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JP2004318981A - 磁気記録媒体 - Google Patents

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JP2004318981A
JP2004318981A JP2003110456A JP2003110456A JP2004318981A JP 2004318981 A JP2004318981 A JP 2004318981A JP 2003110456 A JP2003110456 A JP 2003110456A JP 2003110456 A JP2003110456 A JP 2003110456A JP 2004318981 A JP2004318981 A JP 2004318981A
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magnetic
layer
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magnetic recording
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Noboru Jinbo
昇 神保
Noriko Inoue
典子 井上
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Fujifilm Holdings Corp
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Fuji Photo Film Co Ltd
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Publication date
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Abstract

【課題】バックコート層の磁性層表面への写りを制御するとともに、微粒子磁性体を用いてもドロップアウトを低減し、同時に良好な走行安定性、耐久性および保存性を得ることができる磁気記録媒体を提供すること、
【解決手段】非磁性支持体上に強磁性粉末および結合剤を含む磁性層を有し、磁性層と反対側の面に非磁性粉末および結合剤を含むバックコート層を有する磁気記録媒体。前記非磁性粉末は、平均粒径が5〜300nmの針状粒子であり、かつ前記バックコート層の水溶性カチオン量は100ppm以下、水溶性アニオン量は150ppm以下である。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、高密度記録用磁気記録媒体に関するものであり、特に、走行安定性と耐久性、およびドロップアウト低減を同時に満たす磁気記録媒体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
磁気テープの分野において、近年、ミニコンピューター、パーソナルコンピューター、ワークステーションなどのオフィスコンピューターの普及に伴って、外部記憶媒体としてコンピューターデータを記録するための磁気テープ(いわゆるバックアップテープ)の研究が盛んに行われている。このような用途の磁気テープの実用化に際しては、特にコンピューターの小型化、情報処理能力の増大と相まって、記録の大容量化、小型化を達成するために、記録容量の向上が強く要求される。
【0003】
従来、磁気記録媒体には酸化鉄、Co変性酸化鉄、CrO、強磁性金属粉末、六方晶系フェライト粉末を結合剤中に分散した磁性層を非磁性支持体に塗設したものが広く用いられる。この中でも微粒子の強磁性合金粉末や六方晶系フェライト微粉末は高密度記録特性に優れていることが知られている。しかし、従来、フレキシブルメディアを使用したシステムで主流として使われてきたインダクティブヘッドを用いた場合は、これらの強磁性粉末は飽和磁化が小さく、充分な出力を得ることができなかった。しかしながら、上記の様なフレキシブルメディアを用いたリムーバブル記録においても、ハードディスクで使われている磁気抵抗型ヘッド(MRヘッド)が用いられ始めている。
【0004】
MRヘッドは高感度であるため、前記微粒子合金粉末や六方晶フェライト微粉末を用いた場合でも、充分な再生出力が得られ、これら微粒子粉末の特徴である低ノイズ化によって高いC/N比が得られることが知られている。MRヘッドを用いて高密度記録する場合、分解能を改善するために、前記微粒子強磁性粉末を使用すること、磁性層表面を平滑にすること、磁性層を薄くすることが提案されてきた。
【0005】
一方、平滑な磁性層を有する磁気記録媒体の走行性を改善するために、突起を設けたバックコート層を用いることが知られている。しかし、バック層に突起を設けたことで、前記バック層と磁性面が重なりあうと、突起が磁性面に食い込み磁性面に陥没(いわゆる「写り」)が生じ、これにより、出力の低下が引き起こされるという問題があった。この「写り」は、線記録密度が高く、かつ狭トラック化が進むと、単なる出力の低下だけではなく、信号の欠落につながる。
【0006】
写りを防止する手段として、特許文献1では、高さ100nm以上の突起密度を規定し、磁性層に剛性の高いウレタンを用い、8mmビデオにおいてバック写りの影響を低減することが開示されている。また、特許文献2においては、原子間力顕微鏡により測定された磁性層の表面形状における自乗平均表面から20nmの深さでの横断面積が、再生ビット面積の3%以上である窪みの個数が3個/100μm以下であれば、優れた電磁変換特性と低ドロップアウトおよび磁性層の優れた走行性と耐久性を両立し、高密度デジタル記録に好適な媒体を提供できると記載されている。
【0007】
また、特許文献3および4では、粒状酸化物とカーボンブラックを含むバックコート層が開示され、バックコート層とアラミドベースの接着強度が80g/(8mm幅)以上であれば、走行耐久性が良好であると記載されている。
しかし、更なる高密度記録においては、バックコート層の磁性面への写りの防止に加えて、更に、走行安定性、耐久性および保存性の改善が求められていた。
【0008】
【特許文献1】特開平10−64041号公報
【特許文献2】特開2000−40218号公報
【特許文献3】特開平11−213377号公報
【特許文献4】特開平11−259851号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、本発明の目的は、バックコート層の磁性層表面への写りを制御するとともに、微粒子磁性体を用いてもドロップアウトを低減し、同時に良好な走行安定性、耐久性および保存性を得ることができる磁気記録媒体を提供することである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、バックコート層に含まれる水溶性イオン量を制御することにより、保存性を改善し、ひいてはドロップアウトを低減することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、上記目的を達成するための手段は、以下の通りである。
(1) 非磁性支持体上に強磁性粉末および結合剤を含む磁性層を有し、磁性層と反対側の面に非磁性粉末および結合剤を含むバックコート層を有する磁気記録媒体であって、
前記非磁性粉末は、平均粒径が5〜300nmの針状粒子であり、かつ
前記バックコート層の水溶性カチオン量は100ppm以下、水溶性アニオン量は150ppm以下であることを特徴とする磁気記録媒体。
(2) 前記水溶性カチオンは、Na、K、Ca2+、Mg2+、およびNH からなる群から選ばれる少なくとも一種である(1)に記載の磁気記録媒体。
(3) 前記水溶性アニオンは、F、Cl、NO 、NO 、SO 2−、およびPO 3−からなる群から選ばれる少なくとも一種である(1)または(2)に記載の磁気記録媒体。
(4) 前記針状粒子は、酸化物である(1)〜(3)のいずれかに記載の磁気記録媒体。
(5) 前記バックコート層は、炭素数10〜26の脂肪酸および/または脂肪酸エステルおよび/または脂肪酸アミドを5重量%以下含有する(1)〜(4)のいずれかに記載の磁気記録媒体。
(6) 前記バックコート層の厚みは、0.1〜0.7μmである(1)〜(5)のいずれかに記載の磁気記録媒体。
(7) 前記バックコート層表面において原子間力顕微鏡によって測定された高さ50〜100nmの突起密度は、90μm角当たり1000個以下である(1)〜(6)のいずれかに記載の磁気記録媒体。
(8) 前記バックコート層は、カーボンブラックを更に含有する(1)〜(7)のいずれかに記載の磁気記録媒体。
(9) 前記バックコート層は、針状粒子とカーボンブラックとを60:40〜90:10の質量比で含有する(8)に記載の磁気記録媒体。
(10) 前記バックコート層は、針状粒子とカーボンブラックの合計質量を100質量部として10〜40質量部の結合剤を含有する(8)または(9)に記載の磁気記録媒体。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について更に詳細に説明する。
[バックコート層]
本発明の磁気記録媒体において、バックコート層は、非磁性粉末として、平均粒径が5〜300nmの針状粒子である。ここで、針状粒子の「平均粒径」とは、針状粒子の最も長い粒径の平均値、即ち、平均長軸長をいう。針状粒子の平均粒径は、5〜300nmであり、好ましくは5〜250nmであり、更に好ましくは10〜200nmである。
従来、バックコート層にはカーボンブラックや粒状酸化物が主成分として含有されていた。しかし、これらを主成分とするバックコート層は強度に劣り、更にバックコート層に含まれる非磁性粉末の分散が不十分なために表面に大きな突起が存在していた。このバックコート層表面に存在する突起が磁性層に転写されると、磁性層の表面平滑性を低下させ、電磁変換特性や走行耐久性の劣化を引き起こすという問題があった。そこで、本発明では、針状粒子をバックコート層に含有させ、更に、この針状粒子やカーボンブラックを高度に分散させることにより、磁性層への写りを制御することができる。さらに、本発明では、バックコート層に針状粒子を用いることで、粒状粒子を用いた場合と比較して媒体の強度を向上させ、耐久性を向上させることができる。
【0012】
本発明において、バックコート層に用いられる針状粒子の平均粒径が5nm未満では、凝集しやすくなり分散することが困難になり、バックコート層表面に大きな突起が現れ、磁性層への写りの原因となる。さらに、針状粒子の平均粒径が5nm未満では、微粒子化に伴い、高い塗膜強度を得るためにバインダーを増量することが必要となるが、バインダーの増量により、表面電気抵抗Rsが増加するという問題もある。一方、針状粒子の平均粒径が300nmを超えると、バックコート層の表面粗さが増加するという問題がある。このことは、バックコート層の薄層化により、より顕著になる。
【0013】
前記針状粒子の針状比は、2〜20であることが好ましく、より好ましくは3〜10である。針状比が上記範囲内であれば、バックコート層の薄層化と平滑化を同時に達成することができ、更に、充填性および塗膜強度の高いバックコート層を得ることができ、好ましい。
【0014】
前記針状粒子は、バックコート層の厚みの5%から100%、より好ましくは5〜70%で、一次粒子サイズの標準偏差σが平均粒径の30%以下であることが好ましく、より好ましくは25%以下である。針状粒子の大きさが、バックコート層の厚みの5%から100%の範囲、より好ましくは5〜70%の範囲であれば、分散性、表面平滑性および塗膜強度に優れたバックコート層を得ることができる。また、一次粒子サイズの標準偏差σが平均粒径の30%以下であれば、より均一な分散性および塗膜強度を得ることができる。
【0015】
バックコート層に含まれる針状粒子としては、前記粒子サイズ、サイズ分布を満たすものであれば、例えば、アルミナ、シリカ、酸化クロム、α−酸化鉄等の金属酸化物、炭酸カルシウム、硫酸バリウム等の塩類、メラミン、ベンゾグアナミン等の樹脂粒子、カーボンブラック粒子を用いることができる。前記針状粒子として、モース硬度が5〜9の硬質無機粉末を添加することで強度および耐久性を上げることが可能である。また、前記針状粒子が酸化物であれば、大気中で化学的に安定であり、製造においても取り扱いが容易である。
【0016】
本発明の磁気記録媒体において、バックコート層には、カーボンブラックが含まれることが好ましく、導電性カーボンブラックが含まれることがより好ましい。導電性カーボンブラックは、バックコート層の導電性を向上させ、帯電による走行障害を防止するだけでなく、クッション剤の役目も果たし、バックコート層表面に存在する突起の磁性層への食い込みを低減させることができる。バックコート層に含まれるカーボンブラックの平均一次粒子サイズは、10〜150nmであることが好ましい。また、前記カーボンブラックとして、粒子分布、クラスターサイズ分布の揃ったものを用いることで、バックコート層表面に存在する突起高さを均一化することができる。バックコート層に含まれるカーボンブラックの平均一次粒子サイズが上記範囲内であれば、表面平滑性および塗膜強度に優れ、かつ表面電気抵抗が低いバックコート層を得ることができる。
【0017】
バックコート層において、針状粒子とカーボンブラックを添加する割合は、質量比で、60:40〜90:10であることが好ましい。針状粒子の割合が60:40より小さい場合には、カーボンブラックが主粉体となるため、バックコート層の耐久性が低下する。また、90:10を超える場合は、カーボンブラックの割合が少なくなるため、バックコート層の電気抵抗が高くなり、帯電する可能性がある。
【0018】
バックコート層には、更に結合剤が含有される。バックコート層における結合剤量は、針状粒子とカーボンブラックの合計質量を100部として10〜40重量部とすることが好ましい。バックコート層における結合剤量が上記範囲内であれば、走行時における針状粒子とカーボンブラックの脱離が少なく、高い塗膜強度を得ることができる。また、結合剤を多量に使用することは、コストアップにつながるため、経済的な観点からも、バックコート層における結合剤量は上記範囲内であることが好ましい。結合剤としては、後述の磁性層、非磁性層に用いられているものと同様の結合剤を用いることができる。また、バックコート層の厚みは、0.1〜0.7μmであることが好ましい。バックコート層の厚みが上記範囲内であれば、表面平滑性および塗膜強度を確保することができ、更に、高密度化、薄層化を図ることができる。
【0019】
本発明の磁気記録媒体は、バックコート層の水溶性カチオン量が100ppm以下であり、水溶性アニオン量が150ppm以下であることを特徴とする。水溶性カチオン量は、好ましくは0〜80ppm、より好ましくは0〜70ppmである。水溶性アニオン量は、好ましくは0〜130ppm、より好ましくは0〜100ppmである。上記水溶性カチオンとしては、Na、K、Ca2+、Mg2+、NH が挙げられ、水溶性アニオンとしては、F、Cl、NO 、NO 、SO 2−、PO 3−が挙げられる。バックコート層に多量の水溶性カチオンや水溶性アニオンが含まれると、例えば、高温高湿等の保存下で、両者が塩を形成することによって析出物が生じるという問題がある。上記析出物が生じると、それが磁性層に転写され、ドロップアウトの増加につながる等の弊害が生じる。本発明において、バックコート層に含まれる水溶性カチオン量が100ppm以下であり、水溶性アニオン量が150ppm以下であれば、そのような析出物の発生を回避することができ、ドロップアウトの増加を防ぐことができる。
特に、Cl、SO 2−は、針状粒子、カーボンブラックの製法により、混入しやすく、かつ塩として析出し、ドロップアウト等の弊害を生じやすい。また、これらイオンが多量に含まれると、MRヘッドの腐食が懸念される。よって、本発明では、特に、Cl、SO 2−が70ppm以下、更に好ましくは50ppm以下であることが好ましい。
【0020】
本発明において、「水溶性カチオン量」、「水溶性アニオン量」とは、イオンクロマトグラフィーを使用して、試料(粉体または媒体)の水抽出液中のカチオン成分またはアニオン成分の質量を求め、カチオン成分またはアニオン成分の総質量を、抽出するときに使用した試料の質量で除した濃度(ppm)することによって得られる値である。バックコート層の水溶性カチオン量および水溶性アニオン量を測定する場合は、バックコート層のみを塗布したテープを、25℃の純水(蒸留水)に1時間浸透攪拌して得られた抽出液を使用し、支持体からの溶出イオン量を差し引いて算出する。または、支持体上に磁性層、非磁性層、バックコート層を塗布したテープから、磁性層と非磁性層を剥離して測定に供することもできる。
【0021】
本発明では、以下の点を考慮して、原料成分を適宜選択することにより、バックコート層の水溶性イオン量を上記の所望の範囲内とすることができる。
カーボンブラックは、製造に使用される原料中の不純物、および生成後冷却の時に使用される水中の不純物により、水溶性イオン量が変化する。水溶性イオン量が少ないカーボンブラックとしては、アセチレンブラックや導電性カーボンブラックを挙げることができる。また、通常のカーボンブラックをイオン交換水、蒸留水、メタノール等で洗浄し不純物を除去することも、水溶性イオンの総和を減少するときに効果がある。
【0022】
ヘマタイトの水溶性イオン量を低減するためには、出発原料となるオキシ水酸化鉄の反応、水洗に蒸留水を用い、生成物を十分に水洗し、加熱脱水処理後、再び水中でスラリー化し、水洗し不純物を処理することが重要である。また反応、表面処理に使用するアルカリ源としては、アルカリ金属水酸化物、炭酸アルカリを使用するよりもアンモニア、炭酸アンモニウムを使用することにより、水溶性イオンの総和を減少することができる。
【0023】
アルミナは、高純度アルミナの水溶性イオン量が少なく好ましい。具体例としては、例えば市販の住友化学(株)製 HIT50、HIT60、HIT70、HIT80、HIT100を挙げることができる。
上記以外の粉体においても、前記のように合成時、表面処理時、合成後のスラリー状態にて不純物を減らしたり、水洗を強化することで、水溶性イオン量を低減することができる。
【0024】
また、バックコート層には、潤滑効果を目的として、炭素数が10以上26以下の脂肪酸および/または脂肪酸エステルおよび/または脂肪酸アミドが5質量%以下含まれることが好ましい。好ましくは、0.1〜3質量%である。潤滑剤として含まれる脂肪酸、脂肪酸エステル、脂肪酸アミドの炭素数が10以上であれば、融点が高く揮発しにくく、26以下であれば分子量が適当であり潤滑剤としての浸み出し性に優れている。これらの量が5重量%以下であれば、適当な摩擦係数、高い走行耐久性を得ることができるとともに、塗膜の可塑化の問題を回避することもできる。
【0025】
具体的には、炭素数10〜24の一塩基性脂肪酸(不飽和結合を含んでも、また分岐していてもかまわない)、および、これらの金属塩(Li、Na、K、Cuなど)、または、炭素数12〜22の一価、二価、三価、四価、五価、六価アルコール(不飽和結合を含んでも、また分岐していてもかまわない)、炭素数12〜22のアルコキシアルコール、炭素数10〜24の一塩基性脂肪酸(不飽和結合を含んでも、また分岐していてもかまわない)と炭素数2〜12の一価、二価、三価、四価、五価、六価アルコールのいずれか一つ(不飽和結合を含んでも、また分岐していてもかまわない)とからなるモノ脂肪酸エステルまたはジ脂肪酸エステルまたはトリ脂肪酸エステル、アルキレンオキシド重合物のモノアルキルエーテルの脂肪酸エステル、炭素数8〜22の脂肪酸アミド、炭素数8〜22の脂肪族アミン、などを使用することができる。
【0026】
これらの具体例としては脂肪酸では、カプリン酸、カプリル酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、オレイン酸、エライジン酸、リノール酸、リノレン酸、イソステアリン酸、などが挙げられる。エステル類ではブチルステアレート、オクチルステアレート、アミルステアレート、イソオクチルステアレート、ブチルミリステート、オクチルミリステート、ブトキシエチルステアレート、ブトキシジエチルステアレート、2−エチルヘキシルステアレート、2−オクチルドデシルパルミテート、2−ヘキシルドデシルパルミテート、イソヘキサデシルステアレート、オレイルオレエート、ドデシルステアレート、トリデシルステアレート、エルカ酸オレイル、ネオペンチルグリコールジデカノエート、エチレングリコールジオレイルが挙げられる。これらの潤滑剤、帯電防止剤等は必ずしも100%純粋ではなく、主成分以外に異性体、未反応物、副反応物、分解物、酸化物等の不純分が含まれてもかまわない。これらの不純分は30%以下が好ましく、さらに好ましくは10%以下である。これらの脂肪酸の脂肪酸エステル、脂肪酸アミドも同様にバックコート層に用いることができる。
【0027】
本発明では、バックコート層表面において、原子間力顕微鏡によって測定された高さ50〜100nmの突起密度は、90μm角当たり1000個以下であることが好ましく、より好ましくは10〜600個である。バックコート層表面における突起密度が上記範囲内であれば、磁性層への食い込みが低減され、磁性層の陥没を防ぐことができる。突起密度を低減させると、圧力が分散されないため磁性層への食い込みが大きくなる。しかし、食い込みには突起の高さが支配的であるため、高さ50nm以上100nm以下の突起数が上記範囲内に制御することにより、写りへの影響を低減することができる。磁性層が薄くなるほど、バックコート層の突起が磁性層を貫通し、磁性層が欠落する傾向があるため、バックコート層表面に存在する突起数を制御することによる効果は、磁性層が薄くなるほど顕著である。また、磁性粒子が小さくなると粒子の境界が増えて塗膜のひび割れが起こりやすいので、バックコート層表面に存在する突起による磁性層の陥没が顕著になる。従って、磁性粒子が小さいほど、バックコート層表面に存在する高さ50nm以上100nm以下の突起数を制御することによる効果が顕著となる。なお、バックコート層の表面粗さは、例えば、7nm以下とすることができ、好ましくは6nm以下であり、より好ましくは5nm以下である。
【0028】
[磁性層]
本発明の磁気記録媒体は、支持体上に直接磁性層を設けても、非磁性下層を介して磁性層を設けてもよい。MRヘッドで用いる場合は磁性層を薄くするので、非磁性下層を用いた重層構成とすることが好ましい。磁性層の抗磁力Hcは159kA/M(2000Oe)以上であることが好ましく、159kA/M(2000Oe)〜400kA/M(5000Oe)であることがより好ましい。さらに、磁性層の磁化分布に於いて、80kA/M(1000Oe)以下の印可磁場によって磁化反転する成分が最大1%未満、好ましくは0.7%以下、さらに0.5%以下に規定されることがさらに好ましい。
【0029】
磁性層厚みは0.03〜0.25μmであることが好ましく、より好ましくは0.03〜0.2μm、さらに好ましくは0.05〜0.2μmである。0.03μm以上であれば、高い再生出力を得ることができ、0.25μm以下であれば高い分解能を得ることができる。磁性層の面内方法に測定した角形比SQは0.6〜0.95であることが好ましく、より好ましくは0.65〜0.85である。
【0030】
[強磁性粉末]
本発明において、磁性層に使用する強磁性粉末は、Fe、Fe−Co等のFeを主体とした針状強磁性合金粉末または六方晶フェライト粉末であることができる。六方晶フェライトとしては、バリウムフェライト、ストロンチウムフェライト、鉛フェライト、カルシウムフェライトの各置換体、Co置換体等を用いることができる。具体的には、マグネトプランバイト型のバリウムフェライト及びストロンチウムフェライト、スピネルで粒子表面を被覆したマグネトプランバイト型フェライト、更に一部スピネル相を含有したマグネトプランバイト型のバリウムフェライト及びストロンチウムフェライト等が挙げられ、その他所定の原子以外にAl、Si、S、Sc、Ti、V、Cr、Cu、Y、Mo、Rh、Pd、Ag、Sn、Sb、Te、Ba、Ta、W、Re、Au、Hg、Pb、Bi、La、Ce、Pr、Nd、P、Co、Mn、Zn、Ni、Sr、B、Ge、Nbなどの原子を含んでもかまわない。一般にはCo−Zn、Co−Ti、Co−Ti−Zr、Co−Ti−Zn、Ni−Ti−Zn、Nb−Zn−Co、Sb−Zn−Co、Nb−Zn等の元素を添加した物を使用することができる。原料・製法によっては特有の不純物を含有するものもある。
【0031】
粒子サイズは合金、六方晶フェライトともに一次粒子の平均体積が1000〜10000nmであることが好ましく、より好ましくは1500〜8500nm、さらに好ましくは1500〜6500nmである。針状合金粉末の場合、平均長軸長が20〜100nmであることが好ましく、より好ましくは25〜80nmである。結晶子サイズは4〜15nmであることが好ましく、より好ましくは6〜13nmである。六方晶フェライトの場合、六角板径で10〜50nmであることが好ましく、好ましくは10〜40nmであり、特に好ましくは15〜35nmである。特にトラック密度を上げるためMRヘッドで再生する場合、低ノイズにする必要があり、板径は35nm以下であることが好ましいが、10nmより小さいと熱揺らぎのため安定な磁化が望めない。50nmを越えるとノイズが高く、本発明における高密度磁気記録には向かない。板状比(板径/板厚)は1〜15であることが望ましい。好ましくは1〜7である。板状比が1未満であると、磁性層中の充填性は高くなるが、十分な配向性を得ることができない。15より大きいと粒子間のスタッキングによりノイズが大きくなる。この粒子サイズ範囲のBET法による比表面積は10〜100m/gを示す。比表面積は概ね粒子板径と板厚からの算術計算値と符号する。粒子板径・板厚の分布は通常狭いほど好ましい。数値化は困難であるが粒子TEM写真より500粒子を無作為に測定することで比較できる。分布は正規分布ではない場合が多いが、計算して平均サイズに対する標準偏差で表すとσ/平均サイズ=0.1〜2.0である。粒子サイズ分布をシャープにするには粒子生成反応系をできるだけ均一にすると共に、生成した粒子に分布改良処理を施すことも行われている。例えば、酸溶液中で超微細粒子を選別的に溶解する方法等も知られている。
【0032】
通常、抗磁力Hcが40〜400kA/M程度の磁性体は作成可能である。Hcは高い方が高密度記録に有利であるが、記録ヘッドの能力で制限される。本発明では磁性体のHcは119〜397kA/M程度であることができ、好ましくは159〜320kA/Mである。ヘッドの飽和磁化が1.4テスラを越える場合は、175kA/M以上にすることが好ましい。Hcは粒子サイズ、含有元素の種類と量、元素の置換サイト、粒子生成反応条件等により制御できる。飽和磁化σsは強磁性合金粉末の場合90〜150Am/kg、六方晶フェライトの場合40〜80Am/kgである。σsは微粒子になるほど小さくなる傾向がある。σs改良のためマグネトプランバイトフェライトにスピネルフェライトを複合すること、含有元素の種類と添加量の選択等が良く知られている。またW型六方晶フェライトを用いることも可能である。
【0033】
磁性体を分散する際に磁性体粒子表面を分散媒、ポリマーに合った物質で処理することも行われている。表面処理材は無機化合物、有機化合物を使用することができる。主な化合物としてはSi、Al、P、等の酸化物または水酸化物、各種シランカップリング剤、各種チタンカップリング剤が代表例である。量は磁性体に対して0.1〜10%であることができる。磁性体のpHも分散に重要である。通常4〜12程度で分散媒、ポリマーにより最適値があるが、媒体の化学的安定性、保存性から6〜11程度が選択される。磁性体に含まれる水分も分散に影響する。分散媒、ポリマーにより最適値があるが通常0.01〜2.0%が選ばれる。六方晶フェライトの製法としては、酸化バリウム・酸化鉄・鉄を置換する金属酸化物とガラス形成物質として酸化ホウ素等を所望のフェライト組成になるように混合した後溶融し、急冷して非晶質体とし、次いで再加熱処理した後、洗浄・粉砕してバリウムフェライト結晶粉体を得るガラス結晶化法、バリウムフェライト組成金属塩溶液をアルカリで中和し、副生成物を除去した後100℃以上で液相加熱した後洗浄・乾燥・粉砕してバリウムフェライト結晶粉体を得る水熱反応法、バリウムフェライト組成金属塩溶液をアルカリで中和し、副生成物を除去した後乾燥し1100℃以下で処理し、粉砕してバリウムフェライト結晶粉体を得る共沈法等があるが、本発明は製法を選ばない。
【0034】
[非磁性層]
次に支持体と磁性層の間に下層である非磁性層を設ける場合の下層に関する詳細な内容について説明する。
本発明において、下層は実質的に非磁性であればその構成は制限されるべきものではないが、通常、少なくとも樹脂からなり、好ましくは、粉体、例えば、無機粉末又は有機粉末が樹脂中に分散されたものが挙げられる。該無機粉末は、通常、好ましくは非磁性粉末であるが、下層が実質的に非磁性である範囲で磁性粉末も使用され得る。
【0035】
下層に含まれる非磁性粉末は、例えば、金属酸化物、金属炭酸塩、金属硫酸塩、金属窒化物、金属炭化物、金属硫化物等の無機化合物から選択することができる。無機化合物としては例えばα化率90%以上のα−アルミナ、β−アルミナ、γ−アルミナ、θ−アルミナ、炭化ケイ素、酸化クロム、酸化セリウム、α−酸化鉄、ヘマタイト、ゲータイト、コランダム、窒化珪素、チタンカーバイト、酸化チタン、二酸化珪素、酸化スズ、酸化マグネシウム、酸化タングステン、酸化ジルコニウム、窒化ホウ素、酸化亜鉛、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、二硫化モリブデンなどを単独または組合せで使用することができる。特に好ましいものは、粒度分布の小ささ、機能付与の手段が多いこと等から、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化鉄、硫酸バリウムであり、更に好ましいものは二酸化チタン、α酸化鉄である。これら非磁性粉末の粒子サイズは0.005〜2μmであることが好ましいが、必要に応じて粒子サイズの異なる非磁性粉末を組み合わせたり、単独の非磁性粉末でも粒径分布を広くして同様の効果をもたせることもできる。非磁性粉末の粒子サイズは0.01μm〜0.2μmであることが特に好ましい。特に、非磁性粉末が粒状金属酸化物である場合は、平均粒子径0.08μm以下であることが好ましく、針状金属酸化物である場合は、長軸長が0.3μm以下であることが好ましく、0.2μm以下であることがさらに好ましい。タップ密度は0.05〜2g/mlであることが好ましく、より好ましくは0.2〜1.5g/mlである。非磁性粉末の含水率は0.1〜5重量%であることが好ましく、より好ましくは0.2〜3重量%、更に好ましくは0.3〜1.5重量%である。非磁性粉末のpHは2〜11であることができ、5.5〜10の間であることが特に好ましい。非磁性粉末の比表面積は1〜100m/gであることが好ましく、より好ましくは5〜80m/g、更に好ましくは10〜70m/gである。非磁性粉末の結晶子サイズは0.004μm〜1μmであることが好ましく、0.04μm〜0.1μmであることが更に好ましい。DBP(ジブチルフタレート)を用いた吸油量は5〜100ml/100gであることが好ましく、より好ましくは10〜80ml/100g、更に好ましくは20〜60ml/100gである。比重は1〜12であることが好ましく、より好ましくは3〜6である。形状は針状、球状、多面体状、板状のいずれでも良い。モース硬度は4以上、10以下のものが好ましい。非磁性粉末のSA(ステアリン酸)吸着量は1〜20μmol/mであることが好ましく、より好ましくは2〜15μmol/m、さらに好ましくは3〜8μmol/mである。pHは3〜6の間にあることが好ましい。これらの非磁性粉末の表面にはAl、SiO、TiO、ZrO、SnO、Sb、ZnO、Yで表面処理することが好ましい。特に分散性に好ましいものは、Al、SiO、TiO、ZrOであり、更に好ましいものは、Al、SiO、ZrOである。これらは組み合わせて使用しても良いし、単独で用いることもできる。また、目的に応じて共沈させた表面処理層を用いても良いし、先ずアルミナで処理した後にその表層をシリカで処理する方法、またはその逆の方法を採ることもできる。また、表面処理層は目的に応じて多孔質層にしても構わないが、均質で密である方が一般には好ましい。
【0036】
本発明において、下層に用いられる非磁性粉末の具体的な例としては、昭和電工製ナノタイト、住友化学製HIT−100、ZA−G1、戸田工業社製αヘマタイトDPN−250、DPN−250BX、DPN−245、DPN−270BX、DPN−500BX、DBN−SA1、DBN−SA3、石原産業製酸化チタンTTO−51B、TTO−55A、TTO−55B、TTO−55C、TTO−55S、TTO−55D、SN−100、αヘマタイトE270、E271、E300、E303、チタン工業製酸化チタンSTT−4D、STT−30D、STT−30、STT−65C、αヘマタイトα−40、テイカ製MT−100S、MT−100T、MT−150W、MT−500B、MT−600B、MT−100F、MT−500HD、堺化学製FINEX−25、BF−1、BF−10、BF−20、ST−M、同和鉱業製DEFIC−Y、DEFIC−R、日本アエロジル製AS2BM、TiO2P25、宇部興産製100A、500A、およびそれを焼成したものが挙げられる。特に好ましい非磁性粉末は二酸化チタンとα−酸化鉄である。
【0037】
下層にカーボンブラックを混合させて公知の効果である表面電気抵抗Rsを下げること、光透過率を小さくすることができるとともに、所望のマイクロビッカース硬度を得る事ができる。また、下層にカーボンブラックを含ませることで潤滑剤貯蔵の効果をもたらすことも可能である。カーボンブラックの種類はゴム用ファーネス、ゴム用サーマル、カラー用ブラック、アセチレンブラック、等を用いることができる。下層に用いるカーボンブラックは所望する効果によって、以下のような特性を最適化すべきであり、併用することでより効果が得られることがある。
【0038】
下層に用いられるカーボンブラックの比表面積は100〜500m/gであることが好ましく、より好ましくは150〜400m/g、DBP吸油量は20〜400ml/100gであることが好ましく、より好ましくは30〜400ml/100gである。カーボンブラックの粒子径は5〜80nmであることが好ましく、より好ましく10〜50nm、さらに好ましくは10〜40nmである。カーボンブラックのpHは2〜10、含水率は0.1〜10%、タップ密度は0.1〜1g/mlであることがそれぞれ好ましい。本発明に用いられるカーボンブラックの具体的な例としてはキャボット社製BLACKPEARLS 2000、1300、1000、900、800、880、700、VULCANXC−72、三菱化成工業社製#3050B、#3150B、#3250B、#3750B、#3950B、#950、#650B、#970B、#850B、MA−600、MA−230、#4000、#4010、コロンビアンカーボン社製CONDUCTEX SC、RAVEN 8800、8000、7000、5750、5250、3500、2100、2000、1800、1500、1255、1250、アクゾー社製ケッチェンブラックECなどが挙げられる。カーボンブラックを分散剤などで表面処理したり、樹脂でグラフト化して使用しても、表面の一部をグラファイト化したものを使用してもかまわない。また、カーボンブラックを塗料に添加する前にあらかじめ結合剤で分散してもかまわない。これらのカーボンブラックは上記無機質粉末に対して50重量%を越えない範囲、非磁性層総重量の40%を越えない範囲で使用できる。これらのカーボンブラックは単独、または組合せで使用することができる。本発明で使用できるカーボンブラックは例えば「カーボンブラック便覧」(カーボンブラック協会編)を参考にすることができる。
【0039】
また下層には有機質粉末を目的に応じて、添加することもできる。例えば、アクリルスチレン系樹脂粉末、ベンゾグアナミン樹脂粉末、メラミン系樹脂粉末、フタロシアニン系顔料が挙げられるが、ポリオレフィン系樹脂粉末、ポリエステル系樹脂粉末、ポリアミド系樹脂粉末、ポリイミド系樹脂粉末、ポリフッ化エチレン樹脂も使用することができる。その製法は特開昭62−18564号公報、特開昭60−255827号公報に記されているようなものが使用できる。
【0040】
下層の結合剤樹脂、潤滑剤、分散剤、添加剤、溶剤、分散方法その他は以下に記載する磁性層のそれが適用できる。特に、結合剤樹脂量、種類、添加剤、分散剤の添加量、種類に関しては磁性層に関する公知技術が適用できる。
【0041】
[結合剤]
本発明に使用される結合剤としては従来公知の熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、反応型樹脂やこれらの混合物を使用することができる。熱可塑系樹脂としては、ガラス転移温度が−100〜150℃、数平均分子量が1,000〜200,000、好ましくは10,000〜100,000、重合度が約50〜1000程度のものを用いることができる。
【0042】
このような例としては、塩化ビニル、酢酸ビニル、ビニルアルコール、マレイン酸、アクリル酸、アクリル酸エステル、塩化ビニリデン、アクリロニトリル、メタクリル酸、メタクリル酸エステル、スチレン、ブタジエン、エチレン、ビニルブチラール、ビニルアセタール、ビニルエーテル、等を構成単位として含む重合体または共重合体、ポリウレタン樹脂、各種ゴム系樹脂が挙げられる。また、熱硬化性樹脂または反応型樹脂としてはフェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン硬化型樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、アルキド樹脂、アクリル系反応樹脂、ホルムアルデヒド樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ−ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂とイソシアネートプレポリマーの混合物、ポリエステルポリオールとポリイソシアネートの混合物、ポリウレタンとポリイソシアネートの混合物等が挙げられる。これらの樹脂については朝倉書店発行の「プラスチックハンドブック」に詳細に記載されている。また、公知の電子線硬化型樹脂を各層に使用することも可能である。これらの例とその製造方法については特開昭62−256219号公報に詳細に記載されている。以上の樹脂は単独または組合せて使用できるが、好ましいものとして塩化ビニル樹脂、塩化ビニル酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル酢酸ビニルビニルアルコール共重合体、塩化ビニル酢酸ビニル無水マレイン酸共重合体、から選ばれる少なくとも1種とポリウレタン樹脂の組合せ、またはこれらにポリイソシアネートを組み合わせたものが挙げられる。
【0043】
ポリウレタン樹脂の構造は、ポリエステルポリウレタン、ポリエーテルポリウレタン、ポリエーテルポリエステルポリウレタン、ポリカーボネートポリウレタン、ポリエステルポリカーボネートポリウレタン、ポリカプロラクトンポリウレタンなど公知のものが使用できる。ここに示したすべての結合剤について、より優れた分散性と耐久性を得るためには必要に応じ、−COOM、−SOM、−OSOM、−P=O(OM)、−O−P=O(OM)(以上につきMは水素原子、またはアルカリ金属塩基)、OH、NR、N(Rは炭化水素基)、エポキシ基、SH、CN、などから選ばれる少なくともひとつ以上の極性基を共重合または付加反応で導入したものを用いることが好ましい。このような極性基の量は10−1〜10−8モル/gとすることができ、好ましくは10−2〜10−6モル/gである。
【0044】
本発明に用いられるこれらの結合剤の具体的な例としては、ユニオンカーバイト社製VAGH、VYHH、VMCH、VAGF、VAGD、VROH、VYES、VYNC、VMCC、XYHL、XYSG、PKHH、PKHJ、PKHC、PKFE、日信化学工業社製MPR−TA、MPR−TA5、MPR−TAL、MPR−TSN、MPR−TMF、MPR−TS、MPR−TM、MPR−TAO、電気化学社製1000W、DX80、DX81、DX82、DX83、100FD、日本ゼオン社製MR−104、MR−105、MR110、MR100、MR555、400X−110A、日本ポリウレタン社製ニッポランN2301、N2302、N2304、大日本インキ社製パンデックスT−5105、T−R3080、T−5201、バーノックD−400、D−210−80、クリスボン6109、7209、東洋紡社製バイロンUR8200、UR8300、UR−8700、RV530,RV280、大日精化社製ダイフェラミン4020、5020、5100、5300、9020、9022、7020、三菱化成社製MX5004、三洋化成社製サンプレンSP−150、旭化成社製サランF310、F210などが挙げられる。
【0045】
本発明において、非磁性層、磁性層に用いられる結合剤は非磁性粉末または強磁性粉末に対し、5〜50重量%の範囲で用いることができ、好ましくは10〜30重量%の範囲で用いることができる。塩化ビニル系樹脂を用いる場合は5〜30重量%、ポリウレタン樹脂を用いる場合は2〜20重量%、ポリイソシアネートは2〜20重量%の範囲でこれらを組み合わせて用いることが好ましいが、例えば、微量の脱塩素によりヘッド腐食が起こる場合は、ポリウレタンのみまたはポリウレタンとイソシアネートのみを使用することも可能である。本発明において、ポリウレタンを用いる場合はガラス転移温度が−50〜150℃、好ましくは0℃〜100℃、更に好ましくは30℃〜90℃、破断伸びが100〜2000%、破断応力は0.05〜10kg/mm、降伏点は0.05〜10kg/mmであることがそれぞれ好ましい。
【0046】
本発明の磁気記録媒体は二層以上から構成され得る。従って、結合剤量、結合剤中に占める塩化ビニル系樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリイソシアネート、あるいはそれ以外の樹脂の量、磁性層を形成する各樹脂の分子量、極性基量、あるいは先に述べた樹脂の物理特性などを必要に応じ非磁性層、磁性層とで変えることはもちろん可能であり、むしろ各層で最適化すべきであり、多層磁性層に関する公知技術を適用できる。例えば、各層で結合剤量を変更する場合、磁性層表面の擦傷を減らすためには磁性層の結合剤量を増量することが有効であり、ヘッドに対するヘッドタッチを良好にするためには、非磁性層の結合剤量を多くして柔軟性を持たせることができる。
【0047】
本発明に用いられるポリイソシアネートとしては、トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ナフチレン−1,5−ジイソシアネート、o−トルイジンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート等のイソシアネート類、また、これらのイソシアネート類とポリアルコールとの生成物、また、イソシアネート類の縮合によって生成したポリイソシアネート等を使用することができる。これらのイソシアネート類の市販されている商品名としては、日本ポリウレタン社製コロネートL、コロネートHL、コロネート2030、コロネート2031、ミリオネートMR、ミリオネートMTL、武田薬品社製タケネートD−102、タケネートD−110N、タケネートD−200、タケネートD−202、住友バイエル社製デスモジュールL、デスモジュールIL、デスモジュールN、デスモジュールHL、等があり、これらを単独または硬化反応性の差を利用して二つもしくはそれ以上の組合せで各層とも用いることができる。
【0048】
[カーボンブラック、研磨剤]
本発明において、磁性層に使用されるカーボンブラックとしては、ゴム用ファーネス、ゴム用サーマル、カラー用ブラック、アセチレンブラック、等を用いることができる。比表面積は5〜500m/g、DBP吸油量は10〜400ml/100gであることができ、粒子径は5〜300nmであることができ、好ましくは10〜250nm、更に好ましくは20〜200nmである。pHは2〜10、含水率は0.1〜10%、タップ密度は0.1〜1g/cc、であることがそれぞれ好ましい。本発明に用いられるカーボンブラックの具体的な例としてはキャボット社製BLACKPEARLS 2000、1300、1000、900、905、800、700、VULCAN XC−72、旭カーボン社製#80、#60、#55、#50、#35、三菱化成工業社製#2400B、#2300、#900、#1000、#30、#40、#10B、コロンビアンカーボン社製CONDUCTEX SC、RAVEN 150、50、40、15、RAVEN−MT−P、日本EC社製ケッチェンブラックEC、などが挙げられる。カーボンブラックを分散剤などで表面処理したり、樹脂でグラフト化して使用しても、表面の一部をグラファイト化したものを使用してもかまわない。また、カーボンブラックを磁性塗料に添加する前にあらかじめ結合剤で分散してもかまわない。これらのカーボンブラックは単独、または組合せで使用することができる。カーボンブラックを使用する場合は磁性体に対する量の0.1〜30%で用いることが好ましい。カーボンブラックは磁性層の帯電防止、摩擦係数低減、遮光性付与、膜強度向上などの働きがあり、これらは用いるカーボンブラックにより異なる。従って本発明に使用されるこれらのカーボンブラックは上層磁性層、下層非磁性層でその種類、量、組合せを変え、粒子サイズ、吸油量、電導度、pHなどの先に示した諸特性をもとに目的に応じて使い分けることはもちろん可能であり、むしろ各層で最適化すべきものである。本発明の磁性層で使用できるカーボンブラックは例えば「カーボンブラック便覧」(カーボンブラック協会編)を参考にすることができる。
【0049】
本発明に用いられる研磨剤としては、α化率90%以上のα−アルミナ、β−アルミナ、炭化ケイ素、酸化クロム、酸化セリウム、α−酸化鉄、コランダム、人造ダイアモンド、窒化珪素、炭化珪素チタンカーバイト、酸化チタン、二酸化珪素、窒化ホウ素、など主としてモース硬度6以上の公知の材料を、単独または組合せで使用することができる。また、これらの研磨剤どうしの複合体(研磨剤を他の研磨剤で表面処理したもの)を使用してもよい。これらの研磨剤には主成分以外の化合物または元素が含まれる場合もあるが主成分が90%以上であれば効果に変わりはない。これら研磨剤の粒子サイズは0.01〜2μmであることが好ましく、更に好ましくは0.05〜1.0μm、特に好ましくは0.05〜0.5μmの範囲である。特に電磁変換特性を高めるためには、その粒度分布が狭い方が好ましい。また耐久性を向上させるには必要に応じて粒子サイズの異なる研磨剤を組み合わせたり、単独の研磨剤でも粒径分布を広くして同様の効果をもたせることも可能である。タップ密度は0.3〜2g/cc、含水率は0.1〜5%、pHは2〜11、比表面積は1〜30m/gであることがそれぞれ好ましい。本発明に用いられる研磨剤の形状は針状、球状、サイコロ状、のいずれでも良いが、形状の一部に角を有するものが研磨性が高く好ましい。具体的には住友化学社製AKP−12、AKP−15、AKP−20、AKP−30、AKP−50、HIT20、HIT−30、HIT−55、HIT60、HIT70、HIT80、HIT100、レイノルズ社製ERC−DBM、HP−DBM、HPS−DBM、不二見研磨剤社製WA10000、上村工業社製UB20、日本化学工業社製G−5、クロメックスU2、クロメックスU1、戸田工業社製TF100、TF140、イビデン社製ベータランダムウルトラファイン、昭和鉱業社製B−3などが挙げられる。これらの研磨剤は必要に応じ非磁性層に添加することもできる。非磁性層に添加することで表面形状を制御したり、研磨剤の突出状態を制御したりすることができる。これら磁性層、非磁性層の添加する研磨剤の粒径、量はむろん最適値に設定すべきものである。
【0050】
[添加剤]
本発明において、磁性層と非磁性層に使用される添加剤としては、潤滑効果、帯電防止効果、分散効果、可塑効果などをもつものを使用することができる。二硫化モリブデン、二硫化タングステングラファイト、窒化ホウ素、フッ化黒鉛、シリコーンオイル、極性基をもつシリコーン、脂肪酸変性シリコーン、フッ素含有シリコーン、フッ素含有アルコール、フッ素含有エステル、ポリオレフィン、ポリグリコール、アルキル燐酸エステルおよびそのアルカリ金属塩、アルキル硫酸エステルおよびそのアルカリ金属塩、ポリフェニルエーテル、フェニルホスホン酸、αナフチル燐酸、フェニル燐酸、ジフェニル燐酸、p−エチルベンゼンホスホン酸、フェニルホスフィン酸、アミノキノン類、各種シランカップリング剤、チタンカップリング剤、フッ素含有アルキル硫酸エステルおよびそのアルカリ金属塩、炭素数10〜24の一塩基性脂肪酸(不飽和結合を含んでも、また分岐していてもかまわない)、および、これらの金属塩(Li、Na、K、Cuなど)、または、炭素数12〜22の一価、二価、三価、四価、五価、六価アルコール、(不飽和結合を含んでも、また分岐していてもかまわない)、炭素数12〜22のアルコキシアルコール、炭素数10〜24の一塩基性脂肪酸(不飽和結合を含んでも、また分岐していてもかまわない)と炭素数2〜12の一価、二価、三価、四価、五価、六価アルコールのいずれか一つ(不飽和結合を含んでも、また分岐していてもかまわない)とからなるモノ脂肪酸エステルまたはジ脂肪酸エステルまたはトリ脂肪酸エステル、アルキレンオキシド重合物のモノアルキルエーテルの脂肪酸エステル、炭素数8〜22の脂肪酸アミド、炭素数8〜22の脂肪族アミン、などが使用できる。
【0051】
これらの具体例としては、脂肪酸では、カプリン酸、カプリル酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、オレイン酸、エライジン酸、リノール酸、リノレン酸、イソステアリン酸、などが挙げられる。エステル類ではブチルステアレート、オクチルステアレート、アミルステアレート、イソオクチルステアレート、ブチルミリステート、オクチルミリステート、ブトキシエチルステアレート、ブトキシジエチルステアレート、2−エチルヘキシルステアレート、2−オクチルドデシルパルミテート、2−ヘキシルドデシルパルミテート、イソヘキサデシルステアレート、オレイルオレエート、ドデシルステアレート、トリデシルステアレート、エルカ酸オレイル、ネオペンチルグリコールジデカノエート、エチレングリコールジオレイル、アルコール類ではオレイルアルコール、ステアリルアルコール、ラウリルアルコール、などが挙げられる。また、アルキレンオキサイド系、グリセリン系、グリシドール系、アルキルフェノールエチレンオキサイド付加体、等のノニオン界面活性剤、環状アミン、エステルアミド、第四級アンモニウム塩類、ヒダントイン誘導体、複素環類、ホスホニウムまたはスルホニウム類、等のカチオン系界面活性剤、カルボン酸、スルフォン酸、燐酸、硫酸エステル基、燐酸エステル基、などの酸性基を含むアニオン界面活性剤、アミノ酸類、アミノスルホン酸類、アミノアルコールの硫酸または燐酸エステル類、アルキルベダイン型、等の両性界面活性剤等も使用できる。これらの界面活性剤については、「界面活性剤便覧」(産業図書株式会社発行)に詳細に記載されている。これらの潤滑剤、帯電防止剤等は必ずしも100%純粋ではなく、主成分以外に異性体、未反応物、副反応物、分解物、酸化物等の不純分が含まれてもかまわない。これらの不純分は30%以下が好ましく、さらに好ましくは10%以下である。
【0052】
本発明で使用されるこれらの潤滑剤、界面活性剤は個々に異なる物理的作用を有するものであり、その種類、量、および相乗的効果を生み出す潤滑剤の併用比率は目的に応じ最適に定められるべきものである。非磁性層、磁性層で融点の異なる脂肪酸を用い表面へのにじみ出しを制御する、沸点、融点や極性の異なるエステル類を用い表面へのにじみ出しを制御する、界面活性剤量を調節することで塗布の安定性を向上させる、潤滑剤の添加量を中間層で多くして潤滑効果を向上させるなど考えられ、無論ここに示した例のみに限られるものではない。一般には潤滑剤の総量は、磁性体または非磁性粉末に対し、0.1%〜50%、好ましくは2%〜25%の範囲で選択される。
【0053】
また本発明で用いられる添加剤のすべてまたはその一部は、磁性および非磁性塗料製造のどの工程で添加してもかまわない、例えば、混練工程前に磁性体と混合する場合、磁性体と結合剤と溶剤による混練工程で添加する場合、分散工程で添加する場合、分散後に添加する場合、塗布直前に添加する場合などがある。また、目的に応じて磁性層を塗布した後、同時または逐次塗布で、添加剤の一部または全部を塗布することにより目的が達成される場合がある。また、目的によってはカレンダーした後、またはスリット終了後、磁性層表面に潤滑剤を塗布することもできる。本発明で用いられる有機溶剤は公知のものが使用でき、例えば特開昭6−68453号公報に記載の溶剤を用いることができる。
【0054】
[支持体]
本発明に用いられる支持体は、特に制限されるべきものではないが、実質的に非磁性で可撓性のものが好ましい。本発明に用いられる可撓性支持体としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、等のポリエステル類、ポリオレフィン類、セルローストリアセテート、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリスルフォン、ポリアラミド、芳香族ポリアミド、ポリベンゾオキサゾールなどの公知のフィルムが使用できる。ポリエチレンナフタレート、ポリアミドなどの高強度支持体を用いることが好ましい。また必要に応じ、磁性面とベース面の表面粗さを変えるため特開平3−224127号公報に示されるような積層タイプの支持体を用いることもできる。これらの支持体にはあらかじめコロナ放電処理、プラズマ処理、易接着処理、熱処理、除塵処理、などをおこなっても良い。また本発明では、支持体としてアルミまたはガラス基板を適用することも可能である。
【0055】
本発明の目的を達成するには、支持体としてWYKO社製TOPO−3Dのmirau法で測定した中心面平均表面粗さが8.0nm以下、好ましくは4.0nm以下、さらに好ましくは2.0nm以下のものを用いることが好ましい。これらの支持体は単に中心面平均表面粗さが小さいだけではなく、0.5μm以上の粗大突起がないことが好ましい。また表面の粗さ形状は必要に応じて支持体に添加されるフィラーの大きさと量により自由にコントロールされるものである。これらのフィラーの一例としては、Ca、Si、Tiなどの酸化物や炭酸塩の他、アクリル系などの有機微粉末が挙げられる。支持体の最大高さSRmaxは1μm以下、十点平均粗さSRzは0.5μm以下、中心面山高さはSRpは0.5μm以下、中心面谷深さSRvは0.5μm以下、中心面面積率SSrは10%以上、90%以下、平均波長Sλaは5μm以上、300μm以下であることがそれぞれ好ましい。所望の電磁変換特性と耐久性を得るため、これら支持体の表面突起分布をフィラーにより任意にコントロールできるものであり、0.01μmから1μmの大きさのもの各々を0.1mmあたり0個から2000個の範囲でコントロールすることができる。本発明に用いられる支持体のF−5値は、好ましくは5〜50kg/mm、また、支持体の100℃30分での熱収縮率は好ましくは3%以下、さらに好ましくは1.5%以下、80℃30分での熱収縮率は好ましくは1%以下、さらに好ましくは0.5%以下である。破断強度は5〜100kg/mm、弾性率は100〜2000kg/mmであることがそれぞれ好ましい。温度膨張係数は10−4〜10−8/℃であることが好ましく、より好ましくは10−5〜10−6/℃である。湿度膨張係数は10−4/RH%以下であることが好ましく、より好ましくは10−5/RH%以下である。これらの熱特性、寸法特性、機械強度特性は支持体の面内各方向に対し10%以内の差でほぼ等しいことが好ましい。
【0056】
[層構成]
本発明の磁気記録媒体の厚み構成は、支持体が2〜100μmであることが好ましく、より好ましくは2〜80μmである。コンピューターテープの支持体は、3.0〜6.5μmであることが好ましく、より好ましくは3.0〜6.0μm、更に好ましくは4.0〜5.5μmである。
【0057】
支持体と非磁性層または磁性層の間に密着性向上のための下塗層を設けてもかまわない。本下塗層厚みは0.01〜0.5μmであることができ、好ましくは0.02〜0.5μmである。
【0058】
本発明の磁気記録媒体の下層である非磁性層の厚みは、0.2μm以上5.0μm以下であることが好ましく、より好ましくは0.3μm以上3.0μm以下、さらに好ましくは1.0μm以上2.5μm以下である。なお、本発明媒体の下層は実質的に非磁性層であればその効果を発揮するものであり、たとえば不純物としてあるいは意図的に少量の磁性体を含んでも、本発明の効果を示すものであり、本発明と実質的に同一の構成と見なすことができることは言うまでもない。実質的に非磁性層とは下層の残留磁束密度が0.01T(100G)以下または抗磁力が7960A/m(100Oe)以下であることを示し、好ましくは残留磁束密度と抗磁力をもたないことを示す。
【0059】
[製法]
本発明の磁気記録媒体の磁性塗布液、非磁性塗布液を製造する工程は、少なくとも混練工程、分散工程、およびこれらの工程の前後に必要に応じて設けた混合工程からなる。個々の工程はそれぞれ2段階以上にわかれていてもかまわない。本発明に使用する磁性体、非磁性粉体、結合剤、カーボンブラック、研磨剤、帯電防止剤、潤滑剤、溶剤などすべての原料はどの工程の最初または途中で添加してもかまわない。また、個々の原料を2つ以上の工程で分割して添加してもかまわない。例えば、ポリウレタンを混練工程、分散工程、分散後の粘度調整のための混合工程で分割して投入してもよい。本発明の目的を達成するためには、従来の公知の製造技術を一部の工程として用いることができる。混練工程ではオープンニーダ、連続ニーダ、加圧ニーダ、エクストルーダなど強い混練力をもつものを使用することが好ましい。ニーダを用いる場合は磁性体または非磁性粉体と結合剤のすべてまたはその一部(ただし全結合剤の30%以上が好ましい)および磁性体100部に対し15〜500部の範囲で混練処理される。これらの混練処理の詳細については特開平1−106338号公報、特開平1−79274号公報に記載されている。また、磁性層塗布液および非磁性層塗布液を分散させるにはガラスビーズを用いることができるが、高比重の分散メディアであるジルコニアビーズ、チタニアビーズ、スチールビーズが好適である。これら分散メディアの粒径と充填率は最適化して用いられる。分散機は公知のものを使用することができる。
【0060】
本発明で重層構成の磁気記録媒体を塗布する場合、以下のような方式を用いることが好ましい。第一に磁性塗料の塗布で一般的に用いられるグラビア塗布、ロール塗布、ブレード塗布、エクストルージョン塗布装置等により、まず下層を塗布し、下層がウェット状態のうちに特公平1−46186号公報や特開昭60−238179号公報、特開平2−265672号公報に開示されている支持体加圧型エクストルージョン塗布装置により上層を塗布する方法;第二に特開昭63−88080号公報、特開平2−17971号公報、特開平2−265672号公報に開示されているような塗布液通液スリットを二つ内蔵する一つの塗布ヘッドにより上下層をほぼ同時に塗布する方法;第三に特開平2−174965号公報に開示されているバックアップロール付きエクストルージョン塗布装置により上下層をほぼ同時に塗布する方法である。なお、磁性粒子の凝集による磁気記録媒体の電磁変換特性等の低下を防止するため、特開昭62−95174号公報や特開平1−236968号公報に開示されているような方法により塗布ヘッド内部の塗布液にせん断を付与することが望ましい。さらに、塗布液の粘度については、特開平3−8471号公報に開示されている数値範囲を満足する必要がある。本発明の構成を実現するには下層を塗布し乾燥させたのち、その上に磁性層を設ける逐次重層塗布を用いてもむろんかまわず、本発明の効果が失われるものではない。ただし、塗布欠陥を少なくし、ドロップアウトの低減などの品質向上を図るためには、前述の同時重層塗布を用いることが好ましい。
【0061】
磁気テープの場合はコバルト磁石やソレノイドを用いて長手方向に配向する。乾燥風の温度、風量、塗布速度を制御することで塗膜の乾燥位置を制御できる様にすることが好ましく、塗布速度は20m/分〜1000m/分、乾燥風の温度は60℃以上が好ましい、また磁石ゾーンに入る前に適度の予備乾燥を行なうこともできる。
【0062】
カレンダ処理ロールとしてエポキシ、ポリイミド、ポリアミド、ポリイミドアミド等の耐熱性のあるプラスチックロールまたは金属ロールを用いることができ、特に両面磁性層とする場合は金属ロール同士で処理することが好ましい。処理温度は、好ましくは50℃以上、さらに好ましくは100℃以上である。線圧力は好ましくは200kg/cm以上、さらに好ましくは300kg/cm以上である。
【0063】
[物理特性]
本発明の磁気記録媒体において、磁性層の飽和磁束密度は強磁性金属粉末を用いた場合、0.2T(2000G)以上0.5T(5000G)以下、六方晶フェライトを用いた場合は0.1T(1000G)以上0.3T(3000G)以下であることが好ましい。抗磁力HcおよびHrは119kA/m(1500Oe)以上398kA/m(5000Oe)以下であることが好ましく、より好ましくは135kA/m(1700Oe)以上、239kA/m(3000Oe)以下である。抗磁力の分布は狭い方が好ましく、SFDおよびSFDrは0.6以下であることが好ましい。角形比は2次元ランダムの場合は0.55以上0.67以下であることが好ましく、より好ましくは0.58以上、0.64以下であり、3次元ランダムの場合は0.45以上、0.55以下であることが好ましく、垂直配向の場合は垂直方向に0.6以上、好ましくは0.7以上であることが好ましく、反磁界補正を行った場合は0.7以上であることが好ましく、より好ましくは0.8以上である。2次元ランダム、3次元ランダムとも配向度比は0.8以上であることが好ましい。2次元ランダムの場合、垂直方向の角形比、Br、HcおよびHrは面内方向の0.1〜0.5倍以内とすることが好ましい。
【0064】
磁気テープの場合、角型比は0.7以上であることが好ましく、より好ましくは0.8以上である。本発明の磁気記録媒体のヘッドに対する摩擦係数は、温度−10℃から40℃、湿度0%から95%の範囲において0.5以下であることが好ましく、より好ましくは0.3以下であり、表面固有抵抗は、好ましくは磁性面10〜1012オーム/sqであることが好ましく、帯電位は−500Vから+500V以内であることが好ましい。磁性層の0.5%伸びでの弾性率は面内各方向で好ましくは0.98〜19.6GPa(100〜2000kg/mm)、破断強度は好ましくは98〜686MPa(10〜70kg/mm)、磁気記録媒体の弾性率は面内各方向で好ましくは0.98〜14.7GPa(100〜1500kg/mm)、残留のびは好ましくは0.5%以下、100℃以下のあらゆる温度での熱収縮率は好ましくは1%以下、さらに好ましくは0.5%以下、もっとも好ましくは0.1%以下である。磁性層のガラス転移温度(110Hzで測定した動的粘弾性測定の損失弾性率の極大点)は50℃以上120℃以下であることが好ましく、下層非磁性層のそれは0℃〜100℃であることが好ましい。損失弾性率は1×10〜8×10dyne/cm(1×10〜8×10Pa)の範囲にあることが好ましく、損失正接は0.2以下であることが好ましい。損失正接が大きすぎると粘着故障が発生しやすい。これらの熱特性や機械特性は媒体の面内各方向で10%以内でほぼ等しいことが好ましい。磁性層中に含まれる残留溶媒は、好ましくは100mg/m以下、さらに好ましくは10mg/m以下である。塗布層が有する空隙率は非磁性層、磁性層とも好ましくは30容量%以下、さらに好ましくは20容量%以下である。空隙率は高出力を果たすためには小さい方が好ましいが、目的によってはある値を確保した方が良い場合がある。例えば、繰り返し用途が重視されるディスク媒体では空隙率が大きい方が走行耐久性は好ましいことが多い。
【0065】
磁性層の中心面平均表面粗さRaは、WYCO社製TOPO−3Dのmirau法を用いて、約250μm×250μmの面積での測定で、4.0nm以下であることが好ましく、より好ましくは3.8nm以下、さらに好ましくは3.5nm以下である。磁性層の最大高さSRmaxは0.5μm以下、十点平均粗さSRzは0.3μm以下、中心面山高さSRpは0.3μm以下、中心面谷深さSRvは0.3μm以下、中心面面積率SSrは20%以上、80%以下、平均波長Sλaは5μm以上、300μm以下であることがそれぞれ、電磁変換特性、摩擦係数を最適化することができるという点で好ましい。これらは支持体のフィラーによる表面性のコントロールや前述したように磁性層に添加する粉体の粒径と量、カレンダ処理のロール表面形状などで容易にコントロールすることができる。カールは±3mm以内とすることが好ましい。
【0066】
本発明の磁気記録媒体が非磁性層と磁性層を有する場合、目的に応じ非磁性層と磁性層でこれらの物理特性を変えることができるのは容易に推定されることである。例えば、磁性層の弾性率を高くし走行耐久性を向上させると同時に非磁性層の弾性率を磁性層より低くして磁気記録媒体のヘッドへの当りを良くするなどである。
【0067】
【実施例】
以下、本発明の具体的実施例を説明するが、本発明はこれに限定されるべきものではない。
【0068】
<塗料の作成>
磁性塗料1
強磁性金属粉末 100部
Co/Fe=30at%、Al/Fe=8at%、Y/Fe=6at%
Hc:1.87×10A/m(2350Oe)
比表面積:55m/g
σs:140A・m/kg (140emu/g)
結晶子サイズ:140Å
長軸長:0.068μm
針状比 6
表面酸化膜厚:25Å
塩化ビニル重合体 MR110(日本ゼオン社製) 12部
ポリウレタン樹脂 UR8200(東洋紡社製) 4部
αアルミナ(平均粒子径 0.15μm) 5部
カーボンブラック(平均粒子サイズ 40nm) 5部
ブチルステアレート 5部
ステアリン酸 6部
メチルエチルケトン 180部
シクロヘキサノン 180部
【0069】
<非磁性塗料>
非磁性粉末 針状ヘマタイト 80部
平均長軸長:0.15μm
BET法による比表面積:50m/g
pH:8.5
表面処理剤:Al
カーボンブラック(平均粒子径:20n 20部
塩化ビニル共重合体 MR110(日本ゼオン社製 12部
ポリウレタン樹脂 UR8200(東洋紡社製) 5部
ブチルステアレート 1部
ステアリン酸 3部
メチルエチルケトン/シクロヘキサノン(8/2混合溶剤) 250部
【0070】
<バックコート>
非磁性粉末 針状ヘマタイト(表1参照) 80部
平均長軸長:0.16μm
BET法による比表面積:55m/g
pH:8.9
表面処理剤:Al
カーボンブラック(表2参照) 20部
平均一次粒径:17nm
BET:210m/g
DBP吸油量:68ml/100g
ポリウレタン樹脂 UR8200(東洋紡社製) 18.5部
ステアリン酸 3部
メチルエチルケトン/シクロヘキサノン(8/2混合溶剤) 250部
【0071】
カーボンブラック、ヘマタイト、アルミナの水溶性イオン量の測定結果を表1に示す。カーボンブラック1〜4は、原料の純度と水洗レベルを変えて作製した。ヘマタイトも同様である。
【0072】
【表1】
Figure 2004318981
【0073】
製法:コンピューターテープ
上記の磁性層、非磁性層用塗料について、各成分をニーダで混練した後、サンドミルを用いて4時間分散させた。得られた分散液にポリイソシアネートを非磁性層の塗布液には2.5部、磁性層の塗布液には3部加え、さらにそれぞれにシクロヘキサノン40部を加え、1μmの平均孔径を有するフィルターを用いて濾過し、非磁性層形成用および磁性層形成用の塗布液をそれぞれ調製した。バックコート液は上記の組成物を3本ロールミルで混練した後、サンドミルを用いて分散させ、得られた分散液にポリイソシアネート20部とメチルエチルケトン1000部を加えて1μmの平均孔径を有するフィルターを用い濾過して得た。得られた非磁性層塗布液を、乾燥後の下層の厚さが1.7μmになるように、さらにその直後にその上に磁性層の厚さが0.1μmになるように、厚さ4.4μmで中心面平均表面粗さが2nmのアラミド支持体上に同時重層塗布を行い、両層がまだ湿潤状態にあるうちに0.6T(6000G)の磁力を持つコバルト磁石と0.6T(6000G)の磁力を持つソレノイドにより配向させた。乾燥後、金属ロールのみから構成される7段のカレンダーで温度85℃にて分速200m/min.で処理を行い、その後、厚み0.5μmのバック層を塗布した。8mmの幅にスリットし、スリット品の送り出し、巻き取り装置を持った装置に不織布とカミソリブレードが磁性面に押し当たるように取り付け、テープクリーニング装置で磁性層の表面のクリーニングを行い、テープ試料を得た。
【0074】
コンピューターテープの各々の性能を下記の測定法により評価した。
(1)中心面平均表面粗さ(Ra)
3D−MIRAUでの表面粗さ(Ra):WYKO社製TOPO3Dを用いて、MIRAU法で約250×250μmの面積のRa、Rrms、Peak−Valley値を測定した。測定波長約650nmにて球面補正、円筒補正を加えている。本方式は光干渉にて測定する非接触表面粗さ計である。
(2)粉体の水溶性イオン量バック層の水溶性イオン量、
▲1▼カーボンブラック、ヘマタイト、アルミナの水溶性イオン量
カーボン5gに純水を加えて50ccとし、25℃で1時間攪拌した抽出液について、イオンクロマトグラフィーを使用し、カチオン(Na、K、Ca2+、Mg2+、NH )、およびアニオン(Cl、NO 、Br、NO 、PO 3−、SO 2−)の量を測定した。水溶性カチオン量は、カチオン(Na、K、Ca2+、Mg2+、NH )総重量をカーボンブラック重量5gで除した濃度(ppm)である。水溶性アニオン量はアニオン(Cl、NO 、Br、NO 、PO 3−、SO 2−)の総重量をカーボンブラック重量5gで除した濃度(ppm)である。ヘマタイトおよびアルミナについても、同様の方法で測定した。
▲2▼バック層のみを塗布したテープ(バックコートの重量0.5g)を25℃で純水(蒸留水)に1時間浸透攪拌した。この抽出液について、イオンクロマトグラフィーを使用して、水溶性カチオン(Na、K、Ca2+、Mg2+、NH )量および水溶性アニオン(Cl、NO 、Br、NO 、PO 3−、SO 2−)量を求めた。
(3)バック層摩擦係数
SUS420J、直径4mmのポールに90度ラップさせ、荷重20g、引っ張り速度14mm/secで、23℃70%の環境で測定した。
(4)保存性
60℃90%RHで1週間保存後の摩擦係数及びテープ表面を光学顕微鏡及びSEMで観察し、テープ(バック面)の表面で析出物が観察されなかった場合を「○」、析出物が少し観察された場合を「△」、析出物が多量に観察された場合を「×」として評価した。
【0075】
実施例2
バックコート層処方にαアルミナ(平均長軸径:0.18μm)を3部添加する以外は実施例1と同様に作成した。
【0076】
実施例3
バックコート層のカーボンの種類を変更した以外(表2参照)は、実施例1と同様に作成した。
【0077】
比較例1、2
バックコート層のカーボンブラックおよびヘマタイトの種類を変更した以外(表2参照)は、実施例1と同様に作成した。
【0078】
【表2】
Figure 2004318981
【0079】
表2の結果から、実施例の磁気テープは比較例の磁気テープと比べて、バックコート層の表面粗さ(Ra)が小さく平滑であり、さらに、摩擦係数が小さく走行安定性および走行耐久性が良好であった。更に、実施例の磁気テープは比較例の磁気テープと比べて、高温高湿保存後の摩擦係数が小さく、析出物も観察されず、保存性も良好であった。本発明の磁気記録媒体は、平滑で汚れが少ないことから、粒子脱落等によるドロップアウトも少ないと考えられ、従来のインダクティブヘッドのみならず、よりノイズが重要なMRヘッドにも好適である。
【0080】
【発明の効果】
本発明により、バックコート層の磁性層表面への写りを制御するとともに、微粒子磁性体を用いてもドロップアウトを低減し、同時に良好な走行安定性、耐久性および保存性を得ることができる磁気記録媒体を提供することができる。

Claims (10)

  1. 非磁性支持体上に強磁性粉末および結合剤を含む磁性層を有し、磁性層と反対側の面に非磁性粉末および結合剤を含むバックコート層を有する磁気記録媒体であって、
    前記非磁性粉末は、平均粒径が5〜300nmの針状粒子であり、かつ
    前記バックコート層の水溶性カチオン量は100ppm以下、水溶性アニオン量は150ppm以下であることを特徴とする磁気記録媒体。
  2. 前記水溶性カチオンは、Na、K、Ca2+、Mg2+、およびNH からなる群から選ばれる少なくとも一種である請求項1に記載の磁気記録媒体。
  3. 前記水溶性アニオンは、F、Cl、NO 、NO 、SO 2−、およびPO 3−からなる群から選ばれる少なくとも一種である請求項1または2に記載の磁気記録媒体。
  4. 前記針状粒子は、酸化物である請求項1〜3のいずれか1項に記載の磁気記録媒体。
  5. 前記バックコート層は、炭素数10〜26の脂肪酸および/または脂肪酸エステルおよび/または脂肪酸アミドを5重量%以下含有する請求項1〜4のいずれか1項に記載の磁気記録媒体。
  6. 前記バックコート層の厚みは、0.1〜0.7μmである請求項1〜5のいずれか1項に記載の磁気記録媒体。
  7. 前記バックコート層表面において原子間力顕微鏡によって測定された高さ50〜100nmの突起密度は、90μm角当たり1000個以下である請求項1〜6のいずれか1項に記載の磁気記録媒体。
  8. 前記バックコート層は、カーボンブラックを更に含有する請求項1〜7のいずれか1項に記載の磁気記録媒体。
  9. 前記バックコート層は、針状粒子とカーボンブラックとを60:40〜90:10の質量比で含有する請求項8に記載の磁気記録媒体。
  10. 前記バックコート層は、針状粒子とカーボンブラックの合計質量を100質量部として10〜40質量部の結合剤を含有する請求項8または9に記載の磁気記録媒体。
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