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JP3794530B2 - 窒化物半導体レーザ素子 - Google Patents

窒化物半導体レーザ素子 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は窒化物半導体(InxAlyGa1-x-yN、0≦x、0≦y、x+y≦1)よりなるレーザ素子に関し、特にファーフィールドパターンが良好となる窒化物半導体レーザ素子に関する。
【0002】
【従来の技術】
本発明者等は、実用可能な窒化物半導体レーザ素子として、例えばJpn.J.Appl.Phys.Vol.37(1998)pp.L309-L312、Part2,No.3B,15 March 1998の文献に素子構造を提案している。
上記文献の技術は、サファイア基板上部に、部分的に形成されたSiO2膜を介して選択成長された転位の少ないGaNよりなる窒化物半導体基板の上に、レーザ素子構造となる窒化物半導体層を複数積層してなる素子とすることで、室温での連続発振1万時間以上を可能とするものである。素子構造としては、選択成長された窒化物半導体基板上に、n−AlkGa1-kN(0≦k<1)よりなるn型コンタクト層、In0.1Ga0.9Nよりなるクラック防止層、n−Al0.14Ga0.86N/GaNの多層膜よりなるn型クラッド層、n−GaNよりなるn型ガイド層、In0.02Ga0.98N/In0.15Ga0.85Nよりなる多重量子井戸構造の活性層、p−Al0.2Ga0.8Nよりなるp型電子閉じ込め層、p−GaNよりなるp型ガイド層、p−Al0.14Ga0.86N/GaNの多層膜よりなるp型クラッド層、p−GaNよりなるp型コンタクト層により構成されている。
【0003】
この中のn及びp型クラッド層は、多層膜(超格子構造)とすることで、Alの組成比を上げてもクラックの発生を防止できることにより、光を閉じ込めるのに十分な程度にレーザ導波路の屈折率よりも低くでき、良好な光閉じ込めの作用を有する。光閉じこめが十分であると、しきい値の低下による寿命特性の向上に加えて、ファーフィールドパターン(以下FFPという場合がある。)が単一モードとなる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記のレーザ素子の種々の製品への応用への適性を向上させるために、主レーザ光のFFPをさらに詳細に検討すると、シングルモードの主レーザ光にn型コンタクト層(窒化物半導体基板を含む)の端面から放出される弱い光が重なり、主レーザ光が小さなマルチモードとなっていることが確認された。
この原因としては、p電極とn電極が同一面側に形成されてなる場合、活性層で発光した光がn型クラッド層から漏れだし、n型クラッド層及び窒化物半導体基板裏面の支持対などの屈折率より大きい値を示すn型コンタクト層内を導波して、n型コンタクト層端面から放出される弱い光が共振面から放出される主レーザ光に重なるために、主レーザ光にリップルが乗り、FFPが小さなマルチモードとなってしまうと考えられる。このような問題は、サファイア基板を除去せずにレーザ素子とした場合にも、サファイアの屈折率が小さいために同様に生じる。
レーザ素子を用いた製品が実用化された場合に、レーザ光を良好に機能させるために、リップルがFFPに乗ることを抑制することが望ましい。
そこで、本発明の目的は、主レーザ光のFFPにリップルの乗らない良好な単一モードとなる窒化物半導体レーザ素子を提供することである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
即ち、本発明は、下記(1)〜(6)の構成により本発明の目的を達成することができる。
(1)窒化物半導体を選択的に横方向に成長させて形成された窒化物半導体基板上に、少なくともn型コンタクト層、Alを含む窒化物半導体を有するn型クラッド層、InGa1−aN(0<a<1)からなる井戸層とInGa1−bN(0≦b<1)からなる障壁層とを有する多重量子井戸構造の活性層、Alを含む窒化物半導体層を有するp型クラッド層を順に有しており、
前記基板とn型コンタクト層との間に、井戸層よりもバンドギャップエネルギーが小さいInGa1−dN(0<d<1)からなる第1の窒化物半導体を少なくとも1層以上を含んでなる光吸収層を有し、
前記n型コンタクト層とn型クラッド層との間に、Inを含有するクラック防止層を有することを特徴とする窒化物半導体レーザ素子。
(2)前記p型クラッド層、及び/又は前記n型クラッド層は、多層膜層からなる前記(1)に記載の窒化物半導体レーザ素子。
(3)前記光吸収層が、井戸層よりもバンドギャップエネルギーが小さいInGa1−dN(0<d<1)からなる第1の窒化物半導体と、GaNからなる第2の窒化物半導体とをそれぞれ少なくとも1層以上積層してなる多層膜からなる前記(1)又は(2)に記載の窒化物半導体レーザ素子。
(4)前記光吸収層は、アンドープである前記(1)乃至(3)のいずれか1つに記載の窒化物半導体レーザ素子。
(5)前記光吸収層の膜厚が、0.02〜1μmである前記(1)乃至(4)のいずれか1つに記載の窒化物半導体レーザ素子。
(6)前記多層膜の光吸収膜を構成する第1の窒化物半導体層の膜厚が、0.01〜0.05μmであり、第2の窒化物半導体の膜厚が0.01〜0.05μmである前記(3)に記載の窒化物半導体レーザ素子。
【0006】
つまり、本発明は、n型クラッド層から漏れ出した光によるFFPの乱れを防止するために、n型コンタクト層と基板との間に、活性層の井戸層よりバンドギャップエネルギーが小さいアンドープのInGaNを含んでなる光吸収層を形成することにより、FFPを良好にするものである。
【0007】
従来、本発明者等は、特開平8−130327号公報に、基板とn型コンタクト層との間に、発光層を構成する窒化物半導体層よりもバンドギャップエネルギーの小さい層(例えばInGaN)を形成してなるLED素子を開示している。この技術において、発光層よりもバンドギャップエネルギーの小さい層は、ZnやSiの不純物準位による主発光を通過させ、InGaNのバンド間発光による光のみを吸収し、不純物準位による主発光スペクトルの半値幅を狭め色純度を良好にするものである。
【0008】
これに対して、本発明におけるアンドープの光吸収層は、光閉じ込め層として設けられたn型クラッド層から漏れ出した光を実質的に全て吸収し、n型コンタクト層端面からの光の放出を抑制し、レーザ導波路から放出される主レーザ光のFFPを良好な単一モードにするものである。従って、本発明は、実用可能な程度に良好なレーザ素子が実現したことにより新たに生じた問題点を解決するものである。
【0009】
本発明において、光吸収層をアンドープとする理由は、n型クラッド層から漏れ出した光を吸収した後、光吸収層内部でわずかに発光が生じて端面から放出する傾向があり、不純物がドープされているとフォトルミネセンスの強度が強まり、FFPに乗るリップルが大きくなることが考えられるからである。本発明のようにアンドープとすると、フォトルミネッセンスの強度が不純物ドープ層に比べて弱いため、仮に光吸収層の端面から光が放出されたとしても、雑音程度の弱いものとなり、FFPへの影響を弱めることができる。更に、光吸収層をアンドープとすると、結晶性良くInGaNの光吸収層を形成でき、この上に形成されるn型コンタクト層や活性層などの結晶性も良好にすることができる。結晶性の良好な素子が得られれば、寿命特性が向上する。
【0010】
更に、本発明は、上記のように光吸収層をアンドープとすることから、バルク抵抗の上昇による順方向電圧(Vf)の上昇を避けるために、電気の流れに関与しない位置に光吸収層を形成することを考慮して、光吸収層をn型コンタクト層と基板との間に形成するものである。
【0011】
以上のように、本発明は、活性層の井戸層のバンドギャップエネルギーより小さい光吸収層をアンドープとし且つ素子構造の特定の位置に形成することにより、従来の問題点を解決することができるものである。
【0012】
更に、本発明において、光吸収層を、InGaNからなる第1の窒化物半導体と、GaNからなる第2の窒化物半導体とを含んでなる多層膜とすることにより、光吸収層の結晶性を低下させることなく、n型クラッド層から漏れ出した光を実質的に全て吸収するのに十分な程度に厚膜にするのに好ましい。
更に本発明において、光吸収層の膜厚が、0.02〜1μmであると、n型クラッド層から漏れ出した光を良好に吸収するのに好ましい。
更に本発明において、光吸収層が多層膜から構成される場合、InGaNからなる第1の窒化物半導体の膜厚が、0.01〜0.05μmであり、GaNからなる第2の窒化物半導体の膜厚が、0.01〜0.5μmであると、結晶性よく多層膜の光吸収層を形成するのに好ましい。光吸収層が、第1及び第2の窒化物半導体を含んでなる多層膜の場合、上記各層の膜厚内で、上記の光吸収層の膜厚となるように積層回数等を調整して光吸収層を形成する。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明の窒化物半導体レーザ素子は、基板上に、少なくともn型コンタクト層、及び、Alを含む窒化物半導体を有する多層膜層からなるn型クラッド層とAlを含む窒化物半導体を有する多層膜層からなるp型クラッド層との間に、InaGa1-aN(0<a<1)からなる井戸層とInbGa1-bN(0≦b<1)からなる障壁層とを有する多重量子井戸構造の活性層を有し、更に、前記n型コンタクト層と基板との間に、井戸層よりもバンドギャップエネルギーが小さいアンドープのIndGa1-dN(0<d<1)からなる第1の窒化物半導体の少なくとも1層以上を含んでなる光吸収層を有する。
【0014】
本発明において、光吸収層の形成させる位置は、n型コンタクト層と基板との間に形成されればいずれに形成されてもよい。このような位置に光吸収層が形成されると、フォトルミネッセンスの強度が弱いアンドープとしても素子の抵抗を増加させることがないので、Vfの上昇を引き起こすことがなく、更にアンドープとすることで結晶性を良好にすることができる。
本発明において、光吸収層としては、活性層のInaGa1-aNからなる井戸層よりもバンドギャップエネルギーが小さいアンドープのIndGa1-dNからなる第1の窒化物半導体の少なくとも1層を含んでいればよく、第1の窒化物半導体からなる単層、又は第1の窒化物半導体とそれ以外の窒化物半導体とを積層してなる多層膜などが挙げられる。光吸収層として好ましくは、アンドープのIndGa1-dN(0<d<1)からなる第1の窒化物半導体とアンドープのGaNからなる第2の窒化物半導体とをそれぞれ少なくとも1層以上積層してなる多層膜である。
光吸収層が多層膜から構成されていると、Inを含む第1の窒化物半導体の結晶性を損なうことなく光吸収層を厚膜にすることができ好ましい。更に多層膜を構成するその他の層としてGaNからなる第2の窒化物半導体を用いると、第1の窒化物半導体の結晶性及び光吸収層の結晶性を良好にすることができ好ましい。
【0015】
IndGa1-dN(0<d<1)からなる第1の窒化物半導体のdの値は、井戸層のInの割合、つまり、活性層で発光する光の波長により適宜調整され、n型クラッド層から漏れ出す光を良好に吸収できるように井戸層のバンドギャップエネルギーより小さくなるようにInの組成比が調整される。
光吸収層が、少なくともIndGa1-dNからなる第1の窒化物半導体を有していると、InGaNを含んでなる活性層から発光しn型クラッド層から漏れ出す光を吸収するのに好ましい。
またdの値は、光吸収層が第1の窒化物半導体のみからなる場合でも、第1の窒化物半導体と第2の窒化物半導体とを積層してなる多層膜である場合でも、同様に調整される。
【0016】
光吸収層が第1の窒化物半導体の単層からなる場合等の光吸収層の総膜厚は、0.02〜1μm、好ましくは0.1〜0.3μmである。この範囲であると光吸収層を単層としても光を良好に吸収でき更に結晶性良く形成することができる。
また、光吸収層が多層膜の場合の第1の窒化物半導体の単一層の膜厚は、0.01〜0.05μm、好ましくは0.05〜0.1μmであり、この範囲であると活性層で発光しn型クラッド層から漏れ出した光を良好に吸収することができるとともに単一層の結晶性が良い点で好ましい。一方、第2の窒化物半導体の単一層の膜厚は、0.01〜0.5μm、好ましくは0.05〜0.3μmであり、この範囲であると結晶性が良く、光吸収層全体の結晶性をも良好にすることができる点で好ましい。
第1の窒化物半導体と第2の窒化物半導体との積層回数は、特に限定されず、上記光吸収層の膜厚内で、単一膜厚が上記範囲の第1及び第2の窒化物半導体を積層する。例えば、Inの組成比が大きい場合は、InGaNの結晶性が維持しにくく傾向があるので、この場合は第1の窒化物半導体の単一層の膜厚を薄して積層回数を増やすことが結晶性の良好な光吸収膜を得るのに好ましい。
【0017】
以上のように、本発明における光吸収層は、レーザ素子の活性層で発光しn型クラッド層から漏れ出した光が、n型コンタクト層で導波してFFPを乱すことを防止するものであり、この点から本発明は、レーザ素子の基板となる材料がn型コンタクト層より屈折率の小さい値の材料を有して構成される場合、又は窒化物半導体を基板としこの基板裏面に支持対などが接している場合などに生じる問題点を解決するものである。
本発明において、基板としては、屈折率がn型コンタクト層より小さい材料のものであり、例えば、C面、R面及びA面のいずれかを主面とするサファイア、スピネル(MgA124)のような絶縁性基板、窒化物半導体と格子整合する酸化物基板等、従来知られている窒化物半導体となり屈折率の小さい基板材料を用いることができる。これらの基板材料は後述の選択成長で用いられる異種基板としても用いることができる。
また、本発明において、基板としては、上記基板材料と、この上に窒化物半導体の横方向の成長を利用して選択成長させた転位の少ない窒化物半導体とを有する材料を基板としてもよい。
【0018】
窒化物半導体の選択成長の方法としては、特に限定されず、窒化物半導体の転位を低減できる方法であればよい。例えば、前記J.J.A.P.に記載の方法、本出願人が提出した特願平10−77245号、特願平10−275826号、特願平10−363520号の各明細書に記載の方法等を挙げることができる。
【0019】
また、本発明において、Alを含む窒化物半導体を有する多層膜層からなるn型クラッド層、Alを含む窒化物半導体を有する多層膜層からなるp型クラッド層、InaGa1-aN(0<a<1)からなる井戸層及びInbGa1-bN(0≦b<1)からなる障壁層を有する多重量子井戸構造の活性層、n型コンタクト層は特に限定されない。
【0020】
以下に好ましい実施の形態として、図1を用いて説明する。
図1は、本発明の一実施の形態である窒化物半導体レーザ素子を示す模式的断面図である。
図1には、サファイア等の異種基板上に選択成長させた窒化物半導体基板1上に、アンドープのIndGa1-dNからなる第1の窒化物半導体の少なくとも1層を含んでなる光吸収層2、n型不純物(例えばSi)をドープしてなるAlaGa1-aN(0<a<1)よりなるn型コンタクト層3、SiドープのIngGa1-gN(0.05≦g≦0.2)よりなるクラック防止層4、AleGa1-eN(0.12≦e<0.15)を含んでなる多層膜のn型クラッド層5、アンドープのGaNからなるn型ガイド層6、InbGa1-bN(0≦b<1)からなる多重量子井戸構造の活性層7、MgドープのAldGa1-dN(0<d≦1)からなる少なくとも1層以上のp型電子閉じ込め層8、アンドープのGaNからなるp型ガイド層9、AlfGa1-fN(0<f≦1)を含んでなる多層膜のp型クラッド層10、MgドープのGaNからなるp型コンタクト層11からなるリッジ形状のストライプを有する窒化物半導体レーザ素子が示されている。
また、p電極は、リッジ形状のストライプの最上層に形成され、n電極はn型コンタクト層上に形成される。
以下に各層について更に詳細に説明する。
【0021】
本発明において用いることのできる選択成長としては、窒化物半導体の縦方向の成長を少なくとも部分的に一時的止めて、横方向の成長を利用して転位を抑制することのできる成長方法であれば特に限定されない。
例えば具体的に、窒化物半導体と異なる材料からなる異種基板上に、窒化物半導体が成長しないかまたは成長しにくい材料からなる保護膜を部分的に形成し、その上から窒化物半導体を成長させることにより、保護膜が形成されていない部分から窒化物半導体が成長し、成長を続けることにより保護膜上に向かって横方向に成長することにより厚膜の窒化物半導体が得られる。
【0022】
異種基板としては、窒化物半導体と異なる材料よりなる基板であれば特に限定されず、例えば、図2に示すC面、R面、A面を主面とするサファイア、スピネル(MgA124)のような絶縁性基板、窒化物半導体と格子整合する酸化物基板等、従来知られている窒化物半導体と異なる基板材料を用いることができる。上記の中で好ましい異種基板としては、サファイアであり、更に好ましくはサファイアのC面である。更に、選択成長して得られる窒化物半導体の内部に微細なクラックの発生を防止できる等の点から、サファイアのC面がステップ状にオフアングルされ、オフアングル角θ(図3に示されるθ)が0.1°〜0.3°の範囲のものが好ましい。オフアングル角θが0.1°未満であるとレーザ素子の特性が安定し易くなり、また選択成長の窒化物半導体の内部に微細なクラックが発生しやすくなる傾向があり、一方オフ角が0.3°を超えると、選択成長の窒化物半導体の面状態がステップ状になり、その上に素子構造を成長させるとステップが若干強調され、素子のショート及びしきい値上昇を招き易くなる傾向がある。
上記微細なクラックとは、異種基板と窒化物半導体とが格子整合しないために生じるものであり、窒化物半導体の選択成長のいずれかの過程で生じる場合や、転位の低減された窒化物半導体基板に例えばn型コンタクト層などを形成するとn型コンタクト層に発生する場合等がある。このような微細なクラックは、寿命特性の低下を引き起こす原因となる可能性がある。従って、上記のようにオフアングルされた基板を用いることが、微細なクラックの発生を防止する点で好ましい。
【0023】
上記のようなステップ状にオフアングルされたサファイア等の異種基板上に、保護膜を、直接又は一旦窒化物半導体を成長させてから形成する。
保護膜としては、保護膜表面に窒化物半導体が成長しないかまたは成長しにくい性質を有する材料であれば特に限定されないが、例えば酸化ケイ素(SiOX)、窒化ケイ素(SiXY)、酸化チタン(TiOX)、酸化ジルコニウム(ZrOX)等の酸化物、窒化物、またこれらの多層膜の他、1200℃以上の融点を有する金属等を用いることができる。好ましい保護膜材料としては、SiO2及びSiNが挙げられる。
保護膜材料を窒化物半導体等の表面に形成するには、例えば蒸着、スパッタ、CVD等の気相製膜技術を用いることができる。また、部分的(選択的)に形成するためには、フォトリソグラフィー技術を用いて、所定の形状を有するフォトマスクを作製し、そのフォトマスクを介して、前記材料を気相製膜することにより、所定の形状を有する保護膜を形成できる。保護膜の形状は、特に限定されないが、例えばドット、ストライプ、碁盤面状の形状で形成でき、好ましくはストライプ状の形状でストライプがオリエンテーションフラット面(サファイアのA面)に垂直になるように形成される。
また保護膜が形成されている表面積は、保護膜が形成されていない部分の表面積より大きい方が転位を防止して良好な結晶性を有する窒化物半導体基板を得ることができる。
【0024】
また、保護膜がストライプ形状である場合の保護膜のストライプ幅と保護膜が形成されていない部分(窓部)の幅との関係は、10:3以上、好ましくは16〜18:3である。保護膜のストライプ幅と窓部の幅が上記の関係にあると、窒化物半導体が良好の保護膜を覆い易くなり、且つ転位を良好に防止することができる。保護膜のストライプ幅としては、例えば6〜27μm、好ましくは11〜24μmであり、窓部の幅としては、例えば2〜5μm、好ましくは2〜4μmである。
また、選択成長して得られる窒化物半導体上に素子構造を形成しp型窒化物半導体層の最上層にリッジ形状のストライプを形成する場合、リッジ形状のストライプが、保護膜上部であって、且つ保護膜の中心部分を避けて形成されていることがしきい値を低下させることができ、素子の信頼性を向上させるのに好ましい。このことは、保護膜上部の窒化物半導体の結晶性は、窓部上部のその結晶性に比べて良好であるためしきい値を低下させるのに好ましいからである。また保護膜の中心付近は、窓部から成長した隣接する窒化物半導体同士が横方向の成長によって接合する部分でありこのような接合箇所に空隙の生じる場合があり、この空隙の上部にリッジ形状のストライプが形成されると、レーザ素子の動作中に空隙から転位が伝播し易いため素子の信頼性が劣化する傾向があるからである。
【0025】
保護膜は、異種基板に直接形成されてもよいが、低温成長のバッファ層を形成させ、更に高温成長の窒化物半導体を成長させた上に、形成させることが転位を防止するのに好ましい。
低温成長のバッファ層としては、例えばAlN、GaN、AlGaN、及びInGaN等のいずれかを900℃以下200℃以上の温度で、膜厚数十オングストローム〜数百オングストロームで成長させてなるものである。このバッファ層は、異種基板と高温成長の窒化物半導体層との格子定数不正を緩和し転位の発生を防止するのに好ましい。
高温成長の窒化物半導体としては、アンドープのGaN、n型不純物をドープしたGaN、またSiをドープしたGaNを用いることができ、好ましくはアンドープのGaNである。またこれらの窒化物半導体は、高温、具体的には900℃〜1100℃、好ましくは1050℃でバッファ層上に成長される。膜厚は特に限定されないが、例えば1〜20μm、好ましくは2〜10μmである。
【0026】
次に保護膜を形成した上に、窒化物半導体を選択成長させて窒化物半導体基板1を得る。この場合、成長させる窒化物半導体としては、アンドープのGaN又は不純物(例えばSi、Ge、Sn、Be、Zn、Mn、Cr、及びMg)をドープしたGaNが挙げられる。成長温度としては、例えば900℃〜1100℃、より具体的には1050℃付近の温度で成長させる。不純物がドープされていると転位を抑制するのに好ましい。
保護膜上に成長させる初期は、成長速度をコントロールし易いMOCVD(有機金属化学気相成長法)等で成長させ、保護膜が選択成長の窒化物半導体で覆われた後の成長をHVPE(ハライド気相成長法)等で成長させてもよい。
【0027】
次に、選択成長して得られた窒化物半導体(サファイア等の異種基板を有する)を基板としこの上に、光吸収層2を成長させる。
光吸収層2としては、前記したように、井戸層よりもバンドギャップエネルギーが小さいアンドープのIndGa1-dN(0<d<1)からなる第1の窒化物半導体を含んでなる光吸収層、又は、第1の窒化物半導体とアンドープのGaNからなる第2の窒化物半導体とをそれぞれ少なくとも1層以上積層してなる多層膜からなる光吸収層を形成することができる。光吸収層2の詳細は、前記した通りである。
【0028】
次に、n型コンタクト層3を光吸収層2上に成長させる。n型コンタクト層としては、n型不純物(好ましくはSi)をドープされたAlaGa1-aN(0≦a<1)を成長させ、好ましくはaが0.01〜0.05のAlaGa1-aNを成長させる。n型コンタクト層がAlを含む3元混晶で形成されると、窒化物半導体基板1に微細なクラックが発生していても、微細なクラックの伝播を防止することができ、更に窒化物半導体基板1と光吸収層2やn型コンタクト層との格子定数及び熱膨張係数の相違によるn型コンタクト層等への微細なクラックの発生を防止することができ好ましい。n型不純物のドープ量としては、1×1018/cm3〜5×1018/cm3である。このn型コンタクト層3にn電極が形成される。n型コンタクト層3の膜厚としては、1〜10μmである。
また、光吸収層2とn型コンタクト層3との間に、アンドープのAlaGa1-aN(0<a<1)を成長させてもよく、このアンドープの層を成長させると結晶性が良好となり、寿命特性を向上させるのに好ましい。アンドープn型コンタクト層の膜厚は、数μmである。
【0029】
次に、クラック防止層4をn型コンタクト層3上に成長させる。クラック防止層4としては、SiドープのIngGa1-gN(0.05≦g≦0.2)を成長させ、好ましくはgが0.05〜0.08のIngGa1-gNを成長させる。このクラック防止層4は、省略することができるが、クラック防止層4をn型コンタクト層3上に形成すると、素子内のクラックの発生を防止するのに好ましい。Siのドープ量としては、5×1018/cm3である。
また、クラック防止層4を成長させる際に、Inの混晶比を大きく(x≧0.1)すると、クラック防止層4が、活性層7から発光しn型クラッド層5から漏れ出した光を吸収することができ、レーザ光のファーフィールドパターンの乱れを防止することができ好ましい。
クラック防止層4膜厚としては、結晶性を損なわない程度の厚みであり、例えば具体的には0.05〜0.3μmである。
【0030】
次に、n型クラッド層5をクラック防止層4上に成長させる。n型クラッド層5としては、AleGa1-eN(0.12≦e<0.15)を含む窒化半導体を有する多層膜の層として形成される。多層膜とは、互いに組成が異なる窒化物半導体層を積層した多層膜構造を示し、例えば、AleGa1-eN(0.12≦e<0.15)層と、このAleGa1-eNと組成の異なる窒化物半導体、例えばAlの混晶比の異なるもの、Inを含んでなる3元混晶のもの、又はGaN等からなる層とを組み合わせて積層してなるものである。この中で好ましい組み合わせとしては、AleGa1-eNとGaNとを積層してなる多層膜とすると、同一温度で結晶性の良い窒化物半導体層が積層でき好ましい。より好ましい多層膜としは、アンドープのAleGa1-eNとn型不純物(例えばSi)ドープのGaNとを積層してなる組み合わせである。n型不純物は、AleGa1-eNにドープされてもよい。n型不純物のドープ量は、4×1018/cm3〜5×1018/cm3である。n型不純物がこの範囲でドープされていると抵抗率を低くでき且つ結晶性を損なわない。
このような多層膜は、単一層の膜厚が100オングストローム以下、好ましくは70オングストローム以下、さらに好ましくは40オングストローム以下、好ましくは10オングストローム以上の膜厚の窒化物半導体層を積層してなる。単一の膜厚が100オングストローム以下であるとn型クラッド層が超格子構造となり、Alを含有しているにもかかわらず、クラックの発生を防止でき結晶性を良好にすることができる。また、n型クラッド層5の総膜厚としては、0.7〜2μmである。
またn型クラッド層の全体のAlの平均組成は、0.05〜0.1である。Alの平均組成がこの範囲であると、クラックを発生させない程度の組成比で、且つ充分にレーザ導波路との屈折率の差を得るのに好ましい組成比である。
【0031】
次に、n型ガイド層6をn型クラッド層5上に成長させる。n型ガイド層6としては、アンドープのGaNからなる窒化物半導体を成長させる。n型ガイド層6の膜厚としては、0.1〜0.07μmであるとしきい値が低下し好ましい。n型ガイド層6をアンドープとすることで、レーザ導波路内の伝搬損失が減少し、しきい値が低くなり好ましい。
【0032】
次に、活性層7をn型ガイド層6上に成長させる。活性層7としては、InbGa1-bN(0≦b<1)を含んでなる多重量子井戸構造である。活性層7の井戸層としては、bが0.1〜0.2のInbGa1-bNであり、障壁層としては、bが0〜0.01のInbGa1-bNである。
また活性層7を構成する井戸層及び障壁層のいずれか一方または両方に不純物をドープしてもよい。好ましくは障壁層に不純物をドープさせると、しきい値が低下し好ましい。
井戸層の膜厚としては、30〜60オングストロームであり、障壁層の膜厚としては、90〜150オングストロームである。
【0033】
活性層6の多重量子井戸構造は、障壁層から始まり井戸層で終わっても、障壁層から始まり障壁層で終わっても、井戸層から始まり障壁層で終わっても、また井戸層から始まり井戸層で終わってもよい。好ましくは障壁層から始まり、井戸層と障壁層とのペアを2〜5回繰り返してなるもの、好ましくは井戸層と障壁層とのペアを3回繰り返してなるものがしきい値を低くし寿命特性を向上させるのに好ましい。
【0034】
次に、p型電子閉じ込め層8を活性層7上に成長させる。p型電子閉じ込め層8としては、MgドープのAldGa1-dN(0<d≦1)からなる少なくとも1層以上を成長させてなるものである。好ましくはdが0.1〜0.5のMgドープのAldGa1-dNである。p型電子閉じ込め層8の膜厚は、10〜1000オングストローム、好ましくは50〜200オングストロームである。膜厚が上記範囲であると、活性層7内の電子を良好に閉じ込めることができ、且つバルク抵抗も低く抑えることができ好ましい。
またp型電子閉じ込め層8のMgのドープ量は、1×1019/cm3〜1×1021/cm3である。ドープ量がこの範囲であると、バルク抵抗を低下させることに加えて、後述のアンドープで成長させるp型ガイド層へMgが良好に拡散され、薄膜層であるp型ガイド層9にMgを1×1016/cm3〜1×1018/cm3の範囲で含有させることができる。
またp型電子閉じ込め層8は、低温、例えば850〜950℃程度の活性層を成長させる温度と同様の温度で成長させると活性層の分解を防止することができ好ましい。
またp型電子閉じ込め層8は、低温成長の層と、高温、例えば活性層の成長温度より100℃程度の温度で成長させる層との2層から構成されていてもよい。このように、2層で構成されていると、低温成長の層が活性層の分解を防止し、高温成長の層がバルク抵抗を低下させるので、全体的に良好となる。
またp型電子閉じ込め層8が2層から構成される場合の各層の膜厚は、特に限定されないが、低温成長層は10〜50オングストローム、高温成長層は50〜150オングストロームが好ましい。
【0035】
次に、p型ガイド層9をp型電子閉じ込め層8上に成長させる。p型ガイド層9としては、アンドープのGaNからなる窒化物半導体層として成長させてなるものである。膜厚は0.1〜0.07μmであり、この範囲であるとしきい値が低くなり好ましい。また上記したように、p型ガイド層9はアンドープ層として成長させるが、p型電子閉じ込め層8にドープされているMgが拡散して、1×1016/cm3〜1×1018/cm3の範囲でMgが含有される。
【0036】
次に、p型クラッド層10をp型ガイド層9に成長させる。p型クラッド層10としては、AlfGa1-fN(0<f≦1)を含んでなる窒化物半導体層、好ましくはAlfGa1-fN(0.05≦f≦0.15)を含んでなる窒化物半導体層を有する多層膜の層として形成される。多層膜とは、互いに組成が異なる窒化物半導体層を積層した多層膜構造であり、例えば、AlfGa1-fN層と、AlfGa1-fNと組成の異なる窒化物半導体、例えばAlの混晶比の異なるもの、Inを含んでなる3元混晶のもの、又はGaN等からなる層とを組み合わせて積層してなるものである。この中で好ましい組み合わせとしては、AlfGa1-fNとGaNとを積層してなる多層膜とすると、同一温度で結晶性の良い窒化物半導体層が積層でき好ましい。より好ましい多層膜としは、アンドープのAlfGa1-fNとp型不純物(例えばMg)ドープのGaNとを積層してなる組み合わせである。p型不純物は、AlfGa1-fNにドープされてもよい。p型不純物のドープ量は、1×1017/cm3〜1×1019/cm3である。p型不純物がこの範囲でドープされていると結晶性を損なわない程度のドープ量で且つバルク抵抗が低くなり好ましい。
このような多層膜は、単一層の膜厚が100オングストローム以下、好ましくは70オングストローム以下、さらに好ましくは40オングストローム以下、好ましくは10オングストローム以上の膜厚の窒化物半導体層を積層してなる。単一の膜厚が100オングストローム以下であるとn型クラッド層が超格子構造となり、Alを含有しているにもかかわらず、クラックの発生を防止でき結晶性を良好にすることができる。
p型クラッド層10の総膜厚としては、0.4〜0.5μmであり、この範囲であると順方向電圧(Vf)を低減するために好ましい。
またp型クラッド層の全体のAlの平均組成は、0.05〜0.1である。この値は、クラックの発生を抑制し且つレーザ導波路との屈折率差を得るのに好ましい。
【0037】
次に、p型コンタクト層11をp型クラッド層10上に成長させる。p型コンタクト層としては、MgドープのGaNからなる窒化物半導体層を成長させてなるものである。膜厚は10〜200オングストロームである。Mgのドープ量は1×1019/cm3〜1×1022/cm3である。このよう膜厚とMgのドープ量を調整することにより、p型コンタクト層11のキャリア濃度が上昇し、p電極をのオーミックがとりやすくなる。
【0038】
本発明の素子において、リッジ形状のストライプは、p型コンタクト層からエッチングされてp型コンタクト層よりも下側(基板側)までエッチングされることにより形成される。例えば図1に示すようなp型コンタクト層11からp型クラッド層10の途中までエッチングしてなるストライプ、又はp型コンタクト層11からn型コンタクト層2までエッチングしてなるストライプなどが挙げられる。
【0039】
エッチングして形成されたリッジ形状のストライプの側面やその側面に連続した窒化物半導体層の平面に、例えば図1に示すように、レーザ導波路領域の屈折率より小さい値を有する絶縁膜が形成されている。ストライプの側面等に形成される絶縁膜としては、例えば、屈折率が約1.6〜2.3付近の値を有する、Si、V、Zr、Nb、Hf、Taよりなる群から選択された少なくとも一種の元素を含む酸化物や、BN、AlN等が挙げられ、好ましくは、Zr及びHfの酸化物のいずれか1種以上の元素や、BNである。
さらにこの絶縁膜を介してストライプの最上層にあるp型コンタクト層11の表面にp電極が形成される。
エッチングして形成されるリッジ形状のストライプの幅としては、0.5〜4μm、好ましくは1〜3μmである。ストライプの幅がこの範囲であると、水平横モードが単一モードになり易く好ましい。
また、エッチングがp型クラッド層10とレーザ導波路領域との界面よりも基板側にかけてなされていると、アスペクト比を1に近づけるのに好ましい。
以上のように、リッジ形状のストライプのエッチング量や、ストライプ幅、さらにストライプの側面の絶縁膜の屈折率などを特定すると、単一モードのレーザ光が得られ、さらにアスペクト比を円形に近づけるられ、レーザビームやレンズ設計が容易となり好ましい。
また本発明の素子において、p電極やn電極等は従来公知の種々のものを適宜選択して用いることができる。
【0040】
【実施例】
以下に本発明の一実施の形態である実施例を示す。しかし本発明はこれに限定されない。
また、本実施例はMOVPE(有機金属気相成長法)について示すものであるが、本発明の方法は、MOVPE法に限るものではなく、例えばHVPE(ハライド気相成長法)、MBE(分子線気相成長法)等、窒化物半導体を成長させるのに知られている全ての方法を適用できる。
【0041】
[実施例1]
実施例1として、図1に示される本発明の一実施の形態である窒化物半導体レーザ素子を製造する。
【0042】
異種基板として、図3に示すようにステップ状にオフアングルされたC面を主面とし、オフアングル角θ=0.15°、ステップ段差およそ20オングストローム、テラス幅Wおよそ800オングストロームであり、オリフラ面をA面とし、ステップがA面に垂直であるサファイア基板を用意する。
このサファイア基板を反応容器内にセットし、温度を510℃にして、キャリアガスに水素、原料ガスにアンモニアとTMG(トリメチルガリウム)とを用い、サファイア基板上にGaNよりなる低温成長のバッファ層を200オングストロームの膜厚で成長させる。
バッファ層成長後、TMGのみ止めて、温度を1050℃まで上昇させ、1050℃になったら、原料ガスにTMG、アンモニア、シランガスを用い、アンドープのGaNからなる高温成長のバッファ層を5μmの膜厚で成長させる。
次に、高温成長のバッファ層を積層したウェーハ上にストライプ状のフォトマスクを形成し、CVD装置によりストライプ幅18μm、窓部の幅3μmのSiO2よりなる保護膜を0.1μmの膜厚で形成する。保護膜のストライプ方向はサファイアA面に対して垂直な方向である。
保護膜形成後、ウェーハを反応容器に移し、1050℃にて、原料ガスにTMG、アンモニアを用い、アンドープのGaNよりなる窒化物半導体層を15μmの膜厚で成長させ窒化物半導体基板1とする。
得られた窒化物半導体を窒化物半導体基板1として以下の素子構造を積層成長させる。
【0043】
(光吸収層2)
窒化物半導体基板1上に、780℃で原料ガスにTMI(トリメチルインジウム)、TMG、アンモニアガスを用いアンドープのIn0.15Ga0.85Nよりなる第1の窒化物半導体を500オングストロームの膜厚で成長させ、続いて、TMIを止め、アンドープのGaNよりなる第2の窒化物半導体を1000オングストローム成長させる。そして、この操作をそれぞれ3回繰り返して、第1の窒化物半導体と第2の窒化物半導体とを積層し、総膜厚4500オングストロームの多層膜よりなる光吸収層2を成長させる。
【0044】
(アンドープn型コンタクト層)[図1には図示されていない]
光吸収層2上に、1050℃で原料ガスにTMA(トリメチルアルミニウム)、TMG、アンモニアガスを用いアンドープのAl0.05Ga0.95Nよりなるn型コンタクト層を1μmの膜厚で成長させる。
(n型コンタクト層3)
次に、同様の温度で、原料ガスにTMA、TMG及びアンモニアガスを用い、不純物ガスにシランガス(SiH4)を用い、Siを3×1018/cm3ドープしたAl0.05Ga0.95Nよりなるn型コンタクト層3を3μmの膜厚で成長させる。
【0045】
(クラック防止層4)
次に、温度を800℃にして、原料ガスにTMG、TMI(トリメチルインジウム)及びアンモニアを用い、不純物ガスにシランガスを用い、Siを5×1018/cm3ドープしたIn0.08Ga0.92Nよりなるクラック防止層4を0.15μmの膜厚で成長させる。
【0046】
(n型クラッド層5)
次に、温度を1050℃にして、原料ガスにTMA、TMG及びアンモニアを用い、アンドープのAl0.14Ga0.86NよりなるA層を25オングストロームの膜厚で成長させ、続いて、TMAを止め、不純物ガスとしてシランガスを用い、Siを5×1018/cm3ドープしたGaNよりなるB層を25オングストロームの膜厚で成長させる。そして、この操作をそれぞれ160回繰り返してA層とB層の積層し、総膜厚8000オングストロームの多層膜(超格子構造)よりなるn型クラッド層5を成長させる。
【0047】
(n型ガイド層6)
次に、同様の温度で、原料ガスにTMG及びアンモニアを用い、アンドープのGaNよりなるn型ガイド層6を0.075μmの膜厚で成長させる。
【0048】
(活性層7)
次に、温度を800℃にして、原料ガスにTMI、TMG及びアンモニアを用い、不純物ガスとしてシランガスを用い、Siを5×1018/cm3ドープしたIn0.01Ga0.99Nよりなる障壁層を100オングストロームの膜厚で成長させる。続いて、シランガスを止め、アンドープのIn0.11Ga0.89Nよりなる井戸層を50オングストロームの膜厚で成長させる。この操作を3回繰り返し、最後に障壁層を積層した総膜厚550オングストロームの多重量子井戸構造(MQW)の活性層7を成長させる。
【0049】
(p型電子閉じ込め層8)
次に、同様の温度で、原料ガスにTMA、TMG及びアンモニアを用い、不純物ガスとしてCp2Mg(シクロペンタジエニルマグネシウム)を用い、Mgを1×1019/cm3ドープしたAl0.4Ga0.6Nよりなるp型電子閉じ込め層8を100オングストロームの膜厚で成長させる。
【0050】
(p型ガイド層9)
次に、温度を1050℃にして、原料ガスにTMG及びアンモニアを用い、アンドープのGaNよりなるp型ガイド層9を0.075μmの膜厚で成長させる。
このp型ガイド層9は、アンドープとして成長させるが、p型電子閉じ込め層8からのMgの拡散により、Mg濃度が5×1016/cm3となりp型を示す。
【0051】
(p型クラッド層10)
次に、同様の温度で、原料ガスにTMA、TMG及びアンモニアを用い、アンドープのAl0.1Ga0.9NよりなるA層を25オングストロームの膜厚で成長させ、続いて、TMAを止め、不純物ガスとしてCp2Mgを用い、Mgを5×1018/cm3ドープしたGaNよりなるB層を25オングストロームの膜厚で成長させる。そして、この操作をそれぞれ100回繰り返してA層とB層の積層し、総膜厚5000オングストロームの多層膜(超格子構造)よりなるp型クラッド層10を成長させる。
【0052】
(p型コンタクト層11)
次に、同様の温度で、原料ガスにTMG及びアンモニアを用い、不純物ガスとしてCp2Mgを用い、Mgを1×1020/cm3ドープしたGaNよりなるp型コンタクト層11を150オングストロームの膜厚で成長させる。
【0053】
反応終了後、反応容器内において、ウエハを窒素雰囲気中、700℃でアニーリングを行い、p型層を更に低抵抗化する。
アニーリング後、ウエハを反応容器から取り出し、最上層のp側コンタクト層の表面にSiO2よりなる保護膜を形成して、RIE(反応性イオンエッチング)を用いSiCl4ガスによりエッチングし、図4に示すように、n電極を形成すべきn側コンタクト層3の表面を露出させる。
次に図4(a)に示すように、最上層のp側コンタクト層11のほぼ全面に、PVD装置により、Si酸化物(主として、SiO2)よりなる第1の保護膜61を0.5μmの膜厚で形成した後、第1の保護膜61の上に所定の形状のマスクをかけ、フォトレジストよりなる第3の保護膜63を、ストライプ幅1.8μm、厚さ1μmで形成する。
次に、図4(b)に示すように第3の保護膜63形成後、RIE(反応性イオンエッチング)装置により、CF4ガスを用い、第3の保護膜63をマスクとして、前記第1の保護膜をエッチングして、ストライプ状とする。その後エッチング液で処理してフォトレジストのみを除去することにより、図4(c)に示すようにp側コンタクト層10の上にストライプ幅1.8μmの第1の保護膜61が形成できる。
【0054】
さらに、図4(d)に示すように、ストライプ状の第1の保護膜61形成後、再度RIEによりSiCl4ガスを用いて、p側コンタクト層11、およびp側クラッド層10をエッチングして、ストライプ幅1.8μmのリッジ形状のストライプを形成する。但し、リッジ形状のストライプは、図1に示すように、選択成長を行う際に形成した保護膜の上部で且つ保護膜の中心部分を避けるように形成される。
リッジストライプ形成後、ウェーハをPVD装置に移送し、図4(e)に示すように、Zr酸化物(主としてZrO2)よりなる第2の保護膜62を、第1の保護膜61の上と、エッチングにより露出されたp側クラッド層10の上に0.5μmの膜厚で連続して形成する。このようにZr酸化物を形成すると、p−n面の絶縁をとるためと、横モードの安定を図ることができ好ましい。
次に、ウェーハをフッ酸に浸漬し、図4(f)に示すように、第1の保護膜61をリフトオフ法により除去する。
【0055】
次に図4(g)に示すように、p側コンタクト層11の上の第1の保護膜61が除去されて露出したそのp側コンタクト層11の表面にNi/Auよりなるp電極20を形成する。但しp電極20は100μmのストライプ幅として、この図に示すように、第2の保護膜62の上に渡って形成する。
第2の保護膜62形成後、図1に示されるように露出させたn側コンタクト層3の表面にはTi/Alよりなるn電極21をストライプと平行な方向で形成する。
【0056】
以上のようにして、n電極とp電極とを形成したウェーハのサファイア基板を研磨して70μmとした後、ストライプ状の電極に垂直な方向で、基板側からバー状に劈開し、劈開面(11−00面、六角柱状の結晶の側面に相当する面=M面)に共振器を作製する。共振器面にSiO2とTiO2よりなる誘電体多層膜を形成し、最後にp電極に平行な方向で、バーを切断して図1に示すようなレーザ素子とする。なお共振器長は300〜500μmとすることが望ましい。
得られたレーザ素子をヒートシンクに設置し、それぞれの電極をワイヤーボンディングして、室温でレーザ発振を試みた。
その結果、室温においてしきい値2.5kA/cm2、しきい値電圧5Vで、発振波長400nmの連続発振が確認され、室温で1万時間以上の寿命を示し、更にn型コンタクト層の端面からの光の放出が抑制され、共振面から放出されるレーザ光のFFPにはリップルが乗ることなく良好な単一モードとなる。
【0057】
[実施例2]
実施例1において、光吸収層2を以下のように単層で構成させる他は同様にして窒化物半導体レーザ素子を作製する。
(光吸収層2)
窒化物半導体基板1上に、780℃で原料ガスにTMI(トリメチルインジウム)、TMG、アンモニアガスを用いアンドープのIn0.15Ga0.85Nよりなる第1の窒化物半導体を0.2μmの膜厚で成長させ光吸収層2を成長させる。
得られたレーザ素子は、実施例1とほぼ同様に良好なFFPで、良好な寿命特性を有する。
【0058】
[実施例3]
実施例1において、p型電子閉じ込め層8を以下のように2層から構成させる他は同様にして窒化物半導体レーザ素子を作製する。
(p型電子閉じ込め層8)
温度を800℃にして、原料ガスにTMA、TMG及びアンモニアを用い、不純物ガスとしてCp2Mg(シクロペンタジエニルマグネシウム)を用い、Mgを5×1018/cm3ドープしたAl0.4Ga0.6Nよりなる低温成長のA層を30オングストロームの膜厚で成長させ、続いて温度を900℃にして、Mgを5×1018/cm3ドープしたAl0.4Ga0.6Nよりなる高温成長のB層を70オングストロームの膜厚で成長させてなる低温成長のA層と高温成長のB層との2層からなるp型電子閉じ込め層8を成長させる。
得られたレーザ素子は、実施例1と同様に良好なFFPのレーザ光を放出し、寿命特性の良好な素子である。
【0059】
[実施例4]
実施例1において、クラック防止層4を成長させる際に、Inの組成比を0.2として、Siを5×1018/cm3ドープしたIn0.2Ga0.8Nよりなるクラック防止層4を0.15μmの膜厚で成長させる他は同様にしてレーザ素子を作製する。
得られたレーザ素子は、実施例1と同様に良好な寿命特性を有し、更に活性層6で発光しn型クラッド層から漏れだした光が、光吸収層2とクラッド防止層4とで吸収され、FFPが実施例1より良好になる。
【0060】
[実施例5]
実施例1において、光吸収層2を以下のように変更する他は同様にしてレーザ素子を作製する。
(光吸収層2)
窒化物半導体基板1上に、780℃で原料ガスにTMI(トリメチルインジウム)、TMG、アンモニアガスを用いアンドープのIn0.15Ga0.85Nよりなる第1の窒化物半導体を0.1μmの膜厚で成長させ、続いて、TMIを止め、アンドープのGaNよりなる第2の窒化物半導体を0.3μm成長させる。そして、この操作をそれぞれ2回繰り返して、第1の窒化物半導体と第2の窒化物半導体とを積層し、総膜厚0.8μmの多層膜よりなる光吸収層2を成長させる。
得られたレーザ素子は実施例1とほぼ同様に良好な結果が得られる。
【0061】
[実施例6]
実施例1において、光吸収層2を以下のように変更する他は同様にしてレーザ素子を作製する。
(光吸収層2)
窒化物半導体基板1上に、780℃で原料ガスにTMI(トリメチルインジウム)、TMG、アンモニアガスを用いアンドープのIn0.15Ga0.85Nよりなる第1の窒化物半導体を0.01μmの膜厚で成長させ、続いて、TMIを止め、アンドープのGaNよりなる第2の窒化物半導体を0.02μm成長させる。そして、この操作をそれぞれ5回繰り返して、第1の窒化物半導体と第2の窒化物半導体とを積層し、総膜厚0.15μmの多層膜よりなる光吸収層2を成長させる。
得られたレーザ素子は実施例1とほぼ同様に良好な結果が得られる。
【0062】
[実施例7]
実施例2において、光吸収層2の膜厚を0.5μmとする他は同様にしてレーザ素子を作製する。
得られたレーザ素子は、実施例2とほぼ同様に良好な結果が得られる。
【0063】
【発明の効果】
本発明は、レーザ光のFFPがリップルのない良好な単一モードとなる窒化物半導体レーザ素子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明の一実施の形態である窒化物半導体レーザ素子を示す模式的断面図である。
【図2】図2は、サファイアの面方位を示すユニットセル図である。
【図3】図3は、オフアングルした異種基板の部分的な形状を示す模式的断面図である。
【図4】図4は、リッジ形状のストライプを形成する一実施の形態である方法の各工程におけるウエハの部分的な構造を示す模式的断面図である。
【符号の説明】
1・・・窒化物半導体基板
2・・・光吸収層
3・・・n型コンタクト層
4・・・クラック防止層
5・・・n型クラッド層
6・・・n型ガイド層
7・・・活性層
8・・・p型電子閉じ込め層
9・・・p型ガイド層
10・・・p型クラッド層
11・・・p型コンタクト層

Claims (6)

  1. 窒化物半導体を選択的に横方向に成長させて形成された窒化物半導体基板上に、少なくともn型コンタクト層、Alを含む窒化物半導体を有するn型クラッド層、InGa1−aN(0<a<1)からなる井戸層とInGa1−bN(0≦b<1)からなる障壁層とを有する多重量子井戸構造の活性層、Alを含む窒化物半導体層を有するp型クラッド層を順に有しており、
    前記基板とn型コンタクト層との間に、井戸層よりもバンドギャップエネルギーが小さいInGa1−dN(0<d<1)からなる第1の窒化物半導体を少なくとも1層以上を含んでなる光吸収層を有し、
    前記n型コンタクト層とn型クラッド層との間に、Inを含有するクラック防止層を有することを特徴とする窒化物半導体レーザ素子。
  2. 前記p型クラッド層、及び/又は前記n型クラッド層は、多層膜層からなる請求項1に記載の窒化物半導体レーザ素子。
  3. 前記光吸収層が、井戸層よりもバンドギャップエネルギーが小さいInGa1−dN(0<d<1)からなる第1の窒化物半導体と、GaNからなる第2の窒化物半導体とをそれぞれ少なくとも1層以上積層してなる多層膜からなる請求項1又は請求項2に記載の窒化物半導体レーザ素子。
  4. 前記光吸収層は、アンドープである請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の窒化物半導体レーザ素子。
  5. 前記光吸収層の膜厚が、0.02〜1μmである請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の窒化物半導体レーザ素子。
  6. 前記多層膜の光吸収膜を構成する第1の窒化物半導体層の膜厚が、0.01〜0.05μmであり、第2の窒化物半導体の膜厚が0.01〜0.05μmである請求項3に記載の窒化物半導体レーザ素子。
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