JP2004337954A - 塑性結合部品及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】塑性結合部品の両部材間における気密性や液密性をより確実に確保する。
【解決手段】シャフト1の外周縁端部12bをシャフト1よりも硬度の低いハブ2の内側円筒部23に食い込ませながら相対的に押し込んで圧入することにより両部材が一体的に塑性結合されている。外周縁端部12bの下端面12dには溝状凹部13が設けられている。内側円筒部23は、圧入時に外周縁端部12bで圧入進行側に押し流される材料の塑性流動により形成された棚部24をもっている。棚部24は、凸型パンチで棚部24を押圧して棚部24の材料を溝状凹部13内に押し込むことによりに形成された形成凸条部26をもっている。溝状凹部13と形成凸条部26との凹凸係合により、部材間の気密性や液密性を向上させることができる。
【選択図】 図2
【解決手段】シャフト1の外周縁端部12bをシャフト1よりも硬度の低いハブ2の内側円筒部23に食い込ませながら相対的に押し込んで圧入することにより両部材が一体的に塑性結合されている。外周縁端部12bの下端面12dには溝状凹部13が設けられている。内側円筒部23は、圧入時に外周縁端部12bで圧入進行側に押し流される材料の塑性流動により形成された棚部24をもっている。棚部24は、凸型パンチで棚部24を押圧して棚部24の材料を溝状凹部13内に押し込むことによりに形成された形成凸条部26をもっている。溝状凹部13と形成凸条部26との凹凸係合により、部材間の気密性や液密性を向上させることができる。
【選択図】 図2
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は塑性結合部品及びその製造方法に関し、詳しくは、第1部材の第1結合部を該第1部材よりも硬度の低い第2部材よりなる第2結合部に食い込ませながら該第2結合部に対して該第1結合部を相対的に押し込んで圧入することにより両部材が一体的に塑性結合された塑性結合部品及びその製造方法に関する。本発明に係る塑性結合部品は、例えば、車両用オートマチック部品のドラムやハブ等をシャフトに結合したものに好適に利用することができる。
【0002】
【従来の技術】
自動車用オートマチック部品としてのドラムやハブは、シャフトに対して一体的に結合されている。かかるドラムやハブとシャフトとの結合には、電子ビーム溶接やレーザ溶接等が利用されている。
【0003】
しかし、電子ビーム溶接やレーザ溶接を利用して2つの部材を結合する場合、電子ビームやレーザを発生させるべく、特殊な溶接装置の使用や多大な電力消費が必要となり、コスト高となる。
【0004】
そこで、プレス機械等の使用のみで足り、コスト面で有利な圧入及びかしめ加工を利用して2つの部材を一体的に塑性結合した塑性結合部品が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
この塑性結合部品は、図16に示されるように、外周縁端部(第1結合部)90を有するシャフト(第1部材)91と、このシャフト91よりも硬度の低い材料よりなり、円筒部(第2結合部)92を有するハブ(第2部材)93とからなり、以下のように製造される。まず、ハブ93の円筒部92内にシャフト91の外周縁端部90を圧入する。このとき、外周縁端部90を円筒部92に食い込ませながら押し込んで圧入することにより、該外周縁端部90で圧入進行側に押し流される円筒部92の材料の塑性流動により円筒部92の内周面(第2結合面)に棚部94を一体に形成する。そして、パンチ等で円筒部92の内周側上端面を押圧して押し潰すことにより、外周縁端部90の圧入後退側における円筒部92の内周面にかしめ加工を施してかしめ加工部95を形成する。
【0006】
こうして、外周縁端部90が円筒部92に圧入されるとともに、円筒部92の内周面に形成された棚部94及びかしめ加工部95間で外周縁端部90が軸方向(圧入の進退方向)に挟持されることにより、シャフト91とハブ93とは軸方向における相対移動が確実に規制される。
【0007】
また、この塑性結合部品では、シャフト91とハブ93との相対回転を規制すべく、外周縁端部90の外周側面(第1結合面)に、圧入の進退方向に延びる複数の歯形凸部96a及び歯溝凹部96bよりなる噛み合い係合部(セレーション部)96が予め一体に設けられている(図17参照)。そして、噛み合い係合部96のうちの各歯形凸部96aのみを円筒部92に食い込ませながら、円筒部92の上端から外周縁端部90を押し込んで圧入することにより、円筒部92の内周面を各歯形凸部96a及び各歯溝凹部96bと対応するように塑性変形させて各歯形凸部96a及び各歯溝凹部96bと噛み合い係合する形成歯溝凹部97a及び形成歯形凸部97bよりなる噛み合い被係合部97を該内周面に一体に形成している。したがって、互いに噛み合い係合する噛み合い係合部96及び噛み合い被係合部97により、シャフト91とハブ93との相対回転を確実に規制することができる。
【0008】
【特許文献1】
特開2002−126837号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来の塑性結合部品では、噛み合い係合部96のうち歯形凸部96aのみを円筒部92に食い込ませるように圧入していることから、気密性や液密性に欠けるという問題がある。
【0010】
すなわち、噛み合い係合部96のうち歯形凸部96aのみを円筒部92に食い込ませるように圧入すると、噛み合い係合部96の歯溝凹部96bと、この歯溝凹部96b内に入り込むように形成された噛み合い被係合部97の形成歯形凸部97bとの間に、圧入の進退方向に沿って全体に延びる隙間Sが形成される。そうすると、この隙間Sを介して気体や液体が圧入の進退方向に流通することとなり、シャフト91及びハブ93間で気密性や液密性に欠け、例えば油漏れの問題が発生する。
【0011】
なお、仮に、歯形凸部96a及び歯溝凹部96bの双方、すなわち噛み合い係合部96の全体を円筒部92に食い込ませながら圧入すれば、歯溝凹部96bと形成歯形凸部97bとの間に形成される上記隙間Sを無くすことができるので、歯形凸部96aのみを食い込ませる場合よりも気密性や液密性を向上させることが可能となる。
【0012】
しかしながら、歯形凸部96a及び歯溝凹部96bの双方を円筒部92に食い込ませながら圧入する場合は、極めて大きな圧入荷重が必要となり、また、材料の組合せによっては圧入すること自体が不可能となることから、圧入容易性や圧入可能性を考慮すれば、円筒部92の内周面に歯溝凹部96bを大きく(大きな圧入代で)食い込ませることには限界がある。このため、歯形凸部96a及び歯溝凹部96bの双方を円筒部92に食い込ませながら圧入する場合であっても、歯溝凹部96bと形成歯形凸部97bとの間における気密性や液密性を向上させることには限界がある。一方、円筒部92の内周面に一体に形成される上記棚部94と外周縁端部90との間においても、微少隙間を完全に無くすことは困難である。したがって、特に高圧となるような状況下で使用された場合に、棚部94と外周縁端部90との間の微少隙間を介して、歯溝凹部96bと形成歯形凸部97bとの間に気体や液体が入り込んで流通するおそれがある。
【0013】
また、上記したような問題は、外周縁端部90の外周側面に歯形凸部96a及び歯溝凹部96bよりなる噛み合い係合部96を予め設けない場合においても同様に発生する。すなわち、歯形凸部及び歯溝凹部が設けられていない単純な円周面同士を圧入する場合は、圧入容易性や圧入可能性の観点より、円筒部92の内周面に外周縁端部90を大きく(大きな圧入代で)食い込ませることが困難であることから、円筒部92と外周縁端部90との間における気密性や液密性を向上させることは、歯形凸部96a及び歯溝凹部96bの双方を食い込ませる場合と同様に困難となる。
【0014】
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、第1部材の第1結合部を該第1部材よりも硬度の低い材料よりなる第2部材の第2結合部に食い込ませながら該第2結合部に対して該第1結合部を相対的に押し込んで圧入することにより両部材が一体的に塑性結合された塑性結合部品において、両部材間の気密性や液密性をより確実に確保することを解決すべき技術課題とするものである。
【0015】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決する本発明の塑性結合部品は、第1結合面をもつ第1結合部を有する第1部材と、該第1部材よりも硬度の低い材料よりなり、第2結合面をもつ第2結合部を有する第2部材とからなり、該第1結合部を該第2結合部に食い込ませながら該第2結合部に対して該第1結合部を相対的に押し込んで圧入することにより該第1結合面と該第2結合面とが対面した状態で両部材が一体的に塑性結合された塑性結合部品であって、上記第1結合部は上記第1結合面と略直交する第1端面に設けられた溝状凹部をもち、上記第2結合部は、圧入時に上記第1結合部で圧入進行側に押し流される該第2結合部の材料の塑性流動により上記第2結合面に一体に形成され、上記第1端面に当接された棚部をもち、上記棚部は、凸型パンチで該棚部を押圧して該棚部の材料を上記溝状凹部内に押し込み該棚部を該溝状凹部に対応させて塑性変形させることにより該棚部に一体に形成され、該溝状凹部と圧接状態を維持しつつ凹凸係合された形成凸条部をもっていることを特徴とするものである。
【0016】
この塑性結合部品では、第1結合部の第1結合面と略直交する第1端面に、第2結合部の第2結合面に一体に形成された棚部が当接している。この第1端面と棚部との当接により、圧入の進退方向であって該棚部に対して該第1端面が押し付けられる方向に、第2部材に対して第1部材が相対移動することを確実に規制することができる。
【0017】
また、第1部材の上記第1端面に溝状凹部が設けられる一方、該溝状凹部と圧接状態(溝状凹部に対して圧力をかけながら当接している状態)を維持しつつ凹凸係合された形成凸条部が第2部材の上記棚部に一体に形成されている。このため、該溝状凹部及び該形成凸条部間で気体や液体が流通することを確実に阻止することができる。したがって、この塑性結合部品によれば、特に高圧となるような状況下で使用された場合であっても、両部材間の気密性や液密性をより確実に確保することが可能となる。
【0018】
ここに、上記溝状凹部の断面(溝状凹部が延びる方向に対して直角な断面)形状は、特に限定されるものではなく、例えば単純な矩形状や半円形状としてもよいし、後述するように溝状凹部の開口端縁が角状とされたもの、材料案内部や抜け阻止用凹部が形成されたもの等としてもよい。
【0019】
また、溝状凹部の大きさも特に限定されず、適宜設定可能である。具体的には、溝状凹部の幅を1〜5mm程度とし、溝状凹部の深さを1〜5mm程度とすることができる。
【0020】
好適な態様において、前記第1結合部は、前記第1結合面に一体に設けられ圧入の進退方向に歯すじが延びる複数の歯形凸部及び歯溝凹部をもつ一方、前記第2結合部は、圧入時に前記第2結合面が各該歯形凸部及び各該歯溝凹部と対応して塑性変形することにより該第2結合面に一体に形成され、各該歯形凸部及び各該歯溝凹部と隙間無く噛み合い係合された形成歯溝凹部及び形成歯形凸部をもっている。
【0021】
この態様によれば、第1結合面に設けられた歯形凸部及び歯溝凹部と、第2結合面に形成された形成歯溝凹部及び形成歯形凸部とが隙間無く噛み合い係合することにより、第1部材と第2部材との間で、圧入の進退方向に略直交する方向における結合強度を高めることができ、該略直交方向における第1部材及び第2部材間の相対移動を確実に規制することが可能となる。また、これら歯形凸部及び歯溝凹部と形成歯溝凹部及び形成歯形凸部とが隙間無く噛み合い係合していることから、歯形凸部及び歯溝凹部と形成歯溝凹部及び形成歯形凸部との間において、隙間がない分だけ、気密性や液密性を向上させるのに有利となる。
【0022】
好適な態様において、前記第1結合面及び前記第2結合面のうちの一方は円周外面よりなる一方、他方は円周内面よりなり、前記棚部、前記溝状凹部及び前記形成凸条部は円環状に延びている。
【0023】
この態様において、上記歯形凸部及び歯溝凹部が第1結合面に設けられるとともに、この歯形凸部及び歯溝凹部と隙間無く噛み合い係合する形成歯溝凹部及び形成歯形凸部が第2結合面に形成されていれば、これら歯形凸部及び歯溝凹部と形成歯溝凹部及び形成歯形凸部との噛み合い係合により、第1部材及び第2部材間における相対回転を確実に規制することが可能となる。
【0024】
好適な態様において、前記溝状凹部は、該溝状凹部内に押し込まれた該棚部の材料を該溝状凹部の側面方向に塑性流動させることにより、該側面に対する該形成凸条部の圧接力を高めうる材料案内部を内壁面に有している。
【0025】
この態様によれば、溝状凹部の側面に対する形成凸条部の圧接力が材料案内部により高められているので、圧接力が高められた溝状凹部の側面と形成凸条部との間において、気密性や液密性をより向上させることができる。
【0026】
ここに、上記材料案内部の形状、位置、大きさや範囲等は、溝状凹部内に押し込まれた該棚部の材料を該溝状凹部の側面方向に塑性流動させることのできるものであれば特に限定されない。例えば、溝状凹部の底面から隆起するように設けられた断面三角突部や断面部分円突部により材料案内部を構成したり、あるいは底面の少なくとも一部を傾斜させた傾斜底面により材料案内部を構成したりすることができる。
【0027】
好適な態様において、前記溝状凹部は抜け阻止用凹部を内壁面に有する一方、前記形成凸条部は該抜け阻止用凹部と凹凸係合することにより該溝状凹部から該形成凸条部が抜け出ることを阻止しうる抜け阻止用凸部を外面に一体に有している。
【0028】
この態様によれば、溝状凹部の抜け阻止用凹部と形成凸条部の抜け阻止用凸部との凹凸係合により、溝状凹部から形成凸条部が抜け出ることを阻止することができる。したがって、圧入の進退方向であって溝状凹部から形成凸条部が抜け出る方向(第1端面から棚部が離れる方向)に、第1部材に対して第2部材が相対移動することをより確実に規制することができる。
【0029】
ここに、上記抜け阻止用凹部及び抜け阻止用凸部の形成や大きさ等は特に限定されない。例えば、溝状凹部の底面から開口端縁に向かって溝状凹部の幅が徐々に狭くなるようなテーパ面や湾曲面により両側面を構成することにより、溝状凹部の両側面の底面側に抜け阻止用凹部を形成したり、あるいは溝状凹部の両側面に設けられた凹状段部により抜け阻止用凹部を形成したりすることができる。
【0030】
好適な態様において、前記溝状凹部の開口端縁は角状とされている。
【0031】
この態様によれば、溝状凹部の開口端縁とこの開口端縁に当接する棚部との間において、開口端縁が角状とされている分だけ圧接力が増大することから、気密性や液密性をより向上させることができる。
【0032】
好適な態様において、前記第1結合部は前記第1端面により内壁面の一部が構成された係合凹部を有し、前記棚部の先端部と該係合凹部とが係合している。
【0033】
この態様によれば、第1端面により内壁面の一部が構成された係合凹部と棚部の先端部との係合により、圧入の進退方向であって溝状凹部から形成凸条部が抜け出る方向(第1端面から棚部が離れる方向)に、第1部材に対して第2部材が相対移動することをより確実に規制することができる。また、前記凸型パンチで棚部を押圧して形成凸条部を形成する際に、スプリングバッグにより棚部の先端側が第1端面から離れる方向に変形するおそれがあるが、棚部の先端部と係合凹部との係合により、かかるスプリングバックを防止することができる。したがって、棚部の先端部が第1端面から離れる方向に変形することにより、棚部の先端部と第1端面との間に隙間が生じたり、あるいは溝状凹部と形成凸条部との圧接力が低下したりすることによって気密性や液密性が低下することを防止することが可能となる。
【0034】
好適な態様において、前記第2結合部は、前記第2結合面に一体に形成され、前記第1結合面と略直交し前記第1端面と反対側の前記第1結合部の第2端面に当接して前記棚部と共に該第1結合部を挟持可能なかしめ加工部をもっている。
【0035】
この態様によれば、第1結合部の第2端面と第2結合部のかしめ加工部との当接により、圧入の進退方向であって該第2端面に対して該かしめ加工部が押し付けられる方向に、第1部材に対して第2部材が相対移動することを確実に規制することができる。したがって、第2結合部の棚部及びかしめ加工部間で第1結合部を圧入の進退方向に挟持することができ、第1及び第2部材間における圧縮進退方向の相対移動を確実に規制することが可能となる。
【0036】
上記課題を解決する本発明の塑性結合部品の製造方法は、第1結合面をもち該第1結合面と略直交する圧入進行側の第1端面に溝状凹部が予め設けられた第1結合部を有する第1部材と、該第1部材よりも硬度の低い材料よりなり、第2結合面をもつ該2結合部を有する第2部材とからなり、該第1結合面と該第2結合面とが対面した状態で両部材が圧入により一体的に塑性結合された塑性結合部品の製造方法であって、上記第1結合部を上記第2結合部に食い込ませながら該第2結合部に対して該第1結合部を相対的に押し込んで圧入することにより、該第1結合部で圧入進行側に押し流される該第2結合部の材料の塑性流動により上記第1端面に当接する棚部を該第2結合面に一体に形成する圧入工程と、凸型パンチで上記棚部を押圧して該棚部の材料を上記溝状凹部内に押し込み該棚部を該溝状凹部に対応させて塑性変形させることにより、該溝状凹部と圧接状態を維持しつつ凹凸係合する形成凸条部を該棚部に一体に形成する凸条部形成工程とを順に実施することを特徴とするものである。
【0037】
この塑性結合部品の製造方法では、圧入工程で、第1結合部が第2結合部に食い込むように圧入することにより、第1結合部で圧入進行側に押し流される第2結合部の材料の塑性流動により第1結合部の第1端面に当接する棚部を第2結合面に一体に形成することができる。こうして形成された第2結合部の棚部により、第2部材に対して第1部材が圧入進行側に相対移動することを確実に規制することができる。
【0038】
また、第1部材の第1端面には溝状凹部が設けられる一方、凸条部形成工程では、凸型パンチで棚部を押圧して該棚部を該溝状凹部に対応させて塑性変形させることにより、該溝状凹部と圧接状態を維持しつつ凹凸係合する形成凸条部を該棚部に一体に形成する。こうして形成された形成凸条部と溝状凹部とが圧接状態を維持しつつ凹凸係合することにより、溝状凹部及び形成凸条部間で気体や液体が流通することを確実に阻止することができる。
【0039】
好適な態様において、前記第1結合面には、圧入の進退方向に歯すじが延びる複数の歯形凸部及び歯溝凹部が予め設けられており、前記圧入工程では、各上記歯形凸部及び各上記歯溝凹部の双方が前記第2結合部に食い込むように圧入することにより、前記第2結合面を各該歯形凸部及び各該歯溝凹部と対応するように塑性変形させて各該歯形凸部及び各該歯溝凹部と隙間無く噛み合い係合する形成歯溝凹部及び形成歯形凸部を該第2結合面に一体に形成するとともに、各該歯形凸部及び各該歯溝凹部で圧入進行側に押し流される該第2結合部の材料の塑性流動により前記棚部を形成する。
【0040】
好適な態様において、前記溝状凹部の内壁面には、該溝状凹部内に押し込まれた前記棚部の材料を該溝状凹部の側面方向に塑性流動させる材料案内部が予め設けられており、前記凸条部形成工程では、前記凸型パンチで上記溝状凹部内に押し込まれた上記棚部の材料を上記材料案内部で案内しつつ該溝状凹部の側面方向に塑性流動させて該側面に押し付けることにより、前記形成凸条部の該側面に対する圧接力を高める。
【0041】
好適な態様において、前記溝状凹部の内壁面には、開口端縁の開口幅よりも幅の広い幅広空間部を開口端縁の奥側に形成する抜け阻止用凹部が予め設けられており、前記凸条部形成工程では、前記凸型パンチで上記溝状凹部内に押し込まれた上記棚部の材料を上記幅広空間部まで塑性流動させることにより、上記抜け阻止用凹部と凹凸係合することにより該溝状凹部から前記形成凸条部が抜け出ることを阻止しうる抜け阻止用凸部を該形成凸条部の外面に一体に形成する。
【0042】
好適な態様において、前記第1結合部には、前記第1端面により内壁面の一部が構成された係合凹部が予め設けられており、前記圧入工程では、上記第1結合部で圧入進行側に押し流される前記第2結合部の材料の塑性流動により上記係合凹部と先端部が係合する前記棚部を前記第2結合面に一体に形成する。
【0043】
好適な態様において、前記凸条部形成工程では、前記棚部の先端部が前記第1端面から離れないように該先端部を分割型で支持しつつ、前記凸型パンチで該棚部を押圧して前記形成凸条部を形成する。
【0044】
この態様によれば、凸条部形成工程で、棚部の先端部を分割型で支持しつつ凸型パンチで棚部を押圧して形成凸条部を形成することから、棚部の先端部がスプリングバックにより第1端面から離れる方向に変形することを防止することができる。したがって、棚部の先端部が第1端面から離れる方向に変形することにより、棚部の先端部と第1端面との間に隙間が生じたり、あるいは溝状凹部と形成凸条部との圧接力が低下したりすることによって気密性や液密性が低下することを防止することが可能となる。
【0045】
好適な態様において、前記凸条部形成工程の後に、圧入後退側における前記第2結合部にかしめ加工を施して、前記第1結合面と略直交する圧入後退側の前記第1結合部の第2端面に当接して前記棚部と共に該第1結合部を圧入進退方向に挟持可能なかしめ加工部を前記第2結合面に一体に形成するかしめ工程を実施する。
【0046】
なお、上記第1部材及び上記第2部材の形状は特に限定されず、前述のとおり第1結合面及び第2結合面のうちの一方が円周外面よりなる一方、他方が円周内面よりなるもの、例えば第1部材及び第2部材のうちの一方が円筒部を有する一方、他方が該円筒部の内径よりも若干大きな外径をもつ外周縁端部を有する形状としてもよいし、角材、板材や長尺材等としてもよい。
【0047】
また、第2結合部の第2結合面に一体に形成される上記棚部の大きさは、第1結合部と第2結合部との重なり幅(圧入代)や第2結合部により第2結合面が押し込まれる長さ(圧入長さ)によって適宜設定可能であり、圧入進退方向(プレス方向)における結合力を適切に確保しうるように該棚部の大きさを設定することができる。具体的には、該棚部は、第2結合面からの突出長さ(第1端面と当接して重なる部分の長さ)が1.0〜3.0mm程度となり、圧入進退方向(プレス方向)における厚さが0.2〜0.6mm程度となるような大きさとすることが好ましい。
【0048】
同様に、上記かしめ加工部の大きさも、圧入進退方向(プレス方向)における結合力を適切に確保しうるように設定することができる。具体的には、該かしめ加工部は、第2結合面からの突出長さ(第2端面と当接して重なる部分の長さ)が0.8〜1.2mm程度となり、圧入進退方向(プレス方向)における厚さが0.5〜1.5mm程度となるような大きさとすることが好ましい。
【0049】
また、第1結合部の第1結合面に歯形凸部及び歯溝凹部を予め設けておく場合、この歯形凸部及び歯溝凹部は、例えばプレス加工、切削加工、放電加工、レーザー切断加工や研磨加工により形成することができる。この際、歯形凸部の歯丈の高いものとしておくことにより、第1部材が第2部材が圧入進退方向に対して略直行する方向に相対移動することをより確実に規制することが可能となる。具体的には、この歯形凸部の全歯丈は0.9〜1.5mm程度とすることが好ましい。
【0050】
さらに、第1部材の硬度は、ビッカース硬さで、450Hv以上とする一方、第2部材の硬度は80〜150Hv程度とし、かつ、第1部材の硬度を第2部材の硬度の3倍以上とすることが好ましい。
【0051】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ具体的に説明する。
【0052】
この実施形態は、自動車用オートマチック部品としてのシャフト及びハブよりなる塑性結合部品に本発明を適用したものである。
【0053】
(第1実施形態)
シャフト1とハブ2とが一体的に塑性結合された、シャフト1及びハブ2よりなる2部材の塑性結合部品を図1に示す。図2はこの塑性結合部品の要部断面図であり、図3は図1のA矢視部分平面図、図4は図1のB矢視部分底面図である。
【0054】
シャフト1は、軸直角断面形状が円形のパイプ状(中空軸状)をなし、軸部11と、軸部11の一端から遠心方向に水平に階段状に延出して、内周側の第1水平部12a及び外周側の第2水平部としての外周縁端部12bをもつ鍔部12とを一体に有している。このシャフト1は本発明に係る第1部材を構成し、また、シャフト1の外周縁端部12bは本発明に係る第1結合部を構成する。そして、シャフト1の外周縁端部12bの外周端面(円周外面)12cが本発明に係る第1結合面を構成する。
【0055】
ハブ2は、外側円筒部21と、この外側円筒部21の下端から求心方向に一体に略水平に延出する水平フランジ部22と、この水平フランジ部22の求心側端縁から垂直に上方に向かって一体に延出する内側円筒部23とから構成されている。このハブ2は本発明に係る第2部材を構成し、また、ハブの内側円筒部23は本発明に係る第2結合部を構成する。そして、ハブ2の内側円筒部23の内周面(円周内面)23aが本発明に係る第2結合面を構成する。なお、外側円筒部21及び内側円筒部23は同軸をなし、外側円筒部21の方が内側円筒部23よりも軸方向長さが長くされている。
【0056】
これらのシャフト1及びハブ2は、後述する製造方法で説明するように、外周縁端部12bを内側円筒部23に食い込ませながら該内側円筒部23に対して該外周縁端部12bを軸方向に相対的に押し込んで圧入することにより外周端面12cと内周面23aとが対面した状態で一体的に塑性結合されている。
【0057】
また、図2に示されるように、シャフト1の外周縁端部12bは、外周端面12cと直交する下端面(第1端面)12dに凹設され、円環状に連続して延びる断面コの字状の溝状凹部13を有している。そして、この溝状凹部13の開口端縁13aは直角状とされている。
【0058】
一方、外周縁端部12bの下側(圧入の進退方向における圧入進行側)における内側円筒部23の内周面23aには、該外周縁端部12bの下端面12dに当接された棚部24が後述する圧入工程時に一体に形成されるとともに、外周縁端部12bの上側(圧入の進退方向における圧入後退側)における内側円筒部23の内周面23aには、外周端面12cと直交する上端面(第2端面)12eに当接されたかしめ加工部25が後述するかしめ加工工程時に一体に形成されており、該棚部24及び該かしめ加工部25間で該外周縁端部12bが軸方向(圧入進退方向)に挟持されている。
【0059】
上記棚部24及びかしめ加工部25は円環状に連続して延びている(図3及び図4参照)。また、棚部24は、後述する圧入工程で、外周縁端部12bの後述する歯形凸部14で内側円筒部23の材料が圧入進行側へ押し流されることにより該歯形凸部14の圧入進行側に形成された複数の肉厚棚部24aと、後述する歯溝凹部15で内側円筒部23の材料が圧入進行側へ押し流されることにより該歯溝凹部15の圧入進行側に形成され、肉厚棚部24よりも肉厚の薄い(高さの低い)複数の肉薄棚部24bとから構成されている。これら肉厚棚部24a及び肉薄棚部24bは周方向に交互に配設されている。
【0060】
そして、内側円筒部23の棚部24は、後述する凸条部形成工程で該棚部24の上端面に一体に形成され、円環状に連続して延びる形成凸条部26を有している。この形成凸条部26は溝状凹部13の断面形状に対応した外面形状を有しており、溝状凹部13と形成凸条部26とは全面で圧接状態を維持しつつ凹凸係合されている。なお、この棚部24の下端面には、後述する凸条部形成工程で形成凸条部26を形成する際に後述する凸型パンチが押し込まれることにより形成された円環状で断面コの字状のパンチ痕27が凹設されている。
【0061】
さらに、シャフト1の外周縁端部12bの外周端面12cには、軸方向(圧入進退方向)と平行に歯すじが延びる複数の歯形凸部14及び歯溝凹部15が予め設けられている。そして、ハブ2の内側円筒部23の内周面23aには、軸方向と平行に歯すじが延びる形成歯溝凹部28及び形成歯形凸部29が後述する圧入工程時に一体に形成され、シャフト1の歯形凸部14及び歯溝凹部15とハブ2の形成歯溝凹部28及び形成歯形凸部29とが隙間無く噛み合い係合している(図3参照)。シャフト1の外周縁端部12bに予め設けられた歯形凸部14及び歯溝凹部15は、後述するようにプレス加工によるもので、歯形凸部14の歯丈は高トルクに対応すべく1.2mmとされている。
【0062】
そして、上記シャフト1はビッカース硬さがHv800程度であるSCM420H(浸炭処理されたクロムモリブデン鋼)よりなり、上記ハブ2はビッカース硬さがHv100程度であるSPHD(熱間圧延鋼板)よりなる。また、上記棚部24は、内側円筒部23の内周面23aから求心方向に突出して外周縁端部12bと径方向に重なる部分の長さが3.0mmであり、軸方向における厚さが厚肉棚部24aの部分で2.5mm、薄肉棚部24bの部分で1.0mmである。
さらに、上記かしめ加工部25は、内側円筒部23の内周面23aから求心方向に突出して外周縁端部12bと径方向に重なる部分の長さが1.0mmであり、軸方向における厚さが1.0mmである。また、上記溝状凹部13及び形成凸条部26の径方向の幅は3.0mmであり、溝状凹部13の深さ及び形成凸条部26の高さは2.0mmである。
【0063】
また、シャフト1とハブ2とを結合する前の状態において、シャフト1の外周縁端部12bの歯形凸部14における外径及び歯溝凹部15における外径は、いずれもハブ2の内側円筒部23の内周面23aの内径よりも大きく設定されている。
【0064】
上記構成を有するシャフト1及びハブ2よりなる2部材の塑性結合部品は、以下に示すように塑性結合したものである。
【0065】
<準備工程>
まず、パイプ状素材からプレス加工等により軸部11の一端に鍔部12を一体に有するとともに、鍔部12の外周縁端部12bの下端面12dに円環状の溝状凹部13を有するシャフト1を所定形状に成形した。
【0066】
そして、溝状凹部13のエッジ部をピン角に切削加工して、この溝状凹部13の開口端縁13aを直角状とした。
【0067】
また、板状素材からプレス加工等により外側円筒部21、水平フランジ部22及び内側円筒部23を一体に有するハブ2を所定形状に成形した。
【0068】
<セレーション成形工程>
図5に示されるように、ダイス穴31aの内周面にセレーションとしての歯形凸部14及び歯溝凹部15を成形するための歯成形部31bが下方部に形成された第1ダイス31を準備した。なお、第1ダイス31のダイス穴31aの内径は、外周縁端部12bの外周端面12cの外径と略同一とされている。
【0069】
そして、シャフト1を第1ダイス31のダイス穴31a内にセットしてから、このシャフト1の軸部11の孔内に嵌合される中央凸部32aと、鍔部12の外周縁端部12bの上端面12eに当接される環状当接面32bとを有する第1パンチ32でシャフト1をダイス穴31a内の下方に押し込んで、第1ダイス31の歯成形部31bで外周縁端部12bの外周端面12cに歯形凸部14及び歯溝凹部15を成形した。
【0070】
<圧入工程>
次に、図6に示されるように、中心孔33aを有する下型33と、この中心孔33a内に昇降可能に配設され、ダイス穴34a及び段状部34bを有する環状の第1分割ダイス34とを準備した。なお、第1分割ダイス34のダイス穴34aの内径は、軸部11の外径と略同一とされている。
【0071】
そして、下型33上にハブ2をセットするとともに、このハブ2上にリング状押さえ型35をセットした(図6参照)。これにより、下型33及びリング状押さえ型35でハブ2の水平フランジ部22を挟持するとともに、リング状押さえ型35の内周面35aでハブ2の内側円筒部23の外周面を拘束した。なお、リング状押さえ型35で内側円筒部23を拘束するのは、圧入工程時、後述する凸条部形成行程時及びかしめ工程時における内側円筒部23の変形を防止するためである。
【0072】
そして、第1分割ダイス34のダイス穴34a内にシャフト1の軸部11をセットした。このとき、前述したように、シャフト1の外周縁端部12bの歯形凸部14における外径及び歯溝凹部15における外径は、いずれもハブ2の内側円筒部23の内周面23aの内径よりも大きく設定されていることから、シャフト1の外周縁端部12bは内側円筒部23の内周側上端面上に置かれるとともに、歯形凸部14及び歯溝凹部15はいずれも内側円筒部23上に位置している。
【0073】
そして、シャフト1を軸方向に第2パンチ36で上方から押し込んで下降させ、シャフト1の第1水平部12aの下端面を第1分割ダイス34の段状部34bに当接させて圧入工程を終了した。なお、圧入工程終了時には、シャフト1の鍔部12のうち内周側の第1水平部12aのみが第1分割ダイス34の段状部34bに当接し、外周側の第2水平部たる外周縁端部12bの下端面12dと第1分割ダイス34の上面との間に設けられた逃げ凹部内に前記棚部24が形成される。
【0074】
こうして、ハブ2の内側円筒部23内にシャフト1の外周縁端部12bを押し込んでシャフト1とハブ2とを塑性結合した。このとき、シャフト1の外周縁端部12bの歯形凸部14及び歯溝凹部15の双方が内側円筒部23の内周面23aに食い込みながら、内側円筒部23に対して外周縁端部12bが軸方向に押し込まれ、内側円筒部23の材料が歯形凸部14及び歯溝凹部15で圧入進行側に押し流されて塑性流動した。これにより、歯形凸部14及び歯溝凹部15と互いに隙間無く噛み合う形成歯溝凹部28及び形成歯形凸部29を内側円筒部23の内周面23aに形成する一方、各歯形凸部14の圧入進行側における内側円筒部23の内周面23aに肉厚棚部24aを形成するとともに、各歯溝凹部15の圧入進行側における内側円筒部23の内周面23aに肉薄棚部24bを形成した。
【0075】
<凸条部形成工程>
次に、図6に示される状態から上記第2パンチ36を上昇させるとともに上記第1分割ダイス34を下降させた後、図7に示されるように、押さえ型37をシャフト1の外周縁端部12bの上端面に当接させるとともに、上記下型33の中心孔33aに環状の凸型パンチ38を軸方向に昇降可能に配設した。この凸型パンチ38の上端面には、図8に示されるように、上記溝状凹部13の断面形状に対応する外面形状を有する押圧突部38aが一体に設けられている。この押圧突部38aは円環状に連続して延びており、溝状凹部13の幅と略同等の幅を有するとともに、溝状凹部13の深さよりも大きな高さを有している。
【0076】
そして、上記リング状押さえ型35でハブ2の水平フランジ部22を押さえるとともに押さえ型37でシャフト1の外周縁端部12bを押さえながら、凸型パンチ38を上昇させた。こうして、凸型パンチ38の押圧突部38aで上記棚部24の下端面を押圧して棚部24の材料を上記溝状凹部13内に押し込み棚部24を溝状凹部13に対応させて塑性変形させることにより、溝状凹部13と圧接状態を維持しつつ凹凸係合する形成凸条部26を棚部24の上端面に一体に形成した。
【0077】
なお、上記押さえ型37を別途用いることなく、上記第2パンチ36を図6に示される状態に維持して、第2パンチ36でシャフト1の外周縁端部12bを押さえながら、凸型パンチ37を上昇させてもよい。
【0078】
<かしめ加工工程>
最後に、凸型パンチ38を下降させた後、図9に示されるように、下型33の中心孔33a内に上記第1分割ダイス34を配設した。
【0079】
そして、第1分割ダイス34の段状部34bでシャフト1の第1水平部12aを支えるとともに上記リング状押さえ型35でハブ2の水平フランジ部22を押さえかつ内側円筒部23を拘束しながら、かしめ加工部25を成形するための環状凸部39aを下面の外周端部に有する第3パンチ39で、内側円筒部23の内周側上端面を押圧して押し潰した。これにより、シャフト1の外周縁端部12bの圧入後退側における内側円筒部23の内周面23aにかしめ加工を施してかしめ加工部25を形成した。
【0080】
こうして得られた塑性結合部品では、シャフト1とハブ2とは、シャフト1の外周縁端部12bがハブ2の内側円筒部23に圧入されるとともに、該外周縁端部12bが内側円筒部23の内周面23aに形成された棚部24及びかしめ加工部25間で軸方向に挟持されることにより、軸方向における相対移動が確実に規制されている。また、シャフト1とハブ2とは、外周縁端部12bが内側円筒部23に圧入されるとともに、外周縁端部12の歯形凸部14及び歯溝凹部15と内側円筒部23の形成歯溝凹部28及び形成歯形凸部29とが噛み合い係合されることにより、相対回転も確実に規制されている。したがって、このシャフト1及びハブ2よりなる塑性結合部品は、軸方向及び回転方向の荷重に十分耐えうるものとなる。
【0081】
また、外周縁端部12bの溝状凹部13と棚部24の形成凸条部26とが全面的に圧接状態を維持しつつ凹凸係合されており、しかも溝状凹部13の開口端縁13aが直角状とされて棚部24との圧接力が増大していることから、溝状凹部13及び形成凸条部26間で気体や液体が流通することを確実に阻止することができる。また、外周縁端部12の歯形凸部14及び歯溝凹部15と内側円筒部23の形成歯溝凹部28及び形成歯形凸部29とが隙間無く噛み合い係合していることから、歯形凸部14及び歯溝凹部15と形成歯溝凹部28及び形成歯形凸部29との間において、隙間がない分だけ、気密性や液密性を向上させるのに有利となる。
【0082】
したがって、この塑性結合部品によれば、特に高圧となるような状況下で使用された場合であっても、シャフト1及び歯部2間の気密性や液密性をより確実に確保することが可能となる。
【0083】
(第2実施形態)
この実施形態の塑性結合部品では、図10に示されるように、シャフト1の外周縁端部12bが、下端面12dにより上方内壁面が構成された係合凹部16を有しており、棚部24の先端部24cと該係合凹部16とが凹凸係合している。
【0084】
その他の構成は、前記第1実施形態と同様である。
【0085】
したがって、係合凹部16と棚部24の先端部24cとの係合により、圧入の進退方向であって溝状凹部13から形成凸条部26が抜け出る方向(下端面12dから棚部24が離れる方向)に、シャフト1に対してハブ2が相対移動することをより確実に規制することができる。
【0086】
そして、この塑性結合部品の製造時には、前記圧入工程で、外周縁端部12bの歯形凸部14及び歯溝凹部15で圧入進行側に押し流される内側円筒部23の材料の塑性流動により、第1分割ダイス34の上面及び外周縁端部12bの下端面12dに沿って水平方向に伸びる棚部24の先端部24cを係合凹部16の奥方まで到達させ、該先端部24cと係合凹部16とを凹凸係合させた。
【0087】
これにより、前記凸条部形成工程では、凸型パンチ38の押圧突部38aで棚部24を押圧して形成凸条部26を形成する際に、スプリングバッグにより棚部24の先端部24cが外周縁端部12bの下端面12dから離れる方向に変形するスプリングバックを防止することができた。
【0088】
したがって、本実施形態によれば、凸条部形成工程で、スプリングバックにより棚部24の先端部24cが下端面12dから離れる方向に変形することがなく、棚部24の先端部24cと下端面12dとの間に隙間が生じたり、あるいは溝状凹部13と形成凸条部26との圧接力が低下したりすることによって気密性や液密性が低下することを防止することが可能となる。
【0089】
その他の作用効果は、前記第1実施形態と同様である。
【0090】
(第3実施形態)
この実施形態は、図11に示されるように、凸条部形成工程で、棚部24の先端部24cの下面を環状の分割押さえ型40で支持し、必要に応じて、外周縁端部12bの下端面12dに対して棚部24の先端部24cを分割押さえ型40で押さえつつ、前記凸型パンチ38で棚部24を押圧して前記形成凸条部26を形成した。
【0091】
したがって、この実施形態によれば、凸条部形成工程で、棚部24の先端部24cを分割押さえ型40で外周縁端部12bの下端面12dに押さえつつ凸型パンチ38で棚部24を押圧して形成凸条部26を形成することから、前記第2実施形態と同様、棚部24の先端部24cがスプリングバックにより下端面12dから離れる方向に変形することを防止することができ、スプリングバックにより気密性や液密性が低下することを防止することが可能となる。
【0092】
その他の構成及び作用効果は、前記第1実施形態と同様である。
【0093】
(第4実施形態)
この実施形態の塑性結合部品では、図12に示されるように、外周縁端部12bの下端面12dに設けられた溝状凹部13が、前記凸条部形成工程で、該溝状凹部13内に押し込まれた棚部24の材料を該溝状凹部13の両内側面13b、13b方向に塑性流動させることにより、各該内側面13b、13bに対する形成凸条部26の圧接力を高めうる材料案内部としての断面三角突部17を底面13cに有している。
【0094】
この断面三角突部17は底面13cの幅方向中央部から隆起するように設けられ、一対の傾斜外面17a、17aを有する断面二等辺三角形状をなしている。
そして、断面三角突部17は、溝状凹部13と同様、円環状に連続して延びており、溝状凹部13の全周にわたって設けられている。
【0095】
この実施形態によれば、前記凸条部形成工程で、前記凸型パンチ38で溝状凹部13内に押し込まれた棚部24の材料を断面三角突部17の各傾斜外面17a、17aで案内しつつ溝状凹部13の各内側面13b、13b方向に塑性流動させて各該内側面13b、13bに押し付けることにより、形成凸条部26の各該内側面13b、13bに対する圧接力を高めることができる。このため、圧接力が高められた溝状凹部13の両内側面13b、13bと形成凸条部26の両外側面との間において、気密性や液密性をより向上させることができる。
【0096】
その他の構成及び作用効果は、前記第1実施形態と同様である。
【0097】
(第5実施形態)
この実施形態の塑性結合部品は、図13に示されるように、材料案内部の断面形状を部分円に変更したものである。
【0098】
この材料案内部としての断面部分円突部18は、溝状凹部13の底面13cの幅方向中央部から隆起するように設けられ、円弧外面18aを有する断面略半円形状をなしている。そして、断面部分円突部18は、溝状凹部13と同様、円環状に連続して延びており、溝状凹部13の全周にわたって設けられている。
【0099】
この実施形態によれば、前記凸条部形成工程で、前記凸型パンチ38で溝状凹部13内に押し込まれた棚部24の材料を断面部分円突部18の円弧外面18aで案内しつつ溝状凹部13の各内側面13b、13b方向に塑性流動させて各該内側面13b、13bに押し付けることにより、形成凸条部26の各該内側面13b、13bに対する圧接力を高めることができる。このため、圧接力が高められた溝状凹部13の両内側面13b、13bと形成凸条部26の両外側面との間において、気密性や液密性をより向上させることができる。
【0100】
その他の構成及び作用効果は、前記第1実施形態と同様である。
【0101】
(第6実施形態)
この実施形態の塑性結合部品は、図14に示されるように、溝状凹部13の底面全体を傾斜させた傾斜底面13dにより材料案内部を構成したものである。
【0102】
この材料案内部としての傾斜底面13dは、一方(図14の右側)の内側面13bから他方(図14の左側)の内側面13bに向かって徐々に溝状凹部13の深さが深くなるように傾斜している。また、溝状凹部13と同様、円環状に連続して延びており、溝状凹部13の全周にわたって設けられている。
【0103】
この実施形態によれば、前記凸条部形成工程で、前記凸型パンチ38で溝状凹部13内に押し込まれた棚部24の材料を傾斜底面13dで案内しつつ溝状凹部13の上記他方の内側面13b(溝状凹部13の深さが深くなる方の内側面13b)方向に塑性流動させて該内側面13bに押し付けることにより、形成凸条部26の該内側面13bに対する圧接力を高めることができる。このため、圧接力が高められた溝状凹部13の該内側面13bと形成凸条部26の外側面との間において、気密性や液密性をより向上させることができる。
【0104】
その他の構成及び作用効果は、前記第1実施形態と同様である。
【0105】
(第7実施形態)
この実施形態の塑性結合部品は、図15に示されるように、外周縁端部12bの溝状凹部13が一対の抜け阻止用凹部19、19を内壁面に有する一方、棚部24の形成凸条部26が各該抜け阻止用凹部19、19と凹凸係合することにより溝状凹部13から形成凸条部26が抜け出ることを阻止しうる抜け阻止用凸部(図示せず)を外面に一体に有している。
【0106】
溝状凹部13の抜け阻止用凹部19、19は、溝状凹部13の底面13cから各開口端縁13a、13aに向かって溝状凹部13の幅が徐々に狭くなるようなテーパ内側面13e、13eにより両内側面を構成することにより、溝状凹部13の両内側面の底面13c側に形成されている。
【0107】
こうして溝状凹部13の両内側面をテーパ内側面13e、13eとすることにより、開口端縁13a、13aの開口幅よりも幅の広い幅広空間部13fを開口端縁13a、13aの奥側(底面13c側)に形成する抜け阻止用凹部19、19を予め設けておくことにより、前記凸条部形成工程では、前記凸型パンチ38で溝状凹部13内に押し込まれた棚部24の材料を上記幅広空間部13fまで塑性流動させて、抜け阻止用凹部19、19と凹凸係合する抜け阻止用凸部を形成凸条部26の外面に一体に形成することができる。
【0108】
したがって、この実施形態によれば、溝状凹部13の抜け阻止用凹部19、19と形成凸条部26の抜け阻止用凸部との凹凸係合により、溝状凹部13から形成凸条部26が抜け出ることを阻止することができる。したがって、圧入の進退方向であって溝状凹部13から形成凸条部26が抜け出る方向に、シャフト1に対してハブ2が相対移動することをより確実に規制することができる。
【0109】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明に係る塑性結合部品によれば、第1結合部に設けられた溝状凹部と、第2結合部の棚部に形成された形成凸条部との凹凸係合により、該溝状凹部及び該形成凸条部間で気体や液体が流通することを確実に阻止することができる。
【0110】
したがって、この塑性結合部品によれば、特に高圧となるような状況下で使用された場合であっても、両部材間の気密性や液密性をより確実に確保することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1実施形態に係り、シャフトとハブとを結合した状態を示す断面図である。
【図2】第1実施形態に係り、シャフトとハブとの結合構造を示す要部断面図である。
【図3】第1実施形態に係り、歯形凸部等の形状を示す図1のA矢視部分平面図である。
【図4】第1実施形態に係り、棚部等の形状を示す図1のB矢視部分底面図である。
【図5】第1実施形態に係り、セレーション成形工程を説明する要部断面図である。
【図6】第1実施形態に係り、圧入工程を説明する断面図である。
【図7】第1実施形態に係り、凸条部形成工程を説明する断面図である。
【図8】第1実施形態に係り、凸条部形成工程を説明する要部拡大断面図である。
【図9】第1実施形態に係り、かしめ加工工程を説明する断面図である。
【図10】第2実施形態に係り、凸条部形成工程を説明する要部拡大断面図である。
【図11】第3実施形態に係り、凸条部形成工程を説明する要部拡大断面図である。
【図12】第4実施形態に係り、溝状凹部の形状を示す要部拡大断面図である。
【図13】第5実施形態に係り、溝状凹部の形状を示す要部拡大断面図である。
【図14】第6実施形態に係り、溝状凹部の形状を示す要部拡大断面図である。
【図15】第7実施形態に係り、溝状凹部の形状を示す要部拡大断面図である。
【図16】従来例に係り、シャフトとハブとを結合した状態を示す断面図である。
【図17】従来例に係り、歯形凸部等の形状を示す要部平面図である。
【符号の説明】
1…シャフト(第1部材) 2…ハブ(第2部材)
12b…外周縁端部(第1結合部)
12c…外周端面(第1結合面)
13…溝状凹部 13d…傾斜底面(材料案内部)
14…歯形凸部 15…歯溝凹部
16…係合凹部 17…断面三角突部(材料案内部)
18…断面部分円凸部(材料案内部)
19…抜け阻止用凹部 23…内側円筒部(第2結合部)
23a…内周面(第2結合面) 24…棚部
25…かしめ加工部 26…形成凸条部
28…形成歯溝凹部 29…形成歯形凸部
40…分割押さえ型
【発明の属する技術分野】
本発明は塑性結合部品及びその製造方法に関し、詳しくは、第1部材の第1結合部を該第1部材よりも硬度の低い第2部材よりなる第2結合部に食い込ませながら該第2結合部に対して該第1結合部を相対的に押し込んで圧入することにより両部材が一体的に塑性結合された塑性結合部品及びその製造方法に関する。本発明に係る塑性結合部品は、例えば、車両用オートマチック部品のドラムやハブ等をシャフトに結合したものに好適に利用することができる。
【0002】
【従来の技術】
自動車用オートマチック部品としてのドラムやハブは、シャフトに対して一体的に結合されている。かかるドラムやハブとシャフトとの結合には、電子ビーム溶接やレーザ溶接等が利用されている。
【0003】
しかし、電子ビーム溶接やレーザ溶接を利用して2つの部材を結合する場合、電子ビームやレーザを発生させるべく、特殊な溶接装置の使用や多大な電力消費が必要となり、コスト高となる。
【0004】
そこで、プレス機械等の使用のみで足り、コスト面で有利な圧入及びかしめ加工を利用して2つの部材を一体的に塑性結合した塑性結合部品が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
この塑性結合部品は、図16に示されるように、外周縁端部(第1結合部)90を有するシャフト(第1部材)91と、このシャフト91よりも硬度の低い材料よりなり、円筒部(第2結合部)92を有するハブ(第2部材)93とからなり、以下のように製造される。まず、ハブ93の円筒部92内にシャフト91の外周縁端部90を圧入する。このとき、外周縁端部90を円筒部92に食い込ませながら押し込んで圧入することにより、該外周縁端部90で圧入進行側に押し流される円筒部92の材料の塑性流動により円筒部92の内周面(第2結合面)に棚部94を一体に形成する。そして、パンチ等で円筒部92の内周側上端面を押圧して押し潰すことにより、外周縁端部90の圧入後退側における円筒部92の内周面にかしめ加工を施してかしめ加工部95を形成する。
【0006】
こうして、外周縁端部90が円筒部92に圧入されるとともに、円筒部92の内周面に形成された棚部94及びかしめ加工部95間で外周縁端部90が軸方向(圧入の進退方向)に挟持されることにより、シャフト91とハブ93とは軸方向における相対移動が確実に規制される。
【0007】
また、この塑性結合部品では、シャフト91とハブ93との相対回転を規制すべく、外周縁端部90の外周側面(第1結合面)に、圧入の進退方向に延びる複数の歯形凸部96a及び歯溝凹部96bよりなる噛み合い係合部(セレーション部)96が予め一体に設けられている(図17参照)。そして、噛み合い係合部96のうちの各歯形凸部96aのみを円筒部92に食い込ませながら、円筒部92の上端から外周縁端部90を押し込んで圧入することにより、円筒部92の内周面を各歯形凸部96a及び各歯溝凹部96bと対応するように塑性変形させて各歯形凸部96a及び各歯溝凹部96bと噛み合い係合する形成歯溝凹部97a及び形成歯形凸部97bよりなる噛み合い被係合部97を該内周面に一体に形成している。したがって、互いに噛み合い係合する噛み合い係合部96及び噛み合い被係合部97により、シャフト91とハブ93との相対回転を確実に規制することができる。
【0008】
【特許文献1】
特開2002−126837号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来の塑性結合部品では、噛み合い係合部96のうち歯形凸部96aのみを円筒部92に食い込ませるように圧入していることから、気密性や液密性に欠けるという問題がある。
【0010】
すなわち、噛み合い係合部96のうち歯形凸部96aのみを円筒部92に食い込ませるように圧入すると、噛み合い係合部96の歯溝凹部96bと、この歯溝凹部96b内に入り込むように形成された噛み合い被係合部97の形成歯形凸部97bとの間に、圧入の進退方向に沿って全体に延びる隙間Sが形成される。そうすると、この隙間Sを介して気体や液体が圧入の進退方向に流通することとなり、シャフト91及びハブ93間で気密性や液密性に欠け、例えば油漏れの問題が発生する。
【0011】
なお、仮に、歯形凸部96a及び歯溝凹部96bの双方、すなわち噛み合い係合部96の全体を円筒部92に食い込ませながら圧入すれば、歯溝凹部96bと形成歯形凸部97bとの間に形成される上記隙間Sを無くすことができるので、歯形凸部96aのみを食い込ませる場合よりも気密性や液密性を向上させることが可能となる。
【0012】
しかしながら、歯形凸部96a及び歯溝凹部96bの双方を円筒部92に食い込ませながら圧入する場合は、極めて大きな圧入荷重が必要となり、また、材料の組合せによっては圧入すること自体が不可能となることから、圧入容易性や圧入可能性を考慮すれば、円筒部92の内周面に歯溝凹部96bを大きく(大きな圧入代で)食い込ませることには限界がある。このため、歯形凸部96a及び歯溝凹部96bの双方を円筒部92に食い込ませながら圧入する場合であっても、歯溝凹部96bと形成歯形凸部97bとの間における気密性や液密性を向上させることには限界がある。一方、円筒部92の内周面に一体に形成される上記棚部94と外周縁端部90との間においても、微少隙間を完全に無くすことは困難である。したがって、特に高圧となるような状況下で使用された場合に、棚部94と外周縁端部90との間の微少隙間を介して、歯溝凹部96bと形成歯形凸部97bとの間に気体や液体が入り込んで流通するおそれがある。
【0013】
また、上記したような問題は、外周縁端部90の外周側面に歯形凸部96a及び歯溝凹部96bよりなる噛み合い係合部96を予め設けない場合においても同様に発生する。すなわち、歯形凸部及び歯溝凹部が設けられていない単純な円周面同士を圧入する場合は、圧入容易性や圧入可能性の観点より、円筒部92の内周面に外周縁端部90を大きく(大きな圧入代で)食い込ませることが困難であることから、円筒部92と外周縁端部90との間における気密性や液密性を向上させることは、歯形凸部96a及び歯溝凹部96bの双方を食い込ませる場合と同様に困難となる。
【0014】
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、第1部材の第1結合部を該第1部材よりも硬度の低い材料よりなる第2部材の第2結合部に食い込ませながら該第2結合部に対して該第1結合部を相対的に押し込んで圧入することにより両部材が一体的に塑性結合された塑性結合部品において、両部材間の気密性や液密性をより確実に確保することを解決すべき技術課題とするものである。
【0015】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決する本発明の塑性結合部品は、第1結合面をもつ第1結合部を有する第1部材と、該第1部材よりも硬度の低い材料よりなり、第2結合面をもつ第2結合部を有する第2部材とからなり、該第1結合部を該第2結合部に食い込ませながら該第2結合部に対して該第1結合部を相対的に押し込んで圧入することにより該第1結合面と該第2結合面とが対面した状態で両部材が一体的に塑性結合された塑性結合部品であって、上記第1結合部は上記第1結合面と略直交する第1端面に設けられた溝状凹部をもち、上記第2結合部は、圧入時に上記第1結合部で圧入進行側に押し流される該第2結合部の材料の塑性流動により上記第2結合面に一体に形成され、上記第1端面に当接された棚部をもち、上記棚部は、凸型パンチで該棚部を押圧して該棚部の材料を上記溝状凹部内に押し込み該棚部を該溝状凹部に対応させて塑性変形させることにより該棚部に一体に形成され、該溝状凹部と圧接状態を維持しつつ凹凸係合された形成凸条部をもっていることを特徴とするものである。
【0016】
この塑性結合部品では、第1結合部の第1結合面と略直交する第1端面に、第2結合部の第2結合面に一体に形成された棚部が当接している。この第1端面と棚部との当接により、圧入の進退方向であって該棚部に対して該第1端面が押し付けられる方向に、第2部材に対して第1部材が相対移動することを確実に規制することができる。
【0017】
また、第1部材の上記第1端面に溝状凹部が設けられる一方、該溝状凹部と圧接状態(溝状凹部に対して圧力をかけながら当接している状態)を維持しつつ凹凸係合された形成凸条部が第2部材の上記棚部に一体に形成されている。このため、該溝状凹部及び該形成凸条部間で気体や液体が流通することを確実に阻止することができる。したがって、この塑性結合部品によれば、特に高圧となるような状況下で使用された場合であっても、両部材間の気密性や液密性をより確実に確保することが可能となる。
【0018】
ここに、上記溝状凹部の断面(溝状凹部が延びる方向に対して直角な断面)形状は、特に限定されるものではなく、例えば単純な矩形状や半円形状としてもよいし、後述するように溝状凹部の開口端縁が角状とされたもの、材料案内部や抜け阻止用凹部が形成されたもの等としてもよい。
【0019】
また、溝状凹部の大きさも特に限定されず、適宜設定可能である。具体的には、溝状凹部の幅を1〜5mm程度とし、溝状凹部の深さを1〜5mm程度とすることができる。
【0020】
好適な態様において、前記第1結合部は、前記第1結合面に一体に設けられ圧入の進退方向に歯すじが延びる複数の歯形凸部及び歯溝凹部をもつ一方、前記第2結合部は、圧入時に前記第2結合面が各該歯形凸部及び各該歯溝凹部と対応して塑性変形することにより該第2結合面に一体に形成され、各該歯形凸部及び各該歯溝凹部と隙間無く噛み合い係合された形成歯溝凹部及び形成歯形凸部をもっている。
【0021】
この態様によれば、第1結合面に設けられた歯形凸部及び歯溝凹部と、第2結合面に形成された形成歯溝凹部及び形成歯形凸部とが隙間無く噛み合い係合することにより、第1部材と第2部材との間で、圧入の進退方向に略直交する方向における結合強度を高めることができ、該略直交方向における第1部材及び第2部材間の相対移動を確実に規制することが可能となる。また、これら歯形凸部及び歯溝凹部と形成歯溝凹部及び形成歯形凸部とが隙間無く噛み合い係合していることから、歯形凸部及び歯溝凹部と形成歯溝凹部及び形成歯形凸部との間において、隙間がない分だけ、気密性や液密性を向上させるのに有利となる。
【0022】
好適な態様において、前記第1結合面及び前記第2結合面のうちの一方は円周外面よりなる一方、他方は円周内面よりなり、前記棚部、前記溝状凹部及び前記形成凸条部は円環状に延びている。
【0023】
この態様において、上記歯形凸部及び歯溝凹部が第1結合面に設けられるとともに、この歯形凸部及び歯溝凹部と隙間無く噛み合い係合する形成歯溝凹部及び形成歯形凸部が第2結合面に形成されていれば、これら歯形凸部及び歯溝凹部と形成歯溝凹部及び形成歯形凸部との噛み合い係合により、第1部材及び第2部材間における相対回転を確実に規制することが可能となる。
【0024】
好適な態様において、前記溝状凹部は、該溝状凹部内に押し込まれた該棚部の材料を該溝状凹部の側面方向に塑性流動させることにより、該側面に対する該形成凸条部の圧接力を高めうる材料案内部を内壁面に有している。
【0025】
この態様によれば、溝状凹部の側面に対する形成凸条部の圧接力が材料案内部により高められているので、圧接力が高められた溝状凹部の側面と形成凸条部との間において、気密性や液密性をより向上させることができる。
【0026】
ここに、上記材料案内部の形状、位置、大きさや範囲等は、溝状凹部内に押し込まれた該棚部の材料を該溝状凹部の側面方向に塑性流動させることのできるものであれば特に限定されない。例えば、溝状凹部の底面から隆起するように設けられた断面三角突部や断面部分円突部により材料案内部を構成したり、あるいは底面の少なくとも一部を傾斜させた傾斜底面により材料案内部を構成したりすることができる。
【0027】
好適な態様において、前記溝状凹部は抜け阻止用凹部を内壁面に有する一方、前記形成凸条部は該抜け阻止用凹部と凹凸係合することにより該溝状凹部から該形成凸条部が抜け出ることを阻止しうる抜け阻止用凸部を外面に一体に有している。
【0028】
この態様によれば、溝状凹部の抜け阻止用凹部と形成凸条部の抜け阻止用凸部との凹凸係合により、溝状凹部から形成凸条部が抜け出ることを阻止することができる。したがって、圧入の進退方向であって溝状凹部から形成凸条部が抜け出る方向(第1端面から棚部が離れる方向)に、第1部材に対して第2部材が相対移動することをより確実に規制することができる。
【0029】
ここに、上記抜け阻止用凹部及び抜け阻止用凸部の形成や大きさ等は特に限定されない。例えば、溝状凹部の底面から開口端縁に向かって溝状凹部の幅が徐々に狭くなるようなテーパ面や湾曲面により両側面を構成することにより、溝状凹部の両側面の底面側に抜け阻止用凹部を形成したり、あるいは溝状凹部の両側面に設けられた凹状段部により抜け阻止用凹部を形成したりすることができる。
【0030】
好適な態様において、前記溝状凹部の開口端縁は角状とされている。
【0031】
この態様によれば、溝状凹部の開口端縁とこの開口端縁に当接する棚部との間において、開口端縁が角状とされている分だけ圧接力が増大することから、気密性や液密性をより向上させることができる。
【0032】
好適な態様において、前記第1結合部は前記第1端面により内壁面の一部が構成された係合凹部を有し、前記棚部の先端部と該係合凹部とが係合している。
【0033】
この態様によれば、第1端面により内壁面の一部が構成された係合凹部と棚部の先端部との係合により、圧入の進退方向であって溝状凹部から形成凸条部が抜け出る方向(第1端面から棚部が離れる方向)に、第1部材に対して第2部材が相対移動することをより確実に規制することができる。また、前記凸型パンチで棚部を押圧して形成凸条部を形成する際に、スプリングバッグにより棚部の先端側が第1端面から離れる方向に変形するおそれがあるが、棚部の先端部と係合凹部との係合により、かかるスプリングバックを防止することができる。したがって、棚部の先端部が第1端面から離れる方向に変形することにより、棚部の先端部と第1端面との間に隙間が生じたり、あるいは溝状凹部と形成凸条部との圧接力が低下したりすることによって気密性や液密性が低下することを防止することが可能となる。
【0034】
好適な態様において、前記第2結合部は、前記第2結合面に一体に形成され、前記第1結合面と略直交し前記第1端面と反対側の前記第1結合部の第2端面に当接して前記棚部と共に該第1結合部を挟持可能なかしめ加工部をもっている。
【0035】
この態様によれば、第1結合部の第2端面と第2結合部のかしめ加工部との当接により、圧入の進退方向であって該第2端面に対して該かしめ加工部が押し付けられる方向に、第1部材に対して第2部材が相対移動することを確実に規制することができる。したがって、第2結合部の棚部及びかしめ加工部間で第1結合部を圧入の進退方向に挟持することができ、第1及び第2部材間における圧縮進退方向の相対移動を確実に規制することが可能となる。
【0036】
上記課題を解決する本発明の塑性結合部品の製造方法は、第1結合面をもち該第1結合面と略直交する圧入進行側の第1端面に溝状凹部が予め設けられた第1結合部を有する第1部材と、該第1部材よりも硬度の低い材料よりなり、第2結合面をもつ該2結合部を有する第2部材とからなり、該第1結合面と該第2結合面とが対面した状態で両部材が圧入により一体的に塑性結合された塑性結合部品の製造方法であって、上記第1結合部を上記第2結合部に食い込ませながら該第2結合部に対して該第1結合部を相対的に押し込んで圧入することにより、該第1結合部で圧入進行側に押し流される該第2結合部の材料の塑性流動により上記第1端面に当接する棚部を該第2結合面に一体に形成する圧入工程と、凸型パンチで上記棚部を押圧して該棚部の材料を上記溝状凹部内に押し込み該棚部を該溝状凹部に対応させて塑性変形させることにより、該溝状凹部と圧接状態を維持しつつ凹凸係合する形成凸条部を該棚部に一体に形成する凸条部形成工程とを順に実施することを特徴とするものである。
【0037】
この塑性結合部品の製造方法では、圧入工程で、第1結合部が第2結合部に食い込むように圧入することにより、第1結合部で圧入進行側に押し流される第2結合部の材料の塑性流動により第1結合部の第1端面に当接する棚部を第2結合面に一体に形成することができる。こうして形成された第2結合部の棚部により、第2部材に対して第1部材が圧入進行側に相対移動することを確実に規制することができる。
【0038】
また、第1部材の第1端面には溝状凹部が設けられる一方、凸条部形成工程では、凸型パンチで棚部を押圧して該棚部を該溝状凹部に対応させて塑性変形させることにより、該溝状凹部と圧接状態を維持しつつ凹凸係合する形成凸条部を該棚部に一体に形成する。こうして形成された形成凸条部と溝状凹部とが圧接状態を維持しつつ凹凸係合することにより、溝状凹部及び形成凸条部間で気体や液体が流通することを確実に阻止することができる。
【0039】
好適な態様において、前記第1結合面には、圧入の進退方向に歯すじが延びる複数の歯形凸部及び歯溝凹部が予め設けられており、前記圧入工程では、各上記歯形凸部及び各上記歯溝凹部の双方が前記第2結合部に食い込むように圧入することにより、前記第2結合面を各該歯形凸部及び各該歯溝凹部と対応するように塑性変形させて各該歯形凸部及び各該歯溝凹部と隙間無く噛み合い係合する形成歯溝凹部及び形成歯形凸部を該第2結合面に一体に形成するとともに、各該歯形凸部及び各該歯溝凹部で圧入進行側に押し流される該第2結合部の材料の塑性流動により前記棚部を形成する。
【0040】
好適な態様において、前記溝状凹部の内壁面には、該溝状凹部内に押し込まれた前記棚部の材料を該溝状凹部の側面方向に塑性流動させる材料案内部が予め設けられており、前記凸条部形成工程では、前記凸型パンチで上記溝状凹部内に押し込まれた上記棚部の材料を上記材料案内部で案内しつつ該溝状凹部の側面方向に塑性流動させて該側面に押し付けることにより、前記形成凸条部の該側面に対する圧接力を高める。
【0041】
好適な態様において、前記溝状凹部の内壁面には、開口端縁の開口幅よりも幅の広い幅広空間部を開口端縁の奥側に形成する抜け阻止用凹部が予め設けられており、前記凸条部形成工程では、前記凸型パンチで上記溝状凹部内に押し込まれた上記棚部の材料を上記幅広空間部まで塑性流動させることにより、上記抜け阻止用凹部と凹凸係合することにより該溝状凹部から前記形成凸条部が抜け出ることを阻止しうる抜け阻止用凸部を該形成凸条部の外面に一体に形成する。
【0042】
好適な態様において、前記第1結合部には、前記第1端面により内壁面の一部が構成された係合凹部が予め設けられており、前記圧入工程では、上記第1結合部で圧入進行側に押し流される前記第2結合部の材料の塑性流動により上記係合凹部と先端部が係合する前記棚部を前記第2結合面に一体に形成する。
【0043】
好適な態様において、前記凸条部形成工程では、前記棚部の先端部が前記第1端面から離れないように該先端部を分割型で支持しつつ、前記凸型パンチで該棚部を押圧して前記形成凸条部を形成する。
【0044】
この態様によれば、凸条部形成工程で、棚部の先端部を分割型で支持しつつ凸型パンチで棚部を押圧して形成凸条部を形成することから、棚部の先端部がスプリングバックにより第1端面から離れる方向に変形することを防止することができる。したがって、棚部の先端部が第1端面から離れる方向に変形することにより、棚部の先端部と第1端面との間に隙間が生じたり、あるいは溝状凹部と形成凸条部との圧接力が低下したりすることによって気密性や液密性が低下することを防止することが可能となる。
【0045】
好適な態様において、前記凸条部形成工程の後に、圧入後退側における前記第2結合部にかしめ加工を施して、前記第1結合面と略直交する圧入後退側の前記第1結合部の第2端面に当接して前記棚部と共に該第1結合部を圧入進退方向に挟持可能なかしめ加工部を前記第2結合面に一体に形成するかしめ工程を実施する。
【0046】
なお、上記第1部材及び上記第2部材の形状は特に限定されず、前述のとおり第1結合面及び第2結合面のうちの一方が円周外面よりなる一方、他方が円周内面よりなるもの、例えば第1部材及び第2部材のうちの一方が円筒部を有する一方、他方が該円筒部の内径よりも若干大きな外径をもつ外周縁端部を有する形状としてもよいし、角材、板材や長尺材等としてもよい。
【0047】
また、第2結合部の第2結合面に一体に形成される上記棚部の大きさは、第1結合部と第2結合部との重なり幅(圧入代)や第2結合部により第2結合面が押し込まれる長さ(圧入長さ)によって適宜設定可能であり、圧入進退方向(プレス方向)における結合力を適切に確保しうるように該棚部の大きさを設定することができる。具体的には、該棚部は、第2結合面からの突出長さ(第1端面と当接して重なる部分の長さ)が1.0〜3.0mm程度となり、圧入進退方向(プレス方向)における厚さが0.2〜0.6mm程度となるような大きさとすることが好ましい。
【0048】
同様に、上記かしめ加工部の大きさも、圧入進退方向(プレス方向)における結合力を適切に確保しうるように設定することができる。具体的には、該かしめ加工部は、第2結合面からの突出長さ(第2端面と当接して重なる部分の長さ)が0.8〜1.2mm程度となり、圧入進退方向(プレス方向)における厚さが0.5〜1.5mm程度となるような大きさとすることが好ましい。
【0049】
また、第1結合部の第1結合面に歯形凸部及び歯溝凹部を予め設けておく場合、この歯形凸部及び歯溝凹部は、例えばプレス加工、切削加工、放電加工、レーザー切断加工や研磨加工により形成することができる。この際、歯形凸部の歯丈の高いものとしておくことにより、第1部材が第2部材が圧入進退方向に対して略直行する方向に相対移動することをより確実に規制することが可能となる。具体的には、この歯形凸部の全歯丈は0.9〜1.5mm程度とすることが好ましい。
【0050】
さらに、第1部材の硬度は、ビッカース硬さで、450Hv以上とする一方、第2部材の硬度は80〜150Hv程度とし、かつ、第1部材の硬度を第2部材の硬度の3倍以上とすることが好ましい。
【0051】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ具体的に説明する。
【0052】
この実施形態は、自動車用オートマチック部品としてのシャフト及びハブよりなる塑性結合部品に本発明を適用したものである。
【0053】
(第1実施形態)
シャフト1とハブ2とが一体的に塑性結合された、シャフト1及びハブ2よりなる2部材の塑性結合部品を図1に示す。図2はこの塑性結合部品の要部断面図であり、図3は図1のA矢視部分平面図、図4は図1のB矢視部分底面図である。
【0054】
シャフト1は、軸直角断面形状が円形のパイプ状(中空軸状)をなし、軸部11と、軸部11の一端から遠心方向に水平に階段状に延出して、内周側の第1水平部12a及び外周側の第2水平部としての外周縁端部12bをもつ鍔部12とを一体に有している。このシャフト1は本発明に係る第1部材を構成し、また、シャフト1の外周縁端部12bは本発明に係る第1結合部を構成する。そして、シャフト1の外周縁端部12bの外周端面(円周外面)12cが本発明に係る第1結合面を構成する。
【0055】
ハブ2は、外側円筒部21と、この外側円筒部21の下端から求心方向に一体に略水平に延出する水平フランジ部22と、この水平フランジ部22の求心側端縁から垂直に上方に向かって一体に延出する内側円筒部23とから構成されている。このハブ2は本発明に係る第2部材を構成し、また、ハブの内側円筒部23は本発明に係る第2結合部を構成する。そして、ハブ2の内側円筒部23の内周面(円周内面)23aが本発明に係る第2結合面を構成する。なお、外側円筒部21及び内側円筒部23は同軸をなし、外側円筒部21の方が内側円筒部23よりも軸方向長さが長くされている。
【0056】
これらのシャフト1及びハブ2は、後述する製造方法で説明するように、外周縁端部12bを内側円筒部23に食い込ませながら該内側円筒部23に対して該外周縁端部12bを軸方向に相対的に押し込んで圧入することにより外周端面12cと内周面23aとが対面した状態で一体的に塑性結合されている。
【0057】
また、図2に示されるように、シャフト1の外周縁端部12bは、外周端面12cと直交する下端面(第1端面)12dに凹設され、円環状に連続して延びる断面コの字状の溝状凹部13を有している。そして、この溝状凹部13の開口端縁13aは直角状とされている。
【0058】
一方、外周縁端部12bの下側(圧入の進退方向における圧入進行側)における内側円筒部23の内周面23aには、該外周縁端部12bの下端面12dに当接された棚部24が後述する圧入工程時に一体に形成されるとともに、外周縁端部12bの上側(圧入の進退方向における圧入後退側)における内側円筒部23の内周面23aには、外周端面12cと直交する上端面(第2端面)12eに当接されたかしめ加工部25が後述するかしめ加工工程時に一体に形成されており、該棚部24及び該かしめ加工部25間で該外周縁端部12bが軸方向(圧入進退方向)に挟持されている。
【0059】
上記棚部24及びかしめ加工部25は円環状に連続して延びている(図3及び図4参照)。また、棚部24は、後述する圧入工程で、外周縁端部12bの後述する歯形凸部14で内側円筒部23の材料が圧入進行側へ押し流されることにより該歯形凸部14の圧入進行側に形成された複数の肉厚棚部24aと、後述する歯溝凹部15で内側円筒部23の材料が圧入進行側へ押し流されることにより該歯溝凹部15の圧入進行側に形成され、肉厚棚部24よりも肉厚の薄い(高さの低い)複数の肉薄棚部24bとから構成されている。これら肉厚棚部24a及び肉薄棚部24bは周方向に交互に配設されている。
【0060】
そして、内側円筒部23の棚部24は、後述する凸条部形成工程で該棚部24の上端面に一体に形成され、円環状に連続して延びる形成凸条部26を有している。この形成凸条部26は溝状凹部13の断面形状に対応した外面形状を有しており、溝状凹部13と形成凸条部26とは全面で圧接状態を維持しつつ凹凸係合されている。なお、この棚部24の下端面には、後述する凸条部形成工程で形成凸条部26を形成する際に後述する凸型パンチが押し込まれることにより形成された円環状で断面コの字状のパンチ痕27が凹設されている。
【0061】
さらに、シャフト1の外周縁端部12bの外周端面12cには、軸方向(圧入進退方向)と平行に歯すじが延びる複数の歯形凸部14及び歯溝凹部15が予め設けられている。そして、ハブ2の内側円筒部23の内周面23aには、軸方向と平行に歯すじが延びる形成歯溝凹部28及び形成歯形凸部29が後述する圧入工程時に一体に形成され、シャフト1の歯形凸部14及び歯溝凹部15とハブ2の形成歯溝凹部28及び形成歯形凸部29とが隙間無く噛み合い係合している(図3参照)。シャフト1の外周縁端部12bに予め設けられた歯形凸部14及び歯溝凹部15は、後述するようにプレス加工によるもので、歯形凸部14の歯丈は高トルクに対応すべく1.2mmとされている。
【0062】
そして、上記シャフト1はビッカース硬さがHv800程度であるSCM420H(浸炭処理されたクロムモリブデン鋼)よりなり、上記ハブ2はビッカース硬さがHv100程度であるSPHD(熱間圧延鋼板)よりなる。また、上記棚部24は、内側円筒部23の内周面23aから求心方向に突出して外周縁端部12bと径方向に重なる部分の長さが3.0mmであり、軸方向における厚さが厚肉棚部24aの部分で2.5mm、薄肉棚部24bの部分で1.0mmである。
さらに、上記かしめ加工部25は、内側円筒部23の内周面23aから求心方向に突出して外周縁端部12bと径方向に重なる部分の長さが1.0mmであり、軸方向における厚さが1.0mmである。また、上記溝状凹部13及び形成凸条部26の径方向の幅は3.0mmであり、溝状凹部13の深さ及び形成凸条部26の高さは2.0mmである。
【0063】
また、シャフト1とハブ2とを結合する前の状態において、シャフト1の外周縁端部12bの歯形凸部14における外径及び歯溝凹部15における外径は、いずれもハブ2の内側円筒部23の内周面23aの内径よりも大きく設定されている。
【0064】
上記構成を有するシャフト1及びハブ2よりなる2部材の塑性結合部品は、以下に示すように塑性結合したものである。
【0065】
<準備工程>
まず、パイプ状素材からプレス加工等により軸部11の一端に鍔部12を一体に有するとともに、鍔部12の外周縁端部12bの下端面12dに円環状の溝状凹部13を有するシャフト1を所定形状に成形した。
【0066】
そして、溝状凹部13のエッジ部をピン角に切削加工して、この溝状凹部13の開口端縁13aを直角状とした。
【0067】
また、板状素材からプレス加工等により外側円筒部21、水平フランジ部22及び内側円筒部23を一体に有するハブ2を所定形状に成形した。
【0068】
<セレーション成形工程>
図5に示されるように、ダイス穴31aの内周面にセレーションとしての歯形凸部14及び歯溝凹部15を成形するための歯成形部31bが下方部に形成された第1ダイス31を準備した。なお、第1ダイス31のダイス穴31aの内径は、外周縁端部12bの外周端面12cの外径と略同一とされている。
【0069】
そして、シャフト1を第1ダイス31のダイス穴31a内にセットしてから、このシャフト1の軸部11の孔内に嵌合される中央凸部32aと、鍔部12の外周縁端部12bの上端面12eに当接される環状当接面32bとを有する第1パンチ32でシャフト1をダイス穴31a内の下方に押し込んで、第1ダイス31の歯成形部31bで外周縁端部12bの外周端面12cに歯形凸部14及び歯溝凹部15を成形した。
【0070】
<圧入工程>
次に、図6に示されるように、中心孔33aを有する下型33と、この中心孔33a内に昇降可能に配設され、ダイス穴34a及び段状部34bを有する環状の第1分割ダイス34とを準備した。なお、第1分割ダイス34のダイス穴34aの内径は、軸部11の外径と略同一とされている。
【0071】
そして、下型33上にハブ2をセットするとともに、このハブ2上にリング状押さえ型35をセットした(図6参照)。これにより、下型33及びリング状押さえ型35でハブ2の水平フランジ部22を挟持するとともに、リング状押さえ型35の内周面35aでハブ2の内側円筒部23の外周面を拘束した。なお、リング状押さえ型35で内側円筒部23を拘束するのは、圧入工程時、後述する凸条部形成行程時及びかしめ工程時における内側円筒部23の変形を防止するためである。
【0072】
そして、第1分割ダイス34のダイス穴34a内にシャフト1の軸部11をセットした。このとき、前述したように、シャフト1の外周縁端部12bの歯形凸部14における外径及び歯溝凹部15における外径は、いずれもハブ2の内側円筒部23の内周面23aの内径よりも大きく設定されていることから、シャフト1の外周縁端部12bは内側円筒部23の内周側上端面上に置かれるとともに、歯形凸部14及び歯溝凹部15はいずれも内側円筒部23上に位置している。
【0073】
そして、シャフト1を軸方向に第2パンチ36で上方から押し込んで下降させ、シャフト1の第1水平部12aの下端面を第1分割ダイス34の段状部34bに当接させて圧入工程を終了した。なお、圧入工程終了時には、シャフト1の鍔部12のうち内周側の第1水平部12aのみが第1分割ダイス34の段状部34bに当接し、外周側の第2水平部たる外周縁端部12bの下端面12dと第1分割ダイス34の上面との間に設けられた逃げ凹部内に前記棚部24が形成される。
【0074】
こうして、ハブ2の内側円筒部23内にシャフト1の外周縁端部12bを押し込んでシャフト1とハブ2とを塑性結合した。このとき、シャフト1の外周縁端部12bの歯形凸部14及び歯溝凹部15の双方が内側円筒部23の内周面23aに食い込みながら、内側円筒部23に対して外周縁端部12bが軸方向に押し込まれ、内側円筒部23の材料が歯形凸部14及び歯溝凹部15で圧入進行側に押し流されて塑性流動した。これにより、歯形凸部14及び歯溝凹部15と互いに隙間無く噛み合う形成歯溝凹部28及び形成歯形凸部29を内側円筒部23の内周面23aに形成する一方、各歯形凸部14の圧入進行側における内側円筒部23の内周面23aに肉厚棚部24aを形成するとともに、各歯溝凹部15の圧入進行側における内側円筒部23の内周面23aに肉薄棚部24bを形成した。
【0075】
<凸条部形成工程>
次に、図6に示される状態から上記第2パンチ36を上昇させるとともに上記第1分割ダイス34を下降させた後、図7に示されるように、押さえ型37をシャフト1の外周縁端部12bの上端面に当接させるとともに、上記下型33の中心孔33aに環状の凸型パンチ38を軸方向に昇降可能に配設した。この凸型パンチ38の上端面には、図8に示されるように、上記溝状凹部13の断面形状に対応する外面形状を有する押圧突部38aが一体に設けられている。この押圧突部38aは円環状に連続して延びており、溝状凹部13の幅と略同等の幅を有するとともに、溝状凹部13の深さよりも大きな高さを有している。
【0076】
そして、上記リング状押さえ型35でハブ2の水平フランジ部22を押さえるとともに押さえ型37でシャフト1の外周縁端部12bを押さえながら、凸型パンチ38を上昇させた。こうして、凸型パンチ38の押圧突部38aで上記棚部24の下端面を押圧して棚部24の材料を上記溝状凹部13内に押し込み棚部24を溝状凹部13に対応させて塑性変形させることにより、溝状凹部13と圧接状態を維持しつつ凹凸係合する形成凸条部26を棚部24の上端面に一体に形成した。
【0077】
なお、上記押さえ型37を別途用いることなく、上記第2パンチ36を図6に示される状態に維持して、第2パンチ36でシャフト1の外周縁端部12bを押さえながら、凸型パンチ37を上昇させてもよい。
【0078】
<かしめ加工工程>
最後に、凸型パンチ38を下降させた後、図9に示されるように、下型33の中心孔33a内に上記第1分割ダイス34を配設した。
【0079】
そして、第1分割ダイス34の段状部34bでシャフト1の第1水平部12aを支えるとともに上記リング状押さえ型35でハブ2の水平フランジ部22を押さえかつ内側円筒部23を拘束しながら、かしめ加工部25を成形するための環状凸部39aを下面の外周端部に有する第3パンチ39で、内側円筒部23の内周側上端面を押圧して押し潰した。これにより、シャフト1の外周縁端部12bの圧入後退側における内側円筒部23の内周面23aにかしめ加工を施してかしめ加工部25を形成した。
【0080】
こうして得られた塑性結合部品では、シャフト1とハブ2とは、シャフト1の外周縁端部12bがハブ2の内側円筒部23に圧入されるとともに、該外周縁端部12bが内側円筒部23の内周面23aに形成された棚部24及びかしめ加工部25間で軸方向に挟持されることにより、軸方向における相対移動が確実に規制されている。また、シャフト1とハブ2とは、外周縁端部12bが内側円筒部23に圧入されるとともに、外周縁端部12の歯形凸部14及び歯溝凹部15と内側円筒部23の形成歯溝凹部28及び形成歯形凸部29とが噛み合い係合されることにより、相対回転も確実に規制されている。したがって、このシャフト1及びハブ2よりなる塑性結合部品は、軸方向及び回転方向の荷重に十分耐えうるものとなる。
【0081】
また、外周縁端部12bの溝状凹部13と棚部24の形成凸条部26とが全面的に圧接状態を維持しつつ凹凸係合されており、しかも溝状凹部13の開口端縁13aが直角状とされて棚部24との圧接力が増大していることから、溝状凹部13及び形成凸条部26間で気体や液体が流通することを確実に阻止することができる。また、外周縁端部12の歯形凸部14及び歯溝凹部15と内側円筒部23の形成歯溝凹部28及び形成歯形凸部29とが隙間無く噛み合い係合していることから、歯形凸部14及び歯溝凹部15と形成歯溝凹部28及び形成歯形凸部29との間において、隙間がない分だけ、気密性や液密性を向上させるのに有利となる。
【0082】
したがって、この塑性結合部品によれば、特に高圧となるような状況下で使用された場合であっても、シャフト1及び歯部2間の気密性や液密性をより確実に確保することが可能となる。
【0083】
(第2実施形態)
この実施形態の塑性結合部品では、図10に示されるように、シャフト1の外周縁端部12bが、下端面12dにより上方内壁面が構成された係合凹部16を有しており、棚部24の先端部24cと該係合凹部16とが凹凸係合している。
【0084】
その他の構成は、前記第1実施形態と同様である。
【0085】
したがって、係合凹部16と棚部24の先端部24cとの係合により、圧入の進退方向であって溝状凹部13から形成凸条部26が抜け出る方向(下端面12dから棚部24が離れる方向)に、シャフト1に対してハブ2が相対移動することをより確実に規制することができる。
【0086】
そして、この塑性結合部品の製造時には、前記圧入工程で、外周縁端部12bの歯形凸部14及び歯溝凹部15で圧入進行側に押し流される内側円筒部23の材料の塑性流動により、第1分割ダイス34の上面及び外周縁端部12bの下端面12dに沿って水平方向に伸びる棚部24の先端部24cを係合凹部16の奥方まで到達させ、該先端部24cと係合凹部16とを凹凸係合させた。
【0087】
これにより、前記凸条部形成工程では、凸型パンチ38の押圧突部38aで棚部24を押圧して形成凸条部26を形成する際に、スプリングバッグにより棚部24の先端部24cが外周縁端部12bの下端面12dから離れる方向に変形するスプリングバックを防止することができた。
【0088】
したがって、本実施形態によれば、凸条部形成工程で、スプリングバックにより棚部24の先端部24cが下端面12dから離れる方向に変形することがなく、棚部24の先端部24cと下端面12dとの間に隙間が生じたり、あるいは溝状凹部13と形成凸条部26との圧接力が低下したりすることによって気密性や液密性が低下することを防止することが可能となる。
【0089】
その他の作用効果は、前記第1実施形態と同様である。
【0090】
(第3実施形態)
この実施形態は、図11に示されるように、凸条部形成工程で、棚部24の先端部24cの下面を環状の分割押さえ型40で支持し、必要に応じて、外周縁端部12bの下端面12dに対して棚部24の先端部24cを分割押さえ型40で押さえつつ、前記凸型パンチ38で棚部24を押圧して前記形成凸条部26を形成した。
【0091】
したがって、この実施形態によれば、凸条部形成工程で、棚部24の先端部24cを分割押さえ型40で外周縁端部12bの下端面12dに押さえつつ凸型パンチ38で棚部24を押圧して形成凸条部26を形成することから、前記第2実施形態と同様、棚部24の先端部24cがスプリングバックにより下端面12dから離れる方向に変形することを防止することができ、スプリングバックにより気密性や液密性が低下することを防止することが可能となる。
【0092】
その他の構成及び作用効果は、前記第1実施形態と同様である。
【0093】
(第4実施形態)
この実施形態の塑性結合部品では、図12に示されるように、外周縁端部12bの下端面12dに設けられた溝状凹部13が、前記凸条部形成工程で、該溝状凹部13内に押し込まれた棚部24の材料を該溝状凹部13の両内側面13b、13b方向に塑性流動させることにより、各該内側面13b、13bに対する形成凸条部26の圧接力を高めうる材料案内部としての断面三角突部17を底面13cに有している。
【0094】
この断面三角突部17は底面13cの幅方向中央部から隆起するように設けられ、一対の傾斜外面17a、17aを有する断面二等辺三角形状をなしている。
そして、断面三角突部17は、溝状凹部13と同様、円環状に連続して延びており、溝状凹部13の全周にわたって設けられている。
【0095】
この実施形態によれば、前記凸条部形成工程で、前記凸型パンチ38で溝状凹部13内に押し込まれた棚部24の材料を断面三角突部17の各傾斜外面17a、17aで案内しつつ溝状凹部13の各内側面13b、13b方向に塑性流動させて各該内側面13b、13bに押し付けることにより、形成凸条部26の各該内側面13b、13bに対する圧接力を高めることができる。このため、圧接力が高められた溝状凹部13の両内側面13b、13bと形成凸条部26の両外側面との間において、気密性や液密性をより向上させることができる。
【0096】
その他の構成及び作用効果は、前記第1実施形態と同様である。
【0097】
(第5実施形態)
この実施形態の塑性結合部品は、図13に示されるように、材料案内部の断面形状を部分円に変更したものである。
【0098】
この材料案内部としての断面部分円突部18は、溝状凹部13の底面13cの幅方向中央部から隆起するように設けられ、円弧外面18aを有する断面略半円形状をなしている。そして、断面部分円突部18は、溝状凹部13と同様、円環状に連続して延びており、溝状凹部13の全周にわたって設けられている。
【0099】
この実施形態によれば、前記凸条部形成工程で、前記凸型パンチ38で溝状凹部13内に押し込まれた棚部24の材料を断面部分円突部18の円弧外面18aで案内しつつ溝状凹部13の各内側面13b、13b方向に塑性流動させて各該内側面13b、13bに押し付けることにより、形成凸条部26の各該内側面13b、13bに対する圧接力を高めることができる。このため、圧接力が高められた溝状凹部13の両内側面13b、13bと形成凸条部26の両外側面との間において、気密性や液密性をより向上させることができる。
【0100】
その他の構成及び作用効果は、前記第1実施形態と同様である。
【0101】
(第6実施形態)
この実施形態の塑性結合部品は、図14に示されるように、溝状凹部13の底面全体を傾斜させた傾斜底面13dにより材料案内部を構成したものである。
【0102】
この材料案内部としての傾斜底面13dは、一方(図14の右側)の内側面13bから他方(図14の左側)の内側面13bに向かって徐々に溝状凹部13の深さが深くなるように傾斜している。また、溝状凹部13と同様、円環状に連続して延びており、溝状凹部13の全周にわたって設けられている。
【0103】
この実施形態によれば、前記凸条部形成工程で、前記凸型パンチ38で溝状凹部13内に押し込まれた棚部24の材料を傾斜底面13dで案内しつつ溝状凹部13の上記他方の内側面13b(溝状凹部13の深さが深くなる方の内側面13b)方向に塑性流動させて該内側面13bに押し付けることにより、形成凸条部26の該内側面13bに対する圧接力を高めることができる。このため、圧接力が高められた溝状凹部13の該内側面13bと形成凸条部26の外側面との間において、気密性や液密性をより向上させることができる。
【0104】
その他の構成及び作用効果は、前記第1実施形態と同様である。
【0105】
(第7実施形態)
この実施形態の塑性結合部品は、図15に示されるように、外周縁端部12bの溝状凹部13が一対の抜け阻止用凹部19、19を内壁面に有する一方、棚部24の形成凸条部26が各該抜け阻止用凹部19、19と凹凸係合することにより溝状凹部13から形成凸条部26が抜け出ることを阻止しうる抜け阻止用凸部(図示せず)を外面に一体に有している。
【0106】
溝状凹部13の抜け阻止用凹部19、19は、溝状凹部13の底面13cから各開口端縁13a、13aに向かって溝状凹部13の幅が徐々に狭くなるようなテーパ内側面13e、13eにより両内側面を構成することにより、溝状凹部13の両内側面の底面13c側に形成されている。
【0107】
こうして溝状凹部13の両内側面をテーパ内側面13e、13eとすることにより、開口端縁13a、13aの開口幅よりも幅の広い幅広空間部13fを開口端縁13a、13aの奥側(底面13c側)に形成する抜け阻止用凹部19、19を予め設けておくことにより、前記凸条部形成工程では、前記凸型パンチ38で溝状凹部13内に押し込まれた棚部24の材料を上記幅広空間部13fまで塑性流動させて、抜け阻止用凹部19、19と凹凸係合する抜け阻止用凸部を形成凸条部26の外面に一体に形成することができる。
【0108】
したがって、この実施形態によれば、溝状凹部13の抜け阻止用凹部19、19と形成凸条部26の抜け阻止用凸部との凹凸係合により、溝状凹部13から形成凸条部26が抜け出ることを阻止することができる。したがって、圧入の進退方向であって溝状凹部13から形成凸条部26が抜け出る方向に、シャフト1に対してハブ2が相対移動することをより確実に規制することができる。
【0109】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明に係る塑性結合部品によれば、第1結合部に設けられた溝状凹部と、第2結合部の棚部に形成された形成凸条部との凹凸係合により、該溝状凹部及び該形成凸条部間で気体や液体が流通することを確実に阻止することができる。
【0110】
したがって、この塑性結合部品によれば、特に高圧となるような状況下で使用された場合であっても、両部材間の気密性や液密性をより確実に確保することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1実施形態に係り、シャフトとハブとを結合した状態を示す断面図である。
【図2】第1実施形態に係り、シャフトとハブとの結合構造を示す要部断面図である。
【図3】第1実施形態に係り、歯形凸部等の形状を示す図1のA矢視部分平面図である。
【図4】第1実施形態に係り、棚部等の形状を示す図1のB矢視部分底面図である。
【図5】第1実施形態に係り、セレーション成形工程を説明する要部断面図である。
【図6】第1実施形態に係り、圧入工程を説明する断面図である。
【図7】第1実施形態に係り、凸条部形成工程を説明する断面図である。
【図8】第1実施形態に係り、凸条部形成工程を説明する要部拡大断面図である。
【図9】第1実施形態に係り、かしめ加工工程を説明する断面図である。
【図10】第2実施形態に係り、凸条部形成工程を説明する要部拡大断面図である。
【図11】第3実施形態に係り、凸条部形成工程を説明する要部拡大断面図である。
【図12】第4実施形態に係り、溝状凹部の形状を示す要部拡大断面図である。
【図13】第5実施形態に係り、溝状凹部の形状を示す要部拡大断面図である。
【図14】第6実施形態に係り、溝状凹部の形状を示す要部拡大断面図である。
【図15】第7実施形態に係り、溝状凹部の形状を示す要部拡大断面図である。
【図16】従来例に係り、シャフトとハブとを結合した状態を示す断面図である。
【図17】従来例に係り、歯形凸部等の形状を示す要部平面図である。
【符号の説明】
1…シャフト(第1部材) 2…ハブ(第2部材)
12b…外周縁端部(第1結合部)
12c…外周端面(第1結合面)
13…溝状凹部 13d…傾斜底面(材料案内部)
14…歯形凸部 15…歯溝凹部
16…係合凹部 17…断面三角突部(材料案内部)
18…断面部分円凸部(材料案内部)
19…抜け阻止用凹部 23…内側円筒部(第2結合部)
23a…内周面(第2結合面) 24…棚部
25…かしめ加工部 26…形成凸条部
28…形成歯溝凹部 29…形成歯形凸部
40…分割押さえ型
Claims (15)
- 第1結合面をもつ第1結合部を有する第1部材と、該第1部材よりも硬度の低い材料よりなり、第2結合面をもつ第2結合部を有する第2部材とからなり、該第1結合部を該第2結合部に食い込ませながら該第2結合部に対して該第1結合部を相対的に押し込んで圧入することにより該第1結合面と該第2結合面とが対面した状態で両部材が一体的に塑性結合された塑性結合部品であって、
上記第1結合部は上記第1結合面と略直交する第1端面に設けられた溝状凹部をもち、
上記第2結合部は、圧入時に上記第1結合部で圧入進行側に押し流される該第2結合部の材料の塑性流動により上記第2結合面に一体に形成され、上記第1端面に当接された棚部をもち、
上記棚部は、凸型パンチで該棚部を押圧して該棚部の材料を上記溝状凹部内に押し込み該棚部を該溝状凹部に対応させて塑性変形させることにより該棚部に一体に形成され、該溝状凹部と圧接状態を維持しつつ凹凸係合された形成凸条部をもっていることを特徴とする塑性結合部品。 - 前記第1結合部は、前記第1結合面に一体に設けられ圧入の進退方向に歯すじが延びる複数の歯形凸部及び歯溝凹部をもつ一方、前記第2結合部は、圧入時に前記第2結合面が各該歯形凸部及び各該歯溝凹部と対応して塑性変形することにより該第2結合面に一体に形成され、各該歯形凸部及び各該歯溝凹部と隙間無く噛み合い係合された形成歯溝凹部及び形成歯形凸部をもっていることを特徴とする請求項1記載の塑性結合部品。
- 前記第1結合面及び前記第2結合面のうちの一方は円周外面よりなる一方、他方は円周内面よりなり、前記棚部、前記溝状凹部及び前記形成凸条部は円環状に延びていることを特徴とする請求項1又は2記載の塑性結合部品。
- 前記溝状凹部は、該溝状凹部内に押し込まれた該棚部の材料を該溝状凹部の側面方向に塑性流動させることにより、該側面に対する該形成凸条部の圧接力を高めうる材料案内部を内壁面に有していることを特徴とする請求項1、2又は3記載の塑性結合部品。
- 前記溝状凹部は抜け阻止用凹部を内壁面に有する一方、前記形成凸条部は該抜け阻止用凹部と凹凸係合することにより該溝状凹部から該形成凸条部が抜け出ることを阻止しうる抜け阻止用凸部を外面に一体に有していることを特徴とする請求項1、2、3又は4記載の塑性結合部品。
- 前記溝状凹部の開口端縁は角状とされていることを特徴とする請求項1、2、3、4または5記載の塑性結合部品。
- 前記第1結合部は前記第1端面により内壁面の一部が構成された係合凹部を有し、前記棚部の先端部と該係合凹部とが係合していることを特徴とする請求項1、2、3、4、5又は6記載の塑性結合部品。
- 前記第2結合部は、前記第2結合面に一体に形成され、前記第1結合面と略直交し前記第1端面と反対側の前記第1結合部の第2端面に当接して前記棚部と共に該第1結合部を挟持可能なかしめ加工部をもっていることを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6又は7記載の塑性結合部品。
- 第1結合面をもち該第1結合面と略直交する圧入進行側の第1端面に溝状凹部が予め設けられた第1結合部を有する第1部材と、該第1部材よりも硬度の低い材料よりなり、第2結合面をもつ該2結合部を有する第2部材とからなり、該第1結合面と該第2結合面とが対面した状態で両部材が圧入により一体的に塑性結合された塑性結合部品の製造方法であって、
上記第1結合部を上記第2結合部に食い込ませながら該第2結合部に対して該第1結合部を相対的に押し込んで圧入することにより、該第1結合部で圧入進行側に押し流される該第2結合部の材料の塑性流動により上記第1端面に当接する棚部を該第2結合面に一体に形成する圧入工程と、
凸型パンチで上記棚部を押圧して該棚部の材料を上記溝状凹部内に押し込み該棚部を該溝状凹部に対応させて塑性変形させることにより、該溝状凹部と圧接状態を維持しつつ凹凸係合する形成凸条部を該棚部に一体に形成する凸条部形成工程とを順に実施することを特徴とする塑性結合部品の製造方法。 - 前記第1結合面には、圧入の進退方向に歯すじが延びる複数の歯形凸部及び歯溝凹部が予め設けられており、
前記圧入工程では、各上記歯形凸部及び各上記歯溝凹部の双方が前記第2結合部に食い込むように圧入することにより、前記第2結合面を各該歯形凸部及び各該歯溝凹部と対応するように塑性変形させて各該歯形凸部及び各該歯溝凹部と隙間無く噛み合い係合する形成歯溝凹部及び形成歯形凸部を該第2結合面に一体に形成するとともに、各該歯形凸部及び各該歯溝凹部で圧入進行側に押し流される該第2結合部の材料の塑性流動により前記棚部を形成することを特徴とする請求項9記載の塑性結合部品の製造方法。 - 前記溝状凹部の内壁面には、該溝状凹部内に押し込まれた前記棚部の材料を該溝状凹部の側面方向に塑性流動させる材料案内部が予め設けられており、
前記凸条部形成工程では、前記凸型パンチで上記溝状凹部内に押し込まれた上記棚部の材料を上記材料案内部で案内しつつ該溝状凹部の側面方向に塑性流動させて該側面に押し付けることにより、前記形成凸条部の該側面に対する圧接力を高めることを特徴とする請求項9又は10記載の塑性結合部品の製造方法。 - 前記溝状凹部の内壁面には、開口端縁の開口幅よりも幅の広い幅広空間部を開口端縁の奥側に形成する抜け阻止用凹部が予め設けられており、
前記凸条部形成工程では、前記凸型パンチで上記溝状凹部内に押し込まれた上記棚部の材料を上記幅広空間部まで塑性流動させることにより、上記抜け阻止用凹部と凹凸係合することにより該溝状凹部から前記形成凸条部が抜け出ることを阻止しうる抜け阻止用凸部を該形成凸条部の外面に一体に形成することを特徴とする請求項9、10又は11記載の塑性結合部品の製造方法。 - 前記第1結合部には、前記第1端面により内壁面の一部が構成された係合凹部が予め設けられており、
前記圧入工程では、上記第1結合部で圧入進行側に押し流される前記第2結合部の材料の塑性流動により上記係合凹部と先端部が係合する前記棚部を前記第2結合面に一体に形成することを特徴とする請求項9、10、11又は12記載の塑性結合部品の製造方法。 - 前記凸条部形成工程では、前記棚部の先端部が前記第1端面から離れないように該先端部を分割型で支持しつつ、前記凸型パンチで該棚部を押圧して前記形成凸条部を形成することを特徴とする請求項9、10、11、12又は13記載の塑性結合部品の製造方法。
- 前記凸条部形成工程の後に、圧入後退側における前記第2結合部にかしめ加工を施して、前記第1結合面と略直交する圧入後退側の前記第1結合部の第2端面に当接して前記棚部と共に該第1結合部を圧入進退方向に挟持可能なかしめ加工部を前記第2結合面に一体に形成するかしめ工程を実施することを特徴とする請求項9、10、11、12、13又は14記載の塑性結合部品の製造方法。
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