JP3797197B2 - 非水電解質二次電池 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、非水電解質中に、化1で示される1,3−プロペンスルトン誘導体および化3で示されるグリコールサルフェート誘導体を含む非水電解質二次電池に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、電子技術の進歩により携帯電話、ノートパソコン、ビデオカメラ等の電子機器の高性能化、小型化軽量化が進み、これら電子機器に使用できる高エネルギー密度の電池を求める要求が非常に強くなっている。このような要求を満たす代表的な電池は、リチウムが負極活物質として用いられたリチウム二次電池である。
【0003】
リチウム二次電池は、例えば、リチウムイオンを吸蔵放出する炭素材料が集電体に保持されてなる負極板、リチウムコバルト複合酸化物のようなリチウムイオンを吸蔵放出するリチウム複合酸化物が集電体に保持されてなる正極板、非プロトン性の有機溶媒にLiClO4、LiPF6等のリチウム塩が溶解された電解液を保持するとともに負極板と正極板との間に介在されて両極の短絡を防止するセパレータとからなっている。そして、これら正極板及び負極板は、薄いシートないし箔状に成形され、これらがセパレータを介して順に積層又は渦巻き状に巻回されて発電要素とされ、この発電要素が、ステンレス、ニッケルメッキを施した鉄、又はより軽量なアルミニウム製等の金属缶または、ラミネートフィルムからなる電池容器に収納された後、電解液が注液され、密封されて電池として組み立てられる。
【0004】
ところで、一般に電池にはその使用条件に応じて種々の性能が求められるが、この中の一つに高温放置特性がある。これは特に上記のような二次電池において重要な性能であって、通常、充電状態の電池を80℃以上の環境下に所定時間放置し、放置後の電池の膨れや放電容量を測定することによって評価される。
【0005】
この高温放置特性を向上させる方法には種々の方法があるが、上記のようなリチウム二次電池では、高沸点で、蒸気圧の低い溶媒を用いる方法や、正負極表面上での非水電解質の分解を抑制する方法がある。しかしながら、前者のように高沸点で蒸気圧の低い溶媒を用いると、一般的に溶媒の粘度が低く、非水電解質の導電率が低下して放電特性が低下するなどの問題があるため、非水電解質の導電率を低下させることのないように、後者のように少量の添加剤を非水電解質中に添加し、正極または負極上に良好な被膜を形成させ、非水電解質の分解を速度論的に安定にする手法が望ましい。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
最近では、非水電解質二次電池が、常温環境下のみならず、低温から高温までの各種の環境下で使用される電子機器に採用されることが多くなってきている。特に携帯電話においては、夏の炎天下で車中に放置された場合など、内蔵された非水電解質二次電池が高温環境下に曝されることがある。このようなことから、非水電解質二次電池の特性の中でも、高温環境下での特性が重要になってきている。
【0007】
例えば、携帯電話に用いられるリチウム二次電池の場合、80℃で一定期間放置した際の電池の膨れが小さいことが要求される。しかしながら、上記従来の電池は、高温で長期間放置すると、非水電解質が正負極上において分解され、発生したガスにより電池が膨れてしまうことがあった。また、近年においては電池の高エネルギー化に伴い、電池ケースの軽量化、薄型化が要求され、電池が膨れ易い状況になってきた。
【0008】
本願発明は、リチウム二次電池に代表される非水電解質二次電池の高温放置時の膨れを抑制しようとするものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本願発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、非水電解質中に1,3−プロペンスルトン誘導体を少なくとも1種含有し、かつグリコールサルフェート誘導体を2.0wt%以下含有させることによって、優れた高温放置性能を持ち、かつ、初期放電容量の大きな非水電解質二次電池を得ることができる。
【0011】
本発明によれば、1,3−プロペンスルトン誘導体を用いることによって、高温放置性能を向上させることができる。この理由は、明確には解明できていないが、1,3−プロペンスルトン誘導体が負極活物質表面上に良好なSEIを形成することによって、負極表面上で溶媒が還元分解されてガスが発生することを抑制するものと推察される。
【0015】
本発明によれば、さらにグリコールサルフェート誘導体を用いることによって、1,3−プロペンスルトン誘導体添加による初期放電容量の低下を抑制することができる。この理由は、明確には解明できていないが、グリコールサルフェート誘導体が負極上に良好なSEIを形成することによって、1,3−プロペンスルトンによって形成される比較的Liイオン伝導性の低い負極表面被膜が形成されるのを抑制しているものと推察される。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の実施の形態について説明する。
【0017】
【課題を解決するための手段】
本発明は、非水電解質二次電池において、非水電解質中に1,3−プロペンスルトン誘導体を少なくとも1種含有し、かつグリコールサルフェート誘導体を2.0wt%以下含有することを特徴とする。ここで、1,3−プロペンスルトン誘導体とは、化1で示される物質であり、R1〜R4がそれぞれ水素原子、または同一種もしくは異種のアルキル基である化合物をいう。
【0018】
そして、上記1,3−プロペンスルトンに加えて、グリコールサルフェート誘導体を非水電解質中に2.0wt%以下含有するものである。ここで、グリコールサルフェート誘導体とは、化3で示される物質であり、R7〜R10がそれぞれ水素原子、または同一種もしくは異種のアルキル基である化合物をいう。
【0019】
非水電解質としては、電解液または固体電解質のいずれも使用することが出来る。電解液を用いる場合には、電解液溶媒としては、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、γ−ブチロラクトン、スルホラン、ジメチルスルホキシド、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、ジオキソラン、メチルアセテート等の極性溶媒、もしくはこれらの混合物を使用してもよい。
【0020】
また、電解液溶媒に溶解するリチウム塩としては、LiPF6、LiClO4、LiBF4、LiAsF6、LiCF3CO2、 LiCF3(CF3)3、LiCF3(C2F5)3、LiCF3SO3、LiN(SO2CF3)2、LiN(SO2CF2CF3)2、LiN(COCF3)2およびLiN(COCF2CF3)2、LiPF3(CF2CF3)3などの塩もしくはこれらの混合物でもよい。
【0021】
正極活物質としては、組成式LixMO2、LiyM2O4、組成式NaxMO2(ただし、Mは一種類以上の遷移金属、0≦x≦1、0≦y≦2)で表される複合酸化物、トンネル構造または層状構造の金属カルコゲン化物または金属酸化物を用いることができる。その具体例としては、LiCoO2、LiCoxNi1−xO2、LiMn2O4、Li2Mn2O4、MnO2、FeO2、V2O5、V6O13、TiO2、TiS2等が挙げられる。また、有機化合物としては、例えばポリアニリン等の導電性ポリマー等が挙げられる。さらに、無機化合物、有機化合物を問わず、上記各種活物質を混合して用いてもよい。
【0022】
さらに、負極材料たる化合物としては、Al、Si、Pb、Sn、Zn、Cd等とリチウムとの合金、LiFe2O3、WO2、MoO2、SiO、CuO等の金属酸化物、グラファイト、カーボン等の炭素質材料、Li5(Li3N)等の窒化リチウム、もしくは金属リチウム、又はこれらの混合物を用いてもよい。
【0023】
また、本発明に係る非水電解質電池の隔離体としては、織布、不織布、合成樹脂微多孔膜等を用いることができ、特に、合成樹脂微多孔膜を好適に用いることができる。中でもポリエチレン及びポリプロピレン製微多孔膜、またはこれらを複合した微多孔膜等のポリオレフィン系微多孔膜が、厚さ、膜強度、膜抵抗等の面で好適に用いられる。
【0024】
さらに、高分子固体電解質等の固体電解質を用いることで、セパレータを兼ねさせることもできる。この場合、高分子固体電解質として有孔性高分子固体電解質膜を用い、高分子固体電解質にさらに電解液を含有させることで良い。また、ゲル状の高分子固体電解質を用いる場合には、ゲルを構成する電解液と、細孔中等に含有されている電解液とは異なっていてもよい。このような高分子固体電解質を用いる場合には、本願発明の1,3−プロペンスルトン誘導体およびグリコールサルフェート誘導体を電解液中に含有させれば良い。さらに、合成樹脂微多孔膜と高分子固体電解質等を組み合わせて使用してもよい。
【0025】
また、電池の形状は特に限定されるものではなく、本発明は、角形、楕円形、コイン形、ボタン形、シート形電池等の様々な形状の非水電解質二次電池に適用可能である。本願発明は、電池が高温環境下に放置された際の電池の膨れを抑制するものであるので、電池ケースの機械的強度が弱い場合、特に、アルミケースや、アルミラミネートケースを用いた場合により大きな効果が得られる。
【0026】
【実施例】
以下、本発明を適用した具体的な実施例について説明するが、本発明は本実施例により何ら限定されるものではなく、その主旨を変更しない範囲において適宜変更して実施することが可能である。
【0027】
[比較例1]
図1は、比較例1の角形非水電解質二次電池の概略断面図である。
【0028】
この角形非水電解質二次電池1は、アルミ集電体に正極合材を塗布してなる正極3と、銅集電体に負極合材を塗布してなる負極4とがセパレータ5を介して巻回された扁平巻状電極群2と、非水電解液とを電池ケース6に収納してなる、幅30mm×高さ48mm×厚さ4mmのものである。
【0029】
電池ケース6には、安全弁8を設けた電池蓋7がレーザー溶接によって取り付けられ、負極端子9は負極リード11を介して負極4と接続され、正極3は正極リード10を介して電池蓋と接続されている。
【0030】
正極板は、結着剤であるポリフッ化ビニリデン8重量%と導電剤であるアセチレンブラック5重量%とリチウムコバルト複合酸化物である正極活物質87重量%とを混合してなる正極合材に、N−メチルピロリドンを加えてペースト状に調製した後、これを厚さ20μmのアルミニウム箔集電体両面に塗布、乾燥することによって製作した。
【0031】
負極板は、グラファイト(黒鉛)95重量%とカルボキシメチルセルロース2重量%およびスチレンブタジエンゴム3重量%を適度な水分を加えてペースト状に調製した後、これを厚さ15μmの銅箔集電体両面に塗布、乾燥することによって製作した。
【0032】
セパレータには、ポリエチレン微多孔膜を用い、また、電解液には、エチレンカーボネート:エチルメチルカーボネート=4:6(体積比)の混合溶媒にLiPF6を1mol/l溶解し、その総電解液量に対して化4で示される1,3−プロペンスルトンを0.2wt%添加した非水電解液を用いた。
【0033】
【化4】
【0034】
以上の構成・手順で実施例1の非水電解質二次電池を作成した。
【0035】
[実施例1〜16および比較例2〜6]
実施例1〜16および比較例2〜6の21種類の電池については、表1に示すように、電解液に含有する1,3−プロペンスルトン、化6で示されるグリコールサルフェートの量を変化させた以外は、比較例1とまったく同様に非水電解質二次電池を作成した。
【0036】
【化5】
【0037】
【化6】
【0038】
【表1】
【0039】
以上のようにして作製した実施例および比較例の角形非水電解質二次電池について、初期容量と、高温放置後の電池厚みを測定した。
【0040】
なお、初期容量は、充電電流600mA、充電電圧4.20Vの定電流−定電圧充電で2.5時間充電した後、放電電流600mA、終止電圧2.75Vの条件で放電を行ったときの放電容量を示す。
【0041】
高温放置後の電池の厚み測定は、初期容量の調査を終わった電池を、充電電流600mA、充電電圧4.20Vの定電流−定電圧充電で2.5時間充電した後、80℃の環境下で50時間放置し、室温まで冷却して電池の厚みを測定した。
【0042】
実施例および比較例の電池の試験結果を表2に示す。
【0043】
【表2】
【0044】
表2の結果から、1,3−プロペンスルトンを単独で添加した比較例1の電池は、1,3−プロペンスルトンを添加していない比較例6の電池にくらべて、高温放置後の電池厚みが小さく、電池の膨れを抑制していることがわかる。
【0046】
また、実施例1〜16の電池に見られるように、1,3−プロペンスルトンに加えてグリコールサルフェートを添加した場合、1,3−プロペンスルトンの添加量が増加することによる初期放電容量の低下が抑制され、初期放電容量が大きく、かつ高温放置後の電池膨れが小さくなることがわかった。しかし、比較例2〜5のように、非水電解液へのグリコールサルフェートの添加量が4wt%以上の場合、1,3−プロペンスルトンを添加していても高温放置後の電池厚みが大きくなることがわかった。
【0047】
すなわち、1,3−プロペンスルトンを非水電解液に添加することにより、高温放置後の電池膨れを小さくすることができた。また、1,3−プロペンスルトンの添加量が多くなった場合に初期放電容量が減少するが、この初期放電容量の低下は、2.0wt%以下のグリコールサルフェートを1.3−プロペンスルトンに加えて添加することにより抑制することができた。
【0048】
なお、上記実施例では、溶媒としてエチレンカーボネートとエチルメチルカーボネートを用いたが、エチルメチルカーボネートの代わりに、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、γ―ブチロラクトンを用いた場合や、溶質であるLiPF6の濃度を変化させた場合や、種類を変化させた場合についても、同様の結果が得られる。したがって、非水電解質の溶媒、溶質は、実施例に示した組み合わせに限定されるべきものではない。
【0049】
また、実施例では1,3−プロペンスルトンに加えてグリコールサルフェートを添加した場合について記述したが、グリコールサルフェートの代わりに、化3で示されるグリコール誘導体を用いた場合にも同様の効果が得られる。
【0050】
さらに、正極活物質、負極活物質についても、実施例で示した組み合わせに限定されることなく、上記の実施の形態の中で述べた様々に活物質を使用することができる。
【0051】
【発明の効果】
本願発明は、非水電解質中に化1で示される1,3−プロペンスルトン誘導体および化3で示されるグリコールサルフェート誘導体を2.0wt%以下含有することにより、高温環境下での電池の膨れが小さく、かつ初期放電容量の大きな非水電解質二次電池を提供することができる。
【0053】
このような非水電解質への1,3−プロペンスルトン誘導体および化3で示されるグリコールサルフェート誘導体を2.0wt%以下の添加によって非水電解質二次電池の高温環境下での特性が顕著に改善されることは、市場での信頼性を得る上で極めて重要であり、二次電池の軽量化、薄型化といった時代のニーズに答えることになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一実施形態を示す図であって、角形非水電解質二次電池の縦断面図。
【符号の説明】
1 非水電解質二次電池
2 電極群
3 正極
4 負極
5 セパレータ
6 電池ケース
7 蓋
8 安全弁
9 負極端子
10 正極リード
11 負極リード
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