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JP2003077533A - 非水二次電池および非水電解液 - Google Patents

非水二次電池および非水電解液

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JP2003077533A
JP2003077533A JP2001263231A JP2001263231A JP2003077533A JP 2003077533 A JP2003077533 A JP 2003077533A JP 2001263231 A JP2001263231 A JP 2001263231A JP 2001263231 A JP2001263231 A JP 2001263231A JP 2003077533 A JP2003077533 A JP 2003077533A
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房次 喜多
Hideo Sakata
英郎 坂田
Haruki Kamisori
春樹 上剃
Koji Abe
浩司 安部
Akira Ueki
明 植木
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Ube Industries Ltd
Hitachi Maxell Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 過充電時の安全性が高く、かつ高温貯蔵特性
が優れた非水二次電池とそれに用いる非水電解液を提供
する。 【解決手段】 金属酸化物を正極活物質とし、炭素材料
またはLi挿入可能な負極活物質とし、非水電解液を用
いた非水二次電池において、ベンゼン環にアルキル基が
結合した化合物(A)とスルフィド化合物または分解物
(B)を電池内に含有させ、スルフィド化合物または分
解物(B)の含有量をスルフィド化合物換算でベンゼン
環にアルキル基が結合した化合物(A)の含有量に対し
て10重量%以下にする。上記化合物(A)とスルフィ
ド化合物を非水電解液中に含有させ、上記化合物(A)
の含有量を3〜7重量%にすることが好ましい。そし
て、この非水二次電池は角形電池またはラミネート電池
に適用することが好ましい。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、非水二次電池およ
び非水電解液に関し、さらに詳しくは、過充電時の安全
性が高く、かつ高温貯蔵特性が優れた非水二次電池と、
そのような非水二次電池に用いる非水電解液に関する。
【0002】
【従来の技術】正極活物質として金属酸化物を用い、負
極活物質として炭素材料を用いたリチウムイオン電池に
代表される非水二次電池は、高電圧、高エネルギー密度
であることからその需要がますます増えている。しか
し、高エネルギー密度になるにつれて安全性が低下して
いくため、安全性の向上も高エネルギー密度の電池では
より必要になる。また、通常の安全対策ではエネルギー
密度が低下する傾向にあるため、エネルギー密度を維持
した状態で安全性を改善することが要望されている。
【0003】上記のような要望に応えるべく、これまで
にも、高電圧で重合し過充電時の安全性を向上させる化
合物としてビフェニル(特開平9−171840号公
報)やシクロヘキシルベンゼン(特開2001−015
155公報)が提案されている。これらの添加剤は過充
電時にガスを発生して電流遮断弁を作動させやすくし、
電流遮断弁との併用によって安全性を確保するものであ
る。
【0004】しかしながら、角形電池では、通常、電流
遮断弁が設置されていないため、それらの添加剤による
安全性向上効果は、電流遮断弁を有する円筒形電池に比
べて充分とはいえなかった。例えば、本発明者らが検討
したところでは、少量つまり2重量%程度の添加では過
充電時の安全性を向上させる効果が少なく、また、充電
状態では添加剤そのものの安定性が充分でないため、電
池を高温で長時間放置しておくと、正極と電解液とが反
応して電解液が分解し、その電解液の分解によって発生
するガスにより電池に膨れが生じたり、内部抵抗が上昇
するという問題があった。
【0005】上記のように電解液の分解が生じ、電池内
部にガスが発生した場合、円筒形電池では外装材として
の電池ケースの耐圧性が優れているので、電池内圧の上
昇でとどまるものの、角形電池やラミネート電池(アル
ミニウム箔などの金属箔を芯材とするラミネートフィル
ムで外装した電池)では、外装材の耐圧性が充分でない
ため、電池にふくれ(膨れ)が生じて、電池の外形寸法
が変化し、そのため電池が所定のスペース内に収まり切
らなくなったり、外観を損なうことになる。したがっ
て、貯蔵時のガス発生が少なく、かつ過充電時の安全性
を向上できる手段の確立が望まれる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記のよう
な非水二次電池における問題点を解決し、過充電時の安
全性が高く、かつ高温貯蔵時のガス発生が少なく、高温
貯蔵特性が優れた非水二次電池と、そのような非水二次
電池に用いる非水電解液を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明は、金属酸化物を
正極活物質とし、炭素材料またはLi挿入可能な材料を
負極活物質とし、非水電解液を用いた非水二次電池にお
いて、ベンゼン環にアルキル基が結合した化合物(A)
とスルフィド化合物またはその分解物(B)とを電池内
に含有させ、スルフィド化合物またはその分解物(B)
の含有量をスルフィド化合物換算でベンゼン環にアルキ
ル基が結合した化合物(A)の含有量の0.1〜10重
量%にすることによって、過充電時の安全性を高め、か
つ高温貯蔵時のガス発生を抑制して、上記課題を解決し
たものである。
【0008】また、本発明は、金属酸化物を正極活物質
とし、炭素材料またはLi挿入可能な材料を負極活物質
とし、非水電解液を用いた非水二次電池において、上記
非水電解液として、ベンゼン環にアルキル基が結合した
化合物(A)と該化合物(A)の0.1〜10重量%の
スルフィド化合物とを含有する非水電解液を用いること
を好ましい態様とするものである。
【0009】さらに、本発明は、上記非水二次電池に用
いる非水電解液として、非水溶媒に電解質塩を溶解した
非水電解液であって、ベンゼン環にアルキル基が結合し
た化合物(A)と該化合物(A)の0.1〜10重量%
のスルフィド化合物とを含有させた非水電解液を提供す
るものである。
【0010】
【発明の実施の形態】本発明は、電池内にベンゼン環に
アルキル基が結合した化合物(A)とスルフィド化合物
またはその分解物(B)を特定の比率で含有させたこと
に特徴があることから、これらのベンゼン環にアルキル
基が結合した化合物(A)とスルフィド化合物またはそ
の分解物(B)から先に詳しく説明する。
【0011】本発明において、ベンゼン環にアルキル基
が結合した化合物(A)は過充電時の安全性の向上に寄
与するものであるが、このベンゼン環にアルキル基が結
合した化合物(A)としては、例えばシクロヘキシルベ
ンゼン、イソプロピルベンゼン、n−ブチルベンゼン、
オクチルベンゼン、トルエン、キシレンなどが具体例と
して挙げられるが、特に前記アルキル基において、ベン
ゼン環と直接結合している炭素原子が少なくとも1個の
水素原子と結合していることが、過充電時の安全性向上
には好ましい。また、前記アルキル基は、炭素数が4以
上とある程度長いことが好ましく、分岐構造などで立体
的にかさばる構造のものであることが好ましい。このよ
うな理由から、ベンゼン環にアルキル基が結合した化合
物(A)としては、特にシクロヘキシルベンゼンが好ま
しい。
【0012】また、スルフィド化合物またはその分解物
(B)のうちスルフィド化合物としては、例えば、ジフ
ェニルジスルフィド(C6 5 −S−S−C6 5 )、
フェニルサルファイド(C6 5 −S−C6 5 )、フ
ェニルジチアン(C6 5 −C4 2 7 )、ブチルサ
ルファイド(C4 9 −S−C4 9 )、ジフェニルチ
オカーボネート〔(C6 5 S)2 C=O〕、C6 5
S−C(O)−OR(R=CH3 、C2 5 )など二価
のイオウを含む化合物が好ましく、特に芳香族ジスルフ
ィドが好ましく、ジフェニルジスルフィドが最も好まし
い。また、スルフィド化合物の分解物としては、正極の
表面でイオウ化合物として存在することが好ましく、特
に0〜2価のイオウ化合物として存在することが好まし
い。
【0013】スルフィド化合物の作用については、現在
のところ必ずしも明確ではないが、以下のように推定さ
れる。すなわち、スルフィド化合物は、ベンゼン環にア
ルキル基が結合した化合物(A)に対して少量混合され
ることによって、正極の活性部位と反応し、ベンゼン環
にアルキル基が結合した化合物(A)が必要以上に正極
上で反応するのを抑制することができるものと考えられ
る。スルフィド化合物またはその分解物(B)のベンゼ
ン環にアルキル基が結合した化合物(A)に対する比率
が多くなりすぎると、ベンゼン環にアルキル基が結合し
た化合物(A)の効果が生じにくくなるほか、スルフィ
ド化合物自体も電池の膨れやインピーダンスの上昇など
を引き起こすようになるので、本発明においては、スル
フィド化合物またはその分解物(B)のベンゼン環にア
ルキル基が結合した化合物(A)に対する重量比率をス
ルフィド化合物換算で10%以下にすることが必要であ
り、5%以下にすることが好ましく、3%以下にするこ
とがより好ましい。言い換えると、電池内におけるスル
フィド化合物またはその分解物(B)の含有量をスルフ
ィド化合物換算でベンゼン環にアルキル基が結合した化
合物(A)の含有量の10重量%以下にすることが必要
であり、5重量%以下にすることがより好ましく、3重
量%以下にすることがより好ましい。
【0014】その一方で、スルフィド化合物またはその
分解物(B)の効果を適切に発現させるには、スルフィ
ド化合物またはその分解物(B)のベンゼン環にアルキ
ル基が結合した化合物(A)に対する重量比率はスルフ
ィド化合物換算で0.1%以上にすることが必要であ
る。すなわち、スルフィド化合物またはその分解物
(B)の含有量をスルフィド化合物換算でベンゼン環に
アルキル基が結合した化合物(A)の含有量の0.1重
量%以上にすることが必要である。
【0015】ベンゼン環にアルキル基が結合した化合物
(A)およびスルフィド化合物またはその分解物(B)
は、いずれも、電池内であれば、特に含有させる場所に
ついて限定されることはないが、上記化合物(A)とス
ルフィド化合物とを非水電解液(以下、簡略化して「電
解液」という)中に含有させることが最も適している。
すなわち、ベンゼン環にアルキル基が結合した化合物
(A)と該化合物(A)の0.1〜10重量%のスルフ
ィド化合物とを含有させた非水電解液を用いて非水二次
電池を構成することが好ましい。これは、たとえベンゼ
ン環にアルキル基が結合した化合物(A)やスルフィド
化合物を正極や負極に含有させたとしても、それらは一
旦電解液中に溶出し、そこから正極または負極に対して
作用していくものと考えられるからである。
【0016】上記ベンゼン環にアルキル基が結合した化
合物(A)およびスルフィド化合物を電解液中に含有さ
せる場合、ベンゼン環にアルキル基が結合した化合物
(A)の含有量は、電解液中で1重量%以上が好まし
く、3重量%以上がより好ましく、4重量%以上がさら
に好ましく、また10重量%以下が好ましく、7重量%
以下がより好ましく、6重量%以下がさらに好ましい。
【0017】これらのベンゼン環にアルキル基が結合し
た化合物(A)やスルフィド化合物の一部は、電池組立
後に充放電を行うことにより、別の化合物へと変化する
ため、通常、電池内での含有量は仕込量より少なくな
る。特に、スルフィド化合物の減少割合は大きく、数回
の充放電を繰り返した後では、元の化合物の形ではほと
んど残存せず、その分解物のみとなることもあり得る
が、そのような場合でも、本発明の目的は充分に達成す
ることができる。したがって、本発明において、ベンゼ
ン環にアルキル基が結合した化合物(A)やスルフィド
化合物の含有量は、電池組立後の充放電前に前記範囲内
にあればよく、充放電後においても、スルフィド化合物
の分解物を元のスルフィド化合物で換算して求まる含有
量が前記範囲内の含有量であればよい。
【0018】本発明において、電解液の調製にあたり、
その電解液溶媒としては、主として、例えば、エチレン
カーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカー
ボネート、ジメチルカーボネート、メチルエチルカーボ
ネート、ジエチルカーボネートなどの炭酸エステルや、
γ−ブチロラクトン、酢酸メチルなどのエステル類など
を用いることができる。また、それ以外に、1,3−ジ
オキソラン、1,2−ジメトキシエタンなどのエーテル
類、スルホランなどの硫黄化合物、含窒素化合物、含珪
素化合物、含フッ素化合物、含リン化合物などの有機溶
媒を単独でまたは2種以上混合して用いることができ
る。
【0019】電解液は、上記有機溶媒からなる非水溶媒
に後述するリチウム塩などの電解質塩を溶解させること
によって調製されるが、その電解液中に−SO2 結合を
有する化合物、特に−O−SO2 結合を有する溶媒を溶
解させておくことが好ましい。そのような−O−SO2
結合を有する溶媒としては、例えば、1,3−プロパン
スルトン、メチルエチルスルフォネート、ジエチルサル
フェートなどが挙げられる。その含有量は、電解液中に
0.5重量%以上が好ましく、1重量%以上がより好ま
しく、また10重量%以下が好ましく、5重量%以下が
より好ましい。
【0020】電解液の調製にあたって有機溶媒に溶解さ
せる電解質塩としては、例えば、LiPF6 、LiCl
4 、LiBF4 、LiAsF6 、LiCn 2n+1SO
3 (n≧1)、(Cm 2m+1SO2 )(Cn 2n+1SO
2 )NLi(m、n≧1)、(RfOSO2)2 NLi
〔Rfは炭素数が2以上のハロゲン化アルキル基で、R
fは同一であってもよいし、異なるものであってもよい
し、Rf同士が互いに結合していてもよく、例えばポリ
マー状に結合していてもよい。また、(CH2 (C
2 4 CH2 OSO2 N(Li)SO2 O)n (nは
整数)のようにポリマー状に結合していてもよい。〕な
どが挙げられ、特に限定されることではないが、LiP
6 や炭素数2以上の含フッ素有機リチウム塩などが好
ましい。そして、これらの電解質塩は上記の溶媒に対し
て通常0.1〜2mol/l程度溶解させることが好ま
しい。
【0021】また、上記電解液は、電池の作製にあたっ
て、液状で用いる以外に、ポリマーでゲル化してゲル状
で用いてもよい。そのような電解液のゲル化にあたって
は、例えば、ポリエチレンオキサイド、ポリアクリルニ
トリルなどの直鎖状ポリマーまたはそれらのコポリマ
ー、紫外線や電子線などの活性光線の照射によりポリマ
ー化する多官能ポリマー(例えば、ペンタエリスリトー
ルテトラアクリレート、ジトリメチロールプロパンテト
ラアクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテト
ラアクリレート、ジペンタエリスリトールヒドロキシペ
ンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアク
リレートなどの四官能以上のアクリレートおよび上記ア
クリレートと同様の四官能以上のメタクリレート)をポ
リマー化したポリマーなどが用いられる。
【0022】本発明において、正極活物質としては、金
属酸化物が用いられるが、そのような金属酸化物として
は、例えば、LiCoO2 などのリチウムコバルト酸化
物、LiMn2 4 などのリチウムマンガン酸化物、L
iNiO2 などのリチウムニッケル酸化物、LiNiO
2 のNiの一部をCoで置換したLiCox Ni1-x
2 (0<x<1)、二酸化マンガン、五酸化ハナジウ
ム、クロム酸化物などが挙げられるが、特にLiNiO
2 、LiCoO2 、LiMn2 4 、LiCoxNi
1-x 2 などのように充電されたときに正極の開路電圧
がLi基準で4.2V以上を示すリチウム複合酸化物が
好ましく、特にLi基準で4.3V以上を示すリチウム
複合酸化物が好ましい。
【0023】正極の作製にあたっては、上記正極活物質
以外にも、導電助剤とバインダーが用いられるが、その
導電助剤としては、種々のものを用い得るが、特に炭素
材料を用い、その正極合剤(つまり、正極活物質と導電
助剤とバインダーとの混合物)中の量を5重量%以下に
することが好ましい。これは正極合剤中における導電助
剤としての炭素材料の量が5重量%より多くなると、充
電状態で電解液との反応によりガスが発生するおそれが
あるからであり、そのため、導電助剤としての炭素材料
の量は、正極合剤中で3重量%以下にすることがより好
ましく、2.5重量%以下とすることがさらに好まし
く、また、少なすぎると正極の導電性が低下して電池特
性を低下させる傾向があるので、1重量%以上が好まし
く、1.5重量%以上がより好ましく、2重量%以上が
さらに好ましい。
【0024】そして、この正極の導電助剤の炭素材料と
しては、特に限定されることはないものの、結晶性の低
いカーボンブラックを用いると高温貯蔵時の電池の膨れ
を抑制できることから好ましく、また、この結晶性の低
いカーボンブラックに結晶性の高い黒鉛を一部併用する
と導電性が向上し、導電助剤の使用量を低減できること
から好ましい。このように、導電助剤として結晶性の低
いカーボンブラックと結晶性の高い黒鉛とを併用する場
合、結晶性の低いカーボンブラックの量を全導電助剤中
の50重量%以上にすることが好ましく、70重量%以
上にすることがより好ましく、また、95重量%以下に
することが好ましく、80重量%以下にすることがより
好ましい。なお、結晶性の判断が困難な場合、ラマンス
ペクトルの1540〜1600cm-1のピークの半値幅
100cm-1以上が低結晶性と考える。
【0025】また、正極を作製するにあたり、バインダ
ーとしては、特に限定されることはないものの、例え
ば、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレ
ン、ポリアクリル酸、スチレンブタジエンゴム、フッ素
ゴムなどが好適に用いられる。
【0026】正極は、上記正極活物質に導電助剤やバイ
ンダーなどを加え、混合して正極合剤を調製し、その正
極合剤を溶剤に分散させて正極合剤含有ペーストを調製
し(バインダーはあらかじめ溶剤に溶解または分散させ
ておいてから、正極活物質や導電助剤などと混合しても
よい)、その正極合剤含有ペーストをアルミニウム箔な
どからなる正極集電体に塗布し、乾燥して正極合剤層を
形成し、必要に応じて加圧成形する工程を経ることによ
って作製される。ただし、正極の作製方法は、上記例示
のものに限られることなく、他の方法によってもよい。
【0027】負極活物質として、炭素材料またはLi挿
入可能な材料などが用いられるが、その炭素材料として
は、例えば、黒鉛、熱分解炭素類、コークス類、ガラス
状炭素類、有機高分子化合物の焼成体、メソカーボンマ
イクロビーズ、炭素繊維、活性炭、グラファイト、炭素
コロイドなどが好適に用いられ、また、Li挿入可能な
材料としては、Liが挿入可能な金属酸化物や金属窒化
物などが挙げられ、そのLiが挿入可能な金属酸化物と
しては、例えば、スズやシリコンを含む金属酸化物(例
えば、Sn x 、SiOx など)などが好適に用いられ
る。
【0028】負極は、上記負極活物質に必要に応じて前
記正極の場合と同様のバインダーや導電助剤などを加
え、混合して負極合剤を調製し、その負極合剤を溶剤に
分散させて負極合剤含有ペーストを調製し(バインダー
はあらかじめ溶剤に溶解または分散させておいてから負
極活物質などと混合してもよい)、その負極合剤含有ペ
ーストを負極集電体に塗布し、乾燥して負極合剤層を形
成し、必要に応じて加圧成形する工程を経ることによっ
て作製される。ただし、負極の作製方法は、上記例示の
ものに限られることなく、他の方法によってもよい。
【0029】正極や負極の作製にあたって用いる集電体
としては、アルミニウム、銅、ニッケル、ステンレス鋼
などの箔、パンチングメタル、網、エキスパンドメタル
などが挙げられるが、正極集電体としてはアルミニウム
箔が特に好適に用いられ、負極集電体としては銅箔が特
に好適に用いられる。
【0030】本発明の非水二次電池の形態は、特に特定
のものに限られることなく、各種の形態を採用し得る
が、本発明は、従来技術では電流遮断弁を持たないため
に過充電時の安全性の確保が困難であったり、外装材の
強度面から高温貯蔵により電池膨れが生じやすかった角
形電池やラミネート電池においても、過充電時の安全性
を確保でき、かつ、高温貯蔵による電池膨れを抑制する
ことができるので、角形電池やラミネート電池に適用す
る場合に、その効果を特に顕著に発現する。
【0031】
【実施例】次に、実施例を挙げて本発明をより具体的に
説明する。ただし、本発明はそれらの実施例のみに限定
されるものではない。
【0032】実施例1 まず、LiPF6 をエチレンカーボネートに溶解させた
のち、メチルエチルカーボネートを加えて混合し、エチ
レンカーボネートとメチルエチルカーボネートとの体積
比が1:2の混合溶媒にLiPF6 を1.2mol/l
相当溶解させ、さらに添加剤としてシクロヘキシルベン
ゼン電解液を全体中の4重量%、ジフェニルジスルフィ
ド電解液を全体中の0.1重量%および1,3−プロパ
ンスルトンを全体中の2重量%になるように加えて溶解
させ、上記添加剤を含有する電解液を調製した。なお、
上記ジフェニルジスルフィドの含有量はシクロヘキシル
ベンゼンの含有量に対して2.5重量%であった。
【0033】正極の作製にあたっては、LiCoO2
3.5重量部にカーボンブラック2重量部と黒鉛〔ロン
ザ社製KS−6(商品名)〕0.5重量部を加えて混合
し、得られた混合物をあらかじめポリフッ化ビニリデン
4重量部をN−メチルピロリドンに溶解させておいた溶
液に加えて混合して正極合剤含有ペーストを調製した。
得られた正極合剤含有ペーストを厚さ15μmのアルミ
ニウム箔からなる正極集電体の両面に均一に塗布し(た
だし、作製後の正極をセパレータを介して負極と巻回し
た巻回構造の電極積層体において、負極と対向しない最
内周部の内面側となる部分には正極合剤含有ぺーストを
塗布しなかった)、乾燥して正極合剤層を形成し、その
後、ローラプレス機により加圧形成した後、所定の大き
さに切断し、リード体を溶接して、帯状の正極を作製し
た。なお、上記正極合剤中における導電助剤(カーボン
ブラックと黒鉛)の量は2.5重量%であった。
【0034】上記とは別に、メソカーボンマイクロビー
ズ95重量部を、あらかじめポリフッ化ビニリデン5重
量部をN−メチルピロリドンに溶解させておいた溶液に
加えて混合して負極合剤含有ペーストを調製した。得ら
れた負極合剤含有ペーストを厚さ10μmの銅箔からな
る負極集電体の両面に塗布し(ただし、作製後の負極を
セパレータと介して正極と巻回した巻回構造の電極積層
体において、正極と対向しない最外周部の外面側には負
極合剤含有ペーストを塗布しなかった)、乾燥して負極
合剤層を形成し、その後、ローラープレス機により加圧
成形した後、所定の大きさに切断し、リード体を溶接し
て、帯状の負極を作製した。
【0035】つぎに、上記の正極と負極のそれぞれに集
電タブを取り付け、それらの正極と負極を厚さ20μm
の微孔性ポリエチレンフィルムからなるセパレータを介
して重ね、渦巻状に巻回した後、扁平状になるように加
圧して扁平状巻回構造の電極積層体としたのち、絶縁テ
ープを取り付け、外寸が5mm×30mm×48mmの
角形の電池ケース〔厚み(奥行き)5mm、幅30m
m、高さ48mmの角形の電池ケース〕内に挿入し、リ
ード体の溶接と封口用蓋板の電池ケースの開口端部への
レーザー溶接を行い、封口用蓋板に設けた電解液注入口
から前記の電解液を電池ケース内に注入し、電解液がセ
パレータなどに充分に浸透した後、電解液注入口を封止
して密閉状態にした後、予備充電、エイジングを行い、
図1に示すような構造で図2に示すような外観を有する
角形の非水二次電池を作製した。なお、この実施例1で
作製した同一ロットの電池を分解し、正極表面のXPS
(X線光電子分光法)分析を行ったところ、0〜2価の
イオウのピークが確認された。
【0036】ここで図1〜2に示す電池について説明す
ると、正極1と負極2は前記のようにセパレータ3を介
して渦巻状に巻回した後、扁平状になるように加圧して
扁平状巻回構造の電極積層体6として、角形の電池ケー
ス4に上記電解液とともに収容されている。ただし、図
1では、煩雑化を避けるため、正極1や負極2の作製に
あたって使用した集電体としての金属箔や電解液などは
図示していない。
【0037】電池ケース4はアルミニウム製で電池の外
装材となるものであり、この電池ケース4は正極端子を
兼ねている。そして、電池ケース4の底部にはポリテト
ラフルオロエチレンシートからなる絶縁体5が配置さ
れ、前記正極1、負極2およびセパレータ3からなる扁
平状巻回構造の電極積層体6からは正極1および負極2
のそれぞれ一端に接続された正極リード体7と負極リー
ド体8が引き出されている。また、電池ケース4の開口
部を封口するアルミニウム製の蓋板9にはポリプロピレ
ン製の絶縁パッキング10を介してステンレス鋼製の端
子11が取り付けられ、この端子11には絶縁体12を
介してステンレス鋼製のリード板13が取り付けられて
いる。
【0038】そして、この蓋板9は上記電池ケース4の
開口部に挿入され、両者の接合部を溶接することによっ
て、電池ケース4の開口部が封口され、電池内部が密閉
されている。
【0039】この実施例1の電池では、正極リード体7
を蓋板9に直接溶接することによって電池ケース4と蓋
板9とが正極端子として機能し、負極リード体8をリー
ド板13に溶接し、そのリード板13を介して負極リー
ド体8と端子11とを導通させることによって端子11
が負極端子として機能するようになっているが、電池ケ
ース4の材質などによっては、その正負が逆になる場合
もある。
【0040】図2は上記図1に示す電池の外観を模式的
に示す斜視図であり、この図2は上記電池が角形電池で
あることを示すことを目的として図示されたものであっ
て、この図2では電池を概略的に示しており、電池の構
成部材のうち特定のものしか図示していない。また、図
1においても、電極積層体の内周側の部分は断面にして
いない。
【0041】比較例1 シクロヘキシルベンゼンを含有させなかった以外は実施
例1と同様に電解液を調製し、その電解液を用いた以外
は実施例1と同様に角形の非水二次電池を作製した。
【0042】比較例2 ジフェニルジスルフィドを含有させなかった以外は実施
例1と同様に電解液を調製し、その電解液を用いた以外
は実施例1と同様に角形の非水二次電池を作製した。
【0043】比較例3 ジフェニルジスルフィドの含有量を0.6重量%にした
以外は実施例1と同様に電解液を調製し、その電解液を
用いた以外は実施例1と同様に角形の非水二次電池を作
製した。この比較例3の電池のジフェニルジスルフィド
の含有量はシクロヘキシルベンゼンの含有量に対して1
5重量%であった。
【0044】上記実施例1および比較例1〜3の電池に
ついて過充電時の安全性と貯蔵特性について調べた。
【0045】過充電時の安全性については、以下に示す
ように試験を行った。まず、室温で電池を1CmAの定
電流で電圧が4.2Vに達するまで充電し、さらに4.
2Vの定電圧で2.5時間充電した後、6Vを上限電圧
として0.5A、1A、2A、5Aの電流値で過充電し
た。その過充電時に、電池の表面温度が135℃以下で
あった最大電流を過充電安全電流値とした。その結果を
表1に示す。なお、上記のように4.2Vまで充電した
ときの正極電位はLi基準で4.3Vであった。
【0046】また、貯蔵特性については、以下に示すよ
うに試験を行った。まず、電池を25℃で1CmAの定
電流で電圧が4.2Vに達するまで充電し、さらに4.
2Vの定電圧で2.5時間充電した後、1CmAで3.
0Vまで放電させた。その後、1CmAの定電流で4.
2Vまで充電し、さらに4.2Vの定電圧で2.5時間
充電し、1CmAで3.0Vまで放電させて放電容量を
測定した。電池の厚みを測定し、その後、60℃の恒温
槽に20日間貯蔵した後、1CmAで3.0Vまで放電
させて放電容量を測定した。この放電容量を貯蔵前の放
電容量とする。
【0047】この放電容量を貯蔵後の放電容量とし、こ
の貯蔵後の放電容量と前記の貯蔵前の放電容量とから貯
蔵による自己放電率を次に示す式により求めた。その結
果を表1に示す。なお、この自己放電率はその値が小さ
いほど貯蔵特性が優れていることを示す。
【0048】
【0049】
【表1】
【0050】表1に示すように、実施例1の電池は、シ
クロヘキシルベンゼンを含有させなかった比較例1の電
池に比べて、過充電安全電流が10倍以上大きく、過充
電時の安全性が高く、また、ジフェニルジスルフィドを
含有させなかった比較例2の電池に比べて、貯蔵による
自己放電率が小さく、60℃という高温での貯蔵におい
ても、貯蔵特性が優れていた。なお、シクロヘキシルベ
ンゼン、ジフェニルジスルフィドのいずれも含有させて
いても、ジフェニルジスルフィドの含有量がシクロヘキ
シルベンゼンの含有量に対して15重量%と、ジフェニ
ルジスルフィドの含有量が本発明で規定する範囲より多
い比較例3の電池は、過充電時の安全性は高かったもの
の、貯蔵による自己放電率が大きく、実施例1の電池に
比べて貯蔵特性が劣っていた。
【0051】
【発明の効果】以上説明したように、本発明では、過充
電時の安全性が高く、かつ高温貯蔵特性が優れた非水二
次電池とそれに用いる非水電解液を提供することができ
た。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る非水二次電池の一例を模式的に示
す図で、(a)はその平面図、(b)はその部分縦断面
図である。
【図2】図1に示す非水二次電池の斜視図である。
【符号の説明】
1 正極 2 負極 3 セパレータ 4 電池ケース 5 絶縁体 6 電極積層体 7 正極リード体 8 負極リード体 9 蓋板 10 絶縁パッキング 11 端子 12 絶縁体 13 リード板
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 坂田 英郎 大阪府茨木市丑寅一丁目1番88号 日立マ クセル株式会社内 (72)発明者 上剃 春樹 大阪府茨木市丑寅一丁目1番88号 日立マ クセル株式会社内 (72)発明者 安部 浩司 山口県宇部市大字小串1978番地の10 宇部 興産株式会社宇部ケミカル工場内 (72)発明者 植木 明 山口県宇部市大字小串1978番地の10 宇部 興産株式会社宇部ケミカル工場内 Fターム(参考) 5H029 AJ04 AJ12 AK02 AK03 AL02 AL06 AL07 AL08 AM02 AM03 AM04 AM05 AM07 BJ02 BJ04 DJ08 DJ16 EJ11 HJ01 5H050 AA03 AA10 AA15 BA17 CA02 CA05 CA08 CA09 CB02 CB07 CB08 CB09

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 金属酸化物を正極活物質とし、炭素材料
    またはLi挿入可能な材料を負極活物質とし、非水電解
    液を用いた非水二次電池において、ベンゼン環にアルキ
    ル基が結合した化合物(A)とスルフィド化合物または
    その分解物(B)とを電池内に含有し、スルフィド化合
    物またはその分解物(B)の含有量がスルフィド化合物
    換算でベンゼン環にアルキル基が結合した化合物(A)
    の含有量の0.1〜10重量%であることを特徴とする
    非水二次電池。
  2. 【請求項2】 金属酸化物を正極活物質とし、炭素材料
    またはLi挿入可能な材料を負極活物質とし、非水電解
    液を用いた非水二次電池において、上記非水電解液とし
    て、ベンゼン環にアルキル基が結合した化合物(A)と
    該化合物(A)の0.1〜10重量%のスルフィド化合
    物とを含有する非水電解液を用いたことを特徴とする非
    水二次電池。
  3. 【請求項3】 ベンゼン環にアルキル基が結合した化合
    物(A)の非水電解液中の含有量が3〜7重量%である
    ことを特徴とする請求項2記載の非水二次電池。
  4. 【請求項4】 スルフィド化合物が芳香族ジスルフィド
    であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載
    の非水二次電池。
  5. 【請求項5】 電池が角形電池である請求項1〜4のい
    ずれかに記載の非水二次電池。
  6. 【請求項6】 電池がラミネート電池である請求項1〜
    4のいずれかに記載の非水二次電池。
  7. 【請求項7】 非水溶媒に電解質塩を溶解した非水電解
    液であって、ベンゼン環にアルキル基が結合した化合物
    (A)と該化合物(A)の0.1〜10重量%のスルフ
    ィド化合物とを含有させたことを特徴とする非水電解
    液。
  8. 【請求項8】 ベンゼン環にアルキル基が結合した化合
    物(A)の非水電解液中の含有量が3〜7重量%である
    ことを特徴とする請求項7記載の非水電解液。
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