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JP2006321114A - 多層離型フィルム - Google Patents

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JP2006321114A
JP2006321114A JP2005146033A JP2005146033A JP2006321114A JP 2006321114 A JP2006321114 A JP 2006321114A JP 2005146033 A JP2005146033 A JP 2005146033A JP 2005146033 A JP2005146033 A JP 2005146033A JP 2006321114 A JP2006321114 A JP 2006321114A
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Yasushi Goto
靖志 五藤
Masahiro Tsuchiya
雅弘 土谷
Hirotake Matsumoto
弘丈 松本
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Sekisui Chemical Co Ltd
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Sekisui Chemical Co Ltd
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Abstract

【課題】 耐熱性、離型性、基板表面への追従性を有しつつ、熱プレス成形時におけるボイドの発生、接着剤の流れ出し及びフィルム端面でのクッション層樹脂の染み出しを抑制することが可能な多層離型フィルムを提供する。
【解決手段】少なくとも、示差走査熱量計を用いて測定した融点が200℃以上である結晶性芳香族ポリエステル樹脂からなる離型層と、示差走査熱量計を用いて測定した融点が70〜130℃であるポリオレフィン系樹脂からなるクッション層とを有する離型フィルムであって、前記クッション層は、70〜130℃、0.5〜5rad/secにおける複素粘性率が1.0×10〜1.0×10Pa・s、かつ、150〜200℃、0.5〜5rad/secにおける複素粘性率が1.0×10〜1.0×10Pa・sである多層離型フィルム。
【選択図】 なし

Description

本発明は、耐熱性、離型性、基板表面への追従性を有しつつ、熱プレス成形時におけるボイドの発生、接着剤の流れ出し及びフィルム端面でのクッション層樹脂の染み出しを抑制することが可能な多層離型フィルムに関する。
従来から、プリント配線基板、フレキシブルプリント配線基板、多層プリント配線板等の製造工程において、プリプレグ又は耐熱フィルムを介して銅張積層板又は銅箔を熱プレスする際には、離型フィルムが使用されている。また、フレキシブルプリント基板の製造工程において、電気回路を形成したフレキシブルプリント基板本体に、熱硬化型接着剤によってカバーレイフィルムを熱プレス接着する際にも、カバーレイフィルムと熱プレス板とが接着するのを防止するために、離型フィルムが広く使用されている。
近年、離型フィルムに対しては、熱プレス成形に耐え得る耐熱性、プリント配線基板や熱プレス板に対する離型性といった機能に加えて、環境問題や安全性に対する社会的要請の高まりから、廃棄処理の容易性が求められるようになってきた。また、熱プレス成形時の製品歩留り向上のため、銅回路に対する非汚染性も重要となってきている。
従来、離型フィルムとしては、特許文献1や特許文献2において開示されているような、フッ素系フィルム、シリコーン塗布ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリプロピレンフィルム等が用いられてきた。
しかしながら、フッ素系フィルムは、耐熱性、離型性、非汚染性に優れているが、高価であるうえ、廃棄処理において焼却する際に燃焼しにくく、有毒ガスを発生するという問題点があった。一方、シリコーン塗布ポリエチレンテレフタレートフィルム及びポリメチルペンテンフィルムは、シリコーン又は構成成分中の低分子量体が移行することによってプリント配線基板とりわけ銅回路の汚染を引き起こし品質を損なうおそれがあるという問題点があった。また、ポリプロピレンフィルムは耐熱性に劣り離型性が不充分であるという問題点があった。
また、熱プレス成形工程においては、基板表面の凹凸に対して離型フィルムが追従することが必要とされるが、従来の離型フィルムは対形状追従性に劣ることから、熱プレス成形時にフレキシブルプリント基板中にボイドが発生したり、電極部にカバーレイフィルムの接着剤が染み出し、電極部のめっき処理の障害となったりする等の問題があった。
これに対して、特許文献3には、軟化温度の低い樹脂を中間層として用いた多層離型フィルムが開示されており、作業性に優れることから広く用いられている。しかしながら、軟化温度の低い樹脂を中間層として用いた場合、熱プレス成形時の圧力によって、フィルムの端面から中間層の樹脂が染み出し、プリント基板やプレス板を汚染して生産性を損なう原因となっていた。
このような問題に対して、特許文献4には、ポリメチルペンテン又はポリメチルペンテンとα−オレフィンとの共重合体からなる離型側層及び離型反対側と、メルトフローレートが所定範囲の中間層との3層構造からなる離型多層フィルムが開示されている。
しかしながら、メルトフローレートは、所定の温度における樹脂の流れやすさを示すものであるため、成形性等を示す指標としては使用できるが、熱プレス成形時における加熱、加圧状態での中間層樹脂の物性、特にカバーレイフィルムの接着剤が溶融を開始する温度域での中間層樹脂の物性を規定するものではないため、依然として、フレキシブルプリント基板に発生するボイドの問題や、接着剤の流れ出しの問題を解決することはできなかった。
従って、耐熱性、離型性、基板表面への追従性といった離型フィルムに必要とされる性能を有しつつ、熱プレス成形時におけるボイドの発生、接着剤の流れ出し及びフィルム端面での樹脂の染み出しを抑制することが可能な離型フィルムが求められていた。
特開平2−175247号公報 特開平5−283862号公報 特開平2−24139号公報 特開2004−345159号公報
本発明は、耐熱性、離型性、基板表面への追従性を有しつつ、熱プレス成形時におけるボイドの発生、接着剤の流れ出し及びフィルム端面でのクッション層樹脂の染み出しを抑制することが可能な多層離型フィルムを提供することを目的とする。
本発明は、少なくとも、示差走査熱量計を用いて測定した融点が200℃以上である結晶性芳香族ポリエステル樹脂からなる離型層と、示差走査熱量計を用いて測定した融点が70〜130℃であるポリオレフィン系樹脂からなるクッション層とを有する離型フィルムであって、前記クッション層は、70〜130℃、0.5〜5rad/secにおける複素粘性率が1.0×10〜1.0×10Pa・s、かつ、150〜200℃、0.5〜5rad/secにおける複素粘性率が1.0×10〜1.0×10Pa・sである多層離型フィルムである。
以下に本発明を詳述する。
本発明者らは鋭意検討した結果、多層離型フィルムの離型層及びクッション層にそれぞれ融点の異なる所定の樹脂を用い、かつ、接着剤が溶融を開始する温度域及び接着剤が熱硬化する温度域におけるクッション層の複素粘性率を規定することで、耐熱性、離型性、非汚染性を確保することができ、かつ、熱プレス成形時におけるボイドの発生、接着剤の流れ出し及びフィルム端面でのクッション層樹脂の染み出しの問題を同時に解決できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
本発明の多層離型フィルムは、示差走査熱量計を用いて測定した融点が200℃以上である結晶性芳香族ポリエステル樹脂からなる離型層を有する。
上記離型層にこのような融点の高い樹脂を用いることで、上記離型層は、熱プレス成形工程においても、溶融することなく、離型性を有するとともに、上記離型層が破壊されることを防止できる。
なお、上記示差走査熱量計としては、例えば、DSC 2920(TAインスツルメント社製)等を用いることができる。
上記結晶性芳香族ポリエステル樹脂は、示差走査熱量計を用いて測定した融点の下限が200℃である。熱プレス成形工程は、通常200℃未満で行われることから、融点が200℃未満であると、上記熱プレス成形工程において、離型層が融解し、多層離型フィルムの耐熱性が低下する。好ましい下限は、220℃である。
上記示差走査熱量計を用いて測定した融点が200℃以上である結晶性芳香族ポリエステル樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリヘキサメチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、テレフタル酸ブタンジオールポリテトラメチレングリコール共重合体等が挙げられる。これらは単独で用いられてもよく、2種類以上が併用されてもよい。これらの中では、非汚染性及び結晶性に優れることから、ポリブチレンテレフタレートが好ましい。
上記離型層には、安定剤を含有させてもよい。上記安定剤としては、例えば、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、3,9−ビス{2−〔3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル) −プロピオニロキシ〕−1,1−ジメチルエチル}−2,4,8,10−テトラオキサスピロ〔5,5〕ウンデカン等のヒンダードフェノール系酸化防止剤;トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、トリラウリルホスファイト、2−t−ブチル−α−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−p−クメニルビス(p−ノニルフェニル)ホスファイト、ジミリスチル3,3’−チオジプロピオネート、ジステアリル3,3’−チオジプロピオネート、ペンタエリスチリルテトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート) 、ジトリデシル3,3’−チオジプロピオネート等の熱安定剤等が挙げられる。
上記離型層は、本発明の効果を損なわない範囲で、繊維、無機充填剤、難燃剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、無機物、高級脂肪酸塩等の添加剤を含有してもよい。上記繊維としては、例えば、ガラス繊維、炭素繊維、ボロン繊維、炭化珪素繊維、アルミナ繊維、アモルファス繊維、シリコン・チタン・炭素系繊維等の無機繊維;アラミド繊維等の有機繊維等が挙げられる。
上記無機充填剤としては、例えば、炭酸カルシウム、酸化チタン、マイカ、タルク等が挙げられる。
上記難燃剤としては、例えば、ヘキサブロモシクロドデカン、トリス−(2,3−ジクロロプロピル) ホスフェート、ペンタブロモフェニルアリルエーテル等が挙げられる。
上記紫外線吸収剤としては、例えば、p−t−ブチルフェニルサリシレート、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−2′−カルボキシベンゾフェノン、2,4,5−トリヒドロキシブチロフェノン等が挙げられる。上記帯電防止剤としては、例えば、N,N−ビス(ヒドロキシエチル)アルキルアミン、アルキルアリルスルホネート、アルキルスルファネート等が挙げられる。
上記無機物としては、例えば、硫酸バリウム、アルミナ、酸化珪素等が挙げられる。
上記高級脂肪酸塩としては、例えば、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸バリウム、パルミチン酸ナトリウム等が挙げられる。
上記離型層は、その性質を改質するために、熱可塑性樹脂、ゴム成分を含有してもよい。上記熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリオレフィン、変性ポリオレフィン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリスルフォン、ポリエステル等が挙げられる。上記ゴム成分としては、例えば、天然ゴム、スチレン−ブタジエン共重合体、ポリブタジエン、ポリイソプレン、アクリルニトリル−ブタジエン共重合体、エチレン−プロピレン共重合体(EPM、EPDM)、ポリクロロプレン、ブチルゴム、アクリルゴム、シリコンゴム、ウレタンゴム、オレフィン系熱可塑性エラストマー、スチレン系熱可塑性エラストマー、塩ビ系熱可塑性エラストマー、エステル系熱可塑性エラストマー、アミド系熱可塑性エラストマー等が挙げられる。
また、上記離型層は、アスペクト比の大きい無機化合物を含有してもよい。アスペクト比の大きい無機化合物を含有することにより、得られる本発明の多層離型フィルムは、高温での離型性が向上し、更にフィルムに含まれる添加剤や低分子量物がフィルム表面へブリードアウトすることを抑制することができ、熱プレス成形時のクリーン性が向上する。
上記アスペクト比の大きい無機化合物としては、例えば、クレイ等の層状ケイ酸塩;ハイドロタルサイト等の層状複水和物等が挙げられる。
上記離型層の厚さの好ましい下限は5μm、好ましい上限は30μmである。5μm未満であると、厚さが薄すぎ、離型層の強度が損なわれることから、熱プレス成形工程や多層離型フィルムの剥離工程において、離型層が破壊されることがある。30μmを超えると、多層離型フィルムのコシが強くなりすぎ、柔軟性が損なわれるため、形状追従性が低下することがある。より好ましい下限は10μm、より好ましい上限は20μmである。
上記離型層の表面は、平滑性を有することが好ましいが、ハンドリングに必要なスリップ性、アンチブロッキング性、熱プレス成形時の空気抜けを目的として、少なくとも片面に適度のエンボス模様や微細な凹凸が設けられてもよい。
上記処理の方法としては特に限定されず、例えば、エンボス模様が施された金属ロール等やガーゼ等の布やブラシ等を用いて上記離型層の表面を摩擦する方法が挙げられる。
上記離型層は、耐熱性、寸法安定性、離型性を向上させるために、熱処理や摩擦処理を行ってもよい。
上記熱処理の方法としては特に限定されないが、例えば、一定の処理温度に加熱したロールの間を通過させる方法やヒーターによる加熱等が好ましい。
上記熱処理の温度としては、離型層を構成する樹脂のガラス転移温度以上かつ融点以下であれば特に限定されないが、好ましい下限は120℃、好ましい上限は200℃である。120℃未満であると、熱処理による離型性の向上効果がほとんど得られないことがあり、200℃を超えると、熱処理時に離型層が変形しやすくなり、製造できないことがある。より好ましい下限は170℃、より好ましい上限は190℃である。
上記摩擦処理の方法としては特に限定されず、例えば、金属ロール等やガーゼ等の布やブラシ等を用いて上記離型層の表面を摩擦する方法が挙げられる。
本発明の多層積層フィルムは、示差走査熱量計を用いて測定した融点が70〜130℃であるポリオレフィン系樹脂からなるクッション層を有する。
上記クッション層に融点が上記範囲内の樹脂を用いることで、上記クッション層は、接着剤が溶融する温度付近で軟化を開始し、フレキシブルプリント基板表面の凹凸に対する追従性を向上させたり、接着剤の流れ出しを防止したりすることが可能となる。
上記ポリオレフィン系樹脂は、示差走査熱量計を用いて測定した融点の下限が70℃、上限が130℃である。70℃未満であると、熱プレス成形工程において、プレス圧力をフレキシブルプリント基板に均一に荷重するというクッション層の機能を充分に果たせなくなり、またフィルムを保管中の雰囲気温度が、状況によっては50〜60℃となることがあるが、その場合にクッション層樹脂が、その雰囲気温度によって溶融して染み出し、ブロッキングを起こしてしまうことがある。更には130℃を超えると、接着剤が溶融する温度域において、上記クッション層が充分に軟化せず、接着剤の流れ出しの問題が起こる。好ましい下限は80℃、好ましい上限は100℃である。
上記示差走査熱量計を用いて測定した融点が70〜130℃であり、かつ、上述した複素粘性率を有するポリオレフィン系樹脂としては、例えば、ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−メチルメタクリレート共重合体、エチレン−エチルアクリレート共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体等のエチレン−アクリル系モノマーの共重合体等が挙げられる。これらは単独で用いられてもよく、2種類以上が併用されてもよい。
また、上記クッション層には、上記離型層の場合と同様に、繊維、無機充填剤、難燃剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、無機物、高級脂肪酸塩等の添加剤を含有させてもよい。
上記クッション層は、70〜130℃、0.5〜5rad/secにおける複素粘性率の下限が1.0×10Pa・s、上限が1.0×10Pa・sである。接着剤が溶融を開始する温度域に相当する温度域である70〜130℃における複素粘性率を上記範囲内とすることで、接着剤の流れ出しを防止することが可能となる。1.0×10Pa・s未満であると、接着剤よりも柔らかくなるため、プレスによって押し出された接着剤の流れ出しを抑制することができず、電極部にカバーレイフィルムの接着剤が染み出し、電極部のめっき処理の障害となったりする。1.0×10Pa・sを超えると、形状追従性が悪化し、フレキシブルプリント基板にボイドが発生することにより、絶縁特性が変化して、電気回路としての性能を発揮させなくなったり、接着剤の流れ出しが起こることにより、電極部のめっき処理の障害となったりする。好ましい下限は1.0×10Pa・s、好ましい上限は1.0×10Pa・sである。
下記式(1)で表される複素粘性率η*は、下記式(2)で表される複素弾性率Gをもとに算出されるものであることから、粘性成分及び弾性成分を有する粘弾性流体の特性を的確に表すことができる。なお、ωは角速度を表し、G’は貯蔵弾性率、G’’損失弾性率を表す。また、上記複素粘性率η*は、例えば、レオメータ(レオメトリックサイエンティフィックエフイー社製)等を用いることにより、測定することができる。
Figure 2006321114
上記クッション層は、150〜200℃、0.5〜5rad/secにおける複素粘性率の下限が1.0×10Pa・s、上限が1.0×10Pa・sである。接着剤が熱硬化する温度域に相当する150〜200℃における複素粘性率を上記範囲内とすることで、クッション層が必要以上に柔らかくならず、フィルム端面でのクッション層樹脂の染み出しを防止することが可能となる。1.0×10Pa・s未満であると、熱プレスによってクッション層が押し出され、フィルム端面においてクッション層樹脂の染み出しが発生し、染み出した樹脂が、周囲のプレス板やフレキシブルプリント基板、離型フィルム等に付着して、製品であるフレキシブルプリント基板の取り出しが困難となる。1.0×10Pa・sを超えると、形状追従性が悪化し、ボイドの発生、接着剤の流れ出しが起こる。好ましい下限は5.0×10Pa・s、好ましい上限は5.0×10Pa・sである。
上記クッション層の厚さの好ましい下限は30μm、好ましい上限は150μmである。30μm未満であると、厚さが薄すぎ、熱プレス成形時においてクッション層を構成する樹脂が軟化した場合に、部分的にクッション層が存在しない箇所が発生し、プレス圧力をフレキシブルプリント基板に均一に荷重することができないことがある。150μmを超えると、多層離型フィルムのコシが強くなりすぎ、柔軟性が損なわれるため、形状追従性が低下することがある。更には、必要以上に厚いため、余分な部分がフィルム端面から染み出してしまい不具合となることがある。より好ましい下限は60μm、より好ましい上限は100μmである。
本発明の多層離型フィルムにおいて、上記離型層とクッション層との好ましい層厚の比は1:2〜1:10の範囲内である。1:2よりもクッション層が薄くなると、離型層のコシの強さに対して、クッション層のプレス応力伝達力が小さくなるため、多層離型フィルムの形状追従性が損なわれることがある。1:10よりもクッション層が厚くなると、離型層のコシの強さに対して、クッション層のプレス応力伝達力に必要な厚さ以上に厚いため、余分な部分がフィルム端面から染み出してしまい不具合となることがある。また、柔軟性が損なわれ、ハンドリング性が低下することがある。更には、製造コストが上昇してしまうことがある。より好ましい範囲は、1:3〜1:8である。
本発明の多層離型フィルムの全体の厚さの好ましい下限は50μm、上限は200μmである。50μm未満であると、多層離型フィルムの強度が不足し、200μmを超えると、柔軟性が損なわれ、ハンドリング性が低下する。また、製造コストが上昇してしまう。
本発明の多層離型フィルムは、170℃において荷重3MPaで60分間加圧した場合の寸法変化率が1.5%以下であることが好ましい。1.5%を超えると、熱プレス成形時に回路パターンを損なう恐れがある。より好ましくは1.0%以下である。更には、フィルムの巾方向(以下、TDという)と長さ方向(以下、MDという)の寸法変化率が同方向・同等程度であることが好ましい。一方(例えば、MD)が収縮、他方(例えば、TD)が伸長という縦横の寸法変化が異なるような場合、熱プレス成形時に回路パターンを損なう恐れがある。
本発明の多層離型フィルムを製造する方法としては特に限定されず、例えば、水冷式又は空冷式共押出インフレーション法、共押出Tダイ法で製膜する方法、離型層となるフィルムを作製した後、このフィルムにクッション層を押出ラミネーション法にて積層する方法、離型層となるフィルムとクッション層となるフィルムとをドライラミネーションする方法、溶剤キャスティング法、熱プレス成形法等が挙げられる。なかでも、共押出Tダイ法で製膜する方法が各層の厚み制御に優れる点から好適である。
上記溶剤キャスティング法では、例えば、クッション層となるフィルム上にアンカー層を下塗り処理した後、アンカー層上に溶剤に溶解した上記樹脂組成物を塗工し、塗膜を均一に加熱し乾燥させて離型層を形成させることにより、多層離型フィルムを製造する。
また、上記熱プレス成形では、例えば、離型層となるフィルムとクッション層となるフィルムとを重ね合わせて熱プレス成形する。
本発明によれば、耐熱性、離型性、基板表面への追従性を有しつつ、熱プレス成形時におけるボイドの発生、接着剤の流れ出し及びフィルム端面でのクッション層樹脂の染み出しを抑制することが可能な多層離型フィルムを提供することができる。
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
(実施例1)
(1)多層離型フィルムの作製
離型層用の結晶性芳香族ポリエステル樹脂としてポリブチレンテレフタレート(ノバデュラン5010R5、三菱エンジニアリングプラスチックス社製、融点224℃)、及び、クッション層用のポリオレフィン系樹脂として、エチレン−メチルメタクリレート共重合体(アクリフトWD201、住友化学社製、融点100℃、110℃における複素粘性率;3.5×10Pa・s、160℃における複素粘性率;1.4×10Pa・s)を共押出成形機に投入し、Tダイスより共押出成形して、離型層の厚さ20μm、クッション層の厚さ80μmの多層離型フィルムを得た。
なお、融点は、示差走査熱量計(DSC 2920、TAインスツルメント社製)を用いて測定し、複素粘性率は、レオメータ(RMS−800、レオメトリックサイエンティフィックエフイー社製)を用い、周波数1rad/secで測定した。
(2)フレキシブルプリント基板の作製
銅張り積層板、カバーレイフィルム、得られた多層離型フィルムをこの順に重ね合わせたものを1セットとして、32セットを熱プレスに載置し、プレス温度170℃、プレス圧300N/cm、プレス時間60分間の条件で熱プレス成形した後、プレス圧を開放し、多層離型フィルムを引き剥がして、フレキシブルプリント基板を得た。
なお、銅張り積層板としては、厚さ25μmのポリイミドフィルム(デュポン製:カプトン)をベースフィルムとし、ベースフィルム上に厚さ35μm、幅50μmの銅箔が厚さ20μmのエポキシ系接着剤層で接着されたものを用い、カバーレイフィルムとしては、厚さ25μmのポリイミドフィルム(デュポン社製:カプトン)上に、流動開始温度80℃のエポキシ系接着剤を厚さ20μmで塗布したものを用いた。
(実施例2、比較例1〜4)
離型層用樹脂及びクッション層用樹脂として、表1に示したものを用いた以外は、実施例1と同様にして、多層離型フィルム及びフレキシブルプリント基板を作製した。
(評価)
実施例1、2及び比較例1〜4で得られた多層離型フィルム及びフレキシブルプリント基板について、以下の評価を行った。なお、結果は表1に示した。
(1)多層離型フィルムの評価
(1−1)寸法変化率の測定
離型フィルムの表面に、押出成形の方向(MD方向)及びそれに対して直角方向(TD方向)に100mm間隔の標線をそれぞれ記入した。離型フィルムを170℃、荷重3MPaで60分間プレスを行った後、標線間距離の測定を行い、32セットの平均値をLMD、LTDとした。下記式により各方向における寸法変化率を算出した。
寸法変化率(%)=(LMD(LTD)−100)/100×100
(2)フレキシブルプリント基板の評価
(2−1)ボイドの有無
得られたフレキシブルプリント基板の空気の残存部分(ボイド)の有無を目視にて確認し、以下の基準で評価した。
○:ボイドが確認できなかった。
×:ボイドが確認された。
(2−2)離型層の損傷
剥離した多層離型フィルムの離型層の損傷の有無を目視にて確認し、以下の基準で評価した。
○:離型層に損傷は見られなかった。
×:離型層が破壊されていた。
(2−3)ブリードアウト
プレス後、金メッキを行い、フレキシブルプリント基板の表面に付着したメッキの状態を目視にて確認し、以下の基準でブリードアウト性を評価した。
○:金メッキが銅表面にムラ無く、まんべんなくきれいに形成されていた。
×:金メッキにムラが発生していた。
(2−4)接着剤の流れ出し
得られたフレキシブルプリント基板の電極部分を目視にて確認し、以下の基準で評価した。
○:電極部分への接着剤流れ出しが50μm以内であった。
×:電極部分への接着剤流れ出しが50μmを超えていた。
(2−5)フィルム端面の染み出し
フレキシブルプリント基板作製時におけるフィルム端面からの樹脂の染み出しの長さを測定し、以下の基準で評価した。
○:樹脂の染み出しがフィルム端面から5mm以内であった。
×:樹脂の染み出しがフィルム端面から5mmを超えていた。
Figure 2006321114
本発明によれば、耐熱性、離型性、基板表面への追従性を有しつつ、熱プレス成形時におけるボイドの発生、接着剤の流れ出し及びフィルム端面でのクッション層樹脂の染み出しを抑制することが可能な多層離型フィルムを提供することができる。

Claims (1)

  1. 少なくとも、示差走査熱量計を用いて測定した融点が200℃以上である結晶性芳香族ポリエステル樹脂からなる離型層と、示差走査熱量計を用いて測定した融点が70〜130℃であるポリオレフィン系樹脂からなるクッション層とを有する離型フィルムであって、
    前記クッション層は、70〜130℃、0.5〜5rad/secにおける複素粘性率が1.0×10〜1.0×10Pa・s、かつ、
    150〜200℃、0.5〜5rad/secにおける複素粘性率が1.0×10〜1.0×10Pa・sである
    ことを特徴とする多層離型フィルム。
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KR20190097068A (ko) 2016-12-16 2019-08-20 도레이 필름 카코우 가부시키가이샤 이형 필름 및 보호 필름

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