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JP2003022822A - スカンジア安定化ジルコニア電解質 - Google Patents

スカンジア安定化ジルコニア電解質

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JP2003022822A
JP2003022822A JP2001208337A JP2001208337A JP2003022822A JP 2003022822 A JP2003022822 A JP 2003022822A JP 2001208337 A JP2001208337 A JP 2001208337A JP 2001208337 A JP2001208337 A JP 2001208337A JP 2003022822 A JP2003022822 A JP 2003022822A
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JP2001208337A
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和男 秦
Norikazu Aikawa
規一 相川
Yasunobu Mizutani
安伸 水谷
Kenji Ukai
健司 鵜飼
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Nippon Shokubai Co Ltd
Toho Gas Co Ltd
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Nippon Shokubai Co Ltd
Toho Gas Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 スカンジア安定化ジルコニア電解質の高温長
時間使用時における酸素イオン導電率の経時変化を少な
くし、安定して高い導電性を持続し、特に2000時間
までの初期導電率の劣化程度を低減すると共に、優れた
高温強度と強度持続性を有する燃料電池用のスカンジア
安定化ジルコニア電解質を提供すること。 【解決手段】 スカンジア安定化ジルコニア電解質にお
いて、2A族、3A族、4A族、5A族、7A族、8
族、3B族および4B族元素よりなる群から選択される
少なくとも1種の元素を含む複合酸化物の少なくとも1
種を、スカンジア安定化ジルコニアに対し0.01〜5
質量%含む、固体酸化物型燃料電池用スカンジア安定化
ジルコニア電解質である。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はスカンジア安定化ジ
ルコニア電解質に関し、特に安定して優れた酸素イオン
導電性を示すと共に、ハンドリングに十分な機械的強度
を有し、燃料電池用の固体電解質膜用として優れた性能
を有するスカンジア安定化ジルコニア電解質に関するも
のである。
【0002】
【従来の技術】固体酸化物型燃料電池の電解質として、
立方晶のジルコニア系セラミックスや正方晶のジルコニ
ア系セラミックスが広く検討されており、該セラミック
スの結晶構造を安定化するための安定化剤としては、イ
ットリアが一般的に使用されている。
【0003】しかしジルコニア系セラミックスの酸素イ
オン導電性は、添加する金属イオンの半径や固溶量によ
って異なり、イットリアを固溶させたジルコニアよりも
スカンジアを固溶させたジルコニアの方が高い導電性を
有する可能性が示されている。また、固体酸化物型燃料
電池発電システムを実用化していくには、他の発電シス
テム等に比肩し得る経済性と優れた発電性能に加えて、
少なくとも40,000時間程度以上の高温耐久性が要
求される。
【0004】そこで、燃料電池の固体電解質膜としてイ
ットリア安定化ジルコニア(YSZ)よりも低コストで
優れた発電性能を実現すべく、種々研究が進められてお
り、イットリア安定化ジルコニアよりも高い酸素イオン
導電性のスカンジア安定化ジルコニアセラミックスが注
目されている。
【0005】例えば、スカンジア安定化ジルコニア(S
cSZ)にアルミナを添加した三元系金属酸化物からな
るセラミックス製の酸素イオン導電体が知られている。
そしてこのセラミックスは、副ドーパントとして特定比
率のアルミナを添加し結晶構造を安定化したもので、室
温と高温の作動温度との間で構造変態を起こすことがな
く、イットリア安定化ジルコニアよりも高いイオン導電
性を有しており、燃料電池用の固体電解質としても実用
可能な酸素イオン導電体となり得ると考えられる。
【0006】また、スカンジア安定化ジルコニア(Sc
SZ)に、原子価が2価または3価で安定な副ドーパン
トであるM23(Mは金属元素を示す)を添加した三元
系金属酸化物からなる酸素イオン導電体も知られてい
る。
【0007】この副ドーパントは、上記金属MがIn,
Ga,Ti,V,Cr,Fe,Co,Mg,Ca,Z
n,Sr,Baの中から選ばれる1種であり、これらが
添加されることによって、Scとほぼ同等のイオン導電
性を有し、なおかつ結晶構造は立方晶で安定化されてい
るため高温での結晶変態が現れず、高イオン導電性で且
つ熱サイクルを受けたときの強度持続性にも優れたもの
である。
【0008】しかし上記いずれの公報にも、発電特性を
長期的に持続させる上で重要な要件の1つである酸素イ
オン導電性の経時変化については記載されていない。
【0009】一方、「Solid State Ion
ics」の72巻、271−275頁(1994年)、
79巻、137−142頁(1995年)、132巻、
235−239頁(2000年)には、スカンジア量を
2.9〜12モル%の範囲で変化させたスカンジア安定
化ジルコニア(2.9〜12ScSZ)や、20質量%
のアルミナを添加した8〜11モル%スカンジア安定化
ジルコニア(8〜11ScSZ20A)について、導電
性の経時変化を検討した例が示されている。その中で、
結晶構造が菱面体である11〜12ScSZや11Sc
SZ20Aは、1000℃で4000〜6000時間と
いった長時間曝露でも殆ど経時変化を起こさない。
【0010】しかし立方晶構造である8ScSZは、1
000℃で1300時間の曝露で導電率が0.32S/
cmから0.14S/cmに低下することが報告されて
いる。また、正方晶構造である2.9ScSZは100
0℃で1000時間の曝露で導電率が0.09S/cm
から0.063S/cmに低下することが報告されてい
る。即ちこれらは、1000〜1300時間の曝露で導
電率が30〜60%大きく低下していることになる。
【0011】燃料電池発電システムに用いる固体電解質
としては、高い酸素イオン導電性を有すると共に、たと
えば40,000時間以上といった長時間レベルまでそ
の高い酸素イオン導電性を安定に維持することが重要で
あり、上記導電性の低下率を可及的に小さく抑え、高レ
ベルの電気特性を長時間持続せしめ得る様な改質が望ま
れる。
【0012】また、新エネルギー・産業技術総合開発機
構(NEDO)における平成13年度からの「固体酸化
物形燃料電池の研究開発」に関する開発目標として、熱
自立モジュールの目標性能が「初期特性評価と同等条件
で3000時間程度の発電を行なったときの電圧低下率
が“0.25%/1000時間”以下」と計画されてい
る(平成12年度「高温形燃料電池発電技術」研究開発成
果報告会講演要旨集、NEDO、燃料・貯蔵技術開発
室、平成13年2月27日)ことからも、固体電解質と
して酸素イオン導電率の経時劣化が電圧低下率に大きく
影響しない様なスカンジア安定化ジルコニア電解質が求
められている。
【0013】即ち、燃料電池システムに用いられるスカ
ンジア安定化ジルコニア中に配合する酸化物について
は、その種類などを含めて更に検討の余地があり、ま
た、得られる燃料電池用スカンジア安定化ジルコニアの
結晶構造や強度、更には、これを用いた燃料電池用スカ
ンジア安定化ジルコニア電解質の導電性の経時変化など
についても、同様に検討の余地が残されている。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】本発明は上記の様な事
情に着目してなされたもので、その目的は、上記NED
Oの目標性能にも適合し得る様、スカンジア安定化ジル
コニア電解質の高温長時間使用時における酸素イオン導
電率の経時変化を少なくし、安定して高い導電性を持続
し、特に2000時間までの初期導電率の劣化程度を低
減すると共に、優れた高温強度と強度持続性を有するス
カンジア安定化ジルコニア電解質を提供することにあ
る。
【0015】
【課題を解決するための手段】本発明者らは上記の様な
課題の下で、スカンジア安定化ジルコニアに配合する酸
化物の種類と、得られる配合物である燃料電池用のスカ
ンジア安定化ジルコニア電解質の結晶構造と導電性の経
時変化に主眼を置いて検討を進めた結果、これら両特性
を満たす燃料電池用スカンジア電解質を得ることに成功
した。
【0016】即ち、上記課題を解決することのできた本
発明に係る燃料電池用のスカンジア安定化ジルコニア電
解質とは、スカンジアで安定化されると共に、更に、2
A族、3A族、4A族、5A族、7A族、8族、3B族
および4B族元素よりなる群から選択される少なくとも
1種の元素を含む複合酸化物の少なくとも1種を、スカ
ンジア安定化ジルコニアに対し0.01〜5質量%含有
するところに要旨を有している。
【0017】上記複合酸化物としては、中でもアルミニ
ウムおよび/またはチタニウム元素を含むものが好まし
く、具体的には、3〜15モル%のスカンジアで安定化
されると共に、アルミニウム元素またはチタニウム元素
を含むペロブスカイト型、スピネル型などの結晶構造を
有するMgAl24、CaAl24、SrAl24、B
aAl24、VAlO4、NbAlO4、TaAlO4
MnTiO4、YAlO 3、LaAlO3、PrAlO3
NdAlO3、MgTiO3、CaTiO3、SrTi
3、BaTiO3、Al2TiO5、Al2MnO5、V2
TiO7、Nb2TiO7、Ta2TiO7等から選択され
る少なくとも1種を、スカンジア安定化ジルコニアに対
し0.01〜5質量%含有するものが好ましい。
【0018】中でも、3〜15モル%のスカンジアで安
定化されると共に、アルミニウム元素を含むペロブスカ
イト型、スピネル型などの結晶構造を有するMgAl2
4、LaAlO3、Al2TiO5よりなる群から選択さ
れる少なくとも1種を、スカンジア安定化ジルコニアに
対して0.01〜5質量%含有するものは、とりわけ好
ましいものとして推奨される。
【0019】
【発明の実施の形態】前述した様な課題の下で本発明者
らは、スカンジアで安定化されたジルコニア電解質を対
象とし、該電解質の導電率の経時変化を少なくしてより
耐久性に優れた電解質を得るべく、様々の角度から研究
を進めてきた。
【0020】その結果、導電率の経時変化は結晶構造の
変化とグレイン粒子径の安定性に大きく影響され、スカ
ンジア安定化ジルコニアにある特定の複合酸化物を特定
量含有させれば、初期導電性を若干低下させるだけで、
その後の導電性の経時変化を小さく抑え得ることを見出
し、上記本発明に想到したものである。
【0021】また上記特定の複合酸化物は、スカンジア
安定化ジルコニアセラミックスに対し分散強化剤として
も作用し、結果として優れた高温強度と強度持続性を与
えることも見出した。
【0022】まず本発明では、スカンジアで安定化され
たジルコニアを対象とするもので、一般的なスカンジア
の添加量は3モル%以上、15モル%以下である。即ち
スカンジアの含有量が3モル%未満では、セラミックス
の結晶構造に単斜晶の割合が多くなり、ジルコニアの安
定化が不十分となって満足のいく強度が得られ難くな
る。一方、スカンジアによる安定化効果は約15モル%
で飽和し、高価なスカンジアをそれ以上に含有させるこ
とは、経済的不利益を被るだけである。
【0023】高温耐久強度と常温でのハンドリング強度
を高める上では、正方晶系を主体とする結晶構造を有す
るものであることが好ましく、そのためのより好ましい
スカンジアの量は3.5モル%以上で、より好ましい上
限は9モル%以下、更に好ましくは6モル%以下であ
る。
【0024】また本発明の燃料電池用スカンジア安定化
ジルコニア電解質においては、機械的強度と共に導電率
の経時変化を抑えるため、2A族、3A族、4A族、5
A族、7A族、8族、3B族および4B族元素よりなる
群から選択される少なくとも1種の元素を含む複合酸化
物の少なくとも1種を、スカンジア安定化ジルコニアに
対し0.01〜5質量%含有させることが必要となる。
【0025】ここで、2A族、3A族、4A族、5A
族、7A族、8族、3B族および4B族元素とは、例え
ば、理化学辞典、第5版(岩波書店:1998年4月2
4日発行)に記載されている元素の周期表(短周期型)
に示されている族のことであり、具体的には、2A族元
素としてMg,Ca,Sr,Baなど;3A族元素とし
てY,La,Ce,Pr,Ndなど;4A族元素として
Ti,Zr,Hfなど;5A族元素としてV,Nb,T
aなど;7A族元素としてMnなど;8族元素としてF
e,Co,Niなど;3B族元素としてAl,Ga,I
nなど;4B族元素であるGe,Snなどが例示され
る。
【0026】また上記複合酸化物とは、それぞれ単独の
酸化物の結晶構造とは異なる新たな結晶構造を有する、
酸素元素を除く2成分以上の元素からなる酸化物を意味
する。
【0027】上記元素を含む複合酸化物のより具体的な
例としては、アルミニウム元素またはチタニウム元素を
含むペロブスカイト型、スピネル型などの結晶構造を有
するMgAl24、CaAl24、SrAl24、Ba
Al24、VAlO4、NbAlO4、TaAlO4、M
nTiO4、YAlO3、LaAlO3、PrAlO3、N
dAlO3、MgTiO3、CaTiO3、SrTiO3
BaTiO3、Al2TiO5、Al2MnO5、V2TiO
7、Nb2TiO7、Ta2TiO7、Y2Ti27,Sm2
Ti27,Gd2Ti27)や、コージェライト(Mg2
Al4Si518)、フォルステライト(Mg2Si
4)、ステアタイト(Mg3Si410)、ジルコン
(ZrSiO4)、LaGaO3,CaCeO3,BaC
eO3等が挙げられる。
【0028】上記複合酸化物の中でも、固体電解質用ス
カンジア安定化ジルコニアの導電率の初期劣化傾向を抑
えると共に、焼結性を高めてその結晶構造を安定化させ
る上で特に好ましいのは、Alを含むペロブスカイト型
やスピネル型などの結晶構造を有する複合酸化物、例え
ばLaAlO3、MgAl24、Al2TiO5から選択
される少なくとも1種の複合酸化物を含むものが好まし
い。
【0029】上記複合酸化物の効果を有効に発揮させる
には、スカンジアで安定化されたジルコニアの総量、具
体的には、ジルコニア分とスカンジア分の合計量に対
し、0.01質量%以上、5質量%以下の範囲で含有さ
せるのがよく、より好ましくは0.1質量%以上、3質
量%以下、更に好ましくは0.3質量%以上、2質量%
以下の範囲である。
【0030】上記複合酸化物の含有量が0.01質量%
を下回る場合は、前述した作用効果が有効に発揮され
ず、逆に5質量%を上回る場合は、初期導電率を低下さ
せる原因になるので好ましくない。
【0031】更に本発明においては、不純物として混入
してくる恐れのある酸化ケイ素、および/またはNa,
K,Rb,Csの如きアルカリ金属の酸化物の含有量を
極力少なく抑えることが望ましく、好ましくは何れも
0.1質量%以下、より好ましくは0.05質量%以下
に抑えるのがよい。
【0032】上記酸化ケイ素やアルカリ金属酸化物類
は、ジルコニアや前記複合酸化物に比べると低融点の溶
融型酸化物であり、高温に長時間曝されるとスカンジア
安定化ジルコニア中の粒界付近に偏析して導電率を低下
させる恐れがあるからである。
【0033】従って本発明の燃料電池用スカンジア安定
化ジルコニア電解質中には、酸化ケイ素および/または
アルカリ金属酸化物が実質的に含まれていないことが望
ましいが、何れもジルコニア原料粉末中に不可避的に混
入してくる成分であり、より好ましくは酸化ケイ素の含
有量は0.03質量%以下、アルカリ金属酸化物の合計
含有量は0.01質量%以下に抑えることが望ましい。
【0034】ここでアルカリ金属酸化物の合計量とは、
Na2O,K2O,Rb2O,Cs2Oとしたときの各酸化
物の合計量を言う。
【0035】本発明でいう導電率とは、固体酸化物型燃
料電池用の電解質膜として用いられるセラミックから、
導電率測定用サンプルとしてダイヤモンドカッターで一
部切り出されたテストピースを使用し、直流4端子法で
測定した値をいい、最初から導電率測定用サンプルとし
て作製されたテストピースを用いた値ではない。尚、こ
の測定に用いたテストピースの大きさは、長さ50m
m、幅5mmで厚さ0.01〜0.5mmとした。
【0036】次に、本発明の燃料電池用スカンジア安定
化ジルコニア電解質においては、その結晶構造が立方晶
を主体とするものである場合、そのグレイン粒子径で平
均径が1μm以上、3μm以下、最大径が4μm以上、
8μm以下で、その変動係数が35%以下であること
が、導電率の経時変化を抑えると共に高レベルの強度を
確保する上で好ましい。
【0037】また、その結晶構造が正方晶を主体とする
ものでは、そのグレイン粒子径で平均径が0.1μm以
上、0.5μm以下、最大径が0.5μm以上、1.0
μm以下で、その変動係数が30%以下であることが、
導電率の経時変化を抑えると共に高温強度耐久性を確保
する上で好ましい。
【0038】グレイン粒子径の変動係数が、立方晶の場
合で35%を上回り、あるいは正方晶の場合で30%を
上回るものでは、導電率の経時変化が大きくなると共
に、ワイブル係数が10以下に低下する傾向が生じてく
る。なおワイブル係数とは、強度バラツキの度合いを反
映する材料定数とみなされ、燃料電池用の固体電解質と
して使用するには、ワイブル係数で10以上、より好ま
しくは12以上、更に好ましくは15以上とすることに
よって、素材としての信頼性が高められ、発電システム
の設計も容易となる。一方この値が10以下のものは、
強度バラツキが大きくて材料としての信頼性を欠き、実
用にそぐわなくなる。
【0039】ここで、上記スカンジア安定化ジルコニア
セラミックスのグレイン粒子径は、その表面を走査型電
子顕微鏡で写真撮影し(10,000〜20,000
倍)、写真視野内の全グレイン粒子の大きさをノギスで
測定した値を元に、個々のデータを集計して求めた平均
径、最大径および変動係数をいう。なお、グレイン粒子
径をノギスで測定する際に、写真視野の端縁に位置する
グレイン粒子で粒子全体が現れていないものは測定対象
から外し、また、縦・横方向の寸法の異なるグレイン粒
子については、その長径と短径の平均値をその粒子径と
した。
【0040】また本発明で言う強度とは、JlS R1
601の規定に準拠し、導電率測定用のテストピースと
同様にして作製したテストピースを用いて測定した3点
曲げ強度を言い、高温耐久性とは、950℃で1000
時間以上保持した後に測定した高温強度の経時変化の小
さいものを言う。
【0041】この様に本発明の燃料電池用スカンジア安
定化ジルコニア電解質は、添加物として2A族、3A
族、4A族、5A族、7A族、8族、3B族および4B
族元素よりなる群から選択される少なくとも1種の元素
を含む複合酸化物の少なくとも1種を、スカンジア安定
化ジルコニアに対し0.01〜5質量%添加すること
で、スカンジア安定化ジルコニア電解質の導電率の経時
変化が抑えられると共に、耐久性や常温強度、高温耐久
性において一層優れたものとなるので、固体酸化物型燃
料電池の固体電解質として極めて有用なものとなる。
【0042】中でも、前記複合酸化物としてLaAlO
3、MgAl24、Al2TiO5よりなる群から選ばれ
る少なくとも1種を使用した本発明の燃料電池用スカン
ジア安定化ジルコニア電解質は、それらの複合酸化物が
含まれていないものに比べて初期導電率の低下率が非常
に小さく、導電率の経時安定性にも優れているので、例
えば0.01〜0.5mm程度の薄膜シート状とするこ
とにより、燃料電池の固体電解質膜用として極めて優れ
た性能を発揮する。
【0043】こうした優れた特性を有する本発明に係る
燃料電池用スカンジア安定化ジルコニア電解質の原料と
なる粉末は、市販のスカンジア安定化ジルコニア粉末に
前記特定元素の複合酸化物粉末をそのまま添加混合して
原料粉末としてもよいし、アルコキシドや硝酸塩、炭酸
塩などの水溶液等の形で市販ジルコニア粉末に添加し、
必要によっては更に他の添加物などと共に配合し、加水
分解・濾過・洗浄・仮焼・混合粉砕などの処理を施して
原料粉末としてもよい。
【0044】この原料粉末の粉体としての好ましい粒度
分布は、平均粒子径が0.3〜3μm、好ましくは0.
5〜1.5μmで、比表面積は3〜30m2/g、好ま
しくは5〜15m2/gである。
【0045】特に、混合粉砕後さらに噴霧乾燥してから
造粒し、10〜100μm程度の顆粒状とした原料粉末
は、その後に成形・焼成したセラミックスとしての密度
を理論密度の95%以上、好ましくは97%以上、更に
好ましくは98%以上にまで高めるのに好適である。
【0046】噴霧乾燥する場合は、上記粉砕混合したジ
ルコニア粉末をそのままスプレードライ等により噴霧乾
燥してもよいが、噴霧乾燥する際にバインダー成分
(A)を添加し、それを噴霧乾燥してバインダーを含む
顆粒状としたものを原料粉末として使用すれば、成形性
や焼結性を更に高めることができるので好ましい。
【0047】ここで用いられるバインダー(A)の種類
に格段の制限はないが、水溶性のものが好ましく、従来
から知られた有機質もしくは無機質のバインダーを適宜
選択して使用できる。上記バインダー(A)のうち、有
機質バインダーの具体例としては、例えばエチレン系共
重合体、スチレン系共重合体、アクリレート系及びメタ
クリレート系共重合体、酢酸ビニル系共重合体、マレイ
ン酸系共重合体、ビニルブチラール系樹脂、ビニルアセ
タール系樹脂、ビニルホルマール系樹脂、ビニルアルコ
ール系樹脂、ワックス類、エチルセルロース等のセルロ
ース類が例示され、また、無機質バインダーの具体例と
しては、ジルコニアゾル、チタニアゾル等が単独で若し
くは2種以上を混合して使用できる。これらのバインダ
ーは、単独で使用し得る他、必要により2種以上を混合
して使用することも勿論可能である。
【0048】該バインダー(A)の好ましい配合量は、
スカンジア安定化ジルコニア粉末と前記添加複合酸化物
との合計量100質量部に対し、バインダーの固形分換
算で0.5質量部以上、10質量部以下、より好ましく
は1質量部以上、5質量部以下である。この様にして調
製されたジルコニア粉末を含む顆粒状の原料粉末は、プ
レス成形用原料として好適に使用できる。
【0049】本発明に係る燃料電池用スカンジア安定化
ジルコニア電解質の製法は特に制限されず、上記の様に
して調製したスカンジア安定化ジルコニア粉末を使用
し、金型やラバーを用いたプレス成形法、押出成形法、
ドクターブレードによるシート成形法、支持基体へのス
ラリーコート法や蒸着法等によって成膜し、焼成する方
法が採用される。
【0050】特に10〜200μmの薄膜シート状物を
製造するには、ドクターブレード法によるシート成形が
好適であり、前述した特定の複合酸化物が配合されたス
カンジア安定化ジルコニア原料粉末とバインダー(B)
および分散媒からなるスラリーをキャリアフィルム上に
敷き延べてシート状に成形し、これを乾燥し分散媒を揮
発させることによってグリーンシートを得、これを切
断、パンチング等により適当な寸法に揃えてから焼成す
ればよい。
【0051】焼成は、上記の様な方法で成形したグリー
ンシートあるいはスラリーコート体を棚板や多孔質セッ
ター上に載置し、1300〜1600℃、好ましくは1
350〜1500℃程度、最も一般的には1400〜1
450℃で1〜5時間程度加熱することによって行なわ
れる。
【0052】シート状の該ジルコニアセラミックスは、
高度の熱的、機械的、電気的、化学的特性を有してお
り、燃料電池の固体電解質膜用として実用化する場合
は、要求強度を満たしつつ通電ロスを可及的に抑えるた
め、シート厚さを0.01mm以上、より好ましくは
0.02mm以上で、0.6mm以下、より好ましくは
0.3mm以下、更に好ましくは0.2mm以下とする
のが良い。
【0053】大きさは特に制限されないが、実用規模で
十分な発電容量の燃料電池システムを得るには、50c
2以上、好ましくは100cm2以上の寸法とすること
が望ましい。
【0054】またシートの形状は、正方形や長方形、円
盤状、もしくは中央部に穴が形成されたドーナツ状が一
般的であるが、これらに限定される理由はなく、他の任
意の多角形状や穴明き多角形状など、どの様な形状であ
っても構わない。また、シート形状以外にも、円筒状や
一方が封じられた円筒状、ハニカム状、コルゲート状、
ディンプル状の如き3次元形状のものであっても有効に
使用できる。
【0055】上記スラリーに配合されるバインダー
(B)の種類にも格別の制限はなく、従来から知られた
有機質もしくは無機質のバインダーを適宜選択して使用
することができる。有機質バインダーとしては、例えば
エチレン系共重合体、スチレン系共重合体、アクリレー
ト系及びメタクリレート系共重合体、酢酸ビニル系共重
合体、マレイン酸系共重合体、ビニルブチラール系樹
脂、ビニルアセタール系樹脂、ビニルホルマール系樹
脂、ビニルアルコール系樹脂、ワックス類、エチルセル
ロース等のセルロース類等が例示される。
【0056】これらの中でも未焼成ジルコニア系成形体
を得る際の成形性や強度、焼成時の熱分解性等の点か
ら、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピ
ルアクリレート、ブチルアクリレート、イソブチルアク
リレート、シクロヘキシルアクリレート、2−エチルヘ
キシルアクリレート等の炭素数10以下のアルキル基を
有するアルキルアクリレート類;メチルメタクリレー
ト、エチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、イ
ソブチルメタクリレート、オクチルメタクリレート、2
−エチルヘキシルメタクリレート、デシルメタクリレー
ト、ドデシルメタクリレート、ラウリルメタクリレー
ト、シクロヘキシルメタクリレート等の炭素数20以下
のアルキル基を有するアルキルメタクリレート類;ヒド
ロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリ
レート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシ
プロピルメタクリレート等のヒドロキシアルキル基を有
するヒドロキシアルキルアクリレートまたはヒドロキシ
アルキルメタクリレート類;ジメチルアミノエチルアク
リレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート等のア
ミノアルキルアクリレートまたはアミノアルキルメタク
リレート類;(メタ)アクリル酸、マレイン酸、モノイ
ソプロピルマレートの如きマレイン酸半エステル等のカ
ルボキシル基含有モノマー;などの少なくとも1種を重
合または共重合させることによって得られる、数平均分
子量が20,000〜200,000、より好ましくは
50,000〜100,000の(メタ)アクリレート
系共重合体が好ましいものとして推奨される。
【0057】これらの有機質バインダーは、単独で使用
し得る他、必要により2種以上を適宜組み合わせて使用
することができる。特に好ましいのはイソブチルメタク
リレートおよび/または2−エチルヘキシルメタクリレ
ートを60質量%以上含むモノマーの重合体である。
【0058】また無機質バインダーとしては、ジルコニ
アゾル、シリカゾル、チタニアゾル等が単独で若しくは
2種以上組み合わせて使用できる。
【0059】ジルコニア系原料粉末とバインダーの使用
比率は、前者100質量部に対して後者5〜30質量
部、より好ましくは10〜20質量部の範囲が好適であ
り、バインダーの使用量が不足する場合は、成形体の強
度や柔軟性が不十分となり、逆に多過ぎると、スラリー
の粘度調節が困難になるばかりでなく、焼成時のバイン
ダー成分の分解放出が多く且つ激しくなって均質な焼結
体が得られ難くなる。
【0060】この様にして得られるジルコニア粉末を含
むスラリーは、ドクターブレード法によって好適にシー
ト成形することができる。
【0061】また未焼成ジルコニア成形体の製造に使用
される溶媒としては、水;メタノール、エタノール、2
−プロパノール、1−ブタノール、1−ヘキサノール等
のアルコール類;アセトン、2−ブタノン等のケトン
類;ペンタン、ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素
類;ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等
の芳香族炭化水素類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブ
チル等の酢酸エステル類等が適宜選択して使用される。
これらの溶媒も単独で使用し得る他、2種以上を適宜混
合して使用することができる。これら溶媒の使用量は、
グリーンシート成形時におけるスラリーの粘度を加味し
て適当に調節すればよいが、好ましくはスラリー粘度が
1〜10Pa・s、より好ましくは2〜5Pa・sの範囲となる
様に調整するのがよい。
【0062】上記スラリーの調製に当たっては、ジルコ
ニア系原料粉末の解膠や分散を促進するため、ポリアク
リル酸、ポリアクリル酸アンモニウム等の高分子電解
質、クエン酸、酒石酸等の有機酸、イソブチレンまたは
スチレンと無水マレイン酸との共重合体およびそのアン
モニウム塩あるいはアミン塩、ブタジエンと無水マレイ
ン酸との共重合体およびそのアンモニウム塩等の分散
剤;未焼成成形体(グリーンシート)に柔軟性を付与す
るためのフタル酸ジブチル、フタル酸ジオクチル等のフ
タル酸エステル類、プロピレングリコール等のグリコー
ル類やグリコールエーテル類などの可塑剤;更には界面
活性剤や消泡剤などを必要に応じて添加することができ
る。
【0063】上記原料配合からなるスラリーを前述の様
な方法で成形し、乾燥してジルコニア系グリーン体を得
た後、これを加熱焼成することによって本発明のスカン
ジア安定化ジルコニア電解質を得る。
【0064】この焼成工程では、反りやうねり等の変形
を生じることなく平坦度の高い薄肉シート状の焼結体を
得るための手段として、該グリーンシート以上の面積を
有し、JIS K7125(1987)で規定されてい
る「プラスチックフィルムおよびシートの摩擦係数試験
方法」に準拠して測定される静摩擦係数が1.5以下
で、通気性が0.0005m/s・kPa以上である多孔質シ
ートの間に、前記グリーンシートを、その周縁がはみ出
さない様に挟み込んで焼成し、あるいは上記多孔質シー
トを前記グリーンシートの周縁がはみ出さない様に載せ
てから焼成を行なうことが望ましい。
【0065】
【実施例】以下、実施例及び比較例を挙げて本発明をよ
り具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例に
よって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適
合し得る範囲で適当に変更して実施することも可能であ
り、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含され
る。
【0066】実施例1 4.5モル%スカンジア部分安定化ジルコニア粉末(第
一稀元素化学社製:商品名「4.5ScSZ」)100
質量部に、比表面積が17m2/gで平均粒子径が0.
35μmのアルミニウムマグネシウムスピネル(岩谷化
学工業社製:商品名「SP−12」)0.5質量部を添
加し、この混合粉末(A)100質量部に対し、水70
質量部と、エチルアクリレートを主成分とする水溶性ア
クリレート共重合体からなるバインダーを固形分換算で
5質量部加え、ボールミルで20時間分散混合した後、
得られたスラリーをスプレードライ法により噴霧乾燥す
ることにより、バインダー添加0.5質量%MgAl2
4分散4.5モル%スカンジア部分安定化ジルコニア
粉末(B)を得た。該粉末のシリカ含量は0.003質
量%、酸化ナトリウム含量は0.001質量%であっ
た。
【0067】得られたジルコニア粉末(B)を用いて、
ラバープレス法により1000kg/cm2の圧力で板
状に成形した後、1430℃で3時間焼成し、1辺が約
50mmの正方形で、厚さが0.5mmのMgAl24
を0.5質量含有する4.5モル%スカンジア部分安定
化ジルコニアシート(I)を得た。このシート焼結体の
密度は理論密度の98.5%であった。
【0068】また、上記で得た混合粉末(A)100質
量部を、メタクリル酸エステル共重合体からなるバイン
ダー(分子量:30,000、ガラス転移温度:−8
℃)を固形分換算で14質量部、可塑剤としてジブチル
フタレート2質量部、分散媒としてトルエン/イソプロ
ピルアルコール(質量比:3/2)の混合溶剤50質量
部と共に、直径5mmのジルコニアボールが装入された
ナイロンポットに入れ、臨界速度の70%の約60rp
mで40時間混練してスラリーを調製した。
【0069】このスラリーの一部を採取し、トルエン/
イソプロピルアルコール(質量比:3/2)の混合溶剤
で希釈して、島津製作所製のレーザー回折式粒度分布測
定装置「SALD−1000」を用いて、スラリー中の
固形成分の粒度分布を測定したところ、平均粒子径(5
0体積%径)は0.54μm、90体積%径は1.71
μm、限界粒子径(100体積%径)は4.06μmで
あった。
【0070】このスラリーを濃縮脱泡してから粘度を3
Pa・s(23℃)に調整し、最後に200メッシュの
フィルターに通してから、ドクターブレード法によりポ
リエチレンテレフタレート(PET)フィルム上に塗工
し、厚さ約0.13mmのグリーンシートを得た。この
グリーンシートを1辺が約125mmの正方形に切断
し、その上下をウネリ最大高さが10μmの99.5%
アルミナ多孔質板で挟んで脱脂した後、1400℃で3
時間焼成し、1辺が約100mmの正方形で、厚さが
0.1mmのMgAl24を0.5質量%含む燃料電池
用の4.5モル%スカンジア部分安定化ジルコニアシー
ト(II)を得た。
【0071】上記ジルコニアシート(I)と(II)を、
ダイヤモンドカッターで幅5mm、長さ50mmの短冊
状に切断して導電率測定用と3点曲げ強度測定用のテス
トピースとし、これを950℃および750℃に保持し
た電気炉中に500時間、1000時間、2000時間
および3000時間曝した後、導電率と3点曲げ強度を
測定した。
【0072】導電率の測定は、上記温度に曝されたテス
トピースに直径0.2mmの白金線を1cm間隔で4ヵ
所巻付け、白金ペーストを塗ってから100℃で乾燥・
固定して電流・電圧端子とし、白金線がテストピースに
密着する様に白金線を巻いたテストピースの両端をアル
ミナ板で挟み、上から約500gの加重をかけた状態
で、外側の2端子に0.1mAの一定電流を流し、内側
の2端子の電圧をデジタルマルチメーター(アドバンテ
スト社製:商品名「TR6845型」)を用いて、直流
4端子法により測定した。
【0073】導電率の耐久安定性は、初期の導電率と所
定時間後の導電率の経時変化を測定し、その比から下記
式 導電率の劣化率={(初期導電率−所定時間保持後の導
電率)/初期導電率}×100(%) によって求めた。
【0074】曲げ強度の測定は、JIS R1601に
準拠し、高温に曝されたテストピースを室温で測定し、
初期の曲げ強度と所定時間後の曲げ強度との比から下記
式 強度劣化率={(初期強度−所定時間保持後の強度)/
初期強度}×100(%) によって求めた。
【0075】更に、得られた燃料電池用のジルコニアシ
ート(I)と(II)の組成をICP発光分析法によって
測定し、表1に示す結果を得た。
【0076】実施例2 硝酸ランタン塩の水溶液と硝酸アルミニウム塩の水溶液
を、La/Al比で1.02となる様に混合し、アンモ
ニア水で共沈させて水酸化物を得、これを乾燥してから
800℃で仮焼し、次いで粉砕して再度1200℃で焼
成することにより、ランタンアルミネート粉末を得た。
該粉末の比表面積は12m2/gであった。
【0077】4.0モル%スカンジア部分安定化ジルコ
ニア粉末(第一稀元素社製:商品名「4ScSZ」)1
00質量部に、上記で得たランタンアルミネート粉末を
1.0質量部、水60質量部および、前記実施例1で用
いたのと同じバインダー(日本触媒社製:商品名「AT
−502」)1質量部を加え、ボールミルで20時間分
散混合した後、スプレードライで噴霧乾燥することによ
り、本発明に係る燃料電池用のバインダー添加LaAl
3分散4.0モル%スカンジア部分安定化ジルコニア
粉末(C)を得た。該粉末のシリカ含量は0.002質
量%、酸化ナトリウム含量は0.001質量%であっ
た。
【0078】この粉末(C)を用いて、前記実施例1と
同様にしてラバープレスにより板状にしてから焼成し、
1辺が約50mmの正方形で厚さが0.5mmのLaA
lO 3を1.0質量%含有する燃料電池用の4.0モル
%スカンジア部分安定化ジルコニアシート(III)を得
た。このシート焼成体の密度は、理論密度の97.6%
であった。
【0079】このシートを用いて、前記実施例1と同様
にテストピースを作成し、導電率と3点曲げ強度の耐久
安定性を求め、表1に示す結果を得た。
【0080】実施例3 スカンジアで安定化されていないジルコニア粉末(住友
大阪セメント社製:商品名「OZC−0」)に対し、酸
化スカンジウム粉末(三津和化学社製:試薬99.9
%)を8モル%になる様に添加して混合し、該混合粉末
100質量部に対して、更にチタン酸アルミニウム粉末
を1.5質量%添加して合計2Kgの粉末を得、この粉
末を純水3Kgと共に0.5mm系のジルコニアボール
の入ったビーズミル(コトブキ技研工業社製:商品名
「アペックスミルAM−1」)に入れ、ローター先端周
速度が7m/秒で1時間湿式粉砕した。
【0081】得られたスラリーをロータリーエバーポレ
ータに入れ、更に等量のオクチルアルコールを入れて、
加熱減圧しながら水を流出させてオクチルアルコール置
換スラリーを得た。このスラリーを更に加熱減圧してオ
クチルアルコールを流出させた後、減圧乾燥することに
より、本発明に係る燃料電池用のAl2TiO51.5質
量%分散8.0モル%スカンジア安定化ジルコニア粉末
(D)を得た。該粉末のシリカ含量は0.002質量
%、酸化ナトリウム含量は0.001質量%であった。
【0082】この粉末を用いて、125Kg/cm2
圧力で前記実施例1と同様にラバープレスによって板状
に成形してから1450℃で焼成し、1辺が約50mm
の正方形で、厚さ0.5mmの燃料電池用Al2TiO5
1.5質量%含有8.0モル%スカンジア安定化ジルコ
ニアシート(IV)を得た。このシート焼成体の密度は、
理論密度の97.0%であった。
【0083】このシートを用いて、前記実施例1と同様
にしてテストピースを作成し、導電率と3点曲げ強度の
耐久安定性を求め、表1に示す結果を得た。
【0084】
【表1】
【0085】比較例1 4.5モル%スカンジア部分安定化ジルコニア粉末(第
一稀元素化学社製:商品名「4.5ScSZ」)100
質量部に対して、水70質量部、エチルアクリレートを
主成分とする水溶性アクリレート共重合体からなるバイ
ンダー(日本触媒社製:商品名「AT−502」)を固
形分換算で5質量部加え、ボールミルで20時間分散混
合した後、得られたスラリーをスプレードライによって
噴霧乾燥することにより、バインダー添加4.5モル%
スカンジア部分安定化ジルコニア粉末(a)を得た。該
粉末のシリカ含量は0.004質量%、酸化ナトリウム
含量は0.001質量%であった。
【0086】上記で得た粉末(a)を使用し、ラバープ
レスにより1000kg/cm2の圧力で板状に成形し
た後、1400℃で3時間焼成して、1辺が約50mm
の正方形で、厚さ0.5mmの燃料電池用の4.5モル
%スカンジア部分安定化ジルコニアシート(i)を得
た。このシート焼結体の密度は理論密度の98.5%で
あった。このシートを用いて前記実施例1と同様にして
テストピースを作成し、導電率と3点曲げ強度の耐久安
定性を求め、表2に示す結果を得た。
【0087】比較例2 4.5モル%スカンジア部分安定化ジルコニア粉末(第
一稀元素化学社製:商品名「4.5ScSZ」)100
質量部に、比表面積が17m2/gで、平均粒子径が
0.35μmのアルミニウムマグネシウムスピネル(岩
谷産業社製:商品名「SP−12」)を8.0質量部添
加した以外は前記実施例1と同様にして、MgAl24
が8質量%分散した4.5%スカンジア部分安定化ジル
コニア粉末(A)を得た。該粉末のシリカ含量は0.0
03質量%、酸化ナトリウム含量は0.001質量%で
あった。
【0088】この粉末(A)100質量部に対し、水7
0質量部と、エチルアクリレートを主成分とする水溶性
アクリレート共重合体からなるバインダー(日本触媒社
製:商品名「AT−502」)を固形分換算で5質量部
加え、ボールミルで20時間分散混合した後、得られた
スラリーをスプレードライによって噴霧乾燥することに
より、バインダー添加8.0質量%MgAl24分散
4.5モル%スカンジア部分安定化ジルコニア粉末
(b)を得た。
【0089】得られたジルコニア粉末(b)を用いて、
ラバープレスにより1000kg/cm2の圧力で板状
に成形した後、1400℃で3時間焼成して、1辺が約
50mmの正方形で、厚さ0.5mmの燃料電池用のM
gAl248.0質量%含有4.5モル%スカンジア部
分安定化ジルコニアシート(ii)を得た。このシート焼
結体の密度は理論密度の96.0%であった。このシー
トを用いて前記実施例1と同様にしてテストピースを作
成し、導電率と3点曲げ強度の耐久安定性を求め、表2
に示す結果を得た。
【0090】
【表2】
【0091】
【発明の効果】本発明は以上の様に構成されており、ス
カンジア安定化ジルコニア電解質に特定の複合酸化物を
含有させることによって、この種のジルコニア系セラミ
ックスに欠けていた高温条件下でのイオン導電性の長期
安定性を改善すると共に、強度持続性にも優れた燃料電
池用のスカンジア安定化ジルコニア電解質を提供し得る
ことになった。
【0092】そして、この燃料電池用スカンジア安定化
ジルコニア電解質は、その優れたイオン導電性と安定
性、および強度持続性を活かし、燃料電池用の酸化物形
固体電解質膜として有効に活用できる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 相川 規一 兵庫県姫路市網干区興浜字西沖992番地の 1 株式会社日本触媒内 (72)発明者 水谷 安伸 愛知県東海市新宝町507−2 東邦瓦斯株 式会社内 (72)発明者 鵜飼 健司 愛知県東海市新宝町507−2 東邦瓦斯株 式会社内 Fターム(参考) 4G048 AA03 AB02 AB05 AC06 AE05 5G301 CA30 CD01 5H026 AA06 BB08 EE12 EE13 HH05

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 スカンジア安定化ジルコニアにおいて、
    更に2A族、3A族、4A族、5A族、7A族、8族、
    3B族および4B族元素よりなる群から選択される少な
    くとも1種の元素を含む複合酸化物の少なくとも1種
    を、スカンジア安定化ジルコニアに対し0.01〜5質
    量%含有することを特徴とする固体酸化物型燃料電池用
    スカンジア安定化ジルコニア電解質。
  2. 【請求項2】 前記複合酸化物が、アルミニウムおよび
    /またはチタニウム元素を含むものである請求項1に記
    載のスカンジア安定化ジルコニア電解質。
  3. 【請求項3】 前記スカンジア安定化ジルコニアが、3
    〜15モル%のスカンジアで安定化されると共に、前記
    複合酸化物としてLaAlO3、MgAl2 4およびA
    2TiO5よりなる群から選択される少なくとも1種の
    複合酸化物を含有するものである請求項2に記載のスカ
    ンジア安定化ジルコニア電解質。
  4. 【請求項4】 酸化ケイ素および/またはアルカリ金属
    酸化物の含有量が、それぞれ0.1質量%以下である請
    求項1〜3のいずれかに記載のスカンジア安定化ジルコ
    ニア電解質。
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