JP2004335355A - 酸化物超電導線材およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】線材内に残存するガスによる膨れを抑制して超電導特性の低下が発生しない酸化物超電導線材を提供する。
【解決手段】酸化物超電導前駆体粉末5をシース材となる一端を閉じたAgパイプ6とともにグローブボックス7内に収容し、ガス入口8に接続した酸素ボンベから酸素ガスを流入させ、酸素ガス雰囲気下でAgパイプ6内に酸化物超電導前駆体粉末5を充填した。
【選択図】 図4
【解決手段】酸化物超電導前駆体粉末5をシース材となる一端を閉じたAgパイプ6とともにグローブボックス7内に収容し、ガス入口8に接続した酸素ボンベから酸素ガスを流入させ、酸素ガス雰囲気下でAgパイプ6内に酸化物超電導前駆体粉末5を充填した。
【選択図】 図4
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、溶融処理後の膨れの発生を抑制することができる酸化物超電導線材およびその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
酸化物超電導体は、従来から用いられているNbTiやNb3Snなどの金属系超電導材料と比較して、超電導状態に転移する臨界温度(Tc)が高いという特徴があるため、高温超電導体とも呼ばれる。たとえばY1Ba2Cu3OXのTcは約90K(K:ケルビン=絶対温度の単位)、Bi2Sr2Ca2Cu3OX(Bi−2223)はTc=110Kである。このため、安価な液体窒素中で使用できるマグネットやケーブル用材料としての応用が期待されている。酸化物超電導体のもうひとつの特徴は、上部臨界磁界(Hc2)が高いということである。たとえばBi2Sr2Ca1Cu2OX(Bi−2212)のHc2は液体ヘリウム温度(4.2K)で50〜100T(T:テスラ=磁束密度の単位)といわれている。このため、10K以下の低温では高い磁場中での使用が可能であり、たとえば22Tを超えるような従来の金属系超電導材料では発生できない強磁場マグネット用の線材材料として期待されている。
【0003】
Bi−2212あるいはBi−2223酸化物超電導体を線材として使用する場合、一般に、フィラメント状の酸化物超電導体を安定化材および被覆材として機能するAgの中に埋め込んだ構造のAgシース線材とされる。このようなAgシース線材は主に以下に示す工程で作製される。
【0004】
まず、シース材となるAg製のパイプの中に酸化物超電導体の粉末あるいはその原料となる前駆体粉末を充填する。粉末の充填は、片端を閉じたAg製のパイプ中に超電導粉末を直接充填する方法か、あるいはあらかじめ粉末を加圧成形して作製したペレットをAgパイプ中に充填する方法が用いられる。Agパイプ中に粉末を直接充填する場合も、粉末を加圧成形して作製したペレットを充填する場合も、いずれも大気中か、あるいは大気中の水分や炭酸ガスが粉末に混入するのを避ける目的から、除湿乾燥した空気あるいは窒素ガスまたはアルゴンガスなどの不活性ガス中などで行なわれる。
【0005】
次に、粉末を充填したAgパイプを伸線加工などにより所定の寸法に縮径加工して単芯線材を得る。さらに必要に応じこの単芯線材を切り分け複数本束ねたものを別のAg製あるいはAg合金製のパイプの中に再度収納し、これを縮径加工することによって所定の寸法の多芯線材とする。その後、また必要に応じて前述の単芯線材あるいは多芯線材を圧延加工によりテープ形状の線材とする。
【0006】
最後に、所定の条件で熱処理を行なうことにより超電導性を有する酸化物超電導線材を得る。Bi−2212線材の熱処理は、Bi−2212超電導体の一部の成分が溶融する温度いわゆる部分溶融温度まで昇温し、この温度で一定時間保持した後、部分溶融した液相から徐々にBi−2212多結晶体を晶出させるために徐々に冷却するという温度パターンで行なわれる。また熱処理は、酸素濃度の高い雰囲気下で行なったほうが超電導特性の優れた線材が得られやすいことが知られているため、一般には濃度がおおむね100%で圧力が1気圧すなわち大気圧に等しい酸素ガス雰囲気下で行なわれる。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記の従来技術でテープ線材を作製した場合、最終的な部分溶融熱処理を行なった際に線材が膨れてしまうという現象がしばしば発生するという問題があった。線材の膨れは寸法上の点で不良となるだけでなく、内部の酸化物超電導フィラメントが破壊され、超電導特性が大きく低下するという重大な欠陥をもたらす。これまで、線材の膨れの原因の一つとして、粉末に付着する水、炭酸ガスが原因と考えられていた。このため、水を線材1gあたり1.5μg以下、炭酸ガスを線材1gあたり0.3μg以下とする線材が開示されている(特許文献1)。しかしながら、この方法でも水や炭酸ガスを完全に除くことは困難であるため、膨れの発生を抑えることは困難であった。
【0008】
一方、線材内に残存するガスの悪影響を除くため、粉末を充填した後内部のガスを真空ポンプにより脱気して端末を封止する方法も開示されている(特許文献2)。しかしながら、この方法においても粉末を充填した後に真空脱気を行っても完全に粉末粒子の間まで脱気することは困難であるため、やはり膨れの発生を抑えることは困難であった。
【0009】
【特許文献1】
特開平09−288919号
【0010】
【特許文献2】
特開2001−184956号
【0011】
従って、本発明の目的は、線材内に残存するガスによる膨れを抑制して超電導特性の低下が発生しない酸化物超電導線材及びその製造方法を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記目的を達成するため、酸化物超電導線材のシース材として用いられているAgが酸素ガスを透過しやすいという性質に着目した。すなわちAgが酸素ガスを透過しやすい性質であることにより、熱処理時にシースの外側の酸素雰囲気を制御することでシース内の超電導体の酸素雰囲気を制御することができ、酸化物超電導体に超電導特性を付与することが可能となるため、シース材料として用いられているのである。本発明者は、この酸素ガスがAgの中を透過しやすいという性質を利用し、粉末粒子の空隙部などの線材内部にあらかじめ酸素ガスだけが残存するようにしておけば、熱処理時の温度上昇で酸素ガスが膨張しても酸素ガスはAgシース材を透過して線材の外に排出され線材の内圧上昇によるシース材の膨れは発生しなくなると考え、かかる観点から本発明を完成させるに至った。
【0013】
すなわち、本発明の酸化物超電導線材は、Agまたはその合金からなる金属シースと、該金属シース内に充填された酸化物超電導体粉末またはその原料となる前駆体粉末と、空隙とからなり、超電導性を付与するための熱処理を行なう前に、前記空隙が酸素を主成分とするガスで満たされていることを特徴とする。
【0014】
前記酸素を主成分とするガスは、酸素濃度が75%以上であることが好ましい。
【0015】
また、本発明の酸化物超電導線材は、Agまたはその合金からなる金属シースと、該金属シース内に充填されたBi−Sr−Ca−Cu−O系酸化物超電導体粉末またはその原料となる前駆体粉末と、空隙とからなり、超電導性を付与するための熱処理を行なう前に、前記空隙が酸素濃度が75%以上の酸素を主成分とするガスで満たされていることを特徴とする。
【0016】
さらに、本発明の酸化物超電導線材の製造方法は、酸素を主成分とするガスを満たした雰囲気内で、Agまたはその合金からなる金属シース内に酸化物超電導体粉末あるいはその原料となる前駆体粉末を充填し、前記酸化物超電導体粉末あるいは前駆体粉末の空隙部分あるいは金属シース内の空隙部分を酸素を主成分とするガスで満たすことを特徴とする。
【0017】
前記酸素を主成分とするガスは酸素濃度が75%以上であることが好ましい。
【0018】
また、前記金属シース内に前記酸化物超電導体粉末あるいは前記前駆体粉末を充填する際に、予めこれらの粉末を前記酸素を主成分とするガスを満たした雰囲気内で加圧成型して作製したペレットを前記金属シース内に充填することもできる。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、Bi−2212の酸化物超電導線材の例について、詳しく説明する。
Bi−2212の超電導粉末の真密度はおよそ6.65g/cm3であるのに対し、Agパイプ中に直接この粉末を充填した場合、充填された粉末のかさ密度はおよそ1〜3g/cm3程度で、真密度に対する割合すなわち充填率としてはおよそ15〜45%である。また同様に予め加圧成形したBi−2212のペレットを充填する場合にはペレットのかさ密度はおよそ3〜5g/cm3、真密度に対する充填率はおよそ45〜75%である。すなわち粉末が充填された空間は高々75%であり、それ以外の空間は粉末の粒子間の空隙である。空隙の割合すなわち空隙率は、粉末充填の場合で85〜55%、ペレットの場合でおよそ55〜25%である。この空隙部分には粉末充填時あるいはペレット充填の場合においてはペレットの作製時およびペレット充填時の雰囲気ガスが残存することになる。充填した粉末は、その後の伸線加工あるいは圧延加工で圧密化されるが、伸線加工後の粉末の密度はおよそ4〜5g/cm3、充填率にして60〜75%程度であり、圧延加工後の粉末の密度はおよそ5〜6g/cm3、充填率にして75〜90%程度である。このため、加工後も粉末粒子間の空隙はなくならず空隙内にあったガスも依然存在している。
【0020】
Bi−2212線材の部分溶融熱処理における最高温度はおよそ880℃〜890℃である。このとき粉末粒子の空隙に閉じ込められていたガスの状態は気体の状態を表す式として知られているP1V1/T1=P2V2/T2に従って変化する。ここで記号P、V、Tはそれぞれ気体の圧力、体積および絶対温度(単位K:ケルビン)で、添え字1を加熱前の状態、添え字2を加熱時の状態とする。加熱前と加熱時で線材内に閉じ込められた気体の体積が変わらないと仮定してV1=V2とし、加熱前および加熱時の気体の温度をそれぞれT1=293K(=20℃)およびT2=1158K(=885℃)とすると前述の式はP2≒3.95P1となる。すなわち加熱前に線材内に閉じ込められた気体の圧力を1気圧とすると加熱時の線材にはおよそ4気圧の内圧が加わることになる。
【0021】
通常、熱処理時の線材の周囲の圧力は1気圧であり、またシース材であるAgまたはAg合金も加熱により軟化しているため、シース材が非常に変形しやすい状態となっている。従来は粉末充填を大気中あるいは窒素ガスやアルゴンガスなどの不活性ガス中で行なっていたため、これらのガスが熱処理時に膨張して4気圧の内圧が加わることになり、線材を内側からふくらませる原因となる。このため、AgまたはAg合金シースは内圧に耐えきれず、線材が膨れてしまうかあるいはシースが破れてしまい超電導特性を低下させてしまうことになる。さらに、粉末粒子間に酸素以外のガスが残っていると熱処理時にボイドとなり、熱処理によって晶出した酸化物超電導の結晶粒同士の接合性を制限したりフィラメントを分断したりして超電導特性を低下させてしまう。
【0022】
一方、粉末充填あるいはペレット作製を酸素ガス中で行なうことで線材内に残存するガスを酸素ガスとした場合には、熱処理時に膨張した酸素ガスが容易にAgを透過して線材の外へ排出されるため、線材の膨れを防止できる。さらに、線材内に残存するガスを酸素とした場合には熱処理によって膨張した酸素ガスはAgを通して線材外へ容易に排出されて結晶粒同士の接合性が向上するため、超電導特性に関しても従来より優れた酸化物超電導線材の作製が可能となる。
【0023】
線材内に残存するガスの酸素濃度は75%以上が好ましい。この理由は酸素以外の残存ガスが25%すなわち分圧で0.25気圧であれば、たとえば前述したように室温(295K)から885℃(1158K)に温度が上昇して線材の内圧が4倍になったとしても圧力としては1気圧であり線材外部の圧力と釣り合って膨れを生じないためである。
【0024】
【実施例】
図1に、本発明に係る酸化物超電導線材の一実施例を示す単芯線材の断面図を示す。図1において、Agシース1の中に酸化物超電導前駆体粉末2が充填されている。伸線加工後の線材内の粉末の充填率は前述のようにおよそ60〜75%であり、残りの25〜40%は酸素ガス3で占められた空隙である。
【0025】
次に、図2に、本発明に係る酸化物超電導線材の他の実施例を示す多芯線材の断面図を示す。多芯線材はAgシース1の中に多芯フィラメント4が複数埋め込まれた構造であり、各多芯フィラメント4内には酸化物超電導前駆体粉末2が充填されている。多芯線材の場合も伸線加工後の粉末の充填率はおよそ60〜75%であり残りの25〜40%は酸素ガス3で占められた空隙である。
【0026】
さらに図3に、本発明に係る酸化物超電導線材の他の実施例を示す多芯テープ線材の断面図を示す。前記多芯線と同様にAgシース1の中に多芯フィラメント4が埋め込まれた構造であり、各フィラメント内には酸化物超電導前駆体粉末2が充填されている。テープ線材に加工するために圧延加工した後の状態で粉末の充填率はおよそ75〜90%であり、残りの10〜25%は酸素ガス3で占められた空隙である。
【0027】
図1〜図3に示された線材においては、粉末が充填された以外の空隙の部分が酸素ガス3で占められているため、部分溶融熱処理において880℃〜890℃に加熱しても、熱処理時に膨張した酸素ガスが容易にAgシース1を透過して線材の外へ排出され、線材の膨れを防止できる。また、部分溶融熱処理によって膨張した酸素ガスはAgシース1を通して線材外へ容易に排出されて酸化物超電導体結晶粒同士の接合性が向上するため、超電導特性に関しても従来より優れた酸化物超電導線材の作製が可能となる。
【0028】
【実施例1】
まず、出発原料として純度が99%以上の酸化ビスマス(Bi2O3)、酸化ストロンチウム(SrO)、酸化カルシウム(CaO)及び酸化銅(CuO)の各酸化物を用意し、ビスマス(Bi)、ストロンチウム(Sr)、カルシウム(Ca)、銅(Cu)の原子組成比がBi:Sr:Ca:Cu=2.0:2.0:1.0:2.0となるように秤量して、それらの混合体を作製した。次に、この混合体を遠心ボールミルを用いて30分間混合した後、銀製ルツボに入れ、大気中で800℃で10時間の仮焼成を行った。熱処理した混合体を室温まで冷却した後、再度、遠心ボールミルに入れ、30分間に粉砕、混合して、粉末の状態にする。得られた粉末を再度銀製ルツボに入れ、大気中で800℃で10時間の2回目の仮焼成を行った。熱処理した粉末を室温まで冷却した後、再度、遠心ボールミルに入れ、平均粒径が5μm以下になるまで粉砕、混合し、Bi−2212酸化物超電導前駆体粉末を作製した。
【0029】
作製した粉末をAgパイプに充填する方法を図4を用いて以下に示す。作製したBi−2212酸化物超電導前駆体粉末5をシース材となる一端を閉じた外径10mm、内径8mm、長さ500mmのAgパイプ6とともにグローブボックス7内に収容した。グローブボックス7に設置したガス入口8に接続した酸素ボンベから純度99.9%の酸素ガスをグローブボックス7内に流入させ、これと同時にグローブボックス7に設置したガス出口9からグローブボックス7内のガスを排出させることにより、グローブボックス7内を酸素ガスで置換した。グローブボックス7内に設置した酸素濃度計10によりグローブボックス7内の酸素濃度を数箇所測定し、どの位置においても酸素濃度が99.5%以上に達したことを確認した後、グローブボックス7内でBi−2212酸化物超電導前駆体粉末5をかさ密度が2g/cm3になるようにAgパイプ6中に充填した。充填後はAgパイプ6の開口端をAg製のフタ11により封止した。粉末充填したAgパイプ6はグローブボックス7から空気中に取り出し、伸線加工を施して線径φ1.5mmの図1に示すような単芯線材とした。この単芯線材を19本に切り分けて、再び前記と同様のAgまたはAg合金パイプに収納し、伸線加工により縮径加工を施して、19芯線材を作製した。最後に、作製した多芯線材を圧延加工により幅5mm、厚さ0.3mmの図3に示すようなテープ形状の線材に加工した。
【0030】
粉末を充填したAgパイプ中で粉末が占める体積の割合すなわち充填率は、Bi−2212酸化物超電導粉末の真密度6.65g/cm3に対して充填粉末のかさ密度2g/cm3であったため、充填率は30%であり、残りの70%は酸素ガスで占められている空隙部分であった。また、伸線加工後の超電導体粉末の密度を求めたところ約4.5g/cm3、すなわち粉末の真密度に対する充填率は約68%で、残りの32%が酸素ガスで占められている空隙部分であった。なお、比較材として、粉末充填を大気中で行い、その後の工程を上記と同様の方法で19芯テープ線材を作製した。
【0031】
作製したテープ線材を長さ3mに切断し、超電導性を付与するための熱処理を行った。熱処理の条件は、1気圧の酸素ガス中で200℃/hrの昇温速度で885℃まで昇温し、885℃で10分間保持させた後、5℃/hrの冷却速度で830℃まで冷却し、その後室温まで炉冷した。熱処理後、テープ線材の厚みを測定し、熱処理前のテープ線材の厚みより10%以上厚みが増加した部分を「膨れ部」と定義して、これが全長3mのうちどれくらいの長さであるのかを調べることで線材の膨れの度合いを評価した。また、熱処理したテープ線材の臨界電流値(Ic)を液体ヘリウム中で測定した。試料は上記線材の一部を長さ3cmに切断し、試料両端に取付けた電流端子から通電し、試料中央付近に間隔1cmで取付けた電圧端子間に1μVの電圧が発生する通電電流値をもってIcと定義した。
【0032】
その結果、大気中で粉末充填した比較用の線材では3mのうち合計で0.3mの膨れ部があった。一方、酸素ガス中で粉末充填した線材では3mのうち線材厚みが10%以上増加した部分はなかった。また、大気中で粉末充填した線材で、テープ厚みが10%以上増加しなかった部分から切出した試料のIcは1000Aであったが、熱処理後のテープ厚みが10%以上増加した部分から切出した試料ではIc=300Aであった。一方、酸素ガス中で粉末充填した線材から切出した試料でIcを測定したところIc=1500Aであった。
【0033】
以上のことより、酸素中で粉末充填することで、熱処理時の膨れを防止することができた。膨れによる臨界電流の低下も防止できた。また、大気中充填した線材の膨れのない部分のIcが1000Aであるのに対し、酸素中充填の線材のIcは1500Aと1.5倍も高い値であった。
【0034】
大気中充填線材の膨れていない部分のIcと比較したにもかかわらず、酸素中充填ではそれ以上のIcに向上しているのは以下の理由によると解釈される。すなわち、大気中で充填した場合では、大気の主成分である窒素ガスが線材中に残存し、この残存する窒素ガスが熱処理時に膨張しても外部には排出されず、その一部はシースを変形させて線材の膨れとなるが、膨れには至らない部分においてもそのまま粉末粒子間にとどまってボイドとなり、熱処理によって晶出した酸化物超電導の結晶粒同士の接合性を阻害したり、あるいは1本のフィラメント全体を分断したりして超電導特性の低下をもたらす。これに対し酸素ガス中で充填した線材では熱処理時に酸素ガスが膨張してもその一部はAgを透過して線材の外に排出されるため、熱処理によって晶出したBi−2212結晶の粒子間の空隙が拡大することはない。
【0035】
以上のように、酸素ガス中で充填することにより熱処理時の線材の膨れを防止できるようになり、また線材のIc向上にも効果的であることが実証された。
【0036】
【実施例2】
他の実施例として、ペレット成型したBi−2212粉末を充填する場合について図5を用いて以下に示す。
【0037】
初めに実施例1と同様の方法でBi−2212酸化物超電導前駆体粉末を作製した。
【0038】
次に、作製したBi−2212酸化物超電導前駆体粉末5を一端を閉じた外径10mm、内径8回、長さ500mmのAgパイプ6と成型寸法φ8mmのプレス用金型12およびプレス機13ととともにグローブボックス7内に収容した。グローブボックス7に設置したガス入口8に接続した酸素ボンベから純度99.9%の酸素ガスをグローブボックス7内に流入させ、これと同時にグローブボックス7に設置したガス出口9からグローブボックス7内のガスを排出させることにより、グローブボックス7内を酸素ガスで置換した。グローブボックス7内に設置した酸素濃度計10によりグローブボックス7内の酸素濃度を数箇所測定し、どの位置においても酸素濃度が99.5%以上に達したことを確認した後、グローブボックス7内でBi−2212酸化物超電導前駆体粉末をプレス用金型12に充填した。そしてプレス機を用いて粉末のかさ密度が4g/cm3になるように金型に荷重を加える荷重を調整して直径8mm、高さ10mmの酸化物超電導前駆体ペレット14を作製した。
【0039】
引き続き、作製したペレットをグローブボックス7内でAgパイプに充填し、充填後はAgパイプの開口端をAg製のフタ11により封止した。
【0040】
ペレットを充填したAgパイプを用いて、実施例1と同様の方法で幅5mm、厚さ0.3mmの19芯テープ線材を作製した。なお、比較材として、ペレット作製する雰囲気を大気中で行い、その他の工程は上記と同様の方法で行なった19芯テープ線材を作製した。
【0041】
作製したテープ線材を実施例1と同様の方法で熱処理して超電導線材を作製した。また、熱処理後、実施例1と同様に、テープ線材の厚みの測定と、液体ヘリウム中での臨界電流値(Ic)を測定した。
【0042】
その結果、大気中で粉末充填した線材では、テープ厚みが10%以上増加した「膨れ部」は、全長3mのうち0.2mであった。またテープ厚みが10%以上増加していない部分から切出した試料のIcは1000Aであったが、熱処理後のテープ厚みが10%以上増加した部分から切出した試料ではIc=500Aであった。一方、酸素ガス中で粉末充填した線材ではテープ厚みが10%以上増加した部分はなかった。また、酸素ガス中で粉末充填した線材のIcは1500Aであった。
【0043】
実施例1では膨れた部分の長さが0.3mに対し、本実施例では0.2mと小さくなっている。これは実施例1が粉末の充填密度が2g/cm3であるのに対し、本実施例ではペレットの密度が4g/cm3であるため空隙内に残存する窒素ガスの量が少ないためである。上記のように、酸素中でペレット作製した線材でも熱処理時の膨れがなくなり、臨界電流も大気中充填の場合より向上した。
【0044】
なお、本実施例においてはBi−2212線材について説明したが、酸化物超電導線材の製造過程における線材の膨れの問題は、Bi−2212線材に限らず他の酸化物超電導線材においても粉末充填時の雰囲気ガスが空隙に取込まれ熱処理時に膨張するという共通の問題であるため、他の酸化物超電導線材にも適用できることは明らかである。
【0045】
【発明の効果】
以上詳細に説明したように、本発明の酸化物超電導線材は、超電導性を付与するための熱処理を行なう前に、Agまたはその合金からなる金属シース内の空隙が酸素を主成分とするガスで満たされているので、部分溶融熱処理における加熱の際に膨張した酸素を主成分とするガスが容易にAgまたはその合金からなる金属シースを透過して線材の外へ排出されるため、線材の膨れを防止できる。また、この際に酸化物超電導体結晶粒同士の接合性が向上するため、超電導特性に関して従来より優れた酸化物超電導線材の作製が可能となり、強磁場発生マグネットを始めとする超電導応用製品の作製が可能となった。
【0046】
また、本発明の酸化物超電導線材の製造方法は、酸素を主成分とするガスを満たした雰囲気内で酸化物超電導体粉末あるいはその原料となる前駆体粉末を充填し、空隙部分を酸素を主成分とするガスで満たしているので、部分溶融熱処理における加熱の際に膨張した酸素を主成分とするガスが容易にAgまたはその合金からなる金属シースを透過して線材の外へ排出されるため、線材の膨れがなく超電導特性に優れた酸化物超電導線材を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る酸化物超電導線材の一例を示す単芯線材の断面図である。
【図2】本発明に係る酸化物超電導線材の一例を示す多芯線材の断面図である。
【図3】本発明に係る酸化物超電導線材の一例を示す多芯テープ線材の断面図である。
【図4】本発明に係る酸化物超電導線材の製造方法の一例を示す模式図である。
【図5】本発明に係る酸化物超電導線材の製造方法の他の例を示す模式図である。
【符号の説明】
1 Agシース
2 酸化物超電導前駆体粉末
3 酸素ガス
4 多芯フィラメント
5 酸化物超電導前駆体粉末
6 Agパイプ
7 グローブボックス
12 プレス成形金型
13 プレス機
14 酸化物超電導前駆体ペレット
【発明の属する技術分野】
本発明は、溶融処理後の膨れの発生を抑制することができる酸化物超電導線材およびその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
酸化物超電導体は、従来から用いられているNbTiやNb3Snなどの金属系超電導材料と比較して、超電導状態に転移する臨界温度(Tc)が高いという特徴があるため、高温超電導体とも呼ばれる。たとえばY1Ba2Cu3OXのTcは約90K(K:ケルビン=絶対温度の単位)、Bi2Sr2Ca2Cu3OX(Bi−2223)はTc=110Kである。このため、安価な液体窒素中で使用できるマグネットやケーブル用材料としての応用が期待されている。酸化物超電導体のもうひとつの特徴は、上部臨界磁界(Hc2)が高いということである。たとえばBi2Sr2Ca1Cu2OX(Bi−2212)のHc2は液体ヘリウム温度(4.2K)で50〜100T(T:テスラ=磁束密度の単位)といわれている。このため、10K以下の低温では高い磁場中での使用が可能であり、たとえば22Tを超えるような従来の金属系超電導材料では発生できない強磁場マグネット用の線材材料として期待されている。
【0003】
Bi−2212あるいはBi−2223酸化物超電導体を線材として使用する場合、一般に、フィラメント状の酸化物超電導体を安定化材および被覆材として機能するAgの中に埋め込んだ構造のAgシース線材とされる。このようなAgシース線材は主に以下に示す工程で作製される。
【0004】
まず、シース材となるAg製のパイプの中に酸化物超電導体の粉末あるいはその原料となる前駆体粉末を充填する。粉末の充填は、片端を閉じたAg製のパイプ中に超電導粉末を直接充填する方法か、あるいはあらかじめ粉末を加圧成形して作製したペレットをAgパイプ中に充填する方法が用いられる。Agパイプ中に粉末を直接充填する場合も、粉末を加圧成形して作製したペレットを充填する場合も、いずれも大気中か、あるいは大気中の水分や炭酸ガスが粉末に混入するのを避ける目的から、除湿乾燥した空気あるいは窒素ガスまたはアルゴンガスなどの不活性ガス中などで行なわれる。
【0005】
次に、粉末を充填したAgパイプを伸線加工などにより所定の寸法に縮径加工して単芯線材を得る。さらに必要に応じこの単芯線材を切り分け複数本束ねたものを別のAg製あるいはAg合金製のパイプの中に再度収納し、これを縮径加工することによって所定の寸法の多芯線材とする。その後、また必要に応じて前述の単芯線材あるいは多芯線材を圧延加工によりテープ形状の線材とする。
【0006】
最後に、所定の条件で熱処理を行なうことにより超電導性を有する酸化物超電導線材を得る。Bi−2212線材の熱処理は、Bi−2212超電導体の一部の成分が溶融する温度いわゆる部分溶融温度まで昇温し、この温度で一定時間保持した後、部分溶融した液相から徐々にBi−2212多結晶体を晶出させるために徐々に冷却するという温度パターンで行なわれる。また熱処理は、酸素濃度の高い雰囲気下で行なったほうが超電導特性の優れた線材が得られやすいことが知られているため、一般には濃度がおおむね100%で圧力が1気圧すなわち大気圧に等しい酸素ガス雰囲気下で行なわれる。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記の従来技術でテープ線材を作製した場合、最終的な部分溶融熱処理を行なった際に線材が膨れてしまうという現象がしばしば発生するという問題があった。線材の膨れは寸法上の点で不良となるだけでなく、内部の酸化物超電導フィラメントが破壊され、超電導特性が大きく低下するという重大な欠陥をもたらす。これまで、線材の膨れの原因の一つとして、粉末に付着する水、炭酸ガスが原因と考えられていた。このため、水を線材1gあたり1.5μg以下、炭酸ガスを線材1gあたり0.3μg以下とする線材が開示されている(特許文献1)。しかしながら、この方法でも水や炭酸ガスを完全に除くことは困難であるため、膨れの発生を抑えることは困難であった。
【0008】
一方、線材内に残存するガスの悪影響を除くため、粉末を充填した後内部のガスを真空ポンプにより脱気して端末を封止する方法も開示されている(特許文献2)。しかしながら、この方法においても粉末を充填した後に真空脱気を行っても完全に粉末粒子の間まで脱気することは困難であるため、やはり膨れの発生を抑えることは困難であった。
【0009】
【特許文献1】
特開平09−288919号
【0010】
【特許文献2】
特開2001−184956号
【0011】
従って、本発明の目的は、線材内に残存するガスによる膨れを抑制して超電導特性の低下が発生しない酸化物超電導線材及びその製造方法を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記目的を達成するため、酸化物超電導線材のシース材として用いられているAgが酸素ガスを透過しやすいという性質に着目した。すなわちAgが酸素ガスを透過しやすい性質であることにより、熱処理時にシースの外側の酸素雰囲気を制御することでシース内の超電導体の酸素雰囲気を制御することができ、酸化物超電導体に超電導特性を付与することが可能となるため、シース材料として用いられているのである。本発明者は、この酸素ガスがAgの中を透過しやすいという性質を利用し、粉末粒子の空隙部などの線材内部にあらかじめ酸素ガスだけが残存するようにしておけば、熱処理時の温度上昇で酸素ガスが膨張しても酸素ガスはAgシース材を透過して線材の外に排出され線材の内圧上昇によるシース材の膨れは発生しなくなると考え、かかる観点から本発明を完成させるに至った。
【0013】
すなわち、本発明の酸化物超電導線材は、Agまたはその合金からなる金属シースと、該金属シース内に充填された酸化物超電導体粉末またはその原料となる前駆体粉末と、空隙とからなり、超電導性を付与するための熱処理を行なう前に、前記空隙が酸素を主成分とするガスで満たされていることを特徴とする。
【0014】
前記酸素を主成分とするガスは、酸素濃度が75%以上であることが好ましい。
【0015】
また、本発明の酸化物超電導線材は、Agまたはその合金からなる金属シースと、該金属シース内に充填されたBi−Sr−Ca−Cu−O系酸化物超電導体粉末またはその原料となる前駆体粉末と、空隙とからなり、超電導性を付与するための熱処理を行なう前に、前記空隙が酸素濃度が75%以上の酸素を主成分とするガスで満たされていることを特徴とする。
【0016】
さらに、本発明の酸化物超電導線材の製造方法は、酸素を主成分とするガスを満たした雰囲気内で、Agまたはその合金からなる金属シース内に酸化物超電導体粉末あるいはその原料となる前駆体粉末を充填し、前記酸化物超電導体粉末あるいは前駆体粉末の空隙部分あるいは金属シース内の空隙部分を酸素を主成分とするガスで満たすことを特徴とする。
【0017】
前記酸素を主成分とするガスは酸素濃度が75%以上であることが好ましい。
【0018】
また、前記金属シース内に前記酸化物超電導体粉末あるいは前記前駆体粉末を充填する際に、予めこれらの粉末を前記酸素を主成分とするガスを満たした雰囲気内で加圧成型して作製したペレットを前記金属シース内に充填することもできる。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、Bi−2212の酸化物超電導線材の例について、詳しく説明する。
Bi−2212の超電導粉末の真密度はおよそ6.65g/cm3であるのに対し、Agパイプ中に直接この粉末を充填した場合、充填された粉末のかさ密度はおよそ1〜3g/cm3程度で、真密度に対する割合すなわち充填率としてはおよそ15〜45%である。また同様に予め加圧成形したBi−2212のペレットを充填する場合にはペレットのかさ密度はおよそ3〜5g/cm3、真密度に対する充填率はおよそ45〜75%である。すなわち粉末が充填された空間は高々75%であり、それ以外の空間は粉末の粒子間の空隙である。空隙の割合すなわち空隙率は、粉末充填の場合で85〜55%、ペレットの場合でおよそ55〜25%である。この空隙部分には粉末充填時あるいはペレット充填の場合においてはペレットの作製時およびペレット充填時の雰囲気ガスが残存することになる。充填した粉末は、その後の伸線加工あるいは圧延加工で圧密化されるが、伸線加工後の粉末の密度はおよそ4〜5g/cm3、充填率にして60〜75%程度であり、圧延加工後の粉末の密度はおよそ5〜6g/cm3、充填率にして75〜90%程度である。このため、加工後も粉末粒子間の空隙はなくならず空隙内にあったガスも依然存在している。
【0020】
Bi−2212線材の部分溶融熱処理における最高温度はおよそ880℃〜890℃である。このとき粉末粒子の空隙に閉じ込められていたガスの状態は気体の状態を表す式として知られているP1V1/T1=P2V2/T2に従って変化する。ここで記号P、V、Tはそれぞれ気体の圧力、体積および絶対温度(単位K:ケルビン)で、添え字1を加熱前の状態、添え字2を加熱時の状態とする。加熱前と加熱時で線材内に閉じ込められた気体の体積が変わらないと仮定してV1=V2とし、加熱前および加熱時の気体の温度をそれぞれT1=293K(=20℃)およびT2=1158K(=885℃)とすると前述の式はP2≒3.95P1となる。すなわち加熱前に線材内に閉じ込められた気体の圧力を1気圧とすると加熱時の線材にはおよそ4気圧の内圧が加わることになる。
【0021】
通常、熱処理時の線材の周囲の圧力は1気圧であり、またシース材であるAgまたはAg合金も加熱により軟化しているため、シース材が非常に変形しやすい状態となっている。従来は粉末充填を大気中あるいは窒素ガスやアルゴンガスなどの不活性ガス中で行なっていたため、これらのガスが熱処理時に膨張して4気圧の内圧が加わることになり、線材を内側からふくらませる原因となる。このため、AgまたはAg合金シースは内圧に耐えきれず、線材が膨れてしまうかあるいはシースが破れてしまい超電導特性を低下させてしまうことになる。さらに、粉末粒子間に酸素以外のガスが残っていると熱処理時にボイドとなり、熱処理によって晶出した酸化物超電導の結晶粒同士の接合性を制限したりフィラメントを分断したりして超電導特性を低下させてしまう。
【0022】
一方、粉末充填あるいはペレット作製を酸素ガス中で行なうことで線材内に残存するガスを酸素ガスとした場合には、熱処理時に膨張した酸素ガスが容易にAgを透過して線材の外へ排出されるため、線材の膨れを防止できる。さらに、線材内に残存するガスを酸素とした場合には熱処理によって膨張した酸素ガスはAgを通して線材外へ容易に排出されて結晶粒同士の接合性が向上するため、超電導特性に関しても従来より優れた酸化物超電導線材の作製が可能となる。
【0023】
線材内に残存するガスの酸素濃度は75%以上が好ましい。この理由は酸素以外の残存ガスが25%すなわち分圧で0.25気圧であれば、たとえば前述したように室温(295K)から885℃(1158K)に温度が上昇して線材の内圧が4倍になったとしても圧力としては1気圧であり線材外部の圧力と釣り合って膨れを生じないためである。
【0024】
【実施例】
図1に、本発明に係る酸化物超電導線材の一実施例を示す単芯線材の断面図を示す。図1において、Agシース1の中に酸化物超電導前駆体粉末2が充填されている。伸線加工後の線材内の粉末の充填率は前述のようにおよそ60〜75%であり、残りの25〜40%は酸素ガス3で占められた空隙である。
【0025】
次に、図2に、本発明に係る酸化物超電導線材の他の実施例を示す多芯線材の断面図を示す。多芯線材はAgシース1の中に多芯フィラメント4が複数埋め込まれた構造であり、各多芯フィラメント4内には酸化物超電導前駆体粉末2が充填されている。多芯線材の場合も伸線加工後の粉末の充填率はおよそ60〜75%であり残りの25〜40%は酸素ガス3で占められた空隙である。
【0026】
さらに図3に、本発明に係る酸化物超電導線材の他の実施例を示す多芯テープ線材の断面図を示す。前記多芯線と同様にAgシース1の中に多芯フィラメント4が埋め込まれた構造であり、各フィラメント内には酸化物超電導前駆体粉末2が充填されている。テープ線材に加工するために圧延加工した後の状態で粉末の充填率はおよそ75〜90%であり、残りの10〜25%は酸素ガス3で占められた空隙である。
【0027】
図1〜図3に示された線材においては、粉末が充填された以外の空隙の部分が酸素ガス3で占められているため、部分溶融熱処理において880℃〜890℃に加熱しても、熱処理時に膨張した酸素ガスが容易にAgシース1を透過して線材の外へ排出され、線材の膨れを防止できる。また、部分溶融熱処理によって膨張した酸素ガスはAgシース1を通して線材外へ容易に排出されて酸化物超電導体結晶粒同士の接合性が向上するため、超電導特性に関しても従来より優れた酸化物超電導線材の作製が可能となる。
【0028】
【実施例1】
まず、出発原料として純度が99%以上の酸化ビスマス(Bi2O3)、酸化ストロンチウム(SrO)、酸化カルシウム(CaO)及び酸化銅(CuO)の各酸化物を用意し、ビスマス(Bi)、ストロンチウム(Sr)、カルシウム(Ca)、銅(Cu)の原子組成比がBi:Sr:Ca:Cu=2.0:2.0:1.0:2.0となるように秤量して、それらの混合体を作製した。次に、この混合体を遠心ボールミルを用いて30分間混合した後、銀製ルツボに入れ、大気中で800℃で10時間の仮焼成を行った。熱処理した混合体を室温まで冷却した後、再度、遠心ボールミルに入れ、30分間に粉砕、混合して、粉末の状態にする。得られた粉末を再度銀製ルツボに入れ、大気中で800℃で10時間の2回目の仮焼成を行った。熱処理した粉末を室温まで冷却した後、再度、遠心ボールミルに入れ、平均粒径が5μm以下になるまで粉砕、混合し、Bi−2212酸化物超電導前駆体粉末を作製した。
【0029】
作製した粉末をAgパイプに充填する方法を図4を用いて以下に示す。作製したBi−2212酸化物超電導前駆体粉末5をシース材となる一端を閉じた外径10mm、内径8mm、長さ500mmのAgパイプ6とともにグローブボックス7内に収容した。グローブボックス7に設置したガス入口8に接続した酸素ボンベから純度99.9%の酸素ガスをグローブボックス7内に流入させ、これと同時にグローブボックス7に設置したガス出口9からグローブボックス7内のガスを排出させることにより、グローブボックス7内を酸素ガスで置換した。グローブボックス7内に設置した酸素濃度計10によりグローブボックス7内の酸素濃度を数箇所測定し、どの位置においても酸素濃度が99.5%以上に達したことを確認した後、グローブボックス7内でBi−2212酸化物超電導前駆体粉末5をかさ密度が2g/cm3になるようにAgパイプ6中に充填した。充填後はAgパイプ6の開口端をAg製のフタ11により封止した。粉末充填したAgパイプ6はグローブボックス7から空気中に取り出し、伸線加工を施して線径φ1.5mmの図1に示すような単芯線材とした。この単芯線材を19本に切り分けて、再び前記と同様のAgまたはAg合金パイプに収納し、伸線加工により縮径加工を施して、19芯線材を作製した。最後に、作製した多芯線材を圧延加工により幅5mm、厚さ0.3mmの図3に示すようなテープ形状の線材に加工した。
【0030】
粉末を充填したAgパイプ中で粉末が占める体積の割合すなわち充填率は、Bi−2212酸化物超電導粉末の真密度6.65g/cm3に対して充填粉末のかさ密度2g/cm3であったため、充填率は30%であり、残りの70%は酸素ガスで占められている空隙部分であった。また、伸線加工後の超電導体粉末の密度を求めたところ約4.5g/cm3、すなわち粉末の真密度に対する充填率は約68%で、残りの32%が酸素ガスで占められている空隙部分であった。なお、比較材として、粉末充填を大気中で行い、その後の工程を上記と同様の方法で19芯テープ線材を作製した。
【0031】
作製したテープ線材を長さ3mに切断し、超電導性を付与するための熱処理を行った。熱処理の条件は、1気圧の酸素ガス中で200℃/hrの昇温速度で885℃まで昇温し、885℃で10分間保持させた後、5℃/hrの冷却速度で830℃まで冷却し、その後室温まで炉冷した。熱処理後、テープ線材の厚みを測定し、熱処理前のテープ線材の厚みより10%以上厚みが増加した部分を「膨れ部」と定義して、これが全長3mのうちどれくらいの長さであるのかを調べることで線材の膨れの度合いを評価した。また、熱処理したテープ線材の臨界電流値(Ic)を液体ヘリウム中で測定した。試料は上記線材の一部を長さ3cmに切断し、試料両端に取付けた電流端子から通電し、試料中央付近に間隔1cmで取付けた電圧端子間に1μVの電圧が発生する通電電流値をもってIcと定義した。
【0032】
その結果、大気中で粉末充填した比較用の線材では3mのうち合計で0.3mの膨れ部があった。一方、酸素ガス中で粉末充填した線材では3mのうち線材厚みが10%以上増加した部分はなかった。また、大気中で粉末充填した線材で、テープ厚みが10%以上増加しなかった部分から切出した試料のIcは1000Aであったが、熱処理後のテープ厚みが10%以上増加した部分から切出した試料ではIc=300Aであった。一方、酸素ガス中で粉末充填した線材から切出した試料でIcを測定したところIc=1500Aであった。
【0033】
以上のことより、酸素中で粉末充填することで、熱処理時の膨れを防止することができた。膨れによる臨界電流の低下も防止できた。また、大気中充填した線材の膨れのない部分のIcが1000Aであるのに対し、酸素中充填の線材のIcは1500Aと1.5倍も高い値であった。
【0034】
大気中充填線材の膨れていない部分のIcと比較したにもかかわらず、酸素中充填ではそれ以上のIcに向上しているのは以下の理由によると解釈される。すなわち、大気中で充填した場合では、大気の主成分である窒素ガスが線材中に残存し、この残存する窒素ガスが熱処理時に膨張しても外部には排出されず、その一部はシースを変形させて線材の膨れとなるが、膨れには至らない部分においてもそのまま粉末粒子間にとどまってボイドとなり、熱処理によって晶出した酸化物超電導の結晶粒同士の接合性を阻害したり、あるいは1本のフィラメント全体を分断したりして超電導特性の低下をもたらす。これに対し酸素ガス中で充填した線材では熱処理時に酸素ガスが膨張してもその一部はAgを透過して線材の外に排出されるため、熱処理によって晶出したBi−2212結晶の粒子間の空隙が拡大することはない。
【0035】
以上のように、酸素ガス中で充填することにより熱処理時の線材の膨れを防止できるようになり、また線材のIc向上にも効果的であることが実証された。
【0036】
【実施例2】
他の実施例として、ペレット成型したBi−2212粉末を充填する場合について図5を用いて以下に示す。
【0037】
初めに実施例1と同様の方法でBi−2212酸化物超電導前駆体粉末を作製した。
【0038】
次に、作製したBi−2212酸化物超電導前駆体粉末5を一端を閉じた外径10mm、内径8回、長さ500mmのAgパイプ6と成型寸法φ8mmのプレス用金型12およびプレス機13ととともにグローブボックス7内に収容した。グローブボックス7に設置したガス入口8に接続した酸素ボンベから純度99.9%の酸素ガスをグローブボックス7内に流入させ、これと同時にグローブボックス7に設置したガス出口9からグローブボックス7内のガスを排出させることにより、グローブボックス7内を酸素ガスで置換した。グローブボックス7内に設置した酸素濃度計10によりグローブボックス7内の酸素濃度を数箇所測定し、どの位置においても酸素濃度が99.5%以上に達したことを確認した後、グローブボックス7内でBi−2212酸化物超電導前駆体粉末をプレス用金型12に充填した。そしてプレス機を用いて粉末のかさ密度が4g/cm3になるように金型に荷重を加える荷重を調整して直径8mm、高さ10mmの酸化物超電導前駆体ペレット14を作製した。
【0039】
引き続き、作製したペレットをグローブボックス7内でAgパイプに充填し、充填後はAgパイプの開口端をAg製のフタ11により封止した。
【0040】
ペレットを充填したAgパイプを用いて、実施例1と同様の方法で幅5mm、厚さ0.3mmの19芯テープ線材を作製した。なお、比較材として、ペレット作製する雰囲気を大気中で行い、その他の工程は上記と同様の方法で行なった19芯テープ線材を作製した。
【0041】
作製したテープ線材を実施例1と同様の方法で熱処理して超電導線材を作製した。また、熱処理後、実施例1と同様に、テープ線材の厚みの測定と、液体ヘリウム中での臨界電流値(Ic)を測定した。
【0042】
その結果、大気中で粉末充填した線材では、テープ厚みが10%以上増加した「膨れ部」は、全長3mのうち0.2mであった。またテープ厚みが10%以上増加していない部分から切出した試料のIcは1000Aであったが、熱処理後のテープ厚みが10%以上増加した部分から切出した試料ではIc=500Aであった。一方、酸素ガス中で粉末充填した線材ではテープ厚みが10%以上増加した部分はなかった。また、酸素ガス中で粉末充填した線材のIcは1500Aであった。
【0043】
実施例1では膨れた部分の長さが0.3mに対し、本実施例では0.2mと小さくなっている。これは実施例1が粉末の充填密度が2g/cm3であるのに対し、本実施例ではペレットの密度が4g/cm3であるため空隙内に残存する窒素ガスの量が少ないためである。上記のように、酸素中でペレット作製した線材でも熱処理時の膨れがなくなり、臨界電流も大気中充填の場合より向上した。
【0044】
なお、本実施例においてはBi−2212線材について説明したが、酸化物超電導線材の製造過程における線材の膨れの問題は、Bi−2212線材に限らず他の酸化物超電導線材においても粉末充填時の雰囲気ガスが空隙に取込まれ熱処理時に膨張するという共通の問題であるため、他の酸化物超電導線材にも適用できることは明らかである。
【0045】
【発明の効果】
以上詳細に説明したように、本発明の酸化物超電導線材は、超電導性を付与するための熱処理を行なう前に、Agまたはその合金からなる金属シース内の空隙が酸素を主成分とするガスで満たされているので、部分溶融熱処理における加熱の際に膨張した酸素を主成分とするガスが容易にAgまたはその合金からなる金属シースを透過して線材の外へ排出されるため、線材の膨れを防止できる。また、この際に酸化物超電導体結晶粒同士の接合性が向上するため、超電導特性に関して従来より優れた酸化物超電導線材の作製が可能となり、強磁場発生マグネットを始めとする超電導応用製品の作製が可能となった。
【0046】
また、本発明の酸化物超電導線材の製造方法は、酸素を主成分とするガスを満たした雰囲気内で酸化物超電導体粉末あるいはその原料となる前駆体粉末を充填し、空隙部分を酸素を主成分とするガスで満たしているので、部分溶融熱処理における加熱の際に膨張した酸素を主成分とするガスが容易にAgまたはその合金からなる金属シースを透過して線材の外へ排出されるため、線材の膨れがなく超電導特性に優れた酸化物超電導線材を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る酸化物超電導線材の一例を示す単芯線材の断面図である。
【図2】本発明に係る酸化物超電導線材の一例を示す多芯線材の断面図である。
【図3】本発明に係る酸化物超電導線材の一例を示す多芯テープ線材の断面図である。
【図4】本発明に係る酸化物超電導線材の製造方法の一例を示す模式図である。
【図5】本発明に係る酸化物超電導線材の製造方法の他の例を示す模式図である。
【符号の説明】
1 Agシース
2 酸化物超電導前駆体粉末
3 酸素ガス
4 多芯フィラメント
5 酸化物超電導前駆体粉末
6 Agパイプ
7 グローブボックス
12 プレス成形金型
13 プレス機
14 酸化物超電導前駆体ペレット
Claims (6)
- Agまたはその合金からなる金属シースと、該金属シース内に充填された酸化物超電導体粉末またはその原料となる前駆体粉末と、空隙とからなり、超電導性を付与するための熱処理を行なう前に、前記空隙が酸素を主成分とするガスで満たされていることを特徴とする酸化物超電導線材。
- 前記酸素を主成分とするガスの酸素濃度が75%以上であることを特徴とする請求項1記載の酸化物超電導線材。
- Agまたはその合金からなる金属シースと、該金属シース内に充填されたBi−Sr−Ca−Cu−O系酸化物超電導体粉末またはその原料となる前駆体粉末と、空隙とからなり、超電導性を付与するための熱処理を行なう前に、前記空隙が酸素濃度が75%以上の酸素を主成分とするガスで満たされていることを特徴とする酸化物超電導線材。
- 酸素を主成分とするガスを満たした雰囲気内で、Agまたはその合金からなる金属シース内に酸化物超電導体粉末あるいはその原料となる前駆体粉末を充填し、前記酸化物超電導体粉末あるいは前駆体粉末の空隙部分あるいは金属シース内の空隙部分を酸素を主成分とするガスで満たすことを特徴とする酸化物超電導線材の製造方法。
- 前記酸素を主成分とするガスの酸素濃度が75%以上であることを特徴とする請求項4記載の酸化物超電導線材の製造方法。
- 前記金属シース内に前記酸化物超電導体粉末あるいは前記前駆体粉末を充填する際に、予めこれらの粉末を前記酸素を主成分とするガスを満たした雰囲気内で加圧成型して作製したペレットを前記金属シース内に充填することを特徴とする請求項4または請求項5記載の酸化物超電導線材の製造方法。
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