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JP2006112189A - 緊張材定着具 - Google Patents

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JP2006112189A JP2004303136A JP2004303136A JP2006112189A JP 2006112189 A JP2006112189 A JP 2006112189A JP 2004303136 A JP2004303136 A JP 2004303136A JP 2004303136 A JP2004303136 A JP 2004303136A JP 2006112189 A JP2006112189 A JP 2006112189A
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Kazuo Kazama
和夫 風間
Kazuaki Yamamoto
和明 山本
Tsutomu Kubota
努 久保田
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Abstract

【課題】 コンクリート構造体にプレストレスを導入する緊張材の定着具において、コンクリート構造体の支圧面から定着具及び緊張材の先端部が突出する長さを短縮し、保護コンクリート層厚の低減、コンクリート構造体に設けるための切り欠き部の簡略化を図る。
【解決手段】 内周面及び外周面にネジ山を有する長ナット2の内周面に、緊張材1の端部に設けられたねじ切り部を、長ナット2の長さの約半分までねじ込む。この長ナット2の外周面のネジ山は、支圧板3の貫通孔の内周面に形成されたネジ山に螺合され、支圧板はコンクリート構造体4の端面に当接される。これにより、緊張材1の張力は長ナット2及び支圧板3を介してコンクリート構造体9に伝達される。緊張材1の緊張は、長ナット2の反対側からねじ込まれる延長鋼材にセンターホールジャッキを装着して行い、緊張材に引張力が導入された状態で、支圧板3を回転させて締め込む。
【選択図】図1

Description

本願発明は、コンクリートにプレストレスを導入するための緊張材を、緊張力が導入された状態でコンクリート構造体に定着する緊張材定着具に関する。
プレストレスを導入するための緊張材をコンクリート構造体に定着する際に用いられる緊張材定着具としては、端部にねじ切りが施された緊張材にナットを螺合して定着するものと、緊張材に圧接されるくさびによって定着するものとが一般に知られている。このうち、ナットによって定着する緊張材定着具は、例えば特許文献1及び特許文献2に記載されているようにいくつかの提案がなされているが、基本的な構成は、図13に示すようにナット102と支圧板103とを有するものである。つまり、緊張材101の端部に施されたねじ切り部101aに螺合されるナット102と、緊張材101が挿通される貫通孔を有する支圧板103を備えており、緊張材101に螺合されたナット102が支圧板103に係止されるものとなっている。
このような定着具を用い、引張力が導入された状態で緊張材101をコンクリート構造体100に定着すると、緊張材101の引張力がナット102を介して支圧板103に作用し、この支圧板103からコンクリート構造体100内に圧縮力として伝達される。
上記定着具を用いるときの緊張作業及び定着作業は次のように行われる。
緊張材101の先端には、図14に示すように緊張ロッド104を接続し、この緊張ロッド104にラムチェアー105とセンターホールジャッキ106を装着する。そして、センターホールジャッキ106の後端部に緊張ロッド104を係止する。緊張ロッド104をセンターホールジャッキ106に係止する構造は、緊張ロッド104の後端部に螺合されたナット107と支圧板108とを用い、緊張材101をコンクリート構造体100に定着するのと同じ構造を採用することができる。なお、上記緊張ロッド104に代えて、緊張材101の先端部にカプラーを介して延長鋼棒を接続し、この延長鋼棒の後端部をセンターホールジャッキの後部に係止するものであってもよい。
緊張材101に接続された緊張ロッド104がセンターホールジャッキ106の後端部に係止されると、センターホールジャッキ106を駆動し、支圧板103を介してコンクリート構造体100に反力を負荷することにより緊張材101をコンクリート構造体から引き出すように引張力を付与する。そして、緊張材101がコンクリート構造体100から引き出されるのにしたがって、ラムチェアー105の側方からナット102を回転させて締め込む。このようにナット102が締め込まれると、センターホールジャッキ106の駆動を停止し、緊張ロッド104の牽引を解除してもナット102が支圧板103に係止され、緊張材101がコンクリート構造体100側に引き込まれない。したがって、緊張材101は引張力が導入された状態で定着され、緊張材101の反力がコンクリート構造体100に作用してコンクリート構造体にプレストレス(圧縮力)が導入される。
特開昭48−91830号公報 特開平3−208965号公報
しかしながら、上記のような従来から広く知られている緊張材定着具では、次のような問題点がある。
緊張力が導入された緊張材の定着端部は、図15に示すようにコンクリート構造体100の表面から支圧板103の厚さ、座金の厚さ、ナット102の厚さ及び緊張材101の先端部が突き出した状態となる。緊張材101の先端部は、緊張作業の終了時には緊張ロッド104を接続するための接続余長及び引張力の導入によって緊張材が伸びた分が、ナットの後端から突き出している。この突き出し長は、ナット102を確実に係止するために必要な余長を残して、定着後に切断することができるが、支圧板103の厚さとナット102の厚さとを加えた突き出し長は大きくなり、防錆のためにこれらをコンクリートで被覆保護しようとすると、保護コンクリートの層厚を大きくしなければならない。
上記のように定着端部の突き出し長が大きくなると、次のような問題点が生じる。
例えば、図16に示すようにプレストレスコンクリートからなるボックスカルバート111では、比較的に部材厚が小さくなっているうえに、2方向の緊張材を隅角部で定着しなければならない。定着端部の突き出し長が大きいと、その分だけ支圧板112をコンクリート構造体の表面から深い位置に配置する必要がある。このように定着具をコンクリートの深い位置に配置すると2方向に配置される緊張材の定着具が互いに干渉し、配置が難しくなる。また、定着具が深い位置にあることによって、コンクリート構造体に導入されるプレストレスがコンクリート構造体の隅角部付近に対して有効に分布せず、構造上の弱点を生じることがある。
また、コンクリート橋に横方向のプレストレスを導入する緊張材については、次にような問題点が生じる。
床版125の横締めでは、定着具121が突き出した部分を、図17に示すように地覆122と一体となった水切り123によって被覆することが行われる。しかし、定着具121および緊張材124の端部の突き出し長が大きいと、この水切りの厚さを大きく設定する必要があり、死荷重が増加して、橋桁を構築するための費用が増大してしまう。一方、定着端部を、図18に平面図を示すように、床版125の縁部に設けた切り欠き部126内で緊張材124を定着することもできるが、切り欠き部を各横締め緊張材について設けるためには、型枠、鉄筋の加工等に多くの工数が必要となり、経済的ではない。また、図17に示すように横桁の横締め用の緊張材127でも、いわゆる箱抜きと称される切り欠き部128を設けて、この切り欠き部内で緊張材を定着することが行われるが、箱抜きによって切り欠き部を設けるためには鉄筋、型枠の加工に多くの手間と多くの費用を要することになる。また、切り欠き部を設けることによって構造上の弱点が生じることもある。
さらに、従来の定着具では、図15に示すように引張力を導入した後の端部がナットから大きく突き出しているので、これを切断することが行われる。一般的な緊張材であるPC鋼棒は、高圧ガスによる火炎の噴射で切断すると熱による金属組織の変化により強度の劣化が起こる。このため、機械的に切断する必要があり、切断のために多くの手間を要している。
また、プレストレストコンクリートによる橋梁の拡幅、建築物の増築等が行われる場合には、既設部分と新設部分とに連続してプレストレスを導入するのが望ましく、図19に示すように既設の部分に配置されている緊張材131に、カプラー132を装着し、新たな緊張材133を接続して新設部分のプレストレスを導入するのが望ましい。しかし、既設部分に配置された緊張材131の端部が、図15に示すようにナットで定着した後に切断されていると、この緊張材端部に新たな緊張材を接続することはできない。このため新設部分に既設部分と連続するプレストレスを導入することが難しくなっている。
本願に係る発明は、上記のような問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、コンクリート構造体の支圧面から定着具等が突出する長さを短縮し、緊張材の端部を被覆するコンクリート層の厚さを低減して、施工の容易化、構造体を構築する費用の低減を図ることである。また、これとともに緊張材を定着した後、さらにこの緊張材に他の緊張材を接続するのを容易にする緊張材定着具を提供することである。
上記課題を解決するために請求項1に係る発明は、内周面及び外周面にネジ山が形成された円筒状の部材であって、前記内周面のネジ山に、緊張材の端部に設けられたねじ切り部が螺合される長ナットと、中心部に設けられた貫通孔の内周面にネジ山が形成され、前記長ナットの外周面に形成されたネジ山が、前記貫通孔の内周面に形成されたネジ山に螺合される支圧板とを有し、前記長ナットは、前記緊張材がねじ込まれる側と反対側から、緊張力を導入するための延長鋼材を内周面のネジ山にねじ込んで連結するのに充分な長さを有するものであることを特徴とする緊張材定着具を提供する。
このような定着具では、上記長ナットの内側に緊張材の端部がねじ込んで接続され、この長ナットの外側のネジ山に支圧板の貫通孔に設けられた雌ねじが螺合される。したがって緊張材の引張力は長ナットから支圧板に伝達され、コンクリートの支圧面に反力が作用して、コンクリート構造体にプレストレスが導入される。そして、長ナットは支圧板に設けられた貫通孔の内周面に螺合されており、長ナットを支圧板より大きく突出させる必要はない。したがって、コンクリートの支圧面より支圧板の厚さ分だけを突き出すだけで緊張材を定着することができる。これによって、定着具を被覆する保護コンクリートの層を薄くすることができ、定着具をコンクリート構造体の表面近くに配置することが可能となる。
また、緊張材に引張力を導入する時は、長ナットの一端から緊張材の端部をねじ込み、長ナットの他端からは緊張用の延長鋼材をねじ込んで接続する。この延長鋼材をジャッキに係止し、駆動することによって緊張材に引張力を導入することができる。そして、引張力が導入された状態で支圧板を回転し、長ナットの外周面に形成されたネジ山に螺合することによって緊張材をコンクリート構造体に定着することができる。定着後は延長鋼材を抜き取ると、上記のようにコンクリート構造体の支圧面からは支圧板のみが突出する状態となる。
さらに、橋梁等の長い構造物を複数のブロックに分割し、ブロック毎にコンクリートを打設する工程、緊張材へ引張力を導入する工程、緊張材の接続による延長及びコンクリートの打設を行う工程を繰り返す時にも、上記定着具を用いて引張力を導入した後、延長鋼材に代えて接続する他の緊張材をねじ込むことによって容易に接続することができる。
また、上記支圧板を被覆する保護コンクリートを打設すると、上記支圧板は、長ナット及び緊張材と螺合されて一体となった状態で保護層内に埋設される。緊張材は、何らかの事故によって破断した場合、緊張材がその弾性反発力によって定着端から外側に飛び出そうとすることが知られているが、緊張材が支圧板と一体となっているため、支圧板が保護コンククリートと広い面積で接触しており、支圧板の抵抗によって緊張材の突出が防止される。これにより緊張材破断時に被害が周辺に及ぶのを防止することができる。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の緊張定着具において、前記支圧板は、構造体に緊張力を伝達する支圧面と反対側の面に、該支圧板を緊張材の軸線回りに回転させるための工具が係合される複数の係合孔を備えるものとする。
このような支圧板では、ジャッキによって緊張材に引張力が導入された状態において、ラムチェアーの側部から工具を挿入し、支圧板に設けられた係合孔に係合させて、支圧板を緊張材の軸線回りに容易に回転させることができる。
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の緊張定着具において、前記長ナットから前記延長鋼材を取り除いた後における該前記長ナットの中空部にねじ込まれる保護ボルトを有するものとする。
ジャッキによって緊張材に引張力を導入するための延長鋼材を、長ナットから抜き取った後、長ナットの中空部に保護ボルトをねじ込んでおくことにより、緊張材定着具を覆うように保護コンクリートを打設しても、長ナットの中空部にコンクリート等の異物が侵入するを防止することができる。したがって、増設等を行うために既存の緊張材に他の緊張材を接合するときには、保護コンクリートを除去し、上記保護ボルトを抜き取ると、長ナットの中空部に他の緊張材の端部をねじ込むことができ、容易に増設部の緊張材を接続することができる。
以上説明したように、本願発明の緊張材定着具では、構造体の支圧面から定着具等が突出する長さを短縮することができ、緊張材定着具の配置が容易になるとともに、定着具を被覆する保護層厚を小さくすることができる。また、施工性が改善され、構造物の構築費用が低減されるとともに、緊張材の定着部付近で構造上の弱点が生じるのを防止することができる。
さらに、緊張材の破断等が生じた場合の安全性が向上するし、構造体の増設等を行う場合においても緊張材の延長配置が容易となる。
以下、本願発明の実施の形態を図に基づいて説明する。
図1は、本願に係る発明の一実施形態である緊張材定着具を示す概略断面図である。
この緊張材定着具は、緊張材1を用いてコンクリート構造体にプレストレスを導入するものであり、図1に示すように、内周面及び外周面にネジ山が形成された円筒状の部材である長ナット2と、中心部に貫通孔が設けられ、貫通孔の内周面にネジ山が形成された支圧板3とを有する。そして、緊張材端部のねじ切り部1aが長ナット2の約半分の長さまでねじ込まれ、この長ナット2が支圧板3の貫通孔の内周面に形成されたネジ山と螺合される。緊張材1の引張力は、長ナット2を介して支圧板3に伝達され、さらにコンクリート構造体4の支圧面に伝達されてプレストレスを導入するものとなっている。
緊張材1は、PC鋼棒が一般的に用いられ、端部にねじ切り部1aが形成されており、長ナット2の内側に、少なくとも長ナット2の約半分の長さまでねじ込むことができるようになっている。緊張材1は、PC鋼棒の他に、PC鋼線、PC鋼より線、アラミド繊維等を樹脂で棒状に固めたロッド等を用いることもできるが、端部にねじ切りが可能となるように鋼からなる円筒状の部材を、圧着又はくさびで連結したり、接着剤、モルタル又は溶融金属等によって緊張材と接続するのが良い。
長ナット2は、図2に示すように、内周面及び外周面にネジ山が精密に形成された金属性の円筒状の部材である。そして、緊張材1の端部のねじ切り部が一方の端部から内側にねじ込まれ、反対側からは緊張力導入用の延長鋼材がねじ込まれるものとなっている。このとき、引張力がこの延長鋼材から緊張材1に伝達されるように、長ナットは軸線方向に充分な長さを有するものとする。また、長ナット2の外周面に設けられたネジ山2aは、支圧板3の厚さ以上の範囲に設けられ、支圧板の貫通孔の内周面に形成されたネジ山と螺合されるものとなっている。
この長ナット2の軸線方向の中央部には、軸線と直角方向に小さな貫通孔が設けられ、ピン2bが挿入して固定されている。双方の端部からねじ込まれた緊張材及び延長鋼材をそれぞれの先端が上記ピン2bに突き当たるまでねじ込むことによって、延長鋼材から長ナット2さらに緊張材1へと引張力が確実に伝達されるのに充分なねじ込み長が確保される。
支圧板3は、図3に示すように、円形もしくは正多角形の金属性のプレートで、中央部に円形の貫通孔3aを有している。貫通孔3aの内周面には雌ねじ3b(ネジ山)が形成され、長ナット2の外周面に設けられたネジ山2aと螺合されるものとなっている。また、コンクリート構造体4に当接される支圧面と反対側の面には、工具が係合される複数の係合孔3cを備えており、この係合孔に工具を差し入れて支圧板3を緊張材1の軸線回りに回転させることができる。この支圧板3は、センターホールジャッキによって緊張材1に引張力を導入した状態で回転させるものであるために、ラムチェアーの側部に設けられた開口部等から操作ができるように、上記係合孔3cは周方向に分布して複数が設けられている。この係合孔3cは円孔であってもよいし、単一の孔に係合した工具で回転力を付与するために、図3に示すように、多角形の孔にすることもできる。
上記緊張材1は、コンクリート構造体4に埋め込まれたシース5内に挿通して配置される。そして、端部をコンクリート構造体4の表面に引き出して緊張し、定着する。緊張材が挿通されるシース5の端部は、長ナット2が収容できるように内径が拡大されている。この拡径部分は、図4に示すような端部用のシース6を標準部分のシース5に接続することによって形成されている。この端部用のシース6は、鋼又はプラスチック等の薄板で形成されており、標準部のシース内に挿入される接続部6aと、これに連続する拡径部6bと、拡径部6bの端部に設けられた型枠固定部6cと、拡径部6bの側面に設けられたグラウト注入部6dとを備えている。拡径部6bの長さは、緊張材1に引張力を導入した時の伸び量によって決定される。すなわち、緊張材1の端部に螺合された長ナット2が引張力の導入によって引き出され、コンクリート構造体4の支圧面に当接される支圧板3と螺合されるので、長ナット2は予め拡径部6b内の奥まった位置に設定される。この長ナット2が設定される位置は、緊張材1の伸び等による長ナット2の引き出し量に基づいて定められ、この位置に長ナット2が収容できるように拡径部6bの長さが設定されるものである。
次に、上記緊張材定着具を用いて緊張材1の緊張および定着を行なう方法について説明する。
コンクリート構造体4の表面におけるシース6の開口部において、緊張材1の端部に設けられたねじ切り部に長ナット2を螺合させる。さらに、図5に示すように長ナット2には反対側から延長鋼材7をねじ込んで連結する。そして、図6に示すように延長鋼材7を支圧板3の貫通孔に挿通し、支圧板3を延長鋼材7の外側に装着する。
さらに、上記延長鋼材7にはセンターホールジャッキ8を装着し、センターホールジャッキ8の後部に延長鋼材7を係止する。この延長鋼材7のセンターホールジャッキ8への係止は、例えば延長鋼材7の後端部に形成されたねじ切り部にナット9を螺合して行うことができる。上記センターホールジャッキ8とコンクリート構造体4との間には、ラムチェアー10を介挿するものとし、このラムチェアー10の内側に支圧板3を収容する。
その後、センターホールジャッキ8を油圧により作動し、延長鋼材7を後方へ押し出す。これにより長ナット2を介して緊張材1に引張力が導入され、緊張材1に伸びが生じて長ナット2は徐々にシース6の開口部からコンクリート構造体9の支圧面4aの外側に引き出される。長ナット2のコンクリート構造体9から引き出された部分に支圧板3が螺合され、ラムチェアー10の側方から支圧板3に工具を係合し、回転させて締め込んで行く。緊張材1に所定の緊張力が導入された時に、センターホールジャッキ8による引張力の導入を停止し、支圧板3がコンクリート構造体4の支圧面4aに密接するまで締め込む。その後、センターホールジャッキ8による延長鋼材7の引張力を開放すると、支圧板3はコンクリート構造体4の支圧面4aに圧接され、緊張材1の引張力は長ナット2から支圧板3を介してコンクリート構造体4に負荷される。
緊張材の定着後、センターホールジャッキ8、ラムチェアー10及び延長鋼材7を撤去し、図7(a)に示すように、長ナット2の延長鋼材7が螺合されていた中空部に、保護ボルト11をねじ込む。また、予め端部用のシース6のグラウト注入部6dに接続しておいた注入管12からグラウトを圧入し、シース5,6内の緊張材周辺の空間に充填する。そして、図7(b)に示すように、支圧板3を覆うように保護コンクリート13を打設する。
上記のように緊張材1が定着されることにより、緊張材1の定着部がコンクリート構造体4の支圧面から突出する長さは、支圧板3の厚さのみとなり、従来に比べて突出長を短縮できる。したがって、図8に示すようにボックスカルバート21等の比較的に部材寸法が小さい構造体に用いたときにも、緊張材22及びその定着具23の配置が容易となり、コンクリート構造体の断面に有効にプレストレスを導入することができる。また、定着具を被覆する保護コンクリートの厚さを小さくすることができるので、コンクリート橋梁の床版横締め用の緊張材31に上記定着具32を適用した場合には、図9に示すように定着部を被覆する水切り部33の厚さを小さくすることができ、床版35に切り欠きを設ける必要もない。したがって、地覆34及び水切り部33のコンクリート重量が低減されるとともに、床版施工時の型枠形成及び鉄筋配置等の手間を低減することができる。また、横桁36の横締め用の緊張材37に、上記定着具38を用いた場合にも、橋桁39に切り欠き部を設けなければならない場合が減少し、工事費用の低減が可能になるとともに、構造体に弱点が生じるのを回避することができる。
一方、プレストレストコンクリートからなる大型の橋桁であって、図10(a)に示すような箱形断面を有するコンクリート桁では、本願発明に係る緊張材定着具を次のように用いることができる。
このような大型のコンクリート桁では、支点上でウェブ41の上部に多くの主緊張材42(橋桁の軸線方向の緊張材)が配置される。また、ウェブ41にはせん断力に抵抗するための緊張材43が鉛直方向又は45度に傾斜させて配置される。これらの緊張材43はウェブ41の上部と下部とにおいて定着具を設け、引張力を導入した状態で定着する必要がある。このようなせん断力に抵抗する緊張材43の定着具の支圧面付近には主緊張材42を配置することができず、主緊張材42はこれらの領域より下方に配置しなければならない。このため、桁の上縁付近に有効にプレストレスを導入しようとすると、緊張材の本数を増加しなければならないことがある。これに対し、本願に係る緊張材定着具を用いると、図10(b)に示すように、支圧板44を桁の上面近くに配置することができ、主緊張材42の配置が制限される領域が小さくなる。これにより、主緊張材42をウェブ41上部の有効な位置に配置し、橋桁の軸線方向に効率よくプレストレスを導入することが可能となる。
コンクリート構造体が大型の橋梁のように複数のブロックに分割して施工される場合には、本願発明に係る緊張材定着具を次のように用いることができる。
図11に示すように、先に打設したコンクリート構造体のブロック51内に緊張材52を配置し、この緊張材52を緊張・定着してプレストレスを導入した後、長ナット53に螺合した他の緊張材54を次のブロック55内に配置する。そして、この緊張材54の緊張により、新たに打設したブロック55に連続してプレストレスを導入することができる。このとき、新たに打設したブロック55内の緊張材54の径及び導入する引張力は、従来の定着具のように先に打設したブロック51内の緊張材52に導入した緊張力と同等かそれ以下に限られものではない。つまり長ナットとして、図12に示すように緊張側からねじ込む緊張材の径d2を先に緊張した緊張材の径d1より大きくすることができる。そして、先に緊張力を導入した緊張材より大きな緊張力を導入したときには、支圧板56が緊張材と一体となっているので新たに打設したブロック55側に押しつけられ、支圧板として有効に作用する。したがって、先に引張力を導入した緊張材52に過大な引張力が導入されることはなく、ブロック毎に鋼材の径、及び導入する引張力の大きさを調整することが可能となる。
一方、一旦完成したコンクリート構造体の増設を行う場合でも、図7に示す保護コンクリート13を撤去した後、保護ボルト11を抜き取ることによって長ナット2内に延長する緊張材をねじ込むことができる。したがって、増設部分に配置する緊張材の定着具を新たに配置する必要がなくなり、さらに、既設の構造体との境界部にも圧縮力が作用するようにプレストレスを導入することが容易に可能となる。
また、上記緊張材定着具では、支圧板3は長ナット2に螺合され、さらに緊張材1とも一体となった状態で保護コンクリート13の層内に埋設される。緊張材1は、何らかの原因で破断した場合、緊張材1がその弾性反発力によって定着端から外側に飛び出す事故が報告されているが、この緊張材定着具を用いた場合には、支圧板3が緊張材1の突出に有効に抵抗する。これは、従来の定着具では緊張材はナットと螺合されているだけで、支圧板からは容易に抜け出すものとなっているが、この緊張材定着具では、支圧板3が長ナット2を介して緊張材1と螺合されているため、支圧板3が抵抗面となり、保護コンクリート13によって押さえられる。したがって、緊張材1が破断の反力により保護コンクリート13の層を突き破って飛び出すのが防止される。
本願発明の一実施形態である緊張材定着具を示す概略断面図である。 図1に示す緊張材定着具の長ナットの平面図、側面図及び断面図である。 図1に示す緊張材定着具の支圧板の平面図及び断面図である。 図1に示す緊張材定着具とともに用いられる端部用シースの正面図及び断面 図である。 図1に示す緊張材定着具を用いて緊張作業及び定着作業を行う手順を示す概 略図である。 図1に示す緊張材定着具を用いて緊張作業及び定着作業を行う状態を示す概 略図である。 図1に示す緊張材定着具を用いて緊張作業及び定着作業を行った後の処理を 示す概略図である。 図1に示す緊張材定着具を用いたボックスカルバートの例を示す概略断面図 である。 図1に示す緊張材定着具を用いたコンクリート橋梁の例を示す概略断面図で ある。 図1に示す緊張材定着具を用いた大型のコンクリート橋梁の例を示す概略 断面図及び拡大断面図である。 図1に示す緊張材定着具を用い、複数のブロックに分割して施工されるコ ンクリート橋梁の例を示す概略断面図である。 図1に示す緊張材定着具で使用される長ナットに代えて用いることができ る長ナットの他の例を示す断面図である。 従来の緊張材定着具を示す概略断面図である。 図13示す緊張材定着具を用いて緊張作業及び定着作業を行う状態を示す 概略図である。 図13に示す緊張材定着具を用いて緊張作業及び定着作業を行った後の処 理を示す概略図である。 図13に示す緊張材定着具を用いたボックスカルバートの例を示す概略断 面図である。 図13に示す緊張材定着具を用いたコンクリート橋梁の例を示す概略断面 図である。 図17に示すコンクリート橋梁の床版の縁部における緊張材の定着部を示 す概略平面図である。 図13に示す緊張材定着具を用いた定着端部に他の緊張材を接続する構造 を示す概略図である。
符号の説明
1:緊張材、 2:長ナット、 3:支圧板、 4:コンクリート構造体、 5:シース、 6:端部用のシース、 7:延長鋼材、 8:センターホールジャッキ、 9:ナット、 10:ラムチェアー、 11:保護ナット、 12:グラウトの注入管、 13:保護コンクリート、
21:ボックスカルバート、 22:緊張材、 23:緊張材定着具、 24:保護コンクリート、
31:緊張材、 32:緊張材定着具、 33:水切り部、 34:地覆、 35:床版、 36:横桁、 37:緊張材、 38:緊張材定着具、 39:橋桁、
41:ウェブ、 42:主緊張材、 43:緊張材、 44:支圧板、
51、55:コンクリート橋梁を分割して構築するブロック、 52、54:緊張材、 53:長ナット、 56:支圧板、
100:コンクリート構造体、 101:緊張材、 102:ナット、 103:支圧板、 104:緊張ロッド、 105:ラムチェアー、 106:センターホールジャッキ、 107:支圧板、 108:ナット、
111:ボックスカルバート、 112:支圧板、
121:緊張材定着具、 122:地覆、 123:水切り、 124:緊張材、 125:床版、 126:切り欠き部、 127:緊張材、 128:切り欠き部、
131:緊張材、 132:カプラー、 133:緊張材、

Claims (3)

  1. 内周面及び外周面にネジ山が形成された円筒状の部材であって、前記内周面のネジ山に、緊張材の端部に設けられたねじ切り部が螺合される長ナットと、
    中心部に設けられた貫通孔の内周面にネジ山が形成され、前記長ナットの外周面に形成されたネジ山が、前記貫通孔の内周面に形成されたネジ山に螺合される支圧板とを有し、
    前記長ナットは、前記緊張材がねじ込まれる側と反対側から、緊張力を導入するための延長鋼材を前記内周面のネジ山にねじ込んで連結するのに充分な長さを有するものであることを特徴とする緊張材定着具。
  2. 前記支圧板は、構造体に緊張力を伝達する支圧面と反対側の面に、該支圧板を緊張材の軸線回りに回転させるための工具が係合される複数の係合孔を備えることを特徴とする請求項1に記載の緊張材定着具。
  3. 前記長ナットから前記延長鋼材を取り除いた後における該長ナットの中空部にねじ込まれる保護ボルトを有する特徴とする請求項1に記載の緊張材定着具。
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