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JP2005097490A - 熱収縮性ポリエステル系フィルムおよび熱収縮性ラベル - Google Patents

熱収縮性ポリエステル系フィルムおよび熱収縮性ラベル Download PDF

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JP2005097490A JP2003335475A JP2003335475A JP2005097490A JP 2005097490 A JP2005097490 A JP 2005097490A JP 2003335475 A JP2003335475 A JP 2003335475A JP 2003335475 A JP2003335475 A JP 2003335475A JP 2005097490 A JP2005097490 A JP 2005097490A
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秀樹 伊藤
Tadashi Tahoda
多保田  規
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Abstract

【課題】 フルラベルに用いても良好な収縮仕上り性を発揮し得ると共に、収縮被覆した容器を補強し得る機能を有し、さらに、印刷インキとの密着性を確保しながらラベルの開口不良等のトラブルのない熱収縮性ポリエステル系フィルムと、該フィルムを用いた熱収縮性ラベルを提供する。
【解決手段】 (A)70℃の温水中、および(B)85℃の温水中での熱収縮率が、(A):最大収縮方向で10〜50%、(B)最大収縮方向で70%以上、最大収縮方向の直交方向で10%以下であり、(C)95℃の温水中での最大収縮方向の熱収縮率をX0(%)、10%熱収縮させたフィルムの95℃の温水中での最大収縮方向の熱収縮率をX10(%)とするとき、X0−X10(%)が10〜20%であり、フィルム第1面の濡れ張力が38mN/m以上でかつこの第1面の最表層の窒素原子含有量が0.1〜4.0原子%である熱収縮性ポリエステル系フィルムである。

Description

本発明は、ラベル用途に好適な熱収縮性ポリエステル系フィルム、および該フィルムを用いた熱収縮性ラベルに関するものである。
熱収縮性プラスチックフィルムは、加熱によって収縮する性質を利用して、収縮包装、収縮ラベル等の用途に広く用いられている。中でも、ポリ塩化ビニル系フィルム、ポリスチレン系フィルム、ポリエステル系フィルム等の延伸フィルムは、ポリエチレンテレフタレート(PET)容器、ポリエチレン容器、ガラス容器等の各種容器において、ラベルやキャップシールあるいは集積包装の目的で使用されている(例えば、特許文献1)。
しかし、ポリ塩化ビニル系フィルムは、耐熱性が低い上に、焼却時に塩化水素ガスを発生したり、ダイオキシンの原因となる等の問題を抱えている。また、熱収縮性塩化ビニル系樹脂フィルムをPET容器等の収縮ラベルとして用いると、容器をリサイクル利用する際に、ラベルと容器を分離しなければならないという問題がある。
一方、ポリスチレン系フィルムは、収縮後の仕上り外観性が良好な点は評価できるが、耐溶剤性に劣るため、印刷の際に特殊な組成のインキを使用しなければならない。また、ポリスチレン系樹脂は、高温で焼却する必要がある上に、焼却時に多量の黒煙と異臭が発生するという問題がある。
これらの問題のないポリエステル系フィルムは、ポリ塩化ビニル系フィルムやポリスチレン系フィルムに代わる収縮ラベルとして非常に期待されており、PET容器の使用量増大に伴って、使用量も増加傾向にある。
これらの熱収縮性フィルムは、製造後、一旦ロール状に巻き取られ、このフィルムロールの形態で、各種図柄の印刷工程へ送られ、印刷終了後は、必要に応じて、最終製品に用いられるラベル等のサイズに合わせてスリット加工され、さらに溶剤接着等の手段によりフィルムの左右端部を重ね合わせてシールしてチューブ状体にされ、このチューブ状体のものが裁断されて、ラベル、袋等の形態に加工される。そして、ラベルや袋状のものを容器に装着し、スチームを吹きつけて熱収縮させるタイプの収縮トンネル(スチームトンネル)や、熱風を吹きつけて熱収縮させるタイプの収縮トンネル(熱風トンネル)の内部を、ベルトコンベアー等にのせて通過させ、熱収縮させて容器に密着させている。
ところで、リサイクルの観点から、有色のPETボトルの使用が制限されるに伴い、ボトル自体の着色に代えて、ボトル側面の大部分を熱収縮性ポリエステル系フィルム製のラベルで覆うといった需要(所謂フルラベル用途)も増大しつつある。ところが、PETボトルの側面形状は様々であり、任意の高さ位置で外径が変化するため、一つのボトルを被覆する一つのラベルでも、要求される収縮の程度はボトルの高さ位置で異なる。このため、従来品以上に良好な収縮特性を備え、複雑な側面形状のボトルの被覆に使用した場合でも、優れた収縮仕上り性を発揮できる熱収縮性ポリエステル系フィルムが求められている。
さらに、例えば飲料用のPETボトル等では、生産性向上のため、ラベル装着、収縮を飲料充填ライン中で行う場合が増えている。このような充填ラインは高速であるため、ラベルの装着・収縮も高速となり、収縮が短時間で行われる傾向にある。よって、熱収縮性ポリエステル系フィルムには、高速装着に耐え得る物性や、短時間で高収縮率となる収縮性能が必要となっている。
加えて最近では、PETボトル等の各種容器に用いられるラベルには、これらの容器を補強する作用も期待されつつある。しかし、従来の熱収縮性ポリエステル系フィルムから得られるラベルは、こうした補強作用が満足できるものではなかった。
ところで、近年ではPETボトル用ラベル等では、リサイクルを目的としてアルカリ水溶液中で脱離するタイプのインキや、環境に悪影響を及ぼす有機溶剤を削減あるいは使用しない水性タイプのインキ等が開発されているが、これらの印刷インキは所定の目的を達成するために、フィルムに対するインキの密着性等の性能が従来タイプのものよりも低下している場合がある。しかし、印刷工程においてインキのフィルムに対する密着性が悪いと、インキの脱落、剥がれ等が発生して、商品としての価値を損なってしまう。このため、これらの様々なインキとの密着性に優れている熱収縮性フィルムが望まれていた。
特開平7−138388号
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、フルラベルに用いても良好な収縮仕上り性を発揮し得ると共に、収縮被覆した容器を補強し得る機能を有し、さらに、印刷インキとの密着性を確保しながらラベルの開口不良等のトラブルのない熱収縮性ポリエステル系フィルムと、該フィルムを用いた熱収縮性ラベルを提供することにある。
上記課題を解決し得た本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムは、下記(A)〜(E)を満足するものであるところに要旨を有するものである。
(A)10cm×10cmの正方形状に切り取った熱収縮性ポリエステル系フィルムの試料について、70℃の温水中に5秒浸漬して引き上げ、次いで25℃の水中に10秒浸漬して引き上げたときの最大収縮方向の熱収縮率が10〜50%、
(B)10cm×10cmの正方形状に切り取った熱収縮性ポリエステル系フィルムの試料について、85℃の温水中に5秒浸漬して引き上げ、次いで25℃の水中に10秒浸漬して引き上げたときの最大収縮方向の熱収縮率が70%以上、最大収縮方向に直交する方向の熱収縮率が10%以下、
(C)10cm×10cmの正方形状に切り取った熱収縮性ポリエステル系フィルムの試料、および最大収縮方向に10%熱収縮させたフィルムを10cm×10cmの正方形状に切り取った試料について、95℃の温水中に5秒浸漬して引き上げ、次いで25℃の水中に10秒浸漬して引き上げたときに測定される最大収縮方向の熱収縮率を、夫々X0(%)、X10(%)とするとき、下式(1)で示される熱収縮率差Δ(%)が10〜20%、
Δ = X0−X10 (1)
(D)熱収縮性ポリエステル系フィルムの一方の面を第1面、その裏面を第2面とするとき、少なくとも第1面の濡れ張力が38mN/m以上、
(E)熱収縮性ポリエステル系フィルムの上記第1面の最表層の窒素原子含有量が0.1〜4.0原子%。
また、上記熱収縮性ポリエステル系フィルムは、最大収縮方向に10%熱収縮した後の該フィルムの、該方向についての熱収縮応力値を、温度90℃、吹き出し速度5m/秒の熱風中、試験片幅20mm、チャック間距離100mmの条件で測定したとき、最大熱収縮応力値が7MPa以上であることが好ましい。
さらに、上記熱収縮性ポリエステル系フィルムは、該フィルムの最大収縮方向での厚み変位測定を、長さ50cm、幅5cmの試験片について行ったとき、下式(2)に規定する厚み分布が6%以下であることが推奨される。
厚み分布=[(最大厚み−最小厚み)/平均厚み]×100 (2)
加えて、上記熱収縮性ポリエステル系フィルムは、275℃での溶融比抵抗値が0.70×108Ω・cm以下であることが好ましい。
また、上記の熱収縮性ポリエステル系フィルムを用いた熱収縮性ラベルも本発明に包含される。
本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムは、部分的に高い収縮率が要求される場合であっても、比較的低温域での収縮により、美麗な収縮仕上り外観を得ることができる。また、本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムから得られる熱収縮性ラベルは、被覆容器の補強効果に優れている。さらに、印刷インキとの密着性が良好であるのにもかかわらず、耐ブロッキング性に優れ、ラベル開口時のトラブルの発生がなくなった。
よって、本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムおよび熱収縮性ラベルは、PETボトル等のフルラベルをはじめとする各種被覆ラベル等に好適である。
本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムは、公知の多価カルボン酸成分と、多価アルコール成分から形成されるエステルユニットを主たる構成ユニットとする単一の共重合ポリエステル、あるいは2以上のポリエステルの混合物を用いて得られるものである。
また、本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムは、上記(A)および(B)の条件で測定される熱収縮率が、(A):10%以上50%以下、(B):最大収縮方向で70%以上、最大収縮方向に直交する方向で10%以下である。このようなフィルムであれば、比較的短時間の処理で高収縮率となる熱収縮性ラベルを提供できる。
通常、熱収縮性フィルム製のラベルを容器等へ被覆収縮させる工程では、上述の熱風トンネルでは、120〜200℃程度、風速2〜20m/秒程度の熱風中を2〜20秒程度で通過させて、また、スチームトンネルでは、75〜95℃程度、圧力0.5〜20MPa程度のスチーム中を2〜20秒程度で通過させて行う。(A)および(B)の全ての熱収縮率が、上記範囲を満足するフィルムは、例えば、複雑な側面形状を有するPETボトル等の容器に対して、該側面の大部分を覆うための熱収縮性ラベルとして使用したり、側面を覆うラベルに部分的に非常に高い収縮率を要求するような側面形状を有する容器用の熱収縮性ラベルとして使用しても(例えばPETボトル用フルラベルやガラス瓶用フルラベル等に使用しても)、こうした通常行われる収縮条件下で、極めて美麗な収縮仕上り外観を達成できる。
すなわち、(A)の条件で測定される熱収縮率が上記範囲を下回る場合は、低温収縮性が不十分となり、ラベル被覆収縮時の温度が高くする必要が生じて好ましくない。他方、(A)の条件で測定される熱収縮率が上記範囲を超える場合は、熱収縮によるラベルの飛び上がり(フィルムが急激に収縮することにより上方にずれること)等の不良が生じる傾向にある。(A)の条件で測定される熱収縮率は、15%以上40%以下であることが好ましい。
また、(B)の条件で測定される最大収縮方向の熱収縮率が上記範囲を下回る場合は、例えば、ラベルとしてPETボトル等に被覆収縮させた場合に、より大きな収縮率が要求される部分(例えばボトルの口部分等)で収縮不足が生じる傾向にある。好ましくは75%以上である。なお、(B)の条件で測定される最大収縮方向の熱収縮率は95%以下であることが好ましい。
さらに、(B)の条件で測定される最大収縮方向に直交する方向の熱収縮率(直交方向熱収縮率)が上記範囲を超える場合は、タテヒケによる外観不良が発生する。なお、「タテヒケ」とは、収縮後のラベルの長さが不揃いになることで、PETボトル等に被覆収縮させた後のラベルの上端縁が下向きに湾曲するラインを描いたり、下端縁が上向きに湾曲するラインを描いたりする外観不良をいう。(B)の条件で測定される直交方向熱収縮率は7%以下であることが好ましい。
加えて、本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムは、熱収縮前のフィルムについて上記(C)の条件で測定した最大収縮方向の熱収縮率をX0(%)、熱収縮前のフィルムを一旦最大収縮方向に10%熱収縮させたフィルムについて、上記(C)の条件で測定した最大収縮方向の熱収縮率をX10(%)としたとき、下式(1)で表される熱収縮率差Δ(%)が10%以上20%以下である。
Δ = X0−X10 (1)
上記熱収縮率差Δが上記範囲内となる熱収縮性ポリエステル系フィルムであれば、被覆容器の補強効果を有する熱収縮性ラベルを得ることができる。上記熱収縮率差Δが上記範囲を下回る熱収縮性ポリエステル系フィルムから得られる熱収縮性ラベルでは、被覆収縮後の容器の補強効果が不十分となる。本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムにおいて、好ましい熱収縮率差Δは17%以下である。なお、熱収縮率差Δの下限は、上記熱収縮率X10が、10%熱収縮させたフィルムを用いて測定される値であるため、10%を下回ることはない。
ちなみに、通常の熱収縮性ポリエステル系フィルムでは、一旦10%熱収縮させた後、再び熱収縮をさせた場合の最終的な熱収縮率(最初の熱収縮率10%と、2回目の熱収縮率との合計)は、熱収縮前のフィルムを同じ熱収縮条件で完全に収縮させてしまった場合の熱収縮率よりも、大きく低下する(すなわち、上記熱収縮率差Δが上記範囲を超えてしまう)。本発明のフィルムでは、後述するように、フィルムに用いられるポリエステルの組成を好適なものとすると共に、フィルムの延伸条件を制御して、上記範囲内の熱収縮率差Δを確保することとしている。
なお、上記の「最大収縮方向の熱収縮率」とは、試料の最も多く収縮した方向での熱収縮率の意味であり、最大収縮方向および直交方向は、正方形の縦方向または横方向の長さで決められる。熱収縮率(%)は、10cm×10cmの試料を、(A)の条件で測定される熱収縮率では70℃±0.5℃の温水中に、(B)の条件で測定される熱収縮率では85℃±0.5℃の温水中に、(C)の条件で測定される熱収縮率X0では95℃±0.5℃の温水中に、夫々無荷重状態で5秒間浸漬して熱収縮させた後、直ちに25℃±0.5℃の水中に無荷重状態で10秒間浸漬した後の、フィルムの縦および横方向の長さを測定し、下式
熱収縮率=100×(収縮前の長さ−収縮後の長さ)÷(収縮前の長さ)
に従って求めた値である。
また、熱収縮率差Δの算出に用いられる上記熱収縮率X10は、以下のようにして測定する。
まず、最大収縮方向に10%熱収縮させたフィルムを作製する。矩形のフィルムの対向する一組の端部のみ把持し得るように、2つのチャックを対向して有する型を用意する。熱収縮性ポリエステル系フィルムを、最大収縮方向に平行に、正方形または長方形に裁断する。裁断後のフィルムを上記型で固定する。固定は、該フィルムの、最大収縮方向に直交する両端部をチャックで把持し、且つチャック間のフィルム長さと、型のチャック間距離の比が、1:0.9となるようにフィルムを弛ませて行う。その後、型に固定したフィルムを、95℃±0.5℃の温水中に無荷重状態で5秒間浸漬して熱収縮させた後、直ちに25℃±0.5℃の水中に無荷重状態で10秒間浸漬し、引き上げる。このフィルムを型からはずし、付着水を除去して、最大収縮方向に10%熱収縮させたフィルムを得る。
得られたフィルムから10cm×10cmの試料を裁断し、この試料を用いて上記熱収縮率X0と同じ方法で熱収縮率X10を測定し、上式(1)により熱収縮率差Δを算出する。
なお、最大収縮方向に10%熱収縮させたフィルムの作製工程から試料裁断工程に入るまでの時間、および試料裁断工程から(C)の条件での熱収縮工程に入るまでの時間は、いずれもできるだけ短時間とすることが望ましい。また、最大収縮方向に10%熱収縮させたフィルムを試料裁断工程まで保管する場合、裁断した試料を熱収縮工程まで保管する場合は、無緊張状態で、空気中、25℃以下の環境下に置き、不要な熱収縮が生じないようにする。
さらに、本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムは、(D)熱収縮性ポリエステル系フィルムの一方の面を第1面、その裏面を第2面とするとき、少なくとも第1面の濡れ張力が38mN/m以上でかつ(E)熱収縮性ポリエステル系フィルムの上記第1面の最表層の窒素原子含有量が0.1〜4.0原子%という要件を満足する必要がある。
熱収縮性ポリエステル系フィルムのみならず、フィルムの製膜時あるいは製膜後に、フィルム表面の片面あるいは両面に、空気雰囲気下でのコロナ処理、火炎処理、プラズマ処理、紫外線処理等を実施して二次加工性を向上させることが行われている。中でも、工業生産においては空気雰囲気下でのコロナ処理が最も広く行われている。
ところで、熱収縮性ポリエステル系フィルムにコロナ処理を行うと、他のフィルムと同様に、表面の濡れ張力が増加して印刷インキ密着性等の二次加工適性が向上するが、濡れ張力の増加に伴い、フィルムをラベルカットする際に融着やブロッキングが発生し易くなるという問題が発生することが見出された。
通常、熱収縮性ポリエステル系フィルムは、エチレンテレフタレートユニットを最多構成ユニットとして強度等を確保しているが、熱収縮特性を得るための成分として、ポリマーの結晶性を低下させ、非晶化させる作用を有する1,4−シクロヘキサンジメタノールやネオペンチルグリコール等のモノマー成分(以下、非晶化成分という)や、ガラス転移温度(Tg)を低下させて低温での熱収縮率を発現させるための1,4−ブタンジオールや1,3−プロパンジオール等の低Tgモノマー成分が構成ユニットに含められる。特に非晶化成分の効果によって、フィルムの表面処理が施されていない状態(未処理状態)でも、未処理のPETフィルムに比べるとインキに対する密着性は優れている。
しかしながら、一般のPETフィルムで実施されているエネルギーレベルのコロナ処理を熱収縮性ポリエステル系フィルムに施すと、前記非晶化成分の存在や、フィルム表面が過度に酸化処理されることによって、濡れ張力が必要以上に増加してしまうことがわかった。この結果、フィルムをラベルカットする際に融着やブロッキングが発生してラベルを飲料ボトルに装着する際に開口不良が発生したり、フィルムをロール巻きの状態で保管した際にフィルム同士のブロッキングが発生する等のトラブルが起こりやすくなっていた。さらに、コロナ処理によってフィルム表面の滑性が低下することによって、フィルムの加工性が悪化することもあった。
そこで、一般のPETフィルムで実施されているエネルギーレベルのコロナ処理よりも低いエネルギーレベルでのコロナ処理(低レベル処理)を空気雰囲気下で行うことが考えられたが、通常のPETフィルム用のコロナ処理設備ではこのような低レベル処理を行うことが難しく、低レベル処理用の特殊な電源や電極設備を新たに導入する必要が生じる。また、このような低レベルのコロナ処理でインキに対する密着性を向上させることは可能であるが、実用上必要なインキ密着性のレベルまでコロナ処理を行うと、やはり、フィルムをラベルカットする際に融着やブロッキングが発生する問題があり、両方の特性を両立させることが難しかった。
本発明者等が種々検討した結果、インキ密着性を確保するにはフィルムの第1面の濡れ張力が38mN/m以上必要であるが、濡れ張力が高くなりすぎると前記したように、フィルムをラベルカットする際に融着やブロッキングが発生する。しかし、上記第1面の表面に窒素原子が0.1〜4.0原子%存在していると、この融着やブロッキングを抑えることができる。なお、フィルムの第1面とは、フィルムのいずれかの面を便宜上第1面と呼ぶに過ぎず、いずれの面であっても良いが、濡れ張力の測定面と窒素原子量の測定面は同一面とする。また、フィルムの両面が上記数値範囲を満足するようにしても構わない。窒素原子量が0.1原子%未満では印刷インキ密着性が不充分となり、実用的ではないが、4.0原子%を超えると、ラベルカットの際の融着・ブロッキングが発生し、開口不良が起こり易くなる。また、フィルムの表面性状の変化によって滑性の低下も起こるため好ましくない。より好ましい窒素原子含有量の下限は0.25原子%、さらに好ましい下限は0.3原子%である。また、より好ましい窒素原子含有量の上限は3.9原子%、さらに好ましい上限は3.8原子%である。なお、この窒素原子含有量は、XPS(X線光電子分光法)によって測定することのできるフィルム最表層(数十Åレベル)における全元素量に対する窒素原子の比率である。フィルム第1面の窒素原子の形態としては、窒素原子(N)の形態、窒素イオン(N+)の形態のいずれでもよいが、窒素原子(N)の形態が好ましい。
フィルムの第1面に窒素原子を含有させる方法としては、フィルム第1面に対し、窒素雰囲気下でコロナ処理またはプラズマ処理をする方法が好ましい。窒素雰囲気下でコロナ処理またはプラズマ処理をすることにより、窒素を窒素原子(N)の形態か、窒素イオン(N+)の形態でフィルム表面に存在させることができる。
フィルム第1面の表層における窒素原子量と濡れ張力をコントロールするには、コロナ処理またはプラズマ処理での設備や処理条件を変更することが挙げられる。設備面では、例えばコロナ処理設備の電源の周波数や放電電極の材質、形状、本数、処理ロールの材質、放電電極とフィルム処理面とのギャップ、窒素雰囲気下での窒素ガス濃度のコントロールが挙げられ、条件面では、フィルム走行速度、雰囲気温度や処理時のロール表面温度等のコントロールが挙げられる。
例えばコロナ処理において好ましい設備を例示すると、電源の周波数としては、8KHzから60KHzの範囲が好ましい。放電電極の材質としては、アルミニウムまたはステンレスが好ましく、放電電極の形状は、ナイフエッジ状、バー状、またはワイヤー状であることが好ましい。また、放電電極の本数は、フィルム表面を均一処理するために2本以上であることが好ましい。処理ロールは、コロナ放電を行う場合の対極となるものであるが、少なくとも表面の材質は誘電体である必要がある。誘電体材質としては、シリコーンゴム、ハイパロンゴム(ハイパロンはデュポン社の登録商標;クロロスルホン化ポリエチレン)、EPTゴム等を用いることが好ましく、少なくとも処理ロール表面を1mm厚以上の厚さで被覆することが好ましい。また、放電電極とフィルム処理面のギャップは0.2mm〜5mm程度の範囲内であることが好ましい。
また、フィルムの走行速度(処理速度)は、設備能力の範囲内で任意の速度で行うことができる。窒素雰囲気下でのコロナ処理時のフィルム表面温度は20〜50℃の範囲内に制御し、かつ、窒素雰囲気下中の酸素濃度を500ppm以下に制御すると、フィルム表面の窒素原子含有量を上記範囲内に、そして濡れ張力を上記下限値以上に制御することができる。また、上記条件に制御することで、窒素イオン(N+)の発生を抑制し、フィルム表面の窒素の形態を窒素原子(N)リッチにすることができ、長期間保管時の経時物性変化を抑制できるという効果も確認できた。なお、処理ロール表面は、温調設備により温度制御することが好ましい。最適温度は30〜60℃である。必要に応じて処理ロールの前または後に調温ロールを配置することもできる。
さらに、コロナ処理またはプラズマ処理を行う際の雰囲気の窒素濃度が変動すると、フィルム表面の窒素原子含有量が変動する要因となるので、雰囲気窒素濃度が変動しないような手法を採用することが好ましい。コロナ処理は、通常、空気雰囲気で行われるため、コロナ処理設備は窒素雰囲気下にするための密閉手段を備えていない。そこで、窒素雰囲気下にするためにコロナ処理設備そのものをチャンバー内に入れる必要がある。このとき、窒素でチャンバー内部の空気を置換して窒素雰囲気にしてチャンバー内部をコロナ処理を施しながらフィルムを走行させても、走行フィルムの随伴流として空気が流れ込んでしまって、雰囲気の窒素濃度が変動してしまうことがある。この窒素濃度の変動を防ぐには、フィルムと、コロナ処理設備を囲い込んだチャンバーにおけるフィルム入口外周とのギャップを、0.4mm以下、より好ましくは0.3mm以下とすることが推奨される。また、プラスチックフィルムや布で、このギャップを覆って随伴流をカットすることも好ましい手段である。チャンバーを2層以上の構造にして、外層側で随伴流カットのための窒素を別途供給することも有効な手段である。
また、空気の流入によって酸素もコロナ処理の雰囲気に存在することとなるが、酸素はフィルム表面の濡れ張力を必要以上に上げてしまうことがあるので、コロナ処理またはプラズマ処理を行う窒素雰囲気中の酸素濃度は500ppm以下にコントロールすることが好ましい。より好ましくは450ppm以下、さらに好ましくは400ppm以下である。連続的に長尺のフィルムロールを生産する場合においては、ロールの巻き始めから巻き終わりまでの窒素雰囲気中の酸素濃度の変動幅を平均酸素濃度±100ppm以下にすることが好ましい。さらに好ましくは平均酸素濃度±70ppm以下である。
本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムでは、最大収縮方向に10%熱収縮した後のフィルムの該方向についての熱収縮応力値を、温度90℃、吹き出し速度5m/秒の熱風中、試験片幅20mm、チャック間距離100mmの条件で測定したときに、最大熱収縮応力値が7MPa以上であることが好ましい。上記の最大熱収縮応力値が7MPa以上のフィルムであれば、被覆容器の補強効果がより優れた熱収縮性ラベルを得ることができる。すなわち、上記の最大熱収縮応力値が上記範囲を下回るフィルムから得られる熱収縮性ラベルでは、被覆容器を補強する効果が低下する傾向にある。上記最大熱収縮応力値は10MPa以上であることがより好ましく、11MPa以上であることがさらに好ましい。
なお、上記の最大熱収縮応力値は、以下の方法によって測定される。
[1]熱収縮性ポリエステル系フィルムから、最大収縮方向の長さが200mm、幅20mmの試験片を切り出す。
[2]熱風式加熱炉を備えた引張試験機(例えば、東洋精機製「テンシロン」)の加熱炉内を90℃に加熱する。
[3]送風を止め、加熱炉内に試験片をセットする。チャック間距離は100mm(一定)とし、試験片のチャック間長さと、チャック間距離が、1:0.9となるように、試験片を弛ませてセットする。
[4]加熱炉の扉を速やかに閉めて、送風(温度90℃、吹き出し速度5m/秒の熱風)を再開する。試験片を10%熱収縮させると共に、該熱収縮後の熱収縮応力を検出・測定する。
[5]チャートから最大値を読み取り、これを最大熱収縮応力値(MPa)とする。
また、本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムは、厚みがより均一であることが好ましく、フィルムの最大収縮方向での厚み変位測定を、長さ50cm、幅5cmの試験片について行ったとき、下式(2)に規定する厚み分布が6%以下であることが推奨される。
厚み分布=[(最大厚み−最小厚み)/平均厚み]×100 (2)
上記の厚み分布は、長さ50cm、幅5cmで、フィルムの最大収縮方向を長さ方向とする試験片を10本作成し、夫々の試験片について、接触式厚み計(例えば、アンリツ株式会社製「KG60/A」等)を用いて、長さ方向の厚みを連続的に測定してチャートに出力し、該出力結果から、最大厚み、最小厚み、および平均厚みを求め、これらから上式(2)を用いて厚み分布を算出した後、10本の試験片の厚み分布の平均値を求めることで得られる。
上記厚み分布が6%を超えるフィルムでは、印刷工程で、特に多色の図柄を印刷する際の印刷性が劣り、複数の色を重ね合わせる際にズレが生じ易い。また、本発明のフィルムからラベルを製造するために、溶剤接着してチューブ化加工する場合に、フィルムの接着部分の重ね合わせが困難となる。さらに、上記厚み分布が6%を超えるフィルムでは、フィルム製造工程でロール状に巻き取った際に、部分的な巻き硬度の差が生じ、これに起因するフィルムの弛みやシワが発生して、熱収縮性フィルムとして使用できなくなる場合もある。上記の厚み分布は、5%以下がさらに好ましく、4%以下が特に好ましい。
さらに、本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムでは、275℃での溶融比抵抗値が0.70×108Ω・cm以下であることが好ましい。このように溶融比抵抗値が小さいと、押出機から溶融押出したフィルムをキャスティングロールで冷却するに際し、ロールに対するフィルムの静電密着性を高めることができる。そのため、冷却固化の安定性を高めることができ、キャスティング速度(生産速度)を向上させることができる。溶融比抵抗値は、0.65×108Ω・cm以下であることがより好ましく、0.60×108Ω・cm以下であることがさらに好ましい。
また、溶融比抵抗値が低く、静電密着性が高いと、フィルム品質を高めることもできる。すなわち、静電密着性が低い場合には、フィルムの冷却固化が不完全となって、キャスティングロールとフィルムとの間に局部的にエアが入り込み、フィルム表面にピンナーバブル(スジ状の欠陥)が発生するおそれがあるが、静電密着性に優れると前記ピンナーバブルの発生を低減することができ、フィルム外観を良好なものとすることができる。
加えて溶融比抵抗値が十分に低く、静電密着性が十分に高い場合には、フィルムの厚みを均一化できる。すなわち、キャスティングロールへの静電密着性が低いと、キャスティングした未延伸フィルム原反の厚みが不均一化し、この未延伸フィルムを延伸した延伸フィルムでは、厚みの不均一性がより拡大されてしまうが、静電密着性が十分に高い場合には、延伸フィルムにおいても厚みを均一化できる。
フィルムの溶融比抵抗値を上記範囲に制御するためには、フィルム中にアルカリ土類金属化合物と、リン含有化合物とを含有させることが望ましい。アルカリ土類金属化合物だけでも溶融比抵抗値を下げることができるが、リン含有化合物を共存させると溶融比抵抗値を著しく下げることができる。アルカリ土類金属化合物とリン含有化合物とを組み合わせることによって溶融比抵抗値を著しく低減できる理由は明らかではないが、リン含有化合物を含有させることによって、異物の量を減少でき、電荷担体の量を増大できるためと推定される。
フィルム中のアルカリ土類金属化合物の含有量は、アルカリ土類金属原子M2を基準として、例えば40ppm(質量基準、以下同じ)以上とすることが好ましく、50ppm以上とすることがより好ましく、60ppm以上とすることがさらに好ましい。アルカリ土類金属化合物の量が少なすぎると溶融比抵抗値を下げることが困難となる傾向にある。なお、アルカリ土類金属化合物の含有量を多くしすぎても、溶融比抵抗値の低減効果が飽和してしまい、むしろ異物生成や着色等の弊害が大きくなる傾向にある。そのため、アルカリ土類金属化合物の含有量は、アルカリ土類金属原子M2を基準として、例えば400ppm以下とすることが好ましく、350ppm以下とすることがより好ましく、300ppm以下とすることがさらに好ましい。
フィルム中のリン含有化合物の含有量は、リン原子Pを基準として、例えば10ppm(質量基準、以下同じ)以上とすることが好ましく、15ppm以上とすることがより好ましく、20ppm以上とすることがさらに好ましい。リン含有化合物の量が少なすぎると、溶融比抵抗値を十分に下げることが困難となる場合があり、異物の生成量を低減し得ないこともある。なお、リン含有化合物の含有量を多くしすぎても、溶融比抵抗値の低減効果が飽和してしまう。さらにはジエチレングリコールの生成を促進してしまい、しかもその生成量をコントロールすることは困難であるため、フィルム物性が予定していたものと異なるおそれがある。そのため、リン含有化合物の含有量は、リン原子Pを基準として、例えば500ppm以下とすることが好ましく、450ppm以下とすることがより好ましく、400ppm以下とすることがさらに好ましい。
アルカリ土類金属化合物およびリン含有化合物でフィルムの溶融比抵抗値を下げる場合、フィルム中のアルカリ土類金属原子M2とリン原子Pとの質量比(M2/P)は1.5以上(より好ましくは1.6以上、さらに好ましくは1.7以上)であることが望ましい。質量比(M2/P)を1.5以上とすることによって、溶融比抵抗値を著しく低減できる。なお、質量比(M2/P)が5.0を超えると異物の生成量が増大したり、異物の生成量が増大したり、フィルムが着色したりする場合がある。そのため質量比(M2/P)は、5.0以下とすることが好ましく、4.5以下とすることがより好ましく、4.0以下とすることがさらに好ましい。
フィルムの溶融比抵抗値をさらに下げるためには、上記アルカリ土類金属化合物およびリン含有化合物に加えて、フィルム中にアルカリ金属化合物を含有させることが望ましい。アルカリ金属化合物は、単独でフィルムに含有させても溶融比抵抗値を下げることはできないが、アルカリ土類金属化合物およびリン含有化合物の共存系に追加することで、溶融比抵抗値を著しく下げることができる。その理由については明らかではないが、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物、およびリン含有化合物の三者で錯体を形成することによって、溶融比抵抗値を下げているものと推定される。
フィルム中のアルカリ金属化合物の含有量は、アルカリ金属原子M1を基準にして、例えば、0ppm(質量基準、以下同じ)以上とすることが好ましく、5ppm以上とすることがより好ましく、6ppm以上とすることがさらに好ましく、7ppm以上とすることが特に好ましい。なお、アルカリ金属化合物の含有量を多くしすぎても、溶融比抵抗値の低減効果が飽和してしまい、さらには異物の生成量が増大する。そのためアルカリ金属化合物の含有量は、アルカリ金属原子M1を基準にして、例えば、100ppm以下とすることが好ましく、90ppm以下とすることがより好ましく、80ppm以下とすることがさらに好ましい。
上記アルカリ土類金属化合物としては、アルカリ土類金属の水酸化物、アルコキシド、脂肪族カルボン酸塩(酢酸塩、酪酸塩等、好ましくは酢酸塩)、芳香族カルボン酸塩(安息香酸塩)、フェノール性水酸基を有する化合物との塩(フェノールとの塩等)等が挙げられる。またアルカリ土類金属としては、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム等(好ましくはマグネシウム)が挙げられる。好ましいアルカリ土類金属化合物には、水酸化マグネシウム、マグネシウムメトキシド、酢酸マグネシウム、酢酸カルシウム、酢酸ストロンチウム、酢酸バリウム等、特に酢酸マグネシウムが含まれる。上記アルカリ土類金属化合物は、単独で、または2種以上組み合わせて使用できる。
上記リン含有化合物としては、リン酸類(リン酸、亜リン酸、次亜リン酸等)、及びそのエステル(アルキルエステル、アリールエステル等)、並びにアルキルホスホン酸、アリールホスホン酸およびそれらのエステル(アルキルエステル、アリールエステル等)が挙げられる。好ましいリン化合物としては、リン酸、リン酸の脂肪族エステル(リン酸のアルキルエステル等;例えば、リン酸モノメチルエステル、リン酸モノエチルエステル、リン酸モノブチルエステル等のリン酸モノC1-6アルキルエステル、リン酸ジメチルエステル、リン酸ジエチルエステル、リン酸ジブチルエステル等のリン酸ジC1-6アルキルエステル、リン酸トリメチルエステル、リン酸トリエチルエステル、リン酸トリブチルエステル等のリン酸トリC1-6アルキルエステル等)、リン酸の芳香族エステル(リン酸トリフェニル、リン酸トリクレジル等のリン酸のモノ、ジ、またはトリC6-9アリールエステル等)、亜リン酸の脂肪族エステル(亜リン酸のアルキルエステル等;例えば、亜リン酸トリメチル、亜リン酸トリブチル等の亜リン酸のモノ、ジ、またはトリC1-6アルキルエステル等)、アルキルホスホン酸(メチルホスホン酸、エチルホスホン酸等のC1-6アルキルホスホン酸)、アルキルホスホン酸アルキルエステル(メチルホスホン酸ジメチル、エチルホスホン酸ジメチル等のC1-6アルキルホスホン酸のモノまたはジC1-6アルキルエステル等)、アリールホスホン酸アルキルエステル(フェニルホスホン酸ジメチル、フェニルホスホン酸ジエチル等のC6-9アリールホスホン酸のモノまたはジC1-6アルキルエステル等)、アリールホスホン酸アリールエステル(フェニルホスホン酸ジフェニル等のC6-9アリールホスホン酸のモノまたはジC6-9アリールエステル等)等が例示できる。特に好ましいリン含有化合物には、リン酸、リン酸トリアルキル(リン酸トリメチル等)が含まれる。これらリン含有化合物は単独で、または2種以上組み合わせて使用できる。
上記アルカリ金属化合物としては、アルカリ金属の水酸化物、炭酸塩、脂肪族カルボン酸塩(酢酸塩、酪酸塩等、好ましくは酢酸塩)、芳香族カルボン酸塩(安息香酸塩)、フェノール性水酸基を有する化合物との塩(フェノールとの塩等)等が挙げられる。またアルカリ金属としては、リチウム、ナトリウム、カリウム等(好ましくはナトリウム)が挙げられる。好ましいアルカリ土類金属化合物には、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、酢酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム等、特に酢酸ナトリウムが含まれる。
本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムは、多価カルボン酸成分と多価アルコール成分から形成されるエステルユニットを主たる構成ユニットとして有する。
エステルユニットにおいて多価カルボン酸成分を形成するための多価カルボン酸類としては、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、オルトフタル酸等の芳香族ジカルボン酸類;アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、デカンジカルボン酸等の脂肪族ジカルボン酸類;脂環式ジカルボン酸類;等、およびこれらのエステル形成誘導体等が挙げられる。
なお、上述の脂肪族ジカルボン酸類を用いる場合は、フィルムの多価カルボン酸成分100モル%中、脂肪族ジカルボン酸成分が3モル%未満であることが好ましい。詳細は後述するが、本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムでは、耐破れ性、強度、耐熱性等を発揮させるために、エチレンテレフタレートユニットを主たる構成ユニットとすることが望ましい。よって、フィルム中の多価カルボン酸成分はテレフタル酸成分が主体となることが推奨されるが、脂肪族ジカルボン酸成分量が3モル%以上である場合、該フィルムから得られる熱収縮性ラベルでは、容器への高速装着に耐え得るだけの剛性(フィルムの腰)が得られない場合がある。
また、3価以上の多価カルボン酸類(例えば、トリメリット酸やピロメリット酸、およびこれらの無水物等)は用いないことが好ましい。これらの多価カルボン酸成分を有する熱収縮性ポリエステル系フィルムでは、十分な熱収縮率が得られ難くなる場合がある。
エステルユニットにおいて多価アルコール成分を形成するための多価アルコール類としては、エチレンテレフタレートユニットを形成するため、エチレングリコールが用いられる。その他、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、2−メチル−1,5−ペンタンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール等の脂肪族ジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等の脂環式ジオール、ダイマージオール、ビスフェノール化合物またはその誘導体のアルキレンオキサイド付加物、等も併用可能である。
本発明のフィルムでは、炭素数3〜6のジオール(例えばプロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール等)のうち1種以上や、1,4−シクロヘキサンジメタノールを用いて、ガラス転移温度(Tg)を60〜75℃に調整したポリエステルを使用することが好ましい。
特に、上記の各熱収縮率の確保、収縮仕上り外観の向上、および容器補強効果確保の点で、ネオペンチルグリコールを併用したポリエステルを用いることが望ましい。フィルムの多価アルコール成分100モル%中、ネオペンチルグリコール成分量は15モル%以上、好ましくは18モル%以上であって、27モル%以下、好ましくは25モル%以下であることが推奨される。また、ネオペンチルグリコール以外の炭素数3〜6のジオールを用いる場合では、フィルムの多価アルコール成分100モル%中、これらのジオール成分が3モル%以上、好ましくは5モル%以上であって、15モル%以下、好ましくは13モル%以下であることが望ましい。この他、1,4−シクロヘキサンジメタノールを用いる場合では、フィルムの多価アルコール成分100モル%中、1,4−シクロヘキサンジメタノール成分量は15モル%以上、好ましくは18モル%以上であって、27モル%以下、好ましくは25モル%以下とすることが推奨される。
なお、上記例示の好適な多価アルコール類を除く炭素数8個以上のジオール(例えばオクタンジオール等)や、3価以上の多価アルコールは用いないことが好ましい。これらのジオール成分や多価アルコール成分を有する熱収縮性ポリエステル系フィルムでは、十分な熱収縮率が得られ難くなる場合がある。
また、多価アルコール類ではないが、ε−カプロラクトンに代表されるラクトン類も一部使用してもよい。ラクトン類は、開環して両端にエステル結合を有するユニットとなる。
フィルムの耐破れ性、強度、耐熱性等を考慮すれば、熱収縮性ポリエステル系フィルムの構成ユニット100モル%中、エチレンテレフタレートユニットが50モル%以上となるように選択することが好ましい。従って、多価カルボン酸成分100モル%中、テレフタル酸成分(テレフタル酸またはそのエステルからなる成分)を50モル%以上、多価アルコール成分100モル%中、エチレングリコール成分を50モル%以上、とすることが好ましい。エチレンテレフタレートユニットは、55モル%以上がより好ましく、60モル%以上がさらに好ましい。
熱収縮性ポリエステル系フィルムを構成するポリエステルは常法により溶融重合することによって製造できるが、多価カルボン酸類と多価アルコール類とを直接反応させ得られたオリゴマーを重縮合する、いわゆる直接重合法、多価カルボン酸のメチルエステル体と多価アルコールとをエステル交換反応させたのちに重縮合する、いわゆるエステル交換法等が挙げられ、任意の製造法を適用することができる。また、その他の重合方法によって得られるポリエステルであってもよい。ポリエステルの重合度は、固有粘度にして0.3〜1.3dl/gのものが好ましい。
重合触媒としては、慣用の種々の触媒が使用でき、例えば、チタン系触媒、アンチモン系触媒、ゲルマニウム系触媒、スズ系触媒、コバルト系触媒、マンガン系触媒等、好ましくはチタン系触媒(チタニウムテトラブトキシド等)、アンチモン系触媒(三酸化アンチモン等)、ゲルマニウム系触媒(二酸化ゲルマニウム等)、コバルト系触媒(酢酸コバルト等)等が挙げられる。
アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物、リン含有化合物の添加時期は特に限定されず、エステル化反応前、エステル化中、エステル化終了から重合工程開始までの間、重合中、および重合後のいずれの段階であってもよいが、好ましくはエステル化工程の後の任意の段階、さらに好ましくはエステル化終了から重合工程開始までの間である。エステル化工程の後にアルカリ土類金属化合物、リン含有化合物(および必要に応じてアルカリ金属化合物)を添加すると、それ以前に添加する場合に比べて異物の生成量を低減できる。
また、必要に応じて、シリカ、二酸化チタン、カオリン、炭酸カルシウム等の微粒子をフィルム原料に添加してもよく、さらに酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、着色剤、抗菌剤等を添加することもできる。
ポリエステルフィルムは、後述する公知の方法で得ることができるが、熱収縮性ポリエステル系フィルムにおいて、複数の成分をフィルム中に含有させる手段としては、共重合を行ってこの共重合ポリエステルを単独使用する方式と、異なる種類のホモポリエステルあるいは共重合ポリエステルをブレンドする方式がある。
共重合ポリエステルを単独使用する方式では、所定の組成の多価アルコール類と、所定の組成の多価カルボン酸類とから得られる共重合ポリエステルを用いればよい。一方、異なる組成のポリエステルをブレンドする方式では、ブレンド比率を変更するだけでフィルムの特性を容易に変更でき、多品種のフィルムの工業生産にも対応できるため、好ましく採用することができる。
ブレンド法では、具体的には、Tgの異なる2種以上のポリエステルをブレンドして使用することが好ましい。ブレンドするポリエステルは3種以上であってもよい。
なお、2種以上のポリエステルをブレンドして用いることで、例えば、ポリエステル同士が相溶せず、フィルムが白化する等のトラブルが懸念される。しかし、通常は、後述するフィルム押出工程において、加熱されることでエステル交換反応が生じ、フィルムに含まれるポリエステル全体が共重合ポリエステルとなる結果、上記の白化等のトラブルは回避されることが判明している。こうしたエステル交換反応による共重合体化は、例えば、Tgの異なる2種以上のポリエステルブレンドから得られるフィルムについて、公知の方法で測定したTgが単一の値となることから確認できる。
具体的なフィルムの製造方法としては、原料ポリエステルチップをホッパドライヤー、パドルドライヤー等の乾燥機、または真空乾燥機を用いて乾燥し、押出機を用いて200〜300℃の温度でフィルム状に押し出す。あるいは、未乾燥のポリエステル原料チップをベント式押出機内で水分を除去しながら同様にフィルム状に押し出す。押出しに際してはTダイ法、チューブラ法等、既存のどの方法を採用しても構わない。押出し後は、急冷して未延伸フィルムを得る。ここでいう未延伸フィルムには、製造工程でのフィルム送りのために必要な張力が作用したフィルムも含まれる。
本発明のフィルムは、単一の層からなるフィルムでもよいが、2以上の層(例えば、2層、3層、4層等)を積層した積層フィルムであってもよい。積層フィルムとする場合には、各層に同じ組成のポリエステルを採用してもよいが、層毎に異なる組成のポリエステルを用いることも好ましい。また、3層とする場合では、両外層に同一の組成のポリエステルを用い、中心層に他の組成のポリエステルを用いる構成とすることも推奨される。このような積層フィルムとする場合の積層方法は特に限定されないが、例えば、公知の共押出法等により、上記の未延伸フィルムを得る方法が採用可能である。
なお、上述したように、上記押出機とキャスティングロールの間に電極を配設し、電極とキャスティングロールとの間に電圧を印加し、静電気的にフィルムをロールに密着させることも、フィルムの厚み分布の均一化を図る点で推奨される。
上記未延伸フィルムに対して延伸処理を行う。延伸処理は、上記キャスティングロール等による冷却後、連続して行ってもよいし、冷却後、一旦ロール状に巻き取り、その後行ってもよい。なお、最大収縮方向がフィルム横(幅)方向であることが、生産効率上、実用的であるので、以下、最大収縮方向を横方向とする場合の延伸法の例を示す。なお、最大収縮方向をフィルム縦(長手)方向とする場合も、下記方法における延伸方向を90゜変える等、通常の操作に準じて延伸することができる。
熱収縮性ポリエステル系フィルムの厚み分布を均一化させ、上記上限値以下とすることに着目すれば、テンター等を用いて横方向に延伸する際、延伸工程に先立って予備加熱工程を行うことが好ましく、この予備加熱工程では、熱伝導係数が0.00544J/cm2・sec・℃(0.0013カロリー/cm2・sec・℃)以下となるように、低風速で、フィルム表面温度がTg+0℃〜Tg+60℃の範囲内のある温度になるまで加熱を行うことが好ましい。
横方向の延伸は、Tg−5℃〜Tg+15℃の範囲内の所定温度で行う。なお、本発明のフィルムにおいて、上記(A)および(B)の熱収縮率、および熱収縮率差Δを上記範囲内とし、さらには上記最大熱収縮応力値を上記範囲内とするには、延伸を2段階以上に分けて行えばよい。以下、2段階で延伸する場合を例にとって説明する。
まず、1段階目の延伸を行う。延伸倍率は、未延伸フィルムに対して4.4倍以上6.0倍以下、好ましくは4.8倍以上5.5倍以下とする。1段階目の延伸温度は、上記の温度(Tg−5℃〜Tg+15℃の範囲内の所定温度)とする。
次に、フィルムを延伸方向に緊張させた状態で熱固定を行うことが好ましい。その際の緊張率は、1段階目の延伸後のフィルムに対して1%以上6%以下、好ましくは2%以上5%以下とすることが推奨される。また、熱固定温度は、1段階目の延伸温度と同じにするか、上記の温度範囲内で、1段階目の延伸温度よりも1〜5℃程度低くし、熱固定時間は0.5秒以上5秒以下、好ましくは1秒以上3秒以下とすることが望ましい。
次に、2段階目の延伸を行う。延伸倍率は、熱固定後(熱固定を実施しない場合は1段階目の延伸後)のフィルムに対して1.1倍以上1.5倍以下(好ましくは1.3倍以下)とする。2段階目の延伸温度は、熱固定温度と同じにするか、上記の温度範囲内で、熱固定温度よりも1〜5℃程度低くすることが好ましい。
その後、好ましくはフィルムにわずかに緊張をかけつつ、冷却して熱収縮性ポリエステル系フィルムを得る。冷却時の緊張率は、2段階目の延伸後のフィルムに対して、0.1〜3%とすることが好ましい。
なお、延伸の工程を3段階とする場合には、2段階目の延伸と3段階目の延伸の間に上記熱固定工程を入れることが望ましい。熱固定工程の条件は、上記の熱固定条件に準じて決定すればよい。また、3段階目の延伸条件も、上記2段階目の延伸条件に準じて決定すればよい。
フィルムの熱収縮率制御等の観点からは、延伸の段階数は多い方が好ましいが、あまり段階数が多過ぎる場合、工業生産における延伸設備の設計が困難となるため、6段階以下、好ましくは4段階以下とすることが望ましい。
この横延伸工程においては、フィルム表面温度の変動を小さくすることのできる設備を使用することが好ましい。すなわち、延伸工程には、延伸前の予備加熱工程、延伸工程、延伸後の熱処理工程、緩和処理、再延伸処理工程等があるが、特に、予備加熱工程、延伸工程および延伸後の熱処理工程において、任意ポイントにおいて測定されるフィルムの表面温度の変動幅が、平均温度±1℃以内であることが好ましく、平均温度±0.5℃以内であればさらに好ましい。フィルムの表面温度の変動幅が小さいと、フィルム全長に亘って同一温度で延伸や熱処理されることになって、熱収縮挙動やその他の物性が均一化するためである。
延伸の方法としては、テンターでの横1軸延伸ばかりでなく、縦方向に1.0倍〜4.0倍、好ましくは1.1倍〜2.0倍の延伸を施してもよい。このように2軸延伸を行う場合は、逐次2軸延伸、同時2軸延伸のいずれでもよく、必要に応じて、再延伸を行ってもよい。また、逐次2軸延伸においては、延伸の順序として、縦横、横縦、縦横縦、横縦横等のいずれの方式でもよい。これらの縦延伸工程あるいは2軸延伸工程を採用する場合においても、横延伸と同様に、予備加熱工程、延伸工程等において、フィルム表面温度の変動をできるだけ小さくすることが好ましい。
上記のフィルム表面温度の変動を小さくできる設備としては、例えば、フィルムを加熱する熱風の風速を制御するためにインバーターを取り付け、風速の変動を抑制できる設備や、熱源に500kPa以下(5kgf/cm2以下)の低圧蒸気を使用して、熱風の温度変動を抑制できる設備等が挙げられる。
延伸に伴うフィルムの内部発熱を抑制し、幅方向のフィルム温度斑を小さくする点に着目すれば、延伸工程の熱伝達係数は、0.00377J/cm2・sec・℃(0.0009カロリー/cm2・sec・℃)以上とすることが好ましい。0.00544〜0.00837J/cm2・sec・℃(0.0013〜0.0020カロリー/cm2・sec・℃)がより好ましい。
延伸後は、前記した設備・条件等で窒素雰囲気下でのコロナ処理を施す。なお、コロナ処理は、処理効果の斑を抑制するため、延伸後に行うことが望ましい。
本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムの厚みは特に限定するものではないが、例えばラベル用熱収縮性ポリエステル系フィルムとしては、10〜100μmが好ましく、20〜60μmがさらに好ましい。
本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムを用いて得られる熱収縮性ラベルは、PETボトル等のフルラベル(部分的に高収縮率が要求されるようなラベル)に用いても、良好な収縮仕上り外観を呈することができる。また、短時間の処理で高収縮率となり得る。さらに、被覆収縮されたPETボトル等の容器を補強する効果も有する。
上記熱収縮性ポリエステル系フィルムを熱収縮性ラベルとするには、例えば、収縮前の熱収縮性フィルムを、温度・湿度を制御した環境内に所定時間保管した後取り出し、公知のチューブ状成形装置を用いて、フィルム片端の片面の端縁から少し内側に接着用溶剤を所定幅で塗布し、直ちにフィルムを丸めて端部を重ね合わせて接着し、チューブに加工する。このチューブを所定長さに裁断して本発明の熱収縮性ラベルとすることができる。
フィルムの接着は、フィルムの一部を溶融させる溶融接着法を採用することも可能であるが、ラベルの熱収縮特性の変動等を抑制する観点からは、溶剤を用いて行うことが好ましい。使用し得る溶剤としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、トリメチルベンゼン等の芳香族炭化水素;塩化メチレン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素;フェノール等のフェノール類;テトラヒドロフラン等のフラン類;1,3−ジオキソラン等のオキソラン類;等の有機溶剤が挙げられるが、中でも、安全性が高い点で、1,3−ジオキソランが望ましい。
上記の熱収縮性ラベルは、PETボトル等の容器に装着した後、上述したような公知の熱収縮手段(熱風トンネルやスチームトンネル等)で熱収縮させて、被覆させることができる。
本発明の熱収縮性ラベルを被覆収縮させたPETボトルは、例えば、従来のPETボトルよりも重さが30%程度少ないものであっても、例えば輸送や販売等の際に、従来のPETボトルと同様に取り扱うことができる程度に補強されている。なお、この場合、PETボトルの胴部表面積の75%以上がラベルで覆われていることが好ましい。
例えば、本発明の熱収縮性フィルムから以下のようにして得られるラベルでは、後記方法によって測定されるボトル径変化率が、好ましくは10%以下、より好ましくは7%以下であり、優れた容器補強効果を発揮し得る。
フィルムの片端の片面の端縁から少し内側に1,3−ジオキソランを2±1mm幅で塗布し(塗布量:3.0±0.3g/mm2)、該端部を重ね合わせた後、長さ14cm、直径6.7cmのサイズに裁断して円筒状ラベルを得る。質量20.5gの500mL丸型PETボトル[高さ21cm、中央部(胴部)直径6.5cm]に500mLの水を充填した後密封し、これに上記の円筒状ラベルを装着して、ゾーン温度85℃のスチームトンネルを2.5秒で通過させて該ラベルを収縮させる。このようにして得られるラベル被覆ボトルの側面中央部に、東洋精機社製「ストログラフV10−C」を用いて圧縮モードで15kgの荷重を掛けたときのボトル中央部の径(W1)を測定し、下記式に従ってボトル径変化率(%)を求める。
ボトル径変化率(%)=100×(W1−W2)/W2
ここで、W2は、荷重を掛ける前のボトル中央部の径である。
なお、上記ボトル径変化率が10%を超えるようなラベルでは、例えば自動販売機内で被覆容器が落下した場合に、該容器が変形し易く、詰まり等の原因となることがあるため、好ましくない。
以下、実施例によって本発明をさらに詳述するが、下記実施例は本発明を制限するものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更実施する場合は、本発明に含まれる。なお、本実施例で用いる「ppm」は質量基準である。また、実施例および比較例で得られたフィルムの物性の測定方法は、以下の通りである。
(1)熱収縮率
フイルムを10cm×10cmの正方形に裁断し、下記(A)、(B)および(C)の温度の温水中に、無荷重状態で5秒浸漬して熱収縮させた後、25℃±0.5℃の水中に10秒浸漬させ、該水中から引き出して試料の縦および横方向の長さを測定し、下記式に従って求める。
熱収縮率(%)=100×(収縮前の長さ−収縮後の長さ)÷(収縮前の長さ)
ここで、(A):75℃±0.5℃,(B):85℃±0.5℃,(C):95±0.5℃である。最も収縮率の大きい方向を最大収縮方向とする。
(2)熱収縮率差Δ
矩形のフィルムの対向する一組の端部のみ把持し得るように、2つのチャックを対向して有する型を用意する。熱収縮性ポリエステル系フィルムを、最大収縮方向に平行に、正方形または長方形に裁断する。裁断後のフィルムを上記型で固定する。固定は、該フィルムの、最大収縮方向に直交する両端部をチャックで把持し、且つチャック間のフィルム長さと、型のチャック間距離の比が、1:0.9となるようにフィルムを弛ませて行う。その後、型に固定したフィルムを、95℃±0.5℃の温水中に無荷重状態で5秒間浸漬して熱収縮させた後、直ちに25℃±0.5℃の水中に無荷重状態で10秒間浸漬し、引き上げる。このフィルムを型からはずし、付着水を除去して、最大収縮方向に10%熱収縮させたフィルムを得る。その後、このフィルムを無緊張状態で、空気中、25℃以下の環境下に置き、できるだけ短時間で次の工程に供する。
このフィルムを10cm×10cmの正方形に裁断し、95±0.5℃の温水中に、無荷重状態で5秒浸漬して熱収縮させた後、25℃±0.5℃の水中に10秒浸漬させ、該水中から引き出して試料の縦および横方向の長さを測定し、上記の熱収縮率算出式に従って最大収縮方向の熱収縮率X10を求める。また、上記(1)の(C)の条件で求められる最大収縮方向の熱収縮率をX0とする。これらの値から、下式に従って、熱収縮率差Δ(%)を算出する。
Δ = X0−X10
(3)フィルムの濡れ張力
フィルムの第1面の濡れ張力をJIS K 6768の方法で測定する。
(4)フィルム表面の窒素原子含有量
X線光電子分光法測定装置(ESCAスペクトロメーター「ES−200型」;国際電気株式会社製)を用い、試料フィルム第1面の全元素量に対する窒素原子量の比率(原子%)を定量して求める。
(5)最大熱収縮応力値
加熱炉付き引張試験機(東洋精機株式会社製「テンシロン」)を用いて測定する。熱収縮前のフィルムから、最大収縮方向の長さが200mmで、幅が20mmの試料を切り出し、予め90℃に加熱しておいた引張試験機の送風を止め、試料をチャック間距離100mmとし、試験片のチャック間長さと、チャック間距離が、1:0.9となるように、試験片を弛ませて取り付けた後、速やかに加熱炉の扉を閉め、(温度90℃、吹き出し速度5m/秒の熱風を、奥、左および右の三方向から供給)を開始した時に検出される収縮応力を測定し、測定チャートから10%収縮後の最大熱収縮応力値(MPa)を求める。
(6)厚み分布
長さ50cm、幅5cmで、フィルムの最大収縮方向を長さ方向とする試験片を10本作成し、夫々の試験片について、接触式厚み計(例えば、アンリツ株式会社製「KG60/A」等)を用いて、長さ方向の厚みを連続的に測定してチャートに出力し、該出力結果から、最大厚み、最小厚み、および平均厚みを求め、これらから下式を用いて厚み分布を算出した後、10本の試験片の厚み分布の平均値を求め、フィルムの厚み分布とする。
厚み分布=[(最大厚み−最小厚み)/平均厚み]×100
(7)溶融比抵抗値
温度275℃で溶融した試料(フィルム)中に一対の電極板を挿入し、120Vの電圧を印加する。その際の電流を測定し、下式に基づいて溶融比抵抗値Si(Ω・cm)を算出する。
Si=(A/I)×(V/io)
ここで、A:電極の面積(cm2)、I:電極間距離(cm)、V:電圧(V)、io:電流(A)である。
(8)収縮仕上り性
フィルムに東洋インキ製造株式会社製の草色、金色、白色のインキで3色印刷し、温度30±1℃、相対湿度85±2%に制御した環境内に250時間保管した後取り出し、チューブ状成形装置を用いて、フィルムの片端の片面の端縁から少し内側に1,3−ジオキソランを2±1mm幅で塗布し(塗布量:3.0±0.3g/mm2)、直ちにフィルムを丸めて端部を重ね合わせて接着してチューブとし、平らにつぶした状態で巻き取る。このチューブを裁断して高さ14cm、直径6.7cmの円筒状ラベルとする。このラベルを、水を充填させた500mL丸型PETボトル[高さ21cm、中央部(胴部)直径6.5cm]に装着し、フジアステック社製のスチームトンネル(SH−1500−L)中を、トンネル通過時間2.5秒、ゾーン温度85℃の条件でラベル全量を通過させて、ラベルを収縮させる(n=20)。収縮仕上りの程度を目視で判断し、収縮仕上り性を2段階で評価する。基準は、○:シワ、飛び上がり、収縮不足のいずれも発生なし、×:シワ、飛び上がり、または収縮不足が発生、とする。
(9)容器補強効果(ボトル径変化率)
チューブ状成形装置を用いて、フィルムの片端の片面の端縁から少し内側に1,3−ジオキソランを2±1mm幅で塗布し(塗布量:3.0±0.3g/mm2)、直ちにフィルムを丸めて端部を重ね合わせて接着してチューブとし、平らにつぶした状態で巻き取る。このチューブを裁断して、高さ14cm、直径6.7cmの円筒状ラベルとする。質量:20.5gの500mL丸型PETボトル[高さ21cm、中央部(胴部)直径6.5cm]に500mLの水を充填した後密封し、これに上記の円筒状ラベルを装着し、その後フジアステック社製のスチームトンネル(SH−1500−L)中を、トンネル通過時間2.5秒、ゾーン温度85℃の条件でラベル全量を通過させてラベルを収縮させる。
このようにして得られるラベル被覆ボトルの側面中央部に、東洋精機社製「ストログラフV10−C」を用いて圧縮モードで15kgの荷重を掛けたときのボトル中央部の径(W1)を測定し、下記式に従ってボトル径変化率(%)を求める。
ボトル径変化率(%)=100×(W1−W2)/W2
ここで、W2は、荷重を掛ける前のボトル中央部の径である。
(10)ラベルカット後の開口性
熱収縮性フィルムをスリットし、続いて、センターシールマシンを用いて、第1面が内側になるように1,3−ジオキソランで溶剤接着してチューブを作り、二つ折り状態で巻き取る。次いで、裁断機でチューブを連続的に裁断して(裁断ラベル数200)、熱収縮性フィルムラベルを作製し、ラベルを手で全数開口して、裁断部の開口性を判定する。基準は、○:裁断部が抵抗なく開口できる、△:裁断部が、軽い抵抗を受ける場合があるが開口可能、×:裁断部が開口不可能な場合あり、とする。
(11)表面処理時のフィルム面積当りエネルギー換算値
表3における表面処理時のフィルム面積当りエネルギー換算値(kW/m2/min)は、高周波電源装置電流値(A)×電圧(kV)÷電極幅(m)÷フィルム走行速度(m/min)により求めた値である。
合成例1
エステル化反応缶に、多価カルボン酸類としてジメチルテレフタレート100モル%、多価アルコール類としてエチレングリコール100モル%を、多価カルボン酸類に対して2.2倍(モル比)で仕込み、触媒として三酸化アンチモンを、多価カルボン酸類に対して0.04モル%、酢酸マグネシウム四水和物を形成されるポリエステルに対しMg原子換算で81ppmとなるように、同時に仕込み、撹拌しながら230℃まで昇温し、エステル交換反応を120分常圧で行った。エステル交換反応の終了は、所定量のメタノールが留去したところとした。エステル交換反応終了後、トリメチルホスフェートをP原子換算で形成されるポリエステルに対して58ppmとなるように添加し、85分かけて減圧しながら280℃まで温度上げ、溶融粘度が7000ポイズになるまで約40分重縮合反応を行ってポリエステルAを得た。このポリエステルAの固有粘度は0.75dl/gであった。
合成例2〜7
合成例1と同様にして、表1に示すポリエステルB〜Gを合成した。なお、合成例2および3では、重合触媒として、三酸化アンチモンを、Sb原子がポリエステルに対して160ppmとなるように用いて、ポリエステルBおよびCを得た。また、合成例4では、重合触媒としてチタニウムテトラブトキシドを、Ti原子がポリエステルに対して90ppmとなるように用いてポリエステルDを得た。さらに合成例6では、重合触媒として酢酸コバルト四水和物を、Mg原子がポリエステルに対して20ppmとなるようにし、さらにチタニウムテトラブトキシドを、Ti原子がポリエステルに対して15ppmとなるように用いて、ポリエステルFを得た。合成例7では、重合触媒については合成例1と同様とした。
上記合成例1〜7で得られたポリエステルA〜Gを表1に示す。なお表1中、DMT:ジメチルテレフタレート、DMN:ジメチルナフタレート、EG:エチレングリコール、NPG:ネオペンチルグリコール、BD:1,4−ブタンジオール、CHDM:1,4−シクロヘキサンジメタノール、PPG:プロパンジオールである。
実験1
夫々別個に予備乾燥したポリエステルAのチップを15質量%、ポリエステルチップBのチップを75質量%、ポリエステルDのチップを10質量%の割合で混合した後、単軸押出機を用いて280℃で溶融押出し(Tダイ)、その後キャスティングロールで急冷して、厚さ260μmの未延伸フィルムを得た。この未延伸フィルムを100℃で3秒間予熱した後、テンターで横方向(フィルム幅方向)に延伸した。延伸は、まず、77℃で4.75倍に延伸し(1段階目)、次いで77℃で5秒間、1段階目終了時のフィルム幅に対し3%緊張させ(熱固定)、次いで75℃で、熱固定終了時のフィルム幅の1.1倍に延伸(2段階目)して行った。次いで、2段階目の延伸終了時のフィルム幅に対し、1%の緊張をかけつつ冷却して、厚さ50μmのポリエステル系フィルムを得た。
続いて、上記フィルムに以下の条件でコロナ処理を施した。コロナ処理装置の処理電極と処理部分を2重のチャンバーで囲い込み、窒素を連続的に供給して窒素雰囲気に置換した。コロナ処理装置の処理電極はアルミニウム製のバー型電極、処理ロールは表面材質がシリコーンゴム製のものを使用した。処理電極とフィルム間のギャップは0.4mmとした。また、フィルムとチャンバー間のギャップは0.3mmであり、このギャップの部分を綿製の布(別珍)で被覆した。高周波電源装置は春日電機社の装置を使用し、発信周波数は45±3KHz、処理雰囲気温度と処理ロール表面温度は共に40℃として表3の条件でコロナ処理を行った。処理時のフィルム表面温度は40℃であり、窒素雰囲気中の酸素濃度は120ppmであった。得られたポリエステル系フィルムNo.1の評価結果を表4に示す。
実験2
ポリエステルチップの混合比を表2に示すように変更した他は、実験1と同様にして、厚さ260μmの未延伸フィルムを得た。この未延伸フィルムについて、実験1と同様にして延伸およびコロナ処理を施し、厚さ50μmのポリエステル系フィルムNo.2を得た。得られたフィルムの評価結果を表4に示す。
実験3〜7
ポリエステルチップの混合比を表2に示すように変更した他は、実験1と同様にして、厚さ260μmの未延伸フィルムを得て、表3に示す条件に変更した他は、実験1と同様にして延伸・コロナ処理を施し、厚さ50μmのポリエステル系フィルムNo.3〜7を得た。得られたフィルムの評価結果を表4に示す。
実験8
両外層および中心層からなる3層の積層ポリエステル系フィルムNo.8を得た。中心層には、夫々別個に予備乾燥したポリエステルAのチップを15質量%、ポリエステルCのチップを75質量%、ポリエステルDのチップを10質量%の割合で混合して用いた。また、両外層には、夫々別個に予備乾燥したポリエステルAのチップを15質量%、ポリエステルFのチップを85質量%の割合で混合して用いた。これらの混合ポリエステルチップを、Tダイを有する単軸押出機を用いて280℃で共押出し、その後キャスティングロールで急冷して、両外層の厚さが夫々65μm、中心層の厚さが130μmの3層構造の未延伸フィルムを得た。この未延伸フィルムについて、表3に示す条件に変更した他は、実験1と同様にして延伸・コロナ処理を施し、厚さ50μm(両外層の厚さが夫々12.5μm、中心層の厚さが25μm)の積層ポリエステル系フィルムNo.8を得た。得られたフィルムの評価結果を表4に示す。
実験9
ポリエステルチップの混合比を表2に示すように変更した他は、実験1と同様にして、厚さ260μmの未延伸フィルムを得た。この未延伸フィルムについて、表3に示す延伸条件に変更すると共にコロナ処理を行わなかった以外は、実験1と同様にして、厚さ50μmのポリエステル系フィルムNo.9を得た。得られたフィルムの評価結果を表4に示す。
実験10
ポリエステルチップの混合比を表2に示すように変更した他は、実験1と同様にして、厚さ200μmの未延伸フィルムを得た。この未延伸フィルムについて、表3に示す延伸条件に変更すると共にコロナ処理を行わなかった以外は、実験1と同様にして、厚さ50μmのポリエステル系フィルムNo.10を得た。得られたフィルムの評価結果を表4に示す。
実験11
ポリエステルチップの混合比を表2に示すように変更した他は、実験1と同様にして、厚さ260μmの未延伸フィルムを得た。この未延伸フィルムについて、表3に示す条件に変更し、実験1と同様にして延伸を施した。続いて、実験1で用いたコロナ処理装置を囲い込まずに、空気雰囲気下とした以外は、実験1と同様にして表3の条件でコロナ処理を行い、厚さ50μmのポリエステル系フィルムNo.11を得た。コロナ処理雰囲気中の酸素濃度は20500ppmであった。得られたフィルムの評価結果を表4に示す。
なお、表3中、1段階目の延伸時の延伸倍率は、フィルム幅に対する比率、熱固定の際の緊張率は、1段階目の延伸後のフィルム幅に対する比率、2段階目の延伸時の延伸倍率は、熱固定後(熱固定を実施しない場合は1段階目延伸後)のフィルム幅に対する比率、冷却時の緊張率は、2段階目の延伸後のフィルム幅に対する比率である。また、フィルムNo.4、9および10において、熱固定の緊張率「0%」は、熱固定工程を設けていないことを、冷却時の緊張率「0%」は、2段階目の延伸後、緊張をかけずにフィルムを冷却したことを意味する。

Claims (5)

  1. 下記(A)〜(E)を満足するものであることを特徴とする熱収縮性ポリエステル系フィルム。
    (A)10cm×10cmの正方形状に切り取った熱収縮性ポリエステル系フィルムの試料について、70℃の温水中に5秒浸漬して引き上げ、次いで25℃の水中に10秒浸漬して引き上げたときの最大収縮方向の熱収縮率が10〜50%、
    (B)10cm×10cmの正方形状に切り取った熱収縮性ポリエステル系フィルムの試料について、85℃の温水中に5秒浸漬して引き上げ、次いで25℃の水中に10秒浸漬して引き上げたときの最大収縮方向の熱収縮率が70%以上、最大収縮方向に直交する方向の熱収縮率が10%以下、
    (C)10cm×10cmの正方形状に切り取った熱収縮性ポリエステル系フィルムの試料、および最大収縮方向に10%熱収縮させたフィルムを10cm×10cmの正方形状に切り取った試料について、95℃の温水中に5秒浸漬して引き上げ、次いで25℃の水中に10秒浸漬して引き上げたときに測定される最大収縮方向の熱収縮率を、夫々X0(%)、X10(%)とするとき、下式で示される熱収縮率差Δ(%)が10〜20%、
    Δ = X0−X10
    (D)熱収縮性ポリエステル系フィルムの一方の面を第1面、その裏面を第2面とするとき、少なくとも第1面の濡れ張力が38mN/m以上、
    (E)熱収縮性ポリエステル系フィルムの上記第1面の最表層の窒素原子含有量が0.1〜4.0原子%。
  2. 最大収縮方向に10%熱収縮した後のフィルムの該方向についての熱収縮応力値を、温度90℃、吹き出し速度5m/秒の熱風中、試験片幅20mm、チャック間距離100mmの条件で測定したとき、最大熱収縮応力値が7MPa以上である請求項1に記載の熱収縮性ポリエステル系フィルム。
  3. フィルムの最大収縮方向での厚み変位測定を、長さ50cm、幅5cmの試験片について行ったとき、下記に規定する厚み分布が6%以下である請求項1または2に記載の熱収縮性ポリエステル系フィルム。
    厚み分布=[(最大厚み−最小厚み)/平均厚み]×100
  4. 275℃での溶融比抵抗値が0.70×108Ω・cm以下である請求項1〜3のいずれかに記載の熱収縮性ポリエステル系フィルム。
  5. 請求項1〜4のいずれかに記載の熱収縮性ポリエステル系フィルムを用いたことを特徴とする熱収縮性ラベル。
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