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JP2006513274A - 還元型補酵素q10の精製方法 - Google Patents

還元型補酵素q10の精製方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 本発明の目的は、食品、栄養機能食品、特定保健用食品、栄養補助剤、栄養剤、動物薬、飲料、飼料、化粧品、医薬品、治療薬、予防薬等として有用な還元型補酵素Q10を、工業的規模での生産に適した方法で、高品質且つ効率的に精製する方法を提供することである。
【解決手段】 本発明は、水溶性有機溶媒もしくは水溶性有機溶媒と水との混合溶媒を用いて還元型補酵素Q10の結晶及び/又は油状物を洗浄することにより、還元型補酵素Q10の結晶及び/又は油状物に含まれる水溶性の不純物、特に還元剤及び/又は還元剤由来の不純物を除去する還元型補酵素Q10の精製方法である。本発明の方法によれば、操作性に優れた方法にて、簡便かつ効率よく還元型補酵素Q10を精製することができ、高品質の還元型補酵素Q10を取得することができる。

Description

本発明は、還元型補酵素Q10の精製方法に関する。還元型補酵素Q10は、酸化型補酵素Q10に比べて高い経口吸収性を示し、優れた食品、栄養機能食品、特定保健用食品、栄養補助剤、栄養剤、動物薬、飲料、飼料、化粧品、医薬品、治療薬、予防薬等として有用な化合物である。
還元型補酵素Q10は、例えば、合成、発酵、天然物からの抽出等の従来公知の方法により補酵素Q10を得た後、クロマトグラフィーにより流出液中の還元型補酵素Q10区分を濃縮する方法等により得られることが知られている(特許文献1参照)。この場合には、上記還元型補酵素Q10中に不純物として存在する酸化型補酵素Q10を、水素化ホウ素ナトリウム、亜ジチオン酸ナトリウム(次亜硫酸ナトリウム)等の一般的な還元剤を用いて還元した後、クロマトグラフィーによる濃縮を行っても良いこと、また、還元型補酵素Q10は、既存の高純度補酵素Q10に上記還元剤を作用させる方法によっても得られることが、該特許文献1中に記載されている。さらに、還元剤として、亜鉛を用いる方法(非特許文献1参照)や、ビタミンC類(即ち、アスコルビン酸、アスコルビン酸パルミチン酸エステル、アスコルビン酸ステアリン酸エステル等のアスコルビン酸類)を用いる方法(特許文献2参照)も知られている。
しかしながら、このようにして得られる還元型補酵素Q10は、必ずしも純度が高い状態では取得できず、例えば、酸化型補酵素Q10をはじめとする不純物を含有する低純度結晶、半固体状や油状物として得られやすい。特に、還元型補酵素Q10を含む有機溶媒溶液から、還元型補酵素Q10の結晶を取得した場合、水溶性の不純物、特に、酸化型補酵素Q10を還元型補酵素Q10に変換する際に使用した還元剤及び/又は還元剤に由来する不純物は除去しにくく、水溶性不純物を含有した低純度結晶として得られやすい。
特開平10−109933号公報 WO01/52822A1 Journal of Labelled Compounds,6巻,1970年,66−75
本発明は、上記に鑑み、還元型補酵素Q10に含まれる不純物、とりわけ水溶性不純物を除去し、工業的規模で高品質の還元型補酵素Q10を簡便且つ効率的に製造するための精製方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、鋭意研究した結果、水のみを用いて、還元型補酵素Q10中に残存する水溶性の不純物、特に、還元剤及び/又は還元剤に由来する不純物を除去しようとした場合、上記不純物を痕跡量以下にまで減少させるのは必ずしも容易ではないこと、さらには、還元型補酵素Q10は、水に対する濡れ特性が非常に悪く、良好な性状を有するスラリーを得るのは非常に難しいことがわかった。しかしながら、水溶性有機溶媒、もしくは、水溶性有機溶媒と水との混合溶媒を用いて還元型補酵素Q10(結晶あるいは油状物)を洗浄することにより、操作性良く、かつ、効率良く還元型補酵素Q10に残存する水溶性不純物、特に、還元剤及び/又は還元剤に由来する不純物を除去できることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、水溶性有機溶媒、もしくは、水溶性有機溶媒と水との混合溶媒を用いて還元型補酵素Q10の結晶及び/又は油状物を洗浄することにより、還元型補酵素Q10の結晶及び/又は油状物から水溶性不純物を除去することを特徴とする、還元型補酵素Q10の精製方法である。
本発明の方法によれば、還元型補酵素Q10中に含まれる水溶性不純物を簡便かつ効率的に痕跡量以下にまで除去することができ、極めて高品質の還元型補酵素Q10の結晶、あるいは、油状物を取得することができる。
また、還元型補酵素Q10の油状物を精製する場合、洗浄に用いた溶媒とともに冷却することにより結晶化させ、該結晶を取得することもでき、還元型補酵素Q10の油状物に融解温度未満の温度で種晶を接触させることにより、還元型補酵素Q10を固化させ、結晶として得ることもできる。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の還元型補酵素Q10の精製方法は、水溶性有機溶媒もしくは水溶性有機溶媒と水との混合溶媒を用いて、還元型補酵素Q10の結晶及び/又は油状物を洗浄することにより、還元型補酵素Q10の結晶及び/又は油状物から水溶性不純物を除去するものである。
つまり、本発明では、還元型補酵素Q10の結晶及び/又は油状物に残存する水溶性不純物、特に後述する還元剤及び/又は還元剤に由来する不純物を簡便且つ効率的に除去するために、水溶性有機溶媒もしくは水溶性有機溶媒と水との混合溶媒を用いて洗浄する。
本発明に用いる水溶性有機溶媒としては、水と相溶性の高い溶媒であれば特に制限されないが、例えば、アルコール類、エーテル類、ケトン類、ニトリル類、アミド類、硫黄化合物類、脂肪酸類等を挙げることができる。
アルコール類としては、環状、非環状を問わず、又、飽和、不飽和を問わず、特に制限されないが、一般に、飽和のものが好ましく用いられる。通常、炭素数1〜20、好ましくは炭素数1〜12、より好ましくは炭素数1〜6、さらに好ましくは炭素数1〜3、特に好ましくは炭素数2〜3のものが好適に用いられる。
具体例としては、例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、イソブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、3−ペンタノール、2−メチル−1−ブタノール、イソペンチルアルコール、tert−ペンチルアルコール、3−メチル−2−ブタノール、ネオペンチルアルコール、1−ヘキサノール、2−メチル−1−ペンタノール、4−メチル−2−ペンタノール、2−エチル−1−ブタノール、1−ヘプタノール、2−ヘプタノール、3−ヘプタノール、1−オクタノール、2−オクタノール、2−エチル−1−ヘキサノール、1−ノナノール、3,5,5−トリメチル−1−ヘキサノール、1−デカノール、1−ウンデカノール、1−ドデカノール、アリルアルコール、プロパルギルアルコール、ベンジルアルコール、シクロヘキサノール、1−メチルシクロヘキサノール、2−メチルシクロヘキサノール、3−メチルシクロヘキサノール、4−メチルシクロヘキサノール、2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール、2−(メトキシメトキシ)エタノール、2−イソプロポキシエタノール、2−ブトキシエタノール、2−(イソペンチルオキシ)エタノール、2−(ヘキシルオキシ)エタノール、フルフリルアルコール、1−メトキシ−2−プロパノール、1−エトキシ−2−プロパノール、1,2−エタンジオール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2−ブタン−1,4−ジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、グリセリン等を挙げることができる。
1価アルコールとしては、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、イソブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、3−ペンタノール、2−メチル−1−ブタノール、イソペンチルアルコール、tert−ペンチルアルコール、3−メチル−2−ブタノール、ネオペンチルアルコール、1−ヘキサノール、2−メチル−1−ペンタノール、4−メチル−2−ペンタノール、2−エチル−1−ブタノール、1−ヘプタノール、2−ヘプタノール、3−ヘプタノール、1−オクタノール、2−オクタノール、2−エチル−1−ヘキサノール、1−ノナノール、1−デカノール、1−ウンデカノール、1−ドデカノール、ベンジルアルコール、シクロヘキサノール、1−メチルシクロヘキサノール、2−メチルシクロヘキサノール、3−メチルシクロヘキサノール、4−メチルシクロヘキサノール、2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール、2−(メトキシメトキシ)エタノール等が好ましい。より好ましくは、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、イソブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、3−ペンタノール、2−メチル−1−ブタノール、イソペンチルアルコール、tert−ペンチルアルコール、3−メチル−2−ブタノール、ネオペンチルアルコール、1−ヘキサノール、2−メチル−1−ペンタノール、4−メチル−2−ペンタノール、2−エチル−1−ブタノール、シクロヘキサノール等である。さらに好ましくは、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、イソブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、3−ペンタノール、2−メチル−1−ブタノール、イソペンチルアルコール、tert−ペンチルアルコール、3−メチル−2−ブタノール、ネオペンチルアルコール等である。特に好ましくは、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、イソブチルアルコール、2−メチル−1−ブタノール、イソペンチルアルコール等であり、より特に好ましくは、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノールであり、最も好ましくはエタノールである。
2価アルコールとしては、1,2−エタンジオール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、2−ブタン−1,4−ジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール等が好ましく、1,2−プロパンジオール、ポリエチレングリコールが最も好ましい。
3価アルコールとしては、グリセリンが好ましい。
エーテル類としては、環状、非環状を問わず、又、飽和、不飽和を問わず、特に制限されないが、一般に飽和のものが好ましく用いられる。普通、炭素数3〜20、好ましくは炭素数4〜12、より好ましくは炭素数4〜8のものが好適に用いられる。
具体例としては、例えば、ジエチルエーテル、メチルtert−ブチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジヘキシルエーテル、エチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、アニソール、フェネトール、ブチルフェニルエーテル、メトキシトルエン、ジオキサン、フラン、2−メチルフラン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル等を挙げることができる。
好ましくは、ジエチルエーテル、メチルtert−ブチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジヘキシルエーテル、アニソール、フェネトール、ブチルフェニルエーテル、メトキシトルエン、ジオキサン、2−メチルフラン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル等である。より好ましくは、ジエチルエーテル、メチルtert−ブチルエーテル、アニソール、ジオキサン、テトラヒドロフラン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル等である。さらに好ましくは、ジエチルエーテル、メチルtert−ブチルエーテル、アニソール、ジオキサン、テトラヒドロフラン等であり、特に好ましくは、ジオキサン、テトラヒドロフランである。
ケトン類としては、特に制限されず、普通炭素数3〜6のものが好適に用いられる。具体例としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルブチルケトン、メチルイソブチルケトン等を挙げることができる。好ましくは、アセトン、メチルエチルケトンであり、最も好ましくは、アセトンである。
ニトリル類としては、環状、非環状を問わず、又、飽和、不飽和を問わず、特に制限されないが、一般に飽和のものが好ましく用いられる。普通、炭素数2〜20、好ましくは炭素数2〜12、より好ましくは炭素数2〜8のものが好適に用いられる。
具体例としては、例えば、アセトニトリル、プロピオノニトリル、マロノニトリル、ブチロニトリル、イソブチロニトリル、スクシノニトリル、バレロニトリル、グルタロニトリル、ヘキサンニトリル、ヘプチルシアニド、オクチルシアニド、ウンデカンニトリル、ドデカンニトリル、トリデカンニトリル、ペンタデカンニトリル、ステアロニトリル、クロロアセトニトリル、ブロモアセトニトリル、クロロプロピオノニトリル、ブロモプロピオノニトリル、メトキシアセトニトリル、シアノ酢酸メチル、シアノ酢酸エチル、トルニトリル、ベンゾニトリル、クロロベンゾニトリル、ブロモベンゾニトリル、シアノ安息香酸、ニトロベンゾニトリル、アニソニトリル、フタロニトリル、ブロモトルニトリル、メチルシアノベンゾエート、メトキシベンゾニトリル、アセチルベンゾニトリル、ナフトニトリル、ビフェニルカルボニトリル、フェニルプロピオノニトリル、フェニルブチロニトリル、メチルフェニルアセトニトリル、ジフェニルアセトニトリル、ナフチルアセトニトリル、ニトロフェニルアセトニトリル、クロロベンジルシアニド、シクロプロパンカルボニトリル、シクロヘキサンカルボニトリル、シクロヘプタンカルボニトリル、フェニルシクロヘキサンカルボニトリル、トリルシクロヘキサンカルボニトリル等を挙げることができる。
好ましくは、アセトニトリル、プロピオノニトリル、ブチロニトリル、イソブチロニトリル、スクシノニトリル、バレロニトリル、シアノ酢酸メチル、シアノ酢酸エチル、ベンゾニトリル、トルニトリル、クロロプロピオノニトリルである。より好ましくは、アセトニトリル、プロピオノニトリル、ブチロニトリル、イソブチロニトリルであり、最も好ましくは、アセトニトリルである。
アミド類としては、ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等を挙げることができる。
硫黄化合物類としては、例えば、ジメチルスルホキシド、スルホラン等を挙げることができる。
脂肪酸類としては、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸等を挙げることができる。好ましくは、ギ酸、酢酸であり、特に好ましくは酢酸である。
上記水溶性有機溶媒のなかでも、アルコール類、エーテル類、ケトン類、ニトリル類が好ましく、アルコール類、ケトン類がより好ましく、炭素数1〜3の1価アルコール、アセトンがさらに好ましく、エタノールが最も好ましい。
上記の水溶性有機溶媒は単独でも2種以上の混合溶媒としても使用できる。さらに、それらと水の混合溶媒としても好適に使用することができる。液性状や洗浄効果の観点からは、水溶性有機溶媒と水との混合溶媒が好適である。
水溶性有機溶媒と水との混合溶媒として用いる場合、当該混合溶媒に含まれる水溶性有機溶媒の濃度は特に限定されないが、好適な液性状、洗浄効果を得る観点から、好ましくは約5w/w%以上、より好ましくは約7w/w%以上、さらに好ましくは約10w/w%以上、特に好ましくは約20w/w%以上、最も好ましくは約30w/w%以上である。
また、食用、医薬用等に利用する場合、エタノール、1,2−プロパンジオール、ポリエチレングリコール(好ましくは、分子量300〜1000のポリエチレングリコール)、グリセリン等が好適であり、なかでもエタノールが特に好適である。言うまでもなく、これら溶媒は2種以上の混合溶媒としても良いし、また、水との混合溶媒としても好適に使用できる。
尚、本発明においては、上記水溶性有機溶媒に、非水溶性有機溶媒を実質的に悪影響のない範囲で併用してもよい。このような非水溶性有機溶媒としては、後述する炭化水素類、脂肪酸エステル類等を挙げることができる。
本発明に用いる還元型補酵素Q10は、例えば、合成、発酵、天然物からの抽出等の従来公知の方法により得ることができる。好ましくは、還元型補酵素Q10中に含まれる酸化型補酵素Q10、あるいは、酸化型補酵素Q10を還元することにより得られたものであり、より好ましくは、後述する本発明の還元反応を用いて得られたものである。
本発明の精製方法は、酸化型補酵素Q10を比較的多く含有するものについても適用できるが、後述する還元方法等により調製された高純度の還元型補酵素Q10に対して特に有効である。言うまでもなく、精製に用いる還元型補酵素Q10は結晶であっても良いし、油状物であっても良い。ここで、還元型補酵素Q10の結晶とは、還元型補酵素Q10を含有する溶液から溶媒を留去した濃縮乾固物や、還元型補酵素Q10の油状物を固化させた固体等も含む。
本発明において除去される水溶性の不純物としては、特に制限されないが、例えば、後述する酸化型補酵素Q10を還元する際に使用する還元剤及び/又は還元剤に由来する不純物等を挙げることができる。還元剤及び/又は還元剤に由来する不純物としては、例えば、次亜硫酸類と、それから副生する亜硫酸水素類;アスコルビン酸類と、それから副生するデヒドロアスコルビン酸、2,3−ジケトグロン酸やシュウ酸;鉄や亜鉛から副生する塩類等を挙げることができる。
洗浄の方法としては特に制限されないが、洗浄に使用する溶媒の使用量を抑えられることから、通常、槽中にて、還元型補酵素Q10の結晶及び/又は油状物と、上記水溶性有機溶媒もしくは水溶性有機溶媒と水との混合溶媒を接触させる。この接触としては、還元型補酵素Q10の結晶及び/又は油状物を、水溶性有機溶媒もしくは水溶性有機溶媒と水との混合溶媒に分散させるのが好ましく、また、還元型補酵素Q10の結晶及び/又は油状物と、水溶性有機溶媒もしくは水溶性有機溶媒と水との混合溶媒とを、充分に懸濁及び/又は乳濁させるのが特に好ましい。
洗浄は、強制流動下に実施するのが好ましい。高品質化の観点から、単位容積当たりの撹拌所要動力として、通常約0.01kW/m以上、好ましくは約0.1kW/m以上、より好ましくは約0.3kW/m以上の流動が好ましい。上記の強制流動は、通常、撹拌翼の回転により与えられるが、上記流動が得られれば必ずしも撹拌翼を用いる必要はなく、例えば、液の循環による方法等を利用しても良い。
還元型補酵素Q10の結晶及び/又は油状物を洗浄する際の還元型補酵素Q10の濃度は、特に制限されないが、好適な液性状を得る観点から、洗浄終了時の洗浄溶媒の重量に対する還元型補酵素Q10の重量として、好ましくは約30w/w%以下、より好ましくは約20w/w%以下、さらに好ましくは約15w/w%以下であり、特に好ましくは約13w/w%以下、最も好ましくは約10w/w%以下である。上記濃度を維持することによって、工業的規模での操作性に耐えうるより好適な洗浄が可能となる。生産性の観点から、濃度の下限は、好ましくは約1w/w%であり、より好ましくは約2w/w%である。
洗浄時間は、水溶性有機溶媒もしくは水溶性有機溶媒と水との混合溶媒の種類や組成比、洗浄溶媒量等によって異なり、一律に規定できないが、通常、10時間以内、好ましくは5時間以内、より好ましくは2時間以内、さらに好ましくは1時間以内、特に好ましくは30分以内、最も好ましくは10分以内に完了させることができる。
洗浄温度は、洗浄に用いる溶媒(水溶性有機溶媒もしくは水溶性有機溶媒と水との混合溶媒)の量、組成及び/又は組成比、精製する還元型補酵素Q10の品質・純度等により異なり、一律に規定できないが、還元型補酵素Q10の結晶を用いる場合には、上限は、約50℃以下、好ましくは約45℃以下、より好ましくは約40℃以下、さらに好ましくは約35℃以下であり、下限は、約−10℃以上、好ましくは約−5℃以上、より好ましくは約0℃以上である。通常約0℃〜40℃の範囲で好適に実施できる。また、還元型補酵素Q10の油状物を用いる場合には、下限は、還元型補酵素Q10の融解温度以上であり、好ましくは約40℃以上、より好ましくは約45℃以上、さらに好ましくは約50℃以上、特に好ましくは約60℃以上であり、上限は、約100℃以下、好ましくは約90℃以下、より好ましくは約80℃以下、さらに好ましくは約70℃以下である。
上記のようにして還元型補酵素Q10の結晶及び/又は油状物を洗浄することにより、当該結晶及び/又は油状物に含まれる水溶性不純物を、水溶性有機溶媒もしくは水溶性有機溶媒と水との混合溶媒に移行させ、当該結晶及び/又は油状物から水溶性不純物を除去することができる。
還元型補酵素Q10の結晶を精製する場合には、洗浄に使用した上記溶媒を遠心分離、加圧濾過、減圧濾過等により除去し、必要に応じ湿体をケーキ洗浄することにより、水溶性不純物が除去された還元型補酵素Q10を湿体として取得することができる。また、さらに、不活性ガスで内部を置換した減圧乾燥機(真空乾燥機)に湿体を仕込み、減圧下、乾燥し、乾体として取得することができ、乾体として取得するのが望ましい。
また、本方法にて、還元型補酵素Q10の油状物を精製する場合には、洗浄液(還元型補酵素Q10の油状物+洗浄に使用した溶媒)から洗浄に使用した溶媒を分離し、還元型補酵素Q10の油状物として取得することもできるし、また、洗浄液をそのまま冷却することにより、還元型補酵素Q10の結晶として取得することもできる。還元型補酵素Q10の結晶として取得する場合の冷却温度としては、特に制限されないが、普通約50℃未満、好ましくは約48℃未満、より好ましくは約45℃未満、さらに好ましくは約40℃未満である。下限は、系の固化温度であるが、通常約0℃以上である。なお、この場合、水溶性不純物を洗浄液中に存在させたままで、水溶性不純物が除去された還元型補酵素Q10の結晶を得ることができる。
また、還元型補酵素Q10を油状物として取得した場合には、還元型補酵素Q10の油状物に、種晶(自結晶)を接触させることにより、特に、還元型補酵素Q10の融解温度未満の温度で種晶(自結晶)を接触させることにより、好適に固化させることもできる。この場合、上記油状物を還元型補酵素Q10の融解温度未満の温度に下げて望みの形状にし、種晶を接触させることにより固化物を得ることもできる。種晶との接触は、該油状物の形状をつくる前でも後でも差し支えない。また、固化温度は、還元型補酵素Q10の融解温度未満であれば良く、特に制限されないが、望ましくは0℃以上である。
上記方法のように、還元型補酵素Q10の油状物から還元型補酵素Q10の結晶(固形物を含む)を取得することにより、試剤や時間のロスを回避でき、高収率で好適に、還元型補酵素Q10の結晶(固形物を含む)を取得することができる。
このようにして精製した還元型補酵素Q10中に含まれる水溶性不純物の重量は、通常0.15%以下、好ましくは0.10%以下、より好ましくは0.08%以下へと低減され、非常に高品質の還元型補酵素Q10を取得することができる。
尚、上記精製は、脱酸素雰囲気下で実施するのが極めて好ましい。これにより、酸化型補酵素Q10の副生を最小に抑えることができ、より効果的な洗浄をすることができる。
脱酸素雰囲気は、不活性ガスによる置換、減圧、沸騰やこれらを組み合わせることにより達成できる。少なくとも、不活性ガスによる置換、即ち、不活性ガス雰囲気を用いるのが好適である。上記不活性ガスとしては、例えば、窒素ガス、ヘリウムガス、アルゴンガス、水素ガス、炭酸ガス等を挙げることができ、好ましくは窒素ガスである。
次に、本発明に使用するに好適な還元型補酵素Q10の合成法、即ち、酸化型補酵素Q10から還元型補酵素Q10に還元する方法について述べる。
本発明に使用しうる還元型補酵素Q10は、先述のごとく、例えば、合成、発酵、天然物からの抽出等の従来公知の方法により得ることができる。好ましくは、既存の高純度補酵素Q10等酸化型補酵素Q10、あるいは酸化型補酵素Q10と還元型補酵素Q10の混合物を、一般的な還元剤を用いて還元することにより得ることができる。まずは、酸化型補酵素Q10を還元する方法について説明する。
還元型補酵素Q10は分子酸素によって酸化され酸化型補酵素Q10を副生しやすいため、還元工程の溶媒としては、酸化からの防護効果の高い溶媒を用いるのが好ましい。このような溶媒としては、炭化水素類、脂肪酸エステル類、エーテル類、及び、ニトリル類のうち少なくとも一種を用いるのが好ましく、最も好ましくは炭化水素類である。
炭化水素類としては、特に制限されないが、例えば、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、ハロゲン化炭化水素等を挙げることができる。特に、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素が好ましく、とりわけ、脂肪族炭化水素が好ましい。
脂肪族炭化水素としては、環状、非環状を問わず、又、飽和、不飽和を問わず、特に制限されないが、通常、炭素数3〜20、好ましくは、炭素数5〜12のものが用いられる。
具体例としては、例えば、プロパン、ブタン、イソブタン、ペンタン、2−メチルブタン、シクロペンタン、2−ペンテン、ヘキサン、2−メチルペンタン、2,2−ジメチルブタン、2,3−ジメチルブタン、メチルシクロペンタン、シクロヘキサン、1−ヘキセン、シクロヘキセン、ヘプタン、2−メチルヘキサン、3−メチルヘキサン、2,3−ジメチルペンタン、2,4−ジメチルペンタン、メチルシクロヘキサン、1−ヘプテン、オクタン、2,2,3−トリメチルペンタン、イソオクタン、エチルシクロヘキサン、1−オクテン、ノナン、2,2,5−トリメチルヘキサン、1−ノネン、デカン、1−デセン、p−メンタン、ウンデカン、ドデカン等を挙げることができる。
中でも、炭素数5〜8の飽和脂肪族炭化水素が好ましく、炭素数5のペンタン、2−メチルブタン、シクロペンタン(ペンタン類と称す);炭素数6のヘキサン、2−メチルペンタン、2,2−ジメチルブタン、2,3−ジメチルブタン、メチルシクロペンタン、シクロヘキサン(ヘキサン類と称す);炭素数7のヘプタン、2−メチルヘキサン、3−メチルヘキサン、2,3−ジメチルペンタン、2,4−ジメチルペンタン、メチルシクロヘキサン(ヘプタン類と称す);炭素数8のオクタン、2,2,3−トリメチルペンタン、イソオクタン、エチルシクロヘキサン(オクタン類と称す)、及びこれらの混合物が好ましく用いられる。とりわけ、上記ヘプタン類は酸化からの防護効果が特に高い傾向がありさらに好ましく、ヘプタンが最も好ましい。
芳香族炭化水素としては、特に制限されないが、普通炭素数6〜20、好ましくは炭素数6〜12、より好ましくは炭素数7〜10のものが好適に用いられる。具体例としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、o−キシレン、m−キシレン、p−キシレン、エチルベンゼン、クメン、メシチレン、テトラリン、ブチルベンゼン、p−シメン、シクロヘキシルベンゼン、ジエチルベンゼン、ペンチルベンゼン、ジペンチルベンゼン、ドデシルベンゼン、スチレン等を挙げることができる。好ましくは、トルエン、キシレン、o−キシレン、m−キシレン、p−キシレン、エチルベンゼン、クメン、メシチレン、テトラリン、ブチルベンゼン、p−シメン、シクロヘキシルベンゼン、ジエチルベンゼン、ペンチルベンゼンである。より好ましくは、トルエン、キシレン、o−キシレン、m−キシレン、p−キシレン、クメン、テトラリンであり、最も好ましくは、クメンである。
ハロゲン化炭化水素としては、環状、非環状を問わず、又、飽和、不飽和を問わず、特に制限されないが、一般に、非環状のものが好ましく用いられる。塩素化炭化水素、フッ素化炭化水素がより好ましく、塩素化炭化水素が特に好ましい。炭素数1〜6、好ましくは炭素数1〜4、より好ましくは炭素数1〜2のものが好適に用いられる。
具体例としては、例えば、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、1,1−ジクロロエタン、1,2−ジクロロエタン、1,1,1−トリクロロエタン、1,1,2−トリクロロエタン、1,1,1,2−テトラクロロエタン、1,1,2,2−テトラクロロエタン、ペンタクロロエタン、ヘキサクロロエタン、1,1−ジクロロエチレン、1,2−ジクロロエチレン、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、1,2−ジクロロプロパン、1,2,3−トリクロロプロパン、クロロベンゼン、1,1,1,2−テトラフルオロエタン等を挙げることができる。
好ましくは、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、1,1−ジクロロエタン、1,2−ジクロロエタン、1,1,1−トリクロロエタン、1,1,2−トリクロロエタン、1,1−ジクロロエチレン、1,2−ジクロロエチレン、トリクロロエチレン、クロロベンゼン、1,1,1,2−テトラフルオロエタンである。より好ましくは、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエチレン、トリクロロエチレン、クロロベンゼン、1,1,1,2−テトラフルオロエタンである。
脂肪酸エステル類としては、特に制限されないが、例えば、プロピオン酸エステル、酢酸エステル、ギ酸エステル等を挙げることができる。酢酸エステル、ギ酸エステルが好ましく、酢酸エステルがより好ましい。エステル基としては、特に制限されないが、炭素数1〜8のアルキルエステル、炭素数7〜12のアラルキルエステル等が挙げられ、好ましくは炭素数1〜6のアルキルエステル、より好ましくは炭素数1〜4のアルキルエステルである。
プロピオン酸エステルとしては、例えば、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸ブチル、プロピオン酸イソペンチル等を挙げることができる。好ましくはプロピオン酸エチルである。
酢酸エステルとしては、例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸sec−ブチル、酢酸ペンチル、酢酸イソペンチル、酢酸sec−ヘキシル、酢酸シクロヘキシル、酢酸ベンジル等を挙げることができる。好ましくは、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸sec−ブチル、酢酸ペンチル、酢酸イソペンチル、酢酸sec−ヘキシル、酢酸シクロヘキシルである。より好ましくは、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチルであり、最も好ましくは、酢酸エチルである。
ギ酸エステルとしては、例えば、ギ酸メチル、ギ酸エチル、ギ酸プロピル、ギ酸イソプロピル、ギ酸ブチル、ギ酸イソブチル、ギ酸sec−ブチル、ギ酸ペンチル等を挙げることができる。好ましくは、ギ酸メチル、ギ酸エチル、ギ酸プロピル、ギ酸ブチル、ギ酸イソブチル、ギ酸ペンチルであり、最も好ましくは、ギ酸エチルである。
エーテル類、ニトリル類としては、先述の溶媒を挙げることができる。
上記溶媒の中でも、沸点、粘性等の性質(例えば、溶解度を高めるための適度な加温ができ、且つ、湿体からの溶剤の乾燥除去や晶析濾液等からの溶剤回収の行いやすい沸点(1気圧下、約30〜150℃)、室温での取り扱い時及び室温以下に冷却した時も固化しにくい融点(約20℃以下、好ましくは約10℃以下、より好ましくは約0℃以下)を持ち、粘性が低い(20℃において約10cp以下等))を考慮して選定するのが好ましい。工業的な作業上の観点から、常温で揮発し難いものが好ましく、一般に、例えば、沸点が約80℃以上、さらには約90℃以上のものが特に好ましい。
上記溶媒のうち、還元反応の溶媒としては、水と相溶性の低い溶媒(炭化水素類、脂肪酸エステル類等)を用いるのが特に好ましく、後述する還元剤や還元剤に由来する不純物を水相に抽出、除去し、還元型補酵素Q10を効率的に精製、取得するのを助成する。
還元型補酵素Q10は高濃度の溶液ほど酸化されにくい傾向にある。上記溶媒に対して還元型補酵素Q10は高い溶解性を示し、上記溶媒はこの点でも酸化防護に好適である。還元型補酵素Q10の酸化を防護するために好ましい濃度は、溶媒の種類等により一律に規定できないが、上記溶媒に対する還元型補酵素Q10の濃度として、普通約1w/w%以上、好ましくは約2w/w%以上である。上限は、特に制限されないが、実際的な操作性という観点から、約400w/w%、好ましくは約200w/w%、より好ましくは約100w/w%、さらに好ましくは約50w/w%である。
このように上記溶媒の使用によって、望ましくない酸素の副反応は、還元工程を通して最小化される。
還元反応は、上記の溶媒中、水素化金属化合物、鉄(金属又は塩としての鉄)、亜鉛(金属としての亜鉛)、次亜硫酸類、アスコルビン酸類等を還元剤として用いて実施することができる。
水素化金属化合物としては、特に制限されないが、例えば、水素化ホウ素ナトリウム、水素化リチウムアルミニウム等を挙げることができる。上記水素化金属化合物の使用量は、水素化金属化合物の種類により異なり、一律に規定できないが、普通、理論水素当量の1〜3倍量で好適に実施できる。
鉄又は亜鉛を用いる還元は、普通、酸を使用して実施される。酸としては、特に制限されないが、例えば、酢酸等の脂肪酸、メタンスルホン酸等のスルホン酸、塩酸や硫酸等の無機酸等を挙げることができる。好ましくは無機酸であり、より好ましくは硫酸である。
鉄の使用量は、特に制限されないが、酸化型補酵素Q10の仕込み重量に対して、例えば、約1/5重量以上で好適に実施できる。上限は特に制限されないが、経済性の観点等から、約2倍重量以下である。なお、鉄は、金属のみならず、硫酸鉄(II)等の塩の形態でも使用できる。
亜鉛の使用量は、特に制限されないが、酸化型補酵素Q10の仕込み重量に対して、例えば、約1/10重量以上で好適に実施できる。上限は特に制限されないが、経済性の観点等から、約2倍重量以下である。
次亜硫酸類としては、特に制限されず、次亜硫酸の、アルカリ金属塩(リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩等)、アルカリ土類金属塩(マグネシウム塩、カルシウム塩等)、アンモニウム塩等が用いられる。好ましくはリチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩であり、より好ましくはナトリウム塩である。
上記次亜硫酸類の使用量は、特に制限されないが、酸化型補酵素Q10の仕込み重量に対して、約1/5重量以上、好ましくは約2/5重量以上、より好ましくは約3/5重量以上である。多くても特に支障はないが、経済的に不利であるため、約2倍重量以下、好ましくは同重量以下で用いられる。約2/5重量〜約同重量の範囲で好適に実施できる。
アスコルビン酸類としては、特に制限されず、例えば、アスコルビン酸のみならず、rhamno−アスコルビン酸、arabo−アスコルビン酸、gluco−アスコルビン酸、fuco−アスコルビン酸、glucohepto−アスコルビン酸、xylo−アスコルビン酸、galacto−アスコルビン酸、gulo−アスコルビン酸、allo−アスコルビン酸、erythro−アスコルビン酸、6−デスオキシアスコルビン酸等のアスコルビン酸に類するものを含み、さらに、それらのエステル体や塩であってもかまわない。これらは、L体、D体、あるいは、ラセミ体であっても良い。具体的には、例えば、L−アスコルビン酸、L−アスコルビン酸パルミテート、L−アスコルビルステアレート、D−arabo−アスコルビン酸等を挙げることができる。
還元型補酵素Q10の製造において、上記のアスコルビン酸類をいずれも好適に使用しうるが、生成した還元型補酵素Q10との分離のしやすさ等を考慮すると、上記のアスコルビン酸類のうち、特に水溶性のものが好適に用いられ、最も好ましくは、入手容易性、価格等の観点から、L−アスコルビン酸、D−arabo−アスコルビン酸等のフリー体である。
上記アスコルビン酸類の使用量は、特に制限されず、酸化型補酵素Q10を還元型補酵素Q10に変換しうる有効量であればよく、酸化型補酵素Q10に対して、普通1倍モル量以上、好ましくは1.2倍モル量以上である。上限は特に制限されないが、経済性も考慮して、普通10倍モル量、好ましくは5倍モル量、より好ましくは3倍モル量である。
上記還元剤及び/又は上記還元剤に由来する化合物の多くは水溶性である。例えば、次亜硫酸類を用いた場合は、亜硫酸水素類が副生する。また、アスコルビン酸類を用いた場合には、デヒドロアスコルビン酸が副生し、デヒドロアスコルビン酸からはさらに2,3−ジケトグロン酸やシュウ酸が副生する。さらに、鉄や亜鉛を用いた場合には、還元後に塩類(例えば塩酸を用いた場合に副生する塩化鉄や塩化亜鉛等)が副生する。先述のごとく、これら還元剤及び/又は還元剤に由来する化合物は、本発明の精製方法を用いることにより、いずれも効率よく除去することができ、高品質の還元型補酵素Q10を取得することができる。
上記還元剤のうち、還元能力、収率、品質等の観点から、亜鉛、次亜硫酸類、アスコルビン酸類がより好ましく、次亜硫酸類(具体的には、次亜硫酸塩)、アスコルビン酸類がさらに好ましい。
還元反応においては、先述したアルコール類及び/又は水を好適に併用することができる。水の併用は、特に還元剤として鉄、亜鉛、次亜硫酸類を用いる場合に好適である。還元剤として水素化金属化合物やアスコルビン酸類を用いる場合には、アルコール類を好ましく併用することができる。水、アルコール類の併用は、これらの特性が発揮され、反応速度の向上や反応収率の向上等に寄与する。
以下に好ましい還元方法について詳細に述べる。
上記次亜硫酸類を用いる還元は、水を併用して、上記の炭化水素類、脂肪酸エステル類、エーテル類、及び、ニトリル類のうち少なくとも一種の有機溶媒(好ましくは炭化水素類、より好ましくは脂肪族炭化水素、さらに好ましくはヘプタン類、特に好ましくはヘプタン)との混合溶媒系で実施するのが好ましい。
その際、反応時のpHは、収率等の観点から、普通pH7以下、好ましくはpH3〜7、より好ましくはpH3〜6で実施される。上記pHは、塩酸や硫酸等の鉱酸等の酸や、水酸化ナトリウム等のアルカリ金属水酸化物等の塩基を用いて、調整することができる。
上記次亜硫酸類を用いる還元において、水の使用量は、特に制限されず、還元剤である次亜硫酸類を適度に溶解する量であれば良く、例えば、上記次亜硫酸類の水に対する重量が、普通約30w/w%以下、好ましくは約20w/w%以下になるように調整するのが良い。又、生産性等の観点から、普通約1w/w%以上、好ましくは約5w/w%以上、より好ましくは約10w/w%以上であるのが良い。
上記アスコルビン酸類を用いる還元も、上記の炭化水素類、脂肪酸エステル類、エーテル類、及び、ニトリル類のうち、特に水と相溶性の高い溶媒、なかでも水と相溶性の高いエーテル類及びニトリル類、具体的には、テトラヒドロフラン、ジオキサン、アセトニトリル等を用いて実施することができるが、先述したアルコール類及び/又はケトン類(好ましくは、水と相溶性の高いアルコール類及び/又はケトン類(具体的には、アルコール類としては、炭素数1〜5、好ましくは炭素数1〜4、より好ましくは炭素数1〜3の1価又は2価(好ましくは1価)のアルコール、ケトン類としては、アセトン、メチルエチルケトン等))を使用するのが特に好ましい。すなわち、アスコルビン酸類を用いる還元反応においては、水溶性有機溶媒の使用が好ましい。
又、アスコルビン酸類を用いる還元においては、反応温度の低下、反応時間の短縮等の観点から、反応促進剤として塩基性物質や亜硫酸水素塩等を共存させて実施することができる。
上記の塩基性物質としては、特に制限されず、例えば、無機化合物、有機化合物を問わず使用しうる。上記無機化合物としては、特に制限されないが、例えば、金属(好ましくは、アルカリ金属、アルカリ土類金属等)の水酸化物、炭酸塩、炭酸水素塩や、アンモニア等を挙げることができる。その代表的なものとして、例えば、水酸化ナトリウム等のアルカリ金属水酸化物、炭酸ナトリウム等のアルカリ金属炭酸塩、炭酸水素ナトリウム等のアルカリ金属炭酸水素塩、炭酸マグネシウム等のアルカリ土類金属炭酸塩等を挙げることができる。上記有機化合物としては、特に制限されないが、例えば、トリエチルアミン等のアミン等を挙げることができる。
上記の塩基性物質のうち、金属(好ましくは、アルカリ金属、アルカリ土類金属等)の炭酸塩、炭酸水素塩、アンモニア等の無機化合物;トリエチルアミン等のアミン等の有機化合物等の、弱い塩基性物質(弱塩基又は弱アルカリ)を好ましく使用できる。より好ましくは、上記の弱塩基性の無機化合物である。
また、亜硫酸水素塩としては、例えば、亜硫酸水素ナトリウム等のアルカリ金属亜硫酸水素塩等を好適なものとして挙げることができる。
上記反応促進剤の量は、期待する程度の反応促進効果を発揮しうる量(有効量)であればよく、特に制限されないが、一般的に、経済性も考慮して、アスコルビン酸類に対して、普通約20倍モル量以下、好ましくは約10倍モル量以下、より好ましくは約5倍モル量以下、さらに好ましくは約2倍モル以下である。下限は、特に制限されないが、普通約0.01倍モル量以上、好ましくは約0.05倍モル量以上、より好ましくは約0.1倍モル量以上、さらに好ましくは約0.2倍モル量以上である。
還元反応は、強制流動下に実施するのが好ましい。単位容積当たりの撹拌所要動力として、通常約0.01kW/m以上、好ましくは約0.1kW/m以上、より好ましくは約0.3kW/m以上の流動が好ましい。上記の強制流動は、通常、撹拌翼の回転により与えられるが、上記流動が得られれば必ずしも撹拌翼を用いる必要はなく、例えば、液の循環による方法等を利用しても良い。
還元温度は、還元剤の種類や量によって異なり、一律に規定できない。例えば、次亜硫酸類を用いる還元においては、普通約100℃以下、好ましくは約80℃以下、より好ましくは約60℃以下で実施される。下限は、系の固化温度である。通常約0〜約100℃、好ましくは約0〜約80℃、より好ましくは約0〜約60℃で好適に実施できる。アスコルビン酸類を用いる還元においては、普通約30℃以上、好ましくは約40℃以上、より好ましくは約50℃以上で実施される。上限は系の沸点である。通常約30〜約150℃、好ましくは約40〜約120℃、より好ましくは約50〜約100℃で好適に実施できる。
反応濃度は、特に制限はないが、溶媒の重量に対する酸化型補酵素Q10の重量として、普通約1w/w%以上、好ましくは約2w/w%以上、より好ましくは約3w/w%以上、さらに好ましくは約5w/w%以上、特に好ましくは約10w/w%以上、最も好ましくは約15w/w%以上である。上限は、特に制限されないが、普通約60w/w%、好ましくは約50w/w%、より好ましくは約40w/w%、さらに好ましくは約30w/w%である。一般に、約2〜約30w/w%、好ましくは約5〜約30w/w%、より好ましくは約10〜約30w/w%で好適に実施できる。
還元反応は、通常48時間以内、好ましくは24時間以内、より好ましくは10時間以内、さらに好ましくは5時間以内に完了させることができる。
また、還元型補酵素Q10の油状物は、酸化型補酵素Q10の油状物を、水中で、上記還元剤を用いて還元した後、水相を除去することによっても取得することができる。
この場合、還元温度は、酸化型補酵素Q10の純度等にもよるが、普通約45℃以上、好ましくは約48℃以上、より好ましくは約50℃以上で実施される。上限は、系の沸点であるが、通常約100℃以下、好ましくは約80℃以下、より好ましくは約60℃以下である。
この酸化型補酵素Q10の油状物を水中で還元する方法においては、有機溶媒の分離及び濃縮等による時間の消費、高価な製造装置や容量の増大を避けて、還元型補酵素Q10を合成することができる。
なお、上記還元反応及び後処理(有機相の分離)は、脱酸素雰囲気下で実施するのが極めて好ましく、特に次亜硫酸類を用いた還元反応では、脱酸素雰囲気下での実施が、還元反応収率向上や還元剤量の削減に大きく寄与することも見い出した。脱酸素雰囲気は、不活性ガスによる置換、減圧、沸騰やこれらを組み合わせることにより達成できる。少なくとも、不活性ガスによる置換、即ち、不活性ガス雰囲気を用いるのが好適である。上記不活性ガスとしては、例えば、窒素ガス、ヘリウムガス、アルゴンガス、水素ガス、炭酸ガス等を挙げることができ、好ましくは窒素ガスである。
次に、本発明の精製方法で使用する還元型補酵素Q10の結晶について説明する。本発明では、還元型補酵素Q10を含有する溶液から晶析、濃縮乾固等により取得した結晶、あるいは既存の還元型補酵素Q10の結晶等を用いることができる。また、還元型補酵素Q10の油状物を固化させた固体であってもよい。好ましくは、晶析、濃縮乾固等により取得した還元型補酵素Q10の結晶であり、より好ましくは、酸化型補酵素Q10を還元した後、晶析、濃縮乾固等により取得した還元型補酵素Q10の結晶であり、特に好ましくは、酸化型補酵素Q10を還元した後、晶析により取得した還元型補酵素Q10の結晶である。
結晶を取得するために使用しうる溶媒としては、特に制限されず、炭化水素類、脂肪酸エステル類、エーテル類、アルコール類、脂肪酸類、ケトン類、窒素化合物類(ニトリル類、アミド類を含む)、硫黄化合物類、水等を挙げることができる。
炭化水素類、脂肪酸エステル類、エーテル類、アルコール類、脂肪酸類、ケトン類、ニトリル類、アミド類、硫黄化合物類としては、先述の溶媒を挙げることができる。
ニトリル類、アミド類を除く窒素化合物類としては、例えば、ニトロメタン、トリエチルアミン、ピリジン等を挙げることができる。
望ましくない酸素の副反応を抑制して高品質の還元型補酵素Q10の結晶を得るために、上記酸化からの防護効果の高い溶媒、即ち、先述した炭化水素類、脂肪酸エステル類、エーテル類、及びニトリル類のうちの少なくとも一種の溶媒を用いることが好ましい。なかでも、溶媒として、炭化水素類、脂肪酸エステル類がより好ましく、さらに好ましくは炭化水素類であり、特に好ましくはヘプタン類である。
また、結晶の取得法として後述する晶析を利用し、先述のアルコール類及び/又はケトン類を用いた場合には、スラリー性状や結晶性状の良い還元型補酵素Q10の結晶を取得することができるため、これらの溶媒を用いるのも好ましい。
還元型補酵素Q10の晶析は、冷却、濃縮、溶媒置換、貧溶媒の使用等の一般的な晶析操作を、単独で又は適宜組み合わせて、実施することができる。特に、冷却操作(冷却晶析)を用いる、又は、併用するのが好ましい。
また、還元型補酵素Q10の晶析は、従来公知の方法により得られた、あるいは、先述した還元方法等により製造された還元型補酵素Q10を含有する反応液や抽出液に含有される不純物の除去も兼ねて、精製晶析するのが特に効果的である。これにより、共存する不純物、特に、通常除去するのが必ずしも容易ではない構造の類似した類縁化合物(具体的には、還元型補酵素Q、還元型補酵素Q、還元型補酵素Q等)を除去することができる。アルコール類及び/又はケトン類は、上記の構造の類似した化合物を除去するのに特に効果的な溶媒でもある。
さらに、アルコール類及び/又はケトン類を用いる際に、少量の水を共存させた場合、還元型補酵素Q10の溶解性を好適に減じて高い収率を得ることができ、また、スラリー性状を改善することができ、そして特に、注目すべきことであるが、固液分離性(濾過性)を大きく改善することもできる。
水と上記アルコール類及び/又はケトン類との混合割合は、溶媒の種類によっても異なるので一律に規定できず、実質的に上記アルコール類及び/又はケトン類を主成分とする溶媒であれば特に制限されない。つまり、水との混合溶媒中におけるアルコール類及び/又はケトン類の割合は、下限は、約90w/w%、好ましくは約91w/w%、より好ましくは約92w/w%、さらに好ましくは約93w/w%であり、上限は、約99.5w/w%、好ましくは約99w/w%、より好ましくは約98w/w%、さらに好ましくは約97w/w%である。通常、約90〜約99.5%で好適に実施でき、約93〜約97w/w%で最も好適に実施できる。
還元型補酵素Q10の晶析温度は、晶析溶媒の種類や晶析方法にもより異なるので、一律に規定できないが、例えば、普通約25℃以下、好ましくは約20℃以下、より好ましくは約15℃以下、さらに好ましくは約10℃以下である。下限は、系の固化温度である。通常約0〜約25℃で好適に実施できる。
得られる還元型補酵素Q10中への各種不純物の混入を最小化する、又は良好な性状のスラリーを得る目的で、晶析時の単位時間当たりの結晶の晶出量を制御することができる。好ましい単位時間当たりの晶出量は、例えば、単位時間当たり全晶出量の約50%量が晶出する速度(50%量/時間)以下であり、好ましくは、単位時間当たり全晶出量の約25%量が晶出する速度(即ち、25%量/時間)以下である。また、冷却晶析における冷却速度は、普通、約40℃/時間以下であり、好ましくは約20℃/時間以下である。
還元型補酵素Q10の晶析は、強制流動下に実施するのが好ましい。過飽和の形成を抑制し、スムースに核化・結晶成長を行うためには、あるいは、高品質化の観点から、単位容積当たりの撹拌所要動力として、通常約0.01kW/m以上、好ましくは約0.1kW/m以上、より好ましくは約0.3kW/m以上の流動が好ましい。上記の強制流動は、通常、撹拌翼の回転により与えられるが、上記流動が得られれば必ずしも撹拌翼を用いる必要はなく、例えば、液の循環による方法等を利用しても良い。
また、晶析に際しては、過飽和の形成を抑制し、スムースに核化・結晶成長を行うために、種晶を添加するのが好ましい。
晶析の濃度は、晶析溶媒の種類や晶析方法により異なるので、一律に規定できないが、例えば、結晶化終了時の結晶化溶媒の重量に対する還元型補酵素Q10の重量として、約15w/w%以下、好ましくは約13w/w%以下、より好ましくは約10w/w%以下である。下限は、生産性の観点から、普通約1w/w%以上、好ましくは約2w/w%以上、より好ましくは約5w/w%以上である。普通約5〜約10w/w%で好適に実施できる。
このようにして得られる還元型補酵素Q10の結晶は、例えば、遠心分離、加圧濾過、減圧濾過等による固液分離、さらに、必要に応じてケーキ洗浄を行い、湿体として取得することができる。また、さらに不活性ガスで内部を置換した減圧乾燥器(真空乾燥器)に湿体を仕込み、減圧下、乾燥し、乾体として取得することができ、乾体として取得するのが好ましい。
次に、本発明の精製方法で使用する還元型補酵素Q10の油状物について説明する。本発明で使用する還元型補酵素Q10の油状物は、上記のように、既存の酸化型補酵素Q10の油状物を還元して取得した還元型補酵素Q10の油状物であっても良く、還元型補酵素Q10結晶を融解した油状物でも良いし、また還元型補酵素Q10を含有する溶液を融解温度以上の温度で濃縮して取得した油状物であっても良い。言うまでもなく、先述した還元方法により得られた還元型補酵素Q10を含有する溶液を融解温度以上の温度で濃縮して取得した油状物も用いることができる。
還元型補酵素Q10の油状物を取得するために用いる還元型補酵素Q10を含有する有機相は、特に制限されないが、望ましくない酸素の副反応を抑制して高品質の還元型補酵素Q10の油状物を得るためには、上記酸化からの防護効果の高い溶媒、即ち、炭化水素類、脂肪酸エステル類、エーテル類、及び、ニトリル類のうち少なくとも一種の溶媒による溶液であるのが好ましい。なかでも、溶媒として、炭化水素類、脂肪酸エステル類がより好ましく、さらに好ましくは炭化水素類であり、最も好ましくはヘプタン類である。なお、本発明に用いる還元型補酵素Q10を含有する有機相は、上記溶液であっても良く、また、該溶液を通常の方法で濃縮した濃縮物であってもよい。
還元型補酵素Q10を含有する有機相の濃縮に際して、共存する溶媒を完全にあるいはほぼ完全に留去するために、還元型補酵素Q10又は還元型補酵素Q10を主成分とする濃縮物の融解温度以上の温度で該有機層を濃縮する。これにより、溶媒が完全にあるいはほぼ完全に留去された還元型補酵素Q10の油状物が取得できる。なお、融解温度に幅がある場合は、融解開始温度以上であればよい。
本発明において、還元型補酵素Q10油状物を得るための上記濃縮温度は、共存する有機溶媒の量にもよる為、一律には規定できないが、例えば、好ましくは約40℃以上、より好ましくは約45℃以上、さらに好ましくは約48℃以上、特に好ましくは約50℃以上、最も好ましくは約60℃以上である。溶媒の種類や量にもよるが、普通約40〜約140℃、好ましくは約40〜約100℃、より好ましくは約50〜約80℃の範囲で好適に実施できる。上記濃縮は、常圧下、あるいは、減圧下に実施される。
上記の方法によれば、有機相中の還元型補酵素Q10の純度が、例えば、約80重量%以上、好ましくは約90重量%以上、より好ましくは約95重量%以上の場合でも、攪拌不良を生じることなく有機溶媒を完全に留去して、還元型補酵素Q10を好適に油状物として取得できる。
尚、溶媒を留去して還元型補酵素Q10の油状物を取得する場合、上記還元型補酵素Q10油状物中の溶媒の含有量は、油状物全体の普通約10重量%以下、好ましくは約5重量%以下、より好ましくは約2重量%以下である。
以上、本発明の精製方法によれば、操作性に優れた方法にて、還元型補酵素Q10に残存する水溶性不純物、特に、還元剤及び/又は還元剤に由来する不純物を効率よく除去することができる。
本発明の精製方法により得られる還元型補酵素Q10は、極めて高品質であり、還元型補酵素Q10中に含まれる水溶性不純物の重量は、0.15%以下、好ましくは0.10%以下、より好ましくは0.08%以下が期待できる。
本発明は、上述の構成よりなるので、工業的規模での生産に適した、操作性に優れた方法にて、簡便かつ効率よく還元型補酵素Q10を精製することができ、高品質の還元型補酵素Q10を取得することができる。
以下に実施例をあげて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
また、実施例中のL−アスコルビン酸の含有率はHPLCにて求め、次亜硫酸ナトリウム及び次亜硫酸ナトリウム由来の不純物の含有率はイオンクロマトグラフィーを使用してナトリウム含量を定量し、次亜硫酸ナトリウムに換算して求めたが、上記還元剤及び/又は還元剤に由来する不純物の含有率は、本発明における還元型補酵素Q10の精製に対する限界値を示すものではない。
(製造例1)
1000gのエタノール中に、100gの酸化型補酵素Q10、60gのL−アスコルビン酸を加え、78℃にて攪拌し、還元反応を行った。30時間後、50℃まで冷却し、同温を保持しながらエタノールを400g、水を100g添加した。このエタノール溶液(還元型補酵素Q10を100gを含む)を攪拌(攪拌所要動力0.3kW/m)しながら、10℃/時間の冷却速度で2℃まで冷却し、白色のスラリーを得た。得られたスラリーを減圧ろ過し、湿結晶を減圧乾燥(20〜40℃、1〜30mmHg)することにより、白色の乾燥結晶101g(L−アスコルビン酸3.2%、シュウ酸0.36%を含む)を得た。尚、減圧乾燥を除くすべての操作は、窒素雰囲気下で実施した。
(実施例1、比較例1)
製造例1で取得した還元型補酵素Q10の結晶10g(L−アスコルビン酸3.2%、シュウ酸0.36%を含む)を、それぞれエタノール含量の異なるエタノール水溶液190gに添加してスラリーとし、25℃にて10分間撹拌した。このスラリーを減圧濾過し、湿結晶を減圧乾燥(20〜40℃、1〜30mmHg)することにより、白色の乾燥結晶を得た。このときの結晶中に残存するL−アスコルビン酸及びシュウ酸の量、還元型補酵素Q10の回収率を表1に示す。尚、減圧乾燥を除くすべての操作は、窒素雰囲気下で実施した。
また、比較例1として、上記実施例1においてエタノール水溶液190gの代わりに水190gを加えた場合の結果も示す。比較例1では、壁面に結晶が付着する等、液性状が非常に悪く、払い出しが非常に困難であった。
Figure 2006513274
(実施例2)
製造例1で取得した還元型補酵素Q10の結晶10g(L−アスコルビン酸3.2%、シュウ酸0.36%を含む)を、エタノール190gに添加してスラリーとし、2℃にて10分間撹拌した。このスラリーを減圧濾過し、湿結晶を減圧乾燥(20〜40℃、1〜30mmHg)することにより、白色の乾燥結晶を得た。尚、減圧乾燥を除くすべての操作は、窒素雰囲気下で実施した。このとき、結晶中に残存するL−アスコルビン酸の量は0.06%、シュウ酸の量は0.07%であり、還元型補酵素Q10の回収率は96%であった。
(実施例3、比較例2)
製造例1で取得した還元型補酵素Q10の結晶10g(L−アスコルビン酸3.2%、シュウ酸0.36%を含む)を60℃にて油状物とし、30重量%エタノール水溶液190gを添加して、同温にて10分間撹拌した。撹拌後、25℃まで冷却することにより、油状物を結晶とした。このスラリーを減圧濾過し、湿結晶を減圧乾燥(20〜40℃、1〜30mmHg)することにより、白色の乾燥結晶を得た。このときの結晶中に残存するL−アスコルビン酸及びシュウ酸の量、還元型補酵素Q10の回収率を表2に示す。尚、減圧乾燥を除くすべての操作は、窒素雰囲気下で実施した。
また、比較例2として、上記実施例3においてエタノール水溶液190gの代わりに水190gを加えた場合の結果も示す。比較例2では、還元型補酵素Q10の油状物は均一に分散せず、冷却後も撹拌翼に結晶が付着する等、液性状は非常に悪く、払い出しが非常に困難であった。
Figure 2006513274
(実施例4)
製造例1で取得した還元型補酵素Q10の結晶10g(L−アスコルビン酸3.2%、シュウ酸0.36%を含む)を、30重量%アセトン水溶液190gに添加してスラリーとし、25℃にて10分間撹拌した。このスラリーを減圧濾過し、湿結晶を減圧乾燥(20〜40℃、1〜30mmHg)することにより、白色の乾燥結晶を得た。尚、減圧乾燥を除くすべての操作は、窒素雰囲気下で実施した。このとき、結晶中に残存するL−アスコルビン酸の量は0.09%、シュウ酸の量は0.04%であり、還元型補酵素Q10の回収率は、99%であった。
(製造例2)
100gの酸化型補酵素Q10を25℃で1000gのヘプタンに溶解させた。攪拌(攪拌所要動力0.3kW/m)しながら、還元剤として次亜硫酸ナトリウム(純度75%以上)100gに1000mlの水を加えて溶解させた水溶液を、徐々に添加し、25℃、pH4〜6で還元反応を行った。2時間の反応後、攪拌(攪拌所要動力0.3kW/m)を続け、10℃/時間の冷却速度で2℃まで冷却し、白色のスラリーを得た。尚、以上すべての操作は窒素雰囲気下で実施した。得られたスラリーを減圧ろ過し、湿結晶を減圧乾燥(20〜40℃、1〜30mmHg)することにより、白色の乾燥結晶95g(次亜硫酸ナトリウム及び次亜硫酸ナトリウム由来の不純物を次亜硫酸ナトリウムとして1.0%含む)を得た。尚、減圧乾燥を除くすべての操作は、窒素雰囲気下で実施した。
(実施例5、比較例3)
製造例2で取得した還元型補酵素Q10の結晶10g(次亜硫酸ナトリウム及び次亜硫酸ナトリウム由来の不純物を次亜硫酸ナトリウムとして1.0%含む)を、実施例1と同様の方法にて1時間撹拌し、精製した。このときの固形物中に残存する次亜硫酸ナトリウム及び次亜硫酸ナトリウム由来の不純物の量、還元型補酵素Q10の回収率を表3に示す。
また、比較例3として、上記実施例5においてエタノール水溶液190gの代わりに水190gを加えた場合の結果も示す。比較例3では、壁面に結晶が付着する等、液性状が非常に悪く、払い出しが非常に困難であった。
Figure 2006513274
(実施例6、比較例4)
製造例2で取得した還元型補酵素Q10の結晶10g(次亜硫酸ナトリウム及び次亜硫酸ナトリウム由来の不純物を次亜硫酸ナトリウムとして1.0%含む)を、30重量%エタノール水溶液190g中、60℃にて1時間撹拌した。撹拌後、同温にて水相を除去し、還元型補酵素Q10の油状物を得た。この油状物を、自結晶を敷いたプレートの上(40℃)に滴下し、半球状の固形物を得た。このときの結晶中に残存する次亜硫酸ナトリウム及び次亜硫酸ナトリウム由来の不純物の量、還元型補酵素Q10の回収率を表4に示す。
また、比較例4として、上記実施例6においてエタノール水溶液190gの代わりに水190gを加えた場合の結果も示す。比較例4では、還元型補酵素Q10の油状物は均一に分散せず、液性状は非常に悪かった。
Figure 2006513274
(参考例1)
表5に示す各種溶媒20gに1gの還元型補酵素Q10(還元型補酵素Q10/酸化型補酵素Q10の重量比は99.6/0.4)を、25℃下で溶解した。大気中、25℃で24時間の攪拌後、液中の還元型補酵素Q10/酸化型補酵素Q10の重量比を測定した結果を表5に示す。
Figure 2006513274
(参考例2)
表6に示す各種溶媒100gに1gの還元型補酵素Q10(還元型補酵素Q10/酸化型補酵素Q10の重量比は99.6/0.4)を、35℃下で溶解した。大気中、35℃で24時間の攪拌後、液中の還元型補酵素Q10/酸化型補酵素Q10の重量比を測定した結果を表6に示す。
Figure 2006513274
本発明は、上述の構成よりなるので、工業的規模での生産に適した、操作性に優れた方法にて、簡便かつ効率よく還元型補酵素Q10を精製することができ、高品質の還元型補酵素Q10を取得することができる。

Claims (19)

  1. 水溶性有機溶媒もしくは水溶性有機溶媒と水との混合溶媒を用いて還元型補酵素Q10の結晶及び/又は油状物を洗浄することにより、還元型補酵素Q10の結晶及び/又は油状物から水溶性不純物を除去することを特徴とする、還元型補酵素Q10の精製方法。
  2. 還元型補酵素Q10の結晶及び/又は油状物の洗浄は、還元型補酵素Q10の結晶及び/又は油状物が、水溶性有機溶媒もしくは水溶性有機溶媒と水との混合溶媒に分散した状態で行われる請求項1記載の還元型補酵素Q10の精製方法。
  3. 分散が強制流動下に行われる請求項2記載の還元型補酵素Q10の精製方法。
  4. 水溶性有機溶媒が、アルコール類、ケトン類、エーテル類及びニトリル類から選ばれた少なくとも一つである請求項1〜3のいずれか一項に記載の還元型補酵素Q10の精製方法。
  5. 水溶性有機溶媒がエタノールである請求項4記載の還元型補酵素Q10の精製方法。
  6. 水溶性有機溶媒と水の混合溶媒を用いて洗浄を行う請求項1〜5のいずれか一項に記載の還元型補酵素Q10の精製方法。
  7. 水溶性有機溶媒の含有率が重量比で5w/w%以上の混合溶媒を用いて洗浄を行う請求項6記載の還元型補酵素Q10の精製方法。
  8. 水溶性不純物が、酸化型補酵素Q10を還元型補酵素Q10に変換するために使用した還元剤及び/又は還元剤に由来する不純物である請求項1〜7のいずれか一項に記載の還元型補酵素Q10の精製方法。
  9. 還元剤及び/又は還元剤に由来する不純物が次亜硫酸類及び/又は次亜硫酸類に由来する不純物である請求項8記載の還元型補酵素Q10の精製方法。
  10. 還元剤及び/又は還元剤に由来する不純物がアスコルビン酸類及び/又はアスコルビン酸類に由来する不純物である請求項8記載の還元型補酵素Q10の精製方法。
  11. アスコルビン酸類に由来する不純物がシュウ酸である請求項10記載の還元型補酵素Q10の精製方法。
  12. 洗浄する際の還元型補酵素Q10の濃度が、洗浄終了時の溶媒の重量に対する還元型補酵素Q10の重量として30w/w%以下である請求項1〜11のいずれか一項に記載の還元型補酵素Q10の精製方法。
  13. 還元型補酵素Q10が結晶である請求項1〜12のいずれか一項に記載の還元型補酵素Q10の精製方法。
  14. 洗浄温度が50℃以下である請求項13記載の還元型補酵素Q10の精製方法。
  15. 還元型補酵素Q10が油状物であり、洗浄温度が還元型補酵素Q10の融解温度以上である請求項1〜14のいずれか一項に記載の還元型補酵素Q10の精製方法。
  16. 洗浄温度が40℃以上である請求項15記載の還元型補酵素Q10の精製方法。
  17. 還元型補酵素Q10の油状物から不純物を除去した後、該溶液を冷却することにより還元型補酵素Q10の結晶を取得する請求項15又は16に記載の還元型補酵素Q10の精製方法。
  18. 還元型補酵素Q10の油状物から不純物を除去した後、該油状物に種晶を接触させることにより還元型補酵素Q10の結晶を取得する請求項15又は16に記載の還元型補酵素Q10の精製方法。
  19. 脱酸素雰囲気下に行われる請求項1〜18のいずれか一項に記載の還元型補酵素Q10の精製方法。
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