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JP2000113976A - 有機el素子 - Google Patents

有機el素子

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Publication number
JP2000113976A
JP2000113976A JP10300366A JP30036698A JP2000113976A JP 2000113976 A JP2000113976 A JP 2000113976A JP 10300366 A JP10300366 A JP 10300366A JP 30036698 A JP30036698 A JP 30036698A JP 2000113976 A JP2000113976 A JP 2000113976A
Authority
JP
Japan
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organic
electron injection
injection electrode
layer
hydride
Prior art date
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Withdrawn
Application number
JP10300366A
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English (en)
Inventor
Akira Ebisawa
晃 海老沢
Osamu Onizuka
理 鬼塚
Michio Arai
三千男 荒井
Hiroyuki Endo
広行 遠藤
Masayuki Kawashima
真祐紀 川島
Toshio Hayakawa
敏雄 早川
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
TDK Corp
Original Assignee
TDK Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
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Publication date
Application filed by TDK Corp filed Critical TDK Corp
Priority to JP10300366A priority Critical patent/JP2000113976A/ja
Publication of JP2000113976A publication Critical patent/JP2000113976A/ja
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 容易に製造でき、水分等の影響を極力排除
し、経時劣化、特に非発光面積の拡大、輝度の変化が小
さく、初期性能を長期間維持できる長寿命の有機EL素
子を提供する。 【解決手段】 本発明の有機EL素子は、ホール注入電
極と、電子注入電極と、これらの電極間に設けられた1
種以上の発光層を含む有機層とを有する有機EL構造体
が気密ケースに収納されており、前記気密ケース内に、
水素化カルシウム、水素化ストロンチウム、水素化バリ
ウムおよび水素化アルミニウムリチウムの1種以上が配
置されている。そして、前記電子注入電極がアルカリ金
属およびアルカリ土類金属のいずれか1種以上を含有す
る。または、前記有機層のうち少なくとも1層がアルカ
リ金属およびアルカリ土類金属のいずれか1種以上を含
有する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、有機化合物を用い
た有機EL素子に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、有機EL素子が盛んに研究されて
いる。これは、錫ドープ酸化インジウム(ITO)など
の透明電極(ホール注入電極)上にトリフェニルジアミ
ン(TPD)などのホール輸送材料を蒸着により薄膜と
し、その上にアルミキノリノール錯体(Alq3)など
の蛍光物質を発光層として積層し、さらにMgなどの仕
事関数の小さな金属電極(電子注入電極)を形成した基
本構成を有する素子で、10V前後の電圧で数100か
ら数10,000cd/m2ときわめて高い輝度が得られる
ことで注目されている。
【0003】このような有機EL素子の電子注入電極と
して用いられる材料は、発光層や電子注入輸送層等へ電
子を多く注入するものが有効であると考えられている。
換言すれば、仕事関数の小さい材料ほど電子注入電極と
して適していると言える。仕事関数の小さい材料として
は種々のものがあるが、有機EL素子の電子注入電極と
して用いられるものとしては、例えば、特開平2−15
595号公報には、アルカリ金属以外の複数の金属から
なり、かつ、これらの金属の少なくとも1種の金属の仕
事関数が4eV未満である電子注入電極として、例えばM
gAgが開示されている。
【0004】また、仕事関数の小さいものとしてはアル
カリ金属が好ましく、米国特許第3173050号、同
3382394号明細書には、アルカリ金属として、例
えばNaKが記載されている。特に、電子注入電極にL
iを用いると、高輝度の有機EL素子が得られる。
【0005】アルカリ金属を用いた電子注入電極とし
て、例えば、特開昭60−165771号公報、特開平
4−212287号公報、特開平5−121172号公
報、特開平5−159882号公報に記載されているA
lLi合金を用いた電子注入電極が知られている。これ
らの公報に記載されているAlLi合金のLiの濃度を
挙げると、(1)特開昭60−165771号公報で
は、Li濃度が3.6〜99.8at%(1〜99wt
%)、好ましくは29.5〜79.1at%(10〜50
wt%)のAlLi合金が記載されている。(2)特開平
4−212287号公報では、Li濃度が6at%以上、
好ましくは6〜30at%のAlLi合金が記載されてい
る。(3)特開平5−121172号公報では、Li濃
度が0.0377〜0.38at%(0.01〜0.1:
100wt比)のAlLi合金、また好ましくは、Li濃
度が15.9at%以下(50以下:100wt比)のAl
Li合金が記載されている。(4)特開平5−1598
82号公報では、Li濃度が5〜90at%のAlLi合
金が記載されている。
【0006】さらには、特開平9−17574号公報で
は、電子注入電極(層)として、アルカリ金属(Li、
Na、K、Rb、Cs)の化合物、特に、アルカリ金属
の酸化物、過酸化物、複合酸化物、ハロゲン化物、窒化
物、アルカリ金属塩が開示されている。具体的には、L
2O、Li22、LiAlO2、LiBO3、LiC
l、Li2CO3等が挙げられている。
【0007】また、特開平10−74586号公報で
は、電子注入電極として、アルカリフッ化物、アルカリ
土類フッ化物、具体的にはLiF、MgF2、MgCa2
が開示されている。
【0008】しかしながら、Liのように仕事関数の小
さい材料は酸素や水分に対して反応性が高く、化学的に
不安定である。Li等アルカリ金属を含む電子注入電極
を用いた有機EL素子は、非常に高い輝度が得られる
が、駆動中に輝度が上昇していくという問題がある。こ
れは、駆動時の発熱によって電極と有機層の界面がアニ
ールされ、I(電流)−V(電圧)曲線が駆動時間とと
もに変化し、同じ印加電圧でも電流値が大きくなってし
まうためである。なお、I(電流)−L(輝度)曲線は
駆動時間によってほとんど変化しない。
【0009】また、前述のMgAg等、アルカリ土類金
属を電子注入電極に用いた場合にも、アルカリ金属の場
合と同様、駆動中に輝度が上昇していくという問題があ
る。
【0010】ところで、有機EL素子は、水分に非常に
弱いという問題がある。水分の影響により、例えば、発
光層と電極層との間で剥離が生じたり、構成材料が変質
してしまったりして、ダークスポットと称する非発光領
域が生じたり、発光面積が縮小したりして所定の品位の
発光が維持できなくなってしまう。
【0011】この問題を解決するための方法として、例
えば、特開平5−36475号公報、同5−89959
号公報、同7−169567号公報等に記載されている
ように、有機EL積層構造体部分を被う気密ケース、封
止層等を基板上に密着固定して外部と遮断する技術が知
られている。
【0012】しかし、このような封止層等を設けたとし
ても、やはり、駆動時間の経過に伴い外部から侵入する
水分の影響によって、発光輝度が減少したり、ダークス
ポットが生じたり、これが拡大したりして発光面積が縮
小し、素子が劣化し、ひいては、発光不良が悪化して使
用不能になってしまう。
【0013】また、有機EL構造体を気密ケース内に収
納し、このケース内に乾燥剤を配置することが提案され
ている。例えば、特開平3−261091号公報には、
乾燥剤として五酸化二リン(P25)が開示されてい
る。しかし、P25は水分を吸収してその水に溶解(潮
解)し、リン酸となり、有機EL構造体に悪影響を及ぼ
してしまう。また、P25の封入方法が著しく限られ、
実用的ではない。
【0014】特開平6−176867号公報には、微粉
末固体脱水剤、具体的には、ゼオライト、活性アルミ
ナ、シリカゲル、酸化カルシウムが挙げられている。し
かし、ゼオライトのような水分を物理吸着する乾燥剤
は、有機EL素子が発光する際の熱で吸着した水分を放
出してしまうので、十分な寿命が得られない。
【0015】これに対し、特開平9−148066号公
報には、乾燥剤として化学的に水分を吸着するとともに
吸湿しても固体状態を維持する化合物、具体的には、ア
ルカリ金属酸化物、アルカリ土類金属酸化物、硫酸塩、
金属ハロゲン化物が挙げられている。これらの化合物は
水分を化学吸着するので、水分の再放出が起こらず、素
子の寿命は長くなる。しかし、素子の寿命としてはまだ
不十分である。
【0016】本発明者らは、特願平10−181458
号において、乾燥剤として水素化カルシウムおよび/ま
たは水素化アルミニウムリチウムを用いることを提案し
ている。これらを乾燥剤に用いると、有機EL素子の寿
命が飛躍的に長くなる。しかし、このものは、従来問題
であった非発光面積の拡大による素子劣化に対しては抜
群の効果がある一方で、駆動時間とともに輝度が低下し
ていくという問題がある。これは、I(電流)−V(電
圧)曲線が駆動時間とともに変化し、同じ印加電圧でも
電流値が小さくなってしまうためである。なお、I(電
流)−L(輝度)曲線は駆動時間によってほとんど変化
しない。
【0017】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、容易
に製造でき、水分等の影響を極力排除し、経時劣化、特
に非発光面積の拡大、輝度の変化が小さく、初期性能を
長期間維持できる長寿命の有機EL素子を提供すること
である。
【0018】
【課題を解決するための手段】このような目的は以下の
構成により達成することができる。
【0019】(1) ホール注入電極と、電子注入電極
と、これらの電極間に設けられた1種以上の発光層を含
む有機層とを有する有機EL構造体が気密ケースに収納
されており、前記気密ケース内に、水素化カルシウム、
水素化ストロンチウム、水素化バリウムおよび水素化ア
ルミニウムリチウムの1種以上が配置されており、前記
電子注入電極がアルカリ金属およびアルカリ土類金属の
いずれか1種以上を含有する有機EL素子。 (2) 前記電子注入電極の膜厚が1nm以下である上記
(1)の有機EL素子。 (3) 前記有機層のうち少なくとも1層がアルカリ
金属およびアルカリ土類金属のいずれか1種以上を含有
する上記(1)または(2)の有機EL素子。 (4) ホール注入電極と、電子注入電極と、これらの
電極間に設けられた1種以上の発光層を含む有機層とを
有する有機EL構造体が気密ケースに収納されており、
前記気密ケース内に、水素化カルシウム、水素化ストロ
ンチウム、水素化バリウムおよび水素化アルミニウムリ
チウムの1種以上が配置されており、前記有機層のうち
少なくとも1層がアルカリ金属およびアルカリ土類金属
のいずれか1種以上を含有する有機EL素子。 (5) 前記有機層が前記電子注入電極と前記発光層と
の間に電子注入層を有し、前記電子注入層がアルカリ金
属およびアルカリ土類金属のいずれか1種以上を含有す
る上記(3)または(4)の有機EL素子。 (6) 前記電子注入電極がアルカリ金属の合金、これ
らの酸化物、これらのフッ化物、アルカリ土類金属の合
金、これらの酸化物およびこれらのフッ化物のいずれか
1種以上を含有する上記(1)、(2)、(3)または
(5)のいずれかの有機EL素子。 (7) 前記電子注入電極および/または前記有機層が
リチウムを含有する上記(1)〜(6)のいずれかの有
機EL素子。 (8) 前記電子注入電極がアルミニウムリチウム合
金、酸化リチウムおよびフッ化リチウムのいずれか1種
以上を含有する上記(7)の有機EL素子。 (9) 前記有機層のアルカリ金属および/またはアル
カリ土類金属の含有量が0.1〜10wt%である上記
(3)、(4)、(5)または(7)のいずれかの有機
EL素子。 (10)前記気密ケースが、前記有機EL構造体が積層
されている基板と、前記有機EL構造体上に所定の空隙
を設けて配置された封止板と、前記封止板を前記基板に
密着する封止用接着剤とを有する上記(1)〜(9)の
いずれかの有機EL素子。 (11)前記空隙に窒素が充填されており、前記気密ケ
ース内に水素化カルシウムおよび/または水素化ストロ
ンチウムが配置されている上記(10)の有機EL素
子。
【0020】
【作用】本発明の有機EL素子は、ホール注入電極と、
電子注入電極と、これらの電極間に設けられた1種以上
の発光層を含む有機層とを有する有機EL構造体が気密
ケースに収納されており、この気密ケース内に、前記有
機EL構造体に非接触の状態で、乾燥剤として水素化カ
ルシウム、水素化ストロンチウム、水素化バリウムおよ
び水素化アルミニウムリチウムの1種以上が配置されて
いる。そして、電子注入電極がアルカリ金属およびアル
カリ土類金属のいずれか1種以上を含有する。この電子
注入電極の膜厚は1nm以下であることが好ましい。また
は、有機層のうち少なくとも1層、好ましくは電子注入
層がアルカリ金属および/またはアルカリ土類金属のい
ずれか1種以上を含有する。その含有量は0.1〜10
wt%、特に1〜3wt%であることが好ましい。
【0021】このように気密ケース内に乾燥剤として水
素化カルシウム、水素化ストロンチウム、水素化バリウ
ムおよび水素化アルミニウムリチウムの1種以上、好ま
しくは水素化カルシウムおよび/または水素化ストロン
チウムを配置することにより、特に封止した後、侵入し
てくる水分を除去し、気密ケース内の水分濃度を下げる
ことができるので、非発光面積の拡大が長時間ほとんど
起こらず、素子の寿命が飛躍的に長くなる。
【0022】水素化カルシウム、水素化アルミニウムリ
チウムは、下記の化学反応式に従って水分を除去する。
水素化ストロンチウム、水素化バリウムは、下記の水素
化カルシウムの式と同様の化学反応式に従って水分を除
去する。
【0023】 CaH2 + 2H2O → Ca(OH)2 + 2H2 AlLiH4 + 4H2O → Li(OH) + Al(OH)3 + 4H2
【0024】水と反応した後の化合物(水酸化物)は安
定に存在するので、一度除去した水分の再放出が起こら
ない。しかも、上記のようなものを乾燥剤に用いること
により、水分除去に伴って水素が発生し、気密ケース内
が還元雰囲気となるので、電極、特に電子注入電極の劣
化が防止され、素子の寿命はさらに延びる。従って、特
開平9−148066号公報の化合物を用いる場合より
も長寿命である。また、上記の式に従い、水蒸気吸着時
に水素が等モル発生するので気密ケース内の内圧の変化
が極めて小さいか、なく、密封性を保つ上でも好まし
い。特開平9−148066号公報の化合物はこの点で
も不利である。
【0025】しかも、吸湿しても固体状態が保たれるの
で、有機EL構造体と非接触の状態で配置すれば素子に
悪影響を及ぼすことはなく、また、気密ケース内に容易
に封入することができる。
【0026】さらに、本発明では、電子注入電極がアル
カリ金属およびアルカリ土類金属のいずれか1種以上を
含有することにより高輝度が得られるとともに、その膜
厚を1nm以下と従来よりも比較的薄くし、上記のような
乾燥剤と併用することで輝度の変動がほとんど起こら
ず、一定の輝度が長時間得られるようになる。
【0027】または、有機層のうち少なくとも1層、好
ましくは電子注入電極に接する有機層、つまり、電子注
入層がアルカリ金属およびアルカリ土類金属のいずれか
1種以上を含有することによっても高輝度が得られ、上
記のような乾燥剤と併用することで輝度の変動がほとん
ど起こらず、一定の輝度が長時間得られるようになる。
この場合、アルカリ金属および/またはアルカリ土類金
属の含有量が多すぎても少なすぎても輝度の変動が大き
くなる傾向があり、0.1〜10wt%であることが好ま
しい。特に、電子注入電極の界面から0〜50nmの範囲
に1〜3wt%含有することが好ましい。
【0028】これは、乾燥剤が水分を吸収・除去する際
に放出する水素がアルカリ金属、アルカリ土類金属に対
して還元効果があり、電子注入電極および/または電子
注入層が含有するアルカリ金属および/またはアルカリ
土類金属が水素化されることで安定化され、輝度変化が
なくなると考えられる。気密ケース内には水素が過剰に
存在するので、水素化物が安定に存在する。
【0029】なお、前述の通り、従来の有機EL素子
は、電子注入電極として仕事関数の小さい材料、つま
り、アルカリ金属、アルカリ土類金属を用いており、駆
動時間とともに輝度が上昇するという問題があった。そ
れに対し、本発明の有機EL素子は、長時間一定の輝度
を安定して得られ、性能の経時変化が非常に小さい。ま
た、その製造も容易である。
【0030】
【発明の実施の形態】本発明の有機EL素子は、ホール
注入電極と、電子注入電極と、これらの電極間に設けら
れた1種以上の発光層を含む有機層とを有する有機EL
構造体が気密ケースに収納されており、この気密ケース
内に、有機EL構造体に非接触の状態で、水素化カルシ
ウム、水素化ストロンチウム、水素化バリウムおよび水
素化アルミニウムリチウムの1種以上が配置されてい
る。乾燥剤の水素化カルシウム(CaH2)、水素化ス
トロンチウム(SrH2)、水素化バリウム(Ba
2)、水素化アルミニウムリチウム(AlLiH4)の
当初の組成は、化学量論組成から多少偏倚していてもよ
い。これらは、できるだけ大気中の水分と接触しないよ
うにしてケース内に封入する。
【0031】乾燥剤にCaH2、SrH2、BaH2、A
lLiH4のいずれを用いても同様の効果が得られる
が、反応性の高いAlLiH4は気密ケース内の封止ガ
スにArを用いなければならない場合もあるので、N2
を用いることができるCaH2、SrH2、BaH2の方
が好ましい。また、BaH2は安定性が劣るので、特に
CaH2、SrH2を乾燥剤として用いることが好まし
い。
【0032】CaH2、SrH2、BaH2、AlLiH4
は、気密ケース内に、気密ケース内の空間1mm3当たり
0.0001〜0.5mg程度配置することが好ましい。
配置するCaH2、SrH2、BaH2、AlLiH4がこ
れより少ないと、水分の除去が十分にはできなくなって
くる。CaH2、SrH2、BaH2、AlLiH4は多い
ほど水分が除去されて素子の寿命は延びるが、有機EL
構造体に接触すると、逆に悪影響が生じる。通常、配置
できる量の上限は、1mg/mm3程度である。CaH2、S
rH2、BaH2、AlLiH4を併用する場合でも、そ
の合計量が前記の範囲内であることが好ましい。
【0033】CaH2、SrH2、BaH2、AlLiH4
は粒子として用いてもよく、その際の平均粒径は、0.
01〜10μm 程度が好ましい。粒径がこれより大きい
と、表面積が減少してくるので、吸水性が低下してく
る。これより小さいと、吸水性を維持したままでの保管
と取り扱いが困難になってくる。
【0034】CaH2、SrH2、BaH2、AlLiH4
は、気密ケース内に、悪影響を避けるために有機EL構
造体に接触しないように配置する。配置方法は特に限定
されず、例えば、CaH2、SrH2、BaH2、AlL
iH4を成形体として気密ケース内に固定する方法、多
孔質テフロン等の通気性を有する袋や容器にCaH2
SrH2、BaH2、AlLiH4を入れてケース内に固
定する方法、基板や封止板に窪みや仕切りを設けてそこ
にCaH2、SrH2、BaH2、AlLiH4を配置する
方法等がある。また、スクリーン印刷や反応性スパッタ
法等で気密ケース内に薄膜ないし厚膜として配置しても
よい。この際、膜の厚さは0.1〜100μm 程度が好
ましい。
【0035】次に、本発明の有機EL素子を構成する有
機EL構造体について説明する。本発明の有機EL構造
体は、基板上にホール注入電極と、電子注入電極と、こ
れらの電極間に設けられた1種以上の有機層とを有す
る。有機層は、それぞれ少なくとも1層の電子注入層お
よび発光層を有し、その上に電子注入電極を有し、さら
に最上層として保護電極を設けてもよい。なお、電子注
入層はなくてもよい。
【0036】まず、電子注入電極について説明する。
【0037】電子注入電極の構成材料としては、電子注
入を効果的に行う低仕事関数の物質、つまり、アルカリ
金属(Li、Na、K、Rb、Cs)、アルカリ土類金
属(Mg、Ca、Sr、Ba)のいずれか1種以上を含
有する。特に、Liを用いると高輝度が得られるので、
好ましい。これらは、金属元素単体で用いてもよいが、
これらの合金、これらの酸化物およびこれらのフッ化物
のいずれかを用いることが好ましい。これらの酸化物、
フッ化物は、通常、その化学量論組成で存在するが、O
量、F量は多少偏倚していてもよい。また、これらは1
種を用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。合金系
としては、特に限定されないが、例えばAg・Mg(A
g:1〜20at%)、Al・Li(Li:0.3〜14
at%)、In・Mg(Mg:50〜80at%)、Al・
Ca(Ca:5〜20at%)等が好ましい。
【0038】電子注入電極としては、これらの中でも、
特にAl・Li(Li:0.4〜6.5(ただし6.5
を含まず)at%)または(Li:6.5〜14at%)、
Li2O、LiFが好ましい。
【0039】また、電子注入電極として、アルカリ金属
の水素化物(LiH、NaH、KH、RbH、Cs
H)、アルカリ土類金属(MgH2、CaH2、Sr
2、BaH2)のいずれか1種以上、好ましくはLiH
を用いることも好ましい。
【0040】また、後述するように、有機層がアルカリ
金属およびアルカリ土類金属のいずれか1種以上を含有
する場合は、上記のようなものも電子注入電極として好
ましく用いられるが、例えば、La、Ce、Al、A
g、In、Sn、Zn、Zr、Er、Eu、Ga、H
f、Nd、Rb、Sc、Sm、Ta、Y、Yb等の金属
元素単体、あるいは、HfC、LaB6、MoC、Nb
C、PbS、TaC、ThC、ThO2、ThS、Ti
C、TiN、UC、UN、UO2、W2C、Y23、Zr
C、ZrN、ZrO2等の化合物を用いてもよい。ま
た、安定性を向上させるためには、金属元素を含む2成
分、3成分の合金系を用いることが好ましい。合金系と
しては、上記のもの以外に、例えば、Al・In(I
n:1〜10at%)、Al・R〔RはY,Scを含む希
土類元素を表す〕等のアルミニウム系合金等が好まし
い。これらの中でも、特にAl単体やAl・R(R:
0.1〜25、特に0.5〜20at%)等のアルミニウ
ム系合金が、圧縮応力が発生しにくく、好ましい。これ
らの仕事関数は4.5eV以下であり、特に仕事関数が
4.0eV以下の金属、合金が好ましい。
【0041】電子注入電極の厚さは1nm以下、特に0.
5nm以下が好ましい。従来は、均一に成膜するために膜
厚は4nm以上が好ましいとされていたが、一定の輝度が
長時間得られるという本発明の効果は、電子注入電極の
膜厚が1nm以下と薄い方が得られる。また、その下限値
は、通常、0.1nm程度である。電子注入電極は、膜と
して存在せず、有機層表面(界面)にアルカリ金属およ
び/またはアルカリ土類金属の粒子が島状に存在してい
てもかまわない。
【0042】本発明の電子注入電極は、通常、アモルフ
ァス状態、または、結晶粒径が100nm以下である。
【0043】電子注入電極は、蒸着、スパッタ法等で成
膜される。
【0044】電子注入電極を蒸着法で形成する場合、真
空蒸着の条件は特に限定されないが、10-4Pa以下の真
空度とし、蒸着速度は0.01〜1nm/sec 程度とする
ことが好ましい。また、真空中で連続して各層を形成す
ることが好ましい。真空中で連続して形成すれば、各層
の界面に不純物が吸着することを防げるため、高特性が
得られる。
【0045】電子注入電極をスパッタ法で形成する場
合、スパッタ時のスパッタガスの圧力は、0.1〜5Pa
の範囲が好ましい。また、成膜中にスパッタガスの圧力
を前記範囲内で変化させることにより、濃度勾配を有す
る電子注入電極を容易に得ることができる。また、成膜
ガス圧力と基板ターゲット間距離の積が20〜65Pa・
cmを満たす成膜条件にすることが好ましい。
【0046】スパッタガスは、通常のスパッタ装置に使
用されるAr等の不活性ガスや、反応性スパッタではこ
れに加えてN2、H2、O2、C24、NH3等の反応性ガ
スが使用可能である。
【0047】スパッタ法としてはRF電源を用いた高周
波スパッタ法や、DCスパッタ法等の中から好適なスパ
ッタ法を用いて成膜すればよい。スパッタ装置の電力と
しては、好ましくはDCスパッタで0.1〜10W/cm
2、RFスパッタで1〜10W/cm2の範囲である。ま
た、成膜レートは5〜100nm/min 、特に10〜50
nm/min の範囲が好ましい。
【0048】次に、本発明の有機EL構造体に設けられ
る有機物層について述べる。
【0049】発光層は、ホール(正孔)および電子の輸
送機能、ホールと電子の再結合により励起子を生成させ
る機能を有する。発光層には、比較的電子的にニュート
ラルな化合物を用いることが好ましい。
【0050】発光層の厚さは、特に制限されるものでは
なく、形成方法によっても異なるが、通常5〜500nm
程度、特に10〜300nmとすることが好ましい。
【0051】有機EL素子の発光層には、発光機能を有
する化合物である蛍光性物質を含有させる。このような
蛍光性物質としては、例えば、特開昭63−26469
2号公報に開示されているような化合物、例えばキナク
リドン、ルブレン、スチリル系色素等の化合物から選択
される少なくとも1種が挙げられる。また、トリス(8
−キノリノラト)アルミニウム等の8−キノリノールま
たはその誘導体を配位子とする金属錯体色素などのキノ
リン誘導体、テトラフェニルブタジエン、アントラセ
ン、ペリレン、コロネン、12−フタロペリノン誘導体
等が挙げられる。さらには、特開平8−12600号の
フェニルアントラセン誘導体、特開平8−12969号
のテトラアリールエテン誘導体等を用いることができ
る。
【0052】また、それ自体で発光が可能なホスト物質
と組み合わせて使用することが好ましく、ドーパントと
しての使用が好ましい。このような場合の発光層におけ
る化合物の含有量は0.01〜20wt%、さらには0.
1〜15wt%であることが好ましい。ホスト物質と組み
合わせて使用することによって、ホスト物質の発光波長
特性を変化させることができ、長波長に移行した発光が
可能になるとともに、素子の発光効率や安定性が向上す
る。
【0053】ホスト物質としては、キノリノラト錯体が
好ましく、さらには8−キノリノールまたはその誘導体
を配位子とするアルミニウム錯体が好ましい。このよう
なアルミニウム錯体としては、特開昭63−26469
2号、特開平3−255190号、特開平5−7073
3号、特開平5−258859号、特開平6−2158
74号等に開示されているものを挙げることができる。
【0054】具体的には、まず、トリス(8−キノリノ
ラト)アルミニウム、ビス(8−キノリノラト)マグネ
シウム、ビス(ベンゾ{f}−8−キノリノラト)亜
鉛、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)アルミニウ
ムオキシド、トリス(8−キノリノラト)インジウム、
トリス(5−メチル−8−キノリノラト)アルミニウ
ム、8−キノリノラトリチウム、トリス(5−クロロ−
8−キノリノラト)ガリウム、ビス(5−クロロ−8−
キノリノラト)カルシウム、5,7−ジクロル−8−キ
ノリノラトアルミニウム、トリス(5,7−ジブロモ−
8−ヒドロキシキノリノラト)アルミニウム、ポリ[亜
鉛(II)−ビス(8−ヒドロキシ−5−キノリニル)メ
タン]等がある。
【0055】また、8−キノリノールまたはその誘導体
のほかに他の配位子を有するアルミニウム錯体であって
もよく、このようなものとしては、ビス(2−メチル−
8−キノリノラト)(フェノラト)アルミニウム(III)
、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(オルト−
クレゾラト)アルミニウム(III) 、ビス(2−メチル−
8−キノリノラト)(メタークレゾラト)アルミニウム
(III) 、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(パラ
−クレゾラト)アルミニウム(III) 、ビス(2−メチル
−8−キノリノラト)(オルト−フェニルフェノラト)
アルミニウム(III) 、ビス(2−メチル−8−キノリノ
ラト)(メタ−フェニルフェノラト)アルミニウム(II
I) 、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(パラ−
フェニルフェノラト)アルミニウム(III) 、ビス(2−
メチル−8−キノリノラト)(2,3−ジメチルフェノ
ラト)アルミニウム(III) 、ビス(2−メチル−8−キ
ノリノラト)(2,6−ジメチルフェノラト)アルミニ
ウム(III) 、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)
(3,4−ジメチルフェノラト)アルミニウム(III) 、
ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(3,5−ジメ
チルフェノラト)アルミニウム(III) 、ビス(2−メチ
ル−8−キノリノラト)(3,5−ジ−tert−ブチルフ
ェノラト)アルミニウム(III) 、ビス(2−メチル−8
−キノリノラト)(2,6−ジフェニルフェノラト)ア
ルミニウム(III) 、ビス(2−メチル−8−キノリノラ
ト)(2,4,6−トリフェニルフェノラト)アルミニ
ウム(III) 、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)
(2,3,6−トリメチルフェノラト)アルミニウム(I
II) 、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(2,
3,5,6−テトラメチルフェノラト)アルミニウム(I
II) 、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(1−ナ
フトラト)アルミニウム(III) 、ビス(2−メチル−8
−キノリノラト)(2−ナフトラト)アルミニウム(II
I) 、ビス(2,4−ジメチル−8−キノリノラト)
(オルト−フェニルフェノラト)アルミニウム(III) 、
ビス(2,4−ジメチル−8−キノリノラト)(パラ−
フェニルフェノラト)アルミニウム(III) 、ビス(2,
4−ジメチル−8−キノリノラト)(メタ−フェニルフ
ェノラト)アルミニウム(III) 、ビス(2,4−ジメチ
ル−8−キノリノラト)(3,5−ジメチルフェノラ
ト)アルミニウム(III) 、ビス(2,4−ジメチル−8
−キノリノラト)(3,5−ジ−tert−ブチルフェノラ
ト)アルミニウム(III) 、ビス(2−メチル−4−エチ
ル−8−キノリノラト)(パラ−クレゾラト)アルミニ
ウム(III) 、ビス(2−メチル−4−メトキシ−8−キ
ノリノラト)(パラ−フェニルフェノラト)アルミニウ
ム(III) 、ビス(2−メチル−5−シアノ−8−キノリ
ノラト)(オルト−クレゾラト)アルミニウム(III) 、
ビス(2−メチル−6−トリフルオロメチル−8−キノ
リノラト)(2−ナフトラト)アルミニウム(III) 等が
ある。
【0056】このほか、ビス(2−メチル−8−キノリ
ノラト)アルミニウム(III) −μ−オキソ−ビス(2−
メチル−8−キノリノラト)アルミニウム(III) 、ビス
(2,4−ジメチル−8−キノリノラト)アルミニウム
(III) −μ−オキソ−ビス(2,4−ジメチル−8−キ
ノリノラト)アルミニウム(III) 、ビス(4−エチル−
2−メチル−8−キノリノラト)アルミニウム(III) −
μ−オキソ−ビス(4−エチル−2−メチル−8−キノ
リノラト)アルミニウム(III) 、ビス(2−メチル−4
−メトキシキノリノラト)アルミニウム(III) −μ−オ
キソ−ビス(2−メチル−4−メトキシキノリノラト)
アルミニウム(III) 、ビス(5−シアノ−2−メチル−
8−キノリノラト)アルミニウム(III) −μ−オキソ−
ビス(5−シアノ−2−メチル−8−キノリノラト)ア
ルミニウム(III) 、ビス(2−メチル−5−トリフルオ
ロメチル−8−キノリノラト)アルミニウム(III) −μ
−オキソ−ビス(2−メチル−5−トリフルオロメチル
−8−キノリノラト)アルミニウム(III) 等であっても
よい。
【0057】このほかのホスト物質としては、特開平8
−12600号のフェニルアントラセン誘導体、特開平
8−12969号のテトラアリールエテン誘導体なども
好ましい。
【0058】発光層は電子注入層を兼ねたものであって
もよく、このような場合はトリス(8−キノリノラト)
アルミニウム等を使用することが好ましい。これらの蛍
光性物質を蒸着すればよい。
【0059】また、発光層は、必要に応じて、少なくと
も1種のホール注入輸送性化合物と少なくとも1種の電
子注入輸送性化合物との混合層とすることも好ましく、
さらにはこの混合層中にドーパントを含有させることが
好ましい。このような混合層におけるドーパントの含有
量は、ホール注入輸送性化合物と電子注入輸送性化合物
との合計量に対して0.01〜20wt%、さらには0.
1〜15wt%とすることが好ましい。
【0060】混合層では、キャリアのホッピング伝導パ
スができるため、各キャリアは極性的に有利な物質中を
移動し、逆の極性のキャリア注入は起こりにくくなるた
め、有機化合物がダメージを受けにくくなり、素子寿命
がのびるという利点がある。また、前述のドーパントを
このような混合層に含有させることにより、混合層自体
のもつ発光波長特性を変化させることができ、発光波長
を長波長に移行させることができるとともに、発光強度
を高め、素子の安定性を向上させることもできる。
【0061】混合層に用いられるホール注入輸送性化合
物には、例えば、特開昭63−295695号公報、特
開平2−191694号公報、特開平3−792号公
報、特開平5−234681号公報、特開平5−239
455号公報、特開平5−299174号公報、特開平
7−126225号公報、特開平7−126226号公
報、特開平8−100172号公報、EP065095
5A1等に記載されている各種有機化合物を用いること
ができる。例えば、テトラアリールベンジシン化合物
(トリアリールジアミンないしトリフェニルジアミン:
TPD)、芳香族三級アミン、ヒドラゾン誘導体、カル
バゾール誘導体、トリアゾール誘導体、イミダゾール誘
導体、アミノ基を有するオキサジアゾール誘導体、ポリ
チオフェン等である。これらの化合物は、1種のみを用
いても、2種以上を併用してもよい。
【0062】ホール注入輸送性の化合物としては、強い
蛍光を持ったアミン誘導体、例えばトリフェニルジアミ
ン誘導体、さらにはスチリルアミン誘導体、芳香族縮合
環を持つアミン誘導体を用いるのが好ましい。
【0063】電子注入輸送性の化合物としては、キノリ
ン誘導体、さらには8−キノリノールないしその誘導体
を配位子とする金属錯体、特にトリス(8−キノリノラ
ト)アルミニウム(Alq3)を用いることが好まし
い。また、フェニルアントラセン誘導体、テトラアリー
ルエテン誘導体を用いるのも好ましい。オキサジアゾー
ル誘導体、ペリレン誘導体、ピリジン誘導体、ピリミジ
ン誘導体、キノキサリン誘導体、ジフェニルキノン誘導
体、ニトロ置換フルオレン誘導体等を用いることができ
る。これらの化合物は、1種のみを用いても、2種以上
を併用してもよい。
【0064】この場合の混合比は、それぞれのキャリア
移動度とキャリア濃度によるが、一般的には、ホール注
入輸送性化合物の化合物/電子注入輸送性化合物の重量
比が、1/99〜99/1、さらに好ましくは10/9
0〜90/10、特に好ましくは20/80〜80/2
0程度となるようにすることが好ましい。
【0065】また、混合層の厚さは、分子層一層に相当
する厚み以上で、有機化合物層の膜厚未満とすることが
好ましい。具体的には1〜85nmとすることが好まし
く、さらには5〜60nm、特には5〜50nmとすること
が好ましい。
【0066】また、混合層の形成方法としては、異なる
蒸着源より蒸発させる共蒸着が好ましいが、蒸気圧(蒸
発温度)が同程度あるいは非常に近い場合には、予め同
じ蒸着ボード内で混合させておき、蒸着することもでき
る。混合層は化合物同士が均一に混合している方が好ま
しいが、場合によっては、化合物が島状に存在するもの
であってもよい。発光層は、一般的には、有機蛍光物質
を蒸着するか、あるいは、樹脂バインダー中に分散させ
てコーティングすることにより、発光層を所定の厚さに
形成する。
【0067】特に発光層として好ましいものに、8−キ
ノリノールまたはその誘導体を配位子とするアルミニウ
ム錯体と、テトラアリールベンジシン化合物に、ルブレ
ン、クマリン等の蛍光物質をドープした混合層が挙げら
れる。8−キノリノールまたはその誘導体を配位子とす
るアルミニウム錯体と、テトラアリールベンジシン化合
物との混合比は上記の範囲内であることが好ましい。ル
ブレン等のドーピング蛍光物質は、この混合層に対し、
0.01〜20mol%であることが好ましい。
【0068】ホール注入輸送層は、ホール注入電極から
のホールの注入を容易にする機能、ホールを安定に輸送
する機能および電子を妨げる機能を有するものであり、
電子注入層は、電子注入電極からの電子の注入を容易に
する機能、電子を安定に輸送する機能およびホールを妨
げる機能を有するものである。これらの層は、発光層に
注入されるホールや電子を増大・閉じこめさせ、再結合
領域を最適化させ、発光効率を改善する。
【0069】ホール注入輸送層の厚さおよび電子注入層
の厚さは、特に制限されるものではなく、形成方法によ
っても異なるが、通常5〜500nm程度、特に10〜3
00nmとすることが好ましい。
【0070】ホール注入輸送層の厚さおよび電子注入層
の厚さは、再結合・発光領域の設計によるが、発光層の
厚さと同程度または1/10〜10倍程度とすればよ
い。ホールまたは電子の各々の注入層と輸送層とを分け
る場合は、注入層は1nm以上、輸送層は1nm以上とする
のが好ましい。このときの注入層、輸送層の厚さの上限
は、通常、注入層で500nm程度、輸送層で500nm程
度である。このような膜厚については、注入輸送層を2
層設けるときも同じである。
【0071】また、ホール注入輸送層には、例えば、特
開昭63−295695号公報、特開平2−19169
4号公報、特開平3−792号公報、特開平5−234
681号公報、特開平5−239455号公報、特開平
5−299174号公報、特開平7−126225号公
報、特開平7−126226号公報、特開平8−100
172号公報、EP0650955A1等に記載されて
いる各種有機化合物を用いることができる。例えば、テ
トラアリールベンジシン化合物(トリアリールジアミン
ないしトリフェニルジアミン:TPD)、芳香族三級ア
ミン、ヒドラゾン誘導体、カルバゾール誘導体、トリア
ゾール誘導体、イミダゾール誘導体、アミノ基を有する
オキサジアゾール誘導体、ポリチオフェン等である。こ
れらの化合物は、1種のみを用いても、2種以上を併用
してもよい。2種以上を併用するときは、別層にして積
層したり、混合したりすればよい。
【0072】ホール注入輸送層をホール注入層とホール
輸送層とに分けて設層する場合は、ホール注入輸送層用
の化合物のなかから好ましい組合せを選択して用いるこ
とができる。このとき、ホール注入電極(ITO等)側
からイオン化ポテンシャルの小さい化合物の順に積層す
ることが好ましい。また、ホール注入電極表面には薄膜
性の良好な化合物を用いることが好ましい。このような
積層順については、ホール注入輸送層を2層以上設ける
ときも同様である。このような積層順とすることによっ
て、駆動電圧が低下し、電流リークの発生やダークスポ
ットの発生・成長を防ぐことができる。また、素子化す
る場合、蒸着を用いているので1〜10nm程度の薄い膜
も均一かつピンホールフリーとすることができるため、
ホール注入層にイオン化ポテンシャルが小さく、可視部
に吸収をもつような化合物を用いても、発光色の色調変
化や再吸収による効率の低下を防ぐことができる。ホー
ル注入輸送層は、発光層等と同様に上記の化合物を蒸着
することにより形成することができる。
【0073】また、必要に応じて設けられる電子注入層
には、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム(Al
q3)等の8−キノリノールまたはその誘導体を配位子
とする有機金属錯体などのキノリン誘導体、オキサジア
ゾール誘導体、ペリレン誘導体、ピリジン誘導体、ピリ
ミジン誘導体、キノキサリン誘導体、ジフェニルキノン
誘導体、ニトロ置換フルオレン誘導体等を用いることが
できる。電子注入層は発光層を兼ねたものであってもよ
く、このような場合はトリス(8−キノリノラト)アル
ミニウム等を使用することが好ましい。電子注入層の形
成は、発光層と同様に、蒸着等によればよい。
【0074】電子注入層は2層に分けて積層してもよ
く、その場合には、電子注入層用の化合物の中から好ま
しい組み合わせを選択して用いることができる。このと
き、電子注入電極側から電子親和力の値の大きい化合物
の順に積層することが好ましい。このような積層順につ
いては、電子注入層を2層以上設けるときも同様であ
る。
【0075】本発明の有機EL素子では、電子注入電極
に接する有機層少なくとも1層にアルカリ金属(Li、
Na、K、Rb、Cs)、アルカリ土類金属(Mg、C
a、Sr、Ba)のいずれか1種以上を含有する含有す
ることが好ましい。特に、Liを含有すると高輝度が得
られるので、好ましい。このように電子注入電極に接す
る有機層に仕事関数の小さな金属をドープし、有機物と
相互作用(配位)させることで高輝度が得られる。アル
カリ金属および/またはアルカリ土類金属を含有する有
機層は、通常、電子注入層および/または発光層、好ま
しくは電子注入層である。
【0076】電子注入層に含有されるアルカリ金属およ
び/またはアルカリ土類金属の含有量は0.1〜10wt
%、特に1〜3wt%が好ましい。含有量がこれより多く
ても少なくても輝度が変動しやすくなる。また、含有量
が少ないと高輝度が得られない。
【0077】アルカリ金属および/またはアルカリ土類
金属の濃度は均一であってもよいが、電子注入電極側に
存在すればよく、濃度勾配を有していてもよい。特に、
電子注入電極の界面から0〜50nmの範囲に1〜3wt%
含有することが好ましい。
【0078】有機層中のアルカリ金属および/またはア
ルカリ土類金属は、通常、原子状で存在するが、数原子
のクラスターを形成していてもよい。
【0079】アルカリ金属および/またはアルカリ土類
金属を含有する有機層は、有機物とアルカリ金属および
/またはアルカリ土類金属とを共蒸着することによって
形成できる。
【0080】ホール注入輸送層、発光層および電子注入
輸送層の形成には、均質な薄膜が形成できることから、
真空蒸着法を用いることが好ましい。真空蒸着法を用い
た場合、アモルファス状態または結晶粒径が0.1μm
以下の均質な薄膜が得られる。結晶粒径が0.1μm を
超えていると、不均一な発光となり、素子の駆動電圧を
高くしなければならなくなり、電荷の注入効率も著しく
低下する。
【0081】真空蒸着の条件は特に限定されないが、1
-4Pa以下の真空度とし、蒸着速度は0.01〜1nm/
sec 程度とすることが好ましい。また、真空中で連続し
て各層を形成することが好ましい。真空中で連続して形
成すれば、各層の界面に不純物が吸着することを防げる
ため、高特性が得られる。また、素子の駆動電圧を低く
したり、ダークスポットの成長・発生を抑えたりするこ
とができる。
【0082】これら各層の形成に真空蒸着法を用いる場
合において、1層に複数の化合物を含有させる場合、化
合物を入れた各ボートを個別に温度制御して共蒸着する
ことが好ましい。
【0083】ホール注入電極としては、通常、基板側か
ら発光した光を取り出す構造であるため、透明な電極が
好ましく、ITO(錫ドープ酸化インジウム)、IZO
(亜鉛ドープ酸化インジウム)、ZnO、SnO2 、I
23 等が挙げられるが、好ましくはITO、IZO
が好ましい。In23 に対するSnO2 の混合比は、
1〜20wt%が好ましく、さらに好ましくは5〜12wt
%が好ましい。In23 に対するZnOの混合比は、
1〜20wt%が好ましく、さらに好ましくは5〜12wt
%が好ましい。その他にSn、Ti、Pb等が酸化物の
形で、酸化物換算にして1wt%以下含まれていてもよ
い。
【0084】ホール注入電極は、蒸着法等によっても形
成できるが、スパッタ法により形成することが好まし
い。ITO、IZO電極の形成にスパッタ法を用いる場
合、好ましくはIn2 3 にSnO2 やZnOをドープ
したターゲットを用いる。スパッタ法によりITO透明
電極を成膜した場合、蒸着により成膜したものよりも発
光輝度の経時変化が少ない。スパッタ法としてはDCス
パッタが好ましく、その投入電力としては、0.1〜4
W/cm2 の範囲が好ましい。特にDCスパッタ装置の電
力としては、好ましくは0.1〜10W/cm2、特に
0.2〜5W/cm2の範囲が好ましい。また、成膜レー
トは2〜100nm/min 、特に5〜50nm/min の範囲
が好ましい。
【0085】スパッタガスとしては、特に制限するもの
ではなく、Ar、He、Ne、Kr、Xe等の不活性ガ
ス、あるいはこれらの混合ガスを用いればよい。このよ
うなスパッタガスのスパッタ時における圧力としては、
通常0.1〜20Pa程度でよい。
【0086】ホール注入電極の厚さは、ホール注入を十
分行える一定以上の厚さを有すれば良く、通常5〜50
0nm、特に10〜300nmの範囲が好ましい。
【0087】本発明の有機EL素子は、電子注入電極の
上、つまり有機層と反対側に保護電極を設けてもよい。
保護電極を設けることにより、電子注入電極が外気や水
分等から保護され、構成薄膜の劣化が防止され、電子注
入効率が安定し、素子寿命が飛躍的に向上する。また、
この保護電極は、非常に低抵抗であり、電子注入電極の
抵抗が高い場合には配線電極としての機能も有する。こ
の保護電極は、Al、Alおよび遷移金属(ただしTi
を除く)、Tiまたは窒化チタン(TiN)のいずれか
1種または2種以上を含有し、これらを単独で用いた場
合、それぞれ保護電極中に少なくとも、Al:90〜1
00at%、Ti:90〜100at%、TiN:90〜1
00 mol%程度含有されていることが好ましい。また、
2種以上用いるときの混合比は任意であるが、AlとT
iの混合では、Tiの含有量は10at%以下が好まし
い。また、これらを単独で含有する層を積層してもよ
い。特にAl、Alおよび遷移金属は、後述の配線電極
として用いた場合、良好な効果が得られ、TiNは耐腐
食性が高く、封止膜としての効果が大きい。TiNは、
その化学量論組成から10%程度偏倚していてもよい。
さらに、Alおよび遷移金属の合金は、遷移金属、特に
Sc,Nb,Zr,Hf,Nd,Ta,Cu,Si,C
r,Mo,Mn,Ni,Pd,PtおよびW等を、好ま
しくはこれらの総計が10at%以下、さらに好ましくは
5at%以下、特に好ましくは2at%以下含有していても
よい。遷移金属の含有量が少ないほど、配線材として機
能させた場合の薄膜抵抗は下げられる。
【0088】保護電極の厚さは、電子注入効率を確保
し、水分や酸素あるいは有機溶媒の進入を防止するた
め、一定以上の厚さとすればよく、好ましくは50nm以
上、さらに好ましくは100nm以上、特に好ましくは1
00〜1000nmの範囲が好ましい。保護電極層が薄す
ぎると、本発明の効果が得られず、また、保護電極層の
段差被覆性が低くなってしまい、端子電極との接続が十
分ではなくなる。一方、保護電極層が厚すぎると、保護
電極層の応力が大きくなるため、ダークスポットの成長
速度が速くなってしまう。なお、配線電極として機能さ
せる場合の厚さは、電子注入電極の膜厚が薄いために膜
抵抗が高く、これを補う場合には通常100〜500nm
程度、その他の配線電極として機能される場合には1
00〜300nm程度である。
【0089】電子注入電極と保護電極とを併せた全体の
厚さとしては、特に制限はないが、通常50〜1000
nm程度とすればよい。
【0090】電極成膜後に、前記保護電極に加えて、S
iOX 等の無機材料、テフロン、塩素を含むフッ化炭素
重合体等の有機材料等を用いた保護膜を形成してもよ
い。保護膜は透明でも不透明であってもよく、保護膜の
厚さは50〜1200nm程度とする。保護膜は、前記の
反応性スパッタ法の他に、一般的なスパッタ法、蒸着
法、PECVD法等により形成すればよい。
【0091】次に、本発明の有機EL素子について説明
する。本発明の有機EL素子は、基板上に有機EL構造
体が積層されており、この有機EL構造体の上に所定の
空隙を有するように配置される封止板と、この封止板の
接続部に配置され、封止板を基板から所定の距離に維持
するスペーサーと、封止板を固定し、有機EL構造体を
密閉するための封止用接着剤とを有する。そして、その
密閉空間内に、乾燥剤のCaH2、SrH2、BaH2
AlLiH4が有機EL構造体に非接触の状態で配置さ
れており、封止ガスが封入されている。
【0092】気密ケース内の封止ガスは、Ar、He、
2等の不活性ガスが用いられる。ただし、乾燥剤にC
aH2、SrH2、BaH2を用いる場合はN2が好ましい
が、乾燥剤にAlLiH4を用いる場合、高温になると
封止ガスにN2を用いることができないので、Arを用
いることが好ましい。この封止ガスの水分含有量は、1
00ppm以下、さらには10ppm以下、特に1ppm以下で
あることが好ましい。この水分含有量に下限値は特にな
いが、通常0.1ppm程度である。このような封止ガス
を用いることにより、有機EL構造体のホール注入電
極、有機層、電子注入電極、または、これらの界面と水
分等との化学反応等による劣化が抑制され、初期性能が
長期間維持できる。
【0093】封止板の材料としては、ガラスや石英、樹
脂等の透明ないし半透明材料が挙げられるが、より好ま
しくはガラスが好ましい。このようなガラス材として、
例えば、ソーダ石灰ガラス、鉛アルカリガラス、ホウケ
イ酸ガラス、アルミノケイ酸ガラス、シリカガラス等の
ガラス組成のものが好ましい。また、封止板は、平板状
であることが好ましい。封止板にほりこみ等を設け、そ
こに乾燥剤を配置してもよいが、ほりこみを設けるのは
コストアップになるので、安価な平板ガラスを用いるこ
とが好ましい。その製板方法としては、ロールアウト
法、ダウンロード法、フュージョン法、フロート法等が
好ましい。ガラス材の表面処理法としては、研磨加工処
理、SiO2バリヤーコート処理等が好ましい。これら
の中でも、フロート法で製板されたソーダ石灰ガラス
で、表面処理の無いガラス材が安価に使用でき、好まし
い。封止板としては、ガラス板以外にも、金属板、プラ
スチック板等を用いることもできる。
【0094】封止板の高さを調整する手段としては、特
に制限されるものではないが、スペーサーを用いること
が好ましい。スペーサーを用いることにより、安価で、
容易に所望の高さを得ることができる。スペーサーの材
料としては、樹脂ビーズ、シリカビーズ、ガラスビー
ズ、ガラスファイバー等が挙げられ、特にガラスビーズ
等が好ましい。またその厚さとしては、通常、好ましく
は1〜500μm 、より好ましくは1〜200μm 、特
に1〜20μm 、または100〜200μm 程度ものが
好ましい。
【0095】なお、封止板に凹部を形成した場合には、
スペーサーは使用しても、使用しなくてもよい。使用す
る場合の好ましい大きさとしては、前記範囲でよいが、
特に1〜20μm の範囲が好ましい。接着剤の塗布量
は、使用するスペーサーの大きさなどにより異なるが、
通常1〜100mg/cm2 、より好ましくは1〜10mg/
cm2 程度が好ましい。
【0096】スペーサーは、封止用の接着剤とともに用
いることが好ましい。封止用接着剤とともに用いること
により、スペーサーの固定と、封止とを同時に行うこと
ができる。スペーサーは、通常、粒径の揃った粒状物で
あるが、その形状は特に限定されるものではなく、スペ
ーサーとしての機能に支障のないものであれば種々の形
状であってもよい。なお、スペーサーを接着剤自体が兼
ねても、スペーサーを封止板と一体に形成してもよい。
【0097】接着剤としては、好ましくはカチオン硬化
タイプの紫外線硬化型エポキシ樹脂接着剤を用いる。有
機EL積層構造体部分の各層構成材料のガラス転移温度
が140℃以下、特に80〜100℃程度である。その
ため、通常の熱硬化型の接着剤を用いると、その硬化温
度が140〜180℃程度であるので、接着剤の硬化の
際に有機EL構造体が軟化してしまい、特性の劣化が生
じてしまう。一方、紫外線硬化型接着剤の場合は、この
ような有機EL構造体の軟化は生じない。しかし、現在
一般に用いられている紫外線硬化型接着剤は、アクリル
系であるため、硬化の際に成分中のアクリルモノマーが
揮発し、それが上記有機EL構造体の各構成材料に悪影
響を及ぼし、その特性を劣化させてしまう。そこで、本
発明においては、以上のような問題のない、あるいは極
めて少ない接着剤である、上記のカチオン硬化タイプの
紫外線硬化型エポキシ樹脂接着剤を用いることが好まし
い。
【0098】なお、紫外線硬化型エポキシ樹脂接着剤と
して市販されているものの中には、紫外線加熱硬化併用
型のエポキシ樹脂接着剤が含まれる場合がある。この場
合には、ラジカル硬化タイプのアクリル系樹脂と加熱硬
化タイプのエポキシ樹脂が混合あるいは変性してある場
合が多く、前記のアクリル系樹脂のアクリルモノマーの
揮発の問題や熱硬化型エポキシ樹脂の硬化温度の問題が
解決していないので、本発明の有機EL素子に用いる接
着剤としては好ましくない。
【0099】カチオン硬化タイプの紫外線硬化型エポキ
シ樹脂接着剤とは、主たる硬化剤として紫外線等の光照
射による光分解でルイス酸触媒を放出するルイス酸塩型
硬化剤を含み、光照射により発生したルイス酸が触媒と
なって主成分であるエポキシ樹脂がカチオン重合型の反
応機構により重合し、硬化するタイプの接着剤である。
【0100】上記接着剤の主成分であるエポキシ樹脂と
しては、エポキシ化オレフィン樹脂、脂環式エポキシ樹
脂、ノボラックエポキシ樹脂等が挙げられる。また、上
記硬化剤としては、芳香族ジアゾニウムのルイス酸塩、
ジアリルヨードニウムのルイス酸塩、トリアリルスルホ
ニウムのルイス酸塩、トリアリルセレニウムのルイス酸
塩等が挙げられる。
【0101】成膜される有機EL素子構造体の高さは、
特に制限されるものではないが、通常100〜1000
nm、特に300〜800nmの範囲が好ましい。また、基
板の有機EL素子構造体成膜面から封止板の下端面まで
の距離としては、好ましくは200μm 以下、特に80
〜150μm 程度の範囲が好ましい。
【0102】有機EL素子は水分に極めて弱いため、封
止板の密着固定、封止物質の封入は、乾燥N2やAr、
He等の不活性ガス雰囲気下で行われることが好まし
い。乾燥剤のCaH2、SrH2、BaH2、AlLiH4
は、水と反応しやすいので、封止空間内の水分量を減ら
すために十分に乾燥したものを用いることが好ましい。
有機EL構造体の積層、乾燥剤の配置、封止までを外系
にさらすことなく、インプロセスで行うことが好まし
い。
【0103】基板材料としては、基板側から発光した光
を取り出す構成の場合、ガラスや石英、樹脂等の透明な
いし半透明材料を用いる。また、逆積層の場合には、基
板は透明でも不透明であってもよく、不透明である場合
にはセラミックス等を使用してもよい。
【0104】また、基板に色フィルター膜や蛍光性物質
を含む色変換膜、あるいは誘電体反射膜を用いて発光色
をコントロールしてもよい。
【0105】色フィルター膜には、液晶ディスプレイ等
で用いられているカラーフィルターを用いれば良いが、
有機EL素子の発光する光に合わせてカラーフィルター
の特性を調整し、取り出し効率・色純度を最適化すれば
よい。
【0106】また、EL素子材料や蛍光変換層が光吸収
するような短波長の外光をカットできるカラーフィルタ
ーを用いれば、素子の耐光性・表示のコントラストも向
上する。
【0107】また、誘電体多層膜のような光学薄膜を用
いてカラーフィルターの代わりにしても良い。
【0108】蛍光変換フィルター膜は、EL発光の光を
吸収し、蛍光変換膜中の蛍光体から光を放出させること
で、発光色の色変換を行うものであるが、組成として
は、バインダー、蛍光材料、光吸収材料の三つから形成
される。
【0109】蛍光材料は、基本的には蛍光量子収率が高
いものを用いれば良く、EL発光波長域に吸収が強いこ
とが望ましい。実際には、レーザー色素などが適してお
り、ローダミン系化合物・ペリレン系化合物・シアニン
系化合物・フタロシアニン系化合物(サブフタロシアニ
ン等も含む)、ナフタロイミド系化合物・縮合環炭化水
素系化合物・縮合複素環系化合物・スチリル系化合物・
クマリン系化合物等を用いればよい。
【0110】バインダーは、基本的に蛍光を消光しない
ような材料を選べば良く、フォトリソグラフィー・印刷
等で微細なパターニングが出来るようなものが好まし
い。また、ITO、IZOの成膜時にダメージを受けな
いような材料が好ましい。
【0111】光吸収材料は、蛍光材料の光吸収が足りな
い場合に用いるが、必要のない場合は用いなくても良
い。また、光吸収材料は、蛍光性材料の蛍光を消光しな
いような材料を選べば良い。
【0112】本発明の有機EL素子は、通常、直流駆動
型のEL素子として用いられるが、交流駆動またはパル
ス駆動とすることもできる。印加電圧は、通常、2〜2
0V程度とされる。
【0113】
【実施例】次に実施例を示し、本発明をより具体的に説
明する。
【0114】<実施例1>以下のようにして単純マトリ
クス発光素子を作製した。
【0115】コーニング社製7059ガラス基板上に、
ITO透明電極(ホール注入電極)を膜厚85nmで64
×256ドットの画素(一画素当たり280×280μ
m )を構成するよう成膜、パターニングした。そして、
ホール注入電極が形成された基板を、中性洗剤、アセト
ン、エタノールを用いて超音波洗浄し、煮沸エタノール
中から引き上げて乾燥した。次いで、表面をUV/O3
洗浄した後、真空蒸着装置の基板ホルダーに固定して、
槽内を1×10-4Pa以下まで減圧した。そして、4,
4’,4”−トリス(−N−(3−メチルフェニル)−
N−フェニルアミノ)トリフェニルアミン(m−MTD
ATA)を蒸着速度0.2nm/sec.で40nmの厚さに蒸
着し、ホール注入層とした。次に、N,N’−ジフェニ
ル−N,N’−m−トリル−4,4’−ジアミノ−1,
1’−ビフェニル(以下、TPD)を蒸着速度0.2nm
/sec.で35nmの厚さに蒸着し、ホール輸送層とした。
次に、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム(以
下、Alq3 )を蒸着速度0.2nm/sec.で50nmの厚
さに蒸着して、発光層とした。次いで、DCスパッタ法
にて、0.5nmの厚さにLi濃度が7.3at%のAlL
i合金膜を成膜して、電子注入電極とした。このとき、
スパッタ時の圧力1.0Paで、スパッタガスにはArを
用い、投入電力は100W、ターゲットの大きさは4イ
ンチ径、基板とターゲットの距離は90mmとした。そし
て、Alターゲットを用いたDCスパッタ法により、A
l保護電極を200nmの厚さに成膜した。
【0116】この有機EL構造体が積層された基板を、
2ガスを流通させたグローブボックスに移した。そし
て、乾燥剤としてCaH2粒子をネットに入れて配置、
固定し、ガラス基板上に、紫外線硬化型エポキシ樹脂接
着剤(スリーボンド製30Y296D)を未硬化の状態
で100mg塗布した。そして、封止板として100μm
程度の気密空間を設けるように加工された別のコーニン
グ社製7059ガラスを重ねて、基板同士を摺り合わせ
ながら3kg/cm2 の圧力で加圧し、ガラス基板と封止板
間に接着剤の薄層を形成した。このとき、接着剤中には
7μm のスペーサーを1wt%分散させ、接着剤の膜厚が
7μm となるようにした。そして、UV光を照射し、接
着剤を硬化させて有機EL素子を得た。乾燥剤の量は、
気密ケース内の空間1mm3当たり0.01mg/mm3とし
た。
【0117】得られた有機EL素子に、大気雰囲気中で
直流電圧を印加し、温度70℃の加速条件下、10mA/
cm2 の定電流密度で連続駆動させ、輝度の相対変化、非
発光面積の拡大を測定した。
【0118】この有機EL素子は、600時間駆動後の
相対輝度は0.95〜1.1だった。また、400時間
駆動後の非発光面積率は1%以下、600時間駆動後の
非発光面積率は3%以下だった。相対輝度は、初期輝度
を1としたときの輝度の値、つまり、駆動後の輝度/初
期輝度として計算した。非発光面積率は、(非発光面
積)/(画素の面積)×100(%)として計算した。
【0119】<実施例2>乾燥剤としてCaH2の代わ
りに同量のSrH2を用いた他は実施例1と同様にして
有機EL素子を得、実施例1と同様にして評価した。
【0120】この有機EL素子も、600時間駆動後の
相対輝度は0.95〜1.1だった。また、400時間
駆動後の非発光面積率は1%以下、600時間駆動後の
非発光面積率は3%以下だった。
【0121】<実施例3>乾燥剤としてCaH2の代わ
りに同量のAlLiH4を用い、封止ガスとしてN2ガス
の代わりにArガスを用いた他は実施例1と同様にして
有機EL素子を得、実施例1と同様にして評価した。
【0122】この有機EL素子も、600時間駆動後の
相対輝度は0.95〜1.1だった。また、400時間
駆動後の非発光面積率は1%以下、600時間駆動後の
非発光面積率は3%以下だった。
【0123】<実施例4>乾燥剤としてCaH2の代わ
りに同量のBaH2を用いた他は実施例1と同様にして
有機EL素子を得、実施例1と同様にして評価したとこ
ろ、この有機EL素子も実施例1と同様の効果が得られ
た。
【0124】<実施例5>電子注入電極をAlLiの代
わりにLi2Oとした他は実施例1と同様にして有機E
L素子を得、実施例1と同様にして評価した。
【0125】この有機EL素子も、600時間駆動後の
相対輝度は0.95〜1.1だった。また、400時間
駆動後の非発光面積率は1%以下、600時間駆動後の
非発光面積率は3%以下だった。
【0126】<実施例6>電子注入電極をAlLiの代
わりにLiFとした他は実施例1と同様にして有機EL
素子を得、実施例1と同様にして評価した。
【0127】この有機EL素子も、600時間駆動後の
相対輝度は0.95〜1.1だった。また、400時間
駆動後の非発光面積率は1%以下、600時間駆動後の
非発光面積率は3%以下だった。
【0128】<比較例1>乾燥剤としてCaH2の代わ
りに同量のゼオライトを用いた他は実施例1と同様にし
て有機EL素子を得、実施例1と同様にして評価した。
【0129】この有機EL素子は、100時間駆動後の
相対輝度は1.5以上、300時間駆動後の相対輝度は
2以上だった。また、100時間駆動後の非発光面積率
は5%以上、250時間駆動後の非発光面積率は10%
以上だった。400時間で非発光面積率は20%以上、
600時間で非発光面積率は30%以上になった。
【0130】<比較例2>電子注入電極の膜厚を4nmと
した他は実施例1と同様にして有機EL素子を得、実施
例1と同様にして評価した。
【0131】この有機EL素子は、1000時間駆動後
の非発光面積率は1%以下だったが、200時間駆動後
の相対輝度は0.8以下、400時間駆動後の相対輝度
は0.5以下、600時間駆動後の相対輝度は0.4以
下だった。
【0132】<比較例3>乾燥剤としてCaH2の代わ
りに同量のBaOを用いた他は実施例1と同様にして有
機EL素子を得、実施例1と同様にして評価した。
【0133】この有機EL素子は、180時間駆動する
と発光しなくなり、素子として機能しなくなった。
【0134】<実施例7>実施例1と同様に、基板上に
ITO透明電極、ホール注入層(m−MTDATA)、
ホール輸送層(TPD)、発光層(Alq3)を成膜し
た後、LiとAlq3 を40nmの厚さに共蒸着して電子
注入層(Li濃度1.5wt%)とし、さらにAl電極
(陰極)を200nmの厚さに成膜し、この有機EL構造
体を実施例1と同様に封止して有機EL素子を得、実施
例1と同様にして評価した。
【0135】この有機EL素子も、600時間駆動後の
相対輝度は0.95〜1.1だった。また、400時間
駆動後の非発光面積率は1%以下、600時間駆動後の
非発光面積率は3%以下だった。
【0136】また、実施例1〜7、比較例1〜3の有機
EL素子に、温度60℃、湿度95%RHの加速条件下
で直流電圧を印加し、10mA/cm2 の定電流密度で10
00時間連続駆動させ、輝度の相対変化、非発光面積の
拡大を測定した。本発明の有機EL素子は、高湿度下に
おいても比較例のものと比較して輝度の相対変化、非発
光面積の拡大は極めて小さかった。
【0137】
【発明の効果】以上のように、本発明により、容易に製
造でき、水分等の影響を極力排除し、経時劣化、特に非
発光面積の拡大、輝度の変化が小さく、初期性能を長期
間維持できる長寿命の有機EL素子を提供できる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 荒井 三千男 東京都中央区日本橋一丁目13番1号 ティ ーディーケイ株式会社内 (72)発明者 遠藤 広行 東京都中央区日本橋一丁目13番1号 ティ ーディーケイ株式会社内 (72)発明者 川島 真祐紀 東京都中央区日本橋一丁目13番1号 ティ ーディーケイ株式会社内 (72)発明者 早川 敏雄 東京都中央区日本橋一丁目13番1号 ティ ーディーケイ株式会社内 Fターム(参考) 3K007 AB13 AB18 BB04 BB05 CA01 CB01 DA01 DB03 EB00 FA02

Claims (11)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ホール注入電極と、電子注入電極と、こ
    れらの電極間に設けられた1種以上の発光層を含む有機
    層とを有する有機EL構造体が気密ケースに収納されて
    おり、 前記気密ケース内に、水素化カルシウム、水素化ストロ
    ンチウム、水素化バリウムおよび水素化アルミニウムリ
    チウムの1種以上が配置されており、 前記電子注入電極がアルカリ金属およびアルカリ土類金
    属のいずれか1種以上を含有する有機EL素子。
  2. 【請求項2】 前記電子注入電極の膜厚が1nm以下であ
    る請求項1の有機EL素子。
  3. 【請求項3】 前記有機層のうち少なくとも1層がア
    ルカリ金属およびアルカリ土類金属のいずれか1種以上
    を含有する請求項1または2の有機EL素子。
  4. 【請求項4】 ホール注入電極と、電子注入電極と、こ
    れらの電極間に設けられた1種以上の発光層を含む有機
    層とを有する有機EL構造体が気密ケースに収納されて
    おり、 前記気密ケース内に、水素化カルシウム、水素化ストロ
    ンチウム、水素化バリウムおよび水素化アルミニウムリ
    チウムの1種以上が配置されており、 前記有機層のうち少なくとも1層がアルカリ金属および
    アルカリ土類金属のいずれか1種以上を含有する有機E
    L素子。
  5. 【請求項5】 前記有機層が前記電子注入電極と前記発
    光層との間に電子注入層を有し、 前記電子注入層がアルカリ金属およびアルカリ土類金属
    のいずれか1種以上を含有する請求項3または4の有機
    EL素子。
  6. 【請求項6】 前記電子注入電極がアルカリ金属の合
    金、これらの酸化物、これらのフッ化物、アルカリ土類
    金属の合金、これらの酸化物およびこれらのフッ化物の
    いずれか1種以上を含有する請求項1、2、3または5
    のいずれかの有機EL素子。
  7. 【請求項7】 前記電子注入電極および/または前記有
    機層がリチウムを含有する請求項1〜6のいずれかの有
    機EL素子。
  8. 【請求項8】 前記電子注入電極がアルミニウムリチウ
    ム合金、酸化リチウムおよびフッ化リチウムのいずれか
    1種以上を含有する請求項7の有機EL素子。
  9. 【請求項9】 前記有機層のアルカリ金属および/ま
    たはアルカリ土類金属の含有量が0.1〜10wt%であ
    る請求項3、4、5または7のいずれかの有機EL素
    子。
  10. 【請求項10】 前記気密ケースが、前記有機EL構造
    体が積層されている基板と、前記有機EL構造体上に所
    定の空隙を設けて配置された封止板と、前記封止板を前
    記基板に密着する封止用接着剤とを有する請求項1〜9
    のいずれかの有機EL素子。
  11. 【請求項11】 前記空隙に窒素が充填されており、前
    記気密ケース内に水素化カルシウムおよび/または水素
    化ストロンチウムが配置されている請求項10の有機E
    L素子。
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