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JP2004214698A - 窒化物半導体発光素子 - Google Patents

窒化物半導体発光素子 Download PDF

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JP2004214698A JP2004096500A JP2004096500A JP2004214698A JP 2004214698 A JP2004214698 A JP 2004214698A JP 2004096500 A JP2004096500 A JP 2004096500A JP 2004096500 A JP2004096500 A JP 2004096500A JP 2004214698 A JP2004214698 A JP 2004214698A
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Keiji Sakamoto
恵司 坂本
Shinichi Nagahama
慎一 長濱
Shuji Nakamura
修二 中村
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Abstract

【目的】 主としてレーザ素子の寿命を長くして信頼性の高いレーザ素子を得ることにあり、具体的には半導体素子の熱伝導性を向上させ、かつクラッド層の光閉じ込め効果を向上させることにより、発振閾値を低下させる。
【構成】 第1の主面と第2の主面とを有し、アンドープ若しくはn型不純物濃度が1×1017/cm以下で、膜厚10μm以上の窒化物半導体よりなる窒化物半導体基板の第1の主面上に、その窒化物半導体基板よりもn型不純物濃度が大きいn型窒化物半導体よりなるn側コンタクト層と、Alを含む窒化物半導体層を含む超格子構造よりなるn側クラッド層を有し、さらにそのn側クラッド層の上に、活性層と、p型窒化物半導体よりなるp側コンタクト層とを少なくとも有しており、前記n側コンタクト層と、前記p側コンタクト層とにはそれぞれ電極が設けられて、それらの電極が第1の主面側にある。
【選択図】 図1

Description

本発明は例えばLED(発光ダイオード)、LD(レーザダイオード)、SLD(スーパールミネッセントダイオード)等に使用される窒化物半導体(InaAlbGa1-a-bN、0≦a、0≦b、a+b≦1)発光素子に関する。
我々は窒化物半導体基板の上に、活性層を含む窒化物半導体レーザ素子を作製して、世界で初めて室温での連続発振1万時間以上を達成したことを発表した(ICNS'97 予稿集,October 27-31,1997,P444-446、及びJpn.J.Appl.Phys.Vol.36(1997)pp.L1568-1571、Part2,No.12A,1 December 1997)。基本的な構造としてはサファイア基板上に、部分的に形成されたSiO2膜を介して選択成長されたn−GaNよりなる窒化物半導体基板の上に、レーザ素子構造となる窒化物半導体層が複数積層されてなる。(詳細はJpn.J.Appl.Phys.Vol.36参照)
ICNS'97 予稿集,October 27-31,1997,P444-446 Jpn.J.Appl.Phys.Vol.36(1997)pp.L1568-1571、Part2,No.12A,1 December 1997
しかしながら従来のレーザ素子では基板にサファイアを有しているため、熱伝導性が良くないと言う問題がある。熱伝導性が悪いとレーザ素子の寿命を短くする。またサファイアは窒化物半導体よりも屈折率が小さいため、n側クラッド層から漏れたレーザ光がサファイアとn側クラッド層との間にあるn型GaNからなるコンタクト層内で導波してしまう。そのGaN層中で導波した光は、活性層端面から出射されるレーザ光と重なり合いファーフィールドパターン(FFP)の形状を乱し、例えば出射されるレーザ光のスポットが複数となって現れ、マルチモードとなって観測される。マルチモードのレーザ素子はピックアップ用光源として使用するには非常に使いにくい。また、クラッド層の光閉じ込めが不十分であると、レーザ素子の発振閾値を上昇させる。閾値が上昇すると当然、レーザ素子の寿命が短くなる。
従って本発明の目的とするところは、主としてレーザ素子の寿命を長くして信頼性の高いレーザ素子を得ることにあり、具体的には半導体素子の熱伝導性を向上させ、かつクラッド層の光閉じ込め効果を向上させることにより、発振閾値を低下させることにある。なお、以下の説明ではレーザ素子を例にとって説明するが、本発明はレーザ素子だけでなくLED、SLD等、他の窒化物半導体発光素子にも適用できる。
本発明の窒化物半導体素子は、第1の主面と第2の主面とを有し、アンドープ若しくはn型不純物濃度が1×1017/cm以下で、膜厚10μm以上の窒化物半導体よりなる窒化物半導体基板の第1の主面上に、その窒化物半導体基板よりもn型不純物濃度が大きいn型窒化物半導体よりなるn側コンタクト層と、Alを含む窒化物半導体層を含む超格子構造よりなるn側クラッド層を有し、さらにそのn側クラッド層の上に、活性層と、p型窒化物半導体よりなるp側コンタクト層とを少なくとも有しており、前記n側コンタクト層と、前記p側コンタクト層とにはそれぞれ電極が設けられて、それらの電極が第1の主面側にあることを特徴とする。なお、本発明において窒化物半導体基板、n側コンタクト層、n側クラッド層、活性層、p側コンタクト層等は必ずしもそれぞれの層が接して積層されていなくても良く、例えば他の窒化物半導体よりなるクラック防止層、光ガイド層、p側クラッド層等が間に形成されていても、本発明の範囲内であることは言うまでもない。
さらに本発明の発光素子において、前記超格子よりなるn側クラッド層は全体の厚さが0.5μm以上で、かつそのn側クラッド層に含まれる3族元素に対するAl平均組成を百分率で表した際に、n側クラッド層全体の厚さ(μm)と、Al平均組成(%)との積が4.4以上となるように構成されていることを特徴とする。
n側クラッド層の具体的な構成として、前記n側クラッド層の全体の厚さを0.8μm以上とし、前記n側クラッド層に含まれる3族元素に対するAl平均組成を5.5%以上とする。
好ましくは、前記n側クラッド層の全体の厚さを1.0μm以上とし、前記n側クラッド層に含まれる3族元素に対するAl平均組成を5.0%以上とすることを特徴とする。
さらに好ましくは、前記n側クラッド層の全体の厚さを1.2μm以上とし、前記n側クラッド層に含まれる3族元素に対するAl平均組成を4.5%以上とすることを特徴とする。
以上説明したように、本発明ではアンドープ、若しくはn型不純物濃度が非常に少ない窒化物半導体基板を有しているために、その上に成長させるn側コンタクト層の結晶性も良くなる。さらに窒化物半導体基板の裏面を支持体に接する側としているために熱伝導性が良くなって、寿命が向上する。また、同一面側から電極を取り出しているために、電流が窒化物半導体基板を流れず、電流破壊による窒化物半導体基板のわずかな結晶欠陥が活性層まで転位することが少ない。好ましくは、n側クラッド層を請求項2のような構成とすることにより、クラッド層から漏れて、GaN基板で導波する光が少なくなるため、発光効率が向上して閾値が低下する。さらにレーザ素子ではシングルモードの光が得られるため、書き込み、読みとり光源として非常にその産業上の利用価値は大きい。また、本明細書ではレーザ素子について説明したが、本発明はレーザ素子だけでなく、LED素子、スーパールミネッセントダイオードのような他の発光素子にも適用可能である。
本発明の発光素子において、窒化物半導体基板は、例えば、次の方法により得られる。それは窒化物半導体と異なる材料よりなる異種基板の上に成長された第1の窒化物半導体層の上に、窒化物半導体が表面に成長しにくい性質を有する保護膜を選択的(例えばストライプ状)に形成し、その保護膜の窓部(保護膜が形成されていない場所)から第2の窒化物半導体層を選択成長させて、その第2の窒化物半導体層が保護膜の上を覆うようになるまで成長させる技術(epitaxicial lateral over glowth:ELOGと呼ばれる。)である。この技術によると、異種基板の上に成長される第1の窒化物半導体層は、異種基板との格子定数のミスマッチから結晶欠陥が多くなるが、保護膜上に成長される第2の窒化物半導体層は、保護膜上部で第2の窒化物半導体層が横方向に成長されたものであるため、結晶欠陥が第1の窒化物半導体層に比較して、非常に少なくなり、本発明の発光素子の窒化物半導体基板として使用できるものとなる。この窒化物半導体基板の表面に現れる結晶欠陥の数は1×10個/cm以下となる。
窒化物半導体基板はアンドープ(不純物を意図的にドープしない状態)若しくはn型不純物濃度を1×1017/cm以下に調整する必要がある。最も好ましくはアンドープとする。なぜならn型不純物をドープしてキャリア濃度を調整しようとすると、窒化物半導体基板の結晶性が悪くなって結晶欠陥が増えやすい傾向にあるからである。結晶欠陥の多い窒化物半導体基板の上に素子構造となる窒化物半導体を成長しても、その結晶欠陥が転位して信頼性の良い発光素子を得ることは難しい傾向にある。窒化物半導体としてはX値が0.1以下のAlGa1−XN(0≦X≦0.1)、最も好ましくはIn、Alを実質的に含まないGaNを成長させることが最も結晶欠陥の少ない基板が得られる。
さらに、その窒化物半導体基板の膜厚も10μm以上に調整する必要がある。10μmよりも薄いと、その上にコンタクト層、クラッド層等を積層した際に基板自体が割れやすい傾向にある。また発光デバイスを作製する工程において、途中でウェーハが割れやすくなりデバイス作製が困難となる。さらに、上記のような窒化物半導体基板の作製方法を適用した場合、窒化物半導体基板単独にするためには、後で異種基板、保護膜、第1の窒化物半導体層を研磨、エッチング等の技術により除去する必要がある。その際に異種基板と窒化物半導体基板の熱膨張係数の差により、除去途中で窒化物半導体基板が割れてしまう。それを避けるためにも窒化物半導体基板の厚さは10μm以上、さらに好ましくは50μm以上、最も好ましくは80μm以上にする。但し、厚すぎると放熱効果が悪くなるので500μm以下にすることが望ましい。
次に、窒化物半導体基板上に成長させるn側コンタクト層(接していなくても良い)はn電極を形成する層であるため、n型不純物を窒化物半導体基板よりも多くする。具体的には5×1017/cm以上、好ましくは1×1018/cm以上、最も好ましくは5×1018/cm以上に調整する。上限についてはコンタクト層の結晶性を考慮して、1×1021/cm以下に調整することが望ましい。なお窒化物半導体基板とn側コンタクト層との間に、バッファ層として他の窒化物半導体層を介在させることもできる。
本発明の発光素子において、クラッド層とは、屈折率が活性層の井戸層よりも小さい窒化物半導体を含む光閉じ込め層、あるいはバンドギャップエネルギーが大きい活性層の井戸層よりも大きいキャリア閉じ込め層である。また超格子とは例えば単一層の膜厚が100オングストローム以下で、互いに組成が異なる窒化物半導体層を積層した多層膜構造を指し、好ましくは70オングストローム以下、さらに好ましくは40オングストローム以下の膜厚の窒化物半導体層を積層する。n側クラッド層の具体的な構成としては、例えばAlGa1−XN(0<X<1)層と、そのAlGa1−XN層と組成が異なる他の窒化物半導体層とを積層した超格子とし、例えばAlGa1−XN/GaN、AlGa1−XN/AlGa1−YN(0<Y<1、Y<X)、AlGa1−XN/InGa1−ZN(0<Z<1)等の3元混晶と3元混晶、若しくは3元混晶と2元混晶との組み合わせで超格子とすることができる。その中でも最も好ましくはAlGa1−XNとGaNとからなる超格子とすると、同一温度で結晶性の良い窒化物半導体層が積層できるため望ましい。
具体的なn側クラッド層の構成としては、n側クラッド層全体の厚さが0.5μm以上で、かつそのn側クラッド層に含まれる3族元素に対するAl平均組成を百分率で表した際に、n側クラッド層全体の厚さ(μm)と、Al平均組成(%)との積が4.4以上となるように構成する。本発明の発光素子ではn側クラッド層よりも屈折率の大きい窒化物半導体、特にGaNを基板としている。GaNを基板とすることにより、窒化物半導体素子の放熱を高めることができるが、クラッド層よりも屈折率が大きいという欠点がある。そのため例えばレーザ素子ではn側クラッド層から光がしみ出し、GaN基板で導波することにより、効率を低下させて閾値が上昇する要因となる。そのために、本発明ではn側クラッド層の光閉じ込め効果を、AlGaNを含む超格子で高めている。しかも超格子を構成するAlGaNの単一膜厚は70オングストローム以下と薄いために、Al混晶比の大きい層を形成することができ、実質的なクラッド層の屈折率を小さくすることができる。n側クラッド層の厚さが0.5μmよりも薄く、かつそのn側クラッド層全体の厚さ(μm)とAl平均組成(%)との積が4.4よりも少ないと、n側クラッド層としての光閉じ込めが不十分となり、n側のコンタクト層で導波して、FFPが乱れ、閾値も上昇する傾向にある。好ましい積の値としては5.0以上、さらに好ましくは5.4以上にする。ベストモードとしては7以上に調整する。
n側のクラッド層を超格子で構成するとAl混晶比を大きくしてもクラッド層にクラックが入りにくくなる。従ってn側クラッド層全体の膜厚の上限は特に限定しないが、5μm以内の膜厚に調整することが、超格子を構成する窒化物半導体層の積層回数を減らす上で望ましい。但し前にも述べたようにp側のクラッド層は、膜厚を厚くするか、あるいはAl平均組成を大きくすると抵抗が高くなる傾向にあるので、膜厚としては2μm、好ましくは1.5μm以下、Al平均組成としては50%以下が望ましい。
具体的には、前記n側クラッド層の全体の厚さを0.8μm以上とし、前記n側クラッド層に含まれる3族元素に対するAl平均組成を5.5%以上とする。この場合の積は4.4以上となる。好ましくはn側クラッド層の全体の厚さを1.0μm以上とし、そのn側クラッド層に含まれるAl平均組成を5.0%以上とする。この場合の積は5.0以上である。さらに好ましくは、n側クラッド層の全体の厚さを1.2μm以上とし、そのn側クラッド層に含まれるAl平均組成を4.5%以上とする。この場合の積は5.4以上である。これはn側クラッド層の膜厚の関係と、超格子よりなるn側クラッド層のAl平均組成の関係を具体的に示すものである。AlGa1−XNはAl混晶比を大きくするに従い、バンドギャップエネルギーが大きくなり、屈折率も小さくなることが知られている。理想的にはAl混晶比Xの大きい、例えば0.5以上のAlGa1−XN層を、単一層で例えば数μmの膜厚で成長させることができれば、工業的にも都合がよいのであるが、AlGa1−XNは厚膜で成長させにくい。単一層で特にAl混晶比が0.5以上のAlGa1−XNを成長させようとすると、例えば0.1μm以上で結晶中にクラックが入ってしまう。
ところが本発明のようにAlGa1−XNを超格子を構成するような薄膜とすると、単一膜厚がAlGa1−XNの臨界限界膜厚以下となるので、クラックが入りにくい。そのためクラッド層を超格子とするとAl混晶比の高い層でも厚膜で成長できるようになり、本発明のように特定のAl混晶比とクラッド層の膜厚との関係を見出すことができ、それらを組み合わせることにより、光をn側のクラッド層から基板側に漏れないようにすることができる。
本発明の素子の超格子におけるAl平均組成は、以下のような算出方法で求めるものとする。例えば25オングストロームのAl0.5Ga0.5Nと、25オングストームのGaNとを200ペア(1.0μm)積層した超格子の場合、1ペアが50オングストローム、Alを含む層の3族元素に対するAl混晶比が0.5であるため、0.5・(25μm/50μm)=0.25となり、超格子全体の3族元素におけるAl平均組成は25%である。一方、膜厚が異なる場合、Al0.5Ga0.5Nを40オングストロームと、GaNを20オングストロームとで積層した場合、膜厚の加重平均を行い、0.5(40/60)=0.333となり、Al平均組成は33.3%とする。即ち、Alを含む単一窒化物半導体層の3族元素に対するAl混晶比を、その窒化物半導体層が超格子1ペアの膜厚に占める割合に乗じたものを本発明における超格子のAl平均組成とする。またAlを両方含む場合も同様であり、例えばAl0.1Ga0.9N20オングストローム、Al0.2Ga0.8N30オングストロームの場合も、0.1(20/50)+0.2(30/50)=0.16、即ち16%をAl平均組成とする。なお以上の例はAlGaN/GaN、AlGaN/AlGaNについて説明したが、AlGaN/InGaNについても同じ算出方法を適用するものとする。従って、n側クラッド層を成長させる場合には、以上の算出方法に基づいて成長方法を設計できる。また、n側クラッド層のAl平均組成は、SIMS(二次イオン質量分析装置)、オージェ等の分析装置を用いても検出できる。
また、活性層の発光を閉じ込めるためn側クラッド層を上記構成とするならば、p側クラッド層をn側クラッド層と同じ構成とすることも可能である。但し、p側クラッド層を上記のような構成とする場合、p側クラッド層の膜厚をn側クラッド層よりも薄くすることが望ましい。なぜなら、p側クラッド層の3族元素に対するAl平均組成を大きくするか、若しくは膜厚を厚くすると、AlGaN層の抵抗値が大きくなる傾向にあり、AlGaNの抵抗値が大きくなると、閾値が高くなる傾向にあるからである。そのため、そのためp側クラッド層をAlを含む窒化物半導体層を含む超格子で構成し、膜厚とAl平均組成との積を4.4以上としても、その厚さは2.0μmよりも薄くすることが望ましい。低抵抗なp側クラッド層を作製するため、好ましい膜厚は1.5μm以下、さらに好ましくは1.0μm以下である。下限については特に限定しないが、キャリア閉じ込めとしてのクラッド層として作用させるためには、50オングストーム以上の膜厚があることが望ましい。超格子とした場合も、Al平均組成としては50%以下が望ましい。なおレーザ素子を作製した場合、p側クラッド層に関してはリッジ形状としてその上に電極を設けるので、その電極が光を吸収してしまうため、クラッド層からの光の漏れがあってもほとんど無視できる。
本発明の発光素子では、窒化物半導体基板に電極を設けず、基板の上に形成したn型不純物を含むn側コンタクト層に電極を形成している。これは基板をアンドープとして結晶性の良い基板を得る他に、結晶欠陥が活性層に伝搬しないようにする作用もある。例えば、窒化物半導体基板の裏面側にn電極を設け、p電極とn電極とが対向した形状、例えばGaAsを基板とする赤外レーザのような形状とすることもできるが、本発明ではそのような構造を採用せずに、窒化物半導体という導電性基板があるにも関わらず、同一面側にp電極とn電極とがある構造としている。このように構成することにより、電流が横方向に流れるため、劣化の激しい青色半導体レーザおいて、基板のわずかな結晶欠陥が活性層に伝搬しにくくなるため、寿命が飛躍的に向上する。
図1は本発明の一実施例に係るレーザ素子の形状を示す模式的な断面図でありリッジストライプに垂直な方向で切断した際の図を示すものである。以下、この図を基に実施例1について説明する。
(下地層)
1インチφ、C面を主面とするサファイアよりなる異種基板をMOVPE反応容器内にセットし、温度を500℃にして、トリメチルガリウム(TMG)、アンモニア(NH)を用い、GaNよりなるバッファ層を200オングストロームの膜厚で成長させる。バッファ層成長後、温度を1050℃にして、同じくGaNよりなる下地層を4μmの膜厚で成長させる。この下地層は保護膜を部分的に表面に形成して、次に窒化物半導体基板の選択成長を行うための下地層として作用する。下地層の膜厚はバッファ層よりも厚い膜厚で成長させて、10μm以下の膜厚に調整することが望ましい。基板はサファイアの他、SiC、ZnO、スピネル、GaAs等、窒化物半導体を成長させるために知られている、窒化物半導体と異なる材料よりなる基板を用いることができる。なおこの下地層は結晶欠陥が例えば10個/cm以上と多く、窒化物半導体基板とはならない。
(保護膜)
下地層成長後、ウェーハを反応容器から取り出し、この下地層の表面に、ストライプ状のフォトマスクを形成し、CVD装置によりストライプ幅10μm、ストライプ間隔(窓部)2μmのSiOよりなる保護膜を1μmの膜厚で形成する。保護膜の形状としてはストライプ状、ドット状、碁盤目状等どのような形状でも良いが、窓部よりも保護膜の面積を大きくする方が、次に成長させる結晶欠陥の少ない窒化物半導体基板が得られる。保護膜の材料としては、例えば酸化ケイ素(SiO)、窒化ケイ素(Si)、酸化チタン(TiO)、酸化ジルコニウム(ZrO)等の酸化物、窒化物、またこれらの多層膜の他、1200℃以上の融点を有する金属等を用いることができる。これらの保護膜材料は、窒化物半導体の成長温度600℃〜1100℃の温度にも耐え、その表面に窒化物半導体が成長しないか、若しくは成長しにくい性質を有している。
(窒化物半導体基板1)
保護膜形成後、ウェーハを再度MOVPEの反応容器内にセットし、温度を1050℃にして、TMG、アンモニアを用い、アンドープGaNよりなる窒化物半導体基板1を120μmの膜厚で成長させる。成長後の窒化物半導体基板1の表面は、保護膜のストライプ中央部と、窓部のストライプ中央部にはストライプ状の保護膜と平行に結晶欠陥が表出していたが、後にレーザ素子のリッジ形成時に、リッジストライプがこの結晶欠陥に係らないようにすることにより、活性層に結晶欠陥が転位せず、素子の信頼性が向上する。窒化物半導体基板1はハライド気相成長法(HVPE)を用いて成長させることができるが、このようにMOVPE法により成長させることもできる。成長時のガスとしては、TMGの他、トリエチルガリウム(TEG)等の有機ガリウム化合物を用い、窒素源はアンモニア、若しくはヒドラジンを用いることが最も望ましい。
窒化物半導体基板成長後、ウェーハを反応容器から取り出し、サファイア基板、下地層及び保護膜を研磨除去し、膜厚80μmの窒化物半導体基板1を得る。そして、この窒化物半導体基板を窒素雰囲気中、1000℃でアニーリングしてさらに結晶欠陥を少なくする。このように、次の窒化物半導体層(例えばn側コンタクト層)を成長させる前にウェーハから異種基板を除去することにより、異種基板から派生する応力歪みを無くすることができるために、窒化物半導体基板の第1の主面上に成長させる素子構造となる窒化物半導体層を均一膜厚で成長させ、また結晶性の良い半導体層を積層できる。
(n側コンタクト層2)
次に、アンモニアとTMG、不純物ガスとしてシランガスを用い、窒化物半導体基板1の上に、1050℃でSiを3×1018/cmドープしたGaNよりなるn側コンタクト層2を4μmの膜厚で成長させる。このn側コンタクト層は、後に異種基板〜保護膜を除去して、n電極を設ける際の電極形成層となる。
(クラック防止層3)
次に、TMG、TMI(トリメチルインジウム)、アンモニアを用い、温度を800℃にしてIn0.06Ga0.94Nよりなるクラック防止層3を0.15μmの膜厚で成長させる。なお、このクラック防止層は省略可能である。
(n側クラッド層4=超格子層)
続いて、1050℃でTMA、TMG、アンモニアを用い、アンドープAl0.16Ga0.84Nよりなる層を25オングストロームの膜厚で成長させ、続いてTMAを止めて、シランガスを流し、Siを1×1019/cmドープしたn型GaNよりなる層を25オングストロームの膜厚で成長させる。それらの層を交互積層して超格子層を構成し、総膜厚1.2μmの超格子よりなるn側クラッド層4を成長させる。この超格子よりなるn側クラッド層はIII族元素に対するAl平均組成が8.0%であるので、その膜厚との積は9.6となる。なおn側クラッド層に、バンドギャップエネルギーが異なる窒化物半導体を積層した超格子を作製した場合、不純物はいずれか一方の層に多くドープして、いわゆる変調ドープを行うと結晶性が良くなる傾向にあるが、両方に同じようにドープしても良い。
(n側光ガイド層5)
続いて、シランガスを止め、1050℃でアンドープGaNよりなるn側光ガイド層5を0.1μmの膜厚で成長させる。このn側光ガイド層は、活性層の光ガイド層として作用し、GaN、InGaNを成長させることが望ましく、通常100オングストローム〜5μm、さらに好ましくは200オングストローム〜1μmの膜厚で成長させることが望ましい。またこのn側光ガイド層5にn型不純物をドープしても良い。
(活性層6)
次に、TMG、TMI、アンモニアを用い活性層6を成長させる。活性層は温度を800℃に保持して、アンドープIn0.2Ga0.8Nよりなる井戸層を40オングストロームの膜厚で成長させる。次にTMIのモル比を変化させるのみで同一温度で、アンドープIn0.01Ga0.95Nよりなる障壁層を100オングストロームの膜厚で成長させる。井戸層と障壁層とを順に積層し、最後に障壁層で終わり、総膜厚440オングストロームの多重量子井戸構造(MQW)の活性層を成長させる。活性層は本実施例のようにアンドープでもよいし、またn型不純物及び/又はp型不純物をドープしても良い。不純物は井戸層、障壁層両方にドープしても良く、いずれか一方にドープしてもよい。
(p側キャップ層7)
次に、温度を1050℃に上げ、TMG、TMA、アンモニア、Cp2Mg(シクロペンタジエニルマグネシウム)を用い、p側光ガイド層5よりもバンドギャップエネルギーが大きい、Mgを1×1020/cmドープしたp型Al0.3Ga0.7Nよりなるp側キャップ層7を300オングストロームの膜厚で成長させる。このp型キャップ層は0.1μm以下の膜厚で形成することにより素子の出力が向上する傾向にある。膜厚の下限は特に限定しないが、10オングストローム以上の膜厚で形成することが望ましい。
(p側光ガイド層8)
続いてCp2Mg、TMAを止め、1050℃で、バンドギャップエネルギーがp側キャップ層7よりも小さい、アンドープGaNよりなるp側光ガイド層8を0.1μmの膜厚で成長させる。この層は、活性層の光ガイド層として作用し、n型光ガイド層5と同じくGaN、InGaNで成長させることが望ましい。
(p側クラッド層9)
続いて、1050℃でアンドープAl0.16Ga0.84Nよりなる層を25オングストロームの膜厚で成長させ、続いてCp2Mg、TMAを止め、アンドープGaNよりなる層を25オングストロームの膜厚で成長させ、総膜厚0.6μmの超格子層よりなるp側クラッド層9を成長させる。このp側クラッド層もAl平均組成が8.0%であるので、膜厚との積は4.8となる。なお、p側クラッド層も少なくとも一方がAlを含む窒化物半導体層を含み、互いにバンドギャップエネルギーが異なる窒化物半導体層を積層した超格子で作製した場合、不純物はいずれか一方の層に多くドープして、いわゆる変調ドープを行うと結晶性が良くなる傾向にあるが、両方に同じようにドープしても良い。
ここで、クラッド層で挟まれたコア部分(導波部分)の膜厚について述べる。コア部分とは、n側光ガイド層5、活性層6、p側キャップ層7、及びp側光ガイド層8を合わせた領域、即ちn側クラッド層と、p側クラッド層との間にある活性層を含む窒化物半導体層を指し、活性層の発光を導波する領域である。窒化物半導体レーザ素子の場合、FFPが単一ビームとならないのは、先にも述べたように、クラッド層から漏れた発光がn側のコンタクト層内で導波してマルチモードになるからである。その他、コア内で共振することによってマルチモードになる場合がある。本発明の好ましい態様では、n側のクラッド層の膜厚を厚くして、Al平均組成を大きくすることにより、屈折率差を設け、コア内の光をクラッド層で閉じ込めるものである。しかし、コア内でマルチモードができると、FFPは乱れる。そのため、コア部分と、n側クラッド層との関係において、コア内でマルチモードにならないようにするために、このコア部分の厚さも調整する方が望ましい。コア部分にマルチモードが発生しないようにするための好ましい厚さとしては、200オングストローム以上、1.0μm以下、さらに望ましくは500オングストローム〜0.8μm、最も望ましくは0.1μm〜0.5μmの範囲に調整することが望ましい。200オングストロームよりも薄いと、コア部分から光が漏れだし、閾値が上昇する傾向にある。また1.0μmよりも厚いとマルチモードになりやすい傾向にある。
(p側コンタクト層10)
最後に、1050℃で、p側クラッド層9の上に、Mgを1×1020/cmドープしたp型GaNよりなるp側コンタクト層10を150オングストロームの膜厚で成長させる。p側コンタクト層はp型のInAlGa1−X−YN(0≦X、0≦Y、X+Y≦1)で構成することができ、好ましくはMgをドープしたGaNとすれば、p電極20と最も好ましいオーミック接触が得られる。
以上のようにして窒化物半導体を成長させたウェーハを反応容器内において、窒素雰囲気中700℃でアニーリングを行い、p型不純物をドープした層をさらに低抵抗化させる。
アニーリング後、ウェーハを反応容器から取り出し、RIE(反応性イオンエッチング装置)により、p側コンタクト層10と、p側クラッド層9とをエッチングして、4μmのストライプ幅を有するリッジ形状とする。リッジストライプを形成する場合、そのリッジストライプは、窒化物半導体基板の表面に結晶欠陥が現れていない位置に形成する。このような位置にすると、結晶欠陥が活性層まで伸びてこなくなる傾向にあるため、素子を長寿命として信頼性を向上させられる。
次に、リッジ表面にマスクを形成してエッチングを行い、n側コンタクト層2の表面を露出させる。
次に、p側コンタクト層10のリッジ最表面のほぼ全面にNiとAuよりなるp電極20を形成し、一方、TiとAlよりなるn電極22を先ほど露出させたn側コンタクト層2の表面にストライプ状に形成した後、図1に示すようにp電極20と、n電極22との間に露出した窒化物半導体層の表面にSiOよりなる絶縁膜23を形成し、この絶縁膜23を介してp電極20と電気的に接続したpパッド電極21を形成する。
以上のようにして、n電極とp電極とを形成したウェーハのサファイア基板を研磨して70μmとした後、ストライプ状の電極に垂直な方向で、基板側からバー状に劈開し、劈開面(11−00面)に共振器を作製する。共振器面にSiOとTiOよりなる誘電体多層膜を形成し、最後にp電極に平行な方向で、バーを切断してレーザ素子とする。
そして、ストライプ状の電極に垂直な方向で、基板側からバー状に劈開し、劈開面に共振器を作製する。共振器面にSiOとTiOよりなる誘電体多層膜を形成し、最後にp電極に平行な方向で、バーを切断して図1に示すようなレーザ素子とする。
このレーザ素子の窒化物半導体基板1の裏面側をヒートシンクに設置し、それぞれの電極をワイヤーボンディングして、室温でレーザ発振を試みたところ、室温において連続発振を示し、レーザ光のFFPは単一で、その形状も楕円形で形の良いものが得られていた。また、レーザ素子の特性に関しても、我々がJpn.J.Appl.Phys.Vol.36(1997)に発表したものに比較して、閾値が10%以上低下し、寿命は50%以上向上した。
実施例1において、窒化物半導体基板1を成長させる際に、Siを9×1016/cmドープしたGaNを成長させる他は同様にしてレーザ素子を作製したところ、窒化物半導体基板の結晶性が若干悪くなったために、実施例1のレーザ素子に比較して閾値が若干上昇し、寿命は10%程短くなった。
実施例1において、窒化物半導体基板1を成長させる際にその膜厚を10μmとする他は同様にして素子構造となる窒化物半導体層を積層したウェーハを得て、アニールした後、サファイア基板を研磨せずに、サファイア基板をつけたまま実施例1と同様にして、それぞれn電極とp電極とを形成する。
最後に、サファイア基板を研磨して下地層、保護膜等を除去しようとすると、ウェーハが割れてしまい、レーザ素子としての歩留まりは実施例1に比較して非常に悪かったが、その中で得られたレーザ素子の特性は実施例1のものとほぼ同等の特性を示した。
実施例1において、n側クラッド層4を成長させる際に、アンドープAl0.20Ga0.80N25オングストロームと、SiドープGaN25オングストロとを積層し、総膜厚1.0μmの超格子を成長させる他は同様にしてレーザ素子を作製した。なおn側クラッド層はAl平均組成が10.0%であるので、その膜厚との積は10.0である。このレーザ素子も実施例1とほぼ同等の特性を有していた。
実施例1において、n側クラッド層4を成長させる際に、アンドープAl0.20Ga0.80N25オングストロームと、Siドープn型GaN25オングストロとを積層し、総膜厚0.7μmの超格子を成長させる他は同様にしてレーザ素子を作製した。n側クラッド層はAl平均組成が1.0%であるので、その膜厚との積は7.0である。このレーザ素子も実施例1とほぼ同等の特性を有していた。
実施例1において、n側クラッド層4を成長させる際に、アンドープAl0.12Ga0.88N25オングストロームと、SiドープGaN25オングストロとを積層し、総膜厚0.8μmの超格子を成長させる他は同様にしてレーザ素子を作製した。n側クラッド層はAl平均組成が6.0%であるので、その膜厚との積は4.8である。このレーザ素子はJpn.J.Appl.Phys.Vol.36(1997)に発表したものに比較して、閾値が5%以上低下し、寿命は20%以上向上した。
実施例1において、n側クラッド層18を成長させる際に、n型Al0.07Ga0.93N層をSiドープとして25オングストロームと、GaN層をアンドープとして25オングストロームとを、総膜厚1.4μmで成長させる他は同様にして、レーザ素子を作製した。n側クラッド層は、Al平均組成が3.5%であるので、その膜厚との積は4.9である。このレーザ素子は実施例6のものとほぼ同等の特性を示した。
本発明は例えばLED(発光ダイオード)、LD(レーザダイオード)、SLD(スーパールミネッセントダイオード)等に使用される窒化物半導体(InaAlbGa1-a-bN、0≦a、0≦b、a+b≦1)発光素子に関する。
本発明の一実施例に係るレーザ素子の構造を示す斜視図。
符号の説明
1・・・窒化物半導体基板
2・・・n側バッファ層
3・・・クラック防止層
4・・・n側クラッド層
5・・・n側光ガイド層
6・・・活性層
7・・・p側キャップ層
8・・・p側光ガイド層
9・・・p側クラッド層
10・・・p側コンタクト層
20・・・p電極
21・・・pパッド電極
22・・・n電極
23・・・絶縁膜

Claims (5)

  1. 第1の主面と第2の主面とを有し、アンドープ若しくはn型不純物濃度が1×1017/cm3以下で、膜厚10μm以上の窒化物半導体よりなる窒化物半導体基板の第1の主面上に、その窒化物半導体基板よりもn型不純物濃度が大きいn型窒化物半導体よりなるn側コンタクト層と、Alを含む窒化物半導体層を含む超格子構造よりなるn側クラッド層を有し、さらにそのn側クラッド層の上に、活性層と、p型窒化物半導体よりなるp側コンタクト層とを少なくとも有しており、前記n側コンタクト層と、前記p側コンタクト層とにはそれぞれ電極が設けられて、それらの電極が第1の主面側にあることを特徴とする窒化物半導体発光素子。
  2. 前記n側クラッド層全体の厚さが0.5μm以上で、かつそのn側クラッド層に含まれる3族元素に対するAl平均組成を百分率で表した際に、n側クラッド層全体の厚さ(μm)と、Al平均組成(%)との積が4.4以上となるように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の窒化物半導体発光素子。
  3. 前記n側クラッド層の全体の厚さが0.8μm以上であり、前記n側クラッド層に含まれる3族元素に対するAl平均組成が5.5%以上あることを特徴とする請求項2に記載の窒化物半導体発光素子。
  4. 前記n側クラッド層の全体の厚さが1.0μm以上であり、前記n側クラッド層に含まれる3族元素に対するAl平均組成が5.0%以上あることを特徴とする請求項2に記載の窒化物半導体発光素子。
  5. 前記n側クラッド層の全体の厚さが1.2μm以上であり、前記n側クラッド層に含まれる3族元素に対するAl平均組成が4.5%以上あることを特徴とする請求項2に記載の窒化物半導体発光素子。
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