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JP2003279571A - 炎症性疾患検出方法、検出薬、およびその予防治療薬探索方法 - Google Patents

炎症性疾患検出方法、検出薬、およびその予防治療薬探索方法

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Publication number
JP2003279571A
JP2003279571A JP2002078819A JP2002078819A JP2003279571A JP 2003279571 A JP2003279571 A JP 2003279571A JP 2002078819 A JP2002078819 A JP 2002078819A JP 2002078819 A JP2002078819 A JP 2002078819A JP 2003279571 A JP2003279571 A JP 2003279571A
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JP
Japan
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antibody
oxidized
lipoprotein
recognizes
inflammatory disease
Prior art date
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Pending
Application number
JP2002078819A
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English (en)
Inventor
Emi Arakawa
絵美 荒川
Kaori Hamaguchi
香織 濱口
Satoshi Nakanishi
聡 中西
Kazuhide Hasegawa
一英 長谷川
Tadashi Tamura
忠史 田村
Yoshio Kizaki
美穂 木崎
Katsuya Kobayashi
克也 小林
Daisuke Harada
大輔 原田
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
KH Neochem Co Ltd
Minaris Medical Co Ltd
Original Assignee
Kyowa Medex Co Ltd
Kyowa Hakko Kogyo Co Ltd
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Filing date
Publication date
Application filed by Kyowa Medex Co Ltd, Kyowa Hakko Kogyo Co Ltd filed Critical Kyowa Medex Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 新規な炎症性疾患検出方法、この方法を実施
する炎症性疾患検出薬、および炎症性疾患予防治療薬を
探索する方法を提供する。 【解決手段】 リン脂質の酸化により生成する抗原を認
識する抗体を用いて、炎症性疾患が疑われる患者または
炎症性疾患モデル動物から得た生体試料に含まれる酸化
リポタンパク質を測定することよりなる炎症性疾患検出
方法である。酸化リポタンパク質の測定は、低密度リポ
タンパク質を認識する抗体を2次抗体を用いると、酸化
低密度リポタンパク質を定量することができ、特に炎症
性疾患の検出に有用である。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、新規な炎症性疾患
検出方法、この方法を実施する炎症性疾患検出薬、およ
び、炎症性疾患予防治療薬を探索する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】炎症とは、物理的、化学的、または感染
等の刺激に対して生体組織が示す一種の防御反応であ
り、免疫応答による体液、血漿タンパクおよび白血球の
局所的な蓄積ならびに細胞の増殖を伴う場合が多い。本
来炎症は、生体からの有害な刺激を排除し、局所の構造
や機能を回復させる反応であるが、炎症反応が強く発現
されると正常な組織や細胞が障害される炎症性疾患とし
て治療の対象となる。このような炎症性疾患はその発症
部位が限局される場合があり、部位に応じて関節炎、肝
炎、皮膚炎などと称されるが、全身のほとんどの部位で
発症し得るため複数の部位に発症したり、全身性の炎症
が診られる場合もある。また、他の疾患と同様に、発症
の時間的経過に応じて急性、亜急性、慢性などと区別さ
れる。
【0003】一方、炎症性疾患の臨床検査法としては、
赤血球沈降速度(赤沈)を測定する方法、血液中のC反
応性タンパク(CRP)を測定する方法等が一般的であ
る。このうち、赤沈は、貧血、アルブミンの減少、ガン
マグロブリンの上昇、フィブリノーゲンの上昇などによ
っても促進されるため、必ずしも炎症だけを反映する指
標ではない。また、CRPも炎症性疾患だけではなく、
血栓や梗塞などの循環障害、組織壊死およびリンパ性腫
瘍などの腫瘍などによって上昇することが知られてい
る。このため、これらの臨床検査値と白血球数や発熱の
有無などを組み合わせた複数の測定に基づく診断が行わ
れているのが現状である。被験者の負担を減少し、診断
の精度を向上するためにも、より特異的な炎症の検査方
法、または測定原理の異なる新たな検査方法の開発が望
まれる。
【0004】一方、酸化を受けたリポタンパク質は酸化
リポタンパク質と称される。酸化リポタンパク質の酸化
の程度には強弱があり、例えば、比較的酸化の程度が低
くごく少量のリン脂質やコレステロールなどの脂質が酸
化しただけのものから、酸化が進み、脂質の過酸化によ
って生成したアルデヒド類がさらにアポタンパク質と反
応して架橋を生じ、さらにペプチド鎖が切断されたもの
等も含まれる。このため、測定方法によって対象となる
酸化リポタンパク質の種類が異なることが一般的であ
る。
【0005】例えば、特開平7−238098号公報で
は、酸化リポタンパク質がヒト粥状硬化病巣の進展と関
連することに鑑みて、該病巣に蓄積する特定の酸化リポ
タンパク質を特異認識するモノクローナル抗体、特にヒ
ト粥状硬化病巣に出現する抗原FOH1を特異認識する
抗体を用い、該抗体と試料とを接触させて該抗体の該試
料に対する反応性を測定して試料中の粥状硬化病巣関連
抗原を検出し、および該抗体によってヒト血管部の抗原
FOH1を検出して動脈硬化を診断している。また、特開平
8−304395号公報では、血漿を適当な濃度に希釈
した後に、リン脂質の酸化によって生成する抗原を認識
する抗体と接触させ、該抗体と結合した酸化リポタンパ
ク質を更に当該リポタンパク質を認識する抗体と接触さ
せることを特徴とする酸化リポタンパク質の測定方法を
開示している。また、特開平9−288106号公報で
は更に、リン脂質を人工的に酸化させて得た特定化合物
を測定の標準物質として用い、酸化リポタンパク質を測
定している。該特定物質を標準物質として検量線を作成
し、実際の検定によって得られた結果をこの検量線に対
比させることで定量的に酸化リポタンパク質を測定する
ものである。しかしながら、上記公報記載のいずれの方
法も動脈硬化症などの循環器疾患と特定の酸化リポタン
パク質との関係を示唆しこれを診断に応用するものに過
ぎない。このため、該方法を用いる炎症性疾患の検出や
炎症性疾患に対する予防治療薬の探索に関する知見は全
く記載されていない。
【0006】一方、炎症性疾患の1つである慢性関節リ
ウマチ患者の滑膜液中から単離した低密度リポタンパク
質(LDL)画分に、通常のLDLよりも陰性荷電を帯
びた物質が存在することが報告され(L.Dai等、Free Rad
ical Research、32巻479頁2000年、および、M.J.James等、L
ipids、33巻1115頁1998年)、この正常LDLよりも陰性
荷電率の高い物質が酸化LDLであると推定している。
しかしながら、該方法は、遠心分離操作によってLDL
画分を分画した後に、アガロースゲル電気泳動を行い、
正常のLDLと正常LDLよりも陰性荷電率の高い物質
とを分離検出するものであり、非常に操作が煩雑であ
る。このため、該方法によって多数の臨床検体を測定
し、臨床診断的な意義を明らかにすることは困難であ
る。特に、特定の薬物が炎症性疾患予防薬として有効で
あるか否かを評価するために多数の検体の酸化LDL値
の測定を必要し、そのような多数の測定値に基づいて該
薬剤の有効性の探索を行う方法としては、極めて不向き
な方法といえる。しかも、LDLよりも陰性荷電を帯び
た物質に関する知見は、ごく少数例の患者の内、調査し
た患者の一部で認められた成績に過ぎず、酸化リポタン
パク質と関節リウマチとの関係を明確にしたものではな
い。加えて、このL.Dai等やM.J.James等の報告では、陰
性荷電をおびた物質が酸化LDLであるという確実な保
証はない。仮に、酸化LDLであるとしても、この方法
によって分離できるのはLDLの構成脂質の過酸化によ
って生成するアルデヒドなどがLDLを構成するアポB
タンパクのリジン残基に結合して生成した酸化LDLの
みである。従って、該方法では、脂肪酸やコレステロー
ルの酸化だけが生じた、酸化の程度が低い酸化LDLは
測定することができない。
【0007】また、若年性リウマチ患者、および過剰ア
ルコール摂取による肝硬変患者の血液中に、酸化LDL
に対する抗体が高いとの報告がある(G.Simonini等、Th
e Journal of Rheumatology、28巻198頁2001年)。しか
しながら、該方法は酸化リポタンパク質の存在を直接測
定したものではなく、これらの患者の体内に酸化LDL
が高いことを間接的に類推しているにすぎない。また、
アトピー性皮膚炎の患者の血液中で過酸化脂質が高く、
白内障を合併した患者ではさらに高いことが報告されて
いるが(Y.Niwa等、Archives of Dermatology、130巻138
7頁1994年)、酸化リポタンパク質についてはなんら記
載されていない。更に、マウスに四塩化炭素を投与する
ことによって肝障害を起こすと血液中の過酸化脂質が上
昇したとの報告があるが(Y.Watanabe等、Industrial H
ealth、35巻285頁1997年)、酸化リポタンパク質につい
ては何も記載されていない。
【0008】すなわち、これらの文献は炎症によって酸
化ストレスが増加することを示唆するものであるが、酸
化ストレスの増加と酸化リポタンパク質の蓄積との関係
については明確ではなく、更に、酸化リポタンパク質と
炎症性疾患との関わりについても、不明である。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、従来の炎症
疾患性検出方法及び検出薬とは全く測定原理の異なる、
簡便かつ新規な炎症性疾患検出方法及び検出薬、並びに
炎症性疾患予防治療薬の探索方法を提供することを目的
とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、炎症性疾
患と酸化リポタンパク質の上昇との間に明確な関連性が
あることを新たに見出し、この新たな知見に基づき、リ
ン脂質の酸化によって発現する抗原を認識する抗体を用
いて酸化リポタンパク質を測定することにより、炎症性
疾患を検出する方法を完成させた。すなわち、上記課題
は、以下によって解決される。
【0011】本発明は、リン脂質の酸化により生成する
抗原を認識する抗体を用いて、炎症性疾患が疑われる患
者または炎症性疾患モデル動物から得た生体試料に含ま
れる酸化リポタンパク質を測定することよりなる炎症性
疾患検出方法を提供するものである。炎症性疾患におい
て酸化リポタンパク質の量が増大するとの知見に基づ
き、特定の抗体と生体試料に含まれる酸化リポタンパク
質との抗原抗体複合体を形成させ、該複合体を用いて生
体試料に含まれる酸化リポタンパク質を簡便かつ正確に
定量し、該疾患か否かを検出できる。
【0012】また本発明は、リン脂質の酸化により生成
する抗原を認識する抗体を有効成分として含む、炎症性
疾患検出薬を提供するものである。該検出薬によれば、
簡便かつ正確に酸化リポタンパク質を測定することがで
き、炎症性疾患か否かを容易に検出することができる。
【0013】加えて本発明は、炎症性疾患モデル動物
に、効果を検出する対象である薬剤を投与した後にモデ
ル動物から生体試料を採取し、または、炎症性疾患の患
者もしくは動物から採取した生体試料に該薬剤を添加
し、その生体試料中に含まれる酸化リポタンパク質を、
以下の(i)〜(iv)のいずれかの方法を用いて測定するこ
とにより、薬剤の炎症性疾患予防治療効果を評価するこ
とを特徴とする炎症性疾患予防治療薬探索方法を提供す
るものである。特定の薬剤が炎症性疾患予防治療薬とし
て有効か否かの判断を、該薬剤を投薬された動物から得
た生体試料と反応させ、含まれる酸化リポタンパク質を
抗体と接触させ、酸化リポタンパク質を測定すること
で、簡便に薬剤の有効性を探索することができる。
【0014】(i) リン脂質の酸化により生成する抗原
を認識する抗体と該生体試料に含まれる酸化リポタンパ
ク質との抗原抗体複合体を形成させ、該複合体に含まれ
る酸化リポタンパク質を測定する方法。
【0015】(ii) リン脂質の酸化により生成する抗原
を認識する抗体と共に酸化低密度リポタンパク質を認識
する抗体を用いて、該生体試料に含まれる酸化リポタン
パク質との抗原抗体複合体を形成させ、該複合体に含ま
れる酸化リポタンパク質として酸化低密度リポタンパク
質を測定する方法、(iii) 酸化低密度リポタンパク質
を認識する該抗体がアポBタンパク質を認識する抗体で
ある上記(ii)記載の方法、(iv) リン脂質の酸化により
生成する抗原を認識する抗体がモノクローナル抗体DL
H3である上記(i)〜(iii)のいずれかに記載の方法。
【0016】
【発明の実施の形態】本発明の第一は、リン脂質の酸化
により生成する抗原を認識する抗体を用いて、炎症性疾
患が疑われる患者または炎症性疾患モデル動物から得た
生体試料に含まれる酸化リポタンパク質を測定すること
よりなる炎症性疾患検出方法である。
【0017】各種炎症性疾患の被験者から得た生体試料
に含まれる酸化リポタンパク質の種類と量とを測定した
ところ、いずれの炎症性疾患においても酸化リポタンパ
ク質、特に酸化低密度リポタンパク質の増加が観察され
た。この酸化リポタンパク質の測定方法は、リン脂質の
酸化によって生成する抗原に対する抗体(以降、「1次
抗体」とも称す。)を被験者の生体試料と接触させ、該
試料に含まれる酸化リポタンパク質と該1次抗体との抗
原抗体複合体を形成させ、該複合体を用いて酸化リポタ
ンパク質を測定して生体試料に含まれる酸化リポタンパ
ク質量を算出する方法であり、目的物の定量性に優れ
る。また該1次抗体と共に酸化低密度リポタンパク質を
認識する抗体(以降、「2次抗体」とも称す。)を併用
すると、酸化リポタンパク質の中の酸化低密度リポタン
パク質を測定することができ、該測定値から炎症性疾患
の罹患を検出することができる。以下、本発明を詳細に
説明する。
【0018】本発明の炎症性疾患検出方法は、リン脂質
の酸化によって生成する抗原に対する抗体を、炎症性疾
患が疑われる患者、または炎症性疾患モデル動物から得
た生体試料と接触させる工程、該抗体と該試料に含まれ
る酸化リポタンパク質との反応によって生じる抗原抗体
複合体を用いて酸化リポタンパク質を測定する工程より
なる。予め特定の酸化リポタンパク質を標準物質として
検量線を作成しておけば、該酸化リポタンパク質を簡便
に定量することができる。
【0019】リン脂質の酸化によって生成する抗原を認
識する1次抗体としては、例えば、ペプチドの存在下に
ホスファチジルコリンの酸化によって生成する抗原を認
識する抗体を挙げることができ、具体的には、ハイブリ
ドーマセルラインFOH1a/DLH3(受託番号 FERM B
P−7171)により生産されたモノクローナル抗体D
LH3(特開平7−238098号公報、特開平8−3
04395号公報、特開平9−288106号公報、H.
Itabe等、Journal of Biological Chemistry、269巻1527
4頁1994年)であることが好ましい。該抗体DLH3は、
例えば、ヒト粥状硬化病巣を含む病変血管などのホモジ
ネートを抗原としてマウスなどの動物に免疫し、抗体価
の上がった動物の脾細胞から抗体産生細胞を採取し、こ
れとHGPRT(hypoxanthine-guanine phosphoribosy
l transferase)欠損株の腫瘍細胞との間でハイブリド
ーマを形成させ、該ハイブリドーマを硫酸銅で酸化した
LDLとの反応性によってスクリーニングし、この細胞
株から得られた抗体である。このため病巣部に実在する
物質群とスクリーニングで使用した異種の抗原物質、す
なわち硫酸銅で酸化したLDL、との共通部分を認識
し、病巣においてLDLなどの酸化により生成する抗原
に高い特異性を有する。しかも、該抗体を使用して酸化
リポタンパク質を測定すると、該測定値から酸化リポタ
ンパク質量を算出するための検量線作成用に使用する標
準物質の選定も容易となり、かつ該検量線によって低濃
度の酸化リポタンパク質から簡便かつ正確に定量するこ
とができる。
【0020】すなわち、酸化リポタンパク質のタンパク
部分の酸化物をエピトープとして認識する抗体を用いて
酸化リポタンパク質を検出した場合には、該エピトープ
はリポタンパクのポリペプチド鎖の一部として共有結合
により結びつけられているため、それ自体、合成、単
離、精製した後に当該リポタンパク質に組み込むことが
困難である。このため、酸化リポタンパク質に対する抗
体としてこのエピトープを認識する抗体を用いると、標
準物質として当該リポタンパク質そのものを、例えば銅
イオン存在下で酸化するか、リポタンパク質または単独
の特定のアミノ酸を化学修飾したものを合成して使用す
る必要があり、反応の種類も多く複雑で、再現性のある
酸化物を得る事や、これを精製して単一性のある標準物
質を生成することが困難となる。しかしながら、該抗体
DLH3を使用すれば、該抗体はリン脂質の酸化によっ
て生成する抗原を認識する抗体であるから、得られたデ
ータを当該リン脂質を酸化して得られた化合物を標準物
質として検量線を作成することができ、極めて操作性に
優れるのである。この趣旨より、本発明で使用する上記
1次抗体は、「リン脂質の酸化によって生成する抗原を
認識できる抗体」であれば特に制限されることはなく、
広く使用することができる。
【0021】該1次抗体と生体試料に含まれる酸化リポ
タンパク質との結合体である抗原抗体複合体を用いて酸
化リポタンパク質を測定するには、免疫学的測定方法を
採用することができる。例えば、ラジオイムノアッセイ
(RIA)、エンザイムイムノアッセイ(ELIS
A)、蛍光イムノアッセイ(FIA)、発光イムノアッ
セイ、凝集イムノアッセイ、免疫比濁法、免疫比ろう法
などが挙げられる。これらの方法のうち、本発明では、
免疫学的に測定する方法、特にラジオイムノアッセイ、
エンザイムイムノアッセイ、蛍光イムノアッセイ及び発
光イムノアッセイによることが好ましい。また、該1次
抗体を用いる測定様式は、競合法およびサンドイッチ法
のいずれでもよい。
【0022】上記各方法の操作、手順などは常法に従っ
て行うことができる。例えば、サンドイッチ法として
は、該1次抗体を固相に結合したウェルに、酸化リポタ
ンパク質を含有する生体試料をインキュベーションし、
その後に固相を洗浄液で洗浄し、更に2次抗体として酵
素等で標識した抗リポタンパク質抗体とをインキュベー
ションし、その後に固相を再び洗浄し、次いで固相上に
形成された抗原抗体複合体の酵素活性を計測して酸化リ
ポタンパク質を測定する方法がある。
【0023】該2次抗体としては、上記1次抗体、その
他リポタンパク質に特異的な2次抗体、特には特定のア
ポタンパク質を含む酸化リポタンパク質を認識する抗体
であることが好ましい。本発明では、リン脂質の酸化に
より生成する抗原を認識する抗体を使用することを特徴
とするが、上記のように該抗体は認識するエピトープが
アポタンパクに依存しないため、血液中の異なるリポタ
ンパク質の酸化物を別々に評価することができる。この
ため、例えば、該1次抗体と共に、測定の対象とするリ
ポタンパク質特異的な抗体の2種類の組み合わせを使用
すれば、タンパク質部分のことなる酸化リポタンパク質
を定量することができることになる。このようなリポタ
ンパク質に特異的な2次抗体として、特定のアポタンパ
ク質を含む酸化リポタンパク質を認識する抗体を使用す
る。酸化リポタンパク質に特異的に結合する抗体として
は、各種アポタンパク質たとえばアポAIタンパク質、
アポAIIタンパク質、アポAIVタンパク質、アポB
100タンパク質、アポB48タンパク質、アポCIタ
ンパク質、アポCIIタンパク質、アポCIIIタンパ
ク質、アポDタンパク質、アポEタンパク質、アポタン
パク質(a)などに対する抗体がある。一般に、アポB
100タンパク質は主にLDLと超低密度リポタンパク
質(VLDL)に認められるアポタンパク質であり、と
りわけLDLのアポタンパク質のほとんどがアポBタン
パク質であり、これがLDLを特徴付けるタンパク質と
いえる。同様に、アポAIタンパク質は高密度リポタン
パク質(HDL)の主要アポタンパク質であり、アポタ
ンパク質(a)はリポタンパク質(a)を特徴付けるタ
ンパク質であり、アポEタンパク質はVLDLの主要ア
ポタンパク質である。従って、これらを利用すれば、多
少の交差反応はあるものの、効率よく各リポタンパク質
を識別することができるのである。すなわち、2次抗体
にアポBタンパク質を認識するものを用いれば酸化LD
Lが定量でき、アポAIタンパク質を認識するものを用
いれば酸化HDLが定量でき、2次抗体にアポEタンパ
ク質を認識するものを用いれば酸化VLDLが定量で
き、2次抗体にアポタンパク質(a)を認識するものを
用いれば酸化リポタンパク質(a)が定量できる。本発
明では、2次抗体として、アポBタンパク質を含む酸化
リポタンパク質を認識する抗体(抗アポB抗体)を使用
することがより好ましい。炎症性疾患と相関性の高い酸
化低密度リポタンパク質を正確に定量できるからであ
る。なお、該2次抗体はポリクローナル抗体でもモノク
ローナル抗体でもよい。
【0024】本発明で使用する2次抗体は、更に酵素、
放射性物質、蛍光物質などの標識化合物をラベルしたも
のであることが好ましい。例えば、酵素標識した2次抗
体としては、抗ヒトアポBウサギ抗体等のリポタンパク
質に親和性を有する抗体に西洋ワサビペルオキシダーゼ
や牛小腸アルカリフォスファターゼ、β−ガラクトシダ
ーゼなどの標識用酵素をラベルしたものがある。他の標
識方法としては、125Iなどの放射性物質、ヨーロピウ
ム、フルオレッセン、オレゴングリーン、BODIP
Y、CyDyeなどの蛍光物質、アクリジニウムなどの
化学発光物質などがある。放射性物質で標識した2次抗
体を用いる場合には、固相上に形成された抗原抗体複合
体の放射能を測定することにより、蛍光物質で標識した
2次抗体を用いる場合には、固相上に形成された抗原抗
体複合体の蛍光量を測定することにより、化学発光物質
で標識した2次抗体を用いる場合には、固相上に形成さ
れた抗原抗体複合体の化学発光量を測定することにより
抗原量を定量することができる。さらに、ビオチン標識
した2次抗体と酵素などで標識したアビジンを用いる方
法や、2次抗体として標識していない抗体を用い、更に
2次抗体に対する抗体を3次抗体として用いる方法な
ど、通常用いられている検出感度を向上させる方法を応
用することもできる。
【0025】更に、特定の酸化リポタンパク質を定量す
るために、該2次抗体を使用する代わりに、例えば特定
の酸化リポタンパク質を認識するレセプターを用いるこ
ともできる。このような酸化リポタンパク質を認識する
レセプターとしては、アポAIタンパク質を認識するレ
シチンコレステロールアシルトランスフェラーゼ、アポ
B100タンパク質を認識する肝臓、小腸の細胞のLD
Lレセプター、アポCIIタンパク質を認識するリポプ
ロテインリパーゼ、アポEタンパク質を認識する肝臓の
アポEレセプターなどがあり、いずれも好ましく使用で
きる。
【0026】なお、生体試料に含まれる酸化リポタンパ
ク質をその種類ごとに分別定量する方法としては、更
に、予め酸化リポタンパク質を遠心分離処理等で各種の
成分に精製し、ついで1次抗体を用いて特定の種類の酸
化リポタンパク質を定量することもできる。具体的に
は、高密度リポタンパク質(HDL)、低密度リポタン
パク質(LDL)、超低密度リポタンパク質(VLD
L)またはリポタンパク質(a)をあらかじめ遠心分離
処理等で分別し、分別処理した試料に対して該1次抗体
を作用させることで特定の酸化リポタンパク質を定量す
ることができる。この場合には、同じ2次抗体を使用し
て異なる酸化リポタンパク質を測定することができる。
なお、特定の酸化リポタンパク質を遠心分離処理によっ
て分別する具体的な方法は、公知の文献(例えば、特開
平7−238098号公報、特開平8−304395号
公報、特開平9−288106号公報、山村卓、新生化
学実験講座 脂質I、195頁、1993年、東京化学
同人)に従えば容易に実施することができる。
【0027】本発明で使用する生体試料としては、酸化
リポタンパク質を含有するものであれば特に制限はな
く、血液、血漿、血清、涙、尿、羊水、滑膜液、髄液、
細胞抽出液、組織抽出液などの生体試料が挙げられる。
特に、炎症性疾患は全身にその影響が発現する場合が多
く、なかでも血液、血漿、血清が好適に使用される。ま
た、局所に発生した皮膚炎の場合の試料採取部位として
は、病疹部や無疹部の表皮からの採取が好ましい。鼻炎
の至適な試料採取部位としては、鼻汁や鼻粘膜からの採
取が好ましい。このような生体試料に含まれる酸化リポ
タンパク質の測定は、生体試料を採取した後に直ちに行
うのが望ましいが保存した試料を用いてもよい。保存す
る場合は、酸化リポタンパク質の量が変化しない条件で
あれば保存条件に制限はないが、例えば、0〜10℃の
凍結しない程度の低温条件で暗所および無振動条件下で
保存する方法がある。また、試料は凍結保存、凍結乾燥
保存であってもよく凍結保護剤の使用の有無も自由であ
る。しかしながら、凍結時または凍結乾燥工程中に凍結
保護剤を共存することが好ましく、これによって酸化リ
ポタンパク質が安定化する。なお、「凍結乾燥」という
ことばは、当該分野において使用されるのと同様の意味
で使用され、すなわち、試料を凍結させ、凍結状態のま
まで減圧して、試料から水や昇華性のものを除き、乾燥
することを意味する。
【0028】このような凍結保護剤としては、例えば、
シュークロース、トレハロース、ラクトース、マンニト
ール、グルコースなどの糖類;デキストラン、デキスト
ラン硫酸、プルラン、ポリエチレングリコール、カルボ
キシメチルセルロースなどの高分子物質;ウシ血清アル
ブミン(BSA)、ヒト血清アルブミン(HSA)等の
タンパク質;グリセロールやジメチルスルフォキサイド
などの水溶性有機溶媒等などが挙げられる。なお、上記
された凍結保護剤は、単独で使用されてもあるいは2種
以上の混合物の形態で使用されてもよい。なお、これら
の凍結保護剤の使用量にも制限はないが、凍結した生体
試料中には、0.1〜50質量%、好ましくは1〜30
質量%、さらに好ましくは5〜20質量%で共存させて
使用する。
【0029】また、凍結乾燥の条件も特に制限されるも
のではないが、通常、−80〜20℃、好ましくは−8
0〜15℃の温度で、0.667〜13.33Pa、好
ましくは0.667〜1.333Paの圧力で、12〜
72時間、好ましくは24〜72時間、凍結乾燥する。
このような凍結乾燥工程によって、酸化リポタンパク質
を含む凍結乾燥物中の水分含量は、通常、10質量%以
下、好ましくは1質量%以下である。なお、凍結保護剤
は凍結乾燥処理の前に添加することが好ましく凍結保護
剤の使用量は、通常、1〜20質量%、好ましくは2〜
5質量%である。この範囲で、酸化リポタンパク質の安
定化が図れるからである。
【0030】また、測定に当っては、このような生体試
料を至適な濃度に希釈することが好ましい。その濃度は
測定条件によっても左右されるため一概には規定できな
いが、例えば、0〜500μg/ml、より好ましくは
0〜100μg/mlへと希釈する。希釈媒体として
は、特に限定されるものではないが、例えば、生理食塩
水、EDTAを含むリン酸緩衝液(PBS)等が用いら
れ得る。
【0031】至適な濃度とされた生体試料と上記1次抗
体との接触は、このような生体試料に含まれる酸化リン
脂質と該1次抗体との特異的反応が十分に進行するもの
であればよく特に限定されるものではないが、例えば、
4〜30℃、より好ましくは25℃の下、1〜24時
間、より好ましくは1〜2時間程度静置反応させること
が望ましい。また、その際の該1次抗体の濃度として
は、生体試料中に存在すると思われるリン脂質の量より
も十分に過飽和な量であればよく、またこの抗体の抗体
価、測定方法のタイプによっても左右されるが、例え
ば、生体試料1μL当りに存在する酸化LDL量が0〜
1ng程度であると想定される場合にあって、1次抗体
として該抗体DLH3を用いる場合、生体試料1μL当
りに0.2〜1.0μg、より好ましくは0.5μg前
後であることが好ましい。
【0032】上記方法によって酸化リポタンパク質を測
定するに際して、本発明ではリポタンパク質を人工的に
酸化させて得られた化合物を標準物質とすることができ
る。このような標準物質に使用されるリポタンパク質
は、いずれの生物由来のものであってもよく、例えば、
ヒト、ウシ、ウマ、ヤギ、ヒツジ、ウサギ、イヌ、及び
モルモットなどの哺乳類;ニワトリやウズラなどの鳥
類;サケやニシンなどの魚類;ならびに細菌や真菌など
の微生物に由来するリポタンパク質が挙げられる。さら
に、リポタンパク質の具体例としては、上記した源由来
の、細胞膜、ミトコンドリア膜、ミエリン構造膜や細菌
細胞膜等の生体膜などに存在する構造リポタンパク質;
血漿、卵黄や乳汁などに存在する可溶性リポタンパク
質;ならびに、これらを超遠心分離法によって、カイロ
ミクロン、VLDL、LDL、リポタンパク質X、中間
密度リポタンパク質(IDL)、リポタンパク質
(a)、HDL2及びHDL3等のHDL、及び超高密
度リポタンパク質(VHDL)に分画されたリポタンパ
ク質画分などが挙げられる。これらのリポタンパク質
は、単独で使用されてもあるいは2種以上の混合物の形
態であってもよい。これらのうち、ヒト由来のリポタン
パク質であることが好ましく、ヒト血漿及び血清由来の
カイロミクロン、VLDL、LDL、Lp(a)、HD
L2若しくはHDL3、またはこれらの混合物がより好
ましく、最も好ましくはヒト血漿及び血清由来のLDL
が使用される。
【0033】本発明において、リポタンパク質を酸化す
る方法は、特に制限されるものではなく、例えば国際公
開公報 00/75189号に記載の方法が使用され
る。該公報記載の方法を要約すれば、リポタンパク質を
用いた場合の酸化方法としては、リポタンパク質を金属
イオンの存在下で酸化する方法;およびリン脂質を人工
的に酸化して得られる化合物(例えば、1−パルミトイ
ル−2−(9−オキソノナノイル)−グルセロ−3−ホ
スホコリン及び1−パルミトイル−2−(5−オキソバ
レロイル)−グルセロ−3−ホスホコリン)を適当な溶
媒(例えば、DMSO)に溶解した溶液を、リポタンパ
ク質に添加する方法がある。本発明では、リポタンパク
質を金属イオンの存在下で酸化する方法が好ましく使用
される。
【0034】本発明では、生体試料に含まれる酸化リポ
タンパク質に代えて上記標準物質を使用して酸化リポタ
ンパク質量を測定して検量線を作成し、生体試料に含ま
れる酸化リポタンパク質量をこの検量線と対比させて算
出させれば、簡便に目的物の定量を行うことができる。
【0035】本発明で検出できる炎症性疾患としては、
関節炎、肝炎、皮膚炎、腎炎、膵炎、血管炎、リンパ腺
炎、鼻炎などが挙げられ、また、時間的経過による分類
では、急性、亜急性、慢性が挙げられるが、ここに挙げ
た具体例に限定されることはなく、酸化リポタンパク質
量が変化する炎症性疾患であれば、いずれの疾患でも対
象となりうる。
【0036】尚、本発明に用いる酸化リポタンパク質測
定法によると、炎症性疾患だけでなく循環器系疾患をも
検出できる(特開平7‐238098号公報、特開平9
−288106号公報)。このため、健常者の酸化リポ
タンパク質の値と比較して酸化リポタンパク質の値が高
い場合には、炎症性疾患または循環器系疾患と判断され
る。健常者の酸化リポタンパク質の値は、あらかじめ炎
症性疾患あるいは循環器系疾患でないことを臨床的に確
認された健常者を選び、該健常者から生体試料を採取
し、該生体試料中の酸化リポタンパク質を上記方法で定
量することができる。臨床的に各種炎症性疾患を確認す
る方法は特に制限がないが、たとえば、CRP、赤沈、
発熱または患部の疼痛などの炎症性疾患に比較的共通す
る指標、および各種炎症性疾患に特徴的な検査法や症
状、たとえば、肝炎であればGOTやGPTなどの肝機
能を示す検査値および黄疸などの症状、慢性関節リウマ
チであればリウマトイド因子などの検査値および患部で
ある関節の腫れ、痛み、こわばり、変形などの症状など
から確認すればよい。
【0037】上記酸化リポタンパク質の測定方法で得ら
れた値から炎症性疾患であるか否かを判断する基準値と
しては、例えば、多数の健常者の酸化リポタンパク質の
値の平均値を用いることができる。その際、平均値に標
準誤差値を加えた値や、平均値に標準誤差値の2倍の値
を加えた値などを使用することもできる。炎症性疾患の
種類ごとに酸化リポタンパク質量やその種類が異なるた
め、好ましくは疾患ごとに基準値を設定すれば、より的
確な判断を行うことができる。
【0038】本発明の第二は、リン脂質の酸化により生
成する抗原を認識する抗体を有効成分として含む、炎症
性疾患検出薬である。リン脂質の酸化により生成する抗
原を認識する抗体は、モノクローナル抗体DLH3であ
ることが好ましく、該検出薬は、更に、酸化低密度リポ
タンパク質を認識する抗体を併用することができ、特
に、該酸化低密度リポタンパク質を認識する該抗体がア
ポBタンパク質を認識する抗体であることが好ましい。
モノクローナル抗体DLH3を使用すれば、第一の発明
で記載したように、各種の酸化リポタンパク質を正確に
低濃度から定量することができる。特に、酸化低密度リ
ポタンパク質を認識する抗体を併用すれば、酸化低密度
リポタンパク質が定量でき、該酸化低密度リポタンパク
質を認識する該抗体がアポBタンパク質を認識する抗体
であれば、その測定精度を向上させることができる。
【0039】該炎症性疾患検出薬は、本願第一および後
記する第三の発明の実施に使用できる。該検出薬は、更
に必要に応じて、検体希釈液、抗体固定化固相、反応用
緩衝液、洗浄液、2次抗体(酵素標識化2次抗体、蛍光
標識化2次抗体、放射性標識化2次抗体、発光標識化2
次抗体等標識化2次抗体であってもよい)、レセプタ
ー、検出用試薬(例えば、発色液)、および標準物質等
を含めることができる。
【0040】該検体希釈液としては、生体試料や必要に
応じて標準物質を希釈するものであり、界面活性剤、緩
衝剤などに牛血清アルブミン(BSA)やカゼインなど
のタンパク質を含む液を用いることができる。
【0041】抗体固定化固相としては、素材としてポリ
スチレン、ポリカーボネート、ポリビニルトルエン、ポ
リプロピレン、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ナイロ
ン、ポリメタクリレート、ゼラチン、アガロース、セル
ロース、ポリエチレンテレフタレートなどの高分子素
材、ガラス、セラミックスや金属などが挙げられる。形
状は、チューブ、ビーズ、プレート、ラテックスなどの
微粒子、スティックなどのいずれでもよく、抗体の固相
化の方法としては、物理的方法、化学的方法、またはこ
れらの併用等の公知の方法も採用できる。このような抗
体固定化固相の一例として、ポリスチレン製96ウェル
の免疫測定用マイクロタイタープレートに抗体等を疎水
固定化したものがある。
【0042】反応緩衝液は、抗体固定化固相の抗体と検
体中の抗原とが結合反応をする際の溶媒環境を提供する
ものであり、上記検体希釈液を同様に使用することがで
き、更に、界面活性剤、緩衝液、牛血清アルブミンやカ
ゼインなどのタンパク質、防腐剤、安定化剤、反応促進
剤などを含む液を用いることができる。
【0043】また、洗浄液としては、上記検体希釈液や
反応緩衝液を洗浄液として使用することができる。
【0044】2次抗体、標識化2次抗体、レセプターと
しては、第一の発明で記載したものを使用することがで
きる。本発明では、炎症性疾患と相関性の高い酸化低密
度リポタンパク質を正確に定量できる点で、2次抗体と
してアポBを含む酸化リポタンパク質を認識する抗体
(抗アポB抗体)を使用することがより好ましい。該2
次抗体には、更に、緩衝剤、牛血清アルブミンやカゼイ
ンなどのタンパク質、防腐剤などが混合されていてもよ
い。
【0045】標識体の検出用試薬としては、標識化2次
抗体の標識用酵素に応じて適宜選択することができ、例
えば標識化合物が西洋ワサビペルオキシダーゼであれ
ば、テトラメチルベンジジンやオルトフェニレンジアミ
ンなどの吸光度測定用基質を、ヒドロキシフェニルプロ
ピオン酸やヒドロキシフェニル酢酸などの蛍光基質であ
ればルミノールなどの発光基質を使用することができ
る。また、標識用酵素がアルカリフォスファターゼであ
れば、4−ニトロフェニルフォスフェートなどの吸光度
測定用基質や4−メチルウンベリフェリルフォスフェー
トなどの蛍光基質等が対象となる。
【0046】標準物質としては、第一の発明で記載した
リポタンパク質を人工的に酸化させて得られた化合物を
使用することができる。該物質は、液体であっても乾燥
凍結品であってもよい。乾燥凍結品を調製するには、例
えば液体中に調製された酸化リポタンパク質に第一の発
明で記載した凍結保護剤を添加して凍結乾燥処理を行
う。凍結乾燥の条件も特に制限されるものでなく、生体
試料の凍結乾燥と同条件でよい。このような凍結乾燥工
程によって、酸化リポタンパク質を含む凍結乾燥物中の
水分含量は、通常、10質量%以下、好ましくは1質量
%以下となる。なお、凍結保護剤の使用量は、通常、1
〜20質量%、好ましくは2〜5質量%である。
【0047】なお、該検出薬は上記構成を含む試薬キッ
トであってもよい。
【0048】該試薬、または試薬キットによって生体試
料に含まれる酸化リポタンパク質を定量する方法として
は、1次抗体と生体試料との接触による抗原抗体複合体
の形成、更に標識化2次抗体を結合させ、該標識化合物
を測定し、標準物質で同様に測定して作成した検量線と
対比すれば、簡便に酸化リポタンパク質を定量すること
ができる。この際、異なる2次抗体を使用することで、
異なる酸化リポタンパク質を測定することができる。
【0049】更に、他の方法による生体試料中の酸化リ
ポタンパク質の分別定量法としては、予め酸化リポタン
パク質を遠心分離処理等で精製し、ついで該1次抗体を
用いて特定の種類の酸化リポタンパク質を定量する。第
一の発明で記載したように、HDL、LDL、VLDL
またはリポタンパク質(a)をあらかじめ遠心分離処理
等で分別し、分別処理した試料に対して該1次抗体を作
用させて特定の酸化リポタンパク質を定量する。この場
合には、同じ2次抗体を使用して異なる酸化リポタンパ
ク質を測定することができる。
【0050】本発明の第三は、炎症性疾患モデル動物
に、効果を検出する対象である薬剤を投与した後にモデ
ル動物から生体試料を採取し、または、炎症性疾患の患
者もしくは動物から採取した生体試料に該薬剤を添加
し、その生体試料中に含まれる酸化リポタンパク質量
を、第一の発明における酸化リポタンパク質の測定方法
によって測定することにより、薬剤の炎症性疾患予防治
療効果を評価することを特徴とする炎症性疾患予防治療
薬探索方法である。炎症性疾患モデル動物に効果判定を
求める薬剤を投与して該動物から生体試料を採取し、ま
たは炎症性疾患モデル動物や炎症性疾患の被験者から得
た生体試料に効果判定を求める薬剤を添加し、ついで、
該生体試料に含まれる酸化リポタンパク質を測定し、該
定量値を適当な対照実験から得られる定量値と比較する
ことにより薬剤の炎症性疾患予防治療効果を判定する工
程よりなる。
【0051】本発明に使用する動物としては、ラット、
マウス、モルモット、ハムスター、ウサギ、ヒツジ、イ
ヌ、サルなど実験動物として通常用いる動物種を使用す
ることができる。これらの実験動物に炎症性疾患を発症
する処置を加えた動物モデルや、遺伝的に炎症性疾患を
発症しやすい動物モデルなどが好適に用いられる。炎症
性疾患を発症する処置としては、公知の方法を用いるこ
とができ、動物種や炎症を起こさせる部位などによって
適宜選択することができる。例えば、カラゲニン、マス
タード、デキストラン、卵白アルブミン、ホルマリン、
リポポリサッカライド、オキサゾロン、TPA、四塩化
炭素、アジュバンドなどの起炎剤などの投薬がある。ま
た、アジュバンドと混和した適当な抗原または抗原単
独、あるいは、酵母、カンジダ菌、結核菌、ブドウ状球
菌、連鎖球菌、髄膜炎菌、マウス肝炎ウイルス、コクサ
ッキーウイルスなどの感染源を経口的に、または、胃
内、皮内、皮下、関節内、筋肉内、腹腔内、静脈内およ
び肺内などの適当な部位に単回あるいは頻回注入する処
置が挙げられる。該抗原としては、牛血清アルブミン、
ヒトガンマグロブリン、同種または同系の動物から採取
した組織破砕物あるいはその抽出液、または同種または
同系の動物から採取した組織破砕物もしくはその抽出液
を異種動物に免疫して得た抗血清などが挙げられる。遺
伝的に炎症性疾患を発症しやすい動物モデルとしては、
たとえば、NZBマウス、NZBマウスとNZWマウス
を掛け合わせたF1マウスなどが挙げられる。より具体
的には、Lewissラットの右後肢皮下にアジュバンドを投
与することによって発症するラットアジュバンド関節炎
モデルを、Wistarラットに四塩化炭素を経口的に繰り返
し長期間投与することによってラット四塩化炭素肝障害
モデルを、BALB/cマウスの耳介にオキサゾロンの
アセトン溶液を繰り返し長期間塗布することによってマ
ウスオキサゾロン皮膚炎モデルを、リポポリサッカライ
ドを静脈内に投与することによって発症するラット敗血
症モデルなどを挙げることができる。
【0052】効果を検出する対象である薬剤の投与法と
しては、特に限定されず、薬剤の物性、水などの溶媒に
対する溶解性、生物学的利用率などに応じて適宜選択す
ることができる。例えば、経口投与、静脈内投与、動脈
内投与、腹腔内投与、皮下投与、皮内投与、筋肉内投
与、筋肉内投与、表皮への塗布、胃内投与、十二指腸内
投与、気道内投与、鼻内投与などが挙げられる。従っ
て、投薬量も該薬剤の種類、投薬方法、炎症性疾患モデ
ル動物の種類等に応じて適宜選択すればよい。
【0053】採取する生体試料の種類としては、酸化リ
ポタンパク質を含有するものであれば特に制限はなく、
血液、血漿、血清、涙、尿、羊水、滑膜液、髄液、細胞
抽出液、組織抽出液などの生体試料が挙げられる。なか
でも、血液、血漿、血清、あるいは炎症を起こしている
組織の抽出液が好適に使用される。また、投薬後の生体
試料の採取時期も、投薬量、該薬剤の種類、投薬方法、
炎症性疾患モデル動物の種類等に応じて適宜選択すれば
よい。
【0054】本発明では、上記のようにモデル動物に効
果を検出する対象である薬剤を投与する場合に限られ
ず、予め動物や人から採取した生体試料に該薬剤を添加
し、適当な時間インキュベーションすることによって得
られる試料を薬剤の効果判定のための試料として用いる
こともできる。この場合の生体試料としても、酸化リポ
タンパク質を含有するものであれば特に制限はなく、血
液、血漿、血清、涙、尿、羊水、滑膜液、髄液、細胞抽
出液、組織抽出液などの生体試料が挙げられる。なかで
も、血液、血漿、血清、あるいは炎症を起こしている組
織の抽出液が好適に使用される。
【0055】生体試料中の酸化リポタンパク質の測定方
法としては、第一の発明で記載した方法を用いることが
できる。
【0056】一方、該薬剤の効果の判定方法としては、
炎症性疾患動物モデルや炎症性疾患の患者(罹患群の対
照実験)と、健常動物または健常者(健常群の対照実
験)の酸化リポタンパク質とを測定し、該薬剤投与によ
って得た測定値をこれらの対照実験と比較し、罹患群の
値よりも低い場合に薬剤の効果ありと判定する。健常群
の適当な対照実験としては、たとえば、薬剤を動物に投
与する場合には薬剤投与前あるいは薬剤無投与の動物か
ら得た酸化リポタンパク質を用い、予め単離した生体試
料に該薬剤を添加する場合には薬剤添加前あるいは薬剤
無添加の生体試料から得た酸化リポタンパク質を用い対
照実験とすることができる。より明確には、罹患群の対
照実験と、健常群の対照実験群とをそれぞれ複数例、好
ましくは3例以上で測定し、それぞれの平均値の差が予
め定めた判定基準値以上離れている場合に薬剤の効果あ
りと判定してもよい。該判定基準値の定め方としては、
例えば対照実験群の標準誤差、あるいはその2倍という
ように定めることができる。
【0057】
【実施例】次に実施例によって、より具体的な内容を示
すが、本発明がここに示したものに限定されるものでは
ないことはいうまでもない。
【0058】(実施例1:サンドイッチ法ELISA法
による酸化LDL測定) (i)抗体DLH3の調製 8週齢以上のオスのBalb/cマウスの腹腔内に、
0.5mL/匹のプリスタン(2,6,10,14−テ
トラメチルペンタデカン)を注入し、2週間飼育した。
次に、このマウスに、所望のモノクローナル抗体を産生
する細胞である、ハイブリドーマセルラインFOH1a
/DLH3(受託番号:FERM BP−7171;J.
Biol. Chem. 1994. 269: 15274-15279;及び特開平7
−238,098号公報)を1×106/匹、腹腔内接
種した。7〜14日後、マウスの腹腔内に十分腹水が貯
溜した時点で、腹腔から18Gの注射針を用いて腹水を
回収し、3000rpmで10分間遠心分離して、上清
を回収した。この上清に、等量のPBS(pH7.4)
を加えた後、この混合液と等量の飽和硫酸アンモニウム
液を、十分攪拌しながら、1時間かけて滴下し、さらに
1時間攪拌を継続した後、3000rpmで10分間遠
心分離して、上清を廃棄し、沈殿物を回収した。さら
に、この沈殿物を0.5モル/LのNaClを含むPB
S(pH7.4)を加えて溶解し、この溶液を、0.5
モル/LのNaClを含むPBS(pH7.4)で平衡
化したSephacryl S-300カラム(2.5cm×100c
m)(ファルマシア社製)にかけ、IgM画分を回収
し、これを抗体DLH3とした。なお、該抗体DLH3
の濃度は、光路長1cmの280nmにおける吸光度を
測定し、得られた吸光度を1.3で除して、この値を抗
体濃度(mg/mL)とした。
【0059】(ii)ラットアポBタンパク質の調製 EDTAを抗凝固剤としてラット血漿を得て、該血漿を
超遠心分離法して比重1.006〜1.063のLDL
画分を回収した。このLDL画分を、リン酸緩衝生理食
塩水(PB)で3回透析した後、限外ろ過により濃縮
し、更にV.G.Shoreらの方法(Biochemistry、8巻4510頁
1969年)に従って脱脂した。さらに、Sephacryl S-200HR
カラムを用いたゲルろ過クロマトグラフィーにより、ア
ポBタンパク質を精製した。
【0060】(iii)抗ラットアポB抗体の調製 上記(ii)で得たラットアポBタンパク質をウサギに免
疫し、抗ラットアポBポリクローナル抗体を作製した。
すなわち、アポBタンパク質100μgを、初回のみア
ジュバントと混和し、日本白色種ウサギの皮下に毎週1
回(計6回)注射し、最終免疫の3〜4日後に血清を採
取した。得られた血清からカプリル硫酸沈殿法によりイ
ムノグロブリンを精製した。すなわち、血清の2倍量の
60mmol/L酢酸ナトリウムバッファー(pH4.
0)を加え、pH4.8に調整後、血清1mLに対し7
5μLのカプリル硫酸を加え、室温で30分間攪拌し
た。遠心分離(15000×g、10分)後、上清をP
BSに対して4℃で1晩透析した。次に、等量の飽和硫
酸アンモニウム溶液を加え、4℃で1晩攪拌した。遠心
分離(15000×g、30分)後、沈殿を回収し、血
清と等量のPBSに溶かしたのち、PBSに対して4℃
で1晩透析した。
【0061】(iv)抗ラットアポB抗体のヨーロピウム
標識 上記の抗ラットアポBポリクローナル精製抗体を、市販
のキット(DELFIA Eu-N1 ITC型標識試薬:WALLAC社)を
用いてヨーロピウム標識した。すなわち、標識バッファ
ー(100mmol/L Na2CO3 pH9.3)に
溶かした精製抗体500μgを、Eu−N1 ITC型
標識試薬と混合し、室温で16時間反応させた。その
後、Sepharose 6Bカラムを用いたゲルろ過クロマトグ
ラフィーにより、未反応のヨーロピウムと標識された抗
体とを分離した。
【0062】(v)標準物質(ラット酸化LDL)の調
製 ヘパリンを抗凝固剤としてラット血漿を得て、該血漿を
超遠心分離して比重1.030〜1.050のLDL画
分を回収した。このLDL画分を0.25mmol/L
EDTAを含むPBSに対して十分透析し、Superose
6HRカラムを用いたゲルろ過クロマトグラフィーによ
り精製した。LDLの純度を、アガロースゲル電気泳動
で単一のバンドとなることで確認した。タンパク定量を
行った後に、以下の操作を行うまで4℃で保存した。
【0063】精製LDLを、PBS溶液でタンパク濃度
が1mg/mLとなるように調製した。タンパク濃度が
1mg/mLの精製LDL溶液に硫酸銅を5μmol/
Lとなるように添加し、37℃で3時間インキュベート
し、0.34mmol/LとなるようにEDTAを添加
し、酸化反応を停止させた。得られた酸化LDL溶液
を、0.25mmol/L EDTAを含むPBSに対
して十分透析し、タンパク定量を行った後に、タンパク
濃度が1mg/mLとなるように調製し、酸化LDL標
準溶液として使用時まで4℃で保存した。
【0064】(vi)サンドウィッチ法による測定 1次抗体(抗体DLH3)を固相化するために、20μ
g/mL 抗体DLH3を含む50mM Tris−H
Cl溶液(pH8.0)をプラスチック製のEIA/RI
A用96ウェルプレート(Nunc社)に50μLずつ加
え、4℃で一晩インキュベーションした後に溶液を除去
した。次に、PBSに溶解した1%牛血清アルブミンを
各ウェルに150μLずつ加え、室温で1時間インキュ
ベーションした後に、1% Tween-20を含むPBS溶液
で洗浄した。
【0065】ラットからヘパリン採血で得た血漿を1%
牛血清アルブミンおよび4% Polyethelene Glycol #6
000を含む50mmol/L Tris−HCl(pH
8.0)溶液で2000〜4000倍に希釈し、上記の
1次抗体を固定したプレートに50μL添加した。その
プレートを37℃で2時間インキュベーションした後
に、プレートの各ウェルを1% Tween-20を含むPBS
溶液で洗浄した。PBSを除いた各ウェルに、市販のDE
LFIA用Assay Buffer(WALLAC社)で100倍に希釈した
上記の標識化2次抗体(ヨーロピウム標識抗ラットアポ
B抗体)を50mL各プレートに加え、37℃で1時間
インキュベーションした。その後、プレートの各ウェル
を1% Tween-20を含むPBSで洗浄した。PBSを除
いた各ウェルに市販のDELFIA用Enhancement Solution(W
ALLAC社)を加え、各ウェルに含まれるヨーロピウムの量
を、励起波長340nm、蛍光波長615nm、励起後
400μ秒から400μ秒間の時間分解蛍光で測定し
た。
【0066】4℃で保存しておいた標準物質:酸化LD
Lの標準溶液を、タンパク質濃度として0〜100ng
/mLの間で1%牛血清アルブミンおよび4%Polyethe
leneGlycol #6000を含む50mmol/L Tris−
HCl(pH8.0)溶液を用いて段階希釈を行い、上記
サンプルと同様に測定し、標準酸化LDLの量と時間分
解蛍光値とによる標準酸化LDLの検量線を作成した。
各試料のヨーロピウム量から該検量線を用いて酸化LD
L量を算出した。図1に検量線の1例を示す図1におい
て、各試料に含まれる酸化LDL量は、標準酸化LDL
のタンパク量1ngを1Uとして表記した。
【0067】(実施例2:肝炎モデルラットにおける酸
化LDL値の測定)Wistarラット(7週齢、体重150
〜160g)に市販飼料(CE−2 日本クレア
(株))を与え、35mg/mLのフェノバルビタール
ナトリウム(和光純薬(株) 生化学用)を含む水を飲
水として自由摂取させ飼育を行った。飼育2週間後から
四塩化炭素(和光純薬(株)試薬特級)を10%(v/
v)含有するオリーブオイル(和光純薬(株))を週に
1回合計12回テフロン(登録商標)製ゾンデを使用し
経口による投与を行った。四塩化炭素の投与量は、初回
投与時は四塩化炭素として0.04mL/匹とし、2回
目の投与からは前回投与から1週間の体重の変化に応じ
て調整した。つまり、前回投与時よりも体重増加が認め
られれば、初回投与量の1.5倍、2倍、3倍、4倍と
四塩化炭素投与量を漸増させ、体重増加が認められなけ
れば四塩化炭素の投与量を前回投与時と同じとした。1
2回の投与が終了してから6日目に尾静脈より採血し、
ヘパリン血漿を得て、実施例1に示す方法で、血漿中酸
化LDLを測定した。対照実験としては、四塩化炭素を
含まないオリーブオイルの投与を行った。
【0068】図2に示すように、四塩化炭素を投与した
ラットの血漿中酸化LDL濃度は、対照群に比較して高
値を示した。
【0069】(実施例3:皮膚炎における酸化LDL値
の測定)0.5%オキサゾロンを溶解したアセトン溶液
をBalb/cマウスの右耳介に10μL塗布した。1週間後
から2日ないし3日ごとに0.5%オキサゾロンを溶解
したアセトン溶液をBalb/cマウスの右耳介に毎回10μ
Lずつ、3週間(合計10回)塗布した。最後の塗布か
ら6時間後に右耳介病変部の浮腫をダイヤルシックネス
ゲージ(model G、尾崎製作所、東京)で測定した後、
その病変部を採取し、それぞれの耳介にPBSを500
μLずつ加えて、ホモジナイザーで組織を破砕した。そ
の破砕液を15,000×gで遠心分離操作を行い、得
られる上清液を測定試料として酸化LDLの量を測定し
た。対照実験としては、上記の0.5%オキサゾロンを
溶解したアセトン溶液をすべて、オキサゾロンを含まな
いアセトンに代えて、右耳介にそれぞれ10μLずつ塗
布した。
【0070】図3に示すように、オキサゾロン塗布によ
って耳介中の酸化LDLの量は、オキサゾロンを含まな
い溶媒を塗布した動物の耳介中酸化LDL量に比べて高
値を示した。特に、オキサゾロンを塗布したすべての個
体において、塗布していないすべての個体よりも高値を
示した。これによって、皮膚炎をおこした組織中の酸化
LDL値を実施例1の測定法によって測定し、炎症性疾
患を正常と区別できることが示唆された。
【0071】(実施例4:アジュバント関節炎ラットを
用いる炎症性疾患予防治療薬の効果)アジュバント関節
炎は、Tamuraら、European Journal of Pharmacology、41
9巻269頁2001年に記載された方法に従って発症させた。
すなわち、Lewis系雌性ラットの右後肢足蹠内に流動パ
ラフィンに懸濁したmycobacterium butyricumの死菌(Di
fco Laboratories社)0.6mg/mL(以下、アジュ
バントと記す)を皮下注射した。アジュバントを注射し
た日からジクロフェナックナトリウム〔3mg/kg;
シグマ社〕を体重1kgあたり10mLの割合で、1日
1回、21日間経口投与した。薬剤の最終投与の翌日
に、左右後肢の腫れをラット後肢足蹠浮腫容積測定装置
によって測定し、その後大腿部より全採血を行った(D
投与群)。関節炎を発症していない対照実験としてアジ
ュバントおよび薬剤のいずれも投与していないラット
(正常群)を、薬剤無投与の対照実験としてアジュバン
ト投与後、薬剤の代わりに溶媒を経口投与したラット
(関節炎群)を用いた。
【0072】図4に示すように、アジュバントを投与す
ることによって関節炎を発症したラット(関節炎群)の
血漿中酸化LDLの量は、アジュバントを投与していな
い動物(正常群)から得られる血漿中酸化LDL量に比
べて高値を示した。さらに、ジクロフェナックナトリウ
ムを投与した動物(D投与群)から得られる血漿中酸化
LDL量は、投与していない動物(関節炎群)から得ら
れる量よりも低値を示した。したがって、本実験系を用
いることにより、関節炎治療薬として用いられているジ
クロフェナックナトリウムの効果を検出することができ
た。また、このとき同じ個体で測定した左右後肢の腫れ
の程度と実施例1の測定法で求めた血漿中酸化LDL量
には正の相関が認められた(図5)。
【0073】
【発明の効果】本発明によれば、リン脂質の酸化により
生成する抗原を認識する抗体を用いて、各種酸化リポタ
ンパク質を定量することができ、該測定値に基づいて炎
症性疾患に罹患しているか否かの検出を容易に行うこと
ができる。該抗体に加えて、低密度リポタンパク質を認
識する抗体を用いれば、特に酸化低密度リポタンパク質
の定量性に優れる。
【0074】本発明の炎症性疾患検出薬は、上記酸化リ
ポタンパク質の定量に必要な各種薬剤が含まれるため、
炎症性疾患の検出が容易である。
【0075】更に、本発明によれば、炎症性疾患予防薬
として有効性を評価したい薬剤の効果を、酸化リポタン
パク質の定量によって簡便に評価することができる。こ
の炎症性疾患予防治療薬探索方法には、上記炎症性疾患
検出薬の使用が有効である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 標準酸化LDLを段階希釈し、測定した結果
を示す。
【図2】 正常の対照群と四塩化炭素を投与した群(肝
炎群)における血漿中酸化LDL濃度を示す。各点は各
個体の測定値を表す。
【図3】 正常の対照群とオキサゾロンを投与した群
(皮膚炎群)における耳介中酸化LDL量を示す。各点
は各個体の測定値を表す。
【図4】 正常の対照群(正常群)、アジュバンド投
与、薬剤無投与群(関節炎群)およびアジュバンド投与
ジクロフェナック投与群(D投与群)における血漿中酸
化LDL濃度を示す。各点は各個体の測定値を表す。
【図5】 図4の全ての個体について血漿中酸化LDL
濃度と右後肢(上図)および左後肢(下図)の腫れの相
関を示す。右後肢および左後肢の腫れとの相関はいずれ
も0.50であった。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) A61P 29/00 A61P 29/00 C12P 21/08 C12P 21/08 (72)発明者 濱口 香織 静岡県駿東郡長泉町下土狩1188 協和醗酵 工業株式会社医薬総合研究所内 (72)発明者 中西 聡 静岡県駿東郡長泉町下土狩1188 協和醗酵 工業株式会社医薬総合研究所内 (72)発明者 長谷川 一英 静岡県駿東郡長泉町下土狩1188 協和醗酵 工業株式会社医薬総合研究所内 (72)発明者 田村 忠史 静岡県駿東郡長泉町下土狩1188 協和醗酵 工業株式会社医薬総合研究所内 (72)発明者 木崎 美穂 茨城県つくば市御幸が丘2番地 協和醗酵 工業株式会社筑波研究所内 (72)発明者 小林 克也 静岡県駿東郡長泉町下土狩1188 協和醗酵 工業株式会社医薬総合研究所内 (72)発明者 原田 大輔 静岡県駿東郡長泉町下土狩1188 協和醗酵 工業株式会社医薬総合研究所内 Fターム(参考) 2G045 AA25 AA40 DA61 DA62 DA77 FB03 4B064 AG27 CA10 CA20 CC24 DA13 4C084 AA17 NA14 ZB112

Claims (9)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 リン脂質の酸化により生成する抗原を認
    識する抗体を用いて、炎症性疾患が疑われる患者または
    炎症性疾患モデル動物から得た生体試料に含まれる酸化
    リポタンパク質を測定することよりなる炎症性疾患検出
    方法。
  2. 【請求項2】 リン脂質の酸化により生成する抗原を認
    識する該抗体と共に酸化低密度リポタンパク質を認識す
    る抗体を用い、酸化リポタンパク質として酸化低密度リ
    ポタンパク質を測定することを特徴とする、請求項1記
    載の方法。
  3. 【請求項3】 酸化低密度リポタンパク質を認識する該
    抗体がアポBタンパク質を認識する抗体である請求項2
    記載の方法。
  4. 【請求項4】 リン脂質の酸化により生成する抗原を認
    識する該抗体がモノクローナル抗体DLH3であること
    を特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
  5. 【請求項5】 リン脂質の酸化により生成する抗原を認
    識する抗体を有効成分として含む、炎症性疾患検出薬。
  6. 【請求項6】 更に、酸化低密度リポタンパク質を認識
    する抗体を有効成分として含む、請求項5記載の検出
    薬。
  7. 【請求項7】 酸化低密度リポタンパク質を認識する該
    抗体がアポBタンパク質を認識する抗体である請求項6
    記載の検出薬。
  8. 【請求項8】 リン脂質の酸化により生成する抗原を認
    識する該抗体がモノクローナル抗体DLH3であること
    を特徴とする請求項5〜7のいずれかに記載の検出薬。
  9. 【請求項9】 炎症性疾患モデル動物に、効果を検出す
    る対象である薬剤を投与した後にモデル動物から生体試
    料を採取し、または、炎症性疾患の患者もしくは動物か
    ら採取した生体試料に該薬剤を添加し、その生体試料中
    に含まれる酸化リポタンパク質を、以下の(i)〜(iv)の
    いずれかの方法を用いて測定することにより、薬剤の炎
    症性疾患予防治療効果を評価することを特徴とする炎症
    性疾患予防治療薬探索方法。 (i) リン脂質の酸化により生成する抗原を認識する抗
    体と該生体試料に含まれる酸化リポタンパク質との抗原
    抗体複合体を形成させ、該複合体に含まれる酸化リポタ
    ンパク質を測定する方法、 (ii) リン脂質の酸化により生成する抗原を認識する抗
    体と共に酸化低密度リポタンパク質を認識する抗体を用
    いて、該生体試料に含まれる酸化リポタンパク質との抗
    原抗体複合体を形成させ、該複合体に含まれる酸化リポ
    タンパク質として酸化低密度リポタンパク質を測定する
    方法、 (iii) 酸化低密度リポタンパク質を認識する該抗体が
    アポBタンパク質を認識する抗体である上記(ii)記載の
    方法、 (iv) リン脂質の酸化により生成する抗原を認識する抗
    体がモノクローナル抗体DLH3である上記(i)〜(iii)
    のいずれかに記載の方法。
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