等のオキシム類等が挙げられるが、本発明の場合、解離温度が比較的低温のオキシム類が好ましい。
本発明の表層樹脂を構成するラクトン変性アクリルポリオールとブロックイソシアネートの3量体を図示する。
式中、n、m、kは正の整数である。
一方、ラクトン変性アクリルポリオールのOH価は80KOHmg/g程度であることが好ましい。OH価が少ないと、イソシアネートで架橋され難くなり、それによって樹脂が柔らかくなり過ぎて感光体に貼り付き易くなる。OH基が大き過ぎると塗膜が硬くなり過ぎて割れ易くなる。
本発明のラクトン変性アクリルポリオールは、分子鎖骨格がスチレンとアクリルの共重合体であり、適度な硬度と非汚染性を有する。また、末端に水酸基を有する変性したラクトン基が多数の架橋点となり、イソシアネートで密に架橋することが可能であり、基層からの未加硫成分の染み出しを防止することができる。このようなラクトン変性アクリルポリオールとしては、例えば、プラクセルDC2009(ダイセル化学工業(株)製)が挙げられる。
表層に用いる樹脂のガラス転移温度Tgは粘弾性測定法で、ピーク温度が45℃以上が好ましく、特には50℃以上あることが好ましい。45℃未満であると、感光体と当接したまま長期間放置した場合に感光体に貼り付いてしまったり、または帯電ローラ表面がトナー等によって汚れ易くなったりするという弊害があるので、好ましくない。
本発明におけるガラス転移温度Tgの測定方法は以下のようにする。まず、測定用の表層サンプルは、ローラ状態から表層を剥がし、5mm×40mm程度の短冊形に切り出す。測定装置は、動的粘弾性測定装置RSA−II(レオメトリックス・サイエンティフィック・エフ・イー(株)製)を用い、また治具としてフィルムテンションフィクスチャーを用いる。測定は、−50℃〜150℃の温度範囲において測定周波数6.28rad/sec、昇温速度5℃/分、初期歪0.07〜0.25%のオートテンションモードで行う。損失正接tanδの温度分散を測定し、ピーク温度をTgとする。
また特に限定はしないが、あまりTgが高過ぎても樹脂の可撓性がなくなり、塗膜が割れ易くなるので好ましくない。Tgは、架橋するイソシアネートの比率または量によって調節する。
ラクトン変性アクリルポリオール樹脂とイソシアネートとの配合比は、配合した塗料中のイソシアネートの中のNCO基の数(A)と、ラクトン変性アクリルポリオール樹脂中のOH基の数(B)との比、NCO/OH比=A/Bが0.1〜2.0の範囲が好ましく、特に好ましくは0.3〜1.5の範囲になるように調整する。
ラクトン変性アクリルポリオールをイソシアネートで架橋することにより、導電性弾性体基層からの低分子成分の染み出しを防止するとともに、帯電ローラ自体がトナー等に対して汚れ難く、かつ感光体を汚染しない表層を形成することができる。
(5)その他
最外層(表層)を形成する樹脂塗料には、各種のレべリング剤を混合することも好ましい。レべリング剤としては、例えばシリコーンオイルが挙げられる。
帯電ローラによる被帯電体の表面電位を大きくするために、絶縁性の微粒子を含有することもできる。
絶縁性の微粒子の母材としては、金属酸化物微粒子、球状炭素微粒子、シリカ微粒子、及びチタン酸ストロンチウム微粒子、チタン酸カルシウム微粒子、チタン酸ケイ素微粒子等の複合酸化物等が挙げられる。この中でも、無機微粒子が好ましく、特に絶縁性の無機微粒子が特に好ましく、中でも特に、酸化チタンが好ましい。特には比誘電率の大きな金属酸化物、複酸化物の絶縁性微粒子が好ましい。比誘電率の大きな無機微粒子を母材として用いた場合、帯電ローラの帯電電位を高め、被帯電体を均一に帯電させる上で有効である。
絶縁性微粒子は、表面処理を行っていることがより好ましい。
絶縁性微粒子はまた、母材にシランカップリング剤による表面処理を施した第1の微粒子と、該母材と同種の母材にシランカップリング剤で表面処理した後、シリコーンオイルやシリコーンワニスで表面処理した第2の微粒子と、を両方ブレンドして含むことができる。
そして第1の微粒子の母材と、第2の微粒子の母材とは、同種のものとすることが好ましい。ここで同種の母材とは、まずは化学的な分子の組成、粒子径、表面積とが、ほぼ等しいことを言う。詳しくは、一般的な分子式で表される分子の組成や、組成式で表される元素の組成が、概ねプラスマイナス20%以内の変動の中に収まっていること、より好ましくはプラスマイナス10%以内に収まっていることが好ましい。粒子径に関しても、平均粒径が概ね10倍以内、好ましくは2倍以内の範囲内で大きさが揃っていることが好ましい。更に、表面積も、BET法等による表面積が概ね10倍以内、好ましくは2倍以内の範囲内でそろっていることが好ましい。第1の微粒子の母材と第2の微粒子の母材との上記したような物理的特性が異なっていると、表層形成用の塗料の安定性が損なわれることがある。
本発明で使用する微粒子の粒子径としては、個数平均粒子径(長さ平均)が1.0μm以下、更には、0.001μm〜0.5μmであることが好ましい。微粒子の個数平均粒子径をこの範囲内とすることによって、塗料中で沈降するといった問題が生じ難くなり、また、均一に表面処理することができる。
粒子径の測定には、電子顕微鏡を用いる。撮影倍率は10万倍とするが、難しい場合は低倍率で撮影した後に10万倍となるように拡大する。写真上で一次粒子の粒径を測る。この際、長軸と短軸を測り、平均した値を粒径とする。これを100サンプルについて測定し、50%値をもって平均粒径とする。
(5−1)カップリング剤での表面処理;
カップリング剤(珪素、チタン、アルミニウム及びジルコニウム等の中心元素は特に選ばない)としては、特に、アルコキシシランカップリング剤及びフルオロアルキルアルコキシシランカップリング剤が好ましい。
カップリング剤の例は、シランカップリング剤及びチタネートカップリング剤を含む。シランカップリング剤としては、例えば、イソブチルシラン、ヘキサメチルジシラザン、トリメチルシラン、トリメチルクロルシラン、トリメチルエトキシシラン、ジメチルジクロルシラン、メチルトリクロルシラン、アリルジメチルクロルシラン、アリルフェニルジクロルシラン、ベンジルジメチルクロルシラン、ブロムメチルジメチルクロルシラン、α−クロルエチルトリクロルシラン、β−クロルエチルトリクロルシラン、クロルメチルジメチルクロルシラン、トリオルガノシリルメルカプタン、トリメチルシリルメルカプタン、トリオルガノシリルアクリレート、ビニルジメチルアセトキシシラメン、ジメチルジエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、へキサメチルジシロキサン、1,3−ジビニルテトラメチルジシロキサン、1,3−ジフェニルテトラメチルジシロキサン、及び1分子当たり2〜12個のシロキサン単位を有し、末端に位置する単位に夫々1個あたりのケイ素原子に結合した水酸基を含有したジメチルポリシロキサンが挙げられる。
カップリング剤の加水分解基としては、例えば比較的親水性の高い、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基及びブトキシ基等のアルコキシ基等が用いられる。その他、アクリロキシ基、メタクリロキシ基、これらの変性体及びハロゲン等も用いられる。また疎水基としては、中心元素との結合形態においては、カルボン酸エステル、アルコキシ、スルホン酸エステルまたは燐酸エステルを介して、またはダイレクトに結合していてもよい。更に、疎水基の構造中に、エーテル結合、エポキシ基及びアミノ基等の官能基を含んでもよい。カップリング剤処理することで微粒子表面への水分の吸着を抑え、より環境変動の小さい表層材料を得ることができる。
微粒子の疎水化処理の方法としては、例えばシランカップリング剤の場合、乾式法と湿式法の2つの方法がある。
(5−1−a)乾式法
導電剤をよく掻き混ぜながらシランカップリング剤を噴霧するか蒸気状態で吹込む。必要に応じて加熱処理を入れる。より具体的には、シランカップリング剤を水蒸気の存在下、クラウド状にした微粒子と接触させて反応させる乾式法によるものを用いることが好ましい。このシランカップリング剤による処理では、シランカップリング剤を水蒸気の存在下で処理するため、水蒸気が触媒として作用し、シランカップリング剤の反応を高めることができ、均一な表面処理が可能となる。シランカップリング剤の処理時に水蒸気を存在させることは、シランカップリング剤と母材とを良好に反応させる上で好ましい。
(5−1−b)湿式法
導電剤を溶媒中に分散させ、シランカップリング剤も水や有機溶媒に希釈し、スラリー状態で激しく掻き混ぜながら添加する。均一処理をするにはこちらの方法が好ましい。更に、導電剤表面のシラン前処理としての具体的方法としては、以下の3つの方法がある。
(5−1−b−1)水溶液法
約0.1〜0.5質量%のシランを、一定pHの水、または水−溶媒に十分撹拌しながら注入溶解させ、加水分解する。微粒子をこの溶液中に浸した後、ろ過または圧搾して、ある程度水を除き、その後120〜130℃で十分乾燥する。
(5−1−b−2)有機溶媒法
少量の水と、加水分解用溶媒(塩酸、酢酸)を含む有機溶媒(アルコール、ベンゼン、ハロゲン化炭化水素)にシランを溶解する。微粒子をこの溶液に浸した後、ろ過または圧搾し、溶媒を除き、120〜130℃で十分乾燥する。
(5−1−b−3)スプレー法
微粒子を激しく撹拌しながら、シランの水溶液または、溶媒液をスプレーする。その後、120〜130℃で十分乾燥する。
本発明において、シランカップリング剤は、微粒子原体100質量部に対して、5〜60質量部、更に好ましくは、10〜50質量部の範囲で添加して処理するとよい。5質量部より少ない場合には、表面処理が充分でなく、沈殿し易くなる傾向があり、表層を塗工する塗料の安定性が悪くなるし、60質量部よりも多い場合には、製造上困難になる場合がある。
(5−2)シリコーンオイルでの表面処理;
シリコーンオイルとしては、下記一般式(I)で表されるものが好ましい。
上記一般式(I)中、Rは炭素数1〜3のアルキル基であり、R’はアルキル、ハロゲン変性アルキル、フェニル、変性フェニルの如きシリコーンオイル変性基であり、R”は炭素数1〜3のアルキルまたはアルコキシ基である。m及びnは、m≧0、n≧0、m+n>0を満たす数である。
上記一般式(I)の具体例としては、例えば、ジメチルシリコーンオイル、アルキル変性シリコーンオイル、α−メチルスチレン変性シリコーンオイル、クロルフェニルシリコーンオイル及びフッ素変性シリコーンオイルが挙げられる。
本発明において、シリコーンオイルとしては、下記一般式(II)で表される構造をもつ変性シリコーンオイルも使用できる。
上記一般式(II)中、R1及びR6は水素原子、アルキル基、アリール基またはアルコキシ基を表し、R2はアルキレン基またはフェニレン基を表し、R3は含窒素複素環をその構造に有する化合物を表し、R4及びR5は水素原子、アルキル基またはアリール基を表し、R2はなくてもよい。但し、上記のアルキル基、アリール基、アルキレン基及びフェニレン基は、アミンを有してもよいし、また、帯電性を損ねない範囲でハロゲンを置換基として有してもよい。mは1以上の数であり、n、kは0を含む正の数である。但し、n+kは1以上の正の数である。
上記構造中最も好ましい構造は、窒素原子を含む側鎖中の窒素原子数が1か2であるものである。窒素を有する不飽和複素環として、下記にその構造の一例を挙げる。
窒素を有する飽和複素環として、下記にその構造の一例を挙げる。
但し、本発明は何ら上記化合物例に拘束されるものではないが、好ましくは5員環または6員環の複素環を持つものが好ましい。誘導体としては、上記化合物群に、炭化水素基、ハロゲン基、アミノ基、ビニル基、メルカプト基、メタクリル基、グリシドキシ基、またはウレイド基を導入した誘導体が例示される。これらは1種、または2種以上用いてもよい。
(5−3)シリコーンワニスでの表面処理;
本発明に用いられるシリコーンワニスとしては、例えば、メチルシリコーンワニス及びフェニルメチルシリコーンワニスを挙げることができ、特に、本発明においては、メチルシリコーンワニスを用いることが好ましい。メチルシリコーンワニスは、下記構造で示されるT31単位、D31単位、M31単位よりなるポリマーであり、かつT31単位を多量に含む三次元ポリマーである。
メチルシリコーンワニスまたはフェニルメチルシリコーンワニスは、具体的には、下記構造式(III)で示されるような化学構造を有する物質である。
式中、R31は、メチル基またはフェニル基を示す。
上記シリコーンワニスにおいて、特にT31単位は、良好な熱硬化性を付与し、三次元網状構造とするために有効な単位である。シリコーンワニス中に、上記T31単位が、10〜90モル%、特に30〜80モル%の範囲で含まれるものを使用することが好ましい。
このようなシリコーンワニスは、分子鎖の末端若しくは側鎖に水酸基を有しており、この水酸基の脱水縮合反応によって硬化することとなる。この硬化反応を促進させるために用いることができる硬化促進剤としては、例えば、亜鉛、鉛、コバルト、スズの如き脂肪酸塩;トリエタノールアミン、ブチルアミンの如きアミン類を挙げることができる。このうち特にアミン類を好ましく用いることができる。
上記の如きシリコーンワニスをアミノ変性シリコーンワニスとするためには、前記、T31単位、D31単位及びM31単位中に存在する一部のメチル基或いはフェニル基を、アミノ基を有する基に置換すればよい。アミノ基を有する基としては、例えば、下記構造式で示されるものを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
これらのシリコーンオイルまたはシリコーンワニスによる母材の表面処理方法としては、例えば、微粒子とシリコーンオイルまたはシリコーンワニスとを混合機を用いて混合する方法;及び、微粉体中にシリコーンオイルまたはシリコーンワニスを噴霧器を用い噴霧する方法が挙げられる。
本発明で使用する第2の微粒子を製造するための処理形態としては、シランカップリング剤と、シリコーンオイルまたはシリコーンワニスとの両者を組み合わせて処理することが好ましい。その中での好ましい処理形態としては、先ず、シランカップリング処理剤で処理した後、シリコーンオイルまたはシリコーンワニスで処理することが挙げられる。その中でも特に、イソブチルシランで処理した後、シリコーンオイルで処理する形態が好ましい。
シリコーンオイル及び/またはシリコーンワニスによる絶縁性の母材の表面処理方法としては、例えば、微粒子と溶剤で希釈していないシリコーンオイルとをヘンシェルミキサーの如き混合機を用いて直接混合させる方法;及び、微粒子へ溶剤で希釈していないシリコーンオイルを噴霧する方法が挙げられる。この場合、シリコーンオイル及び/またはシリコーンワニスは、50〜200℃の温度に加温して粘度を下げて用いれば、より均一な処理が達成できるので、より好ましい。上記の通り、本発明においては、シリコーンオイル及び/またはシリコーンワニスは、溶剤に希釈しない状態で表面処理に用いられることから、25℃における動粘度500mm2/s以下のものを用いることが好ましい。
従って、本発明で使用する表面処理した微粒子を得るためには、微粒子をシランカップリング処理剤で処理後、シリコーンオイルまたはシリコーンワニスを噴霧し、その後、200℃以上の温度で加熱処理する作製方法が好適に用いられる。この微粒子の処理時にシランカップリング剤で処理後、シリコーンオイルまたはシリコーンワニスを噴霧した後、200℃以上の高い温度で加熱する方法によれば、シリコーンオイルまたはシリコーンワニスが微粒子表面に均一にかつ強固に付着することが可能となる。
シリコーンオイルまたはシリコーンワニスは、母材またはカップリング処理した母材100質量部に対して2〜40質量部、より好ましくは、5〜35質量部の範囲で使用する。この範囲内とすることで、帯電部材が、苛酷な高温高湿度環境中に放置された場合にも、表面処理成分、例えばシリコーンオイルやシリコーンワニス等の、帯電部材の表面への染み出しを抑えることができる。それに加えて、高品質な表層の塗布形成が可能であり、また摺擦メモリの問題も緩和される。
(5−4)第1の微粒子と第2の微粒子の比率;
母材を同じくする別々の表面処理を施した第1の微粒子と第2の微粒子の配合量割合としては、第1の微粒子と第2の微粒子との配合比は、1:1〜1000:1、より好ましくは、10:1〜100:1である。このような割合で、表層中に含有させることで、感光体との接触による画像ムラの発生や、表層を塗工形成時の塗布ムラを抑えることができ、かつ安定した帯電能を有する帯電部材とすることができる。
・導電性支持体
図1における導電性支持体1は、例えば炭素鋼合金表面に5μmの厚さのニッケルメッキを施した円柱である。導電性支持体を構成する材料として他にも、例えば鉄、アルミニウム、チタン、銅及びニッケル等の金属やこれらの金属を含むステンレス、ジュラルミン、真鍮及び青銅等の合金、更にカーボンブラックや炭素繊維をプラスチックで固めた複合材料等の、剛直で導電性を示す公知の材料を使用することもできる。また、形状としては円柱形状の他に、中心部分を空洞とした円筒形状とすることもできる。
・弾性層(導電性弾性体基層)
導電性弾性体基層2は、上記導電性支持体1の外周を被覆するように形成される。導電性弾性体基層2は導電性弾性体からなっている。導電性弾性体は、導電剤と導電性弾性体とを混合して成形される。導電剤は少なくともイオン導電剤が含有されている。導電性弾性体としては特にエピクロルヒドリンゴムが好適に用いられる。エピクロルヒドリンゴムは、ゴム自体に若干の導電性があり、導電剤の添加量が少なくても良好な導電性を発揮することができ、また、環境や位置による電気抵抗のバラツキも小さくすることができるので、導電性弾性体として好適に用いられる。
エピクロルヒドリンゴムは、エピクロルヒドリンを中心とする環状のエーテルの開環重合体であり、ゴムを構成する主な単量体には、エピクロルヒドリン、エチレンオキシド及びアクリルグリシジルエーテル等が挙げられる。
重合体であるエピクロルヒドリンゴムとしては、エピクロルヒドリン単独重合体、エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド共重合体、エピクロルヒドリン−アリルグリシジルエーテル共重合体及びエピクロルヒドリン−エチレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル三元共重合体等が挙げられる。この中でも安定した中抵抗領域の導電性を示すことから、エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル三元共重合体が特に好適に用いられる。エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル三元共重合体は、重合度や組成比を任意に調整することで導電性や加工性を制御できる。
導電性弾性体はエピクロルヒドリンゴムを主成分とするが、必要に応じてその他の一般的なゴムを含有されてもよい。
その他の一般的なゴムとしては、例えばEPM(エチレン・プロピレンゴム)、EPDM(エチレン・プロピレン・ジエンゴム)、ノルボーネンゴム、NBR(ニトリルゴム)、クロロプレンゴム、天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、クロロスルフォン化ポリエチレン、ウレタンゴム、SBS(スチレン・ブタジエン・スチレン−ブロックコポリマー)、SEBS(スチレン・エチレンブチレン・スチレン−ブロックコポリマー)等のスチレン系ブロックコポリマー及びシリコーンゴム等が挙げられる。
上記の一般的なゴムを含有する場合、その含有量は、導電性弾性体全量に対し1〜50質量%であるのが好ましい。
導電剤としては、導電性弾性体基層の電気抵抗率のムラを小さくするという目的により、イオン導電剤を含有することが必要である。イオン導電剤が導電性弾性体の中に均一に分散し、導電性弾性体の電子抵抗率を均一化することにより、帯電ローラを直流電圧のみの電圧印加で使用したときでも均一な帯電を得ることができる。
イオン導電剤としては、例えば、LiClO4やNaClO4等の過塩素酸塩、4級アンモニウム塩等が挙げられ、これらを単独または2種類以上組み合わせて用いることができる。イオン導電剤の中でも、環境変化に対して抵抗が安定なことから特に過塩素酸4級アンモニウム塩が好適に用いられる。
イオン導電剤に加えて、導電性弾性体の電気抵抗にムラを生じさせない範囲で、電子導電性の導電剤を添加することができる。電子導電性の導電剤は、電子導電性の導電剤の担う導電性が、イオン導電剤の担う導電性よりも小さい範囲で使用することができる。すなわち、電子導電性の導電剤は、導電性弾性体にイオン導電剤のみを添加した場合の体積抵抗率に対して、電子導電性の導電剤を加えて添加した場合の体積抵抗率が1/2以上であるような配合割合で使用することができる。電子導電性の導電剤としては、例えば、アルミニウム、パラジウム、鉄、銅、銀等の金属系の粉体や繊維、カーボンブラック、金属粉や酸化チタン、酸化錫、酸化亜鉛等の金属酸化物、硫化銅、硫化亜鉛等の金属化合物粉、または適当な粒子の表面を酸化スズ、酸化アンチモン、酸化インジウム、酸化モリブデン、亜鉛、アルミニウム、金、銀、銅、クロム、コバルト、鉄、鉛、白金、ロジウムを電解処理、スプレー塗工、混合振とうにより付着させた粉体、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、PAN(ポリアクリロニトリル)系カーボン、ピッチ系カーボン等のカーボン粉がある。これらを単独でまたは2種以上組み合わせて用いることができる。
本発明において、これらの導電剤の配合量は導電性弾性体の体積抵抗率が、低温低湿環境(L/L:15℃/10%RH)、常温常湿環境(N/N:23℃/55%RH)、高温高湿環境(H/H:30℃/80%RH)で、中抵抗領域(体積抵抗率が1×104〜1×107Ω・cm)になるような量が好ましい。
導電性弾性体の体積抵抗は、厚さ1mmのシートに成型した後、両面に金属を蒸着して電極とガード電極とを作製し、微小電流計(ADVANTEST R8340A ULTRA HIGH RESISTANCE METER (株)アドバンテスト社製)を用いて200Vの電圧を印加して30秒後の電流を測定し、膜厚と電極面積とから計算して求める。
導電性弾性体の体積抵抗率がこれよりも小さいと、像担持体である感光体にピンホールがあった場合に大電流がピンホールに一気に集中してしまい、穴をより大きくしてしまったり、穴以外の場所に電流が流れなくなって高精細なハーフトーン画像上に黒い帯となって帯電電位が不足した部分が現れてしまったりといった不具合が発生する恐れがある。逆に体積抵抗率が大き過ぎると、導電性弾性層中で印加電圧が降下してしまい、必要な放電電流が得られずに感光体を所望する電位に均一に帯電させることができなくなることがある。
この他にも導電性弾性体には必要に応じて、可塑剤、充填剤、加硫剤、加硫促進剤、老化防止剤、スコーチ防止剤、分散剤及び離型剤等の配合剤を加えることも好ましい。
導電性弾性体の成形方法としては、上記の導電性弾性体の原料を混合して、例えば、押し出し成形や射出成形、圧縮成形等の公知の方法が挙げられる。また、導電性弾性体基層は、導電性支持体の上に直接導電性弾性体を成形して作製してもよいし、チューブ形状に成形した導電性弾性体を導電性支持体に被覆させてもよい。なお、導電性弾性体基層の作製後に表面を研磨して形状を整えてもよい。
導電性弾性体基層の形状は、でき上がった帯電ローラと感光体との当接ニップ幅がローラの長手方向の分布でできるだけ均一になるよう、導電性弾性体基層ローラの中央部の直径が端部の直径よりも大きいクラウン形状となっていることが好ましい。また、でき上がったローラの当接ニップ幅が均一となるために、導電性弾性体基層ローラの振れが小さい方が好ましい。
振れの測定値は、図2のように、導電性支持体を回転軸として導電性弾性体基層ローラを回転させ、回転軸と垂直に非接触レーザー測長器(本発明においては、(株)キーエンス製 LS−5000)で測定した導電性弾性体基層の半径の最大値と最小値の差を値として求める。導電性弾性体基層の軸方向に1cmピッチで前記半径の最大値と最小値の差を求め、その値の中で最大の値を導電性弾性体基層ローラの振れの値とする。
また、ローラの直径とは、同様に導電性支持体を回転軸として導電性弾性体基層ローラを回転させ、回転軸と垂直に非接触レーザー測長器で測定した導電性弾性体基層の直径の最大値と最小値の平均とする。
導電性弾性体基層ローラの軸方向中央部の直径と、弾性層の両端部から10mm中央側の部分の直径の値2つの平均との差を、クラウン量の値として求める。
導電性弾性体基層ローラの振れの好ましい値は、ローラ中央部の直径の0.7%以下、より好ましくは0.5%以下である。本発明のローラの直径は12mm程度が好ましいので、振れの値は具体的には84μm以下が好ましく、より好ましくは60μm以下である。
クラウン量の値はでき上がったローラのニップ幅が均一になるように決めるが、好ましくはローラ直径の0.1〜5.0%、具体的には12μm〜600μmが好ましい。
導電性弾性体のアスカーC硬度は、85°以下が好ましく、より好ましくは80°以下である。アスカーC硬度が85°を超えると、帯電部材と感光体との間のニップ幅が小さくなり、帯電部材と感光体との間の当接力が狭い面積に集中し、当接圧力が大きくなる。これによって帯電が安定しなくなったり、または感光体や帯電部材の表面に現像剤その他が付着し易くなったりする等の弊害が顕著になる。
なお、「アスカーC硬度」とは、日本ゴム協会標準規格SRIS0101に準拠したアスカーC型スプリング式ゴム硬度計(高分子計器(株)製)を用いて測定した帯電部材の硬度であり、常温常湿(23℃/55%RH)の環境中に12時間以上放置した帯電部材に対して該硬度計を10Nの力で当接させてから30秒後に測定した値とする。
アスカーC硬度を小さくするため、導電性弾性体に可塑剤を配合する。配合量はゴム成分100質量部に対し、好ましくは1質量部以上、より好ましくは3質量部以上である。可塑剤としては、例えばセバシン酸とプロピレングリコールの共重合体のような、エステル系の高分子可塑剤を用いることができる。このようなエステル系の可塑剤はエピクロルヒドリンゴムと極性が近く、比較的大量に配合することが可能であり、基層の硬度を小さく制御できるメリットがある。高分子可塑剤の分子量は、好ましくは2000以上、より好ましくは4000以上である。分子量が2000より小さいと可塑剤がローラの表面に染み出してきて感光体を汚染する可能性がある。
導電性弾性体基層は、必要に応じて導電性支持体と接着剤を介して接着される。この場合、接着剤は導電性であることが好ましい。導電性とするため、接着剤には公知の導電剤を有することができる。
接着剤のバインダとしては、熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂等の樹脂が挙げられ、ウレタン系、アクリル系、ポリエステル系、ポリエーテル系及びエポキシ系等の公知のバインダを用いることができる。
導電剤としては、例えば、LiClO4やNaClO4等の過塩素酸塩、4級アンモニウム塩等のイオン導電剤、アルミニウム、パラジウム、鉄、銅、銀等の金属系の粉体や繊維、カーボンブラック、金属粉や酸化チタン、酸化錫、酸化亜鉛等の金属酸化物、硫化銅、硫化亜鉛等の金属化合物粉、または適当な粒子の表面を酸化スズ、酸化アンチモン、酸化インジウム、酸化モリブデン、亜鉛、アルミニウム、金、銀、銅、クロム、コバルト、鉄、鉛、白金、ロジウムを電解処理、スプレー塗工、混合振とうにより付着させた粉体、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、PAN(ポリアクリロニトリル)系カーボン、ピッチ系カーボン等のカーボン粉がある。これらを単独でまたは2種以上組み合わせて用いることができる。
・最外層(表層)
導電性弾性体基層が完成した後に、それを被覆し、帯電ローラの最外表面を構成する表層3を設ける。
表層の成形方法としては、上記(1)〜(5)の、表層を構成する材料を、サンドミル、ペイントシェーカ、ダイノミル及びパールミル等のビーズを利用した従来公知の分散装置を用いて公知の方法により分散させ、得られた表層形成用の樹脂塗料を、浸漬塗工により、帯電部材の表面、本発明においては導電性弾性体基層の上に塗工する。
表層の膜厚は、好ましくは1〜100μm、より好ましくは5〜60μm、更に好ましくは8〜40μmである。表層の膜厚が100μmよりも大きいと、帯電の均一性が損なわれ、画像上ローラの軸方向に細かい白スジが発生するので好ましくない。膜厚は、ローラ断面を鋭利な刃物で切り出して、光学顕微鏡や電子顕微鏡で観察することで測定できる。
本発明においては、顕微鏡で2000倍の断面写真を撮り、一画面中でランダムに5個所の膜厚を測定し、長さを平均して1箇所の膜厚を算出する。この測定を同じローラの軸方向3点×周方向2点の計6点について行ってから平均し、全体の平均膜厚とした。
表層膜厚を調整するために表層塗料の樹脂の固形分と塗工引き上げ速度を制御する。表層塗料中の樹脂の固形分を大きくすると表層の膜厚が大きくなり、固形分を小さくすると膜厚も小さくなる。本発明の表層塗料においては、揮発する溶媒に対する樹脂の固形分を10〜40質量%に調整する。また、塗工引き上げ速度を大きくすると膜厚が大きくなり、速度を小さくすると膜厚も小さくなるので、本発明においては塗工引き上げ速度を20〜5000mm/min.に調整する。塗工を行うローラの方端部からもう一方の端部まで、同じ速度で塗工しても良いし、表層塗料の重力によるダレを考えて、ローラ上端部の塗工速度を速くして、下端部に近づくにつれて連続的に塗工速度を遅くしていっても良い。
本発明の帯電部材の表面粗さとしては、好ましくはJIS B0601−1994による十点平均粗さRzで0.5μm以上40μm以下、Raで0.1μm以上5μm以下、より好ましくは十点平均粗さRzで1μm以上30μm以下、Raで0.4μm以上6μm以下である。表面粗さがあまり大き過ぎると帯電ムラとして出力画像に表れ易いし、表面粗さが小さ過ぎると樹脂粒子を添加して遅いプロセススピードでの帯電を安定させた効果が現れないので好ましくない。
平均粗さ(Ra、Rz)の測定方法としては、JIS B0601の表面粗さに基づき、小坂研究所製サーフコーダーSE3400にて、軸方向3点×周方向2点の計6点について各々測定し、その平均値をとる。本発明においては、接触針は先端半径2μmのダイヤモンドとし、測定スピード0.5mm/s、カットオフλc0.8mm、基準長さ0.8mm、評価長さ8.0mmとした。
上記範囲の表面粗さを有する帯電部材とするため、弾性体基層の表面粗さ、表層の膜厚、樹脂粒子の平均粒径と添加量を調整する。弾性体基層の十点平均粗さはRzで20μm以下、より好ましくは15μm以下とする。
また、本発明の帯電部材は、図6(a)、(b)に示したように、電子写真装置に用いた場合の使用状態と同様の応力で、帯電ローラ6を感光体と同じ曲率の円柱形金属32に当接させて、使用状態と同様の回転速度で円柱形金属を回転させながら(本発明では支持体1の両端に押圧具33a、33bよりそれぞれ5Nの力を加えて、直径30mmの金属円柱に当接させ、該金属円柱の周速45mm/sで回転させた)、電源34より直流電圧−200Vを印加したときの帯電部材の電気抵抗が、30℃/80%RHの高温高湿の環境中では1×104Ω以上であり、15℃/10%RHの低温低湿の環境中では1×108Ω以下であることが好ましい。より好ましくは、30℃/80%RHの高温高湿の環境中では2×104Ω以上であり、15℃/10%RHの低温低湿環境中では6×107Ω以下であることが好ましい。35は電流計である。
低温低湿の環境中の抵抗が上記範囲より小さいと、帯電ムラによるハーフトーン画像上の細かい横白スジが殆ど発生しないので好ましい。また、高温高湿環境中の抵抗が上記範囲より大きいと、感光体にピンホールがあったとしても印加電流がリークせず、ハーフトーン画像上に帯電の濃度ムラが現れることがないので好ましい。
電気抵抗を上記範囲とするには、帯電部材の導電性弾性体基層の体積抵抗率を1×103〜1×107Ω・cmに、また表層の体積抵抗率が1×108〜1×1015Ω・cmでかつ表層の膜厚が10〜50μmになるように調整すればよい。
<電子写真装置>
図3は、本発明に係る帯電部材の一つの実施の形態である帯電ローラ6を用いた電子写真装置の概略断面図である。像担持体である感光体ドラム5は矢印の方向に回転しながら、帯電ローラ6によって一次帯電され、次に露光手段により露光11が照射され静電潜像が形成される。現像手段である現像ローラ4上の薄層になったトナーは、トナー帯電ローラ29で帯電され、次いで感光体ドラム5の表面と接触することによって、静電潜像が現像され、可視化したトナー像が形成される。
現像されたトナー像は、転写部材である転写ローラ8と感光体ドラム5の間の転写部において、感光体ドラム5から被転写部材である印刷メディア7に転写され、その後定着部9で熱と圧力により定着され、永久画像となる。不図示の帯電前露光装置によって感光体ドラムに残った潜像に露光し、感光体ドラムの電位がアース電位に戻る。転写されなかった転写残トナーは、クリーニングブレード10で回収される。
現像ローラ4、トナー帯電ローラ29、帯電ローラ6、転写ローラ8のそれぞれには電子写真装置の電源18、19、20及び22から、それぞれ電圧が印加されている。28はトナー搬送ローラ、30は弾性規制ブレード、31はトナー容器である。
ここで、本発明の帯電部材である帯電ローラ6には、電源20から直流電圧が印加される。印加電圧に直流電圧を用いることで、電源のコストを低く抑えることができるという利点がある。また、交流電圧を印加したときに発生する帯電音が発生しないという利点がある。
印加する直流電圧の絶対値は、空気の放電開始電圧と被帯電体表面(感光体表面)の一次帯電電位との和とすることが好ましい。通常空気の放電開始電圧は600〜700V程度、感光体表面の一次帯電電位は300〜800V程度なので、具体的な一次帯電電圧としては900〜1500Vとすることが好ましい。
また、フルカラー電子写真装置とする場合は、図4のように感光体ドラム5a〜d、転写ローラ8a〜d、帯電ローラ6a〜d、トナー帯電ローラ29a〜d、弾性規制ブレード30a〜d、露光11a〜d、トナー容器31a〜d等をそれぞれ4色分用意して、直列に配置することもできる。
<プロセスカートリッジ>
本発明に係るプロセスカートリッジは、図5に示したように、像担持体である感光体5と、前記像担持体上に形成された静電潜像にトナーを転移させて可視化しトナー像を形成させる現像ローラ4を含む現像手段と、前記被転写部材にトナー像が転写された後に前記像担持体上に残留したトナーを除去するクリーニングブレード10を含むクリーニング手段と、から選ばれる1つまたは2つ以上が、本発明に係る帯電部材6と一体に筐体に支持され、電子写真装置の本体に対して着脱自在に構成されている。
プロセスカートリッジが使用される前には、トナーシール27で現像ローラ4とトナーの接触を避けておくことが好ましい。
以下に本発明を実施例をもって説明するが、本発明は実施例によって制限されるものではない。
(実施例1)
<帯電ローラの作製>
(1)弾性層(導電性弾性体基層)の作成
エピクロルヒドリンゴム(商品名:エピクロマーCG102、ダイソー(株)製)100質量部、充填剤としての炭酸カルシウム30質量部、滑剤としてのステアリン酸亜鉛1質量部、研磨性改善のための補強材としての着色グレードカーボン(商品名:シーストSO、東海カーボン(株)製)4質量部、酸化亜鉛5質量部、可塑剤として、セバシン酸とプロピレングリコールの共重合体(分子量8000)を5質量部、下記式の過塩素酸4級アンモニウム塩2質量部、
老化防止剤としての2−メルカプトベンズイミダゾール1質量部をオープンロールで20分間混練し、更に、加硫促進剤としてのDM(2−ベンゾチアゾリルジサルファイド)1質量部、加硫促進剤としてのTS(テトラメチルチウラムモノサルファイド)0.5質量部、加硫剤としての硫黄1.2質量部を加えて更に15分間オープンロールで混練した。
これをゴム押し出し機を使用して、外径14mm、内径5.5mmの円筒形に押し出し、250mmの長さに裁断し、加硫缶を使用して、160℃の水蒸気中で40分間一次加硫し、導電性弾性体基層ゴム一次加硫チューブを得た。
次に、直径6mm、長さ256mmの円柱形の導電性支持体(鋼製、表面はニッケルメッキ)の円柱面の軸方向中央部231mmに金属とゴムとの熱硬化性接着剤(商品名:メタロックU−20)を塗布し、80℃で30分間乾燥した後、120℃で1時間乾燥した。この導電性支持体を、前記導電性弾性体基層ゴム一次加硫チューブに挿入し、その後、電気オーブン中で160℃で2時間、二次加硫と接着剤の硬化を行い、未研磨層を得た。
この未研磨層のゴム部分の両端部を突っ切り、ゴム部分の長さを231mmとした後、ゴム部分を回転砥石で研磨し、端部直径11.90mm、中央部直径12.00mmのクラウン形状で表面の十点平均粗さRz6μm、振れ25μmの導電性弾性体基層を有する帯電ローラを得た。
導電性弾性体基層を有する帯電ローラをN/N(常温常湿:23℃/55%RH)環境に24時間以上放置した後、導電性弾性体基層を有する帯電ローラの抵抗を測定したところ、3.0×105Ωであった。また、ゴム部分のアスカーC硬度は74°であった。
(2)最外層(表層)の作成
シリカ粉末(レオシールQS−10、(株)トクヤマ製)100質量部に対して、ジメチルジメトキシシラン1質量部を、メカノマイクロス((株)奈良製作所製)をベッセル回転速度200rpm、ロータ回転速度2000rpmで稼動させながら投入し70℃を保ちながら15分間混練りした。次いで導電剤としてカーボンブラック MA100(揮発分1.5質量%、三菱化学(株)製)をシリカ粉末100質量部に対して100質量部投入し、70℃を保ちながら100分間混練りした。得られた複合導電粒子は比表面積が140m2/g、DBP吸油量が90cm3/100gであった。
ラクトン変性アクリルポリオール(商品名:プラクセルDC2016、ダイセル化学工業(株)製)1056質量部を、2304質量部のMIBK(メチルイソブチルケトン)に溶解し、固形分22質量%の溶液とした。このアクリルポリオール溶液200質量部に対して前記複合導電粒子を5.72質量部、シリコーンオイル(商品名:SH−28PA、東レ・ダウコーニングシリコーン(株)製)を0.08質量部、イソホロンジイソシアネートのブロックタイプのイソシアヌレート型3量体(商品名:ベスタナートB1370、デグサ・ヒュルス社製)を11.79質量部、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート型3量体(商品名:デュラネートTPA−B80E、旭化成工業(株)製)を7.54質量部、銅フタロシアニンを0.5質量部の割合で混合した。
上記配合液30リットルを、直径30cmのステンレス円筒容器に入れ、攪拌羽を300rpmで回転させて30分間攪拌した。この分散液30リットルを、φ0.8mmのガラスビーズを80%充填した内容量2リットルの横型ビーズミルに循環させて分散した。8mm/sの周速度、2リットル/分の循環量、ミルの外壁の温度22℃で回転させながら、8時間分散した。その後、循環しているビーズミルのタンクに平均粒径5μmの架橋ポリメチルメタクリレート(商品名:MBX−5、積水化成品工業(株)製)を、前記アクリルポリオール溶液200質量部に対して30.8質量部となるように配合し、更に3mm/sの周速度、2リットル/分の循環量、ミルの外壁の温度22℃で回転させながら、4時間分散した。分散後、液を取り出し、粘度を測定した。塗料の粘度は23℃の環境下で8.5mPa・sであった。
この塗料を浸漬塗工用の塗工槽に入れ、24時間ゆっくり循環して塗料が安定したところで、表層塗料を浸漬塗工により300mm/分の速度で前記導電性弾性体基層の表面に塗工した。15分間風乾した後、引き続きローラの塗工時の軸方向を反転後、1回目の塗工と同様にして塗工した。もう一度30分間風乾した後、80℃のオーブンで30分間乾燥し、次に160℃のオーブンで60分間乾燥した。
得られた帯電ローラには、ローラの全画像領域に亘り均一な膜厚20μmの表層が形成された。こうして完成したローラを実施例1Aの帯電ローラとした。
次に、そのまま前記塗工液を塗工槽で7日間ゆっくり循環し、実施例1Aと同様の手順で帯電ローラを塗工した。こうして完成したローラを実施例1Bの帯電ローラとした。
<表層塗料の評価>
塗料作成後、10mlのサンプル瓶に、得られた塗料を深さ30mmになる量入れ、静置放置させ、24時間経過後、7日間経過後のそれぞれの放置による複合導電粒子の沈降量(底面からの堆積高さ)を測定した。
実施例1の塗工液は24時間後が2.0mm、7日間後が3.0mmと、沈降物の堆積高さが非常に小さかった。
<帯電ローラの評価>
・帯電ローラの抵抗測定
経時による帯電ローラの抵抗変化を、塗料作成後24時間塗工槽で循環させた塗工液と、塗料作成後7日間塗工槽で循環させた塗工液を用いてそれぞれ帯電ローラを作成し、常温常湿環境(N/N:23℃/55%RH)で抵抗測定を行い、それらの比(24時間循環/7日間循環)をもって評価を行った。
実施例1Aの帯電ローラと実施例1Bの帯電ローラについて抵抗測定を行ったところ、抵抗が共に1.6×105Ωであり、塗工液作成後の経時による抵抗変化は無かった。
・画像評価
本試験で使用した電子写真式レーザプリンタはA4縦出力用のマシンで、記録メディアの出力スピードは、190mm/sec、画像の解像度は600dpiである。
感光体はアルミニウムシリンダーに膜厚16μmの有機感光層(OPC層)をコートした反転現像方式の感光ドラムであり、最外層は変性ポリアリレート樹脂をバインダ樹脂とする電荷輸送層である。
トナーは、ワックスを中心に荷電制御剤と色素等を含むスチレンとブチルアクリレートのランダムコポリマーを重合させ、更に表面にポリエステル薄層を重合させ、シリカ微粒子等を外添した、ガラス転移温度63℃、質量平均粒径6.5μmの重合トナーである。
一次帯電は、直流電圧−1150Vを帯電ローラに印加した。感光体の表面電位は−650Vであった。これに、最大濃度のべた画像を出力するような強度でレーザーを照射したときの感光体表面電位は−150Vであった。
次いで本実施例に係る帯電ローラを電子写真装置に組み込み、新品の感光体と当接させて、常温常湿環境(23℃/55%RH)の環境中で、初期の画像を出力した。ハーフトーン画像(感光体表面電位が−400Vになるように出力を絞ったレーザー光を照射したときの画像)を出力したところ、横白スジが全く発生せず非常に均一で良好な画像が得られた。
(実施例2〜7)
銅フタロシアニンの代わりに亜鉛フタロシアニンを用いた以外は実施例1と同様にして実施例2A、実施例2Bの帯電ローラを得た。
銅フタロシアニンの代わりに鉄フタロシアニンを用いた以外は実施例1と同様にして実施例3A、実施例3Bの帯電ローラを得た。
銅フタロシアニンの代わりにマグネシウムフタロシアニンを用いた以外は実施例1と同様にして実施例4A、実施例4Bの帯電ローラを得た。
銅フタロシアニンの代わりにオキシチタニウムフタロシアニンを用いた以外は実施例1と同様にして実施例5A、実施例5Bの帯電ローラを得た。
銅フタロシアニンの代わりにクロロガリウムフタロシアニンを用いた以外は実施例1と同様にして実施例6A、実施例6Bの帯電ローラを得た。
銅フタロシアニンの代わりにアルミクロルフタロシアニンを用いた以外は実施例1と同様にして実施例7A、実施例7Bの帯電ローラを得た。
実施例2A〜7A、実施例2B〜7Bの帯電ローラを画像評価したところ、全てのローラとも横白スジが全く発生せず、非常に良好な画像が得られた。また、ローラ抵抗の比も1.0倍〜1.1倍と非常に小さく、経時での表層塗料の変化は非常に小さかった。更に、溶液を小ビンに入れて沈殿の様子を観察したが、7日間後でも全ての表層塗料の沈殿が3mm以下であり、沈殿は非常に少なかった。
(実施例8)
銅フタロシアニンの添加量を0.5質量部から0.01質量部へと減らした以外は実施例1と同様にして実施例8A、実施例8Bの帯電ローラを得た。
画像評価の結果、実施例8Aのローラの画像は非常に良好であったが、実施例8Bのローラの画像には横白スジが発生したが実用上は容認できるレベルのものだった。また、ローラ抵抗の比は2.0倍で、表層塗料が変化していたが許容できるレベルであった。更に、溶液を小ビンに入れて沈殿の様子を観察したところ、24時間後で3.5mm、7日間後では5.0mmと、沈殿量は多めであった。
(実施例9)
銅フタロシアニンの添加量を0.5質量部から0.05質量部へと減らした以外は実施例1と同様にして実施例9A、実施例9Bの帯電ローラを得た。
画像評価の結果、実施例9Aのローラの画像は非常に良好であったが、実施例9Bのローラの画像にはわずかに横白スジが発生したが実用上は気が付かないレベルのものだった。また、ローラ抵抗の比は1.6倍で、表層塗料が多少変化していたが許容できるレベルであった。更に、溶液を小ビンに入れて沈殿の様子を観察したところ、24時間後で2.5mm、7日間後では4.0mmと、実施例1に比較すると、多少沈殿量は多かった。
(実施例10)
実施例1に対して銅フタロシアニンの添加量を0.5質量部から5.0質量部へと増やして実施例10A、実施例10Bの帯電ローラを得た。銅フタロシアニンを増やしただけでは帯電ローラの抵抗が大きくなり過ぎるので、複合導電粒子の配合を5.72質量部から6.6質量部へと増やして表層塗料と帯電ローラを得た。
画像評価したところ、実施例10A、実施例10Bの帯電ローラともに横白スジが全く発生せず、非常に良好な画像が得られた。また、ローラ抵抗の比も1.0倍と非常に小さく、経時での表層塗料の変化は非常に小さかった。更に、溶液を小ビンに入れて沈殿の様子を観察したが、7日間後でも全ての表層塗料の沈殿が2.5mm以下であり、沈殿は非常に少なかった。
(実施例11)
実施例1に対して銅フタロシアニンの添加量を0.5質量部から50質量部へと大幅に増やして実施例11A、実施例11Bの帯電ローラを得た。銅フタロシアニンを増やしただけでは帯電ローラの抵抗が大きくなり過ぎるので、複合導電粒子の配合を5.72質量部から13.2質量部へと増やして表層塗料と帯電ローラを得た。
画像評価したところ、実施例11A、実施例11Bの帯電ローラともに横白スジが全く発生せず、非常に良好な画像が得られた。また、ローラ抵抗の比も1.0倍と非常に小さく、経時での表層塗料の変化は非常に小さかった。更に、溶液を小ビンに入れて沈殿の様子を観察したが、7日間後でも全ての表層塗料の沈殿が2.0mm以下であり、沈殿は非常に少なかった。
(実施例12)
ポリメチルメタクリレートの樹脂粒子の代わりに平均粒径5μmの球状架橋ポリスチレン樹脂粒子を用いた以外は実施例1と同様にして実施例12A、実施例12Bの帯電ローラを得た。
画像評価したところ、実施例12A、実施例12Bの帯電ローラともに横白スジが全く発生せず、非常に良好な画像が得られた。また、ローラ抵抗の比も1.0倍と非常に小さく、経時での表層塗料の変化は非常に小さかった。更に、溶液を小ビンに入れて沈殿の様子を観察したが、7日間後でも全ての表層塗料の沈殿が3.0mm以下であり、沈殿は非常に少なかった。
(比較例1)
実施例1に対して銅フタロシアニンの添加量を0.5質量部から添加量ゼロへと減らして比較例1A、比較例1Bの帯電ローラを得た。銅フタロシアニンの添加を止めただけでは帯電ローラの抵抗が小さくなり過ぎるので、複合導電粒子の配合を5.72質量部から5.5質量部へと減らして表層塗料と帯電ローラを得た。
画像評価の結果、比較例1Aのローラの画像は非常に良好であったが、比較例1Bのローラの画像には大量の横白スジが発生し、実用には耐えられないレベルであった。また、ローラ抵抗の比は11.3倍で、経時で表層塗料が変化してローラの抵抗が急激に小さくなったことが分かった。更に、溶液を小ビンに入れて沈殿の様子を観察したところ、24時間後で4.5mm、7日間後では7.0mmと、実施例1に比較すると、沈殿の量が多く、塗料が変化していることがわかった。
(比較例2)
実施例1で添加した導電剤を無くした以外は実施例1と同様にして、比較例2A、比較例2Bの帯電ローラを得た。
画像評価の結果、比較例2A、比較例2Bのローラの両者とも画像には非常に激しく大量の横白スジが発生し、実用には耐えられないレベルであった。初期から帯電ローラとして必要な導電性が得られていなかった。更に、溶液を小ビンに入れて沈殿の様子を観察したところ、24時間後で5.0mm、7日間後でも6.0mmと、実施例1に比較すると、ほぼ一日で全ての複合導電粒子が沈降していた。
以上の実施例と比較例の配合と、画像出力と沈降量の結果を表1と表2にまとめて記す。
<初期画像>
◎:非常に良好で全く横白スジの無い画像
○:わずかに横白スジが見られるが、実用上は気が付かないレベルの画像
△:横白スジが見られるが、実用上は容認できる程度の画像
×:横白スジが激しい画像