JP3949421B2 - 磁気記録媒体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は塗布型の高記録密度の磁気記録媒体に関する。特に磁性層と実質的に非磁性の下層を有し、最上層に強磁性金属微粉末または六方晶フェライト微粉末を含む高密度記録用の磁気記録媒体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
磁気ディスクの分野において、近年Co変性酸化鉄を用いた2MBのMF−2HDフレキシブルディスクがパーソナルコンピュータに標準搭載されるようになっている。しかし、扱うデータ容量が急激に増加している今日において、その容量は十分とは言えなくなり、フレキシブルディスクの大容量化が望まれていた。
【0003】
また磁気テープの分野においても近年、パーソナルコンピューター、ワークステーションなどの普及に伴って、外部記憶媒体としてコンピューターデータを記録するための磁気テープ(いわゆるバックアップテープ)の研究が盛んに行われている。このような用途の磁気テープの実用化に際しては、とくにコンピューターの小型化、情報処理能力の増大と相まって、記録の大容量化、小型化を達成するために、記録容量の向上が強く要求されている。
【0004】
従来、磁気記録媒体には酸化鉄、Co変性酸化鉄、CrO2、強磁性金属粉末、六方晶系フェライト粉末等の磁性粉末を結合剤中に分散した磁性層を非磁性支持体に塗設したものが広く用いられている。この中でも強磁性金属微粉末と六方晶系フェライト微粉末は高密度記録特性に優れていることが知られている。
ディスクの場合、高密度記録特性に優れる強磁性金属微粉末を用いた大容量ディスクとしては10MBのMF−2TD、21MBのMF−2SDまたは六方晶フェライトを用いた大容量ディスクとしては4MBのMF−2ED、21MBフロプティカルなどがあるが、容量、性能的に十分とは言えなかった。
【0005】
このような状況に対し、高密度記録特性を向上させる試みが多くなされている。例えば、LS―120(SuperDisk)やZIPなどの100MB〜120MB等の高容量で高密度の記録が実現され、さらに面記録密度で0.2Gbit/inch2(0.03Gbit/cm2)以上もの高密度記録が要求されつつある。また、アクセス時間を短くすると言う要請からディスクの回転数もより高速になる傾向がある。即ち、面記録密度は、線記録密度とトラック密度の積で表されるものであるが、現在市販されている100MBクラスの記録容量ディスクでは線記録密度とトラック密度の両者を数倍大きくする必要がある。
【0006】
このような高密度で高回転または高転送の磁気記録媒体にあっては、安定な記録再生を維持するためには従来の媒体よりもさらに高度な寸度安定性が要求される。
【0007】
ところで、従来、電磁誘導を動作原理とする磁気ヘッド(誘導型磁気ヘッド)が用いられ普及している。しかしながら、更に高密度記録再生領域で使用するには限界が見え始めている。即ち、大きな再生出力を得るためには再生ヘッドのコイル巻数を多くする必要があるが、インダクタンスが増加し高周波での抵抗が増加し結果として再生出力が低下するという問題があった。
【0008】
近年MR(磁気抵抗)を動作原理とする再生ヘッドが提案され、ハードディスク等で使用され始め、また特開平8−227517号公報には磁気テープへの応用が提案されている。
MRヘッドは誘導型磁気ヘッドに比較して数倍の再生出力が得られ、かつ誘導コイルを用いないため、インピーダンスノイズ等の機器ノイズが大幅に低下し、磁気記録媒体のノイズを下げることで大きなSN比を得ることが可能になってきた。換言すれば従来機器ノイズに隠れていた磁気記録媒体ノイズを小さくすれば良好な記録再生が行え、高密度記録特性が飛躍的に向上できることになる。
【0009】
このノイズを低減させる方法としては、各種手段が考えられるが、特には強磁性粉末の粒子のサイズを下げることが効果的であり、磁性体として板径40nm以下の特定の強磁性六方晶フェライト微粉末を使用することが提案されている(例えば、特開平8−339531号公報参照)。
【0010】
しかしながら、特開平8−339531号公報に記載の技術は、高密度領域を対象とするものではないために、高密度領域においては、これら技術では電磁変換特性、耐久性、ヘッド当たりやエッジダメージ等の特性が充分ではない。
【0011】
また特開平10−228622号公報及び特開平10−228627号公報には、高密度記録特性を向上させるために、磁性層の厚みや抗磁力等を特定のものとする技術が記載されている。しかしながら、電磁変換特性は優れたものではあるものの、ヘッド当たりやエッジダメージ等の特性が充分ではない。
【0012】
更には、特開平10−21530号公報及び特開平10−21529号公報には、支持体の厚みと記録領域の最外径とを特定の関係とした支持体を使用する磁気記録媒体が記載されている。しかしながら、この技術は磁気記録ディスクのみを対象とするものであり、テープ状の磁気記録媒体に適用できず、また各種特性も充分なものではない。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、電磁変換特性が良好で特に高密度記録領域でエラ−レ−トが格段に改良された、生産性及び走行耐久性に優れた磁気記録媒体にあって、MRヘッドを組み合わせた記録再生システムにおいてヘッド当たりが向上し、エッジダメージに優れる、ノイズの低い、特性に優れる塗布型磁気記録媒体を提供することを目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、鋭意検討した結果、磁性層表面を特定のものとし、かつ、特定の支持体を組み合わせることによって、上記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、支持体上に強磁性粉末及び結合剤を主体とする磁性層が形成されてなる、記録信号を磁気抵抗型磁気ヘッド(MRヘッド)で再生するための磁気記録媒体であって、該磁性層表面には原子間力顕微鏡(AFM)により測定された30nm以上の高さの突起が100個/900μm2以下であって、該磁性層の磁化反転体積Vが(0.1〜5)×10-17mlで、磁性層の抗磁力が2000エルステッド(159kA/m)以上であり、支持体の該磁性層形成面側の中心面平均粗さ(SRa)が0.5〜4nmであり、テープ幅Wmmと支持体の厚みdμmの間に関係式(1):1.0≦W/d≦4.0の関係が成り立つことを特徴とすることを特徴とする磁気記録媒体である。
【0015】
本発明の好ましい態様は以下の通りである。
(1)前記磁性層表面には原子間力顕微鏡(AFM)により測定された10nm以上の高さの突起が500〜10000個/900μm2である前記磁気記録媒体。
(2)前記強磁性粉末が強磁性金属粉末もしくは六方晶フェライト粉末である前記磁気記録媒体。
(4)前記磁性層の厚さが0.01〜0.25μmである前記磁気記録媒体。
(5)前記磁性層と支持体との間に実質的に非磁性の下層がある前記磁気記録媒体。
【0016】
尚、本発明の磁気記録媒体に信号を記録するための記録ヘッドは、特に制限されるべきものではないが、電磁誘導型の薄膜磁気ヘッド、例えば、MIGヘッド等が好適に用いられる。
【0017】
マルチメデイア化が進むパソコンの分野ではこれまでのフレキシブルディスクに代わる大容量の記録メデイアが注目され始め、米国IOMEGA(アイオメガ)社からZIPディスク(面記録密度:96Mbit/inch2(15Mbit/cm2))として販売された。これは本件出願人が開発したATOMM(Advanced super Thin layer & high-Output Metal Media)Technologyを用いた下層と薄層磁性層を有する記録媒体であり、3.7インチで100MB以上の記録容量を持った製品が販売されている。100〜120MBの容量はMO(3.5インチ)とほぼ同じ容量であり、1枚で新聞記事なら7〜8月分収まるものである。データ(情報)の書き込み・読み出し時間を示す転送レートは、1秒当たり2MB以上とハードディスク並であり、これまでのFDの20倍、MOの2倍以上の早さを有し非常に大きな利点を持つ。さらに下層と薄層磁性層を有するこの記録媒体は現在のFDと同じ塗布型メデイアで大量生産が可能であり、MOやハードディスクに比べて低価格で有るというメリットを有する。
【0018】
本発明者らは、この様な媒体の知見をもとに鋭意研究を行った結果、前記ZIPディスクやMO(3.5インチ)よりも格段に記録容量の大きい、面記録密度が0.5〜2Gbit/inch2(0.08〜0.31Gbit/cm2)というかって世の中に知られた製品では達成されたことのない高密度特性と優れた耐久性及び保存性を併せ持った格段に改良された磁気記録媒体、特にコンピューターテープ等の磁気記録テープが得られたものである。
【0019】
本発明は好ましくは、超薄層の磁性層に高出力、高分散性に優れた超微粒子の磁性粉を含み、更に非磁性層の下層を設け、その下層に球状又は針状などの無機粉末を含む構成の磁気記録媒体である。磁性層を薄くすることで磁性層内の磁力相殺を低減し、高周波領域での出力を大幅に高め、更に重ね書き特性も向上させることができる。また、磁気ヘッドの改良により、MR素子厚が薄いMRヘッドとの組合せにより超薄層磁性層の効果が一層発揮でき、デジタル記録特性の向上が図れる。
【0020】
磁性層の厚みは高密度記録の磁気記録方式や磁気ヘッドから要求される性能にマッチするように0.01〜0.25μmの薄層が好ましい。均一でかつ薄層にしたこのような超薄層磁性層は微粒子の磁性粉や非磁性粉を分散剤の使用と分散性の高い結合剤の組み合わせにより高度に分散させ、高充填化を図ることができた。使用される磁性体は大容量FDやコンピューターテープの適性を最大限に引き出すために、高出力、高分散性、高ランダマイズ性に優れた強磁性粉末を使用している。
即ち、好ましくは非常に微粒子で且つ高出力を達成できる強磁性金属微粉末または強磁性六方晶フェライト微粉末を用いることで、高出力、高耐久性が達成できる。高転送レートを実現するために超薄層磁性層に適した3次元ネットワークバインダーシステムを用い、高速回転時における走行の安定性、耐久性を確保することができる。
【0021】
大容量記録システムでは高転送レートが求められる。このためには磁気ディスクの回転数を、従来のFDシステムに比べて1桁以上上げる必要がある。磁気記録の大容量化/高密度化に伴い、記録トラック密度が向上する。一般には媒体上にサーボ記録エリアを設け、記録トラックに対する磁気ヘッドのトレーサビリテイ確保を図っている。本発明の磁気記録媒体では支持体ベースとして等方的寸度安定性を高めたベースを使用し、トレーサビリテイの一層の安定化をはかることができる。そして超平滑なベースを用いることによって、磁性層の平滑性を更に向上できる。
【0022】
ディスク形態の磁気記録の高密度化には、線記録密度とトラック密度の向上が必要である。このうちトラック密度の向上には、支持体の特性も重要な要素である。本発明の媒体では支持体ベースの寸度安定性、特に等方性に配慮することが好ましい。高トラック密度における記録再生では、サーボ記録は不可欠な技術であるが、支持体ベースを出来るだけ等方化することで媒体サイドからもこの改良を図ることができる。
【0023】
前記したATOMM構成にするメリットは次のように考えられる。
(1)磁性層の薄層構造化による電磁変換特性の向上
a)記録減磁特性の改良による高周波領域での出力向上
b)重ね書き(オーバーライト)特性の改良
c)ウインドウマージンの確保
(2)上層磁性層の平滑化による高出力
(3)磁性層の機能分離による要求機能付与が容易
(4)潤滑剤の安定供給による耐久性の向上
これらの機能は、単に磁性層を重層化するだけでは達成するのは困難であり、重層構造を構成するには、下層、上層を塗布し、通常、硬化処理、カレンダー処理等の表面処理を行う。FDは磁気テープと異なり、両面に同様な処理を施す。塗布工程後スリット工程、パンチ工程、シェル組み込み工程、サーテファイ工程を経て最終製品として完成する。尚、必要に応じ、ディスク状に打ち抜いた後、高温でのサーモ処理(通常、50〜90℃)を行い塗布層の硬化を促進させる、研磨テープでバーニッシュ処理を行い、表面の突起を削るなどの後処理を行ってもよい。
【0024】
耐久性は磁気記録媒体にとって重要な要素である。例えば、高転送レートを実現するために磁気ディスクの回転数を、従来のFDシステムに比べて1桁以上上げる必要があり、磁気ヘッド/カートリッジ内部品と媒体とが高速摺動する場合の媒体耐久性の確保は重要な課題である。媒体の耐久性を向上させるには、媒体自身の膜強度を上げるバインダー処方や、磁気ヘッドとの滑り性を維持する潤滑剤処方等を調整する手段等がある。
【0025】
潤滑剤は、使用される種々の温・湿度環境下でそれぞれ優れた効果を発揮する潤滑剤を複数組み合わせて使用し、広範囲な温度(低温、室温、高温)、湿度(低湿、高湿)環境下でも各潤滑剤がそれぞれ機能を発揮し、総合的に安定した潤滑効果を維持できるものである。
また下層を設ける場合には、下層に潤滑剤のタンク効果を持たせることで磁性層に常に適量の潤滑剤が供給されるようにし、磁性層の耐久性をより向上させることができる。また下層のクッション効果は良好なヘッドタッチと安定した走行性をもたらすことができる。超薄層の磁性層に含ませることが出来る潤滑剤量には限度があり、単純に磁性層を薄くすることは潤滑剤の絶対量が減少し、走行耐久性の劣化につながる。
本発明においては、支持体と磁性層(上層)との間に非磁性の下層を設けることで、上下2層に別々の機能を持たせることができ、互いに補完することで電磁変換特性の向上と耐久性の更なる向上を両立させることがきる。この機能分化は磁気ヘッドとメデイアを高速摺動させるシステムでは特に有効である。
【0026】
下層を設ける場合には、下層には潤滑剤の保持機能の他に表面電気抵抗のコントロール機能を付与できる。一般に電気抵抗のコントロールには、磁性層中にカーボンブラック等の固体導電材料を加えることが多い。これらは磁性体の充填密度を上げることの制約となるほか、磁性層が薄層になるに従い、表面粗さにも影響を与える。下層に導電材料を加えることによってこれらの欠点を除くことができる。
【0027】
マルチメデイア社会になり、画像記録へのニーズは産業界のみならず家庭でも益々強くなっており、本発明の大容量磁気記録媒体は単に文字、数字などのデータ以外に、画像記録用媒体としての機能/コストの要請に十分応えられる能力を持つものである。本発明は長期信頼性に富み、またコストパフォーマンスに優れているものである。
【0028】
【発明の実施の形態】
以下詳細に本発明を説明する。
[磁性層表面の特徴]
本発明の磁気記録媒体の磁性層表面は、AFMにより測定される30nm以上の高さの突起(以下、「N30nm」とも記す)が100個/900μm2以下に制御される必要がある。
好ましくは50個/900μm2以下である。N30nmは少ない程好ましく、その下限値は0である。
【0029】
また、同じくAFMで測定される磁性層表面の高さ10nm以上の突起(以下、「N10nm」とも記す)は、好ましくは500〜10000個/900μm2であり、更に好ましくは1000〜5000個/900μm2である。
【0030】
N30nmが100個/900μm2を越えるとノイズの増加を招く。N10nmが500個/900μm2未満であると走行耐久性が悪化する傾向がある。また、N10nmが10000個/900μm2を超えるとノイズが増加する傾向がある。本発明において、N30nm及びN10nmの突起の高さは、磁性層表面の平坦部と突起の頂部との距離を指し、N30nm及びN10nmはAFMを用いて稜角70°の四角錘のSiNの探針を使って、30μm平方角(900μm2)を測定して求めたものである。
【0031】
本発明において、磁性層表面の突起を調節するためには、磁性層中に含有される粒状成分、即ち、強磁性粉末、研磨剤、カーボンブラックなどの粒子サイズを従来のものよりさらに小さくすることが重要である。その上で磁性塗料、更には非磁性塗料における粉体の分散度を高度に保ち、支持体の表面粗さを従来のものより小さくするのが好ましい。
また、本発明においては、従来公知の手段、例えば、カレンダー処理、研磨テープ、繊維等によるバーニッシュ処理、切削刃による処理等を用いることもできる。
【0032】
また、本発明の磁性層の磁化反転体積Vは、(0.1〜5)×10-17mlに制御される必要がある。
磁化反転体積Vは(0.1〜5)×10-17mlの範囲であるが、強磁性粉末が強磁性金属粉末である場合は、好ましくは(0.1〜4)×10-17ml、より好ましくは(0.5〜3.5)×10-17ml、更に好ましくは(0.5〜2.5)×10-17mlの範囲である。
強磁性粉末が六方晶フェライト粉末である場合は、好ましくは(0.1〜3.0)×10-17ml、より好ましくは(0.1〜2)×10-17ml、更に好ましくは(0.1〜1.5)×10-17mlの範囲である。
0.1×10-17mlより小さいとノイズは低くなるものの出力が不安定となり更に工夫が必要である。5×10-17mlを越えるとノイズの低いMRヘッドの特徴を生かせない。
【0033】
磁化反転体積Vは以下の式により求めることができる。VSM(振動試料型磁束計)を用いてHc測定部の磁場スイープ速度を5分と30分で測定し、以下の熱揺らぎによるHcと磁化反転体積Vの関係式からVを求めることができる。
Hc=(2K/Ms){1−[(kT/KV)ln(At/0.693)]1/2}
K:異方性定数 Ms:飽和磁化
k:ボルツマン定数 T:絶対温度
V:磁化反転体積 A:スピン歳差周波数
t:磁界反転時間
Vは、強磁性粉末の粒子サイズ、特にノイズに影響を与える粒子サイズと相関していると考えられ、Vの制御手段としては、強磁性粉末の粒子サイズ(例えば、粒子体積)、磁気特性、磁性層での配向等を調整することが挙げられる。
【0034】
更に、本発明の磁性層の抗磁力Hcは、2000エルステッド(Oe)(159kA/m)以上に制御される必要がある。
磁性層の抗磁力Hcは159kA/m(2000Oe)以上であるが、159kA/m(2000Oe)〜398kA/m(5000Oe)であることが好ましく、より好ましくは199〜318kA/m(2500〜4000Oe)、最も好ましくは159〜239kA/m(2000〜3000Oe)である。抗磁力の分布は狭い方が好ましく、SFDは0.6以下が好ましい。
Hcが2000Oe(159kA/m)より小さいと出力が小さく、充分な面記録密度、例えば0.5〜2Gbit/inch2(0.08〜0.31Gbit/cm2)を達成出来ない。
【0035】
[磁性層]
本発明の磁気記録媒体は上記した表面特徴を有する磁性層であり、この磁性層は支持体の片面だけに設けてもよいし、両面に設けてもよい。
下層を設ける場合、上下層は下層を塗布後、下層が湿潤状態の内(W/W)でも、乾燥した後(W/D)にでも上層磁性層を設けることが出来る。生産得率の点から同時、又は逐次湿潤塗布が好ましい。本発明の重層構成で同時、又は逐次湿潤塗布(W/W)では上層/下層が同時に形成できるため、カレンダー工程などの表面処理工程を有効に活用でき、超薄層でも上層磁性層の表面粗さを良化できる。
【0036】
磁性層の厚みは、限定されるものではないが、高容量で高密度の磁気記録媒体を得るためには、減磁損失の観点から0.30μm以下、好ましくは0.01〜0.25μmに磁性層を薄くすることが特に重要である。その場合、本発明の磁性層表面形状は、支持体の表面突起の影響を受け易いので特にその表面形状に留意する必要がある。均一でかつ薄層にしたこのような超薄層磁性層は微粒子の磁性粉や非磁性粉を分散剤の使用と分散性の高い結合剤の組み合わせにより高度に分散させ、高充填化を図ることができる。
【0037】
[強磁性粉末]
本発明の磁性層に使用する強磁性粉末としては、特に制限されるべきものではないが、α−Feを主成分とする強磁性金属粉末、六方晶フェライト粉末が好ましい。これらの強磁性金属粉末には所定の原子以外にAl、Si、S、Sc、Ca、Ti、V、Cr、Cu、Y、Mo、Rh、Pd、Ag、Sn、Sb、Te、Ba、Ta、W、Re、Au、Hg、Pb、Bi、La、Ce、Pr、Nd、P、Co、Mn、Zn、Ni、Sr、Bなどの原子を含んでもよい。特に、Al、Si、Ca、Y、Ba、La、Nd、Co、Ni、Bの少なくとも1つをα−Fe以外に含むことが好ましく、Co、Y、Alの少なくとも一つを含むことがさらに好ましい。Coの含有量はFeに対して0原子%以上40原子%以下が好ましく、さらに好ましくは15原子%以上35原子%以下、より好ましくは20原子%以上35原子%以下である。Yの含有量は1.5原子%以上12原子%以下が好ましく、さらに好ましくは3原子%以上10原子%以下、より好ましくは4原子%以上9原子%以下である。Alは1.5原子%以上12原子%以下が好ましく、さらに好ましくは3原子%以上10原子%以下、より好ましくは4原子%以上9原子%以下である。
【0038】
これらの強磁性粉末にはあとで述べる分散剤、潤滑剤、界面活性剤、帯電防止剤などで分散前にあらかじめ処理を行ってもよい。具体的には、特公昭44−14090号、特公昭45−18372号、特公昭47−22062号、特公昭47−22513号、特公昭46−28466号、特公昭46−38755号、特公昭47−4286号、特公昭47−12422号、特公昭47−17284号、特公昭47−18509号、特公昭47−18573号、特公昭39−10307号、特公昭46−39639号、米国特許第3026215号、同3031341号、同3100194号、同3242005号、同3389014号等の各公報に記載されている。
【0039】
強磁性粉末には少量の水酸化物、または酸化物が含まれてもよい。強磁性金属粉末は公知の製造方法により得られたものを用いることができ、下記の方法を挙げることができる。複合有機酸塩(主としてシュウ酸塩)と水素などの還元性気体で還元する方法、酸化鉄を水素などの還元性気体で還元してFeあるいはFe−Co粒子などを得る方法、金属カルボニル化合物を熱分解する方法、強磁性金属の水溶液に水素化ホウ素ナトリウム、次亜リン酸塩あるいはヒドラジンなどの還元剤を添加して還元する方法、金属を低圧の不活性気体中で蒸発させて微粉末を得る方法などである。このようにして得られた強磁性金属粉末は公知の徐酸化処理、すなわち有機溶剤に浸漬したのち乾燥させる方法、有機溶剤に浸漬したのち酸素含有ガスを送り込んで表面に酸化膜を形成したのち乾燥させる方法、有機溶剤を用いず酸素ガスと不活性ガスの分圧を調整して表面に酸化皮膜を形成する方法のいずれを施したものでも用いることができる。
【0040】
本発明の磁性層の強磁性金属粉末をBET法による比表面積で表せば45〜80m2/gであり、好ましくは50〜70m2/gである。40m2/g以下ではノイズが高くなり、80m2/g以上では表面性が得にくく好ましくない。本発明の磁性層の強磁性金属粉末の結晶子サイズは80〜180Åであり、好ましくは100〜180Å、更に好ましくは110〜175Åである。強磁性金属粉末の長軸長は0.01μm以上0.15μm以下であり、好ましくは0.03μm以上0.15μm以下であり、さらに好ましくは0.03μm以上0.12μm以下である。強磁性金属粉末の針状比は3以上15以下が好ましく、さらには5以上12以下が好ましい。強磁性金属粉末の飽和磁化σsは100〜180A・m2/kgであり、好ましくは110〜170A・m2/kg、更に好ましくは125〜160A・m2/kgである。強磁性金属粉末の抗磁力は2000〜3500Oe(159〜279kA/m)が好ましく、更に好ましくは2200〜3000Oe(175〜239kA/m)である。
【0041】
強磁性金属粉末の含水率は0.01〜2%とするのが好ましい。結合剤の種類によって強磁性金属粉末の含水率は最適化するのが好ましい。強磁性金属粉末のpHは、用いる結合剤との組合せにより最適化することが好ましい。その範囲は4〜12であるが、好ましくは6〜10である。強磁性金属粉末は必要に応じ、Al、Si、Pまたはこれらの酸化物などで表面処理を施してもよい。その量は強磁性金属粉末に対し0.1〜10%であり表面処理を施すと脂肪酸などの潤滑剤の吸着が100mg/m2以下になり好ましい。強磁性金属粉末には可溶性のNa、Ca、Fe、Ni、Srなどの無機イオンを含む場合がある。これらは、本質的に無い方が好ましいが、200ppm以下であれば特に特性に影響を与えることは少ない。また、本発明に用いられる強磁性金属粉末は空孔が少ないほうが好ましくその値は20容量%以下、さらに好ましくは5容量%以下である。また形状については先に示した粒子サイズについての特性を満足すれば針状、米粒状、紡錘状のいずれでもよい。強磁性金属粉末自体のSFDは小さい方が好ましく、0.8以下が好ましい。強磁性金属粉末のHcの分布を小さくする必要がある。尚、SFDが0.8以下であると、電磁変換特性が良好で、出力が高く、また、磁化反転がシャープでピークシフトも少なくなり、高密度デジタル磁気記録に好適である。Hcの分布を小さくするためには、強磁性金属粉末においてはゲ−タイトの粒度分布を良くする、焼結を防止するなどの方法がある。
【0042】
次に六方晶フェライト粉末について述べる。本発明に用いられる六方晶フェライトとしては、バリウムフェライト、ストロンチウムフェライト、鉛フェライト、カルシウムフェライトの各置換体、Co置換体等が挙げられる。
具体的にはマグネトプランバイト型のバリウムフェライト及びストロンチウムフェライト、スピネルで粒子表面を被覆したマグネトプランバイト型フェライト、更に一部スピネル相を含有したマグネトプランバイト型のバリウムフェライト及びストロンチウムフェライト等が挙げられ、その他所定の原子以外にAl、Si、S,Sc、Ti、V,Cr、Cu,Y,Mo,Rh,Pd,Ag、Sn、Sb、Te、Ba、Ta、W、Re、Au、Hg、Pb、Bi、La、Ce、Pr、Nd、P,Co,Mn,Zn、Ni、Sr、B、Ge、Nbなどの原子を含んでもよい。一般にはCo−Zn、Co−Ti,Co−Ti−Zr、Co−Ti−Zn,Ni−Ti−Zn,Nb−Zn−Co、SbーZn−Co、Nb−Zn等の元素を添加した物を使用することができる。原料・製法によっては特有の不純物を含有するものもある。
【0043】
粒子サイズは六角板径で10〜100nm、好ましくは10〜60nmであり、特に好ましくは10〜50nmである。特にトラック密度を上げるためMRヘッドで再生する場合、低ノイズにする必要があり、板径は40nm以下が好ましいが、10nmより小さいと熱揺らぎのため安定な磁化が望めない。100nmを越えるとノイズが高く、いずれも高密度磁気記録には向かない。板状比(板径/板厚)は1〜15が望ましい。好ましくは1〜7である。板状比が小さいと磁性層中の充填性は高くなり好ましいが、十分な配向性が得られない。15より大きいと粒子間のスタッキングによりノイズが大きくなる。この粒子サイズ範囲のBET法による比表面積は10〜100m2/gを示す。比表面積は概ね粒子板径と板厚からの算術計算値と符号する。粒子板径・板厚の分布は通常狭いほど好ましい。数値化は困難であるが粒子TEM写真より500粒子を無作為に測定する事で比較できる。分布は正規分布ではない場合が多いが、計算して平均サイズに対する標準偏差で表すとσ/平均サイズ=0.1〜2.0である。
粒子サイズ分布をシャープにするには粒子生成反応系をできるだけ均一にすると共に、生成した粒子に分布改良処理を施すことも行われている。たとえば酸溶液中で超微細粒子を選別的に溶解する方法等も知られている。
【0044】
六方晶フェライト粉末で測定される抗磁力Hcは通常、500〜5000Oe(40〜398kA/m)程度まで作成できる。Hcは高い方が高密度記録に有利であるが、記録ヘッドの能力で制限される。
本発明では磁性体のHcは2000〜4000Oe(159〜318kA/m)程度であるが、好ましくは2200〜3500Oe(175〜279kA/m)である。ヘッドの飽和磁化が1.4テスラを越える場合は、2200Oe(175kA/m)以上にすることが好ましい。Hcは粒子サイズ(板径・板厚)、含有元素の種類と量、元素の置換サイト、粒子生成反応条件等により制御できる。
飽和磁化σsは40〜80A・m2/kgである。σsは高い方が好ましいが微粒子になるほど小さくなる傾向がある。σs改良のためマグネトプランバイトフェライトにスピネルフェライトを複合すること、含有元素の種類と添加量の選択等がよく知られている。またW型六方晶フェライトを用いることも可能である。
【0045】
六方晶フェライト粉末を分散する際に六方晶フェライト粉末粒子表面を分散媒、ポリマーに合った物質で処理することも行われている。表面処理材は無機化合物、有機化合物が使用される。主な化合物としてはSi、Al、P、等の酸化物または水酸化物、各種シランカップリング剤、各種チタンカップリング剤が代表例である。量は六方晶フェライト粉末に対して0.1〜10%である。六方晶フェライト粉末のpHも分散に重要である。通常4〜12程度で分散媒、ポリマーにより最適値があるが、媒体の化学的安定性、保存性から6〜11程度が選択される。六方晶フェライト粉末に含まれる水分も分散に影響する。分散媒、ポリマーにより最適値があるが通常0.01〜2.0%が選ばれる。
【0046】
六方晶フェライトの製法としては、▲1▼酸化バリウム・酸化鉄・鉄を置換する金属酸化物とガラス形成物質として酸化ホウ素等を所望のフェライト組成になるように混合した後溶融し、急冷して非晶質体とし、次いで再加熱処理した後、洗浄・粉砕してバリウムフェライト結晶粉体を得るガラス結晶化法、▲2▼バリウムフェライト組成金属塩溶液をアルカリで中和し、副生成物を除去した後100℃以上で液相加熱した後洗浄・乾燥・粉砕してバリウムフェライト結晶粉体を得る水熱反応法、▲3▼バリウムフェライト組成金属塩溶液をアルカリで中和し、副生成物を除去した後乾燥し1100℃以下で処理し、粉砕してバリウムフェライト結晶粉体を得る共沈法等があるが、本発明は製法を選ばない。
【0047】
[非磁性層]
本発明においては、支持体と磁性層の間に下層である非磁性層を設けるのが好ましい。以下下層について説明する。
本発明の下層は実質的に非磁性であればその構成は制限されるべきものではないが、通常、少なくとも樹脂からなり、好ましくは、粉体、例えば、無機粉末あるいは有機粉末が樹脂中に分散されたものが挙げられる。該無機粉末は、通常、好ましくは非磁性粉末であるが、下層が実質的に非磁性である範囲で磁性粉末も使用され得るものである。
【0048】
該非磁性粉末としては、例えば、金属酸化物、金属炭酸塩、金属硫酸塩、金属窒化物、金属炭化物、金属硫化物等の無機化合物から選択することができる。無機化合物としては例えばα化率90%以上のα−アルミナ、β−アルミナ、γ−アルミナ、θ−アルミナ、炭化ケイ素、酸化クロム、酸化セリウム、α−酸化鉄、ヘマタイト、ゲータイト、コランダム、窒化珪素、チタンカーバイト、酸化チタン、二酸化珪素、酸化スズ、酸化マグネシウム、酸化タングステン、酸化ジルコニウム、窒化ホウ素、酸化亜鉛、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、二硫化モリブデンなどが単独または組合せで使用される。特に好ましいのは、粒度分布の小ささ、機能付与の手段が多いこと等から、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化鉄、硫酸バリウムであり、更に好ましいのは二酸化チタン、α酸化鉄である。これら非磁性粉末の粒子サイズは0.005〜2μmが好ましいが、必要に応じて粒子サイズの異なる非磁性粉末を組み合わせたり、単独の非磁性粉末でも粒径分布を広くして同様の効果をもたせることもできる。とりわけ好ましい非磁性粉末の粒子サイズは0.01μm〜0.2μmである。特に、非磁性粉末が粒状金属酸化物である場合は、平均粒子径0.08μm以下が好ましく、針状金属酸化物である場合は、長軸長が0.3μm以下が好ましく、0.2μm以下がさらに好ましい。タップ密度は0.05〜2g/ml、好ましくは0.2〜1.5g/mlである。非磁性粉末の含水率は0.1〜5質量%、好ましくは0.2〜3質量%、更に好ましくは0.3〜1.5質量%である。非磁性粉末のpHは2〜11であるが、pHは5.5〜10の間が特に好ましい。
【0049】
非磁性粉末の比表面積は1〜100m2/g、好ましくは5〜80m2/g、更に好ましくは10〜70m2/gである。非磁性粉末の結晶子サイズは0.004μm〜1μmが好ましく、0.04μm〜0.1μmが更に好ましい。DBP(ジブチルフタレート)を用いた吸油量は5〜100ml/100g、好ましくは10〜80ml/100g、更に好ましくは20〜60ml/100gである。比重は1〜12、好ましくは3〜6である。形状は針状、球状、多面体状、板状のいずれでもよい。モース硬度は4以上10以下のものが好ましい。非磁性粉末のSA(ステアリン酸)吸着量は1〜20μmol/m2、好ましくは2〜15μmol/m2、更に好ましくは3〜8μmol/m2である。pHは3〜6の間が好ましい。これらの非磁性粉末の表面には表面処理を施すことによりAl2O3、SiO2、TiO2、ZrO2、SnO2、Sb2O3、ZnO、Y2O3を存在させることが好ましい。特に分散性に好ましいのはAl2O3、SiO2、TiO2、ZrO2であるが、更に好ましいのはAl2O3、SiO2、ZrO2である。これらは組み合わせて使用してもよいし、単独で用いることもできる。また、目的に応じて共沈させた表面処理層を用いてもよいし、先ずアルミナを存在させた後にその表層をシリカで処理する方法、またはその逆の方法を採ることもできる。また、表面処理層は目的に応じて多孔質層にしても構わないが、均質で密である方が一般には好ましい。
【0050】
下層に用いられる非磁性粉末の具体的な例としては、昭和電工製ナノタイト、住友化学製HIT−100、ZA−G1、戸田工業社製αヘマタイトDPN−250、DPN−250BX、DPN−245、DPN−270BX、DPN−500BX、DBN−SA1、DBN−SA3、石原産業製酸化チタンTTO−51B、TTO−55A、TTO−55B、TTO−55C、TTO−55S、TTO−55D、SN−100、αヘマタイトE270、E271、E300、E303、チタン工業製酸化チタンSTT−4D、STT−30D、STT−30、STT−65C、αヘマタイトα−40、テイカ製MT−100S、MT−100T、MT−150W、MT−500B、MT−600B、MT−100F、MT−500HD、堺化学製FINEX−25、BF−1、BF−10、BF−20、ST−M、同和鉱業製DEFIC−Y、DEFIC−R、日本アエロジル製AS2BM、TiO2 P25、宇部興産製100A、500A、及びそれを焼成したものが挙げられる。特に好ましい非磁性粉末は二酸化チタンとα−酸化鉄である。
【0051】
下層にカーボンブラックを混合させて公知の効果である表面電気抵抗Rsを下げること、光透過率を小さくすることができるとともに、所望のマイクロビッカース硬度を得る事ができる。また、下層にカーボンブラックを含ませることで潤滑剤貯蔵の効果をもたらすことも可能である。カーボンブラックの種類はゴム用ファーネス、ゴム用サーマル、カラー用ブラック、アセチレンブラック、等を用いることができる。下層のカーボンブラックは所望する効果によって、以下のような特性を最適化すべきであり、併用することでより効果が得られることがある。
【0052】
下層のカーボンブラックの比表面積は100〜500m2/g、好ましくは150〜400m2/g、DBP吸油量は20〜400ml/100g、好ましくは30〜400ml/100gである。カーボンブラックの粒子径は5〜80nm、好ましく10〜50nm、さらに好ましくは10〜40nmである。カーボンブラックのpHは2〜10、含水率は0.1〜10%、タップ密度は0.1〜1g/mlが好ましい。
本発明に用いられるカーボンブラックの具体的な例としてはキャボット社製BLACKPEARLS 2000、1300、1000、900、800、880、700、VULCAN XC−72、三菱化学(株)製#3050B、#3150B、#3250B、#3750B、#3950B、#950、#650B、#970B、#850B、MA−600、MA−230、#4000、#4010、コロンビアンカーボン社製CONDUCTEX SC、RAVEN 8800、8000、7000、5750、5250、3500、2100、2000、1800、1500、1255、1250、アクゾー社製ケッチェンブラックECなどが挙げられる。
カーボンブラックを分散剤などで表面処理したり、樹脂でグラフト化して使用しても、表面の一部をグラファイト化したものを使用してもよい。また、カーボンブラックを塗料に添加する前にあらかじめ結合剤で分散してもよい。これらのカーボンブラックは上記無機質粉末に対して50質量%を越えない範囲、非磁性層総質量の40%を越えない範囲で使用できる。これらのカーボンブラックは単独、または組合せで使用することができる。本発明で使用できるカーボンブラックは例えば「カーボンブラック便覧」(カーボンブラック協会編)を参考にすることができる。
【0053】
また、下層には有機質粉末を目的に応じて、添加することもできる。例えば、アクリルスチレン系樹脂粉末、ベンゾグアナミン樹脂粉末、メラミン系樹脂粉末、フタロシアニン系顔料が挙げられるが、ポリオレフィン系樹脂粉末、ポリエステル系樹脂粉末、ポリアミド系樹脂粉末、ポリイミド系樹脂粉末、ポリフッ化エチレン樹脂も使用することができる。その製法は特開昭62−18564号、特開昭60−255827号に記されているようなものが使用できる。
【0054】
下層の結合剤樹脂、潤滑剤、分散剤、添加剤、溶剤、分散方法その他は以下に記載する磁性層のそれが適用できる。特に、結合剤樹脂量、種類、添加剤、分散剤の添加量、種類に関しては磁性層に関する公知技術が適用できる。
[結合剤]
本発明に使用される結合剤としては従来公知の熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、反応型樹脂やこれらの混合物が使用される。熱可塑系樹脂としては、ガラス転移温度が−100〜150℃、数平均分子量が1,000〜200,000、好ましくは10,000〜100,000、重合度が約50〜1000程度のものである。
【0055】
このような例としては、塩化ビニル、酢酸ビニル、ビニルアルコール、マレイン酸、アクリル酸、アクリル酸エステル、塩化ビニリデン、アクリロニトリル、メタクリル酸、メタクリル酸エステル、スチレン、ブタジエン、エチレン、ビニルブチラール、ビニルアセタール、ビニルエーテル、等を構成単位として含む重合体または共重合体、ポリウレタン樹脂、各種ゴム系樹脂がある。また、熱硬化性樹脂または反応型樹脂としてはフェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン硬化型樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、アルキド樹脂、アクリル系反応樹脂、ホルムアルデヒド樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ−ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂とイソシアネートプレポリマーの混合物、ポリエステルポリオールとポリイソシアネートの混合物、ポリウレタンとポリイソシアネートの混合物等があげられる。これらの樹脂については朝倉書店発行の「プラスチックハンドブック」に詳細に記載されている。また、公知の電子線硬化型樹脂を各層に使用することも可能である。これらの例とその製造方法については特開昭62−256219に詳細に記載されている。以上の樹脂は単独または組合せて使用できるが、好ましいものとして塩化ビニル樹脂、塩化ビニル酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル酢酸ビニルビニルアルコール共重合体、塩化ビニル酢酸ビニル無水マレイン酸共重合体、から選ばれる少なくとも1種とポリウレタン樹脂の組合せ、またはこれらにポリイソシアネートを組み合わせたものがあげられる。
【0056】
ポリウレタン樹脂の構造はポリエステルポリウレタン、ポリエーテルポリウレタン、ポリエーテルポリエステルポリウレタン、ポリカーボネートポリウレタン、ポリエステルポリカーボネートポリウレタン、ポリカプロラクトンポリウレタンなど公知のものが使用できる。ここに示したすべての結合剤について、より優れた分散性と耐久性を得るためには必要に応じ、−COOM、−SO3M、−OSO3M、−P=O(OM)2、−O−P=O(OM)2、(以上につきMは水素原子、またはアルカリ金属塩基)、OH、NR2、N+R3(Rは炭化水素基)、エポキシ基、SH、CN、などから選ばれる少なくともひとつ以上の極性基を共重合または付加反応で導入したものを用いることが好ましい。このような極性基の量は10-1〜10-8モル/gであり、好ましくは10-2〜10-6モル/gである。
【0057】
本発明に用いられるこれらの結合剤の具体的な例としてはユニオンカーバイト社製VAGH、VYHH、VMCH、VAGF、VAGD、VROH、VYES、VYNC、VMCC、XYHL、XYSG、PKHH、PKHJ、PKHC、PKFE、日信化学工業社製、MPR−TA、MPR−TA5、MPR−TAL、MPR−TSN、MPR−TMF、MPR−TS、MPR−TM、MPR−TAO、電気化学社製1000W、DX80、DX81、DX82、DX83、100FD、日本ゼオン社製MR−104、MR−105、MR110、MR100、MR555、400X−110A、日本ポリウレタン社製ニッポランN2301、N2302、N2304、大日本インキ社製パンデックスT−5105、T−R3080、T−5201、バーノックD−400、D−210−80、クリスボン6109、7209、東洋紡社製バイロンUR8200、UR8300、UR−8700、RV530、RV280、大日精化社製、ダイフェラミン4020、5020、5100、5300、9020、9022、7020、三菱化学(株)製、MX5004、三洋化成社製サンプレンSP−150、旭化成社製サランF310、F210などがあげられる。
【0058】
また、本発明に用いることが可能なポリイソシアネートとしては、トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ナフチレン−1,5−ジイソシアネート、o−トルイジンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート等のイソシアネート類、また、これらのイソシアネート類とポリアルコールとの生成物、また、イソシアネート類の縮合によって生成したポリイソシアネート等が挙げられる。
これらのイソシアネート類の市販されている商品名としては、日本ポリウレタン社製、コロネートL、コロネートHL、コロネート2030、コロネート2031、ミリオネートMR、ミリオネートMTL、武田薬品社製、タケネートD−102、タケネートD−110N、タケネートD−200、タケネートD−202、住友バイエル社製、デスモジュールL、デスモジュールIL、デスモジュールN、デスモジュールHL、等がありこれらを単独または硬化反応性の差を利用して二つもしくはそれ以上の組合せで各層とも用いることができる。
【0059】
非磁性層、磁性層に用いられる結合剤は非磁性粉末または強磁性粉末に対し、5〜50質量%、好ましくは5〜40質量%、より好ましくは10〜30質量%の範囲で用いられる。塩化ビニル系樹脂を用いる場合は5〜30質量%、ポリウレタン樹脂を用いる場合は2〜20質量%、ポリイソシアネートは2〜20質量%の範囲でこれらを組み合わせて用いることが好ましいが、例えば、微量の脱塩素によりヘッド腐食が起こる場合は、ポリウレタンのみまたはポリウレタンとイソシアネートのみを使用することも可能である。本発明において、ポリウレタンを用いる場合はガラス転移温度が−50〜150℃、好ましくは0℃〜100℃、更に好ましくは30℃〜90℃、破断伸びが100〜2000%、破断応力は0.05〜10Kg/mm2(0.49〜98MPa)、降伏点は0.05〜10Kg/mm2(0.49〜98MPa)が好ましい。
【0060】
本発明の磁気記録媒体は上記した様に、少なくとも磁性層から、好ましくは磁性層と非磁性層である下層との二層以上から構成され得る。
二層以上から構成される場合は、結合剤量、結合剤中に占める塩化ビニル系樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリイソシアネート、あるいはそれ以外の樹脂の量、磁性層を形成する各樹脂の分子量、極性基量、あるいは先に述べた樹脂の物理特性などを必要に応じ各層で変えることはもちろん可能であり、むしろ各層で最適化すべきであり、多層磁性層に関する公知技術を適用できる。例えば、各層で結合剤量を変更する場合、磁性層表面の擦傷を減らすためには磁性層の結合剤量を増量することが有効であり、ヘッドに対するヘッドタッチを良好にするためには、非磁性層の結合剤量を多くして柔軟性を持たせることができる。
【0061】
[カーボンブラック]
本発明の磁性層に使用されるカーボンブラックはゴム用ファーネス、ゴム用サーマル、カラー用ブラック、アセチレンブラック、等を用いることができる。比表面積は5〜500m2/g、DBP吸油量は10〜400ml/100g、平均粒子径は5〜300nm、好ましくは10〜250nm、更に好ましくは20〜200nmである。pHは2〜10、含水率は0.1〜10%、タップ密度は0.1〜1g/cc、が好ましい。
本発明に用いられるカーボンブラックの具体的な例としてはキャボット社製、BLACKPEARLS 2000、1300、1000、900、905、800、700、VULCAN XC−72、旭カーボン社製、#80、#60、#55、#50、#35、三菱化学(株)製、#2400B、#2300、#900、#1000#30、#40、#10B、コロンビアンカーボン社製、CONDUCTEX SC、RAVEN 150、50、40、15、RAVEN−MT−P、日本EC社製、ケッチェンブラックEC、などが挙げられる。
【0062】
カーボンブラックを分散剤などで表面処理したり、樹脂でグラフト化して使用しても、表面の一部をグラファイト化したものを使用してもよい。また、カーボンブラックを磁性塗料に添加する前にあらかじめ結合剤で分散してもよい。これらのカーボンブラックは単独、または組合せで使用することができる。カーボンブラックを使用する場合は磁性体に対する量の0.1〜30%でもちいることが好ましい。カーボンブラックは磁性層の帯電防止、摩擦係数低減、遮光性付与、膜強度向上などの働きがあり、これらは用いるカーボンブラックにより異なる。従って本発明に使用されるこれらのカーボンブラックは上層磁性層、下層非磁性層でその種類、量、組合せを変え、粒子サイズ、吸油量、電導度、pHなどの先に示した諸特性をもとに目的に応じて使い分けることはもちろん可能であり、むしろ各層で最適化すべきものである。
本発明の磁性層で使用できるカーボンブラックは、例えば、「カーボンブラック便覧」(カーボンブラック協会編)を参考にすることができる。
【0063】
[研磨剤]
本発明で用いられる研磨剤としてはα化率90%以上のα−アルミナ、β−アルミナ、炭化ケイ素、酸化クロム、酸化セリウム、α−酸化鉄、コランダム、人造ダイアモンド、窒化珪素、炭化珪素チタンカーバイト、酸化チタン、二酸化珪素、窒化ホウ素、など主としてモース硬度6以上の公知の材料が単独または組合せで使用される。また、これらの研磨剤どうしの複合体(研磨剤を他の研磨剤で表面処理したもの)を使用してもよい。これらの研磨剤には主成分以外の化合物または元素が含まれる場合もあるが主成分が90%以上であれば効果にかわりはない。これら研磨剤の粒子サイズは0.01〜2μmが好ましく、更に好ましくは0.05〜1.0μm、特に好ましくは0.05〜0.5μmの範囲である。特に電磁変換特性を高めるためには、その粒度分布が狭い方が好ましい。また耐久性を向上させるには必要に応じて粒子サイズの異なる研磨剤を組み合わせたり、単独の研磨剤でも粒径分布を広くして同様の効果をもたせることも可能である。タップ密度は0.3〜2g/cc、含水率は0.1〜5%、pHは2〜11、比表面積は1〜30m2/g、が好ましい。本発明に用いられる研磨剤の形状は針状、球状、サイコロ状、のいずれでもよいが、形状の一部に角を有するものが研磨性が高く好ましい。
【0064】
具体的には住友化学社製AKP−12、AKP−15、AKP−20、AKP−30、AKP−50、HIT20、HIT−30、HIT−55、HIT60、HIT70、HIT80、HIT100、レイノルズ社製、ERC−DBM、HP−DBM、HPS−DBM、不二見研磨剤社製、WA10000、上村工業社製、UB20、日本化学工業社製、G−5、クロメックスU2、クロメックスU1、戸田工業社製、TF100、TF140、イビデン社製、ベータランダムウルトラファイン、昭和鉱業社製、B−3などが挙げられる。
【0065】
これらの研磨剤は必要に応じ非磁性層に添加することもできる。非磁性層に添加することで表面形状を制御したり、研磨剤の突出状態を制御したりすることができる。これら磁性層、非磁性層の添加する研磨剤の粒径、量はむろん最適値に設定すべきものである。
好ましくは、磁性層においては、研磨剤は強磁性粉末100質量部に対して通常、2〜50質量部、好ましくは5〜30質量部の範囲である。(プレハブの0029からの記載です。)
【0066】
[添加剤]
本発明の磁性層と非磁性層に使用される、添加剤としては潤滑効果、帯電防止効果、分散効果、可塑効果、などをもつものが使用される。二硫化タングステングラファイト、フッ化黒鉛、シリコーンオイル、極性基をもつシリコーン、脂肪酸変性シリコーン、フッ素含有シリコーン、フッ素含有アルコール、フッ素含有エステル、ポリオレフィン、ポリグリコール、アルキル燐酸エステルおよびそのアルカリ金属塩、アルキル硫酸エステルおよびそのアルカリ金属塩、ポリフェニルエーテル、フェニルホスホン酸、αナフチル燐酸、フェニル燐酸、ジフェニル燐酸、p−エチルベンゼンホスホン酸、フェニルホスフィン酸、アミノキノン類、各種シランカップリング剤、チタンカップリング剤、フッ素含有アルキル硫酸エステルおよびそのアルカリ金属塩、炭素数10〜24の一塩基性脂肪酸(不飽和結合を含んでも、また分岐していてもよい)、および、これらの金属塩(Li、Na、K、Cuなど)または、炭素数12〜22の一価、二価、三価、四価、五価、六価アルコール、(不飽和結合を含んでも、また分岐していてもよい)、炭素数12〜22のアルコキシアルコール、炭素数10〜24の一塩基性脂肪酸(不飽和結合を含んでも、また分岐していてもよい)と炭素数2〜12の一価、二価、三価、四価、五価、六価アルコールのいずれか一つ(不飽和結合を含んでも、また分岐していてもよい)とからなるモノ脂肪酸エステルまたはジ脂肪酸エステルまたはトリ脂肪酸エステル、アルキレンオキシド重合物のモノアルキルエーテルの脂肪酸エステル、炭素数8〜22の脂肪酸アミド、炭素数8〜22の脂肪族アミン、などが使用できる。
【0067】
これらの具体例としては脂肪酸では、カプリン酸、カプリル酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、オレイン酸、エライジン酸、リノール酸、リノレン酸、イソステアリン酸、などが挙げられる。エステル類ではブチルステアレート、オクチルステアレート、アミルステアレート、イソオクチルステアレート、ブチルミリステート、オクチルミリステート、ブトキシエチルステアレート、ブトキシジエチルステアレート、2ーエチルヘキシルステアレート、2ーオクチルドデシルパルミテート、2ーヘキシルドデシルパルミテート、イソヘキサデシルステアレート、オレイルオレエート、ドデシルステアレート、トリデシルステアレート、エルカ酸オレイル、ネオペンチルグリコールジデカノエート、エチレングリコールジオレイル、アルコール類ではオレイルアルコール、ステアリルアルコール、ラウリルアルコール、などがあげられる。また、アルキレンオキサイド系、グリセリン系、グリシドール系、アルキルフェノールエチレンオキサイド付加体、等のノニオン界面活性剤、環状アミン、エステルアミド、第四級アンモニウム塩類、ヒダントイン誘導体、複素環類、ホスホニウムまたはスルホニウム類、等のカチオン系界面活性剤、カルボン酸、スルフォン酸、燐酸、硫酸エステル基、燐酸エステル基、などの酸性基を含むアニオン界面活性剤、アミノ酸類、アミノスルホン酸類、アミノアルコールの硫酸または燐酸エステル類、アルキルベダイン型、等の両性界面活性剤等も使用できる。これらの界面活性剤については、「界面活性剤便覧」(産業図書株式会社発行)に詳細に記載されている。これらの潤滑剤、帯電防止剤等は必ずしも100%純粋ではなく、主成分以外に異性体、未反応物、副反応物、分解物、酸化物等の不純分が含まれてもよい。これらの不純分は30%以下が好ましく、さらに好ましくは10%以下である。
【0068】
本発明で使用されるこれらの潤滑剤、界面活性剤は個々に異なる物理的作用を有するものであり、その種類、量、および相乗的効果を生み出す潤滑剤の併用比率は目的に応じ最適に定められるべきものである。非磁性層、磁性層で融点の異なる脂肪酸を用い表面へのにじみ出しを制御する、沸点、融点や極性の異なるエステル類を用い表面へのにじみ出しを制御する、界面活性剤量を調節することで塗布の安定性を向上させる、潤滑剤の添加量を中間層で多くして潤滑効果を向上させるなど考えられ、無論ここに示した例のみに限られるものではない。一般には潤滑剤の総量として磁性体または非磁性粉末に対し、0.1%〜50%、好ましくは2%〜25%の範囲で選択される。
【0069】
また、本発明で用いられる添加剤のすべてまたはその一部は、磁性塗料更にはおよび非磁性塗料製造のどの工程で添加してもよい、例えば、混練工程前に磁性体と混合する場合、磁性体と結合剤と溶剤による混練工程で添加する場合、分散工程で添加する場合、分散後に添加する場合、塗布直前に添加する場合などがある。また、目的に応じて磁性層を塗布した後、同時または逐次塗布で、添加剤の一部または全部を塗布することにより目的が達成される場合がある。また、目的によってはカレンダーした後、またはスリット終了後、磁性層表面に潤滑剤を塗布することもできる。本発明で用いられる有機溶剤は公知のものが使用でき、例えば特開昭6−68453に号公報記載の溶剤を用いることができる。
【0070】
[支持体]
本発明の支持体は、磁性層形成面側の中心面平均粗さ(SRa)が0.5〜4nmであり、テープ幅Wmmと支持体の厚みdμmの間に関係式(1):1.0≦W/d≦4.0の関係が成り立つことを要件とするものである。
【0071】
また、本発明において支持体の中心面平均表面粗さ(SRa)は、0.5〜4nmであるが、好ましくは0.5〜3.0nmであり、より好ましくは0.5〜2.0nmである。SRaが小さすぎると、ハンドリングや走行耐久性等が劣るという問題があり、逆に大きすぎると高い出力が得られないという問題がある。また、支持体は非磁性であることが好ましく、更には単に中心面平均粗さが特定の範囲にあるだけでなく、0.5μm以上の粗大突起がないことが好ましい。本発明における中心面平均表面粗さは、WYKO社製の表面粗さ計TOPO−3Dのmirau法で測定したものを意味する。
【0072】
テープ幅Wmmと支持体の厚みdμmの間の関係式(1):1.0≦W/d≦4.0は、ニコン製メジャースコープで測定したテープ幅Wを、支持体を10枚重ねてマイクロゲージで測定した値を10で除して得た支持体厚みで除した値を意味するもので、下限を下回ると、エッジダメージが悪化し、また逆に上限を上回るとヘッド当たりが悪化するという問題が生じる。好ましくは、下限は、1.0以上であり、上限は3.1以下である。
【0073】
支持体としては、特に限定されるものではないが、例えばポリエチレンテレフタレ−ト、ポリエチレンナフタレー等のポリエステル類、ポリオレフィン類、セルロ−ストリアセテ−ト、ポリカ−ボネ−ト、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリスルフォン、アラミド、芳香族ポリアミド等の公知のフィルムが使用できる。
【0074】
上記した表面の粗さ形状は必要に応じて支持体に添加されるフィラ−の大きさと量により自由にコントロ−ルされるものである。これらのフィラ−としては一例としてはCa,Si、Tiなどの酸化物や炭酸塩の他、アクリル系などの有機微粉末が挙げられる。
支持体の最大高さRmaxは1μm以下、十点平均粗さRzは0.5μm以下、中心面山高さはRpは0.5μm以下、中心面谷深さRvは0.5μm以下、中心面面積率Srは10%以上、90%以下、平均波長λaは5μm以上、300μm以下が好ましい。所望の電磁変換特性と耐久性を得るため、これら支持体の表面突起分布をフィラーにより任意にコントロールできるものであり、0.01μmから1μmの大きさのもの各々を0.1mm2あたり0個から2000個の範囲でコントロ−ルすることができる。
【0075】
また、本発明に用いられる支持体のF−5値は好ましくは5〜50Kg/mm2(49〜490MPa)である。また、支持体の100℃30分での熱収縮率は好ましくは3%以下、さらに好ましくは1.5%以下、80℃30分での熱収縮率は好ましくは1%以下、さらに好ましくは0.5%以下である。破断強度は5〜100Kg/mm2(49〜980MPa)、弾性率は100〜2000Kg/mm2(0.98〜19.6GPa)が好ましい。温度膨張係数は10-4〜10-8/℃であり、好ましくは10-5〜10-6/℃である。湿度膨張係数は10-4/RH%以下であり、好ましくは10-5/RH%以下である。これらの熱特性、寸法特性、機械強度特性は支持体の面内各方向に対し10%以内の差でほぼ等しいことが好ましい。
【0076】
本発明の支持体は、必要に応じてエージング処理してもよい。
エージング処理は、基本的には磁性層形成後のカレンダー処理を終了した後に施されるが、特にこれに制限されるものではない。通常、テープ状の場合はスリット前に行うことが好ましい。
エージング処理は、通常、硬化剤の種類等結合剤組成、媒体の種類等により適宜調整され得るが、通常、40〜100℃、10〜240時間行われる。
【0077】
本発明において支持体は、必要に応じ、磁性面とベ−ス面の表面粗さを変えるた積層タイプの支持体を用いることもできる。支持体にはあらかじめコロナ放電処理、プラズマ処理、易接着処理、熱処理、除塵処理、などをおこなってもよい。
【0078】
[層構成]
本発明の磁気記録媒体の厚み構成は支持体が2〜100μm、好ましくは2〜80μmである。磁気記録媒体が、コンピューターテープの場合、支持体は、3.0〜6.5μm(好ましくは、3.0〜6.0μm、更に好ましくは、4.0〜5.5μm)の範囲の厚さのものが使用される。
【0079】
支持体と非磁性層または磁性層の間に密着性向上のための下塗層を設けてもかまわない。本下塗層厚みは0.01〜0.5μm、好ましくは0.02〜0.5μmである。本発明では、非磁性層と磁性層を支持体の片面のみに設けたテープ状媒体とするのが好ましい。この場合、帯電防止やカール補正などの効果を出すために非磁性層、磁性層側と反対側にバックコ−ト層を設けてもよい。この厚みは0.1〜4μm、好ましくは0.3〜2.0μmである。これらの下塗層、バックコート層は公知のものが使用できる。
【0080】
本発明の媒体の磁性層の厚みは用いるヘッドの飽和磁化量やヘッドギャップ長、記録信号の帯域により最適化されるものであるが、好ましくは0.01μm以上0.25μm以下である。磁性層を異なる磁気特性を有する2層以上に分離してもかまわず、公知の重層磁性層に関する構成が適用できる。
【0081】
非磁性層の厚みは通常、0.2μm以上5.0μm以下、好ましくは0.3μm以上3.0μm以下、さらに好ましくは1.0μm以上2.5μm以下である。尚、非磁性層は実質的に非磁性であればその効果を発揮するものであり、たとえば不純物としてあるいは意図的に少量の磁性体を含んでも、本発明の効果を示すものであり、本発明と実質的に同一の構成と見なすことができることは言うまでもない。
実質的に非磁性とは、残留磁束密度が0.01T以下または抗磁力が7.96kA/m(100Oe以下)であることを意味し、好ましくは残留磁束密度と抗磁力をもたないことを意味する。
【0082】
[バックコート層]
本発明においては、上記した通り、支持体の磁性層とは反対側にバックコート層を設けてもよい。
高い走行耐久性を維持させるために、バックコート層には、結合剤に加えて、カーボンブラックと無機粉末が含有されていることが好ましい。
結合剤は、特に限定されるものではく、上記磁性層、非磁性層で使用できるとして挙げられた樹脂等を同様に使用することができる。
特に、コンピュータデータ記録用の磁気テープでは、ビデオテープ、オーディオテープに比較して、繰り返し走行性が強く要求されるので、バックコート層は有効である。
【0083】
カーボンブラックは、平均粒子径の異なる二種類のものを組み合わせて使用することが好ましい。この場合、平均粒子径が10〜20nmの微粒子状カーボンブラックと平均粒子径が230〜300nmの粗粒子状カーボンブラックを組み合わせて使用することが好ましい。一般に、上記のような微粒子状のカーボンブラックの添加により、バックコート層の表面電気抵抗を低く設定でき、また光透過率も低く設定できる。磁気記録装置によっては、テープの光透過率を利用し、動作の信号に使用しているものが多くあるため、このような場合には特に微粒子状のカーボンブラックの添加は有効になる。また微粒子状カーボンブラックは一般に液体潤滑剤の保持力に優れ、潤滑剤併用時、摩擦係数の低減化に寄与する。一方、平均粒子径が230〜300nmの粗粒子状カーボンブラックは、固体潤滑剤としての機能を有しており、またバック層の表面に微小突起を形成し、接触面積を低減化して、摩擦係数の低減化に寄与する。しかし粗粒子状カーボンブラックを単独で用いると、過酷な走行系では、テープ摺動により、バックコート層からの脱落が生じ易くなり、エラー比率の増大につながる欠点を有している。
【0084】
微粒子状カーボンブラックの具体的な商品としては、以下のものを挙げることができる。カッコ内に平均粒子径を示す。RAVEN2000B(18nm)、RAVEN1500B(17nm)(以上、コロンビアカーボン社製)、BP800(17nm)(キャボット社製)、PRINNTEX90(14nm)、PRINTEX95(15nm)、PRINTEX85(16nm)、PRINTEX75(17nm)(以上、デグサ社製)、#3950(16nm)(三菱化化学(株)製)。
【0085】
また粗粒子カーボンブラックの具体的な商品の例としては、サーマルブラック(270nm)(カーンカルブ社製)、RAVEN MTP(275nm)(コロンビアカーボン社製)を挙げることができる。
【0086】
バックコート層において、平均粒子径の異なる二種類のものを使用する場合、10〜20nmの微粒子状カーボンブラックと230〜300nmの粗粒子状カーボンブラックの含有比率(質量比)は、前者:後者=98:2〜75:25の範囲にあることが好ましく、更に好ましくは、95:5〜85:15の範囲である。
【0087】
バックコート層中のカーボンブラック(二種類のものを使用する場合には、その全量)の含有量は、結合剤100質量部に対して、通常30〜80質量部の範囲であり、好ましくは、45〜65質量部の範囲である。
【0088】
無機粉末は、硬さの異なる二種類のものを併用することが好ましい。具体的には、モース硬度3〜4.5の軟質無機粉末とモース硬度5〜9の硬質無機粉末とを使用することが好ましい。モース硬度が3〜4.5の軟質無機粉末を添加することで、繰り返し走行による摩擦係数の安定化を図ることができる。しかもこの範囲の硬さでは、摺動ガイドポールが削られることもない。またこの無機粉末の平均粒子径は、30〜50nmの範囲にあることが好ましい。
【0089】
モース硬度が3〜4.5の軟質無機粉末としては、例えば、硫酸カルシウム、炭酸カルシウム、珪酸カルシウム、硫酸バリウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛、及び酸化亜鉛を挙げることができる。これらは、単独で、あるいは二種以上を組み合わせて使用することができる。
【0090】
バックコート層内の軟質無機粉末の含有量は、カーボンブラック100質量部に対して10〜140質量部の範囲にあることが好ましく、更に好ましくは、35〜100質量部である。
【0091】
モース硬度が5〜9の硬質無機粉末を添加することにより、バックコート層の強度が強化され、走行耐久性が向上する。これらの無機粉末をカーボンブラックや前記軟質無機粉末と共に使用すると、繰り返し摺動に対しても劣化が少なく、強いバックコート層となる。またこの無機粉末の添加により、適度の研磨力が付与され、テープガイドポール等への削り屑の付着が低減する。特に軟質無機粉末と併用すると、表面の粗いガイドポールに対しての摺動特性が向上し、バックコート層の摩擦係数の安定化も図ることができる。
【0092】
硬質無機粉末は、その平均粒子サイズが80〜250nm(更に好ましくは、100〜210nm)の範囲にあることが好ましい。
【0093】
モース硬度が5〜9の硬質無機質粉末としては、例えば、α−酸化鉄、α−アルミナ、及び酸化クロム(Cr2O3)を挙げることができる。これらの粉末は、それぞれ単独で用いてもよいし、あるいは併用してもよい。これらの内では、α−酸化鉄又はα−アルミナが好ましい。硬質無機粉末の含有量は、カーボンブラック100質量部に対して通常3〜30質量部であり、好ましくは、3〜20質量部である。
【0094】
バックコート層に前記軟質無機粉末と硬質無機粉末とを併用する場合、軟質無機粉末と硬質無機粉末との硬さの差が、2以上(更に好ましくは、2.5以上、特に、3以上)であるように軟質無機粉末と硬質無機粉末とを選択して使用することが好ましい。
【0095】
バックコート層には、前記それぞれ特定の平均粒子サイズを有するモース硬度の異なる二種類の無機粉末と、前記平均粒子サイズの異なる二種類のカーボンブラックとが含有されていることが好ましい。
【0096】
バックコート層には、潤滑剤を含有させることができる。潤滑剤は、前述した非磁性層、あるいは磁性層に使用できる潤滑剤として挙げた潤滑剤の中から適宜選択して使用できる。バックコート層において、潤滑剤は、結合剤100質量部に対して通常1〜5質量部の範囲で添加される。
【0097】
[製法]
本発明の磁気記録媒体の磁性塗料、更には非磁性塗料を製造する工程は、少なくとも混練工程、分散工程、およびこれらの工程の前後に必要に応じて設けた混合工程からなる。個々の工程はそれぞれ2段階以上にわかれていてもよい。本発明に使用する磁性体、非磁性粉体、結合剤、カ−ボンブラック、研磨剤、帯電防止剤、潤滑剤、溶剤などすべての原料はどの工程の最初または途中で添加してもよい。また、個々の原料を2つ以上の工程で分割して添加してもよい。例えば、ポリウレタンを混練工程、分散工程、分散後の粘度調整のための混合工程で分割して投入してもよい。本発明の目的を達成するためには、従来の公知の製造技術を一部の工程として用いることができる。混練工程ではオープンニーダ、連続ニ−ダ、加圧ニ−ダ、エクストルーダなど強い混練力をもつものを使用することが好ましい。ニ−ダを用いる場合は磁性体または非磁性粉体と結合剤のすべてまたはその一部(ただし全結合剤の30%以上が好ましい)および磁性体100部に対し15〜500部の範囲で混練処理される。これらの混練処理の詳細については特開平1−106338号公報、特開平1−79274号公報に記載されている。また、磁性層液および非磁性層液を分散させるにはガラスビーズを用いることができるが、高比重の分散メディアであるジルコニアビーズ、チタニアビーズ、スチールビーズが好適である。これら分散メディアの粒径と充填率は最適化して用いられる。分散機は公知のものを使用することができる。
【0098】
本発明で重層構成の磁気記録媒体を塗布する場合、以下のような方式を用いることが好ましい。
第一に磁性塗料の塗布で一般的に用いられるグラビア塗布、ロール塗布、ブレード塗布、エクストルージョン塗布装置等により、まず下層を塗布し、下層がウェット状態のうちに特公平1−46186号公報や特開昭60−238179号公報、特開平2−265672号公報に開示されている支持体加圧型エクストルージョン塗布装置により上層を塗布する方法。
第二に特開昭63−88080号公報、特開平2−17971号公報、特開平2−265672号公報に開示されているような塗布液通液スリットを二つ内蔵する一つの塗布ヘッドにより上下層をほぼ同時に塗布する方法。
第三に特開平2−174965号公報に開示されているバックアップロール付きエクストルージョン塗布装置により上下層をほぼ同時に塗布する方法である。
【0099】
尚、磁性粒子の凝集による磁気記録媒体の電磁変換特性等の低下を防止するため、特開昭62−95174号公報や特開平1−236968号公報に開示されているような方法により塗布ヘッド内部の塗布液にせん断を付与することが望ましい。さらに、塗布液の粘度については、特開平3−8471号公報に開示されている数値範囲を満足する必要がある。重層構成を実現するには下層を塗布し乾燥させたのち、その上に磁性層を設ける逐次重層塗布をもちいてもむろんかまわず、本発明の効果が失われるものではない。ただし、塗布欠陥を少なくし、ドロップアウトなどの品質を向上させるためには、前述の同時重層塗布を用いることが好ましい。
【0100】
磁気テープの場合はコバルト磁石やソレノイドを用いて長手方向に配向する。乾燥風の温度、風量、塗布速度を制御することで塗膜の乾燥位置を制御できる様にすることが好ましく、塗布速度は20m/分〜1000m/分、乾燥風の温度は60℃以上が好ましい、また磁石ゾ−ンに入る前に適度の予備乾燥を行なうこともできる。
【0101】
上記塗布、乾燥後、通常、磁気記録媒体にカレンダー処理を施す。カレンダー処理ロ−ルとしてエポキシ、ポリイミド、ポリアミド、ポリイミドアミド等の耐熱性のあるプラスチックロ−ルまたは金属ロ−ルで処理するが、特に両面磁性層とする場合は金属ロ−ル同志で処理することが好ましい。処理温度は、好ましくは50℃以上、さらに好ましくは100℃以上である。線圧力は好ましくは200kg/cm(196kN/m)以上、さらに好ましくは300kg/cm(294kN/m)以上である。
【0102】
[その他の物理特性]
本発明による磁気記録媒体の磁性層の飽和磁束密度は、強磁性金属粉末を用いた場合、好ましくは0.2〜0.5T、六方晶フェライト粉末を用いた場合、好ましくは0.1〜0.3Tである。角形比は2次元ランダムの場合は0.55以上0.67以下で、好ましくは0.58以上、0.64以下、3次元ランダムの場合は0.45以上、0.55以下が好ましく、垂直配向の場合は垂直方向に0.6以上好ましくは0.7以上、反磁界補正を行った場合は0.7以上好ましくは0.8以上である。2次元ランダム、3次元ランダムとも配向度比は0.8以上が好ましい。2次元ランダムの場合、垂直方向の角形比、Br、Hcは面内方向の0.1〜0.5倍以内とすることが好ましい。
【0103】
磁気テープの場合、角型比は0.7以上、好ましくは0.8以上である。本発明の磁気記録媒体のヘッドに対する摩擦係数は温度−10℃から40℃、湿度0%から95%の範囲において0.5以下、好ましくは0.3以下、表面固有抵抗は好ましくは磁性面104 〜1012オ−ム/sq、帯電位は−500Vから+500V以内が好ましい。磁性層の0.5%伸びでの弾性率は面内各方向で好ましくは100〜2000Kg/mm2(0.98〜19.6GPa)、破断強度は好ましくは10〜70Kg/mm2(98〜686MPa)、磁気記録媒体の弾性率は面内各方向で好ましくは100〜1500Kg/mm2(0.98〜14.7GPa)、残留のびは好ましくは0.5%以下、100℃以下のあらゆる温度での熱収縮率は好ましくは1%以下、さらに好ましくは0.5%以下、もっとも好ましくは0.1%以下である。磁性層のガラス転移温度(110Hzで測定した動的粘弾性測定の損失弾性率の極大点)は50℃以上120℃以下が好ましく、下層非磁性層のそれは0℃〜100℃が好ましい。損失弾性率は1×109〜8×1010μN/cm2の範囲にあることが好ましく、損失正接は0.2以下であることが好ましい。損失正接が大きすぎると粘着故障が発生しやすい。これらの熱特性や機械特性は媒体の面内各方向で10%以内でほぼ等しいことが好ましい。磁性層中に含まれる残留溶媒は好ましくは100mg/m2以下、さらに好ましくは10mg/m2以下である。塗布層が有する空隙率は非磁性層、磁性層とも好ましくは30容量%以下、さらに好ましくは20容量%以下である。空隙率は高出力を果たすためには小さい方が好ましいが、目的によってはある値を確保した方がよい場合がある。
【0104】
磁性層の中心面平均表面粗さRaは米国WYKO社製の光干渉式表面粗さ計TOPO−3Dを用いて約250μm×250μmの面積での測定で4.0nm以下、好ましくは3.8nm以下、さらに好ましくは3.5nm以下である。磁性層の最大高さRmaxは0.5μm以下、十点平均粗さRzは0.3μm以下、中心面山高さRpは0.3μm以下、中心面谷深さRvは0.3μm以下、中心面面積率Srは20%以上、80%以下、平均波長λaは5μm以上、300μm以下が好ましい。磁性層の表面突起は前述の通りに設定することにより電磁変換特性、摩擦係数を最適化することが好ましい。これらは支持体のフィラ−による表面性のコントロ−ルや前述したように磁性層に添加する粉体の粒径と量、カレンダー処理のロ−ル表面形状などで容易にコントロ−ルすることができる。カールは±3mm以内とすることが好ましい。
【0105】
本発明の磁気記録媒体で非磁性層と磁性層を有する場合、目的に応じ非磁性層と磁性層でこれらの物理特性を変えることができるのは容易に推定されることである。例えば、磁性層の弾性率を高くし走行耐久性を向上させると同時に非磁性層の弾性率を磁性層より低くして磁気記録媒体のヘッドへの当りを良くするなどである。
【0106】
以上のように、本発明は、テープ幅と支持体の厚みの間に特定の関係を有する支持体を使用して、N30nm、V及びHcを上記範囲とした磁気記録媒体であり、好ましくはエージング処理されてなり、MRヘッドで再生する磁気記録再生システム、特には面記録密度0.5〜2Gbit/inch2(0.08〜0.31Gbit/cm2)の記録信号をMRヘッドで再生する磁気記録再生システムに供された時に低ノイズで、しかも耐久性に優れ、出力変動の少ない再生ができるものである。
【0107】
尚、面記録密度は線記録密度とトラック密度の積で表され、現在市販されている100MBクラスの記録容量ディスクに対して線記録密度とトラック密度両者を数倍大きくする必要がある。面記録密度0.5Gbit/inch2(0.08Gbit/cm2)より小さいと、本発明の媒体構成にしなくても達成可能である。2Gbit/inch2(0.31Gbit/cm2)を越えると本発明をもってしても困難である。
【0108】
【実施例】
以下、本発明の具体的実施例を説明するが、本発明はこれに限定されるべきものではない。尚、「部」は「質量部」を示す。
<強磁性粉末>
実施例に使用した強磁性粉末を下記表1に示す。
【0109】
【表1】
【0110】
表1に記載の強磁性粉末を用いて磁気テープを以下のように作成した。
【0111】
【0112】
【0113】
製法1 コンピューターテープ(T1、T5〜T14、T18〜T26)の製造上記の塗料について、各成分をニ−ダで混練したのち、サンドミルをもちいて4時間分散させた。得られた分散液にポリイソシアネ−トを非磁性層の塗布液には2.5部、磁性層の塗布液には3部を加え、更にそれぞれにシクロヘキサノン40部を加え、1μm の平均孔径を有するフィルターを用いて濾過し、非磁性層形成用および磁性層形成用の塗布液をそれぞれ調製した。
得られた非磁性層塗布液を、乾燥後の下層の厚さが1.7μmになるようにさらにその直後にその上に磁性層の厚さが0.15μmになるように、厚さ4.4μmの、下記表2に記載の支持体上に同時重層塗布を行い、両層がまだ湿潤状態にあるうちに6000Gの磁力を持つコバルト磁石と6000Gの磁力を持つソレノイドにより配向させた。
乾燥後、金属ロ−ルのみから構成される7段のカレンダ−で温度85℃にて分速200m/min.で処理を行い、その後、厚み0.5μmのバックコート層(カ−ボンブラック 平均粒子サイズ:17mμ 100部、炭酸カルシウム 平均粒子サイズ:40mμ 80部、α−アルミナ 平均粒子サイズ:200mμ 5部をニトロセルロ−ス樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリイソシアネ−トに分散)を塗布した。3.8mm幅にスリットし、スリット品の送り出し、巻き取り装置を持った装置に不織布とカミソリブレ−ドが磁性面に押し当たるように取り付け、テ−プクリ−ニング装置で磁性層の表面のクリ−ニングを行い、テープ試料を得た。
【0114】
製法2 コンピューターテープ(T2、T16)の製造
サンドミルの分散を6時間にした以外は製法1と同様に行いコンピューターテープを製造した。
【0115】
製法3 コンピューターテープ(T3、T17)の製造
αアルミナ HIT55をHIT82(粒子サイズ0.12μm)に変え、製法2と同様に行いコンピューターテープを製造した。
【0116】
製法4 コンピューターテープ(T4、T15)の製造
カーボンブラック #55を#35に変えた以外は製法1と同様にコンピューターテープを製造した。尚、カーボンブラック #35は、以下の特性を有するものである。
カーボンブラック #35
平均一次粒子径:0.115μm
比表面積:23m2/g
DBP吸油量:47ml/100g
pH:7.0
揮発分:1.0%
【0117】
製法5 コンピューターテープ(T27〜T30)の製造
スリット幅を6.35mmに変えた以外は製法1と同様に行いコンピューターテープを製造した。
【0118】
製法6 コンピューターテープ(T31〜T36)の製造
スリット幅を12.54mmに変えた以外は製法1と同様に行いコンピューターテープを製造した。
【0119】
上記にて作成したコンピューターテープT1〜36の各々の性能を下記の測定法により評価した。また、支持体の中心面平均表面粗さ(SRa)、磁性層表面の特性の表面突起数(N30nm及びN10nm)、磁化反転体積(V)及び磁気特性(Hc、σS)の測定法も併せて下記に示す。評価結果を下記表2及び3に示す。
測定法
(1)SRa:米国WYKO社製の光干渉式表面粗さ計TOPO−3Dを用いて約250μm×250μmの面積を40倍の対物レンズで測定した。測定波長約650nmにて球面補正、円筒補正を加えている。本方式は光干渉にて測定する非接触式表面粗さ計である。
(2)表面突起数(N30nm及びN10nm):はデジタルインスツルメンツ社のナノスコープ3(AFM:原子間力顕微鏡)を用いて稜角70°の四角錘のSiNの探針を使って、30μm平方角(900μm2)の中の、微小突起の数N30nm及びN10nmを測定した。
(3)磁化反転体積(V):上記VSMを用いてHc測定部の磁場スイープ速度を5分と30分で測定し、以下の熱揺らぎによるHcと磁化反転体積の関係式から磁化反転体積を計算した。
Hc=(2K/Ms){1−[(kT/KV)ln(At/0.693)]1/2}
K:異方性定数 Ms:飽和磁化
k:ボルツマン定数 T:絶対温度
V:磁化反転体積 A:スピン歳差周波数
t:磁界反転時間
【0120】
(4)磁気特性(Hc、σS):振動試料型磁束計(東英工業社製)を用い、Hm10kOe(796kA/m)で測定した。
(5)CN比(テープ):記録ヘッド(MIG、ギャップ0.15μm、1.8T)と再生用MRヘッドをドラムテスターに取り付けて測定した。ヘッド−メディア相対速度1〜3m/sec、ノイズは変調ノイズを測定。
(6)保存性:25℃、50%RH環境下でHP社製DDS4ドライブC1537で4500ftpmmの信号を記録しエラ−レ−トを測定する。その後、カートリッジを60℃、90%RH環境下に10日間保存し取り出してから25℃、50%環境下に1日放置した後にエ−ラレ−トを測定する。保存前後でのエラ−レ−トの変化量で保存性を評価した。
【0121】
(7)エッジダメージ
▲1▼3.8mm幅テープ
DDSドライブを用い、40℃、80%RHで再生、巻き戻しを1000回繰り返した時のエッジの形状を評価した。評価Cランクまでが許容レベルである。
A:変化なし
B:僅かにエッジにダメージがある
C:エッジダメージはあるが実用上問題無し
D:エッジがワカメ状に変形
▲2▼6.35mm幅インチテープ
業務用VCR松下電器産業製AJ−D750を用い40℃、80%RHで再生、巻き戻しを100回繰り返した時のエッジの形状を評価した。評価Cランクまでが許容レベルである。
A:変化なし
B:僅かにエッジにダメージがある
C:エッジダメージはあるが実用上問題無し
D:エッジがワカメ状に変形
▲3▼12.54mm幅テープ
業務用VCR松下電器産業製AJ−HD2000を用い40℃、80%RHで再生、巻き戻しを100回繰り返した時のエッジの形状を評価した。評価Cランクまでが許容レベルである。
A:変化なし
B:僅かにエッジにダメージがある
C:エッジダメージはあるが実用上問題無し
D:エッジがワカメ状に変形
【0122】
(8)ヘッド当たり
▲1▼3.8mm幅テープ
HP社製DDS4ドライブC1537で4500ftpmmの信号を記録しその再生出力の最大値と最小値の出力差を測定した。出力差−2dBまでが好ましいレベルである。
▲2▼6.35mm幅テープ
業務用VCR松下電器産業製AJ−D750を用いRF出力波形を観察し、出力波形の最大値と最小値の出力差を測定した。出力差−2dBまでが好ましいレベルである。
▲3▼12.54mm幅テープ
業務用VCR松下電器産業製AJ−HD2000を用いRF出力波形を観察し、出力波形の最大値と最小値の出力差を測定した。出力差−2dBまでが好ましいレベルである。
【0123】
【表2】
【0124】
【表3】
【0125】
表2及び表3より、比較例T4、T15、T22は、N30nmが100個/900μm2を越えている例で、面記録密度を変更した各々2例を挙げているが、面記録密度が0.5Gbit/inch2(0.08Gbit/cm2)以上のものは、CN比が低く、面記録密度を低くしないと、充分な性能が得られないものである。
【0126】
また、比較例T9、T18は、Vが5×10-17mlを越えているのでノイズの増加を招き、CN比が低い。更に、比較例T13、T19は、Hcが2000Oe(159kA/m)未満であるので、CN比が低い。一方、N30nm、V、Hcを満足している実施例は、面記録密度が0.5Gbit/inch2(0.08Gbit/cm2)以上でも、CN比が高く、エッジダメージやヘッド当たりが優れていることが判る。
【0127】
比較例T25、T26、T30、T35は、テープ幅と支持体厚みとの本発明の関係式を下回るものであり、エッジダメージが悪化しているのが判る。また逆にテープ幅と支持体厚みとの本発明の関係式を上回るものである比較例T36は、ヘッド当たりが悪化しているのが判る。
【0128】
【発明の効果】
本発明は、特定の支持体を使用し、磁気記録媒体の磁性層のN30nm、V及びHcが各々適正範囲に規定することにより、MRヘッドで再生するシステムにより面記録密度が0.5〜2Gbit/inch2(0.08〜0.31Gbit/cm2)で記録される高容量磁気記録媒体を提供することができ、かつ耐久性を確保しつつ、その電磁変換特性におけるノイズを改善することができる。
Claims (1)
- 支持体上に強磁性粉末及び結合剤を主体とする磁性層が形成されてなる、記録信号を磁気抵抗型磁気ヘッド(MRヘッド)で再生するための磁気記録媒体であって、該磁性層表面には原子間力顕微鏡(AFM)により測定された30nm以上の高さの突起が100個/900μm2以下であって、該磁性層の磁化反転体積Vが(0.1〜5)×10-17mlで、磁性層の抗磁力が2000エルステッド(159kA/m)以上であり、支持体の該磁性層形成面側の中心面平均粗さ(SRa)が0.5〜4nmであり、テープ幅Wmmと支持体の厚みdμmの間に関係式(1):1.0≦W/d≦4.0の関係が成り立つことを特徴とすることを特徴とする磁気記録媒体。
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