Nothing Special   »   [go: up one dir, main page]

JP2006200099A - 立毛パイル布帛及びその製造方法 - Google Patents

立毛パイル布帛及びその製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JP2006200099A
JP2006200099A JP2005015787A JP2005015787A JP2006200099A JP 2006200099 A JP2006200099 A JP 2006200099A JP 2005015787 A JP2005015787 A JP 2005015787A JP 2005015787 A JP2005015787 A JP 2005015787A JP 2006200099 A JP2006200099 A JP 2006200099A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
yarn
water
yarns
pile fabric
pile
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2005015787A
Other languages
English (en)
Inventor
Tomoyuki Kamimura
知行 上村
Daisuke Sawada
大輔 澤田
Atsushi Toyoda
篤史 豊田
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Honda Motor Co Ltd
Suminoe Textile Co Ltd
Original Assignee
Honda Motor Co Ltd
Suminoe Textile Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Honda Motor Co Ltd, Suminoe Textile Co Ltd filed Critical Honda Motor Co Ltd
Priority to JP2005015787A priority Critical patent/JP2006200099A/ja
Priority to CN200610006247.XA priority patent/CN1811033B/zh
Publication of JP2006200099A publication Critical patent/JP2006200099A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Images

Landscapes

  • Treatments For Attaching Organic Compounds To Fibrous Goods (AREA)
  • Knitting Of Fabric (AREA)
  • Chemical Or Physical Treatment Of Fibers (AREA)
  • Woven Fabrics (AREA)

Abstract

【課題】 折り曲げ状、曲面状、その他の複雑な形状に沿わせて張設した場合でもグリンニング現象が生じ難くて高い外観品位を確保できると共に布帛表面の凹凸もなく良好にフィットする立毛パイル布帛を提供する。
【解決手段】 この発明に係る立毛パイル布帛は、緯糸3に経糸2が織り込まれてなる地組織5にパイル糸4が植設された立毛パイル布帛において、前記経糸2として少なくとも弾性糸が用いられ、前記緯糸3として、水溶性繊維からなる芯糸に非水溶性繊維からなる絡み糸が捲回状態に巻き付けられると共にこの捲回状態を保持するための水溶性繊維からなる押え糸が複合されてなる捲回複合糸、又は水溶性繊維からなる芯糸と非水溶性繊維からなる絡み糸とが合撚されてなる合撚複合糸が用いられていることを特徴とする。
【選択図】 図1

Description

この発明は、例えば、車輌の座席シート用表皮材、家具用椅子の表皮材として好適に用いられる立毛パイル布帛に関する。
モケット等の立毛パイル布帛は、従来より、自動車、鉄道車輌等の車輌の座席シート用表皮材、家具用椅子の表皮材として用いられている。従来の一般的なモケット表皮材では、ポリアミド、ポリエステル、アクリル、ウール等の非伸縮性の糸が用いられていた(特許文献1参照)。
ところで、モケットを用いて自動車の座席シート用表皮材を構成する場合には、図5(ロ)に示すように、モケット(100)の端部同士をミシン等によって縫製し、該縫製箇所をシートパッド(110)のコーナー部にあてがう態様でシートパッド(110)に被せることが一般的に行われている。
しかしながら、上記従来の非伸縮性の糸で構成されたモケット(100)を用いた場合には、図5(ロ)に示すように、コーナー部に沿わせて折り曲げられた部位においてパイル(103)間が開いて地組織(105)が筋状に外観される外観不良(以下、「グリンニング」という)が生じるという問題があった。パイルは直交する地経糸や地緯糸の長さ方向に沿って連続して形成されているので、該長さ方向に沿って折り曲げられた場合には特に地組織(105)が顕著に外観されるものとなり、このように地組織(105)が露出する状態が歯を食いしばって剥き出しにした状態に似ているので折り曲げ部位における地組織の露出状態を「グリンニング」と称している。このようなグリンニングが外観されると、外観品位が顕著に低下するものとなる。
このようなグリンニングによる外観不良の問題を解決するものとして、パイル糸として収縮率差の異なる2種類のポリエステルマルチフィラメント混繊糸を用いることによって、パイル根元部をボリュームアップさせて嵩高性を向上させることでグリンニング発生を防止することが提案されている(特許文献2参照)。
特開平5−279963号公報(段落0025) 特開2004−238786号公報
しかしながら、パイル糸として収縮率差の異なる2種類のポリエステルマルチフィラメント混繊糸を用いる構成を採用するだけでは、グリンニング防止において十分な効果は得られなかった(効果は認められるが未だ不十分なものであった)。
近年では、車輌の座席シートや家具用椅子等で複雑な形状が採用されることが多くなってきており、従ってこれらの表皮材としても複雑な形状に沿わせて張設した場合でも前記グリンニング現象が生じないことが強く求められている。
特に自動車内装材分野では、ファッション性も非常に重要視されるようになってきており、このために表皮材としても外観品位が高品位であることが強く求められており、このような要求に対応できる立毛パイル布帛の開発が急務となっていた。
そこで、本発明者は、折り曲げ状態で張設した場合や複雑な形状に沿わせて張設した場合でもグリンニング現象が生じない立毛パイル布帛を開発するために、モケット等の立毛パイル布帛の地組織に伸縮性を付与すべく、地組織を構成する経糸及び緯糸としてポリウレタン弾性糸を用いる構成を着想し、試作した。得られた布帛は、伸縮性に優れていてグリンニングはある程度防止できるものの、経方向、緯方向の伸びのバランスが悪く、装着する前の段階で布帛表面に凹凸が生じたり、反り返ったりするために、裁断や縫製の際に上記凹凸や反りが障害となって作業性が低下するという問題や、前記布帛表面の凹凸が張設後でも残存して外観品位が悪いという問題を有することが判明した。更に、地組織としての伸縮性に富み過ぎるがために、製織時のパイルの抑えが利かず、二面分割時にパイルの片切れ等の不良を生じやすかった。
この発明は、かかる技術的背景に鑑みてなされたものであって、折り曲げ状、曲面状、その他の複雑な形状に沿わせて張設した場合でもグリンニング現象が生じ難くて高い外観品位を確保できると共に布帛表面の凹凸もなく良好にフィットし、さらに柔軟性にも優れて良好な座り心地を付与できる立毛パイル布帛及びその製造方法を提供することを目的とする。
前記目的を達成するために、本発明は以下の手段を提供する。
[1]緯糸に経糸が織り込まれてなる地組織にパイル糸が植設された立毛パイル布帛において、前記経糸として少なくとも弾性糸が用いられ、前記緯糸として、水溶性繊維からなる芯糸に非水溶性繊維からなる絡み糸が捲回状態に巻き付けられると共にこの捲回状態を保持するための水溶性繊維からなる押え糸が複合されてなる捲回複合糸が用いられていることを特徴とする立毛パイル布帛。
[2]緯糸に経糸が織り込まれてなる地組織にパイル糸が植設された立毛パイル布帛において、前記経糸として少なくとも弾性糸が用いられ、前記緯糸として、水溶性繊維からなる芯糸と非水溶性繊維からなる絡み糸とが合撚されてなる合撚複合糸が用いられていることを特徴とする立毛パイル布帛。
[3]前記経糸として少なくともポリウレタン弾性糸が用いられている前項1または2に記載の立毛パイル布帛。
[4]前記経糸として、ポリエステルフィラメント糸及びポリウレタン弾性糸が用いられている前項1または2に記載の立毛パイル布帛。
[5]前記ポリウレタン弾性糸の太さが22〜122デシテックスである前項3または4に記載の立毛パイル布帛。
[6]前記芯糸を構成する水溶性繊維としてポリビニルアルコール繊維が用いられている前項1〜5のいずれか1項に記載の立毛パイル布帛。
[7]前記絡み糸を構成する非水溶性繊維としてポリエステル繊維が用いられている前項1〜6のいずれか1項に記載の立毛パイル布帛。
[8]前記絡み糸の太さが110〜330デシテックスである前項7に記載の立毛パイル布帛。
[9]前記地組織は、筬密度18〜40本/inch、緯糸密度48〜80本/inchの地組織である前項1〜8のいずれか1項に記載の立毛パイル布帛。
[10]前記パイル糸として、収縮率差を有する少なくとも2種類のポリエステルマルチフィラメント混繊糸が用いられ、収縮率の大きいポリエステル繊維は、捲縮を有し、かつ捲縮発現伸長率が1〜40%であって、該収縮率の大きいポリエステル繊維の頂端はパイル表面より沈み込む一方、収縮率の小さいポリエステル繊維はパイル表面にも存在することによって、多段差パイルを形成している前項1〜9のいずれか1項に記載の立毛パイル布帛。
[11]前項1〜10のいずれか1項に記載のパイル布帛を水と接触させることによって前記複合糸を構成する芯糸を水に溶解させて芯糸を除去して得られた立毛パイル布帛。
[12]パイル布帛の98N荷重時の伸び率が、経方向において10%以上であり、緯方向において10%以上であり、バイアス方向において30%以上である前項11に記載の立毛パイル布帛。
[13]車輌の座席シート用表皮材として用いられる前項11または12に記載の立毛パイル布帛。
[14] 弾性糸を含有した経糸に、水溶性繊維からなる芯糸に非水溶性繊維からなる絡み糸が捲回状態に巻き付けられると共にこの捲回状態を保持するための水溶性繊維からなる押え糸が複合されてなる捲回複合糸が緯糸として織り込まれてなる地組織にパイル糸が植設された立毛パイル布帛を製作する工程と、前記立毛パイル布帛を染色水浴に浸漬することによって、布帛の染色を行うと共に前記複合糸を構成する芯糸を水浴に溶解させて芯糸を除去する工程とを包含することを特徴とする立毛パイル布帛の製造方法。
[15]弾性糸を含有した経糸に、水溶性繊維からなる芯糸と非水溶性繊維からなる絡み糸とが合撚されてなる合撚複合糸が緯糸として織り込まれてなる地組織にパイル糸が植設された立毛パイル布帛を製作する工程と、前記立毛パイル布帛を染色水浴に浸漬することによって、布帛の染色を行うと共に前記複合糸を構成する芯糸を水浴に溶解させて芯糸を除去する工程とを包含することを特徴とする立毛パイル布帛の製造方法。
[1]の発明では、経糸として少なくとも弾性糸が用いられ、緯糸として、水溶性繊維からなる芯糸に非水溶性繊維からなる絡み糸が捲回状態に巻き付けられると共にこの捲回状態を保持するための水溶性繊維からなる押え糸が複合されてなる捲回複合糸が用いられており、本発明のパイル布帛を水と接触させて捲回複合糸の芯糸及び押え糸を水に溶解・除去すれば、残った絡み糸が捲回の余裕によって伸長可能な伸長糸として機能し、これが経糸の弾性糸の機能とも相俟って、例えば布帛巾を維持しつつ布帛自体に伸縮機能を十分に付与することができる。従って、本発明の立毛パイル布帛は、これを折り曲げ状、曲面状、その他の複雑な形状に沿わせて張設した場合でもグリンニング現象が生じ難くて高い外観品位を確保できる。また、経方向、緯方向、バイアス方向の伸びのバランスが良く、装着する前の段階で布帛表面に凹凸が生じたり、反り返ったりすることもなく裁断加工性、縫製加工性に優れると共に、張設後においても良好にフィットして布帛表面に凹凸がなくて外観品位をさらに向上できる。更に、芯糸及び押え糸の溶解・除去で残る絡み糸は捲回の余裕によって伸長可能な伸長糸として機能すると共に芯糸及び押え糸の除去により地組織に空隙が確保され得るので、パイル布帛は柔軟性にも優れていて良好な座り心地を確保することができる。
[2]の発明では、経糸として少なくとも弾性糸が用いられ、緯糸として、水溶性繊維からなる芯糸と非水溶性繊維からなる絡み糸とが合撚されてなる合撚複合糸が用いられており、本発明のパイル布帛を水と接触させて合撚複合糸の芯糸を水に溶解・除去すれば、残った絡み糸が合撚の余裕によって伸長可能な伸長糸として機能し、これが経糸の弾性糸の機能とも相俟って、例えば布帛巾を維持しつつ布帛自体に伸縮機能を十分に付与することができる。従って、本発明の立毛パイル布帛は、これを折り曲げ状、曲面状、その他の複雑な形状に沿わせて張設した場合でもグリンニング現象が生じ難くて高い外観品位を確保できる。また、経方向、緯方向、バイアス方向の伸びのバランスが良く、装着する前の段階で布帛表面に凹凸が生じたり、反り返ったりすることもなく裁断加工性、縫製加工性に優れると共に、張設後においても良好にフィットして布帛表面に凹凸がなくて外観品位をさらに向上できる。更に、芯糸の溶解・除去で残る絡み糸は捲回の余裕によって伸長可能な伸長糸として機能すると共に芯糸の除去により地組織に空隙が確保され得るので、パイル布帛は柔軟性にも優れていて良好な座り心地を確保することができる。
[3]の発明では、経糸として少なくともポリウレタン弾性糸が用いられているので、パイル布帛を折り曲げ状、曲面状、その他の複雑な形状に沿わせて張設した場合でもグリンニング発生を十分に防止することができる。
[4]の発明では、経糸としてポリエステルフィラメント糸及びポリウレタン弾性糸が用いられており、ポリウレタン弾性糸が存在することで、パイル布帛を折り曲げ状、曲面状、その他の複雑な形状に沿わせて張設した場合でもグリンニング発生を十分に防止できると共に、ポリエステルフィラメント糸が存在することで布帛表面の凹凸なく良好状態にフィットさせて張設することができる。
[5]の発明では、ポリウレタン弾性糸の太さが22〜122デシテックスであるので、パイル布帛を折り曲げ状、曲面状、その他の複雑な形状に沿わせて張設した場合でもグリンニング発生をより十分に防止できる。
[6]の発明では、芯糸を構成する水溶性繊維として水に溶解しやすいPVA繊維が用いられているので、芯糸を水に溶解させて除去する時に、芯糸を短時間で溶解除去できるので、生産性を向上させることができる。
[7]の発明では、絡み糸を構成する非水溶性繊維としてポリエステル繊維が用いられているから、地組織としての強度を向上させることができる。
[8]の発明では、絡み糸の太さが110〜330デシテックスであるから、地組織としての強度をさらに向上させることができる。
[9]の発明では、地組織として、筬密度18〜40本/inch、緯糸密度48〜80本/inchの地組織が用いられており、このような地組織の組織形態のファイン化により、グリンニング発生をさらに効果的に防止することができる利点がある。また、ファイン化により、布帛の高い外観品位を維持しつつ、低目付化を図ることができる利点もある。
[10]の発明では、捲縮を有した(収縮率の大きい)ポリエステル繊維の頂端はパイル表面より沈み込んでパイルの根元部のボリューム(体積)を増大させるので、この立毛パイル布帛を折り曲げ状、曲面状、その他の複雑な形状に沿わせて張設した場合でもグリンニング発生を十分に防止できるものとなる。また、根元部のみのボリュームを増大させることができるので、縫製部での縫製糸によるパイルの噛み込みを一層低減することができ、これによりグリンニング発生をより十分に防止できる。
[11]の発明は、上記[1]〜[10]のいずれかに記載のパイル布帛を水と接触させることによって複合糸を構成する芯糸を水に溶解させて芯糸を除去して得られた立毛パイル布帛であるから、立毛パイル布帛を折り曲げ状、曲面状、その他の複雑な形状に沿わせて張設した場合でもグリンニング現象が生じ難くて高い外観品位を確保できる。また、経方向、緯方向、バイアス方向の伸びのバランスが良く、装着する前の段階で布帛表面に凹凸が生じたり、反り返ったりすることもなく裁断加工性、縫製加工性に優れると共に、張設後においても良好にフィットして布帛表面に凹凸がなくて外観品位をさらに向上できる。更に、芯糸の溶解・除去で残った絡み糸は捲回の余裕によって伸長可能な伸長糸として機能すると共に芯糸の除去により地組織に空隙が確保されているので、パイル布帛は柔軟性、通気性にも優れていて良好な座り心地を確保することができる。
[12]の発明では、パイル布帛の98N荷重時の伸び率が経方向において10%以上であり、緯方向において10%以上であり、バイアス方向において30%以上であるから、パイル布帛を折り曲げ状、曲面状、その他の複雑な形状に沿わせて張設した場合でもグリンニング現象を確実に防止できるものとなる。
[13]の発明は、車輌の座席シート用表皮材として用いられる構成であり、この表皮材を用いれば、高品位な座席シートを提供することができる。
[14]の発明(製造方法)で得られた立毛パイル布帛は、これを折り曲げ状、曲面状、その他の複雑な形状に沿わせて張設した場合でもグリンニング現象が生じ難くて高い外観品位を確保できる。また、経方向、緯方向、バイアス方向の伸びのバランスが良く、装着する前の段階で布帛表面に凹凸が生じたり、反り返ったりすることもなく裁断加工性、縫製加工性に優れると共に、張設後においても良好にフィットして布帛表面に凹凸がなくて外観品位をさらに向上できる。また、芯糸及び押え糸の溶解・除去で残った絡み糸は捲回の余裕によって伸長可能な伸長糸として機能すると共に芯糸及び押え糸の除去により地組織に空隙が確保されているので、パイル布帛は柔軟性にも優れていて良好な座り心地を確保することができる。更に、本製造方法では、布帛の染色を行うための染色水浴への浸漬の際に同時に複合糸の芯糸及び押え糸を水に溶解・除去することができて、別途芯糸及び押え糸の溶解除去工程を設ける必要がないので、生産性を向上させることができてコスト低減を図ることができる。
[15]の発明(製造方法)で得られた立毛パイル布帛は、これを折り曲げ状、曲面状、その他の複雑な形状に沿わせて張設した場合でもグリンニング現象が生じ難くて高い外観品位を確保できる。また、経方向、緯方向、バイアス方向の伸びのバランスが良く、装着する前の段階で布帛表面に凹凸が生じたり、反り返ったりすることもなく裁断加工性、縫製加工性に優れると共に、張設後においても良好にフィットして布帛表面に凹凸がなくて外観品位をさらに向上できる。また、芯糸の溶解・除去で残った絡み糸は捲回の余裕によって伸長可能な伸長糸として機能すると共に芯糸の除去により地組織に空隙が確保されているので、パイル布帛は柔軟性にも優れていて良好な座り心地を確保することができる。更に、本製造方法では、布帛の染色を行うための染色水浴への浸漬の際に同時に複合糸の芯糸を水に溶解・除去することができて、別途芯糸の溶解除去工程を設ける必要がないので、生産性を向上させることができてコスト低減を図ることができる。
以下、この発明に係る立毛パイル布帛の一実施形態を図面を参照しつつ説明する。本実施形態の立毛パイル布帛は、自動車、鉄道車輌等の車輌の座席シート用表皮材として用いられるモケットである。図1は、本実施形態の立毛パイル布帛(1)の一部を拡大して示す模式的斜視図であり、(2)は経糸、(3)は緯糸、(4)はカットパイルである。
この立毛パイル布帛(1)は、ダブルパイル織機により、2枚の地組織(5)(5)を織成しつつ、この2枚の地組織間にパイル糸を掛けわたすように係止すると共に、パイル糸をその中間で切り離して(二面分割して)得られたモケット地からなるものである。
前記立毛パイル布帛(1)は、緯糸(3)に経糸(2)が織り込まれてなる地組織(5)にパイル糸(4)が植設された構成からなる。即ち、図1に示すように、緯糸(3)に対して緯糸の1本毎に上下交互配置された平織形態で織り込まれた一対の経糸(2A)(2B)とこれに隣り合う一対の経糸(2A)(2B)間における緯糸(3)にU字状のカットパイル(4)が係止された構成からなる。前記経糸(2)として少なくとも弾性糸(12)が用いられる。本実施形態では、前記経糸(2)として、ポリエステルフィラメント糸(11)及びポリウレタン弾性糸(12)が複合された糸(図2参照)が用いられている。また、本実施形態では、前記緯糸(3)として、水溶性繊維からなる芯糸(13)に非水溶性繊維からなる絡み糸(14)が捲回状態に巻き付けられると共にこの捲回状態を保持するための水溶性繊維からなる押え糸(15)が複合されてなる捲回複合糸(図3参照)が用いられている。
更に、本実施形態では、前記パイル糸(4)として、収縮率差を有する少なくとも2種類のポリエステルマルチフィラメント混繊糸が用いられている。この混繊糸のうち、収縮率の大きいポリエステル繊維と収縮率の小さいポリエステル繊維は、捲縮を有し、該収縮率の大きいポリエステル繊維からなる捲縮パイル(4B)の頂端はパイル表面より沈み込んでいる一方、収縮率の小さいポリエステル繊維からなる低収縮パイル(4A)はパイル表面にも存在しており、これにより多段差パイルを形成している(図1参照)。前記収縮率の大きいポリエステル繊維の捲縮発現伸長率は1〜40%であるのが好ましい。
なお、前記捲縮発現伸長率(%)は、次のようにして求められる数値である。即ち、まず有捲縮収縮糸を5回巻きしたカセを作成する。見掛け繊維に対して0.022g/dtexの荷重をかけて170℃、3分の乾熱処理を行って、この時のカセ長をLとする。次に、見掛け繊維に対して0.11g/dtexの定荷重をかけてこの時のカセ長をL2とする。捲縮発現伸長率(%)=100(L2−L)/L の式で計算し、5つのサンプルの平均値を捲縮発現伸長率として採用する。
また、前記地組織(5)の裏面にはバッキング層が形成されており、該バッキング層によりパイルの抜け止めと共に布帛の形態安定性及び裁断性の向上が図られている。
上記構成の立毛パイル布帛(1)によれば、該布帛を水と接触させて捲回複合糸の芯糸(13)及び押え糸(15)を水に溶解・除去すれば、残った絡み糸(14)が捲回の余裕によって伸長可能な伸長糸として機能し、これが経糸(2)の弾性糸(12)の機能とも相俟って、例えば布帛幅を維持しつつ布帛(1)自体に伸縮機能を十分に付与することができる。従って、この立毛パイル布帛(1)を折り曲げ状、曲面状、その他の複雑な形状に沿わせて張設した場合でもグリンニング現象が生じ難くて高い外観品位を確保することができる。また、経方向、緯方向、バイアス方向の伸びのバランスが良く、装着する前の段階で布帛表面に凹凸が生じたり、反り返ったりすることもなく裁断加工性、縫製加工性に優れると共に、張設後においても良好にフィットして布帛表面に凹凸がなくて外観品位をさらに向上できる。更に、芯糸(13)及び押え糸(15)の溶解・除去で残る絡み糸(14)は捲回の余裕によって伸長可能な伸長糸として機能すると共に、芯糸(13)及び押え糸(15)の除去により地組織(5)に空隙が確保されるので、パイル布帛(1)は柔軟性にも優れていて良好な座り心地を確保することができる。
更に、本実施形態では、収縮率の大きいポリエステル繊維からなる捲縮パイル(4B)の頂端はパイル(4)表面より沈み込んでパイル(4)の根元部のボリュームを増大させるので、前記地組織(5)を構成する経糸(2)及び緯糸(3)の特定の構成による作用とも相俟って、この立毛パイル布帛(1)を折り曲げ状、曲面状、その他の複雑な形状に沿わせて張設した場合でもグリンニング発生を十分に防止できるものとなる。また、パイル(4)の根元部のみのボリュームを増大させることができるので、縫製部での縫製糸によるパイルの噛み込みを一層低減することができ、これによりグリンニング発生をより十分に防止できる。
なお、上記実施形態では、緯糸(3)として、水溶性繊維からなる芯糸(13)に非水溶性繊維からなる絡み糸(14)が捲回状態に巻き付けられると共にこの捲回状態を保持するための水溶性繊維からなる押え糸(15)が複合されてなる捲回複合糸(図3参照)を用いているが、これに代えて、水溶性繊維からなる芯糸(13)と非水溶性繊維からなる絡み糸(14)とが合撚されてなる合撚複合糸(図4参照)を用いても良く、この場合にも前記実施形態と同様の効果を得ることができる。
また、上記実施形態では、全ての経糸(2)が弾性糸(12)を含む構成となされているが、経糸(2)の一部だけが、弾性糸(12)を含む構成を採用することもできる。また、上記実施形態では、全ての緯糸(3)が前記捲回複合糸で構成されているが、緯糸(3)の一部だけが捲回複合糸で形成された構成を採用することもできる。また、地組織(5)の織形態も、前記実施形態のものに特に限定されない。
なお、図1においては、構成の理解を容易ならしめるために、敢えて経糸(2)間及び緯糸(3)間の間隔をあけて模式図を記載しているが、実際には経糸(2)同士および緯糸(3)同士の間隔は接触し合う程度に詰まっているか若しくは相互に接触しているのが一般的である。
この発明において、前記経糸(2)としては少なくとも弾性糸(12)が用いられる。経糸(2)にこのような弾性糸を用いることで、パイル布帛の伸縮性に寄与し、ひいてはグリンニング防止にも貢献できる。前記弾性糸としては、特に限定されるものではないが、例えばポリウレタン弾性糸、オレフィン系熱可塑性エラストマーからなる弾性糸等が挙げられる。中でも、前記経糸(2)としては、ポリエステルフィラメント糸(11)及びポリウレタン弾性糸(12)が複合された糸(図2参照)を用いるのが好ましい。
前記ポリウレタン弾性糸の太さは22〜122デシテックス(dtex)であるのが好ましい。このような範囲とすることで、パイル布帛(1)を折り曲げ状、曲面状、その他の複雑な形状に沿わせて張設した場合でもグリンニング発生をより十分に防止できる。
前記捲回複合糸を構成する芯糸(13)は、水溶性繊維からなる糸である。このような水溶性繊維としては、特に限定されるものではないが、ポリビニルアルコール(PVA)系繊維が好適であり、このPVA繊維を用いた場合にはPVA繊維が水に溶解しやすいので、芯糸(13)を短時間で溶解除去できて生産効率を向上させることができる利点がある。
前記捲回複合糸を構成する絡み糸(14)は、非水溶性繊維からなる糸で構成されるが、このような非水溶性繊維としては、例えばポリエステル繊維、ポリアミド繊維、アクリル繊維等が挙げられる。中でも、ポリエステル繊維を用いるのが好ましく、この場合には地組織(5)の強度を向上させることができる利点がある。
前記絡み糸(14)の太さは110〜330デシテックス(dtex)であるのが好ましい。このような範囲とすることで、地組織(5)の強度をさらに向上させることができる。
前記捲回複合糸を構成する押え糸(15)は、水溶性繊維からなる糸であるが、このような水溶性繊維としては、特に限定されるものではないが、ポリビニルアルコール(PVA)系繊維が好適である。
前記地組織(5)を織成する際の条件は、特に限定されないものの、筬密度18〜40本/inch、緯糸密度48〜80本/inchの地組織に織成されるのが好ましい。このような条件で織成した場合には、地組織(5)を緻密化することができて、グリンニング発生をさらに効果的に防止することができる。
前記パイル糸(4)としては、特に限定されないが、紡績糸、フィラメント加工糸を用いるのが好ましい。またパイル糸(4)の繊度は、特に限定されないものの、地組織(5)の表面を十分に覆うことができ、かつ一層優れた風合いを確保し得る点で、0.01〜2.20デシテックス(dtex)の範囲とするのが好ましく、特に好ましい範囲は0.30〜1.10デシテックスである。パイル糸(4)の素材としては、特に限定されるものではないが、例えばポリエステル、ポリアミド、アクリル等が挙げられる。中でも、上記実施形態のように、パイル糸(4)としては、収縮率差を有する少なくとも2種類のポリエステルマルチフィラメント混繊糸を用いるのが好ましい。
上記のような構成からなる立毛パイル布帛の地組織(5)を構成する複合糸の芯糸(13)及び押え糸(15)を除去することによって、特に車輌の座席シート用表皮材、家具用椅子の表皮材として好適に用いられる立毛パイル布帛(1)を提供できる。前記芯糸(13)・押え糸(15)の除去は、例えば布帛を水と接触させて芯糸(13)と押え糸(15)を水に溶解させることでなし得る。
中でも、芯糸(13)と押え糸(15)の溶解・除去は、前記立毛パイル布帛を染色水浴に浸漬することによって行うのが好ましい。この場合には、布帛の染色を行うための染色水浴への浸漬の際に同時に複合糸の芯糸(13)と押え糸(15)を水に溶解・除去することができて、別途芯糸と押え糸の溶解除去工程を設ける必要がないので、生産性を向上させることができてコストの低減を図ることができる利点がある。
上記のようにして芯糸(13)と押え糸(15)が除去された立毛パイル布帛(1)の98N荷重時の伸び率は、経方向(51)において10%以上であり、緯方向(52)において10%以上であり、バイアス方向(53)(54)において30%以上であるのが好ましい(図6参照)。この場合には、グリンニング発生を確実に防止できるものとなる。
この発明において、バッキング層は必須の構成部材ではないが、上記実施形態のように、地組織(5)の裏面に設けるのが望ましい。これにより、パイル布帛(1)としての形態安定性及び裁断性を向上させることができる。
前記バッキング層としては、特に限定されるものではないが、例えば樹脂組成物が用いられ、該樹脂組成物の樹脂成分としては、例えばスチレン−ブタジエンゴム(SBR)や、アクリル系、ウレタン系、ポリ塩化ビニル、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)等の樹脂を挙げることができる。中でも、高耐久性を確保できるとともに風合い調整が容易であることから、アクリル酸エステル系樹脂、ウレタン系樹脂を使用するのが好ましい。
次に、この発明の立毛パイル布帛(1)の製造方法として好適な製造方法について説明する。まず、弾性糸(12)を含有した経糸(2)に、水溶性繊維からなる芯糸(13)に非水溶性繊維からなる絡み糸(14)が捲回状態に巻き付けられると共にこの捲回状態を保持するための水溶性繊維からなる押え糸(15)が複合されてなる捲回複合糸(図3参照)が緯糸(3)として織り込まれてなる地組織(5)にパイル糸(4)が植設された立毛パイル布帛を製作する。なお、前記捲回複合糸に代えて、弾性糸(12)を含有した経糸(2)に、水溶性繊維からなる芯糸(13)と非水溶性繊維からなる絡み糸(14)とが合撚されてなる合撚複合糸(図4参照)を緯糸(3)として用いても良い。
次に、得られた立毛パイル布帛を染色水浴に浸漬する。この浸漬操作によって、布帛の染色を行うと共に、芯糸(13)と押え糸(15)を染色水浴に溶解させて芯糸(13)と押え糸(15)を除去する。
次いで、布帛の地組織(5)の裏面に樹脂エマルジョンを塗布、乾燥してバッキング層を形成せしめる。
なお、上記製造方法は、その一例を示したものに過ぎず、この発明に係る立毛パイル布帛(1)は、上記製造方法で製造されるものに特に限定されるものではない。
この発明に係る立毛パイル布帛(1)は、自動車、鉄道車輌等の車輌の座席シート用表皮材、家具用椅子の表皮材として好適に用いられるものであるが、特にこのような用途に限定されない。
次に、この発明の具体的実施例について説明する。
<実施例1>
ポリエステルマルチフィラメント糸(110dtex/144f)4本とポリエステル収縮糸(捲縮糸)(84dtex/36f)が複合されてなる525dtexの糸(収縮糸の含有比率16質量%)をパイル糸とし、ポリエステルマルチフィラメント糸(333dtex/72f)(11)とポリウレタン弾性糸(44dtex)(12)とが複合されてなる347dtexの糸を経糸(2)とし、PVA繊維からなる芯糸(31dtex)(13)にポリエステルマルチフィラメント糸(220dtex/48f)からなる絡み糸(14)が捲回状態に巻き付けられると共にこの捲回状態を保持するためのPVA繊維からなる押え糸(31dtex)(15)が複合されてなる308dtexの捲回複合糸(図3参照)を緯糸(3)として、製織を行って、地組織(経糸密度:23本/inch、緯糸密度:62本/inch)(5)上にパイル層(パイル密度713本/inch平方)(4)が形成されたモケット地を作製した。なお、このモケット地における組織形態は図1に示すものである。
次に、得られたモケット地を染色水浴に浸漬することによって、染色を行うと共に前記複合糸を構成する芯糸を染色水浴に溶解させて芯糸を除去した。
次いで、アクリル酸エステル系樹脂エマルジョン(水性エマルジョン、樹脂含有量40質量%)をドクターナイフコーターを用いて、上記モケット地の裏面に塗布量70g/m2(固形分)で塗布したのち乾燥させて、車輌の座席シート用表皮材(モケット)を作製した。
<実施例2>
ポリエステルマルチフィラメント糸(84dtex/144f)とポリエステル収縮糸(捲縮糸)(50dtex/12f)が複合されてなる280dtexの糸(収縮糸の含有比率40質量%)をパイル糸とし、ポリエステルマルチフィラメント糸(110dtex/24f)(11)とポリウレタン弾性糸(44dtex)(12)とが複合されてなる123dtexの糸を経糸(2)とし、PVA繊維からなる芯糸(31dtex)(13)にポリエステルマルチフィラメント糸(220dtex/48f)からなる絡み糸(14)が捲回状態に巻き付けられると共にこの捲回状態を保持するためのPVA繊維からなる押え糸(31dtex)(15)が複合されてなる308dtexの捲回複合糸(図3参照)を緯糸(3)として、製織を行って、地組織(経糸密度:34本/inch、緯糸密度:68本/inch)(5)上にパイル層(パイル密度1156本/inch平方)(4)が形成されたモケット地を作製した。なお、このモケット地における組織形態は図1に示すものである。
次に、得られたモケット地を染色水浴に浸漬することによって、染色を行うと共に前記複合糸を構成する芯糸を染色水浴に溶解させて芯糸を除去した。
次いで、アクリル酸エステル系樹脂エマルジョン(水性エマルジョン、樹脂含有量40質量%)をドクターナイフコーターを用いて、上記モケット地の裏面に塗布量70g/m2(固形分)で塗布したのち乾燥させて、車輌の座席シート用表皮材(モケット)を作製した。
<実施例3>
ポリエステルマルチフィラメント糸(110dtex/144f)4本とポリエステル収縮糸(捲縮糸)(84dtex/36f)が複合されてなる525dtexの糸(収縮糸の含有比率16質量%)をパイル糸とし、ポリエステルマルチフィラメント糸(334dtex/72f)(11)とポリウレタン弾性糸(44dtex)(12)とが複合されてなる347dtexの糸を経糸(2)とし、PVA繊維からなる芯糸(31dtex)(13)とポリエステルマルチフィラメント糸(220dtex/48f)からなる絡み糸(14)とが合撚されてなる308dtexの合撚複合糸を緯糸(3)として、製織を行って、地組織(経糸密度:23本/inch、緯糸密度:62本/inch)(5)上にパイル層(パイル密度713本/inch平方)(4)が形成されたモケット地を作製した。なお、このモケット地における組織形態は図1に示すものである。
次に、得られたモケット地を染色水浴に浸漬することによって、染色を行うと共に前記複合糸を構成する芯糸を染色水浴に溶解させて芯糸を除去した。
次いで、アクリル酸エステル系樹脂エマルジョン(水性エマルジョン、樹脂含有量40質量%)をドクターナイフコーターを用いて、上記モケット地の裏面に塗布量70g/m2(固形分)で塗布したのち乾燥させて、車輌の座席シート用表皮材(モケット)を作製した。
<比較例1>
ポリエステルマルチフィラメント糸(110dtex/144f)4本とポリエステル収縮糸(捲縮糸)(84dtex/36f)が複合されてなる525dtexの糸(収縮糸の含有比率16質量%)をパイル糸とし、ポリエステルマルチフィラメント糸(334dtex/72f)とポリウレタン弾性糸(44dtex)とが複合されてなる347dtexの糸を経糸(2)とし、ポリエステルマルチフィラメント糸(220dtex/48f)とポリウレタン弾性糸(44dtex)とが複合されてなる233dtexの糸を緯糸(3)として、製織を行って、地組織(経糸密度:26本/inch、緯糸密度:57本/inch)上にパイル層(パイル密度714本/inch平方)が形成されたモケット地を作製した。なお、このモケット地における組織形態は図1に示すものと同じである。
次いで、アクリル酸エステル系樹脂エマルジョン(水性エマルジョン、樹脂含有量40質量%)をドクターナイフコーターを用いて、上記モケット地の裏面に塗布量70g/m2(固形分)で塗布したのち乾燥させて、車輌の座席シート用表皮材(モケット)を作製した。
<比較例2>
ポリエステルマルチフィラメント糸(110dtex/144f)4本とポリエステル収縮糸(捲縮糸)(84dtex/36f)が複合されてなる525dtexの糸(収縮糸の含有比率16質量%)をパイル糸とし、ポリエステルマルチフィラメント糸(334dtex/72f)とポリウレタン弾性糸(77dtex)とが複合されてなる347dtexの糸を経糸(2)とし、ポリエステルマルチフィラメント糸(220dtex/48f)とポリウレタン弾性糸(44dtex)とが複合されてなる233dtexの糸を緯糸(3)として、製織を行って、地組織(経糸密度:26本/inch、緯糸密度:64本/inch)上にパイル層(パイル密度832本/inch平方)が形成されたモケット地を作製した。なお、このモケット地における組織形態は図1に示すものと同じである。
次いで、アクリル酸エステル系樹脂エマルジョン(水性エマルジョン、樹脂含有量40質量%)をドクターナイフコーターを用いて、上記モケット地の裏面に塗布量70g/m2(固形分)で塗布したのち乾燥させて、車輌の座席シート用表皮材(モケット)を作製した。
Figure 2006200099
得られた各表皮材(モケット)について98N荷重時の伸び率を測定した。即ち、表皮材の経方向(51)、緯方向(52)、正バイアス方向(53)、逆バイアス方向(54)(図6参照)における98N荷重時の伸び率をそれぞれ測定した。この結果を表1に示す。
上記のようにして得られた各表皮材(モケット)について下記評価法により評価を行った。これら評価の結果を表2に示す。
<折り曲げ部位のグリンニングの有無>
表皮材を、その経方向に沿って約180°折り返し、その時の折り曲げ部位における外観品位を評価した。折り曲げ部位において、パイル間から地組織が外観されて品位の低いものを「×」とし、パイル間から地組織が外観されない高品位なものを「○」とした。
<張設後における表皮材の表面の凹凸の有無>
表皮材(モケット)の端部同士をミシン等によって縫製し、該縫製箇所を自動車の座席シートのシートパッドのコーナー部にあてがう態様でシートパッドに被せて張設し(図5参照)、この張設状態における表皮材表面の凹凸の有無(即ちシートパッド形状へのフィット性)を調べ、凹凸が認められフィット性に劣るものを「×」とし、凹凸が殆ど認められずフィット性が比較的良好であるものを「△」とし、凹凸が認められずフィット性に優れるものを「○」とした。
<裁断作業性の評価>
裁断作業をする際の取り扱いにおいて、表皮材表面に凹凸が生じたり、反り返ったりして裁断加工作業性に劣っているものを「×」とし、表皮材表面に凹凸が生じず、反り返ることもなくて裁断加工作業性が良好であるものを「○」とした。
<縫製作業性の評価>
縫製作業をする際の取り扱いにおいて、表皮材が反り返ったりして縫製作業性に劣っているものを「×」とし、表皮材が反り返ることもなくて縫製作業性が良好であるものを「○」とした。
<剛軟度の評価>
JIS L1096−1996の6.19.1のA法(45°カンチレバー法)に準拠して布帛の剛軟度(mm)を測定した。
Figure 2006200099
表から明らかなように、この発明の実施例1〜3の立毛パイル布帛は、折り曲げ部位においてもグリンニング現象が生じ難く高い外観品位を確保できると共に、布帛表面の凹凸もなく良好状態にフィットし、さらに裁断作業性、縫製作業性に優れ、かつ柔軟性、通気性にも優れて良好な座り心地を付与できる。
これに対し、経糸及び緯糸の両方にポリウレタン弾性糸を用いた比較例1、2の立毛パイル布帛は、張設後の状態で布帛表面に凹凸が認められフィット性に劣っており、裁断作業性、縫製作業性ともに不良であった。また、柔軟性が不十分であった。
この発明の一実施形態に係る立毛パイル布帛の一部を拡大して示す模式的斜視図である。 経糸の一例を示す拡大斜視図である。 緯糸の一例を示す拡大斜視図である。 緯糸の他の例を示す拡大斜視図である。 パイル布帛を縫製してシートパッドのコーナー部に被せた状態を示す図であって、(イ)は本発明に係るパイル布帛の斜視図、(ロ)は従来品の斜視図である。 98N荷重時の伸び率を測定する際の測定方向を示す説明図である。
符号の説明
1…立毛パイル布帛
2…経糸
3…緯糸
4…カットパイル
4A…低収縮パイル
4B…収縮率の大きい捲縮パイル
5…地組織
11…ポリエステル糸
12…弾性糸
13…芯糸
14…絡み糸
15…押え糸

Claims (15)

  1. 緯糸に経糸が織り込まれてなる地組織にパイル糸が植設された立毛パイル布帛において、前記経糸として少なくとも弾性糸が用いられ、前記緯糸として、水溶性繊維からなる芯糸に非水溶性繊維からなる絡み糸が捲回状態に巻き付けられると共にこの捲回状態を保持するための水溶性繊維からなる押え糸が複合されてなる捲回複合糸が用いられていることを特徴とする立毛パイル布帛。
  2. 緯糸に経糸が織り込まれてなる地組織にパイル糸が植設された立毛パイル布帛において、前記経糸として少なくとも弾性糸が用いられ、前記緯糸として、水溶性繊維からなる芯糸と非水溶性繊維からなる絡み糸とが合撚されてなる合撚複合糸が用いられていることを特徴とする立毛パイル布帛。
  3. 前記経糸として少なくともポリウレタン弾性糸が用いられている請求項1または2に記載の立毛パイル布帛。
  4. 前記経糸として、ポリエステルフィラメント糸及びポリウレタン弾性糸が用いられている請求項1または2に記載の立毛パイル布帛。
  5. 前記ポリウレタン弾性糸の太さが22〜122デシテックスである請求項3または4に記載の立毛パイル布帛。
  6. 前記芯糸を構成する水溶性繊維としてポリビニルアルコール繊維が用いられている請求項1〜5のいずれか1項に記載の立毛パイル布帛。
  7. 前記絡み糸を構成する非水溶性繊維としてポリエステル繊維が用いられている請求項1〜6のいずれか1項に記載の立毛パイル布帛。
  8. 前記絡み糸の太さが110〜330デシテックスである請求項7に記載の立毛パイル布帛。
  9. 前記地組織は、筬密度18〜40本/inch、緯糸密度48〜80本/inchの地組織である請求項1〜8のいずれか1項に記載の立毛パイル布帛。
  10. 前記パイル糸として、収縮率差を有する少なくとも2種類のポリエステルマルチフィラメント混繊糸が用いられ、
    収縮率の大きいポリエステル繊維は、捲縮を有し、かつ捲縮発現伸長率が1〜40%であって、該収縮率の大きいポリエステル繊維の頂端はパイル表面より沈み込む一方、収縮率の小さいポリエステル繊維はパイル表面にも存在することによって、多段差パイルを形成している請求項1〜9のいずれか1項に記載の立毛パイル布帛。
  11. 請求項1〜10のいずれか1項に記載のパイル布帛を水と接触させることによって前記複合糸を構成する芯糸を水に溶解させて芯糸を除去して得られた立毛パイル布帛。
  12. パイル布帛の98N荷重時の伸び率が、経方向において10%以上であり、緯方向において10%以上であり、バイアス方向において30%以上である請求項11に記載の立毛パイル布帛。
  13. 車輌の座席シート用表皮材として用いられる請求項11または12に記載の立毛パイル布帛。
  14. 弾性糸を含有した経糸に、水溶性繊維からなる芯糸に非水溶性繊維からなる絡み糸が捲回状態に巻き付けられると共にこの捲回状態を保持するための水溶性繊維からなる押え糸が複合されてなる捲回複合糸が緯糸として織り込まれてなる地組織にパイル糸が植設された立毛パイル布帛を製作する工程と、
    前記立毛パイル布帛を染色水浴に浸漬することによって、布帛の染色を行うと共に前記複合糸を構成する芯糸を水浴に溶解させて芯糸を除去する工程とを包含することを特徴とする立毛パイル布帛の製造方法。
  15. 弾性糸を含有した経糸に、水溶性繊維からなる芯糸と非水溶性繊維からなる絡み糸とが合撚されてなる合撚複合糸が緯糸として織り込まれてなる地組織にパイル糸が植設された立毛パイル布帛を製作する工程と、
    前記立毛パイル布帛を染色水浴に浸漬することによって、布帛の染色を行うと共に前記複合糸を構成する芯糸を水浴に溶解させて芯糸を除去する工程とを包含することを特徴とする立毛パイル布帛の製造方法。
JP2005015787A 2005-01-24 2005-01-24 立毛パイル布帛及びその製造方法 Pending JP2006200099A (ja)

Priority Applications (2)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2005015787A JP2006200099A (ja) 2005-01-24 2005-01-24 立毛パイル布帛及びその製造方法
CN200610006247.XA CN1811033B (zh) 2005-01-24 2006-01-24 长毛绒布帛及其制造方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2005015787A JP2006200099A (ja) 2005-01-24 2005-01-24 立毛パイル布帛及びその製造方法

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2006200099A true JP2006200099A (ja) 2006-08-03

Family

ID=36844141

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2005015787A Pending JP2006200099A (ja) 2005-01-24 2005-01-24 立毛パイル布帛及びその製造方法

Country Status (2)

Country Link
JP (1) JP2006200099A (ja)
CN (1) CN1811033B (ja)

Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
KR101602838B1 (ko) * 2015-12-15 2016-03-11 김종찬 파일사의 결합력이 향상된 카페트 및 이의 제조방법
CN113355757A (zh) * 2020-03-06 2021-09-07 勤伦有限公司 具弹性膜材的复合膜材的切割方法及具弹性丝的复合丝

Families Citing this family (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN111334918A (zh) * 2020-02-27 2020-06-26 浙江英诺威纺织有限公司 一种含有螺旋形绒头丝绒的生产工艺
CN112095208B (zh) * 2020-07-30 2021-11-05 德沐新材料科技(苏州)有限公司 一种吸水率高、保水率低的丝绒面料及其制作方法
CN116180304A (zh) * 2023-03-09 2023-05-30 裕丰源(福建)实业发展有限公司 一种压模毛刺布及其制造方法

Citations (6)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPS53103063A (en) * 1977-02-15 1978-09-07 Nichibi Kk Production of woven fabric having high extensibility
JPH08302564A (ja) * 1995-05-09 1996-11-19 Suminoe Textile Co Ltd 伸縮性布帛の製造方法
JP2000017543A (ja) * 1998-06-30 2000-01-18 Kawashima Textile Manuf Ltd 多色織柄モケット
JP2002013046A (ja) * 2000-06-30 2002-01-18 Suminoe Textile Co Ltd 車輌の座席シート用表皮材
JP2003227056A (ja) * 2002-02-07 2003-08-15 Toray Ind Inc ストレッチループパイル布帛およびその製造方法
JP2004238786A (ja) * 2003-01-17 2004-08-26 Toray Ind Inc 立毛パイル糸および立毛パイル布帛

Family Cites Families (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US3940522A (en) * 1971-05-27 1976-02-24 E. I. Du Pont De Nemours And Company Synthetic fibers and pile fabrics made therefrom
EP0030566B1 (en) * 1979-12-06 1986-07-30 Toray Industries, Inc. Pile fabric
KR20010012763A (ko) * 1998-03-25 2001-02-26 야스이 쇼사꾸 파일 직물

Patent Citations (6)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPS53103063A (en) * 1977-02-15 1978-09-07 Nichibi Kk Production of woven fabric having high extensibility
JPH08302564A (ja) * 1995-05-09 1996-11-19 Suminoe Textile Co Ltd 伸縮性布帛の製造方法
JP2000017543A (ja) * 1998-06-30 2000-01-18 Kawashima Textile Manuf Ltd 多色織柄モケット
JP2002013046A (ja) * 2000-06-30 2002-01-18 Suminoe Textile Co Ltd 車輌の座席シート用表皮材
JP2003227056A (ja) * 2002-02-07 2003-08-15 Toray Ind Inc ストレッチループパイル布帛およびその製造方法
JP2004238786A (ja) * 2003-01-17 2004-08-26 Toray Ind Inc 立毛パイル糸および立毛パイル布帛

Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
KR101602838B1 (ko) * 2015-12-15 2016-03-11 김종찬 파일사의 결합력이 향상된 카페트 및 이의 제조방법
CN113355757A (zh) * 2020-03-06 2021-09-07 勤伦有限公司 具弹性膜材的复合膜材的切割方法及具弹性丝的复合丝

Also Published As

Publication number Publication date
CN1811033A (zh) 2006-08-02
CN1811033B (zh) 2010-11-24

Similar Documents

Publication Publication Date Title
EP1704272B1 (en) Looped fabric comprising bamboo loops and terry made there from
TWI731000B (zh) 平面扣具及纖維製品
JP5461572B2 (ja) パイル布帛及びその製造方法
JP5222492B2 (ja) 芯鞘構造複合紡績糸及び布帛
JP2006200099A (ja) 立毛パイル布帛及びその製造方法
JP2010236136A (ja) 織物
JP2013104161A (ja) 織物
JP5540731B2 (ja) 人工皮革およびその製造方法
US5084322A (en) Pile fabric
JP6067442B2 (ja) 車両内装用複合材
JP5034968B2 (ja) 接着芯地
US8778818B2 (en) Anti-vandalism fabric suitable for upholstering seats
DE19904265C2 (de) Elastische Einlage, Verfahren zu deren Herstellung und Verwendung
JP6270357B2 (ja) モップ
JP7049628B2 (ja) 内装用モケット及びその製造方法
KR101772435B1 (ko) 경편직물과 이의 제조방법
CN112840069A (zh) 既触感柔软又耐磨和抗拉伸的纺织品
JPS61152849A (ja) 内装用パイル布帛
JP4157462B2 (ja) 内装用モケット
EP1025766B1 (de) Elastische Einlage, Verfahren zu deren Herstellung und Verwendung
KR102165504B1 (ko) 길이방향과 폭방향의 스트레치성이 우수한 심실링테이프용 원단
JPH0740541Y2 (ja) 内装用パイル布帛
JPH1060749A (ja) 芯地用織物
JP2005105455A (ja) 織物
JP3819963B2 (ja) モワレ防止織物芯地

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20070802

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20100106

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20100525

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20100723

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20100907

A02 Decision of refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02

Effective date: 20110510