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JP2004265826A - 金属ペースト - Google Patents

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JP2004265826A JP2003057175A JP2003057175A JP2004265826A JP 2004265826 A JP2004265826 A JP 2004265826A JP 2003057175 A JP2003057175 A JP 2003057175A JP 2003057175 A JP2003057175 A JP 2003057175A JP 2004265826 A JP2004265826 A JP 2004265826A
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Abstract

【課題】低温で焼成できる金属ペーストにおいて、コスト、保存安定性、及び焼成時の腐食性排ガスの問題などを解決し得る、低温で焼成できる金属ペーストを提供する。
【解決手段】常温で固体である周期律表3族〜15族金属の有機金属化合物1種以上と、アルコール化合物、好ましくは、グリコール類とを含む金属ペーストである。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、金属ペーストに関し、詳しくは、低温で焼成することができ、焼成時に腐食性の高い排ガスを発生することがなく、更に基板との密着性に優れた金属ペーストに関する。
【0002】
【従来の技術】
金属は、その種類に応じて固有の特徴的な性能、例えば、導電性、抵抗性、半導電性、透明性、イオン性、耐食性、摩擦性、遮光性、着色性及び/又は金属光沢性等を有する。この場合、各金属固有の性能を活用するために、部品全体を単一の金属で作製する方法があるが、一般には、金属を部品の一部、特に部品の表面に金属膜として存在させて金属の有する機能を発揮させる場合が多い。また、金属固有の性能を金属膜として利用する方が、取り扱いが容易であり、経済的である。
【0003】
たとえばセラミック等の基板上に、所要の機能を発揮する単独の金属または合金の金属膜を種々の手段により形成して、電子材料、電子機器、機械材料等の表面処理、コーティング、防磁、装飾、触媒、殺菌などの好ましい機能を発揮させている。またかかる金属膜は、医薬・農薬等の分野にも利用されつつある。
【0004】
基板上に金属膜を形成する従来の技術として、
(1)溶液中の金属イオンを反応析出させる金属メッキ法、
(2)高真空を利用するスパッタ法等の物理的蒸着法(PVD法)、
(3)高温と反応ガスを必要とする化学的蒸着法(CVD法)、
(4)金属インクを塗布して焼成する厚膜ペースト法、
などが公知である。
【0005】
(1)の方法は、亜鉛、錫、アルミニウムなどの金属イオンを含む溶液中で、たとえば冷延鋼板の表面にこれらの金属を電解析出させるメッキ鋼板が代表的であり、自動車用または家電製品用に多用されている。この方法は、大量生産に適する反面、工業的には、表面を被覆する金属膜の種類が限定されており、多様な組成を有する金属膜の成膜および少量の部品の成膜には適していない。(2)及び(3)の方法は、基板に対して密着性の高い金属膜を成膜できるという利点はあるが、PVD法は、高価な高真空・大型装置を必要とし、また、バッチ式の生産方式のため量産ができないので、製造コストが高くなるという問題を有する。またCVD法は、基板自体も高温度に曝されるので、基板の材質変化を避けることが困難であるという問題を有する。これに対して、(4)の厚膜ペースト法は、(1)〜(3)の方法に比較すると金属膜の密着性は比較的小さいものの、各種の金属ペーストを基板上に塗布・焼成するだけで製造できるという特徴がある。つまり、大規模な設備を必要とすることなく、簡便な工程と装置で連続的に成膜できるので、生産性が高く安価であるというメリットがあり、広く活用されている。
【0006】
しかしながら、厚膜ペースト法は、各種の金属を微粒子にして溶媒に分散させた不均一な粘性液体であるペーストを使用している。このため、基板に塗布して焼成するだけでは、金属粒子が基板に接触した状態の金属膜となり、均一な膜が形成されないという問題があった。そのため、電子業界で多用されている銀−パラジウム合金含有ペーストの場合には、ペーストを塗布した後、約950℃の高温で焼成し、金属微粒子を溶融させることにより、均一な金属膜を形成している。したがって、従来の厚膜ペースト法では、基板として、セラミック基板や金属板のような高融点の材料しか使用できないという問題があった。また、高温で溶融・焼成を行うので、高熱に耐える大型焼成炉と周辺施設、および大きなエネルギを必要とするという問題があった。
【0007】
そこで、ペーストの焼成温度をより低温にすることができれば、設備費の低減、エネルギの節約により、低コスト化を図ることが可能になる。また、軟化点が低いガラスやプラスチック等の安価な汎用基板にも応用が可能になる。こうした従来の厚膜ペースト法の問題を解決するために、無機の金属粒子をいったん有機金属化合物に変換し、溶媒中に均一に溶解させてから塗布・焼成して、均一な金属薄膜を得る有機金属(MO)法が開発されている(特許文献1参照)。たとえば、金元素の場合、イオウを含有する金の有機金属化合物を用いたペースト法は、金の微粒子を練込んだ厚膜ペースト法よりも、金の使用量が約7分の1の少量で、同等の性能を発揮する均一な金膜を形成することができる。このため、金の金属膜を使用する分野では、従来の厚膜ペースト法からMO法に置き換えられつつある。
【0008】
しかしながら、MO法は、厚膜ペースト法に比較して、コストが上昇するので、MO法による金の成膜は、サーマルプリンタヘッド等のごく一部の分野にしか使用されていない。また、イオウ金属化合物を使用するため、焼成時にSOを含む排ガスを排出するという問題も生じる。
【0009】
そこで、MO法を改良するため、常温で固体の、安価な金属の有機金属化合物を、安価なアミノ化合物に配合した金属ペーストが提案されている(特許文献2参照)。この発明は、常温で固体の有機金属化合物にアミノ化合物を加えて撹拌するという簡便な手段により、有機金属用インクとして直接ペースト化できる。さらに、金属ペーストに有機酸や有機アルコールを加えると、一般に不安定な有機金属化合物を安定化させ、溶解性や印刷性を向上させることも可能である。また、この発明では、金属ペーストを、90℃〜550℃、好ましくは110〜350℃の低温で焼成することを可能にしている。しかしながら、このアミノ化合物を配合した金属ペーストも、アミノ化合物の毒性と腐食に対する問題、および焼成時にNOが発生することによる臭気の問題があることから、改良の余地が残されている。
【0010】
【特許文献1】
特開平3−184890号公報
【特許文献2】
特開平10−72673号公報
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
以上述べたように、低温で焼成することができる金属ペーストの発明がいくつか提案されているものの、コストの問題、腐食の問題、焼成時の排ガスの問題がある。そこで、本発明は、基板との密着性に優れ、低温で焼成することができ、かつ、焼成時に腐食性の高い排ガスを発生することのない金属ペーストを提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記の目的に鑑み、本発明の発明者らは、高価な特殊金属の有機金属化合物のみならず、汎用性が高く安価な、常温で固体である有機金属化合物に、アルコール化合物としてのグリコール類を配合することにより、基板に塗布できる粘性を有し、また、低温で焼成しても、基板上に安定な金属膜を成膜することができる金属ペーストの発明を完成するに至った。
【0013】
すなわち、本発明は、常温で固体である周期律表3族〜15族金属の有機金属化合物の1種以上と、アルコール化合物、好ましくは、グリコール類とを含む金属ペーストである。
【0014】
とくに、グリコール類を溶剤または溶剤の一部として添加すると、有機金属化合物の溶解度を高めことができ、さらに印刷性を向上させることができる。また本発明の金属ペーストは、基板に塗布して150〜550℃、好ましくは200〜300℃の低温で焼成しても、密着性の高い金属膜を成膜することができる。
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明における周期律表3族〜15族金属は、具体的には、チタン、ジルコニウム、バナジウム、ニオブ、タンタル、クロム、モリブデン、マンガン、鉄、ルテニウム、コバルト、ロジウム、ニッケル、パラジウム、白金、銅、銀、金、亜鉛、カドミウム、インジウム、タリウム、スズ、鉛、アンチモン、ビスマス等が挙げられる。
【0016】
本発明で使用される有機金属化合物は、例えば常温で固体の上記各金属の有機酸塩、例えば、カプリル酸塩、シクロヘキサンカルボン酸塩、ギ酸塩、酢酸塩、シュウ酸塩、シクロヘキサンプロピオン酸塩等があげられる。
【0017】
また、金属有機酸塩の具体例としては、カプリル酸ニッケル、カプリル酸銅、カプリル酸ビスマス、カプリル酸アンチモン、カプリル酸錫、カプリル酸コバルト、カプリル酸銀、カプリル酸インジウム、カプリル酸パラジウム、カプリル酸ロジウム、カプリル酸白金、カプリル酸ルテニウム等の金属カプリル酸塩、シクロヘキサンカルボン酸ルテニウム、シクロヘキサンカルボン酸白金、シクロヘキサンカルボン酸パラジウム等の金属シクロヘキサンカルボン酸塩、ギ酸パラジウム、ギ酸インジウム、ギ酸スズ、ギ酸アンチモン、ギ酸銀、ギ酸ルテニウム等の金属ギ酸塩、酢酸パラジウム、酢酸ロジウム、酢酸銀、酢酸コバルト、酢酸鉛、酢酸銅、酢酸インジウム、酢酸スズ、酢酸アンチモン、酢酸ルテニウム、酢酸カドミウム、酢酸タリウム、酢酸ビスマス、酢酸クロム、酢酸マンガン、酢酸鉄、酢酸ニッケル、酢酸亜鉛、酢酸モリブデン等の金属酢酸塩、シュウ酸パラジウム、シュウ酸ロジウム、シュウ酸銀、シュウ酸コバルト、シュウ酸鉛、シュウ酸銅、シュウ酸インジウム、シュウ酸スズ、シュウ酸アンチモン、シュウ酸ルテニウム、シュウ酸カドミウム、シュウ酸タリウム、シュウ酸ビスマス、シュウ酸クロム、シュウ酸マンガン、シュウ酸鉄、シュウ酸ニッケル、シュウ酸亜鉛、シュウ酸モリブデン等の金属シュウ酸塩、シクロヘキサンプロピオン酸ルテニウム、安息香酸パラジウム、安息香酸銀等があげられる。特に、酢酸ニッケル、カプリル酸ニッケル、カプリル酸銅、カプリル酸ビスマス、カプリル酸アンチモン、カプリル酸錫、カプリル酸コバルト、カプリル酸銀、カプリル酸インジウム、カプリル酸パラジウム、カプリル酸ロジウム、カプリル酸白金、カプリル酸ルテニウム、シクロヘキサンカルボン酸ルテニウム、シクロヘキサンカルボン酸白金、シクロヘキサンカルボン酸パラジウムが好ましい。
【0018】
上記の有機金属化合物は1種類でもよく、また2種以上の有機金属化合物を組み合わせてもよい。特に、導電性、抵抗性、半導電性、透明性、イオン性、耐蝕性、摩擦性、遮光性、着色性、金属光沢性等の複数の性能を併せ持つ金属ペーストを製造するためには、固有の性能を有する金属を数種類含有させることが有効である。また、上記の有機金属化合物は、水和物であってもよい。
【0019】
本発明のアルコール化合物としては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコールなどの一価アルコール、エチレングリコール、プロピレングリコールなどのグリコール類、グリセリンなどの3価アルコールなどを挙げることができる。
【0020】
上記グリコール類は、一般式(I):
HO(CHRCHO)H (I)
(式中、mは1〜4の整数であり、Rは水素原子またはC〜Cアルキル基を表わす)で示されるグリコール類から選ばれる1種もしくは2種以上の混合物であることが好ましい。一般式(I)において、C〜Cアルキル基は、具体的に、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基等であり、Rとしては、特に、水素原子、メチル基が好ましい。
式(I)のグリコール類の具体例としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール等を挙げることができる。特に、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール等のポリグリコール類は好ましいものである。
なお、本発明の金属ペーストにおいては、グリコール類に対する有機金属化合物の溶解性を向上させるために、この両者の混合時に水を添加配合することが好ましい。
【0021】
有機金属化合物に対するグリコール類の配合比率は、有機金属化合物100質量部に対し、グリコール類を100〜200質量部配合することが好ましい。さらに、水を配合する場合は、有機金属化合物100質量部に対し、水を100〜10000質量部の範囲で添加することが好ましい。
本発明の金属ペーストを調製する際は、有機金属化合物とグリコール類とを混合した後、15〜130℃で加熱・保持しながら1〜12時間撹拌することにより、均一な金属ペーストを得ることが可能となる。
なお、有機金属化合物とグリコール類との混合に際して水を添加する場合は、これらの各成分を混合して、金属ペースト中間体とした後、40〜95℃で撹拌しながら、この中間体に含有される水を減圧除去することにより、最終的に均一な金属ペーストを得ることができる。この場合、最終的に得られた金属ペースト中には微量の水が残留することがある。
【0022】
本発明において使用されるアルコール化合物としてのグリコール類は、溶剤として十分な機能を有する。しかし、滑らかで伸展性に富むペーストを得て印刷性を高めるために、上記金属ペーストに、さらに、アルコール類、ケトン類、エーテル類を添加することができる。これらの任意に添加する有機溶媒により、印刷性の向上、さらには保存安定性の向上を図ることができ、薄くて均一な金属膜を形成することが可能となる。
【0023】
上記のアルコール類としては、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、ブチルアルコール、ペンチルアルコール、テトラヒドロキシフルフリルアルコール等の一価アルコールが挙げられ、特にエチルアルコールが好ましい。
【0024】
上記のケトン類としては、脂肪族または芳香族のケトンを使用することができる。具体的には、アセトン、エチルメチルケトン、2−ペンタノン、3−ペンタノン、3−メチル−2−ブタノン、2−ヘキサノン、3−ヘキサノン、メチルブチルケトン、3−メチル−2−ペンタノン、2−ヘプタノン、3−ヘプタノン、4−ヘプタノン、アミルメチルケトン、エチルブチルケトン、2,4−ジメチル−3−ペンタノン、2−オクタノン、3−オクタノン、4−オクタノン、2,5−ジメチル−3−ヘキサノン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、アセチルアセトン、2,3−ブタンジオン、2,3−ペンタンジオン、3,4−ヘキサンジオン、2,5−ヘキサンジオン、シクロヘキサンジオン、アセトフェノン等のケトンをあげることができる。
【0025】
上記のエーテル類としては、脂肪族または芳香族のエーテルを使用することができる。より具体的には、4−メトキシ−2−ブタノン、4−エトキシ−2−ブタノン、4−メトキシ−2−ブタノン、2−メトキシ−2−メチル−4−ペンタノン、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジプロピルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールジプロピルエーテル、アセトンジエチルアセタール、2,2−ジメトキシプロパン、アニソール、ジメトキシベンゼン等のエーテルをあげることができる。
【0026】
これらのアルコール類、ケトン類又はエーテル類の添加割合は、有機金属化合物1モルに対して0.1〜4モル添加されていることが好ましい。なお、アルコール類、ケトン類またはエーテル類を1種以上組み合わせて、金属ペーストに添加することもできる。
【0027】
また、金属ペーストに含まれる有機金属化合物の有機基の分子量が大きくなると、金属膜生成に際して高温焼成が必要となる。したがって、焼成温度を低温化するためには、有機基の分子量を小さくすることが必要となる。その一方、有機基の分子量を小さくすると、ペーストの流動性が減少して、印刷性や成膜性が悪くなる傾向が認められる。
そこで、このような問題を解消するために、本発明の金属ペーストに有機酸を加えると、焼成温度の低温化を図りながら印刷性や成膜性を向上させることができる。また、不安定な有機金属化合物は、有機酸の添加により、安定性や溶解性を向上させることができ、焼成温度や分解温度を変えることができ、焼成膜を均一化して成膜性を向上させることが可能になる。さらに、それぞれの目的と用途によって、任意に添加する有機溶媒の種類を変更することにより、焼成温度を調節し、各種の性能の金属膜を形成することができる。
【0028】
この目的に添加する有機酸としては、下記一般式(II):
−(COOR (II)
〔式中、RおよびR は水素原子または置換されていてもよいC〜C20の鎖状炭化水素基もしくはC〜C20の環状炭化水素基であり、nは1〜3の整数である(但し、R が水素原子のときnは1である)〕で表される脂肪族または芳香族のモノ、ジまたはトリカルボン酸を使用することができる。また、脂肪族または芳香族のモノまたはジカルボン酸は、メチル基、エチル基、プロピル基などの低級アルキル基で置換されていてもよい。
【0029】
具体的な脂肪族または芳香族のモノまたはジカルボン酸としては、ギ酸、シュウ酸、酢酸、プロピオン酸、ブチル酸、吉草酸、カプロン酸、ヘプタン酸、カプリル酸、2−エチルヘキサン酸、シクロヘキサン酸、シクロヘキサプロピオン酸、シクロヘキサン酢酸、ノナン酸、リンゴ酸、グルタミン酸、ロイシン酸、ヒドロキシピバリン酸、ピバリン酸、グルタル酸、アジピン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、ピメリン酸、コルク酸、エチルブチル酸、安息香酸、フェニル酢酸、フェニルプロピオン酸、ヒドロキシ安息香酸等があげられる。これらの有機酸は、有機金属化合物1モルに対して0.1〜5モル添加されていることが好ましい。
【0030】
本発明の金属ペーストは、ペーストの伸展性と印刷性の向上のために、上記のようなアルコール類を添加することができる。さらに、金属ペーストの安定性と溶解性や印刷性を向上させるために、脂肪族又は芳香族の一価又は多価アルコールを添加することができる。この目的で添加されの脂肪族又は芳香族の一価又は多価アルコールとしては、下記一般式(III):
−(OH) (III)
(式中、Rは、置換されていてもよいC〜C20の鎖状炭化水素基またはC〜C20の環状炭化水素であり、pは1〜4の整数である)で示されるものを使用することが好ましい。
【0031】
一般式(III)で示される脂肪族又芳香族の一価又は多価アルコールとしては、ネロール、シトロネロール、ヒドロキシネロール、ヒドロキシシトロネロール、エチルアルコール、プロピルアルコール、ブチルアルコール、ヘキシルアルコール、エチルヘキシルアルコール、デシルアルコール、ベンジルアルコール、ヒドロキシベンジルアルコール、フェニルエチルアルコール、フェニルプロピルアルコール、ジヒドロキシベンゼン、シクロヘキシルアルコール、エチルシクロヘキシルアルコール、ブチルシクロヘキシルアルコール、メトキシベンジルアルコール、ピペロニルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール等があげられる。
【0032】
また、一般式(III)で示される脂肪族又は芳香族の一価又は多価アルコールと有機酸とのエステルを使用することができる。具体的には、安息香酸メチル、ヒドロキシ安息香酸エチル、2−エチルヘキサン酸エチル、酢酸エチル、ヒドロキシ酢酸エチル、リノール酸メチル等があげられる。
さらにまた、一般式(III)で示される脂肪族又は芳香族の一価又は多価アルコールのエーテル化合物も使用することができる。具体的には、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、1−ブトキシ−2−プロパノール等があげられる。
【0033】
さらに、金属ペーストの安定性、溶解性、印刷性の向上の目的で添加される上記脂肪族又は芳香族の一価又は多価アルコールは、下記一般式(IV):
(NC)−R−(OH) (IV)
〔式中、R はC〜Cの鎖状炭化水素またはC〜Cの環状炭化水素であり、rは1又は2であり、sは1〜3の整数である(但し、RがCのとき、r+sは1〜4であり、RがC以上のとき、r+sは1〜6である)〕で表わされるシアノ基置換の一価又は多価アルコールであってもよい。
【0034】
一般式(IV)で示されるシアノ基置換脂肪族又は芳香族の一価又は多価アルコールとしては、ラクトニトリル、ヒドロキシアセトニトリル、エチレンシアノヒドリン、アセトンシアノヒドリン等があげられる。このシアノ基置換のアルコールの添加により、有機金属化合物が安定化し、透明なペースト状態を安定に維持することができるので、例えば室温で約4年以上保存することができる。
【0035】
上記した一般式(III)、(IV)で示される脂肪族又は芳香族の一価又は多価アルコールの添加は、有機金属化合物1モルに対して0.1〜5モルであることが好ましい。また、これらの一価又は多価アルコールと上記一般式(II)で示される脂肪族又は芳香族のモノ、ジ、又はトリカルボン酸を併せて添加することもできる。
【0036】
なお、本発明で使用される有機金属化合物とグリコール類の組み合わせによっては、混合に際して結晶化する場合がある。この場合は、さらにグリコール類又は水を混合することによりペースト化することができる。
【0037】
本発明の金属ペーストは、所望の基板上に塗布して、焼成することにより金属膜を形成することができる。焼成により、所望により加えた溶媒類が低温域でまず分離し、次いでグリコール類の配位が分解し、高温域で金属に直接結合した有機基が分断されて金属膜が形成される。このとき、分子量の小さい有機基は、分子量の大きい有機基よりも低温で分解し易いので、分子量の小さな有機基を有する有機金属化合物が、低温焼成で密着性の高い金属膜を得るために有利である。
【0038】
焼成温度は、150〜550℃が好ましく、更に好ましくは200〜300℃である。この温度は、金属ペースト中の金属の融点以上の温度に加熱して焼成する従来の厚膜ペースト法と比較して、焼成温度を著しく下げることが可能になる。そのため、金属ペーストを塗布できる基板は、従来の高融点の基板、たとえばセラミック、金属等に限定されず、フィルム状、シート状の低融点の基板、たとえば汎用のガラス、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、紙等を用いることができる。
【0039】
さらに、本発明の金属ペーストは、これまで、単一の金属または合金が使用されてきた、導電材料、抵抗材料、伝熱材料、保温材料、光または電磁波の反射材料または吸収材料、耐蝕材料、耐磨耗材料、触媒用材料、金属光沢用材料、着色用材料、装飾用材料または抗菌材料等に使用することができる。
【0040】
【実施例】
以下に本発明の実施例を述べる。
実施例1
容量100mlの反応フラスコに、酢酸ニッケル20質量部とテトラエチレングリコール20質量部を混合し、120℃で4時間撹拌して有機ニッケル化合物含有ペーストを得た。さらに、このペーストをスクリーン印刷機を用いてガラス基板に印刷した。このときの印刷幅は200μm、付着厚みは2μmであった。この印刷基板を250℃、350℃及び500℃の各温度において、窒素ガス雰囲気下で20分間保持した。こうして得られた3種の厚さ約0.4μmのニッケル電極は、いずれも電極切れを起こすことのない電極であった。表1に上記の各焼成温度で得られた電極の比抵抗を示す。
【0041】
【表1】
Figure 2004265826
【0042】
実施例2
容量100mlの反応フラスコに、酢酸ニッケル5質量部と水50質量部を混合、溶解し、更にテトラエチレングリコール5質量部を混合した。この溶液を80℃で4時間撹拌しながら水を減圧除去して、有機ニッケル化合物含有ペーストを得た。さらに、このペーストをスクリーン印刷機を用いてガラス基板に印刷した。このときの印刷幅は200μm、付着厚みは2μmであった。この印刷基板を200℃、350℃及び500℃の3種類の温度において、窒素ガス雰囲気下で20分間保持した。こうして得られた厚さ約0.4μmのニッケル電極は、電極切れを起こすことのない電極であった。表2に上記の各焼成温度で得られた電極の比抵抗を示す。
【0043】
【表2】
Figure 2004265826
【0044】
実施例3
容量100mlの反応フラスコに、酢酸ニッケル5質量部と水50質量部を混合、溶解し、更にテトラエチレングリコール5質量部を混合した。この溶液を80℃で4時間撹拌しながら水を減圧除去した後、テトラヒドロフルフリルアルコール0.5質量部を加えて、有機ニッケル化合物含有ペーストを得た。さらに、このペーストをスクリーン印刷機を用いてガラス基板に印刷した。このときの印刷幅は200μm、付着厚みは2μmであった。この印刷基板を250℃、350℃及び500℃の各温度において、窒素ガス雰囲気下で20分間保持した。こうして得られた厚さ約0.4μmのニッケル電極は、電極切れを起こすことのない電極であった。表3に上記の各焼成温度で得られた電極の比抵抗を示す。
【0045】
【表3】
Figure 2004265826
【0046】
実施例4
容量100mlの反応フラスコに、酢酸銅5質量部と水50質量部を混合、溶解し、更にトリエチレングリコール5質量部を混合した。この溶液を80℃で4時間撹拌しながら水を減圧除去して有機銅化合物含有ペーストを得た。さらに、このペーストをスクリーン印刷機を用いて厚さ125μmのポリイミド基板に印刷した。このときの印刷幅は200μm、付着厚みは2μm、長さ50mmでライン間隔は100μmで5本とした。この印刷基板を150℃、200℃及び250℃の各温度において、窒素ガス雰囲気下で20分間保持した。こうして得られた厚さ約0.4μmの銅電極は、電極切れを起こすことのない電極であった。表4に上記の各焼成温度で得られた電極の比抵抗を示す。
【0047】
【表4】
Figure 2004265826
【0048】
比較例1
平均粒径1μmの球状ニッケル粉末100質量部に、エチルセルロース2質量部、エチレングリコールジブチルエーテル30質量部を添加し、プロペラ撹拌機を用いてペースト化した。この金属ペーストをスクリーン印刷機を用いて、ガラス基板上に印刷幅200μm、付着厚さ20μmで印刷した。250〜500℃の窒素ガス雰囲気下で20分間保持したが、いずれの温度においても粉末の状態のままであり、均一な金属膜は得られなかった。
【0049】
上記の実施例から明らかなように、本発明の金属ペーストは500℃以下特に200〜350℃の低温焼成でも、電極としての優れた特性を有することが確認された。したがって従来の金属粉末を用いた場合に比べて、工程の簡便さ、製造コストの面で優れている。さらに、焼成時に腐食性又は有害な排ガス、或いは、臭気性ガスを発生することもないため、環境面においても有利である。
【0050】
【発明の効果】
以上詳細に説明したように、本発明によれば、常温で固体である周期律表3族〜15族金属の有機金属化合物に、溶剤としてアルコール化合物、中でも特定のグリコール類を配合して、様々な基材に塗布しうる粘性を示す金属ペーストが提供される。このため、本発明は、特殊な化合物や合成法を使用する必要がなく、撹拌という簡便な手段によって、有機金属化合物を容易にペースト化できるという効果を有する。
【0051】
さらに、本発明の金属ペーストは、低温、例えば、150〜550℃で焼成でき、各種の金属膜を得ることができる。そのため、セラミック基板や金属材料の基板のような高融点材料のみならず、軟化点の低い安価な各種の基板、たとえばガラス、プラスチックフィルム、紙等にも、各種の金属または合金の金属膜を成膜することができるという効果を有する。また、低温で焼成するので、高温で焼成する従来法に比較して、金属の表面が酸化されにくく、例えば導電性の高い金属膜が得ることができるという効果を有する。

Claims (7)

  1. 常温で固体である周期律表3族〜15族金属の有機金属化合物1種以上とアルコール化合物とを含む金属ペースト。
  2. 前記アルコール化合物がグリコール類である、請求項1記載の金属ペースト。
  3. 前記グリコール類が、一般式(I):
    HO(CHRCHO)H (I)
    (式中、mは1〜4の整数であり、Rは水素原子又はC〜Cアルキル基を表す)で示されるグリコール類から選ばれる1種もしくは2種以上の混合物である、請求項2記載の金属ペースト。
  4. 前記周期律表3族〜15族金属が、Ti、Zr、V、Nb、Ta、Cr、Mo、Mn、Fe、Ru、Co、Rh、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、In、Tl、Sn、Pb,Sb、Biである、請求項1〜3のいずれかに記載の金属ペースト。
  5. 前記有機金属化合物が、前記金属のカプリル酸塩、シクロヘキサンカルボン酸塩、ギ酸塩、酢酸塩、シュウ酸塩、又はシクロプロピオン酸塩である、請求項1〜4のいずれか1項記載の金属ペースト。
  6. 前記有機金属化合物と前記アルコール化合物と水との混合物からなる金属ペースト中間体を減圧脱水して得られる、請求項1〜5いずれかに記載の金属ペースト。
  7. 請求項1〜6のいずれか1項記載の金属ペーストを塗布してなる電気部品または電子部品。
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