JP2006274448A - プレスベルトおよびシュープレスロール - Google Patents
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Abstract
【課題】 プレスロールや加圧シューなどの加圧部材の幅方向における両端部に対応して位置する両端部対応領域でのクラックの発生を効果的に抑制することのできるプレスベルトを提供する。
【解決手段】 プレスベルト2は、プレスロール1または加圧シュー3の幅方向における両端部に対応して位置する両端部対応領域Bと、この両端部対応領域Bの間に位置する中央領域Aとを含む。中央領域Aは、所定の厚みを有していて、加圧手段によって加圧される被加圧部を構成する。端部対応領域Bは、中央領域Aの厚みよりも小さな厚みとなる凹部14となって加圧手段からの圧力を逃がす圧力逃がし部を構成する。
【選択図】 図4
【解決手段】 プレスベルト2は、プレスロール1または加圧シュー3の幅方向における両端部に対応して位置する両端部対応領域Bと、この両端部対応領域Bの間に位置する中央領域Aとを含む。中央領域Aは、所定の厚みを有していて、加圧手段によって加圧される被加圧部を構成する。端部対応領域Bは、中央領域Aの厚みよりも小さな厚みとなる凹部14となって加圧手段からの圧力を逃がす圧力逃がし部を構成する。
【選択図】 図4
Description
この発明は、製紙工業、磁気記録媒体製造工業、繊維工業等の各種工業において、プレス対象物を加圧処理するために用いられるプレスベルトおよびシュープレスロールに関するものである。
各種工業において、プレスベルト上に帯状のプレス対象物を載せ、プレスベルトの周内部に位置する一方の加圧部材とプレスベルトの周外部に位置する他方の加圧部材との間でプレス対象物を加圧処理するベルトプレスが使用されている。ここでいう加圧部材とは、プレスロールや加圧シューなどである。ベルトプレスの一例として、製紙工業における脱水プレスとしてのシュープレスを挙げることができる。
シュープレスとは、製紙工業を例に簡単に説明すると、プレスベルトの周外部に位置する外部加圧手段としてのプレスロールと、プレスベルトの周内部に位置する内部加圧手段としての加圧シューとの間で、プレスベルトの外周面上に載せたプレス対象物(湿紙)にプレスベルトを介して面圧力をかけ、加圧処理(脱水処理)する方法である。2本のロールでプレスを行なうロールプレスはプレス対象物に線圧力を加えるのに対し、シュープレスでは走行方向に所定の幅を持つ加圧シューを用いることにより、プレス対象物に面圧力を加えることができる。このため、シュープレスによって脱水プレスを行なった場合、ニップ幅を大きくすることができ、脱水効率を高めることができるという利点がある。
シュープレスをコンパクトにするため、例えば特開昭61−179359号公報(特許文献1)に開示されるように、内部加圧手段としての加圧シューを、可撓性のある筒状のプレスベルト(プレスジャケット)で覆い、ロール状に組み立てたシュープレスロールが普及している。
上記のような脱水工程の他にも、例えば製紙工業、磁気記録媒体製造工業、繊維工業等において、プレス対象物の表面を平滑化し、光沢を付与するために行なわれるカレンダー工程等、プレス対象物の品質を向上させるために、ロールプレスに代えて、あるいはロールプレスと併用して、シュープレスが行なわれる場合がある。プレスベルトに対する一般的な要求特性としては、強度、耐摩耗性、可撓性および水、油、ガス等に対する非透過性が挙げられる。プレスベルトには、これらの諸特性を備えた材料として、ウレタンプレポリマーと硬化剤とを反応させて得られるポリウレタンが一般的に使用されている。しかし、プレスベルト、特にシュープレス用ベルトには、過酷な屈曲や加圧が繰り返されるため、外周面にクラックの発生しやすいことが耐久性の点で大きな問題となっている。
上記の問題を解決する方法として、特開平10−298893号公報(特許文献2)には、ベルトを構成する樹脂の硬度を、幅方向の中央域で高く、シューエッジ対応部位を含む両縁域で低くなるように変化させることによって、耐摩耗性と耐クラック性を改善したシュープレス用ベルトが開示されている。この場合、中央域では耐摩耗性や耐加圧変形性を維持し、両縁域ではクラックを起こりにくくできるという効果があると考えられる。
クラックは、プレスロールや加圧シューなどの加圧手段の幅方向両端部に対応する両端部対応域で集中して発生しやすい。両端部対応域の間に位置しプレス対象物の加圧処理面となる中央域ではさほど厳密な耐クラック性は要求されず、むしろ耐摩耗性や耐加圧変形性を重視すべきであると考えられる。
特許文献2はこのような思想に基いてなされたものであるが、硬度の変化によって耐摩耗性と耐クラック性を両立させるためには、中央域と両縁部との硬度の変化をある程度大きくする必要がある。ポリウレタンの硬度が異なると、成形時の収縮力が異なる。このため、幅方向の中央域と両縁域での硬度の変化を大きくしたベルトは、円筒度が悪くなり、走行性に支障をきたすおそれがある。
他の先行技術文献として、プレスベルトの形状や構造に改良を加えたり、排水溝(搾水溝)の深さに変化を持たせることによって、加圧手段の幅方向両端部に対応する両端部対応域でのクラックの発生を抑制したものもある。例えば、特開2002−180393号公報(特許文献3)では、加圧手段の幅方向両端部に対応する位置にあるプレスベルトの中間層の厚みを大きくしている。特開2002−327389号公報(特許文献4)では、加圧手段の幅方向両端部に対応する位置にある排水溝の底を中間層である補強層に近づけている。米国特許第5,943,951号公報(特許文献5)では、プレスベルトの幅方向両端部の厚みを徐々に変化させることによって可撓性を高めている。米国特許第6,030,503号公報(特許文献6)では、プレスベルトの幅方向両端部に溝とは異なる多数の凹部を設けている。特開平11−12975号公報(特許文献7)では、プレスベルトの幅方向両端部の排水溝の深さを浅くしている。
特開昭61−179359号公報
特開平10−298893号公報
特開2002−180393号公報
特開2002−327389号公報
米国特許第5,943,951号公報
米国特許第6,030,503号公報
特開平11−12975号公報
上記の先行技術文献においては、典型的には、加圧手段の幅方向両端部に対応する位置にあるプレスベルトの両端部対応領域の可撓性を高めることにより、この領域でのクラックの発生を抑制しようとしている。しかしながら、プレスベルトの両端部対応領域の可撓性を高めるようにしても、クッラク発生に対する抑制効果は不十分である。
加圧手段によって湿紙などのプレス対象物に対して加圧処理を行っているとき、加圧手段の幅方向両端部に対応するプレスベルトの両端部対応領域には、加圧手段によって加圧されて拘束されている部分と、加圧手段によって拘束されない部分との境界が位置しており、この境界部分から幅方向外側に位置するプレスベルト部分に対して曲げ力が作用する。すなわち、上記の境界部分には、加圧手段からの加圧力と、加圧処理時に必然的に生じる曲げ力が相乗的に作用している。そのため、たとえこの境界部分近傍領域に可撓性を持たせるような構造にしても、クラック発生に対する抑制効果が不十分となる。
この発明の目的は、プレスロールや加圧シューなどの加圧部材の幅方向における両端部に対応して位置する両端部対応領域でのクラックの発生を効果的に抑制することのできるプレスベルトを提供することである。
この発明の他の目的は、上記のプレスベルトを外筒として用いたシュープレスロールを提供することである。
本発明のプレスベルトは、エンドレス形状を有し回転走行するものであって、該プレスベルトの外周面側にプレス対象物を載せ、該プレスベルトの周内部および/または周外部に位置し所定の幅を有する加圧手段によってプレス対象物を加圧処理する方法に用いられるものである。プレスベルトは、加圧手段の幅方向における両端部に対応して位置する両端部対応領域と、この両端部対応領域の間に位置する中央領域とを含む。中央領域は、所定の厚みを有していて、加圧手段によって加圧される被加圧部を構成し、両端部対応領域は、中央領域の厚みよりも小さな厚みとなる凹部となって加圧手段からの圧力を逃がす圧力逃がし部を構成する。
プレスベルトの両端部対応領域は、中央領域の厚みよりも小さな厚みとなる凹部となっているので、プレス対象物に対する加圧処理時に、この両端部対応領域においては加圧手段からの圧力を逃がしている。従って、両端部対応領域には、加圧処理時において曲げ応力のみが作用し、加圧手段からの高い圧力は作用しない。こうして、上記構成の本発明によれば、プレスベルトの両端部対応領域におけるクラックの発生を効果的に抑制し得る。
なお、本明細書において使用する「走行方向」および「幅方向」という用語は、特記がない限り、それぞれプレス対象物の走行方向および幅方向を指すものとする。また、プレス対象物は、湿紙、磁気テープ、織物などの帯状材料であって特に限定はない。また、加圧手段は、プレスロールや加圧シューなどである。
好ましくは、プレスベルトの両端部対応領域における凹部の深さは、加圧手段に加圧されたときの中央領域の厚み寸法の変化量よりも大きい。このような凹部の深さであれば、プレス対象物に対する加圧処理時に、加圧手段からの高い圧力を確実にプレスベルトの両端部対応領域で逃がすことができる。凹部の深さは、例えば、1.0mm以上である。
一つの実施形態では、凹部は、当該プレスベルトの外周面に形成されている。他の実施形態では、凹部は、当該プレスベルトの内周面に形成されている。さらに他の実施形態として、当該プレスベルトの外周面および内周面の両者に凹部を形成するようにしてもよい。
一つの実施形態では、上記の両端部対応領域の幅方向外側に、両端部対応領域とほぼ同じ厚みの最端領域を含む。他の実施形態では、上記の両端部対応領域の幅方向外側に、中央領域とほぼ同じ厚みの最端領域を含む。プレスベルトの最端領域が中央領域とほぼ同じ厚みを有するようにすれば、フェルトの幅方向両端部を安定して支えることができるので、フェルトの自由な動きを規制できる。
プレスベルトは、例えば、中央領域および両端部対応領域の両者に延在する補強層と、その上の上部弾性層とを備える。この場合、上部弾性層が、圧力逃がし部となる凹部を有している。
他の実施形態では、プレスベルトは、中央領域および両端部対応領域の両者に延在する補強層と、その上に位置し中央領域にのみ延在する上部弾性層とを備える。この場合、補強層外周面の露出部分が、圧力逃がし部となる凹部を形成する。
上部弾性層の外周面に、ベルトの走行方向に沿って延びる多数の排水溝を形成してもよい。この場合、好ましくは、上記凹部の深さは、排水溝の底端深さと同じかそれよりも大きい。プレスベルトの両端部対応領域にある排水溝の底端は、クラックの発生起点となる可能性が高い。この実施形態では、両端部対応領域を凹部にして圧力を逃がすことに加えて、この領域に排水溝が形成されていないので、クラック発生抑制効果がより高い。
他の実施形態におけるプレスベルトは、中央領域および両端部対応領域の両者に延在する補強層と、その下の下部弾性層とを備える。この場合、下部弾性層が、圧力逃がし部となる凹部を有している。
他の実施形態におけるプレスベルトは、中央領域および両端部対応領域の両者に延在する補強層と、その下の下部弾性層とを備える。この場合、下部弾性層が、圧力逃がし部となる凹部を有している。
さらに他の実施形態におけるプレスベルトは、中央領域および両端部対応領域の両者に延在する補強層と、その下に位置し中央領域にのみ延在する下部弾性層とを備える。この場合、補強層内周面の露出部分が、圧力逃がし部となる凹部を形成する。
この発明に従ったシュープレスロールは、前述した特徴を有するエンドレス形状のプレスベルトからなる外筒と、この外筒の周内部に位置する加圧手段としての加圧シューとを備える。好ましくは、所定の厚みを有するプレスベルトの中央領域の両端は、加圧シューの両端エッジ部よりも幅方向の内側に位置している。
以下に、図面を参照しながら本発明の実施の形態について具体的に説明する。
図1は、抄紙機のプレス工程で用いられるシュープレス装置の走行方向断面を示す図である。シュープレス装置は、加圧手段1としてのプレスロールと、プレスロール1に対向するプレスベルト2と、プレスベルト2の周内部に位置する加圧手段3としての加圧シューとを備えている。なお、図1の装置においては、加圧シュー3をプレスベルト2で覆い、プレスベルト2を外筒としてロール状に組立て、シュープレスロール30を構成しているが、プレスベルト2はロール状に組み立てることなく、エンドレスベルトのまま使用することもできる。
この種のプレスベルト2のサイズは、一般的には、その幅が2〜15m、周長が1〜30m、厚みが2〜10mmである。
プレスロール1は、プレスベルト2の周外部に位置し、一方の加圧手段として機能する。加圧シュー3は、プレスベルト2の周内部に位置し、他方の加圧手段として機能する。プレスベルト2とプレスロール1との間には、フェルト4に重ねられてプレス対象物としての湿紙5が通される。プレスベルト2の外周面とフェルト4とは、直接接触している。
プレスベルト2と加圧シュー3との間には潤滑油が供給され、プレスベルト2は加圧シュー3の上を滑ることができる。プレスロール1は駆動回転し、プレスベルト2は走行するフェルト4との摩擦力によって加圧シュー3の上を滑りながら従動回転する。
加圧シュー3は、プレスベルト2の周内部からプレスロール1に向けて押し付けられており、この押し付け力によって湿紙5はプレスされ、脱水される。加圧シュー3の表面は、プレスロール1の表面に対応した凹状となっている。このため、プレスロール1とプレスベルト2との間には、走行方向に広い幅を持った加圧脱水部Pが形成されている。
図2は、図1における加圧脱水部Pの幅方向断面を示す要部断面図である。図2に示すように、プレスロール1および加圧シュー3は、幅方向に一定の長さを有している。プレスベルト2は、中央領域Aと、両端部対応領域Bと、最端領域Cとを含む。両端部対応領域Bは、プレスロール1の加圧面6の両端部7および加圧シュー3の加圧面8の両端部9を含む部位に対応する領域である。最端領域Cは、両端部対応領域Bの外側に位置する。
図2に示すプレスベルト2においては、その中央領域Aが所定の厚みを有していて、プレスロール1および加圧シュー3によって加圧される被加圧部を構成し、両端部対応領域Bが中央領域Aの厚みよりも小さな厚みとなる凹部となってプレスロール1および加圧シュー3からの圧力を逃がす圧力逃がし部を構成し、最端領域Cが中央領域Aとほぼ同じ厚みとなっている。
図3は、他の形態のプレスベルトを示している。同一または相当部分の要素に対しては、図2で用いたのと同じ番号を用いている。図3に示すプレスベルト2においては、その中央領域Aが所定の厚みを有していて、プレスロール1および加圧シュー3によって加圧される被加圧部を構成し、両端部対応領域Bが中央領域Aの厚みよりも小さな厚みとなる凹部となってプレスロール1および加圧シュー3からの圧力を逃がす圧力逃がし部を構成し、最端領域Cが両端部対応領域Bとほぼ同じ厚みとなっている。
図4の(a)は、プレス対象物である湿紙5およびプレスベルト2が、プレスロール1と加圧シュー3との間に挟まれている状態を拡大して示している。この図4の(a)では、フェルト4の図示を省略した。また、プレスベルト2は、図面を単純化するために、均一な厚みで図示している。図4の(b)〜(f)は、この発明の実施形態に係るプレスベルト2の種々の形状を示している。
図4の(a)に示すように、プレス対象物である湿紙5の端部は、プレスロール1の加圧面6の端部7および加圧シュー3の加圧面8の端部9よりも幅方向内側に位置している。プレスベルト2の端部対応領域Bは、プレスロール1の端部7および加圧シュー3の端部9の部位に対応する領域である。具体的には、端部対応領域Bは、プレスロール1の端部7および加圧シュー3の端部9に対応する位置を中心にして幅方向両側にある程度の広がりをもって延在している。湿紙5は、プレスベルト2の両端部対応領域Bに挟まれる中央領域A上に位置する。端部対応領域Bと中央領域Aとの境界部は、湿紙5の端部と加圧手段(プレスロール1および加圧シュー3)の端部との間のほぼ中間付近に位置する。端部対応領域Bの外側には最端領域Cが位置するが、それらの両領域の境界部は、加圧手段の端部よりも幅方向外側に位置している。
湿紙5に対して加圧処理を行っている状態では、プレスベルト2のうち、プレスロール1の加圧面6と加圧シュー3の加圧面8とに挟まれる部分がこれらの加圧手段によって拘束される。一方、プレスロール1の加圧面6の端部7および加圧シュー3の加圧面8の端部9よりも幅方向外側に位置するプレスベルト部分は、これらの加圧手段によって拘束されない。上記のプレスベルト2の拘束部分と非拘束部分との境界部2bは、プレスロール1の端部7および加圧シュー3の端部9のところに位置する。加圧時には、図4の(a)において想像線で示すように、加圧手段によって拘束されていない部分に必然的に曲げ力が作用する。プレスベルト2の境界部分2bに、上記の曲げ力に加えて加圧手段からの高い圧力が集中するようなことがあれば、この境界部分でクラックが発生し易くなる。
上記のようなプレスベルト2の境界部分2bにおけるクラックの発生を効果的に抑制するために、本発明の実施形態に係るプレスベルト2の両端部対応領域Bは、中央領域Aの厚みよりも小さな厚みとなる凹部となって加圧手段からの圧力を逃がす圧力逃がし部を構成する。
図4の(b)に示すプレスベルト2においては、中央領域Aおよび最端領域Cがほぼ同じ厚みを有していて、それらの間の端部対応領域Bの外周面に段差をもって窪んだ凹部14を形成している。この凹部14の深さdは、好ましくは、1.0mm以上である。通常、加圧処理時におけるプレスベルト中央領域Aの厚み寸法の変化量は1.0mmよりも小さいので、このような凹部14の深さであれば、加圧手段からの高い圧力を確実に両端部対応領域Bで逃がすことができる。なお、凹部14は、プレスベルト2の走行方向に延びている。
図4の(c)に示すプレスベルト2においては、端部対応領域Bが中央領域Aよりも小さな厚みとなる凹部14となって圧力逃がし部を構成し、最端領域Cが端部対応領域Bとほぼ同じ厚みを有している。この実施形態においても、凹部14の深さ、すなわち中央領域Aの厚みと端部対応領域Bの厚みとの差を1.0mm以上にするのが好ましい。なお、凹部14は、プレスベルト2の走行方向に延びている。
図4の(b)および(c)に示したプレスベルト2においては、端部対応領域Bが平坦な底面を有する凹部の形態であった。一方、図4の(d)に示すプレスベルト2においては、端部対応領域Bは、その外周面に断面が円弧状の凹部14を有していて、この凹部14により加圧手段からの圧力を逃がす圧力逃がし部を構成している。断面円弧状の凹部14は、プレスベルト走行方向に延びている。最端領域Cは、中央領域Aとほぼ厚みを有している。この実施形態においても、好ましくは、凹部14の最大深さdを1.0mm以上にする。
図4の(e)に示すプレスベルト2においては、端部対応領域Bの内周面に凹部14が形成されて圧力逃がし部を構成している。内周面に形成された凹部14は、プレスベルトの走行方向に延びている。この実施形態では、中央領域Aの外周面と端部対応領域Bの外周面との境界部分に段差が現われない。最端領域Cは、中央領域Aとほぼ同じ厚みを有している。好ましくは、プレスベルト2の内周面における凹部14の深さdは、1.0mm以上である。
図4の(f)に示すプレスベルト2においては、端部対応領域Bの内周面に凹部14が形成されて圧力逃がし部を構成し、最端領域Cが端部対応領域Bとほぼ同じ厚みを有している。この実施形態においても、プレスベルト2の外周面に段差が現われない。好ましくは、プレスベルト2の内周面における凹部14の深さdは、1.0mm以上である。
図5は、プレスベルト2の一例を示す図であり、(a)はその断面図、(b)は平面図である。プレスベルト2は、エンドレスの補強基材中に弾性材料が含浸された補強層10と、補強層10の外周面側に位置し、補強層10の補強基材中に含浸された弾性材料と一体化した上部弾性層11と、補強層10の内周面側に位置し、補強層10の補強基材中に含浸された弾性材料と一体化した下部弾性層12とで構成されている。
補強層10を構成する補強基材としては、ポリアミド、ポリエステルなどの有機繊維で構成された織布などが使用される。ベルト2の全体は熱硬化性ポリウレタンなどの弾性材料で一体的に形成され、ベルト2中に、補強基材が埋設された構造となっている。
図5に示すように、上部弾性層11の外周面には、ベルトの走行方向に沿って延びる多数の排水溝13があらわれている。排水溝13は、プレスベルトの2の幅方向全体に亘ってらせん状に延びている。
図6は、プレスベルト2の拡大断面図である。プレスベルト2のうち、加圧手段の幅方向における両端部に対応して位置する両端部対応領域Bの厚みは、中央領域Aおよび最端領域Cよりも小さくなるようにされている。具体的には、上部弾性層11は、両端部対応領域Bがベルト走行方向に沿って環状に延びる凹み部14となっており、そのため両端部対応領域Bの厚みが他の領域よりも小さくなっている。
図6に示す実施形態では、排水溝13の底端の深さをd1とし、凹み部14の底面の深さをd2とすると、d2≧d1の関係が成立するように排水溝13の深さおよび凹み部14の深さが選ばれている。このような寸法関係にすることにより、中央領域Aおよび最端領域Cには排水溝13が形成されているが、両端部対応領域Bには排水溝が形成されていない状態となる。
ここで具体的な寸法を例示的に記載する。前述したように、プレスベルト2は、一般的には、その幅寸法が2〜15m、周長が1〜30m、厚みが2〜10mmである。このようなプレスベルト2において、両端部対応領域Bの幅寸法は2〜15cm程度、上部弾性層11の厚みは1.2〜8mm程度、排水溝13の底端の深さd1は0.5〜7mm程度、凹み部14の底面の深さd2は1.0〜7mm程度である。また、排水溝13の溝幅は0.6〜1.2mm程度であり、隣接する排水溝13間に位置するランド部の幅は0.9〜3.6mm程度である。
図6に示す実施形態によれば、次の利点が得られる。先ず第1に、両端部対応領域Bの厚みを小さくすることにより、この領域の可撓性を高められるとともに、加圧手段からの圧力を逃がす圧力逃がし部を構成することができる。したがって、この領域にねじり応力や曲げ応力等が作用しても、加圧手段からの過大な圧力がかかっていないのでクラックの発生を抑制し得る。
第2に、両端部対応領域Bに位置する上部弾性層に凹み部14を形成することにより、クラックの発生起点となりやすい排水溝を無くしているので、クラック発生抑制効果が高い。好ましくは、凹み部14の両側壁面14aは、下方に行くにつれて互いの間隔が小さくなるテーパ状に形成されている。仮に凹み部14の両側壁面14aが垂直壁面だとすると、垂直壁面と排水溝13との交差部で鋭いカドがたつおそれがある。このようなカドの発生を防止するために、テーパ状の両側壁面14aとするのが好ましい。また、凹み部14の底部コーナー部での応力集中を避けるために、コーナー部を曲面状に形成してもよい。
第3に、プレスベルト2の最端領域Cが中央領域Aと同じ厚みを有するようにしているので、最端領域Cによってフェルトの幅方向両端部を安定して支えることができ、フェルトの自由な動きを規制できる。
第4に、最端領域Cの外周面に、ベルトの走行方向に沿って多数の排水溝が形成されているので、両端部対応領域Bから最端領域Cまでを通じての可撓性が高まり、クラックの発生を抑制する効果が高まる。
図7、図8、図9および図10は、プレスベルトの他の実施形態を示している。
図7に示すプレスベルト20は、補強層21と、上部弾性層22と、下部弾性層23とを備える。この実施形態では、排水溝24が上部弾性層22の幅方向全体に亘ってらせん状に延びている。上部弾性層22のうち、両端部対応領域Bの部分は凹み部25となって圧力逃がし部を構成している。凹み部25の底面の深さは、排水溝24の底の深さよりも小さい。そのため、凹み部25の底面にも排水溝24があらわれている。この実施形態においても、厚みが小さくなっている両端部対応領域Bが良好な可撓性を発揮するとともに、圧力逃がし部を構成しているので、クラックの発生を抑制できる。
図8に示すプレスベルト40は、補強層41と、上部弾性層42と、下部弾性層43とを備える。この実施形態では、排水溝が形成されていない。上部弾性層42のうち、両端部対応領域Bの部分は凹み部44となって圧力逃がし部を構成しているので、両端部対応領域Bにおけるクラックの発生を効果的に抑制できる。
図9に示すプレスベルト60は、補強層61と、上部弾性層62と、下部弾性層63とを備える。上部弾性層62内には、排水溝64が幅方向全体に亘ってらせん状に延びている。この実施形態では、大部分の両端部対応領域B上および最端領域C上に殆ど上部弾性層が形成されておらず、補強層61の表面と実質的に同一面となっている。ここで「実質的に同一面」とは、仮に上部弾性層が残っていたとしても、その厚みが0.5mm以下のスキン層となっていることを含む概念である。また、中央領域Aと両端部対応領域Bとの境界部分に位置する上部弾性層62の両端部65は、なだらかに湾曲した斜面となっている。特に上部弾性層62の上下のコーナ部では、応力集中を避けるためになだらかな曲面状の面取りを施している。
図9に示した実施形態では、プレスベルト60の外周面において、中央領域Aがプレスベルト走行方向に凸部になって延び、両端部対応領域Bおよび最端領域Cがプレスベルト走行方向に凹部となって延びている。凹部となった両端部対応領域Bは、加圧手段からの圧力を逃がす圧力逃がし部を構成する。なお、プレスベルト60の外周面における中央領域Aと両端部対応領域Bとの段差を1.0mm以上にするのが好ましい。このような寸法の段差を確保できるのであれば、両端部対応領域Bに0.5mm以上の厚みの上部弾性層を残してもよい。
図10に示すプレスベルト70は、補強層71と、上部弾性層72と、下部弾性層73とを備える。上部弾性層72内には、排水溝74が幅方向全体に亘ってらせん状に延びている。この実施形態では、最端領域C上に殆ど上部弾性層が形成されておらず、補強層71の表面と実質的に同一面となっている。また、両端部対応領域B上に位置する上部弾性層72は、最端領域Cに向かって次第に厚みが小さくなるテーパ部分75を有している。図示するように、テーパ部分75の途中位置には、排水溝74の底端よりも深く抉れた凹溝76が形成されている。次第に厚みが小さくなるテーパ部分75は応力を緩和するように作用する。また、凹溝76の部分では、クラックの発生起点となりやすい排水溝が形成されていないので、この部分におけるクラックの発生を抑制できる。なお、凹溝76の幅寸法は、1cm〜10cm程度である。また、凹部76は、加圧手段からの圧力を逃がす圧力逃がし部を構成する。
次に、図11を参照して、本発明によるシュープレスロール30の実施形態について説明する。図11は、シュープレスロールの幅方向断面を示す図である。シュープレスロール30は、加圧手段としての加圧シュー3をプレスベルト2で覆い、プレスベルト2を外筒としてロール状に組み立てられている。
加圧シュー3は、支持軸31上で油圧シリンダ32によって支持されており、上方向にプレスベルト2を押し付けることができる。支持軸31の両端部上には、端部ディスク33がベアリング34を介して回転自在に支持されている。プレスベルト2の端縁は、端部ディスク33の外周36上で半径方向内側に折り曲げられている。プレスベルト2端縁の折り曲げ部は、端部ディスク33の外周部と、リング状の固定プレート35とに挟まれ、ボルト等で締め付けられて固定されている。プレスベルト2と加圧シュー3との間には潤滑油が供給される。このようにして、端部ディスク33に固定されたプレスベルト2は、加圧シュー3の上を滑りながら回転することができる。
プレスベルト2としては、前述した各実施形態のものを使用することができる。図から明らかなように、プレスベルト2の中央領域Aの両端は、加圧シュー3の両端エッジよりも幅方向内側に位置している。
以上、図面を参照してこの発明の実施形態を説明したが、この発明は、図示した実施形態のものに限定されない。図示した実施形態に対して、この発明と同一の範囲内において、あるいは均等の範囲内において、種々の修正や変形を加えることが可能である。
本発明によるプレスベルトは、従来クラックが発生しやすかった両端部対応領域においてクラックが起こりにくいものとなるので、長期に亘って使用することが可能になる。したがって、製紙工業、磁気記録媒体製造工業、繊維工業等の各種工業において、プレス対象物を加圧処理するために用いられるプレスベルトおよびシュープレスロールに有利に適用され得る。
1 プレスロール、2 プレスベルト、2b 境界部分、3 加圧シュー、4 フェルト、5 湿紙、6 加圧面、7 両端部、8 加圧面、9 両端部、10 補強層、11 上部弾性層、12 下部弾性層、13 排水溝、14 凹み部、14a 側壁面、20 プレスベルト、21 補強層、22 上部弾性層、23 下部弾性層、24 排水溝、25 凹み部、30 シュープレスロール、31 支持軸、32 油圧シリンダ、33 端部ディスク、34 ベアリング、35 固定プレート、36 外周、40 プレスベルト、41 補強層、42 上部弾性層、43 下部弾性層、44 凹み部、60 プレスベルト、61 補強層、62 上部弾性層、63 下部弾性層、64 端水溝、65 両端部、70 プレスベルト、71 補強層、72 上部弾性層、73 下部弾性層、74 排水溝、75 テーパ部分、76 凹溝、A 中央領域、B 両端部対応領域、C 最端領域。
Claims (15)
- 回転走行するエンドレス形状のプレスベルトと、前記プレスベルトの周内部および/または周外部に位置する加圧手段とを備えたプレス装置におけるプレスベルトであって、
前記加圧手段の幅方向における両端部に対応して位置する両端部対応領域と、前記両端部対応領域の間に位置する中央領域とを含み、
前記中央領域は、所定の厚みを有していて、前記加圧手段によって加圧される被加圧部を構成し、
前記両端部対応領域は、前記中央領域の厚みよりも小さな厚みとなる凹部となって前記加圧手段からの圧力を逃がす圧力逃がし部を構成する、プレスベルト。 - 前記凹部の深さは、前記加圧手段に加圧されたときの前記中央領域の厚み寸法の変化量よりも大きい、請求項1に記載のプレスベルト。
- 前記凹部の深さは、1.0mm以上である、請求項1または2に記載のプレスベルト。
- 前記凹部は、当該プレスベルトの外周面に形成されている、請求項1〜3のいずれかに記載のプレスベルト。
- 前記凹部は、当該プレスベルトの内周面に形成されている、請求項1〜3のいずれかに記載のプレスベルト。
- 前記両端部対応領域の幅方向外側に、前記両端部対応領域とほぼ同じ厚みの最端領域を含む、請求項1〜5のいずれかに記載のプレスベルト。
- 前記両端部対応領域の幅方向外側に、前記中央領域とほぼ同じ厚みの最端領域を含む、請求項1〜5のいずれかに記載のプレスベルト。
- 前記中央領域および前記両端部対応領域の両者に延在する補強層と、その上の上部弾性層とを備え、
前記上部弾性層が、前記凹部を有している、請求項1〜7のいずれかに記載のプレスベルト。 - 前記中央領域および前記両端部対応領域の両者に延在する補強層と、その上に位置し前記中央領域にのみ延在する上部弾性層とを備え、前記補強層外周面の露出部分が前記凹部を形成する、請求項1〜7のいずれかに記載のプレスベルト。
- 前記上部弾性層の外周面に、ベルトの走行方向に沿って延びる多数の排水溝が形成されている、請求項8または9に記載のプレスベルト。
- 前記凹部の深さは、前記排水溝の底端深さと同じかそれよりも大きい、請求項10に記載のプレスベルト。
- 前記中央領域および前記両端部対応領域の両者に延在する補強層と、その下の下部弾性層とを備え、
前記下部弾性層が、前記凹部を有している、請求項1〜7のいずれかに記載のプレスベルト。 - 前記中央領域および前記両端部対応領域の両者に延在する補強層と、その下に位置し前記中央領域にのみ延在する下部弾性層とを備え、前記補強層内周面の露出部分が前記凹部を形成する、請求項1〜7のいずれかに記載のプレスベルト。
- エンドレス形状のプレスベルトからなる外筒と、前記外筒の周内部に位置する加圧手段としての加圧シューとを備え、
前記外筒は、請求項1〜13のいずれかに記載のプレスベルトである、シュープレスロール。 - 所定の厚みを有する前記プレスベルトの中央領域の両端は、前記加圧シューの両端エッジ部よりも幅方向の内側に位置している、請求項14に記載のシュープレスロール。
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